(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022131830
(43)【公開日】2022-09-07
(54)【発明の名称】塗布容器
(51)【国際特許分類】
A45D 34/04 20060101AFI20220831BHJP
B65D 83/00 20060101ALI20220831BHJP
【FI】
A45D34/04 525A
A45D34/04 510Z
B65D83/00 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021030992
(22)【出願日】2021-02-26
(71)【出願人】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100156867
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 欣浩
(74)【代理人】
【識別番号】100143786
【弁理士】
【氏名又は名称】根岸 宏子
(72)【発明者】
【氏名】古澤 光夫
【テーマコード(参考)】
3E014
【Fターム(参考)】
3E014PA01
3E014PD30
3E014PE25
3E014PE30
3E014PF10
(57)【要約】
【課題】容器を大きく傾けなくても塗布部を狙った向きに指向させることができ、使い勝手に優れる塗布容器を提案する。
【解決手段】塗布容器1は、筒状をなし先端側に凹球面部2eを有する容器2と、棒状をなし内容液を含浸可能であって容器2に収容される含浸体3と、含浸体3に接触するとともに先端側に塗布部4aを有する塗布体4と、塗布体4を保持するとともに後端側に設けた凸球面部6gが凹球面部2eに対して移動可能に結合し、容器2の中心軸線Oに対して塗布部4aを傾倒姿勢に変位させることが可能なホルダー6と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状をなし先端側に凹球面部を有する容器と、
棒状をなし内容液を含浸可能であって前記容器に収容される含浸体と、
前記含浸体に接触するとともに先端側に塗布部を有する塗布体と、
前記塗布体を保持するとともに後端側に設けた凸球面部が前記凹球面部に対して移動可能に結合し、前記容器の中心軸線に対して前記塗布部を傾倒姿勢に変位させることが可能なホルダーと、を備える塗布容器。
【請求項2】
前記凹球面部は、前記中心軸線を周回する向きに延在する溝部を、該中心軸線に沿う向きに位置をずらして複数有し、
前記凸球面部は、前記溝部に係合可能な凸部を有する、請求項1に記載の塗布容器。
【請求項3】
前記含浸体を取り囲む屈曲可能なパイプを有し、
前記パイプは、前記容器に気密に保持されるパイプ後端部と、前記ホルダーに気密に保持されるパイプ先端部とを有する、請求項1又は2に記載の塗布容器。
【請求項4】
前記容器の先端外側に配され、前記ホルダーにスライド可能に結合するカバーを有し、
前記ホルダーは、前記塗布部が前記中心軸線に沿う直立姿勢に変位して前記カバーの後端部が前記容器の先端部に当接する状態において、前記カバーの先端部に対して間隔をあけて設けられるストッパーを有する、請求項1~3の何れか一項に記載の塗布容器。
【請求項5】
前記塗布部を取り囲んで前記ホルダーに取り付けられるキャップを有し、
前記キャップは、前記塗布部が前記中心軸線に沿う直立姿勢に変位して前記カバーの後端部が前記容器の先端部に当接する状態において、前記カバーの先端部に当接するキャップ後端部を有する、請求項4に記載の塗布容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内容液を塗布するための塗布部が設けられた塗布容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従前より、内容液(例えばアイライナー、アイブロウ、口紅、リップクリーム)を塗布するための塗布部が設けられた塗布容器が既知である。
【0003】
例えば特許文献1には、内容液を含浸させた含浸体が容器の内側に収容されていて、この含浸体からの内容液を先端に設けた筆状の塗布部で塗布することができるペンタイプの塗布容器が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで特許文献1の塗布部は、容器の中心軸線に沿う向きで固定されている。このため、塗布する場所によっては容器を大きく傾けなければ塗布部を狙った向きに指向させることができず、塗布が行い難いことがある。
