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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022131829
(43)【公開日】2022-09-07
(54)【発明の名称】合成樹脂製容器の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 49/78 20060101AFI20220831BHJP
   B65D 1/40 20060101ALI20220831BHJP
   B65D 23/00 20060101ALI20220831BHJP
   B29C 49/20 20060101ALI20220831BHJP
   B29C 49/22 20060101ALI20220831BHJP
【FI】
B29C49/78
B65D1/40
B65D23/00 B
B29C49/20
B29C49/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021030990
(22)【出願日】2021-02-26
(71)【出願人】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100154003
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】山科 裕太郎
(72)【発明者】
【氏名】奥山 雄一
(72)【発明者】
【氏名】仁井田 一成
【テーマコード(参考)】
3E033
3E062
4F208
【Fターム(参考)】
3E033AA01
3E033BA15
3E033BA16
3E033BA18
3E033BA21
3E033BA26
3E033BB08
3E033DA03
3E033DD01
3E033FA03
3E062AA09
3E062AC08
3E062BA20
3E062BB01
3E062BB10
3E062DA08
4F208AD07
4F208AG03
4F208AG07
4F208AH55
4F208AR12
4F208LA08
4F208LA09
4F208LB01
4F208LB22
4F208LG03
4F208LG06
4F208LG13
4F208LG14
4F208LG28
4F208LG32
4F208LH30
(57)【要約】
【課題】埋設部材に起因する製品不良を抑制した、ブロー成形による合成樹脂製容器の製造方法を提供する。
【解決手段】本開示に係る合成樹脂製容器200の製造方法は、有底筒状のプリフォーム100を形成するステップと、プリフォーム100をブロー成形して合成樹脂製容器200を形成するステップとを含み、プリフォーム100及び合成樹脂製容器200には、埋設部材が埋設されており、埋設部材が埋設されている部位における、合成樹脂製容器200の肉厚に対するプリフォーム100の肉厚の比率は、1.0より大きく2.5以下であることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有底筒状のプリフォームを形成するステップと、
前記プリフォームをブロー成形して合成樹脂製容器を形成するステップと
を含み、
前記プリフォーム及び前記合成樹脂製容器には、埋設部材が埋設されており、
前記埋設部材が埋設されている部位における、前記合成樹脂製容器の肉厚に対する前記プリフォームの肉厚の比率は、1.0より大きく2.5以下であることを特徴とする合成樹脂製容器の製造方法。
【請求項2】
前記埋設部材が埋設されている部位における前記合成樹脂製容器の肉厚に対する前記埋設部材の前記合成樹脂製容器の肉厚方向の厚みの比率は、0.5以下である、請求項1に記載の合成樹脂製容器の製造方法。
【請求項3】
前記プリフォームは、外体と前記外体の内側に設けられた内体とを有し、
前記埋設部材は、前記外体と前記内体との間に配置されている、請求項1又は2に記載の合成樹脂製容器の製造方法。
【請求項4】
前記プリフォームを形成するステップは、
前記埋設部材をインサート材として前記内体をインサート成形するステップと、
前記外体を形成するステップと、
前記外体の内側に前記内体を配置するステップと
を含む、請求項3に記載の合成樹脂製容器の製造方法。
【請求項5】
前記埋設部材は、RFIDである、請求項1から4のいずれか一項に記載の合成樹脂製容器の製造方法。
【請求項6】
