IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エスペック株式会社の特許一覧

特開2022-131657環境因子設定装置、環境試験装置、プログラム及び環境因子設定方法
<>
  • 特開-環境因子設定装置、環境試験装置、プログラム及び環境因子設定方法 図1
  • 特開-環境因子設定装置、環境試験装置、プログラム及び環境因子設定方法 図2
  • 特開-環境因子設定装置、環境試験装置、プログラム及び環境因子設定方法 図3
  • 特開-環境因子設定装置、環境試験装置、プログラム及び環境因子設定方法 図4
  • 特開-環境因子設定装置、環境試験装置、プログラム及び環境因子設定方法 図5
  • 特開-環境因子設定装置、環境試験装置、プログラム及び環境因子設定方法 図6
  • 特開-環境因子設定装置、環境試験装置、プログラム及び環境因子設定方法 図7
  • 特開-環境因子設定装置、環境試験装置、プログラム及び環境因子設定方法 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022131657
(43)【公開日】2022-09-07
(54)【発明の名称】環境因子設定装置、環境試験装置、プログラム及び環境因子設定方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 17/00 20060101AFI20220831BHJP
【FI】
G01N17/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021030707
(22)【出願日】2021-02-26
(71)【出願人】
【識別番号】000108797
【氏名又は名称】エスペック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100137143
【弁理士】
【氏名又は名称】玉串 幸久
(72)【発明者】
【氏名】吉田 記大
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 剛
【テーマコード(参考)】
2G050
【Fターム(参考)】
2G050BA06
2G050BA10
2G050BA11
2G050BA12
2G050EA01
2G050EA02
2G050EA04
2G050EA10
2G050EC01
2G050EC10
(57)【要約】
【課題】環境因子を段階的に変えながら行う環境試験に用いられる環境因子の設定を簡素化する。
【解決手段】環境因子設定装置は、試験室内の温度を段階的に変えながら行う供試体の試験のための試験室内温度を設定する。環境因子設定装置は、開始ステップ時の温度である開始値と、開始ステップから終了ステップまでの追加ステップ数と、ステップ毎の温度の差分値と、の3つの値を受け付けて記憶する記憶部33と、記憶部33によって受け付けられた3つの値から、終了ステップ時の温度である到達値を計算するとともに、計算された到達値と記憶部に記憶された3つの値とから、開始ステップ時から終了ステップ時までの各ステップの温度を設定する設定部48と、を備えている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
環境因子を段階的に変えながら行う供試体の試験のための環境因子を設定する環境因子設定装置であって、
前記環境因子の変化を開始する開始ステップ時の前記環境因子の値である開始値と、前記環境因子の変化を終了する終了ステップ時の前記環境因子の値である到達値と、前記開始ステップから前記終了ステップまでの追加ステップ数と、ステップ毎の前記環境因子の値の差分値と、の4つの値のうちの3つの値を受け付けて記憶する記憶部と、
前記記憶部によって受け付けられた3つの値から残りの1つの値を計算するとともに、計算された前記残りの1つの値と前記記憶部に記憶された3つの値とから、前記開始ステップ時から前記終了ステップ時までの各ステップの環境因子の値を設定する設定部と、を備えている、環境因子設定装置。
【請求項2】
ユーザーによって入力装置を通して入力された前記開始ステップのステップ番号及び前記終了ステップのステップ番号から追加ステップ数を計算する計算部を備えており、
前記記憶部は、前記計算部によって算出された前記追加ステップ数を受け付けるように構成されている、請求項1に記載の環境因子設定装置。
【請求項3】
前記記憶部は、ユーザーによって前記入力装置を通して入力された追加ステップ数又はユーザーによって前記入力装置を通して入力されたステップ数から得られる追加ステップ数を含む前記3つの値を受け付けて記憶するように構成されている、請求項1に記載の環境因子設定装置。
【請求項4】
