(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022131617
(43)【公開日】2022-09-07
(54)【発明の名称】軸ずれ推定装置
(51)【国際特許分類】
G01S 7/40 20060101AFI20220831BHJP
【FI】
G01S7/40 126
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021030644
(22)【出願日】2021-02-26
(71)【出願人】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】近藤 勝彦
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 公一
【テーマコード(参考)】
5J070
【Fターム(参考)】
5J070AB08
5J070AB15
5J070AB17
5J070AC02
5J070AC06
5J070AC12
5J070AC13
5J070AD03
5J070AD08
5J070AE20
5J070AF03
5J070AH19
5J070AH31
5J070AK40
5J070BG01
(57)【要約】
【課題】推定が収束するまでの時間の短縮を図りつつ、走行環境に対するロバスト性を向上させる技術を提供する。
【解決手段】軸ずれ推定装置は、最新の軸ずれ角度の推定値である最新推定値mを算出する。軸ずれ推定装置は、最新推定値mの信頼度である推定信頼度wを算出する。軸ずれ推定装置は、S611~S616で、軸ずれ角度の推定結果として出力される値である出力推定値Mを更新する。軸ずれ推定装置は、S611~S616で、推定信頼度wが第1の信頼度である場合、推定信頼度wが第1の信頼度よりも低い第2の信頼度である場合と比較して、更新された後の出力推定値Mである更新出力推定値M
nに対する最新推定値mの寄与度合を高めて、出力推定値Mを更新する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体に搭載されたレーダ装置の軸ずれ角度を推定する軸ずれ推定装置であって、
前記レーダ装置により検出された物標の情報である物標情報に基づき、最新の前記軸ずれ角度の推定値である最新推定値を算出する第1演算部(4、S40)と、
前記最新推定値の信頼度である推定信頼度を算出する第2演算部(4、S50)と、
前記最新推定値を加味して、前記軸ずれ角度の推定結果として出力される値である出力推定値を更新する推定値更新部(4、S611~S616、S621~S624、S631~S634)と、
を備え、
前記推定値更新部は、前記推定信頼度が第1の信頼度である場合には、前記推定信頼度が前記第1の信頼度よりも低い第2の信頼度である場合と比較して、前記出力推定値に対する前記最新推定値の寄与度合を高める、軸ずれ推定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の軸ずれ推定装置であって、
前記第1演算部は、あらかじめ設定された測定サイクルごとの前記物標情報に基づき、前記測定サイクルごとの前記軸ずれ角度の推定値であるサイクル推定値を算出し、複数の前記サイクル推定値を平滑化して前記最新推定値を算出する、軸ずれ推定装置。
【請求項3】
請求項2に記載の軸ずれ推定装置であって、
前記推定信頼度は、前記複数の前記サイクル推定値のばらつきの小ささを表す値として算出される、軸ずれ推定装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の軸ずれ推定装置であって、
前記推定値更新部は、前記出力推定値と前記最新推定値との差分の絶対値が第1の絶対値である場合には、前記差分の絶対値が前記第1の絶対値よりも小さい第2の絶対値である場合と比較して、前記寄与度合を高める、軸ずれ推定装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の軸ずれ推定装置であって、
前記推定信頼度を加味して、前記出力推定値の信頼度である出力値信頼度を、更新する信頼度更新部(4、S617、S625、S635)を更に備え、
前記推定値更新部は、前記出力値信頼度に対する前記推定信頼度の割合の大きさに比例して前記寄与度合を高める割合比例部(4、S632)を備える、軸ずれ推定装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の軸ずれ推定装置であって、
前記推定値更新部は、前記出力推定値と前記最新推定値との差分の絶対値の大きさに比例して前記寄与度合を高める差分比例部(4、S622)を備える、軸ずれ推定装置。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の軸ずれ推定装置であって、
前記推定値更新部は、前記推定信頼度がしきい値以下である場合、前記寄与度合を0にする、軸ずれ推定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、レーダ装置の軸ずれ角度を推定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
