(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022131834
(43)【公開日】2022-09-07
(54)【発明の名称】紫外線硬化型水性インクジェット印刷用インク組成物
(51)【国際特許分類】
C09D 11/30 20140101AFI20220831BHJP
C09D 11/101 20140101ALI20220831BHJP
C09D 11/326 20140101ALI20220831BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20220831BHJP
B41M 5/00 20060101ALI20220831BHJP
【FI】
C09D11/30
C09D11/101
C09D11/326
B41J2/01 501
B41M5/00 100
B41M5/00 120
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021030998
(22)【出願日】2021-02-26
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.プルロニック
(71)【出願人】
【識別番号】000105947
【氏名又は名称】サカタインクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100214363
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】塩崎 大悟
(72)【発明者】
【氏名】金城 潤
(72)【発明者】
【氏名】中島 興範
【テーマコード(参考)】
2C056
2H186
4J039
【Fターム(参考)】
2C056EA04
2C056EA13
2C056FC01
2C056FD20
2H186AB11
2H186BA08
2H186DA12
2H186FB03
2H186FB11
2H186FB15
2H186FB36
2H186FB44
2H186FB46
2H186FB48
2H186FB55
2H186FB58
4J039AD21
4J039BC06
4J039BC20
4J039BC36
4J039BC50
4J039BC53
4J039BE22
4J039CA03
4J039EA06
4J039EA44
4J039EA46
4J039GA24
(57)【要約】
【課題】相溶性と保存安定性に優れ、印刷後に仮硬化した後に本硬化を行うことによって、印刷部に粒状感がなく、硬化性と耐水性に優れた印刷部を形成できる、紫外線硬化型水性インクジェット印刷用インク組成物及び印刷方法を得ること。
【解決手段】全重合性成分の合計質量に対して、
水溶性アクリルアミド系モノマーを20.0~70.0質量%、
水溶性水酸基含有単官能モノマーを5.0~60.0質量%、
非水溶性重合性化合物を8.0~35.0質量%、
をそれぞれ含有し、
さらに、全重合性成分の合計質量100質量部に対して、光重合開始剤及び/又は増感剤を3.0~10.0質量部含有し、
顔料、
及び水を含み、
前記水溶性アクリルアミド系モノマーと水溶性水酸基含有単官能モノマーの質量の比率(アクリルアミド系モノマー/水酸基含有単官能モノマー)が0.3~10.0であり、
波長365~405nmにピークを有するUV-LEDにより、積算光量が100mJ/cm2以下である照射によって仮硬化される工程を有する印刷用の紫外線硬化型水性インクジェット印刷用インク組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
全重合性成分の合計質量に対して、
水溶性アクリルアミド系モノマーを20.0~70.0質量%、
水溶性水酸基含有単官能モノマーを5.0~60.0質量%、
非水溶性重合性化合物を8.0~35.0質量%、
をそれぞれ含有し、
さらに、全重合性成分の合計質量100質量部に対して、光重合開始剤及び/又は増感剤を3.0~10.0質量部含有し、
顔料、
及び水を含み、
前記水溶性アクリルアミド系モノマーと水溶性水酸基含有単官能モノマーの質量の比率(アクリルアミド系モノマー/水酸基含有単官能モノマー)が0.3~10.0であり、
波長365~405nmにピークを有するUV-LEDにより、積算光量が100mJ/cm2以下である照射によって仮硬化される工程を有する印刷用の紫外線硬化型水性インクジェット印刷用インク組成物。
【請求項2】
前記水溶性アクリルアミド系モノマーがアクリロイルモルフォリンを含む請求項1に記載の紫外線硬化型水性インクジェット印刷用インク組成物。
【請求項3】
前記水溶性水酸基含有単官能モノマーが4-ヒドロキシブチルアクリレートを含む請求項1又は2に記載の紫外線硬化型水性インクジェット印刷用インク組成物。
【請求項4】
前記水の含有量がインク組成物全体に対して、10.0~40.0質量%である請求項1~3のいずれか1項に記載の紫外線硬化型水性インクジェット印刷用インク組成物。
【請求項5】
マレイミド構造を有する顔料分散剤及び/又はピリジン環を有する顔料分散剤を含む請求項1~4のいずれか1項に記載の紫外線硬化型水性インクジェット印刷用インク組成物。
【請求項6】
全重合性成分の合計質量に対して、
水溶性アクリルアミド系モノマーを20.0~70.0質量%、
水溶性水酸基含有単官能モノマーを5.0~60.0質量%、
非水溶性重合性化合物を8.0~35.0質量%、
をそれぞれ含有し、
さらに、全重合性成分の合計質量100質量部に対して、光重合開始剤及び/又は増感剤を3.0~10.0質量部含有し、
顔料、
及び水を含み、
