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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022131883
(43)【公開日】2022-09-07
(54)【発明の名称】化粧料及び化粧方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/19 20060101AFI20220831BHJP
   A61Q 1/00 20060101ALI20220831BHJP
   A61K 8/27 20060101ALI20220831BHJP
   A61K 8/25 20060101ALI20220831BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20220831BHJP
   A61K 8/36 20060101ALI20220831BHJP
   A61K 8/89 20060101ALI20220831BHJP
   A61Q 1/02 20060101ALI20220831BHJP
【FI】
A61K8/19
A61Q1/00
A61K8/27
A61K8/25
A61K8/73
A61K8/36
A61K8/89
A61Q1/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021031077
(22)【出願日】2021-02-26
(71)【出願人】
【識別番号】513103276
【氏名又は名称】黒田総合技研株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】391015373
【氏名又は名称】大東化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100214363
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】黒田 章裕
(72)【発明者】
【氏名】小田 弥生
(72)【発明者】
【氏名】太田 敦子
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB151
4C083AB152
4C083AB211
4C083AB212
4C083AB361
4C083AB362
4C083AB431
4C083AB432
4C083AB441
4C083AB442
4C083AC241
4C083AC242
4C083AC482
4C083AD151
4C083AD152
4C083AD261
4C083AD262
4C083BB22
4C083BB23
4C083BB25
4C083CC11
4C083CC12
4C083DD17
4C083DD23
4C083EE06
(57)【要約】
【課題】インカメラにより撮影した顔を相手方のディスプレイ上に表示する際に、本来の色味を保持し、より美しく、自然に表示できる化粧料を得ること。
【解決手段】顔料として、酸化亜鉛、硫酸カルシウム、窒化ホウ素、セルロースパウダー、金属石鹸、合成マイカ及びその複合化粉末、表面処理粉末から選択される1種以上の粉末を含有し、タルク、セリサイト、マイカ及び雲母の合計の含有量が全顔料中の40質量%以下であり、酸化チタンを含有しない、インカメラによるWeb会議による撮影用ベースメイク化粧料組成物。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料として、酸化亜鉛、硫酸カルシウム、窒化ホウ素、セルロースパウダー、金属石鹸、合成マイカ及びその複合化粉末、表面処理粉末から選択される1種以上の粉末を含有し、タルク、セリサイト、マイカ及び雲母の合計の含有量が全顔料中の40質量%以下であり、酸化チタンを含有しない、インカメラによるWeb会議による撮影用ベースメイク化粧料組成物。
【請求項2】
酸化亜鉛、硫酸カルシウム、窒化ホウ素、金属石鹸から選択される2種以上からなる複合化粉末を用いた請求項1に記載のインカメラによるWeb会議による撮影用化粧料組成物。
【請求項3】
酸化亜鉛、硫酸カルシウム、窒化ホウ素の複合化粉末を含有し、その複合粉末が、1)酸化亜鉛60~90質量部と窒化ホウ素10~40質量部からなる複合化粉末、2)酸化亜鉛60~90質量部と硫酸カルシウム10~40質量部からなる複合化粉末、3)硫酸カルシウム60~90質量部と窒化ホウ素10~40質量部からなる複合化粉末、4)金属石鹸60~90質量部と窒化ホウ素10~40質量部からなる複合化粉末、の1)~4)から選ばれる1種以上である請求項1又は2に記載のインカメラによるWeb会議による撮影用化粧料組成物。
【請求項4】
請求項3に記載の複合化粉末が、複合化粉末100質量部に対して、1~5質量部の表面処理剤により撥水化処理されたものである請求項3に記載のインカメラによるWeb会議による撮影用化粧料組成物。
【請求項5】
シリコーンエラストマー粉体が含まれている下地料と、請求項1~4のいずれかに記載のインカメラによるWeb会議による撮影用化粧料組成物を組み合わせて行う化粧方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スマートフォンやタブレット等のインカメラによって評価された際に光学的に最適な組成とし、Web会議における画面上でも、きれいに映ることができる化粧料、及び外観が均一で透明感に優れた化粧方法に関する。
【背景技術】
【0002】
以下、本発明の技術的背景について説明する。
化粧料の評価では、従来、非特許文献1に記載されたように、パネラー自身が鏡などで化粧を見ることによる自己評価が採用された。
また、非特許文献2に記載されたように、人工皮膚などに化粧料を塗布したものを機器で計測して評価する方法が用いられてきた。
また、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による影響で、企業の会議や大学の授業などがオンライン化され、Web会議システムを利用するケースが急増した。
Web会議では、多くの場合、専用の録画、録音機器を用いることなく、スマートフォン、パソコンやタブレットといった機器にて撮影を多く行っている。これらの機器に設置されていて、顔を映すことになるインカメラは一般的にアウトカメラよりも性能が低いことが多い。さらにWeb会議では、低画質の画像を拡大して相手方に表示するため、不十分な光環境でカメラが撮影した化粧膜の光学特性が強調され、不自然な顔の印象になることが多い。
また、撮影中の照度、光の色と光源の配置により、インカメラにより撮影した画像は、Web会議の相手方のディスプレイ上での色味に大きな影響を受ける。そのため、ヒトが肉眼で直接見た化粧塗膜によるイメージとは、全く異なる映像がWeb会議の画面上では映し出される。特許文献1に記載のように、インターネットを通じてユーザーの化粧品選択を支援するシステムや、特許文献2のような画像データを元に肌状態を判定するシステムなどが知られているが、専ら専用のカメラやアウトカメラで撮影したものである。
さらに特許文献3のように、特定の組成を有するテレビ又は映画の撮影用光源下条件用メイクアップ化粧料も公知ではあるが、テレビや映画の撮影は、調整された光源の下で専用のカメラで撮影を行うものである。そのため、特許文献3に記載の化粧料を、撮影環境及び撮影機材が全く異なるインカメラでの撮影用に採用することはできない。
また、特許文献4に記載されているように、被験者の表情顔を撮影した顔画像を取得する顔画像取得工程を有する、肌状態の判別方法は公知ではあるが、取得した画像は分析対象であるため、詳細なデータを得る高機能カメラを使用するものであって、決してインカメラによるものではない。
その他、化粧による美観上の効果を、カメラの撮影画像により評価するシステムも公知であるが、この際に使用するカメラは、肉眼による化粧効果の評価を代替するためのカメラであり、評価に向けた分析に耐える情報を得るための専用のカメラであって、決してインカメラではない。
このように、化粧料自体を光学特性的にインカメラによるWeb会議用に適したものにする技術は知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-13368号公報
【特許文献2】特開2018-97899号公報
【特許文献3】特許第3940501号
【特許文献4】特開2017-217445号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】三枝千尋, 福永恭子,and 渡邊克巳. "日常的な化粧はクリエイティブな行為か?化粧に対する意識・行動と主観的幸福感, 自意識との関連." 日本心理学会大会発表論文集 日本心理学会第 82 回大会. 公益社団法人 日本心理学会, 2018.