移動体に搭載され、あらかじめ設定された測定サイクルごとに照射した照射波の反射波を受信することにより物標を検出する、レーダ装置が知られている。この種のレーダ装置では、何らかの原因で設置状態が変化することで、レーダ装置の基準方向が設計上定められた移動体の基準方向とずれる状態である軸ずれが生じることがある。軸ずれが生じると、検出誤差が大きくなり、物標の方位などを誤検出するおそれがある。そこで、このような軸ずれの角度である軸ずれ角度を推定することで、物標の方位などの誤検出を抑制する技術が知られている。
【0003】
軸ずれ角度を推定する技術の一つとして、例えば特許文献1には、測定サイクルごとにレーダ装置の搭載角度の推定値を算出し、算出された複数の推定値を平滑化し、このように平滑化された値を加味して、搭載角度の学習値を更新する技術が開示されている。特許文献1に開示されている技術では、これまでに更新した回数である学習回数が所定の回数よりも少ない場合には、学習回数が所定の回数以上である場合と比較して、学習値における推定値の寄与度合が高くなるよう設定される。これにより、学習の初期段階においては推定値が学習値に反映されやすくなるため、学習値を早急に真値に近づけることができ、学習値を十分に収束させるまでの時間を短縮させることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されている技術では、推定値の信頼度によらず、学習の初期段階においては推定値が学習値に反映されやすい。そのため、信頼度の高い推定値が得られやすい走行環境下で学習が開始された場合、信頼度の高い推定値が学習値に反映されやすくなるため、学習値の信頼度は低下せず、ひいては、軸ずれ角度の推定精度も低下しない。一方で、例えば雪道環境下などの信頼度の高い推定値が得られにくい走行環境下で学習が開始された場合、信頼度の低い推定値が学習値に反映されやすくなるため、学習値の信頼度も低下し、ひいては、軸ずれ角度の推定精度も低下する。このように、学習開始時の走行環境によって、軸ずれ角度の推定精度に差が生じることが考えられる。
【0006】
そのため、発明者の詳細な検討の結果、特許文献1に開示されている技術では、推定が収束するまでの時間の短縮効果が学習開始時の走行環境に大きく左右されるという課題、つまり、走行環境に対するロバスト性が低いという課題が見出された。
【0007】
本開示の一局面は、推定が収束するまでの時間の短縮を図りつつ、走行環境に対するロバスト性を向上させる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様は、移動体に搭載されたレーダ装置の軸ずれ角度を推定する軸ずれ推定装置であって、第1演算部(4、S40)と、第2演算部(4、S50)と、推定値更新部(4、S611~S616、S621~S624、S631~S634)と、を備える。第1演算部は、レーダ装置により検出された物標の情報である物標情報に基づき、最新の軸ずれ角度の推定値である最新推定値を算出する。第2演算部は、最新推定値の信頼度である推定信頼度を算出する。推定値更新部は、最新推定値を加味して、軸ずれ角度の推定結果として出力される値である出力推定値を更新する。また、推定値更新部は、推定信頼度が第1の信頼度である場合には、推定信頼度が第1の信頼度よりも低い第2の信頼度である場合と比較して、出力推定値に対する最新推定値の寄与度合を高める。
【0009】
このような構成によれば、推定が収束するまでの時間の短縮を図りつつ、走行環境に対するロバスト性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1実施形態の車両制御システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】レーダ波の垂直方向における照射範囲を説明する説明図である。
【
図3】レーダ波の水平方向における照射範囲を説明する説明図である。
【
図4】反射点の方位角度及び軸ずれを説明する説明図である。
【
図5】第1実施形態の軸ずれ推定処理のフローチャートである。
【
図6】第1実施形態の出力値更新処理のフローチャートである。
【
図7】第2実施形態の出力値更新処理のフローチャートである。
【
図8】第3実施形態の出力値更新処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の例示的な実施形態について図面を参照しながら説明する。
[1.第1実施形態]
[1-1.構成]
図1に示す車両制御システム1は、車両に搭載されるシステムである。車両制御システム1は、レーダ装置2と、車載センサ群3と、信号処理部4と、支援実行部5と、軸ずれ通知装置6と、を備える。以下では、車両制御システム1を搭載する車両を自車ともいう。また、自車の車高方向を垂直方向、自車の車幅方向を水平方向ともいう。
【0012】
レーダ装置2は、レーダ波を送受信するアンテナ部を備える。アンテナ部は、垂直方向及び水平方向のいずれについても反射波の到来方向を検出できるように構成される。本実施形態では、アンテナ部は、垂直方向及び水平方向に並ぶ複数のアンテナを備える、アレイアンテナである。
【0013】
レーダ装置2は、
図2及び
