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特開2022-131744燃料電池の温度評価装置、制御装置、及び、温度評価方法
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  • 特開-燃料電池の温度評価装置、制御装置、及び、温度評価方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022131744
(43)【公開日】2022-09-07
(54)【発明の名称】燃料電池の温度評価装置、制御装置、及び、温度評価方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/0432 20160101AFI20220831BHJP
   H01M 8/0438 20160101ALI20220831BHJP
   H01M 8/04537 20160101ALI20220831BHJP
   H01M 8/04694 20160101ALI20220831BHJP
   H01M 8/04701 20160101ALI20220831BHJP
   H01M 8/12 20160101ALN20220831BHJP
   H01M 8/243 20160101ALN20220831BHJP
【FI】
H01M8/0432
H01M8/0438
H01M8/04537
H01M8/04694
H01M8/04701
H01M8/12 101
H01M8/12 102B
H01M8/243
H01M8/12 102C
H01M8/12 102A
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021030851
(22)【出願日】2021-02-26
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】眞竹 徳久
(72)【発明者】
【氏名】森 龍太郎
(72)【発明者】
【氏名】小林 大悟
【テーマコード(参考)】
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
5H126BB06
5H126CC02
5H126CC05
5H127AA07
5H127BA04
5H127BA05
5H127BB02
5H127DB02
5H127DB06
5H127DB16
5H127DB22
5H127DB26
5H127DB36
5H127DB47
5H127DB66
5H127DC42
(57)【要約】
【課題】メンテナンスコストの増大を抑えつつ、長期にわたって燃料電池の発電室温度を継続的に評価する。
【解決手段】燃料電池の温度評価装置は、内部発熱量の初期の内部発熱量と温度推定時の内部発熱量との差分、及び、燃料電池の発電室温度の相関を示す特性マップを記憶部に記憶する。そして、記憶部に記憶された特性マップに基づいて、燃料電池の内部発熱量の差分の算出結果に対応する発電室温度を算出することにより評価する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池の初期の内部発熱量と温度推定時の内部発熱量との差分を算出するための内部発熱量差分算出部と、
前記内部発熱量の差分と前記燃料電池の発電室温度との相関を示す特性マップを記憶するための記憶部と、
前記記憶部に記憶された特性マップに基づいて、前記内部発熱量差分算出部で算出された前記内部発熱量の差分に対応する前記発電室温度を算出するための発電室温度算出部と、
を備える、燃料電池の温度評価装置。
【請求項2】
前記内部発熱量差分算出部は、前記燃料電池における熱収支を求めることにより、前記内部発熱量の差分を算出する、請求項1に記載の燃料電池の温度評価装置。
【請求項3】
前記熱収支は、前記燃料電池に対する燃料ガスの供給量、前記燃料ガスの入口側温度及び出口側温度、前記燃料電池に対する酸化性ガスの供給量、前記酸化性の入口側温度及び出口側温度、前記燃料電池における発電に伴う発熱量に基づいて算出される、請求項2に記載の燃料電池の温度評価装置。
【請求項4】
燃料電池からの排燃料ガスの温度、及び、前記燃料電池からの排酸化性ガスの温度を検出するための温度検出部と、
前記燃料電池からの排燃料ガスの温度、及び、前記燃料電池からの排酸化性ガスの温度と、前記燃料電池の発電室温度との相関を示す特性マップを記憶するための記憶部と、
前記燃料電池が略一定な運転状態にある場合、前記記憶部に記憶された特性マップに基づいて、前記温度検出部の検出結果に対応する前記前記発電室温度を算出するための発電室温度算出部と、
を備える、燃料電池の温度評価装置。
【請求項5】
前記燃料電池は、互いに隣接して配置された複数の燃料電池カートリッジを含み、
前記発電室温度算出部は、前記複数の燃料電池カートリッジのうち端部から最も離れた燃料電池カートリッジについて前記発電室温度を算出する、請求項1から4のいずれか一項に記載の燃料電池の温度評価装置。
【請求項6】
前記特性マップは、前記燃料電池に供給される燃料ガスの種類ごとに用意される、請求項1から5のいずれか一項に記載の燃料電池の温度評価装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の燃料電池の温度評価装置と、
前記発電室温度算出部で算出された前記発電室温度に基づいて前記燃料電池を制御するための制御部と、
を備える、燃料電池の制御装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記発電室温度が許容範囲になるように、前記燃料電池の制御パラメータを制御する、請求項7に記載の燃料電池の制御装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記発電室温度が前記許容範囲の上限温度より低くなるように、前記制御パラメータを制御する、請求項8に記載の燃料電池の制御装置。
【請求項10】
前記許容範囲は、前記燃料電池が備える複数の燃料電池カートリッジの個体差に対応する誤差を含んで規定される、請求項8又は9に記載の燃料電池の制御装置。
【請求項11】
燃料電池の初期の内部発熱量と温度推定時の内部発熱量との差分を算出する工程と、
前記内部発熱量の差分と前記燃料電池の発電室温度との相関を示す特性マップに基づいて、前記内部発熱量の差分に対応する前記発電室温度を算出する工程と、
を備える、燃料電池の温度評価方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、燃料電池の温度評価装置、制御装置、及び、温度評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料ガスと酸化性ガスとを化学反応させることにより発電する燃料電池は、優れた発電効率及び環境対応等の特性を有している。このうち、固体酸化物形燃料電池(Solid Oxide Fuel Cell:SOFC)は、電解質としてジルコニアセラミックスなどのセラミックスが用いられ、水素、都市ガス、天然ガス、石油、メタノール、及び炭素含有原料をガス化設備により製造したガス化ガス等のガスなどを燃料ガスとして供給して、およそ高温雰囲気で反応させて発電を行っている。
【0003】
燃料電池は、例えば、複数の燃料電池セルを含む発電室を有する燃料電池カートリッジを備えてなる。発電室の温度は、上述の固体酸化物形燃料電池では、700℃~1000℃が適正温度とされており、燃料電池の運転時に適切に監視する必要がある。例えば特許文献1では、温度センサである熱電対を、発電室内部における燃料電池セルの温度測定部位に設置し、その検出値を取得することにより発電室の温度監視を行っている。また特許文献2では燃料ガスの温度および流量、酸化剤ガスの温度及び流量、並びに燃料電池スタックから取り出す電流の電流値からそれぞれの燃料電池セルの最高温度を算出するセル状態算出部を有する装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-185853公報