【非特許文献2】西澤泰地, et al.“動きを伴う頬部の 「見え方」 を向上させるメイクアップ料の開発.” 日本化粧品技術者会誌54.1 (2020):59-64.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
撮影条件がまちまちなWeb会議に対して、Web会議の相手方のディスプレイ上で、適切に表示できる光学特性を有するように専用設計した化粧料は存在しない。さらに設計の方法論も未知である。そのため、本発明が解決しようとする課題は、インカメラにより撮影した顔を相手方のディスプレイ上に表示する際に、本来の色味を保持し、より美しく、自然に表示できる化粧料を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、本発明者らは鋭意検討した結果、下記を発明した。
1.顔料として、酸化亜鉛、硫酸カルシウム、窒化ホウ素、セルロースパウダー、金属石鹸、合成マイカ及びその複合化粉末、表面処理粉末から選択される1種以上の粉末を含有し、タルク、セリサイト、マイカ及び雲母の合計の含有量が全顔料中の40質量%以下であり、酸化チタンを含有しない、インカメラによるWeb会議による撮影用ベースメイク化粧料組成物。
2.酸化亜鉛、硫酸カルシウム、窒化ホウ素、金属石鹸から選択される2種以上からなる複合粉末を用いた1に記載のインカメラによるWeb会議による撮影用化粧料組成物。
3.酸化亜鉛、硫酸カルシウム、窒化ホウ素の複合化粉末を含有し、その複合粉末が、1)酸化亜鉛60~90質量部と窒化ホウ素10~40質量部からなる複合化粉末、2)酸化亜鉛60~90質量部と硫酸カルシウム10~40質量部からなる複合化粉末、3)硫酸カルシウム60~90質量部と窒化ホウ素10~40質量部からなる複合化粉末、4)金属石鹸60~90質量部と窒化ホウ素10~40質量部からなる複合化粉末、の1)~4)から選ばれる1種以上である1又は2に記載のインカメラによるWeb会議による撮影用化粧料組成物。
4.3に記載の複合化粉末が、複合化粉末100質量部に対して、1~5質量部の表面処理剤により撥水化処理されたものである3に記載のインカメラによるWeb会議による撮影用化粧料組成物。
5.シリコーンエラストマー粉体が含まれている下地料と、1~4のいずれかに記載のインカメラによるWeb会議による撮影用化粧料組成物を組み合わせて行う化粧方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、酸化亜鉛、硫酸カルシウム、窒化ホウ素、セルロースパウダー、金属石鹸、合成マイカ及びその複合化粉末、表面処理粉末から選択される1種以上の粉末を含有し、タルク、セリサイト、マイカの含有量が化粧料固形分中の40質量%以下であることを特徴とすることで、インカメラによるWeb会議による撮影用化粧料組成物(以下、場合により単に「化粧料」とする。)が得られる。その結果、Web会議の相手方のディスプレイ上の画像が、本来の色味を有し、より美しく、自然に表示できる化粧料を得ることができる。
さらにシリコーンエラストマー粉体が含まれている下地料と、上記化粧料とを組み合わせて用いることで、化粧塗膜が均一で透明感に特に優れた化粧方法が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】表面処理された酸化亜鉛60~90質量部、窒化ホウ素10~40質量部からなる複合化粉末の電子顕微鏡写真
図2】実施例にて使用した白色光のスペクトル
図3】実施例にて使用した電球色光のスペクトル
図4】実施例にて使用した昼白色光のスペクトル
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明者らは、化粧料の設計の方法論から検討した。検討する要素としては、1)カメラの機種依存性 2)撮影時の光環境による影響 3)化粧塗膜の光学特性、が大きな要素として挙げられた。そこで、近年発売された各種のカメラ付きデバイスを用いて、光環境を種々変えた時に、ディスプレイ上で、化粧塗膜がどのように見えるのかという検討を実施した。
さらに、化粧塗膜の構成要素である顔料ごとの光学特性を評価した。膨大な検討結果をまとめると、光環境に依存しにくい顔料が存在する。そして、そのような顔料を用いて作成した化粧料を使用すると、インカメラによるWeb会議においても、相手方のディスプレイ上でも自然で、きれいな化粧に見えることを見出した。
特に、メイクアップ化粧料で多用されるセリサイト、タルクは、ヒトの目には良い評価が得られる優れた顔料であるが、インカメラによる撮影した画面上では、光環境に影響を強く受けやすい顔料であった。よって、これらの顔料を除くか、最低限の含有量にして、影響を受けにくい顔料を主体に化粧料を設計することにより、Web会議に適した化粧料が得られた。さらに、この化粧料を日常的に使用しても、目視でも問題のない品質を有していただけでなく、特定の下地料と組み合わせると、従来の化粧料にはない透明感に優れた化粧料が得られることも見いだされた。
【0010】
(本発明の化粧料)
本発明の化粧料はベースメイク用化粧料であるが、その形態を問わない。(以下単に「化粧料」というときがある)。さらに、顔から首、肩までを対象に塗布される化粧料を対象とする。
【0011】
(Web会議に適した光学特性を持つ顔料の選択方法)