図3に示すように、自車VHの前側に搭載される。レーダ装置2は、自車VH前方の所定の角度範囲である照射範囲にレーダ波を照射する。具体的には、レーダ装置2は、垂直方向における照射範囲Rv及び水平方向における照射範囲Rhに、レーダ波を照射し、照射したレーダ波の反射波を受信する。レーダ装置2は、照射範囲全域へのレーダ波の照射及び反射波の受信を周期的に実行することで、照射範囲に存在する物標を所定の測定サイクルごとに検出する。レーダ装置2により検出された物標の情報である物標情報には、レーダ波を反射した反射点の方位角度を表す情報と、レーダ装置2と反射点との相対速度qと、が少なくとも含まれる。物標情報は、測定サイクルごとに信号処理部4に出力される。
【0014】
反射点の方位角度とは、
図4に示すように、レーダ装置2の基準方向Aを基準として求められた反射点の角度のうち垂直方向の角度(以下、垂直角度)Ver及び水平方向の角度(以下、水平角度)Horの少なくとも一方である。本実施形態では、垂直角度Ver及び水平角度Horの双方が反射点の方位角度を表す情報として物標情報に含まれる。垂直角度Verは、自車VHを右側面から見た場合において、レーダ装置2の基準方向Aを基準(すなわち0°)として、レーダ装置2の基準方向Aから右回りをプラス、左回りをマイナスとする角度で表す。水平角度Horは、自車VHを上空から見た場合において、レーダ装置2の基準方向Aを基準として、レーダ装置2の基準方向Aから右回りをプラス、左回りをマイナスとする角度で表す。レーダ装置2の基準方向Aとは、基準として設計上定められたレーダ装置2の方向である。本実施形態では、照射範囲の中心軸の方向がレーダ装置2の基準方向Aとして設定される。レーダ装置2は、本実施形態では、レーダ装置2の基準方向Aが車両の基準方向と一致するように自車VHに搭載される。車両の基準方向とは、基準として設計上定められた車両の方向であり、本実施形態では、自車VHの進行方向Bが車両の基準方向として設定される。レーダ装置2の基準方向Aと自車VHの進行方向Bとが一致するように、レーダ装置2が自車VHに搭載されると、検出された反射点の方位角度と、自車VHの進行方向Bに対する反射点の角度と、が一致する。換言すれば、レーダ装置2の基準方向Aと自車VHの進行方向Bとの間にずれが生じると、自車VHの進行方向Bに対する反射点の角度を表す情報が正しく得られないことになる。
【0015】
図4は、レーダ装置2に、垂直方向における軸ずれ、すなわち垂直面であるx-z平面内における軸ずれが生じている様子を示している。軸ずれとは、レーダ装置2の基準方向Aが、車両の基準方向(本実施形態では、自車VHの進行方向B)とずれている状態をいう。また、軸ずれ角度とは、レーダ装置2の基準方向Aと車両の基準方向(本実施形態では、自車VHの進行方向B)とのずれの大きさを示す角度をいう。以下、垂直方向における軸ずれ角度を垂直軸ずれ角度α
v、水平方向における軸ずれ角度を水平軸ずれ角度α
hとする。
【0016】
本実施形態では、レーダ装置2は、公知のFMCW方式を採用しており、上り変調区間のレーダ波と下り変調区間のレーダ波をあらかじめ設定された変調周期で交互に送信し、反射したレーダ波を受信する。FMCWは、Frequency Modulated Continuous Waveの略である。これにより、レーダ装置2は、変調周期ごとに物標を検出し、物標情報として、相対速度qと、垂直角度Ver及び水平角度Horと、を信号処理部4に出力する。なお、レーダ装置2は、反射点までの距離と、受信したレーダ波の受信電力と、を更に物標情報として信号処理部4に出力し得る。
【0017】
図1に戻り、車載センサ群3は、自車VHの状態等を検出するために自車VHに搭載された各種センサである。車載センサ群3を構成するセンサには、車輪の回転に基づいて自車VHの速度である移動体速度Cmを検出する車速センサが少なくとも含まれる。検出された移動体速度Cmは、信号処理部4に出力される。
【0018】
信号処理部4は、CPU41と、ROM43、RAM44、フラッシュメモリ等の半導体メモリ(以下、メモリ42)と、を有するマイクロコンピュータ(以下、マイコン)を中心に構成される。信号処理部4の各種機能は、CPU41が非遷移的実体的記録媒体に格納されたプログラムを実行することにより実現される。この例では、メモリ42が、プログラムを格納した非遷移的実体的記録媒体に該当する。また、このプログラムが実行されることで、プログラムに対応する方法が実行される。なお、信号処理部4を構成するマイコンの数は1つでも複数でもよい。また、信号処理部4が有する各種機能を実現する手法はソフトウェアに限るものではなく、その一部又は全部の要素について、一つあるいは複数のハードウェアを用いて実現してもよい。例えば、上記機能がハードウェアである電子回路によって実現される場合、その電子回路は多数の論理回路を含むデジタル回路、又はアナログ回路、あるいはこれらの組合せによって実現してもよい。
【0019】
信号処理部4が実行する処理には、軸ずれ推定処理及び物標認識処理が少なくとも含まれる。
このうち、軸ずれ推定処理は、レーダ装置2の軸ずれ角度を推定し、レーダ装置2の軸ずれ角度の推定結果として出力される値である出力推定値Mを算出する処理である。軸ずれ推定処理の詳細については後述する。軸ずれ推定処理での推定結果は、軸ずれ通知装置6等に出力される。
