(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022131782
(43)【公開日】2022-09-07
(54)【発明の名称】高分子膜
(51)【国際特許分類】
A61B 1/00 20060101AFI20220831BHJP
B05D 1/18 20060101ALI20220831BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20220831BHJP
B05D 3/02 20060101ALI20220831BHJP
B05D 1/28 20060101ALI20220831BHJP
B05D 7/00 20060101ALI20220831BHJP
B05D 3/10 20060101ALI20220831BHJP
B05D 1/38 20060101ALI20220831BHJP
【FI】
A61B1/00 731
B05D1/18
B05D7/24 301B
B05D3/02 Z
B05D1/28
B05D7/00 K
B05D3/10 N
B05D1/38
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021030914
(22)【出願日】2021-02-26
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-01-12
(71)【出願人】
【識別番号】501264987
【氏名又は名称】株式会社システム・ジェーピー
(71)【出願人】
【識別番号】521085744
【氏名又は名称】株式会社システム・クレノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】110000774
【氏名又は名称】特許業務法人 もえぎ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】美和 高光
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 宗裕
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 朗文
(72)【発明者】
【氏名】武藤 淳
(72)【発明者】
【氏名】白鳥 世明
【テーマコード(参考)】
4C161
4D075
【Fターム(参考)】
4C161JJ01
4C161JJ06
4D075AB01
4D075AB35
4D075AB56
4D075AC43
4D075AE01
4D075BB08X
4D075BB16X
4D075BB20Z
4D075BB21Z
4D075BB24Z
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4D075BB65X
4D075BB65Y
4D075BB65Z
4D075BB69X
4D075BB77X
4D075BB79X
4D075CA03
4D075CA07
4D075CA34
4D075CA47
4D075CA48
4D075CB06
4D075DA06
4D075DA07
4D075DB13
4D075DB36
4D075DC16
4D075DC24
4D075DC30
4D075EA07
4D075EA37
4D075EB13
4D075EB17
4D075EB43
4D075EC30
4D075EC51
(57)【要約】
【課題】薄膜でありながら曇りにくく、高い付着防止特性を有し、かつ、強度があり高い耐久性を示す高分子膜の提供を課題とする。さらに人体に安全であり、単なる防汚膜だけでなく、レンズ用防汚膜、特に内視鏡のレンズ用防汚膜として使用し得る高分子膜の提供を課題とする。また、内視鏡手術等の際に衛生的かつ簡便に使用できる高分子膜の提供も課題とする。
【解決手段】基板の孔を橋掛け状に覆う高分子膜であって、膜厚が50nm以上10μm以下であり、かつ、Hazeが1以下である、潤滑液が表面に固定された高分子膜を製造した。この高分子膜は引張強度が0.1N/mm
2
以上と強く、高い耐久性を示し、自立高分子膜であり、生体親和性があり、転写可能である等の様々な特徴を有するものであり、人体に安全な防汚膜だけでなく、レンズ用防汚膜、特に内視鏡のレンズ用防汚膜として衛生的かつ簡便に使用し得る。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の孔を橋掛け状に覆う高分子膜であって、膜厚が50nm以上10μm以下であり、かつ、Hazeが1以下である、潤滑液が表面に固定された高分子膜。
【請求項2】
さらに引張強度が3.0N/mm2以下である請求項1に記載の高分子膜。
【請求項3】
