(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022131623
(43)【公開日】2022-09-07
(54)【発明の名称】着用エアバッグ装置
(51)【国際特許分類】
A41D 13/018 20060101AFI20220831BHJP
【FI】
A41D13/018
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021030655
(22)【出願日】2021-02-26
(71)【出願人】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076473
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 昭夫
(72)【発明者】
【氏名】柳澤 利仁
(72)【発明者】
【氏名】河村 祐亮
(72)【発明者】
【氏名】三浦 渉
(72)【発明者】
【氏名】田中 志幸
【テーマコード(参考)】
3B011
【Fターム(参考)】
3B011AA01
3B011AA05
3B011AB01
3B011AC04
(57)【要約】
【課題】エアバッグの装着者に対する位置ずれを抑制して、膨張完了時に保護対象部位を的確に保護可能な着用エアバッグ装置を提供すること。
【解決手段】装着者の保護対象部位を保護可能に構成される着用エアバッグ装置S1。内部に膨張用ガスを流入させて保護対象部位を覆うように膨張する保護膨張部を備えるエアバッグ10と、膨張完了時の保護膨張部の保護対象部位からのずれを抑制可能なずれ抑制手段CMと、を備える構成とされている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
装着者の保護対象部位を保護可能に構成される着用エアバッグ装置であって、
可撓性を有したシート体から構成されて、内部に膨張用ガスを流入させて前記保護対象部位を覆うように膨張する保護膨張部を備えるエアバッグと、
膨張完了時の前記保護膨張部の前記保護対象部位からのずれを抑制可能なずれ抑制手段と、
を備える構成とされていることを特徴とする着用エアバッグ装置。
【請求項2】
前記エアバッグと、
前記装着者に装着される装着手段を有するとともに、可撓性を有したシート体から構成されて、前記エアバッグの外周側を覆うように構成されるアウタカバーと、
を、備える構成とされ、
前記ずれ抑制手段が、前記アウタカバーに対する前記エアバッグの位置ずれを抑制するように、構成されていることを特徴とする請求項1に記載の着用エアバッグ装置。
【請求項3】
前記ずれ抑制手段が、前記エアバッグの所定箇所を、前記アウタカバーに位置規制して連結させる連結手段であることを特徴とする請求項2に記載の着用エアバッグ装置。
【請求項4】
前記連結手段におけるエアバッグ側連結手段が、前記エアバッグにおける非膨張領域を貫通させるように形成される貫通孔とされ、
前記連結手段におけるアウタカバー側連結手段が、前記貫通孔に挿入させて、前記貫通孔周縁を位置規制する貫挿部材として、構成されていることを特徴とする請求項3に記載の着用エアバッグ装置。
【請求項5】
前記連結手段が、前記エアバッグの外表面側と、前記アウタカバーの内表面側と、に取り付けられて、相互に係合可能とされる係合手段から構成されていることを特徴とする請求項3に記載の着用エアバッグ装置。
【請求項6】
前記連結手段が、前記エアバッグにおける前記保護膨張部の中央側の領域から外れた位置に、配設されていることを特徴とする請求項4または5に記載の着用エアバッグ装置。
【請求項7】
前記ずれ抑制手段が、前記エアバッグの外表面側と前記アウタカバーの内表面側とにおいて対応する位置に、摩擦抵抗を大きくして相互のずれ移動を抑制可能なずれ移動抑制面部を、設けて構成されていることを特徴とする請求項2に記載の着用エアバッグ装置。
【請求項8】
前記ずれ抑制手段として、前記エアバッグと前記アウタカバーとが、外周縁における少なくとも一部を、共縫いされて、構成されていることを特徴とする請求項2に記載の着用エアバッグ装置。
【請求項9】
前記エアバッグが、膨張部位に、狭幅部と、該狭幅部の両側において幅広に構成される2つの幅広部と、を、配設させる構成とされて、
前記アウタカバーが、前記狭幅部の外周側を係止可能な係止部を、有する構成とされ、
前記狭幅部と前記係止部とが、前記ずれ抑制手段を構成していることを特徴とする請求項2に記載の着用エアバッグ装置。
【請求項10】
前記ずれ抑制手段が、前記装着者側に配設される取付目印部と、前記エアバッグ側に配設されて前記取付目印部に対応するバッグ側目印部と、前記取付目印部と前記バッグ側目印部との位置を一致させた状態で前記装着者側に前記エアバッグを取り付けるための取付手段と、を、備える構成とされていることを特徴とする請求項1に記載の着用エアバッグ装置。
【請求項11】
前記取付手段が、磁石の吸着力を利用して、前記装着者側に前記エアバッグを取り付ける構成とされていることを特徴とする請求項10に記載の着用エアバッグ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装着者の保護対象部位を保護可能に構成される着用エアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、着用エアバッグ装置としては、例えば、装着者の腰に巻き付けるように装着して、作動時に、下方に向かって突出するように膨張したエアバッグにより装着者の腰部を保護する構成のものがあった(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、着用エアバッグ装置としては、装着者の上半身に装着させるジャケットタイプとして、作動時に、内部に収納されるエアバッグを膨張させて、装着者の上半身を保護する構成のものもあった(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2019/207474号
