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  • 特開-銀イオン検出試薬 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022131715
(43)【公開日】2022-09-07
(54)【発明の名称】銀イオン検出試薬
(51)【国際特許分類】
   G01N 31/00 20060101AFI20220831BHJP
   G01N 31/22 20060101ALI20220831BHJP
   G01N 21/78 20060101ALI20220831BHJP
【FI】
G01N31/00 T
G01N31/22 122
G01N21/78 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021030808
(22)【出願日】2021-02-26
(71)【出願人】
【識別番号】522158557
【氏名又は名称】MGCウッドケム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】特許業務法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 宏輔
【テーマコード(参考)】
2G042
2G054
【Fターム(参考)】
2G042AA01
2G042BC10
2G042CB06
2G042DA06
2G042DA08
2G042FA06
2G042FA11
2G042FB02
2G054AA04
2G054AB10
2G054BA01
2G054BB06
2G054BB20
2G054CA10
2G054CE02
2G054CE08
2G054EA04
2G054EA06
2G054EB01
2G054EB05
2G054GA03
2G054GB01
2G054GB04
2G054JA01
2G054JA02
2G054JA06
2G054JA11
(57)【要約】
【課題】
銀イオン検出試薬、並びに銀イオンの検出方法及び銀イオンの定量方法の提供。
【解決手段】
ジチゾン、pH調整剤及び有機溶媒を含む、銀イオン検出試薬。
検出対象物の内部又は表面に存在する銀イオンを検出する方法であって、
上記の銀イオン検出試薬と検出対象物とを接触させる工程、及び
接触工程後の銀イオン検出試薬の呈色の有無を判定する工程
を含む、銀イオンの検出方法。
検出対象物の内部又は表面に存在する銀イオンを定量する方法であって、
上記の銀イオン検出試薬と検出対象物とを接触させて、該銀イオン検出試薬を呈色させる工程、及び
呈色工程後の銀イオン検出試薬の呈色の状態を判定する工程
を含む、銀イオンの定量方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジチゾン、pH調整剤及び有機溶媒を含む、銀イオン検出試薬。
【請求項2】
前記pH調整剤がリン酸、炭酸、カルボキシル基を有する有機酸及びこれらの塩からなる群から選ばれる1種又は2種以上である、請求項1に記載の銀イオン検出試薬。
【請求項3】
前記有機溶媒がメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール及びブタノールからなる群から選ばれる1種以上のアルコールである、請求項1又は請求項2に記載の銀イオン検出試薬。
【請求項4】
前記pH調整剤の濃度が7mM以上30mM以下である、請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の銀イオン検出試薬。
【請求項5】
前記pH調整剤の質量が前記ジチゾンの質量の50倍以上200倍以下である、請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の銀イオン検出試薬。
【請求項6】
検出対象物の内部又は表面に存在する銀イオンを検出する方法であって、
請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の銀イオン検出試薬と検出対象物とを接触させる工程、及び
接触工程後の銀イオン検出試薬の呈色の有無を判定する工程
を含む、銀イオンの検出方法。
【請求項7】
検出対象物の内部又は表面に存在する銀イオンを定量する方法であって、
請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の銀イオン検出試薬と検出対象物とを接触させて、該銀イオン検出試薬を呈色させる工程、及び
