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  • 特開-スチレン系樹脂組成物及び成形品 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022131823
(43)【公開日】2022-09-07
(54)【発明の名称】スチレン系樹脂組成物及び成形品
(51)【国際特許分類】
   C08L 25/04 20060101AFI20220831BHJP
   C08L 1/02 20060101ALI20220831BHJP
   C08L 35/06 20060101ALI20220831BHJP
【FI】
C08L25/04
C08L1/02
C08L35/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021030970
(22)【出願日】2021-02-26
(71)【出願人】
【識別番号】500199479
【氏名又は名称】PSジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100181272
【弁理士】
【氏名又は名称】神 紘一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100141601
【弁理士】
【氏名又は名称】貴志 浩充
(72)【発明者】
【氏名】野寺 明夫
(72)【発明者】
【氏名】玉置 喬士
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002AB01X
4J002AH00Z
4J002BC03W
4J002BH01Y
4J002GG02
4J002GL00
4J002GN00
4J002GQ01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】耐熱性、耐油性、展延性及び表面外観に優れたスチレン系樹脂組成物、並びに当該スチレン系樹脂組成物を含む成形品を提供する。
【解決手段】本発明は、MFRが5以上のスチレン系樹脂(a)25~89質量%と、
セルロース(b)10~55質量%と、
不飽和カルボン酸系化合物により変性されたゴム状重合体(c)1~20質量%と、
を含有することを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
MFRが5以上のスチレン系樹脂(a)25~89質量%と、
セルロース(b)10~55質量%と、
不飽和カルボン酸系化合物により変性されたゴム状重合体(c)1~20質量%と、を含有することを特徴とする、スチレン系樹脂組成物。
【請求項2】
前記ゴム状重合体(c)が、無水マレイン酸変性スチレン系ゴム状重合体である、請求項1に記載のスチレン系樹脂組成物。
【請求項3】
前記セルロース(b)が、リグニンを20質量%以下含有するセルロースである、請求項1又は請求項2のいずれか1項に記載のスチレン系樹脂組成物。
【請求項4】
前記セルロース(b)が、ヘミセルロースを1質量%以上含有するセルロースである、請求項1~3のいずれか1項に記載のスチレン系樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載のスチレン系樹脂組成物を含む、成形品。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか1項に記載のスチレン系樹脂組成物を含む、シート又はフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スチレン系樹脂組成物及び成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
スチレン系樹脂は、成形性、寸法安定性に加え、透明性に優れていることから、広範囲な用途に使用されている。また、環境保護の観点からバイオマス材料が注目されており、樹脂材料と、天然由来の有機充填材やバイオポリマーとの複合材料が検討されている。
例えば、特許文献1、2にはスチレン系樹脂とセルロース系材料とスチレン系熱可塑性エラストマーからなるスチレン系複合樹脂組成物、特許文献3には酸変性スチレンを含むポリスチレン系樹脂とセルロース系材料からなるスチレン系複合樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7-173352号公報
【特許文献2】特開2000-230105号公報
【特許文献3】特開平8-231795号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1、2に記載の技術ではスチレン系熱可塑性エラストマーによりセルロース系材料を多く配合できるものの、セルロース系材料の分散性や界面接着性が不十分のため、展延性が低い。さらに、特許文献1、2の技術を用いたスチレン系複合樹脂組成物のシート・フィルム成形品だけでなく、当該シート・フィルムから製造される真空成形品は偏肉となり、これら成形品の強度が低下するほか、表面外観も悪くなってしまう問題点があった。また、上記特許文献3の技術は、無水マレイン酸変性ポリスチレンによりセルロース系材料の分散性や界面接着性は改良できるものの、材料が脆くなってしまい、展延性や成形性が大きく低下してしまう問題点があった。
【0005】
そこで、本発明の目的は、耐熱性、耐油性、展延性、及び表面外観に優れたスチレン系樹脂組成物、並びに当該スチレン系樹脂組成物を含む成形品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記問題点に鑑み、鋭意研究し、実験を重ねた結果、MFRが5以上のスチレン系樹脂(a)とセルロース(b)と不飽和カルボン酸もしくはその無水物、又はそれらの誘導体で変性したゴム状重合体(c)とを特定の比率で混合した樹脂組成物を用いることにより、上記の課題を解決しうることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は以下のとおりである。
【0007】
[1]本発明は、MFRが5以上のスチレン系樹脂(a)25~89質量%と、
セルロース(b)10~55質量%と、
不飽和カルボン酸又は系化合物により変性されたゴム状重合体(c)1~20質量%と、を含有することを特徴とする、スチレン系樹脂組成物である。
[2]本発明において、前記ゴム状重合体(c)が、無水マレイン酸変性スチレン系ゴム状重合体であることが好ましい。
[3]本発明において、前記セルロース(b)が、リグニンを20質量%以下含有するセルロースであることが好ましい。
[4]本発明において、前記セルロース(b)が、ヘミセルロースを1質量%以上含有するセルロースであることが好ましい。
[5]本発明は、上記[1]~[3]のいずれか1項に記載のスチレン系樹脂組成物を含む、成形品であることが好ましい。
[6]本発明は、上記[1]~[4]のいずれか1項に記載のスチレン系樹脂組成物を含む、シート又はフィルムであることが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、耐熱性、耐油性、展延性、及び表面外観に優れたスチレン系樹脂組成物、並びに当該スチレン系樹脂組成物を含む成形品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本実施形態の成形体の一例である容器に使用する金型の断面図の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」と言う。)について詳細に説明するが、本発明は以下の記載に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
[スチレン系樹脂組成物]
本実施形態のスチレン系樹脂組成物は、スチレン系樹脂(a)25~89質量%と、セルロース(b)10~55質量%と、不飽和カルボン酸又は系化合物により変性されたゴム状重合体(c)1~20質量%とを含有する。また、前記スチレン系樹脂(a)のMFRは5以上である。
【0011】
<スチレン系樹脂(a)(以下、(a)成分とも称する。)>
本実施形態において、MFRが5以上のスチレン系樹脂(a)の含有量は、スチレン系樹脂組成物全体(100質量%)に対して、25~89質量%であり、好ましくは30~85質量%、より好ましくは35~83質量%である。当該含有量を25質量%以上とすることにより、成形性、外観を高めることができる。一方、当該含有量を89質量%以下とすることにより、セルロース(b)の合計含有量を確保することができ、耐熱性、耐油性等を向上させることができる。
【0012】
本発明におけるスチレン系樹脂(a)のMFR(200℃、5kg)が5以上であることが必要である。スチレン系樹脂(a)のMFRは好ましくは8以上、より好ましくは10以上30以下であり、さらに好ましくは10上25以下である。
本実施形態のスチレン系樹脂組成物中のセルロース(b)の着色、ヤケを防止するため、当該組成物を構成する構成成分に対して240℃以下の溶融混合が必要となる。しかし、スチレン系樹脂(a)のMFRが5より低いとセルロース(b)がスチレン系樹脂(a)に分散し難く、展延性が低下する。
さらに、セルロース(b)との密着性を向上させて、より展延性を向上させるために、スチレン系樹脂(a)は、スチレン系単量体単位及び不飽和カルボン酸系単量体単位を含むことが好ましい。当該不飽和カルボン酸系単量体単位の含有量は、好ましくはスチレン系樹脂(a)全体に対して2.0~16.0質量%、より好ましくは4~14質量%であり、さらに好ましくは8~13質量%である。
使用するスチレン系樹脂(a)は、1種又は2種以上をブレンドして使用しても構わず、スチレン系樹脂(a)がブレンド物の場合、屈折率やMFRはそのブレンド物の値である。
本明細書におけるMFRは、ISO 1133に準拠して測定した値を用いている。
【0013】
本実施形態で用いることができるスチレン系樹脂(a)は、スチレン系単量体単位を有する重合体であることが好ましく、スチレン系単量体単位を有する共重合体であることがより好ましい。また、スチレン系樹脂(a)は、スチレン系単量体と、当該スチレン系単量体と共重合可能な他のビニル単量体及びゴム質重合体より選ばれる1種以上の単量体を重合して得られるスチレン系共重合樹脂であることがさらに好ましい。本発明におけるスチレン系樹脂(a)は、特に限定されないが、例えば、ポリスチレン、マトリクス中にゴム状重合体(A)の粒子が分散されたゴム変性スチレン系樹脂、若しくはスチレン系単量体単位を有するスチレン系共重合樹脂、又はこれらの混合物が挙げられる。