【特許文献2】特開2015-62545公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような従来の着用エアバッグ装置は、装着者に装着させて使用する構成であることから、エアバッグを装着者に対してずれて装着させる場合もあって、エアバッグを、保護対象部位を的確に保護可能な位置で膨張させるように、装着させる点に、改善の余地があった。
【0006】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、エアバッグの装着者に対する位置ずれを抑制して、膨張完了時に保護対象部位を的確に保護可能な着用エアバッグ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る着用エアバッグ装置は、装着者の保護対象部位を保護可能に構成される着用エアバッグ装置であって、
可撓性を有したシート体から構成されて、内部に膨張用ガスを流入させて保護対象部位を覆うように膨張する保護膨張部を備えるエアバッグと、
膨張完了時の保護膨張部の保護対象部位からのずれを抑制可能なずれ抑制手段と、
を備える構成とされていることを特徴とする。
【0008】
本発明の着用エアバッグ装置では、ずれ抑制手段により、膨張するエアバッグの保護膨張部を、装着者の保護対象部位からのずれを抑制して、保護対象部位を覆うように配置させることができることから、作動時に、保護対象部位を、的確に保護することができる。
【0009】
したがって、本発明の着用エアバッグ装置では、エアバッグの装着者に対する位置ずれを抑制して、膨張完了時に保護対象部位を的確に保護することができる。
【0010】
具体的には、本発明の着用エアバッグ装置において、エアバッグと、
装着者に装着される装着手段を有するとともに、可撓性を有したシート体から構成されて、エアバッグの外周側を覆うように構成されるアウタカバーと、
を、備える構成とし、
ずれ抑制手段を、アウタカバーに対するエアバッグの位置ずれを抑制するように、構成することが、好ましい。
【0011】
着用エアバッグ装置をこのような構成とすれば、アウタカバーに対してエアバッグが位置ずれを抑制された状態で、装着者に装着させることができ、また、装着状態において装着者が動いても、エアバッグが、アウタカバーの内部で位置ずれすることを抑制できる。さらに、上記構成の着用エアバッグ装置では、エアバッグは、外周側をアウタカバーによって覆われる構成であることから、着用時の意匠性も良好である。
【0012】
具体的には、ずれ抑制手段として、エアバッグの所定箇所を、アウタカバーに位置規制して連結させる連結手段を、例示することができる。
【0013】
さらに具体的には、連結手段におけるエアバッグ側連結手段を、エアバッグにおける非膨張領域を貫通させるように形成される貫通孔とし、連結手段におけるアウタカバー側連結手段を、貫通孔に挿入させて、貫通孔周縁を位置規制する貫挿部材として、構成すれば、アウタカバーに配設される貫挿部材を、エアバッグに形成される貫通孔に挿入させれば、貫通孔周縁を位置規制することができ、エアバッグをアウタカバーに位置規制して連結させることができて、連結作業が容易である。
【0014】
また、連結手段を、エアバッグの外表面側と、アウタカバーの内表面側と、に取り付けられて、相互に係合可能とされる係合手段から構成してもよく、このような構成としても、係合手段を相互に係合させることにより、簡便にエアバッグをアウタカバーに位置規制して連結させることができる。
【0015】
そして、連結手段を、エアバッグにおける保護膨張部の中央側の領域から外れた位置に配設させる構成とすれば、エアバッグによる保護対象部位の保護性能を低減させることなく、エアバッグをアウタカバーに対して位置規制して連結させることが可能となって、好ましい。
【0016】
さらにまた、ずれ抑制手段としては、エアバッグの外表面側とアウタカバーの内表面側とにおいて対応する位置に、摩擦抵抗を大きくして相互のずれ移動を抑制可能なずれ移動抑制面部を、配設させる構成としてもよい。このような構成の着用エアバッグ装置では、単に、アウタカバー内にエアバッグを収納させるだけで、連結手段や係合手段によるエアバッグとアウタカバーとの連結作業が不要であり、また、装着時に、エアバッグがアウタカバー内においてずれ移動しようとしても、相互に対応する位置に配設されるずれ移動抑制面部により、相互のずれを的確に抑制することができる。
【0017】
さらにまた、上記構成の着用エアバッグ装置において、ずれ抑制手段として、エアバッグとアウタカバーとを、外周縁における少なくとも一部を、共縫いさせる構成とすれば、エアバッグとアウタカバーとの製造時に、同時に、エアバッグのアウタカバーに対する位置ずれを規制できることから、構成を簡便にすることができて、製造工数及びコストの増大を抑制することができる。
【0018】
さらにまた、上記構成の着用エアバッグ装置において、エアバッグを、膨張部位に、狭幅部と、狭幅部の両側において幅広に構成される2つの幅広部と、を、配設させる構成として、
