(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022131632
(43)【公開日】2022-09-07
(54)【発明の名称】粘着テープ
(51)【国際特許分類】
C09J 7/38 20180101AFI20220831BHJP
C09J 201/00 20060101ALI20220831BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J201/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021030664
(22)【出願日】2021-02-26
(71)【出願人】
【識別番号】390003562
【氏名又は名称】株式会社ニトムズ
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】特許業務法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】沼津 靖弘
【テーマコード(参考)】
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4J004AB01
4J004CB02
4J004CC06
4J004EA01
4J040JA09
4J040JB09
4J040LA06
4J040NA05
(57)【要約】
【課題】製造工程でミシン目を形成する際には、ミシン目で破断されてしまうことを抑制し、ユーザーの使用時にはミシン目での切り離しを行いやすい粘着テープの提供。
【解決手段】ミシン目4が、粘着テープ1の長手方向で一方側領域と他方側領域とが分断されている複数の分断部41と、前記粘着テープ1の幅方向で隣り合う前記分断部41,41の間に位置し、前記粘着テープ1の長手方向で前記一方側領域と前記他方側領域とがつながっている接続部42と、前記粘着テープ1の長手方向で前記一方側領域と前記他方側領域とがつながっていて、前記接続部42よりも破断強度が小さい弱接続部43と、を有し、前記接続部42と前記弱接続部43とが前記粘着テープ1の幅方向で隣り合う組を少なくとも1組有する粘着テープである。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状体であって、一方側の面に粘着剤層を有し、幅方向の一端縁と他端縁とを結ぶミシン目を有し、当該ミシン目で長手方向に隣り合う一方側領域と他方側領域とを切り離すことができる粘着テープであって、
前記ミシン目は、前記粘着テープの長手方向で前記一方側領域と前記他方側領域とが分断されている複数の分断部と、
前記粘着テープの幅方向で隣り合う前記分断部の間に位置し、前記粘着テープの長手方向で前記一方側領域と前記他方側領域とがつながっている接続部と、
前記粘着テープの幅方向で隣り合う前記分断部の間のうちで前記接続部の設けられていない部分に位置し、前記粘着テープの長手方向で前記一方側領域と前記他方側領域とがつながっていて、前記接続部よりも破断強度が小さい弱接続部と、を有し、
前記接続部と前記弱接続部とが前記粘着テープの幅方向で隣り合う組を少なくとも1組有する粘着テープ。
【請求項2】
2箇所の前記接続部が少なくとも1箇所の前記弱接続部を挟むように、前記粘着テープの幅方向で並ぶ組を少なくとも1組有する、請求項1に記載の粘着テープ。
【請求項3】
前記弱接続部は、前記粘着テープの厚み方向で途中まで分断されたハーフカットにより構成されている、請求項1または2に記載の粘着テープ。
【請求項4】
前記帯状体が長手方向に巻かれて積層されることでロール状体とされており、
径方向で外側の層と内側の層とでは、前記ミシン目が周方向にずれている、請求項1~3のいずれかに記載の粘着テープ。
【請求項5】
前記接続部が、前記粘着テープの幅方向における寸法で0.1~6.0mmとされた、請求項1~4のいずれかに記載の粘着テープ。
【請求項6】