【0006】
このような問題に鑑み、本発明は、容器を大きく傾けなくても塗布部を狙った向きに指向させることができ、使い勝手に優れる塗布容器を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、筒状をなし先端側に凹球面部を有する容器と、
棒状をなし内容液を含浸可能であって前記容器に収容される含浸体と、
前記含浸体に接触するとともに先端側に塗布部を有する塗布体と、
前記塗布体を保持するとともに後端側に設けた凸球面部が前記凹球面部に対して移動可能に結合し、前記容器の中心軸線に対して前記塗布部を傾倒姿勢に変位させることが可能なホルダーと、を備える塗布容器である。
【0008】
前記凹球面部は、前記中心軸線を周回する向きに延在する溝部を、該中心軸線に沿う向きに位置をずらして複数有し、
前記凸球面部は、前記溝部に係合可能な凸部を有することが好ましい。
【0009】
前記含浸体を取り囲む屈曲可能なパイプを有し、
前記パイプは、前記容器に気密に保持されるパイプ後端部と、前記ホルダーに気密に保持されるパイプ先端部とを有することが好ましい。
【0010】
前記容器の先端外側に配され、前記ホルダーにスライド可能に結合するカバーを有し、
前記ホルダーは、前記塗布部が前記中心軸線に沿う直立姿勢に変位して前記カバーの後端部が前記容器の先端部に当接する状態において、前記カバーの先端部に対して間隔をあけて設けられるストッパーを有することが好ましい。
【0011】
前記塗布部を取り囲んで前記ホルダーに取り付けられるキャップを有し、
前記キャップは、前記塗布部が前記中心軸線に沿う直立姿勢に変位して前記カバーの後端部が前記容器の先端部に当接する状態において、前記カバーの先端部に当接するキャップ後端部を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の塗布容器は、先端側に塗布部を有する塗布体がホルダーで保持されていて、また容器の先端側に設けた凹球面部に対し、ホルダーの後端側に設けた凸球面部が移動可能に結合しているため、容器の中心軸線に対して塗布部を傾倒姿勢に変位させることができる。すなわち本発明の塗布容器によれば、容器を大きく傾けなくても塗布部を狙った向きに指向させることができるため使い勝手に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に係る塗布容器の一実施形態を示す側面視での断面図である。
【
図2】
図1に示したホルダーの半断面図と容器の部分拡大半断面図である。
【
図3】
図1に示す塗布容器に関し、塗布部が直立姿勢に変位した状態での断面図である。
【
図4】
図1に示す塗布容器に関し、塗布部が傾倒姿勢に変位した状態での断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら本発明に従う塗布容器の一実施形態について説明する。なお、本明細書等において上下方向とは、図示した軸線Oに沿う方向である。また径方向とは、軸線Oに対して垂直な面内で軸線Oと直交する方向であり、周方向とは、この面内で軸線Oを中心として周回する方向である。なお以下の説明においては、
図1における上側を「先端側」と称し、下側を「後端側」と称することがある。また軸線Oは、本明細書等における容器の中心軸線に相当する。
【0015】
本実施形態の塗布容器1は、容器2、含浸体3、塗布体4、パイプ5、ホルダー6、カバー7、キャップ8(外キャップ9と内キャップ10で構成される)を備えている。
【0016】
容器2は、軸線Oを中心とする円形板状の底壁2aを備えている。底壁2aの外縁部には、上方に向けて延在する円筒状の周壁2bが設けられている。そして底壁2aと周壁2bとの連結部には、周壁2bよりも内径が小さくなる円環状のシール壁2cが設けられている。なお周壁2bの上端部を、容器2の先端部2dと称する。
【0017】
周壁2bの内周面における上側には、
図1、
図2に示すように、凹球面部2eが設けられている。また凹球面部2eには、横断面形状が凹状であって、軸線Oを周回する向きに1周に亘って延在する溝部2fが設けられている。溝部2fは、図示したように軸線Oに沿う向きに互いに隣接するように複数設けられている。
【0018】
