(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022131899
(43)【公開日】2022-09-07
(54)【発明の名称】ホース用ゴム組成物及びホース
(51)【国際特許分類】
C08L 15/00 20060101AFI20220831BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20220831BHJP
C08K 5/14 20060101ALI20220831BHJP
C08K 5/3477 20060101ALI20220831BHJP
C08J 3/24 20060101ALI20220831BHJP
C08J 3/20 20060101ALI20220831BHJP
F16L 11/04 20060101ALI20220831BHJP
B62D 5/065 20060101ALI20220831BHJP
【FI】
C08L15/00
C08K3/04
C08K5/14
C08K5/3477
C08J3/24 Z CEQ
C08J3/20
F16L11/04
B62D5/065 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021031127
(22)【出願日】2021-02-26
(71)【出願人】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100181179
【弁理士】
【氏名又は名称】町田 洋一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100197295
【弁理士】
【氏名又は名称】武藤 三千代
(72)【発明者】
【氏名】杉原 孝樹
【テーマコード(参考)】
3D333
3H111
4F070
4J002
【Fターム(参考)】
3D333ED02
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(57)【要約】
【課題】本発明は耐油性及び低温性が優れる、ホース用ゴム組成物等を提供することを目的とする。
【解決手段】アクリロニトリル量が24質量%以下である水素化アクリロニトリルブタジエンゴムと、カーボンブラックと、過酸化物と、トリアリルイソシアヌレートとを含有し、上記過酸化物の含有量が、上記水素化アクリロニトリルブタジエンゴム100質量部に対して、2.4質量部以上であり、上記トリアリルイソシアヌレートの含有量が、上記水素化アクリロニトリルブタジエンゴム100質量部に対して、1.9質量部以上である、ホース用ゴム組成物、及び、これを用いて形成されるホース。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリロニトリル量が24質量%以下である水素化アクリロニトリルブタジエンゴムと、カーボンブラックと、過酸化物と、トリアリルイソシアヌレートとを含有し、
前記過酸化物の含有量が、前記水素化アクリロニトリルブタジエンゴム100質量部に対して、2.4質量部以上であり、
前記トリアリルイソシアヌレートの含有量が、前記水素化アクリロニトリルブタジエンゴム100質量部に対して、1.9質量部以上である、ホース用ゴム組成物。
【請求項2】
前記水素化アクリロニトリルブタジエンゴムの水素化率が、95~100%である、請求項1に記載のホース用ゴム組成物。
【請求項3】
前記カーボンブラックの含有量が、前記水素化アクリロニトリルブタジエンゴム100質量部に対して、40~150質量部である、請求項1又は2に記載のホース用ゴム組成物。
【請求項4】
前記水素化アクリロニトリルブタジエンゴムの前記アクリロニトリル量が、18~22質量%である、請求項1~3のいずれか1項に記載のホース用ゴム組成物。
【請求項5】
前記過酸化物の含有量が、前記水素化アクリロニトリルブタジエンゴム100質量部に対して、2.8~6質量部である、請求項1~4のいずれか1項に記載のホース用ゴム組成物。
【請求項6】
前記トリアリルイソシアヌレートの含有量が、前記水素化アクリロニトリルブタジエンゴム100質量部に対して、2.5~5.0質量部である、請求項1~5のいずれか1項に記載のホース用ゴム組成物。
【請求項7】
更に、ジアリル化合物を含有する、請求項1~6のいずれか1項に記載のホース用ゴム組成物。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載のホース用ゴム組成物を用いて形成されたホース。
【請求項9】
前記ホース用ゴム組成物を用いて形成された内管を有する、請求項8に記載のホース。
【請求項10】
アニリン点が105℃以上の流体を流す、請求項8又は9に記載のホース。
【請求項11】
自動車用である、請求項8~10のいずれか1項に記載のホース。
【請求項12】
自動車のパワーステアリングシステム配管である、請求項8~11のいずれか1項に記載のホース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホース用ゴム組成物及びホースに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車用パワーステアリングホースの内管を形成する材料として、HNBR(水素化アクリロニトリルブタジエンゴム)を含有するゴム組成物が使用されている。
