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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022013181
(43)【公開日】2022-01-18
(54)【発明の名称】冷間圧造工具
(51)【国際特許分類】
   B21J 13/02 20060101AFI20220111BHJP
【FI】
B21J13/02 C
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020115566
(22)【出願日】2020-07-03
(71)【出願人】
【識別番号】390004101
【氏名又は名称】三豊機工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】黒原 義信
(72)【発明者】
【氏名】奥山 洋嗣
【テーマコード(参考)】
4E087
【Fターム(参考)】
4E087AA09
4E087CA17
4E087CB03
4E087CC01
4E087EC33
4E087EE01
4E087HA53
(57)【要約】
【課題】部分的な交換が容易な冷間圧造工具を提供する。
【解決手段】本開示は、第1ケースと、第1ケースと接続される第2ケースと、第1ケースの内部に配置されると共に、第2ケースを押圧するライナーと、ライナーを第2ケースに向かって加圧する蓋部とを備える冷間圧造工具である。第1ケースは、筒状の本体と、本体の端部から第2ケースに向かって突出する凸部と、本体の内周面に設けられた雌ネジ部とを有する。第2ケースは、凸部が第2ケースの径方向に沿って挿入可能な凹部を有する。凹部は、凸部が第2ケースから離れる方向へ移動することを規制する規制面を有する。蓋部は、雌ネジ部と螺合する雄ネジ部と、ライナーに当接する押圧部とを有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の第1ケースと、
前記第1ケースの軸方向において前記第1ケースと接続される筒状の第2ケースと、
前記第1ケースの内部に配置されると共に、前記第2ケースを直接又は間接的に前記第2ケースの軸方向に沿って押圧するライナーと、
前記ライナーを前記第1ケースの軸方向に沿って前記第2ケースに向かって加圧する蓋部と、
を備え、
前記第1ケースは、
筒状の本体と、
前記本体の端部から前記第2ケースに向かって突出する少なくとも1つの凸部と、
前記本体の内周面に設けられた雌ネジ部と、
を有し、
前記第2ケースは、前記少なくとも1つの凸部が前記第2ケースの径方向に沿って挿入可能な少なくとも1つの凹部を有し、
前記少なくとも1つの凹部は、前記少なくとも1つの凸部が前記第2ケースの軸方向に沿って前記第2ケースから離れる方向へ移動することを規制する規制面を有し、
前記蓋部は、
前記雌ネジ部と螺合する雄ネジ部と、
前記ライナーに前記第1ケースの軸方向において当接する押圧部と、
を有する、冷間圧造工具。
【請求項2】
請求項1に記載の冷間圧造工具であって、
前記第1ケースは、前記少なくとも1つの凸部として、第1凸部及び第2凸部を有し、
前記第2ケースは、前記少なくとも1つの凹部として、第1凹部及び第2凹部を有し、
前記第1凸部と前記第2凸部とは、前記第1ケースの径方向において対向し、
前記第1凹部と前記第2凹部とは、前記第2ケースの径方向において対向する、冷間圧造工具。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の冷間圧造工具であって、
前記少なくとも1つの凹部の前記規制面は、平面であり、
前記少なくとも1つの凸部は、前記規制面と当接すると共に、前記規制面と平行な当接面を有する、冷間圧造工具。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の冷間圧造工具であって、
前記ライナーは、前記蓋部によって加圧された状態で、前記第1ケースの径方向において前記少なくとも1つの凸部と重なる、冷間圧造工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、冷間圧造工具に関する。
