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特開2022-131852バリアネット、人工芝設備およびグラウンドの施工方法
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  • 特開-バリアネット、人工芝設備およびグラウンドの施工方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022131852
(43)【公開日】2022-09-07
(54)【発明の名称】バリアネット、人工芝設備およびグラウンドの施工方法
(51)【国際特許分類】
   E01C 13/08 20060101AFI20220831BHJP
【FI】
E01C13/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021031037
(22)【出願日】2021-02-26
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100130605
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 浩治
(72)【発明者】
【氏名】山下 英里
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 浩
(72)【発明者】
【氏名】越智 淳
【テーマコード(参考)】
2D051
【Fターム(参考)】
2D051AA03
2D051AB04
2D051HA06
2D051HA08
2D051HA10
(57)【要約】
【課題】人工芝の摩耗屑やゴムチップの流出抑止
【解決手段】
バリアネット20は、舗装面11と、舗装面11に敷かれる人工芝12と、舗装面11の周囲に設置されたフェンス13とを有するグラウンドにおいて、フェンス13の舗装面11側の基端部に設置される。バリアネット20は、透水性を有するシート材からなり、人工芝12の周縁部において、舗装面11と人工芝12との間に敷かれる下敷部21と、下敷部21からフェンス13に沿って立ち上がった立ち上がり部22とを有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
舗装された舗装面と、舗装面に敷かれた人工芝またはマットからなる敷物と、前記舗装面の周囲に設置されたフェンスとを有するグラウンドにおいて、前記フェンスの前記舗装面側の基端部に設置されるバリアネットであって、
当該バリアネットは、
透水性を有するシート材からなり、かつ、
前記敷物の周縁部において、前記舗装面と前記敷物との間に敷かれる下敷部と、
前記下敷部から前記フェンスに沿って立ち上がった立ち上がり部と
を有する、バリアネット。
【請求項2】
前記バリアネットの立ち上がり部は、前記フェンスに固定される固定部を有する、請求項1に記載されたバリアネット。
【請求項3】
Φ0.1mm~2.0mmの細孔を有するシート材からなる、請求項1または2に記載されたバリアネット。
【請求項4】
前記バリアネットは、縦横の網目を有するシート材からなり、縦横のピッチは、0.1mm以上2.0mm以下の範囲内である、請求項1または2に記載されたバリアネット。
【請求項5】
前記立ち上がり部の前記敷物側の側面と、前記立ち上がり部の前記フェンス側の側面とのうち少なくとも何れか一方に配置される、フィルタをさらに備えた、請求項1から4までの何れか一項に記載されたバリアネット。
【請求項6】
前記バリアネットの下敷部の上に配置されるフィルタをさらに備えた、請求項1から5までの何れか一項に記載されたバリアネット。
【請求項7】
前記フィルタの透水係数は、10-5m/s以上10-2m/s以下である、請求項5または6に記載されたバリアネット。
【請求項8】
舗装面の周囲にフェンスが設置されたグラウンドに敷かれる人工芝設備であって、
基布と、基布に植設された多数のパイルとを有する人工芝と、
前記人工芝の周縁部に設置されるバリアネットと
を備え、
前記バリアネットは、
透水性を有するシート材からなり、かつ、
前記敷物の周縁部において、前記舗装面と前記敷物との間に敷かれる下敷部と、
前記下敷部から前記フェンスに沿って立ち上がった立ち上がり部と
を有する、人工芝設備。
【請求項9】
前記バリアネットの立ち上がり部は、前記フェンスに固定される固定部を有する、請求項8に記載された人工芝設備。
【請求項10】
前記立ち上がり部の前記敷物側の側面と、前記立ち上がり部の前記フェンス側の側面とのうち少なくとも何れか一方に配置される、フィルタをさらに備えた、請求項8または9に記載された人工芝設備。