呈色工程後の銀イオン検出試薬の呈色の状態を判定する工程
を含む、銀イオンの定量方法。
【請求項8】
前記呈色の状態を判定する工程が、呈色工程後の銀イオン検出試薬の呈色度合と、銀イオン量と銀イオン検出試薬の呈色度合とが関連付けられた標準色列とを目視で比較して銀イオンを定量する工程を含む、請求項7に記載の定量方法。
【請求項9】
前記呈色の状態を判定する工程が、呈色工程後の銀イオン検出試薬の呈色度合を分光光度計により測定し、得られた吸光度と予め作成した検量線により銀イオンを定量する工程を含む、請求項7に記載の定量方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は銀イオン検出試薬、銀イオンの検出方法及び銀イオンの定量方法に関する。
【背景技術】
【0002】
銀イオンには抗菌作用や殺菌作用があるので、様々な日用品に使用されている。
銀イオンを検出又は定量する方法として、ジチゾンと銀イオンとの呈色反応を利用した方法が知られている(特許文献1及び特許文献2並びに非特許文献1及び非特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-277956号公報
【特許文献2】特開平6-186222号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】原重雄,“ジチゾンによる銀の比色定量”,分析化学,公益社団法人日本分析化学会,1958年,第7巻,第3号,p.142-147
【非特許文献2】川畑正夫,外2名,“ジチゾンを用いる微量銀の吸光度定量”,分析化学,公益社団法人日本分析化学会,1962年,第11巻,第10号,p.1017-1020
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1、非特許文献1及び非特許文献2に開示された方法は、銀イオンの検出に分光光度計を必要とするので、銀イオンの検出作業が煩雑かつ大掛かりになってしまい、また熟練者でなければ簡単に銀イオンを検出又は定量することができないという問題があった。
また、特許文献2に開示された検出方法は、銀捕集済廃液を多孔質の物質などからなるジチゾン坦持部に通過させる必要があるので、電車やバスの吊り革、ドアノブ、エスカレーターの手すりなどのような設置されている物などに適用するのは難しいという問題があった。
【0006】
したがって、本発明は、簡単に銀イオンを検出することができる試薬を提供することを目的とする。
【0007】
また、本発明は、簡便な銀イオンの検出方法及び定量方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決するために、鋭意検討した結果、ジチゾンおよび有機溶媒を含む銀イオン検出試薬にpH調整剤を用いることにより、検出対象物に含まれる樹脂分や当該検出対象物に付着している汚れなどに起因する検出試薬のpH変化による当該検出試薬の変色が抑制されることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は、ジチゾン、pH調整剤及び有機溶媒を含む、銀イオン検出試薬を提供する。
前記pH調整剤はリン酸、炭酸、カルボキシル基を有する有機酸及びこれらの塩からな
る群から選ばれる1種又は2種以上であることが好ましい。
前記有機溶媒はメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール及びブタノールからなる群から選ばれる1種以上のアルコールであることが好ましい。
前記pH調整剤の濃度は7mM以上30mM以下であることが好ましい。
前記pH調整剤の質量は前記ジチゾンの質量の50倍以上200倍以下であることが好ましい。
【0010】
また、本発明は、検出対象物の内部又は表面に存在する銀イオンを検出する方法であって、
上記の銀イオン検出試薬と検出対象物とを接触させる工程、及び
接触工程後の銀イオン検出試薬の呈色の有無を判定する工程
を含む、銀イオンの検出方法を提供する。
【0011】
さらに、本発明は、検出対象物の内部又は表面に存在する銀イオンを定量する方法であって、
上記の銀イオン検出試薬と検出対象物とを接触させて、該銀イオン検出試薬を呈色させる工程、及び
呈色工程後の銀イオン検出試薬の呈色の状態を判定する工程
を含む、銀イオンの定量方法を提供する。
前記呈色の状態を判定する工程は、呈色工程後の銀イオン検出試薬の呈色度合と、銀イオン量と銀イオン検出試薬の呈色度合とが関連付けられた標準色列とを目視で比較して銀イオンを定量する工程を含むことが好ましい。
