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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022131892
(43)【公開日】2022-09-07
(54)【発明の名称】ロータリバルブ
(51)【国際特許分類】
   F16K 11/074 20060101AFI20220831BHJP
   F16K 11/076 20060101ALI20220831BHJP
【FI】
F16K11/074 Z
F16K11/076 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021031120
(22)【出願日】2021-02-26
(71)【出願人】
【識別番号】591012200
【氏名又は名称】株式会社東海理機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】篠田 和希
(72)【発明者】
【氏名】黒川 昌久
【テーマコード(参考)】
3H067
【Fターム(参考)】
3H067AA12
3H067AA13
3H067CC02
3H067CC24
3H067CC45
3H067DD03
3H067DD12
3H067DD22
3H067EA05
3H067EA06
3H067EB03
3H067EB05
3H067EB07
3H067EB12
3H067EB25
3H067EC13
3H067EC15
3H067ED02
3H067FF11
(57)【要約】
【課題】シール機能を確保しつつ、弁体の回転トルクの増加を抑制する。
【解決手段】ハウジング11は収容部36を有し、弁体51は弁本体部52及び軸部61を備える。ハウジング11は収容部36を、軸部61の軸線L1に沿う方向の両側から挟んで互いに対向する第1対向壁面34及び第2対向壁面15を有する。弁体51は第1対向壁面34に対向する第1端面53と、第2対向壁面15に接触する第2端面67とを有する。軸部61は弁本体部52よりも第2対向壁面15側に位置する。第1対向壁面34及び第1端面53の間に流入側パッキン81が配置される。軸部61は第2端面67を有し、第1端面53を有する弁本体部52とは別部品により構成される。軸部61は弁本体部52に対し、軸線L1に沿う方向へ移動可能、かつ一体回転可能に連結される。軸部61及び弁本体部52の間に、それらを軸線L1に沿う方向の両側へ付勢する弾性部材78が配置される。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
収容部を有し、かつ流体の流入口及び流出口が前記収容部に面して形成されたハウジングと、前記収容部に収容され、かつ前記流入口及び前記流出口を連通させる可動流路が形成された弁本体部、及び前記弁本体部を前記ハウジングに回転可能に支持する軸部を有し、前記軸部を中心とする前記弁本体部の回転により、前記可動流路を介して前記流入口に連通される前記流出口を切替える弁体とを備え、
前記ハウジングは、前記収容部を、前記軸部の軸線に沿う方向の両側から挟んで互いに対向する第1対向壁面及び第2対向壁面を有し、前記弁体は、前記第1対向壁面に対向する第1端面と、前記第2対向壁面に接触する第2端面とを有し、
前記軸部は、前記弁本体部よりも前記第2対向壁面側に位置し、さらに、前記第1対向壁面及び前記第1端面の間にパッキンが配置されたロータリバルブであって、
前記軸部は前記弁本体部とは別の部品により構成されており、前記弁本体部は前記第1端面を有し、前記軸部は前記第2端面を有し、前記軸部は前記弁本体部に対し、前記軸線に沿う方向へ移動可能、かつ一体回転可能に連結され、前記軸部及び前記弁本体部の間には、前記軸部及び前記弁本体部を前記軸線に沿う方向の両側へ付勢する弾性部材が配置されているロータリバルブ。
【請求項2】
前記軸部と、前記ハウジングのうち、前記第2対向壁面を有する部材とは、樹脂材料及び金属材料のうち、いずれか一方の材料により形成されている請求項1に記載のロータリバルブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弁体を回転させて流体の流路を切替えるロータリバルブに関する。
【背景技術】
【0002】
