(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022131857
(43)【公開日】2022-09-07
(54)【発明の名称】成形装置及びこれを用いる成形構造体の製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 45/26 20060101AFI20220831BHJP
B29C 33/14 20060101ALI20220831BHJP
B29C 45/14 20060101ALI20220831BHJP
【FI】
B29C45/26
B29C33/14
B29C45/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021031044
(22)【出願日】2021-02-26
(71)【出願人】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094190
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 清路
(74)【代理人】
【識別番号】100151127
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 勝雅
(74)【代理人】
【識別番号】100151644
【弁理士】
【氏名又は名称】平岩 康幸
(72)【発明者】
【氏名】綱場 佳奈
【テーマコード(参考)】
4F202
4F206
【Fターム(参考)】
4F202AD05
4F202AD19
4F202AD20
4F202AG03
4F202AG28
4F202AH24
4F202AH26
4F202AR15
4F202CA11
4F202CB01
4F202CB12
4F202CB13
4F202CK12
4F202CK52
4F202CQ01
4F202CQ05
4F202CQ07
4F206AD05
4F206AD19
4F206AD20
4F206AG28
4F206AH24
4F206AH26
4F206AR15
4F206JA07
4F206JB12
4F206JB13
4F206JL02
4F206JM02
4F206JM11
4F206JN32
4F206JQ81
(57)【要約】
【課題】成形体の不良品を低減できるとともに、基材の繊維密度や材料配合比の選択幅拡大及び検討工数削減を図ることができる成形装置を提供する。
【解決手段】本成形装置11Aは、基材2をプレス成形する一対の成形型12、13を備え、一方の成形型13には、プレス成形された基材との間で成形体3の射出成形空間S2を形成する凹部16が設けられているとともに、射出成形空間に溶融樹脂mを射出する射出ユニット15が設けられており、凹部は、成形体を構成するリブ5を成形するためのリブ用凹部18を備える。そして、一方の成形型には、リブ用凹部の開口を閉塞する閉塞位置Aと該開口を開放する開放位置Bとの間で変位可能に遮蔽部材21Aが設けられており、遮蔽部材は、基材をプレス成形する際に閉塞位置に位置されるとともに、成形体を射出成形する際に開放位置に位置される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維を含む基材と、前記基材に接合された成形体と、を備える成形構造体を成形するための成形装置であって、
前記基材をプレス成形する一対の成形型を備え、
前記一対の成形型のうちの一方の成形型には、プレス成形された前記基材との間で前記成形体の射出成形空間を形成する凹部が設けられているとともに、前記射出成形空間に溶融樹脂を射出する射出ユニットが設けられており、
前記凹部は、前記成形体を構成するリブを成形するためのリブ用凹部を備え、
前記一方の成形型には、前記リブ用凹部の開口を閉塞する閉塞位置と該開口を開放する開放位置との間で変位可能に遮蔽部材が設けられており、
前記遮蔽部材は、前記基材をプレス成形する際に前記閉塞位置に位置されるとともに、前記成形体を射出成形する際に前記開放位置に位置されることを特徴とする成形装置。
【請求項2】
前記成形体は、機能部品と、前記機能部品に連なる前記リブと、を備え、
前記凹部は、前記機能部品を成形するための部品用凹部と、前記部品用凹部に連なる前記リブ用凹部と、を備え、
前記リブ用凹部は、前記部品用凹部に溶融樹脂を供給するためのランナーを構成する請求項1に記載の成形装置。
【請求項3】
前記基材の前記成形体が接合された部分の密度は、0.8g/cm3を超えて1.6g/cm3以下である請求項1又は2に記載の成形装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の成形装置を用いて、
繊維を含む基材と、前記基材に接合された成形体と、を備える成形構造体を製造する方法であって、
前記遮蔽部材が前記閉塞位置に位置された状態で、前記一対の成形型により前記基材をプレス成形するプレス成形工程と、