【特許文献2】特開2015-103442公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1では、温度センサである熱電対を発電室内部に位置する温度測定部位に設置することで、発電室温度の監視を行っている。このような熱電対は、一般的に耐久性が数年程度であり、10年程度の耐久性を目標として開発が進められている燃料電池に比べて短い。特に、熱電対が配置される発電室は高温であり、熱電対にとって苛酷な環境である。そのため、燃料電池の発電室温度の監視を継続的に行うためには、熱電対を交換するための工事等が必要となり、燃料電池のメンテナンスコストが増大してしまうことが考えられる。
【0006】
また上記特許文献2では供給される燃料ガスおよび酸化剤ガスの温度、流量とスタックから取り出す電流値から燃料電池セルの最高温度を求めるため、スタックの性能変化に伴う発熱量の増加の影響は考慮されない。
【0007】
本開示の少なくとも一実施形態は上述の事情に鑑みなされたものであり、メンテナンスコストの増大を抑えつつ、長期にわたって燃料電池の発電室温度を継続的に評価可能な燃料電池の温度評価装置、制御装置、及び、温度評価方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の少なくとも一実施形態に係る燃料電池の温度評価装置は、上記課題を解決するために、
燃料電池の初期の内部発熱量と温度推定時の内部発熱量との差分を算出するための内部発熱量差分算出部と、
前記内部発熱量の差分と前記燃料電池の発電室温度との相関を示す特性マップを記憶するための記憶部と、
前記記憶部に記憶された特性マップに基づいて、前記内部発熱量差分算出部で算出された前記内部発熱量の差分に対応する前記発電室温度を算出するための発電室温度算出部と、
を備える。
【0009】
本開示の少なくとも一実施形態に係る燃料電池の制御装置は、上記課題を解決するために、
本開示の少なくとも一実施形態に係る燃料電池の温度評価装置と、
前記発電室温度算出部で算出された前記発電室温度に基づいて前記燃料電池を制御するための制御部と、
を備える。
【0010】
本開示の少なくとも一実施形態に係る燃料電池の温度評価方法は、上記課題を解決するために、
燃料電池の初期の内部発熱量と温度推定時の内部発熱量との差分を算出する工程と、
前記内部発熱量の差分と前記燃料電池の発電室温度との相関を示す特性マップに基づいて、前記内部発熱量の差分に対応する前記発電室温度を算出する工程と、
を備える。
【発明の効果】
【0011】
本開示の少なくとも一実施形態によれば、メンテナンスコストの増大を抑えつつ、長期にわたって燃料電池の発電室温度を継続的に評価可能な燃料電池の温度評価装置、制御装置、及び、温度評価方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】一実施形態に係る燃料電池が備えるセルスタックを示す図である。
図2】一実施形態に係るSOFCモジュールを示す図である。
図3】一実施形態に係るSOFCカートリッジを示す断面図である。
図4図2の圧力容器内における複数のSOFCカートリッジの配置例を示す模式図である。
図5】一実施形態に係る燃料電池の制御装置のブロック構成図である。
図6】一実施形態に係る温度評価方法を示すフローチャートである。
図7図6のステップS10で選択された燃料電池カートリッジを周辺構成とともに簡略的に示す構成図である。
図8】記憶部に記憶された特性マップの一例である。
図9A】他の実施形態に係る燃料電池の制御装置のブロック構成図である。
図9B】記憶部に記憶された特性マップの他の例である。
図10図5の制御部によって実施される燃料電池モジュールの制御方法を示すフローチャートである。
図11図10のステップS25における目標値の修正例である。
図12図10のステップS25における目標値の他の修正例である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明に係る燃料電池の制御装置及び制御方法の一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0014】
以下においては、説明の便宜上、紙面を基準として「上」及び「下」の表現を用いて説明した各構成要素の位置関係は、各々鉛直上方側、鉛直下方側を示すものである。また、本実施形態では、上下方向と水平方向で同様な効果を得られるものは、紙面における上下方向が必ずしも鉛直上下方向に限定することなく、例えば鉛直方向に直交する水平方向に対応してもよい。
【0015】
まず温度評価装置の評価対象である燃料電池の構成について説明する。以下の説明では、燃料電池の一例として固体酸化物形燃料電池(SOFC)について述べる。また固体酸化物形燃料電池(SOFC)のセルスタック101として円筒形(筒状)を例として説明するが、必ずしもこの限りである必要はなく、例えば平板形のセルスタックであってもよい。基体上に燃料電池セルを形成するが、基体ではなく電極(燃料極もしくは空気極)が厚く形成されて、基体を兼用したものでもよい。
【0016】
図1は一実施形態に係る燃料電池が備えるセルスタック101を示す図である。図1では、セルスタック101の一例として、基体管を用いる円筒形セルスタックが示されている。基体管を用いない場合は、例えば燃料極を厚く形成して基体管を兼用してもよく、基体管の使用に限定されることはない。また、本実施形態での基体管は円筒形状を用いたもので説明するが、基体管は筒状であればよく、必ずしも断面が円形に限定されなく、例えば楕円形状でもよい。円筒の周側面を垂直に押し潰した扁平円筒(Flat tubular)等のセルスタックでもよい。
【0017】
セルスタック101は、一例として円筒形状の基体管103と、基体管103の外周面に複数形成された燃料電池セル105と、隣り合う燃料電池セル105の間に形成されたインターコネクタ107とを備える。燃料電池セル105は、燃料極109と固体電解質膜111と空気極113とが積層して形成されている。また、セルスタック101は、基体管103の外周面に形成された複数の燃料電池セル105の内、基体管103の軸方向において最も端の一端に形成された燃料電池セル105の空気極113に、インターコネクタ107を介して電気的に接続されたリード膜115を備え、最も端の他端に形成された燃料電池セル105の燃料極109に電気的に接続されたリード膜115を備える。
【0018】
基体管103は、多孔質材料からなり、例えば、CaO安定化ZrO(CSZ)、CSZと酸化ニッケル(NiO)との混合物(CSZ+NiO)、又はY安定化ZrO(YSZ)、又はMgAlなどを主成分とされる。この基体管103は、燃料電池セル105とインターコネクタ107とリード膜115とを支持すると共に、基体管103の内周面に供給される燃料ガスを基体管103の細孔を介して基体管103の外周面に形成される燃料極109に拡散させるものである。
【0019】
燃料極109は、Niとジルコニア系電解質材料との複合材の酸化物で構成され、例えば、Ni/YSZが用いられる。燃料極109の厚さは50μm~250μmであり、燃料極109はスラリーをスクリーン印刷して形成されてもよい。この場合、燃料極109は、燃料極109の成分であるNiが燃料ガスに対して触媒作用を備える。この触媒作用は、基体管103を介して供給された燃料ガス、例えば、メタン(CH)と水蒸気との混合ガスを反応させ、水素(H)と一酸化炭素(CO)に改質するものである。また、燃料極109は、改質により得られる水素(H)及び一酸化炭素(CO)と、固体電解質膜111を介して供給される酸素イオン(O2-)とを固体電解質膜111との界面付近において電気化学的に反応させて水(HO)及び二酸化炭素(CO)を生成するものである。なお、燃料電池セル105は、この時、酸素イオンから放出される電子によって発電する。
【0020】
燃料極109に供給し利用できる燃料ガスとしては、水素(H)、アンモニア(NH)及び一酸化炭素(CO)、メタン(CH)等の炭化水素系ガス、都市ガス、天然ガスのほか、石油、メタノール、及び石炭等の炭素含有原料をガス化設備により製造したガス化ガスなどが挙げられる。
【0021】
固体電解質膜111は、ガスを通しにくい気密性と、高温で高い酸素イオン導電性とを備えるYSZが主として用いられる。この固体電解質膜111は、空気極で生成される酸素イオン(O2-)を燃料極に移動させるものである。燃料極109の表面上に位置する固体電解質膜111の膜厚は10μm~100μmであり固体電解質膜111はスラリーをスクリーン印刷して形成されてもよい。
