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特開2022-131841合成繊維用処理剤、合成繊維用第1処理剤、合成繊維用第2処理剤、合成繊維用処理剤の水性液、合成繊維の処理方法、及び合成繊維
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022131841
(43)【公開日】2022-09-07
(54)【発明の名称】合成繊維用処理剤、合成繊維用第1処理剤、合成繊維用第2処理剤、合成繊維用処理剤の水性液、合成繊維の処理方法、及び合成繊維
(51)【国際特許分類】
D06M 13/17 20060101AFI20220831BHJP
D06M 13/292 20060101ALI20220831BHJP
D06M 15/53 20060101ALI20220831BHJP
D06M 101/32 20060101ALN20220831BHJP
【FI】
D06M13/17
D06M13/292
D06M15/53
D06M101:32
【審査請求】有
【請求項の数】35
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021031007
(22)【出願日】2021-02-26
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-04-18
(71)【出願人】
【識別番号】000210654
【氏名又は名称】竹本油脂株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】岡田 智八
(72)【発明者】
【氏名】福岡 拓也
(72)【発明者】
【氏名】二宮 彰紀
(72)【発明者】
【氏名】竹内 浩純
【テーマコード(参考)】
4L033
【Fターム(参考)】
4L033AA07
4L033AB01
4L033AB03
4L033AC09
4L033BA14
4L033BA39
4L033CA48
(57)【要約】
【課題】摩擦特性を向上させた繊維用処理剤等を提供する。
【解決手段】本発明の繊維用処理剤は、下記の成分(A)、下記の成分(B)、及び有機リン酸エステル化合物(C)を含有することを特徴とする。成分(A)は、炭素数1~8の1価の脂肪族アルコール、炭素数1~8の1価の脂肪族アミン、炭素数1~12の2~4価の脂肪族アルコール、及び炭素数1~12の2~4価の脂肪族アミンから選ばれる少なくとも1つに対して、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドを付加させて得られるアルキレンオキサイド付加物である。成分(B)は、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル等である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の成分(A)、下記の成分(B)、及び有機リン酸エステル化合物(C)を含有することを特徴とする繊維用処理剤。
成分(A):炭素数1~8の1価の脂肪族アルコール、炭素数1~8の1価の脂肪族アミン、炭素数1~12の2~4価の脂肪族アルコール、及び炭素数1~12の2~4価の脂肪族アミンから選ばれる少なくとも1つに対して、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドを付加させて得られるアルキレンオキサイド付加物。
成分(B):ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエステル、ポリオキシアルキレンアルケニルエステル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルアミノエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルアミノエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルアミノエーテルと無機酸との塩、及びポリオキシアルキレンアルケニルアミノエーテルと無機酸との塩から選ばれる少なくとも1つ(但し、前記成分(A)に該当するものを除く)。
【請求項2】
前記成分(A)、前記成分(B)、及び前記有機リン酸エステル化合物(C)の含有割合の合計を100質量%とすると、前記成分(A)を0.1質量%以上45質量%以下の割合で含有する請求項1に記載の繊維用処理剤。
【請求項3】
前記成分(A)、前記成分(B)、及び前記有機リン酸エステル化合物(C)の含有割合の合計を100質量%とすると、前記成分(A)を0.1質量%以上23.5質量%以下の割合で含有する請求項1又は2に記載の繊維用処理剤。
【請求項4】
前記成分(B)を含有する繊維用第1処理剤、及び前記有機リン酸エステル化合物(C)を含有する繊維用第2処理剤を含み、前記繊維用第1処理剤及び前記繊維用第2処理剤のいずれか一方又は両方に前記成分(A)を含有する請求項1~3のいずれか一項に記載の繊維用処理剤。
【請求項5】
前記繊維用第1処理剤中における前記成分(B)及び前記成分(A)の含有割合の合計を100質量%とすると、前記成分(B)を50質量%以上100質量%以下、及び前記成分(A)を0質量%以上50質量%以下の割合で含有し、且つ前記繊維用第2処理剤中における前記有機リン酸エステル化合物(C)及び前記成分(A)の含有割合の合計を100質量%とすると、前記有機リン酸エステル化合物(C)を50質量%以上100質量%以下、及び前記成分(A)を0質量%以上50質量%以下の割合で含有する請求項4に記載の繊維用処理剤。
【請求項6】
前記成分(A)が、炭素数1~6の1価の脂肪族アルコール、炭素数1~6の1価の脂肪族アミン、炭素数1~12の2~4価の脂肪族アルコール、及び炭素数1~12の2~4価の脂肪族アミンから選ばれる少なくとも1つに対して、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドを付加させて得られるアルキレンオキサイド付加物である請求項1~5のいずれか一項に記載の繊維用処理剤。
【請求項7】
前記成分(A)のアルキレンオキサイド全体に占めるプロピレンオキサイドの質量割合が、60~95%である請求項1~6のいずれか一項に記載の繊維用処理剤。
【請求項8】
前記成分(A)が、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドをブロック共重合して形成されたものである請求項1~7のいずれか一項に記載の繊維用処理剤。
【請求項9】
前記有機リン酸エステル化合物(C)が、分子中に炭素数8~22の脂肪族アルコールから水酸基を除いた残基又は炭素数8~22の脂肪族アルコールに炭素数2~3のアルキレンオキサイドを付加したものから水酸基を除いた残基を有するアルキルリン酸エステル、及びその塩から選ばれる少なくとも1つを含むものである請求項1~8のいずれか一項に記載の繊維用処理剤。
【請求項10】
合成繊維に適用される請求項1~9のいずれか一項に記載の繊維用処理剤。
【請求項11】
ポリエステル短繊維に適用される請求項1~9のいずれか一項に記載の繊維用処理剤。
【請求項12】
ポリエチレンテレフタラート繊維に適用される請求項1~9のいずれか一項に記載の繊維用処理剤。
【請求項13】
短繊維に適用される請求項1~9のいずれか一項に記載の繊維用処理剤。
【請求項14】
有機リン酸エステル化合物(F)を含有する繊維用第2処理剤と併用され、下記の成分(E)を含有する繊維用第1処理剤であって、前記繊維用第1処理剤及び前記繊維用第2処理剤のいずれか一方又は両方に下記成分(D)を更に含有することを特徴とする繊維用第1処理剤。
成分(D):炭素数1~8の1価の脂肪族アルコール、炭素数1~8の1価の脂肪族アミン、炭素数1~12の2~4価の脂肪族アルコール、及び炭素数1~12の2~4価の脂肪族アミンから選ばれる少なくとも1つに対して、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドを付加させて得られるアルキレンオキサイド付加物。
成分(E):ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエステル、ポリオキシアルキレンアルケニルエステル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルアミノエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルアミノエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルアミノエーテルと無機酸との塩、及びポリオキシアルキレンアルケニルアミノエーテルと無機酸との塩から選ばれる少なくとも1つ(但し、前記成分(D)に該当するものを除く)。
【請求項15】
前記繊維用第1処理剤が、前記成分(E)及び前記成分(D)を含み、前記成分(E)及び前記成分(D)の含有割合の合計を100質量%とすると、前記成分(E)を50質量%以上99.9質量%以下、及び前記成分(D)を0.1質量%以上50質量%以下の割合で含有する請求項14に記載の繊維用第1処理剤。
【請求項16】
前記成分(E)及び前記成分(D)の含有割合の合計を100質量%とすると、前記成分(E)を70質量%以上99.9質量%以下、及び前記成分(D)を0.1質量%以上30質量%以下の割合で含有する請求項15に記載の繊維用第1処理剤。
【請求項17】
前記繊維用第1処理剤が、前記成分(E)及び前記成分(D)を含み、且つ前記繊維用第2処理剤が前記有機リン酸エステル化合物(F)及び前記成分(D)を含み、
前記繊維用第1処理剤中における前記成分(E)及び前記成分(D)の含有割合の合計を100質量%とすると、前記成分(E)を50質量%以上99.9質量%以下、及び前記成分(D)を0.1質量%以上50質量%以下の割合で含有する請求項14に記載の繊維用第1処理剤。
【請求項18】
前記繊維用第1処理剤中における前記成分(E)及び前記成分(D)の含有割合の合計を100質量%とすると、前記成分(E)を70質量%以上99.9質量%以下、及び前記成分(D)を0.1質量%以上30質量%以下の割合で含有する請求項17に記載の繊維用第1処理剤。
【請求項19】
下記の成分(E)を含有する繊維用第1処理剤と併用され、有機リン酸エステル化合物(F)を含有する繊維用第2処理剤であって、前記繊維用第1処理剤及び前記繊維用第2処理剤のいずれか一方又は両方に下記成分(D)を更に含有することを特徴とする繊維用第2処理剤。
成分(D):炭素数1~8の1価の脂肪族アルコール、炭素数1~8の1価の脂肪族アミン、炭素数1~12の2~4価の脂肪族アルコール、及び炭素数1~12の2~4価の脂肪族アミンから選ばれる少なくとも1つに対して、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドを付加させて得られるアルキレンオキサイド付加物。
成分(E):ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエステル、ポリオキシアルキレンアルケニルエステル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルアミノエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルアミノエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルアミノエーテルと無機酸との塩、及びポリオキシアルキレンアルケニルアミノエーテルと無機酸との塩から選ばれる少なくとも1つ(但し、前記成分(D)に該当するものを除く)。
【請求項20】
前記繊維用第2処理剤が、前記有機リン酸エステル化合物(F)及び前記成分(D)を含み、前記有機リン酸エステル化合物(F)及び前記成分(D)の含有割合の合計を100質量%とすると、前記有機リン酸エステル化合物(F)を50質量%以上99.9質量%以下、及び前記成分(D)を0.1質量%以上50質量%以下の割合で含有する請求項19に記載の繊維用第2処理剤。
【請求項21】
前記有機リン酸エステル化合物(F)及び前記成分(D)の含有割合の合計を100質量%とすると、前記有機リン酸エステル化合物(F)を70質量%以上99.9質量%以下、及び前記成分(D)を0.1質量%以上30質量%以下の割合で含有する請求項20に記載の繊維用第2処理剤。
【請求項22】
前記繊維用第1処理剤が前記成分(E)及び前記成分(D)を含み、且つ前記繊維用第2処理剤が前記有機リン酸エステル化合物(F)及び前記成分(D)を含み、
前記繊維用第2処理剤中における前記有機リン酸エステル化合物(F)及び前記成分(D)の含有割合の合計を100質量%とすると、前記有機リン酸エステル化合物(F)を50質量%以上99.9質量%以下、及び前記成分(D)を0.1質量%以上50質量%以下の割合で含有する請求項19に記載の繊維用第2処理剤。
【請求項23】
前記繊維用第2処理剤中における前記有機リン酸エステル化合物(F)及び前記成分(D)の含有割合の合計を100質量%とすると、前記有機リン酸エステル化合物(F)を70質量%以上99.9質量%以下、及び前記成分(D)を0.1質量%以上30質量%以下の割合で含有する請求項22に記載の繊維用第2処理剤。
【請求項24】
請求項1~13のいずれか一項に記載の繊維用処理剤、及び水を含有することを特徴とする繊維用処理剤の水性液。
【請求項25】
請求項14~18のいずれか一項に記載の繊維用第1処理剤と、請求項19~23のいずれか一項に記載の繊維用第2処理剤とを、含むことを特徴とする繊維用処理剤の水性液。
【請求項26】
前記繊維用第1処理剤と前記繊維用第2処理剤との含有割合の比が、不揮発分の質量比として前記繊維用第1処理剤と前記繊維用第2処理剤=1/9~9/1である請求項25に記載の繊維用処理剤の水性液。
【請求項27】
水に、請求項14~18のいずれか一項に記載の繊維用第1処理剤と、請求項19~23のいずれか一項に記載の繊維用第2処理剤とを添加して得られた繊維用処理剤の水性液を繊維に付与することを特徴とする繊維の処理方法。
【請求項28】
請求項14~18のいずれか一項に記載の繊維用第1処理剤と、請求項19~23のいずれか一項に記載の繊維用第2処理剤とが、付着していることを特徴とする繊維。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定のアルキレンオキサイド付加物を含有する繊維用処理剤、繊維用第1処理剤、繊維用第2処理剤、繊維用処理剤の水性液、繊維の処理方法、及び繊維に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば合成繊維の紡糸延伸工程、仕上げ工程等において、繊維の摩擦を低減させる観点から、繊維の表面に繊維用処理剤を付着させる処理が行われることがある。
従来、特許文献1に開示の繊維用油剤が知られている。特許文献1は、芳香族ジカルボン酸等の成分、多価アルコール類等の成分、及び分子量が600以上であるポリアルキレンオキシド等を縮合反応させ、得られるランダム又はブロック型ポリエステルを1質量%以上含む繊維用油剤について開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、摩擦特性、特に高温湿潤時の摩擦特性の更なる向上が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、前記の課題を解決するべく研究した結果、繊維用処理剤において、所定のアルキレンオキサイド付加物、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル等、及び有機リン酸エステル化合物を含有する構成が好適であることを見出した。
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の一態様の繊維用処理剤では、下記の成分(A)、下記の成分(B)、及び有機リン酸エステル化合物(C)を含有することを特徴とする。
成分(A):炭素数1~8の1価の脂肪族アルコール、炭素数1~8の1価の脂肪族アミン、炭素数1~12の2~4価の脂肪族アルコール、及び炭素数1~12の2~4価の脂肪族アミンから選ばれる少なくとも1つに対して、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドを付加させて得られるアルキレンオキサイド付加物。
【0007】
成分(B):ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエステル、ポリオキシアルキレンアルケニルエステル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルアミノエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルアミノエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルアミノエーテルと無機酸との塩、及びポリオキシアルキレンアルケニルアミノエーテルと無機酸との塩から選ばれる少なくとも1つ(但し、前記成分(A)に該当するものを除く)。
【0008】
前記繊維用処理剤において、前記成分(A)、前記成分(B)、及び前記有機リン酸エステル化合物(C)の含有割合の合計を100質量%とすると、前記成分(A)を0.1質量%以上45質量%以下の割合で含有してもよい。
【0009】
前記繊維用処理剤において、前記成分(A)、前記成分(B)、及び前記有機リン酸エステル化合物(C)の含有割合の合計を100質量%とすると、前記成分(A)を0.1質量%以上23.5質量%以下の割合で含有してもよい。
【0010】
前記繊維用処理剤において、前記成分(B)を含有する繊維用第1処理剤、及び前記有機リン酸エステル化合物(C)を含有する繊維用第2処理剤を含み、前記繊維用第1処理剤及び前記繊維用第2処理剤のいずれか一方又は両方に前記成分(A)を含有してもよい。
【0011】
前記繊維用処理剤において、前記繊維用第1処理剤中における前記成分(B)及び前記成分(A)の含有割合の合計を100質量%とすると、前記成分(B)を50質量%以上100質量%以下、及び前記成分(A)を0質量%以上50質量%以下の割合で含有し、且つ前記繊維用第2処理剤中における前記有機リン酸エステル化合物(C)及び前記成分(A)の含有割合の合計を100質量%とすると、前記有機リン酸エステル化合物(C)を50質量%以上100質量%以下、及び前記成分(A)を0質量%以上50質量%以下の割合で含有してもよい。
【0012】
前記繊維用処理剤において、前記成分(A)が、炭素数1~6の1価の脂肪族アルコール、炭素数1~6の1価の脂肪族アミン、炭素数1~12の2~4価の脂肪族アルコール、及び炭素数1~12の2~4価の脂肪族アミンから選ばれる少なくとも1つに対して、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドを付加させて得られるアルキレンオキサイド付加物であってもよい。
【0013】
前記繊維用処理剤において、前記成分(A)のアルキレンオキサイド全体に占めるプロピレンオキサイドの質量割合が、60%以上95%以下であってもよい。
前記繊維用処理剤において、前記成分(A)が、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドをブロック共重合して形成されたものであってもよい。
【0014】
前記繊維用処理剤において、前記有機リン酸エステル化合物(C)が、分子中に炭素数8~22の脂肪族アルコールから水酸基を除いた残基又は炭素数8~22の脂肪族アルコールに炭素数2~3のアルキレンオキサイドを付加したものから水酸基を除いた残基を有するアルキルリン酸エステル、及びその塩から選ばれる少なくとも1つを含むものであってもよい。
【0015】
前記繊維用処理剤において、合成繊維に適用されてもよい。
前記繊維用処理剤において、ポリエステル短繊維に適用されてもよい。
前記繊維用処理剤において、ポリエチレンテレフタラート繊維に適用されてもよい。
【0016】
前記繊維用処理剤において、短繊維に適用されてもよい。
上記課題を解決するために、本発明の別の態様の繊維用第1処理剤では、有機リン酸エステル化合物(F)を含有する繊維用第2処理剤と併用され、下記の成分(E)を含有する繊維用第1処理剤であって、前記繊維用第1処理剤及び前記繊維用第2処理剤のいずれか一方又は両方に下記成分(D)を更に含有することを特徴とする。
【0017】
成分(D):炭素数1~8の1価の脂肪族アルコール、炭素数1~8の1価の脂肪族アミン、炭素数1~12の2~4価の脂肪族アルコール、及び炭素数1~12の2~4価の脂肪族アミンから選ばれる少なくとも1つに対して、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドを付加させて得られるアルキレンオキサイド付加物。
【0018】
成分(E):ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエステル、ポリオキシアルキレンアルケニルエステル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルアミノエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルアミノエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルアミノエーテルと無機酸との塩、及びポリオキシアルキレンアルケニルアミノエーテルと無機酸との塩から選ばれる少なくとも1つ(但し、前記成分(D)に該当するものを除く)。
【0019】
前記繊維用第1処理剤において、前記成分(E)及び前記成分(D)を含み、前記成分(E)及び前記成分(D)の含有割合の合計を100質量%とすると、前記成分(E)を50質量%以上99.9質量%以下、及び前記成分(D)を0.1質量%以上50質量%以下の割合で含有してもよい。
【0020】
前記繊維用第1処理剤において、前記成分(E)及び前記成分(D)の含有割合の合計を100質量%とすると、前記成分(E)を70質量%以上99.9質量%以下、及び前記成分(D)を0.1質量%以上30質量%以下の割合で含有してもよい。
【0021】
前記繊維用第1処理剤において、前記成分(E)及び前記成分(D)を含み、且つ前記繊維用第2処理剤が前記有機リン酸エステル化合物(F)及び前記成分(D)を含み、前記繊維用第1処理剤中における前記成分(E)及び前記成分(D)の含有割合の合計を100質量%とすると、前記成分(E)を50質量%以上99.9質量%以下、及び前記成分(D)を0.1質量%以上50質量%以下の割合で含有してもよい。
【0022】
前記繊維用第1処理剤において、前記繊維用第1処理剤中における前記成分(E)及び前記成分(D)の含有割合の合計を100質量%とすると、前記成分(E)を70質量%以上99.9質量%以下、及び前記成分(D)を0.1質量%以上30質量%以下の割合で含有してもよい。
【0023】
上記課題を解決するために、本発明の別の態様の繊維用第2処理剤では、下記の成分(E)を含有する繊維用第1処理剤と併用され、有機リン酸エステル化合物(F)を含有する繊維用第2処理剤であって、前記繊維用第1処理剤及び前記繊維用第2処理剤のいずれか一方又は両方に下記成分(D)を更に含有することを特徴とする。
【0024】
成分(D):炭素数1~8の1価の脂肪族アルコール、炭素数1~8の1価の脂肪族アミン、炭素数1~12の2~4価の脂肪族アルコール、及び炭素数1~12の2~4価の脂肪族アミンから選ばれる少なくとも1つに対して、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドを付加させて得られるアルキレンオキサイド付加物。
【0025】
成分(E):ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエステル、ポリオキシアルキレンアルケニルエステル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルアミノエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルアミノエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルアミノエーテルと無機酸との塩、及びポリオキシアルキレンアルケニルアミノエーテルと無機酸との塩から選ばれる少なくとも1つ(但し、前記成分(D)に該当するものを除く)。
【0026】
前記繊維用第2処理剤において、前記有機リン酸エステル化合物(F)及び前記成分(D)を含み、前記有機リン酸エステル化合物(F)及び前記成分(D)の含有割合の合計を100質量%とすると、前記有機リン酸エステル化合物(F)を50質量%以上99.9質量%以下、及び前記成分(D)を0.1質量%以上50質量%以下の割合で含有してもよい。
【0027】
前記繊維用第2処理剤において、前記有機リン酸エステル化合物(F)及び前記成分(D)の含有割合の合計を100質量%とすると、前記有機リン酸エステル化合物(F)を70質量%以上99.9質量%以下、及び前記成分(D)を0.1質量%以上30質量%以下の割合で含有してもよい。
【0028】
前記繊維用第2処理剤において、前記繊維用第1処理剤が前記成分(E)及び前記成分(D)を含み、且つ前記繊維用第2処理剤が前記有機リン酸エステル化合物(F)及び前記成分(D)を含み、前記繊維用第2処理剤中における前記有機リン酸エステル化合物(F)及び前記成分(D)の含有割合の合計を100質量%とすると、前記有機リン酸エステル化合物(F)を50質量%以上99.9質量%以下、及び前記成分(D)を0.1質量%以上50質量%以下の割合で含有してもよい。
【0029】
前記繊維用第2処理剤において、前記繊維用第2処理剤中における前記有機リン酸エステル化合物(F)及び前記成分(D)の含有割合の合計を100質量%とすると、前記有機リン酸エステル化合物(F)を70質量%以上99.9質量%以下、及び前記成分(D)を0.1質量%以上30質量%以下の割合で含有してもよい。
【0030】
上記課題を解決するために、本発明の別の態様の繊維用処理剤の水性液では、前記繊維用処理剤、及び水を含有することを特徴とする。
上記課題を解決するために、本発明の別の態様の繊維用処理剤の水性液では、前記繊維用第1処理剤と、前記繊維用第2処理剤とを、含むことを特徴とする。
【0031】
前記繊維用処理剤の水性液において、前記繊維用第1処理剤と前記繊維用第2処理剤との含有割合の比が、不揮発分の質量比として前記繊維用第1処理剤と前記繊維用第2処理剤=1/9~9/1であってもよい。
【0032】
上記課題を解決するために、本発明の別の態様の繊維の処理方法では、水に、前記繊維用第1処理剤と、前記繊維用第2処理剤とを添加して得られた繊維用処理剤の水性液を繊維に付与することを特徴とする。
【0033】
上記課題を解決するために、本発明の別の態様の繊維では、前記繊維用第1処理剤と、前記繊維用第2処理剤とが、付着していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば摩擦特性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】実施例欄における湿潤時摩擦の評価のための摩擦試験装置の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0036】
<第1実施形態>
以下、本発明の繊維用処理剤を具体化した第1実施形態を説明する。本実施形態の繊維用処理剤は、下記に示される成分(A)、下記に示される成分(B)、及び有機リン酸エステル化合物(C)を含有する。
【0037】
(成分(A))
成分(A)は、炭素数1~8の1価の脂肪族アルコール、炭素数1~8の1価の脂肪族アミン、炭素数1~12の2~4価の脂肪族アルコール、及び炭素数1~12の2~4価の脂肪族アミンから選ばれる少なくとも1つに対して、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドを付加させて得られるアルキレンオキサイド付加物である。かかる化合物により、摩擦特性、特に高温湿潤時の摩擦特性を向上させる。
【0038】
成分(A)を構成する1~4価の脂肪族アルコールは、公知のものが適宜挙げられ、飽和脂肪族アルコールであっても、不飽和脂肪族アルコールであってもよい。また、直鎖状のものであっても、分岐鎖構造を有するものであってもよい。また、1級アルコールでも2,3級アルコールであってもよい。
【0039】
1価の脂肪族アルコールの具体例としては、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール等が挙げられる。これらの中で摩擦特性向上の観点から炭素数1~6の1価の脂肪族アルコールが好ましい。
【0040】
2価の脂肪族アルコールの具体例としては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2-メチル-1,2-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、2,3-ジメチル-2,3-ブタンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、ウンデカンジオール、ドデカンジオール等が挙げられる。
【0041】
3~4価の脂肪族アルコールの具体例としては、例えばグリセリン、ジグリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、2-メチル-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール、1,2,3-ブタントリオール、1,2,4-ブタントリオール、エリスリトール、1,2,3-ペンタトリオール、1,2,4-ペンタトリオール等が挙げられる。
【0042】
成分(A)を構成する1~4価の脂肪族アミンは、公知のものが適宜挙げられ、飽和脂肪族アミンであっても、不飽和脂肪族アミンであってもよい。また、直鎖状のものであっても、分岐鎖構造を有するものであってもよい。また、1級アミンであっても、2,3級アミンであってもよい。
【0043】
1価の脂肪族アミンの具体例としては、例えばメチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、N-N-ジイソプロピルエチルアミン、ジブチルアミン、2-メチルブチルアミン等が挙げられる。これらの中で摩擦特性向上の観点から炭素数1~6の1価の脂肪族アミンが好ましい。
【0044】
2~4価の脂肪族アミンの具体例としては、例えばエチレンジアミン、プトレシン、スペルミジン等が挙げられる。