アウタカバーに、狭幅部の外周側を係止可能な係止部を、配設させる構成とし、
狭幅部と係止部とを、ずれ抑制手段とする構成としてもよい。
【0019】
さらにまた、本発明の着用エアバッグ装置において、ずれ抑制手段を、装着者側に配設される取付目印部と、エアバッグ側に配設されて取付目印部に対応するバッグ側目印部と、取付目印部とバッグ側目印部との位置を一致させた状態で装着者側にエアバッグを取り付けるための取付手段と、を、備える構成とすれば、エアバッグ自体の装着者に対する位置ずれを抑制して、装着者に装着させることが可能となって、好ましい。
【0020】
具体的には、取付手段を、磁石の吸着力を利用して、装着者側にエアバッグを取り付ける構成とすれば、装着時におけるエアバッグの装着者に対する位置決めを、磁石の吸着力を利用して、簡便に行うことができ、また、着脱も容易となって、好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一実施形態である着用エアバッグ装置を、装着者に装着させた状態の概略図である。
【
図2】実施形態の着用エアバッグ装置を平らに展開した状態の平面図である。
【
図3】実施形態の着用エアバッグ装置において使用するエアバッグを平らに展開した状態の平面図である。
【
図4】実施形態の着用エアバッグ装置において、連結手段を用いてエアバッグとアウタカバーとを連結させる状態を示す概略図である。
【
図5】実施形態の着用エアバッグ装置において、装着者に装着させた状態でエアバッグが膨張を完了させた状態の概略図である。
【
図6】実施形態の着用エアバッグ装置において、エアバッグが膨張を完了させた状態を示す装着状態での前後方向に沿った概略部分横断面図(左側の概略横断面図である)。
【
図7】実施形態の着用エアバッグ装置において、エアバッグが膨張を完了させた状態を示す装着状態での概略縦断面図である。
【
図8】本発明の他の実施形態である着用エアバッグ装置を平らに展開した状態の平面図である。
【
図9】本発明のさらに他の実施形態である着用エアバッグ装置を平らに展開した状態の部分拡大平面図である。
【
図11】本発明のさらに他の実施形態である着用エアバッグ装置を平らに展開した状態の部分拡大平面図である。
【
図13】本発明のさらに他の実施形態である着用エアバッグ装置において使用するアウタカバーとエアバッグとを並べた状態の平面図である。
【
図14】
図13の着用エアバッグ装置を平らに展開した状態の部分拡大平面図である。
【
図17】本発明のさらに他の実施形態である着用エアバッグ装置を、装着者に装着させた状態の概略図である。
【
図18】
図17の着用エアバッグ装置を平らに展開させた状態を示す平面図である。
【
図19】
図17の着用エアバッグ装置において、装着状態における取付手段の部位付近を示す概略部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。実施形態では、
図1に示すように、装着者Mの腰部MWの周囲(詳細には、骨盤MPの周囲)に巻き付けるように装着するタイプの着用エアバッグ装置S1を例に採り、説明をする。実施形態では、上下,前後,左右の方向は、特に断らない限り、装着者Mに装着させた状態での装着者Mの上下,前後,左右の方向と一致するものである。
【0023】
着用エアバッグ装置S1は、
図1,2に示すように、エアバッグ10と、エアバッグ10に膨張用ガスを供給するガス発生器5と、装着者Mの転倒を検知するセンサ部2とを備えてガス発生器5を作動させる作動制御装置1と、エアバッグ10の外周側を覆うアウタカバー20と、エアバッグ10とアウタカバー20とを連結させる連結手段(ずれ抑制手段)CMと、を、備える構成とされている。着用エアバッグ装置S1では、エアバッグ10は、平らに展開した状態で、アウタカバー20の内部に収納されている。
【0024】
作動制御装置1は、上下前後左右の3軸回りの角速度を検知可能な角速度センサと、3軸方向の加速度を検知可能な加速度センサと、を有するセンサ部2を、備えるとともに、センサ部2からの信号によって、装着者Mの通常動作と異なる転倒動作を検知すると、ガス発生器5を作動させるように、構成されている。具体的には、装着者Mが通常動作と異なった転倒動作を開始していると、作動制御装置1は、種々の閾値から判定可能な判定手段を備えていることから、その判定手段の判定に基づいて装着者Mの転倒を検出し、ガス発生器5を作動させることとなる。この作動制御装置1には、センサ部2の作動用やガス発生器5の作動用の信号の出力のために、図示しない電池等からなる電源が、内蔵されている。
【0025】
エアバッグ10は、可撓性を有したシート体から形成されるもので、実施形態の場合、ポリエステル糸やポリアミド糸等からなる織布から形成されている。このエアバッグ10は、アウタカバー20における後述する巻付部位22を利用して、骨盤MPの周囲に巻き付けられるようにして、装着者Mに装着される構成である。実施形態の場合、エアバッグ10は、装着状態において、装着者Mの腰部MWの左右の側方を覆うように、配置される(
図1参照)。エアバッグ10は、
図2に示すように、外形形状を略同一として、装着時に装着者M側(内側)に配置される内側壁部10aと、外側に配置される外側壁部10bと、を有し、内側壁部10aと外側壁部10bとの周縁相互を、縫着(結合)させることにより、膨張完了形状を略板状とした袋状とされている。実施形態の場合、エアバッグ10は、