【0020】
一方、物標認識処理は、レーダ装置2から得られる物標情報、及び、車載センサ群3から得られる各種情報に基づいて、自車VHが走行する車線や、自車VHと同一車線を走行する先行車両、その他の車両や障害物等を検出する処理である。なお、物標情報には、軸ずれ推定処理での推定結果に基づいて補正したものが用いられてもよい。物標認識処理での処理結果は、支援実行部5等に出力される。
【0021】
支援実行部5は、信号処理部4から出力される物標認識処理での処理結果に基づき、各種車載機器を制御して、所定の運転支援を実行する。制御対象となる車載機器には、各種画像を表示するモニタ、警報音や案内音声を出力する音響機器が含まれる他、自車VHの内燃機関、パワートレイン機構、ブレーキ機構等を制御する制御装置が含まれていてもよい。
【0022】
軸ずれ通知装置6は、車室内に設置された音声出力装置である。軸ずれ通知装置6は、信号処理部4から出力される軸ずれ推定処理での推定結果に基づき、自車VHの乗員に対して、警告音を出力する。
【0023】
[1-2.処理]
[1-2-1.軸ずれ推定処理]
次に、信号処理部4が実行する軸ずれ推定処理について、
図5に示すフローチャートを用いて説明する。本処理は、イグニションスイッチがオンになると起動する。なお、本処理は、イグニッションスイッチがオフになると終了する。
【0024】
信号処理部4は、本処理が起動すると、S10で、レーダ装置2から物標情報を入力する。なお、S10からS30までの処理は、測定サイクルごとに行われる。
続いて、S20で、信号処理部4は、物標情報に含まれる反射点から、静止物によってレーダ波が反射した点であると推測される反射点を静止反射点として抽出する。静止反射点の抽出は、公知の様々な方法で行うことができる。
【0025】
その後、信号処理部4は、抽出した静止反射点を用いて、測定サイクルごとに算出される軸ずれ角度の推定値であるサイクル推定値Cを算出する。なお、信号処理部4は、抽出した静止反射点のうち所定の条件を満たす静止反射点を選択し、選択した静止反射点を用いてサイクル推定値Cを算出してもよい。
【0026】
以下では、測定ごとに算出される垂直軸ずれ角度αvの推定値である垂直サイクル推定値Cvを算出する例を示す。なお、測定ごとに算出される水平軸ずれ角度αhの推定値である水平サイクル推定値Chについても同様に算出することができる。例えば、信号処理部4は、垂直サイクル推定値Cvを(1)式に従って算出する。
【0027】
【0028】
ここで、Ver’は、レーダ装置2に軸ずれが生じていない場合の垂直角度であり、VerはS10でレーダ装置2から取得した物標情報に含まれる静止反射点ごとの垂直角度である。qvは静止反射点の相対速度qのx-z平面における大きさであり、Cmvは車載センサ群3から入力する移動体速度Cmのx-z平面における大きさである。γvは移動体速度Cmに含まれる速度の誤差である移動体速度誤差γのx-z平面における大きさである垂直移動体速度誤差である。
【0029】
(1)式に基づいて、静止反射点それぞれについて、垂直サイクル推定値Cvと垂直移動体速度誤差γvとを未知パラメータとした方程式が得られる。つまり、抽出された静止反射点の数と同数の連立方程式が得られる。この連立方程式を解くことで、垂直サイクル推定値Cvと垂直移動体速度誤差γvとが求められる。連立方程式の具体的な解法としては例えば最小自乗法等を用いることができる。ただし、連立方程式の解法は最小自乗法に限定されるものではない。
【0030】
続いて、S30で、信号処理部4は、サイクル推定値Cを算出した回数であるサイクル推定回数NcyがJ回未満か否かを判定する。Jは2以上の任意の整数である。本実施形態では、信号処理部4は、サイクル推定値Cを算出するごとに、サイクル推定回数Ncyを1増加させる。なお、軸ずれ推定処理の開始時のサイクル推定回数Ncyは0回である。信号処理部4は、サイクル推定回数NcyがJ回未満であると判定した場合、S10へ戻る。信号処理部4は、サイクル推定回数NcyがJ回未満でないと判定した場合、S40へ移行する。すなわち、S10からS20までの処理はJ回繰り返される。
【0031】
S40で、信号処理部4は、最新の軸ずれ角度の推定値である最新推定値mを算出する。本実施形態では、信号処理部4は、今回の測定サイクルを含む直近のJ回の測定サイクル(以下、平滑化区間)において算出されたJ個のサイクル推定値Cを平滑化して、最新推定値mを算出する。平滑化の方法としては、例えば、平滑化区間において算出されたJ個のサイクル推定値Cの相加平均をとる、といった方法を用いることができる。ただし、平滑化の方法はこれに限定されるものではなく、例えば、平滑化区間において算出されたJ個のサイクル推定値Cから所定の条件を満たすサイクル推定値Cを抽出し、抽出されたサイクル推定値Cの相加平均をとる、といった方法を用いてもよい。
【0032】
続いて、S50で、信号処理部4は、最新推定値mの信頼度である推定信頼度wを算出する。本実施形態では、信号処理部4は、平滑化区間において算出されたJ個のサイクル推定値Cのばらつきの小ささを表す値を推定信頼度wとして算出する。より具体的には、本実施形態では、信号処理部4は、平滑化区間において算出されたJ個のサイクル推定値Cの標準偏差の逆数を、推定信頼度wとして算出する。ただし、推定信頼度wはこれに限定されるものではなく、例えば、平滑化区間において算出されたJ個のサイクル推定値Cのうち、サイクル推定値Cが最大のものと最小のものとの差分の小ささを表す値を、推定信頼度wとしてもよい。
