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特開2022-131799豆乳製品の製造方法、及び、豆乳製品の香味向上方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022131799
(43)【公開日】2022-09-07
(54)【発明の名称】豆乳製品の製造方法、及び、豆乳製品の香味向上方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 11/65 20210101AFI20220831BHJP
   A23C 11/10 20210101ALI20220831BHJP
【FI】
A23L11/65
A23C11/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021030933
(22)【出願日】2021-02-26
(71)【出願人】
【識別番号】312017444
【氏名又は名称】ポッカサッポロフード&ビバレッジ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】北山 瞳
【テーマコード(参考)】
4B001
4B020
【Fターム(参考)】
4B001AC08
4B001AC21
4B001AC43
4B001BC01
4B001EC01
4B020LB18
4B020LC02
4B020LG05
4B020LK10
4B020LK12
4B020LP13
4B020LQ06
(57)【要約】
【課題】豆臭さが低減している豆乳製品の製造方法、及び、豆臭さを低減する豆乳製品の香味向上方法を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明に係る豆乳製品の製造方法は、大豆臭が低減した豆乳製品の製造方法であって、豆乳類に対してジンジャー抽出物とシナモン抽出物とを含有させる工程を含み、前記工程では、大豆固形分の含有量をXw/w%とし、前記ジンジャー抽出物の含有量をYw/w%とし、前記シナモン抽出物の含有量をZw/w%とした場合に、Y/Xの値を0.00010~0.00200とし、Z/Xの値を0.00010~0.00400とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
大豆臭が低減した豆乳製品の製造方法であって、
豆乳類に対してジンジャー抽出物とシナモン抽出物とを含有させる工程を含み、
前記工程では、大豆固形分の含有量をXw/w%とし、前記ジンジャー抽出物の含有量をYw/w%とし、前記シナモン抽出物の含有量をZw/w%とした場合に、Y/Xの値を0.00010~0.00200とし、Z/Xの値を0.00010~0.00400とする、豆乳製品の製造方法。
【請求項2】
前記豆乳類が無調整豆乳である請求項1に記載の豆乳製品の製造方法。
【請求項3】
豆乳製品の大豆臭を低減する香味向上方法であって、
豆乳類に対してジンジャー抽出物とシナモン抽出物とを含有させる工程を含み、
前記工程では、大豆固形分の含有量をXw/w%とし、前記ジンジャー抽出物の含有量をYw/w%とし、前記シナモン抽出物の含有量をZw/w%とした場合に、Y/Xの値を0.00010~0.00200とし、Z/Xの値を0.00010~0.00400とする、豆乳製品の香味向上方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、豆乳製品の製造方法、及び、豆乳製品の香味向上方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、健康志向の高まりから食生活による健康改善に関心が高まっている。また、種々の理由に基づき菜食を選択する人も増加し続けている。
このような流れを受けて、植物性食品の需要が高まっており、特に、大豆は、動物性タンパク質の代替素材としても注目されるようになってきている。
【0003】
したがって、大豆を原料とした豆乳製品についても、様々な研究が進められている。
【0004】
例えば、特許文献1には、(A)有機酸類を含有する油脂、(B)糖類、糖アルコール、多価アルコールからなる群から選択される1種以上並びに(C)食品用乳化剤を含有する乳化油脂組成物であることを特徴とする豆乳及び豆腐用呈味改善剤が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-200458号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に係る発明は、豆乳類の香味の中でも甘味とコク味に着目して創出された発明である。