前記埋設部材は、前記合成樹脂製容器の胴部に埋設されている、請求項1から5のいずれか一項に記載の合成樹脂製容器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、合成樹脂製容器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高級化粧品等の模倣品が流通しており、真正品を判別する方法の開発が求められている。このような課題に対して、例えば、RFID(Radio Frequency Identification)と称される非接触型ICタグを容器に搭載し、専用の通信装置を用いてRFIDに対して各種のデータを書き込み・読み取りすることにより、商品の管理や物流管理を行うことが提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-105719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の合成樹脂製容器では、樹脂製のインサート材体及びICタグをインサート材としてインサート成形を行うことによって、容器内にICタグを埋め込んでいる。ICタグをブロー成形された容器にも埋め込むことができれば、ICタグを埋設した容器のバリエーションが豊富になり、容器を安価に製造することができるが、ICタグ周辺が歪んで外観不良や落下強度不足等の要因となる場合があったため、この点において改善の余地があった。
【0005】
本開示は、このような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、埋設部材に起因する製品不良を抑制した、ブロー成形による合成樹脂製容器の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の合成樹脂製容器の製造方法は、
有底筒状のプリフォームを形成するステップと、
前記プリフォームをブロー成形して合成樹脂製容器を形成するステップと
を含み、
前記プリフォーム及び前記合成樹脂製容器には、埋設部材が埋設されており、
前記埋設部材が埋設されている部位における、前記合成樹脂製容器の肉厚に対する前記プリフォームの肉厚の比率は、1.0より大きく2.5以下であることを特徴とする。
【0007】
また、本開示の合成樹脂製容器の製造方法は、上記構成において、前記埋設部材が埋設されている部位における前記合成樹脂製容器の肉厚に対する前記埋設部材の前記合成樹脂製容器の肉厚方向の厚みの比率は、0.5以下であることが好ましい。
【0008】
また、本開示の合成樹脂製容器の製造方法は、上記構成において、前記プリフォームは、外体と前記外体の内側に設けられた内体とを有し、前記埋設部材は、前記外体と前記内体との間に配置されていることが好ましい。
【0009】
また、本開示の合成樹脂製容器の製造方法は、上記構成において、前記プリフォームを形成するステップは、前記埋設部材をインサート材として前記内体をインサート成形するステップと、前記外体を形成するステップと、前記外体の内側に前記内体を配置するステップとを含むことが好ましい。
【0010】
また、本開示の合成樹脂製容器の製造方法は、上記構成において、前記埋設部材は、RFIDであることが好ましい。
【0011】
また、本開示の合成樹脂製容器の製造方法は、上記構成において、前記埋設部材は、前記合成樹脂製容器の胴部に埋設されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、埋設部材に起因する製品不良を抑制した、ブロー成形による合成樹脂製容器の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本開示の一実施形態である合成樹脂製容器の製造方法によって形成される合成樹脂製容器の正面断面図である。
図2】本開示の一実施形態である合成樹脂製容器の製造方法に用いるプリフォームの正面断面図である。
図3図2のプリフォームの形成に用いる内体の正面断面図である。
図4】本開示の一実施形態である合成樹脂製容器の製造方法を実施する手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本開示をより具体的に例示説明する。
【0015】
本開示の一実施形態である合成樹脂製容器200の製造方法は、図2に示すプリフォーム100をブロー成形することによって合成樹脂製容器200を製造する。合成樹脂製容器200は、図1に示すように、口部111と、口部111の下端部に肩部132を介して連なる胴部133と、胴部133の下端部を閉塞する底部134とを備えている。
【0016】
なお、本明細書、特許請求の範囲、及び図面においては、上下方向は、図1に示すように合成樹脂製容器200を正立姿勢とした状態における上方、下方を意味するものとする。また、径方向外側とは、図1における合成樹脂製容器200の中心軸線Oを通り中心軸線Oに垂直な直線に沿って中心軸線Oから離れる方向であり、径方向内側とは、当該直線に沿って中心軸線Oに向かう方向を意味するものとする。
【0017】
口部111は、図1に示すように略円筒形状の外周壁111bを備えており、外周壁111bの外面には、蓋体やポンプ等を着脱可能に装着するための雄ねじ部111aが形成されている。なお、雄ねじ部111aに代えて外周壁111bから径方向外側に突出する係合突部を設けて打栓により蓋体やポンプ等を装着可能に構成してもよい。
【0018】