前記記憶部は、ユーザーによって入力装置を通して入力された前記開始ステップのステップ番号を受け付けて記憶するように構成されている、請求項3に記載の環境因子設定装置。
【請求項5】
前記設定部は、以下の関係を示す式
到達値=開始値+ステップ毎の差分値×追加ステップ数
を用いて、前記残りの1つの値を導出するように構成されている、請求項1から4の何れか1項に記載の環境因子設定装置。
【請求項6】
前記環境因子は、試験室内の温度、試験室内の湿度、試験室内の圧力又は供試体に加えられる振動の何れかである、請求項1から5の何れか1項に記載の環境因子設定装置。
【請求項7】
請求項1から6の何れか1項に記載の環境因子設定装置によって設定された、各ステップの環境因子の値に従って、試験室内の環境因子の値を段階的に変えて前記供試体の試験を行う、環境試験装置。
【請求項8】
環境因子を段階的に変えながら行う供試体の試験のための環境因子を設定するプログラムであって、
コンピュータを、
前記環境因子の変化を開始する開始ステップ時の前記環境因子の値である開始値と、前記環境因子の変化を終了する終了ステップ時の前記環境因子の値である到達値と、前記開始ステップから前記終了ステップまでの追加ステップ数と、ステップ毎の前記環境因子の値の差分値と、の4つの値のうちの3つの値を受け付けて記憶する記憶手段と、
前記記憶手段によって受け付けられた3つの値から残りの1つの値を計算するとともに、計算された前記残りの1つの値と前記記憶手段に記憶された3つの値とから、前記開始ステップ時から前記終了ステップ時までの各ステップの環境因子の値を設定する設定手段と、
として機能させるプログラム。
【請求項9】
環境因子を段階的に変えながら行う供試体の試験のための環境因子を設定する環境因子設定方法であって、
前記環境因子の変化を開始する開始ステップ時の前記環境因子の値である開始値と、前記環境因子の変化を終了する終了ステップ時の前記環境因子の値である到達値と、前記開始ステップから前記終了ステップまでの追加ステップ数と、ステップ毎の前記環境因子の値の差分値と、の4つの値のうちの3つの値を受け付けて記憶する記憶ステップと、
前記記憶ステップにおいて受け付けられた3つの値から残りの1つの値を計算する計算ステップと、
前記計算ステップにおいて計算された前記残りの1つの値と前記記憶ステップにおいて記憶された3つの値とから、前記開始ステップ時から前記終了ステップ時までの各ステップの環境因子の値を設定する設定ステップと、を備えている、環境因子設定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環境試験のための環境因子を設定する環境因子設定装置、環境試験装置、プログラム及び環境因子設定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、恒温槽等の環境試験装置を用いて、温度、湿度等の環境因子を段階的に変えながら供試体の試験を行うステップストレス試験が行われている。例えば、下記特許文献1には、試験槽内の温度を、時間tをかけて温度T1から温度T2まで上昇させる際に、Δtずつ階段状に試験槽内の温度を変化させることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭62-91772号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば温度を段階的に変えながら供試体にストレスを与える試験においては、開始ステップ時の温度、終了ステップ時の温度、ステップ数及びステップ毎の温度差を設定することになる。この場合、ユーザーがこの4つの値を環境試験装置に入力する構成とすることも考えられるが、その場合には、4者間で整合が取れない値が入力されることもあり得る。つまり、ユーザーによって入力されたステップ毎の温度差が、開始ステップ時の温度、終了ステップ時の温度及びステップ数から決まるステップ毎の温度差に対して異なる値であることもあり得る。その場合には、入力された値をそのまま設定値として採用できないため、環境試験装置において、一旦入力された値の修正を求める手段を講じておく必要がある。また、1ステップずつ温度の入力を行うことも可能だが、その場合には、複数のステップに対して1ステップ毎に温度の入力を行う必要が生ずるため、設定に手間がかかる。
【0005】