前記呈色の状態を判定する工程は、呈色工程後の銀イオン検出試薬の呈色度合を分光光度計により測定し、得られた吸光度と予め作成した検量線により銀イオンを定量する工程を含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、簡単に銀イオンを検出することができる銀イオン検出試薬を提供することができる。
また、本発明によれば、実質的に銀イオンのみに起因して変色する銀イオン検出試薬を提供することができる。
【0013】
また、本発明によれば、簡単に銀イオンを検出できる方法を提供することができる。
【0014】
さらに、本発明によれば、簡単に銀イオンを定量できる方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、実施例3で作成した標準色列を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[銀イオン検出試薬]
本発明は、ジチゾン、pH調整剤及び有機溶媒を含む銀イオン検出試薬に関する。
【0017】
<ジチゾン>
本発明では、銀イオンとの呈色反応を利用して銀イオンを検出するので、ジチゾン(ジフェニルチオカルバゾンの別名)を用いる。
ジチゾンの含有量(濃度)は、検出したい銀イオン濃度に応じて、適宜調整することができる。
JIS Z 2801:2010試験により、抗菌効果が認められる銀イオンの含有量(0.75mg/m以上)を検出したい場合、ジチゾンの含有量(濃度)は、0.75
mg/L以上7.5mg/L以下であることが好ましく、1.5mg/L以上6.0mg/L以下であることが好ましく、2.25mg/L以上5.25mg/L以下であることがより好ましい。
ISO 21702:2019試験により、抗ウイルス効果が認められる銀イオンの含有量(5.0mg/m以上)を検出したい場合、ジチゾンの含有量(濃度)は、5mg/L以上50mg/L以下であることが好ましく、10mg/L以上40mg/L以下であることが好ましく、15mg/L以上40mg/L以下であることがより好ましい。
【0018】
<有機溶媒>
本発明に用いる有機溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール及びブタノールからなる群から選ばれる1種以上のアルコールであることが好ましく、エタノールであることがより好ましい。
【0019】
<pH調整剤>
本発明において、pH調整剤は銀イオン検出試薬のpH変化を小さくする作用(いわゆる緩衝作用)を発揮するものである。pH調整剤は、銀イオン検出試薬のpH変化や検出対象物に含まれる樹脂分や当該検出対象物表面に付着している汚れなどよるpH変化を抑制し、これにより、銀イオン検出試薬中のジチゾンがこれらpH変化に起因して変色するのを抑制するものである。
【0020】
pH調整剤としては、緩衝作用を有するものであれば特に限定されないが、リン酸、炭酸、カルボキシル基を有する有機酸及びこれらの塩からなる群から選ばれる1種又は2種以上であることが好ましい。
前記pH調整剤としては、具体的には、リン酸又はその塩(リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウムなど);炭酸又はその塩(炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム);クエン酸又はその塩(クエン酸ナトリウム、クエン酸水素ナトリウムなど);酢酸又はその塩(酢酸カリウム、酢酸ナトリウムなど)などが挙げられる。
前記pH調整剤の濃度は、銀イオン検出試薬のpH変化をより小さくする観点から、7mM以上30mM以下であることが好ましく、7mM以上20mM以下であることがより好ましい。
前記pH調整剤の質量は、銀イオン検出試薬のpH変化をより小さくする観点から、ジチゾンの質量の50倍以上200倍以下であることが好ましく、75倍以上125倍以下であることがより好ましい。
【0021】
本発明の銀イオン検出試薬のpHは、特に限定するものではないが、酸性から中性の間とされることが好ましい。検査員が手作業で銀イオンの検出および定量作業を行う場合には、銀イオン検出試薬の取り扱いやすさの観点から、中性であることが好ましく、例えば、pHが6.0以上8.0以下であることが好ましく、6.5以上7.5以下であることがより好ましい。精密な銀イオンの検出および定量が求められる場合には、銀イオン検出試薬の呈色の状態をより判別しやすくするという観点から、酸性であることが好ましく、例えば、pHが0以上6.0未満であることが好ましく、0以上3.0以下であることがより好ましい。
