(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022131887
(43)【公開日】2022-09-07
(54)【発明の名称】電動圧縮機
(51)【国際特許分類】
H02P 6/18 20160101AFI20220831BHJP
H02P 29/024 20160101ALI20220831BHJP
【FI】
H02P6/18
H02P29/024
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021031115
(22)【出願日】2021-02-26
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】川島 隆
【テーマコード(参考)】
5H501
5H560
【Fターム(参考)】
5H501AA09
5H501CC04
5H501DD04
5H501HA09
5H501HB07
5H501HB16
5H501LL22
5H501LL35
5H501LL54
5H501MM09
5H560AA02
5H560BB04
5H560BB07
5H560BB12
5H560DA14
5H560DC00
5H560DC12
5H560EB01
5H560JJ19
5H560SS02
5H560UA06
5H560XA12
(57)【要約】
【課題】電動モータの位置推定を含めて電流センサの異常有無を判定することができる電電動圧縮機を提供する。
【解決手段】制御部44は、位置推定制御と良否判定制御を実行する。良否判定制御は、位置推定制御の実行中において、オンにした上アームスイッチング素子をオフにするとともに同相の下アームスイッチング素子をオンにすることで下アームスイッチング素子の2相をオンにする動作を、3相の上下アームスイッチング素子が取り得る6つの組合せのうち少なくとも1つの組合せに対して実行するとともに、オンにした2相の下アームスイッチング素子に各々対応する2つの電流センサから検出される電流値の差異に基づいて電流センサの異常有無を判定する制御である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を圧縮する圧縮部と、
永久磁石を有するロータを備えるとともに前記圧縮部を駆動する3相モータと、
正負の母線間に電気的に接続された3相の上アームスイッチング素子及び3相の下アームスイッチング素子と、
前記3相の下アームスイッチング素子に流れる電流を相毎に検出する3つの電流センサと、
前記3相の上アームスイッチング素子及び前記3相の下アームスイッチング素子をそれぞれオンオフ制御するとともに前記ロータの停止位置を推定する位置推定制御と前記電流センサの異常有無を判定する良否判定制御を実行する制御部と、を備え、
前記3相モータは、前記3相の上アームスイッチング素子と前記3相の下アームスイッチング素子との間に電気的に接続されており、
前記位置推定制御は、前記3相の上アームスイッチング素子と前記3相の下アームスイッチング素子から互いに相が異なるように選択された各々1相をオンにする動作を、3相の上下アームスイッチング素子が取り得る6つの組合せ全てに対して実行するとともに、前記6つの組合せにおいてオンにした前記下アームスイッチング素子に対応する前記電流センサから検出された6つの電流値に基づいて前記ロータの磁極位置を推定し、前記磁極位置から前記ロータの停止位置を推定する制御であり、
前記良否判定制御は、前記位置推定制御の実行中において、オンにした前記上アームスイッチング素子をオフにするとともに同相の前記下アームスイッチング素子をオンにすることで下アームスイッチング素子の2相をオンにする動作を、3相の上下アームスイッチング素子が取り得る6つの組合せのうち少なくとも1つの組合せに対して実行するとともに、オンにした前記2相の前記下アームスイッチング素子に各々対応する2つの前記電流センサから検出される電流値の差異に基づいて前記電流センサの異常有無を判定する制御である
ことを特徴とする電動圧縮機。
【請求項2】
前記良否判定制御は、前記2相をオンにする動作を、3相の上下アームスイッチング素子が取り得る6つの組合せ全てに対して実行し、前記差異に基づき、前記3つの電流センサの異常有無を判定する制御であることを特徴とする請求項1に記載の電動圧縮機。
【請求項3】
前記制御部から外部へ前記良否判定制御による前記電流センサの良否判定結果を送ることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電動圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動圧縮機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には車載用三相モータを駆動するインバータの制御装置が開示されている。停止中のロータの磁極位置を精度よく把握すべく、各相コイルのそれぞれに対して、正方向及び負方向に所定のパルス幅の電圧を印加し、流れる正方向のu相電流、負方向のu相電流、正方向のv相電流、負方向のv相電流、正方向のw相電流、負方向のw相電流を把握する。そして、正方向のu相電流と負方向のu相電流とを加算したu相加算値と、正方向のv相電流と負方向のv相電流とを加算したv相加算値と、正方向のw相電流と負方向のw相電流とを加算したw相加算値と、を算出する。