自立高分子膜である請求項1又は2に記載の高分子膜。
【請求項4】
生体親和性である請求項1~3のいずれかに記載の高分子膜。
【請求項5】
転写可能である請求項1~4のいずれかに記載の高分子膜。
【請求項6】
防汚膜として用いられる請求項1~5のいずれかに記載の高分子膜。
【請求項7】
レンズ用防汚膜として用いられる請求項1~6のいずれかに記載の高分子膜。
【請求項8】
次のA~Eの工程を含む基板の孔を橋掛け状に覆う高分子膜の製造方法。
A.親油性高分子を可溶性溶媒に溶解し、得られた高分子溶液を支持体にディップコーティングする工程
B.Aの工程を経た支持体を熱処理する工程
C.Bの工程を経た支持体を洗浄し、洗浄液面で剥離することで得られた高分子膜を基板の孔に橋掛け状に付着させる工程
D.上記Cの工程を経た基板を乾燥する工程
E.上記Dの工程を経た基板に潤滑液を含侵した後、熱処理を行い固着させる工程
【請求項9】
工程Cが引き上げ付着法を用いる工程である請求項8に記載の基板の孔を橋掛け状に覆う高分子膜の製造方法。
【請求項10】
次のa~eの工程を含む基板の孔を橋掛け状に覆う高分子膜の製造方法。
a.親油性高分子を可溶性溶媒に溶解し、得られた高分子溶液を支持体にディップコーティングする工程
b.上記aの工程を経た支持体を乾燥し、相分離させて高分子膜を得る工程
c.上記bの工程を経た高分子膜をリンスする工程
d.上記cの工程を経た高分子膜に潤滑液を含侵する工程
e.上記dの工程を経て得られた高分子膜で基板の孔を橋掛け状に覆う工程
【請求項11】
親油性高分子がポリフッ化ビニリデン、ポリ(ビニリデンフルオリド-co-ヘキサフルオロプロピレン又はフタル酸ブチルのいずれか一種以上である請求項8~10のいずれかに記載の基板の孔を橋掛け状に覆う高分子膜の製造方法。
【請求項12】
可溶性溶媒がジメチルスルホキシド又はアセトンのいずれか一種以上である請求項8~11のいずれかに記載の基板の孔を橋掛け状に覆う高分子膜の製造方法。
【請求項13】
高分子膜が請求項1~7のいずれかに記載の高分子膜である請求項8~12のいずれかに記載の基板の孔を橋掛け状に覆う高分子膜の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高分子膜に関する。さらに詳しくは、本発明は基板の孔を橋掛け状に覆う高分子膜であって、防汚膜、レンズ用防汚膜、内視鏡のレンズ用防汚膜等として使用し得る高分子膜に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、日常生活において、テレビのリモコン、タッチパネルやキーボード等、操作にあたり接触を必須とするものが多く取り入られている。また、エレベーターのボタン、照明のスイッチ、階段やエスカレータの手摺り、吊り革、買い物かごやカート等、不特定多数の人々が共用し、接触して使用するものも多数存在する。
これらの汚損や、有害なウイルスや微生物の接触による媒介を避けるために、こまめな掃除や消毒が行われているが十分な対応が取られているとはいえなかった。これらの物品の接触箇所に透明や半透明のシールを貼付ける等の措置もとられているが、剥がした際に糊が残り、かえって汚損する等の問題もあった。
【0003】
そこで、着脱が容易であり耐久性のある、防汚膜として使用可能な薄膜のシートやフィルムの提供が望まれていた。
このような薄膜として、例えば、特許文献1では、光触媒性材料と撥油性材料からなる光触媒性コーティング組成物を防汚材料として用いることで、油汚れ等の固着を抑制する技術が開示されている。また、特許文献2では、表面に撥水処理がなされた微小な凸凹層を表層に備える超撥水性透明膜を汚れ防止のために使用することが開示されている。
これらは内視鏡のレンズへの適用も示唆されているが、特許文献2のような超撥水膜では、接触角が水滴の150度以上となる膜であるため大きな水滴は「弾く」ものの、直径数ミリメートル以下の水滴は凹凸が障害となり付着したままとなる。そのため、ミスト状の微小水滴の付着が発生する内視鏡手術において、十分な防汚機能を発揮できるとはいえなかった。
【0004】
特許文献3では、繊維状の高分子と該高分子を溶解しない細孔形成剤とを用いて製造された特定の構造を有する滑水・滑油性膜を医療器具の防汚に使用することが開示されているが、フタル酸等の細孔形成剤は人体に有害であり、体内に適用することを必須とする内視鏡のレンズの防汚には向いているとはいえなかった。
本発明者らも特許文献4において、レンズ用防汚膜、特に内視鏡のレンズ用防汚膜として使用し得る、複数のナノファイバーが絡み合った網目構造体を備える防汚膜を開発しており、この膜が内視鏡のレンズ用防汚膜として使用できることを確認している。しかし、この防汚膜は曇り度(Haze)を低くするために網目構造体を薄くした場合、強度が弱く、輸送中やオイル塗布中に破損しやすいという問題があり、また、力学強度を保つために、ナノファイバーを厚くした場合には、光散乱が回避できないという問題があった。