【0022】
<その他の添加剤>
本発明の銀イオン検出試薬には、本発明の効果を損なわない範囲内で、上記の必須成分以外に、酸化防止剤、金属封止剤などの添加剤を用いることができる。
【0023】
本発明の銀イオン検出試薬を製造する方法は特に限定されず、例えば、ジチゾン、有機溶媒及びpH調整剤、並びに所望の添加剤を一緒に混合・攪拌する方法などが挙げられる
【0024】
[銀イオンの検出方法]
本発明は、検出対象物の内部又は表面に存在する銀イオンを検出する方法であって、
上記の銀イオン検出試薬と検出対象物とを接触させる工程、及び
接触工程後の銀イオン検出試薬の呈色の有無を判定する工程
を含む、銀イオンの検出方法に関する。
以下、各工程について説明する。
【0025】
<接触工程>
接触工程では、銀イオン検出試薬と検出対象物とを接触させる。
検出対象物としては、抗菌及び/又は抗ウイルス加工された製品、例えば、電車やバスの吊り革、廊下やエスカレーターなどの手すり、エレベーターのボタン、ドアノブなどの不特定多数の人が触るもの、マスクや衣類などの繊維製品、冷蔵庫やエアコンなどの家電製品、天井材、タイル、ガラス、壁紙、壁材、床などの建築資材などが挙げられる。
【0026】
銀イオン検出試薬と検出対象物とを接触させる方法としては、例えば、綿棒やブラシなどを用いて銀イオン検出試薬を検出対象物に塗布する方法、銀イオン検出試薬を検出対象物に滴下又は噴霧する方法、及び銀イオン検出試薬に検出対象物を浸漬する方法などが挙げられる。
また、検出対象物又はその一部を水や有機溶媒などに溶解し、溶解した検出対象物又はその一部と銀イオン検出試薬とを混合して、銀イオン検出試薬と検出対象物とを接触させてもよい。
【0027】
また、本発明の検出方法は、上記の接触工程を複数回繰り返した後、下記の判定工程を実施してもよい。
【0028】
<判定工程>
判定工程では、接触工程後の銀イオン検出試薬の呈色の有無を判定する。
接触工程後の銀イオン検出試薬の呈色の有無を判定する方法としては、例えば、人の目視による判定、画像解析装置等を用いた色調解析による判定、及び光分析装置等を用いた波長測定による判定などが挙げられる。
銀イオン検出試薬の呈色の有無の判定は、銀イオン検出試薬と検出対象物との接触後、例えば、1分ないし20分以内、3分ないし15分以内、又は5分ないし10分以内に実施することができる。
【0029】
[銀イオンの定量方法]
【0030】
本発明は、検出対象物の内部又は表面に存在する銀イオンを定量する方法であって、
上記の銀イオン検出試薬と検出対象物とを接触させて、該銀イオン検出試薬を呈色させる工程、及び
呈色工程後の銀イオン検出試薬の呈色の状態を判定する工程
を含む、銀イオンの定量方法に関する。
以下、各工程について説明する。
【0031】
<呈色工程>
呈色工程では、銀イオン検出試薬と検出対象物とを接触させて、該銀イオン検出試薬を呈色させる。
銀イオン検出試薬と検出対象物とを接触させる方法としては、上述したとおりである。
【0032】
<判定工程>
判定工程では、呈色工程後の銀イオン検出試薬の呈色の状態を判定する。
銀イオン検出試薬の呈色の状態を判定する方法としては、例えば、呈色工程後の銀イオン検出試薬の呈色度合と、銀イオン量と銀イオン検出試薬の呈色度合とが関連付けられた標準色列とを目視で比較して銀イオンを定量する方法が挙げられる。
銀イオン検出試薬の呈色度合は、例えば、一般社団法人日本塗料工業会発行「2019年K版 塗料用標準色」と比較して判定することができ、またL表色系、マンセン表色系及びRGB表色系などで数値化して判定することもできる。
標準色列は、実施例3に示すように、事前に作成されているものであって、銀イオン量と、それに対応する色を段階的に提示したものであり、測定者が銀イオン検出試薬の呈色度合と最も近い色を選択することにより、銀イオンの定量を簡単に実施することができる。
【0033】
また、銀イオン検出試薬の呈色の状態を判定する方法としては、銀イオン検出試薬の呈色度合を分光光度計により測定し、得られた吸光度と予め作成した検量線により銀イオンを定量する方法が挙げられる。
【0034】
銀イオン検出試薬の呈色の状態の判定は、銀イオン検出試薬と検出対象物とを接触させて、該銀イオン検出試薬を呈色させた後、例えば、1分ないし20分以内、3分ないし15分以内、又は5分ないし10分以内に実施することができる。
【0035】
本発明は、上記の銀イオン検出試薬を含む銀イオン検出キットに関する。