算出結果である3つの加算値を三相二相変換して、変換結果に基づいて、停止中のロータの磁極位置を導出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、電動圧縮機には、電動モータの位置推定を含めて電流センサの異常有無を判定する機能が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための電動圧縮機は、流体を圧縮する圧縮部と、永久磁石を有するロータを備えるとともに前記圧縮部を駆動する3相モータと、正負の母線間に電気的に接続された3相の上アームスイッチング素子及び3相の下アームスイッチング素子と、前記3相の下アームスイッチング素子に流れる電流を相毎に検出する3つの電流センサと、前記3相の上アームスイッチング素子及び前記3相の下アームスイッチング素子をそれぞれオンオフ制御するとともに前記ロータの停止位置を推定する位置推定制御と前記電流センサの異常有無を判定する良否判定制御を実行する制御部と、を備え、前記3相モータは、前記3相の上アームスイッチング素子と前記3相の下アームスイッチング素子との間に電気的に接続されており、前記位置推定制御は、前記3相の上アームスイッチング素子と前記3相の下アームスイッチング素子から互いに相が異なるように選択された各々1相をオンにする動作を、3相の上下アームスイッチング素子が取り得る6つの組合せ全てに対して実行するとともに、前記6つの組合せにおいてオンにした前記下アームスイッチング素子に対応する前記電流センサから検出された6つの電流値に基づいて前記ロータの磁極位置を推定し、前記磁極位置から前記ロータの停止位置を推定する制御であり、前記良否判定制御は、前記位置推定制御の実行中において、オンにした前記上アームスイッチング素子をオフにするとともに同相の前記下アームスイッチング素子をオンにすることで下アームスイッチング素子の2相をオンにする動作を、3相の上下アームスイッチング素子が取り得る6つの組合せのうち少なくとも1つの組合せに対して実行するとともに、オンにした前記2相の前記下アームスイッチング素子に各々対応する2つの前記電流センサから検出される電流値の差異に基づいて前記電流センサの異常有無を判定する制御であることを要旨とする。
【0006】
これによれば、位置推定制御の実行中においてオンにした上アームスイッチング素子をオフにしつつ同相の下アームスイッチング素子をオンにすることで、2つの電流センサを流れる閉ループ電流を生成できる。この2つの電流センサによって検出された電流値を比較することで、それらの値に所定以上の差があれば、どちらかの電流センサに異常があることを判定できる。
【0007】
その結果、電動モータの位置推定を含めて電流センサの異常有無を判定することができる。
本発明の電動圧縮機について、前記良否判定制御は、前記2相をオンにする動作を、3相の上下アームスイッチング素子が取り得る6つの組合せ全てに対して実行し、前記差異に基づき、前記3つの電流センサの異常有無を判定する制御であることが望ましい。
【0008】
これによれば、3つの電流センサのうち2つにて検出された電流値の比較を、全ての電流センサの組み合わせについて行うことができるため、電流センサの異常の有無だけでなく、どの電流センサが異常であるかを特定することができる。
【0009】
本発明の電動圧縮機について、前記制御部から外部へ前記良否判定制御による前記電流センサの良否判定結果を送ることが好ましい。
これによれば、電動圧縮機を含め複数の機器を制御する装置が、全体として最適な制御を行うことができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、電動モータの位置推定を含めて電流センサの異常有無を判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態における車載用電動圧縮機を模式的に示す一部破断図。
【
図2】インバータ装置及びその周辺の構成を示すブロック図。
【
図3】電流経路を説明するためのインバータ回路及び電動モータの電気回路図。
【
図4】電流経路を説明するためのインバータ回路及び電動モータの電気回路図。
【
図5】電流経路を説明するためのインバータ回路及び電動モータの電気回路図。
【
図7】電流経路を説明するためのインバータ回路及び電動モータの電気回路図。
【
図8】電流経路を説明するためのインバータ回路及び電動モータの電気回路図。
【
図9】電流経路を説明するためのインバータ回路及び電動モータの電気回路図。
【
図10】各パターンについてのセンサ状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に従って説明する。本実施形態の車載用電動圧縮機は、流体としての冷媒を圧縮する圧縮部を備えており、車載用空調装置に用いられる。即ち、本実施形態における車載用電動圧縮機の圧縮対象の流体は冷媒である。
【0013】
図1に示すように、車載機器10は車両空調装置20を含む。車両空調装置20は、車載用電動圧縮機30と、車載用電動圧縮機30に対して冷媒を供給する外部冷媒回路100とを備えている。外部冷媒回路100は、蒸発器、凝縮器、膨張弁などを有している。車両空調装置20は、車載用電動圧縮機30によって冷媒が圧縮され、且つ、外部冷媒回路100によって冷媒の熱交換及び膨張が行われることによって、車両の室内の冷暖房を行う。
【0014】