【請求項11】
前記バリアネットの下敷部の上に配置されるフィルタをさらに備えた、請求項8から10までの何れか一項に記載された人工芝設備。
【請求項12】
前記基布の上でパイル間に充填される充填材を有し、充填材は、ゴムチップを含まず、砂と土と天然有機質充填材とのうち少なくとも何れか1つの充填材からなる、人工芝設備。
【請求項13】
前記舗装面の周囲にフェンスが設置されたグラウンドに人工芝またはマットからなる敷物を敷く工程と、
前記フェンスの前記舗装面側の基端にバリアネットを設置する工程と
を有し、
ここで、当該バリアネットは、
透水性を有するシート材からなり、かつ、
前記敷物の周縁部において、前記舗装面と前記敷物との間に敷かれる下敷部と、
前記下敷部から前記フェンスに沿って立ち上がった立ち上がり部と
を有する、グラウンドの施工方法。
【請求項14】
前記バリアネットの立ち上がり部を、前記フェンスに固定する工程を有する、請求項13に記載されたグラウンドの施工方法。
【請求項15】
前記立ち上がり部の前記敷物側の側面と、前記立ち上がり部の前記フェンス側の側面とのうち少なくとも何れか一方にフィルタを設置する工程を有する、請求項13または14に記載された、グラウンドの施工方法。
【請求項16】
前記バリアネットの下敷部の上にフィルタを設置する工程をさらに有する、請求項13から15までの何れか一項に記載された人工芝設備。
【請求項17】
前記グラウンドは、前記フェンスの前記舗装面側の基端に排水のための溝が設けられており、前記バリアネットを設置する工程では、前記バリアネットの下敷部は、当該溝に設置された蓋の上に被せられる、請求項13から16までの何れか一項に記載されたグラウンドの施工方法。
【請求項18】
前記敷物は、基布と、基布に植設された多数のパイルとを有する人工芝であって、
前記基布の上でパイル間に充填材を充填する工程をさらに有する、請求項13から17までの何れか一項に記載されたグラウンドの施工方法。
【請求項19】
前記充填材は、ゴムチップを含まず、砂と土と天然有機質充填材とのうち少なくとも何れか1つの充填材からなる、請求項18に記載されたグラウンドの施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バリアネット、人工芝設備およびグラウンドの施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2016-20574号公報には、土系からなる難透水性または非透水性の下地上に、パイル間に粒状物を充填してなる充填材入り人工芝が敷設されていた人工芝構造体に関する発明が開示されている。同公報では、下地上に設けられた砕石層と、上記砕石層上に配置された排水層としての繊維製シート基材内に排水チューブを含む排水フィルタとを備え、排水フィルタ上に充填材入り人工芝が敷設されていることが開示されている。
【0003】
特開2017-160731号公報には、温度上昇を抑制することができる人工芝、及びそのパイル用のヤーンの製造方法が開示されている。同公報では、パイルを多孔質構造にすることが開示されている。また、パイルの間に砂やゴムチップ等の粒状物が充填されることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-20574号公報
【特許文献2】特開2017-160731号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、人工芝では、パイルに樹脂が用いられており、使用により摩耗屑が生じる。また、パイル間の充填材にもゴムチップが用いられている。人工芝の摩耗屑やゴムチップがグラウンド外に流出するのを防止したい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここで開示されるバリアネットは、舗装された舗装面と、舗装面に敷かれた人工芝またはマットからなる敷物と、舗装面の周囲に設置されたフェンスとを有するグラウンドにおいて、フェンスの前記舗装面側の基端部に設置される部材である。バリアネットは、透水性を有するシート材からなり、かつ、敷物の周縁部において、舗装面と敷物との間に敷かれる下敷部と、下敷部からフェンスに沿って立ち上がった立ち上がり部とを有しているとよい。かかるバリアネットが設置されることによって、摩耗屑などのグラウンド外への流出を効果的に抑止できる。
【0007】