成分(A)を構成するエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドの付加モル数の下限は、適宜設定されるが、それぞれ好ましくは5モル以上、より好ましくは10モル以上、さらに好ましくは15モル以上である。かかる付加モル数の上限は、適宜設定されるが、それぞれ好ましくは250モル以下、より好ましくは200モル以下、さらに好ましくは150モル以下である。かかる数値範囲により、摩擦特性をより向上させる。上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。なお、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドの付加モル数は、仕込み原料中における脂肪族アルコール又は脂肪族アミン1モルに対するエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドのモル数を示す。エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドの付加形態は、ブロック付加、ランダム付加、及びブロック付加とランダム付加の組み合わせのいずれでもよく、特に制限はない。これらの中で摩擦特性をより向上させる観点から、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドをブロック共重合して形成されたものが好ましい。
【0045】
成分(A)中においてアルキレンオキサイド全体に占めるプロピレンオキサイドの質量割合は、適宜設定されるが、好ましくは60%以上95%以下である。かかる範囲に規定することにより、摩擦特性をより向上させる。
【0046】
成分(A)の質量平均分子量の下限は、適宜設定されるが、好ましくは500以上、より好ましくは800以上である。また、かかる質量平均分子量の上限は、適宜設定されるが、好ましくは10000以下、より好ましくは8000以下である。かかる範囲に規定することにより、摩擦特性をより向上できる。なお、質量平均分子量はゲル浸透クロマトグラフィー分析法(GPC)により、ポリスチレンを基準として測定できる。
【0047】
これらの成分(A)は、一種類の成分(A)を単独で使用してもよいし、又は二種以上の成分(A)を適宜組み合わせて使用してもよい。
(成分(B))
成分(B)は、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエステル、ポリオキシアルキレンアルケニルエステル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルアミノエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルアミノエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルアミノエーテルと無機酸との塩、及びポリオキシアルキレンアルケニルアミノエーテルと無機酸との塩から選ばれる少なくとも1つである。但し、前記成分(A)に該当するものは除かれる。
【0048】
成分(B)において、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエステル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルアミノエーテルを構成するアルキル基としては、特に制限はなく、例えば、直鎖状のアルキル基、分岐アルキル基が挙げられる。分岐アルキル基における分岐位置は、特に制限はなく、例えば、α位が分岐したアルキル基であってもよいし、β位が分岐したアルキル基であってもよい。
【0049】
アルキル基の炭素数は、特に限定されないが、炭素数1~30が好ましく、炭素数8~22がより好ましい。アルキル基の具体例としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、イコシル基、イソブチル基、イソペンチル基、イソヘキシル基、イソヘプチル基、イソオクチル基、イソデシル基、イソウンデシル基、イソドデシル基、イソトリデシル基、イソテトラデシル基、イソペンタデシル基、イソヘキサデシル基、イソヘプタデシル基、イソオクタデシル基、イソイコシル基等が挙げられる。
【0050】
成分(B)において、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエステル、ポリオキシアルキレンアルケニルアミノエーテルを構成するアルケニル基としては、特に制限はなく、例えば、直鎖状のアルケニル基、分岐アルケニル基が挙げられる。分岐アルケニル基における分岐位置は、特に制限はなく、例えば、α位が分岐したアルケニル基であってもよいし、β位が分岐したアルケニル基であってもよい。
【0051】
アルケニル基の炭素数は、特に限定されないが、炭素数1~30が好ましく、炭素数8~22がより好ましい。アルケニル基の具体例としては、例えばブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基、イコセニル基、イソブテニル基、イソペンテニル基、イソヘキセニル基、イソヘプテニル基、イソオクテニル基、イソノネニル基、イソデセニル基、イソウンデセニル基、イソドデセニル基、イソトリデセニル基、イソテトラデセニル基、イソペンタデセニル基、イソヘキサデセニル基、イソヘプタデセニル基、イソオクタデセニル基、イソイコセニル基等が挙げられる。
【0052】
成分(B)において、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエステル、ポリオキシアルキレンアルケニルエステル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルアミノエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルアミノエーテルを構成するアルキレンオキサイドの具体例としては、例えばエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等が挙げられる。アルキレンオキサイドの付加モル数の下限は、適宜設定されるが、好ましくは0.1モル以上、より好ましくは1モル以上、さらに好ましくは2モル以上である。かかる付加モル数の上限は、適宜設定されるが、好ましくは50モル以下、より好ましくは40モル以下、さらに好ましくは30モル以下である。かかる数値範囲により、摩擦特性をより向上させる。上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。なお、アルキレンオキサイドの付加モル数は、仕込み原料中における脂肪族アルコール、脂肪族カルボン酸、又は脂肪族アミン1モルに対するアルキレンオキサイドのモル数を示す。アルキレンオキサイドは、一種類のアルキレンオキサイドを単独で使用してもよいし、又は二種以上のアルキレンオキサイドを適宜組み合わせて使用してもよい。アルキレンオキサイドが2種類以上適用される場合、それらの付加形態は、ブロック付加、ランダム付加、及びブロック付加とランダム付加の組み合わせのいずれでもよく、特に制限はない。
【0053】
成分(B)において、ポリオキシアルキレンアルキルアミノエーテルと無機酸との塩、ポリオキシアルキレンアルケニルアミノエーテルと無機酸との塩を構成する無機酸塩としては、例えば塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩等が挙げられる。
【0054】
これらの成分(B)は、一種類の成分(B)を単独で使用してもよいし、又は二種以上の成分(B)を適宜組み合わせて使用してもよい。
(有機リン酸エステル化合物(C))
有機リン酸エステル化合物(C)としては、例えばアルキルリン酸エステル、アルケニルリン酸エステル、ポリオキシアルキレン基を有するアルキルリン酸エステル又はアルケニルリン酸エステル、それらの塩等が挙げられる。アルキルリン酸エステルを構成するアルキル基又はアルケニル基は、特に制限はなく、例えば、直鎖状であっても、分岐鎖構造を有するものでもよい。また、分岐鎖構造における分岐位置は、特に制限はなく、例えば、α位が分岐したものであってもよいし、β位が分岐したものであってもよい。
【0055】
アルキル基又はアルケニル基の炭素数は、特に限定されないが、炭素数1~30が好ましく、炭素数8~22がより好ましい。アルキル基又はアルケニル基の具体例としては、成分(B)欄で挙げたものを採用できる。
【0056】
有機リン酸エステル化合物(C)を構成するリン酸は、特に制限はなく、オルトリン酸であってもよいし、二リン酸等のポリリン酸であってもよい。
有機リン酸エステル化合物(C)として有機リン酸エステル塩が適用される場合、塩としては、例えばリン酸エステルアミン塩、リン酸エステル金属塩等が挙げられる。
【0057】
金属塩としては、例えばアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩が挙げられる。アルカリ金属塩を構成するアルカリ金属の具体例としては、例えばナトリウム、カリウム、リチウム等が挙げられる。アルカリ土類金属塩を構成するアルカリ土類金属としては、第2族元素に該当する金属、例えばカルシウム、マグネシウム、ベリリウム、ストロンチウム、バリウム等が挙げられる。
【0058】
アミン塩を構成するアミンは、1級アミン、2級アミン、及び3級アミンのいずれであってもよい。アミン塩を構成するアミンの具体例としては、例えば、(1)メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、N-N-ジイソプロピルエチルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、2-メチルブチルアミン、トリブチルアミン、オクチルアミン、ジメチルラウリルアミン等の脂肪族アミン、(2)アニリン、N-メチルベンジルアミン、ピリジン、モルホリン、ピペラジン、これらの誘導体等の芳香族アミン類又は複素環アミン、(3)モノエタノールアミン、N-メチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、イソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、ジブチルエタノールアミン、ブチルジエタノールアミン、オクチルジエタノールアミン、ラウリルジエタノールアミン等のアルカノールアミン、(4)N-メチルベンジルアミン等のアリールアミン、(5)ポリオキシエチレンラウリルアミノエーテル、ポリオキシエチレンステリルアミノエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルアミノエーテル、(6)アンモニア等が挙げられる。
【0059】
アルキレンオキサイド鎖を付加した有機リン酸エステル化合物が用いられる場合、炭素数2~4のアルキレンオキサイドが好ましい。アルキレンオキサイドの具体例としては、例えばエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等が挙げられる。アルキレンオキサイドの付加モル数の下限は、適宜設定されるが、好ましくは0.1モル以上、より好ましくは1モル以上、さらに好ましくは2モル以上である。かかる付加モル数の上限は、適宜設定されるが、好ましくは50モル以下、より好ましくは40モル以下、さらに好ましくは30モル以下である。かかる数値範囲により、摩擦特性をより向上させる。上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。なお、アルキレンオキサイドの付加モル数は、仕込み原料中における脂肪族アルコール化合物1モルに対するアルキレンオキサイドのモル数を示す。アルキレンオキサイドは、一種類のアルキレンオキサイドを単独で使用してもよいし、又は二種以上のアルキレンオキサイドを適宜組み合わせて使用してもよい。アルキレンオキサイドが2種類以上適用される場合、それらの付加形態は、ブロック付加、ランダム付加、及びブロック付加とランダム付加の組み合わせのいずれでもよく、特に制限はない。
【0060】
これらの成分(C)は、一種類の成分(C)を単独で使用してもよいし、又は二種以上の成分(C)を適宜組み合わせて使用してもよい。
これらの中で、有機リン酸エステル化合物(C)が、分子中に炭素数8~22の脂肪族アルコールから水酸基を除いた残基又は炭素数8~22の脂肪族アルコールに炭素数2~3のアルキレンオキサイドを付加したものから水酸基を除いた残基を有するアルキルリン酸エステル、及びその塩から選ばれる少なくとも1つを含むものが好ましい。かかる化合物を使用することにより、摩擦特性をより向上させる。
【0061】
また、繊維に良好な紡績性を付与する観点から、有機リン酸エステル化合物(C)は分子中に炭素数8~22の脂肪族アルコールから水酸基を除いた残基又は炭素数8~22の脂肪族アルコールに炭素数2~3のアルキレンオキサイドを付加したものから水酸基を除いた残基を有するアルキルリン酸エステルのアルカリ金属塩が好ましい。また、分子中に炭素数8~22の脂肪族アルコールから水酸基を除いた残基又は炭素数8~22の脂肪族アルコールに炭素数2~3のアルキレンオキサイドを付加したものから水酸基を除いた残基を有するアルキルリン酸エステルのカリウム金属塩がより好ましい。また、分子中に炭素数16~22の脂肪族アルコールから水酸基を除いた残基又は炭素数16~22の脂肪族アルコールに炭素数2~3のアルキレンオキサイドを付加したものから水酸基を除いた残基を有するアルキルリン酸エステルのカリウム塩がさらに好ましい。また、分子中に炭素数16~22の脂肪族アルコールから水酸基を除いた残基を有するアルキルリン酸エステルのカリウム塩が特に好ましい。
【0062】
(含有量)
繊維用処理剤中において、成分(A)、成分(B)、及び有機リン酸エステル化合物(C)の含有割合の合計を100質量%とすると、成分(A)を0.1質量%以上45質量%以下の割合で含有することが好ましく、0.1質量%以上23.5質量%以下の割合で含有することがより好ましい。かかる範囲に規定することにより繊維用処理剤が乳化状態の場合、乳化安定性を向上させながら、摩擦特性を向上できる。
【0063】
繊維用処理剤中において、成分(A)、成分(B)、及び有機リン酸エステル化合物(C)の含有割合の合計を100質量%とすると、成分(B)を10質量%以上95質量%以下の割合で含有することが好ましく、20質量%以上90質量%以下の割合で含有することがより好ましい。かかる範囲に規定することにより繊維用処理剤が乳化状態の場合、乳化安定性を向上させる。
【0064】
繊維用処理剤中において、成分(A)、成分(B)、及び有機リン酸エステル化合物(C)の含有割合の合計を100質量%とすると、有機リン酸エステル化合物(C)を1質量%以上80質量%以下の割合で含有することが好ましく、5質量%以上70質量%以下の割合で含有することがより好ましい。かかる範囲に規定することにより繊維用処理剤が制電性等の機能を有効に発揮できる。
【0065】
(保存形態)
繊維用処理剤は、保存時において成分(B)を含有する繊維用第1処理剤、及び有機リン酸エステル化合物(C)を含有する繊維用第2処理剤を含むように構成することが好ましい。成分(A)は、繊維用第1処理剤及び繊維用第2処理剤のいずれか一方又は両方に含有するように構成されることが好ましい。かかる構成とすることにより、特に使用時における繊維用処理剤の乳化性を向上させる。
【0066】
繊維用第1処理剤中における成分(B)及び成分(A)の含有割合の合計を100質量%とすると、成分(B)を50質量%以上100質量%以下、及び成分(A)を0質量%以上50質量%以下の割合で含有することが好ましい。また、繊維用第2処理剤中における有機リン酸エステル化合物(C)及び成分(A)の含有割合の合計を100質量%とすると、有機リン酸エステル化合物(C)を50質量%以上100質量%以下、及び成分(A)を0質量%以上50質量%以下の割合で含有することが好ましい。かかる範囲に規定することにより製剤安定性をより向上させる。
【0067】
上記実施形態の繊維用処理剤の作用及び効果について説明する。
(1-1)上記実施形態の繊維用処理剤では、所定のアルキレンオキサイド付加物である成分(A)、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル等の成分(B)、及び有機リン酸エステル化合物(C)を含有する。したがって、摩擦特性、特に高温湿潤時の摩擦特性を向上できる。例えば、短繊維等の製造においてトウシートの延伸工程で用いられる延伸工程用処理剤として適用される場合、繊維間摩擦を低減させ、トウが均一な厚さで薄く広げることができる。それにより、生産性、品質性を向上できる。
【0068】
(1-2)繊維用処理剤が、成分(B)を含有する繊維用第1処理剤、及び有機リン酸エステル化合物(C)を含有する繊維用第2処理剤を含み、繊維用第1処理剤及び繊維用第2処理剤のいずれか一方又は両方に成分(A)を含有する場合、特に使用時における繊維用処理剤の乳化性を向上させる。
【0069】
<第2実施形態>
次に、本発明の繊維用第1処理剤(以下、第1処理剤という)を具体化した第2実施形態を説明する。以下、第1実施形態との相違点を中心に説明する。
【0070】
本実施形態の第1処理剤では、成分(E)を含有する。成分(E)は、第1実施形態において説明した成分(B)と同一成分である。第1処理剤は、有機リン酸エステル化合物(F)を含有する繊維用第2処理剤(以下、第2処理剤という)と併用される。有機リン酸エステル化合物(F)は、第1実施形態において説明した有機リン酸エステル化合物(C)と同一である。第1処理剤及び第2処理剤のいずれか一方又は両方に成分(D)を更に含有する。成分(D)は、第1実施形態において説明した成分(A)と同一成分である。
【0071】
第1処理剤は、成分(E)及び成分(D)を含み、さらに成分(E)及び成分(D)の含有割合の合計を100質量%とすると、成分(E)を50質量%以上99.9質量%以下、及び成分(D)を0.1質量%以上50質量%以下の割合で含有することが好ましい。さらにその場合、成分(E)を70質量%以上99.9質量%以下、及び成分(D)を0.1質量%以上30質量%以下の割合で含有することがより好ましい。かかる構成により、第1処理剤の製剤安定性をより向上できる。
【0072】
第1処理剤は、成分(E)及び成分(D)を含み、且つ第2処理剤が有機リン酸エステル化合物(F)及び成分(D)を含む場合であっても、第1処理剤中における成分(E)及び成分(D)の含有割合の合計を100質量%とすると、成分(E)を50質量%以上99.9質量%以下、前記成分(D)を0.1質量%以上50質量%以下の割合で含有することが好ましい。さらにその場合、成分(E)を70質量%以上99.9質量%以下、及び成分(D)を0.1質量%以上30質量%以下の割合で含有することがより好ましい。かかる構成により、第1処理剤の製剤安定性をより向上できる。
【0073】
上記実施形態の第1処理剤の作用及び効果について説明する。本実施形態では、第1実施形態の効果に加えて、以下の効果を有する。
(2-1)上記実施形態の第1処理剤では、成分(E)を含有し、有機リン酸エステル化合物(F)を含有する第2処理剤と併用される。そして、第1処理剤及び第2処理剤のいずれか一方又は両方に成分(D)を更に含有する。したがって、第1処理剤の製剤安定性を向上できる。また、第2処理剤との混合比率を調整することにより、得られる繊維用処理剤の成分を調整できる。
【0074】
<第3実施形態>
次に、本発明の第2処理剤を具体化した第2実施形態を説明する。以下、第1,2実施形態との相違点を中心に説明する。
【0075】
本実施形態の第2処理剤は、上述した有機リン酸エステル化合物(F)を含有する。そして、第2実施形態の第1処理剤と併用される。また、第1処理剤及び第2処理剤のいずれか一方又は両方に上述した成分(D)を更に含有する。
【0076】
第2処理剤は、有機リン酸エステル化合物(F)及び成分(D)を含み、有機リン酸エステル化合物(F)及び成分(D)の含有割合の合計を100質量%とすると、有機リン酸エステル化合物(F)を50質量%以上99.9質量%以下、及び成分(D)を0.1質量%以上50質量%以下の割合で含有することが好ましい。さらにその場合、有機リン酸エステル化合物(F)を70質量%以上99.9質量%以下、及び成分(D)を0.1質量%以上30質量%以下の割合で含有することがより好ましい。かかる構成により、第2処理剤の製剤安定性をより向上できる。
【0077】
第2処理剤は、第1処理剤が成分(E)及び成分(D)を含み、且つ第2処理剤が有機リン酸エステル化合物(F)及び成分(D)を含む場合であっても、第2処理剤中における有機リン酸エステル化合物(F)及び成分(D)の含有割合の合計を100質量%とすると、有機リン酸エステル化合物(F)を50質量%以上99.9質量%以下、及び成分(D)を0.1質量%以上50質量%以下の割合で含有することが好ましい。さらにその場合、有機リン酸エステル化合物(F)を70質量%以上99.9質量%以下、及び成分(D)を0.1質量%以上30質量%以下の割合で含有することがより好ましい。かかる構成により、第2処理剤の製剤安定性をより向上できる。
【0078】
上記実施形態の第2処理剤の作用及び効果について説明する。本実施形態では、第1,2実施形態の効果に加えて、以下の効果を有する。
(3-1)上記実施形態の第2処理剤では、有機リン酸エステル化合物(F)を含有する。そして、第2実施形態の第1処理剤と併用される。また、第1処理剤及び第2処理剤のいずれか一方又は両方に上述した成分(D)を更に含有する。したがって、第2処理剤の製剤安定性を向上できる。また、第1処理剤との混合比率を調整することにより、得られる繊維用処理剤の成分を調整できる。
【0079】
<第4実施形態>
次に、本発明の繊維の処理方法を具体化した第4実施形態を説明する。
本実施形態の繊維の処理方法では、第1実施形態の繊維用処理剤及び水を含有する繊維用処理剤の水性液(以下、水性液ともいう)を繊維に付与することを特徴とする。
【0080】
水性液は、水に第2実施形態の第1処理剤と、第3実施形態の第2処理剤とを添加して調製することが好ましい。第1処理剤と第2処理剤とを併用する形態は、第1処理剤と第2処理剤の混合比率を任意に変更できる。そのため、製造設備の違い又は温湿度等の気候の違い等の製造条件が異なる条件下においても、配合比率を微調整して常に最適な紡糸延伸性を得るための繊維用処理剤又は水性液を調製することが容易になる。それにより安定した繊維製造が可能となる。第1処理剤と第2処理剤との含有割合の比は、不揮発分の質量比として第1処理剤と第2処理剤=1/9~9/1であることが好ましい。かかる範囲に規定されることにより、操作性を向上できる。繊維の処理方法は、上記のように得られた水性液を、例えば紡糸又は延伸工程、仕上げ工程等において繊維に付与する方法である。尚、不揮発分は、対象物を105℃で2時間熱処理して揮発性物質を十分に除去した絶乾物の質量から求められる(以下、同じ)。
【0081】
水性液の調製方法は、例えば水に、第1処理剤及び第2処理剤を添加し、不揮発分濃度を0.01質量%以上10質量%以下にする方法が用いられる。
水に、第1処理剤及び第2処理剤を添加する方法は、公知の方法を適宜採用できるが、下記の工程1及び下記の工程2を経ることが好ましい。かかる方法により、第1処理剤及び第2処理剤の混合物がエマルション形態の場合、エマルションの安定性をより向上できる。
【0082】
工程1は、第1の水に、第1処理剤及び第2処理剤を添加し、不揮発分濃度が2質量%超10質量%以下の繊維用処理剤の水性液の母液を調製する工程である。第1処理剤及び第2処理剤の第1の水への添加順は、特に限定されず、先に第1処理剤を水に添加し、次に第2処理剤を水に添加してもよく、先に第2処理剤を水に添加し、次に第1処理剤を水に添加してもよい。また、第1処理剤及び第2処理剤を同時に水に添加してもよい。また、希釈する水の温度は、特に限定されない。エマルジョンの安定性の向上の観点から、先に第2処理剤を第1の水に添加し、次に第1処理剤を第1の水に添加することが好ましい。
【0083】
さらに、工程1は、第1の水の全量のうち20~70質量%の水を60~95℃に加温し、第1処理剤及び第2処理剤を添加した後、40℃以下に調整された残り30~80質量%の第1の水を添加する工程を経ることが好ましい。かかる方法により、第1処理剤及び第2処理剤の混合物がエマルション形態の場合、エマルションの安定性をより向上できる。この場合も第1処理剤及び第2処理剤の水への添加順は、特に限定されず、先に第1処理剤を水に添加し、次に第2処理剤を水に添加してもよく、先に第2処理剤を水に添加し、次に第1処理剤を水に添加してもよい。また、第1処理剤及び第2処理剤を同時に水に添加してもよい。エマルジョンの安定性の向上の観点から、先に第2処理剤を第1の水に添加し、次に第1処理剤を第1の水に添加することが好ましい。
【0084】
また、工程1は、第1の水の全量のうち20~70質量%の水を60~95℃に加温し、第2処理剤を添加した後、40℃以下に調整された残り30~80質量%の第1の水を添加した後、最後に第1処理剤を添加する工程を経てもよい。かかる方法により、第1処理剤及び第2処理剤の混合物がエマルション形態の場合、エマルションの安定性をより向上できる。
【0085】
工程2は、工程1で調製した繊維用処理剤の水性液の母液に第2の水を添加し、不揮発分濃度が0.01質量%以上2質量%以下の水性液を調製する工程である。
水性液が付与される繊維の種類は、特に限定されない。繊維に付与された水性液により、最終的に繊維用処理剤が繊維表面を覆い、摩擦特性を向上させるからである。水性液が付与される繊維としては、合成繊維、天然繊維、再生繊維等が挙げられる。合成繊維の具体例としては、特に制限はなく、例えば(1)ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリトリメチレンテレフタラート、ポリブチレンテレフタラート、ポリエチレンナフタラート、ポリ乳酸、これらのポリエステル系樹脂を含有して成る複合繊維等のポリエステル系繊維、(2)ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド系繊維、(3)ポリアクリル、モダアクリル等のポリアクリル系繊維、(4)ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系繊維等が挙げられる。天然繊維又は再生繊維の具体例としては、例えば木綿繊維、晒し処理された木綿繊維、ビスコースレーヨン繊維、強力レーヨン繊維、高強力レーヨン繊維、高湿潤弾性レーヨン繊維、溶剤紡糸レーヨン繊維、ポリノジック繊維、キュプラ繊維、アセテート繊維等が挙げられる。これらの中で製造工程において、特に繊維間の摩擦特性の付与が必要なポリエステル又はポリオレフィンに適用されることが好ましい。
【0086】
繊維の用途は、特に限定されず、例えば短繊維、紡績糸、不織布等が挙げられる。短繊維及び長繊維のいずれの繊維用途としても適用できるが、短繊維に適用されることが好ましい。短繊維は、一般にステープルと呼ばれるものが該当し、一般にフィラメントと呼ばれる長繊維を含まないものとする。また、短繊維の長さは、本技術分野において短繊維に該当するものであれば特に限定されないが、例えば100mm以下であることが好ましい。これらの中で、ポリエステル短繊維に適用されることが好ましい。
【0087】
水性液を繊維に付着させる割合に特に制限はないが、水性液を繊維に対し、最終的に固形分が0.1~3質量%の割合となるよう付着させることが好ましい。かかる構成により、各成分による効能を有効に発揮できる。また、水性液を付着させる方法は、特に制限はなく、繊維の種類、形態、用途等により公知の方法、例えばローラー給油法、計量ポンプを用いたガイド給油法、浸漬給油法、スプレー給油法等を採用できる。
【0088】
水性液が付与された繊維は、公知の方法を用いて乾燥処理してもよい。乾燥処理により水等の溶媒が揮発され、第1処理剤及び第2処理剤中に含有される成分が付着している繊維が得られる。
【0089】
本実施形態の繊維の処理方法の作用及び効果について説明する。本実施形態では、第1~3実施形態の効果に加えて、以下の効果を有する。
(4-1)本実施形態の繊維の処理方法では、水性液を、例えば紡糸又は延伸工程、仕上げ工程等において繊維に付与する方法である。特に、水に第2実施形態の第1処理剤と、第3実施形態の第2処理剤とを添加して調製した水性液の場合、乳化安定性に優れる水性液が得られる。したがって、各成分による短繊維、紡績糸、不織布等に対する効能を有効に発揮できる。
【0090】
(4-2)本実施形態の繊維の処理方法における水性液の調製方法は、例えば水に、第1処理剤及び第2処理剤を添加し、不揮発分濃度を0.01質量%以上10質量%以下にする方法が用いられる。したがって、第1処理剤及び第2処理剤の混合物がエマルション形態の場合、エマルションの安定性を向上できる。また、予め調製された第1処理剤と第2処理剤を水に混合することにより、繊維付与形態である水性液を調製できるため、使用時に試薬から調合する方法に比べて水性液を簡易に調製できる。
【0091】
(4-3)また、水に、第1処理剤及び第2処理剤を添加し、不揮発分濃度が2質量%超10質量%以下の繊維用処理剤の水性液の母液を調製する工程を経る場合、エマルションの安定性をより向上できる。それにより、成分の繊維への均一な付着性を低下させることがなく、各成分による効能を有効に発揮できる。
【0092】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施できる。
・上記実施形態の各処理剤又は水性液には、本発明の効果を阻害しない範囲内において、処理剤又は水性液の品質保持のため、その他の溶媒、安定化剤、制電剤、つなぎ剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の通常処理剤等に用いられる成分をさらに配合してもよい。
【0093】
・成分(B)において、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテルのうち、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルは、環境特性の観点から繊維用処理剤中において、少量であることが好ましい。具体的には繊維用処理剤中において、1質量%以下であることが好ましく、実質的に含まないことがより好ましい。実質的に含まないとは、別途、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルを配合させることはしないという意味であり、各原料中に不純物等として含まれる少量のポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルまで除外するものではない。上記実施形態の繊維用処理剤の構成により、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルが少量である繊維用処理剤であっても、成分(A)により摩擦特性を向上できる。
【0094】