【背景技術】
【0002】
冷間圧造によってボルト、ナット等の機械要素のブランクを製造する際には、成形孔が設けられたダイスと、ダイスケースとを備える冷間圧造工具が使用される(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8-33940号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
冷間圧造工具は、成形の繰り返しによって摩耗等の劣化が発生するため、交換が必要となる。しかし、従来の冷間圧造工具では、ダイスケースの一部に摩耗が発生した場合でもダイスケース全体を取り換える必要がある。そのため、経済性に改善の余地がある。
【0005】
本開示の一局面は、部分的な交換が容易な冷間圧造工具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、筒状の第1ケースと、第1ケースの軸方向において第1ケースと接続される筒状の第2ケースと、第1ケースの内部に配置されると共に、第2ケースを直接又は間接的に第2ケースの軸方向に沿って押圧するライナーと、ライナーを第1ケースの軸方向に沿って第2ケースに向かって加圧する蓋部と、を備える冷間圧造工具である。
【0007】
第1ケースは、筒状の本体と、本体の端部から第2ケースに向かって突出する少なくとも1つの凸部と、本体の内周面に設けられた雌ネジ部と、を有する。第2ケースは、少なくとも1つの凸部が第2ケースの径方向に沿って挿入可能な少なくとも1つの凹部を有する。少なくとも1つの凹部は、少なくとも1つの凸部が第2ケースの軸方向に沿って第2ケースから離れる方向へ移動することを規制する規制面を有する。蓋部は、雌ネジ部と螺合する雄ネジ部と、ライナーに第1ケースの軸方向において当接する押圧部とを有する。
【0008】
このような構成によれば、内部にライナーを配置した第1ケースに蓋部を螺合することで、第1ケースと蓋部とが締結されると同時に、ライナーによって第2ケースが蓋部から離れる向きに押圧される。これにより、第1ケースの凸部が第2ケースの凹部の規制面に押し付けられ、第1ケースが第2ケースに対して固定される。その結果、十分な剛性を有する冷間圧造工具が組み立てられる。
【0009】
また、冷間圧造工具が組み立てられた状態で蓋部を第1ケースから離脱させることで、第1ケースと第2ケースとを分離できる。そのため、第1ケース及び第2ケースのいずれかに劣化が生じた場合に、劣化が生じたパーツのみを交換することで、経済的に冷間圧造工具を再生することができる。
【0010】
本開示の一態様では、第1ケースは、少なくとも1つの凸部として、第1凸部及び第2凸部を有してもよい。第2ケースは、少なくとも1つの凹部として、第1凹部及び第2凹部を有してもよい。第1凸部と第2凸部とは、第1ケースの径方向において対向してもよい。第1凹部と第2凹部とは、第2ケースの径方向において対向してもよい。このような構成によれば、冷間圧造工具の径方向において対称な位置で第1ケースと第2ケースとが連結されるため、第1ケースと第2ケースとの連結強度を高めることができる。また、切削加工による凸部及び凹部の形成が容易になる。
【0011】
本開示の一態様では、少なくとも1つの凹部の規制面は、平面であってもよい。少なくとも1つの凸部は、規制面と当接すると共に、規制面と平行な当接面を有してもよい。このような構成によれば、凸部と凹部との接触面積が大きくなるため、第1ケースと第2ケースとの連結強度を高めることができる。
【0012】
本開示の一態様では、ライナーは、蓋部によって加圧された状態で、第1ケースの径方向において少なくとも1つの凸部と重なってもよい。このような構成によれば、ダイスを第2ケース内に配置してから、凸部を凹部へ挿入できるため、冷間圧造工具の組み立ての作業性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、実施形態における冷間圧造工具の使用方法を示す模式的な断面図である。
図2図2Aは、図1の冷間圧造工具の模式的な平面図であり、図2Bは、図2AのIIB-IIB線での模式的な断面図である。