バリアネットの立ち上がり部は、フェンスに固定される固定部を有していてもよい。また、立ち上がり部の前記敷物側の側面と、立ち上がり部の前記フェンス側の側面とのうち少なくとも何れか一方に配置される、フィルタをさらに備えていてもよい。また、フィルタは、バリアネットの下敷部の上に設置されていてもよい。バリアネットやフィルタは、適宜に舗装面の周囲にフェンスが設置されたグラウンドに敷かれる人工芝設備を構成しうる。人工芝設備は、人工芝の基布の上でパイル間に充填される充填材を有していてもよい。充填材は、ゴムチップを含まず、砂と土と天然有機質充填材とのうち少なくとも何れか1つの充填材からなりうる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、人工芝グラウンド10を模式的に示す断面図である。
図2図2は、人工芝グラウンド10の他の形態を模式的に示す断面図である。
図3図3は、人工芝グラウンド10の他の形態を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、ここで開示されるバリアネット、人工芝設備およびグラウンドの施工方法を図面に基づいて説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されない。各図面は模式的に描かれており、必ずしも実物を反映していない。また、各図面は、一例を示すのみであり、特に言及されない限りにおいて本発明を限定しない。また、同一の作用を奏する部材・部位には、適宜に同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0010】
図1は、人工芝グラウンド10を模式的に示す断面図である。図1に示されているように、人工芝グラウンド10は、舗装面11と、人工芝12と、フェンス13と、バリアネット20と、フィルタ30を有している。ここで、人工芝12と、バリアネット20と、フィルタ30は、人工芝設備50を構成している。
【0011】
〈舗装面11〉
舗装面11は、人工芝12が敷かれるために舗装された面である。舗装面11は、人工芝12が敷かれる平坦な面である。舗装面11は、路床から路盤、砕石やアスファルトなどで構成され、人工芝12のレベルを合わせるために平坦かつ精確に施工される。フェンス13は、舗装面11の周囲に設置されている。フェンス13は、舗装面11の周囲において地面から立ち上がっている。フェンス13は、例えば、金網やパネルで構成されていてもよい。また、フェンス13は、コンクリートやコンクリートブロックなど壁の上に設けられた形態でもよい。フェンス13の高さは、人工芝グラウンド10の用途によって異なりうる。例えば、人工芝グラウンド10が野球場である場合には、フェンス13は、防球フェンスとも称されうる。
【0012】
〈溝14〉
人工芝グラウンド10には、舗装面11の周囲、換言すると、フェンス13の舗装面11側の基端、フェンス13の舗装面11側の基部に、排水のための溝14が設けられていてもよい。溝14は、断面がU字型や円弧や下部が細くなった三角形などであるとよく、側溝とも称される。溝14には、蓋14aが取り付けられる。蓋14aは、例えば、舗装面11とレベルを合わせられるとよい。また、蓋14aには、溝14への通水が可能な孔が形成されているとよい。図示は省略するが、舗装面11には、適宜に排水のためのドレンが埋設されていてもよい。また、フェンス13には、防風や防砂のためのネットが取り付けられる場合がある。これらは、風が強いときに、グラウンド内の風の影響を緩和したり、グラウンド内で生じる砂埃がグラウンドの外に舞い散ったりするのを防止するものである。なお、フェンス13の舗装面11側の基端に排水のための溝14は設けられていなくてもよい(図2参照)。
【0013】
〈人工芝12〉
人工芝12は、基布12aと、パイル12bとを有する。なお、ここでは、舗装面11に敷かれる敷物として人工芝12を挙げているが、舗装面11に敷かれる敷物は、マットであってもよい。つまり、人工芝12のように葉を模したパイル12bが植設されていないマットが、人工芝12に代えて用いられていてもよい。ここでは、人工芝12を例に説明する。人工芝12は、接続部12dを有し、適宜接続されていてもよい。図1では、人工芝12の基布12aと、舗装面11との間に隙間があるように図示されているが、実際には、人工芝12は、舗装面11に設置されているので、隙間はない。
【0014】
〈基布12a〉
基布12aは、シート状の基布である。基布12aの材質及び形態は、特に限定されない。例えば、基布12aは、ポリプロピレン、ポリエチレンなどの熱可塑性樹脂からなる平織布として形成されうる。基布12aにはパイル12bが植設されている。基布12aの裏面には、バッキング層が形成されている。バッキング層は、バッキング剤が塗布された層であり、パイル12bが抜け落ちるのを防止している。バッキング層は、例えば、ポリエチレンとSBRラテラックスの混合体によって構成されてもよい。なお、バッキング層は、適宜に省略されうる。