図2に示すように、車両空調装置20は、当該車両空調装置20の全体を制御する空調ECU80を備えている。空調ECU80は、車内温度や設定温度等を把握可能に構成されており、これらのパラメータに基づいて、車載用電動圧縮機30に対してオン/オフ指令等といった各種指令を送信する。
【0015】
図1に示すように、車載用電動圧縮機30は、外部冷媒回路100から冷媒を内部に導入する吸入口31aを有するハウジング31と、圧縮部32と、電動モータ33とを備えている。圧縮部32及び電動モータ33は、ハウジング31内に収容される。電動モータ33は3相モータである。
【0016】
ハウジング31は、全体として略円筒形状である。ハウジング31には、冷媒が吐出される吐出口31bが形成されている。
圧縮部32は、ハウジング31内の冷媒を吸引圧縮し、その圧縮された冷媒を吐出口31bから吐出させるものである。圧縮部32の具体的な構成は、スクロールタイプ、ピストンタイプ、ベーンタイプ等任意である。
【0017】
電動モータ33は、3相モータであって、圧縮部32を駆動させるものである。電動モータ33は、ハウジング31に対して回転可能に支持された円柱状の回転軸34と、当該回転軸34に対して固定された円筒形状のロータ35と、ハウジング31に固定されたステータ36とを有する。ロータ35は、磁石35aが埋設された円筒形状のロータコア35bを有している。磁石35aは永久磁石である。回転軸34の軸線方向と、円筒形状のハウジング31の軸線方向とは一致している。ステータ36は、円筒形状のステータコア36aと、当該ステータコア36aに形成されたティースに捲回されたコイル36bとを有している。ロータ35及びステータ36は、回転軸34の径方向に対向している。
【0018】
車載用電動圧縮機30は、電動モータ33を駆動するインバータ装置40と、当該インバータ装置40が収容されたケース41を備えている。電動モータ33のコイル36bとインバータ装置40とは電気的に接続されている。ケース41は、固定具としてのボルト42によってハウジング31に固定されている。
【0019】
車載用電動圧縮機30は、ハウジング31内に、圧縮部32と、圧縮部32を駆動する電動モータ33が配置されるとともに電動モータ33に電力を供給するインバータ装置40が一体化されている。そして、電動モータ33により圧縮部32が駆動されると冷媒が吸入口31aからハウジング31内に吸入されて回転軸34の軸線方向に冷媒が流れ、圧縮部32に吸入されて圧縮部32で冷媒が圧縮された後に吐出口31bから吐出される。
【0020】
図2に示すように、インバータ装置40は、スイッチング素子Quu,Qud,Qvu,Qvd,Qwu,Qwdを有するインバータ回路43と、制御部44を備える。制御部44は、インバータ回路43のスイッチング素子Quu,Qud,Qvu,Qvd,Qwu,Qwdをそれぞれオンオフ制御して直流電源としての高圧バッテリ110からの直流電力を交流電力に変換して電動モータ33に供給するためのものである。制御部44は、ドライブ回路45と、PWM制御部46と、コントローラ47を備えている。
【0021】
図2において車両に搭載された高圧バッテリ110は例えば400Vバッテリである。高圧バッテリ110の正極にインバータ回路43の正極母線Lpが接続されている。また、高圧バッテリ110の負極にインバータ回路43の負極母線Lnが接続されている。
【0022】
インバータ回路43において正極母線Lpと負極母線Lnとの間には高圧直流電圧が印加される。正極母線Lpと負極母線Lnとの間にu相の上アームスイッチング素子Quuと下アームスイッチング素子Qudが直列に接続されている。同様に、正極母線Lpと負極母線Lnとの間にv相の上アームスイッチング素子Qvuと下アームスイッチング素子Qvdが直列に接続されている。また、正極母線Lpと負極母線Lnとの間にw相の上アームスイッチング素子Qwuと下アームスイッチング素子Qwdが直列に接続されている。スイッチング素子Quu,Qudによる直列回路の中間点に電動モータ33のコイルが接続されている。同様に、スイッチング素子Qvu,Qvdによる直列回路の中間点に電動モータ33のコイルが接続されている。また、スイッチング素子Qwu,Qwdによる直列回路の中間点に電動モータ33のコイルが接続されている。電動モータ33のコイルはスター結線されている。このように、電動モータ33は、3相の上アームスイッチング素子Quu,Qvu,Qwuと3相の下アームスイッチング素子Qud,Qvd,Qwdとの間に電気的に接続されている。
【0023】
スイッチング素子Quu,Qud,Qvu,Qvd,Qwu,Qwdは、それぞれ、IGBTよりなる。スイッチング素子Quu,Qud,Qvu,Qvd,Qwu,Qwdには帰還ダイオードDが逆並列接続されている。
【0024】
u相の下アームスイッチング素子Qudと負極母線Lnとを繋ぐ配線にu相電流センサ48が設けられている。v相の下アームスイッチング素子Qvdと負極母線Lnとを繋ぐ配線にv相電流センサ49が設けられている。w相の下アームスイッチング素子Qwdと負極母線Lnとを繋ぐ配線にw相電流センサ50が設けられている。各電流センサ48,49,50として、例えば、シャント抵抗が用いられる。u相電流センサ48によりu相の下アームスイッチング素子Qudに流れる電流が検出される。v相電流センサ49によりv相の下アームスイッチング素子Qvdに流れる電流が検出される。w相電流センサ50によりw相の下アームスイッチング素子Qwdに流れる電流が検出される。このように、インバータ装置40は、3相の下アームスイッチング素子Qud,Qvd,Qwdに流れる電流を相毎に検出する3つの電流センサ48,49,50を備える。
