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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022131670
(43)【公開日】2022-09-07
(54)【発明の名称】加圧式筆記具
(51)【国際特許分類】
   B43K 7/035 20060101AFI20220831BHJP
   B43K 7/12 20060101ALI20220831BHJP
【FI】
B43K7/035
B43K7/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021030731
(22)【出願日】2021-02-26
(71)【出願人】
【識別番号】303022891
【氏名又は名称】株式会社パイロットコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100187159
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 英明
(74)【代理人】
【識別番号】100196047
【弁理士】
【氏名又は名称】柳本 陽征
(72)【発明者】
【氏名】大池 英郎
【テーマコード(参考)】
2C350
【Fターム(参考)】
2C350GA03
2C350HA09
2C350KC17
2C350NA22
(57)【要約】
【課題】レフィル内のインキに圧力を加える加圧機構が動作しているか否かを、容易に認識することができる加圧式筆記具を提供する。
【解決手段】加圧式筆記具10は、軸筒20と、軸筒20内に配置され、インキが充填されたインキ収容筒33を有するレフィル30と、レフィル30が後退することにより、インキの後端に圧力を加える加圧機構50と、加圧機構50の作動状態を示す第1表示部91と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸筒と、
前記軸筒内に配置され、インキが充填されたインキ収容筒を有するレフィルと、
前記レフィルが後退することにより、前記インキの後端に圧力を加える加圧機構と、
前記加圧機構の作動状態を示す第1表示部と、を備えた、加圧式筆記具。
【請求項2】
前記第1表示部は、
前記軸筒に形成された第1窓部と、
前記軸筒内に配置され、前記レフィルと一体に前後移動する第1マーカーと、を含む、請求項1に記載の加圧式筆記具。
【請求項3】
前記第1マーカーは、前記加圧機構が作動しているときに前記第1窓部を介して前記軸筒の外部から視認される、請求項2に記載の加圧式筆記具。
【請求項4】
前記レフィルの先端部を前記軸筒の前端開口部から出没させる出没機構と、
前記出没機構の作動状態を示す第2表示部と、をさらに備えた、請求項1~3のいずれか一項に記載の加圧式筆記具。
【請求項5】
前記第2表示部は、
前記軸筒に形成された第2窓部と、
前記軸筒内に配置され、前記レフィルと一体に前後移動する第2マーカーと、を含む、請求項4に記載の加圧式筆記具。
【請求項6】
前記第2マーカーは、
前記先端部が前記前端開口部から突出しており且つ前記加圧機構が作動していないときに前記第2窓部を介して前記軸筒の外部から視認され、
前記先端部が前記前端開口部から突出しており且つ前記加圧機構が作動しているときに前記第2窓部を介して前記軸筒の外部から視認されない、請求項5に記載の加圧式筆記具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加圧式筆記具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ボールペン等の筆記具において、内部に充填されたインキに対して圧力を加えることのできる加圧式筆記具が知られている。特許文献1には、軸筒内に、インキを充填したレフィルと、レフィルの後端側に環状に装着されたホルダーと、ホルダーの外周面に環状に装着されたOリング等のシール部材(弁体)と、ホルダーに対し後方から覆い被されてホルダーを進退可能に保持するシリンダーと、を備え、レフィルを後退させることによりレフィルの後端開口部に連通する加圧室を圧縮する、いわゆる筆圧加圧式の筆記具が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5558908号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の筆圧加圧式の筆記具では、筆記の際に、レフィル内のインキに圧力を加える加圧機構が動作しているか否かを、使用者が知ることができなかった。
【0005】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、レフィル内のインキに圧力を加える加圧機構が動作しているか否かを、容易に認識することができる加圧式筆記具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による加圧式筆記具は、
軸筒と、
前記軸筒内に配置され、インキが充填されたインキ収容筒を有するレフィルと、
前記レフィルが後退することにより、前記インキの後端に圧力を加える加圧機構と、
前記加圧機構の作動状態を示す第1表示部と、を備える。
【0007】
本発明による加圧式筆記具において、
前記第1表示部は、
前記軸筒に形成された第1窓部と、
前記軸筒内に配置され、前記レフィルと一体に前後移動する第1マーカーと、を含んでもよい。
【0008】
本発明による加圧式筆記具において、
前記第1マーカーは、前記加圧機構が作動しているときに前記第1窓部を介して前記軸筒の外部から視認されてもよい。
【0009】
本発明による加圧式筆記具において、
前記レフィルの先端部を前記軸筒の前端開口部から出没させる出没機構と、
前記出没機構の作動状態を示す第2表示部と、をさらに備えてもよい。
【0010】
本発明による加圧式筆記具において、
前記第2表示部は、
前記軸筒に形成された第2窓部と、
前記軸筒内に配置され、前記レフィルと一体に前後移動する第2マーカーと、を含んでもよい。
【0011】
本発明による加圧式筆記具において、
前記第2マーカーは、
前記先端部が前記前端開口部から突出しており且つ前記加圧機構が作動していないときに前記第2窓部を介して前記軸筒の外部から視認され、
前記先端部が前記前端開口部から突出しており且つ前記加圧機構が作動しているときに前記第2窓部を介して前記軸筒の外部から視認されなくてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、レフィル内のインキに圧力を加える加圧機構が動作しているか否かを、容易に認識することができる加圧式筆記具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る加圧式筆記具の一例を示す図であって、ボールペンチップが没入した状態において加圧式筆記具の外観を示す図である。
図2図2は、加圧式筆記具を示す縦断面図である。
図3図3は、加圧式筆記具の一部を拡大して示す図である。
図4図4は、加圧式筆記具の加圧機構のシリンダー部材を示す斜視図である。
図5図5は、加圧可能状態において加圧機構の切換機構を示す図である。
図6図6は、加圧不能状態において切換機構を示す図である。
図7図7は、切換機構の切換部材を示す斜視図である。
図8図8は、切換機構の切換部材を示す斜視図である。
図9図9は、切換機構の筒状部材の一部を示す斜視図である。
図10図10は、加圧可能状態において切換機構の一部を示す斜視図である。
図11図11は、加圧不能状態において切換機構の一部を示す斜視図である。
図12図12は、没入状態における第1表示部及び第2表示部を示す図である。
図13図13は、突出状態において加圧式筆記具の一部を拡大して示す図である。
図14図14は、図13の状態における第1表示部及び第2表示部を示す図である。
図15図15は、加圧機構の動作について説明するための図である。
図16図16は、図15の状態における第1表示部及び第2表示部を示す図である。
図17図17は、加圧機構の動作について説明するための図である。
図18図18は、図17の状態における第1表示部及び第2表示部を示す図である。
図19図19は、加圧機構の動作について説明するための図である。