【0015】
〈パイル12b〉
パイル12bは、芝の葉を模した形状を有しており、基布12aから立ち上がっている。基布12aには、多数のパイル12bが植設されているとよい。パイル12bの材質及び形態は、芝葉の外観を実現することができる限り、特に限定されない。パイル12bには、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレンなどの熱可塑性樹脂からなる扁平なフィラメント糸(ヤーン)が用いられる。また、パイル12bは、タフティングマシンを用いて、パイル12bとなるプラスチック糸(ヤーン)が基布12aに縫い込まれることによって、基布12aに固定されてもよい。基布12aの表面からパイル12bの先端までの長さも、特に限定されない。基布12aの表面からパイル12bの先端までの長さは、20mm≦W1<50mm程度と比較的短くすることもできるし(一般にショートパイルと呼ばれる)、50mm≦W1≦70mm程度と比較的長くすることもできる(一般にロングパイルと呼ばれる)。パイル12bの長手方向の断面形状は、三角形、矩形、円形、星形等とすることができる。
【0016】
〈充填材12c〉
基布12aの表面上においてパイル12b間には、充填材12cが充填される。充填材12cは、プレーヤーがプレー中に怪我をしないようにするためのクッション材としての役割と、パイル12bを保護する役割とを有している。また、充填材12cは、競技に使用されるボールの弾み具合を調整したり、走り易さを調整したりすることにも用いられており、人工芝12での競技のプレーのしやすさを向上させることができる。また、充填材12cが充填されることによって、人工芝が全体として重たくなり、人工芝が安定して設置される。なお、このような充填材12cは、省略することも可能であるが、パイル12bがロングパイルと呼ばれる比較的高さのあるパイルである場合には、特に好ましく使用される。
【0017】
充填材12cには、弾性充填材及び硬質充填材の少なくとも一方を用いることができる。弾性充填材としては、比較的柔らかい充填材、例えば、天然有機質充填材や廃タイヤの破砕品などからなるゴムチップを用いることができる。硬質充填材としては、例えば、砂を用いることができる。硬質充填材と弾性充填材は、両方が充填されていてもよい。なお、図1に示されて形態では、充填材12cは、ゴムチップを含まず、砂、土、天然有機質充填材などで構成されているとよい。この場合、ゴムチップが含まれないことで、環境負荷が低減できる。天然有機質充填材としては、ヤシ殻を粉砕した材料が用いられうる。砂、土、天然有機質充填材などは、一種類または複数種類が適宜にブレンドされてもよい。基布12aの上でパイル12b間に充填材12cが充填されることによって、充填材12cを含む人工芝が重たくなる。
【0018】
充填材にゴムチップが含まれる場合、フェンス際領域A1は、人工芝12が敷かれるプレーゾーンA2、つまり、フェンス13から離れた内側の領域よりも、ゴムチップの充填量が少ないとよい。フェンス13際の領域A1のゴムチップの充填量が少ないことによって、プレーゾーンA2で発生した摩耗屑や充填物が、フェンス際領域A1の人工芝(バリア人工芝とも称される)に補足されることが期待される。フェンス際領域A1で補足されたパイル12bの摩耗屑や充填物は、ターフクリーナなどの芝用掃除機にて回収されるとよい。このように、フェンス際領域A1において、パイル12bの摩耗屑や充填物が補足され、パイル12bの摩耗屑や充填物が少ない状態となっていることによって、人工芝12の外に流出する、パイル12bの摩耗屑や充填物を少なくできる。
【0019】
〈バリアネット20〉
バリアネット20は、上述したように、舗装された舗装面11と、舗装面11に敷かれた人工芝12と、舗装面11の周囲に設置されたフェンス13とを有するグラウンドに用いられる。バリアネット20は、フェンス13の舗装面11側の基端部に設置される。
【0020】
バリアネット20は、全体として透水性を有するシート材からなる。バリアネット20は、下敷部21と、立ち上がり部22とを有する。下敷部21は、バリアネット20のうち、敷物としての人工芝12の周縁部において、舗装面11と人工芝12との間に敷かれる部位である。立ち上がり部22は、下敷部21からフェンス13に沿って立ち上がった部位である。
【0021】