前記水溶性アクリルアミド系モノマーと水溶性水酸基含有単官能モノマーの質量の比率(アクリルアミド系モノマー/水酸基含有単官能モノマー)が0.3~10.0であり、
波長365~405nmにピークを有するUV-LEDにより、積算光量が100mJ/cm2以下である照射によって仮硬化される工程を行い、
次いで紫外線を照射して本硬化する工程を有する
紫外線硬化型水性インクジェット印刷用インク組成物による印刷方法。
【請求項7】
インク組成物が前記水溶性アクリルアミド系モノマーとしてアクリロイルモルフォリンを含む請求項6に記載の紫外線硬化型水性インクジェット印刷用インク組成物による印刷方法。
【請求項8】
前記水溶性水酸基含有単官能モノマーが4-ヒドロキシブチルアクリレートを含む請求項6又は7に記載の紫外線硬化型水性インクジェット印刷用インク組成物による印刷方法。
【請求項9】
前記水の含有量がインク組成物全体に対して、10.0~40.0質量%である請求項6~8のいずれか1項に記載の紫外線硬化型水性インクジェット印刷用インク組成物による印刷方法。
【請求項10】
マレイミド構造を有する顔料分散剤及び/又はピリジン環を有する顔料分散剤を含む請求項6~9のいずれか1項に記載の紫外線硬化型水性インクジェット印刷用インク組成物による印刷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線硬化型水性インクジェット印刷用インク組成物及び印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、水溶性樹脂又はエマルジョン樹脂と紫外線硬化性化合物を含有する紫外線硬化性水性インクジェット印刷用インク組成物、及び印刷後に加熱による一時乾燥と二次乾燥を行い、その後に紫外線照射を行って最終印刷物を得ることが記載されており、特許文献2には、n-ブチルアクリレート、t-ブチルアクリルアミド、2-ヒドロキシエチルアクリレート等からモノマー成分を選択し含有し得る紫外線硬化型水系インクジェット記録用インク、及び1回の紫外線照射により硬化させることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-111822号公報
【特許文献2】特開2006-028377号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記各特許文献に記載の発明によれば、インクジェットインク組成物として印刷することはできるものの、紫外線硬化型水性インクジェット印刷用インク組成物としての相溶性と保存安定性の向上を考慮せず、印刷部の粒状感を無くすことについても考慮していない。
本発明が解決する課題は、相溶性と保存安定性に優れ、さらに、印刷後に仮硬化した後に本硬化を行うことによって、印刷部に粒状感がなく、さらに硬化性と耐水性に優れた印刷部を形成できる、紫外線硬化型水性インクジェット印刷用インク組成物及び印刷方法を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記の課題を解決するため鋭意研究した結果、特定の組成、特定の印刷方法とすることにより、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
1.全重合性成分の合計質量に対して、
水溶性アクリルアミド系モノマーを20.0~70.0質量%、
水溶性水酸基含有単官能モノマーを5.0~60.0質量%、
非水溶性重合性化合物を8.0~35.0質量%、
をそれぞれ含有し、
さらに、全重合性成分の合計質量100質量部に対して、光重合開始剤及び/又は増感剤を3.0~10.0質量部含有し、
顔料、
及び水を含み、
前記水溶性アクリルアミド系モノマーと水溶性水酸基含有単官能モノマーの質量の比率(アクリルアミド系モノマー/水酸基含有単官能モノマー)が0.3~10.0であり、
波長365~405nmにピークを有するUV-LEDにより、積算光量が100mJ/cm2以下である照射によって仮硬化される工程を有する印刷用の紫外線硬化型水性インクジェット印刷用インク組成物。
2.前記水溶性アクリルアミド系モノマーがアクリロイルモルフォリンを含む1に記載の紫外線硬化型水性インクジェット印刷用インク組成物。
3.前記水溶性水酸基含有単官能モノマーが4-ヒドロキシブチルアクリレートを含む1又は2に記載の紫外線硬化型水性インクジェット印刷用インク組成物。
4.前記水の含有量がインク組成物全体に対して、10.0~40.0質量%である1~3のいずれかに記載の紫外線硬化型水性インクジェット印刷用インク組成物。
5.マレイミド構造を有する顔料分散剤及び/又はピリジン環を有する顔料分散剤を含む1~4のいずれかに記載の紫外線硬化型水性インクジェット印刷用インク組成物。
6.全重合性成分の合計質量に対して、
水溶性アクリルアミド系モノマーを20.0~70.0質量%、
水溶性水酸基含有単官能モノマーを5.0~60.0質量%、
非水溶性重合性化合物を8.0~35.0質量%、
をそれぞれ含有し、
さらに、全重合性成分の合計質量100質量部に対して、光重合開始剤及び/又は増感剤を3.0~10.0質量部含有し、
顔料、
及び水を含み、
前記水溶性アクリルアミド系モノマーと水溶性水酸基含有単官能モノマーの質量の比率(アクリルアミド系モノマー/水酸基含有単官能モノマー)が0.3~10.0であり、
波長365~405nmにピークを有するUV-LEDにより、積算光量が100mJ/cm2以下である照射によって仮硬化される工程を行い、
次いで紫外線を照射して本硬化する工程を有する
紫外線硬化型水性インクジェット印刷用インク組成物による印刷方法。