図20図20は、図19の状態における第1表示部及び第2表示部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態について説明する。なお、本明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
【0015】
また、本明細書において用いる、形状や幾何学的条件ならびにそれらの程度を特定する、例えば、「平行」、「直交」、「同一」等の用語や長さや角度の値等については、厳密な意味に縛られることなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈することとする。
【0016】
本明細書では、筆記具の中心軸線Aが延びる方向(長手方向、縦断面図における上下方向)を軸方向da、軸方向daと直交する方向を径方向、中心軸線A周りの円周に沿った方向を周方向とする。また、軸方向daに沿って、筆記する際に紙面等の被筆記面に近接する側を前方とし、被筆記面から離間する側を後方とする。すなわち、ペン先側が前方であり、ペン先と反対側が後方である。また、径方向において、中心軸線Aに近接する側を内側又は内方とし、中心軸線Aから離間する側を外側又は外方とする。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態に係る加圧式筆記具10の一例を示す図であって、ボールペンチップが没入した状態において加圧式筆記具10の外観を示す図である。図2は、図1の加圧式筆記具10を示す縦断面図である。図3は、加圧式筆記具10の一部を拡大して示す図である。とりわけ、図3は、加圧式筆記具10の出没機構40及び加圧機構50を拡大して示す。
【0018】
本実施形態では、加圧式筆記具10がボールペンである例について説明する。加圧式筆記具10は、軸筒20と、レフィル30と、出没機構40と、加圧機構50と、を備える。本実施形態の加圧式筆記具10では、加圧機構50により、レフィル30内に収容されたインキの後端面に対して圧力を加え、加圧式筆記具10のペン先から吐出されるインキの量を増加させる。これにより、加圧式筆記具10を用いて形成された筆跡の濃度や幅が大きくなる。
【0019】
軸筒20は、前軸21と、前軸21の外周面を取り囲んで配置されたグリップ部材25と、前軸21の後端部に連結された後軸26と、を有している。前軸21は、略筒状の形状を有する部材であり、前端に、後述のボールペンチップ34の先端部が出没可能な前端開口部23を有している。グリップ部材25は、例えばゴムやエラストマー等の弾性部材で形成されており、使用者が加圧式筆記具10で筆記を行う際に、指でつかむことが意図されている。後軸26は、前軸21の後方に配置された、略筒状の形状を有する部材である。後軸26の前端部が前軸21の後端部に取付けられることにより、後軸26が前軸21に対して連結される。一例として、前軸21の後端部の外周に形成された雄ネジ部に対して、後軸26の前端部の内周に形成された雌ネジ部が螺合することにより、後軸26が前軸21に対して連結される。後軸26の内面には、内方に突出した突出部が設けられており、この突出部における前方を向く面が、後述のシリンダー部材70の段部74が当接し得る当接部27を形成し、この突出部における後方を向く面が、後述の弾発部材43を受ける受け部28を形成する。後軸26は、後端に、後述の筒状部材59が前後移動可能に挿入される後端開口部29を有している。このような前軸21及び後軸26は、例えば樹脂で形成される。
【0020】
後軸26には、第1窓部91a及び第2窓部92aが形成されている。第1窓部91aは、後述の第1表示部91の一部であり、第2窓部92aは、後述の第2表示部92の一部である。第1窓部91a及び第2窓部92aは、径方向に沿って後軸26を貫通する貫通孔である。図1に示された例では、第2窓部92aは、第1窓部91aに対して前方に配置されている。なお、これに限られず、第2窓部92aは、第1窓部91aに対して後方に配置されてもよい。第1表示部91及び第2表示部92の詳細、並びに、第1窓部91a及び第2窓部92aの詳細については後述する。
【0021】
後軸26の外面には、クリップ12が取り付けられている。クリップ12は、クリップ12と後軸26の外面との間に任意の部材(紙や布等)を挟むことができるように構成されている。クリップ12は、後軸26に対して軸線14周りに回転移動可能に設けられている。軸線14は、中心軸線Aに対してねじれの位置に位置するように延びている。より詳細には、軸線14は、中心軸線Aと平行な直線と直交する方向に延びている。クリップ12の軸線14よりも後方に位置する部分と後軸26の外面との間には、弾発部材18が圧縮された状態で配置されている。これにより、クリップ12の前端部が、後軸26の外面に対して押し付けられている。弾発部材18としては、例えばコイルスプリングを用いることができる。クリップ12は、前端部に、後述のシリンダー部材70の係止部75が係止される被係止部16を有している。本実施形態では、係止部75が被係止部16に係止されることにより、前端開口部23からのボールペンチップ34の突出状態を固定することができる。また、係止部75の被係止部16への係止が解除されることにより、前端開口部23からのボールペンチップ34の突出状態を解除することができる。すなわち、本実施形態では、クリップ12は、前端開口部23からのボールペンチップ34の突出状態の固定及び突出状態の解除を行う機構としても機能する。
【0022】
レフィル30は、軸筒20内に配置されている。本実施形態のレフィル30は、インキを収容するインキ収容筒33と、インキ収容筒33の前端部に取付けられたボールペンチップ34と、を備えている。インキ収容筒33は、前後方向に延びる筒状の形状を有する部材である。インキ収容筒33は、内部にインキを収容する。インキ収容筒33は、例えば樹脂で形成される。
【0023】
インキとしては、油性インキ、水性インキ、ゲルインキ、熱変色性インキ等、筆記具に使用可能なインキが特に制限なく使用され得る。これらのインキの中でも、20℃環境下、剪断速度1.92(sec-1)で、インキ粘度が5000(mPa・s)以下の低粘度インキは、加圧によるインキ吐出量の増減が大きく、加圧による筆跡の濃度、幅等の変化が大きいため、本実施形態の筆記具に好適に用いることができる。一例として、インキとして熱変色性インキを使用することができる。熱変色性インキは、可逆熱変色性インキであってもよい。可逆熱変色性インキとしては、加熱により発色状態から消色状態へ変化し、冷却により消色状態から発色状態へ変化する加熱消色型、加熱により消色状態から発色状態へ変化し、冷却により発色状態から消色状態へ変化する加熱発色型、又は、特定温度域において特定の色彩を呈し、温度により色彩が変化する色彩記憶保持型、等の種々の可逆熱変色性インキが、単独で又は併用して使用されてもよい。例えば、可逆熱変色性マイクロカプセル顔料を含むインキが、可逆熱変色性インキとして用いられ得る。
【0024】
インキの後方におけるインキ収容筒33内に、インキ追従体が配置されてもよい。インキ追従体は、インキ収容筒33からのインキの漏れ出しを防止するとともに、インキの乾燥を抑制する。インキ追従体は、インキの後端に接して配置される。インキが消費されてインキの後端が前方に移動すると、インキ追従体は、インキの後端に追従して前方に移動する。このようなインキ追従体としては、例えばグリース状の部材を用いることができる。
【0025】
ボールペンチップ34は、ボールを有している。ボールは、ボールペンチップ34の前端部に設けられたボール抱持室内に保持されている。ボール抱持室内においてボールにインキが付着し、筆記する際に紙面等の被筆記面にボールが接触して回転することにより、ボールに付着したインキが被筆記面に転写される。ボールペンチップ34の後端部は、インキ収容筒33の前端部内に挿入されており、これにより、ボールペンチップ34がインキ収容筒33に対して取り付けられている。
【0026】
次に、加圧機構50について説明する。図2及び図3に示された例では、加圧機構50は、ピストン部材60と、シリンダー部材70と、第1シール部材81と、第2シール部材82と、第3シール部材83と、切換機構90と、を備えている。
【0027】