流体の流路を切替えるロータリバルブとして、収容部を有するハウジングと、弁体とを備えるものが知られている。ハウジングには、流体の流入口及び流出口が収容部に面して形成されている。弁体は、収容部に収容された弁本体部と、弁本体部をハウジングに回転可能に支持する軸部とを有する。弁本体部には、流入口及び流出口を連通させる可動流路が形成されている。そして、軸部を中心として弁本体部が回転されることにより、可動流路を介して流入口に連通される流出口が切替えられ、流体の流路が切替えられる。
【0003】
ハウジングは、収容部を、軸部の軸線に沿う方向の両側から挟んで互いに対向する第1対向壁面及び第2対向壁面を有する。弁体は、第1対向壁面に対向する第1端面と、第2対向壁面に接触する第2端面とを有する。軸部は、弁本体部よりも第2対向壁面側に位置する。
【0004】
上記ロータリバルブとして、例えば、特許文献1に記載されているように、第1対向壁面及び第1端面の間にパッキンを配置するものがある。このタイプのロータリバルブでは、パッキンを圧縮させることで、弁本体部及びハウジングを軸線に沿う方向の両側へ押し返す反力(以下「圧縮反力」という)をパッキンに生じさせる。上記ロータリバルブでは、上記圧縮反力によって、第1対向壁面と第1端面との間をシールしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009-180240号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、上記ロータリバルブでは、同ロータリバルブを構成する部品の寸法のばらつきによっては、次の問題が起り得る。パッキンは、弾性変形することで、上記ばらつきをある程度吸収する。しかし、上記ばらつきが、パッキンがばらつきを吸収できる大きさよりも大きいと、弁本体部とパッキンとの間に隙間が生じ、シール機能を確保できないおそれがある。この問題は、パッキンを多く圧縮させて、圧縮反力を増大させることで解消できる。反面、パッキンの圧縮反力が大きくなるに従い、弁体の回転に伴い、第1端面とパッキンとの間で生ずる摺動抵抗が増加する。また、弁体の回転に伴い、第2端面と第2対向壁面との間で生ずる摺動抵抗が増加する。その結果、弁体を回転させるのに必要な回転トルクが増加してしまう。
【0007】
なお、上記部品の寸法のばらつきとしては、同部品を製造する際に生ずるばらつき、ロータリバルブ製造後の温度等の環境要因によるばらつき等が挙げられる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するロータリバルブは、収容部を有し、かつ流体の流入口及び流出口が前記収容部に面して形成されたハウジングと、前記収容部に収容され、かつ前記流入口及び前記流出口を連通させる可動流路が形成された弁本体部、及び前記弁本体部を前記ハウジングに回転可能に支持する軸部を有し、前記軸部を中心とする前記弁本体部の回転により、前記可動流路を介して前記流入口に連通される前記流出口を切替える弁体とを備え、前記ハウジングは、前記収容部を、前記軸部の軸線に沿う方向の両側から挟んで互いに対向する第1対向壁面及び第2対向壁面を有し、前記弁体は、前記第1対向壁面に対向する第1端面と、前記第2対向壁面に接触する第2端面とを有し、前記軸部は、前記弁本体部よりも前記第2対向壁面側に位置し、さらに、前記第1対向壁面及び前記第1端面の間にパッキンが配置されたロータリバルブであって、前記軸部は前記弁本体部とは別の部品により構成されており、前記弁本体部は前記第1端面を有し、前記軸部は前記第2端面を有し、前記軸部は前記弁本体部に対し、前記軸線に沿う方向へ移動可能、かつ一体回転可能に連結され、前記軸部及び前記弁本体部の間には、前記軸部及び前記弁本体部を前記軸線に沿う方向の両側へ付勢する弾性部材が配置されている。
【0009】
上記の構成によれば、軸部が回転されると、その回転が弁本体部に伝達され、同弁本体部が軸部と一体となって回転される。弾性部材も、軸部及び弁本体部と一緒に回転する。弁本体部の回転により、可動流路を介して流入口に連通される流出口が切替えられ、流体の流路が切替えられる。
【0010】
上記ロータリバルブでは、第1対向壁面と第1端面との間でパッキンが圧縮されることに伴い、同パッキンには、弁本体部及びハウジングを、軸線に沿う方向の両側へ押し返す圧縮反力が生ずる。また、軸部と弁本体部との間で弾性部材が圧縮されることに伴い、同弾性部材には、軸部及び弁本体部を、軸線に沿う方向の両側へ押し返す圧縮反力が生ずる。
【0011】
軸部の第2端面は、パッキン及び弾性部材の両者の圧縮反力によってハウジングの第2対向壁面に押付けられる。