【0014】
<<ポリスチレン>>
本実施形態において、ポリスチレンとはスチレン系単量体を重合した単独重合体であり、一般的に入手できるものを適宜選択して用いることができる。ポリスチレンを構成するスチレン系単量体としては、スチレンの他に、α-メチルスチレン、α-メチル-p-メチルスチレン、ο-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、ビニルトルエン、エチルスチレン、イソブチルスチレン、及びt-ブチルスチレン又はブロモスチレン及びインデン等のスチレン誘導体が挙げられる。前記スチレン系単量体は、特に工業的観点からスチレンが好ましい。これらのスチレン系単量体は、1種又は2種以上使用することができる。ポリスチレンは本発明の効果を損なわない範囲で、上記のスチレン系単量体単位以外の単量体単位を更に含有することを排除しないが、典型的にはスチレン系単量体単位からなる。
【0015】
<<ゴム変性スチレン系樹脂>>
本実施形態において、ゴム変性スチレン系樹脂とは、ポリマーマトリックスとしてのスチレン樹脂(ポリスチレン及びスチレン系共重合樹脂を含む)中にゴム状重合体(A)の粒子が分散したものであり、ゴム状重合体(A)の存在下でスチレン系単量体を重合させることにより製造することができる。
【0016】
本実施形態のゴム変性スチレン系樹脂を構成するスチレン系単量体としては、スチレンの他に、例えば、α-メチルスチレン、α-メチルp-メチルスチレン、ο-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、ビニルトルエン、エチルスチレン、イソブチルスチレン、及びt-ブチルスチレン又はブロモスチレン及びインデン等のスチレン誘導体が挙げられる。特に、スチレンが好ましい。これらのスチレン系単量体は、1種又は2種以上使用することができる。
【0017】
本実施形態のゴム変性スチレン系樹脂に含まれるゴム状重合体(A)は、例えば、内側に上記のスチレン系単量体より得られるスチレン単量体単位含有樹脂を内包してもよく、及び/又は、外側にスチレン単量体単位含有樹脂がグラフトされてもよい。
【0018】
前記ゴム状重合体(A)としては、例えば、ポリブタジエン、ポリスチレンを内包するポリブタジエン、ポリイソプレン、天然ゴム、ポリクロロプレン、スチレン-ブタジエン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体等を使用できるが、ポリブタジエン又はスチレン-ブタジエン共重合体が好ましい。ポリブタジエンには、シス含有率の高いハイシスポリブタジエン及びシス含有率の低いローシスポリブタジエンの双方を用いることができる。また、スチレン-ブタジエン共重合体の構造としては、ランダム構造及びブロック構造の双方を用いることができる。これらのゴム状重合体(A)は1種若しくは2種以上使用することができる。また、ブタジエン系ゴムを水素添加した飽和ゴムを使用することもできる。
このようなゴム変性スチレン系樹脂の例としては、HIPS(高衝撃ポリスチレン)、ABS樹脂(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体)、AAS樹脂(アクリロニトリル-アクリルゴム-スチレン共重合体)、AES樹脂(アクリロニトリル-エチレンプロピレンゴム-スチレン共重合体)等が挙げられる。
【0019】
本実施形態において、ゴム変性スチレン系樹脂がHIPS系樹脂である場合、これらのゴム状重合体(A)の中で特に好ましいのは、シス1,4結合が90モル%以上で構成されるハイシスポリブタジエンである。該ハイシスポリブタジエンにおいては、ビニル1,2結合が6モル%以下で構成されることが好ましく、3モル%以下で構成されることが特に好ましい。
なお、該ハイシスポリブタジエンの構成単位に関する異性体としてシス1,4、トランス1,4、又はビニル1,2構造を有するものの含有率は、赤外分光光度計を用いて測定し、モレロ法によりデータ処理することにより算出できる。
また、該ハイシスポリブタジエンは、公知の製造法、例えば有機アルミニウム化合物とコバルト又はニッケル化合物を含んだ触媒を用いて、1,3ブタジエンを重合して容易に得ることができる。
【0020】
本実施形態において、ゴム変性スチレン系樹脂中に含まれるゴム状重合体(A)の含有量は、ゴム変性スチレン系樹脂100質量%に対して、2~10質量%が好ましく、更に好ましくは3~8質量%である。ゴム状重合体(A)の含有量が2質量%より少ないとスチレン系樹脂の耐衝撃性が低下する虞がある。また、ゴム状重合体(A)の含有量が10質量%を超えると光透過性が低下する虞がある。
なお本開示で、ゴム変性スチレン系樹脂中に含まれるゴム状重合体(A)の含有量は、熱分解ガスクロマトグラフイーを用いて算出される値である。
【0021】
本実施形態において、ゴム変性スチレン系樹脂中に含まれるゴム状重合体(A)の平均粒子径は、光透過性の観点から、0.5~2.5μmであることが好ましく、更に好ましくは0.8~2.0μmである。
なお本開示で、ゴム変性スチレン系樹脂中に含まれるゴム状重合体(A)の平均粒子径は、以下の方法により測定することができる。
四酸化オスミウムで染色したゴム変性スチレン系樹脂から厚さ75nmの超薄切片を作製し、電子顕微鏡を用いて倍率10000倍の写真を撮影する。写真中、黒く染色された粒子がゴム状重合体である。写真から、下記数式(N1):
平均粒子径=ΣniDri /ΣniDri (N1)
(上記数式(N1)中、niは、粒子径Driのゴム状重合体(a)粒子の個数であり、粒子径Driは、写真中の粒子の面積から円相当径として算出した粒子径である。)
により面積平均粒子径を算出し、ゴム状重合体(A)の平均粒子径とする。本測定は、写真を200dpiの解像度でスキャナーに取り込み、画像解析装置IP-1000(旭化成社製)の粒子解析ソフトを用いて測定する。
【0022】
本実施形態において、ゴム変性スチレン系樹脂の還元粘度(これは、ゴム変性スチレン系樹脂の分子量の指標となる)は、0.50~0.85dL/gの範囲にあることが好ましく、更に好ましくは0.55~0.80dL/gの範囲である。0.50dL/gより小さいと衝撃強度が低下する虞があり、0.85dL/gを超えると流動性の低下により成形性が低下する虞がある。
なお本開示で、ゴム変性スチレン系樹脂の還元粘度は、トルエン溶液中で30℃、濃度0.5g/dLの条件で測定される値である。
【0023】
本実施形態において、ゴム変性スチレン系樹脂の製造方法は、特に制限されるものではないが、ゴム状重合体(A)の存在下、スチレン系単量体(及び溶媒)を重合する塊状重合(若しくは溶液重合)、又は反応途中で懸濁重合に移行する塊状-懸濁重合、又はゴム状重合体(A)ラテックスの存在下、スチレン系単量体を重合する乳化グラフト重合にて製造することができる。塊状重合においては、ゴム状重合体(a)とスチレン系単量体、並びに必要に応じて有機溶媒、有機過酸化物、及び/又は連鎖移動剤を添加した混合溶液を、完全混合型反応器又は槽型反応器と複数の槽型反応器とを直列に連結し構成される重合装置に連続的に供給することにより製造することができる。
【0024】
<<スチレン系共重合樹脂>>
本実施形態において、スチレン系共重合樹脂とは、スチレン系単量体単位と、不飽和カルボン酸系単量体単位及び/又は不飽和カルボン酸エステル系単量体単位とを含む樹脂である。本発明におけるスチレン系共重合樹脂は、スチレン系単量体単位、不飽和カルボン酸系単量体単位、及び不飽和カルボン酸エステル系単量体単位の合計含有量を100質量%としたとき、スチレン系単量体単位の含有量は69~98質量%であることが好ましく、より好ましくは74~96質量%であり、さらに好ましくは77~92質量%の範囲である。当該含有量を69質量%以上とすることにより、スチレン系樹脂(a)の屈折率を向上させることができる。一方、当該含有量を98質量%以下とすることにより、後述の不飽和カルボン酸系単量体単位及び任意成分である不飽和カルボン酸エステル系単量体単位を所望量存在させにくくなり、これらの単量体単位による後述の効果を得にくくなる。
【0025】
本実施形態のスチレン系共重合樹脂において、不飽和カルボン酸系単量体単位は耐熱性を向上させる役割を果たす。スチレン系共重合樹脂中のスチレン系単量体単位、不飽和カルボン酸系単量体単位、及び不飽和カルボン酸エステル系単量体単位の合計含有量を100質量%としたとき、不飽和カルボン酸系単量体単位の含有量は2~16質量%であることが好ましく、より好ましくは4~14質量%であり、さらに好ましくは8~13質量%である。当該含有量を2質量%以上とすることにより、セルロースの分散性を向上させ、光透過性、外観、耐熱性をより向上させることができる。一方、当該含有量を16質量%以下とすることにより、樹脂の流動性と機械的物性を向上させることができる。
【0026】
一般に、スチレン系共重合樹脂の一例である、スチレン-メタクリル酸-メタクリル酸メチル共重合樹脂を含むスチレン-メタクリル酸系樹脂は、工業的規模ではほとんどの場合、ラジカル重合で生産されているが、本実施形態において、脱揮工程のゲル化反応を抑制するために、種々のアルコールを重合系中に添加して重合を行なうことができる。
【0027】
不飽和カルボン酸エステル系単量体は、不飽和カルボン酸系単量体との分子間相互作用によって不飽和カルボン酸系単量体の脱水反応を抑制するために、及び、樹脂の機械的強度を向上させるために用いることができる。更には、不飽和カルボン酸エステル系単量体は、耐候性、表面硬度等の樹脂特性の向上にも寄与する。
【0028】
本実施形態のスチレン系共重合樹脂において、スチレン系単量体単位、不飽和カルボン酸系単量体単位、及び不飽和カルボン酸エステル系単量体単位の合計含有量を100質量%としたとき、不飽和カルボン酸エステル系単量体単位の含有量は0~15質量%であることが好ましく、より好ましくは1~12質量%、さらに好ましくは2~10質量%である。当該含有量を15質量%以下とすることにより、樹脂の光透過性と流動性を向上させることができる。また、不飽和カルボン酸エステル系単量体単位の含有量を0質量%とすることにより、耐熱性の向上やコスト削減をすることができるが、上記の観点から不飽和カルボン酸エステル系単量体単位の含有量を0質量%超とすることもできる。