前記弱接続部が、前記粘着テープの幅方向における寸法で0.1~6.0mmとされた、請求項1~5のいずれかに記載の粘着テープ。
【請求項7】
前記接続部と前記弱接続部の合計が幅方向に3箇所~24箇所設けられており、
そのうち前記弱接続部が1箇所~8箇所である、請求項5または6に記載の粘着テープ。
【請求項8】
基材上に前記粘着剤層が形成されており、前記基材が再生紙から構成されている、請求項1~7のいずれかに記載の粘着テープ。
【請求項9】
前記帯状体が長手方向に巻かれて積層されることでロール状体とされており、
前記ミシン目を見出すための目印を備えた、請求項1~8のいずれかに記載の粘着テープ。
【請求項10】
前記帯状体が長手方向に巻かれて積層されることでロール状体とされており、
前記一方側領域を前記他方側領域から切り離す場合、前記他方側領域の長手方向端部で前記ミシン目に沿って補強テープが貼付された、請求項1~9のいずれかに記載の粘着テープ。
【請求項11】
前記帯状体が巻芯に対して長手方向に巻かれて積層されることでロール状体とされており、
前記ロール状体の外径は、前記巻芯の内径に対する比で1.5以上である、請求項1~10のいずれかに記載の粘着テープ。
【請求項12】
帯状体であって、一方側の面に粘着剤層を有し、幅方向の一端縁と他端縁とを結ぶミシン目を有し、当該ミシン目で長手方向に隣り合う一方側領域と他方側領域とを切り離すことができる粘着テープであって、
前記ミシン目が設けられた部分における破断強度が、幅寸法160mm当たりで、15.0Nを超え60.6N未満である粘着テープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば清掃対象物に当接させることにより、清掃対象物の表面の塵埃等を除去できる粘着テープに関するものである。
【背景技術】
【0002】
前記粘着テープとして、長手方向に巻かれて積層されることでロール状体とされたものがある。このロール状体を、床面等の清掃対象物の表面で転がすことにより、清掃対象物の表面の塵埃等をロール状体の外周面に露出した粘着剤層に付着させることで、清掃対象物の表面から除去できる。
【0003】
粘着テープは、幅方向の一端縁と他端縁とを結ぶミシン目を有している。このミシン目で、粘着テープの長手方向に隣り合う一方側領域と他方側領域とを切り離すことができる。従って、ロール状体から粘着テープを巻きほどいた上でミシン目にて切り離すことにより、塵埃等に覆われて付着力が弱くなった粘着テープを取り払うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、製造工程で粘着テープにミシン目を入れる際、従来は、粘着テープを巻き取ってロール状体としてから、切断刃物を用いて半径方向に一度に切れ目を入れるようにしていた。しかしこのようなミシン目の入れ方では、周方向の一か所にミシン目が位置するため、塵埃がロール状体の内部まで入り込んで汚れてしまいやすい。また、断面形状が略真円形状であったものが、経時によりミシン目の部分で略V字状に屈曲して、この屈曲が径外側を向くように変化し、例えば液滴形状のような折れ曲がった部分のある不規則形状に変化してしまい、清掃対象物の表面をスムーズに転がせなくなる。また、内外層で全て同じ位置にミシン目が存在するため、例えばユーザーが誤って2枚の粘着テープを剥がしてしまう等のことが生じて、粘着テープの巻きほどきを行いにくい。これらのデメリットがあった。
【0006】
そこで、特許文献1のように、ロール状体の内外層で異なる位置にミシン目を形成した構成が提案された。この構成により前述のデメリットは解消された。しかしこの構成では、ミシン目を周方向の一か所に設けることができないので、巻き取ってロール状体とする前の粘着テープにミシン目を形成する必要がある。
【0007】