インカメラとは、IT用語辞典バイナリによるIT用語として、携帯電話やスマートフォン等のモバイル端末の内側(通話等において顔面に向く側)に搭載されたデジタルカメラのことである。主に使用者自身を撮影するために利用される。現在、ノートパソコンのディスプレイに隣接して、ノートパソコンに一体不可分に設けられたカメラも包含する。インカメラの性能が不十分であるため、通常のWeb会議では、相手方のディスプレイ上の表示画面では、画質が劣る。
加えて、撮影時の環境が顔を評価するのには適していない環境、つまり光環境が良くないことがこの課題を複雑にしている。ここで言う「光環境が顔を評価するのには適していない環境」とは、インカメラによる撮影場所の照明が十分に管理されず、照度、色温度、光のスペクトル等が撮影に不向きであったり、それらの条件が一定ではない環境をいう。
光環境が良いところ(十分な照度、適切な色温度やスペクトルの環境下)で、十分な性能を有するデジタルカメラを使用すれば、従来の化粧料でも十分きれいに撮影でき、インカメラを使用したWeb会議のような不自然な顔の印象にはならない。
そこで、撮影する機材ごとの特性を考慮して、複数種類の各種インカメラを用いて試験した。そして、事前に光環境の影響を調べるため、暗室に照明の色を可変できるLED式照明装置SH8117LDR(オーデリック社製)を設置し、白色光では424~541xの範囲、黄色光では204~281xの範囲、青色光では226~331xの範囲で4段階ずつ照度を変化させて計測を行った。
化粧品に多用される30種類の顔料を黒色紙に塗布して試料とした。光環境を変化させて各種インカメラで撮影した画像をCorel PaintShop Pro 2020 (64-bit)ソフトウェアを用いて11×11ピクセル単位で測色し、Lab色空間にて変化を観察した。各光環境下にて、10回測定した結果のうち、インカメラでの撮影の試験に使用した機材は、iPad mini(登録商標)(Apple社製)、iPhone7(登録商標)(Apple社製)、Let's Note CF-XZ6(パナソニック社製)、Xperia10mk2(Sony社製)、また比較用のデジタルカメラとしてPowerShot G9X(Canon社製)である。
また顔料として酸化チタンを含有しない。この含有しない酸化チタンとしては、平均粒子径が0.1~0.3μmの顔料級酸化チタン顔料、樹脂や無機化合物で表面処理した酸化チタン顔料が含まれる。
【0012】
(選択結果)
撮影時の光環境の影響を受けやすく、インカメラが過剰に反応して目視とは全く異なる画像がディスプレイ上に表示されるため、Web会議に適さない顔料は、タルク、セリサイト、マイカ及びカオリンであった。
一方、光環境の影響を受けにくく、インカメラが目視の色と同じような色として判断するため、Web会議に適する顔料は、酸化亜鉛、硫酸カルシウム、窒化ホウ素、セルロースパウダー、金属石鹸、合成マイカ及びその複合化粉末や表面処理粉末、及び酸化チタンであった。
Web会議には適さない顔料として選択されたタルク、セリサイト及びマイカは、従来のベースメイク料の処方骨格を形成する顔料であり、従来の製品では、どう改良してもインカメラ上では良い画像が得られないため、本発明のインカメラによるWeb会議による撮影用化粧料組成物を上記の適合した原料を基に開発した。
【0013】
(顔料)
よって、本発明にて使用される顔料は、酸化亜鉛、硫酸カルシウム、窒化ホウ素、セルロースパウダー、金属石鹸、合成マイカ、及び、それらの複合化粉末や表面処理粉末から選ばれる顔料を主体とする。
金属石鹸(界面活性剤金属塩粉体)としては、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ミリスチン酸亜鉛、ミリスチン酸マグネシウム、セチルリン酸亜鉛、セチルリン酸カルシウム、セチルリン酸亜鉛ナトリウム等が挙げられる。
【0014】
併用するその他の顔料としては、化粧料で使用可能なものであれば特に限定されず、一次粒子径が0.1μm~100μmであるものが好ましく、その形状は球状、棒状、略球状、紡錘状、不定形状又は板状のもの等が挙げられる。中でも、無機顔料、有色顔料、パール顔料、金属粉末顔料等が挙げられる。
併用できる無機顔料としては、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、タルク、マイカ、カオリン、セリサイト、白雲母、合成雲母、金雲母、紅雲母、黒雲母、リチア雲母、ケイ酸、無水ケイ酸、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸ストロンチウム、タングステン酸金属塩、ヒドロキシアパタイト、バーミキュライト、ハイジライト、ベントナイト、モンモリロナイト、ヘクトライト、ゼオライト、セラミックスパウダー、第二リン酸カルシウム、アルミナ、水酸化アルミニウム、シリカ、微粒子酸化チタン、微粒子酸化亜鉛、微粒子酸化セリウム等が挙げられる。
併用できる有色顔料としては、酸化鉄、水酸化鉄、チタン酸鉄の無機赤色系顔料、γ-酸化鉄などの無機褐色系顔料、黄酸化鉄、黄土などの無機黄色系顔料、黒酸化鉄、カーボンブラックなどの無機黒色顔料、マンガンバイオレット、コバルトバイオレットなどの無機紫色系顔料、水酸化クロム、酸化クロム、酸化コバルト、チタン酸コバルトなどの無機緑色系顔料、紺青、群青などの無機青色系顔料、タール系色素をレーキ化したもの、天然色素をレーキ化したもの、及びこれらの粉体を複合化した合成樹脂粉体等が挙げられる。