【0025】
本実施形態では回転位置センサを用いておらず位置センサレス化が図られている。即ち、電動モータ33は、センサレス運転により圧縮部32を駆動するモータである。
各スイッチング素子Quu,Qud,Qvu,Qvd,Qwu,Qwdのゲート端子にはドライブ回路45が接続されている。ドライブ回路45にはPWM制御部46が接続されている。PWM制御部46にはコントローラ47が接続されている。
【0026】
コントローラ47は、例えば、1つ以上の専用のハードウェア回路、及び/又は、コンピュータプログラム(ソフトウェア)に従って動作する1つ以上のプロセッサ(制御回路)によって実現することができる。プロセッサは、CPU並びに、RAM及びROM等のメモリを含み、メモリは、例えば各種処理をプロセッサに実行させるように構成されたプログラムコードまたは指令を格納している。メモリ即ちコンピュータ可読媒体は、汎用または専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含む。
【0027】
コントローラ47は、空調ECU80と電気的に接続されており、空調ECU80からの指令に基づいて、PWM制御部46及びドライブ回路45を介して各スイッチング素子Quu,Qud,Qvu,Qvd,Qwu,Qwdを周期的にオンオフさせる。詳細には、PWM制御部46は、各スイッチング素子Quu,Qud,Qvu,Qvd,Qwu,Qwdをパルス幅変調制御(PWM制御)する。より具体的には、キャリア信号(搬送波信号)と指令電圧値信号(比較対象信号)とを用いて、制御信号を生成する。そして、ドライブ回路45は、生成された制御信号を用いて各スイッチング素子Quu,Qud,Qvu,Qvd,Qwu,Qwdのオンオフ制御を行うことにより直流電力を交流電力に変換して電動モータ33(コイル36b)に供給することができる。
【0028】
図2に示すように、車載機器10は、車両ECU90を備えている。
次に、車載用電動圧縮機30の作用について説明する。
制御部44のコントローラ47は、3相の上アームスイッチング素子Quu,Qvu,Qwu及び3相の下アームスイッチング素子Qud,Qvd,Qwdをそれぞれオンオフ制御する。電動モータ33の起動時、即ち、電動モータ33のロータ35の停止時において、制御部44のコントローラ47は、位置推定制御と良否判定制御を実行する。位置推定制御では、ロータ35の停止位置を推定する。良否判定制御では、電流センサ48,49,50の異常有無を判定する。
【0029】
位置推定制御では、3相の上アームスイッチング素子Quu,Qvu,Qwuと3相の下アームスイッチング素子Qud,Qvd,Qwdから互いに相が異なるように選択された各々1相をオンにする動作を、3相の上下アームスイッチング素子Quu,Qvu,Qwu,Qud,Qvd,Qwdが取り得る6つの組合せ全てに対して実行する。位置推定制御では、6つの組合せにおいてオンにした下アームスイッチング素子に対応する電流センサから検出された6つの電流値に基づいてロータ35の磁極位置を推定し、磁極位置からロータ35の停止位置を推定する。
【0030】
位置推定制御について
図3、
図4、
図5、
図7、
図8、
図9を用いて詳しく説明する。
<位置推定のための通電パターン1>
コントローラ47は、u相の上アームスイッチング素子Quu及びv相の下アームスイッチング素子Qvdをオンして、
図3の一点鎖線で示す経路で電動モータ33のコイルに電流を流す。この時、v相電流センサ49によりv相の下アームスイッチング素子Qvdに流れる電流が検出される。コントローラ47においてv相電流センサ49の検出値が取り込まれる。
【0031】
<位置推定のための通電パターン2>
コントローラ47は、v相の上アームスイッチング素子Qvu及びw相の下アームスイッチング素子Qwdをオンして、
図4の一点鎖線で示す経路で電動モータ33のコイルに電流を流す。この時、w相電流センサ50によりw相の下アームスイッチング素子Qwdに流れる電流が検出される。コントローラ47においてw相電流センサ50の検出値が取り込まれる。
【0032】
<位置推定のための通電パターン3>
コントローラ47は、w相の上アームスイッチング素子Qwu及びu相の下アームスイッチング素子Qudをオンして、
図5の一点鎖線で示す経路で電動モータ33のコイルに電流を流す。この時、u相電流センサ48によりu相の下アームスイッチング素子Qudに流れる電流が検出される。コントローラ47においてu相電流センサ48の検出値が取り込まれる。
【0033】
<位置推定のための通電パターン4>
コントローラ47は、u相の上アームスイッチング素子Quu及びw相の下アームスイッチング素子Qwdをオンして、
図7の一点鎖線で示す経路で電動モータ33のコイルに電流を流す。この時、w相電流センサ50によりw相の下アームスイッチング素子Qwdに流れる電流が検出される。コントローラ47においてw相電流センサ50の検出値が取り込まれる。
【0034】
<位置推定のための通電パターン5>
コントローラ47は、v相の上アームスイッチング素子Qvu及びu相の下アームスイッチング素子Qudをオンして、
図8の一点鎖線で示す経路で電動モータ33のコイルに電流を流す。この時、u相電流センサ48によりu相の下アームスイッチング素子Qudに流れる電流が検出される。コントローラ47においてu相電流センサ48の検出値が取り込まれる。