7.インク組成物が前記水溶性アクリルアミド系モノマーとしてアクリロイルモルフォリンを含む6に記載の紫外線硬化型水性インクジェット印刷用インク組成物による印刷方法。
8.前記水溶性水酸基含有単官能モノマーが4-ヒドロキシブチルアクリレートを含む6又は7に記載の紫外線硬化型水性インクジェット印刷用インク組成物による印刷方法。
9.前記水の含有量がインク組成物全体に対して、10.0~40.0質量%である6~8のいずれかに記載の紫外線硬化型水性インクジェット印刷用インク組成物による印刷方法。
10.マレイミド構造を有する顔料分散剤及び/又はピリジン環を有する顔料分散剤を含む6~9のいずれかに記載の紫外線硬化型水性インクジェット印刷用インク組成物による印刷方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明の紫外線硬化型水性インクジェット印刷用インク組成物は、相溶性と保存安定性に優れる。
さらに印刷後の印字部に紫外線を照射して仮硬化を行った後に、再度紫外線を照射して本硬化を行うことによって、印刷部に粒状感がなく、さらに硬化性と耐水性に優れる印刷部を形成できる効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の紫外線硬化型水性インクジェット印刷用インク組成物及びその印刷方法について、以下に説明する。
なお、本発明における水溶性の各化合物とは、その化合物が室温で液体である場合、化合物と水を質量比で1:9の比率で混合し、十分な時間静置後においても、化合物と水が分離せず、溶解した状態となる化合物である。
その化合物が室温で固体である場合、化合物と水を質量比で1:9の比率で十分な温度となるように、加熱条件下で混合し、その後十分な時間、室温で静置後においても、化合物と水が分離せず、溶解した状態となる化合物である。
このような挙動を示さない化合物は本発明における水溶性の化合物ではなく非水溶性とした。
【0008】
(水溶性アクリルアミド)
本発明において使用される水溶性アクリルアミドとしては、(メタ)アクリルアミド、アクリロイルモルフォリン、N-メトキシメチルアクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、ジエチルアクリルアミド等のアクリルアミドである。
それらに加えて、ヒドロキシメチル(メタ)アクリルジアミド、ジ(2-ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、ジ(3-ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド、ジ(4-ヒドロキシブチル)(メタ)アクリルアミド等のN-アルキロール(C1~5)(メタ)アクリルアミド、及びこれらN-アルキロール(C1~5)(メタ)アクリルアミドの、エチレンオキシド又はプロピレンオキシドの1~3モル付加物、も使用できる。
本発明の紫外線硬化型水性インクジェット印刷用インク組成物中の全重合性成分中に、水溶性アクリルアミドを20.0~70.0質量%含有する。そして、25.0質量%以上含有することが好ましく、30.0質量%以上含有することがより好ましく、35.0質量%以上含有することが更に好ましく、40.0質量%以上含有することが最も好ましい。
また、全重合性成分中に、水溶性アクリルアミドを65.0質量%以下含有することが好ましく、60.0質量%以下含有することがより好ましく、55.0質量%以下含有することが更に好ましく、50.0質量%以下含有することが最も好ましい。
【0009】
(水溶性水酸基含有単官能モノマー)
本発明において使用される水溶性水酸基含有単官能モノマーとして、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを採用できる。
なお、水溶性水酸基含有単官能モノマーとして、上記のアクリルアミド化合物にも相当するモノマーに包含される化合物は、本発明の組成物における含有量を求める際に、上記の水溶性アクリルアミドの含有量として考慮し、水溶性水酸基含有単官能モノマーとはしない。
本発明の紫外線硬化型水性インクジェット印刷用インク組成物中の全重合性成分中に、水溶性水酸基含有単官能モノマーを5.0~60.0質量%含有する。そして10.0質量%以上含有することが好ましく、15.0質量%以上含有することがより好ましく、20.0質量%以上含有することが更に好ましく、25.0質量%以上含有することが最も好ましい。
また、全重合性成分中に、水溶性水酸基含有単官能モノマーを55.0質量%以下含有することが好ましく、50.0質量%以下含有することがより好ましく、45.0質量%以下含有することが更に好ましく、40.0質量%以下含有することが最も好ましい。
【0010】
(その他の水溶性単官能モノマー)
本発明において含有しても良いその他の水溶性単官能モノマーとしては、(メタ)アクリル酸、(エチレングリコール)メチルエーテルアクリレート、(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレート、ビニルピロリドン、ビニル4-メチルピロリドン、ビニル4-フェニルピロリドン、ビニルイミダゾール、ビニル4-メチルイミダゾール、ビニル4-フェニルイミダゾール等が挙げられる。
【0011】
(非水溶性重合性化合物)
本発明において使用される非水溶性重合性化合物としては、単官能モノマー、多官能モノマー、オリゴマーなどがあり、これらの1種以上を含有する。
本発明の紫外線硬化型水性インクジェット印刷用インク組成物中の全重合性成分中に、非水溶性重合性化合物を8.0~35.0質量%含有する。