併用できるパール顔料としては、酸化チタン被覆雲母、酸化チタン被覆マイカ、オキシ塩化ビスマス、酸化チタン被覆オキシ塩化ビスマス、酸化チタン被覆タルク、魚鱗箔、酸化チタン被覆着色雲母、酸化チタン・酸化鉄被覆マイカ、酸化チタン被覆板状ガラス、酸化チタン被覆板状アルミナ、酸化チタン被覆合成マイカ等が挙げられる。
併用できる金属粉末顔料としては、アルミニウムパウダー、銅パウダー、ステンレスパウダー等が挙げられる。
【0015】
本発明の化粧料は、酸化亜鉛、硫酸カルシウム、窒化ホウ素と屈折率が高めの顔料を使用できるため、酸化チタンを含有しなくても、十分な隠ぺい力を付与できる。よって、酸化チタンを含有してもしなくてもよい。
【0016】
(タルク、セリサイト、マイカ及び雲母)
本発明において、酸化亜鉛、硫酸カルシウム、窒化ホウ素、セルロースパウダー、金属石鹸、合成マイカ、及び、それらの複合化粉末や表面処理粉末から選ばれる顔料だけで化粧料が完結できれば良い。しかしながら、官能的な理由、使い勝手などから、必ずしもそうでない可能性がある。
そこで、酸化亜鉛、硫酸カルシウム、窒化ホウ素、セルロースパウダー、金属石鹸、合成マイカ及びその複合化粉末や表面処理粉末、酸化チタンから選ばれる顔料だけからなる化粧料に、光環境に影響を受けやすいタルク、セリサイト、マイカ及び雲母を加えていった。そして、タルク等をどの程度まで加えても、インカメラによる撮影画像の画質が許容できるかを調べた。その結果、化粧料固形分中に対して、タルク、セリサイト、マイカ及び雲母の含有量が40質量%を超えると画質が有意に下がることが分かった。そのため、タルク、セリサイト、マイカ及び雲母のうち1種以上を含有する場合でも、それらを全顔料中に40質量%以下にすることが必要である。又これらタルク等を含有しなくても良い。
タルク、セリサイト、マイカ及び雲母の合計の含有量は、さらに全顔料中に30質量%以下にすることが好ましく、全顔料中に20質量%以下にすることがより好ましく、全顔料中に10質量%以下にすることが更に好ましく、全顔料中に5質量%以下にすることが最も好ましい。
なお、該マイカと下記の合成マイカとは、組成等を異にするものであり、該マイカは合成マイカを包含しない。
【0017】
本発明の化粧料では、酸化亜鉛、硫酸カルシウム、窒化ホウ素、セルロースパウダー、金属石鹸、合成マイカ及びそれらの複合化粉末や表面処理粉末から選択される1種以上の粉末を含有するが、複合粉末としては、酸化亜鉛、硫酸カルシウム、窒化ホウ素の複合化粉末が好ましく、特に1)酸化亜鉛60~90質量部と窒化ホウ素10~40質量部からなる複合化粉末、2)酸化亜鉛60~90質量部と硫酸カルシウム10~40質量部からなる複合化粉末、3)硫酸カルシウム60~90質量部と窒化ホウ素10~40質量部、4)金属石鹸60~90質量部と窒化ホウ素10~40質量部からなる複合化粉末が好ましい。
これらの顔料複合化方法としては、機械的磨砕によるもの、凝集によるもの、固着剤を用いるもの等が挙げられる。表面処理粉末の例としては、大東化成工業社製NEOWHITEシリーズが挙げられる。参考までに、表面処理された酸化亜鉛60~90質量部、窒化ホウ素10~40質量部からなる複合化粉末の電子顕微鏡写真を図1に示す。
複合化粉末を使用した場合には、顔料による化粧料の付着性やすべり性の差を解消して、より均一な化粧塗膜を形成させ、かつ、さらに化粧塗膜の均一性を向上させることができる。
本発明の化粧料において、全顔料中の、酸化亜鉛、硫酸カルシウム、窒化ホウ素、セルロースパウダー、金属石鹸、合成マイカ及びそれらの複合化粉末や表面処理粉末から選択される1種以上の粉末の含有量は50質量%以上が比較的好ましく、60質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上が更に好ましく、90質量%以上が最も好ましい。
【0018】
また、エラストマーなどの樹脂粉末は、評価の結果、前記Web会議には適さない顔料と適する顔料の中間に位置していたが、相手方のディスプレイ上で見たときに、化粧料に透明感を付与する目的には好適であるため、インカメラの許容できる範囲において含有することが可能である。
【0019】
(エラストマー粒子)
本発明にて使用できるエラストマー粒子としては、シリコーンエラストマー、オルガノポリシロキサンエラストマー、ポリスチレンエラストマー、ポリエチレンエラストマー、ポリプロピレンエラストマー、ポリウレタンエラストマー、ポリエステルエラストマー、ポリアミドエラストマー、ポリ塩化ビニルエラストマー等の公知のエラストマーの粒子を使用することができ、好ましくはシリコーンエラストマー球状粉体を使用することができる。エラストマー粒子の平均粒子径としては好ましくは1~20μmであり、さらに好ましくは8~15μmである。エラストマーはその表面を他の材料で処理されていてもいなくても構わないが、特にシリコーン樹脂で被覆したシリコーンエラストマーが好ましい。また、エラストマー内部にジメチコンなどの油剤が含浸されていても構わない。シリコーンエラストマー粒子の好ましい例としては、信越化学社製のKSPシリーズが挙げられる。