【0029】
なお、不飽和カルボン酸系単量体と不飽和カルボン酸エステル系単量体単位とが隣り合わせで結合した場合、高温、高真空の脱揮装置を用いると、条件によっては脱アルコール反応が起こり、六員環酸無水物が形成される場合がある。本実施形態の共重合樹脂は、この六員環酸無水物を含んでいてもよいが、流動性を低下させることから、生成される六員環酸無水物の量はより少ない方が好ましい。
【0030】
本実施形態において、スチレン系共重合樹脂中の、スチレン単量体単位(例えば、スチレン単量体単位)、不飽和カルボン酸系単量体単位(例えば、メタクリル酸単量体単位)及び不飽和カルボン酸エステル系単量体単位(例えば、メタクリル酸メチル単量体単位)の含有量は、それぞれ、プロトン核磁気共鳴(H-NMR)測定機で測定したスペクトルの積分比から求めることができる。
【0031】
本実施形態において、スチレン系共重合樹脂は、スチレン系単量体単位、不飽和カルボン酸系単量体単位、及び任意成分である不飽和カルボン酸エステル系単量体単位以外の単量体単位を、本発明の効果を損なわない範囲で更に含有することを排除しない。しかし、本発明における共重合樹脂は、典型的には、スチレン系単量体単位、不飽和カルボン酸系単量体単位、及び不飽和カルボン酸エステル系単量体単位から構成されることが好ましい。
【0032】
本実施形態のスチレン系共重合樹脂を構成するスチレン系単量体としては、スチレン系単量体としては、特に限定されないが例えば、スチレン、α-メチルスチレン、α-メチル-p-メチルスチレン、ο-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、ビニルトルエン、エチルスチレン、イソブチルスチレン、t-ブチルスチレン、ブロモスチレン、インデン等のスチレン誘導体が挙げられる。スチレン系単量体としては、工業的観点からスチレンが好ましい。これらのスチレン系単量体は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0033】
本実施形態のスチレン系共重合樹脂を構成する不飽和カルボン酸系単量体としては、特に限定されないが例えば、メタクリル酸、アクリル酸、無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等が挙げられる。不飽和カルボン酸系単量体としては、耐熱性の向上効果が大きく、常温にて液状でハンドリング性に優れることからメタクリル酸が好ましい。これらの不飽和カルボン酸系単量体は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0034】
本実施形態のスチレン系共重合樹脂を構成する不飽和カルボン酸エステル系単量体としては、特に限定されないが例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等が挙げられる。(メタ)アクリル酸エステル系単量体としては、耐熱性低下に対する影響が小さいことから(メタ)アクリル酸メチルが好ましい。これらの不飽和カルボン酸エステル系単量体は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
本実施形態のスチレン系共重合樹脂としては、スチレン-(メタ)アクリル酸メチル共重合体、スチレン-(メタ)アクリル酸エチル共重合体、スチレン-(メタ)アクリル酸プロパン共重合体、又はスチレン-(メタ)アクリル酸ブチル共重合体、スチレン-(メタ)アクリル酸メチル-メタ)アクリル酸ブチル共重合体、スチレン-(メタ)アクリル酸メチル-メタクリル酸共重合体が好ましい。
【0035】
本実施形態において、スチレン系共重合樹脂の重量平均分子量(Mw)は100,000~350,000であることが好ましく、より好ましくは120,000~300,000、さらに好ましくは140,000~240,000である。重量平均分子量(Mw)が100,000~350,000である場合、機械的強度と流動性とのバランスにより優れる樹脂が得られ、またゲル物の混入も少ない。なお、重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用い、標準ポリスレン換算で得られる値である。
【0036】
本実施形態のスチレン系樹脂(a)としては、上記ゴム変性スチレン系樹脂の1種又は2種以上と、スチレン系共重合樹脂の1種又は2種以上とをブレンドした混合物を使用してもよい。その場合、ゴム変性スチレン系樹脂とスチレン系共重合樹脂との混合比は使用目的に応じて適宜変更することができる。例えば、ゴム変性スチレン系樹脂がスチレン系共重合樹脂より少ない系においては、スチレン系樹脂(a)の総量(100質量%)に対して、スチレン系共重合樹脂を0.1~30質量%含有することが好ましい。一方、ゴム変性スチレン系樹脂がスチレン系共重合樹脂より多い系においては、スチレン系樹脂(a)の総量(100質量%)に対して、スチレン系共重合樹脂を70~99.9質量%含有することが好ましい。
【0037】
本実施形態において、スチレン系共重合樹脂の重合方法は、特に制限はないが例えば、ラジカル重合法として、塊状重合法又は溶液重合法を好適に採用できる。重合方法は、主に、重合原料(単量体成分)を重合させる重合工程と、重合生成物から未反応モノマー、重合溶媒等の揮発分を除去する脱揮工程とを備える。
以下、本実施形態に用いることができるスチレン系共重合樹脂の重合方法の一例について説明する。
当該スチレン系共重合樹脂を得るために重合原料を重合させる際には、重合原料組成物中に、典型的には重合開始剤及び連鎖移動剤を含有させる。
スチレン系共重合樹脂の重合に用いられる重合開始剤としては、有機過酸化物、例えば、2,2-ビス(t-ブチルペルオキシ)ブタン、1,1-ビス(t-ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、n-ブチル-4,4-ビス(t-ブチルペルオキシ)バレレート等のペルオキシケタール類、ジ-t-ブチルペルオキシド、t-ブチルクミルペルオキシド、ジクミルペルオキシド等のジアルキルペルオキシド類、アセチルペルオキシド、イソブチリルペルオキシド等のジアシルペルオキシド類、ジイソプロピルペルオキシジカーボネート等のペルオキシジカーボネート類、t-ブチルペルオキシアセテート等のペルオキシエステル類、アセチルアセトンペルオキシド等のケトンペルオキシド類、t-ブチルヒドロペルオキシド等のヒドロペルオキシド類等を挙げることができる。分解速度と重合速度との観点から、なかでも、1,1-ビス(t-ブチルペルオキシ)シクロヘキサンが好ましい。
スチレン系共重合樹脂の重合に用いられる連鎖移動剤としては、例えば、α-メチルスチレンリニアダイマー、n-ドデシルメルカプタン、t-ドデシルメルカプタン、n-オクチルメルカプタン等を挙げることができる。
【0038】
スチレン系共重合樹脂の重合方法としては、必要に応じて、重合溶媒を用いた溶液重合を採用できる。用いられる重合溶媒としては、芳香族炭化水素類、例えば、エチルベンゼン、ジアルキルケトン類、例えば、メチルエチルケトン等が挙げられ、それぞれ、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。重合生成物の溶解性を低下させない範囲で、他の重合溶媒、例えば脂肪族炭化水素類等を、芳香族炭化水素類に更に混合することができる。これらの重合溶媒は、全単量体100質量部に対して、25質量部を超えない範囲で使用するのが好ましい。全単量体100質量部に対して重合溶媒が25質量部を超えると、重合速度が著しく低下し、且つ得られる樹脂の機械的強度の低下が大きくなる傾向がある。重合前に、全単量体100質量部に対して5~20質量部の割合で添加しておくことが、品質が均一化し易く、重合温度制御の点でも好ましい。
【0039】
本実施形態において、スチレン系共重合樹脂を得るための重合工程で用いる装置は、特に制限はなく、スチレン系樹脂の重合方法に従って適宜選択すればよい。例えば、塊状重合を採用する場合には、完全混合型反応器を1基、又は複数基連結した重合装置を用いることができる。また脱揮工程についても特に制限はない。例えば、塊状重合を採用する場合、最終的に未反応モノマーが、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下になるまで重合を進め、かかる未反応モノマー等の揮発分を除去するために、既知の方法にて脱揮処理する。より詳細には、例えば、フラッシュドラム、二軸脱揮器、薄膜蒸発器、押出機等の通常の脱揮装置を用いることができるが、滞留部の少ない脱揮装置が好ましい。なお、脱揮処理の温度は、通常、190~280℃程度であり、メタクリル酸とメタクリル酸メチルとの隣接による六員環酸無水物の形成を抑制する観点から、190~260℃がより好ましい。また脱揮処理の圧力は、通常0.13~4.0kPa程度であり、好ましくは0.13~3.0kPaであり、より好ましくは0.13~2.0kPaである。脱揮方法としては、例えば加熱下で減圧して揮発分を除去する方法、及び揮発分除去の目的に設計された押出機等を通して除去する方法が望ましい。
【0040】
<セルロース(b)(以下、(b)成分とも称する。)>
本実施形態におけるセルロース(b)の含有量は、10~55質量%であり、好ましくは20~52質量%、より好ましくは30~50質量%である。セルロース(b)の含有量を10質量%以上とすることにより、耐熱性、耐油性を向上させることができる。一方、当該含有量が50質量%超より多すぎると、展延性が低下するほか、流動性低下により成形性を著しく低下させる。組成物中のセルロース含有量は、組成物をスチレン系樹脂が溶解する溶媒に溶かし、未溶物を取出し、120℃、4時間の条件で乾燥させたものの質量を測ることでわかる。
【0041】
本実施形態において、セルロース(b)の短軸d1、或いは長軸d2の平均長さの少なくとも一方は、0.03~80μmであり、好ましくは0.05~60μmであり、好ましくは0.1~50μm、さらに好ましくは0.2~30μmである。短軸及び長軸の平均長さが上記範囲外であると、耐熱性が十分に発揮されない、あるいは耐衝撃性、成形外観が低下してしまうことがある。一方、セルロース(b)の短軸及び長軸の平均長さが上記範囲内であると、セルロース同士の凝集を低減でき、かつスチレン系樹脂(a)に対する分散性が良好になり光透過性が向上する。