ピストン部材60は、レフィル30の後方における軸筒20内に、前後移動可能に配置されている。ピストン部材60は、前後方向に延びる貫通孔を有している。ピストン部材60は、この貫通孔を画定する内面61と、ピストン部材60の外形を画定する外面63とを有している。外面63は、第1大径部63aと、第1大径部63aの後方に位置する第1小径部63bと、を有している。第1大径部63a及び第1小径部63bは、いずれもその中心軸が中心軸線Aと一致する円筒形状を有しており、第1大径部63aは、第1小径部63bの直径よりも大きな直径を有している。第1大径部63aと第1小径部63bとの間には、外側段部63cが形成されている。図示された例では、外側段部63cは、軸方向daと径方向の両方に対して傾斜した傾斜面である。とりわけ、外側段部63cは、前方から後方に向かうにつれて径方向の内側に向かう傾斜面である。ピストン部材60の後端には、後端開口部65が形成されている。後端開口部65は、ピストン部材60の内部と外部とを連通する。第1大径部63aには、第1シール部材81が配置される第1凹部63dが形成されている。第1小径部63bには、第2シール部材82が配置される第2凹部63eが形成されている。第1凹部63d及び第2凹部63eは、いずれも周方向に環状に延びている。
【0028】
ピストン部材60は、第1凹部63dと第2凹部63eとの間に、内面61と外面63とを接続する貫通孔67を有している。貫通孔67は、ピストン部材60の内部と外部とを連通する。図示された例では、貫通孔67は、第1小径部63bに設けられている。詳細には、貫通孔67は、外側段部63cと第2凹部63eとの間における第1小径部63bに設けられている。貫通孔67は、径方向に沿って延びている。なおこれに限られず、貫通孔67は、第1凹部63dと外側段部63cとの間における第1大径部63aに設けられてもよいし、外側段部63cに設けられてもよい。
【0029】
ピストン部材60は、第1大径部63aの前方に配置された鍔部69をさらに有している。鍔部69は、第1大径部63aの直径(外径)よりも大きな外径を有している。鍔部69は、後方を向く面である第1受け部63fを有している。第1受け部63fは、シリンダー部材70の後述する第2受け部71dと協働して、弾発部材55の弾発力を受ける。
【0030】
鍔部69は、レフィル保持部材51と係合される。レフィル保持部材51は、レフィル30を保持する部材である。レフィル保持部材51の後端は、鍔部69内に挿入されて、鍔部69に対して固定される。レフィル30の後端部は、レフィル保持部材51の前端部内に挿入されて、レフィル保持部材51に対して固定される。これにより、レフィル30は、ピストン部材60と一体的に前後動することが可能である。
【0031】
レフィル保持部材51の外面には、第1マーカー91b及び第2マーカー92bが設けられている。第1マーカー91bは、後述の第1表示部91の一部であり、第2マーカー92bは、後述の第2表示部92の一部である。第1マーカー91b及び第2マーカー92bは、当該マーカー91b,92bの周囲の部分と区別して視認可能に設けられる。例えば、第1マーカー91b及び第2マーカー92bは、当該マーカー91b,92bの周囲の部分の色と異なる色を有するインキを用いてレフィル保持部材51の外面に印刷を行うことにより、設けられる。図2及び図3に示された例では、マーカー91b,92bは、いずれも、周方向に延びる環状の形状を有している。第1マーカー91bと第2マーカー92bとは、互いに同一の色を有してもよいし、互いに異なる色を有してもよい。図2及び図3に示された例では、第2マーカー92bは、第1マーカー91bに対して前方に配置されている。なお、これに限られず、第2マーカー92bは、第1マーカー91bに対して後方に配置されてもよい。
【0032】
図4は、シリンダー部材70を示す斜視図である。図4では、シリンダー部材70を、中心軸線Aを通る面で切断した状態で示している。図2及び図3に示された例では、シリンダー部材70は、軸筒20内に、前後移動可能に配置されている。シリンダー部材70は、ピストン部材60の径方向外側に、ピストン部材60を取り囲むように配置されている。シリンダー部材70は、前後方向に延びる貫通孔を有している。シリンダー部材70は、この貫通孔を画定する内面71と、シリンダー部材70の外形を画定する外面73とを有している。内面71は、第2大径部71aと、第2大径部71aの後方に位置する第2小径部71bと、を有している。第2大径部71a及び第2小径部71bは、いずれもその中心軸が中心軸線Aと一致する円筒形状を有しており、第2大径部71aは、第2小径部71bの直径よりも大きな直径を有している。第2大径部71aと第2小径部71bとの間には、内側段部71cが形成されている。図示された例では、内側段部71cは、軸方向daと径方向の両方に対して傾斜した傾斜面である。とりわけ、内側段部71cは、前方から後方に向かうにつれて径方向の内側に向かう傾斜面である。内側段部71cは、軸方向daに沿ってピストン部材60の外側段部63cと対面する。外側段部63cと内側段部71cとの間には、外側段部63c、内側段部71c、ピストン部材60の外面63及びシリンダー部材70の内面71で囲まれた空間部Sが形成される。
【0033】
内面71は、第2大径部71aよりも前方に位置する第2受け部71dを有している。第2受け部71dは、前方を向く面である。ピストン部材60の第1受け部63fとシリンダー部材70の第2受け部71dとの間には、弾発部材55が配置されている。第2受け部71dは、第1受け部63fと協働して、弾発部材55の弾発力を受ける。弾発部材55としては、例えばコイルスプリングを用いることができる。
【0034】
シリンダー部材70の外面73には、段部74が形成されている。段部74は、シリンダー部材70の外面73における後方を向く面である。段部74は、後述の弾発部材43の弾発力によりシリンダー部材70が後方に移動した際に、後軸26の当接部27に当接する。これにより、シリンダー部材70のさらなる後方への移動が規制される。
【0035】
シリンダー部材70の前端部の外面73には、クリップ12の被係止部16に係止可能な係止部75が設けられている。係止部75は、外面73から径方向の外側に向かって突出した突出部で形成されている。シリンダー部材70が前方へ移動し、係止部75が被係止部16よりも前方に位置すると、係止部75が被係止部16に係止される。これにより、シリンダー部材70の後方への移動が規制される。
【0036】
シリンダー部材70は、前端77及び後端79を有している。前端77は、弾発部材55が圧縮されたときに、ピストン部材60の鍔部69(第1受け部63f)に接触し得る。ピストン部材60の中間部分は、シリンダー部材70の貫通孔内に位置している。ピストン部材60の鍔部69は、シリンダー部材70の前端77よりも前方に位置している。ピストン部材60の後端開口部65は、シリンダー部材70の後端79よりも後方に位置している。
【0037】
シリンダー部材70の後端79には、凹部79aが設けられている。凹部79aは、後端79から前方へ向かって、内面71に設けられている。凹部79aは、中心軸線Aと一致する中心軸線を有する円筒状の形状を有している。凹部79aには、さらに溝部79bが設けられている。溝部79bは、後述の係合部材57の係合部57bの一部が配置される部分である。溝部79bは、凹部79aの外周から径方向の外側へ向かって形成された溝である。凹部79a及び溝部79bは、いずれも、シリンダー部材70の後端79において開口している。シリンダー部材70には、複数の溝部79bが設けられてもよい。軸方向daから見て、複数の溝部79bは、互いに等角度間隔を有して配置されてもよい。図2図4に示された例では、シリンダー部材70は、2つの溝部79bを有している。軸方向daから見て、2つの溝部79bは、互いに180度の角度間隔を有して配置されている。
【0038】
第1シール部材81及び第2シール部材82は、いずれも、ピストン部材60の外面63とシリンダー部材70の内面71との間を密閉する部材である。とりわけ、第1シール部材81は、ピストン部材60の外側段部63cよりも前方においてピストン部材60とシリンダー部材70との間を密閉する。また、第2シール部材82は、シリンダー部材70の内側段部71cよりも後方においてピストン部材60とシリンダー部材70との間を密閉する。第1シール部材81は、ピストン部材60の第1凹部63dに配置されており、第2シール部材82は、ピストン部材60の第2凹部63eに配置されている。第1シール部材81及び第2シール部材82は、いずれも全周にわたって延びる弾性体である。弾性体としては、例えばOリングが用いられる。第1シール部材81の径方向の直径は、第2シール部材82の径方向の直径よりも大きい。