そして、全重合性成分中に、非水溶性重合性化合物を10.0質量%以上含有することが好ましく、13.0質量%以上含有することがより好ましく、15.0質量%以上含有することが更に好ましく、17.0質量%以上含有することが最も好ましい。
また、全重合性成分中に、非水溶性重合性化合物を30.0質量%以下含有することが好ましく、27.0質量%以下含有することがより好ましく、25.0質量%以下含有することが更に好ましく、23.0質量%以下含有することが最も好ましい。
【0012】
単官能モノマーとしては、
エチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート、
ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシ化フェニル(メタ)アクリレート等の芳香族(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0013】
多官能モノマーとしては、
ジプロピレングリコールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、PO変性ネオペンチルグリコールジアクリレート、変性ビスフェノールAジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、
トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性グリセリントリ(メタ)アクリレート、PO変性グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート等が挙げられる。
【0014】
オリゴマーとしては、
アミン変性(メタ)アクリレートオリゴマー及びエポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーから選ばれた1種以上が挙げられ、これらの重合性オリゴマーは、インクの全重合性成分に対して5.0質量%以上含有することが好ましく、10.0質量%以上含有することがより好ましい。また、25.0質量%以下含有することが好ましく、20.0質量%以下含有することがより好ましい。
アミン変性(メタ)アクリレートオリゴマーは、分子中に、少なくとも1つのアミノ基と、少なくとも1つの(メタ)アクリロイル基を有するオリゴマーであれば特に制限されない。一方、前記アミン変性(メタ)アクリレートオリゴマーが分子中に有する(メタ)アクリロイル基の数は、1つ以上であれば特に制限されないが、1つ以上6つ以下であることが好ましく、2つ以上4つ以下であることが好ましい。(メタ)アクリロイル基の数が上記範囲であると、アミン変性(メタ)アクリレートオリゴマーが重合性化合物と反応しやすくなり、また、インク組成物の粘度が適度な範囲になりやすい。
【0015】
アミン変性(メタ)アクリレートオリゴマーは、所望のモノマーを重合した合成品であってもよく、市販品であってもよい。前記アミン変性(メタ)アクリレートオリゴマーの市販品としては、例えば、商品名「GENOMER5161」、「GENOMER5275」(RAHN社);商品名「CN371」、「CN373」、「CN383」、「CN384」、「CN386」、「CN501」、「CN550」、「CN551」(サートマー社);商品名「EBECRYL7100」、「EBECRYL80」、「EBECRYL81」、「EBECRYL83」、「EBECRYL84」、「EBECRYLP115」(ダイセル・サイテック社);商品名「Laromer PO77F(LR8946)」、「Laromer LR8956」、「Laromer LR8996」、「Laromer PO94F(LR8894)」(BASF社);商品名「Photomer4771」、「Photomer4775」、「Photomer4967」、「Photomer5096」、「Photomer5662」、「Photomer5930」(コグニス社);商品名「DoublecureEPD」、「DoublecureOPD」、「Doublecure115」、「Doublecure225」、「Doublecure645」、「PolyQ222」、「PolyQ226」、「PolyQ224」、「PolyQ101」(DoubleBondChemicals社)が挙げられる。
【0016】
エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーは、所望のモノマーを重合した合成品であってもよく、市販品であってもよい。エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーの市販品としては、例えば、商品名「EBECRYL3708」、「EBECRYL1606」(ダイセル・サイテック社)、「CN116」、「CN120B60」、「CN120M50」、「CN131B」、「CN132」、「CN137」、「CN152」、「CN153」、「CN2102E」、「CN2003」(サートマー社)が挙げられる。
【0017】
(光重合開始剤)
本発明の紫外線硬化型水性インクジェット印刷用インク組成物は光重合開始剤を含有する。その光重合開始剤は、光重合を開始するものであれば特に制限されず、光硬化型インクジェット印刷用インク組成物に使用される光重合開始剤を用いることができる。