つまり、粘着テープを機械で巻き取りながら、1枚のシート状である粘着テープにミシン目を入れていくため、ミシン目におけるつなぎ個所(ミシン目のスリット間で、粘着テープが長手方向につながった部分)が少ないと、巻き取り中に粘着テープが破断してしまいやすい。粘着テープが破断すると機械での巻き取りを中断せざるをえないので、ロール状体の製造効率が悪くなる。粘着テープの基材の材質によっては(例えば、比較的破断強度が小さい再生紙を用いた場合)、この問題が顕著に発生する。一方、ユーザーの使用時においては、つなぎ個所が少ないほうがミシン目での切り離しを行いやすい。このように、相反した事情が存在する。
【0008】
前記事情に鑑み、本発明は、製造工程でミシン目を形成する際には、ミシン目で破断されてしまうことを抑制し、一方、ユーザーの使用時にはミシン目での切り離しを行いやすい粘着テープを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、帯状体であって、一方側の面に粘着剤層を有し、幅方向の一端縁と他端縁とを結ぶミシン目を有し、当該ミシン目で長手方向に隣り合う一方側領域と他方側領域とを切り離すことができる粘着テープであって、前記ミシン目は、前記粘着テープの長手方向で前記一方側領域と前記他方側領域とが分断されている複数の分断部と、前記粘着テープの幅方向で隣り合う前記分断部の間に位置し、前記粘着テープの長手方向で前記一方側領域と前記他方側領域とがつながっている接続部と、前記粘着テープの幅方向で隣り合う前記分断部の間のうちで前記接続部の設けられていない部分に位置し、前記粘着テープの長手方向で前記一方側領域と前記他方側領域とがつながっていて、前記接続部よりも破断強度が小さい弱接続部と、を有し、前記接続部と前記弱接続部とが前記粘着テープの幅方向で隣り合う組を少なくとも1組有する粘着テープである。
【0010】
この構成によると、弱接続部を設けたことにより、粘着テープの使用時の切り離しやすさと、製造時の破断されにくさとを両立できる。
【0011】
また、2箇所の前記接続部が少なくとも1箇所の前記弱接続部を挟むように、前記粘着テープの幅方向で並ぶ組を少なくとも1組有するものとできる。
【0012】
この構成によると、少なくとも1箇所の弱接続部の両側に2箇所の接続部が位置することで、強度上のバランスをとることができる。
【0013】
また、前記弱接続部は、前記粘着テープの厚み方向で途中まで分断されたハーフカットにより構成されているものとできる。
【0014】
この構成によると、既知の手法であるハーフカットを用いることにより、容易に弱接続部を形成できる。
【0015】
また、前記帯状体が長手方向に巻かれて積層されることでロール状体とされており、径方向で外側の層と内側の層とでは、前記ミシン目が周方向にずれているものとできる。
【0016】
この構成によると、ミシン目が周方向に一致した構造に比べ、各ミシン目での切り離しを行いやすく、ロール状体の横断面形状が略真円形状から崩れることを抑制できる。
【0017】
また、前記接続部が、前記粘着テープの幅方向における寸法で0.1~6.0mmとされたものとできる。
【0018】
この構成によると、この寸法範囲の接続部であれば、弱接続部を設けることによる効果を顕著に得られる。
【0019】
また、前記弱接続部が、前記粘着テープの幅方向における寸法で0.1~6.0mmとされたものとできる。
【0020】
この構成によると、この寸法範囲の弱接続部であれば、接続部との組み合わせで弱接続部を設けることによる効果を顕著に得られる。
【0021】
また、前記接続部と前記弱接続部の合計が幅方向に3箇所~24箇所設けられており、そのうち前記弱接続部が1箇所~8箇所であるものとできる。
【0022】
この構成によると、粘着テープの使用時の切り離しやすさと、製造時の破断されにくさとを両立した最適条件とできる。
【0023】
また、基材上に前記粘着剤層が形成されており、前記基材が再生紙から構成されているものとできる。
【0024】
この構成によると、再生紙は新紙よりも強度が劣ることがあり、その場合であっても、粘着テープの使用時の切り離しやすさと、製造時の破断されにくさとを両立できる。