図3図3Aは、図2Bの第1ケースの模式的な平面図であり、図3Bは、図3AのIIIB-IIIB線での模式的な断面図であり、図3Cは、図3AのIIIC-IIIC線での模式的な断面図である。
図4図4Aは、図2Bの第2ケースの模式的な平面図であり、図4Bは、図4Aの第2ケースの模式的な側面図であり、図4Cは、図4AのIVC-IVC線での模式的な断面図である。
図5図5Aは、図2Bのダイスの模式的な平面図であり、図5Bは、図5Aのダイスの模式的な側面図である。
図6図6は、図2Bのライナーの模式的な側面図である。
図7図7Aは、図2Bの蓋部の模式的な平面図であり、図7Bは、図7AのVIIB-VIIB線での模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示が適用された実施形態について、図面を用いて説明する。
[1.第1実施形態]
[1-1.構成]
図1に示す冷間圧造工具1は、例えばボルト等の機械要素のブランクBの冷間圧造工程において使用される。
【0015】
冷間圧造工具1は、荒押し加工済みのブランクBが挿入される成形孔1Aを有する。成形孔1Aには、一方の端部からエジェクターピン12が挿入されている。ブランクBは、エジェクターピン12とは反対側から成形孔1Aに挿入される。
【0016】
成形孔1Aに挿入されたブランクBは、パンチ11によって端部(例えばボルト頭)が圧造成形される。圧造成形後、エジェクターピン12が成形孔1A内を摺動することで、ブランクBが成形孔1Aから押し出される。
【0017】
図2A,2Bに示すように、冷間圧造工具1は、第1ケース2と、第2ケース3と、ダイス4と、ライナー5と、蓋部6とを備える。
【0018】
<第1ケース>
図3A-3Cに示すように、第1ケース2は、第1本体21と、第1凸部22と、第2凸部23と、雌ネジ部24とを有する筒状の部材である。
【0019】
第1本体21は、外径が軸方向に沿って一定の筒体である。
第1凸部22及び第2凸部23は、第1本体21の第1端部21Aから後述する第2ケース3に向かって突出した板状の部位である。第1凸部22及び第2凸部23は、例えば、第1ケース2を構成する筒体の切削によって形成される。
【0020】
第1凸部22は、厚み方向から視た形状がT字状である。具体的には、図3Cに示すように、第1凸部22は、幹部22Aと、第1枝部22Bと、第2枝部22Cとを有する。幹部22Aは、第1本体21の第1端部21Aから突出した帯状の部位である。第1枝部22Bは、幹部22Aの先端部から第1ケース2の周方向に沿って突出した部位である。第2枝部22Cは、幹部22Aの先端部から第1ケース2の周方向に沿って、第1枝部22Bとは反対方向に突出した部位である。
【0021】
第1枝部22Bは、第1本体21の第1端部21Aと第1ケース2の軸方向において対向する第1当接面22Dを有する。第2枝部22Cも、第1本体21の第1端部21Aと第1ケース2の軸方向において対向する第2当接面22Eを有する。第1当接面22D及び第2当接面22Eは、それぞれ、第1ケース2の軸方向と直交する(つまり、第1ケース2の径方向と平行な)平面である。
【0022】
第2凸部23は、第1ケース2の径方向において第1凸部22と対向している。また、第2凸部23の形状は第1凸部22と同じである。つまり、第2凸部23は、第1凸部22を第1ケース2の中心軸周りに180°回転させた形状を有する。
【0023】
雌ネジ部24は、第1本体21の内周面に設けられている。具体的には、雌ネジ部24は、第1本体21の内周面のうち、第2端部21Bに近接する領域に設けられている。第2端部21Bは、第1凸部22及び第2凸部23が設けられた第1端部21Aとは反対側の端部である。
【0024】
<第2ケース>
図2Bに示す第2ケース3は、冷間圧造工具1の使用状態(つまり冷間圧造工具1の組み立て状態)において、第1ケース2の軸方向において第1ケース2と接続される筒状の部材である。使用状態において、第2ケース3の中心軸は、第1ケース2の中心軸と一致する。
【0025】
図4A-4Cに示すように、第2ケース3は、第2本体31と、第1凹部32と、第2凹部33と、ダイス当接部34とを有する。