口部111の下部には、径方向外側に突出する環状のネックリング112が設けられている。ネックリング112は、プリフォーム100にもネックリング12として設けられており、プリフォーム100のネックリング12をブロー成形金型の基準面に突き当てることによってプリフォーム100を金型に固定することができる。
【0019】
ネックリング112の下端部には、肩部132を介して胴部133が連なっている。胴部133は、図1に示すように、略円筒形状を備えており、その径方向内側には、内容物の収容空間Sが形成されている。図示するように、本実施形態に係る合成樹脂製容器200は、肩部132から底部134に至るまで、外層体130bと内層体130aとを含む積層構造を備えている。すなわち、合成樹脂製容器200の胴部133は、外層体130bの胴部外層123と、内層体130aの胴部内層113とを備えている。同様に、肩部132は、外層体130bの肩部外層121と、内層体130aの肩部内層113bとを備えている。なお、口部111についても外層体130bと内層体130aから構成される積層構造を備えていてもよい。
【0020】
胴部内層113には、図1に示すようにRFID30が嵌合し固定されている。本実施形態においてRFID30は、胴部内層113の外面に形成されている凹所113aに嵌め込まれており、RFID30の径方向外側端が胴部内層113の外面と略同一半径位置となるように配置されている。そして、胴部133における内層体130aが径方向外側から外層体130bに覆われることによって、RFID30は外層体130bと内層体130aの間に配置されている。
【0021】
本実施形態では、RFID30が埋設されている部位における合成樹脂製容器200の肉厚に対する、RFID30の合成樹脂製容器200の肉厚方向の厚みの比率は、0.5以下となるように構成されている。このような構成によって、プリフォーム100をブロー成形したときのRFID30周辺が歪むことによって、外観不良や落下強度不足等が発生することを抑制することができる。
【0022】
合成樹脂製容器200における胴部133の下端部には、収容空間Sを下方から閉塞する底部134が設けられている。底部134は、外層体130bの底部外層124と、内層体130aの底部内層114とを備えている。図1に示すように、外層体130bの底部外層124は、径方向内側が底上げされており、底部外層124の外周縁が合成樹脂製容器200の設置面に接することによって合成樹脂製容器200を正立状態に維持することができる。
【0023】
なお、本実施形態では、RFID30を胴部133における外層体130bと内層体130aの間に配置するように構成したが、この態様には限定されない。RFID30は、胴部133以外の口部111,肩部132又は底部134に配置するようにしてもよい。また、RFID30は、必ずしも内層体130aに設けた凹所113aに嵌合させる必要はなく、外層体130bに設けた凹所に嵌合させてもよいし、内層体130a及び外層体130bにそれぞれ設けた凹所に嵌合するようにしてもよい。また、RFID30は、内層体130a又は外層体130bのいずれか一方に埋設され、内層体130a又は外層体130bの他方には接触しない構成としてもよい。
【0024】
RFID30は、合成樹脂製容器200の外面及び内面のいずれにも露出しないことが好ましい。RFID30が合成樹脂製容器200の外面に露出すると、RFID30が利用者から視認できてしまい容器の意匠性を損ねる可能性があるほか、加飾の妨げにもなり得る。また、RFID30が取り外されることにより本来の機能が発揮できない可能性もある。
【0025】
また、RFID30が合成樹脂製容器200の内面に露出すると、RFID30本体やパッケージ等が内容物に影響を与えないように配慮する必要があるため、内面に露出しないことが好ましい。
【0026】
例えば、合成樹脂製容器200が内容物の残量に応じて内層体130aが減容変形する積層剥離容器である場合には、RFID30は、外層体130bの内面に配置することが好ましい。また、合成樹脂製容器200は外層体130b及び内層体130aを含む積層構造を備えていなくてもよい。
【0027】
外層体130bの材質としては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂を用いることができるほか、他のポリエステル系樹脂(PEN、PBT、PTT等)、ポリオレフィン系樹脂(PP、PE等)、ナイロン系樹脂(PA6、PA66、MXD6等)、ポリカーボネート樹脂(PC)、シクロオレフィンコポリマー樹脂(COC)、シクロオレフィンポリマー樹脂(COP)などの他の合成樹脂材料を採用することもできる。
【0028】
また、内層体130aの材質として、例えばポリエチレンテレフタレート樹脂を用いることができるほか、他のポリエステル系樹脂(PEN、PBT、PTT等)、ポリオレフィン系樹脂(PP、PE等)、ナイロン系樹脂(PA6、PA66、MXD6等)、ポリカーボネート樹脂(PC)、シクロオレフィンコポリマー樹脂(COC)、シクロオレフィンポリマー樹脂(COP)、エチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂(EVOH)などの他の合成樹脂材料を採用することもできる。内層体130aの材質としてEVOHを用いる場合には、バリア性及び柔軟性を考慮して、適切なエチレン含有率のものを採用することができる。