一方、本発明者は、豆乳製品の香味について鋭意検討した結果、豆乳類の大豆固形分に由来する豆臭さに着目し、この豆臭さを低減することができれば、消費者が飲食し易い豆乳製品を提供できるのではないかと考えた。
【0007】
そこで、本発明は、豆臭さが低減している豆乳製品の製造方法、及び、豆臭さを低減する豆乳製品の香味向上方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題は、以下の手段により解決することができる。
(1)大豆臭が低減した豆乳製品の製造方法であって、豆乳類に対してジンジャー抽出物とシナモン抽出物とを含有させる工程を含み、前記工程では、大豆固形分の含有量をXw/w%とし、前記ジンジャー抽出物の含有量をYw/w%とし、前記シナモン抽出物の含有量をZw/w%とした場合に、Y/Xの値を0.00010~0.00200とし、Z/Xの値を0.00010~0.00400とする、豆乳製品の製造方法。
(2)前記豆乳類が無調整豆乳である前記1に記載の豆乳製品の製造方法。
(3)豆乳製品の大豆臭を低減する香味向上方法であって、豆乳類に対してジンジャー抽出物とシナモン抽出物とを含有させる工程を含み、前記工程では、大豆固形分の含有量をXw/w%とし、前記ジンジャー抽出物の含有量をYw/w%とし、前記シナモン抽出物の含有量をZw/w%とした場合に、Y/Xの値を0.00010~0.00200とし、Z/Xの値を0.00010~0.00400とする、豆乳製品の香味向上方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る豆乳製品の製造方法は、豆臭さが低減された豆乳製品を製造することができる。
本発明に係る豆乳製品の香味向上方法は、豆乳製品の豆臭さを低減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る豆乳製品の製造方法、及び、豆乳製品の香味向上方法を実施するための形態(本実施形態)について説明する。
【0011】
[豆乳製品]
本実施形態に係る豆乳製品は、豆乳類とジンジャー抽出物とシナモン抽出物とを含有し、大豆固形分の含有量に対してジンジャー抽出物の含有量の比率とシナモン抽出物の含有量の比率とが其々所定範囲内となるように調製されている。
ここで、「豆乳製品」とは、豆乳類を含有する製品であり、豆乳類自体(豆乳類そのもの)も含む概念である。
そして、「豆乳製品」とは、例えば、豆乳類(豆乳、調製豆乳、豆乳飲料)、豆乳ヨーグルト、豆乳チーズ、豆腐、豆乳プリン、豆乳調味料などが挙げられる。
以下、本実施形態に係る豆乳製品を構成する各要素について説明する。
【0012】
(豆乳類)
豆乳類とは、豆乳、調製豆乳、又は、豆乳飲料である。
そして、豆乳類に属する「豆乳」とは、豆乳類の日本農林規格(平成24年7月17日農林水産省告示第1679号)の第2条に規定されているとおり、「大豆(粉末状のもの及び脱脂したものを除く)から熱水等によりたん白質その他の成分を溶出させ、繊維質を除去して得られた乳状の飲料であって、大豆固形分が8%以上のもの」であり、第3条の規格に沿うものである。なお、豆乳類に属する調製豆乳、豆乳飲料も、前記の日本農林規格の第2条に規定されているとおりであって、第4条、第5条の其々の規格に沿うものである。
そして、本実施形態に係る豆乳製品は、豆乳類(厳密には、豆乳類に含まれる大豆固形分)を含有することによって、豆臭さが発生してしまう。
なお、本発明の課題(豆臭さ)を明確化させるという観点から、豆乳製品に含有される豆乳類としては、豆乳(無調整豆乳)が好ましい。
【0013】
なお、本発明者は、豆乳と粉末状の大豆タンパク質との香味を確認したところ、豆乳の方が豆臭さを強く感じられる点を確認している。
この理由は、豆乳の製造工程において豆に加水し搾る過程で熱が加わり豆臭さが増強するとともに、液体と固体とで風味の感じやすさが異なることに起因すると推測する。また、豆乳は、物性が類似するとともに豆臭さが一切ない牛乳と無意識に香味を比較してしまうためであると思われる。
【0014】
本実施形態に係る豆乳製品における大豆固形分(厳密には、豆乳類に由来する大豆固形分)の含有量については特に限定されないが、例えば、1.00w/w%以上、2.00w/w%以上、3.00w/w%以上、4.00w/w%以上、4.65w/w%以上であり、15.00w/w%以下、10.00w/w%以下、8.00w/w%以下、5.00w/w%以下である。