第2本体31は、外径が軸方向に沿って一定の筒体である。第2本体31の外径は、第1ケース2の第1本体21の外径と同じである。
【0026】
第1凹部32及び第2凹部33は、第2本体31の第1端部31Aから軸方向内側に凹んだ切欠き状の部位である。第1凹部32及び第2凹部33は、例えば、第2ケース3を構成する筒体の切削によって形成される。
【0027】
第1凹部32は、第1ケース2の第1凸部22が第2ケース3の径方向に沿って挿入可能な形状を有する。第1凹部32は、第1凸部22の挿入方向から視て、T字状の形状を有する。第1凹部32は、図4Bに示すように、第1規制面32Aと、第2規制面32Bと、第1端面32Cと、第2端面32Dと、対向面32Eとを有する。
【0028】
第1規制面32Aは、第1凹部32に挿入された第1凸部22の第1当接面22Dと当接する。第2規制面32Bは、第1凸部22の第2当接面22Eと当接する。第1規制面32A及び第2規制面32Bは、それぞれ、第1凸部22が第2ケース3の軸方向に沿って第2ケース3から離れる方向へ移動することを規制する。
【0029】
第1規制面32A及び第2規制面32Bは、それぞれ、第2ケース3の軸方向と直交する(つまり、第2ケース3の径方向と平行な)平面である。また、第1規制面32Aは、第1当接面22Dと平行であり、第2規制面32Bは、第2当接面22Eと平行である。
【0030】
第1端面32Cは、第1規制面32Aの周方向外側(つまり第2規制面32Bから遠い側)の端部から第2ケース3の軸方向に沿って第1端部31Aから離れる方向に(つまり第2本体31の内側に向かって)延伸している。第2端面32Dは、第2規制面32Bの周方向外側の端部から第2ケース3の軸方向に沿って第1端部31Aから離れる方向に延伸している。
【0031】
第1端面32Cと第2端面32Dとは、第2ケース3の周方向において対向している。第1端面32C及び第2端面32Dは、第1凸部22の第1枝部22B又は第2枝部22Cに当接することで、第1凸部22の第2ケース3の周方向への移動(つまり第1ケース2の軸回転)を規制する。
【0032】
対向面32Eは、第1凸部22の先端と対向する面である。第2ケース3の軸方向における対向面32Eと第1規制面32A及び第2規制面32Bとの距離D1は、第1ケース2の軸方向における第1凸部22の第1枝部22B及び第2枝部22Cの長さD2(図3C参照)よりも大きい。つまり、第1凹部32は、第1凸部22が第1凹部32内で第2ケース3の軸方向に移動可能な遊びを有する。
【0033】
第2凹部33は、第1ケース2の第2凸部23が第2ケース3の径方向に沿って挿入可能な形状を有する。第2凹部33は、第2ケース3の径方向において第1凹部32と対向している。また、第2凹部33の形状は第1凹部32と同じである。つまり、第2凹部33は、第1凹部32を第2ケース3の中心軸周りに180°回転させた形状を有する。
【0034】
ダイス当接部34は、第2本体31の第2端部31Bに設けられている。ダイス当接部34は、第2本体31の内周面から第2本体31の径方向内側に突出している。ダイス当接部34は、後述するダイス4のダイス段差部42が当接する段差を構成している。なお、第2端部31Bは、第1凹部32及び第2凹部33が設けられた第1端部31Aとは反対側の端部である。
【0035】
<ダイス>
図2Bに示すダイス4は、冷間圧造工具1の使用状態において、少なくとも一部が第2ケース3の内部に配置される。本実施形態では、ダイス4は、全体が第2ケース3の内部に配置される。
【0036】
ダイス4の第2ケース3の軸方向における長さは、第2ケース3の軸方向における長さよりも小さい。具体的には、ダイス4の長さは、第2ケース3の第2本体31の第2端部31Bから第1凹部32及び第2凹部33までの距離よりも小さい。
【0037】
ダイス4は、図5A,5Bに示すように、成形孔41とダイス段差部42とを有する。
成形孔41は、冷間圧造工具1の成形孔1Aの一部を構成する。成形孔41は、ダイス4を軸方向に貫通している。
【0038】
