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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022131891
(43)【公開日】2022-09-07
(54)【発明の名称】回転電機のロータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/22 20060101AFI20220831BHJP
   H02K 15/02 20060101ALI20220831BHJP
【FI】
H02K1/22 C
H02K15/02 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021031119
(22)【出願日】2021-02-26
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】浅井 満季
(72)【発明者】
【氏名】片桐 慶大
(72)【発明者】
【氏名】水野 峻史
(72)【発明者】
【氏名】宮重 敬太
【テーマコード(参考)】
5H601
5H615
【Fターム(参考)】
5H601DD01
5H601DD11
5H601JJ05
5H601KK13
5H615AA01
5H615PP02
5H615PP24
5H615SS19
5H615SS33
(57)【要約】
【課題】ロータの回転時に潤滑剤が筒部材の外部へ漏れることを抑制すること。
【解決手段】ロータ15は、収容空間S1を形成する溝40を備えている。よって、例えば、ロータ15が回転した際に、筒部材16の内周面160と圧入部21の外周面との間から筒部材16の外部へ漏れようとする潤滑油A1が、収容空間S1に保持される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒部材と、
前記筒部材内に配置された磁性体と、
前記筒部材の軸線方向の両端部の少なくとも一方に設けられるとともに前記軸線方向で前記磁性体と隣り合った状態で前記筒部材の内周面に固定される軸部材と、を備え、
前記軸部材は、
前記筒部材に圧入される圧入部と、
前記圧入部に連続するとともに前記軸線方向で前記筒部材の外側に位置する軸部と、を有し、
潤滑剤が前記軸部材及び前記筒部材の内周面の少なくとも一方に塗布された状態で前記軸部材が前記筒部材に圧入されて構成される回転電機のロータであって、
前記筒部材の内周面及び前記圧入部の外周面の少なくとも一方に設けられ、且つ前記筒部材と前記圧入部とによって区画されるとともに前記潤滑剤を収容する収容空間を形成する溝を備えていることを特徴とする回転電機のロータ。
【請求項2】
前記溝は、前記筒部材の周方向の全周に亘って延びていることを特徴とする請求項1に記載の回転電機のロータ。
【請求項3】
前記溝の少なくとも一部は、前記軸線方向で前記磁性体よりも前記軸部寄りに位置していることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の回転電機のロータ。
【請求項4】
前記圧入部における前記溝よりも前記軸線方向で前記軸部寄りに位置する部位の前記筒部材の内周面に対する締め代は、前記圧入部における前記溝よりも前記軸線方向で前記磁性体寄りに位置する部位の前記筒部材の内周面に対する締め代よりも大きいことを特徴とする請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の回転電機のロータ。
【請求項5】
前記圧入部は、
前記溝よりも前記軸線方向で前記磁性体寄りに位置する小径部と、
前記小径部よりも前記軸線方向で前記軸部寄りに位置するとともに前記小径部よりも外径が大きい大径部と、を有していることを特徴とする請求項4に記載の回転電機のロータ。
【請求項6】
前記筒部材は、
前記溝よりも前記軸線方向で前記磁性体寄りに位置する第1筒部と、