弁本体部は、弾性部材の圧縮反力によってパッキンに押し付けられる。また、パッキンの圧縮反力が、第1端面及び第1対向壁面に加わる。上記弾性部材及びパッキンの両者の圧縮反力によって、第1対向壁面と第1端面との間がシールされる。
【0012】
ところで、パッキン及び弾性部材は、それぞれ弾性変形することで、ロータリバルブを構成する部品の寸法のばらつきを吸収する。パッキンに弾性部材が加わる分、上記構成部品の寸法のばらつきを吸収する性能が、パッキンのみの場合よりも高まる。ばらつきを吸収するために、パッキンを多く圧縮させて圧縮反力を増大させなくてもすむ。
【0013】
従って、パッキンを適切に圧縮させて圧縮反力を生じさせることにより、ロータリバルブを構成する部品の寸法のばらつきに拘らず、第1対向壁面と第1端面との間を適切にシールすることが可能となる。弁体の回転は、第1端面がパッキンに接触し、かつ第2端面が第2対向壁面に接触した状態で行なわれる。しかし、圧縮反力が上記のように適切であるため、弁体の回転に伴い、第1端面とパッキンとの間に生ずる摺動抵抗も、第2端面と第2対向壁面との間に生ずる摺動抵抗も過大にならない。その結果、弁体を回転させるのに必要な回転トルクの増加が抑制される。
【0014】
上記ロータリバルブにおいて、前記軸部と、前記ハウジングのうち、前記第2対向壁面を有する部材とは、樹脂材料及び金属材料のうち、いずれか一方の材料により形成されていることが好ましい。
【0015】
弁体の回転は、軸部の第2端面が、ハウジングの第2対向壁面に接触した状態で行なわれる。そのため、仮に、軸部と、ハウジングのうち、第2対向壁面を有する部材とが、互いに耐摩耗性の大きく異なる材料によって形成されていると、耐摩耗性の低い方の部材が、上記回転により摩耗するおそれがある。
【0016】
この点、上記の構成によれば、軸部と、ハウジングのうち、第2対向壁面を有する部材とが、樹脂材料及び金属材料のうち、いずれか一方の材料により形成されていて、耐摩耗性が大きく異ならない。そのため、軸部及びハウジングは、接触状態で相対回転しても摩耗しにくい。
【発明の効果】
【0017】
上記ロータリバルブによれば、シール機能を確保しつつ、弁体の回転トルクの増加を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】ロータリバルブの斜視図。
図2】ロータリバルブの平面図。
図3】ロータリバルブをボディ側から見た分解斜視図。
図4】ロータリバルブをカバー側から見た分解斜視図。
図5図2の5-5線断面図。
図6図5の分解断面図。
図7図5の7-7線断面図。
図8図5の8-8線部分断面図。
図9図7から流入側パッキン及び弾性部材を抜き出して示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、複数の流体の流路の途中に設けられて、流路を切替えるロータリバルブの一実施形態について、図面を参照して説明する。
ここで、流体には、液体及び気体のいずれか一方又は両者が含まれる。また、複数の流体には、成分の異なる複数種類の流体が含まれるほか、同一種類の複数の流体も含まれる。同一種類の複数の流体には、同一の複数の流体が含まれるほか、成分は同一であるが、温度又はその他の要素、例えば粘度等の異なる複数の流体が含まれる。本実施形態では、成分が同一であるが、互いに温度の異なる2種類の冷却水を、流体としている。なお、流体として、冷却水とは異なる種類の液体が用いられてもよい。
【0020】
図3及び図4に示すように、ロータリバルブ10は、ハウジング11、弁体51、弾性部材78、流入側パッキン81及び複数の流出側パッキン91を備えている。次に、各部材について説明する。
【0021】
<ハウジング11>
図1及び図2に示すように、ハウジング11は、ボディ12及びカバー31を備えている。ボディ12は、後述する軸部61の軸線L1に沿って延びる円筒状の周壁部13を備えている。軸線L1に沿う方向における周壁部13の一方の端部は、閉塞部14によって塞がれている。周壁部13の他方の端部は、開放された開放端となっている(図4参照)。
【0022】
周壁部13には、それぞれ径方向における外方へ突出する複数の突出壁部16が形成されている。本実施形態では、突出壁部16は等角度毎に形成されている。図3及び図4に示すように、周壁部13の開放端の周縁部には、閉塞部14側へ凹む環状凹部17が形成されている。閉塞部14の中心部分には軸線L1に沿って延びる筒状の軸受部18が形成されている(図6参照)。