【0039】
第3シール部材83は、ピストン部材60の後方に配置されており、ピストン部材60の後端開口部65を密閉可能に構成される。本実施形態では、第3シール部材83の少なくとも後端開口部65と接触する部分は、ゴム、エラストマー等の弾性体で形成されている。なお、これに限られず、例えば、ピストン部材60の後端開口部65の周囲に弾性体が配置され、第3シール部材83が硬質部材で形成されていてもよい。図示された例では、第3シール部材83は、切換機構90の切換部材85に固定されている。
【0040】
切換機構90は、加圧機構50を、加圧可能状態と加圧不能状態とに切り換える機構である。図5は、加圧可能状態において切換機構90を示す図であり、図6は、加圧不能状態において切換機構90を示す図である。図7及び図8は、切換部材85を示す斜視図である。図9は、筒状部材59の一部を示す斜視図である。図9では、筒状部材59を、中心軸線Aを通る面で切断した状態で示している。
【0041】
加圧可能状態とは、筆記時にレフィル30が後退すると、加圧機構50によりインキの後端に圧力が加えられる状態を指す。また、加圧不能状態とは、筆記時に加圧機構50によりインキの後端に圧力が加えられない状態を指す。より詳細には、加圧不能状態とは、筆記時に、筆圧によってレフィル30に後方へ向かう力が生じても、加圧機構50によりインキの後端に圧力が加えられない状態を指す。加圧不能状態は、レフィル30の後退が妨げられることにより、加圧機構50によりインキの後端に圧力が加えられない状態であってもよい。これに限られず、加圧不能状態は、レフィル30が後退しても、加圧機構50によりインキの後端に圧力が加えられない状態であってもよい。本実施形態では、切換機構90は、係合部材57、切換部材85及び筒状部材59を含んでいる。
【0042】
係合部材57は、切換部材85と協働して、レフィル30の後退を許容したり妨げたりする部材である。係合部材57は、ピストン部材60の後端部に固定されている。係合部材57は、ピストン部材60に対して、軸方向da、径方向及び周方向のいずれにも移動不能である。したがって、係合部材57は、軸筒20内において、ピストン部材60と一体的に移動する。係合部材57は、本体部57aと、係合部57bとを有している。本体部57aは、中心軸線A周りに周方向に延びる円環状の部材である(図10及び図11を参照)。本実施形態では、本体部57aがピストン部材60の後端部に固定されることにより、係合部材57がピストン部材60に固定される。本体部57aは、シリンダー部材70の凹部79a内に配置される。これにより、シリンダー部材70に対する、ピストン部材60の前方への移動が規制される。
【0043】
係合部57bは、本体部57aの外周から径方向の外側へ向かって突出している。係合部材57は、複数の係合部57bを有してもよい。各係合部57bの前方側の一部は、シリンダー部材70の対応する溝部79b内に配置される。したがって、係合部材57の、シリンダー部材70に対する周方向の移動が規制されている。係合部材57は、溝部79bの数と同じ数の係合部57bを有している。また、各係合部57bは、各溝部79bの位置に対応した位置に設けられている。軸方向daから見て、複数の係合部57bは、互いに等角度間隔を有して配置されてもよい。図2図4に示された例では、係合部材57は、2つの係合部57bを有している。軸方向daから見て、2つの係合部57bは、互いに180度の角度間隔を有して配置されている。係合部57bは、さらに本体部57aから後方へ向かって突出している。加圧可能状態において、レフィル30の後退にともなって係合部材57が後退したときに、係合部57bの後方側の一部は、切換部材85の後述の第1溝部85d内に位置するようになる。
【0044】
切換部材85は、軸筒20内における係合部材57の後方に配置されている。切換部材85は、中心軸線Aと一致する中心軸線を有する略円筒状の形状を有している。切換部材85は、内面に段部85aを有している。第3シール部材83は段部85aに保持されており、これにより、切換部材85に対する第3シール部材83の後方への移動が規制されている。切換部材85の前端部には、径方向の外方へ突出する鍔部85bが設けられている。鍔部85bは、受け部85cを有している。受け部85cは、鍔部85bにおける後方を向く面である。受け部85cは、筒状部材59の後述の第2受け部59bと協働して、弾発部材87の弾発力を受ける。
【0045】
切換部材85の前端には、第1溝部85dが設けられている。加圧可能状態において、レフィル30の後退にともなって係合部材57が後退したときに、係合部材57の係合部57bの後方側の一部が、第1溝部85d内に位置するようになる。したがって、第1溝部85dは、係合部材57の係合部57bの数及び配置に対応した数及び配置で設けられる。また、第1溝部85dは、係合部57bの後方側の一部を収容可能な形状及び大きさを有する。図5及び図7に示された例では、第1溝部85dは、切換部材85を前後に貫通する貫通孔の前端部の外周から径方向に延びている。切換部材85は、複数の第1溝部85dを有してもよい。軸方向daから見て、複数の第1溝部85dは、互いに等角度間隔を有して配置されてもよい。図示された例では、切換部材85は、2つの第1溝部85dを有している。軸方向daから見て、2つの第1溝部85dは、互いに180度の角度間隔を有して配置されている。
【0046】
切換部材85の外面には、第2溝部85eが設けられている。第2溝部85eは、軸方向daに延びる第1部分85e1と、第1部分85e1の後端から周方向に延びる第2部分85e2と、を含んでいる。切換部材85は、複数の第2溝部85eを有してもよい。軸方向daから見て、複数の第2溝部85eは、互いに等角度間隔を有して配置されてもよい。図示された例では、切換部材85は、2つの第2溝部85eを有している。軸方向daから見て、2つの第2溝部85eは、互いに180度の角度間隔を有して配置されている。
【0047】
シリンダー部材70の後端部には、筒状部材59が係止されている。筒状部材59は、中心軸線Aと一致する中心軸線を有する略円筒状の形状を有している。筒状部材59は、シリンダー部材70の後端部、係合部材57及び切換部材85に対して、径方向の外側に配置されている。筒状部材59は、シリンダー部材70の後端部における外面73に係止されており、これにより筒状部材59がシリンダー部材70に対して固定されている。筒状部材59は、第1受け部59aと、第2受け部59bと、を有している。第1受け部59aは、筒状部材59の外面に形成された段部における前方を向く面である。後軸26の受け部28と、筒状部材59の第1受け部59aとの間には、弾発部材43が配置されている。弾発部材43は、受け部28と第1受け部59aとの間に、圧縮状態で配置されてもよい。第1受け部59aは、受け部28と協働して、弾発部材43の弾発力を受ける。弾発部材43としては、例えばコイルスプリングを用いることができる。
【0048】
筒状部材59の後端部には、内方に向かって突出した内方鍔部59cが設けられている。第2受け部59bは、この内方鍔部59cにおける前方を向く面である。切換部材85の受け部85cと、筒状部材59の第2受け部59bとの間には、弾発部材87が配置されている。弾発部材87は、受け部85cと第2受け部59bとの間に、圧縮状態で配置されてもよい。第2受け部59bは、受け部85cと協働して、弾発部材87の弾発力を受ける。弾発部材87としては、例えばコイルスプリングを用いることができる。
【0049】
筒状部材59は、凸部59dを有している。凸部59dは、内方鍔部59cから径方向の内側に向かって突出する部分である。凸部59dは、切換部材85の第2溝部85e内に位置する。したがって、凸部59dは、切換部材85の第2溝部85eの数及び配置に対応した数及び配置で設けられる。筒状部材59は、複数の凸部59dを有してもよい。軸方向daから見て、複数の凸部59dは、互いに等角度間隔を有して配置されてもよい。図5図6及び図9図11に示された例では、筒状部材59は、2つの凸部59dを有している。軸方向daから見て、2つの凸部59dは、互いに180度の角度間隔を有して配置されている。
【0050】