【0005】
そこで、本発明者らは薄膜でありながら曇りにくく、高い付着防止特性を有し、かつ、強度があり高い耐久性を示す高分子膜として、人体に安全であり、さらに単なる防汚膜だけでなく、レンズ用防汚膜、特に内視鏡のレンズ用防汚膜として使用し得る高分子膜の提供を試みた。また、内視鏡手術等の現場において衛生的かつ簡便に使用できる高分子膜の提供も試みた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000-026757号公報
【特許文献2】特開2001-152139号公報
【特許文献3】特許6444631号
【特許文献4】特開2020-141810号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は薄膜でありながら曇りにくく、高い付着防止特性を有し、かつ、強度があり高い耐久性を示す高分子膜を提供することを課題とする。さらに、人体に安全であり、単なる防汚膜だけでなく、レンズ用防汚膜、特に内視鏡のレンズ用防汚膜として使用し得る高分子膜を提供することを課題とする。また、内視鏡手術等の際に衛生的かつ簡便に使用できる高分子膜の提供も課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、基板の孔を橋掛け状に覆う高分子膜であって、膜厚が50nm以上10μm以下であり、かつ、Hazeが1以下である、潤滑液が表面に固定された高分子膜を製造するに至った。
この高分子膜は引張強度が3.0N/mm2以下と強く、高い耐久性を示し、自立高分子膜であり、生体親和性があり、転写可能である等の様々な特徴を有するものであり、人体に安全で、単なる防汚膜だけでなく、レンズ用防汚膜、特に内視鏡のレンズ用防汚膜として衛生的かつ簡便に使用し得る高分子膜である。
【0009】
すなわち、本発明は次の(1)~(13)に示される高分子膜や、高分子膜の製造方法等に関する。
(1)基板の孔を橋掛け状に覆う高分子膜であって、膜厚が50nm以上10μm以下であり、かつ、Hazeが1以下である、潤滑液が表面に固定された高分子膜。
(2)さらに引張強度が3.0N/mm2以下である上記(1)に記載の高分子膜。
(3)自立高分子膜である上記(1)又は(2)に記載の高分子膜。
(4)生体親和性である上記(1)~(3)のいずれかに記載の高分子膜。
(5)転写可能である上記(1)~(4)のいずれかに記載の高分子膜。
(6)防汚膜として用いられる上記(1)~(5)のいずれかに記載の高分子膜。
(7)レンズ用防汚膜として用いられる上記(1)~(6)のいずれかに記載の高分子膜。
(8)次のA~Eの工程を含む基板の孔を橋掛け状に覆う高分子膜の製造方法。
A.親油性高分子を可溶性溶媒に溶解し、得られた高分子溶液を支持体にディップコーティングする工程
B.Aの工程を経た支持体を熱処理する工程
C.Bの工程を経た支持体を洗浄し、洗浄液面で剥離することで得られた高分子膜を基板の孔に橋掛け状に付着させる工程
D.上記Cの工程を経た基板を乾燥する工程
E.上記Dの工程を経た基板に潤滑液を含侵した後、熱処理を行い固着させる工程
(9)工程Cが引き上げ付着法を用いる工程である上記(8)に記載の基板の孔を橋掛け状に覆う高分子膜の製造方法。
(10)次のa~eの工程を含む基板の孔を橋掛け状に覆う高分子膜の製造方法。
a.親油性高分子を可溶性溶媒に溶解し、得られた高分子溶液を支持体にディップコーティングする工程
b.上記aの工程を経た支持体を乾燥し、相分離させて高分子膜を得る工程
c.上記bの工程を経た高分子膜をリンスする工程
d.上記cの工程を経た高分子膜に潤滑液を含侵する工程
e.上記dの工程を経た高分子膜で基板の孔を橋掛け状に覆う工程
(11)親油性高分子がポリフッ化ビニリデン、ポリ(ビニリデンフルオリド-co-ヘキサフルオロプロピレン又はフタル酸ブチルのいずれか一種以上である上記(8)~(10)のいずれかに記載の基板の孔を橋掛け状に覆う高分子膜の製造方法。
(12)可溶性溶媒がジメチルスルホキシド又はアセトンのいずれか一種以上である上記(8)~(11)のいずれかに記載の高分子膜の製造方法。
(13)高分子膜が上記(1)~(7)のいずれかに記載の高分子膜である上記(8)~(12)のいずれかに記載の基板の孔を橋掛け状に覆う高分子膜の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明により薄膜でありながら曇りにくく、高い付着防止特性を有し、かつ、強度があり高い耐久性を示す高分子膜の提供が可能となった。本発明の高分子膜を用いることにより、単なる人体に安全な防汚膜だけでなく、レンズ用防汚膜、特に内視鏡のレンズ用防汚膜の提供が容易となる。