【0035】
<位置推定のための通電パターン6>
コントローラ47は、w相の上アームスイッチング素子Qwu及びv相の下アームスイッチング素子Qvdをオンして、
図9の一点鎖線で示す経路で電動モータ33のコイルに電流を流す。この時、v相電流センサ49によりv相の下アームスイッチング素子Qvdに流れる電流が検出される。コントローラ47においてv相電流センサ49の検出値が取り込まれる。
【0036】
そして、コントローラ47は、位置推定のための通電パターン1での電流検出値と、通電パターン2での電流検出値と、通電パターン3での電流検出値と、通電パターン4での電流検出値と、通電パターン5での電流検出値と、通電パターン6での電流検出値とから電動モータ33のロータ35の停止位置を推定する。
【0037】
このように、通電パターン1~6にてモータコイルへの通電が行われて、各パターンでのu相電流センサ48、v相電流センサ49、w相電流センサ50による電流検出値によりロータ35の位置が推定される。つまり、コントローラ47は、いずれかの1相の上アームスイッチング素子及びそれ以外の1相の下アームスイッチング素子をオンしてロータ35の停止位置を推定する。
【0038】
コントローラ47は、良否判定制御を行う。良否判定制御では、位置推定制御の実行中において、オンにした上アームスイッチング素子をオフにするとともに同相の下アームスイッチング素子をオンにすることで下アームスイッチング素子の2相をオンにする動作を、3相の上下アームスイッチング素子が取り得る6つの組合せのうち少なくとも1つの組合せに対して実行する。良否判定制御では、オンにした2相の下アームスイッチング素子に各々対応する2つの電流センサから検出される電流値の差異に基づいて電流センサの異常有無を判定する。良否判定制御において、2相をオンにする動作を、3相の上下アームスイッチング素子Quu,Qvu,Qwu,Qud,Qvd,Qwdが取り得る6つの組合せ全てに対して実行し、差異に基づき、3つの電流センサ48,49,50の異常有無を判定する。制御部44から外部へ良否判定制御による電流センサの良否判定結果が送られる。
【0039】
良否判定制御について、
図3、
図4、
図5、
図7、
図8、
図9に示す電流経路、及び、
図6、
図10に示す各パターンのセンサ状態図を用いて説明する。
<良否判定パターン1>
コントローラ47は、上述した<位置推定のための通電パターン1>において、u相の上アームスイッチング素子Quu及びv相の下アームスイッチング素子Qvdをオンする。これにより、
図3において一点鎖線で示すように電流が流れる。
【0040】
その後に、コントローラ47は、u相の上アームスイッチング素子Quuをオフするとともに、u相の下アームスイッチング素子Qud及びv相の下アームスイッチング素子Qvdをオンする。これにより、
図3において破線で示すように、v相の下アームスイッチング素子Qvd→u相の下アームスイッチング素子Qud→電動モータ33を通る閉ループで電流が流れる。この時、u相電流センサ48によりu相の下アームスイッチング素子Qudに流れる閉ループ電流が検出されるとともにv相電流センサ49によりv相の下アームスイッチング素子Qvdに流れる閉ループ電流が検出される。コントローラ47においてu相電流センサ48の検出値及びv相電流センサ49の検出値が取り込まれる。コントローラ47は、u相電流センサ48の電流検出値とv相電流センサ49の電流検出値の差が閾値未満か否か判定する。
【0041】
<良否判定パターン2>
コントローラ47は、上述した<位置推定のための通電パターン2>において、v相の上アームスイッチング素子Qvu及びw相の下アームスイッチング素子Qwdをオンする。これにより、
図4において一点鎖線で示すように電流が流れる。
【0042】
その後に、コントローラ47は、v相の上アームスイッチング素子Qvuをオフするとともに、v相の下アームスイッチング素子Qvd及びw相の下アームスイッチング素子Qwdをオンする。これにより、
図4において破線で示すように、w相の下アームスイッチング素子Qwd→v相の下アームスイッチング素子Qvd→電動モータ33を通る閉ループで電流が流れる。この時、v相電流センサ49によりv相の下アームスイッチング素子Qvdに流れる閉ループ電流が検出されるとともにw相電流センサ50によりw相の下アームスイッチング素子Qwdに流れる閉ループ電流が検出される。コントローラ47においてv相電流センサ49の検出値及びw相電流センサ50の検出値が取り込まれる。コントローラ47は、v相電流センサ49の電流検出値とw相電流センサ50の電流検出値の差が閾値未満か否か判定する。
【0043】
<良否判定パターン3>
コントローラ47は、上述した<位置推定のための通電パターン3>において、w相の上アームスイッチング素子Qwu及びu相の下アームスイッチング素子Qudをオンする。これにより、
図5において一点鎖線で示すように電流が流れる。
【0044】
その後に、コントローラ47は、w相の上アームスイッチング素子Qwuをオフするとともに、w相の下アームスイッチング素子Qwd及びu相の下アームスイッチング素子Qudをオンする。これにより、