【0023】
カバー31は、周壁部13の開放端に隣接する箇所に配置されている。カバー31の周縁部には、ボディ12に向けて突出する環状突部32が形成されている。カバー31において、環状突部32によって囲まれた領域の大部分は、平面部33によって構成されている。平面部33は、流入側パッキン81が載置される載置部33aを、軸線L1を含む領域に有している。載置部33aの互いに離間した複数箇所には、流入側パッキン81の位置決め用の突起部35が形成されている(図6参照)。カバー31の環状突部32は、環状凹部17に挿入された状態でボディ12に接合されている。
【0024】
図5に示すように、ボディ12とカバー31とによって囲まれた空間は、収容部36を構成している。ハウジング11は、収容部36を、軸線L1に沿う方向の両側から挟んで互いに対向する第1対向壁面34及び第2対向壁面15を有している。図3及び図5に示すように、第1対向壁面34は、平面部33によって構成されている。第1対向壁面34は、軸線L1に対し直交した状態で収容部36に面している。第2対向壁面15は、軸受部18の第1対向壁面34側の面によって構成されている。第2対向壁面15は、軸線L1を取り囲んだ状態で収容部36に面している。
【0025】
平面部33の中心部には、流体FL1の流入口41が形成されている。カバー31における流入口41の周縁部には、収容部36から遠ざかる側へ向けて突出する接続管部42が形成されている。接続管部42には、流体FL1の流路101を有する配管102が接続される。また、平面部33の上記流入口41から径方向における外方へずれた箇所には、流体FL2の流入口43が形成されている。カバー31における流入口43の周縁部には、収容部36から遠ざかる側へ向けて突出する接続管部44が形成されている。接続管部44には、流体FL2の流路103を有する配管104が接続される。
【0026】
図7及び図8に示すように、各突出壁部16には、流出口21~23のいずれかが形成されている。これらの流出口21~23は、収容部36に面して開放されている。突出壁部16における流出口21~23のそれぞれの周縁部からは、ボディ12の径方向における外方へ向けて接続管部24~26が突出している。接続管部24には、流路111を有する配管112が接続され、接続管部25には、流路113を有する配管114が接続され、接続管部26には、流路115を有する配管116が接続される。
【0027】
<弁体51>
図3及び図4に示すように、弁体51は、弁本体部52及び軸部61を備えている。弁体51は、上記第1対向壁面34に対向する第1端面53(図4参照)と、上記第2対向壁面15に接触する第2端面67(図3参照)とを有している。
【0028】
弁本体部52及び軸部61は、互いに異なる部品によって構成されている。弁本体部52は、弁体51の骨格部分をなす部分であり、円柱状に形成されている。弁本体部52の第1対向壁面34側の面は、軸線L1に対し直交しており、上記第1端面53を構成している。弁本体部52の外周面54は、上記軸線L1を中心とする円筒面によって構成されている。
【0029】
軸部61は、弁本体部52よりも第2対向壁面15側に位置しており、上記軸線L1を有している。軸部61は弁本体部52に対し、軸線L1に沿う方向へ移動可能、かつ一体回転可能に連結されている。この連結は、弁本体部52及び軸部61の一方に設けられた嵌合突部56が、他方に設けられた被嵌合部66に嵌合されることによってなされている。
【0030】
より詳しくは、図3図4及び図6に示すように、弁本体部52の第2対向壁面15側の端面57における周縁部には、同第2対向壁面15に向けて突出する円環状の環状突部55が形成されている。嵌合突部56は、弁本体部52のうち、上記環状突部55によって囲まれた領域であって、軸線L1を中心とする仮想円上において周方向に互いに離間した複数箇所に形成されている。各嵌合突部56は、弁本体部52の上記端面57から第2対向壁面15に向けて突出している。
【0031】
軸部61は、軸本体部62、環状部63、連結部64及びフランジ部65を備えている。軸本体部62は、軸線L1に沿って延びる円柱状をなしている。環状部63は円環状をなし、弁本体部52の上記環状突部55により囲まれた領域に位置し、軸本体部62の第1対向壁面34側の端部を取り囲んでいる。連結部64は、環状部63の第1対向壁面34側の端部を軸本体部62に連結している。連結部64の第2対向壁面15側の面は、上記第2端面67を構成している。フランジ部65は、環状部63の第2対向壁面15側の端部の周りに形成されており、円環状をなしている。フランジ部65は、環状突部55よりも僅かに小径に形成されている(図5参照)。