尚、本発明において、セルロース(b)の短軸の平均長さdは、透過型電子顕微鏡観察(5000倍に拡大)により100個のセルロース(b)の短軸長(最小長さ)を測定し、その算術平均をとることにより求められる。同様に、セルロースの長軸の平均長さは、透過型電子顕微鏡観察(5000倍に拡大)により100個のセルロース(b)の長軸長(最大長さ)を測定し、その算術平均をとることにより求められる。また、セルロース(b)の短軸長(最小長さ)は、透過型電子顕微鏡(5000倍に拡大)により観察される画像上の最も細い(又は短い)箇所の長さをいい、セルロース(b)の長軸長(最大長さ)は、前記画像上の最も長い箇所の長さをいう。光透過性はセルロースの形状に影響され、ファイバーの場合は短軸、鱗片状又は粒状のものは長軸の平均径に影響を受ける。
本発明におけるセルロース(b)の形状は特に制限されることはなく、例えば、球状、不規則形状、粉体状、鱗片状、繊維状、棒状等の形状が挙げられる。
本発明におけるセルロース(b)のアスペクト比(d/d)は、1~500であることが好ましく、1.2~300であることがより好ましく、1.5~200であることがさらに好ましく、2~100であることが特に好ましい。
【0042】
本発明におけるセルロース(b)は、β-1,4-グルカン構造を有する多糖類をいい、セルロース及びヘミセルロースを含む。また、セルロース(b)は、それ構成する繊維が、β-1,4-グルカン構造を有する多糖類で形成されている限り、セルロース(b)の材質は特に制限されず、例えば、高等植物由来のセルロース繊維[例えば、木材繊維(針葉樹、広葉樹等の木材パルプ等)、竹繊維、サトウキビ繊維、種子毛繊維(コットンリンター、ボンバックス綿、カポック等)、ジン皮繊維(例えば、麻、コウゾ、ミツマタ等)、葉繊維(例えば、マニラ麻、ニュージーランド麻等)等の天然セルロース繊維(パルプ繊維)等、動物由来のセルロース繊維(ホヤセルロース等)、バクテリア由来のセルロース繊維、再生セルロース(レーヨン、セロファン等)]等が挙げられる。これらのセルロース(b)を構成する繊維は、単独で又は二種以上組み合わせて使用してもよい。
【0043】
上記セルロース(b)を構成する繊維のうち、セルロース(b)を製造したときの分散性、剛性、耐衝撃性の観点で製造効率が高く、適度な繊維径及び繊維長を有する点から、植物由来のセルロース繊維、例えば、木材繊維(針葉樹、広葉樹、竹等の木材パルプ等)や種子毛繊維(コットンリンターパルプ等)等のパルプ由来のセルロース繊維が好ましい。
さらに、本実施形態において、ヘミセルロースがセルロース(b)に対し、1質量%以上含まれるものが好ましい。ヘミセルロースが含まれることにより、スチレン系樹脂(a)との分散性が向上し、光透過性、剛性、成形外観を向上させることができる。本発明においては、セルロースの製造工程でこれらの成分を完全に除去するのではなく、好適な範囲内の含有量で残存させることが好ましい。ヘミセルロースは、マンナンやキシランなどの糖で構成される多糖類であり、セルロースと水素結合して、ミクロフィブリル間を結びつける役割を果たしている。また、ヘミセルロースの溶解度パラメータ(SP値)は、セルロースよりも疎水性側にあることから、ヘミセルロースは、スチレン系樹脂(a)とセルロース(b)とのSP値差を緩和する効果を有すると考えられる。ヘミセルロースの量は、ヘミセルロースの含有率が高い天然木材原料に対して、精製処理を施すことで所望の量に減らして調整することもできるし、ヘミセルロースの含有率が低い原料を用いた場合は、別の原料から抽出処理して得られたヘミセルロースを添加することで所望の量に調整することができる。このときヘミセルロースの末端などの構造が、精製や抽出処理によって部分的に天然物と異なる形になっていても構わない。
本実施形態において、スチレン系樹脂(a)とセルロース(b)とのSP値差を緩和する目的で、へミセルロースがセルロース(b)(100質量%)に対し、1質量%以上25質量%以下含まれることがより好ましく、2質量%以上20質量以下含まれることがさらに好ましく、3質量%以上20質量以下含まれることがよりさらに好ましく、5質量%以上19.5質量以下含まれることがさらにより好ましく、7質量%以上19.3質量以下含まれることが得に好ましい。
【0044】
また、本実施形態において、セルロース(b)に対し、リグニンが20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましい。リグニンが20質量%より多いと、不飽和カルボン酸もしくはその無水物、又はそれらの誘導体で変性したゴム状重合体(c)がリグニンと反応してしまい、セルロースの分散性やセルロースとの接着性が不十分となり、展延性が低下したり、熱加工時、臭気・着色が大きくなる原因となる。
【0045】
<不飽和カルボン酸系化合物により変性されたゴム状重合体(c)(以下、(c)成分とも称する。)>
本発明のゴム状重合体(c)は、不飽和カルボン酸系化合物により変性されたゴム状重合体であれば、特に限定なく使用することができる。換言すると、本発明のゴム状重合体(c)は、ゴム状重合体(D)を不飽和カルボン酸系化合物によって変性されたものである。
【0046】
上記ゴム状重合体(D)は、ポリブタジエン、ポリイソプレン、水添ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ポリアクリル酸エステル、スチレン-ブタジエンブロック共重合体、スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体、スチレン-イソプレンブロック共重合体、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン共重合体、スチレン-エチレン-プロピレン共重合体、水素添加スチレン-ブタジエンブロック共重合体、水素添加スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体、水素添加スチレン-イソプレンブロック共重合体、水素添加スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-1-ブテン共重合体、エチレン-αオレフィン共重合体、エチレン-プロピレン-エチリデンノルボルネン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、直鎖状低密度ポリエチレン系エラストマー、アクリル系エラストマー、ポリエステル・ポリエーテルコエラストマー、ポリアミド系エラストマー等が挙げられる。中でも、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン共重合体、スチレン-エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-1-ブテン共重合体、エチレン-αオレフィン共重合体、エチレン-プロピレン-エチリデンノルボルネン共重合体が好ましい。
【0047】
上記ゴム状重合体(D)を変性する不飽和カルボン酸系化合物は、不飽和カルボン酸若しくは不飽和カルボン酸無水物、又はこれらの誘導体が挙げられる。前記不飽和カルボン系化合物としては、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、メチルマレイン酸、3,6-エンドメチレン-デルタ-4-テトラヒドロフタル酸、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、シトラコン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水メチルマレイン酸、3,6-エンドメチレン-デルタ-4-テトラヒドロフタル酸無水物、2-メチル-3,6-エンドメチレン-デルタ-4-テトラヒドロフタル酸無水物、3-メチル-4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、炭素数1~20のアルキルシアノアクリレート等の誘導体が挙げられる。中でも、不飽和カルボン系化合物は、マレイン酸、無水マレイン酸が好ましい。ゴム状重合体(D)を不飽和カルボン酸系化合物により変性する方法としては、公知の方法を採用することができ、例えば、不飽和カルボン酸等をゴム状重合体(D)にグラフト重合する方法が挙げられる。
【0048】
本発明のゴム状重合体(c)の具体例としては、例えば、マレイン酸変性スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン共重合体、マレイン酸変性スチレン-エチレン-プロピレン共重合体、マレイン酸変性エチレン-プロピレン共重合体、マレイン酸変性エチレン-1-ブテン共重合体、マレイン酸変性エチレン-αオレフィン共重合体、マレイン酸変性エチレン-プロピレン-エチリデンノルボルネン共重合体、無水マレイン酸変性スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン共重合体、無水マレイン酸変性スチレン-エチレン-プロピレン共重合体、無水マレイン酸変性エチレン-プロピレン共重合体、無水マレイン酸変性エチレン-1-ブテン共重合体、無水マレイン酸変性エチレン-αオレフィン共重合体、無水マレイン酸変性エチレン-プロピレン-エチリデンノルボルネン共重合体等が挙げられる。ゴム状重合体(c)は、これらの1種あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0049】
<任意添加成分>
本実施形態のスチレン系樹脂組成物は、上記(a)~(c)成分の他に、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて公知の添加剤、加工助剤等の添加成分を添加することができる。これら添加剤、加工助剤等としては、分散剤、酸化防止剤、耐候剤、帯電防止剤、充填剤等が挙げられる。
<分散剤>
本実施形態において、セルロース(b)の分散性を向上させる目的で、分散剤を、スチレン系樹脂組成物に含有してもよい。分散剤をスチレン系樹脂組成物中に添加することにより、セルロース(b)とスチレン系樹脂(a)とを複合化する際に使用する押出機のヤケ、或いは目やに(いわゆる溶融樹脂カス)を防止し、成形外観をより向上させることができる。分散剤が所定量より少ないと、大きな効果が期待できなく、所定量より多いと大きな耐熱性が得られにくい。スチレン系樹脂(a)との親和性に優れる分散剤が、より大きな効果を示す傾向にある。