【0022】
空気極113は、例えば、LaSrMnO系酸化物、又はLaCoO系酸化物で構成され、空気極113はスラリーをスクリーン印刷又はディスペンサを用いて塗布される。この空気極113は、固体電解質膜111との界面付近において、供給される空気等の酸化性ガス中の酸素を解離させて酸素イオン(O2-)を生成するものである。
【0023】
空気極113は2層構成とすることもできる。この場合、固体電解質膜111側の空気極層(空気極中間層)は高いイオン導電性を示し、触媒活性に優れる材料で構成される。空気極中間層上の空気極層(空気極導電層)は、Sr及びCaドープLaMnOで表されるペロブスカイト型酸化物で構成されても良い。こうすることにより、発電性能をより向上させることができる。
【0024】
酸化性ガスとは,酸素を略15%~30%含むガス であり、代表的には空気が好適であるが、空気以外にも燃焼排ガスと空気の混合ガスや、酸素と空気の混合ガスなどが使用可能である。
【0025】
インターコネクタ107は、SrTiO系などのM1-xTiO(Mはアルカリ土類金属元素、Lはランタノイド元素)で表される導電性ペロブスカイト型酸化物から構成され、スラリーをスクリーン印刷する。インターコネクタ107は、燃料ガスと酸化性ガスとが混合しないように緻密な膜となっている。また、インターコネクタ107は、酸化雰囲気と還元雰囲気との両雰囲気下で安定した耐久性と電気導電性を備える。このインターコネクタ107は、隣り合う燃料電池セル105において、一方の燃料電池セル105の空気極113と他方の燃料電池セル105の燃料極109とを電気的に接続し、隣り合う燃料電池セル105同士を直列に接続するものである。
【0026】
リード膜115は、電子伝導性を備えること、及びセルスタック101を構成する他の材料との熱膨張係数が近いことが必要であることから、Ni/YSZ等のNiとジルコニア系電解質材料との複合材やSrTiO系などのM1-xLxTiO(Mはアルカリ土類金属元素、Lはランタノイド元素)で構成されている。このリード膜115は、インターコネクタ107により直列に接続される複数の燃料電池セル105で発電された直流電力をセルスタック101の端部付近まで導出すものである。
【0027】
次に、図2及び図3を参照して一実施形態に係るSOFCモジュール201(燃料電池モジュール)及びSOFCカートリッジ203(燃料電池カートリッジ)について説明する。ここで、図2は一実施形態に係るSOFCモジュール201を示す図であり、図3は一実施形態に係るSOFCカートリッジ203を示す断面図である。
【0028】
SOFCモジュール201は、図2に示すように、例えば、複数のSOFCカートリッジ203と、これら複数のSOFCカートリッジ203を収納する圧力容器205とを備える。尚、図2には円筒形のSOFCのセルスタック101を例示しているが、必ずしもこの限りである必要はなく、例えば平板形のセルスタックであってもよい。また、SOFCモジュール201は、燃料ガス供給管207と複数の燃料ガス供給枝管207a及び燃料ガス排出管209と複数の燃料ガス排出枝管209aとを備える。また、SOFCモジュール201は、酸化性ガス供給管(不図示)と複数の酸化性ガス供給枝管(図7を参照)及び酸化性ガス排出管(不図示)と複数の酸化性ガス排出枝管(図7を参照)とを備える。
【0029】
燃料ガス供給管207は、圧力容器205の外部に設けられ、SOFCモジュール201の発電量に対応して所定ガス組成と所定流量の燃料ガスを供給する燃料ガス供給部に接続されると共に、複数の燃料ガス供給枝管207aに接続されている。この燃料ガス供給管207は、上述の燃料ガス供給部から供給される所定流量の燃料ガスを、複数の燃料ガス供給枝管207aに分岐して導くものである。また、燃料ガス供給枝管207aは、燃料ガス供給管207に接続されると共に、複数のSOFCカートリッジ203に接続されている。この燃料ガス供給枝管207aは、燃料ガス供給管207から供給される燃料ガスを複数のSOFCカートリッジ203に略均等の流量で導き、複数のSOFCカートリッジ203の発電性能を略均一化させるものである。
【0030】
燃料ガス排出枝管209aは、複数のSOFCカートリッジ203に接続されると共に、燃料ガス排出管209に接続されている。この燃料ガス排出枝管209aは、SOFCカートリッジ203から排出される排燃料ガスを燃料ガス排出管209に導くものである。また、燃料ガス排出管209は、複数の燃料ガス排出枝管209aに接続されると共に、一部が圧力容器205の外部に配置されている。この燃料ガス排出管209は、燃料ガス排出枝管209aから略均等の流量で導出される排燃料ガスを圧力容器205の外部に導くものである。
【0031】
圧力容器205は、内部の圧力が0.1MPa~約3MPa、内部の温度が大気温度~約550℃で運用されるので、耐力性と酸化性ガス中に含まれる酸素などの酸化剤に対する耐食性を保有する材質が利用される。例えばSUS304などのステンレス系材が好適である。
【0032】
ここで、本実施形態においては、複数のSOFCカートリッジ203が集合化されて圧力容器205に収納される。図4図2の圧力容器205内における複数のSOFCカートリッジ203の配置例を示す模式図である。圧力容器205内における複数のSOFCカートリッジ203の配置レイアウトや数は任意でもよいが、本実施形態では、複数のSOFCカートリッジ203が互いに隣接するように配列されている。
【0033】
図4では、圧力容器205内における一つのレイアウト例として、4つのSOFCカートリッジ203A、203B、203C、203Dが一方向に沿って順に配列された場合が示されている。最も左側に配置されたSOFCカートリッジ203Aは、一方側が外部(圧力容器205内の雰囲気又は圧力容器205の内壁面)に露出しており、他方側に隣接するSOFCカートリッジ203Bが配置されている。SOFCカートリッジ203Bは、その両側にSOFCカートリッジ203A及び203Cがそれぞれ隣接して配置されている。SOFCカートリッジ203Cは、その両側にSOFCカートリッジ203B及び203Dがそれぞれ隣接して配置されている。SOFCカートリッジ203Dは、一方側にSOFCカートリッジ203Cが隣接して配置され、他方側は外部(圧力容器205内の雰囲気又は圧力容器205の内壁面)に露出している。
【0034】
SOFCカートリッジ203は、図3に示す通り、複数のセルスタック101と、発電室215と、燃料ガス供給ヘッダ217と、燃料ガス排出ヘッダ219と、酸化性ガス供給ヘッダ221と、酸化性ガス排出ヘッダ223とを備える。また、SOFCカートリッジ203は、上部管板225aと、下部管板225bと、上部断熱体227aと、下部断熱体227bとを備える。なお、本実施形態においては、SOFCカートリッジ203は、燃料ガス供給ヘッダ217と燃料ガス排出ヘッダ219と酸化性ガス供給ヘッダ221と酸化性ガス排出ヘッダ223とが図3のように配置されることで、燃料ガスと酸化性ガスとがセルスタック101の内側と外側とを対向して流れる構造となっているが、必ずしもこの必要はなく、例えば、セルスタック101の内側と外側とを平行して流れる、または酸化性ガスがセルスタック101の長手方向と直交する方向へ流れるようにしても良い。
【0035】
発電室215は、上部断熱体227aと下部断熱体227bとの間に形成された領域である。この発電室215は、セルスタック101の燃料電池セル105が配置された領域であり、燃料ガスと酸化性ガスとを電気化学的に反応させて発電を行う領域である。また、この発電室215のセルスタック101長手方向の中央部付近での温度は、後述する温度評価装置によって評価されることによって監視され、燃料電池モジュール201の定常運転時に、およそ700℃~1000℃の高温雰囲気となる。
【0036】
燃料ガス供給ヘッダ217は、SOFCカートリッジ203の上部ケーシング229aと上部管板225aとに囲まれた領域であり、上部ケーシング229aの上部に設けられた燃料ガス供給孔231aによって、燃料ガス供給枝管207aと連通されている。また、複数のセルスタック101は、上部管板225aとシール部材237aにより接合されており、燃料ガス供給ヘッダ217は、燃料ガス供給枝管207aから燃料ガス供給孔231aを介して供給される燃料ガスを、複数のセルスタック101の基体管103の内部に略均一流量で導き、複数のセルスタック101の発電性能を略均一化させるものである。