図1,2に示すように、膨張完了時に装着者Mの腰部MWの左右の側方を覆う2つの保護膨張部13(13L,13R)と、保護膨張部13の上端13a相互を連通する連通路部12と、を備えている。エアバッグ10は、平らに展開した状態で、左右対称形とされている。
【0026】
連通路部12は、膨張完了形状を、左右方向に略沿った略棒状として構成されるもので、アウタカバー20における後述する巻付部位22の領域内に配置される構成である。この連通路部12は、実施形態の場合、詳細な図示は省略するが、エアバッグ10の膨張完了時に、装着者Mの骨盤MPの後側となる位置に、配置される構成である。実施形態では、この連通路部12の部位に、ガス発生器5が、エアバッグ10の内部に膨張用ガスを供給可能に連結されている(
図2参照)。ガス発生器5は、詳細な図示を省略するが、連通路部12の長手方向の中央付近に配置されるもので、内部に圧縮ガスを封入させて構成されて、作動時に、封入状態を解除されて、エアバッグ10内にコールドガスを噴出可能な構成とされている。このガス発生器5は、上述した作動制御装置1と電気的に接続されており、装着者Mの転倒を検知した作動制御装置1からの作動信号を入力させて、作動される構成である。
【0027】
保護膨張部13(13L,13R)は、エアバッグ10を平らに展開した状態で、上端13aを、連通路部12の上縁よりも僅かに下方に位置させるように、連通路部12に対して段差を設けられるようにして、配置されるもので、連通路部12から左右の外方に延びつつ下方に延びるように、形成されている。各保護膨張部13(13L,13R)は、装着時に、保護対象部位としての大腿骨転子部TPの周囲を、外側を含めて広く覆い可能に、平らに展開した状態の外形形状を、装着状態における前後方向側で幅広とし、かつ、下端13b側にかけてやや狭幅に構成される略台形状とされている。具体的には、各保護膨張部13は、エアバッグ10の膨張完了時に、
図6,7に示すように、装着者Mの骨盤MPの側方から大腿骨転子部TPの下方(転子下)にかけての領域を、広く覆うように、構成されている。
【0028】
また、実施形態のエアバッグ10では、各保護膨張部13(13L,13R)における外周縁を構成する周縁部位15(非膨張領域)に、アウタカバー20側に形成される後述する連結ベルト部27を挿通可能な貫通孔16が、形成されている。貫通孔16は、実施形態の場合、各保護膨張部13(13L,13R)の周縁部位15において、装着時に、連通路部12側となる上後端側を除いた三方の隅部、すなわち、装着状態における上前縁15a側と、下前縁15b側と、下後縁15c側と、に、それぞれ、上下方向に略沿ったスリット状として、形成されている(
図3参照)。
【0029】
アウタカバー20は、エアバッグ10を構成する基布よりも触感の良好な可撓性を有した織布から形成されるもので、実施形態の場合、ポリエステル製の織布から形成されている。アウタカバー20は、外形形状を略同一として、装着時に内側(装着者M側)に配置される内側壁部20aと、装着時に外側に配置される外側壁部20bと、を有し、内側壁部20aと外側壁部20bとの外周縁相互を結合(縫着)させることにより、袋状とされるもので、内部でエアバッグ10を円滑に膨張可能なように、平らに展開した状態の外形形状を、平らに展開した状態でのエアバッグ10よりも若干大きく設定されている。アウタカバー20は、
図2に示すように、上縁側に配置されて装着者Mの骨盤MPの上側の領域の周囲に巻き付けられる略帯状の巻付部位22と、巻付部位22から下方に延びるように形成されてそれぞれ各保護膨張部13(13L,13R)の外周側を覆う2つのメインカバー部25(25L,25R)と、を備える構成とされている。巻付部位22の端部22a,22b側には、装着手段としての一対の面状ファスナー23が、配設されている。面状ファスナー23は、それぞれ、巻付部位22の端部22a,22b側に配置される鉤状側部23aとループ側部23bとを有して、巻付部位22の端部22a,22b相互を連結可能に構成されている。メインカバー部25L,25Rは、巻付部位22から下方に延びるように形成されるもので、それぞれ、内部で保護膨張部13(13L,13R)を円滑に膨張可能なように、平らに展開した状態の外形形状を、保護膨張部13よりも大きくして、保護膨張部13と略相似形とするように、構成されている。
【0030】
また、アウタカバー20の内周面側には、エアバッグ10の各保護膨張部13の周縁部位を連結可能な連結ベルト部27(貫挿部材)が、配設されている。連結ベルト部27は、各保護膨張部13の周縁部位15に形成される貫通孔16に対応して、それぞれ、各メインカバー部25(25L,25R)における上前縁25a側と、下前縁25b側と、下後縁25c側と、の3箇所に、形成されている。各連結ベルト部27は、貫通孔16に挿入させて、貫通孔16周縁で結合可能に構成されるもので、アウタカバー20の縁部側から延びて貫通孔16に挿通可能なベルト本体28と、結合手段としてベルト本体28の元部28a側と先端28b側とに配置される一対の面状ファスナー29と、を備えている。面状ファスナー29は、ベルト本体28の元部28a側と先端28b側とにそれぞれ配設される一対の鉤状側部29aとループ側部29bとから構成されるもので、ベルト本体28を貫通孔16に挿通させた状態で、鉤状側部29aとループ側部29bとを相互に結合させることにより、ベルト本体28を各保護膨張部13の周縁部位15に連結可能に構成されている(
図2,4参照)。
【0031】