【0050】
本実施形態において、分散剤としては、脂肪酸エステル系化合物、ポリエチレングリコール系化合物、テルペン系化合物、ロジン系化合物、脂肪酸アミド、脂肪酸系化合物、又は脂肪酸金属塩系等を用いることができる。とくに、分散剤としては、脂肪酸エステル系化合物、ポリエチレングリコール系化合物、テルペン系化合物、及びロジン系化合物からなる群から選択される1種又は2種以上の化合物が好ましい。
上記脂肪族エステル系化合物としては、ラウリン酸メチル、ミリスチン酸メチル、パルミチン酸メチル、ステアリン酸メチル、オレイン酸メチル、エルカ酸メチル、ベヘニン酸メチル、ラウリル酸ブチル、ステアリン酸ブチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸オクチル、ヤシ脂肪酸オクチルエステル、ステアリン酸オクチル、牛脂脂肪酸オクチルエステル、ラウリル酸ラウリル、ステアリン酸ステアリル、ベヘニン酸ベヘニル、ミリスチン酸セチル、炭素数28~30の直鎖状で分岐がない飽和モノカルボン酸(以下モンタン酸と略記する)とエチレングリコールのエステル、モンタン酸とグリセリンのエステル、モンタン酸とブチレングリコールのエステル、モンタン酸とトリメチロールエタンのエステル、モンタン酸とトリメチロールプロパンのエステル、モンタン酸とペンタエリスリトールのエステル、グリセリンモノステアレート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレート、ソルビタンセスクイオレート、ソルビタントリオレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレート等が挙げられる。これらは、単独で使用しても、或いは2種以上を混合して使用してもよい。
上記ポリエチレングリコール系化合物としては、特に制限されることはなく、例えば、ポリエチレングリコール類、ポリプロピレングリコール類、ポリエチレングリコールアルキルエーテル類、ポリプロピレングリコールアルキルエーテル類、ポリエチレングリコールアリールエーテル類、ポリプロピレングリコールアリールエーテル類、ポリエチレングリコールアルキルアリールエーテル類、ポリプロピレングリコールアルキルアリールエーテル類、ポリエチレングリコールグリセリンエステル、ポリプロピレングリコールグリセリンエステル類、ポリエチレンソルビトールエステル類、ポリプロピレングリコールソルビトールエステル類、ポリエチレングリコール化エチレンジアミン類、ポリプロピレングリコール化エチレンジアミン類、ポリエチレングリコール化ジエチレントリアミン類、ポリプロピレングリコール化ジエチレントリアミン類が挙げられる。
【0051】
上記テルペン系樹脂としては、通常、有機溶媒中でフリーデルクラフツ型触媒存在下、テルペン単量体単独、或いはテルペン単量体と芳香族単量体、又はテルペン単量体とフェノール類を共重合して得られた樹脂をいうが、これらに限定されない。前記テルペン単量体としては、イソプレンなどの炭素数5のヘミテルペン類、α-ピネン、β-ピネン、ジペンテン、d-リモネン、ミルセン、アロオシメン、オシメン、α-フェランドレン、α-テルピネン、γ-テルピネン、テルピノーレン、1,8-シネオール、1,4-シネオール、α-テルピネオール、β-テルピネオール、γ-テルピネオール、サビネン、パラメンタジエン類、カレン類などの炭素数10のモノテルペン類、カリオフィレン、ロンギフォレンなどの炭素数15のセスキテルペン類、炭素数20のジテルペン類等が挙げられるがこれらに限定されない。これらの化合物の中で、α-ピネン、β-ピネン、ジペンテン、d-リモネンが特に好ましく用いられる。前記芳香族単量体としては、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、イソプロペニルトルエン等が挙げられるが、これらに限定されない。また、前記フェノール類としては、フェノール、クレゾール、キシレノール、ビスフェノールA等が挙げられるが、これらに限定されない。
また、得られたテルペン系樹脂を水素添加処理して得られた水素添加テルペン系樹脂であってもよい。例えば、好ましいテルペン系樹脂としては、α-ピネン樹脂、β-ピネン樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、水添テルペン樹脂等のテルペン系樹脂が挙げられる。テルペン系樹脂は、単独で使用しても、或いは2種以上を混合して使用してもよい。
【0052】
上記ロジン系樹脂としては、例えば、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン等のロジンの他、前記ロジンを不均化もしくは水素添加処理した安定化ロジン、前記ロジンの多量体である重合ロジン(典型的には二量体)、マレイン酸、フマル酸、(メタ)アクリル酸等の不飽和酸により変性された変性ロジン等が挙げられる。また、ロジン誘導体樹脂としては、前記ロジン系樹脂のエステル化物、フェノール変性物及びそのエステル化物等が挙げられる。ロジン系樹脂は、単独で使用しても、或いは2種以上を混合して使用してもよい。尚、本発明で使用されるロジン系樹脂又はロジン誘導体樹脂は、これらの樹脂に限定されるものではない。
【0053】
上記脂肪族アミドとしては、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、ベヘニン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド、エチレンビスラウリル酸アミド等が挙げられる。これらは単独で使用しても、或いは2種以上を混合して使用してもよい。
【0054】
上記脂肪酸系化合物のうち飽和脂肪酸としては、具体的には、ラウリン酸(ドデカン酸)、イソデカン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸(テトラデカン酸)、ペンタデシル酸、パルミチン酸(ヘキサデカン酸)、マルガリン酸(ヘプタデカン酸)、ステアリン酸(オクタデカン酸)、イソステアリン酸、ツベルクロステアリン酸(ノナデカン酸)、2-ヒドロキシステアリン酸、アラキジン酸(イコサン酸)、ベヘン酸(ドコサン酸)、リグノセリン酸(テトラドコサン酸)、セロチン酸(ヘキサドコサン酸)、モンタン酸(オクタドコサン酸)、メリシン酸等が挙げられ、特に、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、12-ヒドロキシステアリン酸及びモンタン酸等が挙げられる。これらは単独で使用しても、或いは2種以上を混合して使用してもよい。
【0055】
上記脂肪酸系化合物のうち不飽和脂肪酸としては、具体的には、ミリストレイン酸(テトラデセン酸)、パルミトレイン酸(ヘキサデセン酸)、オレイン酸(cis-9-オクタデセン酸)、エライジン酸(trans-9-オクタデセン酸)、リシノール酸(オクタデカジエン酸)、バクセン酸(cis-11-オクタデセン酸)、リノール酸(オクタデカジエン酸)、リノレン酸(9,11,13-オクタデカトリエン酸)、エレステアリン酸(9,11,13-オクタデカトリエン酸)、ガドレイン酸(イコサン酸)、エルカ酸(ドコサン酸)、ネルボン酸(テトラドコサン酸)等が挙げられる。これらは単独で使用しても、或いは2種以上を混合して使用してもよい。
【0056】
脂肪酸金属塩としては、上記脂肪酸系化合物の脂肪酸のリチウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、亜鉛塩、及びアルミニウム塩等が挙げられる。これらは単独で使用しても、或いは2種以上を混合して使用してもよい。
【0057】
上記酸化防止剤としては、フェノール系化合物、リン系化合物、チオエーテル系化合物等が挙げられる。
上記フェノール系酸化防止剤としては、例えば、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール、2,6-ジフェニル-4-オクタデシロキシフェノール、ジステアリル(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ホスホネート、1,6-ヘキサメチレンビス〔(3,5-ジ-tertブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸アミド〕、4,4’-チオビス(6-tert-ブチル-m-クレゾール)、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-エチル-6-tert-ブチルフェノール)、4,4’-ブチリデンビス(6-tert-ブチル-m-クレゾール)、2,2’-エチリデンビス(4,6―ジ-tert-ブチルフェノール)、2,2’-エチリデンビス(4-sec-ブチル-6-tert-ブチルフェノール)、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ブタン、1,3,5-トリス(2,6-ジメチル-3-ヒドロキシ-4-tert-ブチルベンジル)イソシアヌレート、1,3,5-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-2,4,6-トリメチルベンゼン、2-tert-ブチル-4-メチル-6-(2-アクリロイルオキシ-3-tert-ブチル-5-メチルベンジル)フェノール、ステアリル〔3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、テトラキス〔3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸メチル〕メタン、チオジエチレングリコールビス〔(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,6-ヘキサメチレンビス〔(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、ビス〔3,3-ビス(4-ヒドロキシ-3-tert-ブチルフェニル)ブチリックアシッド〕グリコールエステル、ビス〔2-tert-ブチル-4-メチル-6-(2-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-5-メチルベンジル)フェニル〕テレフタレート、1,3,5-トリス〔(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシエチル〕イソシアヌレート、3,9-ビス〔1,1-ジメチル-2-{(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ}エチル〕-2,4,8,10-テトラオキサスピロ〔5,5〕ウンデカン、トリエチレングリコールビス〔(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオネート〕等が挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上を混合して使用してもよい。