特に、本発明の基板の孔を橋掛け状に覆う高分子膜は、基板の端をつまんで孔に存在する高分子膜のみを内視鏡の先端レンズの表面に容易に転写できるため、手術の際に衛生的かつ簡便に使用可能な内視鏡のレンズ用防汚膜となり得る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】基板の孔を橋掛け状に覆う高分子膜の模式図である(実施例)。
【
図2】高分子膜A1~A4の電子顕微鏡写真と膜厚を示した図である(実施例1)。
【
図3】高分子膜を内視鏡の先端レンズに張り付けて使用した際の効果を示した図である(実施例1、2)。
【
図4】高分子膜A1~A4の引張強度を示した図である(実施例1)。
【
図5】高分子膜Bの電子顕微鏡写真と膜厚を示した図である(実施例2)。
【
図6】基板の孔を橋掛け状に覆う高分子膜を内視鏡のレンズに転写する際の模式図である(実施例3)。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の「高分子膜」とは、「基板の孔を橋掛け状に覆う高分子膜」で「膜厚が50nm以上10μm以下」であり、かつ、「Hazeが1以下」という全ての要件を満たし、さらに「潤滑液が表面に固定」された高分子膜のことを言う。これらの要件を満たすものであれば、その他の要件を含むものであってもよい。
【0013】
ここで、「基板の孔を橋掛け状に覆う」とは、「基板」としてポリプロピレン(PP)、ポリテトラフルオロエチレン樹脂(PTFE)、塩化ビニル樹脂(PVC)、ポリエチレン(PE)、ポリスチレン(PS)、AS樹脂、ABS樹脂、メタクリル樹脂(PMMA)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリアセタール(POM)、ポリカーボネート(PC)、ポリブチレンフタレート樹脂(PBT)、メラミン樹脂(MF)、エポキシ樹脂(EP)、ポリベンゾイミダゾール樹脂(PBI)等のプラスチックを素材とする板状のものに、直径3mm~40mm等の円形や楕円形の孔を空けたものを用い、この孔の部分を高分子膜が橋掛け状に覆った状態のことを指す。この基板の孔の大きさは使用対象によって調製することができ、例えば、内視鏡を使用対象とする場合、内視鏡のレンズの先端が貫通できる大きさであることが好ましい。
「橋掛け状」とは、膜が孔の縁全体に接触し、中空部分においては、基板に非接触で自立して全体を覆うことを意味する(
図6参照)。低速度で薄膜を転写することにより、膜を損傷することなく、孔周縁に接着させることができる。
【0014】
「膜厚が50nm以上10μm以下」とは、本発明の高分子膜を電子顕微鏡(日立電子顕微鏡TM400等)により、薄膜を垂直に立てて断面を観察し、電子顕微鏡に装備されている長さ計測システムにより、膜厚を直接計測した結果、得られた膜の厚さの平均が50nm以上10μm以下の範囲であることをいう。本発明の高分子膜の膜厚(平均)はさらに50nm以上900nm以下であることが好ましく、特に50nm以上400nm以下であることが好ましい。
また、「Hazeが1以下」とはヘーズメーター(日本光電NDH7000等)の曇り度測定器を用いて得られた数値より、実施例に記載の次の数式に基づいて曇り度(Haze)を算出した場合に1以下の範囲であることをいう。本発明の高分子膜のHazeはさらに0.9以下であることが好ましく、特に0.3以下であることが好ましい。
【0015】
そして、「潤滑液が表面に固定」とは、本発明の高分子膜の表面に潤滑液または潤滑液に含まれる成分が固まって定着していることをいう。
ここで「潤滑液」としては、油性液体を使用した場合、主として水性の外部液体に対する防汚性(滑水性)を示し、反対に水性液体を使用した場合、主として油性の外部液体に対する防汚性(滑油性)を示す。あらゆる種類の液体に対して防汚性を発揮するためには、滑剤液としては、フッ素系油又はシリコーン油といった、いわゆる撥水・撥油性液体を使用することが好ましい。これらには、例えば、パーフルオロポリエーテル、パーフルオロアルキルエーテル、パーフルオロシクロエーテル、パーフルオロアルキルアミン、パーフルオロアルキルスルフィド、パーフルオロアルキルスルフォキシド、パーフルオロアルキルホスフィン、パーフルオロカーボン、パーフルオロカルボン酸、フッ素化ホスホン酸、フッ素化スルホン酸、フッ素化シラン等のフッ素系油、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、アミノ変性シリコーン油、ポリエーテル変性シリコーン油、カルボキシ変性シリコーン油、アルキル変性シリコーン油、アンモニウム塩変性シリコーン油、フッ素変性シリコーン油等のシリコーン油等も挙げられる。これらの潤滑液は市販のものを用いてもよく、独自に調製したものを用いても良い。