切換部材85の後端部には、ノック体45が固定されている。ノック体45は、加圧式筆記具10においてペン先の出没操作を行う際に、使用者が触れる部材である。使用者がノック体45を前方へ向けて押圧することによって、加圧式筆記具10のペン先が前端開口部23から出没する。ノック体45は、前端部に前方突出部46を有している。前方突出部46は、切換部材85の後端部から、切換部材85の内部へ挿入されている。前方突出部46は、切換部材85に対して圧入されており、これにより、切換部材85とノック体45とが互いに対して固定されている。この状態において、ノック体45は、切換部材85に対して、軸方向da、径方向及び周方向のいずれにも移動不能である。したがって、切換部材85は、ノック体45と一体的に移動する。
【0051】
図10は、加圧可能状態において切換機構90の一部を示す斜視図であり、図11は、加圧不能状態において切換機構90の一部を示す斜視図である。図10及び図11では、係合部材57は、その全体が示される一方、切換部材85、筒状部材59及びノック体45は、中心軸線Aを通る面で切断した状態で示されている。また、図10及び図11では、係合部材57、切換部材85、筒状部材59及びノック体45以外の部材の図示は省略している。
【0052】
係合部材57の係合部57bの前方側の一部は、シリンダー部材70の対応する溝部79b内に配置される。これにより、係合部材57の、シリンダー部材70に対する周方向の移動は規制されている。また、筒状部材59は、シリンダー部材70に対して固定されており、筒状部材59の、シリンダー部材70に対する周方向の移動は規制されている。したがって、係合部材57は、筒状部材59に対して周方向に実質的に移動しない。ここで、「実質的に移動しない」とは、部材間に形成され得る「遊び」に起因する微小な移動以外の移動が生じないことを指す。また、ノック体45の前方突出部46は、切換部材85に対して圧入されており、これにより、切換部材85とノック体45とが互いに対して固定されている。すなわち、切換部材85は、ノック体45と一体的に移動する。使用者がノック体45を中心軸線A周りに回転させることにより、ノック体45及び切換部材85が、係合部材57及び筒状部材59に対して、回転移動する。本実施形態では、使用者がノック体45を中心軸線A周りに回転させることにより、加圧機構50(切換機構90)を、加圧可能状態と加圧不能状態との間で切り換えることが可能である。
【0053】
図10に示されているように、係合部材57の係合部57bの周方向の位置と、切換部材85の第1溝部85dの周方向の位置とが一致するとき、筒状部材59の凸部59dの周方向の位置と、切換部材85の第2溝部85eの第1部分85e1の周方向の位置とが一致する。換言すると、軸方向daから見て、係合部57bと第1溝部85dとが重なるとき、軸方向daから見て、凸部59dと第1部分85e1とが重なる。このとき、加圧機構50(切換機構90)が加圧可能状態になる。上述のように、係合部材57は、ピストン部材60と一体的に移動する。加圧可能状態では、筆記の際の筆圧によりレフィル30が後退したときに、係合部57bが第1溝部85d内に進入することができる。また、凸部59dが第2溝部85eの第1部分85e1内に進入することができる。これにより、加圧可能状態では、筆記の際にレフィル30に筆圧が作用した際に、レフィル30が十分に後退することが可能になる。
【0054】
図11に示されているように、係合部材57の係合部57bの周方向の位置と、切換部材85の第1溝部85dの周方向の位置とが一致しないとき、筒状部材59の凸部59dの周方向の位置と、切換部材85の第2溝部85eの第1部分85e1の周方向の位置とが一致しない。換言すると、軸方向daから見て、係合部57bと第1溝部85dとが重ならないとき、軸方向daから見て、凸部59dと第1部分85e1とが重ならない。このとき、加圧機構50(切換機構90)が加圧不能状態になる。加圧不能状態では、係合部57bの周方向の位置と、第1溝部85dの周方向の位置とが一致しないために、筆記の際の筆圧によりレフィル30が後退したときに、係合部57bが第1溝部85d内に進入することができない。また、凸部59dの周方向の位置と、第1部分85e1の周方向の位置とが一致しないために、筆記の際の筆圧によりレフィル30が後退したときに、凸部59dが第1部分85e1内に進入することができない。これにより、加圧不能状態では、筆記の際にレフィル30に筆圧が作用した際に、レフィル30が十分に後退することができない。
【0055】
本実施形態の加圧式筆記具10は、加圧機構50の作動状態を示す第1表示部91を備えている。第1表示部91は、加圧機構50が動作しているときには、第1の表示を行い、加圧機構50が動作していないときには、第1の表示とは異なる第2の表示を行う。第1表示部91は、第1窓部91aと第1マーカー91bとを含んでいる。本実施形態では、第1の表示において、第1マーカー91bの少なくとも一部が第1窓部91aを介して軸筒20の外部から視認され(図18及び図20を参照)、第2の表示において、第1マーカー91bが第1窓部91aを介して軸筒20の外部から視認されない(図12図14及び図16を参照)。なお、第1の表示及び第2の表示の具体的態様は、これに限られない。例えば、第1の表示において、第1マーカー91bが第1窓部91aを介して軸筒20の外部から視認されず、第2の表示において、第1マーカー91bの少なくとも一部が第1窓部91aを介して軸筒20の外部から視認されてもよい。また、他の例として、第1の表示において、第1表示部91において第1の色が視認され、第2の表示において、第1表示部91において第1の色とは異なる第2の色が視認されてもよい。
【0056】
第1窓部91aは、軸筒20(後軸26)に形成されている。第1窓部91aは、前軸21に形成されてもよい。第1窓部91aは、径方向に沿って前軸21を貫通する貫通孔である。第1マーカー91bは、軸筒20内に配置され、レフィル30と一体に前後移動する。図2及び図3に示された例では、第1マーカー91bは、レフィル保持部材51の外面に設けられている。なお、これに限られず、第1マーカー91bは、レフィル30と一体に前後移動する他の部材に設けられてもよい。第1マーカー91bは、当該第1マーカー91bの周囲の部分と区別して視認可能に設けられる。例えば、第1マーカー91bは、当該第1マーカー91bの周囲の部分の色と異なる色を有するインキを用いてレフィル保持部材51の外面に印刷を行うことにより、設けられる。図示された例では、第1マーカー91bは、周方向に延びる環状の形状を有している。
【0057】
第1マーカー91bは、その位置に応じて、第1窓部91aを介して軸筒20の外部から視認されたり、視認されなかったりする。具体的には、第1窓部91aと第1マーカー91bとが重なったときに、第1マーカー91bは、第1窓部91aを介して軸筒20の外部から視認される。その一方、第1窓部91aと第1マーカー91bとが重ならないときには、第1マーカー91bは、第1窓部91aを介して軸筒20の外部から視認されない。図示された例では、レフィル30が前後に移動することによって、第1窓部91aの前後方向の位置と第1マーカー91bの前後方向の位置とが少なくとも部分的に一致したときに、第1マーカー91bは、第1窓部91aを介して軸筒20の外部から視認される。このため、軸筒20(後軸26)における、少なくとも第1窓部91aの周囲の部分は、透視性を有しないことが好ましい。
【0058】
本実施形態の加圧式筆記具10は、出没機構40の作動状態を示す第2表示部92をさらに備えている。第2表示部92は、加圧機構50が動作していない状態において、レフィル30の先端が軸筒20の前端開口部23から突出しているときには、第1の表示を行い、レフィル30の先端が軸筒20の前端開口部23から突出していないときには、第1の表示とは異なる第2の表示を行う。第2表示部92は、第2窓部92aと第2マーカー92bとを含んでいる。本実施形態では、第1の表示において、第2マーカー92bの少なくとも一部が第2窓部92aを介して軸筒20の外部から視認され(図14を参照)、第2の表示において、第2マーカー92bが第2窓部92aを介して軸筒20の外部から視認されない(図12を参照)。なお、第1の表示及び第2の表示の具体的態様は、これに限られない。例えば、第1の表示において、第2マーカー92bが第2窓部92aを介して軸筒20の外部から視認されず、第2の表示において、第2マーカー92bの少なくとも一部が第2窓部92aを介して軸筒20の外部から視認されてもよい。また、他の例として、第1の表示において、第2表示部92において第1の色が視認され、第2の表示において、第2表示部92において第1の色とは異なる第2の色が視認されてもよい。なお、本実施形態では、後述するように、レフィル30の先端が軸筒20の前端開口部23から突出している状態において、加圧機構50が動作することにより、第2表示部92における表示が変更される。