前記第1筒部よりも前記軸線方向で前記軸部寄りに位置するとともに前記第1筒部よりも内径が小さい第2筒部と、を有していることを特徴とする請求項4に記載の回転電機のロータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機のロータに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の回転電機のロータは、筒部材と、筒部材内に配置された磁性体と、筒部材の軸線方向の両端部の少なくとも一方に設けられるとともに筒部材の軸線方向で磁性体と隣り合った状態で筒部材の内周面に固定される軸部材と、を有している。軸部材は、例えば、筒部材に圧入されることにより、筒部材に対して固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-112849号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、軸部材を筒部材に圧入し易くするために、軸部材や筒部材の内周面に潤滑剤を塗布した状態で軸部材を筒部材に圧入する場合がある。このようなロータにおいては、軸部材を筒部材に圧入した後に、筒部材の内側に潤滑剤が残っていると、例えば、ロータが回転した際に、筒部材の内周面と軸部材の外周面との間から潤滑剤が筒部材の外部へ漏れる虞がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための回転電機は、筒部材と、前記筒部材内に配置された磁性体と、前記筒部材の軸線方向の両端部の少なくとも一方に設けられるとともに前記軸線方向で前記磁性体と隣り合った状態で前記筒部材の内周面に固定される軸部材と、を備え、前記軸部材は、前記筒部材に圧入される圧入部と、前記圧入部に連続するとともに前記軸線方向で前記筒部材の外側に位置する軸部と、を有し、潤滑剤が前記軸部材及び前記筒部材の内周面の少なくとも一方に塗布された状態で前記軸部材が前記筒部材に圧入されて構成される回転電機のロータであって、前記筒部材の内周面及び前記圧入部の外周面の少なくとも一方に設けられ、且つ前記筒部材と前記圧入部とによって区画されるとともに前記潤滑剤を収容する収容空間を形成する溝を備えている。
【0006】
これによれば、圧入部を筒部材に圧入した後に、筒部材の内側に潤滑剤が残っていたとしても、例えば、ロータが回転した際に、筒部材の内周面と圧入部の外周面との間から筒部材の外部へ漏れようとする潤滑剤を、収容空間に保持することができる。したがって、ロータの回転時に潤滑剤が筒部材の外部へ漏れることを抑制することができる。
【0007】
上記回転電機のロータにおいて、前記溝は、前記筒部材の周方向の全周に亘って延びているとよい。
これによれば、例えば、溝が筒部材の周方向の一部にのみ延びるように設けられている場合に比べると、ロータが回転した際に、筒部材の内周面と圧入部の外周面との間から筒部材の外部へ漏れようとする潤滑剤を、収容空間に保持し易くすることができる。したがって、ロータの回転時に潤滑剤が筒部材の外部へ漏れることを抑制し易くすることができる。
【0008】
上記回転電機のロータにおいて、前記溝の少なくとも一部は、前記軸線方向で前記磁性体よりも前記軸部寄りに位置しているとよい。
これによれば、例えば、溝の全体が軸部よりも磁性体寄りに位置している場合に比べて、より多くの潤滑剤が収容空間よりも磁性体寄りに配置される。したがって、ロータの回転時に潤滑剤が筒部材の外部へ漏れることを抑制し易くすることができる。
【0009】
上記回転電機のロータにおいて、前記圧入部における前記溝よりも前記軸線方向で前記軸部寄りに位置する部位の前記筒部材の内周面に対する締め代は、前記圧入部における前記溝よりも前記軸線方向で前記磁性体寄りに位置する部位の前記筒部材の内周面に対する締め代よりも大きいとよい。
【0010】
これによれば、溝よりも軸部寄りに位置する筒部材と圧入部との間のシール性を向上させることができるため、例えば、収容空間に保持し切れなかった潤滑剤が、ロータの回転時に筒部材の外部へ漏れてしまうことを抑制することができる。
【0011】
上記回転電機のロータにおいて、前記圧入部は、前記溝よりも前記軸線方向で前記磁性体寄りに位置する小径部と、前記小径部よりも前記軸線方向で前記軸部寄りに位置するとともに前記小径部よりも外径が大きい大径部と、を有しているとよい。
【0012】
これによれば、筒部材を設計変更することなく、圧入部における溝よりも筒部材の軸線方向で軸部寄りに位置する部位の筒部材の内周面に対する締め代を、圧入部における溝よりも筒部材の軸線方向で磁性体寄りに位置する部位の筒部材の内周面に対する締め代よりも大きくすることができる。
【0013】
上記回転電機のロータにおいて、前記筒部材は、前記溝よりも前記軸線方向で前記磁性体寄りに位置する第1筒部と、前記第1筒部よりも前記軸線方向で前記軸部寄りに位置するとともに前記第1筒部よりも内径が小さい第2筒部と、を有しているとよい。
【0014】