下敷部21は、図1に示されているように、舗装面11に、フェンス13の舗装面11側の基端に排水のための溝14が設けられている場合には、当該溝14の蓋14aの上に被せられるとよい。これによって、溝14に通水する孔がバリアネット20の下敷部21によって覆われる。このため、人工芝12の摩耗屑などは、バリアネット20に補足され、溝14に流出しにくくなる。また、人工芝12に充填材12cが充填され、人工芝12が重たくなることによって、人工芝12と舗装面11との間に敷かれた下敷部21が安定し、ずれにくくなる。また、下敷部21が、人工芝12と舗装面11との間に挟まれた状態で固定されているだけであると、バリアネット20が交換しやすくなる。
【0022】
バリアネット20の立ち上がり部22は、フェンス13に固定するための固定部22aを有しているとよい。固定部22aは、フェンス13に取り付けるための紐を通すハトメが予め定められた間隔(例えば、25cm間隔)で設けられていてもよい。バリアネット20の立ち上がり部22に、フェンス13に固定するための固定部22aが設けられていることによって、立ち上がり部22をフェンス13に対してずれずに設置できる。例えば、バリアネット20の立ち上がり部22は、結束バンドなどでフェンス13に固定されるとよい。バリアネット20の立ち上がり部22は、例えば、舗装面11から400mm~500mm程度の高さで固定されているとよい。
【0023】
バリアネット20には、例えば、目隠しネットや防砂ネットなどのシートが用いられうる。バリアネット20は、例えば、Φ0.1mm以上2.0mm以下の細孔を有しているとよい。つまり、細孔の直径は、大凡Φ0.1mm以上2.0mm以下の丸穴または当該丸穴に相当する穴を有しているとよい。なお、細孔の直径は、透水性を確保するとの観点において、好ましくは0.3mm以上、より好ましくは0.45mm以上、また、人工芝12の摩耗屑を補足するとの観点において、好ましくは1.0mm以下、より好ましくは0.6mm以下であるとよい。
【0024】
また、バリアネット20は、縦横の格子状の網目を有するシート材からなり、縦横のピッチは、0.1mm以上2.0mm以下の範囲内であってもよい。この場合、バリアネット20の縦横の網目の向きは、限定されず、縦横の網目は、斜めに配置されてもよい。バリアネット20にかかる大きさの細孔が形成されていることによって、所要の透水性が確保される。この場合、縦横のピッチは、透水性を確保するとの観点において、好ましくは0.3mm以上、より好ましくは0.45mm以上、また、人工芝12の摩耗屑を補足するとの観点において、好ましくは1.0mm以下、より好ましくは0.6mm以下であるとよい。
【0025】
また、バリアネット20の透水性の観点において適当な開口率を有しているとよい。開口率は、例えば、15%以上、好ましくは25%以上、より好ましくは30%以上であるとよい。ここで開口率は、バリアネット20の表面積にたいする孔の割合で得られ得る。なお、バリアネット20は、所要の耐久性を備えているとよく、かかる観点で、開口率の上限が定められうる。開口率の上限は、例えば、50%以下、好ましくは45%以下、より好ましくは40%以下であるとよい。バリアネット20には、例えば、ラッセル織りの生地や、溶着メッシュなどが採用されうる。より具体的には、バリアネット20には、例えば、塩化ビニルやポリプロピレンの溶着メッシュ、ポリプロピレンラッセル織りシートなどが採用されうる。また、例えば、下敷部21と立ち上がり部22を合わせた幅を有する長尺のシートを用意し、下敷部21と立ち上がり部22との境界で折曲げて、フェンス13の基端部に設置されるとよい。
【0026】
このように、透水性を有するシート材からなり、かつ、敷物(この実施形態では、人工芝12)の周縁部において、舗装面11と敷物との間に敷かれる下敷部21と、下敷部21からフェンス13に沿って立ち上がった立ち上がり部22とを有する、バリアネット20が設けられることによって、人工芝12の透水性を維持しつつ、人工芝12の摩耗屑が人工芝12の外に流出するのを抑止できる。そして、人工芝12の摩耗屑は、適宜、ターフクリーナなどで回収されるとよい。このように、バリアネット20が設置されることによって、人工芝12の摩耗屑が流出することによる環境への影響を軽減できる。このように、人工芝設備50は、バリアネット20を備えているとよい。
【0027】
〈フィルタ30〉