【0059】
第2窓部92aは、軸筒20(後軸26)に形成されている。第2窓部92aは、前軸21に形成されてもよい。第2窓部92aは、径方向に沿って前軸21を貫通する貫通孔である。第2マーカー92bは、軸筒20内に配置され、レフィル30と一体に前後移動する。図2及び図3に示された例では、第2マーカー92bは、レフィル保持部材51の外面に設けられている。なお、これに限られず、第2マーカー92bは、レフィル30と一体に前後移動する他の部材に設けられてもよい。第2マーカー92bは、当該第2マーカー92bの周囲の部分と区別して視認可能に設けられる。例えば、第2マーカー92bは、当該第2マーカー92bの周囲の部分の色と異なる色を有するインキを用いてレフィル保持部材51の外面に印刷を行うことにより、設けられる。図示された例では、第2マーカー92bは、周方向に延びる環状の形状を有している。
【0060】
第2マーカー92bは、その位置に応じて、第2窓部92aを介して軸筒20の外部から視認されたり、視認されなかったりする。具体的には、第2窓部92aと第2マーカー92bとが重なったときに、第2マーカー92bは、第2窓部92aを介して軸筒20の外部から視認される。その一方、第2窓部92aと第2マーカー92bとが重ならないときには、第2マーカー92bは、第2窓部92aを介して軸筒20の外部から視認されない。図示された例では、レフィル30が前後に移動することによって、第2窓部92aの前後方向の位置と第2マーカー92bの前後方向の位置とが少なくとも部分的に一致したときに、第2マーカー92bは、第2窓部92aを介して軸筒20の外部から視認される。このため、軸筒20(後軸26)における、少なくとも第2窓部92aの周囲の部分は、透視性を有しないことが好ましい。
【0061】
本実施形態では、第1マーカー91b及び第2マーカー92bは、同じ部材(レフィル保持部材51)に設けられている。したがって、第1マーカー91bと第2マーカー92bとは、一体的に前後移動する。これに限られず、第1マーカー91bと第2マーカー92bとは、互いに異なる部材に設けられてもよい。この場合、第1マーカー91bと第2マーカー92bとは、互いから独立して動作してもよい。第1マーカー91bと第2マーカー92bとは、互いに同一の色を有してもよいし、互いに異なる色を有してもよい。
【0062】
図2及び図3に示された例では、図1に示された例では、第2窓部92aが、第1窓部91aに対して前方に配置され、第2マーカー92bが、第1マーカー91bに対して前方に配置されている。なお、これに限られず、第2窓部92aが、第1窓部91aに対して後方に配置され、第2マーカー92bが、第1マーカー91bに対して後方に配置されてもよい。例えば、第1窓部91aが前軸21に設けられ、第2窓部92aが後軸26に設けられてもよい。第1窓部91aは、ペン先に近接して設けられてもよい。例えば、第1窓部91aは、グリップ部材25よりも前方に設けられてもよい。使用者は、ペン先の付近を見ながら筆記を行うことが多い。したがって、第1窓部91aがペン先に近接して設けられていると、使用者は、視線を大きく動かすことなく第1表示部91を視認することが可能である。
【0063】
ここで、図3に示すように、第1窓部91aの軸方向daに沿った幅の中心と、第2窓部92aの軸方向daに沿った幅の中心との間の距離をD1とする。また、第1マーカー91bの軸方向daに沿った幅の中心と、第2マーカー92bの軸方向daに沿った幅の中心との間の距離をD2とする。本実施形態では、距離D1は、距離D2よりも大きい。したがって、第1マーカー91b及び第2マーカー92bが一体的に前後移動する場合、第1マーカー91bが第1窓部91aを介して視認されるタイミングと、第2マーカー92bが第2窓部92aを介して視認されるタイミングとは、一致しない。第1マーカー91b及び第2マーカー92bが視認されるタイミングの詳細については後述する。
【0064】
次に、加圧式筆記具10の出没機構40について説明する。また、ペン先の出没動作に関連する第1表示部91及び第2表示部92の表示についても併せて説明する。図2及び図3は、ボールペンチップ34が没入した状態(没入状態)において加圧式筆記具10を示している。図12は、没入状態における第1表示部91及び第2表示部92を示す図である。図13は、ボールペンチップ34が突出した状態(突出状態)において加圧式筆記具10を示している。図14は、突出状態における第1表示部91及び第2表示部92を示す図である。出没機構40は、クリップ12、弾発部材43、ノック体45及びシリンダー部材70を含む。とりわけ、出没機構40は、クリップ12の被係止部16、弾発部材43、ノック体45及びシリンダー部材70の係止部75を含む。
【0065】
加圧機構50が動作していない没入状態においては、第1表示部91は第2の表示を行い、第2表示部92は第2の表示を行う。図2図3及び図12に示されているように、没入状態においては、第1マーカー91bは第1窓部91aと重なっておらず、第1マーカー91bは第1窓部91aを介して視認されない。また、第2マーカー92bは第2窓部92aと重なっておらず、第2マーカー92bは第2窓部92aを介して視認されない。
【0066】
図1及び図3に示された没入状態の加圧式筆記具10において、使用者がノック体45を前方へ向けて押圧すると、弾発部材43の弾発力に抗して、筒状部材59及び筒状部材59に固定されたシリンダー部材70が前方へ移動する。これにより、弾発部材55を介して、ピストン部材60、ピストン部材60に固定されたレフィル保持部材51及びレフィル保持部材51に保持されたレフィル30が前方へ移動する。これにより、ボールペンチップ34の先端部が、前端開口部23から前方へ突出する。このとき、シリンダー部材70の係止部75がクリップ12の被係止部16に接触すると、係止部75は、弾発部材18の弾発力に抗して、被係止部16を持ち上げながら前方へ移動する。係止部75が被係止部16よりも前方まで移動すると、弾発部材18の弾発力により、被係止部16が軸筒20(後軸26)の外面に接触する。この状態で使用者がノック体45の前方への押圧を解除すると、弾発部材43の弾発力により、シリンダー部材70が後方へ向けて付勢される。このとき、シリンダー部材70の係止部75が、クリップ12の被係止部16に前方から接触すると、係止部75が被係止部16に係止されることにより、シリンダー部材70の後方への移動が規制される。以上のようにして、図13に示されているように、加圧式筆記具10を突出状態にすることができる。
【0067】
加圧機構50が動作していない突出状態においては、第1表示部91は第2の表示を行い、第2表示部92は第1の表示を行う。図13及び図14に示されているように、突出状態においては、第1マーカー91bは第1窓部91aよりも前方に位置しており、第1マーカー91bは第1窓部91aを介して視認されない。その一方、第2マーカー92bは第2窓部92aと重なっており、第2マーカー92bは第2窓部92aを介して視認される。したがって、使用者は、第2表示部92を視認することにより、加圧式筆記具10が没入状態にあるか突出状態にあるかを判別することができる。
【0068】
図13に示された突出状態の加圧式筆記具10において、使用者がクリップ12の後端部を軸筒20(後軸26)へ向けて押圧すると、クリップ12は、弾発部材18の弾発力に抗して、軸線14周りに回転移動する。これにより、クリップ12の被係止部16は、軸筒20から離間する方向へ向けて移動する。被係止部16の軸筒20側の先端と軸筒20との間の距離が、シリンダー部材70の係止部75の軸筒20の外面からの突出高さよりも大きくなると、弾発部材43の弾発力により、シリンダー部材70が後方へ向けて移動する。このとき、シリンダー部材70が係合部材57を後方へ向けて押し、これにより、係合部材57に固定されたピストン部材60、ピストン部材60に固定されたレフィル保持部材51及びレフィル保持部材51に保持されたレフィル30が後方へ移動する。これにより、ボールペンチップ34の先端部が、前端開口部23から軸筒20内へ没入する。シリンダー部材70の段部74が後軸26の当接部27に当接すると、シリンダー部材70のさらなる後方への移動が規制される。以上のようにして、図2及び図3に示されているように、加圧式筆記具10を没入状態にすることができる。なお、出没機構40の具体的構成は、上述の機構に限られない。