これによれば、圧入部を設計変更することなく、圧入部における溝よりも筒部材の軸線方向で軸部寄りに位置する部位の筒部材の内周面に対する締め代を、圧入部における溝よりも筒部材の軸線方向で磁性体寄りに位置する部位の筒部材の内周面に対する締め代よりも大きくすることができる。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、ロータの回転時に潤滑剤が筒部材の外部へ漏れることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施形態における回転電機を説明するための断面図。
図2】ロータの一部分を破断して示す断面図。
図3】ロータの一部分を示す分解断面図。
図4】別の実施形態におけるロータの一部分を破断して示す断面図。
図5】ロータの一部分を示す分解断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、回転電機を具体化した一実施形態を図1図3にしたがって説明する。
図1に示すように、回転電機10は、筒状のハウジング11内に収容されている。ハウジング11は、筒状の第1ハウジング構成体12と、第1ハウジング構成体12に連結される板状の第2ハウジング構成体13と、を備えている。第1ハウジング構成体12及び第2ハウジング構成体13は金属製であり、例えば、アルミニウム製である。
【0018】
第1ハウジング構成体12は、板状の端壁12aと、端壁12aの外周部から筒状に延びる周壁12bと、を有している。第2ハウジング構成体13は、周壁12bにおける端壁12aとは反対側の開口を閉塞した状態で第1ハウジング構成体12に連結されている。第1ハウジング構成体12及び第2ハウジング構成体13は、回転電機10を収容するモータ室M1を区画している。
【0019】
第1ハウジング構成体12の端壁12aの内面には、円筒状のボス部12cが突出した状態で設けられている。ボス部12cの軸線は、第1ハウジング構成体12の周壁12bの軸線と一致している。また、第2ハウジング構成体13の内面には、円筒状のボス部13aが突出した状態で設けられている。ボス部13aの軸線は、第1ハウジング構成体12の周壁12bの軸線と一致している。よって、両ボス部12c,13aの軸線は一致している。
【0020】
回転電機10は、ステータ14と、ロータ15と、を備えている。ステータ14は、第1ハウジング構成体12の周壁12bの内周面に固定される円筒状のステータコア14aと、ステータコア14aに巻回されるコイル14bと、を有する。ロータ15は、ハウジング11内において、ステータ14の径方向内側に回転可能な状態で配置されている。
【0021】
図2に示すように、ロータ15は、筒部材16と、磁性体である永久磁石17と、軸部材としての第1軸部材20及び第2軸部材30と、を備えている。本実施形態においては、筒部材16はインコネル製である。筒部材16は、筒部材16の軸線が直線状に延びる筒状である。筒部材16の内径は、一定である。
【0022】
永久磁石17は、中実円柱状である。永久磁石17は、筒部材16内に配置されている。永久磁石17の軸線は、筒部材16の軸線と一致している。永久磁石17は、永久磁石17の径方向に着磁されている。永久磁石17は、筒部材16の内周面160に圧入されている。永久磁石17における軸線が延びる方向の長さは、筒部材16における軸線が延びる方向の長さよりも短い。永久磁石17の軸線方向両側に位置する第1端面17a及び第2端面17bは、永久磁石17の軸線方向に対して直交する方向に延びる平坦面である。
【0023】
永久磁石17の第1端面17aは、筒部材16の内側に位置している。よって、筒部材16の第1端部16aは、永久磁石17の第1端面17aよりも軸線方向へ突出している。また、永久磁石17の第2端面17bは、筒部材16の内側に位置している。よって、筒部材16の軸線方向の第2端部16bは、永久磁石17の第2端面17bよりも軸線方向へ突出している。
【0024】
第1軸部材20は、筒部材16の第1端部16aに設けられている。第1軸部材20の軸線は、筒部材16の軸線と一致している。第2軸部材30は、筒部材16の第2端部16bに設けられている。第2軸部材30の軸線は、筒部材16の軸線と一致している。第1軸部材20及び第2軸部材30は、例えば、チタン製である。
【0025】
第1軸部材20及び第2軸部材30は、圧入部21と、軸部22と、をそれぞれ有している。各圧入部21は、筒部材16に圧入されている。各圧入部21は、円柱状である。各軸部22は、各圧入部21に連続している。各軸部22は、筒部材16の軸線方向で筒部材16の外側に位置している。
【0026】