エラストマー粒子を含有させる際には、本発明の「酸化亜鉛、硫酸カルシウム、窒化ホウ素、セルロースパウダー、金属石鹸、合成マイカ及びその複合化粉末、表面処理粉末100質量部に対するエラストマー粒子の含有量は、好ましくは0.5~10質量部であり、さらに好ましくは1~5質量部である。
【0020】
本発明で用いる顔料は各種の表面処理が行われていることが好ましい。表面処理としては、撥水化処理、親水化処理、撥油処理が挙げられるが、特に天然物、植物成分による処理がなされていることが好ましい。表面処理量としては、顔料の質量に対して1.0~5.0質量%であることが好ましい。処理の例としては、例えば無機酸化物処理、フッ素化合物処理、シリコーン樹脂処理、シリコーン処理、ペンダント処理、シランカップリング剤処理、チタンカップリング剤処理、油剤処理、N-アシル化リジン処理、ポリアクリル酸処理、金属石鹸処理、アミノ酸処理、プラズマ処理、メカノケミカル処理などが挙げられる。
【0021】
本発明の化粧料としては、固形状、及び液状のどちらの形態でも良い。そして、ファンデーション、リキッドファンデーション、コンシーラー等が挙げられるが、中でも、ファンデーション及びリキッドファンデーションが好ましい。
【0022】
本発明の化粧料には、顔料以外の成分として、従来化粧料に用いられる各種の成分を含有することが可能である。例えば紫外線吸収剤、生理活性成分、油剤、界面活性剤、フッ素化合物、樹脂、粘剤、防腐剤、香料、保湿剤、塩類、溶媒、酸化防止剤、キレート剤、中和剤、pH調整剤、昆虫忌避剤等の成分を使用することができる。
【0023】
紫外線吸収剤としては、通常化粧料で使用される紫外線吸収剤で良く、例えばサリチル酸ホモメンチル、サリチル酸オクチル、サリチル酸トリエタノールアミン等のサリチル酸系;パラアミノ安息香酸、エチルジヒドロキシプロピルパラアミノ安息香酸、グリセリルパラアミノ安息香酸、オクチルジメチルパラアミノ安息香酸、パラジメチルアミノ安息香酸アミル、パラジメチルアミノ安息香酸2-エチルヘキシル、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル等のPABA系;4-(2-β-グルコピラノシロキシ)プロポキシ-2-ヒドロキシベンゾフェノン、ジヒドロキシジメトキシベンゾフェノン、ジヒドロキシジメトキシベンゾフェノンジスルホン酸ナトリウム、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、ヒドロキシメトキシベンゾフェノンスルホン酸及びその三水塩、ヒドロキシメトキシベンゾフェノンスルホン酸ナトリウム、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン-5-硫酸、2,2’-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-N-オクトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系;ジパラメトキシケイ皮酸モノ-2-エチルヘキサン酸グリセリル、2,5-ジイソプロピルケイ皮酸メチル、2,4,6-トリス[4-(2-エチルヘキシルオキシカルボニル)アニリノ]-1,3,5-トリアジン、ビスエチルへキシロキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、トリス-ビスフェニルトリアジン、メチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノール、トリメトキシケイ皮酸メチルビス(トリメチルシロキシ)シリルイソペンチル、パラメトキシケイ皮酸イソプロピル・ジイソプロピルケイ皮酸エステル混合物、パラメトキシケイ皮酸オクチル、パラメトキシハイドロケイ皮酸ジエタノールアミン塩等のケイ皮酸系;2-フェニル-ベンズイミダゾール-5-硫酸、4-イソプロピルジベンゾイルメタン、4-tert-ブチル-4’-メトキシジベンゾイルメタン等のベンゾイルメタン系;2-シアノ-3,3-ジフェニルプロパ-2-エン酸2-エチルヘキシルエステル(別名;オクトクリレン)、ジメトキシベンジリデンジオキソイミダゾリジンプロピオン酸2-エチルヘキシル、1-(3,4-ジメトキシフェニル)-4,4-ジメチル-1,3-ペンタンジオン、シノキサート、メチル-O-アミノベンゾエート、2-エチルヘキシル-2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリレート、3-(4-メチルベンジリデン)カンフル、オクチルトリアゾン、4-(3,4-ジメトキシフェニルメチレン)-2,5-ジオキソ-1-イミダゾリジンプロピオン酸2-エチルヘキシル、これらの高分子誘導体、及びシラン誘導体等が挙げられる。
【0024】