・上記実施形態において、アルコールと無水リン酸との反応で得られた有機リン酸エステル化合物(C)を使用する場合、副産物として無機リン酸が0.01~10質量%含まれている有機リン酸エステル化合物が適用されてもよい。公知の製造方法で得られた有機リン酸エステル化合物は、無機リン酸が例えば0.01~5質量%の割合で混入することがある。
【0095】
・上記実施形態の繊維の処理方法における水性液の調製方法について、水性液を調整する前記工程1及び工程2から選ばれる任意の工程において、さらにシリコーン組成物を加えることが、繊維製造時の消泡性、繊維の紡績性能向上等の観点から好ましい。シリコーン組成物の具体例としては、特に限定されないが、例えばポリジメチルシロキサン、ポリオキシエチレン変性シリコーン等が好ましい。シリコーン組成物を加える工程としては、水性液の安定性の観点から、工程2がより好ましい。
【実施例0096】
以下、本発明の構成及び効果をより具体的にするため、実施例等を挙げるが、本発明がこれらの実施例に限定されるというものではない。尚、以下の実施例及び比較例において、特に限定のない限り、部は質量部を、また%は質量%を意味する。
【0097】
試験区分1(繊維用処理剤の調製)
第1処理剤は、表1,2に示される各成分を使用し、下記調製方法により調製した。
・アルキレンオキサイド付加物(A)
アルキレンオキサイド付加物(A)は、表1に示されるA-1~14、a-1,2を使用した。アルキレンオキサイド付加物(A)を構成する脂肪族アルコールの種類、価数、及び炭素数、アルキレンオキサイド付加物(A)中のアルキレンオキサイド全体に占めるプロピレンオキサイド(PO)の質量比率(%)、アルキレンオキサイドの重合形態、並びに質量平均分子量を、表1の「出発物質」欄、「PO比率(質量%)」欄、「重合形態」欄、「質量平均分子量」欄にそれぞれ示す。
【0098】
・有機リン酸エステル化合物(C)
有機リン酸エステル化合物(C)は、表2に示されるC-1~10を使用した。C-9は、セチルアルコールとステアリルアルコールを3:7の比率で混合した原料を用いて、無水リン酸と反応させて製造した。C-10は、セチルアルコールとステアリルアルコールを7:3の比率で混合した原料を用いて、無水リン酸と反応させて製造した。有機リン酸エステル化合物(C)としてのアルキルリン酸エステルの種類、アルキルリン酸エステルを構成するモノエステル、ジエステル、ポリエステルの各含有比率(%)を、表2の「成分(C)」欄、「アルキルリン酸エステル中の成分の比率(%)」欄にそれぞれ示す。
【0099】
(実施例1)
表3に示されるように、アルキレンオキサイド付加物(A-1)7部(%)、(ポリオキシエチレン)(ポリオキシプロピレン)ランダム付加型(m=5、n=5、mはオキシエチレン単位の数、nはオキシプロピレン単位の数)ドデシルエーテル(Ba-4)15.75部(%)、ポリオキシエチレン(10モル(エチレンオキサイドの付加モル数)(以下同じ))ドデシルエーテル(Ba-5)15.75部(%)、ポリオキシエチレン(15モル)ドデシルアミン(Bc-5)31.5部(%)、有機リン酸エステル化合物(C)としてステアリルリン酸エステルカリウム塩(C-1)30部(%)を含む実施例1の繊維用処理剤を調製した。
【0100】
(実施例2~50、比較例1~3)
実施例2~50、比較例1~3の繊維用処理剤は、実施例1の繊維用処理剤と同様にして成分(A)~成分(C)を表3,4に示した割合で含むように調製した。比較例3は、成分(A)の代わりにポリエステル(X)としてテレフタル酸ジメチル1モルとジエチレングリコール1.3モルを縮合反応させ、この反応物とポリエチレングリコール(分子量3000)を縮合させたものを使用した。
【0101】
アルキレンオキサイド付加物(A)の種類と含有量、成分(B)の種類と含有量、有機リン酸エステル化合物(C)の種類と含有量を、表3,4の「成分(A)」欄、「成分(B)」欄、「成分(C)」欄にそれぞれ示す。
【0102】
【0103】
【0104】
【0105】
【表4】
表3,4に記載するアルキレンオキサイド付加物(B)又は後述する表5,6のアルキレンオキサイド付加物(E)の詳細は以下のとおりである。
【0106】
(アルキレンオキサイド付加物(B)(E))
Ba-1:(ポリオキシエチレン)(ポリオキシプロピレン)ランダム付加型(m=5、n=2、mはオキシエチレン単位の数、nはオキシプロピレン単位の数)デシルエ-テル
Ba-2:ポリオキシエチレン(6モル)デシルエーテル
Ba-3:(ポリオキシエチレン)(ポリオキシプロピレン)ブロック付加型(m=5、n=5、mはオキシエチレン単位の数、nはオキシプロピレン単位の数)イソデシルエーテル
Ba-4:(ポリオキシエチレン)(ポリオキシプロピレン)ランダム付加型(m=5、n=5、mはオキシエチレン単位の数、nはオキシプロピレン単位の数)ドデシルエーテル
Ba-5:ポリオキシエチレン(10モル)ドデシルエーテル
Ba-6:ポリオキシエチレン(15モル)ドデシルエーテル
Ba-7:ポリオキシエチレン(7モル)ドデシルエーテル
Ba-8:ポリオキシエチレン(9モル)ドデシルエーテル
Ba-9:(ポリオキシエチレン)(ポリオキシプロピレン)ランダム付加型(m=7、n=3、mはオキシエチレン単位の数、nはオキシプロピレン単位の数)C12-13アルキルエ-テル
Ba-10:(ポリオキシエチレン)(ポリオキシプロピレン)ランダム付加型(m=6、n=2、mはオキシエチレン単位の数、nはオキシプロピレン単位の数)C12-13アルキルエ-テル
Ba-11:ポリオキシエチレン(10モル)C12-13アルキルエーテル
Ba-12:ポリオキシエチレン(15モル)C12-13アルキルエーテル
Ba-13:ポリオキシエチレン(3モル)C12-14アルキルエーテル
Ba-14:(ポリオキシエチレン)(ポリオキシプロピレン)ブロック付加型(m=2、n=6、mはオキシエチレン単位の数、nはオキシプロピレン単位の数)トリデシルエーテル
Ba-15:ポリオキシエチレン(15モル)トリデシルエーテル
Ba-16:(ポリオキシエチレン)(ポリオキシプロピレン)ランダム付加型(m=6、n=2、mはオキシエチレン単位の数、nはオキシプロピレン単位の数)イソトリデシルエーテル
Ba-17:(ポリオキシエチレン)(ポリオキシプロピレン)ランダム付加型(m=8、n=4、mはオキシエチレン単位の数、nはオキシプロピレン単位の数)C11-14アルキルエ-テル
Ba-18:ポリオキシエチレン(10モル)C11-14アルキルエーテル
Ba-19:ポリオキシエチレン(10モル)オクタデシルエ-テル
Ba-20:ポリオキシエチレン(10モル)オレイルエ-テル
Ba-21:ポリオキシエチレン(5モル)オレイルエ-テル
Ba-22:ポリオキシエチレン(8モル)オレイルエ-テル
Ba-23:(ポリオキシエチレン)(ポリオキシプロピレン)ランダム付加型(m=10、n=10、mはオキシエチレン単位の数、nはオキシプロピレン単位の数)硬化ひまし油
Bb-1:ポリオキシエチレン(10モル)ラウリルエステル
Bb-2:ポリオキシエチレン(12モル)ラウリルエステル
Bb-3:ポリオキシエチレン(10モル)オレイルエステル
Bb-4:ヤシ脂肪酸-ポリオキシエチレン(10モル)
Bb-5:ヤシ脂肪酸-ポリオキシエチレン(7モル)
Bc-1:ポリオキシエチレン(4モル)ドデシルアミン
Bc-2:ポリオキシエチレン(10モル)ドデシルアミン
Bc-3:ポリオキシエチレン(10モル)ドデシルアミンと燐酸の塩
Bc-4:ポリオキシエチレン(12モル)ドデシルアミン
Bc-5:ポリオキシエチレン(15モル)ドデシルアミン
Bc-6:ポリオキシエチレン(5モル)オクタデシルアミン
Bc-7:ポリオキシエチレン(10モル)オクタデシルアミン
試験区分2(湿潤時摩擦の評価)
図1に示す摩擦試験装置10を用いて、以下のように湿潤時摩擦を評価した。
図1に示すように、所定の大きさの容器11内に、各例の繊維用処理剤の1%水性液12を満たした。フリーローラー13を、容器11内の繊維用処理剤の1%水性液12に浸るように配置し、フリーローラー14,15を容器11の上部に配置した。ポリエステルフィラメント16を、フリーローラー14,13,15の順に通した。ポリエステルフィラメント16は、フリーローラー13において180°以上の周回で巻かれ、水性液12中においてフリーローラー13の接触前後のポリエステルフィラメント16が接点17で接触するよう配置した。
【0107】
各実施例の1%水性液12について、
図1の状態でポリエステルフィラメント16を矢印A方向へ3m/分の速度で引っ張った。このときのフリーローラー14の上流部における張力T1及びフリーローラー15の下流部における張力T2を、25℃、65%RHに保たれた恒温室で、水性液12の温度を20±0.5℃にコントロールした条件下で測定した。なお、評価用の水性液12は、調製後、80℃で10時間保管後に評価温度まで冷却し、評価を実施した。
【0108】
評価は、各例の繊維用処理剤においてA成分を含まない場合に対してT2/T1が何%低減したかを求めた。例えば、比較例2の場合、B成分とC成分のみの組成で試験した場合のT2/T1の値をT0とする。A成分を含む比較例2の組成で試験した場合のT2/T1の値をTaとする。この場合、T0よりもTaの値の低減効果が10%未満であったため「×」の評価となる。式で表すと、(T0-Ta)/T0×100<10となる。結果を表3,4の「湿潤時摩擦」欄に示す。なお、比較例1は、乳化安定性が悪く、湿潤時摩擦及び後述する高温での湿潤時摩擦の試験を行うことができなかった。
【0109】
・湿潤時摩擦の評価基準
◎(良好):A成分を含まない場合に対してT2/T1が20%以上低減した場合
○(可):A成分を含まない場合に対してT2/T1が10%以上20%未満の範囲で低減した場合
×(不可):A成分を含まない場合に対して低減効果が10%未満の場合
試験区分3(高温湿潤時摩擦の評価)
湿潤時摩擦と同じ装置を使い、測定時の水性液の温度を60±0.5℃にコントロールした条件下で実施した以外、湿潤時摩擦と同様に評価した。結果を表3,4の「高温湿潤時摩擦」欄に示す。
【0110】
試験区分4(乳化性の評価)
各例の繊維用処理剤の5%水性液を調製した。その100gを200mL透明ポリ瓶に入れ蓋をして50℃で静置した。1晩経過後、外観を観察し、下記の条件に従って評価した。結果を表3,4の「乳化性」欄に示す。
【0111】
・乳化性の評価基準
◎(良好):透明で、分離や沈殿、濁りが無く、安定である場合
○(可):外観に濁りがあり、不透明ではあるが、分離や沈殿は起きておらず、安定である場合
×(不可):1晩経過後に沈殿がある場合
試験区分5(第1処理剤の調製)
(第1処理剤(I-1))
表5に示されるように、アルキレンオキサイド付加物(D)としてアルキレンオキサイド付加物(A-1)10部(%)、成分(E)として(ポリオキシエチレン)(ポリオキシプロピレン)ランダム付加型(m=5、n=5、mはオキシエチレン単位の数、nはオキシプロピレン単位の数)ドデシルエーテル(Ba-4)22.5部(%)、ポリオキシエチレン(10モル)ドデシルエーテル(Ba-5)22.5部(%)、ポリオキシエチレン(15モル)ドデシルアミン(Bc-5)45部(%)を含む第1処理剤(I-1)を調製した。
【0112】
(第1処理剤I-2~50、第1処理剤i-1~3)
第1処理剤I-2~50、第1処理剤i-1~3は、第1処理剤(I-1)と同様にしてアルキレンオキサイド付加物(D)、成分(E)を表5,6に示した割合で含むように調製した。第1処理剤i-3は、成分(D)の代わりに上述したポリエステル(X)を使用した。アルキレンオキサイド付加物(D)の種類と含有量、成分(E)の種類と含有量を、表5,6の「成分(D)」欄、「成分(E)」欄にそれぞれ示す。
【0113】
【0114】
【表6】
試験区分6(第2処理剤の調製)
(第2処理剤(II-1))
第2処理剤(II-1)は、表7に示される有機リン酸エステル化合物(F)としてステアリルリン酸エステルカリウム塩(C-1)100部(%)を含むようにした。
【0115】
(第2処理剤II-2~15)
第2処理剤II-2~15は、表7に示される有機リン酸エステル化合物(F)、必要によりアルキレンオキサイド付加物(D)を表7に示した割合で含むように調製した。アルキレンオキサイド付加物(D)の種類と含有量、有機リン酸エステル化合物(F)の種類と含有量を、表7の「成分(D)」欄、「成分(F)」欄にそれぞれ示す。
【0116】
【表7】
試験区分7(製剤安定性の評価)
上記第1処理剤又は第2処理剤を、25℃又は50℃にて1週間保管した。1週間経過後の外観を観察し、下記の基準に従って評価した。結果を表5~7の「製剤安定性」欄に示す。
【0117】
・製剤安定性の評価基準(第1剤)
◎(良好):外観透明で分離や増粘が起きていない場合
○(可):25℃において外観透明で、分離や増粘が起きていないが、50℃においては外観に濁りが生じる場合、又は分離や増粘が起きている場合
×(不可):25℃、50℃どちらの条件においても外観に濁りが生じる場合、又は分離や増粘が起きている場合
・製剤安定性の評価基準(第2剤)
◎(良好):分離や増粘が起きていない場合
○(可):25℃において分離や増粘が起きていないが、50℃においては分離や増粘が起きている場合
×(不可):25℃、50℃どちらの条件においても分離や増粘が起きている場合
試験区分8(第1処理剤と第2処理剤から繊維用処理剤の調製)
(実施例51)
表8に示される第1処理剤(I-1)70部、第2処理剤(II-1)30部、及び水を混合して実施例51の繊維用処理剤の水性液を調製した。
【0118】
(実施例52~100)
実施例51と同様にして、表8に示される第1処理剤と第2処理剤、及び実施例51と同じ割合の水とを混合して各例の繊維用処理剤の水性液を調製した。第1処理剤の種類と含有比率、第2処理剤の種類と含有比率を、表8の「第1処理剤」欄、「第2処理剤」欄にそれぞれ示す。
【0119】
得られた各例の繊維用処理剤を用いて、実施例1と同様に湿潤時摩擦、高温湿潤時摩擦、乳化性について評価した。結果を表8の「湿潤時摩擦」欄、「高温湿潤時摩擦」欄、「乳化性」欄にそれぞれ示す。
【0120】
【表8】
本発明の繊維用処理剤は、乳化性に優れ、また繊維用処理剤が付与された繊維は、湿潤時摩擦、高温湿潤時摩擦を向上させる効果が得られる。なお、各例の繊維用処理剤をポリオレフィンとしてポリプロピレン繊維にも適用できることを確認している。
【符号の説明】
【0121】
10…摩擦試験装置
11…容器
12…水性液
13,14,15…フリーローラー
16…ポリエステルフィラメント
17…接点
【手続補正書】
【提出日】2021-06-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の成分(A)、下記の成分(B)、及び有機リン酸エステル化合物(C)を含有する合成繊維用処理剤であって、前記合成繊維の用途は、短繊維であることを特徴とする合成繊維用処理剤。
成分(A):炭素数1~8の1価の脂肪族アルコール、炭素数1~8の1価の脂肪族アミン、炭素数1~12の2~4価の脂肪族アルコール、及び炭素数1~12の2~4価の脂肪族アミンから選ばれる少なくとも1つに対して、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドを付加させて得られるアルキレンオキサイド付加物。
成分(B):ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエステル、ポリオキシアルキレンアルケニルエステル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルアミノエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルアミノエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルアミノエーテルと無機酸との塩、及びポリオキシアルキレンアルケニルアミノエーテルと無機酸との塩から選ばれる少なくとも1つ(但し、前記成分(A)に該当するものを除く)。
【請求項2】
下記の成分(A)、下記の成分(B)、及び有機リン酸エステル化合物(C)を含有することを特徴とする合成繊維用処理剤。
成分(A):炭素数1~8の1価の脂肪族アルコール、炭素数1~8の1価の脂肪族アミン、炭素数1~12の2~4価の脂肪族アルコール、及び炭素数1~12の2~4価の脂肪族アミンから選ばれる少なくとも1つに対して、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドを付加させて得られるアルキレンオキサイド付加物であって、前記エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドをブロック共重合して形成されたもの。
成分(B):ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエステル、ポリオキシアルキレンアルケニルエステル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルアミノエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルアミノエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルアミノエーテルと無機酸との塩、及びポリオキシアルキレンアルケニルアミノエーテルと無機酸との塩から選ばれる少なくとも1つ(但し、前記成分(A)に該当するものを除く)。
【請求項3】
前記成分(A)、前記成分(B)、及び前記有機リン酸エステル化合物(C)の含有割合の合計を100質量%とすると、前記成分(A)を0.1質量%以上45質量%以下の割合で含有する請求項1又は2に記載の合成繊維用処理剤。
【請求項4】
前記成分(A)、前記成分(B)、及び前記有機リン酸エステル化合物(C)の含有割合の合計を100質量%とすると、前記成分(A)を0.1質量%以上23.5質量%以下の割合で含有する請求項1~3のいずれか一項に記載の合成繊維用処理剤。
【請求項5】
前記成分(B)を含有する合成繊維用第1処理剤、及び前記有機リン酸エステル化合物(C)を含有する合成繊維用第2処理剤を含み、前記合成繊維用第1処理剤及び前記合成繊維用第2処理剤のいずれか一方又は両方に前記成分(A)を含有する請求項1~4のいずれか一項に記載の合成繊維用処理剤。
【請求項6】
前記合成繊維用第1処理剤中における前記成分(B)及び前記成分(A)の含有割合の合計を100質量%とすると、前記成分(B)を50質量%以上100質量%以下、及び前記成分(A)を0質量%以上50質量%以下の割合で含有し、且つ前記合成繊維用第2処理剤中における前記有機リン酸エステル化合物(C)及び前記成分(A)の含有割合の合計を100質量%とすると、前記有機リン酸エステル化合物(C)を50質量%以上100質量%以下、及び前記成分(A)を0質量%以上50質量%以下の割合で含有する請求項5に記載の合成繊維用処理剤。
【請求項7】
前記成分(A)が、炭素数1~6の1価の脂肪族アルコール、炭素数1~6の1価の脂肪族アミン、炭素数1~12の2~4価の脂肪族アルコール、及び炭素数1~12の2~4価の脂肪族アミンから選ばれる少なくとも1つに対して、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドを付加させて得られるアルキレンオキサイド付加物である請求項1~6のいずれか一項に記載の合成繊維用処理剤。
【請求項8】
前記成分(A)のアルキレンオキサイド全体に占めるプロピレンオキサイドの質量割合が、60~95%である請求項1~7のいずれか一項に記載の合成繊維用処理剤。
【請求項9】
前記成分(A)が、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドをブロック共重合して形成されたものである請求項1に記載の合成繊維用処理剤。
【請求項10】
前記有機リン酸エステル化合物(C)が、分子中に炭素数8~22の脂肪族アルコールから水酸基を除いた残基又は炭素数8~22の脂肪族アルコールに炭素数2~3のアルキレンオキサイドを付加したものから水酸基を除いた残基を有するアルキルリン酸エステル、及びその塩から選ばれる少なくとも1つを含むものである請求項1~9のいずれか一項に記載の合成繊維用処理剤。
【請求項11】
前記合成繊維の用途は、ポリエステル短繊維である請求項1~10のいずれか一項に記載の合成繊維用処理剤。
【請求項12】
ポリエチレンテレフタラート繊維に適用される請求項1~10のいずれか一項に記載の合成繊維用処理剤。
【請求項13】
前記合成繊維の用途は、短繊維である請求項2に記載の合成繊維用処理剤。
【請求項14】
有機リン酸エステル化合物(F)を含有する合成繊維用第2処理剤と併用され、下記の成分(E)を含有する合成繊維用第1処理剤であって、前記合成繊維用第1処理剤及び前記合成繊維用第2処理剤のいずれか一方又は両方に下記成分(D)を更に含有する合成繊維用第1処理剤であって、前記合成繊維の用途は、短繊維であることを特徴とする合成繊維用第1処理剤。
成分(D):炭素数1~8の1価の脂肪族アルコール、炭素数1~8の1価の脂肪族アミン、炭素数1~12の2~4価の脂肪族アルコール、及び炭素数1~12の2~4価の脂肪族アミンから選ばれる少なくとも1つに対して、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドを付加させて得られるアルキレンオキサイド付加物。
成分(E):ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエステル、ポリオキシアルキレンアルケニルエステル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルアミノエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルアミノエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルアミノエーテルと無機酸との塩、及びポリオキシアルキレンアルケニルアミノエーテルと無機酸との塩から選ばれる少なくとも1つ(但し、前記成分(D)に該当するものを除く)。
【請求項15】
有機リン酸エステル化合物(F)を含有する合成繊維用第2処理剤と併用され、下記の成分(E)を含有する合成繊維用第1処理剤であって、前記合成繊維用第1処理剤及び前記合成繊維用第2処理剤のいずれか一方又は両方に下記成分(D)を更に含有することを特徴とする合成繊維用第1処理剤。
成分(D):炭素数1~8の1価の脂肪族アルコール、炭素数1~8の1価の脂肪族アミン、炭素数1~12の2~4価の脂肪族アルコール、及び炭素数1~12の2~4価の脂肪族アミンから選ばれる少なくとも1つに対して、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドを付加させて得られるアルキレンオキサイド付加物であって、前記エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドをブロック共重合して形成されたもの。
成分(E):ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエステル、ポリオキシアルキレンアルケニルエステル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルアミノエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルアミノエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルアミノエーテルと無機酸との塩、及びポリオキシアルキレンアルケニルアミノエーテルと無機酸との塩から選ばれる少なくとも1つ(但し、前記成分(D)に該当するものを除く)。
【請求項16】
前記合成繊維用第1処理剤が、前記成分(E)及び前記成分(D)を含み、
前記成分(E)及び前記成分(D)の含有割合の合計を100質量%とすると、前記成分(E)を50質量%以上99.9質量%以下、及び前記成分(D)を0.1質量%以上50質量%以下の割合で含有する請求項14又は15に記載の合成繊維用第1処理剤。
【請求項17】
前記成分(E)及び前記成分(D)の含有割合の合計を100質量%とすると、前記成分(E)を70質量%以上99.9質量%以下、及び前記成分(D)を0.1質量%以上30質量%以下の割合で含有する請求項16に記載の合成繊維用第1処理剤。
【請求項18】
前記合成繊維用第1処理剤が、前記成分(E)及び前記成分(D)を含み、且つ前記合成繊維用第2処理剤が前記有機リン酸エステル化合物(F)及び前記成分(D)を含み、
前記合成繊維用第1処理剤中における前記成分(E)及び前記成分(D)の含有割合の合計を100質量%とすると、前記成分(E)を50質量%以上99.9質量%以下、及び前記成分(D)を0.1質量%以上50質量%以下の割合で含有する請求項14又は15に記載の合成繊維用第1処理剤。
【請求項19】
前記合成繊維用第1処理剤中における前記成分(E)及び前記成分(D)の含有割合の合計を100質量%とすると、前記成分(E)を70質量%以上99.9質量%以下、及び前記成分(D)を0.1質量%以上30質量%以下の割合で含有する請求項18に記載の合成繊維用第1処理剤。
【請求項20】
下記の成分(E)を含有する合成繊維用第1処理剤と併用され、有機リン酸エステル化合物(F)を含有する合成繊維用第2処理剤であって、前記合成繊維用第1処理剤及び前記合成繊維用第2処理剤のいずれか一方又は両方に下記成分(D)を更に含有する合成繊維用第2処理剤であって、前記合成繊維の用途は、短繊維であることを特徴とする合成繊維用第2処理剤。
成分(D):炭素数1~8の1価の脂肪族アルコール、炭素数1~8の1価の脂肪族アミン、炭素数1~12の2~4価の脂肪族アルコール、及び炭素数1~12の2~4価の脂肪族アミンから選ばれる少なくとも1つに対して、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドを付加させて得られるアルキレンオキサイド付加物。
成分(E):ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエステル、ポリオキシアルキレンアルケニルエステル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルアミノエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルアミノエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルアミノエーテルと無機酸との塩、及びポリオキシアルキレンアルケニルアミノエーテルと無機酸との塩から選ばれる少なくとも1つ(但し、前記成分(D)に該当するものを除く)。
【請求項21】
下記の成分(E)を含有する合成繊維用第1処理剤と併用され、有機リン酸エステル化合物(F)を含有する合成繊維用第2処理剤であって、前記合成繊維用第1処理剤及び前記合成繊維用第2処理剤のいずれか一方又は両方に下記成分(D)を更に含有することを特徴とする合成繊維用第2処理剤。
成分(D):炭素数1~8の1価の脂肪族アルコール、炭素数1~8の1価の脂肪族アミン、炭素数1~12の2~4価の脂肪族アルコール、及び炭素数1~12の2~4価の脂肪族アミンから選ばれる少なくとも1つに対して、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドを付加させて得られるアルキレンオキサイド付加物であって、前記エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドをブロック共重合して形成されたもの。
成分(E):ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエステル、ポリオキシアルキレンアルケニルエステル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルアミノエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルアミノエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルアミノエーテルと無機酸との塩、及びポリオキシアルキレンアルケニルアミノエーテルと無機酸との塩から選ばれる少なくとも1つ(但し、前記成分(D)に該当するものを除く)。
【請求項22】
前記合成繊維用第2処理剤が、前記有機リン酸エステル化合物(F)及び前記成分(D)を含み、前記有機リン酸エステル化合物(F)及び前記成分(D)の含有割合の合計を100質量%とすると、前記有機リン酸エステル化合物(F)を50質量%以上99.9質量%以下、及び前記成分(D)を0.1質量%以上50質量%以下の割合で含有する請求項20又は21に記載の合成繊維用第2処理剤。
【請求項23】
前記有機リン酸エステル化合物(F)及び前記成分(D)の含有割合の合計を100質量%とすると、前記有機リン酸エステル化合物(F)を70質量%以上99.9質量%以下、及び前記成分(D)を0.1質量%以上30質量%以下の割合で含有する請求項22に記載の合成繊維用第2処理剤。
【請求項24】
前記合成繊維用第1処理剤が前記成分(E)及び前記成分(D)を含み、且つ前記合成繊維用第2処理剤が前記有機リン酸エステル化合物(F)及び前記成分(D)を含み、
前記合成繊維用第2処理剤中における前記有機リン酸エステル化合物(F)及び前記成分(D)の含有割合の合計を100質量%とすると、前記有機リン酸エステル化合物(F)を50質量%以上99.9質量%以下、及び前記成分(D)を0.1質量%以上50質量%以下の割合で含有する請求項20又は21に記載の合成繊維用第2処理剤。
【請求項25】
前記合成繊維用第2処理剤中における前記有機リン酸エステル化合物(F)及び前記成分(D)の含有割合の合計を100質量%とすると、前記有機リン酸エステル化合物(F)を70質量%以上99.9質量%以下、及び前記成分(D)を0.1質量%以上30質量%以下の割合で含有する請求項24に記載の合成繊維用第2処理剤。
【請求項26】
請求項1~13のいずれか一項に記載の合成繊維用処理剤、及び水を含有することを特徴とする合成繊維用処理剤の水性液。
【請求項27】
請求項14~19のいずれか一項に記載の合成繊維用第1処理剤と、請求項20~25のいずれか一項に記載の合成繊維用第2処理剤とを、含むことを特徴とする合成繊維用処理剤の水性液。
【請求項28】
前記合成繊維用第1処理剤と前記合成繊維用第2処理剤との含有割合の比が、不揮発分の質量比として前記合成繊維用第1処理剤と前記合成繊維用第2処理剤=1/9~9/1である請求項27に記載の合成繊維用処理剤の水性液。
【請求項29】
水に、請求項14~19のいずれか一項に記載の合成繊維用第1処理剤と、請求項20~25のいずれか一項に記載の合成繊維用第2処理剤とを添加して得られた合成繊維用処理剤の水性液を合成繊維に付与することを特徴とする合成繊維の処理方法。