光重合開始剤としては、例えば、ベンゾインエーテル系光重合開始剤、アセトフェノン系光重合開始剤、α-ケトール系光重合開始剤、芳香族スルホニルクロリド系光重合開始剤、光活性オキシム系光重合開始剤、ベンゾイン系光重合開始剤、ベンジル系光重合開始剤、ベンゾフェノン系光重合開始剤、ケタール系光重合開始剤、チオキサントン系光重合開始剤、トリアジン系光重合開始剤、アシルフォスフィンオキシド系光重合開始剤などが挙げられる。これらの中でも、発光ダイオード(LED)光に対する硬化性が良好である観点から、トリアジン系光重合開始剤、アシルフォスフィンオキシド系光重合開始剤が好ましい。前記光重合開始剤は単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0018】
前記トリアジン系光重合開始剤としては、例えば、2,4,6-トリクロロ-s-トリアジン、2-フェニル-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(p-メトキシフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(p-トリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-ピペニル-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-スチリル-s-トリアジン、2-(ナフト-1-イル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(4-メトキシ-ナフト-1-イル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2,4-トリクロロメチル-(ピペロニル)-6-トリアジン、2,4-トリクロロメチル(4’-メトキシスチリル)-6-トリアジンなどが挙げられ、市販品としては、例えば、商品名「TAZ-204」(みどり化学社)などが挙げられる。
【0019】
前記アシルフォスフィンオキシド系光重合開始剤としては、例えば、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド(商品名「TPO」、Lamberti社)、(2,4,6-トリメチルベンゾイル)エトキシフェニルホスフィンオキシド(TPO-L)、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド(商品名「Omnirad819」、IGM Resins B.V.社)などが挙げられる。
【0020】
(増感剤)
本発明の紫外線硬化型水性インクジェット印刷用インク組成物は、硬化性を向上させる観点から、増感剤を含んでいてもよい。前記増感剤は単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0021】
増感剤としては、例えば、9,10-ジブトキシアントラセン、9,10-ジエトキシアントラセン、9,10-ジプロポキシアントラセン、9,10-ビス(2-エチルヘキシルオキシ)アントラセンなどのアントラセン系増感剤;2,4-ジエチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、4-イソプロピルチオキサントンなどのチオキサントン系増感剤などが挙げられ、これらの中でも、チオキサントン系増感剤が好ましい。前記増感剤の市販品としては、アントラセン系増感剤では、商品名「DBA」、「DEA」(以上、川崎化成工業社)、チオキサントン系増感剤では、商品名「DETX」、「ITX」(Lambson社)などが挙げられる。
【0022】
前記インク組成物中、前記増感剤の割合は、過剰添加を防止する観点から、5質量%以下であることが好ましい。なお、増感剤として、チオキサントン系増感剤を使用する場合、紫外線硬化型インクジェット印刷用インク組成物を黄色に変色させる傾向があるため、色相毎に、チオキサントン系増感剤の含有量を適宜決めることが好ましい。例えば、色味の変化の影響を受けやすいホワイトインク組成物およびクリアーインク組成物では、増感剤として、チオキサントン系増感剤は含まないようにすることが好ましい。また、マゼンタインク組成物およびシアンインク組成物では、色相の変化が問題となるので、色相に問題が生じない範囲で使用することが好ましい。また、ブラックインク組成物およびイエローインク組成物は、変色があっても色相に影響しないのと、光重合性が他の色相より乏しいことから、増感剤として、チオキサントン系増感剤を使用することが好ましい。
本発明においては、インク組成物の全重合性成分の合計質量100質量部に対して、光重合開始剤及び/又は増感剤を3.0~10.0質量部含有する。ここで光重合開始剤及び増感剤を含有する場合は、この比率はこれらの合計量の比率であり、いずれか一方のみを含有する場合には、それぞれ単独での比率である。
【0023】
(顔料)
本発明の紫外線硬化型水性インクジェット印刷用インク組成物は顔料を含む。顔料は単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0024】
前記顔料は、インクジェット用インク組成物に使用される、有機顔料、無機顔料などの顔料を特に制限なく使用することができる。前記有機顔料としては、例えば、染料レーキ顔料、アゾ系顔料、ベンズイミダゾロン系顔料、フタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料、アントラキノン系顔料、ジオキサジン系顔料、インジゴ系顔料、チオインジコ系顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、イソインドリノン系顔料、ニトロ系顔料、ニトロソ系顔料、アンスラキノン系顔料、フラバンスロン系顔料、キノフタロン系顔料、ピランスロン系顔料、インダンスロン系顔料などが挙げられる。また、前記無機顔料としては、例えば、カーボンブラック、酸化チタン、亜鉛華、ベンガラ、黒鉛、鉄黒、酸化クロムグリーン、水酸化アルミニウムなどが挙げられる。前記顔料は、公知の表面処理剤により表面処理されたものであってもよい。