【0016】
滑液対象が水性液体の場合、シリコーンオイルや脂肪酸、高級アルコール、シランカップラー、そのほかに有機系の疎水性液体物質が挙げられる。より具体的には、シリコーンオイルとしてデカメチルシクロテトラシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、メチルシリコーン、メチルフェニルシリコーン、メチルヒドロキシシリコーン、アミノ変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、カルボキシ変性シリコーンオイル、カルビノール変性シリコーンオイル、メタクリル変性シリコーンオイル、メルカプト変性シリコーンオイル、フェノール変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、メチルスチリル変性シリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、脂肪酸エステル変性シリコーンオイル、部分フッ素変性シリコーンオイルなどが例示され、更に低級飽和脂肪酸、高級飽和脂肪酸、低級不飽和脂肪酸、高級不飽和脂肪酸、高級アルコール、および脂肪酸化合物(ごま油、菜種油、アーモンドオイル、綿実油、サラダ油など)、フルオロアルキルエトキシシラン、フルオロアルキルメトキシシラン、アルキルエトキシシラン、アルキルメトキシシラン、DB2-EOS、EF-DB2、P3-EOS、また揮発性の小さい炭化水素(CnHx(n>4 以上)のアルカン、アルケン、アルキン)も用い得る。
医療用途に用いる場合は、特に油の中でも、食品添加物用途等生体安全性の高い油を使用するのが好ましい。
【0017】
本発明の高分子膜はさらに、引張強度が0.1 N/mm2以上で3.0N/mm2以下であることが好ましい。ここで、「引張強度」とは、引張強度試験機(ZTS-DPU-2N(フォースゲージ+ロードセル)MX2-500N(計測スタンド)、デジタルフォースゲージ(イマダ社)等を用い、高分子膜を鉛直方向に配置し、上下に引っ張った際の強度のことをいう。
【0018】
その他にも本発明の高分子膜は「自立高分子膜」であり、「生体親和性」であり、また、「転写可能」等の性質を有する高分子膜であることが好ましい。
ここで「自立高分子膜」とは、製造においてガラス平板等の支持体の表面上に形成した後、これを支持体からはがした場合でも、引きはがしによって破損することなく、自立した膜として存在し得る膜のことをいう。
「自立高分子膜」である本発明の高分子膜は、使用するまでに潤滑液等に浸漬した状態で保管でき、そのまま様々な物品の防汚フィルムや防汚シート等として適用することができる。
【0019】
また「生体親和性」とは、人体等の生体によくなじみ、無害な成分等として認識され、人体等からの排除反応が弱い性質のことをいう。
本発明の高分子膜は、「生体親和性」を有することから、人体に取り込むことを前提とする内視鏡等の医療機器にも安全に使用することができる。
【0020】
さらに本発明の高分子膜が有する「転写可能」とは、本発明の高分子膜を接触させることで使用対象に容易に付着させることができることをいう。
本発明の高分子膜は「転写可能」であることから、例えば、内視鏡を使用対象とする場合、その先端レンズに接触させるだけで、先端レンズの表面に付着させることができ、液体等の付着防止特性等、本発明の高分子膜が有する特性を容易に付与することができる。
【0021】
このような本発明の高分子膜は、使用対象となる物品の汚れを防止するための「防汚膜」として使用することができる。さらに、「膜厚が50nm以上10μm以下」と薄く、かつ、「Hazeが1以下」で曇り度が非常に低いことから、タブレット等の液晶画面用の防汚膜や、カメラの「レンズ用防汚膜」等にも使用することができる。
また、液体等の付着防止特性を有することから、体内においてミスト状の微小水滴が発生し、付着しやすい内視鏡の「レンズ用防汚膜」等として使用することもできる。
【0022】
このような本発明の基板の孔を橋掛け状に覆う高分子膜の製造方法として、次の〔方法1〕や〔方法2〕等が挙げられる。これらの製造方法は、その他の工程を含むものであっても良い。
〔方法1〕
A.親油性高分子を可溶性溶媒に溶解し、得られた高分子溶液を支持体にディップコーティングする工程
B.Aの工程を経た支持体を熱処理する工程
C.Bの工程を経た支持体を洗浄し、洗浄液面で剥離することで得られた高分子膜を基板の孔に橋掛け状に付着させる工程