【0037】
燃料ガス排出ヘッダ219は、SOFCカートリッジ203の下部ケーシング229bと下部管板225bとに囲まれた領域であり、下部ケーシング229bに備えられた燃料ガス排出孔231bによって、図示しない燃料ガス排出枝管209aと連通されている。また、複数のセルスタック101は、下部管板225bとシール部材237bにより接合されており、燃料ガス排出ヘッダ219は、複数のセルスタック101の基体管103の内部を通過して燃料ガス排出ヘッダ219に供給される排燃料ガスを集約して、燃料ガス排出孔231bを介して燃料ガス排出枝管209aに導くものである。
【0038】
SOFCモジュール201の発電量に対応して所定ガス組成と所定流量の酸化性ガスを図示しない酸化性ガス供給枝管へと分岐して、複数のSOFCカートリッジ203へ供給する。酸化性ガス供給ヘッダ221は、SOFCカートリッジ203の下部ケーシング229bと下部管板225bと下部断熱体227bとに囲まれた領域であり、下部ケーシング229bの側面に設けられた酸化性ガス供給孔233aによって、図示しない酸化性ガス供給枝管と連通されている。この酸化性ガス供給ヘッダ221は、図示しない酸化性ガス供給枝管から酸化性ガス供給孔233aを介して供給される所定流量の酸化性ガスを、後述する酸化性ガス供給隙間235aを介して発電室215に導くものである。
【0039】
酸化性ガス排出ヘッダ223は、SOFCカートリッジ203の上部ケーシング229aと上部管板225aと上部断熱体227aとに囲まれた領域であり、上部ケーシング229aの側面に設けられた酸化性ガス排出孔233bによって、図示しない酸化性ガス排出枝管と連通されている。この酸化性ガス排出ヘッダ223は、発電室215から、後述する酸化性ガス排出隙間235bを介して燃料ガス排出ヘッダ223に供給される排酸化性ガスを、酸化性ガス排出孔233bを介して図示しない酸化性ガス排出枝管に導くものである。
【0040】
上部管板225aは、上部ケーシング229aの天板と上部断熱体227aとの間に、上部管板225aと上部ケーシング229aの天板と上部断熱体227aとが略平行になるように、上部ケーシング229aの側板に固定されている。また上部管板225aは、SOFCカートリッジ203に備えられるセルスタック101の本数に対応した複数の孔を有し、該孔にはセルスタック101が夫々挿入されている。この上部管板225aは、複数のセルスタック101の一方の端部をシール部材237a及び接着部材のいずれか一方又は両方を介して気密に支持すると共に、燃料ガス供給ヘッダ217と酸化性ガス排出ヘッダ223とを隔離するものである。
【0041】
上部断熱体227aは、上部ケーシング229aの下端部に、上部断熱体227aと上部ケーシング229aの天板と上部管板225aとが略平行になるように配置され、上部ケーシング229aの側板に固定されている。また、上部断熱体227aには、SOFCカートリッジ203に備えられるセルスタック101の本数に対応して、複数の孔が設けられている。この孔の直径はセルスタック101の外径よりも大きく設定されている。上部断熱体227aは、この孔の内面と、上部断熱体227aに挿通されたセルスタック101の外面との間に形成された酸化性ガス排出隙間235bを備える。
【0042】
この上部断熱体227aは、発電室215と酸化性ガス排出ヘッダ223とを仕切るものであり、上部管板225aの周囲の雰囲気が高温化し強度低下や酸化性ガス中に含まれる酸化剤による腐食が増加することを抑制する。上部管板225a等はニッケル基合金などの高温耐久性のある金属材料から成るが、上部管板225a等が発電室215内の高温に晒されて上部管板225a等内の温度差が大きくなることで熱変形することを防ぐものである。また、上部断熱体227aは、発電室215を通過して高温に晒された排酸化性ガスを、酸化性ガス排出隙間235bを通過させて酸化性ガス排出ヘッダ223に導くものである。
【0043】
本実施形態によれば、上述したSOFCカートリッジ203の構造により、燃料ガスと酸化性ガスとがセルスタック101の内側と外側とを対向して流れるものとなっている。このことにより、排酸化性ガスは、基体管103の内部を通って発電室215に供給される燃料ガスとの間で熱交換がなされ、金属材料から成る上部管板225a等が座屈などの変形をしない温度に冷却されて酸化性ガス排出ヘッダ223に供給される。また、燃料ガスは、発電室215から排出される排酸化性ガスとの熱交換により昇温され、発電室215に供給される。その結果、ヒーター等を用いることなく発電に適した温度に予熱昇温された燃料ガスを発電室215に供給することができる。
【0044】
下部管板225bは、下部ケーシング229bの底板と下部断熱体227bとの間に、下部管板225bと下部ケーシング229bの底板と下部断熱体227bとが略平行になるように下部ケーシング229bの側板に固定されている。また下部管板225bは、SOFCカートリッジ203に備えられるセルスタック101の本数に対応した複数の孔を有し、該孔にはセルスタック101が夫々挿入されている。この下部管板225bは、複数のセルスタック101の他方の端部をシール部材237b及び接着部材のいずれか一方又は両方を介して気密に支持すると共に、燃料ガス排出ヘッダ219と酸化性ガス供給ヘッダ221とを隔離するものである。
【0045】
下部断熱体227bは、下部ケーシング229bの上端部に、下部断熱体227bと下部ケーシング229bの底板と下部管板225bとが略平行になるように配置され、下部ケーシング229bの側板に固定されている。また、下部断熱体227bには、SOFCカートリッジ203に備えられるセルスタック101の本数に対応して、複数の孔が設けられている。この孔の直径はセルスタック101の外径よりも大きく設定されている。下部断熱体227bは、この孔の内面と、下部断熱体227bに挿通されたセルスタック101の外面との間に形成された酸化性ガス供給隙間235aを備える。
【0046】
この下部断熱体227bは、発電室215と酸化性ガス供給ヘッダ221とを仕切るものであり、下部管板225bの周囲の雰囲気が高温化し強度低下や酸化性ガス中に含まれる酸化剤による腐食が増加することを抑制する。下部管板225b等はニッケル基合金などの高温耐久性のある金属材料から成るが、下部管板225b等が高温に晒されて下部管板225b等内の温度差が大きくなることで熱変形することを防ぐものである。また、下部断熱体227bは、酸化性ガス供給ヘッダ221に供給される酸化性ガスを、酸化性ガス供給隙間235aを通過させて発電室215に導くものである。
【0047】
本実施形態によれば、上述したSOFCカートリッジ203の構造により、燃料ガスと酸化性ガスとがセルスタック101の内側と外側とを対向して流れるものとなっている。このことにより、基体管103の内部を通って発電室215を通過した排燃料ガスは、発電室215に供給される酸化性ガスとの間で熱交換がなされ、金属材料から成る下部管板225b等が座屈などの変形をしない温度に冷却されて燃料ガス排出ヘッダ219に供給される。また、酸化性ガスは排燃料ガスとの熱交換により昇温され、発電室215に供給される。その結果、ヒーター等を用いることなく発電に必要な温度に昇温された酸化性ガスを発電室215に供給することができる。
【0048】
発電室215で発電された直流電力は、複数の燃料電池セル105に設けたNi/YSZ等からなるリード膜115によりセルスタック101の端部付近まで導出した後に、SOFCカートリッジ203の集電部材(不図示)に集電板(不図示)を介して集電して、各SOFCカートリッジ203の外部へと取り出される。前記集電部材によってSOFCカートリッジ203の外部に導出された直流電力は、各SOFCカートリッジ203の発電電力を所定の直列数および並列数へと相互に接続され、SOFCモジュール201の外部へと導出されて、図示しないパワーコンディショナ等の電力変換装置(インバータなど)により所定の交流電力へと変換されて、電力供給先(例えば、負荷設備や電力系統)へと供給される。
【0049】