実施形態の着用エアバッグ装置S1では、エアバッグ10とアウタカバー20とを連結させる連結手段CMとして、上述したごとく、各保護膨張部13の周縁部位15(非膨張領域)に、貫通孔16(エアバッグ側連結手段)を配設させ、メインカバー部25の内周面側に、連結ベルト部27(アウタカバー側連結手段)を配設させる構成とされている。この連結手段CMにより、エアバッグ10における各保護膨張部13は、外周縁側において、連通路部12側を除いた三方の隅部付近を、アウタカバー20におけるメインカバー部25に位置規制して連結されて、エアバッグ10が、アウタカバー20に対する位置ずれを抑制されている。
【0032】
実施形態の着用エアバッグ装置S1は、アウタカバー20における巻付部位22の端部22a,22b相互を、装着手段としての面状ファスナー23を利用して連結させることにより、装着者Mの腰部MW(骨盤MP)の周囲に巻き付けられるようにして、装着者Mに装着されることとなる(
図1参照)。実施形態の着用エアバッグ装置S1では、装着者Mに装着させた状態で、センサ部2が、装着者Mの転倒を検知すれば、作動制御装置1からガス発生器5に作動信号が出力されて、エアバッグ10の内部に膨張用ガスが流入することとなり、エアバッグ10が、
図5~7に示すように膨張を完了させることとなる。
【0033】
そして、実施形態の着用エアバッグ装置S1では、ずれ抑制手段としての連結手段CMにより、膨張するエアバッグ10の保護膨張部13を、装着者Mの保護対象部位としての大腿骨転子部TPからのずれを抑制して、大腿骨転子部TPを覆うように配置させることができることから、作動時に、大腿骨転子部TPを、的確に保護することができる。
【0034】
したがって、実施形態の着用エアバッグ装置S1では、エアバッグ10の装着者Mに対する位置ずれを抑制して、膨張完了時に保護対象部位としての大腿骨転子部TPを的確に保護することができる。
【0035】
具体的には、実施形態の着用エアバッグ装置S1は、エアバッグ10と、エアバッグ10の外周側を覆うアウタカバー20と、を備える構成として、アウタカバー20に形成される装着手段としての面状ファスナー23を利用して、装着者Mに装着させる構成であり、ずれ移動手段としての連結手段CMは、アウタカバー20に対するエアバッグ10の位置ずれを抑制するように、構成されている。そのため、実施形態の着用エアバッグ装置S1は、アウタカバー20に対してエアバッグ10が位置ずれを抑制された状態で、装着者Mに装着させることができ、また、装着状態において装着者Mが動いても、エアバッグ10が、アウタカバー20の内部で位置ずれすることを抑制できる。さらに、実施形態の着用エアバッグ装置S1では、エアバッグ10は、外周側をアウタカバー20によって覆われる構成であることから、着用時の意匠性も良好である。
【0036】
また、実施形態の着用エアバッグ装置S1では、連結手段CMにより、エアバッグ10の所定箇所を、アウタカバー20に位置規制して連結させる構成であり、連結手段CMとしては、エアバッグ10側に、エアバッグ側連結手段として、保護膨張部13における周縁部位15(非膨張領域)を貫通させるように、貫通孔16が形成され、アウタカバー20側に、アウタカバー側連結手段として、貫通孔16に挿入させて貫通孔16周縁を位置規制する貫挿部材としての連結ベルト部27が、形成されている。そのため、アウタカバー20に配設される連結ベルト部27を、エアバッグ10に形成される貫通孔16に挿入させて周縁で結合させれば、エアバッグ10における貫通孔16周縁を位置規制することができ、エアバッグ10をアウタカバー20に位置規制して連結させることができて、連結作業が容易である。なお、実施形態では、貫挿部材として、ベルト本体28と、ベルト本体28の元部28a側と先端28b側とに配置される一対の面状ファスナー29(結合手段)と、を備える連結ベルト部27が、用いられており、この連結ベルト部27は、ベルト本体28を貫通孔16に挿入させた状態で、面状ファスナー29を結合させることにより、貫通孔16周縁を位置規制する構成である。貫挿部材は、実施形態に限定されるものではなく、例えば、貫通孔に挿通可能で、かつ、挿通後に貫通孔周縁で結合(係止)可能なボタン状のものや、ひも状として貫通孔の周縁で接結可能な構成のものを、使用してもよい。
【0037】
また、着用エアバッグ装置S2として、
図8に示すものを使用してもよい。着用エアバッグ装置S2は、エアバッグ10Aと、エアバッグ10Aに膨張用ガスを供給するガス発生器5と、装着者Mの転倒を検知するセンサ部2とを備えてガス発生器5を作動させる作動制御装置1と、エアバッグ10Aの外周側を覆うアウタカバー20Aと、エアバッグ10Aとアウタカバー20Aとを連結させる連結手段CMとしての係合手段37と、を、備える構成とされている。作動制御装置1とガス発生器5とは、前述の着用エアバッグ装置S1における作動制御装置1及びガス発生器5と同一であることから、詳細な説明を省略する。この着用エアバッグ装置S2では、連結手段CMとしての係合手段37と、アウタカバー20Aが上縁20c側を開閉可能に構成される以外は、前述の着用エアバッグ装置S1と略同一の構成であり、同一の部材には、同一の図符号の末尾に「A」を付して、詳細な説明を省略する。着用エアバッグ装置S2では、アウタカバー20Aは、ファスナー等の締結具によって、上縁20c側を全長にわたって開閉可能に、構成されている。
【0038】