図3に示すように、各圧入部21を筒部材16に圧入する際には、まず、筒部材16の内周面160に潤滑剤としての潤滑油A1を塗布する。このとき、潤滑油A1は、筒部材16の内周面における圧入部21が圧入される部分全体に塗布されている。続いて、永久磁石17に対して、圧入部21の端面21aを対向させた状態で、圧入部21を筒部材16の内周面160に圧入する。このとき、筒部材16の内周面160に塗布されていた潤滑油A1が、圧入部21によって永久磁石17に向けて押し出される。これにより、圧入部21の端面21aと永久磁石17の第1端面17aとの間の隙間に、圧入部21を筒部材16に圧入した際に塗布した潤滑油A1が介在される。
【0027】
図2及び図3に示すように、各圧入部21は、溝40をそれぞれ備えている。各溝40は、各圧入部21の外周面に形成されている。各溝40は、筒部材16の周方向の全周に亘って延びている。各溝40は、各溝40の軸線が延びる方向が、筒部材16の軸線方向と同一方向となるように各圧入部21に形成されている。各溝40の軸線は、筒部材16の軸線と一致している。各溝40は、溝40の全体が筒部材16の軸線方向で永久磁石17よりも軸部22寄りに位置するように各圧入部21に形成されている。
【0028】
各圧入部21は、小径部23と、大径部24と、をそれぞれ有している。各小径部23は、円柱状である。各小径部23は、溝40よりも筒部材16の軸線方向で軸部22寄りに位置している。したがって、各小径部23は、各圧入部21における溝40よりも筒部材16の軸線方向で永久磁石17寄りに位置する部位である。
【0029】
各大径部24は、円柱状である。各大径部24は、小径部23よりも筒部材16の軸線方向で軸部22寄りに位置している。各大径部24の外周面と各小径部23の外周面とは、各溝40によって接続されている。したがって、各大径部24は、各圧入部21における溝40よりも筒部材16の軸線方向で軸部22寄りに位置する部位である。
【0030】
各大径部24の外径R1は、各小径部23の外径R2よりも大きい。したがって、各圧入部21における各溝40よりも筒部材16の軸線方向で軸部22寄りに位置する部位の筒部材16の内周面160に対する締め代は、各圧入部21における各溝40よりも筒部材16の軸線方向で永久磁石17寄りに位置する部位の筒部材16の内周面160に対する締め代よりも大きい。
【0031】
各溝40は、第1テーパ面41と第2テーパ面42とを有している。第1テーパ面41は、各大径部24の外周面から各圧入部21の軸線に向けて各圧入部21の軸線方向に対して斜交する方向へ延びている。各第1テーパ面41は、各大径部24の外周面から離間するにつれて永久磁石17に接近するように延びている。各第2テーパ面42は、各小径部23の外周面から各圧入部21の軸線に向けて各圧入部21の軸線方向に対して斜交する方向へ延びている。各第2テーパ面42は、各小径部23の外周面から離間するにつれて永久磁石17から離間するように延びている。各第1テーパ面41と各第2テーパ面42との交差部は、各溝40の底部43を形成している。各溝40の底部43は、筒部材16の周方向の全周に亘って線状に延びている。各溝40は、各圧入部21の軸線方向で切断した断面が三角形状である。
【0032】
各溝40の第1テーパ面41及び第2テーパ面42と筒部材16の内周面160とによって収容空間S1がそれぞれ区画されている。各収容空間S1には、潤滑油A1が収容されている。したがって、各収容空間S1は、筒部材16と各圧入部21とによって区画されるとともに潤滑油A1を収容する。
【0033】
図1に示すように、第1軸部材20の軸部22は、ボス部13aの内側を通過するとともに第2ハウジング構成体13を貫通してハウジング11の外へ突出している。ボス部13aの内周面と軸部22の外周面との間には、第1軸受61が設けられている。そして、第1軸部材20は、軸部22が第1軸受61を介してボス部13aに支持されることにより、ハウジング11に回転可能な状態で支持されている。
【0034】
第2軸部材30の軸部22は、ボス部12cの内側に挿入されている。ボス部12cの内周面と軸部22の外周面との間には、第2軸受62が設けられている。そして、第2軸部材30は、軸部22が第2軸受62を介してボス部12cに支持されることにより、ハウジング11に回転可能な状態で支持されている。
【0035】
次に、本実施形態の作用について説明する。