【0058】
上記リン系酸化防止剤としては、例えば、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト、トリス〔2-tert-ブチル-4-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニルチオ)-5-メチルフェニル〕ホスファイト、トリデシルホスファイト、オクチルジフェニルホスファイト、ジ(デシル)モノフェニルホスファイト、ジ(トリデシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジ(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4,6-トリ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、テトラ(トリデシル)イソプロピリデンジフェノールジホスファイト、テトラ(トリデシル)-4,4’-n-ブチリデンビス(2-tert-ブチル-5-メチルフェノール)ジホスファイト、ヘキサ(トリデシル)-1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ブタントリホスファイト、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ビフェニレンジホスホナイト、9,10-ジハイドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナンスレン-10-オキサイド、2,2’-メチレンビス(4,6-tert-ブチルフェニル)-2-エチルヘキシルホスファイト、2,2’-メチレンビス(4,6-tert-ブチルフェニル)-オクタデシルホスファイト、2,2’-エチリデンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)フルオロホスファイト、トリス(2-〔(2,4,8,10-テトラキス-tert-ブチルジベンゾ〔d,f〕〔1,3,2〕ジオキサホスフェピン-6-イル)オキシ〕エチル)アミン、2-エチル-2-ブチルプロピレングリコールと2,4,6-トリ-tert-ブチルフェノールのホスファイト等が挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上を混合して使用してもよい。
【0059】
上記チオエーテル系酸化防止剤としては、例えば、チオジプロピオン酸ジラウリル、チオジプロピオン酸ジミリスチル、チオジプロピオン酸ジステアリル等のジアルキルチオジプロピオネート類、及びペンタエリスリトールテトラ(β-アルキルメルカプトプロピオン酸エステル類が挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上を混合して使用してもよい。
【0060】
上記耐候剤としては、紫外線吸収剤ヒンダードアミン光安定剤等を用いることができる。当該紫外線吸収剤としては、例えば、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-オクトキシベンゾフェノン、5,5’-メチレンビス(2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン)等の2-ヒドロキシベンゾフェノン類;2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-ブチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾ-ル、2-(2’-ヒドロキシ-3’-tert-ブチル-5’-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾ-ル、2-(2’-ヒドロキシ-5’-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾ-ル、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジクミルフェニル)ベンゾトリアゾ-ル、2,2’-メチレンビス(4-tert-オクチル-6-(ベンゾトリアゾリル)フェノール)、2-(2’-ヒドロキシ-3’-tert-ブチル-5’-カルボキシフェニル)ベンゾトリアゾール等の2-(2’-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール類;フェニルサリシレート、レゾルシノールモノベンゾエート、2,4-ジ-tert-ブチルフェニル-3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンゾエート、2,4-ジ-tert-アミルフェニル-3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンゾエート、ヘキサデシル-3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンゾエート等のベンゾエート類;2-エチル-2’-エトキシオキザニリド、2-エトキシ-4’-ドデシルオキザニリド等の置換オキザニリド類;エチル-α-シアノ-β、β-ジフェニルアクリレート、メチル-2-シアノ-3-メチル-3-(p-メトキシフェニル)アクリレート等のシアノアクリレート類;2-(2-ヒドロキシ-4-オクトキシフェニル)-4,6-ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-s-トリアジン、2-(2-ヒドロキシ-4-メトキシフェニル)-4,6-ジフェニル-s-トリアジン、2-(2-ヒドロキシ-4-プロポキシ-5-メチルフェニル)-4,6-ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-s-トリアジン等のトリアリールトリアジン類が挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上を混合して使用してもよい。
【0061】
上記ヒンダードアミン系光安定剤としては、例えば、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルステアレート、1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルステアレート、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルベンゾエート、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(1-オクトキシ-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、テトラキス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)・ジ(トリデシル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)・ジ(トリデシル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,4,4-ペンタメチル-4-ピペリジル)-2-ブチル-2-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)マロネート、1-(2-ヒドロキシエチル)-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジノ-ル/コハク酸ジエチル重縮合物、1,6-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルアミノ)ヘキサン/2,4-ジクロロ-6-モルホリノ-s-トリアジン重縮合物、1,6-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルアミノ)ヘキサン/2,4-ジクロロ-6-t-オクチルアミノ-s-トリアジン重縮合物、1,5,8,12-テトラキス〔2,4-ビス(N-ブチル-N-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)アミノ)-s-トリアジン-6-イル〕-1,5,8,12-テトラアザドデカン、1,5,8,12-テトラキス〔2,4-ビス(N-ブチル-N-(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)アミノ)-s-トリアジン-6-イル〕-1,5,8-12-テトラアザドデカン、1,6,11-トリス〔2,4-ビス(N-ブチル-N-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)アミノ)-s-トリアジン-6-イル〕アミノウンデカン、1,6,11-トリス〔2,4-ビス(N-ブチル-N-(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)アミノ)-s-トリアジン-6-イル〕アミノウンデカン等のヒンダードアミン化合物が挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上を混合して使用してもよい。
【0062】
上記帯電防止剤としては、カチオン系、アニオン系、ノニオン系、両性系、グリセリン脂肪酸モノエステル等の脂肪酸部分エステル類等を用いることができる。