図5において破線で示すように、u相の下アームスイッチング素子Qud→w相の下アームスイッチング素子Qwd→電動モータ33を通る閉ループで電流が流れる。この時、w相電流センサ50によりw相の下アームスイッチング素子Qwdに流れる閉ループ電流が検出されるとともにu相電流センサ48によりu相の下アームスイッチング素子Qudに流れる閉ループ電流が検出される。コントローラ47においてw相電流センサ50の検出値及びu相電流センサ48の検出値が取り込まれる。コントローラ47は、w相電流センサ50の電流検出値とu相電流センサ48の電流検出値の差が閾値未満か否か判定する。
【0045】
<良否判定1>
コントローラ47は、
図6に示すように、良否判定パターン1,2,3の少なくとも一つにおいて電流検出値の差が閾値以上であると、異常と判定する。
【0046】
詳しくは、
図6のNo(番号)1の欄においては、
図3に示した良否判定パターン1での電流検出値の差が閾値未満であり一致する。
図4に示した良否判定パターン2での電流検出値の差が閾値未満であり一致する。
図5に示した良否判定パターン3での電流検出値の差が閾値未満であり一致する。この場合には、u相電流センサ48が正常、かつ、v相電流センサ49が正常、かつ、w相電流センサ50が正常であると判定する。
【0047】
図6のNo(番号)2の欄においては、
図3に示した良否判定パターン1での電流検出値の差が閾値未満であり一致する。
図4に示した良否判定パターン2での電流検出値の差が閾値以上であり不一致である。
図5に示した良否判定パターン3での電流検出値の差が閾値以上であり不一致である。この場合には、u相電流センサ48が正常、かつ、v相電流センサ49が正常、かつ、w相電流センサ50が異常であると判定する。
【0048】
図6のNo(番号)3の欄においては、
図3に示した良否判定パターン1での電流検出値の差が閾値以上であり不一致である。
図4に示した良否判定パターン2での電流検出値の差が閾値未満であり一致する。
図5に示した良否判定パターン3での電流検出値の差が閾値以上であり不一致である。この場合には、u相電流センサ48が異常、かつ、v相電流センサ49が正常、かつ、w相電流センサ50が正常であると判定する。
【0049】
図6のNo(番号)4の欄においては、
図3に示した良否判定パターン1での電流検出値の差が閾値以上であり不一致である。
図4に示した良否判定パターン2での電流検出値の差が閾値以上であり不一致である。
図5に示した良否判定パターン3での電流検出値の差が閾値未満であり一致する。この場合には、u相電流センサ48が正常、かつ、v相電流センサ49が異常、かつ、w相電流センサ50が正常であると判定する。
【0050】
図6のNo(番号)5の欄においては、
図3に示した良否判定パターン1での電流検出値の差が閾値以上であり不一致である。
図4に示した良否判定パターン2での電流検出値の差が閾値以上であり不一致である。
図5に示した良否判定パターン3での電流検出値の差が閾値以上であり不一致である。この場合には、u相電流センサ48、v相電流センサ49、w相電流センサ50の内の2つ以上(2相以上)が異常である判定する。
【0051】
<良否判定パターン4>
コントローラ47は、上述した<位置推定のための通電パターン4>において、u相の上アームスイッチング素子Quu及びw相の下アームスイッチング素子Qwdをオンする。これにより、
図7において一点鎖線で示すように電流が流れる。
【0052】
その後に、コントローラ47は、u相の上アームスイッチング素子Quuをオフするとともに、u相の下アームスイッチング素子Qud及びw相の下アームスイッチング素子Qwdをオンする。これにより、
図7において破線で示すように、w相の下アームスイッチング素子Qwd→u相の下アームスイッチング素子Qud→電動モータ33を通る閉ループで電流が流れる。この時、u相電流センサ48によりu相の下アームスイッチング素子Qudに流れる閉ループ電流が検出されるとともにw相電流センサ50によりw相の下アームスイッチング素子Qwdに流れる閉ループ電流が検出される。コントローラ47においてu相電流センサ48の検出値及びw相電流センサ50の検出値が取り込まれる。コントローラ47は、u相電流センサ48の電流検出値とw相電流センサ50の電流検出値の差が閾値未満か否か判定する。
【0053】
<良否判定パターン5>
コントローラ47は、上述した<位置推定のための通電パターン5>において、v相の上アームスイッチング素子Qvu及びu相の下アームスイッチング素子Qudをオンする。これにより、
図8において一点鎖線で示すように電流が流れる。
【0054】
その後に、コントローラ47は、v相の上アームスイッチング素子Qvuをオフするとともに、v相の下アームスイッチング素子Qvd及びu相の下アームスイッチング素子Qudをオンする。これにより、
図8において破線で示すように、u相の下アームスイッチング素子Qud→v相の下アームスイッチング素子Qvd→電動モータ33を通る閉ループで電流が流れる。この時、v相電流センサ49によりv相の下アームスイッチング素子Qvdに流れる閉ループ電流が検出されるとともにu相電流センサ48によりu相の下アームスイッチング素子Qudに流れる閉ループ電流が検出される。コントローラ47においてv相電流センサ49の検出値及びu相電流センサ48の検出値が取り込まれる。コントローラ47は、v相電流センサ49の電流検出値とu相電流センサ48の電流検出値の差が閾値未満か否か判定する。
【0055】
<良否判定パターン6>
コントローラ47は、上述した<位置推定のための通電パターン6>において、w相の上アームスイッチング素子Qwu及びv相の下アームスイッチング素子Qudをオンする。これにより、