ダイス段差部42は、第1端部4Aから第2端部4Bに向かって外径が小さくなる部位である。ダイス段差部42は、第2ケース3のダイス当接部34に当接することで、第2ケース3の軸方向に沿った移動を規制する段差を構成している。なお、ダイス4の第1端部4Aは、後述するライナー5と付き合わされる端部であり、第2端部4Bは、第1端部4Aと反対側の端部である。
【0039】
<ライナー>
図2Bに示すライナー5は、冷間圧造工具1の使用状態において、少なくとも一部が第1ケース2の内部に配置されている。
【0040】
本実施形態では、ライナー5は、第1ケース2の内部と第2ケース3の内部とに配置される。また、ライナー5は、蓋部6によって加圧された状態(つまり冷間圧造工具1の使用状態)で、第1ケース2の径方向において、第1凸部22、第2凸部23、第1凹部32及び第2凹部33と重なる。
【0041】
ライナー5は、ダイス4を介して第2ケース3を間接的に第2ケース3の軸方向に沿って押圧する。つまり、ライナー5は、第2ケース3及びダイス4の第1ケース2に近づく方向の移動を規制する。
【0042】
ライナー5は、図6に示すように、ライナー段差部51を有する。また、ライナー5は、冷間圧造工具1の成形孔1Aの一部を構成する成形孔(図示省略)を有する。成形孔は、ライナー5を軸方向に貫通している。
【0043】
ライナー段差部51は、第1端部5Aから第2端部5Bに向かって外径が小さくなる部位である。ライナー段差部51は、後述する蓋部6の押圧部62に当接することで、蓋部6から押圧力を受ける段差を構成している。なお、ライナー5の第1端部5Aは、ダイス4と付き合わされる端部であり、第2端部5Bは、第1端部5Aと反対側の端部である。
【0044】
<蓋部>
図2Bに示す蓋部6は、冷間圧造工具1の使用状態において、ライナー5を第1ケース2の軸方向に沿って第2ケース3に向かって加圧する。また、蓋部6の内部には、ライナー5の一部が挿通される。
【0045】
蓋部6は、図7A,7Bに示すように、雄ネジ部61と、押圧部62と、フランジ部63とを有する筒状の部材である。
【0046】
雄ネジ部61は、第1ケース2の雌ネジ部24と螺合する。雄ネジ部61は、蓋部6の外周面のうち、第1端部6Aに近接する領域に設けられている。蓋部6の第1端部6Aは、第1ケース2内に配置される端部であり、第2端部6Bは、第1端部6Aと反対側の端部である。
【0047】
押圧部62は、ライナー5に第1ケース2の軸方向において当接する部位である。押圧部62は、蓋部6の第1端部6Aを構成しており、ライナー5のライナー段差部51に当接する。
【0048】
フランジ部63は、蓋部6を第1ケース2に螺合させる際に例えば治具によって保持される部位である。フランジ部63は、蓋部6の第2端部6Bを構成している。フランジ部63の外径は、雄ネジ部61の外径よりも大きい。フランジ部63は、冷間圧造工具1の使用状態において、第1ケース2の外側に配置される。
【0049】
<冷間圧造工具の組み立て方法>
冷間圧造工具1は、第1ケース2、第2ケース3、ダイス4、ライナー5及び蓋部6を用いて、以下の手順で組み立てられる。
【0050】
まず、図2Bに示すように、第2ケース3内に第2端部4Bを先頭としてダイス4を挿入し、ダイス4のダイス段差部42を第2ケース3のダイス当接部34に当接させる。これにより、ダイス4が位置決めされる。この状態では、ダイス4は、第2ケース3の第1凹部32及び第2凹部33とは重ならない。
【0051】
次に、第1凹部32及び第2凹部33に第1凸部22及び第2凸部23が挿入されるように、第1ケース2を第2ケース3に対して径方向に相対的に移動させる。これにより、第1ケース2を第2ケース3に連結する。
【0052】
さらに、連結された第1ケース2と第2ケース3に、第1端部5Aを先頭としてライナー5を挿入する。ライナー5は、第1ケース2側から、ライナー5の第1端部5Aが第2ケース3の内部においてダイス4の第1端部4Aと当接する位置まで挿入される。これにより、第1ケース2の径方向の移動が規制される。
【0053】
最後に、ライナー5を蓋部6に挿通させながら、蓋部6を第1ケース2に螺合させる。これにより、蓋部6の押圧部62がライナー5のライナー段差部51をダイス4に向かって第1ケース2の軸方向に押圧する。
【0054】