具体的には、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、ベンザルコニウム塩、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-N-(3-ドデシルオキシ-2-ヒドロキシプロピル)メチルアンモニウムメソスルフェート、(3-ラウリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウムメチルスルフェート、ステアロアミドプロピルジメチル-2-ヒドロキシエチルアンモニウム硝酸塩、ステアロアミドプロピルジメチル-2-ヒドロキシエチルアンモニウムリン酸塩、カチオン性ポリマー、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、アルキル硝酸エステル塩、リン酸アルキルエステル塩、アルキルホスフェートアミン塩、ステアリン酸モノグリセリド、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ジグリセリン脂肪酸エステル、アルキルジエタノールアミン、アルキルジエタノールアミン脂肪酸モノエステル、アルキルジエタノールアミド、ポリオキシエチレンドデシルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールモノラウレート、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリエーテルブロックコポリマー、セチルベタイン、ヒドロキシエチルイミダゾリン硫酸エステル等が挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上を混合して使用してもよい。
【0063】
上記充填剤としては、タルク、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、炭素繊維、マイカ、ワラストナイト、ウィスカ等を用いることができる。
その他、ブロッキング防止剤、着色剤、ブルーミング防止剤、表面処理剤、抗菌剤、目ヤニ防止剤(特開2009-120717号公報に記載のシリコーンオイル、高級脂肪族カルボン酸のモノアミド化合物、及び高級脂肪族カルボン酸と1価~3価のアルコール化合物とを反応させてなるモノエステル化合物等の目やに防止剤)等を添加してもよい。
【0064】
添加剤及び加工助剤等の任意添加成分の合計含有量は、スチレン系樹脂組成物中、0.05~5質量%としてよい。
【0065】
本実施形態のスチレン系樹脂組成物は、実質的に(a)成分~(c)成分及び任意添加成分のみからなっていてもよい。また、(a)成分~(c)成分のみ、又は(a)成分~(c)成分及び任意添加成分のみからなっていてもよい。
「実質的に(a)成分~(c)成分及び任意添加成分のみからなる」とは、スチレン系樹脂組成物の95~100質量%(好ましくは98~100質量%)が(a)成分~(c)成分であるか、又は(a)成分~(c)成分及び任意添加成分であることを意味する。
尚、本実施形態のスチレン系樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で(a)成分~(c)成分及び任意添加成分の他に不可避不純物を含んでいてもよい。
【0066】
[スチレン系樹脂組成物の物性]
<耐熱性>
本実施形態のスチレン系樹脂組成物から得られた成形体の加熱収縮率は、120℃雰囲気下で30分間静置前後の長さの変化量の絶対値が10%以下であることが好ましく、より好ましくは5%以下である。当該長さの変化量の絶対値が10%超であると、製品が変形してしまう恐れがある。また、加熱収縮率は以下の式(1)で表される。
加熱収縮率=|(db-da)/da| 式(1)
(上記式(1)中、daは120℃雰囲気下で30分間静置前のISO試験片の長軸方向の長さを表す。dbは120℃雰囲気下で30分間静置後のISO試験片の長軸方向の長さを表す。)
【0067】
<耐油性>
本実施形態のスチレン系樹脂組成物から得られた成形体の耐油性は、サラダ油等の油を塗布した場合、外観に変化が見られないものが好ましい。
【0068】
<展延性>
本実施形態のスチレン系樹脂組成物の展延性は、所定の絞り比で容器を形成した際に、
当該容器の底部側壁の厚さ/上部側壁の厚さの比をいう。本実施形態のスチレン系樹脂組成物から形成された成形品であるシート体から真空成形により絞り比0.5以上の容器が得られることが好ましい。本実施形態における展延性は、絞り比0.5の容器を真空成形した後、底部側壁の厚さ/上部側壁の厚さの比が1~0.3であることが好ましい。
本実施形態の成形体の一例として、容器の成形について図1を用いて説明する。図1は、容器の成形に必要な金型1の断面図である。また、図1では、一例として、高さ80cmのスペーサー2を金型1の底に載置している状態を示している。スペーサー2の高さは所望の容器の高さによって適宜調整されうる。
例えば、本実施形態の容器の製造方法としては、後述の組成により調製されたスチレン系樹脂組成物を押出成形により、スチレン系樹脂組成物のシート体を作製する。その後、得られたスチレン系樹脂組成物のシート体を150~250℃で5~60秒間予備加熱した後、当該加熱したシート体を金型1の凹部を覆うように設置し、所定の成形方法により賦形する。例えば、凹部を真空にすることによって、所望の形状の容器に賦形できる。
また、金型1の凹部を覆うようにシート体を設置した後、加熱して所定の成形方法(例えば、熱圧成形、真空成形、圧空成形、プラグアシスト成形)により賦形してもよい。
本実施形態の好ましい態様の一例としては、容器は、金型1を用いて、加熱したスチレン系樹脂組成物のシート体を、熱圧成形、真空成形、圧空成形又はプラグアシスト成形することによって賦形することができる。
また、容器を製造する場合、スペーサー2によって金型1の凹部の上面の直径(=開口部の直径(図1では一例として、φ80cm))と、金型1の凹部の深さ(図1では一例として40cm)と比率である絞り比を変えることができる。図1では、一例として、深さ120の凹部内に、高さが80cmのスペーサー2を設けた状態を示している。また、絞り比とは、以下の式(2)で表される。
絞り比=高さ÷開口部の直径 式(2)
【0069】
[スチレン系樹脂組成物の製造方法]
本実施形態のスチレン系樹脂組成物は、各成分を任意の方法で溶融混練することによって製造することができる。例えば、ヘンシェルミキサーに代表される高速撹拌機、バンバリーミキサーに代表されるバッチ式混練機、単軸又は二軸の連続混練機、ロールミキサー等を単独で、又は組み合わせて用いる方法が挙げられる。混練の際の加熱温度は、通常、180~250℃の範囲で選択される。
【0070】
[成形品]
本発明の成形品は、上記のスチレン系樹脂組成物を含むことを特徴とする。
本実施形態のスチレン系樹脂組成物は、上記の溶融混練成形機により、あるいは、得られたスチレン系樹脂組成物のペレットを原料として、射出成形法、射出圧縮成形法、押出成形法、ブロー成形法、プレス成形法、真空成形法、及び発泡成形法等により、成形品を製造することができる。
【0071】
本実施形態のスチレン系樹脂組成物を含む成形品、好ましくは押出成形品は、食品容器(総菜や弁当容器、電子レンジ用容器、どんぶり、カップ、トレイなど)、シート、食品フィルムや絶縁フィルム、発泡製品であり、また、射出成形品(射出圧縮を含む)は、複写機、ファックス、パソコン、プリンター、情報端末機、冷蔵庫、掃除機、電子レンジ等のOA機器、家庭電化製品、電気・電子機器のハウジングや各種部品、自動車の内装や外装部材、建設材料、発泡断熱材等に好適に用いられる。
【実施例0072】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明の実施形態を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら制限されるものではない。
【0073】
<測定及び評価方法>
各実施例及び比較例で得られた樹脂組成物の物性の測定及び評価は、次の方法に基づいて行った。
(1)スチレン系樹脂(a)中のスチレン単量体単位、メタクリル酸単量体単位、及びメタクリル酸メチル単量体単位の含有量
プロトン核磁気共鳴(H-NMR)測定機で測定したスペクトルの積分比から、樹脂組成を定量した。
・試料調製:樹脂ペレット30mgをd-DMSO 0.75mLに60℃で4~6時間加熱溶解した。
・測定機器:日本電子(株)製 JNM ECA-500
・測定条件:測定温度25℃、観測核H、積算回数64回、繰り返し時間11秒。
【0074】
(スペクトルの帰属)
ジメチルスルホキシド重溶媒中で測定されたスペクトルの帰属について、0.5~1.5ppmのピークは、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、及び六員環酸無水物のα-メチル基の水素由来のピーク、1.6~2.1ppmのピークはポリマー主鎖のメチレン基の水素由来のピーク、3.5ppmのピークはメタクリル酸メチルのカルボン酸エステル(-COOCH)の水素由来のピーク、12.4ppmのピークはメタクリル酸のカルボン酸の水素由来のピークである。また、6.5~7.5ppmのピークはスチレンの芳香族環の水素由来のピークである。なお、本実施例及び比較例の樹脂では六員環酸無水物の含有量が少ないため、本測定方法では通常定量化は難しい。
【0075】
(2)スチレン系樹脂(a)の重量平均分子量
スチレン系樹脂(a)の重量平均分子量を、下記の条件や手順で測定した。
・試料調製:テトラヒドロフランに樹脂を約0.05質量%で溶解させた。
・測定条件
機器:TOSOH HLC-8220GPC
(ゲルパーミエイション・クロマトグラフィー)
カラム :super HZM-H
温度 :40℃
キャリア :THF 0.35mL/min
検出器 :RI、UV:254nm
検量線 :TOSOH製の標準PSを使用して作成。
【0076】
(3)メルトフローレート(MFR)
スチレン系樹脂(a)のメルトマスフローレート(g/10分)は、ISO 1133に準拠して測定した(200℃、荷重49N)。
【0077】
(4)加熱収縮率
加熱収縮率(%)は、後述の方法で作製した試験片(a)を用いて、120℃雰囲気下のオーブン中に30分間放置後、長さ方向の大きさを測定し、以下の式(1)を用いて加熱収縮率を決定した。
加熱収縮率=|(db-da)/da| 式(1)