前記遮蔽部材が前記開放位置に位置された状態で、前記射出ユニットにより前記射出成形空間に溶融樹脂を射出して前記成形体を射出成形する射出成形工程と、を備えることを特徴とする成形構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形装置及びこれを用いる成形構造体の製造方法に関し、さらに詳しくは、繊維を含む基材に成形体が接合された成形構造体を成形するための成形装置及びこれを用いる成形構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の成形構造体として、ケナフ繊維等の繊維を含む基材と、該基材に接合される成形体と、を備えるものが一般に知られている(例えば、特許文献1等を参照)。この特許文献1には、一対の成形型を備える成形装置を用いて、SBI(Simultaneous Back Injection)工法により成形構造体を得ることが記載されている。このSBI工法では、一対の成形型により基材がプレス成形され、一方の成形型に設けられた凹部とプレス成形された基材との間に形成される射出成形空間に溶融樹脂を射出して成形体が射出成形される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、上記の成形体としては、ブラケット、ボス等の機能部品と、機能部品に連なるリブと、を備えるものが多く採用されている。この場合、一方の成形型に設けられた凹部は、機能部品を成形するための部品用凹部と、リブを形成するためのリブ用凹部と、を備える。そして、成形装置として、リブ用凹部を、部品用凹部に溶融樹脂を供給するためのランナーとして構成するものが提案されている。
【0005】
しかし、上記の成形装置では、リブ用凹部の開口は開放されているため、基材をプレス成形する際に高密度の基材の一部がリブ用凹部内に入り込んで基材リブ107が発生することがある(例えば、
図8を参照)。この基材リブ107の発生により、基材102の表面上に成形体103を射出成形する際に、リブ用凹部(すなわち、ランナー)内での溶融樹脂の円滑な流れが遮られ、成形体103を構成する機能部品やリブ105が欠肉してしまう。
【0006】
そこで、従来は、基材の密度や材料配合比等のコントロールにより、基材の一部がリブ用凹部内に入り込んで基材リブが発生することを抑制している。
しかしながら、従来の抑制方法では、基材の密度や材料配合比等のコントロールが必要であるが、SBI工法に適した密度や材料配合比等の範囲を外れると、樹脂漏れの発生に繋がる。特に、基材の密度を比較的低密度(例えば、0.8g/cm3以下)にすると、樹脂漏れの発生に繋がり易い。
また、コントロールされた良品の基材であっても、極小範囲ではSBI工法に適さない部分が存在し、それがリブ用凹部と対応する位置に配置されてしまうと、基材リブが発生してしまうことから、完全に防止することができない。
【0007】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、成形体の不良品を低減できるとともに、基材の密度や材料配合比の選択幅拡大及び検討工数削減を図ることができる成形装置及び成形構造体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記問題を解決するために、請求項1に記載の発明は、繊維を含む基材と、前記基材に接合された成形体と、を備える成形構造体を成形するための成形装置であって、前記基材をプレス成形する一対の成形型を備え、前記一対の成形型のうちの一方の成形型には、プレス成形された前記基材との間で前記成形体の射出成形空間を形成する凹部が設けられているとともに、前記射出成形空間に溶融樹脂を射出する射出ユニットが設けられており、前記凹部は、前記成形体を構成するリブを成形するためのリブ用凹部を備え、前記一方の成形型には、前記リブ用凹部の開口を閉塞する閉塞位置と該開口を開放する開放位置との間で変位可能に遮蔽部材が設けられており、前記遮蔽部材は、前記基材をプレス成形する際に前記閉塞位置に位置されるとともに、前記成形体を射出成形する際に前記開放位置に位置されることを要旨とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記成形体は、機能部品と、前記機能部品に連なる前記リブと、を備え、前記凹部は、前記機能部品を成形するための部品用凹部と、前記部品用凹部に連なる前記リブ用凹部と、を備え、前記リブ用凹部は、前記部品用凹部に溶融樹脂を供給するためのランナーを構成することを要旨とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明において、前記基材の前記成形体が接合された部分の密度は、0.8g/cm3を超えて1.6g/cm3以下であることを要旨とする。
【0011】
上記問題を解決するために、請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の成形装置を用いて、繊維を含む基材と、前記基材に接合された成形体と、を備える成形構造体を製造する方法であって、前記遮蔽部材が前記閉塞位置に位置された状態で、前記一対の成形型により前記基材をプレス成形するプレス成形工程と、前記遮蔽部材が前記開放位置に位置された状態で、前記射出ユニットにより前記射出成形空間に溶融樹脂を射出して前記成形体を射出成形する射出成形工程と、を備えることを要旨とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の成形装置によると、基材をプレス成形する一対の成形型を備え、一対の成形型のうちの一方の成形型には、プレス成形された基材との間で成形体の射出成形空間を形成する凹部が設けられているとともに、前記射出成形空間に溶融樹脂を射出する射出ユニットが設けられており、凹部は、成形体を構成するリブを成形するためのリブ用凹部を備える。そして、一方の成形型には、リブ用凹部の開口を閉塞する閉塞位置と該開口を開放する開放位置との間で変位可能に遮蔽部材が設けられており、遮蔽部材は、基材をプレス成形する際に閉塞位置に位置されるとともに、成形体を射出成形する際に開放位置に位置される。これにより、基材をプレス成形する際に、遮蔽部材が閉塞位置に位置されてリブ用凹部の開口が閉塞されることで、基材の一部がリブ用凹部内に入り込んで基材リブが発生することが抑制される。そのため、成形体を射出成形する際にリブ用凹部内で溶融樹脂が円滑に流動する。その結果、成形体の欠肉等の不良品を低減できるとともに、基材の密度や材料配合比の選択幅拡大及び検討工数削減を図ることができる。