【0069】
次に、図13及び図15図20を参照して、加圧機構50による加圧方法について説明する。また、加圧機構50による加圧動作に関連する第1表示部91及び第2表示部92の表示についても併せて説明する。図15図17及び図19は、加圧機構50の動作について説明するための図である。図16図18及び図20は、ぞれぞれ、図15図17及び図19の状態における第1表示部91及び第2表示部92を示す図である。
【0070】
レフィル30の先端が軸筒20の前端開口部23から突出しており且つ加圧機構50が作動していないとき、第1表示部91は第2の表示を行い、第2表示部92は第1の表示を行う。すなわち、図14に示されているように、第1表示部91においては、第1マーカー91bは第1窓部91aを介して視認されない。その一方、第2表示部92においては、第2マーカー92bは第2窓部92aを介して視認される。
【0071】
本実施形態では、上述のように、使用者がノック体45を中心軸線A周りに回転させることにより、加圧機構50(切換機構90)を、加圧可能状態と加圧不能状態との間で切り換えることが可能である。加圧可能状態(図5及び図10参照)において、使用者が筆記のためにペン先、より具体的にはレフィル30のボール、を紙等の被筆記面に押し付けると、筆圧により、レフィル30が軸筒20に対して相対的に後方へ向けて押され、ピストン部材60が、弾発部材55の弾発力に抗して後方へ移動する。このとき、ピストン部材60の外側段部63cも後方に向かって移動する。すなわち、外側段部63cが、シリンダー部材70の内側段部71cに向かって移動する。
【0072】
加圧可能状態では、係合部材57の係合部57bの周方向の位置と、切換部材85の第1溝部85dの周方向の位置とが一致するとともに、筒状部材59の凸部59dの周方向の位置と、切換部材85の第2溝部85eの第1部分85e1の周方向の位置とが一致する。このとき、係合部材57が切換部材85へ向かって後退すると、係合部57bは、第1溝部85d内に進入する。また、凸部59dが第2溝部85eの第1部分85e1内に進入する。したがって、レフィル30の後退が妨げられることはない。
【0073】
その後、図15に示されているように、ピストン部材60の後端が第3シール部材83に接触し、ピストン部材60の後端開口部65が第3シール部材83により密閉される。このとき、第1シール部材81、第2シール部材82及び第3シール部材83で密閉された加圧室Cが形成される。加圧室Cには、インキ収容筒33におけるインキ追従体の後方の空間、ピストン部材60の内部空間、ピストン部材60の貫通孔67、及び、外側段部63cと内側段部71cとの間に形成された空間部Sが含まれる。なお、空間部Sと貫通孔67とは、ピストン部材60の外面63とシリンダー部材70の内面71との間の隙間を介して、互いに連通している。
【0074】
このとき、第2マーカー92bが第2窓部92aに対して、後方へ移動することにより、図15及び図16に示されているように、第2表示部92において、第2マーカー92bは、第2窓部92aの後側の一部においてのみ視認されるようになる。このとき、第1表示部91においては、第1マーカー91bは、第1窓部91aよりも前方に位置している。したがって、第1マーカー91bは、第1窓部91aを介して視認されない。すなわち、第1表示部91は第2の表示を行う。
【0075】
レフィル30がさらに後方へ移動すると、図17に示されているように、ピストン部材60の外側段部63cが、シリンダー部材70の内側段部71cにさらに近接する。このとき、第3シール部材83は、弾発部材87の弾発力に抗して、後方へ移動する。外側段部63cが内側段部71cに近接すると、空間部Sの体積が減少する。すなわち、加圧室Cの体積が減少する。この間、加圧室Cは、第1シール部材81、第2シール部材82及び第3シール部材83で密閉されているので、加圧室Cの内部の空気が加圧される。換言すると、加圧室Cの内部の圧力が上昇する。加圧室Cの内部の上昇した圧力により、インキの後端がインキ追従体を介して押圧される。したがって、加圧式筆記具10のペン先から吐出されるインキの量が増加する。
【0076】
このとき、第2マーカー92bが第2窓部92aに対して、さらに後方へ移動することにより、図17及び図18に示されているように、第2表示部92において、第2マーカー92bは、第2窓部92aを介して視認されなくなる。その一方、第1マーカー91bが後方へ移動することにより、第1マーカー91bは、第1窓部91aの前側の一部において視認されるようになる。すなわち、第1表示部91は第1の表示を行う。
【0077】
レフィル30がさらに後方へ移動すると、ピストン部材60の外側段部63cが、シリンダー部材70の内側段部71cにさらに近接する。これにより、空間部Sの体積がさらに減少し、これにともなって、加圧室Cの体積がさらに減少する。弾発部材55がさらに圧縮されると、図19に示されているように、ピストン部材60の鍔部69(第1受け部63f)がシリンダー部材70の前端77に当接する。このとき、加圧室Cの内部の圧力が最も高くなる。ピストン部材60の鍔部69がシリンダー部材70の前端77に当接すると、ピストン部材60の後退は停止する。
【0078】
このとき、第1マーカー91bがさらに後方へ移動することにより、第1表示部91では、図19及び図20に示されているように、第1マーカー91bが第1窓部91aの全体において視認されるようになる。すなわち、第1表示部91は第1の表示を行う。
【0079】
使用者が、被筆記面へのペン先の押し付けを解除すると、弾発部材87の弾発力により、切換部材85及び第3シール部材83とともにピストン部材60が前方へ移動する。また、弾発部材55の弾発力により、ピストン部材60は、シリンダー部材70に対して前方へ移動する。このとき、ピストン部材60の後端が第3シール部材83から離間し、ピストン部材60の後端開口部65の密閉が解除され、ピストン部材60の内部空間が大気に連通される。したがって、インキの後端に対する押圧も解除される。すなわち、加圧式筆記具10は、図13に示された状態に戻る。これにより、ボールが被筆記面に押し付けられていない状態において、ペン先からインキが流出することが抑制される。
【0080】
このとき、第1マーカー91bが前方へ移動することにより、第1表示部91では、図14に示されているように、第1マーカー91bが第1窓部91aを介して視認されなくなる。すなわち、第1表示部91は第2の表示を行うようになる。
【0081】
本実施形態では、第1表示部91において、第1マーカー91bは、加圧機構50が作動しているときに第1窓部91aを介して軸筒20の外部から視認される。これにより、使用者は、第1表示部91を視認することにより、加圧機構50の作動状態を把握することが可能になる。
【0082】
また、本実施形態では、第2表示部92において、第2マーカー92bは、出没機構40が作動しており且つ加圧機構50が作動していないときに、第2窓部92aを介して軸筒20の外部から視認され、出没機構40が作動しており且つ加圧機構50が作動しているときに第2窓部92aを介して軸筒20の外部から視認されない。この場合、第1表示部91と第2表示部92との組み合わせにより、加圧機構50の作動状態と、出没機構40の作動状態とを簡単に把握することができる。
【0083】
上述のように、レフィル30の先端が軸筒20の前端開口部23から突出しており且つ加圧機構50が作動していないとき、図14に示されているように、第1表示部91は第2の表示を行い、第2表示部92は第1の表示を行う。加圧不能状態(図6及び図11参照)においても、使用者が筆記のためにペン先、より具体的にはレフィル30のボール、を紙等の被筆記面に押し付けると、加圧可能状態と同様に、筆圧により、レフィル30が軸筒20に対して相対的に後方へ向けて押され、ピストン部材60が、弾発部材55の弾発力に抗して後方へ移動する。
【0084】