また、本実施形態に係る豆乳製品における豆乳類の含有量についても特に限定されないが、例えば、10w/w%以上、30w/w%以上、40w/w%以上、50w/w%以上であり、90w/w%以下、80w/w%以下、70w/w%以下、60w/w%以下である。
なお、本実施形態に係る豆乳製品は、後記のジンジャー抽出物とシナモン抽出物以外が豆乳類(好ましくは豆乳)で構成されていてもよい。
【0015】
豆乳製品における大豆固形分の含有量は、例えば、常圧加熱法によって測定することができる。
【0016】
(ジンジャー抽出物)
ジンジャー抽出物とは、公知の製造方法でショウガ(Zingiber officinale:詳細には、ショウガの根茎部分)を抽出して得られる物質である。
そして、本発明者は、ジンジャー抽出物を後記するシナモン抽出物と組み合わせることによって、豆乳製品の豆臭さを低減できることを見出した。
また、本発明者は、様々な香辛料の抽出物を使用して実験を行ったが、このジンジャー抽出物とシナモン抽出物との組み合わせが最も効果(豆臭さの低減)を発揮することを確認した。
【0017】
本実施形態に係る豆乳製品の大豆固形分の含有量をXw/w%とし、ジンジャー抽出物の含有量をYw/w%とした場合、Y/Xの値は以下のとおりである。
Y/Xの値は、0.00010以上が好ましく、0.00014以上、0.00028以上、0.00040以上、0.00050以上、0.00056以上がより好ましい。Y/Xの値が所定値以上であることによって、豆乳製品の豆臭さを低減できる。
Y/Xの値は、0.00200以下が好ましく、0.00150以下、0.00112以下がより好ましい。Y/Xの値が所定値以下であることによって、スパイスの香味(ジンジャーの香味)が強過ぎて豆乳製品として適切な香味とならなくなる事態を回避することができる。
【0018】
ジンジャー抽出物の含有量は、前記のY/Xの値を満たせば特に限定されないが、例えば、0.00065w/w%以上、0.0013w/w%以上、0.0026w/w%以上であり、0.0052w/w%以下、0.0040w/w%以下、0.0030w/w%以下である。
【0019】
(シナモン抽出物)
シナモン抽出物とは、公知の製造方法でシナモン(cinnamon:ニッケイ属の樹木の内樹皮から得られる香辛料)を抽出して得られる物質である。
そして、本発明者は、シナモン抽出物を前記したジンジャー抽出物と組み合わせることによって、豆乳製品の豆臭さを低減できることを見出した。
【0020】
本実施形態に係る豆乳製品の大豆固形分の含有量をXw/w%とし、シナモン抽出物の含有量をZw/w%とした場合、Z/Xの値は以下のとおりである。
Z/Xの値は、0.00010以上が好ましく、0.00014以上、0.00028以上、0.00100以上、0.00155以上がより好ましい。Z/Xの値が所定値以上であることによって、豆乳製品の豆臭さを低減できる。
Z/Xの値は、0.00400以下が好ましく、0.00350以下、0.00310以下がより好ましい。Z/Xの値が所定値以下であることによって、スパイスの香味(シナモンの香味)が強過ぎて豆乳製品として適切な香味とならなくなる事態を回避することができる。
【0021】
シナモン抽出物の含有量は、前記のZ/Xの値を満たせば特に限定されないが、例えば、0.00065w/w%以上、0.0013w/w%以上であり、0.0144w/w%以下、0.0072w/w%以下である。
【0022】
(その他)
本実施形態に係る豆乳製品は、例えば、本発明の所望の効果が阻害されない範囲で飲料素材や食品素材として通常配合される甘味料、高甘味度甘味料、酸化防止剤、香料(フレーバー)、酸味料、塩類、食物繊維、タンパク質、食用油脂、増粘剤、澱粉、ゲル化剤、pH調整剤など(以下、適宜「添加剤」という)を含有していてもよいし、当然、含有していなくてもよい。甘味料としては、例えば、果糖ぶどう糖液糖、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、ラクトース、スクロース、マルトースなどを用いることができる。高甘味度甘味料としては、例えば、ネオテーム、アセスルファムカリウム、スクラロース、サッカリン、サッカリンナトリウム、グリチルリチン酸二ナトリウム、チクロ、ズルチン、ステビア、グリチルリチン、ソーマチン、モネリン、アスパルテーム、アリテームなどを用いることができる。酸化防止剤としては、例えば、ビタミンC、ビタミンE、ポリフェノールなどを用いることができる。