【0013】
また、前記成形体が、機能部品と、前記リブと、を備え、前記凹部が、部品用凹部と、前記リブ用凹部と、を備え、前記リブ用凹部が、前記部品用凹部に溶融樹脂を供給するためのランナーを構成する場合は、欠肉のない成形体を容易に射出成形することができる。
【0014】
さらに、前記基材の前記成形体が接合された部分の密度が、0.8g/cm3を超えて1.6g/cm3以下である場合は、樹脂漏れの発生を抑制できるとともに、基材と成形体との接合強度を高めることができる。
【0015】
本発明の成形構造体の製造方法によると、上記の成形装置を用いて成形構造体を製造する方法であって、前記遮蔽部材が前記閉塞位置に位置された状態で、前記一対の成形型により前記基材をプレス成形するプレス成形工程と、前記遮蔽部材が前記開放位置に位置された状態で、前記射出ユニットにより前記射出成形空間に溶融樹脂を射出して前記成形体を射出成形する射出成形工程と、を備える。これにより、基材をプレス成形する際に、遮蔽部材が閉塞位置に位置されてリブ用凹部の開口が閉塞されることで、基材の一部がリブ用凹部内に入り込んで基材リブが発生することが抑制される。そのため、成形体を射出成形する際にリブ用凹部内で溶融樹脂が円滑に流動する。その結果、成形体の欠肉等の不良品を低減できるとともに、基材の密度や材料配合比の選択幅拡大及び検討工数削減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
本発明について、本発明による典型的な実施形態の非限定的な例を挙げ、言及された複数の図面を参照しつつ以下の詳細な記述にて更に説明するが、同様の参照符号は図面のいくつかの図を通して同様の部品を示す。
【
図1】実施例1に係る成形装置を用いるドアトリムの製造方法を説明するための説明図であり、(a)は一対の成形型の間に基材の素材を配置した状態を示し、(b)は基材のプレス成形工程を示す。
【
図2】上記成形装置を用いるドアトリムの製造方法を説明するための説明図であり、(a)は遮蔽部材が開放位置に位置された状態を示し、(b)は成形体の射出成形工程を示し、(c)は一対の成形型から取り出されたドアトリムを示す。
【
図3】
図1及び
図2の要部断面拡大図であり、(a)は
図1のa-a線断面拡大図を示し、(b)は
図2のb-b線断面拡大図を示し、(c)は
図2のc-c線断面拡大図を示す。
【
図5】実施例2に係る成形装置を用いるドアトリムの製造方法を説明するための説明図であり、(a)は基材のプレス成形工程を示し、(b)は成形体の射出成形工程を示す。
【
図6】実施例3に係る成形装置を用いるドアトリムの製造方法を説明するための説明図であり、(a)は基材のプレス成形工程を示し、(b)は成形体の射出成形工程を示す。
【
図7】他の形態の遮蔽部材を説明するための説明図であり、(a)は表面にシボが備えられている形態を示し、(b)は表面に突起が備えられている形態を示す。
【
図8】従来の成形構造体の要部(基材リブが発生した要部)の外観画像処理図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
ここで示される事項は例示的なものおよび本発明の実施形態を例示的に説明するためのものであり、本発明の原理と概念的な特徴とを最も有効に且つ難なく理解できる説明であると思われるものを提供する目的で述べたものである。この点で、本発明の根本的な理解のために必要である程度以上に本発明の構造的な詳細を示すことを意図してはおらず、図面と合わせた説明によって本発明の幾つかの形態が実際にどのように具現化されるかを当業者に明らかにするものである。
【0018】
<成形装置>
本実施形態に係る成形装置は、例えば、
図4に示すように、繊維を含む基材2と、基材2に接合された成形体3と、を備える成形構造体1を成形するための成形装置11A、11B、11Cである。本成形装置11A~11Cは、例えば、
図1~
図3に示すように、基材2をプレス成形する一対の成形型12、13を備え、一対の成形型のうちの一方の成形型13には、プレス成形された基材2との間で成形体3の射出成形空間S2を形成する凹部16が設けられているとともに、射出成形空間S2に溶融樹脂mを射出する射出ユニット15が設けられており、凹部16は、成形体3を構成するリブ5を成形するためのリブ用凹部18を備える。そして、一方の成形型13には、リブ用凹部18の開口を閉塞する閉塞位置Aと該開口を開放する開放位置Bとの間で変位可能に遮蔽部材21A、21B、21Cが設けられており、遮蔽部材21A~21Cは、基材2をプレス成形する際に閉塞位置Aに位置されるとともに、成形体3を射出成形する際に開放位置Bに位置される。
【0019】
成形構造体1の用途等は特に問わない。成形構造体1としては、例えば、自動車、鉄道車両、船舶、飛行機等の内装材や外装材が挙げられる。このうち自動車の内装材や外装材として、例えば、ドアトリム、天井材、シートバックボード、パッケージトレイ、ドア基材、ピラーガーニッシュ、スイッチベース、クォーターパネル、サイドパネル、アームレスト、シート構造材、コンソールボックス、ダッシュボード、各種インストルメントパネル、デッキトリム、バンパー、スポイラー、カウリング等が挙げられる。さらに、上述したものの他、例えば、建築物、家具等の内装材及び外装材等が挙げられる。すなわち、ドア表装材、ドア構造材、机、椅子、棚、箪笥などの各種家具の表装材等が挙げられる。その他、包装体、トレイなどの収容体、保護用部材、パーティション部材等が挙げられる。
【0020】