エアバッグ10Aとアウタカバー20Aとを連結させる連結手段CMとしての係合手段37は、エアバッグ10Aの外表面側とアウタカバー20Aの内表面側とに取り付けられる一対として、相互に係合可能とされるもので、実施形態の場合、一対のスナップボタンから、構成されている。詳細には、係合手段37は、相互に係合可能な雄側部材37aと雌側部材37bとを有する一対として、雄側部材37aと雌側部材37bとを、それぞれ、各保護膨張部13Aにおける外側壁部10bの外表面側と、メインカバー部25Aにおける外側壁部20bの内表面側と、に配設されるもので、具体的には、前述の着用エアバッグ装置S1における連結手段CMと同様の位置、すなわち、各保護膨張部13Aの周縁部位15Aにおける連通路部12A側を除いた三方の隅部付近となる3箇所に、配設されている。
【0039】
このような構成の着用エアバッグ装置S2においても、エアバッグ10A(保護膨張部13A)の外表面側とアウタカバー20A(メインカバー部25A)の内表面側とに配設される連結手段CMとしての係合手段37を相互に係合させることにより、簡便にエアバッグ10Aをアウタカバー20Aに位置規制して連結させることができる。実施形態では、係合手段37として、一対のスナップボタンを使用しているが、スナップボタンは単なる例示であり、係合手段としては、例えば、一対の面状ファスナーや、雄側部材と雌側部材とからなる一対のホック等を使用することができる。
【0040】
また、このような構成の着用エアバッグ装置S2では、アウタカバー20Aの上縁20c側を、締結具35によって開閉可能に構成されていることから、エアバッグ10Aを、アウタカバー20Aから取り外して取り出すことができ(
図8の二点鎖線参照)、エアバッグ10Aを取り外してアウタカバー20Aを洗濯することも容易に可能である。そして、この着用エアバッグ装置S2では、エアバッグ10Aとアウタカバー20Aとは、スナップボタンからなる係合手段37により連結されていることから、エアバッグ10Aのアウタカバー20Aに対する着脱が容易である。
【0041】
着用エアバッグ装置S1,S2では、連結手段CMは、エアバッグ10,10Aにおける保護膨張部13,13Aの中央側の領域から外れた位置、具体的には、周縁部位15,15Aに配設される構成である。そのため、エアバッグ10,10Aによる保護対象部位(大腿骨転子部TP)の保護性能を低減させることなく、エアバッグ10,10Aをアウタカバー20,20Aに対して位置規制して連結させることができる。なお、このような点を考慮しなければ、連結手段は、エアバッグにおける保護膨張部の中央側の領域に、配設させる構成としてもよい。
【0042】
特に、実施形態の着用エアバッグ装置S1,S2では、連結手段CMは、エアバッグ10,10Aの各保護膨張部13,13Aにおける連通路部12,12A側を除いた三方の隅付近に配設される構成であり、すなわち、各保護膨張部13,13Aは、アウタカバー20,20Aの巻付部位22,22A内で膨張する連通路部12,12A側を含めて、四隅付近を、アウタカバー20,20A(メインカバー部25,25A)側に連結される構成である。そのため、装着時に、保護膨張部13,13Aが、メインカバー部25,25Aに対して位置ずれすることを、極力防止できる。勿論、連結手段の配置位置や配置数は実施形態に限定されるものではなく、上側の領域のみや、下側の領域のみ等に、配置させる構成としてもよい。
【0043】
また、着用エアバッグ装置S3としては、
図9,10に示す構成のものを使用してもよい。着用エアバッグ装置S3は、エアバッグ10Bとアウタカバー20Bとに、ずれ抑制手段として、ずれ移動抑制面部40を配設させている以外は、前述の着用エアバッグ装置S1と同様の構成である。ずれ移動抑制面部40は、エアバッグ10Bの外側壁部10bの外表面側と、アウタカバー20Bにおける外側壁部20bの内表面側と、に、配設されるもので、相互に対応する位置(平らに展開した状態で重なる位置)であって、具体的には、各保護膨張部13B,メインカバー部25Bの前後左右の略中央となる領域に、配設されている。ずれ移動抑制面部40は、外側壁部10bの外表面と、外側壁部20bの内表面と、に、それぞれ、ゴム(合成ゴムや天然ゴム)等、外側壁部10b,20bを構成する織布よりも摩擦抵抗の大きな基材を塗布させることにより、構成される。
【0044】
このような構成の着用エアバッグ装置S3では、単に、アウタカバー20B内にエアバッグ10Bを収納させるだけで、連結手段や係合手段によるエアバッグ10Bとアウタカバー20Bとの連結作業が不要であり、また、装着時に、エアバッグ10Bがアウタカバー20B内においてずれ移動しようとしても、相互に対応する位置に配設されるずれ移動抑制面部40,40により、相互のずれを的確に抑制することができる。
【0045】
着用エアバッグ装置S4としては、
図11,12に示す構成のものを使用してもよい。着用エアバッグ装置S4では、エアバッグ10Cを構成する内側壁部10a,外側壁部10bと、アウタカバー20Cを構成する内側壁部20a,外側壁部20bと、が、巻付部位22Cの端部側の領域を除いて外形形状を略同一として、外周縁相互を全周にわたって共縫いされて、構成されている。そして、このエアバッグ10Cとアウタカバー20Cとの外周縁相互を共縫いにより結合させている結合部位45が、ずれ抑制手段を、構成している。
【0046】
このような構成の着用エアバッグ装置S4では、エアバッグ10Cとアウタカバー20Cとの製造時に、同時に、エアバッグ10Cのアウタカバー20Cに対する位置ずれを規制できることから、構成を簡便にすることができて、製造工数及びコストの増大を抑制することができる。なお、実施形態では、エアバッグ10Cは、外周縁側を、全周にわたって、アウタカバー20Cと共縫いされているが、外周縁の一部のみをアウタカバーと共縫いして形成する構成としてもよい。