【0025】
また、前記帯状体が長手方向に巻かれて積層されることでロール状体とされており、前記ミシン目を見出すための目印を備えたものとできる。
【0026】
この構成によると、一方側領域を他方側領域から切り離すためにミシン目を見出すことを容易にできる。
【0027】
また、前記帯状体が長手方向に巻かれて積層されることでロール状体とされており、前記一方側領域を前記他方側領域から切り離す場合、前記他方側領域の長手方向端部で前記ミシン目に沿って補強テープが貼付されたものとできる。
【0028】
この構成によると、補強テープの部分でコシが出るため、ミシン目での切り離しがより簡単にできる。
【0029】
また、前記帯状体が巻芯に対して長手方向に巻かれて積層されることでロール状体とされており、前記ロール状体は、外径に対する前記巻芯の内径の比が1.5以上であるものとできる。
【0030】
この構成によると、大径のロール状体であっても形成可能である。
【0031】
また、本発明は、帯状体であって、一方側の面に粘着剤層を有し、幅方向の一端縁と他端縁とを結ぶミシン目を有し、当該ミシン目で長手方向に隣り合う一方側領域と他方側領域とを切り離すことができる粘着テープであって、前記ミシン目が設けられた部分における破断強度が、幅寸法160mm当たりで、15.0Nを超え60.6N未満である粘着テープである。
【0032】
この構成によると、ミシン目が設けられた部分における破断強度をこの範囲に設定することで、ミシン目で破断されてしまうことの抑制と、ユーザーの使用時にミシン目での切り離しを行いやすいことを両立できる。
【発明の効果】
【0033】
本発明によると、製造工程でミシン目を形成する際には、ミシン目で破断されてしまうことを抑制し、一方、ユーザーの使用時にはミシン目での切り離しを行いやすい。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】本発明の一実施形態に係る、ロール状体とされた粘着テープで、最外層の粘着テープを一領域分引き出した状態を示した斜視図である。
【
図3】前記ロール状体とされた粘着テープ(最外層の粘着テープを引き出していない状態)を示した斜視図である。
【
図4】前記ロール状体とされた粘着テープにおいてミシン目部分を示したものであって、説明の都合上、接続部と弱接続部の周辺の粘着剤層を消去して示した、径方向視の拡大図である。
【
図5】
図4のV-V矢視断面図(ただし径方向を強調表示、粘着剤層は図示省略)である。
【
図6】
図4のVI-VI矢視断面図(ただし径方向を強調表示、粘着剤層は図示省略)である。
【
図7】
図4のVII-VII矢視断面図(ただし径方向を強調表示、粘着剤層は図示省略)である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
次に本発明につき、一実施形態を取り上げて説明を行う。本実施形態の粘着テープ1は、帯状体であって、一方側の面に粘着剤層3を有し、幅方向の一端縁と他端縁とを直線状に結ぶミシン目4を有し、当該ミシン目4で長手方向に隣り合う一方側領域と他方側領域とを切り離すことができるものである。この粘着テープ1は、シート状の基材2上に粘着剤層3が塗布により形成されている。基材2は本実施形態では再生紙から構成されている。なお、同一厚さであると、再生紙は新紙(新規にパルプから漉かれた紙)よりも破断強度が小さい傾向がある。粘着テープ1の幅方向において、粘着剤層3は基材2よりも狭幅に形成されている。つまり、粘着テープ1の幅方向の両端部には粘着剤層3は形成されていない。
【0036】
本実施形態では、帯状体である粘着テープ1が巻芯5に対して長手方向に巻かれて積層されることで、
図1~
図3に示すようにロール状体1Rとされている。ロール状体1Rの外径(直径)は、巻芯5の内径(直径)に対する比で1.5以上とすることができる。本実施形態では約1.8である。ただし、前記比が1.5未満でも問題はない。ここで、前記比が1.5以上になると巻き始め(径は巻芯5の外径に略等しい)と巻き終わりの径(ロール状体1R自体の径)が大きく異なるため、ロール状体1Rの製造時に粘着テープ1の張力コントロールに留意する必要がある。