基材2は、プレス成形される限り、その材質、形状等は特に問わない。基材2は、通常、繊維(補強繊維)と、繊維同士を結着する樹脂と、を含んでいる。また、基材2は、例えば、発泡剤(熱可塑性樹脂からなる殻壁内に収容された発泡剤等)を含んでいることができる。さらに、基材2の表面には、例えば、合成皮革、天然皮革、布等により形成される表皮が積層されていることができる。
【0021】
基材2を構成する繊維としては、例えば、例えば、無機繊維(ガラス繊維、炭素繊維等)や有機繊維(植物繊維、動物繊維等の天然繊維、またはポリエステル、ポリアミド、アラミド等の樹脂繊維)を利用できる。これらは1種のみを用いてもよいし2種以上を併用してもよい。また、植物性繊維には、靭皮系植物繊維(例えば、ケナフ、フラックス、ジュート、ヘンプ、ラミー等)、葉脈系植物繊維(例えば、アバカ、サイザル、アガベ等)、木質系植物繊維(例えば、広葉樹及び針葉樹等から採取された植物繊維等)、その他の植物繊維(ココヤシ殻繊維、オイルパーム空果房繊維、稲わら繊維、麦わら繊維、タケ繊維、綿等)が含まれる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0022】
基材2を構成する樹脂としては、例えば、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂を使用することができる。この熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂及びABS樹脂等のうちの1種又は2種以上の組み合わせが挙げられる。また、熱硬化性樹脂としては、例えば、ウレタン系樹脂、メラミン系樹脂、熱硬化型アクリル系樹脂、尿素系樹脂、フェノール系樹脂、エポキシ系樹脂、熱硬化型ポリエステル系樹脂等のうちの1種又は2種以上の組み合わせが挙げられる。
【0023】
基材2の密度、材料配合比等は特に問わない。基材2の成形体3(特にリブ5)が接合された部分(例えば、基材2のリブ用凹部18と対応する部分)は、例えば、基材2の成形体3が接合されていない部分よりも高密度であることができる。これにより、樹脂漏れを抑制することができる。樹脂漏れの抑制性及び基材2と成形体3の接合強度等の観点から、基材2の成形体3が接合された部分の密度が0.8g/cm3を超えて1.6g/cm3以下(好ましくは0.85~1.5g/cm3、特に0.95~1.4g/cm3)であることが好ましい。
ここで、遮蔽部材21A~21Cを備えない一般的な成形装置では、密度が比較的高密度の基材を採用すると、密度が高くなるにつれて基材リブの高さが増加する傾向にある。具体的に、一般的な成形装置を用いて、リブ幅を2mm、リブ高さを8mmとした場合、密度が1.2g/cm3の基材を採用すると、基材リブの高さが3~4mmとなり、密度が1.3g/cm3の基材を採用すると、基材リブの高さが3~6mmとなり、密度が1.4g/cm3の基材を採用すると、基材リブの高さが4~7mm(この場合、リブ用凹部をほぼ塞ぎ、樹脂流動を妨げる)となることを確認した。
なお、基材リブの発生状況は、リブの大きさの他に、成形条件(成形温度、ランナー形状、樹脂流動長等)で変化する。これらのコントロールが難しく、解決に時間がかかることが問題となる。これに対して、本成形装置11A~11Cによると、遮蔽部材21A~21Cにより基材リブの発生が抑制されるため、基材2の密度や材料配合比の選択幅が拡大される。
【0024】
成形体3は、射出成形される限り、その構成、基材への配置形態等は特に問わない。成形体3は、例えば、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂により形成されていることができる。この熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂及びABS樹脂等のうちの1種又は2種以上の組み合わせが挙げられる。また、熱硬化性樹脂としては、例えば、ウレタン系樹脂、メラミン系樹脂、熱硬化型アクリル系樹脂、尿素系樹脂、フェノール系樹脂、エポキシ系樹脂、熱硬化型ポリエステル系樹脂等のうちの1種又は2種以上の組み合わせが挙げられる。
【0025】
成形体3は、例えば、
図4に示すように、機能部品4a、4bと、機能部品4a、4bに連なるリブ5と、を備えることができる。これら機能部品4a、4b及びリブ5の個数、配置形態等は特に問わない。機能部品としては、例えば、取付用、補強用、位置決め用等のボス4a、ブラケット4b、リブなどが挙げられる。また、リブ5は、例えば、複数の機能部品4a、4bを繋ぐように設けられていることができる。この場合、単一の線状のリブ5で2つの機能部品4a、4bを繋いだり、分岐状のリブ5で3以上の機能部品4a、4bを繋いだりできる。また、リブ5の幅としては、例えば、1~4mm(特に2~3mm)が挙げられる。さらに、リブ5の高さとしては、例えば、2~10mm(特に3~8mm)が挙げられる。
【0026】
一対の成形型12、13の構成、型締め方向等は特に問わない。一対の成形型12、13は、通常、互いに近接離間可能に設けられている。さらに、一対の成形型12、13の型締め方向としては、例えば、垂直方向、水平方向、傾斜方向等が挙げられる。さらに、一方の成形型13には、通常、射出ユニット15から射出される溶融樹脂を凹部16に供給するホットランナーHが形成されている。この射出ユニット15の種類は特に問わないが、例えば、スクリュウタイプ、プランジャタイプ等を用いることができる。
【0027】
凹部16は、