【0029】
合成樹脂製容器200を積層剥離容器として構成する場合には、内層体130a及び外層体130bの材料には、相互に相溶性が低い樹脂を用いることが好ましい。
【0030】
RFID30(Radio Frequency Identification)は、埋設部材として合成樹脂製容器200の胴部133に埋設されている。RFID30は、図1に示すように、胴部133の中央高さよりもやや上方における周方向1箇所に配置されており、胴部133の厚み方向中央位置よりも径方向内側にオフセットさせて内層体130aに埋設されている。RFID30は、非接触型ICタグであり、このRFID30を容器に搭載し、専用の通信装置を用いてRFID30に対して各種のデータを書き込み・読み取りすることにより、商品の管理や物流管理を行うことができる。
【0031】
本実施形態において、RFID30は、送受信部、制御部及びメモリの機能を備えたICチップと、メモリに記憶されている情報を専用の通信装置との間で電波の送受信を行うアンテナと、ICチップを封止するパッケージとを備えている。RFID30は、例えばICチップを積層セラミック基板上に配置するとともに、積層セラミック基板内にアンテナを備えるように構成してもよいし、ICチップを配置した積層セラミック基板をアンテナを有する回路基板上に配置するように構成することもできる。
【0032】
RFID30が埋設されている部位における合成樹脂製容器200の肉厚に対するRFID30の厚みの比率は、0.5以下であることが好ましい。従って、RFID30の容器の径方向の厚みを0.8mmとした場合、RFID30が埋設されている部位における合成樹脂製容器200の径方向の肉厚は、内層体130aと外層体130bを合わせて1.6mm以上であることが好ましい。
【0033】
次に、本実施形態に係る合成樹脂製容器200の製造方法について、図2から図4を用いて説明する。
【0034】
本実施形態に係る合成樹脂製容器200は、図2に示すプリフォーム100をブロー成形することによって形成している。
【0035】
プリフォーム100は、図2に示すように、外体20の径方向内側に内体10を嵌合させることで構成されている。本実施形態において、外体20は、円筒状の胴部外体23と、胴部外体23の下端部に連なり下端部を閉塞する底部外体24とを備えている。また、胴部外体23の上部には、筒状の肩部外体21と、肩部外体21の下方に連なる拡径部22とが形成され、肩部外体21と胴部外体23はこの拡径部22により連結されている。本実施形態において、外体20は射出成形によって形成されている。
【0036】
一方、内体10は、図3に示すように、略円筒状の口部11と、口部11の下端部に連なる胴部内体13と、胴部内体13の下端部に連なり下端部を閉塞する底部内体14とを備えている。口部11の下部には、径方向外側に突出する環状のネックリング12が設けられている。ネックリング12をブロー成形金型の基準面に突き当てることによってプリフォーム100を金型に固定することができる。胴部内体13における外面には凹所13aが設けられており、凹所13aにはRFID30が嵌合して内体10の外面に露出している。
【0037】
本実施形態に係る合成樹脂製容器200の製造方法は、まず、内体10を、RFID30をインサート成形することによって形成する。すなわち、RFID30をインサート材として金型内にセットした状態でプリフォーム100の内体10をインサート成形する(図4のステップS101)。
【0038】
次に、プリフォーム100の外体20を射出成形によって形成する(ステップS103)。なお、ステップS101における内体10の形成と、ステップS103における外体20の形成は、この順序で行う必要はなく、外体20を先に形成してもよい。
【0039】
次に、ステップS103で形成した外体20の内側にステップS101で形成した内体10を配置(嵌合)してプリフォーム100を形成する(ステップS105)。より具体的には、外体20の肩部外体21の内側に対して上方から内体10の底部内体14を挿入し、肩部外体21の上端部がネックリング12の下面に当接するまで嵌合させる。このとき、底部内体14の下面が底部外体24の上面に当接又は近接する。また、埋設部材であるRFID30は、径方向における外体20と内体10との間に配置されることになる。なお、RFIDを備えた内体10をインサート材として金型内にセットした状態で外体20をインサート成形することで、外体20を形成するステップと、外体20の内側に内体10を配置するステップとを同時に又は連続して実施してもよい。
【0040】