上記構成を有する燃料電池モジュール201は、制御ユニットとして制御装置300を備える。制御装置300は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、及びコンピュータ読み取り可能な記憶媒体等から構成されている。そして、各種機能を実現するための一連の処理は、一例として、プログラムの形式で記憶媒体等に記憶されており、このプログラムをCPUがRAM等に読み出して、情報の加工・演算処理を実行することにより、各種機能が実現される。尚、プログラムは、ROMやその他の記憶媒体に予めインストールしておく形態や、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記憶された状態で提供される形態、有線又は無線による通信手段を介して配信される形態等が適用されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記憶媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリ等である。
【0050】
図5は一実施形態に係る燃料電池(燃料電池モジュール201)の制御装置300のブロック構成図である。制御装置300は、温度評価装置302と、制御部304とを備える。温度評価装置302は、燃料電池モジュール201が備える燃料電池カートリッジ203における発電室215の温度(以下、適宜「発電室温度T」と称する)を評価するための構成であり、内部発熱量差分算出部306と、記憶部308と、発電室温度算出部310とを備える。制御部304は、温度評価装置302で評価された発電室温度Tに基づいて、燃料電池モジュール201を制御するための構成である。
【0051】
温度評価装置302は、燃料電池モジュール201が備える複数の燃料電池カートリッジ203のうち少なくとも1つにおける発電室温度Tを評価する。つまり、温度評価装置302は、複数の複数の燃料電池カートリッジ203から選択された一部について発電室温度Tを評価してもよいし、複数の複数の燃料電池カートリッジ203の各々について発電室温度Tを評価してもよい。
【0052】
本実施形態では、温度評価装置302の機能をわかりやすく説明するために、複数の燃料電池カートリッジ203から選択された1つの燃料電池カートリッジ203について発電室温度Tを評価する場合について説明する。この場合、評価対象となる燃料電池カートリッジ203は、後述するように、複数の燃料電池カートリッジ203の配置レイアウトに基づいて選択されてもよい。
【0053】
内部発熱量差分算出部306は、評価対象となる燃料電池カートリッジ203における内部発熱量の初期状態と温度推定時の発熱量の差分ΔQ(以下、適宜、「内部発熱量差分ΔQ」と称する)を算出するための構成である。 内部発熱量差分ΔQの算出は、例えば、燃料電池カートリッジ203における熱収支(ヒートバランス)を求めることにより行われる。熱収支は、燃料電池カートリッジ203に対する既知であるカートリッジの初期状態の発電に伴う発熱量を含んだ入熱量と排熱量との収支に基づいて求められ、計測されない入熱量と排熱量との差分は燃料電池からの外部放熱損出Qlossとなる。
【0054】
記憶部308は、初期状態の内部発熱量Q0と温度推定時の内部発熱量Qとの差分ΔQと発電室温度Tとの相関を示す特性マップMを記憶するための構成である。内部発熱量差分ΔQと発電室温度Tとの間には相関があり、予め実験的、試験的又はシミュレーション的手法により特性マップMが規定される。特性マップMの傾向として、内部発熱量差分ΔQが大きいほど燃料電池カートリッジ203から排出される熱量は増加(温度上昇)し、発電室温度は上昇する。燃料電池カートリッジ203の発電特性や燃料電池カートリッジ203の運転条件を模擬した3次元温度シミュレーションを行うことでより詳細な発電室215内の温度分布を予測でき最高温度や最低温度が生じる位置を把握することが可能となる。このような特性マップMを各条件に応じて、予め記憶部308に記憶されて用意されることで、適宜読み出し可能である。
【0055】
発電室温度算出部310は、特性マップMに基づいて内部発熱量差分ΔQに対応する発電室温度Tを算出するための構成である。特性マップMは、上述したように内部発熱量差分ΔQと発電室温度Tとの相関を示すため、発電室温度算出部310は記憶部308にアクセスして取得した特性マップMに基づいて、内部発熱量差分算出部306で算出された内部発熱量の差分ΔQに対応する発電室温度Tを算出する。尚、内部発熱量差分ΔQに替えて初期に設定した内部発熱量Q0に内部発熱量差分ΔQを加えた内部発熱量Qから発電室温度Tを算出する特性マップを用いてもよい。
【0056】
制御部304は、このように温度評価装置302で評価された発電室温度Tを取得することにより、発電室温度Tに基づいて燃料電池モジュール201の制御を行う。尚、温度評価装置302で評価された発電室温度Tは、制御部304で燃料電池モジュール201の制御に用いることに加えて、又は、代えて、例えばディスプレイのような表示部に表示することで人間が把握することで、燃料電池モジュール201の各種オペレーションに利用してもよい。
【0057】
続いて上記構成を有する温度評価装置302によって実施される温度評価方法について、より具体的に説明する。図6は一実施形態に係る温度評価方法を示すフローチャートである。
【0058】
まず温度評価装置302は、燃料電池モジュール201が備える複数の燃料電池カートリッジ203から、発電室温度Tの評価対象となる少なくとも1つの燃料電池カートリッジ203を選択する(ステップS10)。ここでは、温度評価装置302の機能をわかりやすく説明するために、複数の燃料電池カートリッジ203から選択された1つの燃料電池カートリッジ203について発電室温度Tを評価する場合について説明する。この場合、評価対象となる燃料電池カートリッジ203は、後述するように、複数の燃料電池カートリッジ203の配置レイアウトに基づいて選択されてもよい。
【0059】
例えば図4を参照して前述したように、一方向に沿って複数の燃料電池カートリッジ203A、203B、203C、203Dが互いに隣接する配置レイアウトの場合、内側に配置された燃料電池カートリッジ203B、203Cは、外側に配置された燃料電池カートリッジ203A、203Dに比べて放熱が不利であるため高温になりやすいため、これらの燃料電池カートリッジ203B、203Cのいずれかを選択することで、発電室温度Tが許容範囲の上限値を超えることを監視する際に有用である。一方で、外側に配置された燃料電池カートリッジ203A、203Dは、内側に配置された燃料電池カートリッジ203B、203Cに比べて放熱が有利であるため低温になりやすいため、これらの燃料電池カートリッジ203A、203Dのいずれかを選択することで、発電室温度Tが許容範囲の下限値を下回ることを監視する際に有用である。
【0060】
ここで図7図6のステップS10で選択された燃料電池カートリッジ203を周辺構成とともに簡略的に示す構成図である。図7では、評価対象となる燃料電池カートリッジ203に対して燃料ガスを供給するための燃料ガス供給枝管207aと、燃料電池カートリッジ203から燃料ガスを排出するための燃料ガス排出枝管209aと、燃料電池カートリッジ203に対して酸化性ガスを供給するための酸化性ガス供給枝管207bと、燃料電池カートリッジ203から酸化性ガスを排出するための酸化性ガス排出枝管209bとが示されている。
【0061】
燃料電池カートリッジ203には、燃料ガス供給枝管207aを介して温度TF1、流量Fの燃料ガスが供給されるとともに、酸化性ガス供給枝管207bを介して温度TA1、流量Aの酸化性ガスが供給される。また燃料電池カートリッジ203からは、燃料ガス排出枝管209aを介して温度TF2の燃料ガスが排出されるとともに、酸化性ガス排出枝管209bを介して温度TA2の酸化性ガスが排出される。
【0062】
また燃料電池カートリッジ203は、前記集電部材によって外部に直流電力を導出するための出力回路320を有する。当該出力回路320から導出される直流電力は、出力電流A及び出力電圧Vを有する。
【0063】
尚、これらの温度TF1、TF2、TA1、TA2、流量F、A、出力電流A及び出力電圧Vは、それぞれ対応するセンサによって検出可能であり、温度評価装置302は、これらのセンサの検出値を取得可能に構成される。