図1に示すように、一方の成形型13の成形面13aに凹んだ状態で設けられている。この凹部16は、例えば、機能部品4a、4bを成形するための部品用凹部17と、リブ5を成形するためのリブ用凹部18と、を備えることができる。この場合、成形体3の成形性等の観点から、リブ用凹部18は、部品用凹部17に溶融樹脂mを供給するためのランナー(すなわち、溶融樹脂mが流れる通路)を構成することが好ましい。
部品用凹部17は、機能部品4a、4bと対応する凹み形状に形成されている限り、その個数、配置場所等は特に問わない。さらに、リブ用凹部18は、リブ5と対応する凹み形状に形成されている限り、その個数、配置場所等は特に問わない。
【0028】
本成形装置11A~11Cは、例えば、
図3に示すように、遮蔽部材21A~21Cを変位させるアクチュエータ23と、アクチュエータ23の作動を制御する制御部24と、を備えることができる。このアクチュエータ23の種類は特に問わないが、例えば、エアシリンダ、油圧シリンダ、電動モータ等を用いることができる。さらに、制御部24としては、例えば、一対の成形型12、13の駆動を制御する制御部を用いたり、一対の成形型12、13の駆動状況を検出するセンサからの検出信号が入力される制御部を用いたりすることができる。
【0029】
遮蔽部材21A~21Cとしては、例えば、アクチュエータ23の作動によりリブ用凹部18の深さ方向D1にスライドされる形態(
図3参照)、アクチュエータ23の作動によりリブ用凹部18内で揺動される形態(
図5参照)、アクチュエータ23の作動によりブ用凹部18の幅方向D2にスライドされる形態(
図6参照)等を用いることができる。
【0030】
遮蔽部材21A~21Cは、通常、リブ用凹部18内への基材2の入り込みを規制する規制面25を有している。この規制面25としては、例えば、基材2の表面に沿う平面又は曲面で形成されている形態(
図3参照)、皮、梨地、幾何学等のシボ31が設けられている形態(
図7(a)参照)、尖端状等の突起32が設けられている形態(
図7(b)参照)等を用いることができる。さらに、規制面25は、例えば、遮蔽部材21A~21Cが閉塞位置Aに位置されたときに、一方の成形型13の成形面13aのリブ用凹部18の周囲部と略面一となることができる(
図1参照)。
【0031】
遮蔽部材21A~21Cは、例えば、
図1(b)に示すように、閉塞位置Aに位置されたときに、リブ用凹部18の開口の略全部又は一部を閉塞することができる。基材リブの抑制性等の観点から、リブ用凹部18の開口面積の70%以上(特に80%以上、更に90%以上)を閉塞することが好ましい。また、遮蔽部材21A~21Cは、例えば、単一でリブ用凹部18の開口を閉塞してもよいし、複数個でリブ用凹部18の開口を閉塞してもよい。また、遮蔽部材21A~21Cの材質としては、例えば、PTFE等の樹脂、金属等が挙げられる。さらに、遮蔽部材21A~21Cの形状としては、例えば、リブ用凹部18に沿う板状、ブロック状等が挙げられる。
【0032】
<成形構造体の製造方法>
本実施形態に係る成形構造体の製造方法は、例えば、
図1~
図3に示すように、上記実施形態に係る成形装置11A~11Cを用いて、繊維を含む基材2と、基材2に接合された成形体3と、を備える成形構造体1を製造する方法であって、遮蔽部材21A~21Cが閉塞位置Aに位置された状態で、一対の成形型12、13により基材2をプレス成形するプレス成形工程と、遮蔽部材21A~21Cが開放位置Bに位置された状態で、射出ユニット15により射出成形空間S2に溶融樹脂mを射出して成形体3を射出成形する射出成形工程と、を備える。
【0033】
プレス成形工程の成形条件(例えば、加熱温度、加圧力、加圧時間等)は特に問わない。プレス成形工程では、例えば、
図1に示すように、加熱炉、熱板、温風等により加熱軟化された基材の素材2Aを一対の成形型12、13の間に配置し、一対の成形型12、13の型締めにより基材の素材2Aをプレス成形して所定の立体形状の基材2を得ることができる。
【0034】
基材の素材2Aとしては、例えば、ケナフ繊維等の補強繊維と樹脂繊維とが混合された繊維マット、ケナフ繊維等の補強繊維と補強繊維同士を結着する樹脂とを含む繊維ボード(プレボードとも称される。)等を用いることができる。この繊維ボードは、例えば、繊維マットをプレス成形して得ることができる。
なお、繊維マット又は繊維ボードを構成する繊維や樹脂としては、例えば、上述の基材を構成する繊維や樹脂を適用できる。
【0035】
射出成形工程の成形条件(例えば、溶融樹脂の温度、ランナー形状、樹脂流動長など)は特に問わない。射出成形工程では、例えば、
図2(b)に示すように、射出ユニット15から射出された溶融樹脂mがリブ用凹部18を流れてから部品用凹部17に至り、各凹部17、18に充填された溶融樹脂mが冷却固化することで、基材2に接合された成形体3を得ることができる。
【実施例0036】
以下、図面を用いて実施例により本発明を具体的に説明する。なお、本実施例では、本発明に係る「成形構造体」として自動車用のドアトリム1を例示する。
【0037】
<実施例1>
本実施例に係るドアトリム1は、
図4に示すように、所定の立体形状に形成された基材2と、基材2の車室外側を向く表面(裏面)上に接合された成形体3と、を備えている。この基材2は、ケナフ繊維等の繊維と、繊維同士を結着するポリプロピレン等の熱可塑性樹脂と、を含んでいる。また、基材2の成形体3が接合された部分の密度(例えば、約1.3g/cm
3等)は、基材2の成形体3が接合されていない部位の密度よりも高密度とされている。また、成形体3は、ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂により形成されている。この成形体3は、機能部品4a、4b(具体的に、ボス4a、クリップ座付きブラケット4b)と、機能部品4a、4bに連なるリブ5と、を備えている。このリブ5は、基材2の表面上に立ち上がる板状に形成されている。さらに、リブ5は、その幅が約2mmとされ、その高さが約8mmとされている。なお、ドアトリム1には、開口部6が形成されている。