【請求項30】
請求項14~19のいずれか一項に記載の合成繊維用第1処理剤と、請求項20~25のいずれか一項に記載の合成繊維用第2処理剤とが、付着していることを特徴とする合成繊維。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定のアルキレンオキサイド付加物を含有する合成繊維用処理剤、合成繊維用第1処理剤、合成繊維用第2処理剤、合成繊維用処理剤の水性液、合成繊維の処理方法、及び合成繊維に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば合成繊維の紡糸延伸工程、仕上げ工程等において、繊維の摩擦を低減させる観点から、繊維の表面に繊維用処理剤を付着させる処理が行われることがある。
従来、特許文献1に開示の繊維用油剤が知られている。特許文献1は、芳香族ジカルボン酸等の成分、多価アルコール類等の成分、及び分子量が600以上であるポリアルキレンオキシド等を縮合反応させ、得られるランダム又はブロック型ポリエステルを1質量%以上含む繊維用油剤について開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、摩擦特性、特に高温湿潤時の摩擦特性の更なる向上が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、前記の課題を解決するべく研究した結果、合成繊維用処理剤において、所定のアルキレンオキサイド付加物、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル等、及び有機リン酸エステル化合物を含有する構成が好適であることを見出した。
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の一態様の合成繊維用処理剤では、下記の成分(A)、下記の成分(B)、及び有機リン酸エステル化合物(C)を含有する合成繊維用処理剤であって、前記合成繊維の用途は、短繊維であることを特徴とする。
成分(A):炭素数1~8の1価の脂肪族アルコール、炭素数1~8の1価の脂肪族アミン、炭素数1~12の2~4価の脂肪族アルコール、及び炭素数1~12の2~4価の脂肪族アミンから選ばれる少なくとも1つに対して、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドを付加させて得られるアルキレンオキサイド付加物。
【0007】
成分(B):ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエステル、ポリオキシアルキレンアルケニルエステル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルアミノエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルアミノエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルアミノエーテルと無機酸との塩、及びポリオキシアルキレンアルケニルアミノエーテルと無機酸との塩から選ばれる少なくとも1つ(但し、前記成分(A)に該当するものを除く)。
上記課題を解決するために、本発明の一態様の合成繊維用処理剤では、下記の成分(A)、下記の成分(B)、及び有機リン酸エステル化合物(C)を含有することを特徴とする。
成分(A):炭素数1~8の1価の脂肪族アルコール、炭素数1~8の1価の脂肪族アミン、炭素数1~12の2~4価の脂肪族アルコール、及び炭素数1~12の2~4価の脂肪族アミンから選ばれる少なくとも1つに対して、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドを付加させて得られるアルキレンオキサイド付加物であって、前記エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドをブロック共重合して形成されたもの。
成分(B):ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエステル、ポリオキシアルキレンアルケニルエステル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルアミノエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルアミノエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルアミノエーテルと無機酸との塩、及びポリオキシアルキレンアルケニルアミノエーテルと無機酸との塩から選ばれる少なくとも1つ(但し、前記成分(A)に該当するものを除く)。
【0008】
前記合成繊維用処理剤において、前記成分(A)、前記成分(B)、及び前記有機リン酸エステル化合物(C)の含有割合の合計を100質量%とすると、前記成分(A)を0.1質量%以上45質量%以下の割合で含有してもよい。
【0009】
前記合成繊維用処理剤において、前記成分(A)、前記成分(B)、及び前記有機リン酸エステル化合物(C)の含有割合の合計を100質量%とすると、前記成分(A)を0.1質量%以上23.5質量%以下の割合で含有してもよい。
【0010】
前記合成繊維用処理剤において、前記成分(B)を含有する合成繊維用第1処理剤、及び前記有機リン酸エステル化合物(C)を含有する合成繊維用第2処理剤を含み、前記合成繊維用第1処理剤及び前記合成繊維用第2処理剤のいずれか一方又は両方に前記成分(A)を含有してもよい。
【0011】
前記合成繊維用処理剤において、前記合成繊維用第1処理剤中における前記成分(B)及び前記成分(A)の含有割合の合計を100質量%とすると、前記成分(B)を50質量%以上100質量%以下、及び前記成分(A)を0質量%以上50質量%以下の割合で含有し、且つ前記合成繊維用第2処理剤中における前記有機リン酸エステル化合物(C)及び前記成分(A)の含有割合の合計を100質量%とすると、前記有機リン酸エステル化合物(C)を50質量%以上100質量%以下、及び前記成分(A)を0質量%以上50質量%以下の割合で含有してもよい。
【0012】
前記合成繊維用処理剤において、前記成分(A)が、炭素数1~6の1価の脂肪族アルコール、炭素数1~6の1価の脂肪族アミン、炭素数1~12の2~4価の脂肪族アルコール、及び炭素数1~12の2~4価の脂肪族アミンから選ばれる少なくとも1つに対して、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドを付加させて得られるアルキレンオキサイド付加物であってもよい。
【0013】
前記合成繊維用処理剤において、前記成分(A)のアルキレンオキサイド全体に占めるプロピレンオキサイドの質量割合が、60%以上95%以下であってもよい。
前記合成繊維用処理剤において、前記成分(A)が、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドをブロック共重合して形成されたものであってもよい。
【0014】
前記合成繊維用処理剤において、前記有機リン酸エステル化合物(C)が、分子中に炭素数8~22の脂肪族アルコールから水酸基を除いた残基又は炭素数8~22の脂肪族アルコールに炭素数2~3のアルキレンオキサイドを付加したものから水酸基を除いた残基を有するアルキルリン酸エステル、及びその塩から選ばれる少なくとも1つを含むものであってもよい。
【0015】
前記合成繊維用処理剤において、前記合成繊維の用途は、ポリエステル短繊維であってもよい。
前記合成繊維用処理剤において、ポリエチレンテレフタラート繊維に適用されてもよい。
【0016】
前記合成繊維用処理剤において、前記合成繊維の用途は、短繊維であってもよい。
上記課題を解決するために、本発明の別の態様の合成繊維用第1処理剤では、有機リン酸エステル化合物(F)を含有する合成繊維用第2処理剤と併用され、下記の成分(E)を含有する合成繊維用第1処理剤であって、前記合成繊維用第1処理剤及び前記合成繊維用第2処理剤のいずれか一方又は両方に下記成分(D)を更に含有する合成繊維用第1処理剤であって、前記合成繊維の用途は、短繊維であることを特徴とする。
【0017】
成分(D):炭素数1~8の1価の脂肪族アルコール、炭素数1~8の1価の脂肪族アミン、炭素数1~12の2~4価の脂肪族アルコール、及び炭素数1~12の2~4価の脂肪族アミンから選ばれる少なくとも1つに対して、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドを付加させて得られるアルキレンオキサイド付加物。
【0018】
成分(E):ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエステル、ポリオキシアルキレンアルケニルエステル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルアミノエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルアミノエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルアミノエーテルと無機酸との塩、及びポリオキシアルキレンアルケニルアミノエーテルと無機酸との塩から選ばれる少なくとも1つ(但し、前記成分(D)に該当するものを除く)。
上記課題を解決するために、本発明の別の態様の合成繊維用第1処理剤では、有機リン酸エステル化合物(F)を含有する合成繊維用第2処理剤と併用され、下記の成分(E)を含有する合成繊維用第1処理剤であって、前記合成繊維用第1処理剤及び前記合成繊維用第2処理剤のいずれか一方又は両方に下記成分(D)を更に含有することを特徴とする。
成分(D):炭素数1~8の1価の脂肪族アルコール、炭素数1~8の1価の脂肪族アミン、炭素数1~12の2~4価の脂肪族アルコール、及び炭素数1~12の2~4価の脂肪族アミンから選ばれる少なくとも1つに対して、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドを付加させて得られるアルキレンオキサイド付加物であって、前記エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドをブロック共重合して形成されたもの。
成分(E):ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエステル、ポリオキシアルキレンアルケニルエステル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルアミノエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルアミノエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルアミノエーテルと無機酸との塩、及びポリオキシアルキレンアルケニルアミノエーテルと無機酸との塩から選ばれる少なくとも1つ(但し、前記成分(D)に該当するものを除く)。
【0019】
前記合成繊維用第1処理剤において、前記成分(E)及び前記成分(D)を含み、前記成分(E)及び前記成分(D)の含有割合の合計を100質量%とすると、前記成分(E)を50質量%以上99.9質量%以下、及び前記成分(D)を0.1質量%以上50質量%以下の割合で含有してもよい。
【0020】
前記合成繊維用第1処理剤において、前記成分(E)及び前記成分(D)の含有割合の合計を100質量%とすると、前記成分(E)を70質量%以上99.9質量%以下、及び前記成分(D)を0.1質量%以上30質量%以下の割合で含有してもよい。
【0021】
前記合成繊維用第1処理剤において、前記成分(E)及び前記成分(D)を含み、且つ前記合成繊維用第2処理剤が前記有機リン酸エステル化合物(F)及び前記成分(D)を含み、前記合成繊維用第1処理剤中における前記成分(E)及び前記成分(D)の含有割合の合計を100質量%とすると、前記成分(E)を50質量%以上99.9質量%以下、及び前記成分(D)を0.1質量%以上50質量%以下の割合で含有してもよい。
【0022】
前記合成繊維用第1処理剤において、前記合成繊維用第1処理剤中における前記成分(E)及び前記成分(D)の含有割合の合計を100質量%とすると、前記成分(E)を70質量%以上99.9質量%以下、及び前記成分(D)を0.1質量%以上30質量%以下の割合で含有してもよい。
【0023】
上記課題を解決するために、本発明の別の態様の合成繊維用第2処理剤では、下記の成分(E)を含有する合成繊維用第1処理剤と併用され、有機リン酸エステル化合物(F)を含有する合成繊維用第2処理剤であって、前記合成繊維用第1処理剤及び前記合成繊維用第2処理剤のいずれか一方又は両方に下記成分(D)を更に含有する合成繊維用第2処理剤であって、前記合成繊維の用途は、短繊維であることを特徴とする。
【0024】
成分(D):炭素数1~8の1価の脂肪族アルコール、炭素数1~8の1価の脂肪族アミン、炭素数1~12の2~4価の脂肪族アルコール、及び炭素数1~12の2~4価の脂肪族アミンから選ばれる少なくとも1つに対して、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドを付加させて得られるアルキレンオキサイド付加物。
【0025】
成分(E):ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエステル、ポリオキシアルキレンアルケニルエステル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルアミノエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルアミノエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルアミノエーテルと無機酸との塩、及びポリオキシアルキレンアルケニルアミノエーテルと無機酸との塩から選ばれる少なくとも1つ(但し、前記成分(D)に該当するものを除く)。
上記課題を解決するために、本発明の別の態様の合成繊維用第2処理剤では、下記の成分(E)を含有する合成繊維用第1処理剤と併用され、有機リン酸エステル化合物(F)を含有する合成繊維用第2処理剤であって、前記合成繊維用第1処理剤及び前記合成繊維用第2処理剤のいずれか一方又は両方に下記成分(D)を更に含有することを特徴とする。
成分(D):炭素数1~8の1価の脂肪族アルコール、炭素数1~8の1価の脂肪族アミン、炭素数1~12の2~4価の脂肪族アルコール、及び炭素数1~12の2~4価の脂肪族アミンから選ばれる少なくとも1つに対して、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドを付加させて得られるアルキレンオキサイド付加物であって、前記エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドをブロック共重合して形成されたもの。
成分(E):ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエステル、ポリオキシアルキレンアルケニルエステル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルアミノエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルアミノエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルアミノエーテルと無機酸との塩、及びポリオキシアルキレンアルケニルアミノエーテルと無機酸との塩から選ばれる少なくとも1つ(但し、前記成分(D)に該当するものを除く)。
【0026】
前記合成繊維用第2処理剤において、前記有機リン酸エステル化合物(F)及び前記成分(D)を含み、前記有機リン酸エステル化合物(F)及び前記成分(D)の含有割合の合計を100質量%とすると、前記有機リン酸エステル化合物(F)を50質量%以上99.9質量%以下、及び前記成分(D)を0.1質量%以上50質量%以下の割合で含有してもよい。
【0027】
前記合成繊維用第2処理剤において、前記有機リン酸エステル化合物(F)及び前記成分(D)の含有割合の合計を100質量%とすると、前記有機リン酸エステル化合物(F)を70質量%以上99.9質量%以下、及び前記成分(D)を0.1質量%以上30質量%以下の割合で含有してもよい。
【0028】
前記合成繊維用第2処理剤において、前記合成繊維用第1処理剤が前記成分(E)及び前記成分(D)を含み、且つ前記合成繊維用第2処理剤が前記有機リン酸エステル化合物(F)及び前記成分(D)を含み、前記合成繊維用第2処理剤中における前記有機リン酸エステル化合物(F)及び前記成分(D)の含有割合の合計を100質量%とすると、前記有機リン酸エステル化合物(F)を50質量%以上99.9質量%以下、及び前記成分(D)を0.1質量%以上50質量%以下の割合で含有してもよい。
【0029】
前記合成繊維用第2処理剤において、前記合成繊維用第2処理剤中における前記有機リン酸エステル化合物(F)及び前記成分(D)の含有割合の合計を100質量%とすると、前記有機リン酸エステル化合物(F)を70質量%以上99.9質量%以下、及び前記成分(D)を0.1質量%以上30質量%以下の割合で含有してもよい。
【0030】
上記課題を解決するために、本発明の別の態様の合成繊維用処理剤の水性液では、前記合成繊維用処理剤、及び水を含有することを特徴とする。
上記課題を解決するために、本発明の別の態様の合成繊維用処理剤の水性液では、前記合成繊維用第1処理剤と、前記合成繊維用第2処理剤とを、含むことを特徴とする。
【0031】
前記合成繊維用処理剤の水性液において、前記合成繊維用第1処理剤と前記合成繊維用第2処理剤との含有割合の比が、不揮発分の質量比として前記合成繊維用第1処理剤と前記合成繊維用第2処理剤=1/9~9/1であってもよい。
【0032】
上記課題を解決するために、本発明の別の態様の合成繊維の処理方法では、水に、前記合成繊維用第1処理剤と、前記合成繊維用第2処理剤とを添加して得られた合成繊維用処理剤の水性液を合成繊維に付与することを特徴とする。
【0033】
上記課題を解決するために、本発明の別の態様の合成繊維では、前記合成繊維用第1処理剤と、前記合成繊維用第2処理剤とが、付着していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば摩擦特性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】実施例欄における湿潤時摩擦の評価のための摩擦試験装置の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0036】
<第1実施形態>
以下、本発明の合成繊維用処理剤を具体化した第1実施形態を説明する。本実施形態の合成繊維用処理剤は、下記に示される成分(A)、下記に示される成分(B)、及び有機リン酸エステル化合物(C)を含有する。
【0037】
(成分(A))
成分(A)は、炭素数1~8の1価の脂肪族アルコール、炭素数1~8の1価の脂肪族アミン、炭素数1~12の2~4価の脂肪族アルコール、及び炭素数1~12の2~4価の脂肪族アミンから選ばれる少なくとも1つに対して、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドを付加させて得られるアルキレンオキサイド付加物である。かかる化合物により、摩擦特性、特に高温湿潤時の摩擦特性を向上させる。
【0038】
成分(A)を構成する1~4価の脂肪族アルコールは、公知のものが適宜挙げられ、飽和脂肪族アルコールであっても、不飽和脂肪族アルコールであってもよい。また、直鎖状のものであっても、分岐鎖構造を有するものであってもよい。また、1級アルコールでも2,3級アルコールであってもよい。
【0039】
1価の脂肪族アルコールの具体例としては、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール等が挙げられる。これらの中で摩擦特性向上の観点から炭素数1~6の1価の脂肪族アルコールが好ましい。
【0040】
2価の脂肪族アルコールの具体例としては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2-メチル-1,2-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、2,3-ジメチル-2,3-ブタンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、ウンデカンジオール、ドデカンジオール等が挙げられる。
【0041】
3~4価の脂肪族アルコールの具体例としては、例えばグリセリン、ジグリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、2-メチル-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール、1,2,3-ブタントリオール、1,2,4-ブタントリオール、エリスリトール、1,2,3-ペンタトリオール、1,2,4-ペンタトリオール等が挙げられる。
【0042】
成分(A)を構成する1~4価の脂肪族アミンは、公知のものが適宜挙げられ、飽和脂肪族アミンであっても、不飽和脂肪族アミンであってもよい。また、直鎖状のものであっても、分岐鎖構造を有するものであってもよい。また、1級アミンであっても、2,3級アミンであってもよい。
【0043】
1価の脂肪族アミンの具体例としては、例えばメチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、N-N-ジイソプロピルエチルアミン、ジブチルアミン、2-メチルブチルアミン等が挙げられる。これらの中で摩擦特性向上の観点から炭素数1~6の1価の脂肪族アミンが好ましい。
【0044】
2~4価の脂肪族アミンの具体例としては、例えばエチレンジアミン、プトレシン、スペルミジン等が挙げられる。
成分(A)を構成するエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドの付加モル数の下限は、適宜設定されるが、それぞれ好ましくは5モル以上、より好ましくは10モル以上、さらに好ましくは15モル以上である。かかる付加モル数の上限は、適宜設定されるが、それぞれ好ましくは250モル以下、より好ましくは200モル以下、さらに好ましくは150モル以下である。かかる数値範囲により、摩擦特性をより向上させる。上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。なお、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドの付加モル数は、仕込み原料中における脂肪族アルコール又は脂肪族アミン1モルに対するエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドのモル数を示す。エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドの付加形態は、ブロック付加、ランダム付加、及びブロック付加とランダム付加の組み合わせのいずれでもよく、特に制限はない。これらの中で摩擦特性をより向上させる観点から、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドをブロック共重合して形成されたものが好ましい。
【0045】
成分(A)中においてアルキレンオキサイド全体に占めるプロピレンオキサイドの質量割合は、適宜設定されるが、好ましくは60%以上95%以下である。かかる範囲に規定することにより、摩擦特性をより向上させる。
【0046】
成分(A)の質量平均分子量の下限は、適宜設定されるが、好ましくは500以上、より好ましくは800以上である。また、かかる質量平均分子量の上限は、適宜設定されるが、好ましくは10000以下、より好ましくは8000以下である。かかる範囲に規定することにより、摩擦特性をより向上できる。なお、質量平均分子量はゲル浸透クロマトグラフィー分析法(GPC)により、ポリスチレンを基準として測定できる。
【0047】
これらの成分(A)は、一種類の成分(A)を単独で使用してもよいし、又は二種以上の成分(A)を適宜組み合わせて使用してもよい。
(成分(B))
成分(B)は、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエステル、ポリオキシアルキレンアルケニルエステル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルアミノエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルアミノエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルアミノエーテルと無機酸との塩、及びポリオキシアルキレンアルケニルアミノエーテルと無機酸との塩から選ばれる少なくとも1つである。但し、前記成分(A)に該当するものは除かれる。
【0048】
成分(B)において、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエステル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルアミノエーテルを構成するアルキル基としては、特に制限はなく、例えば、直鎖状のアルキル基、分岐アルキル基が挙げられる。分岐アルキル基における分岐位置は、特に制限はなく、例えば、α位が分岐したアルキル基であってもよいし、β位が分岐したアルキル基であってもよい。
【0049】
アルキル基の炭素数は、特に限定されないが、炭素数1~30が好ましく、炭素数8~22がより好ましい。アルキル基の具体例としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、イコシル基、イソブチル基、イソペンチル基、イソヘキシル基、イソヘプチル基、イソオクチル基、イソデシル基、イソウンデシル基、イソドデシル基、イソトリデシル基、イソテトラデシル基、イソペンタデシル基、イソヘキサデシル基、イソヘプタデシル基、イソオクタデシル基、イソイコシル基等が挙げられる。
【0050】
成分(B)において、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエステル、ポリオキシアルキレンアルケニルアミノエーテルを構成するアルケニル基としては、特に制限はなく、例えば、直鎖状のアルケニル基、分岐アルケニル基が挙げられる。分岐アルケニル基における分岐位置は、特に制限はなく、例えば、α位が分岐したアルケニル基であってもよいし、β位が分岐したアルケニル基であってもよい。
【0051】
アルケニル基の炭素数は、特に限定されないが、炭素数1~30が好ましく、炭素数8~22がより好ましい。アルケニル基の具体例としては、例えばブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基、イコセニル基、イソブテニル基、イソペンテニル基、イソヘキセニル基、イソヘプテニル基、イソオクテニル基、イソノネニル基、イソデセニル基、イソウンデセニル基、イソドデセニル基、イソトリデセニル基、イソテトラデセニル基、イソペンタデセニル基、イソヘキサデセニル基、イソヘプタデセニル基、イソオクタデセニル基、イソイコセニル基等が挙げられる。
【0052】
成分(B)において、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエステル、ポリオキシアルキレンアルケニルエステル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルアミノエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルアミノエーテルを構成するアルキレンオキサイドの具体例としては、例えばエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等が挙げられる。アルキレンオキサイドの付加モル数の下限は、適宜設定されるが、好ましくは0.1モル以上、より好ましくは1モル以上、さらに好ましくは2モル以上である。かかる付加モル数の上限は、適宜設定されるが、好ましくは50モル以下、より好ましくは40モル以下、さらに好ましくは30モル以下である。かかる数値範囲により、摩擦特性をより向上させる。上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。なお、アルキレンオキサイドの付加モル数は、仕込み原料中における脂肪族アルコール、脂肪族カルボン酸、又は脂肪族アミン1モルに対するアルキレンオキサイドのモル数を示す。アルキレンオキサイドは、一種類のアルキレンオキサイドを単独で使用してもよいし、又は二種以上のアルキレンオキサイドを適宜組み合わせて使用してもよい。アルキレンオキサイドが2種類以上適用される場合、それらの付加形態は、ブロック付加、ランダム付加、及びブロック付加とランダム付加の組み合わせのいずれでもよく、特に制限はない。
【0053】
成分(B)において、ポリオキシアルキレンアルキルアミノエーテルと無機酸との塩、ポリオキシアルキレンアルケニルアミノエーテルと無機酸との塩を構成する無機酸塩としては、例えば塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩等が挙げられる。
【0054】
これらの成分(B)は、一種類の成分(B)を単独で使用してもよいし、又は二種以上の成分(B)を適宜組み合わせて使用してもよい。
(有機リン酸エステル化合物(C))
有機リン酸エステル化合物(C)としては、例えばアルキルリン酸エステル、アルケニルリン酸エステル、ポリオキシアルキレン基を有するアルキルリン酸エステル又はアルケニルリン酸エステル、それらの塩等が挙げられる。アルキルリン酸エステルを構成するアルキル基又はアルケニル基は、特に制限はなく、例えば、直鎖状であっても、分岐鎖構造を有するものでもよい。また、分岐鎖構造における分岐位置は、特に制限はなく、例えば、α位が分岐したものであってもよいし、β位が分岐したものであってもよい。
【0055】
アルキル基又はアルケニル基の炭素数は、特に限定されないが、炭素数1~30が好ましく、炭素数8~22がより好ましい。アルキル基又はアルケニル基の具体例としては、成分(B)欄で挙げたものを採用できる。
【0056】
有機リン酸エステル化合物(C)を構成するリン酸は、特に制限はなく、オルトリン酸であってもよいし、二リン酸等のポリリン酸であってもよい。
有機リン酸エステル化合物(C)として有機リン酸エステル塩が適用される場合、塩としては、例えばリン酸エステルアミン塩、リン酸エステル金属塩等が挙げられる。