【0047】
また、着用エアバッグ装置S5として、
図13~16に示す構成のものを使用してもよい。着用エアバッグ装置S5は、エアバッグ50と、エアバッグ50の外周側を覆うアウタカバー60と、図示しないガス発生器及び作動制御装置と、を備えている。この着用エアバッグ装置S5においても、エアバッグ50は、平らに展開された状態で、アウタカバー60内に配置されている。
【0048】
エアバッグ50は、
図13に示すように、前述のエアバッグ10と同様に、外形形状を略同一として、装着時に装着者M側(内側)に配置される内側壁部50aと、外側に配置される外側壁部50bと、を有し、内側壁部50aと外側壁部50bとの周縁相互を、縫着(結合)させることにより、膨張完了形状を略板状とした袋状とされている。実施形態の場合、エアバッグ50は、膨張完了時に装着者Mの腰部MWの左右の側方を覆う2つの保護膨張部53(53L,53R)と、図示しないガス発生器を連結させて各保護膨張部53側に膨張用ガスを供給するガス供給路部52と、各保護膨張部53とガス供給路部52とを連通させる連通部54(54L,54R)と、を備える構成とされている。ガス供給路部52は、エアバッグ50の上端50c側において、エアバッグ50の左右方向の略全域にわたって配設されるもので、膨張完了形状を、左右方向に略沿った棒状とされる。各保護膨張部53(53L,53R)は、ガス供給路部52の左右方向の端部52a,52b近傍の下方に配設されるもので、平らに展開した状態の外形形状を、下端側にかけてやや狭幅に構成される略台形状とされている。連通部54(54L,54R)は、各保護膨張部53の上端53a側を、ガス供給路部52の左右方向側の端部52a,52b付近と連通させるように、配設されている。各連通部54は、各保護膨張部53の上端53a側よりも狭幅として、各保護膨張部53の幅方向の中央付近から上方に延びるように形成されている。ガス供給路部52は、エアバッグ50を平らに展開した状態において、連通部54よりも左右の外方に突出するように、形成されている。すなわち、実施形態のエアバッグ50では、各保護膨張部53とガス供給路部52との間に、相対的に狭幅とされる連通部54が、配設される構成である。さらに換言すれば、実施形態のエアバッグ50では、狭幅の連通部54の上下両側に、相対的に幅広の保護膨張部53とガス供給路部52とが配設される構成であり、この連通部54は、狭幅部として、ずれ抑制手段を構成している。
【0049】
アウタカバー60は、前述の着用エアバッグ装置S1におけるアウタカバー20と同様に、エアバッグ50を構成する基布よりも触感の良好な可撓性を有した織布から形成されるもので、外形形状を略同一として、装着時に内側(装着者M側)に配置される内側壁部60aと、装着時に外側に配置される外側壁部60bと、を有し、内側壁部60aと外側壁部60bとの外周縁相互を結合(縫着)させることにより、袋状とされている。アウタカバー60は、
図13に示すように、上縁側に配置される略帯状の巻付部位62と、各保護膨張部53を内部に収納させる保護膨張部収納部65(65L,65R)と、巻付部位62と各保護膨張部収納部65との間に配置されて連通部54を内部に収納させる連結部位66(66L,66R)と、を備える構成とされている。巻付部位62の端部62a,62b側には、前述の着用エアバッグ装置S1におけるアウタカバー20と同様に、装着手段としての一対の面状ファスナー23が、配設されている。
【0050】
各保護膨張部53を収納させる保護膨張部収納部65は、平らに展開した状態の保護膨張部53を内部に収納させて、内部で保護膨張部53を膨張可能に、平らに展開した状態の外形形状を、保護膨張部53よりもわずかに大きくして、保護膨張部53と略相似形として構成されている。連通部54を内部に収納させる連結部位66は、平らに展開した状態の連通部54を内部に収納可能な幅寸法とし、かつ、平らに展開した状態の保護膨張部53よりも狭幅とするように、構成されている。そして、実施形態では、エアバッグ50は、アウタカバー60の内部に収納された状態で、連通部54を連結部位66内に収納させることにより、アウタカバー60に対する位置ずれを抑制された状態で、アウタカバー60内に収納される構成であり、アウタカバー60において連通部54の周縁に配設される周縁部位67、すなわち、巻付部位62の下縁62cと保護膨張部収納部65の上縁65aとを含めた連結部位66の縁部66aが、エアバッグ50を内部に収納させた際に、狭幅部としての連通部54の外周側を係止させる係止部を、構成している。
【0051】
このような構成の着用エアバッグ装置S5においても、エアバッグ50は、保護膨張部53とガス供給路部52との間で部分的に狭幅に構成されている連通部54(狭幅部)を、対応して部分的に狭幅とされる連結部位66に挿入させ、この連結部位66の周縁部位67係止部)に係止させるようにして、アウタカバー60内に収納されていることから、エアバッグ50が、アウタカバー60に対して、位置ずれされた状態で、装着者に装着されることを抑制でき、また、装着状態において装着者が動いても、エアバッグ50が、アウタカバー60の内部で位置ずれすることを、的確に抑制できる。
【0052】
さらに、着用エアバッグ装置S6として、