【0037】
ここで、本実施形態のロール状体1Rは、あらかじめミシン目4が形成された帯状体(一枚物)の粘着テープ1を巻き取っていくことで製造される。ロール状体1Rの外径が巻芯5の内径に対する比で大きくなると、製造時の帯状体の長手方向での張力コントロールが困難になる。まして、ミシン目4を形成しながらであると、張力コントロールが更に困難である。具体的には、前述のように、前記比が1.5を超えると粘着テープ1の巻き取りが特に難しくなる傾向である。このことに関し本実施形態では、ミシン目4に、後述のように接続部42及び弱接続部43の組み合わせを設けることにより、帯状体の状態である粘着テープ1における引張強度を向上できるから、前記比が大きく(具体的には1.5以上)ても、帯状体の粘着テープ1を巻芯5に巻き取ってロール状体1Rを形成することが、他の形態のミシン目を設けた場合に比べると行いやすい。従って、このような大径のロール状体1Rであっても問題なく形成可能である。
【0038】
ミシン目4は、分断部41、接続部42、弱接続部43を有する。分断部41は、粘着テープ1の長手方向で一方側領域と他方側領域とが分断されている(つながっていない)部分である。本実施形態では、2箇所の接続部42が1箇所の弱接続部43を挟む組4A(後述)において、接続部42と弱接続部43との間の分断部41が、粘着テープ1の幅方向における寸法で18.5mmとされている。また、隣り合う二つの組4A,4Aの間の分断部41が、粘着テープ1の幅方向における寸法で40mmとされている。なお、分断部41の寸法は、接続部42及び弱接続部43の寸法設定により定まるものであるので、前記数値に限定されるものではない。
【0039】
接続部42は、粘着テープ1の幅方向で隣り合う分断部41,41の間に位置し、粘着テープ1の長手方向で一方側領域と他方側領域とがつながっている部分である。接続部42では、前記一方側領域と前記他方側領域とが、厚み方向で欠損なく完全につながっている(
図5、
図6参照)。接続部42は、粘着テープ1の幅方向における寸法で0.1~6.0mm(両端の数値を含む)の寸法範囲で形成されている。寸法範囲は、好ましくは0.2~4.5mm、更に好ましくは0.5~3.5mmである。本実施形態では2.0mmとされている。この寸法範囲の接続部42であれば、弱接続部43を設けることによる効果を顕著に得られる。
【0040】
弱接続部43は、粘着テープ1の幅方向で隣り合う分断部41,41の間のうちで接続部42の設けられていない部分に位置する部分である。弱接続部43は、粘着テープ1の幅方向における寸法で0.1~6.0mm(両端の数値を含む)の寸法範囲で形成されている。寸法範囲は、好ましくは0.2~4.5mm、更に好ましくは0.5~3.5mmである。本実施形態では3.0mmとされている。ここでは、粘着テープ1の長手方向で一方側領域と他方側領域とがつながっている点では接続部42と同じであるが、接続部42よりも破断強度が小さい。弱接続部43は、粘着テープ1の厚み方向で径外側の途中まで分断されたハーフカットにより構成されている(
図5、
図7参照)。既知の手法であるハーフカットを用いることにより、容易に弱接続部43を形成できる。
【0041】
ミシン目4は、帯状体の粘着テープ1に厚み方向で切断刃(図示しない)を押し付けて、幅方向に断続的に切断することで形成される。切断刃は、分断部41の位置では、基材2及び粘着剤層3を厚み寸法の全部で切断し、接続部42の位置では全く切断せず、弱接続部43の位置では、基材2及び粘着剤層3を厚み寸法の略半分切断する(
図4にて、接続部42においては粘着テープ1の幅方向に延びる線が現れていないのに対し、弱接続部43においては粘着テープ1の幅方向に延びる線が現れていることに注意)。これにより、分断部41、接続部42、弱接続部43の各々が形成される。なお、弱接続部43において、厚み寸法における切断度合は任意に設定できる。