【0057】
金属塩としては、例えばアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩が挙げられる。アルカリ金属塩を構成するアルカリ金属の具体例としては、例えばナトリウム、カリウム、リチウム等が挙げられる。アルカリ土類金属塩を構成するアルカリ土類金属としては、第2族元素に該当する金属、例えばカルシウム、マグネシウム、ベリリウム、ストロンチウム、バリウム等が挙げられる。
【0058】
アミン塩を構成するアミンは、1級アミン、2級アミン、及び3級アミンのいずれであってもよい。アミン塩を構成するアミンの具体例としては、例えば、(1)メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、N-N-ジイソプロピルエチルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、2-メチルブチルアミン、トリブチルアミン、オクチルアミン、ジメチルラウリルアミン等の脂肪族アミン、(2)アニリン、N-メチルベンジルアミン、ピリジン、モルホリン、ピペラジン、これらの誘導体等の芳香族アミン類又は複素環アミン、(3)モノエタノールアミン、N-メチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、イソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、ジブチルエタノールアミン、ブチルジエタノールアミン、オクチルジエタノールアミン、ラウリルジエタノールアミン等のアルカノールアミン、(4)N-メチルベンジルアミン等のアリールアミン、(5)ポリオキシエチレンラウリルアミノエーテル、ポリオキシエチレンステリルアミノエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルアミノエーテル、(6)アンモニア等が挙げられる。
【0059】
アルキレンオキサイド鎖を付加した有機リン酸エステル化合物が用いられる場合、炭素数2~4のアルキレンオキサイドが好ましい。アルキレンオキサイドの具体例としては、例えばエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等が挙げられる。アルキレンオキサイドの付加モル数の下限は、適宜設定されるが、好ましくは0.1モル以上、より好ましくは1モル以上、さらに好ましくは2モル以上である。かかる付加モル数の上限は、適宜設定されるが、好ましくは50モル以下、より好ましくは40モル以下、さらに好ましくは30モル以下である。かかる数値範囲により、摩擦特性をより向上させる。上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。なお、アルキレンオキサイドの付加モル数は、仕込み原料中における脂肪族アルコール化合物1モルに対するアルキレンオキサイドのモル数を示す。アルキレンオキサイドは、一種類のアルキレンオキサイドを単独で使用してもよいし、又は二種以上のアルキレンオキサイドを適宜組み合わせて使用してもよい。アルキレンオキサイドが2種類以上適用される場合、それらの付加形態は、ブロック付加、ランダム付加、及びブロック付加とランダム付加の組み合わせのいずれでもよく、特に制限はない。
【0060】
これらの成分(C)は、一種類の成分(C)を単独で使用してもよいし、又は二種以上の成分(C)を適宜組み合わせて使用してもよい。
これらの中で、有機リン酸エステル化合物(C)が、分子中に炭素数8~22の脂肪族アルコールから水酸基を除いた残基又は炭素数8~22の脂肪族アルコールに炭素数2~3のアルキレンオキサイドを付加したものから水酸基を除いた残基を有するアルキルリン酸エステル、及びその塩から選ばれる少なくとも1つを含むものが好ましい。かかる化合物を使用することにより、摩擦特性をより向上させる。
【0061】
また、繊維に良好な紡績性を付与する観点から、有機リン酸エステル化合物(C)は分子中に炭素数8~22の脂肪族アルコールから水酸基を除いた残基又は炭素数8~22の脂肪族アルコールに炭素数2~3のアルキレンオキサイドを付加したものから水酸基を除いた残基を有するアルキルリン酸エステルのアルカリ金属塩が好ましい。また、分子中に炭素数8~22の脂肪族アルコールから水酸基を除いた残基又は炭素数8~22の脂肪族アルコールに炭素数2~3のアルキレンオキサイドを付加したものから水酸基を除いた残基を有するアルキルリン酸エステルのカリウム金属塩がより好ましい。また、分子中に炭素数16~22の脂肪族アルコールから水酸基を除いた残基又は炭素数16~22の脂肪族アルコールに炭素数2~3のアルキレンオキサイドを付加したものから水酸基を除いた残基を有するアルキルリン酸エステルのカリウム塩がさらに好ましい。また、分子中に炭素数16~22の脂肪族アルコールから水酸基を除いた残基を有するアルキルリン酸エステルのカリウム塩が特に好ましい。
【0062】
(含有量)
合成繊維用処理剤中において、成分(A)、成分(B)、及び有機リン酸エステル化合物(C)の含有割合の合計を100質量%とすると、成分(A)を0.1質量%以上45質量%以下の割合で含有することが好ましく、0.1質量%以上23.5質量%以下の割合で含有することがより好ましい。かかる範囲に規定することにより合成繊維用処理剤が乳化状態の場合、乳化安定性を向上させながら、摩擦特性を向上できる。
【0063】
合成繊維用処理剤中において、成分(A)、成分(B)、及び有機リン酸エステル化合物(C)の含有割合の合計を100質量%とすると、成分(B)を10質量%以上95質量%以下の割合で含有することが好ましく、20質量%以上90質量%以下の割合で含有することがより好ましい。かかる範囲に規定することにより合成繊維用処理剤が乳化状態の場合、乳化安定性を向上させる。
【0064】
合成繊維用処理剤中において、成分(A)、成分(B)、及び有機リン酸エステル化合物(C)の含有割合の合計を100質量%とすると、有機リン酸エステル化合物(C)を1質量%以上80質量%以下の割合で含有することが好ましく、5質量%以上70質量%以下の割合で含有することがより好ましい。かかる範囲に規定することにより合成繊維用処理剤が制電性等の機能を有効に発揮できる。
【0065】
(保存形態)
合成繊維用処理剤は、保存時において成分(B)を含有する合成繊維用第1処理剤、及び有機リン酸エステル化合物(C)を含有する合成繊維用第2処理剤を含むように構成することが好ましい。成分(A)は、合成繊維用第1処理剤及び合成繊維用第2処理剤のいずれか一方又は両方に含有するように構成されることが好ましい。かかる構成とすることにより、特に使用時における合成繊維用処理剤の乳化性を向上させる。
【0066】
合成繊維用第1処理剤中における成分(B)及び成分(A)の含有割合の合計を100質量%とすると、成分(B)を50質量%以上100質量%以下、及び成分(A)を0質量%以上50質量%以下の割合で含有することが好ましい。また、合成繊維用第2処理剤中における有機リン酸エステル化合物(C)及び成分(A)の含有割合の合計を100質量%とすると、有機リン酸エステル化合物(C)を50質量%以上100質量%以下、及び成分(A)を0質量%以上50質量%以下の割合で含有することが好ましい。かかる範囲に規定することにより製剤安定性をより向上させる。
【0067】
上記実施形態の合成繊維用処理剤の作用及び効果について説明する。
(1-1)上記実施形態の合成繊維用処理剤では、所定のアルキレンオキサイド付加物である成分(A)、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル等の成分(B)、及び有機リン酸エステル化合物(C)を含有する。したがって、摩擦特性、特に高温湿潤時の摩擦特性を向上できる。例えば、短繊維等の製造においてトウシートの延伸工程で用いられる延伸工程用処理剤として適用される場合、繊維間摩擦を低減させ、トウが均一な厚さで薄く広げることができる。それにより、生産性、品質性を向上できる。
【0068】
(1-2)合成繊維用処理剤が、成分(B)を含有する合成繊維用第1処理剤、及び有機リン酸エステル化合物(C)を含有する合成繊維用第2処理剤を含み、合成繊維用第1処理剤及び合成繊維用第2処理剤のいずれか一方又は両方に成分(A)を含有する場合、特に使用時における合成繊維用処理剤の乳化性を向上させる。
【0069】
<第2実施形態>
次に、本発明の合成繊維用第1処理剤(以下、第1処理剤という)を具体化した第2実施形態を説明する。以下、第1実施形態との相違点を中心に説明する。
【0070】
本実施形態の第1処理剤では、成分(E)を含有する。成分(E)は、第1実施形態において説明した成分(B)と同一成分である。第1処理剤は、有機リン酸エステル化合物(F)を含有する合成繊維用第2処理剤(以下、第2処理剤という)と併用される。有機リン酸エステル化合物(F)は、第1実施形態において説明した有機リン酸エステル化合物(C)と同一である。第1処理剤及び第2処理剤のいずれか一方又は両方に成分(D)を更に含有する。成分(D)は、第1実施形態において説明した成分(A)と同一成分である。
【0071】
第1処理剤は、成分(E)及び成分(D)を含み、さらに成分(E)及び成分(D)の含有割合の合計を100質量%とすると、成分(E)を50質量%以上99.9質量%以下、及び成分(D)を0.1質量%以上50質量%以下の割合で含有することが好ましい。さらにその場合、成分(E)を70質量%以上99.9質量%以下、及び成分(D)を0.1質量%以上30質量%以下の割合で含有することがより好ましい。かかる構成により、第1処理剤の製剤安定性をより向上できる。
【0072】
第1処理剤は、成分(E)及び成分(D)を含み、且つ第2処理剤が有機リン酸エステル化合物(F)及び成分(D)を含む場合であっても、第1処理剤中における成分(E)及び成分(D)の含有割合の合計を100質量%とすると、成分(E)を50質量%以上99.9質量%以下、前記成分(D)を0.1質量%以上50質量%以下の割合で含有することが好ましい。さらにその場合、成分(E)を70質量%以上99.9質量%以下、及び成分(D)を0.1質量%以上30質量%以下の割合で含有することがより好ましい。かかる構成により、第1処理剤の製剤安定性をより向上できる。
【0073】
上記実施形態の第1処理剤の作用及び効果について説明する。本実施形態では、第1実施形態の効果に加えて、以下の効果を有する。
(2-1)上記実施形態の第1処理剤では、成分(E)を含有し、有機リン酸エステル化合物(F)を含有する第2処理剤と併用される。そして、第1処理剤及び第2処理剤のいずれか一方又は両方に成分(D)を更に含有する。したがって、第1処理剤の製剤安定性を向上できる。また、第2処理剤との混合比率を調整することにより、得られる合成繊維用処理剤の成分を調整できる。
【0074】
<第3実施形態>
次に、本発明の第2処理剤を具体化した第2実施形態を説明する。以下、第1,2実施形態との相違点を中心に説明する。
【0075】
本実施形態の第2処理剤は、上述した有機リン酸エステル化合物(F)を含有する。そして、第2実施形態の第1処理剤と併用される。また、第1処理剤及び第2処理剤のいずれか一方又は両方に上述した成分(D)を更に含有する。
【0076】
第2処理剤は、有機リン酸エステル化合物(F)及び成分(D)を含み、有機リン酸エステル化合物(F)及び成分(D)の含有割合の合計を100質量%とすると、有機リン酸エステル化合物(F)を50質量%以上99.9質量%以下、及び成分(D)を0.1質量%以上50質量%以下の割合で含有することが好ましい。さらにその場合、有機リン酸エステル化合物(F)を70質量%以上99.9質量%以下、及び成分(D)を0.1質量%以上30質量%以下の割合で含有することがより好ましい。かかる構成により、第2処理剤の製剤安定性をより向上できる。
【0077】
第2処理剤は、第1処理剤が成分(E)及び成分(D)を含み、且つ第2処理剤が有機リン酸エステル化合物(F)及び成分(D)を含む場合であっても、第2処理剤中における有機リン酸エステル化合物(F)及び成分(D)の含有割合の合計を100質量%とすると、有機リン酸エステル化合物(F)を50質量%以上99.9質量%以下、及び成分(D)を0.1質量%以上50質量%以下の割合で含有することが好ましい。さらにその場合、有機リン酸エステル化合物(F)を70質量%以上99.9質量%以下、及び成分(D)を0.1質量%以上30質量%以下の割合で含有することがより好ましい。かかる構成により、第2処理剤の製剤安定性をより向上できる。
【0078】
上記実施形態の第2処理剤の作用及び効果について説明する。本実施形態では、第1,2実施形態の効果に加えて、以下の効果を有する。
(3-1)上記実施形態の第2処理剤では、有機リン酸エステル化合物(F)を含有する。そして、第2実施形態の第1処理剤と併用される。また、第1処理剤及び第2処理剤のいずれか一方又は両方に上述した成分(D)を更に含有する。したがって、第2処理剤の製剤安定性を向上できる。また、第1処理剤との混合比率を調整することにより、得られる合成繊維用処理剤の成分を調整できる。
【0079】
<第4実施形態>
次に、本発明の合成繊維の処理方法を具体化した第4実施形態を説明する。
本実施形態の合成繊維の処理方法では、第1実施形態の合成繊維用処理剤及び水を含有する合成繊維用処理剤の水性液(以下、水性液ともいう)を合成繊維に付与することを特徴とする。
【0080】
水性液は、水に第2実施形態の第1処理剤と、第3実施形態の第2処理剤とを添加して調製することが好ましい。第1処理剤と第2処理剤とを併用する形態は、第1処理剤と第2処理剤の混合比率を任意に変更できる。そのため、製造設備の違い又は温湿度等の気候の違い等の製造条件が異なる条件下においても、配合比率を微調整して常に最適な紡糸延伸性を得るための合成繊維用処理剤又は水性液を調製することが容易になる。それにより安定した繊維製造が可能となる。第1処理剤と第2処理剤との含有割合の比は、不揮発分の質量比として第1処理剤と第2処理剤=1/9~9/1であることが好ましい。かかる範囲に規定されることにより、操作性を向上できる。合成繊維の処理方法は、上記のように得られた水性液を、例えば紡糸又は延伸工程、仕上げ工程等において合成繊維に付与する方法である。尚、不揮発分は、対象物を105℃で2時間熱処理して揮発性物質を十分に除去した絶乾物の質量から求められる(以下、同じ)。
【0081】
水性液の調製方法は、例えば水に、第1処理剤及び第2処理剤を添加し、不揮発分濃度を0.01質量%以上10質量%以下にする方法が用いられる。
水に、第1処理剤及び第2処理剤を添加する方法は、公知の方法を適宜採用できるが、下記の工程1及び下記の工程2を経ることが好ましい。かかる方法により、第1処理剤及び第2処理剤の混合物がエマルション形態の場合、エマルションの安定性をより向上できる。
【0082】
工程1は、第1の水に、第1処理剤及び第2処理剤を添加し、不揮発分濃度が2質量%超10質量%以下の合成繊維用処理剤の水性液の母液を調製する工程である。第1処理剤及び第2処理剤の第1の水への添加順は、特に限定されず、先に第1処理剤を水に添加し、次に第2処理剤を水に添加してもよく、先に第2処理剤を水に添加し、次に第1処理剤を水に添加してもよい。また、第1処理剤及び第2処理剤を同時に水に添加してもよい。また、希釈する水の温度は、特に限定されない。エマルジョンの安定性の向上の観点から、先に第2処理剤を第1の水に添加し、次に第1処理剤を第1の水に添加することが好ましい。
【0083】
さらに、工程1は、第1の水の全量のうち20~70質量%の水を60~95℃に加温し、第1処理剤及び第2処理剤を添加した後、40℃以下に調整された残り30~80質量%の第1の水を添加する工程を経ることが好ましい。かかる方法により、第1処理剤及び第2処理剤の混合物がエマルション形態の場合、エマルションの安定性をより向上できる。この場合も第1処理剤及び第2処理剤の水への添加順は、特に限定されず、先に第1処理剤を水に添加し、次に第2処理剤を水に添加してもよく、先に第2処理剤を水に添加し、次に第1処理剤を水に添加してもよい。また、第1処理剤及び第2処理剤を同時に水に添加してもよい。エマルジョンの安定性の向上の観点から、先に第2処理剤を第1の水に添加し、次に第1処理剤を第1の水に添加することが好ましい。
【0084】
また、工程1は、第1の水の全量のうち20~70質量%の水を60~95℃に加温し、第2処理剤を添加した後、40℃以下に調整された残り30~80質量%の第1の水を添加した後、最後に第1処理剤を添加する工程を経てもよい。かかる方法により、第1処理剤及び第2処理剤の混合物がエマルション形態の場合、エマルションの安定性をより向上できる。
【0085】
工程2は、工程1で調製した合成繊維用処理剤の水性液の母液に第2の水を添加し、不揮発分濃度が0.01質量%以上2質量%以下の水性液を調製する工程である。
水性液が付与される合成繊維の種類は、特に限定されない。合成繊維に付与された水性液により、最終的に合成繊維用処理剤が合成繊維表面を覆い、摩擦特性を向上させるからである。合成繊維の具体例としては、特に制限はなく、例えば(1)ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリトリメチレンテレフタラート、ポリブチレンテレフタラート、ポリエチレンナフタラート、ポリ乳酸、これらのポリエステル系樹脂を含有して成る複合繊維等のポリエステル系繊維、(2)ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド系繊維、(3)ポリアクリル、モダアクリル等のポリアクリル系繊維、(4)ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系繊維等が挙げられる。なお、天然繊維、再生繊維等は、以下参考例とする。天然繊維又は再生繊維の具体例としては、例えば木綿繊維、晒し処理された木綿繊維、ビスコースレーヨン繊維、強力レーヨン繊維、高強力レーヨン繊維、高湿潤弾性レーヨン繊維、溶剤紡糸レーヨン繊維、ポリノジック繊維、キュプラ繊維、アセテート繊維等が挙げられる。これらの中で製造工程において、特に繊維間の摩擦特性の付与が必要なポリエステル又はポリオレフィンに適用されることが好ましい。
【0086】
繊維の用途は、特に限定されず、例えば短繊維、紡績糸、不織布等が挙げられる。短繊維及び長繊維のいずれの繊維用途としても適用できるが、短繊維に適用されることが好ましい。短繊維は、一般にステープルと呼ばれるものが該当し、一般にフィラメントと呼ばれる長繊維を含まないものとする。また、短繊維の長さは、本技術分野において短繊維に該当するものであれば特に限定されないが、例えば100mm以下であることが好ましい。これらの中で、ポリエステル短繊維に適用されることが好ましい。
【0087】
水性液を合成繊維に付着させる割合に特に制限はないが、水性液を合成繊維に対し、最終的に固形分が0.1~3質量%の割合となるよう付着させることが好ましい。かかる構成により、各成分による効能を有効に発揮できる。また、水性液を付着させる方法は、特に制限はなく、合成繊維の種類、形態、用途等により公知の方法、例えばローラー給油法、計量ポンプを用いたガイド給油法、浸漬給油法、スプレー給油法等を採用できる。
【0088】
水性液が付与された合成繊維は、公知の方法を用いて乾燥処理してもよい。乾燥処理により水等の溶媒が揮発され、第1処理剤及び第2処理剤中に含有される成分が付着している合成繊維が得られる。
【0089】
本実施形態の合成繊維の処理方法の作用及び効果について説明する。本実施形態では、第1~3実施形態の効果に加えて、以下の効果を有する。
(4-1)本実施形態の合成繊維の処理方法では、水性液を、例えば紡糸又は延伸工程、仕上げ工程等において合成繊維に付与する方法である。特に、水に第2実施形態の第1処理剤と、第3実施形態の第2処理剤とを添加して調製した水性液の場合、乳化安定性に優れる水性液が得られる。したがって、各成分による短繊維、紡績糸、不織布等に対する効能を有効に発揮できる。
【0090】
(4-2)本実施形態の合成繊維の処理方法における水性液の調製方法は、例えば水に、第1処理剤及び第2処理剤を添加し、不揮発分濃度を0.01質量%以上10質量%以下にする方法が用いられる。したがって、第1処理剤及び第2処理剤の混合物がエマルション形態の場合、エマルションの安定性を向上できる。また、予め調製された第1処理剤と第2処理剤を水に混合することにより、繊維付与形態である水性液を調製できるため、使用時に試薬から調合する方法に比べて水性液を簡易に調製できる。
【0091】
(4-3)また、水に、第1処理剤及び第2処理剤を添加し、不揮発分濃度が2質量%超10質量%以下の合成繊維用処理剤の水性液の母液を調製する工程を経る場合、エマルションの安定性をより向上できる。それにより、成分の繊維への均一な付着性を低下させることがなく、各成分による効能を有効に発揮できる。
【0092】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施できる。
・上記実施形態の各処理剤又は水性液には、本発明の効果を阻害しない範囲内において、処理剤又は水性液の品質保持のため、その他の溶媒、安定化剤、制電剤、つなぎ剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の通常処理剤等に用いられる成分をさらに配合してもよい。
【0093】
・成分(B)において、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテルのうち、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルは、環境特性の観点から合成繊維用処理剤中において、少量であることが好ましい。具体的には合成繊維用処理剤中において、1質量%以下であることが好ましく、実質的に含まないことがより好ましい。実質的に含まないとは、別途、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルを配合させることはしないという意味であり、各原料中に不純物等として含まれる少量のポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルまで除外するものではない。上記実施形態の合成繊維用処理剤の構成により、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルが少量である合成繊維用処理剤であっても、成分(A)により摩擦特性を向上できる。
【0094】
・上記実施形態において、アルコールと無水リン酸との反応で得られた有機リン酸エステル化合物(C)を使用する場合、副産物として無機リン酸が0.01~10質量%含まれている有機リン酸エステル化合物が適用されてもよい。公知の製造方法で得られた有機リン酸エステル化合物は、無機リン酸が例えば0.01~5質量%の割合で混入することがある。
【0095】
・上記実施形態の合成繊維の処理方法における水性液の調製方法について、水性液を調整する前記工程1及び工程2から選ばれる任意の工程において、さらにシリコーン組成物を加えることが、繊維製造時の消泡性、繊維の紡績性能向上等の観点から好ましい。シリコーン組成物の具体例としては、特に限定されないが、例えばポリジメチルシロキサン、ポリオキシエチレン変性シリコーン等が好ましい。シリコーン組成物を加える工程としては、水性液の安定性の観点から、工程2がより好ましい。
【実施例0096】
以下、本発明の構成及び効果をより具体的にするため、実施例等を挙げるが、本発明がこれらの実施例に限定されるというものではない。尚、以下の実施例及び比較例において、特に限定のない限り、部は質量部を、また%は質量%を意味する。
【0097】
試験区分1(合成繊維用処理剤の調製)
第1処理剤は、表1,2に示される各成分を使用し、下記調製方法により調製した。
・アルキレンオキサイド付加物(A)
アルキレンオキサイド付加物(A)は、表1に示されるA-1~14、a-1,2を使用した。アルキレンオキサイド付加物(A)を構成する脂肪族アルコールの種類、価数、及び炭素数、アルキレンオキサイド付加物(A)中のアルキレンオキサイド全体に占めるプロピレンオキサイド(PO)の質量比率(%)、アルキレンオキサイドの重合形態、並びに質量平均分子量を、表1の「出発物質」欄、「PO比率(質量%)」欄、「重合形態」欄、「質量平均分子量」欄にそれぞれ示す。
【0098】
・有機リン酸エステル化合物(C)
有機リン酸エステル化合物(C)は、表2に示されるC-1~10を使用した。C-9は、セチルアルコールとステアリルアルコールを3:7の比率で混合した原料を用いて、無水リン酸と反応させて製造した。C-10は、セチルアルコールとステアリルアルコールを7:3の比率で混合した原料を用いて、無水リン酸と反応させて製造した。有機リン酸エステル化合物(C)としてのアルキルリン酸エステルの種類、アルキルリン酸エステルを構成するモノエステル、ジエステル、ポリエステルの各含有比率(%)を、表2の「成分(C)」欄、「アルキルリン酸エステル中の成分の比率(%)」欄にそれぞれ示す。
【0099】
(実施例1)
表3に示されるように、アルキレンオキサイド付加物(A-1)7部(%)、(ポリオキシエチレン)(ポリオキシプロピレン)ランダム付加型(m=5、n=5、mはオキシエチレン単位の数、nはオキシプロピレン単位の数)ドデシルエーテル(Ba-4)15.75部(%)、ポリオキシエチレン(10モル(エチレンオキサイドの付加モル数)(以下同じ))ドデシルエーテル(Ba-5)15.75部(%)、ポリオキシエチレン(15モル)ドデシルアミン(Bc-5)31.5部(%)、有機リン酸エステル化合物(C)としてステアリルリン酸エステルカリウム塩(C-1)30部(%)を含む実施例1の合成繊維用処理剤を調製した。
【0100】
(実施例2~50、比較例1~3)
実施例2~50、比較例1~3の合成繊維用処理剤は、実施例1の合成繊維用処理剤と同様にして成分(A)~成分(C)を表3,4に示した割合で含むように調製した。比較例3は、成分(A)の代わりにポリエステル(X)としてテレフタル酸ジメチル1モルとジエチレングリコール1.3モルを縮合反応させ、この反応物とポリエチレングリコール(分子量3000)を縮合させたものを使用した。
【0101】
アルキレンオキサイド付加物(A)の種類と含有量、成分(B)の種類と含有量、有機リン酸エステル化合物(C)の種類と含有量を、表3,4の「成分(A)」欄、「成分(B)」欄、「成分(C)」欄にそれぞれ示す。
【0102】
【0103】
【0104】
【0105】
【表4】
表3,4に記載するアルキレンオキサイド付加物(B)又は後述する表5,6のアルキレンオキサイド付加物(E)の詳細は以下のとおりである。
【0106】
(アルキレンオキサイド付加物(B)(E))
Ba-1:(ポリオキシエチレン)(ポリオキシプロピレン)ランダム付加型(m=5、n=2、mはオキシエチレン単位の数、nはオキシプロピレン単位の数)デシルエ-テル
Ba-2:ポリオキシエチレン(6モル)デシルエーテル
Ba-3:(ポリオキシエチレン)(ポリオキシプロピレン)ブロック付加型(m=5、n=5、mはオキシエチレン単位の数、nはオキシプロピレン単位の数)イソデシルエーテル
Ba-4:(ポリオキシエチレン)(ポリオキシプロピレン)ランダム付加型(m=5、n=5、mはオキシエチレン単位の数、nはオキシプロピレン単位の数)ドデシルエーテル
Ba-5:ポリオキシエチレン(10モル)ドデシルエーテル
Ba-6:ポリオキシエチレン(15モル)ドデシルエーテル
Ba-7:ポリオキシエチレン(7モル)ドデシルエーテル
Ba-8:ポリオキシエチレン(9モル)ドデシルエーテル
Ba-9:(ポリオキシエチレン)(ポリオキシプロピレン)ランダム付加型(m=7、n=3、mはオキシエチレン単位の数、nはオキシプロピレン単位の数)C12-13アルキルエ-テル
Ba-10:(ポリオキシエチレン)(ポリオキシプロピレン)ランダム付加型(m=6、n=2、mはオキシエチレン単位の数、nはオキシプロピレン単位の数)C12-13アルキルエ-テル
Ba-11:ポリオキシエチレン(10モル)C12-13アルキルエーテル
Ba-12:ポリオキシエチレン(15モル)C12-13アルキルエーテル
Ba-13:ポリオキシエチレン(3モル)C12-14アルキルエーテル
Ba-14:(ポリオキシエチレン)(ポリオキシプロピレン)ブロック付加型(m=2、n=6、mはオキシエチレン単位の数、nはオキシプロピレン単位の数)トリデシルエーテル
Ba-15:ポリオキシエチレン(15モル)トリデシルエーテル
Ba-16:(ポリオキシエチレン)(ポリオキシプロピレン)ランダム付加型(m=6、n=2、mはオキシエチレン単位の数、nはオキシプロピレン単位の数)イソトリデシルエーテル
Ba-17:(ポリオキシエチレン)(ポリオキシプロピレン)ランダム付加型(m=8、n=4、mはオキシエチレン単位の数、nはオキシプロピレン単位の数)C11-14アルキルエ-テル
Ba-18:ポリオキシエチレン(10モル)C11-14アルキルエーテル
Ba-19:ポリオキシエチレン(10モル)オクタデシルエ-テル
Ba-20:ポリオキシエチレン(10モル)オレイルエ-テル
Ba-21:ポリオキシエチレン(5モル)オレイルエ-テル
Ba-22:ポリオキシエチレン(8モル)オレイルエ-テル
Ba-23:(ポリオキシエチレン)(ポリオキシプロピレン)ランダム付加型(m=10、n=10、mはオキシエチレン単位の数、nはオキシプロピレン単位の数)硬化ひまし油
Bb-1:ポリオキシエチレン(10モル)ラウリルエステル
Bb-2:ポリオキシエチレン(12モル)ラウリルエステル
Bb-3:ポリオキシエチレン(10モル)オレイルエステル
Bb-4:ヤシ脂肪酸-ポリオキシエチレン(10モル)
Bb-5:ヤシ脂肪酸-ポリオキシエチレン(7モル)
Bc-1:ポリオキシエチレン(4モル)ドデシルアミン
Bc-2:ポリオキシエチレン(10モル)ドデシルアミン
Bc-3:ポリオキシエチレン(10モル)ドデシルアミンと燐酸の塩
Bc-4:ポリオキシエチレン(12モル)ドデシルアミン
Bc-5:ポリオキシエチレン(15モル)ドデシルアミン
Bc-6:ポリオキシエチレン(5モル)オクタデシルアミン
Bc-7:ポリオキシエチレン(10モル)オクタデシルアミン
試験区分2(湿潤時摩擦の評価)
図1に示す摩擦試験装置10を用いて、以下のように湿潤時摩擦を評価した。
図1に示すように、所定の大きさの容器11内に、各例の
合成繊維用処理剤の1%水性液12を満たした。フリーローラー13を、容器11内の
合成繊維用処理剤の1%水性液12に浸るように配置し、フリーローラー14,15を容器11の上部に配置した。ポリエステルフィラメント16を、フリーローラー14,13,15の順に通した。ポリエステルフィラメント16は、フリーローラー13において180°以上の周回で巻かれ、水性液12中においてフリーローラー13の接触前後のポリエステルフィラメント16が接点17で接触するよう配置した。
【0107】
各実施例の1%水性液12について、