ところで、圧入部21を筒部材16に圧入した後に、筒部材16の内側に潤滑油A1が残っていると、例えば、ロータ15が回転した際に、筒部材16の内周面160と圧入部21の外周面との間から潤滑油A1が筒部材の外部へ漏れようとする。このとき、筒部材16の内周面160と圧入部21の外周面との間から筒部材の外部へ漏れようとする潤滑油A1は、収容空間S1に収容され、収容空間S1に保持される。したがって、ロータ15の回転時に筒部材16の外部へ潤滑油A1が漏れてしまうことが抑制され、モータ室M1に潤滑油A1が漏れてしまうことが抑制される。
【0036】
上記実施形態では以下の効果を得ることができる。
(1)ロータ15は、収容空間S1を形成する溝40を備えている。これによれば、圧入部21を筒部材16に圧入した後に、筒部材16の内側に潤滑油A1が残っていたとしても、例えば、ロータ15が回転した際に、筒部材16の内周面160と圧入部21の外周面との間から筒部材16の外部へ漏れようとする潤滑油A1を、収容空間S1に保持することができる。したがって、ロータ15の回転時に潤滑油A1が筒部材16の外部へ漏れることを抑制することができる。
【0037】
(2)溝40は、筒部材16の周方向の全周に亘って延びている。これによれば、例えば、溝40が筒部材16の周方向の一部にのみ延びている場合に比べると、ロータ15が回転した際に、筒部材16の内周面160と圧入部21の外周面との間から筒部材16の外部へ漏れようとする潤滑油A1を、収容空間S1に保持し易くすることができる。したがって、ロータ15の回転時に潤滑油A1が筒部材16の外部へ漏れることを抑制し易くすることができる。
【0038】
(3)溝40は、永久磁石17よりも軸部22寄りに位置している。これによれば、例えば、溝40の全体が軸部22よりも永久磁石17寄りに位置している場合に比べて、より多くの潤滑油A1が収容空間S1よりも永久磁石17寄りに配置される。したがって、ロータ15の回転時に潤滑油A1が筒部材16の外部へ漏れることを抑制し易くすることができる。
【0039】
(4)大径部24の締め代は、小径部23の締め代よりも大きい。これによれば、溝40よりも軸部22寄りに位置する筒部材16と大径部24との間のシール性を向上させることができるため、例えば、収容空間S1に保持し切れなかった潤滑油A1が、ロータ15の回転時に筒部材16の外部へ漏れてしまうことを抑制することができる。
【0040】
(5)圧入部21は、小径部23と大径部24とを有している。これによれば、筒部材16を設計変更することなく、圧入部21における溝40よりも筒部材16の軸線方向で軸部22寄りに位置する部位の筒部材16の内周面160に対する締め代を、圧入部21における溝40よりも筒部材16の軸線方向で永久磁石17寄りに位置する部位の筒部材16の内周面160に対する締め代よりも大きくすることができる。
【0041】
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0042】
図4に示すように、各圧入部21の外周面は、溝40を複数備えていてもよい。これによれば、永久磁石17寄りに位置する収容空間S1では保持し切れなかった潤滑油A1を軸部22寄りに位置する収容空間S1で保持することができる。
【0043】
図5に示すように、圧入部21の外径が一定であってもよい。そして、筒部材16が、第1筒部50と、第2筒部51と、を有していてもよい。第1筒部50は、溝40よりも筒部材16の軸線方向で永久磁石17寄りに位置する。第1筒部50には、圧入部21における溝40よりも永久磁石17寄りに位置する部位が圧入される。第2筒部51は、第1筒部50よりも筒部材16の軸線方向で軸部22寄りに位置する。第2筒部51の内径R3は、第1筒部50の内径R4よりも小さい。第2筒部51には、圧入部21における溝40よりも軸部22寄りに位置する部位が少なくとも圧入される。これによれば、圧入部21を設計変更することなく、圧入部21における溝40よりも筒部材16の軸線方向で軸部22寄りに位置する部位の筒部材16の内周面160に対する締め代を、圧入部21における溝40よりも筒部材16の軸線方向で永久磁石17寄りに位置する部位の筒部材16の内周面160に対する締め代よりも大きくすることができる。
【0044】
○ 実施形態において、溝40は、圧入部21の軸線方向で切断した断面が三角形状であったが、例えば、圧入部21の軸線方向で切断した断面が四角形状であったり、台形状であったり、さらには、半円状であったりしてもよい。
【0045】
○ 実施形態において、溝40は、筒部材16の周方向の全周に亘って延びていたが、溝40は、筒部材16の周方向の一部にのみ延びていてもよい。