本発明は、前記従来技術を鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、環境因子を段階的に変えながら行う環境試験に用いられる環境因子の設定を簡素化することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の目的を達成するため、本発明は、環境因子を段階的に変えながら行う供試体の試験のための環境因子を設定する環境因子設定装置であって、前記環境因子の変化を開始する開始ステップ時の前記環境因子の値である開始値と、前記環境因子の変化を終了する終了ステップ時の前記環境因子の値である到達値と、前記開始ステップから前記終了ステップまでの追加ステップ数と、ステップ毎の前記環境因子の値の差分値と、の4つの値のうちの3つの値を受け付けて記憶する記憶部と、前記記憶部によって受け付けられた3つの値から残りの1つの値を計算するとともに、計算された前記残りの1つの値と前記記憶部に記憶された3つの値とから、前記開始ステップ時から前記終了ステップ時までの各ステップの環境因子の値を設定する設定部と、を備えている、環境因子設定装置である。
【0007】
本発明に係る環境因子設定装置では、開始値、到達値、追加ステップ数及びステップ毎の値の差分値のうちの3つの値から、残り1つの値を計算する。つまり、この「残り1つの値」については、入力を受け付けないように構成されている。このため、開始値、到達値、追加ステップ数及びステップ毎の値の差分値の全ての入力を受け付ける場合のように、四者間の関係に整合が取れないという事態を回避できる。したがって、整合が取れるように入力値の修正を求める手段を構築しておく必要はなく、環境因子の設定を簡素化することができる。しかも設定部が、開始ステップ時から終了ステップ時までの各ステップの環境因子の値を設定するため、ステップ毎に環境因子を設定する手間がかからない。
【0008】
前記環境因子設定装置は、ユーザーによって入力装置を通して入力された前記開始ステップのステップ番号及び前記終了ステップのステップ番号から追加ステップ数を計算する計算部を備えてもよい。この場合、前記記憶部は、前記計算部によって算出された前記追加ステップ数を受け付けるように構成される。この態様では、開始ステップのステップ番号及び終了ステップのステップ番号が決まっているようなステップストレス試験に好適なものとなる。
【0009】
前記記憶部は、ユーザーによって前記入力装置を通して入力された追加ステップ数又はユーザーによって前記入力装置を通して入力されたステップ数から得られる追加ステップ数を含む前記3つの値を受け付けて記憶するように構成されていてもよい。この態様では、ステップ数又は追加ステップ数が決まっているようなステップストレス試験に好適なものとなる。
【0010】
前記記憶部は、ユーザーによって入力装置を通して入力された前記開始ステップのステップ番号を受け付けて記憶するように構成されていてもよい。この態様では、ステップストレス試験を開始する開始ステップのステップ番号をユーザーが指定できるようになるため、試験の汎用性を向上できる。
【0011】
前記設定部は、以下の関係を示す式
到達値=開始値+ステップ毎の差分値×追加ステップ数
を用いて、前記残りの1つの値を導出するように構成されていてもよい。
【0012】
この態様では、前記関係式を用いて、開始値、到達値、追加ステップ数及びステップ毎の値の差分値のうちの3つの値から、残り1つの値を計算できるため、四者間の関係に整合が取れないという事態を回避できる。なお、追加ステップ数は、入力装置を通して入力された値を用いてもよく、開始ステップのステップ番号及び終了ステップのステップ番号から計算された値を用いてもよい。
【0013】
前記環境因子は、試験室内の温度、試験室内の湿度、試験室内の圧力又は供試体に加えられる振動の何れかであってもよい。この態様では、試験室内の温度、試験室内の湿度、試験室内の圧力又は供試体に加えられる振動が環境因子として設定される。したがって、これらの値の設定を簡素化できる。
【0014】
本発明は、前記環境因子設定装置によって設定された、各ステップの環境因子の値に従って、試験室内の環境因子の値を段階的に変えて前記供試体の試験を行う、環境試験装置である。
【0015】
本発明は、環境因子を段階的に変えながら行う供試体の試験のための環境因子を設定するプログラムであって、コンピュータを、前記環境因子の変化を開始する開始ステップ時の前記環境因子の値である開始値と、前記環境因子の変化を終了する終了ステップ時の前記環境因子の値である到達値と、前記開始ステップから前記終了ステップまでの追加ステップ数と、ステップ毎の前記環境因子の値の差分値と、の4つの値のうちの3つの値を受け付けて記憶する記憶手段と、前記記憶手段によって受け付けられた3つの値から残りの1つの値を計算するとともに、計算された前記残りの1つの値と前記記憶手段に記憶された3つの値とから、前記開始ステップ時から前記終了ステップ時までの各ステップの環境因子の値を設定する設定手段と、として機能させるプログラムである。
【0016】