D.上記Cの工程を経た基板を乾燥する工程
E.上記Dの工程を経た基板に潤滑液を含侵した後、熱処理を行い固着させる工程
【0023】
〔方法2〕
a.親油性高分子を可溶性溶媒に溶解し、得られた高分子溶液を支持体にディップコーティングする工程
b.上記aの工程を経た支持体を乾燥し、相分離させて高分子膜を得る工程
c.上記bの工程を経た高分子膜をリンスする工程
d.上記cの工程を経た高分子膜に潤滑液を含侵する工程
e.上記dの工程を経て得られた高分子膜で基板の孔を橋掛け状に覆う工程
【0024】
これらの製造方法において使用する「親油性高分子」は、本発明の高分子膜が製造できるものであればいずれのものであっても良く、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、 ポリ(ビニリデンフルオリド-co-ヘキサフルオロプロピレン)(PVDF-FFP)等の親油性高分子であればよく、これらを二種類以上組み合わせてもよい。さらに、フタル酸ブチル(DBP)等の親油性添加物を加えても良く、親油性添加物も複数組み合わせて用いることができる。
また「可溶性溶媒」としてはアセトン、エタノール、NMP(N-メチルピロリドン)、DMF(ジメチルホルムアミド)、DMA(ジメチルアセトアミド)、 DMSO(ジメチルスルホキシド)、酢酸ブチル、シクロヘキサン、ジオキサン、2-ブタノン、ジメチルアミン、トリメチルアミン等を使用できる。
【0025】
また「支持体」としては、その材質は有機材料、無機材料、複合材料にかかわらず、その表面に高分子溶液を薄く広げた状態で支持できるものであればいずれのものであっても良く、40~220℃の高分子の融点付近で加熱処理した場合でも、「支持体」自体の形状を維持しているものであることが好ましい。
このような「支持体」として、例えば、ソーダライムスライドガラス(松波硝子工業等)等を用いることができる。
【0026】
〔方法1〕の工程A及び〔方法2〕の工程aにおける「ディップコーディング」とは、支持体を少量の高分子溶液に浸し、高分子溶液で覆うことをいう。このディップコーティングは手動で行っても良いが、より薄い高分子膜を作成するために、引き上げ速度が30~0.001mm/sec、より好ましくは1~0.05mm/secとなるようにディップコーター(ディップコーター、システム・クレノロジー社)等を用いて行うことが好ましい。
【0027】
〔方法1〕の工程Bにおける「熱処理」は使用する高分子の融点付近、例えば60~160℃のいずれかの温度において、20秒~40秒間、定温で保持することをいう。
また、工程Eにおける「熱処理」は、基板の軟化点以下、例えば80~300℃のいずれかの温度で5分~3時間、定温で保持することをいう。
これらの「熱処理」には、定温乾燥機(ヤマト科学社)等を用いることが好ましい。
【0028】
工程Cにおける「洗浄」はBの工程を経た支持体を水、エタノール、アセトン、アルカリ洗剤、中性洗剤等の洗浄液に浸して洗い、基板のゴミや付着物を除去し、清浄な表面を露出させるとともに、支持体上に形成された高分子膜を洗浄液の液面で支持体から剥離させることをいう。
そして、この高分子膜を「基板の孔に橋掛け状に付着させる工程」では、この高分子膜が基板の孔を覆うように転写することをいい、手動にて低速度で転写を行うことができる。この工程は、基板を液体に浸漬し、一定速度で引き上げる引き上げ付着法を用いて行うことが好ましい。
【0029】
また、工程Dにおける「乾燥」は、定温乾燥機(ヤマト科学社)に基板を入れ一定時間保管することにより行うことができる。
そして、工程Eにおける「基板に潤滑液を含侵」は、シリコーンオイル等の潤滑液に基板を浸漬し、1mm/sec等の一定速度で引き上げることで行うことができる。
【0030】
〔方法2〕の工程bにおける「乾燥」は、一般的な屋内環境(15℃~30℃、湿度30%~80%)で行う常温乾燥であってもよく、定温乾燥機内(30℃~160℃、湿度不問)で行う加温乾燥のいずれでもよい。
また「相分離」とは、上記の乾燥処理により、支持体から高分子膜の薄層を分離させることをいう。
【0031】
工程cにおける「リンス」は、高分子膜をエタノール、精製水等のリンス液に1分~1時間浸漬し、1部もしくは特定の成分を溶解除去させることで行うことができる。
また、工程dにおける「高分子膜に潤滑液を含侵」では、塗布による含浸方法(シリンジ、ディスペンサ、スプレーガン、エアブラシ等を用い、高分子膜全体に潤滑液が含浸されるように塗布する方法)、ディップコートによる含浸方法(ディップコーターを用い、引上げ速度0.001mm/sec~30mm/secで引きあげる方法)又はスピンコートによる含浸方法(スピンコーターを用い、回転数10~6000rpmでスピンコートする方法)等の方法で行うことができる。潤滑液は高分子膜に含浸させられるだけの量を用いればよく、塗布する場合は0.5mL程度で十分である。