酸味料としては、例えば、アジピン酸、クエン酸三ナトリウム、グルコノデルタラクトン、グルコン酸、グルコン酸カリウム、グルコン酸ナトリウム、コハク酸、コハク酸一ナトリウム、コハク酸二ナトリウム、酢酸ナトリウム、DL-酒石酸、L-酒石酸、DL-酒石酸ナトリウム、L-酒石酸ナトリウム、二酸化炭素、乳酸、乳酸ナトリウム、酢酸、フマル酸、フマル酸一ナトリウム、DL-リンゴ酸、DL-リンゴ酸ナトリウム、リン酸、フィチン酸などを用いることができる。塩類としては、例えば、食塩、酸性りん酸カリウム、酸性りん酸カルシウム、りん酸アンモニウム、硫酸カルシウム、メタ重亜硫酸カリウム、塩化カルシウム、硝酸カリウム、硫酸アンモニウムなどを用いることができる。食物繊維としては、例えば、難消化性デキストリン、ペクチン、ポリデキストロース、グアーガム分解物などを用いることができる。タンパク質としては、例えば、大豆タンパク質、小麦タンパク質、トウモロコシタンパク質、エンドウタンパク質、カゼイン、卵白アルブミン、ゼラチンなどを用いることができる。食用油脂としては、食用の油脂であれば、特に限定されない。増粘剤としては、例えば、ローカストビーンガム、グアーガムなどを用いることができる。澱粉としては、例えば、加工澱粉などを用いることができる。ゲル化剤については、ペクチン、カラギーナンなどを用いることができる。pH調整剤としては、例えば、リン酸塩などを用いることができる。
【0023】
また、本実施形態に係る豆乳製品は、ジンジャー抽出物とシナモン抽出物を含有することから香辛料の香味が付与されているとともに、豆乳類に由来するミルク様の香味も付与されていることから、チャイテイストの飲料に適用するのが好ましい。
なお、本実施形態に係る豆乳製品をチャイテイスト飲料とする場合は、茶風味とするために紅茶茶葉を粉砕した紅茶粉末や紅茶エキスなどの茶成分を含有させるのが好ましい。ただ、使用する茶成分としてルイボス茶以外である(ルイボス茶を除く)のが好ましい。
【0024】
以上説明したように、本実施形態に係る豆乳製品は、大豆固形分の含有量に対するジンジャー抽出物の含有量の比率とシナモン抽出物の含有量の比率とが其々所定範囲内となっていることから、豆臭さが低減している。
【0025】
[豆乳製品の製造方法]
次に、本実施形態に係る豆乳製品の製造方法を説明する。
本実施形態に係る豆乳製品の製造方法は、大豆固形分の含有量に対してジンジャー抽出物の含有量の比率とシナモン抽出物の含有量の比率とが其々所定範囲内となるように添加する工程を含む。
そして、本実施形態に係る豆乳製品の製造方法は、豆乳類製造工程、混合工程、後処理工程を含んでもよい。
【0026】
(豆乳類製造工程)
豆乳類製造工程では、原料となる豆乳類を製造し準備する。
そして、豆乳類製造工程での豆乳類の製造方法は、一般的な豆乳類の製造方法であればよく、例えば、水につけた大豆をすり潰し、加熱し漉すといった処理を行うこととなる。
なお、市販の豆乳類を使用する場合は、この豆乳類製造工程を省略してもよい。
【0027】
(混合工程)
混合工程では、混合タンクに、豆乳類、ジンジャー抽出物、シナモン抽出物、水、添加剤などを適宜投入して混合後液を製造する。
この混合工程において、Y/Xの値やZ/Xの値などが前記した所定範囲内となるように各原料を混合し、調整すればよい。
なお、混合工程で用いるジンジャー抽出物やシナモン抽出物は、市販のものを用いればよいが、以下のような方法で製造したものを用いてもよい。
【0028】
(ジンジャー抽出物の製造方法)
ジンジャー抽出物は、ショウガより、水、エタノール、二酸化炭素若しくは有機溶媒で抽出して得る、又は、水蒸気蒸留によって得ることができる。
【0029】
(シナモン抽出物の製造方法)
シナモン抽出物は、シナモンより、水、エタノール、二酸化炭素若しくは有機溶媒で抽出して得る、又は、水蒸気蒸留によって得ることができる。
【0030】
そして、後処理工程では、本実施形態に係る豆乳製品が豆乳類(飲料)である場合、例えば、ろ過、殺菌、容器への充填などの処理を必要に応じて選択的に行う。
なお、後処理工程のろ過処理は、一般的なフィルター又はストレーナーによって行うことができる。また、後処理工程の殺菌処理は、処理速度等の観点から、プレート殺菌によって行うのが好ましいが、同様の処理を行うことができるのであればこれに限定されることなく適用可能である。また、後処理工程の充填処理は、飲料品の製造において通常行われる程度にクリーン度を保ったクリーンルームにおいて充填するのが好ましい。そして、後処理工程での各処理の順序は特に限定されない。
【0031】