図1の状態でポリエステルフィラメント16を矢印A方向へ3m/分の速度で引っ張った。このときのフリーローラー14の上流部における張力T1及びフリーローラー15の下流部における張力T2を、25℃、65%RHに保たれた恒温室で、水性液12の温度を20±0.5℃にコントロールした条件下で測定した。なお、評価用の水性液12は、調製後、80℃で10時間保管後に評価温度まで冷却し、評価を実施した。
【0108】
評価は、各例の合成繊維用処理剤においてA成分を含まない場合に対してT2/T1が何%低減したかを求めた。例えば、比較例2の場合、B成分とC成分のみの組成で試験した場合のT2/T1の値をT0とする。A成分を含む比較例2の組成で試験した場合のT2/T1の値をTaとする。この場合、T0よりもTaの値の低減効果が10%未満であったため「×」の評価となる。式で表すと、(T0-Ta)/T0×100<10となる。結果を表3,4の「湿潤時摩擦」欄に示す。なお、比較例1は、乳化安定性が悪く、湿潤時摩擦及び後述する高温での湿潤時摩擦の試験を行うことができなかった。
【0109】
・湿潤時摩擦の評価基準
◎(良好):A成分を含まない場合に対してT2/T1が20%以上低減した場合
○(可):A成分を含まない場合に対してT2/T1が10%以上20%未満の範囲で低減した場合
×(不可):A成分を含まない場合に対して低減効果が10%未満の場合
試験区分3(高温湿潤時摩擦の評価)
湿潤時摩擦と同じ装置を使い、測定時の水性液の温度を60±0.5℃にコントロールした条件下で実施した以外、湿潤時摩擦と同様に評価した。結果を表3,4の「高温湿潤時摩擦」欄に示す。
【0110】
試験区分4(乳化性の評価)
各例の合成繊維用処理剤の5%水性液を調製した。その100gを200mL透明ポリ瓶に入れ蓋をして50℃で静置した。1晩経過後、外観を観察し、下記の条件に従って評価した。結果を表3,4の「乳化性」欄に示す。
【0111】
・乳化性の評価基準
◎(良好):透明で、分離や沈殿、濁りが無く、安定である場合
○(可):外観に濁りがあり、不透明ではあるが、分離や沈殿は起きておらず、安定である場合
×(不可):1晩経過後に沈殿がある場合
試験区分5(第1処理剤の調製)
(第1処理剤(I-1))
表5に示されるように、アルキレンオキサイド付加物(D)としてアルキレンオキサイド付加物(A-1)10部(%)、成分(E)として(ポリオキシエチレン)(ポリオキシプロピレン)ランダム付加型(m=5、n=5、mはオキシエチレン単位の数、nはオキシプロピレン単位の数)ドデシルエーテル(Ba-4)22.5部(%)、ポリオキシエチレン(10モル)ドデシルエーテル(Ba-5)22.5部(%)、ポリオキシエチレン(15モル)ドデシルアミン(Bc-5)45部(%)を含む第1処理剤(I-1)を調製した。
【0112】
(第1処理剤I-2~50、第1処理剤i-1~3)
第1処理剤I-2~50、第1処理剤i-1~3は、第1処理剤(I-1)と同様にしてアルキレンオキサイド付加物(D)、成分(E)を表5,6に示した割合で含むように調製した。第1処理剤i-3は、成分(D)の代わりに上述したポリエステル(X)を使用した。アルキレンオキサイド付加物(D)の種類と含有量、成分(E)の種類と含有量を、表5,6の「成分(D)」欄、「成分(E)」欄にそれぞれ示す。
【0113】
【0114】
【表6】
試験区分6(第2処理剤の調製)
(第2処理剤(II-1))
第2処理剤(II-1)は、表7に示される有機リン酸エステル化合物(F)としてステアリルリン酸エステルカリウム塩(C-1)100部(%)を含むようにした。
【0115】
(第2処理剤II-2~15)
第2処理剤II-2~15は、表7に示される有機リン酸エステル化合物(F)、必要によりアルキレンオキサイド付加物(D)を表7に示した割合で含むように調製した。アルキレンオキサイド付加物(D)の種類と含有量、有機リン酸エステル化合物(F)の種類と含有量を、表7の「成分(D)」欄、「成分(F)」欄にそれぞれ示す。
【0116】
【表7】
試験区分7(製剤安定性の評価)
上記第1処理剤又は第2処理剤を、25℃又は50℃にて1週間保管した。1週間経過後の外観を観察し、下記の基準に従って評価した。結果を表5~7の「製剤安定性」欄に示す。
【0117】
・製剤安定性の評価基準(第1剤)
◎(良好):外観透明で分離や増粘が起きていない場合
○(可):25℃において外観透明で、分離や増粘が起きていないが、50℃においては外観に濁りが生じる場合、又は分離や増粘が起きている場合
×(不可):25℃、50℃どちらの条件においても外観に濁りが生じる場合、又は分離や増粘が起きている場合
・製剤安定性の評価基準(第2剤)
◎(良好):分離や増粘が起きていない場合
○(可):25℃において分離や増粘が起きていないが、50℃においては分離や増粘が起きている場合
×(不可):25℃、50℃どちらの条件においても分離や増粘が起きている場合
試験区分8(第1処理剤と第2処理剤から合成繊維用処理剤の調製)
(実施例51)
表8に示される第1処理剤(I-1)70部、第2処理剤(II-1)30部、及び水を混合して実施例51の合成繊維用処理剤の水性液を調製した。
【0118】
(実施例52~100)
実施例51と同様にして、表8に示される第1処理剤と第2処理剤、及び実施例51と同じ割合の水とを混合して各例の合成繊維用処理剤の水性液を調製した。第1処理剤の種類と含有比率、第2処理剤の種類と含有比率を、表8の「第1処理剤」欄、「第2処理剤」欄にそれぞれ示す。
【0119】
得られた各例の合成繊維用処理剤を用いて、実施例1と同様に湿潤時摩擦、高温湿潤時摩擦、乳化性について評価した。結果を表8の「湿潤時摩擦」欄、「高温湿潤時摩擦」欄、「乳化性」欄にそれぞれ示す。
【0120】
【表8】
本発明の
合成繊維用処理剤は、乳化性に優れ、また
合成繊維用処理剤が付与された
合成繊維は、湿潤時摩擦、高温湿潤時摩擦を向上させる効果が得られる。なお、各例の
合成繊維用処理剤をポリオレフィンとしてポリプロピレン繊維にも適用できることを確認している。
【符号の説明】
【0121】
10…摩擦試験装置
11…容器
12…水性液
13,14,15…フリーローラー
16…ポリエステルフィラメント
17…接点
【手続補正書】
【提出日】2021-12-03
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の成分(A)、下記の成分(B)、及び有機リン酸エステル化合物(C)を含有する合成繊維用処理剤であって、前記合成繊維の用途は、短繊維であることを特徴とする合成繊維用処理剤。
成分(A):炭素数1~8の1価の脂肪族アルコール、炭素数1~8の1価の脂肪族アミン、炭素数1~12の2~4価の脂肪族アルコール、及び炭素数1~12の2~4価の脂肪族アミンから選ばれる少なくとも1つに対して、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドを付加させて得られるアルキレンオキサイド付加物。
成分(B):ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエステル、ポリオキシアルキレンアルケニルエステル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルアミノエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルアミノエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルアミノエーテルと無機酸との塩、及びポリオキシアルキレンアルケニルアミノエーテルと無機酸との塩から選ばれる少なくとも1つ(但し、前記成分(A)に該当するものを除く)。
【請求項2】
下記の成分(A)、下記の成分(B)、及び有機リン酸エステル化合物(C)を含有することを特徴とする合成繊維用処理剤。
成分(A):炭素数1~8の1価の脂肪族アルコール、炭素数1~8の1価の脂肪族アミン、炭素数1~12の2~4価の脂肪族アルコール、及び炭素数1~12の2~4価の脂肪族アミンから選ばれる少なくとも1つに対して、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドを付加させて得られるアルキレンオキサイド付加物であって、前記エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドをブロック共重合して形成されたもの。
成分(B):ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエステル、ポリオキシアルキレンアルケニルエステル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルアミノエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルアミノエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルアミノエーテルと無機酸との塩、及びポリオキシアルキレンアルケニルアミノエーテルと無機酸との塩から選ばれる少なくとも1つ(但し、前記成分(A)に該当するものを除く)。
【請求項3】
前記成分(A)、前記成分(B)、及び前記有機リン酸エステル化合物(C)の含有割合の合計を100質量%とすると、前記成分(A)を0.1質量%以上45質量%以下の割合で含有する請求項1又は2に記載の合成繊維用処理剤。
【請求項4】
前記成分(A)、前記成分(B)、及び前記有機リン酸エステル化合物(C)の含有割合の合計を100質量%とすると、前記成分(A)を0.1質量%以上23.5質量%以下の割合で含有する請求項1~3のいずれか一項に記載の合成繊維用処理剤。
【請求項5】
前記成分(B)を含有する合成繊維用第1処理剤、及び前記有機リン酸エステル化合物(C)を含有する合成繊維用第2処理剤を含み、前記合成繊維用第1処理剤及び前記合成繊維用第2処理剤のいずれか一方又は両方に前記成分(A)を含有する請求項1~4のいずれか一項に記載の合成繊維用処理剤。
【請求項6】
前記合成繊維用第1処理剤中における前記成分(B)及び前記成分(A)の含有割合の合計を100質量%とすると、前記成分(B)を50質量%以上100質量%以下、及び前記成分(A)を0質量%以上50質量%以下の割合で含有し、且つ前記合成繊維用第2処理剤中における前記有機リン酸エステル化合物(C)及び前記成分(A)の含有割合の合計を100質量%とすると、前記有機リン酸エステル化合物(C)を50質量%以上100質量%以下、及び前記成分(A)を0質量%以上50質量%以下の割合で含有する請求項5に記載の合成繊維用処理剤。
【請求項7】
前記成分(A)が、炭素数1~6の1価の脂肪族アルコール、炭素数1~6の1価の脂肪族アミン、炭素数1~12の2~4価の脂肪族アルコール、及び炭素数1~12の2~4価の脂肪族アミンから選ばれる少なくとも1つに対して、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドを付加させて得られるアルキレンオキサイド付加物である請求項1~6のいずれか一項に記載の合成繊維用処理剤。
【請求項8】
前記成分(A)のアルキレンオキサイド全体に占めるプロピレンオキサイドの質量割合が、60~95%である請求項1~7のいずれか一項に記載の合成繊維用処理剤。
【請求項9】
前記成分(A)が、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドをブロック共重合して形成されたものである請求項1に記載の合成繊維用処理剤。
【請求項10】
前記有機リン酸エステル化合物(C)が、分子中に炭素数8~22の脂肪族アルコールから水酸基を除いた残基又は炭素数8~22の脂肪族アルコールに炭素数2~3のアルキレンオキサイドを付加したものから水酸基を除いた残基を有するアルキルリン酸エステル、及びその塩から選ばれる少なくとも1つを含むものである請求項1~9のいずれか一項に記載の合成繊維用処理剤。
【請求項11】
前記合成繊維の用途は、ポリエステル短繊維である請求項1~10のいずれか一項に記載の合成繊維用処理剤。
【請求項12】
ポリエチレンテレフタラート繊維に適用される請求項1~10のいずれか一項に記載の合成繊維用処理剤。
【請求項13】
前記合成繊維の用途は、短繊維である請求項2に記載の合成繊維用処理剤。
【請求項14】
有機リン酸エステル化合物(F)を含有する合成繊維用第2処理剤と併用され、下記の成分(E)を含有する合成繊維用第1処理剤であって、前記合成繊維用第1処理剤及び前記合成繊維用第2処理剤のいずれか一方又は両方に下記成分(D)を更に含有する合成繊維用第1処理剤であって、前記合成繊維の用途は、短繊維であることを特徴とする合成繊維用第1処理剤。
成分(D):炭素数1~8の1価の脂肪族アルコール、炭素数1~8の1価の脂肪族アミン、炭素数1~12の2~4価の脂肪族アルコール、及び炭素数1~12の2~4価の脂肪族アミンから選ばれる少なくとも1つに対して、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドを付加させて得られるアルキレンオキサイド付加物。
成分(E):ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエステル、ポリオキシアルキレンアルケニルエステル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルアミノエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルアミノエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルアミノエーテルと無機酸との塩、及びポリオキシアルキレンアルケニルアミノエーテルと無機酸との塩から選ばれる少なくとも1つ(但し、前記成分(D)に該当するものを除く)。
【請求項15】
有機リン酸エステル化合物(F)を含有する合成繊維用第2処理剤と併用され、下記の成分(E)を含有する合成繊維用第1処理剤であって、前記合成繊維用第1処理剤及び前記合成繊維用第2処理剤のいずれか一方又は両方に下記成分(D)を更に含有することを特徴とする合成繊維用第1処理剤。
成分(D):炭素数1~8の1価の脂肪族アルコール、炭素数1~8の1価の脂肪族アミン、炭素数1~12の2~4価の脂肪族アルコール、及び炭素数1~12の2~4価の脂肪族アミンから選ばれる少なくとも1つに対して、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドを付加させて得られるアルキレンオキサイド付加物であって、前記エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドをブロック共重合して形成されたもの。
成分(E):ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエステル、ポリオキシアルキレンアルケニルエステル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルアミノエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルアミノエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルアミノエーテルと無機酸との塩、及びポリオキシアルキレンアルケニルアミノエーテルと無機酸との塩から選ばれる少なくとも1つ(但し、前記成分(D)に該当するものを除く)。
【請求項16】
前記合成繊維用第1処理剤が、前記成分(E)及び前記成分(D)を含み、
前記成分(E)及び前記成分(D)の含有割合の合計を100質量%とすると、前記成分(E)を50質量%以上99.9質量%以下、及び前記成分(D)を0.1質量%以上50質量%以下の割合で含有する請求項14又は15に記載の合成繊維用第1処理剤。
【請求項17】
前記成分(E)及び前記成分(D)の含有割合の合計を100質量%とすると、前記成分(E)を70質量%以上99.9質量%以下、及び前記成分(D)を0.1質量%以上30質量%以下の割合で含有する請求項16に記載の合成繊維用第1処理剤。
【請求項18】
前記合成繊維用第1処理剤が、前記成分(E)及び前記成分(D)を含み、且つ前記合成繊維用第2処理剤が前記有機リン酸エステル化合物(F)及び前記成分(D)を含み、
前記合成繊維用第1処理剤中における前記成分(E)及び前記成分(D)の含有割合の合計を100質量%とすると、前記成分(E)を50質量%以上99.9質量%以下、及び前記成分(D)を0.1質量%以上50質量%以下の割合で含有する請求項14又は15に記載の合成繊維用第1処理剤。
【請求項19】
前記合成繊維用第1処理剤中における前記成分(E)及び前記成分(D)の含有割合の合計を100質量%とすると、前記成分(E)を70質量%以上99.9質量%以下、及び前記成分(D)を0.1質量%以上30質量%以下の割合で含有する請求項18に記載の合成繊維用第1処理剤。
【請求項20】
下記の成分(E)を含有する合成繊維用第1処理剤と併用され、有機リン酸エステル化合物(F)を含有する合成繊維用第2処理剤であって、前記合成繊維用第1処理剤及び前記合成繊維用第2処理剤のいずれか一方又は両方に下記成分(D)を更に含有する合成繊維用第2処理剤であって、前記合成繊維の用途は、短繊維であることを特徴とする合成繊維用第2処理剤。
成分(D):炭素数1~8の1価の脂肪族アルコール、炭素数1~8の1価の脂肪族アミン、炭素数1~12の2~4価の脂肪族アルコール、及び炭素数1~12の2~4価の脂肪族アミンから選ばれる少なくとも1つに対して、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドを付加させて得られるアルキレンオキサイド付加物。
成分(E):ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエステル、ポリオキシアルキレンアルケニルエステル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルアミノエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルアミノエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルアミノエーテルと無機酸との塩、及びポリオキシアルキレンアルケニルアミノエーテルと無機酸との塩から選ばれる少なくとも1つ(但し、前記成分(D)に該当するものを除く)。
【請求項21】
下記の成分(E)を含有する合成繊維用第1処理剤と併用され、有機リン酸エステル化合物(F)を含有する合成繊維用第2処理剤であって、前記合成繊維用第1処理剤及び前記合成繊維用第2処理剤のいずれか一方又は両方に下記成分(D)を更に含有することを特徴とする合成繊維用第2処理剤。
成分(D):炭素数1~8の1価の脂肪族アルコール、炭素数1~8の1価の脂肪族アミン、炭素数1~12の2~4価の脂肪族アルコール、及び炭素数1~12の2~4価の脂肪族アミンから選ばれる少なくとも1つに対して、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドを付加させて得られるアルキレンオキサイド付加物であって、前記エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドをブロック共重合して形成されたもの。
成分(E):ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエステル、ポリオキシアルキレンアルケニルエステル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルアミノエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルアミノエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルアミノエーテルと無機酸との塩、及びポリオキシアルキレンアルケニルアミノエーテルと無機酸との塩から選ばれる少なくとも1つ(但し、前記成分(D)に該当するものを除く)。
【請求項22】
前記合成繊維用第2処理剤が、前記有機リン酸エステル化合物(F)及び前記成分(D)を含み、前記有機リン酸エステル化合物(F)及び前記成分(D)の含有割合の合計を100質量%とすると、前記有機リン酸エステル化合物(F)を50質量%以上99.9質量%以下、及び前記成分(D)を0.1質量%以上50質量%以下の割合で含有する請求項20又は21に記載の合成繊維用第2処理剤。
【請求項23】
前記有機リン酸エステル化合物(F)及び前記成分(D)の含有割合の合計を100質量%とすると、前記有機リン酸エステル化合物(F)を70質量%以上99.9質量%以下、及び前記成分(D)を0.1質量%以上30質量%以下の割合で含有する請求項22に記載の合成繊維用第2処理剤。
【請求項24】
前記合成繊維用第1処理剤が前記成分(E)及び前記成分(D)を含み、且つ前記合成繊維用第2処理剤が前記有機リン酸エステル化合物(F)及び前記成分(D)を含み、
前記合成繊維用第2処理剤中における前記有機リン酸エステル化合物(F)及び前記成分(D)の含有割合の合計を100質量%とすると、前記有機リン酸エステル化合物(F)を50質量%以上99.9質量%以下、及び前記成分(D)を0.1質量%以上50質量%以下の割合で含有する請求項20又は21に記載の合成繊維用第2処理剤。
【請求項25】
前記合成繊維用第2処理剤中における前記有機リン酸エステル化合物(F)及び前記成分(D)の含有割合の合計を100質量%とすると、前記有機リン酸エステル化合物(F)を70質量%以上99.9質量%以下、及び前記成分(D)を0.1質量%以上30質量%以下の割合で含有する請求項24に記載の合成繊維用第2処理剤。
【請求項26】
請求項1に記載の合成繊維用処理剤、及び水を含有する合成繊維用処理剤の水性液であって、前記合成繊維の用途は、短繊維であることを特徴とする合成繊維用処理剤の水性液。
【請求項27】
請求項14に記載の合成繊維用第1処理剤と、請求項20に記載の合成繊維用第2処理剤とを、含む合成繊維用処理剤の水性液であって、前記合成繊維の用途は、短繊維であることを特徴とする合成繊維用処理剤の水性液。
【請求項28】
前記合成繊維用第1処理剤と前記合成繊維用第2処理剤との含有割合の比が、不揮発分の質量比として前記合成繊維用第1処理剤と前記合成繊維用第2処理剤=1/9~9/1である請求項27に記載の合成繊維用処理剤の水性液。
【請求項29】
水に、請求項14に記載の合成繊維用第1処理剤と、請求項20に記載の合成繊維用第2処理剤とを添加して得られた合成繊維用処理剤の水性液を合成繊維に付与する合成繊維の処理方法であって、前記合成繊維の用途は、短繊維であることを特徴とする合成繊維の処理方法。
【請求項30】
請求項14に記載の合成繊維用第1処理剤と、請求項20に記載の合成繊維用第2処理剤とが、付着している合成繊維であって、前記合成繊維の用途は、短繊維であることを特徴とする合成繊維。
【請求項31】
請求項2に記載の合成繊維用処理剤、及び水を含有することを特徴とする合成繊維用処理剤の水性液。
【請求項32】
請求項15に記載の合成繊維用第1処理剤と、請求項21に記載の合成繊維用第2処理剤とを、含むことを特徴とする合成繊維用処理剤の水性液。
【請求項33】
前記合成繊維用第1処理剤と前記合成繊維用第2処理剤との含有割合の比が、不揮発分の質量比として前記合成繊維用第1処理剤と前記合成繊維用第2処理剤=1/9~9/1である請求項32に記載の合成繊維用処理剤の水性液。
【請求項34】
水に、請求項15の合成繊維用第1処理剤と、請求項21に記載の合成繊維用第2処理剤とを添加して得られた合成繊維用処理剤の水性液を合成繊維に付与することを特徴とする合成繊維の処理方法。
【請求項35】
請求項15に記載の合成繊維用第1処理剤と、請求項21に記載の合成繊維用第2処理剤とが、付着していることを特徴とする合成繊維。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定のアルキレンオキサイド付加物を含有する合成繊維用処理剤、合成繊維用第1処理剤、合成繊維用第2処理剤、合成繊維用処理剤の水性液、合成繊維の処理方法、及び合成繊維に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば合成繊維の紡糸延伸工程、仕上げ工程等において、繊維の摩擦を低減させる観点から、繊維の表面に繊維用処理剤を付着させる処理が行われることがある。
従来、特許文献1に開示の繊維用油剤が知られている。特許文献1は、芳香族ジカルボン酸等の成分、多価アルコール類等の成分、及び分子量が600以上であるポリアルキレンオキシド等を縮合反応させ、得られるランダム又はブロック型ポリエステルを1質量%以上含む繊維用油剤について開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、摩擦特性、特に高温湿潤時の摩擦特性の更なる向上が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、前記の課題を解決するべく研究した結果、合成繊維用処理剤において、所定のアルキレンオキサイド付加物、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル等、及び有機リン酸エステル化合物を含有する構成が好適であることを見出した。
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の一態様の合成繊維用処理剤では、下記の成分(A)、下記の成分(B)、及び有機リン酸エステル化合物(C)を含有する合成繊維用処理剤であって、前記合成繊維の用途は、短繊維であることを特徴とする。
成分(A):炭素数1~8の1価の脂肪族アルコール、炭素数1~8の1価の脂肪族アミン、炭素数1~12の2~4価の脂肪族アルコール、及び炭素数1~12の2~4価の脂肪族アミンから選ばれる少なくとも1つに対して、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドを付加させて得られるアルキレンオキサイド付加物。
【0007】
成分(B):ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエステル、ポリオキシアルキレンアルケニルエステル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルアミノエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルアミノエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルアミノエーテルと無機酸との塩、及びポリオキシアルキレンアルケニルアミノエーテルと無機酸との塩から選ばれる少なくとも1つ(但し、前記成分(A)に該当するものを除く)。
上記課題を解決するために、本発明の一態様の合成繊維用処理剤では、下記の成分(A)、下記の成分(B)、及び有機リン酸エステル化合物(C)を含有することを特徴とする。
成分(A):炭素数1~8の1価の脂肪族アルコール、炭素数1~8の1価の脂肪族アミン、炭素数1~12の2~4価の脂肪族アルコール、及び炭素数1~12の2~4価の脂肪族アミンから選ばれる少なくとも1つに対して、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドを付加させて得られるアルキレンオキサイド付加物であって、前記エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドをブロック共重合して形成されたもの。
成分(B):ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエステル、ポリオキシアルキレンアルケニルエステル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルアミノエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルアミノエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルアミノエーテルと無機酸との塩、及びポリオキシアルキレンアルケニルアミノエーテルと無機酸との塩から選ばれる少なくとも1つ(但し、前記成分(A)に該当するものを除く)。
【0008】
前記合成繊維用処理剤において、前記成分(A)、前記成分(B)、及び前記有機リン酸エステル化合物(C)の含有割合の合計を100質量%とすると、前記成分(A)を0.1質量%以上45質量%以下の割合で含有してもよい。
【0009】
前記合成繊維用処理剤において、前記成分(A)、前記成分(B)、及び前記有機リン酸エステル化合物(C)の含有割合の合計を100質量%とすると、前記成分(A)を0.1質量%以上23.5質量%以下の割合で含有してもよい。
【0010】
前記合成繊維用処理剤において、前記成分(B)を含有する合成繊維用第1処理剤、及び前記有機リン酸エステル化合物(C)を含有する合成繊維用第2処理剤を含み、前記合成繊維用第1処理剤及び前記合成繊維用第2処理剤のいずれか一方又は両方に前記成分(A)を含有してもよい。
【0011】
前記合成繊維用処理剤において、前記合成繊維用第1処理剤中における前記成分(B)及び前記成分(A)の含有割合の合計を100質量%とすると、前記成分(B)を50質量%以上100質量%以下、及び前記成分(A)を0質量%以上50質量%以下の割合で含有し、且つ前記合成繊維用第2処理剤中における前記有機リン酸エステル化合物(C)及び前記成分(A)の含有割合の合計を100質量%とすると、前記有機リン酸エステル化合物(C)を50質量%以上100質量%以下、及び前記成分(A)を0質量%以上50質量%以下の割合で含有してもよい。
【0012】
前記合成繊維用処理剤において、前記成分(A)が、炭素数1~6の1価の脂肪族アルコール、炭素数1~6の1価の脂肪族アミン、炭素数1~12の2~4価の脂肪族アルコール、及び炭素数1~12の2~4価の脂肪族アミンから選ばれる少なくとも1つに対して、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドを付加させて得られるアルキレンオキサイド付加物であってもよい。
【0013】
前記合成繊維用処理剤において、前記成分(A)のアルキレンオキサイド全体に占めるプロピレンオキサイドの質量割合が、60%以上95%以下であってもよい。
前記合成繊維用処理剤において、前記成分(A)が、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドをブロック共重合して形成されたものであってもよい。
【0014】