ライナー5によって押圧されたダイス4は、ダイス段差部42によって第2ケース3を第1ケース2から離れる向きで第2ケース3の軸方向に押圧する。これにより、第1凹部32及び第2凹部33が第1ケース2から離れる向きに移動する。その結果、第1凹部32及び第2凹部33それぞれの第1規制面32A及び第2規制面32Bが、第1凸部22及び第2凸部23それぞれの第1当接面22D及び第2当接面22Eに押し付けられる。
【0055】
これにより発生する第1規制面32A及び第2規制面32Bと第1当接面22D及び第2当接面22Eとの間の摩擦力によって、第2ケース3に対する第1ケース2の周方向及び径方向の移動が規制される。その結果、第1ケース2が第2ケース3に対して固定されると共に、冷間圧造工具1におけるダイス4及びライナー5の位置も保持される。
【0056】
[1-2.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1a)内部にライナー5を配置した第1ケース2に蓋部6を螺合することで、第1ケース2と蓋部6とが締結されると同時に、ライナー5によって第2ケース3が蓋部6から離れる向きに押圧される。これにより、第1ケース2の第1凸部22及び第2凸部23が第2ケース3の第1凹部32及び第2凹部33の第1規制面32A及び第2規制面32Bに押し付けられ、第1ケース2が第2ケース3に対して固定される。その結果、十分な剛性を有する冷間圧造工具1が組み立てられる。
【0057】
また、冷間圧造工具1が組み立てられた状態で蓋部6を第1ケース2から離脱させることで、第1ケース2と第2ケース3とを分離できる。そのため、第1ケース2及び第2ケース3のいずれかに劣化が生じた場合に、劣化が生じたパーツのみを交換することで、経済的に冷間圧造工具1を再生することができる。
【0058】
(1b)任意の長さの第1ケース2と第2ケース3とを連結することで、冷間圧造工具1の長さの設計が容易になる。また、複数のケースの連結によって長尺の冷間圧造工具1を容易に製造できる。
【0059】
(1c)第1凸部22、第2凸部23、第1凹部32及び第2凹部33によって、冷間圧造工具1の径方向において対称な位置で第1ケース2と第2ケース3とが連結されるため、第1ケース2と第2ケース3との連結強度を高めることができる。また、切削加工による凸部22,23及び凹部32,33の形成が容易になる。
【0060】
(1d)第1当接面22D、第2当接面22E、第1規制面32A及び第2規制面32Bによって、凸部22,23と凹部32,33との接触面積が大きくなるため、第1ケース2と第2ケース3との連結強度を高めることができる。
【0061】
(1e)ライナー5が第1ケース2の径方向において凸部22,23と重なることで、ダイス4を第2ケース3内に配置してから、凸部22,23を凹部32,33へ挿入できる。そのため、冷間圧造工具1の組み立ての作業性が向上する。
【0062】
[2.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に限定されることなく、種々の形態を採り得ることは言うまでもない。
【0063】
(2a)上記実施形態の冷間圧造工具1において、第1当接面22D、第2当接面22E、第1規制面32A及び第2規制面32Bは必ずしも平面でなくてもよい。また、凸部22,23は、第1規制面32A及び第2規制面32Bに、面接触ではなく線接触してもよい。
【0064】
(2b)上記実施形態の冷間圧造工具1において、第1凸部22及び第2凸部23は、必ずしも第1ケース2の径方向において対向しなくてもよく、第1凹部32及び第2凹部33は、必ずしも第2ケース3の径方向において対向しなくてもよい。また、第1ケース2は、1つ又は3つ以上の凸部を有してもよく、第2ケース3は、1つ又は3つ以上の凹部を有してもよい。
【0065】
(2c)上記実施形態の冷間圧造工具1において、ライナー5は、必ずしも第1ケース2の径方向において凸部22,23と重ならなくてもよい。例えば、ダイス4が第1ケース2の径方向において凸部22,23と重なってもよい。
【0066】
(2d)上記実施形態の冷間圧造工具1において、ライナー5は、必ずしもダイス4を介して第2ケース3を押圧しなくてもよく、第2ケース3への当接によって第2ケース3を直接押圧してもよい。また、ライナー5とダイス4とは一体化されていてもよい。