例えば、特許文献1には、高い耐熱性と高い振動吸収性能を有し、パワーステアリングホース等に好適に用いることができるゴム組成物等を提供することを目的として、(1)重合体鎖中に不飽和ニトリルからの単位部分(Y部分;VCN)10~45重量%、共役ジエンからの単位部分(Z部分;C=C)0~5重量%ならびに不飽和ニトリル以外のエチレン性不飽和単量体からの単位部分および/または共役ジエンからの単位部分を水素化した単位部分(X部分;C-C)90~50重量%を有する共重合ゴム90~20重量部と、
(2)塩素化率25%以上の塩素化ポリエチレンゴム10~80重量部と、
(3)有機過酸化物とを含有し、5Hzの強制伸長加振時の損失角正接(tanδ)が、0~10℃の温度領域において0.23以上であることを特徴とするゴム組成物等が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
自動車用パワーステアリングホースの内管には、耐熱性等の他にも耐油性が求められるため、ゴム組成物に含有されるHNBRとして、アクリロニトリル量が34質量%又は36質量%であるような、高ニトリルのHNBRが使用される。
しかし、HNBRのアクリロニトリル量が高いほど、低温条件下で粘弾性を発現させることができる性能(以下これを「低温性」と称する場合がある。)が劣るという背反事象がある。
【0005】
そこで、本発明は耐油性及び低温性が優れる、ホース用ゴム組成物を提供することを目的とする。
また、本発明は、耐油性及び低温性が優れるホースを提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、アクリロニトリル量が24質量%以下である水素化アクリロニトリルブタジエンゴムと、カーボンブラックと、過酸化物と、トリアリルイソシアヌレートとを含有し、過酸化物及びトリアリルイソシアヌレートの含有量がそれぞれ特定の範囲であるゴム組成物によれば所望の効果が得られることを見出し、本発明に至った。
本発明は上記知見等に基づくものであり、具体的には以下の構成により上記課題を解決するものである。
【0007】
[1] アクリロニトリル量が24質量%以下である水素化アクリロニトリルブタジエンゴムと、カーボンブラックと、過酸化物と、トリアリルイソシアヌレートとを含有し、
上記過酸化物の含有量が、上記水素化アクリロニトリルブタジエンゴム100質量部に対して、2.4質量部以上であり、
上記トリアリルイソシアヌレートの含有量が、上記水素化アクリロニトリルブタジエンゴム100質量部に対して、1.9質量部以上である、ホース用ゴム組成物。
[2] 上記水素化アクリロニトリルブタジエンゴムの水素化率が、95~100%である、[1]に記載のホース用ゴム組成物。
[3] 上記カーボンブラックの含有量が、上記水素化アクリロニトリルブタジエンゴム100質量部に対して、40~150質量部である、[1]又は[2]に記載のホース用ゴム組成物。
[4] 上記水素化アクリロニトリルブタジエンゴムの上記アクリロニトリル量が、18~22質量%である、[1]~[3]のいずれかに記載のホース用ゴム組成物。
[5] 上記過酸化物の含有量が、上記水素化アクリロニトリルブタジエンゴム100質量部に対して、2.8~6質量部である、[1]~[4]のいずれかに記載のホース用ゴム組成物。
[6] 上記トリアリルイソシアヌレートの含有量が、上記水素化アクリロニトリルブタジエンゴム100質量部に対して、2.5~5.0質量部である、[1]~[5]のいずれかに記載のホース用ゴム組成物。
[7] 更に、ジアリル化合物を含有する、[1]~[6]のいずれかに記載のホース用ゴム組成物。
【0008】
[8] [1]~[7]のいずれかに記載のホース用ゴム組成物を用いて形成されたホース。
[9] 上記ホース用ゴム組成物を用いて形成された内管を有する、[8]に記載のホース。
[10] アニリン点が105℃以上の流体を流す、[8]又は[9]に記載のホース。
[11] 自動車用である、[8]~[10]のいずれかに記載のホース。
[12] 自動車のパワーステアリングシステム配管である、[8]~[11]のいずれか1項に記載のホース。
【発明の効果】
【0009】
本発明のホース用ゴム組成物は、耐油性及び低温性が優れる。
本発明のホースは、耐油性及び低温性が優れる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明のホースの一実施形態例であるホースの各層を切り欠いて示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明について以下詳細に説明する。
なお、本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