フィルタ30は、透水性と濾過機能とを有する材料で構成されている。フィルタ30は、例えば、不織布のような材料で構成されうる。フィルタ30には、例えば、フェルトなどが用いられる。フィルタ30の透水係数は、例えば、所要の通水性を確保するとの観点において、例えば、10-5m/s以上、好ましくは10-4.5m/s以上、より好ましくは10-4m/s以上でありうる。また、人工芝12の摩耗屑など、所要の細かい粒子を補足するとの観点において、10-2m/s以下、好ましくは10-2.5m/s以下、より好ましくは10-3m/s以下でありうる。この場合、フィルタ30は、例えば、砂の層と同程度の通水性を有しており、人工芝12の所要の通水性を確保できるとともに、細かい人工芝12の摩耗分なども効果的に補足しうる。フィルタ30に通水性が確保されていることによって、人工芝のグラウンドの排水性がよくなり、例えば、人工芝のグラウンドに水が浮きにくくなる。他方で、所要の細かい粒子を補足するとの観点においては、フィルタ30の目を細かくするとよい。かかる観点の両立を図るべく、フィルタ30に適度な通水性が確保されているとよい。
【0028】
図1では、フィルタ30は、立ち上がり部22の人工芝12側の側面に取り付けられている。これにより、バリアネット20の立ち上がり部22の内側で、人工芝12の摩耗屑や充填材に含まれるゴムチップなどが補足されうる。この場合、バリアネット20の立ち上がり部22が目詰まりしにくく、バリアネット20の耐用期間を長くできる。このように、人工芝設備50は、さらにフィルタ30を備えているとよい。
【0029】
図2は、人工芝グラウンド10の他の形態を模式的に示す断面図である。図2では、フィルタ30は、立ち上がり部22のフェンス13側の側面に取り付けられている。この場合、フィルタ30は、立ち上がり部22とフェンス13との間に挟まれているとよい。立ち上がり部22のフェンス13側の側面にフィルタ30が取り付けられている場合、バリアネット20の立ち上がり部22を通過した、摩耗屑や充填材に含まれるゴムチップなどがさらにフィルタ30によって補足されうる。フィルタ30は、立ち上がり部22の人工芝12側の側面と、フェンス13側の側面との両方に取り付けられていてもよい。
【0030】
このように、フィルタ30は、図1に示された形態に限定されず、立ち上がり部22の人工芝12側の側面と、立ち上がり部22のフェンス13側の側面とのうち少なくとも何れか一方に配置されうる。また、図1および図2に示された形態において、フィルタ30は、立ち上がり部22を固定する固定部22aに取り付けられるフェンス13との結束部材、例えば、紐などよって、立ち上がり部22と一緒に、フェンス13に固定されるとよい。このため、図示は省略されているが、フィルタ30には、立ち上がり部22の固定部22aと同様の固定部が設けられていてもよい。また、バリアネット20やフィルタ30は、適宜に交換されるとよい。バリアネット20やフィルタ30の交換時期は、使用期間や透水性の劣化などで評価されるとよい。例えば、バリアネット20やフィルタ30は、耐用年数が10年程度になるように耐候性や耐摩耗性などの観点で所要の耐久性を有する素材が選定されるとよい。また、より確実に性能が確保されるように、バリアネット20やフィルタ30は、3年~5年で取り替えられるように運用されてもよい。
【0031】
ここで開示されるグラウンドの施工方法は、敷物を敷く工程と、バリアネットを設置する工程とを有している。敷物を敷く工程では、例えば、舗装面11の周囲にフェンス13が設置されたグラウンドに人工芝12またはマットからなる敷物が敷かれるとよい。バリアネットを設置する工程では、フェンス13の舗装面11側の基端にバリアネット20が設置されるとよい。ここで、人工芝12またはマットからなる敷物を敷いてからバリアネット20が設置されてもよい。またバリアネット20がフェンス13の舗装面11側の基端に設置されてから、人工芝12またはマットからなる敷物が敷かれてもよい。バリアネット20は、上述のように透水性を有するシート材からなり、下敷部21と、立ち上がり部22を有している。下敷部21は、敷物(この実施形態では、人工芝12)の周縁部において、舗装面11と人工芝12との間に敷かれる部位である。立ち上がり部22は、下敷部21からフェンス13に沿って立ち上がった部位である。
【0032】
バリアネットを設置する工程では、図1に示されているように、フェンス13の舗装面11側の基端に排水のための溝14が設けられている場合には、バリアネット20を設置する工程では、バリアネット20の下敷部21は、当該溝14に設置された蓋14aの上に被せられるとよい。これによって、バリアネット20の下敷部21が当該溝14に設置された蓋14aの上に被せられるので、人工芝12の摩耗屑が溝14に流出しにくい。
【0033】
さらに、バリアネット20の立ち上がり部22をフェンス13に固定する工程を有しているとよい。バリアネット20の立ち上がり部22がフェンス13に固定されることによって、バリアネット20の立ち上がり部22の上端が、折れ曲ったりしにくく、フェンス13からずれずにバリアネット20の立ち上がり部22が安定する。