図9において一点鎖線で示すように電流が流れる。
【0056】
その後に、コントローラ47は、w相の上アームスイッチング素子Qwuをオフするとともに、w相の下アームスイッチング素子Qwd及びv相の下アームスイッチング素子Qvdをオンする。これにより、
図9において破線で示すように、v相の下アームスイッチング素子Qvd→w相の下アームスイッチング素子Qwd→電動モータ33を通る閉ループで電流が流れる。この時、w相電流センサ50によりw相の下アームスイッチング素子Qwdに流れる閉ループ電流が検出されるとともにv相電流センサ49によりv相の下アームスイッチング素子Qvdに流れる閉ループ電流が検出される。コントローラ47においてw相電流センサ50の検出値及びv相電流センサ49の検出値が取り込まれる。コントローラ47は、w相電流センサ50の電流検出値とv相電流センサ49の電流検出値の差が閾値未満か否か判定する。
【0057】
<良否判定2>
コントローラ47は、
図10に示すように、良否判定パターン4,5,6の少なくとも一つにおいて電流検出値の差が閾値以上であると、異常と判定する。
【0058】
詳しくは、
図10のNo(番号)1の欄においては、
図7に示した良否判定パターン4での電流検出値の差が閾値未満であり一致する。
図8に示した良否判定パターン5での電流検出値の差が閾値未満であり一致する。
図9に示した良否判定パターン6での電流検出値の差が閾値未満であり一致する。この場合には、u相電流センサ48が正常、かつ、v相電流センサ49が正常、かつ、w相電流センサ50が正常であると判定する。
【0059】
図10のNo(番号)2の欄においては、
図7に示した良否判定パターン4での電流検出の差が閾値未満であり一致する。
図8に示した良否判定パターン5での電流検出値の差が閾値以上であり不一致である。
図9に示した良否判定パターン6での電流検出値の差が閾値以上であり不一致である。この場合には、u相電流センサ48が正常、かつ、v相電流センサ49が異常、かつ、w相電流センサ50が正常であると判定する。
【0060】
図10のNo(番号)3の欄においては、
図7に示した良否判定パターン4での電流検出値の差が閾値以上であり不一致である。
図8に示した良否判定パターン5での電流検出値の差が閾値未満であり一致する。
図9に示した良否判定パターン6での電流検出値の差が閾値以上であり不一致である。この場合には、u相電流センサ48が正常、かつ、v相電流センサ49が正常、かつ、w相電流センサ50が異常であると判定する。
【0061】
図10のNo(番号)4の欄においては、
図7に示した良否判定パターン4での電流検出値の差が閾値以上であり不一致である。
図8に示した良否判定パターン5での電流検出値の差が閾値以上であり不一致である。
図9に示した良否判定パターン6での電流検出値の差が閾値未満であり一致する。この場合には、u相電流センサ48が異常、かつ、v相電流センサ49が正常、かつ、w相電流センサ50が正常であると判定する。
【0062】
図10のNo(番号)5の欄においては、
図7に示した良否判定パターン4での電流検出値の差が閾値以上であり不一致である。
図8に示した良否判定パターン5での電流検出値の差が閾値以上であり不一致である。
図9に示した良否判定パターン6での電流検出値の差が閾値以上であり不一致である。この場合には、u相電流センサ48、v相電流センサ49、w相電流センサ50の内の2つ以上(2相以上)が異常である判定する。
【0063】
図2に示すように、コントローラ47から空調ECU80を介して車両ECU90に電流センサの良否判定結果が送られる。車両ECU90は、電流センサの良否判定結果に基づいて電流センサが異常であると、例えば、車載用電動圧縮機30の運転を停止する。つまり、車載用電動圧縮機30を最適に運転する必要があるが電流センサが異常であると無駄な電力を消費してしまう可能性があるので、運転停止等を行う。なお、電流センサの電流検出値の誤差は、電流センサ自身の熱による誤差であったり、電流センサの出力値を増幅するアンプの熱による誤差であったりする。
【0064】
このように、モータ起動時にモータの停止位置を推定するために6パターンのパルスを印加してその流れた電流から停止位置を推定している。このモータ起動時に3相のうちから2相を選択し、その2相のコイルにパルス電圧を印加することでモータを回転させずに電流を流し、その2相に流れた電流を比較する(一致するか否かを判定する)ことで2相の電流センサの妥当性を判断する。電流センサの異常判定を新たにセンサを追加することなく、電動圧縮機の起動時に毎回実施可能である。パルス幅は、モータ33の各相のコイル36bが磁気飽和するために必要な長さに設定されている。
【0065】
電流センサラショナリティ対応についての背景について言及する。
電動圧縮機の故障診断(OBD)において、電流センサの確からしさ(ラショナリティ)を判断する必要がある。
【0066】
電動圧縮機の電流センサの構成として、現状、電動圧縮機の起動時に、モータのロータの停止位置を把握することで電動圧縮機の起動性を向上させている。具体的には、電動圧縮機の初期位置推定方法として、モータロータの停止に応じたモータのインダクタンス変化を利用して磁極位置ひいては停止位置を推定する。モータロータの各相(3相)に正/負それぞれから電流を流し(6パターン)、その時に流れた電流値から停止位置を推定する。
【0067】
