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特開2022-131886カーボンナノチューブ分散液およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022131886
(43)【公開日】2022-09-07
(54)【発明の名称】カーボンナノチューブ分散液およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 33/10 20060101AFI20220831BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20220831BHJP
   C08K 5/00 20060101ALI20220831BHJP
   C01B 32/159 20170101ALI20220831BHJP
   C01B 32/168 20170101ALI20220831BHJP
   H01B 1/24 20060101ALI20220831BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20220831BHJP
【FI】
C08L33/10
C08K3/04
C08K5/00
C01B32/159
C01B32/168
H01B1/24 A
H01B13/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021031084
(22)【出願日】2021-02-26
(71)【出願人】
【識別番号】504143441
【氏名又は名称】国立大学法人 奈良先端科学技術大学院大学
(71)【出願人】
【識別番号】000108742
【氏名又は名称】タツタ電線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】野々口 斐之
(72)【発明者】
【氏名】河合 壯
(72)【発明者】
【氏名】出店 純香
(72)【発明者】
【氏名】飯原 友
【テーマコード(参考)】
4G146
4J002
5G301
【Fターム(参考)】
4G146AA12
4G146AB06
4G146AB07
4G146AC03B
4G146AC30B
4G146AD22
4G146CA15
4G146CB10
4G146CB17
4G146CB20
4J002BG051
4J002BG061
4J002DA016
4J002EC007
4J002ED007
4J002EE007
4J002EN007
4J002FD016
4J002FD207
4J002GQ00
5G301DA20
5G301DA42
5G301DD02
5G301DE01
(57)【要約】
【課題】汎用性プラスチックを用いたカーボンナノチューブ分散液を提供する。
【解決手段】本発明の一態様に係るカーボンナノチューブ分散液は、水と相溶性を有する有機溶媒、ポリメタクリル酸エステル、および単層カーボンナノチューブを含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水と相溶性を有する有機溶媒、ポリメタクリル酸エステル、および単層カーボンナノチューブを含む、カーボンナノチューブ分散液。
【請求項2】
前記有機溶媒は、水への溶解度が80mg/mL以上であることを特徴とする、請求項1に記載のカーボンナノチューブ分散液。
【請求項3】
水をさらに含む、請求項1または2に記載のカーボンナノチューブ分散液。
【請求項4】
水と相溶性を有する有機溶媒、およびポリメタクリル酸エステルを含む溶液に、単層カーボンナノチューブを分散させる工程を含む、カーボンナノチューブ分散液の製造方法。
【請求項5】
前記有機溶媒は、水への溶解度が80mg/mL以上であることを特徴とする、請求項4に記載のカーボンナノチューブ分散液の製造方法。
【請求項6】
前記溶液は水をさらに含む、請求項4または5に記載のカーボンナノチューブ分散液の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はカーボンナノチューブ分散液およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カーボンナノチューブは、当該カーボンナノチューブ間に強力なファンデルワールス力が生じるため、極めて凝集力が大きく、束状の集合体を形成する。カーボンナノチューブの機能化、インクとしての応用などに際しては、カーボンナノチューブを1本レベルに分散させる必要があるが、ファンデルワールス力に打ち勝って分散させることが困難である。
【0003】
ところで、特許文献1には、層数が単層から5層であるカーボンナノチューブを含有する層を形成してなる透明導電性フィルムであって、透明基材の少なくとも片面の面積の50%以上がカーボンナノチューブで被覆されており、かつ特定の性質をもつことを特徴とする透明導電性フィルムを製造することができる、カーボンナノチューブを含有してなる液が開示されている。
【0004】
また、例えば、特許文献2には、特定のポリマー構造で表される構造単位を10~450個有する、ポリアリルアミン誘導体を含有する分散剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008-177143号公報