【0067】
(2e)上記実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素として分散させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に統合したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。なお、特許請求の範囲に記載の文言から特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。
【符号の説明】
【0068】
1…冷間圧造工具、1A…成形孔、2…第1ケース、3…第2ケース、4…ダイス、
4A,4B…端部、5…ライナー、5A,5B…端部、6…蓋部、
6A,6B…端部、11…パンチ、12…エジェクターピン、21…第1本体、
21A…第1端部、21B…第2端部、22…第1凸部、22A…幹部、
22B…第1枝部、22C…第2枝部、22D…第1当接面、22E…第2当接面、
23…第2凸部、24…雌ネジ部、31…第2本体、31A…第1端部、
31B…第2端部、32…第1凹部、32A…第1規制面、32B…第2規制面、
32C…第1端面、32D…第2端面、32E…対向面、33…第2凹部、
34…ダイス当接部、41…成形孔、42…ダイス段差部、51…ライナー段差部、
61…雄ネジ部、62…押圧部、63…フランジ部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2021-10-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の第1ケースと、
前記第1ケースの軸方向において前記第1ケースと接続される筒状の第2ケースと、
前記第1ケースの内部に配置されると共に、前記第2ケースを直接又は間接的に前記第2ケースの軸方向に沿って押圧するライナーと、
前記ライナーを前記第1ケースの軸方向に沿って前記第2ケースに向かって加圧する蓋部と、
を備え、
前記第1ケースは、
筒状の本体と、
前記本体の端部から前記第2ケースに向かって突出する少なくとも1つの凸部と、
前記本体の内周面に設けられた雌ネジ部と、
を有し、
前記第2ケースは、前記少なくとも1つの凸部が前記第2ケースの径方向に沿って挿入可能な少なくとも1つの凹部を有し、
前記少なくとも1つの凹部は、前記少なくとも1つの凸部が前記第2ケースの軸方向に沿って前記第2ケースから離れる方向へ移動することを規制する規制面を有し、
前記蓋部は、
前記雌ネジ部と螺合する雄ネジ部と、
前記ライナーに前記第1ケースの軸方向において当接する押圧部と、
を有する、冷間圧造工具。
【請求項2】
請求項1に記載の冷間圧造工具であって、
前記第1ケースは、前記少なくとも1つの凸部として、第1凸部及び第2凸部を有し、
前記第2ケースは、前記少なくとも1つの凹部として、第1凹部及び第2凹部を有し、
前記第1凸部と前記第2凸部とは、前記第1ケースの径方向において対向し、
前記第1凹部と前記第2凹部とは、前記第2ケースの径方向において対向する、冷間圧造工具。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の冷間圧造工具であって、
前記少なくとも1つの凹部の前記規制面は、平面であり、
前記少なくとも1つの凸部は、前記規制面と当接すると共に、前記規制面と平行な当接面を有する、冷間圧造工具。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の冷間圧造工具であって、
前記ライナーは、前記蓋部によって加圧された状態で、前記第1ケースの径方向において前記少なくとも1つの凸部と重なる、冷間圧造工具。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の冷間圧造工具であって、
前記少なくとも1つの凸部は、前記第1ケースの前記第2ケースに対する径方向の相対的移動により、前記少なくとも1つの凹部に挿入される、冷間圧造工具。