【0033】
続いて、S60で、信号処理部4は、S40で算出した最新推定値mと、S50で算出した推定信頼度wと、に基づき出力値を更新する、出力値更新処理を実行する。出力値は、出力推定値Mと、出力推定値Mの信頼度である出力値信頼度Wと、を含む。出力値更新処理については後述する。信号処理部4は、更新した出力値のうち少なくとも出力推定値Mを、軸ずれ通知装置6等に出力する。
【0034】
続いて、S70で、信号処理部4は、サイクル推定回数Ncyを0回にリセットする。その後、信号処理部4は、S10へ戻る。
[1-2-2.出力値更新処理]
次に、S60で実行される出力値更新処理について、
図6に示すフローチャートを用いて説明する。ここでは、出力値更新処理で更新される前の出力推定値Mを現在出力推定値M
n-1、出力値更新処理で更新された後の出力推定値Mを更新出力推定値M
n、出力値更新処理で更新される前の出力値信頼度Wを現在出力値信頼度W
n-1、出力値更新処理で更新された後の出力値信頼度Wを更新出力値信頼度W
n、とする。
【0035】
まず、S611で、信号処理部4は、S50で算出した推定信頼度wと、S40で算出した最新推定値mと現在出力推定値Mn-1との差分である推定値差分の絶対値Dmと、が第1条件を満たすか否かを判定する。第1条件とは、推定信頼度wが所定のしきい値である推定信頼度しきい値THwよりも大きく、かつ、推定値差分の絶対値Dmが所定のしきい値である差分しきい値THmよりも大きい、という条件である。信号処理部4は、推定信頼度w及び推定値差分の絶対値Dmが第1条件を満たすと判定した場合、S613へ移行する。信号処理部4は、推定信頼度w及び推定値差分の絶対値Dmが第1条件を満たさないと判定した場合、S612へ移行する。
【0036】
S612で、信号処理部4は、推定信頼度wが第2条件を満たすか否かを判定する。第2条件とは、推定信頼度wが推定信頼度しきい値THwよりも大きい、という条件である。信号処理部4は、推定信頼度wが第2条件を満たすと判定した場合、S614へ移行する。信号処理部4は、推定信頼度wが第2条件を満たさないと判定した場合、S615へ移行する。
【0037】
S613で、信号処理部4は、出力値を更新する際に用いる係数である更新係数kを、第1更新係数K1に設定する。第1更新係数K1は、0よりも大きく1以下の値である。その後、信号処理部4は、S616へ移行する。
【0038】
S614で、信号処理部4は、更新係数kを、第2更新係数K2に設定する。第2更新係数K2は、0よりも大きく第1更新係数K1よりも小さい値である。その後、信号処理部4は、S616へ移行する。
【0039】
S615で、信号処理部4は、更新係数kを、第3更新係数K3に設定する。本実施形態では、第3更新係数K3は、0である。ただし、第3更新係数K3は0に限定されるものではなく、例えば、0よりも大きく第2更新係数K2よりも小さい値であってもよい。その後、信号処理部4は、S616へ移行する。
【0040】
S611~S615の処理は、推定信頼度wと推定値差分の絶対値Dmとに基づき、更新係数kを、第1更新係数K1、第2更新係数K2、及び、第3更新係数K3、のいずれかに設定する処理である。すなわち、推定信頼度wが推定信頼度しきい値THwよりも大きく、かつ、推定値差分の絶対値Dmが差分しきい値THmよりも大きい場合、信号処理部4は、更新係数kを、最も値の大きい第1更新係数K1に設定する。推定信頼度wが推定信頼度しきい値THwよりも大きく、かつ、推定値差分の絶対値Dmが差分しきい値THm以下である場合、信号処理部4は、更新係数kを、第2更新係数K2に設定する。推定信頼度wが推定信頼度しきい値THw以下である場合、信号処理部4は、更新係数kを、最も値の小さい第3更新係数K3に設定する。
【0041】
S616で、信号処理部4は、S611~S615の処理で設定した更新係数k、最新推定値m、及び、現在出力推定値Mn-1を用いて、(2)式に従って更新出力推定値Mnを算出する。
【0042】
【0043】
続いて、S617で、信号処理部4は、S611~S615の処理で設定した更新係数k、推定信頼度w、及び、現在出力値信頼度Wn-1を用いて、(3)式に従って更新出力値信頼度Wnを算出する。
【0044】
【0045】
そして、信号処理部4は、出力値更新処理を終了する。
(2)式から明らかなように、更新係数kは、更新出力推定値Mnに対する最新推定値mの寄与度合である。また、(3)式から明らかなように、更新係数kは、更新出力値信頼度Wnに対する推定信頼度wの寄与度合であるとも言える。
【0046】
つまり、信号処理部4は、推定信頼度wが第1の信頼度である場合、推定信頼度wが第1の信頼度よりも低い第2の信頼度である場合と比較して、更新出力推定値Mnに対する最新推定値mの寄与度合及び更新出力値信頼度Wnに対する推定信頼度wの寄与度合を高めて、出力値を更新する。また、信号処理部4は、推定値差分の絶対値Dmが第1の絶対値である場合、推定値差分の絶対値Dmが第1の絶対値よりも低い第2の絶対値である場合と比較して、更新出力推定値Mnに対する最新推定値mの寄与度合及び更新出力値信頼度Wnに対する推定信頼度wの寄与度合を高めて、出力値を更新する。