本発明の銀イオン検出キットは、銀イオン検出試薬の呈色度合と、銀イオン量と呈色度合とが関連付けられた標準色列、及び/又は、銀イオン濃度と分光光度計で測定した銀イオン検出試薬の吸光度との対応関係を示す検量線をさらに含んでもよい。
【実施例0036】
以下、実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
実施例および比較例の銀イオン検出試薬の色の判別に際し、銀イオン検出試薬の色は、一般社団法人日本塗料工業会発行「2019年K版 塗料用標準色」に基づいて、判定した。なお、参考として目視による銀イオン検出試薬の色を合わせて表に示した。
【0037】
[実施例1及び実施例2、並びに比較例1及び比較例2]
表1に示した組成の原料を混合して、銀イオン検出試薬を調製した。
また、表面コート剤[シルフィーミスト(株式会社タツミ技研製、樹脂分3質量%)又はシルフィー01(株式会社タツミ技研製、樹脂分20質量%)]50mgを、ABS樹脂(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重樹脂)板の表面に25cmとなるように塗布し、乾燥させた。なお、シルフィーミストおよびシルフィー01に含まれる銀イオン量は、同じである。
調製した銀イオン検出試薬に、工業用綿棒(日本綿棒株式会社製A3S-100)を浸し、銀イオン検出試薬に浸した工業用綿棒で、前記表面コート剤を塗布・乾燥させたABS樹脂板の表面25cmを拭き取り、拭き取った工業用綿棒を再び銀イオン検出試薬に浸した。この一連の操作を数回繰り返した後、銀イオン検出試薬を静置して、5分ないし10分後の銀イオン検出試薬の色を判別した。なお、ジチゾンを含む銀イオン検出試薬は、当該検出試薬のpH変化および、ジチゾンと銀イオンとの反応率に応じてそれぞれ色の変化が生じる。具体的には、pHの変化に応じて、酸性から中性へ順に、濃い緑、薄い緑、薄い黄色に色が変化する。また、銀イオン検出試薬は、銀イオンと反応して、反応量に応じて順に(銀イオン検出試薬と銀イオンとの反応率が高くなるにつれて)、灰色、濃い黄色、薄い橙色、濃い橙色、薄いピンク色および濃いピンク色へと色が変化する。
その結果を表2に示す。
【0038】
【表1】
【0039】
【表2】
【0040】
上記表2に示した結果より、本発明の銀イオン検出試薬は、銀イオンを検出できることが明らかであった。
また、本発明の銀イオン検出試薬は、いずれも、表面コート剤に含まれる樹脂分の量に拘わらず、同等の色の変化であった。このことより、本発明の銀イオン検出試薬においては、pH調整剤が樹脂分による銀イオン検出試薬のpH変化を抑制し、銀イオンとの反応由来のみに基づいて銀イオン検出試薬の色の変化が生じたと推察される。
一方、pH調整剤を含まない銀イオン検出試薬は、表面コート剤によって色の変化量が異なり、樹脂分による銀イオン検出試薬のpH変化を抑制できなかった。このことから、本発明の銀イオン検出試薬はpH調整剤を含むことにより、表面コート剤を塗布・乾燥させたABS樹脂板に付着している汚れや表面コート剤に含まれる樹脂分などに起因する検出試薬のpH変化を抑制し、これにより、ジチゾンの変色を実質的に銀イオンのみに起因して生じさせることができる。
【0041】
[実施例3]標準色列の作成
本発明の銀イオン検出試薬の呈色度合と銀イオン量とを関連付けた標準色列を作成した。
実施例1の銀イオン検出試薬と同じ組成の銀イオン検出試薬に、表3に示す量の、抗菌抗ウイルス加工剤(AGアルファ[登録商標]CF-01、株式会社J-ケミカル製)を水で50倍希釈した水溶液(以下「抗菌抗ウイルス加工剤希釈液」とも記載する。)を添加して、5分ないし10分後の銀イオン検出試薬の色を判別した。
その結果を表3及び図1に示す。なお、ジチゾンを含む銀イオン検出試薬は、pHに応じて、酸性から中性へ順に、濃い緑、薄い緑、薄い黄色に色が変化する。また、銀イオン検出試薬は、銀イオンと反応して、反応量に応じて順に(銀イオン検出試薬と銀イオンとの反応率が高くなるにつれて)、灰色、濃い黄色、薄い橙色、濃い橙色、薄いピンク色および濃いピンク色へと色が変化する。
【0042】
【表3】
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の検出試薬及び方法により、検出対象物に抗菌及び/又は抗ウイルス処理が適切に為されたか否かを簡単に調べることができる。
また、本発明の検出試薬及び方法により、抗菌及び/又は抗ウイルス処理が為された検出対象物について、一定期間経過後の銀イオンによる抗菌及び/又は抗ウイルス効果の程度を簡単に調べることができる。
図1