(上記式(1)中、daは120℃雰囲気下で30分間静置前の試験片の長軸方向の長さを表す。dbは120℃雰囲気下で30分間静置後の試験片の長軸方向の長さを表す。)
【0078】
(5)展延性
後述の方法で作製したシートを図1のように、絞り比0.5の容器を真空成形し、容器の状態を確認し展延性を評価した。良品〇(底部側壁の厚さ/上部側壁の厚さの比が1~0.3)、偏肉あり△(底部側壁の厚さ/上部側壁の厚さの比が0.3未満)、穴あき×と表記した。
なお、絞り比は、以下の式(2)で表される。
絞り比=容器の高さ÷容器の開口部の直径 式(2)
【0079】
(6)耐油性
後述の方法で作製した試験片(a)を熱風乾燥器で80℃にて2時間加熱した後、室温雰囲気下で、日清サラダ油(日清オイリオグループ株式会社製)を試験片(b)の中央部に2g塗布し、6時間後の状態を観察した。外観に変化のないものを◎(優れる)、試験片の表面にクラックが発生したものを○(良好)、試験片が破断に至ったものを×(不良)とした。
【0080】
(7)平均長さの測定
試験片(b)から厚さ75nmの超薄切片を作製し、電子顕微鏡を用いて倍率50000倍の写真を撮影した。そして、写真を200dpiの解像度でスキャナーに取り込み、画像解析装置IP-1000(旭化成社製)の粒子解析ソフトを用いて、100個のセルロース(b)の最小長さ及び最大長さをそれぞれ測定し、それぞれの算術平均を短軸の平均長さd、長軸の平均長さdとした。
【0081】
(8)ヘミセルロース量の測定
セルロース(b)におけるヘミセルロースの定量分析は、次の通りである。
セルロース(b)の分散液、又はスチレン系樹脂組成物から樹脂分を溶解除去して得たセルロース(b)の再分散液から分散媒を除去し、セルロース残渣を回収して、105℃で乾燥して得た乾燥試料の質量を、以下の方法で測定した。
乾燥したセルロース残渣を粉砕して得た粉砕試料をソックスレー抽出器でアルコール(エタノール)/ベンゼン混合溶媒)で6時間抽出した。その後、アルコール(エタノール)/ベンゼン混合溶媒)でさらに4時間抽出を行って脱脂試料を得た。当該脱脂試料2.5gに蒸留水150mL、亜塩素酸ナトリウム1.0g、酢酸0.2mLを加えて、70~80℃で1時間加熱処理を行い、再び亜塩素酸ナトリウム1.0g、酢酸0.2mLを加えて、70~80℃で1時間加熱する操作を、試料が白く脱色するまで3~4回繰り返した。得られた試料をろ過して、水及びアセトンで洗浄し、105℃で乾燥してホロセルロース画分(α-セルロースとヘミセルロースとの合計量)を得た。このホロセルロース画分の質量を測定した。
続いて、ホロセルロース画分1.0gに17.5質量%水酸化ナトリウム水溶液25mLを加え、3分後、膨潤状態になるまでガラス棒で軽く潰した。その後、20℃で静置し、上記水酸化ナトリウム水溶液を加えてから30分後に、蒸留水25mLを加え、正確に1分間かき混ぜて、20℃で5分静置し、ガラスフィルターでろ過してろ液が中性になるまで洗浄した。さらに10質量%酢酸40mLを吸引ろ過し、次に沸騰水1Lを吸引ろ過して洗浄した試料を105℃で質量が一定になるまで乾燥して、α-セルロース画分を得た。このα-セルロース画分の質量を測定した。
上記のように求めたホロセルロース画分とα-セルロース画分との質量から、次式によってヘミセルロースの含有率を求めた。
ホロセルロース(%)=ホロセルロース画分(g)/試料(無水ベース)(g)×100
α-セルロース(%)=α-セルロース画分(g)/試料(無水ベース)(g)×100
ヘミセルロース(%)=ホロセルロース(%)-(α-セルロース(%))
【0082】
(9)リグニン量の定量
セルロース(b)におけるリグニンの定量分析は、廃棄物資源循環学会論文誌Vol22,N0.5,P293,2011に記載されているTGA法を参考とした。
熱重量解析装置は(株)島津製作所製のDTG-60型を使用し,空気雰囲気下で昇温速度10℃/minの条件にて室温から900℃まで昇温した。分析する試料は,70℃で2時間乾燥したものを3~5mg精秤し,熱分解による重量変化を測定した。なお試料容器は内径が5mmで高さ2mmの円盤状白金皿を使用し,すべての実験は一定条件の下で測定を行った。
【0083】
実施例及び比較例で用いた各材料は下記の通りである。
[スチレン系樹脂(a)]
<GPPS(1)>
・MFR7.8、屈折率1.598のポリスチレン(GPPS、PSジャパン社製、HF77)を用いた。
<GPPS(2)>
・MFR4.8のポリスチレン(GPPS、PSジャパン社製、HF77とG9401を1:1でブレンド)を用いた。
<HIPS(1)>
・MFR5.5のポリスチレン(HIPS、PSジャパン社製、H9152)を用いた。
<HIPS(2)>
・MFR4.5のポリスチレン(HIPS、PSジャパン社製、H9152と475Dを1:1でブレンド)を用いた。
<共重合体(1)>
スチレン(ST)70.0質量部、メタクリル酸ブチル(BA)15.0質量部、エチルベンゼン15.0質量部、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン0.02質量部から成る重合原料組成液を、1.1リットル/時の速度で、容量が4リットルの完全混合型反応器に、次いで、容量が2リットルの層流型反応器から成る重合装置に、さらに、未反応モノマー、重合溶媒等の揮発分を除去する単軸押出機を連結した脱揮装置に、連続的に順次供給し、スチレン系共重合樹脂である共重合―1を調製した。
重合工程における重合反応条件は、完全混合反応器は重合温度122℃、層流型反応器は重合温度120~142℃とした。脱揮された未反応ガスは、-5℃の冷媒を通した凝縮器で凝縮し、未反応液として回収した。
最終重合液中のポリマー分は、重合液を215℃、2.5kPaの減圧下で30分間乾燥後、式[(乾燥後の試料質量/乾燥前の試料質量)×100%]により測定したところ、65.6質量%であり、MFRは5.1であった。
<共重合体(2)>
スチレン(ST)55.0質量部、メタクリル酸メチル(BA)30.0質量部に変更する以外は[共重合―1]と同様に製造した。MFRは4.2であった。
【0084】
[セルロース(b)]
・セルロースファイバー(セライト社製、SW-10、d:20μm、d:700μm、ヘミセルロース量11質量%、リグニン量0.5%)
・CNF:セルロースナノファイバー(中越パルプ工業株式会社製、CNF-10、d:35nm、d:約1μm、ヘミセルロース量15質量%、リグニン量0.2%)
・綿粉(株式会社ディーティーアイ製、綿100%粉砕品、球状体、d:25μm、d:35μm、ヘミセルロース量0.5%質量以下、リグニン量0.1%)
・木粉(株式会社那賀ウッド製、原料:杉、d:120μm、d:180μm、リグニン量23%、ヘミセルロース量18質量%)
【0085】
[不飽和カルボン酸系化合物により変性されたゴム状重合体(c)]
・無水マレイン酸変性SEBS(旭化成株式会社製、M1913、MFR5、S/EB比30/70)
・無水マレイン酸変性エチレン-α-オレフィン共重合体(ビッグケミー社製、Scona TSPOE 1002 GBLL、MFR3)
【0086】
[比較化合物]
・SEBS(旭化成株式会社製、H1041、MFR5、S/EB比30/70)
・SMA共重合体(POLYSCOPE社製、XIBOND250)
【0087】
[添加剤]
(フェノール系酸化防止剤)
・3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸ステアリル(BASF社製、Irganox1076)
(リン系酸化防止剤)
・トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト(BASF社製株式会社、Irgafos168)
【0088】
[実施例1~11]
表1に示す組成比で各成分を添加し、(a)~(c)成分の合計100質量部に対して、酸化防止剤として、Irganox1076とIrgafos168とをそれぞれ0.2質量部ずつ添加後、予備混合した。得られた予備混合物を一括混合し、二軸押出機(東芝機械社製、TEM-26SS)を用い、180℃~220℃の範囲で溶融押出を行い、混練物としてペレット状のスチレン系樹脂組成物を得た。この際、スクリュー回転数は150rpm、吐出量は10kg/hrであった。このようにして得られたペレット状のスチレン系樹脂組成物を、ISO規格試験片タイプ(a)金型を備え付けた日本製鋼所社製の射出成形機を用い、シリンダー温度220℃、金型温度50℃、射出圧力(ゲージ圧40-60MPa)、射出速度(パネル設定値)50%、射出時間/冷却時間=5sec/20secで成形して試験片(a)を作製した。得られた試験片(a)を用いて、加熱収縮率、耐油性を評価した。
得られたペレット状のスチレン系樹脂組成物を用いて、非発泡押出シートを作製した。非発泡押出シートについては、創研社製の25mmφ単軸シート押出機を用いて、樹脂溶融ゾーンの温度を180~200℃とし、厚み約0.8mmのシートを作製した。そして得られたシートを用いて、図1に記載の容器を作製した。容器については、創研社製のシート容器成形機を用いて、加熱ゾーン200℃とし、絞り比50%容器を真空成型し展延性を評価した。
【0089】
[比較例1~9]
比較例1~11は、表2に示すように組成を変更したこと以外は実施例1と同様に実施した。各物性の測定及び評価の結果を表2に示す。
【0090】
【表1】
【0091】
【表2】
【0092】
表1に示すように、実施例1~11は、加熱収縮率が少ないことから耐熱性に優れ、展延性、耐油性が良好である。特にリグニン量が20質量%以下、もしくはヘミセルロース量が1質量%以上になると展延性と耐油性が高くなる。
表1に示す比較例1、2のように、所定量よりセルロース量が外れていると耐油性や展延性が低下する。また、比較例3、4のように、所定量より不飽和カルボン酸もしくはその無水物、又はそれらの誘導体で変性したゴム状重合体が外れていると展延性が低下したり、耐熱性が低下する。さらに、比較例5~7のように、不飽和カルボン酸もしくはその無水物を変性しないゴム状弾性体や無水マレイン酸変性スチレン系樹脂、さらにその組み合わせでは展延性や耐油性が劣る。さらに比較例8~10のように、スチレン系樹脂のMFRが5より低いと展延性が得られない
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明のスチレン系樹脂組成物を含む成形品は、包材、建材、電子・電気部品、自動車等に好適に使用することができる。
図1