【0025】
前記顔料の代表的な色相ごとの具体例としては、以下のものが挙げられる。
イエロー顔料としては、例えば、C.I.Pigment Yellow 1、2、3、12、13、14、16、17、42、73、74、75、81、83、87、93、95、97、98、108、109、114、120、128、129、138、139、150、151、155、166、180、184、185、213などが挙げられる。
【0026】
マゼンタ顔料としては、例えば、C.I.Pigment Red 5、7、12、22、38、48:1、48:2、48:4、49:1、53:1、57、57:1、63:1、101、102、112、122、123、144、146、149、168、177、178、179、180、184、185、190、202、209、224、242、254、255、270、C.I.Pigment Violet 19などが挙げられる。
【0027】
シアン顔料としては、例えば、C.I.Pigment Blue 1、2、3、15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、18、22、27、29、60などが挙げられる。
【0028】
ブラック顔料としては、例えば、カーボンブラック(C.I.Pigment Black 7)などが挙げられる。
【0029】
ホワイト顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化アルミニウムなどが挙げられ、アルミナ、シリカなどの種々の材料で表面処理されていてもよい。
【0030】
前記インク組成物中、前記顔料の割合は、印刷物の印画濃度を向上させる観点から、1.0質量%以上であることが好ましく、1.2質量%以上であることがより好ましく、そして、吐出安定性を向上させる観点から、5.0質量%以下であることが好ましく、4.0質量%以下であることがより好ましい。ただし、前記顔料がホワイト顔料である場合、前記インク組成物中、前記ホワイト顔料の割合は、3.0質量%以上であることが好ましく、5.0質量%以上であることがより好ましく、そして、15.0質量%以下であることが好ましく、10.0質量%以下であることがより好ましい。
【0031】
本発明の紫外線硬化型水性インクジェット印刷用インク組成物において、前記顔料を使用する場合、顔料分散剤を使用することが好ましい。
前記顔料分散剤は、顔料の分散性、インク組成物の保存安定性を向上させるために使用するもので、従来から使用されているものを特に制限なく使用できるが、その中でも高分子顔料分散剤を使用することが好ましい。前記顔料分散剤は単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0032】
前記高分子顔料分散剤としては、例えば、カルボジイミド系分散剤、ポリエステルアミン系分散剤、脂肪酸アミン系分散剤、変性ポリアクリレート系分散剤、変性ポリウレタン系分散剤、多鎖型高分子非イオン系分散剤、高分子イオン活性剤などが挙げられる。
そのような高分子顔料分散剤としては、水溶性のものが好ましく、ビックケミー社BYKJET-9150、BYKJET-9151、BYKJET-9170、DISPERBYK-168、DISPERBYK-190、DISPERBYK-198、DISPERBYK-2010、DISPERBYK-2012、DISPERBYK-2015、CrayValley社SMA1440、SMA2625、SMA17352、SMA3840、SMA1000、SMA2000、SMA3000、BASFジャパン社JONCRYL67、JONCRYL678、JONCRYL586、JONCRYL611、JONCRYL680、JONCRYL682、JONCRYL690、JONCRYL819、JONCRYL-JDX5050、EFKA4550、EFKA4560、EFKA4585、EFKA5220、EFKA6230、ルーブリゾール社SOLSPERSE20000、SOLSPERSE27000、SOLSPERSE41000、SOLSPERSE41090、SOLSPERSE43000、SOLSPERSE44000、SOLSPERSE46000、SOLSPERSE47000、SOLSPERSE54000、等が挙げられる。
【0033】
前記顔料分散剤の含有量は、顔料の分散性およびインク組成物の貯蔵安定性を高める観点から、前記顔料100質量部に対して、1.0質量部以上であることが好ましく、5.0質量部以上であることがより好ましく、また、100質量部以下であることが好ましく、60.0質量部以下であることがより好ましい。
【0034】
(水)
水は、着色剤等を溶解、分散させるための溶媒として配合される。水は、精製水、イオン交換水等である。
水の含有量は、インキ組成物中、10質量%以上であることが好ましい。また、水の含有量は、インキ組成物中、40質量%以下であることが好ましい。水の含有量が上記範囲内であることにより、インキ組成物は、分散安定性が良好となるという利点がある。
【0035】
(任意成分)
本発明のインキ組成物は、適宜、任意成分として、表面調整剤、水溶性有機溶剤、保存性向上剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、消泡剤、防黴剤、防錆剤、増粘剤、保湿剤、
pH調整剤等の各種添加剤を含有してもよい。
【0036】
・表面調整剤