【0047】
[1-3.効果]
以上詳述した第1実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1a)信号処理部4は、最新推定値mを加味して、更新出力推定値Mnを算出するように構成される。また、信号処理部4は、推定信頼度wが第1の信頼度である場合には、推定信頼度wが前記第1の信頼度よりも低い第2の信頼度である場合と比較して、更新出力推定値Mnに対する最新推定値mの寄与度合を高めるように構成される。
【0048】
このような構成によれば、信頼度の低い最新推定値mが更新出力推定値Mnに反映されにくくなるため、信頼度の高い最新推定値mが得られにくい走行環境下で学習が開始された場合であっても、軸ずれ角度の推定精度が低下することを抑制できる。すなわち、学習開始時の走行環境によって軸ずれ角度の推定精度に差が生じることを抑制できる。そのため、軸ずれ角度の推定が収束するまでの時間の短縮を図りつつ、走行環境に対するロバスト性を向上させることができる。
【0049】
(1b)信号処理部4は、測定サイクルごとの軸ずれ角度の推定値であるサイクル推定値Cを平滑化して最新推定値mを算出するように構成される。
このような構成によれば、サイクル推定値Cに含まれる誤差の更新出力推定値Mnへの影響を抑制できる。
【0050】
(1c)信号処理部4は、最新推定値mと現在出力推定値Mn-1との差分である推定値差分の絶対値Dmが第1の絶対値である場合、推定値差分の絶対値Dmが第1の絶対値よりも低い第2の絶対値である場合と比較して、更新出力推定値Mnに対する最新推定値mの寄与度合を高めるように構成される。
【0051】
このような構成によれば、最新推定値mが現在出力推定値Mn-1と大きく乖離している場合、すなわち、最新推定値mが急変している場合において、更新出力推定値Mnに対する最新推定値mの寄与度合を高めて更新できる。そのため、例えば最新推定値mが急変している場合に出力値更新処理をやり直すような構成と比較して、軸ずれ角度の推定が収束するまでの時間を短縮させることができる。
【0052】
(1d)信号処理部4は、推定信頼度wが第1の信頼度であり、かつ、最新推定値mが急変している場合、更新出力推定値Mnに対する最新推定値mの寄与度合を高めるように構成される。
【0053】
このような構成によれば、最新推定値mが急変しているものの、その信頼度が高い場合において、更新出力推定値Mnに対する最新推定値mの寄与度合を高めて更新出力推定値Mnを算出できる。そのため、例えば最新推定値mが急変している場合に出力値更新処理をやり直すような構成と比較して、軸ずれ角度の推定精度が低下することを抑制しつつ、軸ずれ角度の推定が収束するまでの時間を短縮させることができる。
【0054】
(1e)信号処理部4は、推定信頼度wが推定信頼度しきい値THw以下である場合、更新出力推定値Mnに対する最新推定値mの寄与度合を0にするように構成される。
このような構成によれば、信頼度の低い最新推定値mが更新出力推定値Mnに反映されることを抑制できる。そのため、軸ずれ角度の推定精度が低下することを抑制できる。
【0055】
[1-4.変形例]
第1実施形態では、信号処理部4は、S612で推定信頼度wが第2条件を満たすか否かを判定し、推定信頼度wが第2条件を満たすと判定した場合には更新係数kを第2更新係数K2に設定し、推定信頼度wが第2条件を満たさないと判定した場合には更新係数kを第3更新係数K3に設定する構成を例示したが、更新係数kの設定方法はこれに限定されるものではない。例えば、信号処理部4は、S612で、推定信頼度wの値に応じて更新係数kをより細かく設定してもよい。この場合において、推定信頼度wの値が大きいほど、更新係数kも大きくなるように設定する。
【0056】
[2.第2実施形態]
第2実施形態は、基本的な構成は第1実施形態と同様であるため、相違点について以下に説明する。なお、第1実施形態と同じ符号は、同一の構成を示すものであって、先行する説明を参照する。
【0057】
[2-1.処理]
第2実施形態は、第1実施形態と比較すると、
図6に示す出力値更新処理に代えて
図7に示す出力値更新処理を実行する点で相違する。
図7に示す出力値更新処理は、
図6に示す出力値更新処理と比較すると、S611~S617の処理に代えてS621~S625の処理を行う点で相違する。ただし、S621及びS624~S625の処理は、S611及びS616~S617の処理と同一である。
【0058】
S621で、信号処理部4は、推定信頼度w及び推定値差分の絶対値Dmが第1条件を満たすと判定した場合、S622へ移行し、推定信頼度w及び推定値差分の絶対値Dmが第1条件を満たさないと判定した場合、S623へ移行する。
【0059】
S622で、信号処理部4は、更新係数kを、第4更新係数K4に設定する。その後、信号処理部4は、S624へ移行する。第4更新係数K4は、(4)式に従って算出される。ただし、(4)式に従い算出された第4更新係数K4が1よりも大きい値である場合、信号処理部4は、更新係数kを1に設定する。
【0060】