本発明に係るプログラムでは、開始値、到達値、追加ステップ数及びステップ毎の値の差分値のうちの3つの値から、残り1つの値を計算する。つまり、この「残り1つの値」については、入力を受け付けないように構成されている。このため、開始値、到達値、追加ステップ数及びステップ毎の値の差分値の全ての入力を受け付ける場合のように、四者間の関係に整合が取れないという事態を回避できる。したがって、プログラムにおいて、整合が取れるように入力値の修正を求める手段を構築しておく必要はなく、環境因子の設定を簡素化することができる。
【0017】
本発明は、環境因子を段階的に変えながら行う供試体の試験のための環境因子を設定する環境因子設定方法であって、前記環境因子の変化を開始する開始ステップ時の前記環境因子の値である開始値と、前記環境因子の変化を終了する終了ステップ時の前記環境因子の値である到達値と、前記開始ステップから前記終了ステップまでの追加ステップ数と、ステップ毎の前記環境因子の値の差分値と、の4つの値のうちの3つの値を受け付けて記憶する記憶ステップと、前記記憶ステップにおいて受け付けられた3つの値から残りの1つの値を計算する計算ステップと、前記計算ステップにおいて計算された前記残りの1つの値と前記記憶ステップにおいて記憶された3つの値とから、前記開始ステップ時から前記終了ステップ時までの各ステップの環境因子の値を設定する設定ステップと、を備えている、環境因子設定方法である。
【0018】
本発明に係る環境因子設定方法によれば、開始値、到達値、追加ステップ数及びステップ毎の値の差分値のうちの3つの値から、残り1つの値が計算される。つまり、この「残り1つの値」については、入力を受け付けない。このため、開始値、到達値、追加ステップ数及びステップ毎の値の差分値の全ての入力を受け付ける場合のように、四者間の関係に整合が取れないという事態を回避できる。したがって、整合が取れるように入力値の修正を求めるステップを追加しなくても、環境因子の値の設定が可能になる。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、本発明によれば、環境試験に用いられる環境因子の設定を簡素化できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】実施形態に係る環境因子設定装置が適用された環境試験システムの構成を概略的に示す図である。
図2】環境試験システムに設けられた管理装置の構成を説明するための図である。
図3】環境試験システムに設けられた入力装置の入力画面を示す図である。
図4】試験時の各ステップでの環境因子(温度、湿度)の値を設定する方法を説明するための図である。
図5】ステップストレス試験における設定温度の推移を示す図である。
図6】変形例における入力画面を示す図である。
図7】変形例における管理装置の構成を説明するための図である。
図8】変形例に係る環境因子設定装置が適用された環境試験システムの構成を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0022】
図1は、実施形態に係る環境因子設定装置が適用された環境試験システム1の全体構成を簡略化して示す図である。図1に示すように、環境試験システム1は、環境試験装置2、管理装置3、イントラネット等の任意の通信ネットワーク4、液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイ等の任意の表示装置5、及び、キーボード又はマウス等の任意の入力装置6を備えている。但し、管理装置3、表示装置5及び入力装置6は、ノートパソコン等を用いて一体として構成されても良い。また、管理装置3が環境試験装置2内に組み込まれることにより、管理装置3の有する機能が環境試験装置2に実装されても良い。この場合、管理装置3の有する機能が後述する制御装置11に組み込まれていてもよく、あるいは管理装置3の有する機能が、制御装置11とは別個に構成された装置として環境試験装置2に設けられてもよい。
【0023】
環境試験装置2は、供試体20の試験環境を形成する試験室13を備えており、試験室13内に配置された供試体20の試験に影響を与える環境因子を制御可能に構成されている。環境試験装置2では、環境因子を段階的に変えながら供試体20の試験を行うステップストレス試験が可能となっている。以降の説明では、環境因子としての試験室13内の温度及び試験室13内の湿度を制御可能な恒温恒湿器を例にとる。但し、環境試験装置2は、試験室13内の圧力、供試体20に加えられる振動等の他の環境因子を制御可能であっても良い。なお、供試体20に振動を与える場合、供試体20に加えられる振動の振幅、振動数及び加速度の少なくとも1つが段階的に変えられる試験が行われる。
【0024】
環境試験装置2は、制御装置11、温度制御装置14、湿度制御装置15、温度センサ16、湿度センサ17、表示装置18及び入力装置19を備えている。但し、タッチパネル式ディスプレイが使用されることにより、表示装置18と入力装置19とが一体として構成されてもよい。