図17~19に示す構成のものを、使用してもよい。着用エアバッグ装置S6は、上述した着用エアバッグ装置S1と同様の構成として、この構成に加えて、さらに、ずれ抑制手段を、備える構成とされている。ずれ抑制手段は、装着者M側に配置される取付目印部(実施形態の場合、装着者Mの着衣CのボタンB)と、エアバッグ10側に配設されるバッグ側目印部としての面状ファスナー23(具体的には、面状ファスナー23のループ側部23b)と、装着者M側にエアバッグ10を取り付けるための取付手段77と、を備えている。巻付部位22の端部22a側において、バッグ側目印部としての面状ファスナー23のループ側部23bの内側には、板金プレート75が、配設されている。この板金プレート75は、後述するマグネット78A,78Bに吸着可能な素材から構成されている。この着用エアバッグ装置S6は、ループ側部23b(バッグ側目印部)の位置を、着衣CのボタンB(取付目印部)の位置に一致させるようにして、巻付部位22を利用して、アウタカバー20を腰部MWの周囲に巻き付けた状態で、取付手段77によって、装着者M側にエアバッグ10(実施形態の場合、アウタカバー20)を、取り付ける構成である。
【0053】
取付手段77は、着用エアバッグ装置S6を装着者Mに装着させた状態で、装着者Mにおける着衣C(例えば、ズボン)と、着用エアバッグ装置S6における巻付部位22の端部側の部位(面状ファスナー23の配置位置であって、板金プレート75の配置部位)を、表裏両側から挟持させることにより、装着者M側に、エアバッグ10(アウタカバー20)を取り付けるもので、挟持部79と、挟持部79の両端側に配置される2つのマグネット78A,78Bと、を有する構成とされている。取付手段77による挟持時に、バッグ側目印部としてのループ側部位23bに対応した位置に配置される板金プレート75は、マグネット78A,78Bに吸着されることとなる。すなわち、バッグ側目印部としてのループ側部位23bの位置を、取付側目印部としてのボタンBの位置に一致させるようにして、アウタカバー20を腰部MWの周囲に巻き付けた状態で、取付手段77により、着衣C(ボタンB)とアウタカバー20(巻付部位22)に周囲を覆われた板金プレート75とを挟持させれば、着用エアバッグ装置S6は、装着者Mの着衣Cに対する位置ずれを抑制された状態で、装着者Mに装着させることができる。
【0054】
このような構成の着用エアバッグ装置S6では、上述したごとく、着用エアバッグ装置S6自体(すなわち、エアバッグ10自体)の装着者Mに対する位置ずれを抑制して、装着者Mに装着させることができる。特に、実施形態の着用エアバッグ装置S6では、マグネット78A,78Bを備える取付手段77が、装着者M側にエアバッグ10(実際には、アウタカバー20の巻付部位22)を取り付ける構成であることから、装着時におけるエアバッグ10(アウタカバー20)の装着者Mに対する位置決めを、磁性体(マグネット)の磁力を利用して、簡便に行うことができ、また、着脱も容易となる。なお、取付目印部としては、例えば、装着者Mが使用しているベルトのバックル等を利用することもでき、取付手段を、バッグ側目印部としての面状ファスナーの位置の内部側に配置される磁性体からなる板材から構成してもよく、この場合、板材にバックルを吸着させれば、取付目印部とバッグ側目印部との位置を一致させることができると同時に、装着者側にエアバッグを取り付けることができる。
【0055】
実施形態の着用エアバッグ装置S1~S6では、エアバッグ10,10A,10B,10C,50の2つの保護膨張部13,13A,13B,13C,53によって、装着者Mの大腿骨TBの付け根付近(大腿骨転子部TP)を安定して保護できることから、装着者Mが、転倒によって、治療の長引く大腿骨TBを骨折することを、抑制することができ、高齢者に好適に使用することができる。
【0056】
なお、実施形態の着用エアバッグ装置S1~S6では、腰部MW(骨盤MP)の周囲に巻き付けるように装着させて、アウタカバー20,20A,20B,20C,60の内部に平らに展開したした状態で収納させたエアバッグ10,10A,10B,10C,50を、装着者Mの腰部MW(大腿骨転子部TP)を保護するように膨張させる構成のものを、例に採り説明しているが、本発明を適用可能な着用エアバッグ装置は、実施形態に限定されるものではない。エアバッグを折り畳んだ状態でアウタカバーの内部に収納させ、腰部(骨盤)の周囲に巻き付けるように装着させるタイプの着用エアバッグ装置にも、本発明は適用可能である。また、ベストやジャケット等、装着者の胴部に着用させて、着用状態の下端側から腰部を保護するようにエアバッグを突出させて膨張させるタイプや、着用状態の上端から、頭部を保護するようにエアバッグを突出させて膨張させるタイプの着用エアバッグ装置にも、本発明は適用可能である。
【符号の説明】
【0057】
5…ガス発生器、10,10A,10B,10C…エアバッグ、13,13A,13B,13C…保護膨張部、15…周縁部位(非膨張領域)、16…貫通孔(エアバッグ側連結手段)、20,20A,20B,20C…アウタカバー、27…連結ベルト部(貫挿部材、アウタカバー側連結手段)、23…面状ファスナー(バッグ側目印部)、37…係合手段、40…ずれ移動抑制面部(ずれ抑制手段)、45…結合部位(ずれ抑制手段)、50…エアバッグ、52…ガス供給路部(幅広部)、53…保護膨張部(幅広部)、54…連通部(狭幅部、ずれ抑制手段)、60…アウタカバー、67…周縁部位(係止部、ずれ抑制手段)、75…板金プレート、77…取付手段、CM…連結手段(ずれ抑制手段)、C…着衣、B…ボタン(取付目印部)、M…装着者、MW…腰部、TP…大腿骨転子部(保護対象部位)、S1,S2,S3,S4,S5,S6…着用エアバッグ装置。