【特許文献2】特開2017-203143号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、有機溶媒中で、工業的に有用な汎用性プラスチックを用いてカーボンナノチューブを分散させることは達成されていなかった。
【0007】
そこで、本発明の一態様は、汎用性プラスチックを用いたカーボンナノチューブ分散液、およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るカーボンナノチューブ分散液は、水と相溶性を有する有機溶媒、ポリメタクリル酸エステル、および単層カーボンナノチューブを含む。
【0009】
また、上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るカーボンナノチューブ分散液の製造方法は、水と相溶性を有する有機溶媒、およびポリメタクリル酸エステルを含む溶液に、単層カーボンナノチューブを分散させる工程を含む。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様によれば、汎用性プラスチックを用いたカーボンナノチューブ分散液、およびその製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例1の分散液の吸収スペクトルを示す図である。
図2】実施例2の分散液の吸収スペクトルを示す図である。
図3】実施例3の分散液の吸収スペクトルを示す図である。
図4】実施例4の分散液の吸収スペクトルを示す図である。
図5】実施例5の分散液の吸収スペクトルを示す図である。
図6】実施例6の分散液の吸収スペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態について、詳細に説明する。本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A~B」は、「A以上、B以下」を意図する。
【0013】
〔1.カーボンナノチューブ分散液〕
一般的に、カーボンナノチューブを分散させる方法として、水中において界面活性剤を用いてミセル内包化する方法、または疎水性溶液中での導電性高分子の単層カーボンナノチューブへの配位もしくは巻付きを介する方法などがある。
【0014】
しかし、汎用性の高いプラスチックを用いて、カーボンナノチューブを良好に分散させることは困難であった。
【0015】
本発明者らは、様々な検討を行った結果、水と相溶性を有する有機溶媒、およびポリメタクリル酸エステルを用いることにより、カーボンナノチューブが良好に分散できることを見出した。
【0016】
本発明の一実施形態に係るカーボンナノチューブ分散液は、水と相溶性を有する有機溶媒、ポリメタクリル酸エステル、および単層カーボンナノチューブを含む。なお、本明細書において、カーボンナノチューブ分散液を単に「分散液」とも称する。
【0017】
上記分散液はインクまたはペースト等として使用できる。上記分散液は、例えば、基板上に塗布されることにより使用される。基板としては、ガラス、透明セラミックス、金属、プラスチックフィルム等の基板を用いることができる。基板の厚さは、特に限定されないが、1~1000μmが好ましい。
【0018】
上記分散液を基板上に塗布する方法としては、特に限定されないが、スピンコート、エクストルージョンダイコート、ブレードコート、バーコート、スクリーン印刷、ステンシル印刷、ロールコート、カーテンコート、スプレーコート、ディップコート、インクジェット印刷、ディスペンス等の公知の塗布方法を用いることができる。また、上記分散液を基板上に塗布する装置としては、塗布に適した各種装置を用いることができ、特に限定されない。
【0019】
<1-1.単層カーボンナノチューブ>
本発明の一実施形態に係る分散液は、単層カーボンナノチューブを含む。なお、本明細書において、単層カーボンナノチューブを単に「カーボンナノチューブ」とも称する。
【0020】
カーボンナノチューブの平均直径は、特に限定されないが、分散性の観点から、0.5~250nmであることが好ましく、0.5~10nmであることがより好ましく、0.5~5nmであることがさらに好ましい。カーボンナノチューブの平均直径が上記範囲であれば、ポリメタクリル酸エステルがカーボンナノチューブの周りに吸着し、カーボンナノチューブを良好に分散させることができる。
【0021】
また、カーボンナノチューブの平均長さは、特に限定されないが、100nm~10mmであることが好ましく、200nm~2mmであることがより好ましく、500nm~50μmであることがさらに好ましい。カーボンナノチューブの平均長さが上記範囲であれば、カーボンナノチューブを良好に分散させることができる。
【0022】
また、カーボンナノチューブを得る方法は、特に限定されず、公知の技術に基づいて合成されたものであってもよく、市販されているものであってもよい。
【0023】
有機溶媒中のカーボンナノチューブの濃度は、1~10000mMであることが好ましく、10~1000mMであることがより好ましい。なお、カーボンナノチューブの分散液中の濃度は、例えば、分散液の吸収スペクトルを測定することにより求められる。