【0025】
試験室13内には、電気機器等の供試体20が収容される。温度制御装置14及び湿度制御装置15は、試験室13内又は試験室13に連通する図外の空調室内に配置されている。温度センサ16及び湿度センサ17は、試験室13内に配置されている。温度制御装置14は、ヒータ及びクーラ等によって構成されている。湿度制御装置15は、加湿器及び冷凍機等によって構成されている。温度センサ16及び湿度センサ17は、試験室13内の環境の温度及び湿度を測定する。
【0026】
制御装置11は、CPU及びメモリ等を含むコンピュータによって構成され、環境試験装置2の動作を制御する。すなわち、制御装置11は、管理装置3との間でのデータ通信を制御する。また、制御装置11は、温度センサ16から入力される温度の測定データ、及び、湿度センサ17から入力される湿度の測定データに基づいて、温度制御装置14、湿度制御装置15、及び図示しない送風ファン等の駆動を制御する。
【0027】
表示装置18は、液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイ等によって構成されている。入力装置19は、操作スイッチ又は操作ボタン等によって構成されている。タッチパネル式ディスプレイが使用される場合は、入力装置19はタッチパネルによって構成される。
【0028】
図2は、管理装置3の構成を簡略化して示す図である。管理装置3は、データ処理部31、通信部32及び記憶部33を備えている。データ処理部31は、CPU等を備えて構成されている。通信部32は、IP等の任意の通信方式に対応する通信モジュールを備えて構成されている。記憶部33は、HDD、SSD、又は半導体メモリ等を備えて構成されている。記憶部33には、環境因子に関するデータ41と、プログラム43と、が記憶されている。
【0029】
記憶部33からROM又はRAM等に読み出したプログラム43をCPUが実行することにより、データ処理部31は、計算部47と、設定部48と、として機能する。換言すれば、プログラム43は、管理装置3に搭載されるコンピュータを、記憶部33(記憶手段)、計算部47(計算手段)及び設定部48(設定手段)として機能させるためのプログラムである。各処理部の処理内容の詳細については後述する。なお、プログラム43を記録媒体に格納しておいて、記録媒体として流通可能としたり、記録媒体からダウンロード可能にしてもよい。
【0030】
図3は、入力装置6の入力画面51を示している。入力画面51には、開始ステップのステップ番号及び終了ステップのステップ番号を入力するための入力欄51a,51bと、開始ステップ時の温度(開始値)及びステップ毎の温度差(差分値)を入力するための入力欄51c,51dと、が設けられている。また入力画面51には、開始ステップ時の湿度(開始値)及びステップ毎の湿度差(差分値)を入力するための入力欄51e,51fが設けられている。また入力画面51には、各ステップの実行時間を入力するための入力欄51gが設けられている。ユーザーによって入力装置6の入力画面51に入力された数値を示すデータは、確定ボタン51hの操作によって、記憶部33にデータ41として記憶される。
【0031】
また入力画面51には、終了ステップ時の温度(到達値)及び終了ステップ時の湿度(到達値)の表示欄51j、51kが設けられている。この表示欄51j、51kに表示される到達値は、後述するように計算部47による計算によって導出されたものである。このため、ユーザーによる表示欄51j、51kへの到達値の入力はできない。
【0032】
また入力画面51には、湿度制御をオフにすることを選択するためのチェックボックス51iも設けられている。チェックボックス51iへのチェックがなされると、湿度に関する入力欄51e、51fは入力を受け付けないようになる。
【0033】
ここで、環境試験システム1において、供試体20の試験時における各ステップでの環境因子(温度、湿度)の値を設定する方法(環境因子設定方法)について、図4を参照しつつ説明する。
【0034】
試験時における各ステップでの温度及び湿度を設定するには、まず、入力装置6において、以下の数値を入力する(ステップST1~ST6)。
・開始ステップ及び終了ステップのステップ番号
・開始ステップ時の温度の値
・開始ステップ時の湿度の値
・ステップ毎の温度差の値
・ステップ毎の湿度差の値
・各ステップの実行時間
【0035】