【0032】
被嵌合部66は、軸部61の上記環状部63の周方向に互いに離間した複数箇所に形成されている。本実施形態では、複数の被嵌合部66は、環状部63に等角度毎に形成されている。各被嵌合部66は、環状部63を軸線L1に沿う方向に貫通している。
【0033】
図5に示すように、各嵌合突部56は、対応する被嵌合部66に嵌合されている。この状態では、複数の嵌合突部56と環状突部55との間の領域であって、上記端面57とフランジ部65との間に、弾性部材78を収容するための収容空間68が形成される。
【0034】
そして、弁本体部52の全体と、軸部61のうち、軸本体部62を除く部分とが収容部36に収容され、軸本体部62が軸受部18に挿通されている。軸部61は、軸受部18においてボディ12に対し回転可能に支持されている。軸本体部62と軸受部18との間にはOリング69が介在されている。なお、Oリング69に代えて、軸本体部62と軸受部18との間に、同軸本体部62が摺動し得るシール部材が介在されてもよい。
【0035】
ここで、上述した第2端面67を有する軸部61と、第2対向壁面15を有するボディ12とは、いずれも樹脂材料によって形成されている。軸部61を形成する材料と、ボディ12を形成する材料とは、同一種類の樹脂材料でもよいし、異なる種類の樹脂材料であってもよい。
【0036】
図6及び図8に示すように、弁本体部52には、流体FL1が流れる1つの可動流路71と、流体FL2が流れる2つの可動流路75,77とが形成されている。
可動流路71は、その上流部を構成する1つの共通流路部72と、下流部をそれぞれ構成する2つの分岐流路部73とからなる。可動流路71の上流端71aは、上記第1端面53の中心部において開放されており、上記流入口41に対向している。分岐流路部73毎の下流端71bは、上記外周面54において開放されている。可動流路71は、弁体51の回転に伴い、両分岐流路部73が移動(旋回)することで、同可動流路71を介した流入口41と流出口22,23との連通状態を変更する。
【0037】
可動流路75の上流端75aは、上記第1端面53のうち、軸線L1(上流端71a)から径方向における外方へずれた箇所において開放されている。可動流路75の下流端75bは、上記外周面54において開放されている。可動流路75は、弁体51の回転に伴い、同可動流路75の全体が軸線L1の周りを移動(旋回)することで、同可動流路75を介した流入口43と流出口23との連通状態を変更する。
【0038】
可動流路77の上流端77aは、第1端面53のうち、軸線L1(上流端71a)から径方向における外方へずれた箇所において開放されている。可動流路77の下流端77bは、上記外周面54において開放されている。可動流路77は、弁体51の回転に伴い、同可動流路77の全体が軸線L1の周りを移動(旋回)することで、同可動流路77を介した流入口43と流出口21との連通状態を変更する。
【0039】
上記構成の弁体51は、図示しないモータ、手動操作等によって回転される。
なお、上記のように可動流路71が分岐流路部73を有する場合、その分岐流路部73の数は3以上であってもよい。また、弁体51における可動流路71,75,77の数が1又は3以上であってもよい。可動流路71,75,77が1つの場合、途中で複数に分岐されてもよい。
【0040】
<弾性部材78>
図3図5及び図9に示すように、弾性部材78は、軸部61及び弁本体部52を軸線L1に沿う方向の両側へ付勢するためのものである。弾性部材78は上記環状突部55よりも小径の円環状をなしている。弾性部材78は、軸線L1を中心とし、かつ複数の嵌合突部56を通る上記仮想円よりも大径に形成されている。弾性部材78は金属製のばねによって構成されている。本実施形態では、ばねとして、ウェーブコイルばねが用いられている。弾性部材78は、軸線L1に沿う方向に圧縮された状態で上記収容空間68(図5参照)に配置されている。
【0041】
<流入側パッキン81>