【0024】
<1-2.有機溶媒>
本発明の一実施形態に係る分散液は、水と相溶性を有する有機溶媒を含む。水と相溶性を有する有機溶媒は、水への溶解度が80mg/mL以上であることが好ましく、100mg/mL以上であることがより好ましい。有機溶媒の水への溶解度が80mg/mL以上であれば、カーボンナノチューブが良好に分散する。また、溶解度の上限は特に限定されず、有機溶媒と水とは任意の割合で混和することが好ましいが、例えば15000mg/mL以下であってもよく、10000mg/mL以下であってもよい。水への溶解度は、25℃における溶解度であることが好ましい。
【0025】
また、有機溶媒は、ポリメタクリル酸エステルと適度な親和性を有する溶媒であることが好ましい。これによれば、ポリメタクリル酸エステルがカーボンナノチューブの周りに吸着し、カーボンナノチューブを良好に分散させることができる。
【0026】
有機溶媒としては、例えば、エーテル、エステル、ケトン、アルコール、アミン、アミド、ニトリル等が挙げられる。
【0027】
エーテルとしては、例えば、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、ジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、ジベンジルエーテル、アニソール等が挙げられる。この中では、テトラヒドロフランを用いることが好ましい。
【0028】
エステルとしては、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、炭酸ジメチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、フタル酸ジメチル、γ‐ブチルラクトン等が挙げられる。この中では、酢酸エチルを用いることが好ましい。
【0029】
ケトンとしては、例えば、例えば、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、3-ペンタノン、アセトフェノン、ヘプタノン等が挙げられる。この中では、ヘプタノンを用いることが好ましい。
【0030】
アルコールとしては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、1-ブタノール、ベンジルアルコール、フェノール、2-エトキシエタノール、エチレングリコール等が挙げられる。この中では、イソプロピルアルコールを用いることが好ましい。
【0031】
アミンとしては、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミン、イソブチルアミン、tert-ブチルアミン、3-メトキシプロピルアミン、3-エトキシプロピルアミン、2-ジメチルアミノエタノール、アニリン、エチレンジアミン等が挙げられる。
【0032】
アミドとしては、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、1-メチル-2-ピロリドン、1-シクロヘキシル-2-ピロリドン、N,N’-ジメチルプロピレン尿素等が挙げられる。
【0033】
ニトリルとしては、ベンゾニトリル、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、3-ジメチルアミノプロピオニトリル等が挙げられる。この中では、アセトニトリルを用いることが好ましい。
【0034】
その他の有機溶媒としては、例えば、硫黄原子を含む有機溶媒(ジメチルスルホキシド等)が挙げられる。
【0035】
また、上記有機溶媒は、1種類の有機溶媒のみを用いてもよく、2種類以上の有機溶媒を任意に組み合わせた混合物を用いてもよい。
【0036】
<1-3.ポリメタクリル酸エステル>
本発明の一実施形態に係る分散液は、ポリメタクリル酸エステルを含む。ポリメタクリ酸エステルは、汎用性プラスチックである。ポリメタクリル酸エステルとしては、例えば、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリメタクリル酸エチル(PEMA)、ポリメタクリル酸ブチル(PBMA)、ポリメタクリル酸ヘキシル(PHMA)などが挙げられる。汎用性の観点より、ポリメタクリル酸メチルを含むことが好ましい。
【0037】
ポリメタクリル酸エステルは、カーボンナノチューブ周りに吸着し、カーボンナノチューブの表面張力を変化させることにより、カーボンナノチューブを有機溶媒中に良好に分散させる。
【0038】
分散液中のポリメタクリル酸エステルの濃度は、0.001~10w/v%であることが好ましく、0.01~2w/v%であることがより好ましく、0.1~1w/v%であることが特に好ましい。ポリメタクリル酸エステルの濃度が上記の範囲であれば、カーボンナノチューブが良好に分散させることができる。
【0039】
<1-4.水>