含浸体3は、内容液(例えばアイライナー、アイブロウ、口紅、リップクリーム等)を含浸可能な素材(例えばフェルトや発泡合成樹脂等)で形成されている。本実施形態の含浸体3は、横断面形状が円形になる棒状であって、屈曲可能である。
【0019】
塗布体4は、本実施形態では合成樹脂又は天然素材の繊維束により構成され、上側に位置する塗布部4aが筆状になるものである。また塗布体4の下側に位置する塗布体後端部4bは、含浸体3の上端部に埋め込まれるようにしてこれに接触している。すなわち、含浸体3に含ませた内容液は、毛細管現象により塗布体後端部4bから吸い上げられ、塗布部4aで塗布先に塗布することができる。なお塗布部4aの形状は、塗布先に応じて適宜選択可能であって、例えば刷毛状でもよいし、ブラシ状でもよい。また塗布体4を構成する素材も適宜選択可能である。
【0020】
パイプ5は、屈曲可能な素材(例えば軟質の合成樹脂等)で円筒状になるように形作られている。パイプ5の内側には、図示したように含浸体3が収容される。またパイプ5の下端部(パイプ後端部5a)は、シール壁2cの内側に挿入されてこれに嵌合保持される。この状態において、パイプ5の外周面とシール壁2cの内周面とは気密に当接している。なお、本明細書等において「気密」とは、気体が出入りできない状態のみを意味するものではなく、気体の出入りが抑制される状態も含む。
【0021】
ホルダー6は、
図2に示すように円筒状になるホルダー周壁6aを備えている。ホルダー周壁6aの外周面には、径方向外側に向けて突出する環状の下側突起部6bと、下側突起部6bの上方に位置し、径方向外側への突出量が下側突起部6bよりも小さく、上面が上方に向けて縮径するように傾斜した上側突起部6c(本明細書等における「ストッパー」に相当)を備えている。またホルダー周壁6aの外周面において、上側突起部6cの上方には、雄ねじ部6dが設けられている。またホルダー周壁6aの内周面には、パイプ5の上端部(パイプ先端部5b)を嵌合保持する内向き突起状のシール凸部6eが設けられている。この状態において、パイプ5の外周面とシール凸部6eとは気密に当接している。そしてホルダー周壁6aの上端部には、ホルダー周壁6aよりも小径になる円筒状の保持部6fが設けられている。保持部6fは、塗布部4aを上方に突き出させた状態で塗布体4を保持する機能を有する。
【0022】
またホルダー6は、ホルダー周壁6aの下端部に一体的に連結する凸球面部6gを備えている。凸球面部6gの外周面には、径方向外側に向けて半球状に突出する凸部6hが設けられている。凸部6hは、凸球面部6gの中心を通る水平面と凸球面部6gの外周面とが交差する位置において、周方向に間隔をあけて複数設けられている。凸球面部6gは、凹球面部2eと同じサイズで形成されていて、凹球面部2eに対して移動可能に結合する。すなわちホルダー6は、容器2に対して何れの方向にも傾くことができる。また凸部6hは、溝部2fに嵌まるように構成されている。このため傾いたホルダー6は、凸部6hが溝部2fに嵌まる位置で保持される。
【0023】
カバー7は、全体的に円筒状であって、カバー7の上端部(先端部7a)は、径方向内側に向けて延在して内向きフランジ状になるように形作られている。またカバー7の下端部(後端部7b)は、下方に向けて拡径するように形作られている。本実施形態のカバー7は、ホルダー6に対して上方から挿入することによって上側突起部6cを乗り越え、上側突起部6cと下側突起部6bとの間でスライド可能に結合する。
【0024】
外キャップ9は、有蓋筒状に形作られていて、内周面には、雄ねじ部6dに対応する雌ねじ部9aが設けられている。ここで外キャップ9の下端部を、キャップ後端部9bと称する。
【0025】
内キャップ10は、外キャップ9よりも小径の有蓋筒状になるものである。内キャップ10は、これを外キャップ9に挿入することで、外キャップ9に対して回り止めされ且つ抜け止めされた状態で保持される。
【0026】
このような形態になる塗布容器1は、
図1に示すように塗布部4aが軸線Oに沿う直立姿勢に変位した状態で、雄ねじ部6dを雌ねじ部9aに螺合させることによって、ホルダー6に外キャップ9を装着することができる。この状態において、内キャップ10の下端部における内周面は、ホルダー6の外周面に気密に当接する。このため、塗布部4aの乾燥や、塗布部4aから外部に向けての内容液の揮発を防止することができる。また内容液を含ませた含浸体3は、パイプ5によって取り囲まれていて、パイプ後端部5aはシール壁2cに気密に保持され、パイプ先端部5bはシール凸部6eに気密に保持されている。このため、含浸体3から容器2の外側への内容液の揮発も防止することができる。