【0064】
続いて温度評価装置302は、燃料電池モジュール201に対する出力指令を取得し(ステップS11)、当該出力指令に基づいてステップS10で選択された燃料電池カートリッジ203における出力電流Aの目標値(出力電流目標値)を設定する(ステップS12)。燃料電池カートリッジ203では、初期値又は計画値として出力電流A及び出力電圧Vに関する特性(いわゆるI-V特性)が規定されており、ステップS12では、当該特性に基づいて、ステップS11で取得された出力指令に対応する出力電流目標値が設定される。
【0065】
続いて温度評価装置302は、ステップS12で設定された出力電流目標値に基づいて、燃料電池カートリッジ203に供給される燃料ガスの流量F、及び、酸化性ガスの流量Aの目標値を設定する(ステップS13)。つまり、ステップS13では、燃料電池カートリッジ203の出力電流AをステップS12で設定された出力電流目標値にするために、燃料電池カートリッジ203に供給されるべき燃料ガスの流量F及び酸化性ガスの流量Aの目標値がそれぞれ求められる。このような燃料ガスの流量F及び酸化性ガスの流量Aに関する目標値の算出は、燃料電池カートリッジ203について予め規定された燃料利用率Uf及び空気利用率Uaを用いて行われる。
【0066】
続いて内部発熱量差分算出部306は、燃料電池カートリッジ203における熱収支(ヒートバランス)に基づいて、内部発熱量差分ΔQを算出する(ステップS14)。ステップS14における内部発熱量差分ΔQの算出は、燃料電池カートリッジ203における熱収支に基づいて行われる。熱収支は、燃料電池カートリッジ203に対する入熱量と排熱量との収支に基づいて求められ、初期の内部発熱量Q0と温度推定時の内部発熱量Qとの差分として、内部発熱量の差分ΔQが算出される。
【0067】
ステップS14における初期の内部発熱量との差分ΔQの算出は、燃料電池カートリッジ203における初期の内部発熱量Q0と、温度推定時の燃料電池カートリッジ203におけるヒートマスバランスから求められる内部発熱量Qとを用いて、次式により行われる。
ΔQ=Q-Q0 (1)
【0068】
内部発熱量Qは、ステップS13で設定された燃料ガスの流量F及び酸化性ガスの流量Aに関する目標値、並びに、燃料電池カートリッジ203に設けられた各種センサによって検出された燃料ガスの入口側温度TF1(供給温度)及び出口側温度TF2(排出温度)、燃料電池カートリッジ203から排出される酸化性ガスの入口側温度TA1(供給温度)及び出口側温度TA2(排出温度)に基づいて熱収支を評価することにより算出される。また発電室温度推定の基準となる初期の内部発熱量Q0は、燃料電池カートリッジ203における発電に伴う発熱量として初期のカートリッジのI-V特性を基づいて算出される。
【0069】
尚、本実施形態の発熱量Qを算出するための熱収支の算出では、燃料電池カートリッジ203における燃料ガス及び酸化性ガスの排出流量は電流と設定された燃料利用率Ufおよび空気利用率Uaから計算で得られる流量を用いてもよい。
【0070】
続いて発電室温度算出部310は、ステップS14で算出された内部発熱量差分ΔQに基づいて発電室温度Tを算出する(ステップS15)。内部発熱量差分ΔQと発電室温度Tとの相関は、上述のように記憶部308に記憶された特性マップMとして予め記憶されており、発電室温度算出部310は特性マップMに基づいて、ステップS14で算出された内部発熱量差分ΔQに対応する発電室温度Tを求める。
【0071】
図8は記憶部308に記憶された特性マップMの一例である。特性マップMは、前述のように内部発熱量差分ΔQと発電室温度Tとの相関を規定し、内部発熱量差分ΔQが増加するにしたがって発電室温度Tが増加する傾向を有する。図8では、内部発熱量差分ΔQと発電室温度Tとが比例関係にある場合が一例として示されている。
【0072】
このような特性マップMは、燃料電池カートリッジ203に供給される燃料ガスの種類ごとに用意されてもよい。一般的に燃料ガスの種類によって内部発熱量Qが変化するためである。例えば、燃料ガスとして都市ガスを使用した場合、発電反応で吸熱が生じるが、燃料ガスとして水素ガスを使用した場合、発電反応において吸熱が生じないため、燃料ガスの種類によって発電室温度Tが影響を受ける。
【0073】
このように温度評価装置302では、発電室215に熱電対のような温度センサを配置することなく、発電室温度Tを好適に評価することができる。そのため、温度センサの交換工事のようなメンテナンスが不要であり、長期にわたって発電室温度Tの監視が可能である。
【0074】
ここで図9Aは他の実施形態に係る燃料電池(燃料電池モジュール201)の制御装置300´のブロック構成図である。制御装置300´は前述の制御装置300(図5を参照)と比較して、温度評価装置302が内部発熱量差分算出部306に代えて温度検出部307を備える点で異なっている。
【0075】
ここで発電室温度をより簡易的に推定する実施例について説明する。
温度検出部307は、燃料電池カートリッジ203の排燃料ガスの温度TF2、及び、排酸化性ガスの温度TA2を検出するための構成である。制御装置300´では、排燃料ガスの温度TF2及び排酸化性ガスの温度TA2と、発電室温度Tとの相関が特性マップMとして記憶部308に記憶されている。そして、発電室温度算出部310は、燃料電池モジュール201が略一定な運転状態にある場合に、記憶部308に記憶された特性マップMに基づいて、温度検出部307の検出結果に対応する発電室温度Tを算出する。
【0076】
図9Bは記憶部308に記憶された特性マップMの他の例である。特性マップMは、前述のように排燃料ガスの温度TF2及び排酸化性ガスの温度TA2と、発電室温度Tとの相関を規定したものである。発電出力や供給空気流量など発電室温度への影響が大きい条件毎に特性マップを複数枚設定・記憶し、運転条件に近い特性マップを適宜選択できるようにしておくことで簡易的により精度の高い発電室温度の推定が可能となる。
【0077】
このように制御装置300´では、燃料電池モジュール201が略一定な運転状態にある場合、燃料電池カートリッジ203の極端な状態変化(例えばカートリッジ内部での燃料リークの大量発生など)がなければ熱収支は安定しているため、発電室温度との相関が大きい燃料電池カートリッジ203からの排出される燃料ガスの温度TF2、及び、酸化性ガスの温度TA2に基づいて、簡易的に発電室温度Tを評価することができる。
【0078】
制御部304は、上述のように評価された発電室温度Tに基づいて燃料電池モジュール201を制御するための構成である。具体的には、制御部304は、温度評価装置302から取得した発電室温度Tが、予め設定された許容範囲になるように、燃料電池モジュール201の制御パラメータの少なくとも1つを調整する。
【0079】
図10図5の制御部304によって実施される燃料電池モジュール201の制御方法を示すフローチャートである。
【0080】
まず制御部304は、温度評価装置302から評価結果である発電室温度Tを取得する(ステップS20)。続いて制御部304は、発電室温度Tの許容範囲TRを取得する(ステップS21)。発電室温度Tの許容範囲TRは、図8に示すように、燃料電池カートリッジ203にとって適正な上限温度TH及び下限温度TLによって特定される温度範囲として予め設定される。
【0081】
尚、発電室温度Tの許容範囲TRには、所定の誤差に対応するマージンが含まれていてもよい。例えば、燃料電池モジュール201を構成する複数の燃料電池カートリッジ203には少なからず個体差が存在するため、当該個体差を考慮して許容範囲TRを設定してもよい。
【0082】
続いて制御部304は、燃料電池モジュール201に対する出力指令に基づいて制御パラメータの目標値を算出し(ステップS22)、ステップS20で取得した発電室温度Tと、ステップS21で取得した許容範囲TRとを比較することにより、発電室温度Tが許容範囲TR内であるか否かを判定する(ステップS23)。その結果、発電室温度Tが許容範囲TR内である場合(ステップS23:YES)、ステップS22で算出された目標値になるように制御パラメータを調整することにより、燃料電池モジュール201の制御を実施する(ステップS24)。
【0083】