本明細書において、特に断りのない限り、各成分はその成分に該当する物質をそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。成分が2種以上の物質を含む場合、成分の含有量は、2種以上の物質の合計の含有量を意味する。
本明細書において、耐油性及び低温性のうちの少なくとも1つがより優れることを、本発明の効果がより優れるということがある。
【0012】
[ホース用ゴム組成物]
本発明のホース用ゴム組成物(本発明のゴム組成物)は、
アクリロニトリル量が24質量%以下である水素化アクリロニトリルブタジエンゴムと、カーボンブラックと、過酸化物と、トリアリルイソシアヌレートとを含有し、
上記過酸化物の含有量が、上記水素化アクリロニトリルブタジエンゴム100質量部に対して、2.4質量部以上であり、
上記トリアリルイソシアヌレートの含有量が、上記水素化アクリロニトリルブタジエンゴム100質量部に対して、1.9質量部以上である、ホース用ゴム組成物である。
【0013】
本発明のゴム組成物はこのような構成をとるため、所望の効果が得られるものと考えられる。その理由は明らかではないが、およそ以下のとおりと推測される。すなわち、アクリロニトリル量(AN量)が少ない低ニトリルのHNBRに対して、架橋剤としての過酸化物と共架橋剤としてのトリアリルイソシアヌレートとを特定範囲の量で使用して、架橋後におけるゴムの架橋密度を高くすることによって、架橋後におけるゴムの油による体積膨潤を防ぎ(耐油性)、低温で粘弾性を発現させることができる(低温性)と考えられる。
上記メカニズムは本発明者の推測であり、本発明のメカニズムは上記に限定されない。
以下、本発明のゴム組成物に含有される各成分について詳述する。
【0014】
<<水素化アクリロニトリルブタジエンゴム>>
本発明のゴム組成物は、アクリロニトリル量(AN量)が24質量%以下である水素化アクリロニトリルブタジエンゴム(HNBR)を含有する。
本発明のゴム組成物に含有されるHNBRは、アクリロニトリルとブタジエンとの共重合体の水素化物である。
上記HNBRは、アクリロニトリル基を有する。
上記HNBRにおける水素化は主鎖における水素化であり、上記水素化は、部分的な水素化でも、完全水素化であってもよい。
【0015】
<アクリロニトリル量>
本発明において、HNBRが有するアクリロニトリル量(AN量)は、上記HNBR中の24質量%以下である。
【0016】
上記HNBRのAN量は、本発明の効果がより優れるという観点から、上記HNBR中の18~22質量%であることが好ましい。
本発明において、HNBRのアクリロニトリル量は、JIS K6384に基づきセミミクロケルダール法に準じて測定することができる。
【0017】
(水素化率)
上記HNBRの水素化率は、本発明の効果がより優れるという観点から、水素添加前のNBRが有する(ブタジエンに由来する繰り返し単位内に存在する)二重結合中の95~100%であることが好ましい。
本発明において、HNBRの水素化率は、JIS K6235に準じて測定することができる。
【0018】
本発明のゴム組成物は、本発明の効果がより優れるという観点から、ゴム成分として、上記HNBRのみを含むことが好ましい。
【0019】
本発明のゴム組成物は、本発明の効果がより優れるという観点から、アロイ化されたHNBRを実質的に含まないことが好ましい。本発明のゴム組成物がアロイ化されたHNBRを実質的に含まないことは、アロイ化されたHNBRの量が本発明のゴム組成物全量中の0~1.0質量%であることを意味する。
【0020】
<カーボンブラック>
本発明において、カーボンブラックは特に制限されない。
(カーボンブラックの窒素吸着比表面積)
カーボンブラックの窒素吸着比表面積は、本発明の効果がより優れるという観点から、5~50m2/gであることが好ましい。
本発明において、カーボンブラックの窒素吸着比表面積は、JIS K 6217-2:2001に準じて測定できる。
【0021】
(カーボンブラックのジブチルフタレート吸油量)
カーボンブラックのジブチルフタレート吸油量は、本発明の効果がより優れるという観点から、25~130ml/100gであることが好ましく、50~120ml/100gがより好ましい。
カーボンブラックのジブチルフタレート吸油量は、JIS K 6217-4:2008に準じて測定できる。
【0022】
カーボンブラックとしては、例えば、FTF級(Fine Thermal Furnace)、FEF級(Fast Extruding Furnace)、GPF級(General Purpose Furnace)、SRF級(Semi-Reinforcing Furnace)のカーボンブラックが挙げられる。
カーボンブラックはそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0023】
カーボンブラックの組合せは、本発明の効果がより優れるという観点から、FEF級とSRF級カーボンブラックの組合せが好ましい。
【0024】
(カーボンブラックの含有量)
カーボンブラックの含有量(カーボンブラックを2種以上を組み合わせて使用する場合はこれらの合計量)は、本発明の効果がより優れるという観点から、水素化アクリロニトリルブタジエンゴム100質量部に対して、40~150質量部であることが好ましく、80~120質量部がより好ましい。