【0034】
さらに、フィルタを設置する工程を有していてもよい。ここで、フィルタを設置する工程では、立ち上がり部22の敷物(この実施形態では、人工芝12)側の側面と、立ち上がり部22のフェンス13側の側面とのうち、少なくとも何れか一方にフィルタ30が設置されるとよい。このようにフィルタ30が設置されることによって、人工芝12の摩耗屑の流出がさらに少なくなる。フィルタ30は、バリアネット20の下敷部21の上に配置されてもよい。フィルタ30は、バリアネット20の下敷部21の上に配置されている場合でも、人工芝12の摩耗屑がフィルタ30によって補足されるので、人工芝12の摩耗屑が外部に流出しにくくなる。
【0035】
図3は、人工芝グラウンド10の他の形態を模式的に示す断面図である。図3では、フィルタ30がバリアネット20の下敷部21の上に配置された形態が示されている。例えば、この実施形態では、バリアネット20の下敷部21は、人工芝12の外周縁から大凡20cmの幅まで敷き込まれている。さらに、図3に示された形態では、バリアネット20の下敷部21の上にフィルタ30が敷かれている。フィルタ30は、バリアネット20の下敷部21の上からさらに人工芝12の下まで敷き込まれているとよい。この実施形態では、フィルタ30は、人工芝12の外周縁から大凡30cmの幅まで、バリアネット20の下敷部21よりも大凡10cm程度内側まで敷き込まれているとよい。バリアネット20の下敷部21が人工芝12の下に敷き込まれる幅や、フィルタ30が人工芝12の下に敷き込まれる幅などは適宜に変更されうる。フィルタ30は、適宜にフェルトのような不織布で構成されうる。
【0036】
フィルタ30は、上述のとおり不織布で構成されているとよい。また、図3に示された形態では、溝14は、フェンス13の外側に設けられている。図3に示された形態では、フェンス13の舗装面11側の基端部にバリアネット20が設置されている。バリアネット20は、透水性を有するシート材からなり、かつ、人工芝12の周縁部において、舗装面11と人工芝12との間に敷かれる下敷部21と、下敷部21からフェンス13に沿って立ち上がった立ち上がり部22とを有している。このため、フェンス13の外に人工芝12の摩耗屑が流出するのが抑止される。さらに、この実施形態では、バリアネット20の下敷部21の上にフィルタ30が配置されている。このため、人工芝12の摩耗屑がフィルタ30で補足されるので、フェンス13の外に人工芝12の摩耗屑が流出するのがより効果的に抑止される。
【0037】
なお、図3に示された形態では、人工芝12は、舗装面11の上で、フェンス13の基端まで届いているが、人工芝12は、フェンス13の基端まで届いておらず、人工芝12とフェンス13との間に間隙があってもよい。この場合でも、バリアネット20が、フェンス13の舗装面11側の基端部に設置されており、バリアネット20の下敷部21が人工芝12の外周縁において、人工芝12の下まで届くように所要の幅を有しているとよい。さらにバリアネット20の下敷部21の上にフィルタ30が配置されているとよい。これによって、人工芝12とフェンス13との間に間隙がある場合でも、フェンス13の外に人工芝12の摩耗屑が流出するのが抑止される。
【0038】
敷物が、図1から図3に示されているように、基布12aに多数のパイル12bが植設された人工芝である場合には、基布12aの上でパイル12b間に充填材12cを充填する工程をさらに有していてもよい。この場合、充填材12cが充填されることによって、人工芝12が重くなり、施工されるグラウンドが安定、プレーのしやすさが向上する。この場合、充填材12cは、ゴムチップを含まず、砂や、土や、天然有機質充填材などからなるとよい。充填材12cがゴムチップを含まないことで、環境負荷が軽減される。
【0039】
以上、ここで開示されるバリアネットについて、種々説明したが、ここで開示されるバリアネットは、特に言及されない限りにおいて、上述した実施形態や変形例に限定されない。また、種々言及した実施形態や変形例の各構成は、互いに阻害しない関係であれば、適宜に組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0040】
10 人工芝グラウンド
11 舗装面
12 人工芝
12a 基布
12b パイル
12c 充填材
12d 接続部
13 フェンス
14 溝
14a 蓋
20 バリアネット
21 下敷部
22 立ち上がり部
22a 固定部
30 フィルタ
50 人工芝設備
A1 フェンス際領域
A2 プレーゾーン
図1
図2
図3