加圧不能状態では、係合部材57の係合部57bの周方向の位置と、切換部材85の第1溝部85dの周方向の位置とが一致しない。また、筒状部材59の凸部59dの周方向の位置と、切換部材85の第2溝部85eの第1部分85e1の周方向の位置とが一致しない。このとき、係合部材57が切換部材85へ向かって後退しても、係合部57bは、第1溝部85d内に進入しない。また、凸部59dは第2溝部85eの第1部分85e1内に進入しない。換言すると、係合部材57の係合部57bが切換部材85の前端に当接したところで、レフィル30及び係合部材57の後退は停止する。これにより、切換部材85により、レフィル30及び係合部材57の後退が妨げられる。
【0085】
この場合、ピストン部材60の後端は、第3シール部材83に接触せず、ピストン部材60の後端開口部65は、第3シール部材83により密閉されない。したがって、加圧室Cが形成されないので、インキが押圧されることもない。この場合、加圧式筆記具10のペン先から吐出されるインキの量は変わらない。ただし、この状態でも加圧式筆記具10による筆記は可能である。
【0086】
このとき、レフィル30とともにレフィル保持部材51の後退も妨げられることから、第1表示部91及び第2表示部92における表示は、図14に示された状態から変わらない。すなわち、第1表示部91は第2の表示を行い、第2表示部92は第1の表示を行う。具体的には、第1表示部91においては、第1マーカー91bは第1窓部91aを介して視認されない。その一方、第2表示部92においては、第2マーカー92bは第2窓部92aを介して視認される。
【0087】
第1表示部91は、加圧機構50が動作しているときには第1の表示を行い、加圧機構50が動作していないときには第2の表示を行う。具体的には、第1表示部91においては、加圧機構50が動作しているときには、図18及び図20に示されているように、第1マーカー91bが第1窓部91aを介して視認される。その一方、加圧機構50が動作していないときには、図14に示されているように、第1マーカー91bは第1窓部91aを介して視認されない。したがって、使用者は、第1表示部91を視認することにより、加圧機構50が動作しているか否かを簡単に把握することができる。なお、加圧機構50が動作しているときとは、加圧機構50により、レフィル30内のインキに後方から圧力が加えられている状態を指す。
【0088】
本実施形態の加圧式筆記具10は、軸筒20と、軸筒20内に配置され、インキが充填されたインキ収容筒33を有するレフィル30と、レフィル30が後退することにより、インキの後端に圧力を加える加圧機構50と、加圧機構50の作動状態を示す第1表示部91と、を備える。
【0089】
このような加圧式筆記具10によれば、使用者が、第1表示部91を視認することにより、加圧機構50が動作しているか否かを、容易に把握することができる。とりわけ、第1表示部91は、加圧機構50が動作しているときには第1の表示を行い、加圧機構50が動作していないときには第1の表示とは異なる第2の表示を行う。この場合、使用者は、第1表示部91が第1の表示を行っているか第2の表示を行っているかを視認することにより、加圧機構50が動作しているか否かを、容易に把握することができる。
【0090】
また、加圧機構50が、加圧式筆記具10を加圧可能状態と加圧不能状態とに切り換える切換機構90を備えている場合、加圧式筆記具10が加圧可能状態であるのか、加圧不能状態であるのかを、使用者が筆記中に把握しにくいことがある。本実施形態の加圧式筆記具10では、筆記中に第1表示部91が第1の表示を行っている場合には、加圧式筆記具10が加圧可能状態にあり、加圧機構50が作動していることがわかる。その一方、筆記中に第1表示部91が第2の表示を行っている場合には、加圧機構50が作動しておらず、加圧式筆記具10が加圧不能状態にあることがわかる。
【0091】
本実施形態の加圧式筆記具10では、第1表示部91は、軸筒20に形成された第1窓部91aと、軸筒20内に配置され、レフィル30と一体に前後移動する第1マーカー91bと、を含む。
【0092】
このような加圧式筆記具10によれば、筆記の際の筆圧によるレフィル30の移動によって、第1表示部91の表示を変更することができる。したがって、第1表示部91の表示を変更するための追加の部材を配置する必要がない。これにより、簡単な構成で第1表示部91の表示を変更することができる。
【0093】
本実施形態の加圧式筆記具10では、第1マーカー91bは、加圧機構50が作動しているときに第1窓部91aを介して軸筒20の外部から視認される。
【0094】
このような加圧式筆記具10によれば、使用者が、加圧機構50が作動していることを、簡単に把握することができる。
【0095】
本実施形態の加圧式筆記具10は、レフィル30の先端部を軸筒20の前端開口部23から出没させる出没機構40と、出没機構40の作動状態を示す第2表示部92と、をさらに備える。
【0096】
このような加圧式筆記具10によれば、使用者が、第2表示部92を視認することにより、レフィル30の先端部が前端開口部23から突出しているか否かを、容易に把握することができる。とりわけ、第2表示部92は、レフィル30の先端部が前端開口部23から突出しているときには第1の表示を行い、レフィル30の先端部が前端開口部23から突出していないときには第1の表示とは異なる第2の表示を行う。この場合、使用者は、第2表示部92が第1の表示を行っているか第2の表示を行っているかを視認することにより、レフィル30の先端部が前端開口部23から突出しているか否かを、容易に把握することができる。
【0097】
本実施形態の加圧式筆記具10では、第2表示部92は、軸筒20に形成された第2窓部92aと、軸筒20内に配置され、レフィル30と一体に前後移動する第2マーカー92bと、を含む。
【0098】
このような加圧式筆記具10によれば、筆記の際の筆圧によるレフィル30の移動によって、第2表示部92の表示を変更することができる。したがって、第2表示部92の表示を変更するための追加の部材を配置する必要がない。これにより、簡単な構成で第2表示部92の表示を変更することができる。
【0099】
本実施形態の加圧式筆記具10では、第2マーカー92bは、レフィル30の先端部が軸筒20の前端開口部23から突出しており且つ加圧機構50が作動していないときに第2窓部92aを介して軸筒20の外部から視認され、レフィル30の先端部が軸筒20の前端開口部23から突出しており且つ加圧機構50が作動しているときに第2窓部92aを介して軸筒20の外部から視認されない。
【0100】
このような加圧式筆記具10によれば、加圧機構50の作動に応じて、第1表示部91の表示だけでなく、第2表示部92の表示も変更されるので、加圧機構50が動作しているか否かを、さらに容易に把握することができる。
【符号の説明】
【0101】
10 加圧式筆記具
12 クリップ
14 軸線
16 被係止部
18 弾発部材
20 軸筒
21 前軸
23 前端開口部
25 グリップ部材
26 後軸
27 当接部
28 受け部
29 後端開口部
30 レフィル
33 インキ収容筒
34 ボールペンチップ
43 弾発部材
45 ノック体
46 前方突出部
50 加圧機構
51 レフィル保持部材
55 弾発部材
57 係合部材
57a 本体部
57b 係合部
59 筒状部材
59a 第1受け部
59b 第2受け部
59c 内方鍔部
59d 凸部
60 ピストン部材
61 内面
63 外面
63a 第1大径部
63b 第1小径部
63c 外側段部
63d 第1凹部
63e 第2凹部
63f 第1受け部
65 後端開口部
67 貫通孔
69 鍔部
70 シリンダー部材
71 内面
71a 第2大径部
71b 第2小径部
71c 内側段部
71d 第2受け部
73 外面
74 段部
75 係止部
77 前端
79 後端
79a 凹部
79b 溝部
81 第1シール部材
82 第2シール部材
83 第3シール部材
85 切換部材
85a 段部
85b 鍔部
85c 受け部
85d 第1溝部
85e 第2溝部
85e1 第1部分
85e2 第2部分
87 弾発部材
90 切換機構
91 第1表示部
91a 第1窓部
91b 第1マーカー
92 第2表示部
92a 第2窓部
92b 第2マーカー
A 中心軸線
C 加圧室
S 空間部
da 軸方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20