【0042】
粘着テープ1は、接続部42と弱接続部43とが粘着テープ1の幅方向で隣り合う組を少なくとも1組有する。より詳しくは、2箇所の接続部42が少なくとも1箇所の弱接続部43を挟むように、粘着テープ1の幅方向で並ぶ組4Aを少なくとも1組有する。本実施形態では、接続部42を「接」、弱接続部43を「弱」と表示すると、幅方向で、「接―弱―接―接―弱―接」と並んでいる。よって、
図4に示すように、2箇所の接続部42が1箇所の弱接続部43を挟むように、繰り返し単位の組としての、粘着テープ1の幅方向で並ぶ組4A(「接―弱―接」の組)を2組有する。少なくとも1箇所の弱接続部43(破断強度が比較的大きい)の両側に2箇所の接続部42(破断強度が比較的小さい)が位置することで、強度上(具体的には破断強度に関して)のバランスをとることができる。
【0043】
粘着テープ1には、接続部42と弱接続部43の合計が幅方向に3箇所~24箇所設けられている。そのうち弱接続部43は1箇所~8箇所である。接続部42と弱接続部43の数量をこれらの数値に設定することで、粘着テープ1の使用時の切り離しやすさと、製造時の破断されにくさとを両立した最適条件とできる。本実施形態では、接続部42と弱接続部43の合計が6箇所とされている。そのうち弱接続部43が2箇所とされている。
【0044】
また、ミシン目4が設けられた部分における破断強度が、幅寸法160mm当たりで、15.0Nを超え60.6N未満とされている。この破断強度の範囲は、好ましくは20N以上、更に好ましくは25N以上であって、好ましくは50N以下、更に好ましくは40N以下である。破断強度は、例えば、粘着テープ1の供試体を用意して、ミシン目4を挟んだ長手方向の一方側領域と他方側領域に、厚さ方向にダンボール製等の補助板を貼付し、この補助板の部分をチャッキングした状態として引張試験機で測定を行う。
【0045】
ここで、本願の発明者が行った破断強度の試験結果を簡単に記す。粘着テープ1の供試体の幅寸法を160mmとし、引張試験機の引張速度を300mm/minとし、供試体の全幅においてミシン目4が破断した際の力のピーク値を測定した。測定は同一構成の供試体で5回ずつ行った。本実施形態に近い供試体として、基材が再生紙でポリエチレンラミネートされたもので、接続部42(粘着テープ1の幅方向長さで2mm)を4箇所に、弱接続部43(粘着テープ1の幅方向長さで2mm)を2箇所に形成したものを用いた。この供試体で試験を行った結果、破断強度の平均値(単位はN)は29.1であった。なお、測定個々の値は27.7、30.3、30.6、29.6、27.3であった。また、この供試体では、使用時を想定したカット性(切り離しやすさ)、及び、製造時を想定した破断性(破断されやすさ)の両方とも良好であった。なお、前記カット性は、人による感覚的な評価である。また、前記破断性に関しては、ロール状体1Rを製造するに当たり、粘着テープ1が破断されることなく巻き取っていくことができるものを「良好」と評価した。
【0046】
一方、比較例の1番目として、基材が再生紙でポリエチレンラミネートされたもので、接続部42(粘着テープ1の幅方向長さで2mm)を4箇所に形成したもの(弱接続部43は形成なし)では、破断強度の平均値が15.0Nであった。なお、測定個々の値は13.2、14.7、15.4、18.2、13.7であった。この例では、使用時を想定したカット性(切り離しやすさ)は良好であったものの、製造時を想定した破断性(破断されやすさ)には難があった(破れやすかった)。弱接続部43が形成されていないことが影響したと考えられる。
【0047】