一方、発電室温度Tが許容範囲TR内でない場合(ステップS23:NO)、制御部304は、ステップS22で算出された燃料電池モジュール201に対する出力指令に基づく制御パラメータの目標値を修正し(ステップS25)、修正後の目標値になるように制御パラメータを調整することにより、燃料電池モジュール201の制御を実施する(ステップS24)。その結果、燃料電池モジュール201は、発電室温度Tが許容範囲TR内になるように制御される。
【0084】
例えば、図11でケース1として示されるように、温度評価装置302によって評価された発電室温度T1(内部発熱量差分ΔQ1に対応)が許容範囲TRの上限温度THを超えている場合、制御部304は、特性マップMに基づいて、発電室温度Tが上限温度TH以下になる内部発熱量差分ΔQ2を特定し、当該内部発熱量の差分ΔQ2が実現されるように制御パラメータの目標値を修正する。これにより、ケース2で示されるように、発電室温度Tが許容範囲TR内になるように、燃料電池モジュール201の制御が行われる。
【0085】
また例えば、図12でケース3として示されるように、温度評価装置302によって評価された発電室温度T3(内部発熱量差分ΔQ3に対応)が許容範囲TRの上限温度THを下回っている場合、制御部304は、特性マップMに基づいて、発電室温度Tが下限温度TL以上になる内部発熱量差分ΔQ4を特定し、当該内部発熱量差分ΔQ4が実現されるように制御パラメータの目標値を修正する。これにより、ケース4で示されるように、発電室温度Tが許容範囲TR内になるように、燃料電池モジュール201の制御が行われる。
【0086】
以上説明したように、上記実施形態によれば、メンテナンスコストの増大を抑えつつ、長期にわたって燃料電池の発電室温度を継続的に評価な燃料電池の温度評価装置及び温度評価方法を提供できる。また、このように評価された発電室温度を用いて、燃料電池を好適に制御可能である。
【0087】
その他、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した実施形態を適宜組み合わせてもよい。
【0088】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
【0089】
(1)一態様に係る燃料電池の温度評価装置は、
燃料電池(例えば上記実施形態の燃料電池カートリッジ203)の初期の内部発熱量と温度推定時の内部発熱量との差分(例えば上記実施形態の内部発熱量差分ΔQ)を算出するための内部発熱量差分算出部(例えば上記実施形態の内部発熱量差分算出部306)と、
前記内部発熱量の差分と前記燃料電池の発電室温度(例えば上記実施形態の発電室温度T)との相関を示す特性マップ(例えば上記実施形態の特性マップM)を記憶するための記憶部(例えば上記実施形態の記憶部308)と、
前記記憶部に記憶された特性マップに基づいて、前記内部発熱量差分算出部で算出された前記内部発熱量の差分に対応する前記発電室温度を算出するための発電室温度算出部(例えば上記実施形態の発電室温度算出部310)と、
を備える。
【0090】
上記(1)の態様によれば、発電室に熱電対のような温度センサを配置することなく、発電室温度を好適に評価することができる。そのため、温度センサの交換工事のようなメンテナンスが不要であり、長期にわたって発電室温度の監視が可能である。
【0091】
(2)他の態様では、上記(1)の態様において、
前記内部発熱量差分算出部は、前記燃料電池における熱収支を求めることにより、前記内部発熱量差分を算出する。
【0092】
上記(2)の態様によれば、燃料電池における熱収支に基づいて内部発熱量の差分を好適に算出できる。
【0093】
(3)他の態様では、上記(2)の態様において、
前記熱収支は、前記燃料電池に対する燃料ガスの供給量、前記燃料ガスの入口側温度及び出口側温度、前記燃料電池に対する酸化性ガスの供給量、前記酸化性の入口側温度及び出口側温度、前記燃料電池における発電に伴う発熱量に基づいて算出される。
【0094】
上記(3)の態様によれば、これらの要素を考慮することで、燃料電池における熱収支を好適に求めることができる。
【0095】
(4)他の態様に係る燃料電池の温度評価装置は、
燃料電池(例えば上記実施形態の燃料電池カートリッジ203)からの排燃料ガスの温度(例えば上記実施形態の温度TF2)、及び、排酸化性ガスの温度(例えば上記実施形態の温度TA2)を検出するための温度検出部(例えば上記実施形態の温度検出部307)と、
前記燃料電池からの排燃料ガスの温度、及び、前記燃料電池からの排酸化性ガスの温度と、前記燃料電池の発電室温度(例えば上記実施形態の発電室温度T)との相関を示す特性マップ(例えば上記実施形態の特性マップM)を記憶するための記憶部(例えば上記実施形態の記憶部308)と、
前記燃料電池が略一定な運転状態にある場合、前記記憶部に記憶された特性マップに基づいて、前記温度検出部の検出結果に対応する前記前記発電室温度を算出するための発電室温度算出部(例えば上記実施形態の発電室温度算出部310)と、
を備える。
【0096】
上記(4)の態様によれば、燃料電池の運転状態が略一定な場合には、燃料電池から排出される燃料ガス及び酸化性ガスの温度に基づいて、簡易的に発電室温度を算出することができる。
【0097】
(5)他の態様では、上記(1)から(4)のいずれか一態様において、
前記燃料電池は、互いに隣接して配置された複数の燃料電池カートリッジを含み、
前記発電室温度算出部は、前記複数の燃料電池カートリッジのうち端部から最も離れた燃料電池カートリッジについて前記発電室温度を算出する。
【0098】
上記(5)の態様によれば、燃料電池が、複数の燃料電池カートリッジが一方向に沿って互いに隣接するように配列されて構成される場合、端部から最も離れた燃料電池カートリッジについて発電室温度が算出される。これにより、放熱がされにくく最も温度上昇が懸念される燃料電池カートリッジについて発電室温度を求めることで、燃料電池の温度が上限温度を超えることを好適に監視できる。
【0099】
(6)他の態様では、上記(1)から(5)のいずれか一態様において、
前記特性マップは、前記燃料電池に供給される燃料ガスの種類ごとに用意される。
【0100】
上記(6)の態様によれば、燃料ガスの種類によって内部発熱量が変化することに応じて、燃料ガスの種類ごとに特性マップが用意される。
【0101】
(7)一態様に係る燃料電池の制御装置(例えば上記実施形態の制御装置300、300´)は、
上記(1)から(6)のいずれか一態様の燃料電池の温度評価装置(例えば上記実施形態の温度評価装置302)と、
前記発電室温度算出部で算出された前記発電室温度に基づいて前記燃料電池を制御するための制御部(例えば上記実施形態の制御部304)と、
を備える。
【0102】
上記(7)の態様によれば、上述の温度評価装置で評価された発電室温度に基づいて、燃料電池を好適に制御できる。
【0103】
(8)他の態様では、上記(7)の態様において、
前記制御部は、前記発電室温度が許容範囲(例えば上記実施形態の許容範囲TR)になるように、前記燃料電池の制御パラメータを制御する。
【0104】
上記(8)の態様によれば、上述の温度評価装置で評価された発電室温度を用いて、当該発電室温度が許容範囲になるように燃料電池を好適に制御できる。
【0105】
(9)他の態様では、上記(8)の態様において、
前記制御部は、前記発電室温度が前記許容範囲の上限温度より低くなるように、前記制御パラメータを制御する。
【0106】
上記(9)の態様によれば、評価結果である発電室温度が許容範囲の上限温度より高い場合には、発電室温度が許容範囲内になるように、燃料電池モジュールの制御が行われる。
【0107】
(10)他の態様では、上記(8)又は(9)の態様において、
前記許容範囲は、前記燃料電池が備える複数の燃料電池カートリッジの個体差に対応する誤差を含んで規定される。
【0108】
上記(10)の態様によれば、燃料電池を構成する複数の燃料電池カートリッジ間に個体差がある場合においても、当該個体差による誤差を考慮して許容範囲を規定することで、各燃料電池カートリッジの発電室温度が許容範囲に収まるように燃料電池の制御が可能となる。
【0109】
(11)一態様に係る燃料電池の温度評価方法は、