【0038】
次に、上記構成のドアトリム1を成形するための成形装置11Aについて説明する。この成形装置11Aは、
図1に示すように、基材2をプレス成形する一対の成形型12、13を備えている。一対の成形型12、13は、互いに近接離間可能に設けられており、型開き状態(
図1(a)参照)と型締め状態(
図1(b)参照)とに切り換えられる。具体的に、成形型(上型)12は、可動型であり、基材2の車室内側の表面を形成する成形面12aを有している。また、成形型(下型)13は固定型であり、基材2の車室外側の表面(裏面)を形成する成形面13aを有している。これら成形型12、13の型締め状態において、成形面12a、13aの間に基材2をプレス成形するためのプレス成形空間S1が形成される。さらに、成形型12、13には、プレス成形された基材2の不要部分を切断する切断刃14が設けられている。
【0039】
成形型13には、プレス成形された基材2の表面との間で成形体3の射出成形空間S2を形成する凹部16が設けられている。さらに、成形型13には、射出成形空間S2に溶融樹脂mを射出するスクリュウタイプの射出ユニット15が設けられている。
【0040】
凹部16は、機能部品4a、4bを成形するための部品用凹部17と、リブ5を成形するためのリブ用凹部18と、を備えている。これら部品用凹部17とリブ用凹部18とは連通している。また、部品用凹部17は、機能部品4a、4bと対応する凹み形状に形成されている。また、リブ用凹部18は、リブ5と対応する凹み形状に形成されている。
【0041】
リブ用凹部18は、射出ユニット15から射出された溶融樹脂mを部品用凹部17に供給するためのランナーとして機能する。さらに、成形型13には、射出ユニット15に連なるホットランナーHが形成されている。このホットランナーHの端部は、リブ用凹部18に接続されている。
【0042】
成形型13には、
図1~
図3に示すように、リブ用凹部18の開口を閉塞する閉塞位置Aと該開口を開放する開放位置Bとの間で変位可能に遮蔽部材21Aが設けられている。この遮蔽部材21Aは、金属製またはPTFE等の樹脂製であり、リブ用凹部18の長手方向に沿うブロック状に形成されている。さらに、遮蔽部材21Aは、リブ用凹部18の深さ方向D1にスライド可能に設けられている。
なお、本実施例では、遮蔽部材21Aは、
図4中の成形体3Aにおいて一対のボス4aを繋ぐ線状の複数(図中3本)のリブ5に対応して複数設けられており、
図4中の成形体3Bにおいて2つのボス4aとブラケット4bとを繋ぐ分岐状のリブ5に対応して設けられている。
【0043】
具体的に、遮蔽部材21Aは、
図3に示すように、エア又は油圧シリンダ(アクチュエータ)23のピストンロッド23aの先端側に取り付けられている。このシリンダ23は、一対の成形型12、13の駆動を制御する制御部24により作動制御される。このシリンダ24の伸縮動作により、遮蔽部材21Aは、リブ用凹部18の深さ方向D1に沿ってスライドされて、基材2をプレス成形する際に閉塞位置A(
図3(a)参照)に位置されるとともに、成形体3を射出成形する際に開放位置B(
図3(b)参照)に位置される。
【0044】
遮蔽部材21Aは、リブ用凹部18への基材2の入り込みを規制する規制面25を有している。この規制面25は、基材2の表面に沿う平面又は曲面に形成されている。また、規制面25は、遮蔽部材21Aが閉塞位置Aに位置されたときに、成形面13aのリブ用凹部18の周囲部と略面一とされる。さらに、規制面25は、遮蔽部材21Aが開放位置Bに位置されたときに、リブ用凹部18の底壁を形成する。
【0045】
なお、遮蔽部材21Aの長手方向の中間部には、射出ユニット15から射出された溶融樹脂の流れる孔26が形成されている(
図1参照)。さらに、遮蔽部材21Aは、基材2をプレス成形する際に成形型12、13と同程度の圧力がかけられても、その圧力に耐え得るように構成されている。
【0046】
次に、上記構成の成形装置11Aを用いるドアトリム1の製造方法について説明する。このドアトリム1の製造方法は、以下に述べるプレス成形工程及び射出成形工程を備えている。
【0047】
プレス成形工程は、
図1及び
図3(a)に示すように、遮蔽部材21Aが閉塞位置Aに位置された状態で、一対の成形型12、13により基材2をプレス成形する工程である。具体的に、プレス成形工程では、加熱軟化された基材の素材2Aを一対の成形型12、13の間に配置し、一対の成形型12、13の型締めにより、切断刃14で基材の素材2Aの不要部分を切断するとともに、プレス成形空間S1に対応する形状に基材の素材2Aを圧縮して所定の立体形状の基材2が得られる。
【0048】
プレス成形工程では、遮蔽部材21Aが閉塞位置Aに位置されているため、遮蔽部材21Aの規制面25によってプレス成形中に基材の素材2Aの一部がリブ用凹部18に入り込むことが規制される。さらに、プレス成形工程の完了後には、
図2(a)に示すように、シリンダ23の作動により遮蔽部材21Aが閉塞位置Aから開放位置Bにスライドされる。
【0049】
射出成形工程は、
図2(b)及び
図3(b)に示すように、遮蔽部材21Aが開放位置Bに位置された状態で、射出ユニット15により射出成形空間S2に溶融樹脂mを射出して成形体3を射出成形する工程である。具体的に、射出成形工程では、射出ユニット15から射出された溶融樹脂mがホットランナーHを介してリブ用凹部18に流れてから部品用凹部17に至り、溶融樹脂mが基材2を構成する樹脂と混ざり合い、各凹部17、18に充填された溶融樹脂mが冷却固化することで、基材2の表面上に接合された成形体3が得られる。その後、