上記の数値が入力欄51a~51gに入力されて確定ボタン51hが操作されると、入力されたデータは、データ41として記憶部33に記憶される(ステップST7、記憶ステップ)。また、入力装置6に入力されたデータのうち、開始ステップのステップ番号及び終了ステップのステップ番号は、データ処理部31にも入力される。データ処理部31の計算部47は、開始ステップのステップ番号及び終了ステップのステップ番号から、追加ステップ数を計算する(ステップST8)。具体的には、追加ステップ数は、終了ステップのステップ番号から開始ステップのステップ番号を引いた値として計算される。計算部47によって算出された追加ステップ数は、データ41として記憶部33に記憶される。
【0036】
データ処理部31の設定部48は、記憶部33に記憶された、開始ステップ時の温度及び湿度の値(開始値)、追加ステップ数、及び、ステップ毎の温度差及び湿度差(差分値)から、終了ステップ時の温度及び湿度(到達値)を導出する(ステップST9、ST10、計算ステップ)。設定部48は、この到達値を導出するに当たり、プログラム43(又は記憶部33)に記憶された式42を用いる。式42は、以下の関係を示す式である。
到達値=開始値+ステップ毎の差分値×追加ステップ数
【0037】
設定部48によって算出されたこの到達値は、データ41として記憶部33に記憶され、表示欄51j、51kに表示される。そして、設定部48は、開始ステップ番号、終了ステップ番号、開始ステップ時及び終了ステップ時の温度及び湿度の値、ステップ毎の温度差の値、ステップ毎の湿度差の値から、開始ステップから終了ステップまでの各ステップでの温度及び湿度を設定する(ステップST11、設定ステップ)。設定部48によって設定されたこれらの値も、データ41として記憶部33に記憶される。
【0038】
管理装置3は、記憶部33に記憶された各データ41を、通信ネットワーク4を介して環境試験装置2の制御装置11に入力する。制御装置11では、入力された開始ステップから終了ステップまでの各ステップでの温度及び湿度が記憶される。制御装置11は、ステップストレス試験を行う場合には、各ステップでの温度及び湿度が、記憶された各ステップでの温度及び湿度に調整されるように、温度制御装置14及び湿度制御装置15を調整しながら、ステップストレス試験を行う。
【0039】
図5は、ステップストレス試験における設定温度の推移を例示している。例えば、時間軸でT1に相当するときのステップは、入力画面51の入力欄51aに入力されたステップ番号「1」に相当するステップであり、このときの温度Tminは、入力欄51cに入力された温度(開始値)である、例えば25℃に設定されている。また、時間軸でT2に相当するときのステップは、入力画面51の入力欄51bに入力されたステップ番号「17」に相当するステップであり、このときの温度Tmaxは、計算部47による計算によって導出された温度(到達値)である、例えば105℃に設定されている。そして、ステップ番号「1」からステップ番号「17」まで同じ偏差(例えば5℃)で段階的に温度が変更される。なお、図5は、温度Tminと温度Tmaxの間で昇温及び降温が組み合わされて行われる例を示しているが、これに限られるものではない。例えば、温度Tminと温度Tmaxの間で昇温又は降温が一度のみ行われても良く、あるいは、昇温及び降温が繰り返されてもよい。また、昇温の後にステップ毎の差分値が異なる昇温のステップをさらに追加してもよく、降温の後にステップ毎の差分値が異なる降温のステップを更に追加することも可能である。
【0040】
なお、本実施形態では、開始ステップ時の温度(開始値)、ステップ毎の温度差(差分値)及び追加ステップ数から終了ステップ時の温度(到達値)を導出する例を説明したが、これに限られるものではない。例えば、開始ステップ時の温度、終了ステップ時の温度及び追加ステップ数からステップ毎の温度差を導出するようにしてもよい。この場合、入力画面51における終了ステップ時の温度(到達値)の表示欄51jは、ユーザーによる入力が可能な入力欄として構成され、ステップ毎の温度差の入力欄51dは、ユーザーによる入力が禁止される表示欄として構成されて、設定部48によって導出された値が表示される。また、湿度に関しても同様の構成となる。
【0041】
また、開始ステップ時の温度(開始値)、終了ステップ時の温度(到達値)及びステップ毎の温度差(差分値)から追加ステップ数を導出するようにしてもよい。この場合、終了ステップ時の温度(到達値)の表示欄51jは、ユーザーによる入力が可能な入力欄として構成される。また、開始ステップのステップ番号の入力欄51aと終了ステップのステップ番号の入力欄51bのいずれか一方は、ユーザーによる入力が禁止される表示欄として構成されて、計算部47及び設定部48によって導出された値が表示される。また、湿度に関しても同様の構成となる。
【0042】
また、終了ステップ時の温度(到達値)、追加ステップ数及びステップ毎の温度差(差分値)から開始ステップ時の温度(開始値)を導出するようにしてもよい。この場合、終了ステップ時の温度(到達値)の表示欄51jは、ユーザーによる入力が可能な入力欄として構成され、開始ステップ時の温度(開始値)の入力欄51cは、ユーザーによる入力が禁止される表示欄として構成されて、設定部48によって導出された値が表示される。また、湿度に関しても同様となる。