本発明の一実施形態に係る分散液は、水をさらに含んでもよい。例えば、ポリメタクリル酸エステルと有機溶媒との親和性が高い場合に水をさらに含むことが好ましい。これにより、有機溶媒および水を含む混合溶媒とポリメタクリル酸エステルとの親和性を適度に調整することができる。また、これによれば、ポリメタクリル酸エステルがカーボンナノチューブの周りに吸着し、カーボンナノチューブを良好に分散させることができる。水の量は、有機溶媒に対して0~25重量%であることが好ましく、10~20重量%であることがより好ましく、10~15重量%であることが特に好ましい。水の量が上記の範囲であれば、カーボンナノチューブを良好に分散させることができる。
【0040】
〔2.カーボンナノチューブ分散液の製造方法〕
本発明の一実施形態に係る分散液の製造方法は、水と相溶性を有する有機溶媒、およびポリメタクリル酸エステルを含む溶液に、単層カーボンナノチューブを分散させる工程を含む。〔1.カーボンナノチューブ分散液〕で既に説明した事項については、以下では説明を省略する。
【0041】
<2-1.単層カーボンナノチューブを分散させる工程>
本工程では、水と相溶性を有する有機溶媒、およびポリメタクリル酸エステルを含む溶液に、単層カーボンナノチューブを分散させる。
【0042】
カーボンナノチューブは、有機溶媒に対して0.01~10mg/mL添加することが好ましく、0.1~5mg/mL添加することがより好ましく、0.5~1mg/mL添加することがさらに好ましい。添加するカーボンナノチューブの量が上記の範囲であれば、カーボンナノチューブが良好に分散する。
【0043】
また、有機溶媒は、水への溶解度が80mg/mL以上であることが好ましく、100mg/mL以上であることがより好ましい。有機溶媒の水への溶解度が80mg/mL以上であれば、カーボンナノチューブが良好に分散する。また、溶解度の上限は特に限定されず、有機溶媒と水とは任意の割合で混和することが好ましいが、例えば15000mg/mL以下であってもよく、10000mg/mL以下であってもよい。水への溶解度は、25℃における溶解度であることが好ましい。
【0044】
カーボンナノチューブを分散させる工程において、例えば、撹拌ホモジナイザー、および超音波ホモジナイザーなどを利用してカーボンナノチューブを溶液に分散させてもよい。より均一に分散させる観点から、超音波ホモジナイザーを用いることが好ましい。
【0045】
分散を行う時間は特に限定されないが、例えば1~60分間、好ましくは10~30分間である。分散を行う温度も特に限定されないが、例えば10℃である。これにより、分散液を得る。
【0046】
また、カーボンナノチューブを分散させる工程は、カーボンナノチューブを溶液に分散させた予備分散液を得る工程と、予備分散液から分散しきれなかったカーボンナノチューブを取り除いて分散液を得る工程とを含んでもよい。
【0047】
予備分散液を得る工程は、例えば、撹拌ホモジナイザーおよび超音波ホモジナイザーなどを利用してカーボンナノチューブを溶液に分散させて予備分散液を得る工程である。
【0048】
次に、分散液を得る工程として、得られた予備分散液を遠心分離、濾過などをすることにより予備分散液から分散しきれなかったカーボンナノチューブを除去してもよい。より良好にカーボンナノチューブが分散した分散液を得る観点から、遠心分離を用いることが好ましい。
【0049】
遠心分離の条件は、予備分散液中の分散しきれなかったカーボンナノチューブを沈殿させることができれば特に限定されない。例えば遠心力は、好ましくは500~50000×g、より好ましくは10000~30000×gである。遠心分離を行う時間も特に限定されないが、例えば10~60分間である。
【0050】
遠心分離後の溶液から上澄み液を分取することにより、分散液を得る。
【0051】
また、本発明の一実施形態に係る分散液の製造方法において、前記溶液は水をさらに含んでもよい。例えば、ポリメタクリル酸エステルと有機溶媒との親和性が高い場合に水をさらに含むことが好ましい。これにより、有機溶媒および水を含む混合溶媒とポリメタクリル酸エステルとの親和性を適度に調整することができる。また、これによれば、ポリメタクリル酸エステルがカーボンナノチューブの周りに吸着し、カーボンナノチューブを良好に分散させることができる。
【0052】
〔3.カーボンナノチューブフィルム〕
本発明の一実施形態に係る分散液を用いることにより、カーボンナノチューブフィルムを作製することができる。なお、本明細書において、カーボンナノチューブフィルムを単に「フィルム」とも称する。
【0053】
フィルムは、ポリメタクリル酸エステルと、単層カーボンナノチューブとを含むことが好ましい。
【0054】
フィルムは、例えば、上記で説明した分散液を、メンブレンフィルターを用いて濾過し、フィルター上の乾燥させることにより得ることができる。単層カーボンナノチューブが分散した分散液を用いることにより、フィルム中に単層カーボンナノチューブが好適に分散されたフィルムを得ることができる。
【0055】
フィルムの膜厚は、0.5~500μmであることが好ましく、1~100μmであることがより好ましく、10~50μmであることがさらに好ましい。フィルムの膜厚が上記の範囲であれば、フィルムが自立できる。
【0056】