燃料電池(例えば上記実施形態の燃料電池カートリッジ203)の初期の内部発熱量と温度推定時の内部発熱量との差分(例えば上記実施形態の内部発熱量差分ΔQ)を算出する工程と、
前記内部発熱量の差分と前記燃料電池の発電室温度(例えば上記実施形態の発電室温度T)との相関を示す特性マップ(例えば上記実施形態の特性マップM)に基づいて、前記内部発熱量の差分に対応する前記発電室温度を算出する工程と、
を備える。
【0110】
上記(11)の態様によれば、発電室に熱電対のような温度センサを配置することなく、発電室温度を好適に評価することができる。そのため、温度センサの交換工事のようなメンテナンスが不要であり、長期にわたって発電室温度の監視が可能である。
【符号の説明】
【0111】
101 セルスタック
103 基体管
105 燃料電池セル
107 インターコネクタ
109 燃料極
111 固体電解質膜
113 空気極
115 リード膜
201 燃料電池モジュール
203 燃料電池カートリッジ
205 圧力容器
207 燃料ガス供給管
207a 燃料ガス供給枝管
207b 酸化性ガス供給枝管
209 燃料ガス排出管
209a 燃料ガス排出枝管
209b 酸化性ガス排出枝管
215 発電室
217 燃料ガス供給ヘッダ
219 燃料ガス排出ヘッダ
221 酸化性ガス供給ヘッダ
223 酸化性ガス排出ヘッダ
225a 上部管板
225b 下部管板
227a 上部断熱体
227b 下部断熱体
229a 上部ケーシング
229b 下部ケーシング
231a 燃料ガス供給孔
231b 燃料ガス排出孔
233a 酸化性ガス供給孔
233b 酸化性ガス排出孔
235a 酸化性ガス供給隙間
235b 酸化性ガス排出隙間
237a,237b シール部材
300 制御装置
302 温度評価装置
304 制御部
306 内部発熱量差分算出部
307 温度検出部
308 記憶部
310 発電室温度算出部
320 出力回路

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10
図11
図12
【手続補正書】
【提出日】2021-12-03
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池の初期特性として規定されたI-V特性に基づいて算出される前記燃料電池の初期の内部発熱量と温度推定時の内部発熱量との差分を算出するための内部発熱量差分算出部と、
前記内部発熱量の差分と前記燃料電池の発電室温度との相関を示す特性マップを記憶するための記憶部と、
前記記憶部に記憶された特性マップに基づいて、前記内部発熱量差分算出部で算出された前記内部発熱量の差分に対応する前記発電室温度を算出するための発電室温度算出部と、
を備える、燃料電池の温度評価装置。
【請求項2】
前記内部発熱量差分算出部は、前記燃料電池における熱収支を求めることにより、前記内部発熱量の差分を算出する、請求項1に記載の燃料電池の温度評価装置。
【請求項3】
前記熱収支は、前記燃料電池に対する燃料ガスの供給量、前記燃料ガスの入口側温度及び出口側温度、前記燃料電池に対する酸化性ガスの供給量、前記酸化性ガスの入口側温度及び出口側温度、前記燃料電池における発電に伴う発熱量に基づいて算出される、請求項2に記載の燃料電池の温度評価装置。
【請求項4】
燃料電池からの排燃料ガスの温度、及び、前記燃料電池からの排酸化性ガスの温度を検出するための温度検出部と、
前記燃料電池からの排燃料ガスの温度、及び、前記燃料電池からの排酸化性ガスの温度と、前記燃料電池の発電室温度との相関を示す特性マップを記憶するための記憶部と、
前記燃料電池が略一定な運転状態にある場合、前記記憶部に記憶された特性マップに基づいて、前記温度検出部の検出結果に対応する前記発電室温度を算出するための発電室温度算出部と、
を備え
前記特性マップは、前記燃料電池に供給される燃料ガスの種類ごとに用意される、燃料電池の温度評価装置。
【請求項5】
前記燃料電池は、互いに隣接して配置された複数の燃料電池カートリッジを含み、
前記発電室温度算出部は、前記複数の燃料電池カートリッジのうち端部から最も離れた燃料電池カートリッジについて前記発電室温度を算出する、請求項1から4のいずれか一項に記載の燃料電池の温度評価装置。
【請求項6】
請求項1からのいずれか一項に記載の燃料電池の温度評価装置と、
前記発電室温度算出部で算出された前記発電室温度に基づいて前記燃料電池を制御するための制御部と、
を備える、燃料電池の制御装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記発電室温度が許容範囲になるように、前記燃料電池の制御パラメータを制御する、請求項に記載の燃料電池の制御装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記発電室温度が前記許容範囲の上限温度より低くなるように、前記制御パラメータを制御する、請求項に記載の燃料電池の制御装置。
【請求項9】
前記許容範囲は、前記燃料電池が備える複数の燃料電池カートリッジの個体差に対応する誤差を含んで規定される、請求項又はに記載の燃料電池の制御装置。
【請求項10】
燃料電池の初期特性として規定されたI-V特性に基づいて算出される前記燃料電池の初期の内部発熱量と温度推定時の内部発熱量との差分を算出する工程と、
前記内部発熱量の差分と前記燃料電池の発電室温度との相関を示す特性マップに基づいて、前記内部発熱量の差分に対応する前記発電室温度を算出する工程と、
を備える、燃料電池の温度評価方法。
【手続補正書】
【提出日】2022-06-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め設定された運転条件における燃料電池の初期の内部発熱量と、前記燃料電池の温度推定時の内部発熱量との差分を算出するための内部発熱量差分算出部と、
記差分と前記燃料電池の発電室温度との相関を示す特性マップを記憶するための記憶部と、
前記記憶部に記憶された特性マップに基づいて、前記内部発熱量差分算出部で算出された前記差分に対応する前記発電室温度を算出するための発電室温度算出部と、
を備える、燃料電池の温度評価装置。
【請求項2】
前記内部発熱量差分算出部は、前記燃料電池における熱収支を求めることにより、前記内部発熱量の差分を算出する、請求項1に記載の燃料電池の温度評価装置。
【請求項3】
前記熱収支は、前記燃料電池に対する燃料ガスの供給量、前記燃料ガスの入口側温度及び出口側温度、前記燃料電池に対する酸化性ガスの供給量、前記酸化性ガスの入口側温度及び出口側温度、前記燃料電池における発電に伴う発熱量に基づいて算出される、請求項2に記載の燃料電池の温度評価装置。
【請求項4】
前記燃料電池は、互いに隣接して配置された複数の燃料電池カートリッジを含み、
前記発電室温度算出部は、前記複数の燃料電池カートリッジのうち端部から最も離れた燃料電池カートリッジについて前記発電室温度を算出する、請求項1からのいずれか一項に記載の燃料電池の温度評価装置。
【請求項5】
前記燃料電池は固体酸化物形燃料電池である、請求項1から4のいずれか一項に記載の燃料電池の温度評価装置。
【請求項6】
請求項1からのいずれか一項に記載の燃料電池の温度評価装置と、
前記発電室温度算出部で算出された前記発電室温度に基づいて前記燃料電池を制御するための制御部と、
を備える、燃料電池の制御装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記発電室温度が許容範囲になるように、前記燃料電池の制御パラメータを制御する、請求項に記載の燃料電池の制御装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記発電室温度が前記許容範囲の上限温度より低くなるように、前記制御パラメータを制御する、請求項に記載の燃料電池の制御装置。
【請求項9】
前記許容範囲は、前記燃料電池が備える複数の燃料電池カートリッジの個体差に対応する誤差を含んで規定される、請求項又はに記載の燃料電池の制御装置。
【請求項10】
予め設定された運転条件における燃料電池の初期の内部発熱量と、前記燃料電池の温度推定時の内部発熱量との差分を算出する工程と、
記差分と前記燃料電池の発電室温度との相関を示す特性マップに基づいて、前記差分に対応する前記発電室温度を算出する工程と、
を備える、燃料電池の温度評価方法。