この潤滑液を含侵させた高分子膜は、「基板の孔を橋掛け状に覆う工程」(工程e)を行うまで潤滑液に浸漬した状態で保管することもできる。この場合、15℃~30℃、湿度30%~80%の条件で、高分子膜を浸漬できる容積を有し、かつ、潤滑液を変質させない素材(樹脂、金属)の容器または槽で保管することが好ましい。
【0032】
そして、工程eの「高分子膜で基板の孔を橋掛け状に覆う工程」は、この高分子膜が基板の孔を橋掛け状に覆うように、高分子膜の両端をピンセットでつまんだり、棒状のものにかけたりし、基板の孔を覆うように転写することにより行うことができる。この工程は手動にて低速度で行うことが好ましい。
【0033】
以下、実施例を示して本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限られるものではない。
【実施例0034】
本発明の実施例で使用する試料及び機器を次に示した。
〔試料〕
1.親油性高分子
1)PVDF(KFポリマー#1300、クレハ社)
2)PVDF-HFP(Poly(vinylidene fluoride-co-hexafluoropropylene)、Sigma-Aldrich社)
3)DBP(Dibutyl Phthalate、東京化成社)
2.可溶性溶媒
DMSO(Dimethyl Sulfoxide、東京化成社)
【0035】
3.支持体
ソーダライムスライドガラス(松浪硝子工業社)を0.01~1.0mol/lのエタノール性KOH溶液(和光純薬工業社)に1分~2時間浸漬した後、流水で洗浄し、さらにエタノール(和光純薬工業社)でリンスしたものを用いた。
4.孔の空いた基板
PP基板に直径3~40mmとなるように切削工具を用いて円形の孔をあけた。
5.潤滑液
シリコーンオイル(信越化学工業社)
【0036】
〔機器〕
1.ホットスターラー
本体、回転子(ともにアズワン社)
2.ディップコーター(ディップコーター、システムクレノロジー社)
3.定温乾燥機(ヤマト科学社)
4.卓上顕微鏡(日立ハイテク社)
5.ヘーズメーター(日本電色工業社)
6.引張強度試験機(デジタルフォースゲージ、イマダ社)
【0037】
〔実施例1〕
PVDFをDMSOに対して2~20w/w%加え、ホットスターラー(60~120℃)を用いて攪拌することで溶解した。このPVDF溶液を室温(15℃~30℃)にした後、ディップコーターを用いて支持体に引き上げ速度30~0.01mm/secでディップコーティングした。これを定温乾燥機により60~160℃で20~40秒間熱処理(I)した後、洗浄し、洗浄液面で剥離した後、得られた高分子膜を孔の空いたPP基板に橋掛け状に付着させた。
【0038】
これを乾燥した後、ディップコーターを用いてシリコーンオイルを含侵させ、定温乾燥機により80~300℃で5分~3時間熱処理(II)して固着させることで、基板の孔を橋掛け状に覆う高分子膜A1~A4を製造した。この基板の孔を橋掛け状に覆う高分子膜A1~A4の模式図を
図1に示した。
【0039】
上記にて製造した各高分子膜の膜厚は卓上顕微鏡を用い、断面の境界が十分に認識でき、膜平面と断面の稜線が確認できる部分を複数ランダムに選択し、それぞれ膜の断面を顕微鏡で測定、画像計測した。計測された値より平均を算出した。
また、プラスチック製品試験方法(JIS K 7136・JIS K 7361・ASTM D 1003・ISO 13468・ISO 14782)に準拠し、Haze(曇り度)・全光線透過率・拡散透過率・平行透過率・濁度(Turb)の測定を可能にしたヘーズメーターを用いて、次の数式に基づいて曇り度(Haze)を求めた。
【0040】
【0041】
次に、各高分子膜の上端に10μlの水滴を垂らし、高分子膜の角度を何度まで傾けた際に水滴が下端に転落するか滑水角度を調べることで付着防止特性の有無を調べた。
また、製造した高分子膜A1~A4をそれぞれ内視鏡(内視鏡手術器械システム、カールストルツ社)の先端レンズに張り付け、観察試料(トマト模型)に水をかけて先端レンズに飛沫が付くようにした際に飛沫が付着して視界が障害されるか、又は飛沫が滑落して良好な視野を維持できるかを確認した(
図3A参照)。
さらに、引張強度試験機(デジタルフォースゲージ、イマダ社)を用いて高分子膜を鉛直方向に配置し、上下に引っ張り突き破った際の引張強度を調べた。
【0042】
これらの製造条件及び評価結果を表1にまとめ、各高分子膜の電子顕微鏡(日立電子顕微鏡TM400)の写真により測定された膜厚を