前記合成繊維用処理剤において、前記有機リン酸エステル化合物(C)が、分子中に炭素数8~22の脂肪族アルコールから水酸基を除いた残基又は炭素数8~22の脂肪族アルコールに炭素数2~3のアルキレンオキサイドを付加したものから水酸基を除いた残基を有するアルキルリン酸エステル、及びその塩から選ばれる少なくとも1つを含むものであってもよい。
【0015】
前記合成繊維用処理剤において、前記合成繊維の用途は、ポリエステル短繊維であってもよい。
前記合成繊維用処理剤において、ポリエチレンテレフタラート繊維に適用されてもよい。
【0016】
前記合成繊維用処理剤において、前記合成繊維の用途は、短繊維であってもよい。
上記課題を解決するために、本発明の別の態様の合成繊維用第1処理剤では、有機リン酸エステル化合物(F)を含有する合成繊維用第2処理剤と併用され、下記の成分(E)を含有する合成繊維用第1処理剤であって、前記合成繊維用第1処理剤及び前記合成繊維用第2処理剤のいずれか一方又は両方に下記成分(D)を更に含有する合成繊維用第1処理剤であって、前記合成繊維の用途は、短繊維であることを特徴とする。
【0017】
成分(D):炭素数1~8の1価の脂肪族アルコール、炭素数1~8の1価の脂肪族アミン、炭素数1~12の2~4価の脂肪族アルコール、及び炭素数1~12の2~4価の脂肪族アミンから選ばれる少なくとも1つに対して、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドを付加させて得られるアルキレンオキサイド付加物。
【0018】
成分(E):ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエステル、ポリオキシアルキレンアルケニルエステル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルアミノエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルアミノエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルアミノエーテルと無機酸との塩、及びポリオキシアルキレンアルケニルアミノエーテルと無機酸との塩から選ばれる少なくとも1つ(但し、前記成分(D)に該当するものを除く)。
上記課題を解決するために、本発明の別の態様の合成繊維用第1処理剤では、有機リン酸エステル化合物(F)を含有する合成繊維用第2処理剤と併用され、下記の成分(E)を含有する合成繊維用第1処理剤であって、前記合成繊維用第1処理剤及び前記合成繊維用第2処理剤のいずれか一方又は両方に下記成分(D)を更に含有することを特徴とする。
成分(D):炭素数1~8の1価の脂肪族アルコール、炭素数1~8の1価の脂肪族アミン、炭素数1~12の2~4価の脂肪族アルコール、及び炭素数1~12の2~4価の脂肪族アミンから選ばれる少なくとも1つに対して、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドを付加させて得られるアルキレンオキサイド付加物であって、前記エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドをブロック共重合して形成されたもの。
成分(E):ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエステル、ポリオキシアルキレンアルケニルエステル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルアミノエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルアミノエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルアミノエーテルと無機酸との塩、及びポリオキシアルキレンアルケニルアミノエーテルと無機酸との塩から選ばれる少なくとも1つ(但し、前記成分(D)に該当するものを除く)。
【0019】
前記合成繊維用第1処理剤において、前記成分(E)及び前記成分(D)を含み、前記成分(E)及び前記成分(D)の含有割合の合計を100質量%とすると、前記成分(E)を50質量%以上99.9質量%以下、及び前記成分(D)を0.1質量%以上50質量%以下の割合で含有してもよい。
【0020】
前記合成繊維用第1処理剤において、前記成分(E)及び前記成分(D)の含有割合の合計を100質量%とすると、前記成分(E)を70質量%以上99.9質量%以下、及び前記成分(D)を0.1質量%以上30質量%以下の割合で含有してもよい。
【0021】
前記合成繊維用第1処理剤において、前記成分(E)及び前記成分(D)を含み、且つ前記合成繊維用第2処理剤が前記有機リン酸エステル化合物(F)及び前記成分(D)を含み、前記合成繊維用第1処理剤中における前記成分(E)及び前記成分(D)の含有割合の合計を100質量%とすると、前記成分(E)を50質量%以上99.9質量%以下、及び前記成分(D)を0.1質量%以上50質量%以下の割合で含有してもよい。
【0022】
前記合成繊維用第1処理剤において、前記合成繊維用第1処理剤中における前記成分(E)及び前記成分(D)の含有割合の合計を100質量%とすると、前記成分(E)を70質量%以上99.9質量%以下、及び前記成分(D)を0.1質量%以上30質量%以下の割合で含有してもよい。
【0023】
上記課題を解決するために、本発明の別の態様の合成繊維用第2処理剤では、下記の成分(E)を含有する合成繊維用第1処理剤と併用され、有機リン酸エステル化合物(F)を含有する合成繊維用第2処理剤であって、前記合成繊維用第1処理剤及び前記合成繊維用第2処理剤のいずれか一方又は両方に下記成分(D)を更に含有する合成繊維用第2処理剤であって、前記合成繊維の用途は、短繊維であることを特徴とする。
【0024】
成分(D):炭素数1~8の1価の脂肪族アルコール、炭素数1~8の1価の脂肪族アミン、炭素数1~12の2~4価の脂肪族アルコール、及び炭素数1~12の2~4価の脂肪族アミンから選ばれる少なくとも1つに対して、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドを付加させて得られるアルキレンオキサイド付加物。
【0025】
成分(E):ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエステル、ポリオキシアルキレンアルケニルエステル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルアミノエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルアミノエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルアミノエーテルと無機酸との塩、及びポリオキシアルキレンアルケニルアミノエーテルと無機酸との塩から選ばれる少なくとも1つ(但し、前記成分(D)に該当するものを除く)。
上記課題を解決するために、本発明の別の態様の合成繊維用第2処理剤では、下記の成分(E)を含有する合成繊維用第1処理剤と併用され、有機リン酸エステル化合物(F)を含有する合成繊維用第2処理剤であって、前記合成繊維用第1処理剤及び前記合成繊維用第2処理剤のいずれか一方又は両方に下記成分(D)を更に含有することを特徴とする。
成分(D):炭素数1~8の1価の脂肪族アルコール、炭素数1~8の1価の脂肪族アミン、炭素数1~12の2~4価の脂肪族アルコール、及び炭素数1~12の2~4価の脂肪族アミンから選ばれる少なくとも1つに対して、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドを付加させて得られるアルキレンオキサイド付加物であって、前記エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドをブロック共重合して形成されたもの。
成分(E):ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエステル、ポリオキシアルキレンアルケニルエステル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルアミノエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルアミノエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルアミノエーテルと無機酸との塩、及びポリオキシアルキレンアルケニルアミノエーテルと無機酸との塩から選ばれる少なくとも1つ(但し、前記成分(D)に該当するものを除く)。
【0026】
前記合成繊維用第2処理剤において、前記有機リン酸エステル化合物(F)及び前記成分(D)を含み、前記有機リン酸エステル化合物(F)及び前記成分(D)の含有割合の合計を100質量%とすると、前記有機リン酸エステル化合物(F)を50質量%以上99.9質量%以下、及び前記成分(D)を0.1質量%以上50質量%以下の割合で含有してもよい。
【0027】
前記合成繊維用第2処理剤において、前記有機リン酸エステル化合物(F)及び前記成分(D)の含有割合の合計を100質量%とすると、前記有機リン酸エステル化合物(F)を70質量%以上99.9質量%以下、及び前記成分(D)を0.1質量%以上30質量%以下の割合で含有してもよい。
【0028】
前記合成繊維用第2処理剤において、前記合成繊維用第1処理剤が前記成分(E)及び前記成分(D)を含み、且つ前記合成繊維用第2処理剤が前記有機リン酸エステル化合物(F)及び前記成分(D)を含み、前記合成繊維用第2処理剤中における前記有機リン酸エステル化合物(F)及び前記成分(D)の含有割合の合計を100質量%とすると、前記有機リン酸エステル化合物(F)を50質量%以上99.9質量%以下、及び前記成分(D)を0.1質量%以上50質量%以下の割合で含有してもよい。
【0029】
前記合成繊維用第2処理剤において、前記合成繊維用第2処理剤中における前記有機リン酸エステル化合物(F)及び前記成分(D)の含有割合の合計を100質量%とすると、前記有機リン酸エステル化合物(F)を70質量%以上99.9質量%以下、及び前記成分(D)を0.1質量%以上30質量%以下の割合で含有してもよい。
【0030】
上記課題を解決するために、本発明の別の態様の合成繊維用処理剤の水性液では、前記合成繊維用処理剤、及び水を含有する合成繊維用処理剤の水性液であって、前記合成繊維の用途は、短繊維であることを特徴とする。
上記課題を解決するために、本発明の別の態様の合成繊維用処理剤の水性液では、前記合成繊維用第1処理剤と、前記合成繊維用第2処理剤とを、含む合成繊維用処理剤の水性液であって、前記合成繊維の用途は、短繊維であることを特徴とする。
【0031】
前記合成繊維用処理剤の水性液において、前記合成繊維用第1処理剤と前記合成繊維用第2処理剤との含有割合の比が、不揮発分の質量比として前記合成繊維用第1処理剤と前記合成繊維用第2処理剤=1/9~9/1であってもよい。
【0032】
上記課題を解決するために、本発明の別の態様の合成繊維の処理方法では、水に、前記合成繊維用第1処理剤と、前記合成繊維用第2処理剤とを添加して得られた合成繊維用処理剤の水性液を合成繊維に付与する合成繊維の処理方法であって、前記合成繊維の用途は、短繊維であることを特徴とする。
【0033】
上記課題を解決するために、本発明の別の態様の合成繊維では、前記合成繊維用第1処理剤と、前記合成繊維用第2処理剤とが、付着している合成繊維であって、前記合成繊維の用途は、短繊維であることを特徴とする。
上記課題を解決するために、本発明の別の態様の合成繊維用処理剤の水性液では、前記合成繊維用処理剤、及び水を含有することを特徴とする。
上記課題を解決するために、本発明の別の態様の合成繊維用処理剤の水性液では、前記合成繊維用第1処理剤と、前記合成繊維用第2処理剤とを、含むことを特徴とする。
前記合成繊維用処理剤の水性液において、前記合成繊維用第1処理剤と前記合成繊維用第2処理剤との含有割合の比が、不揮発分の質量比として前記合成繊維用第1処理剤と前記合成繊維用第2処理剤=1/9~9/1であってもよい。
上記課題を解決するために、本発明の別の態様の合成繊維の処理方法では、水に、前記合成繊維用第1処理剤と、前記合成繊維用第2処理剤とを添加して得られた合成繊維用処理剤の水性液を合成繊維に付与することを特徴とする。
上記課題を解決するために、本発明の別の態様の合成繊維では、前記合成繊維用第1処理剤と、前記合成繊維用第2処理剤とが、付着していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば摩擦特性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】実施例欄における湿潤時摩擦の評価のための摩擦試験装置の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0036】
<第1実施形態>
以下、本発明の合成繊維用処理剤を具体化した第1実施形態を説明する。本実施形態の合成繊維用処理剤は、下記に示される成分(A)、下記に示される成分(B)、及び有機リン酸エステル化合物(C)を含有する。
【0037】
(成分(A))
成分(A)は、炭素数1~8の1価の脂肪族アルコール、炭素数1~8の1価の脂肪族アミン、炭素数1~12の2~4価の脂肪族アルコール、及び炭素数1~12の2~4価の脂肪族アミンから選ばれる少なくとも1つに対して、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドを付加させて得られるアルキレンオキサイド付加物である。かかる化合物により、摩擦特性、特に高温湿潤時の摩擦特性を向上させる。
【0038】
成分(A)を構成する1~4価の脂肪族アルコールは、公知のものが適宜挙げられ、飽和脂肪族アルコールであっても、不飽和脂肪族アルコールであってもよい。また、直鎖状のものであっても、分岐鎖構造を有するものであってもよい。また、1級アルコールでも2,3級アルコールであってもよい。
【0039】
1価の脂肪族アルコールの具体例としては、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール等が挙げられる。これらの中で摩擦特性向上の観点から炭素数1~6の1価の脂肪族アルコールが好ましい。
【0040】
2価の脂肪族アルコールの具体例としては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2-メチル-1,2-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、2,3-ジメチル-2,3-ブタンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、ウンデカンジオール、ドデカンジオール等が挙げられる。
【0041】
3~4価の脂肪族アルコールの具体例としては、例えばグリセリン、ジグリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、2-メチル-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール、1,2,3-ブタントリオール、1,2,4-ブタントリオール、エリスリトール、1,2,3-ペンタトリオール、1,2,4-ペンタトリオール等が挙げられる。
【0042】
成分(A)を構成する1~4価の脂肪族アミンは、公知のものが適宜挙げられ、飽和脂肪族アミンであっても、不飽和脂肪族アミンであってもよい。また、直鎖状のものであっても、分岐鎖構造を有するものであってもよい。また、1級アミンであっても、2,3級アミンであってもよい。
【0043】
1価の脂肪族アミンの具体例としては、例えばメチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、N-N-ジイソプロピルエチルアミン、ジブチルアミン、2-メチルブチルアミン等が挙げられる。これらの中で摩擦特性向上の観点から炭素数1~6の1価の脂肪族アミンが好ましい。
【0044】
2~4価の脂肪族アミンの具体例としては、例えばエチレンジアミン、プトレシン、スペルミジン等が挙げられる。
成分(A)を構成するエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドの付加モル数の下限は、適宜設定されるが、それぞれ好ましくは5モル以上、より好ましくは10モル以上、さらに好ましくは15モル以上である。かかる付加モル数の上限は、適宜設定されるが、それぞれ好ましくは250モル以下、より好ましくは200モル以下、さらに好ましくは150モル以下である。かかる数値範囲により、摩擦特性をより向上させる。上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。なお、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドの付加モル数は、仕込み原料中における脂肪族アルコール又は脂肪族アミン1モルに対するエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドのモル数を示す。エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドの付加形態は、ブロック付加、ランダム付加、及びブロック付加とランダム付加の組み合わせのいずれでもよく、特に制限はない。これらの中で摩擦特性をより向上させる観点から、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドをブロック共重合して形成されたものが好ましい。
【0045】
成分(A)中においてアルキレンオキサイド全体に占めるプロピレンオキサイドの質量割合は、適宜設定されるが、好ましくは60%以上95%以下である。かかる範囲に規定することにより、摩擦特性をより向上させる。
【0046】
成分(A)の質量平均分子量の下限は、適宜設定されるが、好ましくは500以上、より好ましくは800以上である。また、かかる質量平均分子量の上限は、適宜設定されるが、好ましくは10000以下、より好ましくは8000以下である。かかる範囲に規定することにより、摩擦特性をより向上できる。なお、質量平均分子量はゲル浸透クロマトグラフィー分析法(GPC)により、ポリスチレンを基準として測定できる。
【0047】
これらの成分(A)は、一種類の成分(A)を単独で使用してもよいし、又は二種以上の成分(A)を適宜組み合わせて使用してもよい。
(成分(B))
成分(B)は、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエステル、ポリオキシアルキレンアルケニルエステル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルアミノエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルアミノエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルアミノエーテルと無機酸との塩、及びポリオキシアルキレンアルケニルアミノエーテルと無機酸との塩から選ばれる少なくとも1つである。但し、前記成分(A)に該当するものは除かれる。
【0048】
成分(B)において、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエステル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルアミノエーテルを構成するアルキル基としては、特に制限はなく、例えば、直鎖状のアルキル基、分岐アルキル基が挙げられる。分岐アルキル基における分岐位置は、特に制限はなく、例えば、α位が分岐したアルキル基であってもよいし、β位が分岐したアルキル基であってもよい。
【0049】
アルキル基の炭素数は、特に限定されないが、炭素数1~30が好ましく、炭素数8~22がより好ましい。アルキル基の具体例としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、イコシル基、イソブチル基、イソペンチル基、イソヘキシル基、イソヘプチル基、イソオクチル基、イソデシル基、イソウンデシル基、イソドデシル基、イソトリデシル基、イソテトラデシル基、イソペンタデシル基、イソヘキサデシル基、イソヘプタデシル基、イソオクタデシル基、イソイコシル基等が挙げられる。
【0050】
成分(B)において、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエステル、ポリオキシアルキレンアルケニルアミノエーテルを構成するアルケニル基としては、特に制限はなく、例えば、直鎖状のアルケニル基、分岐アルケニル基が挙げられる。分岐アルケニル基における分岐位置は、特に制限はなく、例えば、α位が分岐したアルケニル基であってもよいし、β位が分岐したアルケニル基であってもよい。
【0051】
アルケニル基の炭素数は、特に限定されないが、炭素数1~30が好ましく、炭素数8~22がより好ましい。アルケニル基の具体例としては、例えばブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基、イコセニル基、イソブテニル基、イソペンテニル基、イソヘキセニル基、イソヘプテニル基、イソオクテニル基、イソノネニル基、イソデセニル基、イソウンデセニル基、イソドデセニル基、イソトリデセニル基、イソテトラデセニル基、イソペンタデセニル基、イソヘキサデセニル基、イソヘプタデセニル基、イソオクタデセニル基、イソイコセニル基等が挙げられる。
【0052】
成分(B)において、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエステル、ポリオキシアルキレンアルケニルエステル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルアミノエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルアミノエーテルを構成するアルキレンオキサイドの具体例としては、例えばエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等が挙げられる。アルキレンオキサイドの付加モル数の下限は、適宜設定されるが、好ましくは0.1モル以上、より好ましくは1モル以上、さらに好ましくは2モル以上である。かかる付加モル数の上限は、適宜設定されるが、好ましくは50モル以下、より好ましくは40モル以下、さらに好ましくは30モル以下である。かかる数値範囲により、摩擦特性をより向上させる。上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。なお、アルキレンオキサイドの付加モル数は、仕込み原料中における脂肪族アルコール、脂肪族カルボン酸、又は脂肪族アミン1モルに対するアルキレンオキサイドのモル数を示す。アルキレンオキサイドは、一種類のアルキレンオキサイドを単独で使用してもよいし、又は二種以上のアルキレンオキサイドを適宜組み合わせて使用してもよい。アルキレンオキサイドが2種類以上適用される場合、それらの付加形態は、ブロック付加、ランダム付加、及びブロック付加とランダム付加の組み合わせのいずれでもよく、特に制限はない。
【0053】
成分(B)において、ポリオキシアルキレンアルキルアミノエーテルと無機酸との塩、ポリオキシアルキレンアルケニルアミノエーテルと無機酸との塩を構成する無機酸塩としては、例えば塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩等が挙げられる。
【0054】
これらの成分(B)は、一種類の成分(B)を単独で使用してもよいし、又は二種以上の成分(B)を適宜組み合わせて使用してもよい。
(有機リン酸エステル化合物(C))
有機リン酸エステル化合物(C)としては、例えばアルキルリン酸エステル、アルケニルリン酸エステル、ポリオキシアルキレン基を有するアルキルリン酸エステル又はアルケニルリン酸エステル、それらの塩等が挙げられる。アルキルリン酸エステルを構成するアルキル基又はアルケニル基は、特に制限はなく、例えば、直鎖状であっても、分岐鎖構造を有するものでもよい。また、分岐鎖構造における分岐位置は、特に制限はなく、例えば、α位が分岐したものであってもよいし、β位が分岐したものであってもよい。
【0055】
アルキル基又はアルケニル基の炭素数は、特に限定されないが、炭素数1~30が好ましく、炭素数8~22がより好ましい。アルキル基又はアルケニル基の具体例としては、成分(B)欄で挙げたものを採用できる。
【0056】
有機リン酸エステル化合物(C)を構成するリン酸は、特に制限はなく、オルトリン酸であってもよいし、二リン酸等のポリリン酸であってもよい。
有機リン酸エステル化合物(C)として有機リン酸エステル塩が適用される場合、塩としては、例えばリン酸エステルアミン塩、リン酸エステル金属塩等が挙げられる。
【0057】
金属塩としては、例えばアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩が挙げられる。アルカリ金属塩を構成するアルカリ金属の具体例としては、例えばナトリウム、カリウム、リチウム等が挙げられる。アルカリ土類金属塩を構成するアルカリ土類金属としては、第2族元素に該当する金属、例えばカルシウム、マグネシウム、ベリリウム、ストロンチウム、バリウム等が挙げられる。
【0058】
アミン塩を構成するアミンは、1級アミン、2級アミン、及び3級アミンのいずれであってもよい。アミン塩を構成するアミンの具体例としては、例えば、(1)メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、N-N-ジイソプロピルエチルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、2-メチルブチルアミン、トリブチルアミン、オクチルアミン、ジメチルラウリルアミン等の脂肪族アミン、(2)アニリン、N-メチルベンジルアミン、ピリジン、モルホリン、ピペラジン、これらの誘導体等の芳香族アミン類又は複素環アミン、(3)モノエタノールアミン、N-メチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、イソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、ジブチルエタノールアミン、ブチルジエタノールアミン、オクチルジエタノールアミン、ラウリルジエタノールアミン等のアルカノールアミン、(4)N-メチルベンジルアミン等のアリールアミン、(5)ポリオキシエチレンラウリルアミノエーテル、ポリオキシエチレンステリルアミノエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルアミノエーテル、(6)アンモニア等が挙げられる。
【0059】
アルキレンオキサイド鎖を付加した有機リン酸エステル化合物が用いられる場合、炭素数2~4のアルキレンオキサイドが好ましい。アルキレンオキサイドの具体例としては、例えばエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等が挙げられる。アルキレンオキサイドの付加モル数の下限は、適宜設定されるが、好ましくは0.1モル以上、より好ましくは1モル以上、さらに好ましくは2モル以上である。かかる付加モル数の上限は、適宜設定されるが、好ましくは50モル以下、より好ましくは40モル以下、さらに好ましくは30モル以下である。かかる数値範囲により、摩擦特性をより向上させる。上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。なお、アルキレンオキサイドの付加モル数は、仕込み原料中における脂肪族アルコール化合物1モルに対するアルキレンオキサイドのモル数を示す。アルキレンオキサイドは、一種類のアルキレンオキサイドを単独で使用してもよいし、又は二種以上のアルキレンオキサイドを適宜組み合わせて使用してもよい。アルキレンオキサイドが2種類以上適用される場合、それらの付加形態は、ブロック付加、ランダム付加、及びブロック付加とランダム付加の組み合わせのいずれでもよく、特に制限はない。
【0060】
これらの成分(C)は、一種類の成分(C)を単独で使用してもよいし、又は二種以上の成分(C)を適宜組み合わせて使用してもよい。
これらの中で、有機リン酸エステル化合物(C)が、分子中に炭素数8~22の脂肪族アルコールから水酸基を除いた残基又は炭素数8~22の脂肪族アルコールに炭素数2~3のアルキレンオキサイドを付加したものから水酸基を除いた残基を有するアルキルリン酸エステル、及びその塩から選ばれる少なくとも1つを含むものが好ましい。かかる化合物を使用することにより、摩擦特性をより向上させる。
【0061】
また、繊維に良好な紡績性を付与する観点から、有機リン酸エステル化合物(C)は分子中に炭素数8~22の脂肪族アルコールから水酸基を除いた残基又は炭素数8~22の脂肪族アルコールに炭素数2~3のアルキレンオキサイドを付加したものから水酸基を除いた残基を有するアルキルリン酸エステルのアルカリ金属塩が好ましい。また、分子中に炭素数8~22の脂肪族アルコールから水酸基を除いた残基又は炭素数8~22の脂肪族アルコールに炭素数2~3のアルキレンオキサイドを付加したものから水酸基を除いた残基を有するアルキルリン酸エステルのカリウム金属塩がより好ましい。また、分子中に炭素数16~22の脂肪族アルコールから水酸基を除いた残基又は炭素数16~22の脂肪族アルコールに炭素数2~3のアルキレンオキサイドを付加したものから水酸基を除いた残基を有するアルキルリン酸エステルのカリウム塩がさらに好ましい。また、分子中に炭素数16~22の脂肪族アルコールから水酸基を除いた残基を有するアルキルリン酸エステルのカリウム塩が特に好ましい。
【0062】
(含有量)
合成繊維用処理剤中において、成分(A)、成分(B)、及び有機リン酸エステル化合物(C)の含有割合の合計を100質量%とすると、成分(A)を0.1質量%以上45質量%以下の割合で含有することが好ましく、0.1質量%以上23.5質量%以下の割合で含有することがより好ましい。かかる範囲に規定することにより合成繊維用処理剤が乳化状態の場合、乳化安定性を向上させながら、摩擦特性を向上できる。
【0063】
合成繊維用処理剤中において、成分(A)、成分(B)、及び有機リン酸エステル化合物(C)の含有割合の合計を100質量%とすると、成分(B)を10質量%以上95質量%以下の割合で含有することが好ましく、20質量%以上90質量%以下の割合で含有することがより好ましい。かかる範囲に規定することにより合成繊維用処理剤が乳化状態の場合、乳化安定性を向上させる。
【0064】