本発明のインキ組成物に、含有しても良い表面調整剤は特に限定されない。シリコーン系表面調整剤、フッ素系表面調整剤、アセチレン系表面調整剤等が好ましい。アセチレンジオール系表面調整剤は、ダイノール607、ダイノール609、EXP-4001、EXP-4300、オルフィンE1010(日信化学工業社)等である。シリコーン系界面活性剤は、BYK-307、333、347、348、349、345、378、3455(ビックケミー社)等である。フッ素系界面活性剤は、F-410、444、553(DIC社)、FS-65、34、35、31、30(デュポン社)等である。
表面調整剤が含有される場合において、表面調整剤の含有量は特に限定されず、インキ組成物の表面張力が25~40mN/mとなる含有量であることが好ましく、インキ組成物中に0.1~1.5質量%であることがより好ましい。
【0037】
・水溶性有機溶剤
本発明のインキ組成物は、保存安定性、吐出安定性、インキの飛翔性等を調整するために水溶性有機溶剤を含有してもよい。水溶性有機溶剤は特に限定されず、アルコール類、多価アルコール類、多価アルコールの低級アルキルエーテル類、ケトン類、エーテル類、エステル類、窒素含有化合物類、アミド類等が好ましい。また、水溶性有機溶媒の含有量は特に限定されない。
【0038】
アルコール類は、メタノール、エタノール、n-プロパノール、n-ブタノール、n-ペンタノール、n-ヘキサノール、n-ヘプタノール、n-オクタノール、n-ノニルアルコール、n-デカノール、またはこれらの異性体、シクロペンタノール、シクロヘキサノール等である。
【0039】
多価アルコール類は、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、1,4-ブチレングリコール、1,2-ペンタンジオール、4-メチル-1,2-ペンタンジオール、3,3-ジメチル-1,2-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,2-ヘキサンジオール、2-エチル-1,3- ヘキサンジオール、2-メチル-1,3-ブタンジオール、5-メチル-1,2-ヘキサンジオール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、3-メチル-1,5-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,2-シクロヘキサンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、2,5-ジメチル-2,5-ヘキサンジオール、1,2-オクタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、ペンタエリスリトール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、チオジグリコール等である。
【0040】
多価アルコールの低級アルキルエーテル類は、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールイソブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル等である。
【0041】
ケトン類は、アセトン、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソプロピルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等である。
【0042】
エーテル類は、ジエチルエーテル、イソプロピルエーテル、n-ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,4-ジオキサン等である。
【0043】
エステル類は、エチルアセテート、プロピレンカルボネート、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸アミル、乳酸エステル、酪酸エステル、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、およびε-カプロラクトン、ε-カプロラクタム等の環状エステル等である。
【0044】
窒素含有化合物類は、2-ピロリドン、N-メチルピロリドン、N-エチルピロリドン、N-メチルオキサゾリジノン、N-エチルオキサゾリジノン等である。
【0045】
アミド類は、β-アルコキシプロピオンアミド等である。
【0046】
・保存性向上剤
保存性向上剤として、N-CH3タイプ、N-Hタイプ、N-ORタイプ等のヒンダードアミンを使用できる。
【0047】
・紫外線吸収剤
紫外線吸収剤は、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、サリチレート系紫外線吸収剤、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、ニッケル錯塩系紫外線吸収剤等である。
【0048】
・酸化防止剤
酸化防止剤は、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、リン系酸化防止剤等である。
【0049】
・消泡剤
消泡剤は、シリコーン系消泡剤、プルロニック系消泡剤等である。
【0050】
本発明の紫外線硬化型水性インクジェット印刷用インク組成物は、25℃における粘度が、100mPa・s以下であることが好ましく、30mPa・s以下であることがより好ましい。インキ組成物は、必要に応じて粘度調整剤等が配合される。なお、本願明細書に記載の粘度は、E型粘度計(RE100L型粘度計、東機産業社)を用いて、25℃で測定した値である。