そこで、電流センサラショナリティ対応として、初期位置推定中の電流の流し方を変更し、初期位置推定を実施しつつ、電流センサのラショナリティ判定を行う。具体的には、電動圧縮機の初期位置推定方法として、モータロータのu,v,w各相の正/負それぞれからu,v,w各1相に電流を流し(6パターン)、初期位置推定を実施するとともに、同一電流が流れている電流センサの値を取得し、電流検出値の差が閾値未満である場合(等しい場合)は正常と判断する。電流検出値の差が閾値以上である場合(異なる場合)は、その他のパターンの結果も加味して故障している相の電流センサを特定する。
【0068】
例えば、
図3を用いて説明したように、u相の上アームスイッチング素子Quuからv相の下アームスイッチング素子Qvdへ電流を流した後に、u相及びv相の各下アームのスイッチング素子Qud,Qvdをオンし、u相及びv相の各電流センサ48,49による電流検出値を取り込む。このように状態を移行すると、モータのインダクタンスにより流れていた電流を流れさせ続けようとして還流電流が流れる。v相の下アームスイッチング素子Qvdのオンを維持し、u相の上下アームのスイッチング素子Quu,Qudのオン/オフ状態を反転させることで、流す電流を制御しながら電流センサの妥当性判断が可能となる。
【0069】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)電動圧縮機としての車載用電動圧縮機30の構成として、流体を圧縮する圧縮部32と、永久磁石35aを有するロータ35を備えるとともに圧縮部32を駆動する3相モータである電動モータ33を備える。正負の母線Lp,Ln間に電気的に接続された3相の上アームスイッチング素子Quu,Qvu,Qwu及び3相の下アームスイッチング素子Qud,Qvd,Qwdと、3相の下アームスイッチング素子Qud,Qvd,Qwdに流れる電流を相毎に検出する3つの電流センサ48,49,50を備える。3相の上アームスイッチング素子Quu,Qvu,Qwu及び3相の下アームスイッチング素子Qud,Qvd,Qwdをそれぞれオンオフ制御するとともにロータ35の停止位置を推定する位置推定制御と電流センサ48,49,50の異常有無を判定する良否判定制御を実行する制御部44を備える。電動モータ33は、3相の上アームスイッチング素子Quu,Qvu,Qwuと3相の下アームスイッチング素子Qud,Qvd,Qwdとの間に電気的に接続されている。位置推定制御は、3相の上アームスイッチング素子Quu,Qvu,Qwuと3相の下アームスイッチング素子Qud,Qvd,Qwdから互いに相が異なるように選択された各々1相をオンにする動作を、3相の上下アームスイッチング素子Quu,Qvu,Qwu,Qud,Qvd,Qwdが取り得る6つの組合せ全てに対して実行する。位置推定制御は、6つの組合せにおいてオンにした下アームスイッチング素子に対応する電流センサから検出された6つの電流値に基づいてロータ35の磁極位置を推定し、磁極位置からロータ35の停止位置を推定する制御である。良否判定制御は、位置推定制御の実行中において、オンにした上アームスイッチング素子をオフにするとともに同相の下アームスイッチング素子をオンにすることで下アームスイッチング素子の2相をオンにする動作を、3相の上下アームスイッチング素子が取り得る6つの組合せのうち少なくとも1つの組合せに対して実行する。良否判定制御は、オンにした2相の下アームスイッチング素子に各々対応する2つの電流センサから検出される電流値の差異に基づいて電流センサの異常有無を判定する制御である。
【0070】
これによれば、位置推定制御の実行中においてオンにした上アームスイッチング素子をオフにしつつ同相の下アームスイッチング素子をオンにすることで、2つの電流センサを流れる閉ループ電流を生成できる。この2つの電流センサによって検出された電流値を比較することで、それらの値に所定以上の差があれば、どちらかの電流センサに異常があることを判定できる。
【0071】
よって、電動モータの位置推定を含めて電流センサの異常有無を判定することができる。
(2)良否判定制御は、2相をオンにする動作を、3相の上下アームスイッチング素子Quu,Qvu,Qwu,Qud,Qvd,Qwdが取り得る6つの組合せ全てに対して実行し、差異に基づき、3つの電流センサ48,49,50の異常有無を判定する制御である。これによれば、3つの電流センサ48,49,50のうち2つにて検出された電流値の比較を、全ての電流センサの組み合わせについて行うことができるため、電流センサの異常の有無だけでなく、どの電流センサが異常であるかを特定することができる。
【0072】
(3)制御部44から外部へ良否判定制御による電流センサの良否判定結果を送る。これによれば、電動圧縮機を含め複数の機器を制御する装置が、全体として最適な制御を行うことができる。
【0073】
実施形態は前記に限定されるものではなく、例えば、次のように具体化してもよい。
・上アームスイッチング素子Quu,Qvu,Qwu及び下アームスイッチング素子Qud,Qvd,Qwdは、IGBTに代わり、例えば、MOSトランジスタで構成してもよい。
【0074】
・車載用電度圧縮機に限ることなく、車載用でない電動圧縮機に用いてもよい。
【符号の説明】
【0075】
30…車載用電動圧縮機、32…圧縮部、33…電動モータ、35…ロータ、35a…永久磁石、44…制御部、48,49,50…電流センサ、Lp,Ln…正負の母線、Quu,Qvu,Qwu…上アームスイッチング素子、Qud,Qvd,Qwd…下アームスイッチング素子。