【0043】
以上説明したように、本実施形態では、開始値、到達値、追加ステップ数及びステップ毎の値の差分値のうちの3つの値から、残り1つの値を計算する。つまり、この「残り1つの値」については、入力を受け付けないように構成されている。このため、開始値、到達値、追加ステップ数及びステップ毎の値の差分値の全ての入力を受け付ける場合のように、四者間の関係に整合が取れないという事態を回避できる。したがって、整合が取れるように入力値の修正を求める手段を構築しておく必要はなく、環境因子の設定を簡素化することができる。
【0044】
また本実施形態では、計算部47が、ユーザーによって入力装置6を通して入力された開始ステップのステップ番号及び終了ステップのステップ番号から追加ステップ数を計算する。したがって、開始ステップのステップ番号及び終了ステップのステップ番号が決まっているようなステップストレス試験に好適なものとなっている。
【0045】
また本実施形態では、記憶部33に記憶された式42を用いて、開始値、到達値、追加ステップ数及びステップ毎の値の差分値のうちの3つの値から、残り1つの値を計算できるため、四者間の関係に整合が取れないという事態を回避できる。
【0046】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明は、前記実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変更、改良等が可能である。例えば、前記実施形態では、恒温恒湿器を例に取って説明したがこれに限られるものではなく、例えば、環境試験装置2が恒温槽として構成されてもよい。この場合、湿度センサ17及び湿度制御装置15は省略され、入力装置6においては湿度に関する情報の入力も省略される。すなわち、環境因子設定装置によって設定する環境因子は、1でもよく、あるいは複数でもよい。
【0047】
前記実施形態では、開始ステップのステップ番号及び終了ステップのステップ番号から、追加ステップ数を計算する計算部47が設けられているが、入力装置6において、追加ステップ数を入力する構成としてもよい。この場合、図6に示すように、入力画面51においては、終了ステップのステップ番号の入力欄51bに代えて、追加ステップ数の入力欄51mが設けられる。そして、図7に示すように、計算部47が省略される。この構成では、入力装置6を通して入力された追加ステップ数がデータ41として記憶部33に記憶される。なお、入力欄51mでは、追加ステップ数の入力を受け付ける構成となっているが、これに代えて、開始ステップから終了ステップまでのステップ数(1+追加ステップ数)の入力を受け付ける構成としてもよい。この場合、入力されたステップ数から1を減じた値が、追加ステップ数として記憶部33に記憶される構成となる。
【0048】
環境試験装置2が、第1ステップ目から順に温度をステップ状に変化させる試験を行うように構成されている場合には、開始ステップのステップ番号の入力欄51aを省略することも可能である。開始ステップのステップ番号の入力を受け付ける構成の場合には、開始ステップのステップ番号を変更可能になるため、試験の汎用性を向上できる。
【0049】
管理装置3の有する機能(データ処理部31及び記憶部33)は、上述したように環境試験装置2の制御装置11に実装されてもよい。この場合、環境試験装置2内の入力装置19が制御装置11に情報を入力するための入力装置6を兼ねてもよく、あるいは、入力装置19とは別個に環境試験装置2外に入力装置6が設けられてもよい。前者の場合、入力装置19を通して入力されたデータがデータ41として記憶部33に記憶される。後者の場合、図8に示すように、パーソナルコンピュータのキーボード等の入力装置6から通信ネットワーク4を介して環境試験装置2の制御装置11(データ処理部31及び記憶部33)にアクセスし、開始値の設定等のステップストレス試験ための設定を行う。
【0050】
また、データ処理部31及び記憶部33は管理装置3の有する機能として設けられたが、データ処理部31及び記憶部33は、環境試験装置2内と環境試験装置2外の何れにも設けられていてもよい。例えば、図1のように環境試験装置2とは別体の管理装置3に設けられるだけでなく、制御装置11にも設けられる構成であってもよい。
【符号の説明】
【0051】
2 :環境試験装置
6 :入力装置
13 :試験室
20 :供試体
33 :記憶部
43 :プログラム
47 :計算部
48 :設定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8