図2に示した。いずれの高分子膜も膜厚が50nm以上10μm以下と非常に薄く、かつ、Hazeが1以下で曇り度の非常に低い、薄膜でありながら曇りにくい高分子膜であることが確認できた。また、滑水角度が40degと低く、高い付着防止特性を有し、また、
図4に示すように引張強度が強く、高い耐久性を有する高分子膜であることも確認できた。
さらに、内視鏡のレンズになにも付着せずそのまま使用した場合の画像は飛沫が付着して視界が障害されているのに対して(
図3、高分子膜なし)、本発明の高分子A1~A4のいずれにおいても、内視鏡のレンズに張り付けた場合には、内視鏡の先端レンズに水滴が付着することなく、飛沫が滑落して良好な視野を維持していることが確認できた。その一例として高分子膜A4及び高分子膜Bを用いた場合の画像写真を示した(
図3B,高分子膜A4)。
従って、本発明の高分子膜は単なる防汚膜だけではなく、内視鏡等のレンズ用の防汚膜としても有用な高分子膜であることが確認できた。
【0043】
【0044】
〔実施例2〕
PVDF-HFPとDBPを1:2の割合(重量比)としたものをアセトンに対して20w/w%加え、ホットスターラー(常温(10~30℃)~60℃)を用いて攪拌することで溶解した。このPVDF-HFP+DBP溶液を室温(10℃~30℃)にした後、ディップコーターを用いて支持体に引き上げ速度30~0.01mm/secでディップコーティングした。これを温度10℃~30℃、時間5~300sec加熱乾燥し、相分離させて得られた高分子をエタノール(和光純薬工業社)でリンスし、シリコーンオイルを含侵させて高分子膜を得た。得られた高分子膜を孔の空いたPP基板に橋掛け状に付着させて、基板の孔を橋掛け状に覆う高分子膜Bを製造した。この基板の孔を橋掛け状に覆う高分子膜Bの模式図は
図1と同様であった。
また、高分子膜Bの電子顕微鏡(日立電子顕微鏡TM400)の写真(
図5A、表面)と、これにより測定された膜厚を
図5Bに示した。さらに、高分子膜Bも内視鏡(内視鏡手術器械システム、カールストルツ社)の先端レンズに張り付け、高分子A1~A4と同様に飛沫が滑落して良好な視野を維持するか否かの検討を行ったところ、内視鏡の先端レンズに水滴が付着することなく、飛沫が滑落して良好な視野を維持していることが確認できた(
図3、高分子膜B)。
【0045】
〔実施例3〕
上記実施例1及び2で製造した基板の孔を橋掛け状に覆う高分子膜を内視鏡のレンズ用防汚膜として使用する際は、高分子膜が汚れないように基板の孔以外の箇所を手等でつまみ、高分子膜が存在している基板の孔に内視鏡のレンズの表面を接触させ、そのまま押し込むことで、高分子膜からなる防汚膜を容易に転写させることができる。
図6に基板の孔を橋掛け状に覆う高分子膜を内視鏡のレンズに転写する際の一例を示した。
即ち、
図6(A)に示すように、内視鏡本体の先端レンズを、基板の孔の下側から防汚膜に近付けて接触させる。この際、レンズの表面に均等に高分子膜が転写されるように接触させることが望ましい。
次に、
図6(B)に示すように、内視鏡本体の先端レンズを高分子膜に突き刺すように押し込む。これにより、高分子膜は、内視鏡本体の押し込み方向に伸びた状態となる。この状態から、さらに押し込むと、
図6(C)に示すように、高分子膜、内視鏡本体の先端レンズと接触している面の周囲が押され、
図6(D)に示すように高分子膜が破れて基板より分離され、内視鏡本体の先端レンズに付着する。
本発明により薄膜でありながら曇りにくく、高い付着防止特性を有し、かつ、強度があり高い耐久性を示す高分子膜の提供が可能となった。本発明の高分子膜を用いることにより、単なる人体に安全な防汚膜だけでなく、レンズ用防汚膜、特に内視鏡のレンズ用防汚膜の提供が容易となる。
特に、本発明の基板の孔を橋掛け状に覆う高分子膜は、基板の端をつまんで孔に存在する高分子膜のみを内視鏡の先端レンズの表面に容易に転写できるため、手術の際に衛生的かつ簡便に使用可能な内視鏡のレンズ用防汚膜となり得る。
これらの製造方法において使用する「親油性高分子」は、本発明の高分子膜が製造できるものであればいずれのものであっても良く、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、 ポリ(ビニリデンフルオリド-co-ヘキサフルオロプロピレン)(PVDF-HFP)等の親油性高分子であればよく、これらを二種類以上組わせてもよい。さらに、フタル酸ブチル(DBP)等の親油性添加物を加えても良く、親油性添加物も複数組み合わせて用いることができる。
また「可溶性溶媒」としてはアセトン、エタノール、NMP(N-メチルピロリドン)、DMF(ジメチルホルムアミド)、DMA(ジメチルアセトアミド)、 DMSO(ジメチルスルホキシド)、酢酸ブチル、シクロヘキサン、ジオキサン、2-ブタノン、ジメチルアミン、トリメチルアミン等を使用できる。