生理活性成分の例としては、化粧料に含有できる公知のものを使用することができ、アシタバエキス、アボカドエキス、アマチャエキス、アルテアエキス、アルニカエキス、アロエエキス、アンズエキス、アンズ核エキス、イチョウエキス、ウコンエキス、ウーロン茶エキス、エイジツエキス、エチナシ葉エキス、オウゴンエキス、オウバクエキス、オオムギエキス、オトギリソウエキス、オドリコソウエキス、オランダカラシエキス、オレンジエキス、海水乾燥物、加水分解エラスチン、加水分解コムギ末、加水分解シルク、火棘エキス、カモミラエキス、カロットエキス、カワラヨモギエキス、カルカデエキス、キウイエキス、キナエキス、キューカンバーエキス、グアノシン、クチナシエキス、クマザサエキス、クララエキス、クルミエキス、グレープフルーツエキス、クレマティスエキス、クロレラエキス、クワエキス、ゲンチアナエキス、紅茶エキス、酵母エキス、ゴボウエキス、コメヌカ発酵エキス、コメ胚芽油、コンフリーエキス、コラーゲン、コケモモエキス、サイシンエキス、サイコエキス、サイタイ抽出液、サルビアエキス、サボンソウエキス、ササエキス、サンザシエキス、サンショウエキス、シイタケエキス、ジオウエキス、シコンエキス、シソエキス、シナノキエキス、シモツケソウエキス、シャクヤクエキス、ショウブ根エキス、シラカバエキス、スギナエキス、セイヨウキズタエキス、セイヨウサンザシエキス、セイヨウニワトコエキス、セイヨウノコギリソウエキス、セイヨウハッカエキス、セージエキス、ゼニアオイエキス、センキュウエキス、センブリエキス、ダイズエキス、タイソウエキス、タイムエキス、チガヤエキス、チンピエキス、トウキエキス、トウキンセンカエキス、トウニンエキス、トウヒエキス、ドクダミエキス、トマトエキス、納豆エキス、ニンジンエキス、ニンニクエキス、ノバラエキス、ハイビスカスエキス、バクモンドウエキス、ハスエキス、パセリエキス、蜂蜜、パリエタリアエキス、ヒキオコシエキス、ビサボロール、フキタンポポエキス、フキノトウエキス、ブクリョウエキス、ブッチャーブルームエキス、ブドウエキス、プロポリス、ヘチマエキス、ベニバナエキス、ペパーミントエキス、ボダイジュエキス、ボタンエキス、ホップエキス、マツエキス、ミズバショウエキス、ムクロジエキス、モモエキス、ヤグルマギクエキス、ユーカリエキス、ユキノシタエキス、ユズエキス、ヨクイニンエキス、ヨモギエキス、ラベンダーエキス、レタスエキス、レモンエキス、レンゲソウエキス、ローズエキス、ローマカミツレエキス、ローヤルゼリーエキス、コラーゲン分解物、エラスチン分解物、キチン、キトサン、加水分解卵殻膜などの生体高分子及びその分解物;エストラジオール、エテニルエストラジオールなどのホルモン;アラニン、グリシン、ヴァリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、トレオニン、フェニルアラニン、アルギニン、リジン、アスパラギン酸、グルタミン酸、シスチン、システイン、メチオニン、トリプトファン等のアミノ酸、尿素、ピロリドンカルボン酸ナトリウム、ベタイン、ホエイなどの保湿剤;ε-アミノカプロン酸、グリチルリチン酸、β-グリチルレチン酸、塩化リゾチーム、グアイアズレン、ヒドロコルチゾン、アラントイン、トラネキサム酸、アズレン等の抗炎症剤;ビタミンA,B2,B6,C,D,K,ビタミンC配糖体等のビタミンC誘導体などのビタミン類;ヒアルロン酸及びその塩、コンドロイチン硫酸及びその塩等のムコ多糖類;グリコール酸、クエン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、及びそれらの塩等のヒドロキシ酸、パントテン酸カルシウム、ビオチン、ニコチン酸アミド、アラントイン、ジイソプロピルアミンジクロロアセテート、γ-アミノ酪酸、γ-アミノ-β-ヒドロキシ酪酸、メバロン酸、N-メチルセリン、4-アミノメチルシクロヘキサンカルボン酸、セラミド、コレステロール、コレステロール誘導体などの細胞賦活剤;γ-オリザノールなどの血行促進剤;レチノール、レチノール誘導体等の創傷治癒剤;セファランチン、トウガラシチンキ、ヒノキチオール、ヨウ化ニンニクエキス、塩酸ピリドキシン、ニコチン酸、ニコチン酸誘導体、パントテン酸カルシウム、D-パントテニルアルコール、アセチルパントテニルエチルエーテル、ビオチン、アラントイン、イソプロピルメチルフェノール、エストラジオール、エチニルエステラジオール、塩化カプロニウム、塩化ベンザルコニウム、塩酸ジフェンヒドラミン、タカナール、カンフル、サリチル酸、ノニル酸バニリルアミド、ノナン酸バニリルアミド、ピロクトンオラミン、ペンタデカン酸グリセリル;L-メントール、カンフルなどの清涼剤等が挙げられる。
【0025】
本発明の化粧料は、屈折率の高い顔料から構成されるため、従来の酸化チタンだけで隠ぺい力を出す化粧料とは光学的な特性が異なっている。そのため、化粧下地として、シリコーンエラストマー粉体が含まれている化粧下地を塗布し、次いで、上から本発明の化粧料を塗布することができる。その場合、光の屈折と散乱の効果により、得られる化粧塗膜は白磁様の透明感と均一感に優れたものとなる。元々シリコーンエラストマー粉体が含まれている化粧下地には、化粧塗膜を明るく見せたり、透明感を付与したりする機能があるが、本発明の化粧料との組み合わせにより、その効果がさらに高められる。
【0026】
(化粧料の評価)
バイオスキンドール(ピューラックス社製)に化粧料を塗布し、前記のLED式照明装置を用いて暗室中で光環境を変え、また、光が背後から当たる場合と、顔に光が当たる場合で、ドールの半顔ずつに塗布した化粧料の印象がどのように変化するかを調べた。また、得られた画像を前記の画像ソフトを用いて640×480ピクセルの大きさに変換し、さらに顔部分を引き延ばすことで画質の調整を行った。
試験に使用した機材は、バイオスキンドールを用いて従来品のファンデーションを塗布した画像の比較から、iPad mini(登録商標)(Apple社製)とLet's Note CF-XZ6(パナソニック社製)の結果で代表できると判断したため、以降の試験はこの2機種で試験を実施した。また、前述の照度の範囲で3段階に変化させた光環境で試験し、判定は目視にて実施した。