【0051】
<インキ組成物の調製方法>
本発明の紫外線硬化型水性インクジェット印刷用インク組成物を調製する方法は特に限定されない。一例を挙げると、インキ組成物は、含有する材料をビーズミルや3本ロールミル等で混合して調製することができる。なお、顔料は、顔料と上記顔料分散剤および上記光重合性モノマーを混合することにより、予めベースインキ組成物を得て、そこに所望の組成となるよう上記の成分の残余の分を添加して調製してもよい。
【0052】
<印刷方法>
本発明の紫外線硬化型水性インクジェット印刷用インク組成物による印刷方法を説明する。
使用するインクジェット印刷装置は、紫外線硬化型のインク組成物を印刷できる装置であれば特に限定されない。
また印刷対象の基材も特に限定されず、基材として、各樹脂基材、紙、カプセル、ジェル、金属箔、ガラス、木材、布等を採用できる。
【0053】
基材表面に吐出して得た本発明の紫外線硬化型水性インクジェット印刷用インク組成物の印刷部に対して、仮硬化(ピニング)のために紫外線を照射する、次いで、本硬化として紫外線を照射して、印刷部のインク組成物を硬化する。
ここで仮硬化(ピニング)は、基材表面に吐出したインク組成物が流動性を失う程度に硬化をさせることをいい、ピニング後のインク組成物は、未硬化成分と溶媒を含有する。
この仮硬化(ピニング)において、印刷部表面には、波長365~405nmにピークを有するUV-LEDにより、積算光量が100mJ/cm2以下となるように照射する。
仮硬化の後の本硬化工程は、インク組成物を完全に硬化できる積算光量になるように紫外線を照射する工程であり、本硬化工程のみで、積算光量100~300mJ/cm2になるように紫外線を照射することが好ましい。
【実施例0054】
下記表1に記載のインク組成物1~14を調製し、表2の条件でピニングを行った。
EO変性TMPTA : トリメチロールプロパンEO変性トリアクリレート
CN131B : エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー(商品名「Sartomer CN131B」、サートマー社)
CN371 : アミン変性(メタ)アクリレートオリゴマー(商品名「Sartomer CN371」、サートマー社)
TPO-L : (2,4,6-トリメチルベンゾイル)エトキシフェニルホスフィンオキシド
BYK-333 : シリコーン系表面調整剤(ビックケミー社)
P.B.15:4 : ピグメントブルー15:4
P.R.122 : ピグメントレッド122
P.Y.138 : ピグメントイエロー138
P.Bk.7 : カーボンブラック
BYKJET-9151 : 水溶性高分子分散剤(ビックケミー社)
【0055】
評価方法
(相溶性)
各インクを褐色瓶に入れ、室温で24時間静置した後、目視にて分離の有無を確認した。
〇:分離なし
×:二層に分離した
【0056】
これ以降の評価については、相溶性の評価が「×」以外のものについて行った。
(保存安定性)
各インクを褐色瓶に採り、密栓して60℃、2週間保管した後、E型粘度計(商品名:RE100L型粘度計、東機産業社)を使用して、温度25℃、ローター回転速度20rpmの条件で、粘度を測定し、式(1)にて増粘率を計算し、下記評価基準に従って評価した。
式(1)((60℃、2週間後の粘度-保管前の粘度)/保管前の粘度)×100
〇:増粘率が10%未満
×:増粘率が10%以上
【0057】
(粒状感)
各インクをインクジェット評価機にてOKトップコート紙(王子製紙社)に印字を行い、表2に示すピニング積算光量のUV-LEDを照射してピニングした後、積算光量200mJ/cm2の紫外線を照射して、硬化させた。得られた硬化塗膜を目視にて観察し、下記評価基準に従って評価した。
〇:粒状感なし
△:わずかに粒状感が見られる
×:粒状感が顕著に見られる
【0058】
(硬化性)
各インクをインクジェット評価機にてOKトップコート紙(王子製紙社)に印字を行い、表2に示すピニング積算光量のUV-LEDを照射してピニングした後、積算光量200mJ/cm2の紫外線を照射して、硬化させた。得られた硬化塗膜を綿棒で擦り、下記評価基準に従って評価した。
〇:綿棒で擦った跡が残らない
△:わずかに擦った跡が残る
×:塗膜が綿棒で取られる
【0059】
(耐水性)
各インクをインクジェット評価機にてOKトップコート紙(王子製紙社)に印字を行い、表2に示すピニング積算光量のUV-LEDを照射してピニングした後、積算光量200mJ/cm2の紫外線を照射して、硬化させた。得られた硬化塗膜を水で湿らせた綿棒で擦り、下記評価基準に従って評価した。
〇:40往復しても取られなし
△:11~39往復で取られる
×:10往復以下で取られる
【0060】
【0061】
【0062】
表1に示すように、本発明に沿った紫外線硬化型水性インクジェット印刷用インク組成物の例であるインク組成物1~8によれば、相溶性及び保存安定性に優れた。
しかしながら、紫外線硬化型水性インクジェット印刷用インク組成物中の水以外の成分の点において、本発明に包含されないインク組成物10~12及び14によれば、保存安定性を評価するまでもなく、相溶性に劣っていた。
さらに表2において、インク組成物1~8を使用した実施例1~10によれば、硬化した印刷部には粒状感が無く、硬化性及び耐水性に優れていた。
これに対して、ピニングを行わなかった比較例1、ピニング時の紫外線の積算光量が多すぎた比較例2、水を含有しないインク9を使用した比較例3によれば、いずれも粒状感に劣っていた。非水溶性重合性化合物の含有量が少ないインク組成物13を使用した比較例7によれば、耐水性に劣っていた。