○ 実施形態において、筒部材16の周方向の一部にのみ延びる溝40が、圧入部21の外周面に対して、筒部材16の周方向で位相がずれた状態で複数形成されていてもよい。このとき、圧入部21の軸線方向から見たときに投影される各溝40が、筒部材16の周方向の全周に亘って連続するようにそれぞれ配置されていてもよい。
【0046】
○ 実施形態において、溝40は、溝40の軸線が延びる方向が、筒部材16の軸線方向に対して交差する方向に延びるように圧入部21に形成されていてもよい。
○ 実施形態において、溝40は、圧入部21の軸線周りに螺旋を描くような形状であってもよい。
【0047】
○ 実施形態において、溝40が、圧入部21に設けられておらず、筒部材16の内周面160に設けられていてもよい。また、溝40が、圧入部21に設けられており、さらに、筒部材16の内周面160にも設けられていてもよい。要は、溝40は、筒部材16の内周面160及び圧入部21の外周面の少なくとも一方に設けられていればよい。
【0048】
○ 実施形態において、例えば、溝40の全体が、筒部材16の軸線方向で軸部22よりも永久磁石17寄りに位置していてもよい。例えば、溝40が、小径部23の外周面における永久磁石17寄りの部位に形成されていてもよい。
【0049】
○ 実施形態において、圧入部21の外径が一定であってもよい。要は、圧入部21における溝40よりも筒部材16の軸線方向で軸部22寄りに位置する部位の筒部材16の内周面160に対する締め代と、圧入部21における溝40よりも筒部材16の軸線方向で永久磁石17寄りに位置する部位の筒部材16の内周面160に対する締め代とが同じであってもよい。
【0050】
○ 実施形態において、ロータ15は、例えば、第2軸部材30が設けられていない構成であってもよい。要は、ロータ15は、筒部材16の軸線方向の両端部の少なくとも一方に軸部材が設けられている構成であればよい。
【0051】
○ 実施形態において、各圧入部21を筒部材16に圧入する際に、潤滑油A1が、筒部材16の内周面における圧入部21が圧入される部分全体に塗布されていなくてもよい。例えば、筒部材16の内周面における筒部材16の端部寄りに位置する部分に、潤滑油A1が塗布されていなくてもよい。
【0052】
○ 実施形態において、第1軸部材20を筒部材16に圧入する際に、潤滑油A1が、筒部材16の第1端部16aの内周面160に塗布されておらず、第1軸部材20に塗布された状態で第1軸部材20が筒部材16に圧入されてもよい。
【0053】
○ 実施形態において、第2軸部材30を筒部材16に圧入する際に、潤滑油A1が、筒部材16の第2端部16bの内周面160に塗布されておらず、第2軸部材30に塗布された状態で第2軸部材30が筒部材16に圧入されてもよい。
【0054】
○ 実施形態において、第1軸部材20を筒部材16に圧入する際に、潤滑油A1が、筒部材16の第1端部16aの内周面160に塗布されており、且つ第1軸部材20にも塗布された状態で第1軸部材20が筒部材16に圧入されてもよい。要は、ロータ15は、潤滑油A1が第1軸部材20及び筒部材16の内周面の少なくとも一方に塗布された状態で第1軸部材20が筒部材16に圧入されて構成されるものであってもよい。
【0055】
○ 実施形態において、第2軸部材30を筒部材16に圧入する際に、潤滑油A1が、筒部材16の第2端部16bの内周面160に塗布されており、且つ第2軸部材30にも塗布された状態で第2軸部材30が筒部材16に圧入されてもよい。要は、ロータ15は、潤滑油A1が第2軸部材30及び筒部材16の内周面の少なくとも一方に塗布された状態で第2軸部材30が筒部材16に圧入されて構成されるものであってもよい。
【0056】
○ 実施形態において、潤滑剤としては、潤滑油A1に限らず、粉末状の潤滑剤を使用してもよい。
○ 実施形態において、筒部材16は、インコネル製であったが、これに限らない。筒部材16は、例えば、非磁性の金属製であってもよいし、炭素繊維強化プラスチック製であってもよい。
【0057】
○ 実施形態において、磁性体としては、永久磁石17に限らず、例えば、積層コア、アモルファスコア、又は圧粉コア等であってもよい。
○ 実施形態において、第1軸部材20及び第2軸部材30は、チタン製に限らず、例えば、非磁性の金属製であってもよい。
【符号の説明】
【0058】
10…回転電機、15…ロータ、16…筒部材、17…磁性体である永久磁石、20…軸部材としての第1軸部材、21…圧入部、22…軸部、23…小径部、24…大径部、30…軸部材としての第2軸部材、40…溝、50…第1筒部、51…第2筒部、A1…潤滑剤としての潤滑油、S1…収容空間。
図1
図2
図3
図4
図5