また、比較例の2番目として、基材が再生紙でポリエチレンラミネートされたもので、接続部42(粘着テープ1の幅方向長さで2mm)を16箇所に形成したもの(弱接続部43は形成なし)では、破断強度の平均値が65.7Nであった。なお、測定個々の値は62.6、55.2、71.4、65.6、73.5であった。また、比較例の3番目として、基材が新紙(具体的には純白紙)でポリエチレンラミネートされたもので、接続部42(粘着テープ1の幅方向長さで2mm)を16箇所に形成したもの(弱接続部43は形成なし)では、破断強度の平均値が60.6Nであった。なお、測定個々の値は55.8、60.6、71.0、49.6、66.3であった。これらの例では、製造時を想定した破断性(破断されやすさ)は良好であったものの、使用時を想定したカット性(切り離しやすさ)には難があった(切り離しにくかった)。接続部42の数量が多かったためと考えられる。
【0048】
次に、本願の発明者が行った引裂強度の試験結果を簡単に記す。粘着テープ1を、ミシン目4が中央にくるように幅50mmにカットした(つまり、幅方向中央にミシン目4がある)供試体を用意した。供試体の、ミシン目4を挟んで幅方向の一方側を引張試験機の上側チャックに取り付け、幅方向の他方側を引張試験機の下側チャックに取り付け、引張試験機の引張速度を300mm/minとし、接続部42、弱接続部43の各々に関して、破断した際の力のピーク値を測定した。測定は同一構成の供試体で3回ずつ行った。
【0049】
本実施形態に近い供試体として、前記破断強度の試験と同じく、基材が再生紙でポリエチレンラミネートされたもので、接続部42(粘着テープ1の幅方向長さで2mm)を4箇所に、弱接続部43(粘着テープ1の幅方向長さで2mm)を2箇所に形成したものを用いた。この供試体で試験を行った結果、接続部42での引裂強度の平均値(単位はN)は0.8であった。なお、測定個々の値は、3回とも0.8であった。そして、弱接続部43での引裂強度の平均値(単位はN)は0.6であった。なお、測定個々の値は、3回とも0.6であった。
【0050】
ミシン目4に、接続部42に加えて弱接続部43を設けたことにより、前述の試験結果でも明らかなように、破断強度を向上させられる。しかも、弱接続部43はハーフカット等により、厚み方向で部分的に分断された部分であるので、ユーザーの切り離し動作に対する抵抗の増加を、接続部42を増加させた場合よりも抑えることができる。従って、粘着テープ1の使用時の切り離しやすさと、製造時の破断されにくさとを両立できる。製造時の破断されにくさに関しては、後述のように、ロール状体1Rにおいて、径方向で外側の層と内側の層とで、ミシン目4が周方向にずれているように形成する(
図6、
図7)ためには、巻き取ってロール状体1Rとする前の粘着テープ1を部分的に切断してミシン目4を形成する必要がある。この場合、1枚のシート状である粘着テープ1にミシン目4を入れていくので、長手方向の張力により接続部42が引っ張られて、粘着テープ1に破断が生じる可能性がある。ユーザーによる粘着テープ1の使用時の切り離しやすさだけを考慮するのなら、接続部42の数量をただ減らせばよい。しかしそうすると、製造時に破断しやすくなるデメリットが生じる。本実施形態では、接続部42に弱接続部43を組み合わせたことにより、粘着テープ1の使用時の切り離しをしやすいままで(切り離ししにくくなることを抑えつつ)、製造時の破断されにくさを向上できる。
【0051】
また、本実施形態では基材2が再生紙から構成されているが、再生紙は新紙よりも強度が劣ることがあり、その場合であっても、粘着テープ1の使用時の切り離しやすさと、製造時の破断されにくさとを両立できる。
【0052】
また、弱接続部43を設けたことにより、使用時にユーザーが粘着テープ1を切り離す際、後述する補強テープ7よりも弱接続部43の方が破断しやすいことから、基材2と共に補強テープ7が引きちぎられることを避けることができ、ミシン目4で粘着テープ1を美しく切り離すことができる。
【0053】
また、本実施形態のロール状体1Rにおいて、径方向で外側の層と内側の層とでは、ミシン目4~4が周方向にずれている(接続部42に関して
図6参照、弱接続部43に関して