【0027】
試験結果
前記の各顔料の選択の結果は、バイオスキンドールを用いた試験でも再現されており、特に黄色光において、低照度の場合に画質に与える影響が強かった。
タルク、セリサイト、マイカを多く含有する従来のファンデーションでは、機種、光環境のすべての要素により画質の変化が大きかった。酸化亜鉛、硫酸カルシウム、窒化ホウ素、セルロースパウダー、金属石鹸、合成マイカ及びその複合化粉末、酸化チタンから選ばれる顔料を主とするファンデーションによれば、実際の発色と同じほぼ安定した画質が得られた。また、インカメラにはきれいに映っても、目視では異質に映る可能性もあったが、酸化亜鉛、硫酸カルシウム、窒化ホウ素、セルロースパウダー、金属石鹸、合成マイカ及びその複合化粉末、酸化チタンから選ばれる顔料を主とするファンデーションは、従来の化粧料とはその構成が大きく異なるにも関わらず、きれいな化粧が可能であった。また、光が前方から当たる場合と、後方から当たる場合では、同じ照度でも、後方から光が当たった場合はより画質が劣化することが判った。
【実施例0028】
以下に実施例を挙げて、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例)
本発明のインカメラによるWeb会議による撮影用化粧料組成物のファンデーションと、従来品のファンデーションを準備し、マネキンの顔の前面にシリコーンエラストマーを塗布し、次いで顔を正面からみて、その左半分に従来品のファンデーションを、右半分に本発明に係るファンデーション(開発品)を塗布して、測定用サンプルを得た。訓練された化粧を行う専門家が試験毎にファンデーションを計7回塗布した。従来品及び開発品のそれぞれの測定値を平均して下記の表の結果を求めた。
従来品のファンデーションの処方:
平均粒子径7.0~11.0μmのタルク(JA-46R(三好化成社))27質量%、SI01-2 SERICITE FSE(セリサイト)60質量%、シリコーン処理 TiO2 CR-50(酸化チタン)10質量%、シリコーン処理黄酸化鉄2質量%、シリコーン処理ベンガラ0.6質量%、シリコーン処理黒酸化鉄0.3質量%、及びメチルパラベン0.1質量%からなるカラーパウダーを90質量部と、ジメチコン90質量%、トリメチルシロキシケイ酸10質量%からなるバインダーが10質量部からなるファンデーション。
開発品(本発明の化粧料に相当)のファンデーションの処方:
酸化亜鉛75質量%、窒化ホウ素25質量%を混合したものを水系でラウロイルグルタミン酸Na、リシン、塩化マグネシウムで3質量%処理して酸化亜鉛系複合顔料を得た。
酸化亜鉛系複合顔料40.0質量%、CELLULOBEADS D-5(セルロース、大東化成工業製)5.0質量%、ステアリン酸マグネシウム2.0質量%、ステアリン酸亜鉛2.0質量%、ステアリン酸マグネシウム処理炭酸カルシウム5.0質量%、シリコーン処理合成マイカ43.0質量%、シリコーン処理黄酸化鉄2.0質量%、シリコーン処理ベンガラ0.6質量%、シリコーン処理黒酸化鉄0.3質量%、及びメチルパラベン0.1質量%からなるカラーパウダーを92質量部と、ジメチコン90質量%、トリメチルシロキシケイ酸10質量%からなるバインダーを8質量部からなるファンデーション。
測定用サンプルであるマネキンの顔の正面を、iPad Mini(登録商標)(A1550)と、Let’Note(登録商標)(CF-XZ6)のインカメラ、さらにiPhone SE2(登録商標)のフロントカメラで撮影した。
撮影時の部屋の照明を、蛍光灯の白色光、蛍光灯の電球色光及び蛍光灯の昼光色光の3通りとした。
白色光の場合、顔表面での照度(lux(lx))をS(661(lux))、M(315(lux))、W(80.5(lux))の3通りに分けて、それぞれの条件で撮影した。なお白色光のスペクトルを図2に示す。
電球色光の場合、顔表面での照度(lux(lx))をS(309(lux))、M(147(lux))、W(37.3(lux))の3通りに分けて、それぞれの条件で撮影した。なお電球色光のスペクトルを図3に示す。
昼白色光の場合、顔表面での照度(lux(lx))をS(356(lux))、M(169(lux))、W(44.3(lux))の3通りに分けて、それぞれの条件で撮影した。なお昼白色光のスペクトルを図4に示す。
得られた画像データの画質を640×360に落とし、マネキンの頬の部分の11×11ピクセルの平均値を測色した。
iPad Mini(登録商標)のインカメラで撮影した結果を下記表1~3に、Let’Noteのインカメラで撮影した結果を下記表4~6に示す。
(参考例)
参考例として、iPhone SE2(登録商標)(MX9T2J/A)のフロントカメラ、及びPowerShot(G9X)により撮影し、実施例と同様にして測色した。
iPhone SE2(登録商標)のフロントカメラで撮影した結果を下記表7~9に、PowerShotで撮影した結果を下記表10~12に示す。
【0029】
【表1】
【0030】
【表2】
【0031】
【表3】
【0032】
【表4】
【0033】
【表5】
【0034】
【表6】
【0035】
【表7】
【0036】
【表8】
【0037】
【表9】
【0038】
【表10】