図3及び図4に示すように、流入側パッキン81は、特許請求の範囲におけるパッキンに相当する部材であり、大部分がゴム等の弾性材料によって形成されている。流入側パッキン81は、パッキン本体部82、第1シール部84及び第2シール部85を備えている。パッキン本体部82は、流入側パッキン81の骨格部分を構成する部分であり、上記軸線L1に沿う方向を自身の厚み方向としていて、板状をなしている。
【0042】
パッキン本体部82は、流入口41,43と同数又はそれ以上の数の流入開口83を有している(図9参照)。各流入開口83は、パッキン本体部82を軸線L1に沿う方向に貫通する孔によって構成されている。流入開口83のうちの2つは、流入口41,43に面する箇所に形成されている。
【0043】
第1シール部84は、パッキン本体部82の第1対向壁面34側の面であって、各流入開口83の周囲に形成されていて、環状をなしている(図6参照)。一部の第1シール部84は、流入口41,43の周囲において第1対向壁面34に接触している(図5参照)。
【0044】
また、第2シール部85は、パッキン本体部82の第1端面53側の面であって、各流入開口83の周囲に形成されていて、環状をなしている。流入口41に対応する第2シール部85は、弁体51の回転位相に拘わらず可動流路71の上流端71aの周囲において第1端面53に接触している。流入口43に対応する第2シール部85は、第1端面53に接触している。この第2シール部85は、弁体51の回転に伴い、可動流路75,77の上流端75a,77aが流入口43に対向した場合には、上流端75a,77aの周囲において第1端面53に接触する。
【0045】
パッキン本体部82の周縁部の複数箇所には切欠き部86が形成されている。各切欠き部86がカバー31の上記突起部35に係合されることにより、流入側パッキン81のカバー31に対する位置決めが行なわれる(図3図5図6参照)。
【0046】
<流出側パッキン91>
図8に示すように、流出側パッキン91は、複数箇所のそれぞれの突出壁部16と弁本体部52の外周面54との間に配置されている。各流出側パッキン91は、互いに同一の構成を有している。各流出側パッキン91の大部分は、ゴム等の弾性材料によって形成されている。
【0047】
図3図4及び図6に示すように、各流出側パッキン91は、パッキン本体部92、第3シール部94及び第4シール部95を備えている。各パッキン本体部92は、流出側パッキン91の骨格部分を構成する部分であり、弁本体部52の径方向を自身の厚み方向としていて、板状をなしている。各パッキン本体部92は、流出口21~23のそれぞれに対向する箇所に流出開口93を有している。
【0048】
各第3シール部94は、パッキン本体部92の周壁部13側の面であって、流出開口93の周囲において環状に形成されている。各第3シール部94は、流出口21~23の周囲において突出壁部16に接触している。
【0049】
また、各第4シール部95は、パッキン本体部92の弁本体部52側の面であって、流出開口93の周囲において環状に形成されている。各第4シール部95は、弁本体部52の外周面54に接触している。各第4シール部95は、弁体51の回転に伴い、可動流路71,75,77の下流端71b,75b,77bが流出口21~23に対向した場合には、その下流端71b,75b,77bの周囲において外周面54に接触する。
【0050】
次に、上記のように構成された本実施形態の作用について説明する。また、作用に伴い生ずる効果についても併せて説明する。
図5に示すように、流路101を流れる流体FL1は、接続管部42を介して流入口41に送られてくる。流路103を流れる流体FL2は、接続管部44を介して流入口43に送られてくる。
【0051】
一方、弁体51では軸部61と弁本体部52とが別部品によって構成されている。しかし、本実施形態では、複数の嵌合突部56が、対応する被嵌合部66に嵌合されることにより、軸部61は弁本体部52に対し、軸線L1に沿う方向へ移動可能、かつ一体回転可能に連結されている。そのため、軸部61が、図示しないモータ、手動操作等によって回転されると、その回転は、被嵌合部66及び嵌合突部56を介して弁本体部52に伝達される。軸部61の回転に伴い、弁本体部52が同軸部61と一体となって回転する。収容空間68に配置された弾性部材78も、軸部61及び弁本体部52と一緒に回転する。弁体51の上記の回転に伴い、可動流路71,75,77の少なくとも一部が移動する。
【0052】