【0061】
ここで、差分しきい値THmは、第1条件に含まれる所定のしきい値である差分しきい値THmと同一である。ただし、(4)式における差分しきい値THmはこれに限定されるものではなく、第1条件に含まれる所定のしきい値である差分しきい値THmとは異なる値が設定されてもよい。また、第1更新係数K1は、第1実施形態と同様に、0よりも大きく1以下の値である。第5更新係数K5は、0以上第1更新係数K1よりも小さい値である。
【0062】
S623で、信号処理部4は、更新係数kを、第5更新係数K5に設定する。その後、信号処理部4は、S624へ移行する。
S621~S623の処理は、推定信頼度wと推定値差分の絶対値Dmとに基づき、更新係数kを、第4更新係数K4又は第5更新係数K5に設定する処理である。すなわち、推定信頼度wが推定信頼度しきい値THwよりも大きく、かつ、推定値差分の絶対値Dmが差分しきい値THmよりも大きい場合、信号処理部4は、更新係数kを、(4)式に従って第4更新係数K4に設定する。(4)式から明らかなように、第4更新係数K4は、第5更新係数K5よりも小さくなることはない。また、第4更新係数K4は、第5更新係数K5以上の範囲において、推定値差分の絶対値Dmの大きさに比例する。一方、推定信頼度wが推定信頼度しきい値THw以下であるか、推定値差分の絶対値Dmが差分しきい値THm以下である場合、信号処理部4は、更新係数kを、第4更新係数K4以下である第5更新係数K5に設定する。
【0063】
ここで、S622において、推定値差分の絶対値Dmの大きさに比例して第4更新係数K4を設定する構成を、差分比例部と表現する。
[2-2.効果]
以上詳述した第2実施形態によれば、上述した第1実施形態の(1a)~(1e)の効果に加え、以下の効果が得られる。
【0064】
(2a)本実施形態の信号処理部4は、推定値差分の絶対値Dmの大きさに比例して、更新出力推定値Mnに対する最新推定値mの寄与度合を高める差分比例部を備えるように構成される。
【0065】
このような構成によれば、最新推定値mと現在出力推定値Mn-1との乖離が大きいほど、つまり、最新推定値mが急変している度合が大きいほど、更新出力推定値Mnに対する最新推定値mの寄与度合を高めて更新出力推定値Mnを算出できる。すなわち、最新推定値mが急変している度合に応じて更新出力推定値Mnに対する最新推定値mの寄与度合を設定し、更新出力推定値Mnを算出できるため、最新推定値mが急変した場合であっても、軸ずれ角度の推定精度が低下することを抑制できる。
【0066】
[3.第3実施形態]
第3実施形態は、基本的な構成は第1実施形態と同様であるため、相違点について以下に説明する。なお、第1実施形態と同じ符号は、同一の構成を示すものであって、先行する説明を参照する。
【0067】
[3-1.処理]
第3実施形態は、第1実施形態と比較すると、
図6に示す出力値更新処理に代えて
図8に示す出力値更新処理を実行する点で相違する。
図8に示す出力値更新処理は、
図6に示す出力値更新処理と比較すると、S611~S617の処理に代えてS631~S635の処理を行う点で相違する。ただし、S631及びS634~S635の処理は、S611及びS616~S617の処理と同一である。
【0068】
S631で、信号処理部4は、推定信頼度w及び推定値差分の絶対値Dmが第1条件を満たすと判定した場合、S632へ移行し、推定信頼度w及び推定値差分の絶対値Dmが第1条件を満たさないと判定した場合、S633へ移行する。
【0069】
S632で、信号処理部4は、更新係数kを、第6更新係数K6に設定する。その後、信号処理部4は、S634へ移行する。第6更新係数K6は、(5)式に従って算出される。ただし、(5)式に従い算出された第6更新係数K6が1よりも大きい値である場合、信号処理部4は、更新係数kを1に設定する。
【0070】
【0071】
ここで、第1更新係数K1は、第1実施形態と同様に、0よりも大きく1以下の値である。第7更新係数K7は、0以上第1更新係数K1よりも小さい値である。
S633で、信号処理部4は、更新係数kを、第7更新係数K7に設定する。その後、信号処理部4は、S634へ移行する。
【0072】
S631~S633の処理は、推定信頼度wと推定値差分の絶対値Dmとに基づき、更新係数kを、第6更新係数K6又は第7更新係数K7に設定する処理である。すなわち、推定信頼度wが推定信頼度しきい値THwよりも大きく、かつ、推定値差分の絶対値Dmが差分しきい値THmよりも大きい場合、信号処理部4は、更新係数kを、(5)式に従って第6更新係数K6に設定する。(5)式から明らかなように、第6更新係数K6は、第7更新係数K7よりも小さくなることはない。また、第6更新係数K6は、第7更新係数K7以上の範囲において、現在出力値信頼度Wn-1に対する推定信頼度wの割合の大きさに比例する。一方、推定信頼度wが推定信頼度しきい値THw以下であるか、推定値差分の絶対値Dmが差分しきい値THm以下である場合、信号処理部4は、更新係数kを、第6更新係数K6以下である第7更新係数K7に設定する。
【0073】
ここで、S632において、現在出力値信頼度Wn-1に対する推定信頼度wの割合の大きさに比例して第6更新係数K6を設定する構成を、割合比例部と表現する。
[3-2.効果]