合成繊維用処理剤中において、成分(A)、成分(B)、及び有機リン酸エステル化合物(C)の含有割合の合計を100質量%とすると、有機リン酸エステル化合物(C)を1質量%以上80質量%以下の割合で含有することが好ましく、5質量%以上70質量%以下の割合で含有することがより好ましい。かかる範囲に規定することにより合成繊維用処理剤が制電性等の機能を有効に発揮できる。
【0065】
(保存形態)
合成繊維用処理剤は、保存時において成分(B)を含有する合成繊維用第1処理剤、及び有機リン酸エステル化合物(C)を含有する合成繊維用第2処理剤を含むように構成することが好ましい。成分(A)は、合成繊維用第1処理剤及び合成繊維用第2処理剤のいずれか一方又は両方に含有するように構成されることが好ましい。かかる構成とすることにより、特に使用時における合成繊維用処理剤の乳化性を向上させる。
【0066】
合成繊維用第1処理剤中における成分(B)及び成分(A)の含有割合の合計を100質量%とすると、成分(B)を50質量%以上100質量%以下、及び成分(A)を0質量%以上50質量%以下の割合で含有することが好ましい。また、合成繊維用第2処理剤中における有機リン酸エステル化合物(C)及び成分(A)の含有割合の合計を100質量%とすると、有機リン酸エステル化合物(C)を50質量%以上100質量%以下、及び成分(A)を0質量%以上50質量%以下の割合で含有することが好ましい。かかる範囲に規定することにより製剤安定性をより向上させる。
【0067】
上記実施形態の合成繊維用処理剤の作用及び効果について説明する。
(1-1)上記実施形態の合成繊維用処理剤では、所定のアルキレンオキサイド付加物である成分(A)、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル等の成分(B)、及び有機リン酸エステル化合物(C)を含有する。したがって、摩擦特性、特に高温湿潤時の摩擦特性を向上できる。例えば、短繊維等の製造においてトウシートの延伸工程で用いられる延伸工程用処理剤として適用される場合、繊維間摩擦を低減させ、トウが均一な厚さで薄く広げることができる。それにより、生産性、品質性を向上できる。
【0068】
(1-2)合成繊維用処理剤が、成分(B)を含有する合成繊維用第1処理剤、及び有機リン酸エステル化合物(C)を含有する合成繊維用第2処理剤を含み、合成繊維用第1処理剤及び合成繊維用第2処理剤のいずれか一方又は両方に成分(A)を含有する場合、特に使用時における合成繊維用処理剤の乳化性を向上させる。
【0069】
<第2実施形態>
次に、本発明の合成繊維用第1処理剤(以下、第1処理剤という)を具体化した第2実施形態を説明する。以下、第1実施形態との相違点を中心に説明する。
【0070】
本実施形態の第1処理剤では、成分(E)を含有する。成分(E)は、第1実施形態において説明した成分(B)と同一成分である。第1処理剤は、有機リン酸エステル化合物(F)を含有する合成繊維用第2処理剤(以下、第2処理剤という)と併用される。有機リン酸エステル化合物(F)は、第1実施形態において説明した有機リン酸エステル化合物(C)と同一である。第1処理剤及び第2処理剤のいずれか一方又は両方に成分(D)を更に含有する。成分(D)は、第1実施形態において説明した成分(A)と同一成分である。
【0071】
第1処理剤は、成分(E)及び成分(D)を含み、さらに成分(E)及び成分(D)の含有割合の合計を100質量%とすると、成分(E)を50質量%以上99.9質量%以下、及び成分(D)を0.1質量%以上50質量%以下の割合で含有することが好ましい。さらにその場合、成分(E)を70質量%以上99.9質量%以下、及び成分(D)を0.1質量%以上30質量%以下の割合で含有することがより好ましい。かかる構成により、第1処理剤の製剤安定性をより向上できる。
【0072】
第1処理剤は、成分(E)及び成分(D)を含み、且つ第2処理剤が有機リン酸エステル化合物(F)及び成分(D)を含む場合であっても、第1処理剤中における成分(E)及び成分(D)の含有割合の合計を100質量%とすると、成分(E)を50質量%以上99.9質量%以下、前記成分(D)を0.1質量%以上50質量%以下の割合で含有することが好ましい。さらにその場合、成分(E)を70質量%以上99.9質量%以下、及び成分(D)を0.1質量%以上30質量%以下の割合で含有することがより好ましい。かかる構成により、第1処理剤の製剤安定性をより向上できる。
【0073】
上記実施形態の第1処理剤の作用及び効果について説明する。本実施形態では、第1実施形態の効果に加えて、以下の効果を有する。
(2-1)上記実施形態の第1処理剤では、成分(E)を含有し、有機リン酸エステル化合物(F)を含有する第2処理剤と併用される。そして、第1処理剤及び第2処理剤のいずれか一方又は両方に成分(D)を更に含有する。したがって、第1処理剤の製剤安定性を向上できる。また、第2処理剤との混合比率を調整することにより、得られる合成繊維用処理剤の成分を調整できる。
【0074】
<第3実施形態>
次に、本発明の第2処理剤を具体化した第2実施形態を説明する。以下、第1,2実施形態との相違点を中心に説明する。
【0075】
本実施形態の第2処理剤は、上述した有機リン酸エステル化合物(F)を含有する。そして、第2実施形態の第1処理剤と併用される。また、第1処理剤及び第2処理剤のいずれか一方又は両方に上述した成分(D)を更に含有する。
【0076】
第2処理剤は、有機リン酸エステル化合物(F)及び成分(D)を含み、有機リン酸エステル化合物(F)及び成分(D)の含有割合の合計を100質量%とすると、有機リン酸エステル化合物(F)を50質量%以上99.9質量%以下、及び成分(D)を0.1質量%以上50質量%以下の割合で含有することが好ましい。さらにその場合、有機リン酸エステル化合物(F)を70質量%以上99.9質量%以下、及び成分(D)を0.1質量%以上30質量%以下の割合で含有することがより好ましい。かかる構成により、第2処理剤の製剤安定性をより向上できる。
【0077】
第2処理剤は、第1処理剤が成分(E)及び成分(D)を含み、且つ第2処理剤が有機リン酸エステル化合物(F)及び成分(D)を含む場合であっても、第2処理剤中における有機リン酸エステル化合物(F)及び成分(D)の含有割合の合計を100質量%とすると、有機リン酸エステル化合物(F)を50質量%以上99.9質量%以下、及び成分(D)を0.1質量%以上50質量%以下の割合で含有することが好ましい。さらにその場合、有機リン酸エステル化合物(F)を70質量%以上99.9質量%以下、及び成分(D)を0.1質量%以上30質量%以下の割合で含有することがより好ましい。かかる構成により、第2処理剤の製剤安定性をより向上できる。
【0078】
上記実施形態の第2処理剤の作用及び効果について説明する。本実施形態では、第1,2実施形態の効果に加えて、以下の効果を有する。
(3-1)上記実施形態の第2処理剤では、有機リン酸エステル化合物(F)を含有する。そして、第2実施形態の第1処理剤と併用される。また、第1処理剤及び第2処理剤のいずれか一方又は両方に上述した成分(D)を更に含有する。したがって、第2処理剤の製剤安定性を向上できる。また、第1処理剤との混合比率を調整することにより、得られる合成繊維用処理剤の成分を調整できる。
【0079】
<第4実施形態>
次に、本発明の合成繊維の処理方法を具体化した第4実施形態を説明する。
本実施形態の合成繊維の処理方法では、第1実施形態の合成繊維用処理剤及び水を含有する合成繊維用処理剤の水性液(以下、水性液ともいう)を合成繊維に付与することを特徴とする。
【0080】
水性液は、水に第2実施形態の第1処理剤と、第3実施形態の第2処理剤とを添加して調製することが好ましい。第1処理剤と第2処理剤とを併用する形態は、第1処理剤と第2処理剤の混合比率を任意に変更できる。そのため、製造設備の違い又は温湿度等の気候の違い等の製造条件が異なる条件下においても、配合比率を微調整して常に最適な紡糸延伸性を得るための合成繊維用処理剤又は水性液を調製することが容易になる。それにより安定した繊維製造が可能となる。第1処理剤と第2処理剤との含有割合の比は、不揮発分の質量比として第1処理剤と第2処理剤=1/9~9/1であることが好ましい。かかる範囲に規定されることにより、操作性を向上できる。合成繊維の処理方法は、上記のように得られた水性液を、例えば紡糸又は延伸工程、仕上げ工程等において合成繊維に付与する方法である。尚、不揮発分は、対象物を105℃で2時間熱処理して揮発性物質を十分に除去した絶乾物の質量から求められる(以下、同じ)。
【0081】
水性液の調製方法は、例えば水に、第1処理剤及び第2処理剤を添加し、不揮発分濃度を0.01質量%以上10質量%以下にする方法が用いられる。
水に、第1処理剤及び第2処理剤を添加する方法は、公知の方法を適宜採用できるが、下記の工程1及び下記の工程2を経ることが好ましい。かかる方法により、第1処理剤及び第2処理剤の混合物がエマルション形態の場合、エマルションの安定性をより向上できる。
【0082】
工程1は、第1の水に、第1処理剤及び第2処理剤を添加し、不揮発分濃度が2質量%超10質量%以下の合成繊維用処理剤の水性液の母液を調製する工程である。第1処理剤及び第2処理剤の第1の水への添加順は、特に限定されず、先に第1処理剤を水に添加し、次に第2処理剤を水に添加してもよく、先に第2処理剤を水に添加し、次に第1処理剤を水に添加してもよい。また、第1処理剤及び第2処理剤を同時に水に添加してもよい。また、希釈する水の温度は、特に限定されない。エマルジョンの安定性の向上の観点から、先に第2処理剤を第1の水に添加し、次に第1処理剤を第1の水に添加することが好ましい。
【0083】
さらに、工程1は、第1の水の全量のうち20~70質量%の水を60~95℃に加温し、第1処理剤及び第2処理剤を添加した後、40℃以下に調整された残り30~80質量%の第1の水を添加する工程を経ることが好ましい。かかる方法により、第1処理剤及び第2処理剤の混合物がエマルション形態の場合、エマルションの安定性をより向上できる。この場合も第1処理剤及び第2処理剤の水への添加順は、特に限定されず、先に第1処理剤を水に添加し、次に第2処理剤を水に添加してもよく、先に第2処理剤を水に添加し、次に第1処理剤を水に添加してもよい。また、第1処理剤及び第2処理剤を同時に水に添加してもよい。エマルジョンの安定性の向上の観点から、先に第2処理剤を第1の水に添加し、次に第1処理剤を第1の水に添加することが好ましい。
【0084】
また、工程1は、第1の水の全量のうち20~70質量%の水を60~95℃に加温し、第2処理剤を添加した後、40℃以下に調整された残り30~80質量%の第1の水を添加した後、最後に第1処理剤を添加する工程を経てもよい。かかる方法により、第1処理剤及び第2処理剤の混合物がエマルション形態の場合、エマルションの安定性をより向上できる。
【0085】
工程2は、工程1で調製した合成繊維用処理剤の水性液の母液に第2の水を添加し、不揮発分濃度が0.01質量%以上2質量%以下の水性液を調製する工程である。
水性液が付与される合成繊維の種類は、特に限定されない。合成繊維に付与された水性液により、最終的に合成繊維用処理剤が合成繊維表面を覆い、摩擦特性を向上させるからである。合成繊維の具体例としては、特に制限はなく、例えば(1)ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリトリメチレンテレフタラート、ポリブチレンテレフタラート、ポリエチレンナフタラート、ポリ乳酸、これらのポリエステル系樹脂を含有して成る複合繊維等のポリエステル系繊維、(2)ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド系繊維、(3)ポリアクリル、モダアクリル等のポリアクリル系繊維、(4)ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系繊維等が挙げられる。なお、天然繊維、再生繊維等は、以下参考例とする。天然繊維又は再生繊維の具体例としては、例えば木綿繊維、晒し処理された木綿繊維、ビスコースレーヨン繊維、強力レーヨン繊維、高強力レーヨン繊維、高湿潤弾性レーヨン繊維、溶剤紡糸レーヨン繊維、ポリノジック繊維、キュプラ繊維、アセテート繊維等が挙げられる。これらの中で製造工程において、特に繊維間の摩擦特性の付与が必要なポリエステル又はポリオレフィンに適用されることが好ましい。
【0086】
繊維の用途は、特に限定されず、例えば短繊維、紡績糸、不織布等が挙げられる。短繊維及び長繊維のいずれの繊維用途としても適用できるが、短繊維に適用されることが好ましい。短繊維は、一般にステープルと呼ばれるものが該当し、一般にフィラメントと呼ばれる長繊維を含まないものとする。また、短繊維の長さは、本技術分野において短繊維に該当するものであれば特に限定されないが、例えば100mm以下であることが好ましい。これらの中で、ポリエステル短繊維に適用されることが好ましい。
【0087】
水性液を合成繊維に付着させる割合に特に制限はないが、水性液を合成繊維に対し、最終的に固形分が0.1~3質量%の割合となるよう付着させることが好ましい。かかる構成により、各成分による効能を有効に発揮できる。また、水性液を付着させる方法は、特に制限はなく、合成繊維の種類、形態、用途等により公知の方法、例えばローラー給油法、計量ポンプを用いたガイド給油法、浸漬給油法、スプレー給油法等を採用できる。
【0088】
水性液が付与された合成繊維は、公知の方法を用いて乾燥処理してもよい。乾燥処理により水等の溶媒が揮発され、第1処理剤及び第2処理剤中に含有される成分が付着している合成繊維が得られる。
【0089】
本実施形態の合成繊維の処理方法の作用及び効果について説明する。本実施形態では、第1~3実施形態の効果に加えて、以下の効果を有する。
(4-1)本実施形態の合成繊維の処理方法では、水性液を、例えば紡糸又は延伸工程、仕上げ工程等において合成繊維に付与する方法である。特に、水に第2実施形態の第1処理剤と、第3実施形態の第2処理剤とを添加して調製した水性液の場合、乳化安定性に優れる水性液が得られる。したがって、各成分による短繊維、紡績糸、不織布等に対する効能を有効に発揮できる。
【0090】
(4-2)本実施形態の合成繊維の処理方法における水性液の調製方法は、例えば水に、第1処理剤及び第2処理剤を添加し、不揮発分濃度を0.01質量%以上10質量%以下にする方法が用いられる。したがって、第1処理剤及び第2処理剤の混合物がエマルション形態の場合、エマルションの安定性を向上できる。また、予め調製された第1処理剤と第2処理剤を水に混合することにより、繊維付与形態である水性液を調製できるため、使用時に試薬から調合する方法に比べて水性液を簡易に調製できる。
【0091】
(4-3)また、水に、第1処理剤及び第2処理剤を添加し、不揮発分濃度が2質量%超10質量%以下の合成繊維用処理剤の水性液の母液を調製する工程を経る場合、エマルションの安定性をより向上できる。それにより、成分の繊維への均一な付着性を低下させることがなく、各成分による効能を有効に発揮できる。
【0092】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施できる。
・上記実施形態の各処理剤又は水性液には、本発明の効果を阻害しない範囲内において、処理剤又は水性液の品質保持のため、その他の溶媒、安定化剤、制電剤、つなぎ剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の通常処理剤等に用いられる成分をさらに配合してもよい。
【0093】
・成分(B)において、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテルのうち、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルは、環境特性の観点から合成繊維用処理剤中において、少量であることが好ましい。具体的には合成繊維用処理剤中において、1質量%以下であることが好ましく、実質的に含まないことがより好ましい。実質的に含まないとは、別途、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルを配合させることはしないという意味であり、各原料中に不純物等として含まれる少量のポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルまで除外するものではない。上記実施形態の合成繊維用処理剤の構成により、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルが少量である合成繊維用処理剤であっても、成分(A)により摩擦特性を向上できる。
【0094】
・上記実施形態において、アルコールと無水リン酸との反応で得られた有機リン酸エステル化合物(C)を使用する場合、副産物として無機リン酸が0.01~10質量%含まれている有機リン酸エステル化合物が適用されてもよい。公知の製造方法で得られた有機リン酸エステル化合物は、無機リン酸が例えば0.01~5質量%の割合で混入することがある。
【0095】
・上記実施形態の合成繊維の処理方法における水性液の調製方法について、水性液を調整する前記工程1及び工程2から選ばれる任意の工程において、さらにシリコーン組成物を加えることが、繊維製造時の消泡性、繊維の紡績性能向上等の観点から好ましい。シリコーン組成物の具体例としては、特に限定されないが、例えばポリジメチルシロキサン、ポリオキシエチレン変性シリコーン等が好ましい。シリコーン組成物を加える工程としては、水性液の安定性の観点から、工程2がより好ましい。
【実施例0096】
以下、本発明の構成及び効果をより具体的にするため、実施例等を挙げるが、本発明がこれらの実施例に限定されるというものではない。尚、以下の実施例及び比較例において、特に限定のない限り、部は質量部を、また%は質量%を意味する。
【0097】
試験区分1(合成繊維用処理剤の調製)
第1処理剤は、表1,2に示される各成分を使用し、下記調製方法により調製した。
・アルキレンオキサイド付加物(A)
アルキレンオキサイド付加物(A)は、表1に示されるA-1~14、a-1,2を使用した。アルキレンオキサイド付加物(A)を構成する脂肪族アルコールの種類、価数、及び炭素数、アルキレンオキサイド付加物(A)中のアルキレンオキサイド全体に占めるプロピレンオキサイド(PO)の質量比率(%)、アルキレンオキサイドの重合形態、並びに質量平均分子量を、表1の「出発物質」欄、「PO比率(質量%)」欄、「重合形態」欄、「質量平均分子量」欄にそれぞれ示す。
【0098】
・有機リン酸エステル化合物(C)
有機リン酸エステル化合物(C)は、表2に示されるC-1~10を使用した。C-9は、セチルアルコールとステアリルアルコールを3:7の比率で混合した原料を用いて、無水リン酸と反応させて製造した。C-10は、セチルアルコールとステアリルアルコールを7:3の比率で混合した原料を用いて、無水リン酸と反応させて製造した。有機リン酸エステル化合物(C)としてのアルキルリン酸エステルの種類、アルキルリン酸エステルを構成するモノエステル、ジエステル、ポリエステルの各含有比率(%)を、表2の「成分(C)」欄、「アルキルリン酸エステル中の成分の比率(%)」欄にそれぞれ示す。
【0099】
(実施例1)
表3に示されるように、アルキレンオキサイド付加物(A-1)7部(%)、(ポリオキシエチレン)(ポリオキシプロピレン)ランダム付加型(m=5、n=5、mはオキシエチレン単位の数、nはオキシプロピレン単位の数)ドデシルエーテル(Ba-4)15.75部(%)、ポリオキシエチレン(10モル(エチレンオキサイドの付加モル数)(以下同じ))ドデシルエーテル(Ba-5)15.75部(%)、ポリオキシエチレン(15モル)ドデシルアミン(Bc-5)31.5部(%)、有機リン酸エステル化合物(C)としてステアリルリン酸エステルカリウム塩(C-1)30部(%)を含む実施例1の合成繊維用処理剤を調製した。
【0100】
(実施例2~50、比較例1~3)
実施例2~50、比較例1~3の合成繊維用処理剤は、実施例1の合成繊維用処理剤と同様にして成分(A)~成分(C)を表3,4に示した割合で含むように調製した。比較例3は、成分(A)の代わりにポリエステル(X)としてテレフタル酸ジメチル1モルとジエチレングリコール1.3モルを縮合反応させ、この反応物とポリエチレングリコール(分子量3000)を縮合させたものを使用した。
【0101】
アルキレンオキサイド付加物(A)の種類と含有量、成分(B)の種類と含有量、有機リン酸エステル化合物(C)の種類と含有量を、表3,4の「成分(A)」欄、「成分(B)」欄、「成分(C)」欄にそれぞれ示す。
【0102】
【0103】
【0104】
【0105】
【表4】
表3,4に記載するアルキレンオキサイド付加物(B)又は後述する表5,6のアルキレンオキサイド付加物(E)の詳細は以下のとおりである。
【0106】
(アルキレンオキサイド付加物(B)(E))
Ba-1:(ポリオキシエチレン)(ポリオキシプロピレン)ランダム付加型(m=5、n=2、mはオキシエチレン単位の数、nはオキシプロピレン単位の数)デシルエ-テル
Ba-2:ポリオキシエチレン(6モル)デシルエーテル
Ba-3:(ポリオキシエチレン)(ポリオキシプロピレン)ブロック付加型(m=5、n=5、mはオキシエチレン単位の数、nはオキシプロピレン単位の数)イソデシルエーテル
Ba-4:(ポリオキシエチレン)(ポリオキシプロピレン)ランダム付加型(m=5、n=5、mはオキシエチレン単位の数、nはオキシプロピレン単位の数)ドデシルエーテル
Ba-5:ポリオキシエチレン(10モル)ドデシルエーテル
Ba-6:ポリオキシエチレン(15モル)ドデシルエーテル
Ba-7:ポリオキシエチレン(7モル)ドデシルエーテル
Ba-8:ポリオキシエチレン(9モル)ドデシルエーテル
Ba-9:(ポリオキシエチレン)(ポリオキシプロピレン)ランダム付加型(m=7、n=3、mはオキシエチレン単位の数、nはオキシプロピレン単位の数)C12-13アルキルエ-テル
Ba-10:(ポリオキシエチレン)(ポリオキシプロピレン)ランダム付加型(m=6、n=2、mはオキシエチレン単位の数、nはオキシプロピレン単位の数)C12-13アルキルエ-テル
Ba-11:ポリオキシエチレン(10モル)C12-13アルキルエーテル
Ba-12:ポリオキシエチレン(15モル)C12-13アルキルエーテル
Ba-13:ポリオキシエチレン(3モル)C12-14アルキルエーテル
Ba-14:(ポリオキシエチレン)(ポリオキシプロピレン)ブロック付加型(m=2、n=6、mはオキシエチレン単位の数、nはオキシプロピレン単位の数)トリデシルエーテル
Ba-15:ポリオキシエチレン(15モル)トリデシルエーテル
Ba-16:(ポリオキシエチレン)(ポリオキシプロピレン)ランダム付加型(m=6、n=2、mはオキシエチレン単位の数、nはオキシプロピレン単位の数)イソトリデシルエーテル
Ba-17:(ポリオキシエチレン)(ポリオキシプロピレン)ランダム付加型(m=8、n=4、mはオキシエチレン単位の数、nはオキシプロピレン単位の数)C11-14アルキルエ-テル
Ba-18:ポリオキシエチレン(10モル)C11-14アルキルエーテル
Ba-19:ポリオキシエチレン(10モル)オクタデシルエ-テル
Ba-20:ポリオキシエチレン(10モル)オレイルエ-テル
Ba-21:ポリオキシエチレン(5モル)オレイルエ-テル
Ba-22:ポリオキシエチレン(8モル)オレイルエ-テル
Ba-23:(ポリオキシエチレン)(ポリオキシプロピレン)ランダム付加型(m=10、n=10、mはオキシエチレン単位の数、nはオキシプロピレン単位の数)硬化ひまし油
Bb-1:ポリオキシエチレン(10モル)ラウリルエステル
Bb-2:ポリオキシエチレン(12モル)ラウリルエステル
Bb-3:ポリオキシエチレン(10モル)オレイルエステル
Bb-4:ヤシ脂肪酸-ポリオキシエチレン(10モル)
Bb-5:ヤシ脂肪酸-ポリオキシエチレン(7モル)
Bc-1:ポリオキシエチレン(4モル)ドデシルアミン
Bc-2:ポリオキシエチレン(10モル)ドデシルアミン
Bc-3:ポリオキシエチレン(10モル)ドデシルアミンと燐酸の塩
Bc-4:ポリオキシエチレン(12モル)ドデシルアミン
Bc-5:ポリオキシエチレン(15モル)ドデシルアミン
Bc-6:ポリオキシエチレン(5モル)オクタデシルアミン
Bc-7:ポリオキシエチレン(10モル)オクタデシルアミン
試験区分2(湿潤時摩擦の評価)
図1に示す摩擦試験装置10を用いて、以下のように湿潤時摩擦を評価した。
図1に示すように、所定の大きさの容器11内に、各例の合成繊維用処理剤の1%水性液12を満たした。フリーローラー13を、容器11内の合成繊維用処理剤の1%水性液12に浸るように配置し、フリーローラー14,15を容器11の上部に配置した。ポリエステルフィラメント16を、フリーローラー14,13,15の順に通した。ポリエステルフィラメント16は、フリーローラー13において180°以上の周回で巻かれ、水性液12中においてフリーローラー13の接触前後のポリエステルフィラメント16が接点17で接触するよう配置した。
【0107】
各実施例の1%水性液12について、
図1の状態でポリエステルフィラメント16を矢印A方向へ3m/分の速度で引っ張った。このときのフリーローラー14の上流部における張力T1及びフリーローラー15の下流部における張力T2を、25℃、65%RHに保たれた恒温室で、水性液12の温度を20±0.5℃にコントロールした条件下で測定した。なお、評価用の水性液12は、調製後、80℃で10時間保管後に評価温度まで冷却し、評価を実施した。
【0108】
評価は、各例の合成繊維用処理剤においてA成分を含まない場合に対してT2/T1が何%低減したかを求めた。例えば、比較例2の場合、B成分とC成分のみの組成で試験した場合のT2/T1の値をT0とする。A成分を含む比較例2の組成で試験した場合のT2/T1の値をTaとする。この場合、T0よりもTaの値の低減効果が10%未満であったため「×」の評価となる。式で表すと、(T0-Ta)/T0×100<10となる。結果を表3,4の「湿潤時摩擦」欄に示す。なお、比較例1は、乳化安定性が悪く、湿潤時摩擦及び後述する高温での湿潤時摩擦の試験を行うことができなかった。
【0109】
・湿潤時摩擦の評価基準
◎(良好):A成分を含まない場合に対してT2/T1が20%以上低減した場合
○(可):A成分を含まない場合に対してT2/T1が10%以上20%未満の範囲で低減した場合
×(不可):A成分を含まない場合に対して低減効果が10%未満の場合
試験区分3(高温湿潤時摩擦の評価)
湿潤時摩擦と同じ装置を使い、測定時の水性液の温度を60±0.5℃にコントロールした条件下で実施した以外、湿潤時摩擦と同様に評価した。結果を表3,4の「高温湿潤時摩擦」欄に示す。
【0110】
試験区分4(乳化性の評価)
各例の合成繊維用処理剤の5%水性液を調製した。その100gを200mL透明ポリ瓶に入れ蓋をして50℃で静置した。1晩経過後、外観を観察し、下記の条件に従って評価した。結果を表3,4の「乳化性」欄に示す。
【0111】
・乳化性の評価基準
◎(良好):透明で、分離や沈殿、濁りが無く、安定である場合
○(可):外観に濁りがあり、不透明ではあるが、分離や沈殿は起きておらず、安定である場合
×(不可):1晩経過後に沈殿がある場合
試験区分5(第1処理剤の調製)
(第1処理剤(I-1))
表5に示されるように、アルキレンオキサイド付加物(D)としてアルキレンオキサイド付加物(A-1)10部(%)、成分(E)として(ポリオキシエチレン)(ポリオキシプロピレン)ランダム付加型(m=5、n=5、mはオキシエチレン単位の数、nはオキシプロピレン単位の数)ドデシルエーテル(Ba-4)22.5部(%)、ポリオキシエチレン(10モル)ドデシルエーテル(Ba-5)22.5部(%)、ポリオキシエチレン(15モル)ドデシルアミン(Bc-5)45部(%)を含む第1処理剤(I-1)を調製した。
【0112】
(第1処理剤I-2~50、第1処理剤i-1~3)
第1処理剤I-2~50、第1処理剤i-1~3は、第1処理剤(I-1)と同様にしてアルキレンオキサイド付加物(D)、成分(E)を表5,6に示した割合で含むように調製した。第1処理剤i-3は、成分(D)の代わりに上述したポリエステル(X)を使用した。アルキレンオキサイド付加物(D)の種類と含有量、成分(E)の種類と含有量を、表5,6の「成分(D)」欄、「成分(E)」欄にそれぞれ示す。
【0113】
【0114】
【表6】
試験区分6(第2処理剤の調製)
(第2処理剤(II-1))
第2処理剤(II-1)は、表7に示される有機リン酸エステル化合物(F)としてステアリルリン酸エステルカリウム塩(C-1)100部(%)を含むようにした。
【0115】
(第2処理剤II-2~15)
第2処理剤II-2~15は、表7に示される有機リン酸エステル化合物(F)、必要によりアルキレンオキサイド付加物(D)を表7に示した割合で含むように調製した。アルキレンオキサイド付加物(D)の種類と含有量、有機リン酸エステル化合物(F)の種類と含有量を、表7の「成分(D)」欄、「成分(F)」欄にそれぞれ示す。
【0116】
【表7】
試験区分7(製剤安定性の評価)
上記第1処理剤又は第2処理剤を、25℃又は50℃にて1週間保管した。1週間経過後の外観を観察し、下記の基準に従って評価した。結果を表5~7の「製剤安定性」欄に示す。
【0117】
・製剤安定性の評価基準(第1剤)
◎(良好):外観透明で分離や増粘が起きていない場合
○(可):25℃において外観透明で、分離や増粘が起きていないが、50℃においては外観に濁りが生じる場合、又は分離や増粘が起きている場合
×(不可):25℃、50℃どちらの条件においても外観に濁りが生じる場合、又は分離や増粘が起きている場合
・製剤安定性の評価基準(第2剤)
◎(良好):分離や増粘が起きていない場合
○(可):25℃において分離や増粘が起きていないが、50℃においては分離や増粘が起きている場合
×(不可):25℃、50℃どちらの条件においても分離や増粘が起きている場合
試験区分8(第1処理剤と第2処理剤から合成繊維用処理剤の調製)
(実施例51)
表8に示される第1処理剤(I-1)70部、第2処理剤(II-1)30部、及び水を混合して実施例51の合成繊維用処理剤の水性液を調製した。
【0118】
(実施例52~100)
実施例51と同様にして、表8に示される第1処理剤と第2処理剤、及び実施例51と同じ割合の水とを混合して各例の合成繊維用処理剤の水性液を調製した。第1処理剤の種類と含有比率、第2処理剤の種類と含有比率を、表8の「第1処理剤」欄、「第2処理剤」欄にそれぞれ示す。
【0119】
得られた各例の合成繊維用処理剤を用いて、実施例1と同様に湿潤時摩擦、高温湿潤時摩擦、乳化性について評価した。結果を表8の「湿潤時摩擦」欄、「高温湿潤時摩擦」欄、「乳化性」欄にそれぞれ示す。
【0120】
【表8】
本発明の合成繊維用処理剤は、乳化性に優れ、また合成繊維用処理剤が付与された合成繊維は、湿潤時摩擦、高温湿潤時摩擦を向上させる効果が得られる。なお、各例の合成繊維用処理剤をポリオレフィンとしてポリプロピレン繊維にも適用できることを確認している。