なお、混合工程及び後処理工程において行われる各処理は、レディ・トゥ・ドリンク(Ready To Drink、RTD)などを製造するために一般的に用いられている設備によって行うことができる。
【0032】
以上説明したように、本実施形態に係る豆乳製品の製造方法によると、大豆固形分の含有量に対するジンジャー抽出物の含有量の比率とシナモン抽出物の含有量の比率とを其々所定範囲内とする工程を含むことから、豆臭さが低減した豆乳製品を製造することができる。
【0033】
[豆乳製品の香味向上方法]
次に、本実施形態に係る豆乳製品の香味向上方法を説明する。
本実施形態に係る豆乳製品の香味向上方法は、豆乳製品の豆臭さを低減させる方法であって、豆乳類に対してジンジャー抽出物とシナモン抽出物とを含有させる工程を含み、大豆固形分の含有量をXw/w%とし、ジンジャー抽出物の含有量をYw/w%とし、シナモン抽出物の含有量をZw/w%とした場合に、Y/Xの値を所定範囲内とし、Z/Xの値を所定範囲内とする方法である。
なお、各成分の含有量の比率等については、前記した「豆乳製品」において説明した値と同じである。
【0034】
以上説明したように、本実施形態に係る豆乳製品の香味向上方法によると、大豆固形分の含有量に対するジンジャー抽出物の含有量の比率とシナモン抽出物の含有量の比率とを其々所定範囲内とすることから、豆乳製品の豆臭さを低減することができる。
【実施例0035】
次に、本発明の要件を満たす実施例とそうでない比較例とを例示して、本発明について説明する。
【0036】
[サンプルの準備]
(サンプルの準備:豆乳、香辛料抽出物)
サンプルの製造に使用した豆乳(無調整豆乳)は、大豆固形分:9.3w/w%のものであった。
また、サンプルの製造に使用したジンジャー抽出物、シナモン抽出物、カルダモン抽出物は、いずれも、厚生労働省「第9版食品添加物公定書」の「E 製造基準」に準じて製造された市販の粉末化製剤を購入して使用した。
【0037】
(サンプルの準備:手順)
前記した無調整豆乳、ジンジャー抽出物粉末化製剤、シナモン抽出物粉末化製剤、カルダモン抽出物粉末化製剤、水を配合した後、85℃達温ホットパックを行い、サンプル(豆乳類)を準備した。
なお、表中の各抽出物の含有量は、上記粉末化製剤からデキストリン等の抽出物以外の成分の含有量を除外した量(つまり、抽出物のみの含有量)である。
【0038】
[試験内容]
各サンプルについて、訓練された識別能力のあるパネル7名が「豆臭さ」について、対照品と比較して「大豆の豆臭さが低減していると思う」、「大豆の豆臭さが低減していると思わない」の2段階評価で各々のパネルが点数付けした。そして、「大豆の豆臭さが低減していると思う」と評価したパネルが7名のサンプルを◎(良好)と判断し、4~6名のサンプルを○(効果あり)と判断し、3名のサンプルを△(効果が低い)と判断し、0~2名のサンプルを×(商品価値なし)と判断した。
【0039】
また、表1のサンプルについては、前記パネル7名が、サンプル1-1、1-2、1-3の3つの中で豆臭さ低減効果の強いものから順に点数を付け(効果が1番強く感じられたもの:3点、効果が2番目に強く感じられたもの:2点、効果が3番目に強く感じられたもの:1点)、合計点を「評価点数」として表1に示した。
なお、「評価点数」に基づいて「順位」を付けて、表1に示した。
【0040】
表に、各サンプルの製造条件や指標を示すとともに、各評価の結果を示す。なお、表に示す各成分の数値は、最終製品(豆乳製品:豆乳類)における含有量である。
【0041】
【表1】
【0042】
【表2】
【0043】
(結果の検討)
表1のサンプル1-1~1-4の結果によると、「ジンジャー抽出物」+「シナモン抽出物」の組み合わせが、「シナモン抽出物」+「カルダモン抽出物」の組み合わせや「ジンジャー抽出物」+「カルダモン抽出物」の組み合わせと比較して、豆臭さの低減効果が非常に強く発揮されることが確認できた。
つまり、数多くの香辛料の抽出物の中でも、豆乳製品における豆乳類由来(厳密には大豆固形分由来)の豆臭さを低減するためには「ジンジャー抽出物」+「シナモン抽出物」の組み合わせが好ましいことが確認できた。
【0044】
表2のサンプル2-1~2-7の結果によると、豆乳の含有量に対してジンジャー抽出物の含有量の比率とシナモン抽出物の含有量の比率とを其々所定範囲内とすれば、豆臭さの低減効果を得られることが確認できた。
そして、サンプル2-1~2-7の中でも、サンプル2-1~2-6が好ましい結果が得られ、サンプル2-4~2-6が特に好ましい結果が得られることが確認できた。