【0039】
【表11】
【0040】
【表12】
【0041】
表1~3において、従来品及び開発品(本発明に沿った化粧料)共に、白色光、電球色光及び昼光色光がそれぞれ有する色味を反映して、異なる光の間では、従来品及び開発品共にa及びbの値が異なる。
表1~3において、開発品の白色光の環境下でのL値の測定結果は、Sが51、Mが51、及びWが52であって、各値の間では最大でも1違うのみであった。同様に電球色光、昼光色光ではそれぞれ値が最大で1及び9異なっていた。
これに対して、従来品の白色光の環境下でのL値の測定結果は、Sが35、Mが40、及びWが45であって、各値の間では最大で10違っていた。同様に電球色光、昼光色光ではそれぞれ値が最大で7と13異なっていた。
【0042】
同様にして、開発品の白色光の環境下でのa値の測定結果は、Sが3、Mが4、及びWが7であって、各値の間では最大でも4違うのみであった。同様に電球色光、昼光色光ではそれぞれ値が最大で3と6異なっていた。
これに対して、従来品の白色光の環境下でのa値の測定結果は、Sが4、Mが5、及びWが6であって、各値の間では最大で2違っていた。同様に電球色光、昼光色光ではそれぞれ値が最大で3と6異なっていた。
【0043】
開発品の白色光の環境下でのb値の測定結果は、Sが14、Mが16、及びWが16であって、各値の間では最大でも2違うのみであった。同様に電球色光、昼光色光ではそれぞれ値が最大で1と7異なっていた。
これに対して、従来品の白色光の環境下でのb値の測定結果は、Sが13、Mが15、及びWが16であって、各値の間では最大で3違っていた。同様に電球色光、昼光色光ではそれぞれ値が最大で1及び7異なっていた。
【0044】
表4~6においても、従来品及び開発品(本発明に沿った化粧料)共に、白色光、電球色光及び昼光色光がそれぞれ有する色味を反映して、異なる光の間では、従来品及び開発品共にa及びbの値が異なる。
そして、開発品の白色光の環境下でのL値の測定結果は、Sが56、Mが55、及びWが55であって、各値の間では最大でも1違うのみであった。同様に電球色光、昼光色光ではそれぞれ値が最大で4と6異なっていた。
これに対して、従来品の白色光の環境下でのL値の測定結果は、Sが44、Mが42、及びWが42であって、各値の間では最大で2違っていた。同様に電球色光、昼光色光ではそれぞれ値が最大で12と9異なっていた。
【0045】
同様にして、開発品の白色光の環境下でのa値の測定結果は、Sが6、Mが6、及びWが6であって、各値の間では同じであった。同様に電球色光、昼光色光ではそれぞれ値が最大で6と1異なっていた。
これに対して、従来品の白色光の環境下でのa値の測定結果は、Sが7、Mが6、及びWが6であって、各値の間では最大で1違っていた。同様に電球色光、昼光色光ではそれぞれ値が最大で5と3異なっていた。
【0046】
開発品の白色光の環境下でのb値の測定結果は、Sが11、Mが11、及びWが12であって、各値の間では最大でも1違うのみであった。同様に電球色光、昼光色光ではそれぞれ値が同じであった。
これに対して、従来品の白色光の環境下でのb値の測定結果は、Sが17、Mが17、及びWが17であって、各値は同じであった。同様に電球色光では5異なっており、昼光色光では3異なっていた。
【0047】
上記のことから、本発明のインカメラによるWeb会議による撮影用化粧料組成物によれば、iPad(登録商標)による撮影では、各光源の環境下において、照度が異なる場合でも画像上ではL値に大きい変化はなかった。そして、a値及びb値は照度が異なる条件下でも特段大きく変化しなかった。また各光源の間で比較しても、a値とb値は若干変化するものの、Lは大きく変動しなかった。
またLet’Noteによる撮影でも、各光源の環境下において、照度が異なる場合でも画像上ではL値に大きい変化はなかった。そして、a値及びb値は照度が異なる条件下でも特段大きく変化しなかった。また各光源の間で比較しても、a値とb値は若干変化するものの、L値は大きく変動しなかった。これに対して、従来品を使用した場合には、特に昼光色光を光源とした場合には、各照度の間でL値が大きく変化した。
【0048】
参考例である表7~9、及び表10~12によれば、iPhone SE2(登録商標)のフロントカメラ(インカメラではない)やデジタルカメラであるPowerShotを使用すると、従来品と開発品との間の特にL値の差は小さいものであった(なおPowerShotの光源による暗所の感度特性の関係からか、白色光以外での照度WでのL値が低下した。)。この結果によれば、撮影性能にある程度優れるカメラを用いると、インカメラで撮影したときのような課題を有しないことがわかる。
さらに表1~6に記載の開発品のL値の測定結果は、表7~9や表10~12の開発品のL値の測定結果に近い値であった。
これらの結果によれば、開発品でメイクをした状態で、インカメラを用いてWeb会議等を行った場合、撮影時の光源の種類や照度が違っていても、相手方のディスプレイ上では、特にL値、a値及びb値が大きく異なることがない。その結果により安定して表示できることがわかる。
これに対して、従来品でメイクをした場合には、撮影時の光源の種類や照度が異なると、相手方のディスプレイ上では、特にL値が大きく異なっていた。その結果によれば従来品では安定して表示できないことがわかる。
図1
図2
図3
図4