図7参照)。本実施形態では、粘着テープ1のミシン目4,4間の一領域分の長さが、粘着テープ1が巻かれる部分にてロール状体1Rの周方向360°分の長さよりも大きく設定されていて、ミシン目4の位置で外側の層が内側の層に被さるようなずれとされている。このようにミシン目4をずらすことにより、ミシン目4~4が周方向に一致した構造に比べ、各ミシン目4での切り離しを行いやすく、従来のように、ロール状体1Rの横断面形状が略真円形状から崩れることを抑制できる。更に、外側の層の粘着テープ1が塵埃等の付着により汚れても、内側の層の粘着テープ1は外側の層の粘着テープ1に覆われているため汚れないという利点もある。
【0054】
また、本実施形態のロール状体1Rは、ミシン目4を見出すための目印6を備える。この目印6により、粘着テープ1の一方側領域を他方側領域から切り離すためにミシン目4を見出すことを容易にできる。目印6は、ミシン目4に関連付けられる位置に設けることができる。例えば、ミシン目4に沿って設けたり、ミシン目4に重なるように設けたりすることができる。また、目印6の形状や色彩は特に限定されない。目印6は例えば粘着テープ1上への印刷により形成できる。また、本実施形態の補強テープ7のように、粘着テープ1とは別個の物として、粘着テープ1上への貼付により形成できる。
【0055】
粘着テープ1の一方側領域を他方側領域から切り離す場合、他方側領域の長手方向端部でミシン目4に沿って補強テープ7が貼付されている。補強テープ7は、長手方向寸法が粘着テープ1の幅寸法よりもやや小さい。幅寸法は、本実施形態では3mmとされていて、厚み寸法は約0.6mmである。各寸法はこれに限定されるものではなく、種々に変更できる。補強テープ7の部分で厚みが大きくなることによりコシが出るため、ミシン目4での切り離しが補強テープ7に沿ってできるので、切り離しがより簡単にできる。この補強テープ7は、粘着テープ1の幅方向に延びる細長い帯状体であって、基材2及び粘着剤層3とは異なる色とされていることから、前記目印6を兼ねることができる。また、補強テープ7の周囲の形態は、種々に変更されることがある。
【0056】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加えることができる。
【0057】
例えば、基材2の素材は前記実施形態では再生紙であった。しかしこれに限定されず、例えば、素材が純白紙等の新紙、不織布、樹脂フィルム、シート状の発泡体であってもよい。また、前記各素材の表面にラミネートを施したり、剥離処理(例えばシリコーン塗布)を施したりしてもよい。
【0058】
また、前記実施形態では、接続部42を「接」、弱接続部43を「弱」と表示すると、幅方向で、接―弱―接―接―弱―接と並んでおり、接続部42,42が弱接続部43を挟む一つの組4A(繰り返し単位の組)の構成が「接―弱―接」であった。しかし、接続部42及び弱接続部43の並びはこれに限定されるものではない。例えば、「接―弱―弱―接」、「弱―接―接―弱」、「接―弱―接―弱」の並びであってもよい。
【0059】
また、ロール状体1Rにおいて、径方向で外側の層と内側の層とで、ミシン目4~4が周方向にずれていることに関し、前記実施形態では、粘着テープ1のミシン目4,4間の一領域分の長さが、粘着テープ1が巻かれる部分にてロール状体1Rの周方向360°分の長さよりも大きく設定されていて、各ミシン目4の位置で外側の層が内側の層に被さるようなずれとされていた。しかし、これとは逆に、粘着テープ1のミシン目4,4間の一領域分の長さが、粘着テープ1が巻かれる部分にてロール状体1Rの周方向360°分の長さよりも小さく設定されていて、各ミシン目4の位置で外側の層から内側の層の一部が露出するようなずれとすることもできる。
【符号の説明】
【0060】
1 粘着テープ
1R ロール状体
2 基材
3 粘着剤層
4 ミシン目
41 分断部
42 接続部
43 弱接続部
4A 接続部が弱接続部を挟む組
5 巻芯
6 目印
7 補強テープ