フィルムは、導電性を有することが好ましい。フィルムの表面抵抗値は、0.1~100000Ω/sqであることが好ましく、1~1000Ω/sqであることがより好ましく、10~100Ω/sqであることがさらに好ましい。フィルムの表面抵抗値が上記の範囲であれば、フィルムは好適な導電性を示す。フィルムの導電率は、0.01~1000S/cmであることが好ましく、0.1~100S/cmであることがより好ましく、1~10S/cmであることがさらに好ましい。フィルムの導電率が上記の範囲であれば、フィルムは好適な導電性を示す。
【0057】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例0058】
本発明の一実施例について以下に説明する。
【0059】
(カーボンナノチューブ分散液の作製)
使用した単層カーボンナノチューブは、以下の通りである。
・CoMo(アルドリッチ社製、製品名「CoMocat」、平均直径:0.8nm)
・NoPo(Nanointegris社製、製品名「NoPo Hipco」、平均直径:0.8~1.2nm)
・Arc(アルドリッチ社製、製品名「Arc discharge」、平均直径:1.4nm)
・TB82p(OCSiAl社製、製品名「Tuball」、製造番号01RW02.N1.208、平均直径:1.6nm)
・TB75p(OCSiAl社製、製品名「Tuball」、製造番号53-15122014、平均直径:1.8nm)
・EC2.0:(名城ナノカーボン社製、製品名「EC2.0」、平均直径:2nm)
〔実施例1〕
ジメチルスルホキシド(DMSO)20mLと、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)1w/v%とを含む溶液を準備し、単層カーボンナノチューブ5mgを添加した。超音波分散装置を用いてカーボンナノチューブを分散することにより、予備分散液を得た。超音波分散装置としてはQ125(Qsonica社製)を用いて、分散時間は1800秒、出力12W、周波数20kHzで分散を行った。
【0060】
次いで、得られた上記予備分散液を遠心分離した。遠心分離処理における回転数は、10000rpmであり、遠心分離処理の時間は30分間、遠心力は13190×gであった。この遠心分離により、溶液は、容器底部のカーボンナノチューブの凝集繊維と、上澄み液とに分離された。評価には、上澄み液を分散液として使用した。
【0061】
単層カーボンナノチューブとして、CoMo、NoPo、Arc、TB82p、TB75pおよびEC2.0を用いた6種類の分散液を作製した。
【0062】
〔実施例2〕
有機溶媒として酢酸エチルを用いたこと以外は、実施例1と同様に6種類の分散液を作製した。
【0063】
〔実施例3〕
有機溶媒としてアセトニトリルを用いたこと以外は、実施例1と同様に6種類の分散液を作製した。
【0064】
〔実施例4〕
有機溶媒としてヘプタノンを用いたこと以外は、実施例1と同様に6種類の分散液を作製した。
【0065】
〔実施例5〕
有機溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)を用い、水15重量%を含むこと以外は、実施例1と同様に6種類の分散液を作製した。
【0066】
〔実施例6〕
有機溶媒としてイソプロピルアルコール(IPA)を用い、PMMAの代わりにポリメタクリル酸ブチル(PBMA)を用いたこと以外は、実施例1と同様に6種類の分散液を作製した。
【0067】
(分散液の評価)
実施例1~6で得られた各分散液の吸収スペクトルを、吸光光度計(島津製作所社製、UV3600Plus)を用い、温度25℃、光路長2mmにて測定した。得られた吸収スペクトルをそれぞれ図1~6に示す。図1~6はそれぞれ実施例1~6で得られた分散液の吸収スペクトルを示す。
【0068】
吸収スペクトルの吸光度は、分散液中のカーボンナノチューブの濃度に比例する。図1~6より、溶媒によって分散しやすいカーボンナノチューブの種類に違いはあるものの、カーボンナノチューブが溶液中で分散していることが示された。
【0069】
(カーボンナノチューブフィルムの作製および電気特性評価)
〔実施例7〕
上記の実施例1で得られた分散液20gをメンブレンフィルター(0.2μm、メルクミリポア社製、製品名:オムニポアメンブレンフィルターJGWP02500)を用いて濾過した。濾過後のフィルター上の固体をフィルターと共に乾燥させることにより、直径18mmのカーボンナノチューブフィルムを得た。
【0070】
得られたフィルムの膜厚は、デジマチックシックネスゲージによって測定し、メンブレンフィルターの厚さを差し引くことにより求めた。得られたフィルムの膜厚は38μmであった。
【0071】
得られたフィルムの表面抵抗および導電率を抵抗率計(日東精工アナリテック社製、ロレスターGX MCP-T700)によって測定した。5回測定し、得られた測定値の平均値をフィルムの表面抵抗値および導電率とした。得られた表面抵抗値と導電率を表1に示す。
【0072】
【表1】
【0073】
表1より、分散液から作製したフィルムは導電性を有することが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明は、例えば、インク、導電性材料の微細な加工、塗工への利用、および長期保存可能なコロイド分散液として好適に利用することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6