【0027】
またキャップ8を装着すると、カバー7の後端部7bが容器2の先端部2dに当接した状態で、外キャップ9のキャップ後端部9bは、カバー7の先端部7aに当接する。すなわちカバー7は、上述したようにホルダー6に対してスライド可能であるが、キャップ8を装着することによって、カバー7はスライド不能の状態になる。カバー7は、後述するように塗布部4aの姿勢を変える際にスライドするものであって、カバー7がスライド可能な状態であると塗布部4aの姿勢が変わるおそれがあるが、キャップ8を装着することによって、意図しない塗布部4aの姿勢変更を防止することができる。
【0028】
塗布部4aで内容液を塗布するにあたっては、容器2に対してキャップ8を回転させ、雄ねじ部6dと雌ねじ部9aとの螺合を緩めてキャップ8を取り外す。キャップ8を取り外した直後において塗布部4aは、
図3に示すように直立姿勢に変位した状態にある。このため、上述した特許文献1の如き従来の塗布容器のように使用することができる。
【0029】
一方、このように塗布部4aが直立姿勢にある状態において、容器2を大きく傾けなければ塗布部4aを狙った向きに指向できない場合は、カバー7を摘まみ、これを容器2に対して傾ける。上述したように、カバー7が取り付けられているホルダー6は、凸球面部6gが凹球面部2eに対して移動可能に結合しているため、
図4の実線や仮想線で示すように、容器2に対して何れの方向にも傾けることができる。ここで、カバー7はホルダー6に対してスライド可能であるため、カバー7の後端部7bが容器2の先端部2dに干渉してホルダー6の傾倒が妨げられることはない。なお、ホルダー6には上側突起部6cが設けられているため、スライドしたカバー7がホルダー6から脱落することはない。また含浸体3とパイプ5はともに屈曲可能であるため、ホルダー6を傾倒させるにあたり、妨げになることはない。
【0030】
また本実施形態の塗布容器1は、凸球面部6gに設けた凸部6hが、凹球面部2eに設けた溝部2fに嵌まるように構成されている。また溝部2fは、軸線Oに沿う向きに複数設けられていて、凸部6hは、周方向に間隔をあけて複数設けられている。このため、凸部6hと溝部2fが係合する範囲において、塗布部4aを何れの向きに傾倒させても、傾倒時の角度を保った状態でその姿勢が維持される。
【0031】
このように本実施形態の塗布容器1によれば、塗布部4aを任意の傾倒姿勢に変位させることによって、容器2を大きく傾けなくても塗布部4aを狙った向きに指向させることができるため、塗布作業が行い易く使い勝手に優れる。
【0032】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、上記の説明で特に限定しない限り、特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。また、上記の実施形態における効果は、本発明から生じる効果を例示したに過ぎず、本発明による効果が上記の効果に限定されることを意味するものではない。
【0033】
例えば上述した実施形態においては、凸部6hと溝部2fによって容器2に対してホルダー6の傾きが維持されるようにしたが、凹球面部2eと凸球面部6gとの摺動抵抗を高めることによって、凸部6hと溝部2fによらずにホルダー6の傾きが維持されるようにしてもよい。また溝部2fは、上述した実施形態では軸線Oを周回する向きに1周に亘って延在していたが、凸部6hを設けた位置に対応させて軸線Oを周回する向きに部分的に設けてもよい。
【符号の説明】
【0034】
1:塗布容器
2:容器
2a:底壁
2b:周壁
2c:シール壁
2d:先端部(容器の先端部)
2e:凹球面部
2f:溝部
3:含浸体
4:塗布体
4a:塗布部
4b:塗布体後端部
5:パイプ
5a:パイプ後端部
5b:パイプ先端部
6:ホルダー
6a:ホルダー周壁
6b:下側突起部
6c:上側突起部
6d:雄ねじ部
6e:シール凸部
6f:保持部
6g:凸球面部
6h:凸部
7:カバー
7a:先端部(カバーの先端部)
7b:後端部(カバーの後端部)
8:キャップ
9:外キャップ
9a:雌ねじ部
9b:キャップ後端部
10:内キャップ
O:軸線(容器の中心軸線)