次に、ステップS105で形成したプリフォーム100をブロー成形金型に装着し、2軸延伸ブロー成形を行って合成樹脂製容器200を形成する(ステップS107)。プリフォーム100のブロー成形金型への装着は、プリフォーム100の口部11が金型の外部に露出するように、ネックリング12をブロー成形金型の基準面に突き当てることによって行う。なお、ブロー成形前のプリフォーム100は延伸可能な温度に加熱されており、例えばその加熱温度は約90℃である。
【0041】
本実施形態では、埋設部材であるRFID30が埋設されている部位における、合成樹脂製容器200の肉厚に対するプリフォーム100の肉厚の比率が、1.0より大きく2.5以下となるようにブロー成形を行っている。このような条件でブロー成形を行うことによって、RFID30周りの樹脂の延伸量が所定以下となるため、RFID30の周りに歪みが生じにくくなるとともに、合成樹脂製容器200の座屈強度や落下強度を必要なだけ確保することができる。
【0042】
以上述べたように、本実施形態に係る合成樹脂製容器200の製造方法は、有底筒状のプリフォーム100を形成するステップと、プリフォーム100をブロー成形して合成樹脂製容器200を形成するステップとを含み、プリフォーム100及び合成樹脂製容器200には、埋設部材が埋設されており、埋設部材が埋設されている部位における、合成樹脂製容器200の肉厚に対するプリフォーム100の肉厚の比率は、1.0より大きく2.5以下であるように構成した。このような構成の採用によって、樹脂の延伸に伴うRFID30周りの歪みが抑制されるため、外観不良を低減するとともに合成樹脂製容器200に必要な座屈強度や落下強度を確保し易くすることができる。
【0043】
また、本実施形態では、埋設部材が埋設されている部位における合成樹脂製容器200の肉厚に対する埋設部材の合成樹脂製容器200の肉厚方向の厚みの比率は、0.5以下であるように構成した。このような構成の採用によって、RFID30の厚みに対してRFID30周りの樹脂の肉厚を所定厚みだけ確保することができるため、RFID30の周りに歪みが生じにくく外観不良を低減するとともに、合成樹脂製容器200に必要な座屈強度や落下強度を更に確保し易くすることができる。
【0044】
また、本実施形態では、プリフォーム100は、外体20と外体20の内側に設けられた内体10とを有し、埋設部材は、外体20と内体10との間に配置されるように構成した。このような構成の採用によって、2体構成のプリフォーム100において、外体20と内体10との間に埋設部材を配置するという比較的平易な手段によって埋設部材を確実に合成樹脂製容器200内に埋設することができる。
【0045】
また、本実施形態では、プリフォーム100を形成するステップは、埋設部材をインサート材として内体10をインサート成形するステップと、外体20を形成するステップと、外体20の内側に内体10を配置するステップとを含むように構成した。このような構成の採用によって、インサート成形により埋設部材を内体10に配置することができるので、より平易な手段によって埋設部材を確実に合成樹脂製容器200内に埋設することができる。
【0046】
また、本実施形態では、埋設部材は、RFID30であるように構成した。このような構成の採用によって、合成樹脂製容器200の商品管理や物流管理を容易に行うことができる。
【0047】
また、本実施形態では、埋設部材は、合成樹脂製容器200の胴部133に埋設されるように構成した。このような構成の採用によって、RFID30と専用の通信装置との距離を短くすることができるので、通信装置とRFID30との間で情報の送受信を確実に行うことができる。
【0048】
本開示を諸図面や実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形や修正を行うことが容易であることに注意されたい。従って、これらの変形や修正は本発明の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各構成部に含まれる機能などは論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の構成部を1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。本発明の範囲にはこれらも包含されるものと理解されたい。
【0049】
例えば、本実施形態では、埋設部材が埋設されている部位における合成樹脂製容器200の肉厚に対する埋設部材の合成樹脂製容器200の肉厚方向の厚みの比率が0.5以下であるように構成したが、この態様には限定されない。RFID30の周りに歪みが生じず外観不良が低減できるとともに、合成樹脂製容器200に必要な座屈強度や落下強度が確保できる限りにおいて、上記比率は0.5を超えてもよい。
【0050】
また、本実施形態では、プリフォーム100は、外体20と外体20の内側に設けられた内体10とを有し、埋設部材は、外体20と内体10との間に配置されるように構成したが、この態様には限定されない。埋設部材は、外体20又は内体10の一方に完全に埋設され、他方と接触しない位置に配置されていてもよい。また、プリフォーム100は必ずしも外体20と内体10からなる構成でなくてもよい。