図2(c)及び
図3(c)に示すように、型開きされた一対の成形型12、13からドアトリム1が取り出される。
なお、取り出されたドアトリム1は、表皮を接着する工程や各種部品を取り付ける工程等を経て製品化される。
【0050】
以上より、本実施例の成形装置11Aによると、基材2をプレス成形する一対の成形型12、13を備え、一対の成形型12、13のうちの一方の成形型13には、プレス成形された基材2との間で成形体3の射出成形空間S2を形成する凹部16が設けられているとともに、射出成形空間S2に溶融樹脂mを射出する射出ユニット15が設けられており、凹部16は、成形体3を構成するリブ5を成形するためのリブ用凹部18を備える。そして、一方の成形型13には、リブ用凹部18の開口を閉塞する閉塞位置Aと該開口を開放する開放位置Bとの間で変位可能に遮蔽部材21Aが設けられており、遮蔽部材21Aは、基材2をプレス成形する際に閉塞位置Aに位置されるとともに、成形体3を射出成形する際に開放位置Bに位置される。これにより、基材2をプレス成形する際に、遮蔽部材21Aが閉塞位置Aに位置されてリブ用凹部18の開口が閉塞されることで、基材2の一部がリブ用凹部18内に入り込んで基材リブが発生することが抑制される。そのため、成形体3を射出成形する際にリブ用凹部18内で溶融樹脂mが円滑に流動する。その結果、成形体3の欠肉等の不良品を低減できるとともに、基材2の密度や材料配合比の選択幅拡大及び検討工数削減を図ることができる。
【0051】
また、本実施例では、成形体3は、機能部品4a、4bと、リブ5と、を備え、凹部16は、部品用凹部17と、リブ用凹部18と、を備え、リブ用凹部18は、部品用凹部17に溶融樹脂mを供給するためのランナーを構成する。これにより、欠肉のない成形体3を容易に射出成形することができる。
【0052】
さらに、本実施例では、基材2の成形体3が接合された部分の密度は、約1.3g/cm3である。これにより、樹脂漏れの発生を抑制できるとともに、基材2と成形体3との接合強度を高めることができる。
【0053】
さらに、本実施例では、遮蔽部材21Aの規制面25は、基材2の表面に沿う平面又は曲面に形成されている。これにより、遮蔽部材21Aひいては成形装置11Aの低コスト化を図ることができる。
【0054】
さらに、本実施例のドアトリム1の製造方法によると、上記の成形装置11Aを用いてドアトリム1を製造する方法であって、遮蔽部材21Aが閉塞位置Aに位置された状態で、一対の成形型12、13により基材2をプレス成形するプレス成形工程と、遮蔽部材21Aが開放位置Bに位置された状態で、射出ユニット15により射出成形空間S2に溶融樹脂mを射出して成形体3を射出成形する射出成形工程と、を備える。これにより、基材2をプレス成形する際に、遮蔽部材21Aが閉塞位置Aに位置されてリブ用凹部18の開口が閉塞されることで、基材2の一部がリブ用凹部18内に入り込んで基材リブが発生することが抑制される。そのため、成形体3を射出成形する際にリブ用凹部18内で溶融樹脂mが円滑に流動する。その結果、成形体3の欠肉等の不良品を低減できるとともに、基材2の密度や材料配合比の選択幅拡大及び検討工数削減を図ることができる。
【0055】
<実施例2>
次に、実施例2に係る成形装置11Bについて説明するが、実施例1に係る成形装置11Aと略同じ構成の部分には同じ符号を付けて詳説を省略する。
【0056】
本実施例に係る成形装置11Bは、
図5に示すように、基材2をプレス成形する一対の成形型12、13を備えている。成形型13には、リブ用凹部18の開口を閉塞する閉塞位置Aと該開口を開放する開放位置Bとの間で変位可能に遮蔽部材21Bが設けられている。この遮蔽部材21Bは、金属製であり、リブ用凹部18の長手方向に沿う薄板状に形成されている。さらに、遮蔽部材21Bは、リブ用凹部18内で揺動可能(傾倒可能)に設けられている。
【0057】
具体的に、遮蔽部材21Bは、図示しないエア又は油圧シリンダ(アクチュエータ)のピストンロッドに接続されている。このシリンダは、一対の成形型12、13の駆動を制御する制御部24により作動制御される。このシリンダの伸縮動作により、遮蔽部材21Bは、リブ用凹部18内で揺動されて、基材2をプレス成形する際に閉塞位置A(
図5(a)参照)に位置されるとともに、成形体3を射出成形する際に開放位置B(
図5(b)参照)に位置される。
【0058】
遮蔽部材21Bは、リブ用凹部18への基材2の入り込みを規制する規制面25を有している。この規制面25は、基材2の表面に沿う平面又は曲面に形成されている。また、規制面25は、遮蔽部材21Bが閉塞位置Aに位置されたときに、成形面13aのリブ用凹部18の周囲部と略面一とされる。さらに、規制面25は、遮蔽部材21Bが開放位置Bに位置されたときに、リブ用凹部18の側壁を形成する。
【0059】
次に、上記構成の成形装置11Bを用いるドアトリム1の製造方法について説明する。本ドアトリム1の製造方法は、遮蔽部材21Bが閉塞位置Aに位置された状態で、一対の成形型12、13により基材2をプレス成形するプレス成形工程(
図5(a)参照)と、遮蔽部材21Bが開放位置Bに位置された状態で、射出ユニット15により射出成形空間S2に溶融樹脂mを射出して成形体3を射出成形する射出成形工程(
図5(b)参照)と、を備えている。この射出成形工程後に、型開きされた一対の成形型12、13からドアトリム1が取り出される。
【0060】
プレス成形工程では、遮蔽部材21Bが閉塞位置Aに位置されているため、プレス成形中に基材2の一部がリブ用凹部18に入り込むことが規制される。したがって、本実施例2の成形装置11Bによると、実施例1の成形装置11Aと略同じ作用効果を奏する。