弁体51の回転に伴い、可動流路71では、共通流路部72が軸線L1を中心として回転し、両分岐流路部73が軸線L1の周りを移動(旋回)する。その結果、可動流路71を介した流入口41と流出口22,23との連通状態が変更される。図示はしないが、流入口41と流出口23とが可動流路71を介して連通されると、流体FL1は、流入口41、可動流路71及び流出口23を順に流れ、その後、接続管部26を介して流路115に流出される。
【0053】
これに対し、図5図7及び図8に示すように、流入口41と流出口22とが可動流路71を介して連通されると、流体FL1は、流入口41、可動流路71及び流出口22を順に流れ、その後、接続管部25を介して流路113に流出される。
【0054】
また、弁体51の回転に伴い、可動流路75の全体が軸線L1の周りを移動(旋回)する。この移動により、可動流路75と流入口43との接続状態が変更され、可動流路75を介した流入口43と流出口23との連通状態が変更される。図示はしないが、流入口43と流出口23とが可動流路75を介して連通されると、流体FL2は、流入口43、可動流路75及び流出口23を順に流れ、その後、接続管部26を介して流路115に流出される。
【0055】
さらに、弁体51の回転に伴い、可動流路77の全体が軸線L1の周りを移動(旋回)する。この移動により、可動流路77と流入口43との接続状態が変更され、可動流路77を介した流入口43と流出口21との連通状態が変更される。図5図7及び図8に示すように、流入口43と流出口21とが可動流路77を介して連通されると、流体FL2は、流入口43、可動流路77及び流出口21を順に流れ、その後、接続管部24を介して流路111に流出される。
【0056】
このようにして、可動流路71,75,77を介した流入口41,43及び流出口21~23の連通状態が変更される。複数の流入系の流路101,103と、複数の流出系の流路111,113,115との接続状態が切替えられる。
【0057】
図5及び図6に示すように、上記ロータリバルブ10では、第1対向壁面34と第1端面53との間で流入側パッキン81が圧縮される。この圧縮に伴い、流入側パッキン81には、弁本体部52及びカバー31を、軸線L1に沿う方向の両側へ押し返す圧縮反力が生ずる。また、軸部61と弁本体部52との間で弾性部材78が圧縮される。この圧縮に伴い、弾性部材78には、軸部61及び弁本体部52を、軸線L1に沿う方向の両側へ押し返す圧縮反力が生ずる。
【0058】
軸部61における連結部64の第2端面67は、流入側パッキン81及び弾性部材78の両者の圧縮反力によって、閉塞部14における軸受部18の第2対向壁面15に押付けられる。
【0059】
弁本体部52は、弾性部材78の圧縮反力によって流入側パッキン81に押し付けられる。また、流入側パッキン81の圧縮反力が、第1端面53及び第1対向壁面34に加わる。上記弾性部材78及び流入側パッキン81の両者の圧縮反力によって、第1対向壁面34と第1端面53との間がシールされる。
【0060】
ところで、弾性部材78及び流入側パッキン81は、それぞれ弾性変形することで、ロータリバルブ10を構成する部品の寸法、特に軸線L1に沿う方向の寸法のばらつきを吸収する。流入側パッキン81に弾性部材78が加わる分、上記構成部品の寸法のばらつきを吸収する性能が、流入側パッキン81のみの場合(従来のロータリバルブがこれに該当する)よりも高まる。ばらつきを吸収するために、流入側パッキン81を多く圧縮させて圧縮反力を増大させなくてもすむ。
【0061】
従って、流入側パッキン81を圧縮させて適切な圧縮反力を生じさせることにより、ロータリバルブ10を構成する部品の寸法のばらつきに拘らず、第1対向壁面34と第1端面53との間を適切にシールすることができる。弁体51の回転は、第1端面53が流入側パッキン81の第2シール部85に接触し、かつ軸部61の第2端面67が、ボディ12の第2対向壁面15に接触した状態で行なわれる。しかし、圧縮反力が上記のように適切であるため、弁体51の回転に伴い、第1端面53と流入側パッキン81との間に生ずる摺動抵抗も、第2端面67と第2対向壁面15との間に生ずる摺動抵抗も過大にならない。その結果、弁体51を回転させるのに必要な回転トルクの増加を抑制できる。
【0062】
本実施形態によると、上記以外にも、次の効果が得られる。
・弁体51の回転は、上述したように、第2端面67が第2対向壁面15に接触した状態で行なわれる。そのため、仮に、第2端面67を有する軸部61と、第2対向壁面15を有するボディ12とが、互いに耐摩耗性の大きく異なる材料によって形成されていると、耐摩耗性の低い部材が、接触状態での上記相対回転により摩耗するおそれがある。