【0051】
また、本実施形態では、プリフォーム100を形成するステップは、埋設部材をインサート材として内体10をインサート成形するステップと、外体20を形成するステップと、外体20の内側に内体10を嵌合させるステップとを含むように構成したが、この態様には限定されない。内体10の形成にインサート成形を用いず、例えば、射出成形によって形成された内体10の凹所にRFID30を後から嵌め込むようにしてもよい。また、RFID30を埋設した内体10をインサート材として外体20をインサート成形してもよい。更に、RFID30をインサート材として外体20をインサート成形によって形成するようにしてもよい。
【0052】
また、本実施形態では、凹所13aに嵌合したRFID30が内体10の外面に露出するように構成されているが、RFID30が内体10の内部に完全に埋設されて内体10の表面に露出しないようにしてもよい。
【0053】
また、本実施形態では、埋設部材としてRFID30を用いるように構成したが、この態様には限定されない。埋設部材として、例えば、磁気記録媒体や磁石等の、識別コードを少なくとも読み出し可能な他の部材を用いるようにしてもよい。
【0054】
また、本実施形態では、埋設部材を合成樹脂製容器200の胴部133に配置するように構成したが、この態様には限定されない。埋設部材は、合成樹脂製容器200の口部111,肩部132又は底部134などに配置してもよい。
【0055】
また、本実施形態では、合成樹脂製容器200が口部111以外の肩部132から底部134までの部位が外層体130bと内層体130aからなる積層構造を有するように構成したが、この態様には限定されない。合成樹脂製容器200は、口部111にも積層構造を備えてもよいし、容器全体にわたって積層構造を備えていなくてもよい。
【実施例0056】
RFID30が埋設されている部位における、合成樹脂製容器200の肉厚に対するプリフォーム100の肉厚の比率を変えた6つのサンプルを作製し、1.RFID30の動作、2.容器の外観、3.容器の座屈強度、4.容器の落下強度、の4項目について評価を行った。RFID30には、射出成形やブロー成形により損傷を生じない耐熱性を有し、厚みが0.8mmのものを使用した。この評価に用いた合成樹脂製容器200は、全高205[mm]、円筒状の胴部133の外径は66[mm]である。
【0057】
表1に各サンプルの上記4項目の評価結果を示し、表2に各評価項目の判断基準を示した。
【0058】
【表1】
【0059】
【表2】
【0060】
「RFID動作」及び「落下強度」については全てのサンプルで評価結果が「〇」となったが、「容器外観」については、合成樹脂製容器200に対するプリフォーム100の肉厚比が2.5より大きいサンプルについては、評価結果が「×」となった。これは、肉厚比が2.5より大きいと樹脂の延伸に伴うRFID30周りの歪みが許容範囲を超える(明らかに歪みが視認できてしまう)ため、容器外観不良の要因になっていると考えられる。従って、RFID30が埋設されている部位における、合成樹脂製容器200の肉厚に対するプリフォーム100の肉厚の比率は2.5以下とすべきことが分かる。このとき、表1より、「容器外観」以外の評価項目も全て「〇」となっている。
【0061】
また、RFID30として厚みが0.8[mm]のものを使用したため、合成樹脂製容器200に対するプリフォーム100の肉厚比が2.5以下となるときの、合成樹脂製容器200の肉厚に対するRFID30の厚みの比率は、0.5以下となっている。従って、合成樹脂製容器200の肉厚に対するRFID30の厚みの比率は0.5以下を満たしておくことが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本開示によれば、埋設部材に起因する製品不良を抑制した、ブロー成形による合成樹脂製容器200の製造方法を提供することが可能となる。本開示により、埋設部材としてのRFID30を使用した真贋判定だけでなく、温度センサを有するRFID30を使用して内容物入り容器の流通時における温度管理に利用するなど、RFID30を様々な用途に用いることができる。
【符号の説明】
【0063】
10 内体
11 口部
12 ネックリング
13 胴部内体
13a 凹所
14 底部内体
20 外体
21 肩部外体
22 拡径部
23 胴部外体
24 底部外体
30 RFID(埋設部材)
100 プリフォーム
111 口部
111a 雄ねじ部
111b 外周壁
112 ネックリング
113 胴部内層
113a 凹所
113b 肩部内層
114 底部内層
121 肩部外層
123 胴部外層
124 底部外層
130a 内層体
130b 外層体
132 肩部
133 胴部
134 底部
200 合成樹脂製容器
O 中心軸線
S 収容空間
図1
図2
図3
図4