【0061】
<実施例3>
次に、実施例3に係る成形装置11Cについて説明するが、実施例1に係る成形装置11Aと略同じ構成の部分には同じ符号を付けて詳説を省略する。
【0062】
本実施例に係る成形装置11Cは、
図6に示すように、基材2をプレス成形する一対の成形型12、13を備えている。成形型13には、リブ用凹部18の開口を閉塞する閉塞位置Aと該開口を開放する開放位置Bとの間で変位可能に遮蔽部材21Cが設けられている。また、成形型13には、リブ用凹部18に隣接する位置に遮蔽部材21Cを収容可能な収容空間28が形成されている。また、遮蔽部材21Cは、金属製であり、リブ用凹部18の長手方向に沿う薄板状に形成されている。さらに、遮蔽部材21Cは、リブ用凹部18の幅方向D2に沿ってスライド可能に設けられている。
【0063】
具体的に、遮蔽部材21Cは、図示しないエア又は油圧シリンダ(アクチュエータ)のピストンロッドに接続されている。このシリンダは、一対の成形型12、13の駆動を制御する制御部24により作動制御される。このシリンダの伸縮動作により、遮蔽部材21Cは、リブ用凹部18の幅方向D2にスライドされて、基材2をプレス成形する際に閉塞位置A(
図6(a)参照)に位置されるとともに、成形体3を射出成形する際に開放位置B(
図6(b)参照)に位置される。さらに、遮蔽部材21Cは、開放位置Bに位置されたときに収容空間28内に収容される。
【0064】
遮蔽部材21Cは、リブ用凹部18への基材2の入り込みを規制する規制面25を有している。この規制面25は、基材2の表面に沿う平面又は曲面に形成されている。また、規制面25は、遮蔽部材21Cが閉塞位置Aに位置されたときに、成形面13aのリブ用凹部18の周囲部と略面一とされる。
【0065】
次に、上記構成の成形装置11Cを用いるドアトリム1の製造方法について説明する。本ドアトリム1の製造方法は、遮蔽部材21Cが閉塞位置Aに位置された状態で、一対の成形型12、13により基材2をプレス成形するプレス成形工程(
図6(a)参照)と、遮蔽部材21Cが開放位置Bに位置された状態で、射出ユニット15により射出成形空間S2に溶融樹脂mを射出して成形体3を射出成形する射出成形工程(
図6(b)参照)と、を備えている。この射出成形工程後に、型開きされた一対の成形型12、13からドアトリム1が取り出される。
【0066】
プレス成形工程では、遮蔽部材21Cが閉塞位置Aに位置されているため、プレス成形中に基材2の一部がリブ用凹部18に入り込むことが規制される。したがって、本実施例3の成形装置11Cによると、実施例1の成形装置11Aと略同じ作用効果を奏する。
【0067】
尚、本発明においては、上記実施例に限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した実施例とすることができる。すなわち、上記実施例1~3では、遮蔽部材21A~21Cの規制面25を平面又は曲面で形成する形態を例示したが、これに限定されず、例えば、
図7(a)に示すように、遮蔽部材21A~21Cの規制面25に、皮、梨地、幾何学等のシボ31を設けるようにしてもよい。このシボ31により基材2と成形体3の接合強度を高めることができる。
【0068】
また、例えば、
図7(b)に示すように、遮蔽部材21Aの規制面25に、尖端状等の突起32を設けるようにしてもよい。これにより、突起32が基材2に刺さり込み、溶融樹脂mが突起32で開けられた穴に流れ込むことで、アンカー効果により基材2と成形体3の接合強度を高めることができる。
【0069】
また、上記実施例では、リブ用凹部18の開口を開閉する遮蔽部材21A~21Cを例示したが、これに限定されず、例えば、リブ用凹部18及び部品用凹部17の開口を開閉する遮蔽部材21A~21Cとしてもよい。さらに、例えば、遮蔽部材21A~21Cとは別に、部品用凹部17の開口を開閉する遮蔽部材を備える形態としてもよい。
【0070】
また、上記実施例では、成形型(下型)13に凹部16、射出ユニット15及び遮蔽部材21A~21Cを備える形態を例示したが、これに限定されず、例えば、成形型(上型)12に凹部16、射出ユニット15及び遮蔽部材21A~21Cを備える形態としてもよい。
【0071】
さらに、上記実施例では、リブ用凹部18にホットランナーHを接続する形態を例示したが、これに限定されず、例えば、部品用凹部17にホットランナーHを接続する形態としてもよい。
【0072】
前述の例は単に説明を目的とするものでしかなく、本発明を限定するものと解釈されるものではない。本発明を典型的な実施形態の例を挙げて説明したが、本発明の記述および図示において使用された文言は、限定的な文言ではなく説明的および例示的なものであると理解される。ここで詳述したように、その形態において本発明の範囲または精神から逸脱することなく、添付の特許請求の範囲内で変更が可能である。ここでは、本発明の詳述に特定の構造、材料および実施例を参照したが、本発明をここにおける開示事項に限定することを意図するものではなく、むしろ、本発明は添付の特許請求の範囲内における、機能的に同等の構造、方法、使用の全てに及ぶものとする。
【0073】
本発明は上記で詳述した実施形態に限定されず、本発明の請求項に示した範囲で様々な変形または変更が可能である。
1;ドアトリム(成形構造体)、2;基材、3;成形体、4a;ボス(機能部品)、4b;ブラケット(機能部品)、11A~11C;成形装置、12,13;一対の成形型、15;射出ユニット、16;凹部、17;部品用凹部、18;リブ用凹部、21A~21C;遮蔽部材、A;閉塞位置、B;開放位置、S2;射出成形空間。