【0063】
この点、本実施形態では、軸部61及びボディ12がいずれも樹脂材料によって形成されていて、耐摩耗性が大きく異ならない。そのため、弁体51の回転に伴う軸部61及びボディ12の摩耗を抑制できる。
【0064】
・軸部61及び弁本体部52に接触する弾性部材78は、軸部61及び弁本体部52とは耐摩耗性の大きく異なる材料である金属材料によって形成されている。そのため、仮に、弾性部材78が、軸部61及び弁本体部52の少なくとも一方に対し回転すると、弾性部材78に対し接触状態で相対回転する部材が摩耗するおそれがある。
【0065】
この点、本実施形態では、弾性部材78が軸部61及び弁本体部52と一緒に回転する。弾性部材78は、軸部61及び弁本体部52のいずれに対しても接触状態で回転しない。そのため、軸部61及び弁本体部52の摩耗を抑制できる。
【0066】
そして、上記のように摩耗を抑制することで、ロータリバルブ10の耐久性向上を図ることができる。
なお、上記実施形態は、これを以下のように変更した変形例として実施することもできる。上記実施形態及び以下の変形例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0067】
・第2端面67を有する軸部61と、第2対向壁面15を有するボディ12とが、樹脂材料に代えて金属材料によって形成されてもよい。軸部61を形成する材料と、ボディ12を形成する材料とは、同一種類の金属材料でもよいし、異なる種類の金属材料であってもよい。この場合にも、軸部61とボディ12とで耐摩耗性が大きく異ならない。弁体51の回転に伴う軸部61及びボディ12の摩耗を抑制する効果が得られる。
【0068】
・弁体51における弁本体部52と、ハウジング11におけるカバー31とについては、これらを形成する材料に制約は特にない。接触状態で相対回転することがなく、同相対回転に起因する摩耗のおそれがないからである。
【0069】
・流入側パッキン81は、弾性変形しにくい形状を有していてもよい。例えば、パッキン本体部82から第1シール部84の突出量が上記実施形態よりも少ない流入側パッキン81が、これに該当する。この場合、ロータリバルブ10を構成する部品の寸法のばらつきを吸収する量が、上記実施形態よりも少なくなる。しかし、弾性部材78のみによって寸法のばらつきを吸収する方が、流入側パッキン81のみによって寸法のばらつきを吸収する場合よりも、弁体51を回転させるのに必要な回転トルクを抑えることができる場合がある。
【0070】
・弾性部材78として、ウェーブコイルばねとは異なる種類のばね、例えば、一般的なコイルばねが用いられてもよい。
・弾性部材78として、上記実施形態よりも小径のもの、例えば、軸本体部62と同程度の径を有するものが用いられてもよい。
【0071】
・弾性部材78として、円環状とは異なる環状をなすものが用いられてもよい。
・軸部61及び弁本体部52を軸線L1に沿う方向の両側へ付勢できる部材であることを条件に、ばねとは異なる形態を有する部材が弾性部材78とされてもよい。例えば、弾性部材78としてOリングが用いられてもよい。
【0072】
また、弾性部材78は、金属材料とは異なる材料、例えば、樹脂材料(ゴムを含む)によって形成されてもよい。
・弁本体部52における嵌合突部56の数と、軸部61における被嵌合部66の数とが上記実施形態とは異なる数に変更されてもよい。
【0073】
・上記実施形態とは逆に、軸部61に嵌合突部56が設けられ、弁本体部52に被嵌合部66が設けられてもよい。そして、嵌合突部56が被嵌合部66に嵌合されることにより、軸部61が弁本体部52に対し、軸線L1に沿う方向へ移動可能、かつ一体回転可能に連結されてもよい。
【符号の説明】
【0074】
10…ロータリバルブ
11…ハウジング
15…第2対向壁面
21,22,23…流出口
34…第1対向壁面
36…収容部
41,43…流入口
51…弁体
52…弁本体部
53…第1端面
61…軸部
67…第2端面
71,75,77…可動流路
78…弾性部材
81…流入側パッキン(パッキン)
FL1,FL2…流体
L1…軸線
図1
図2
図3
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図5
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