以上詳述した第3実施形態によれば、上述した第1実施形態の(1a)~(1e)の効果に加え、以下の効果が得られる。
【0074】
(3a)本実施形態の信号処理部4は、現在出力値信頼度Wn-1に対する推定信頼度wの割合の大きさに比例して、更新出力推定値Mnに対する最新推定値mの寄与度合を高める割合比例部を備えるように構成される。
【0075】
このような構成によれば、現在出力値信頼度Wn-1に対する推定信頼度wの割合が大きいほど、つまり、推定信頼度wの上昇の度合が大きいほど、更新出力推定値Mnに対する最新推定値mの寄与度合を高めて更新出力推定値Mnを算出できる。すなわち、推定信頼度wが急上昇した場合において、現在出力推定値Mn-1と比較して信頼度の高い最新推定値mが更新出力推定値Mnに反映されやすくなるため、軸ずれ角度の推定精度を向上することができる。
【0076】
[4.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に限定されることなく、種々の形態を採り得ることは言うまでもない。
【0077】
(4a)上記実施形態では、S40で信号処理部4が複数のサイクル推定値Cを平滑化して最新推定値mを算出する構成を例示したが、平滑化することは必須ではなく、例えば、信号処理部4は、S20で算出された1個のサイクル推定値Cを平滑化せずに最新推定値mとしてもよい。この場合、S30の処理は省略してもよい。
【0078】
この場合において、S50で算出される推定信頼度wは、S20でサイクル推定値Cを算出する過程で得られる情報、例えば、サイクル推定値Cを算出するために用いられた静止反射点の数に基づき算出されるようにしてもよい。
【0079】
(4b)上記実施形態では、信号処理部4がS30~S50の処理を順番に実行する構成を例示したが、処理を実行する順番はこれに限定されるものではない。例えば、信号処理部4は、S40及びS50の処理の後に、S30の処理を実行してもよい。
【0080】
この場合において、信号処理部4は、測定サイクルごとにサイクル推定値Cを平滑化し、都度、暫定的な軸ずれ角度の推定値である暫定推定値tを算出する。すなわち、信号処理部4は、暫定推定値tとサイクル推定値Cとを平滑化し新たな暫定推定値tを算出することを、測定サイクルごとに繰り返し行う。そして、J回繰り返して平滑化したときに算出されている暫定推定値tを、最新推定値mとする。
【0081】
(4c)上記実施形態では、レーダ装置2がレーダ波を自車VHの前方に向けて送信する形態を例示したが、レーダ波の送信方向は自車VHの前方に限定されるものではない。例えば、レーダ装置2は、自車VHの前方、右前方、左前方、後方、右後方、左後方、右側方及び左側方の少なくとも一方に向けてレーダ波を送信するように構成されてもよい。
【0082】
(4d)上記実施形態では、レーダ装置2は、垂直角度Ver及び水平角度Horの双方を反射点の方位角度を表す情報として含む物標情報を信号処理部4に出力したが、レーダ装置2が出力する物標情報はこれに限定されるものではない。例えば、物標情報には、垂直角度Verのみが反射点の方位角度を表す情報として含まれていてもよく、また、水平角度Horのみが反射点の方位角度を表す情報として含まれていてもよい。
【0083】
(4e)上記実施形態では、レーダ装置2がFMCW方式を採用している例を示したが、レーダ装置2のレーダ方式は、FMCWに限定されるものではなく、例えば、2周波CW、FCM又はパルスを採用するように構成されてもよい。FCMは、Fast-Chirp Modulationの略である。
【0084】
(4f)上記実施形態では、軸ずれ通知装置6として車室内に設置された音声出力装置を用いているが、軸ずれ通知装置6はこれに限定されるものではない。例えば、支援実行部5が備える音響機器等が軸ずれ通知装置6として用いられてもよい。
【0085】
(4g)上記実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素として分散させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に統合したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。
【0086】
(4h)本開示は、上述した軸ずれ推定装置の他、当該軸ずれ推定装置を備える車両制御システム1、当該軸ずれ推定装置としてコンピュータを機能させるためのプログラム、このプログラムを記録した媒体、軸ずれ推定方法など、種々の形態で実現することができる。
【0087】
なお、上記実施形態において、信号処理部4が軸ずれ推定装置に相当する。また、S40が第1演算部としての処理に相当し、S50が第2演算部としての処理に相当し、S611~S616、S621~S624、S631~S634が推定値更新部としての処理に相当し、S617、S625、S635が信頼度更新部としての処理に相当し、S632が割合比例部としての処理に相当し、S622が差分比例部としての処理に相当する。また、自車VHが移動体に相当する。
【符号の説明】
【0088】
1…車両制御システム、2…レーダ装置、3…車載センサ群、4…信号処理部、41…CPU、42…メモリ、43…ROM、44…RAM。