【0025】
<過酸化物>
本発明のゴム組成物に含有される過酸化物は、HNBRからプロトンを引き抜くことができる過酸化物であれば特に制限されない。
【0026】
過酸化物としては、例えば、ベンゾイルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ジ-t-ブチルペルオキシド、t-ブチルクミルペルオキシド、メチルエチルケトンペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルペルオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン、1,3-ビス(t-ブチルペルオキシプロピル)ベンゼン、ジ-t-ブチルペルオキシ-ジイソプロピルベンゼン、t-ブチルペルオキシベンゼン、2,4-ジクロロベンゾイルペルオキシド、1,1-ジブチルペルオキシ-3,3,5-トリメチルシロキサンが挙げられる。
【0027】
上記過酸化物は、架橋剤として機能でき、本発明の効果がより優れるという観点から、パーオキシ基を複数有する有機過酸化物を含むことが好ましく、ジ-t-ブチルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルペルオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン、1,3-ビス(t-ブチルペルオキシプロピル)ベンゼン、ジ-t-ブチルペルオキシ-ジイソプロピルベンゼンを含むことがより好ましい。
【0028】
<過酸化物の含有量>
本発明において、過酸化物の含有量は、上記水素化アクリロニトリルブタジエンゴム100質量部に対して、2.4質量部以上である。
【0029】
過酸化物の含有量は、本発明の効果がより優れるという観点から、水素化アクリロニトリルブタジエンゴム100質量部に対して、2.8~6質量部であることが好ましく、3.0~5.0質量部がより好ましい。
【0030】
<トリアリルイソシアヌレート>
本発明のゴム組成物に含有されるトリアリルイソシアヌレートは下記構造を有する化合物である。トリアリルイソシアヌレートは共架橋剤として機能し、HNBRを架橋することができる。
【化1】
【0031】
<トリアリルイソシアヌレートの含有量>
本発明において、トリアリルイソシアヌレートの含有量は、上記水素化アクリロニトリルブタジエンゴム100質量部に対して、1.9質量部以上である。
【0032】
トリアリルイソシアヌレートの含有量は、本発明の効果がより優れるという観点から、上記水素化アクリロニトリルブタジエンゴム100質量部に対して、2.5~5.0質量部であるであることが好ましく、3.0~4.0質量部がより好ましい。
【0033】
(ジアリル化合物)
本発明のゴム組成物は、本発明の効果がより優れ、得られるゴムの伸びが優れるという観点から、更に、ジアリル化合物を含有することが好ましい。
ジアリル化合物は、アリル基を2個有する化合物であれば特に制限されない。例えば、ジアリルフタレートのようなアリル基を2個有する芳香族系化合物が挙げられる。
ジアリル化合物は、本発明の効果がより優れ、得られるゴムの伸びが優れるという観点から、ジアリルフタレートを含むことが好ましい。
【0034】
・ジアリル化合物の含有量
ジアリル化合物の含有量の含有量は、本発明の効果がより優れるという観点から、上記水素化アクリロニトリルブタジエンゴム100質量部に対して、3.0~20質量部であることが好ましく、5.0~10.0質量部がより好ましく、7.0~10.0質量部が更に好ましい。
【0035】
(添加剤)
本発明のゴム組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、更に、例えば、可塑剤、老化防止剤、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、接着助剤のような添加剤を含有することができる。各種添加剤は特に制限されない。例えば従来公知のものが挙げられる。各種添加剤の含有量は特に制限されず、適宜選択することができる。
【0036】
本発明のゴム組成物は、硫黄を実質的に含有しないものとすることができる。本発明のゴム組成物が硫黄を実質的に含まないことは、硫黄の量が本発明のゴム組成物全量中の0~0.5質量%であることを意味する。
【0037】
(製造方法、用途等)
本発明のゴム組成物はその製造について特に制限されない。例えば、上記HNBRと、カーボンブラックと、過酸化物と、トリアリルイソシアヌレートと、必要に応じて使用することができる、ジアリル化合物、添加剤とを、40~200℃の条件下で、バンバリー、ニーダー等の密閉式混合機、又は混練ロール機により混合して、本発明のゴム組成物を製造する方法が挙げられる。
【0038】
本発明のゴム組成物を架橋させる条件は特に制限されない。例えば、加圧しながら、110~160℃の条件下で、本発明のゴム組成物を架橋させることができる。
【0039】
<ホース用ゴム組成物>
本発明のゴム組成物は、ホースの製造に使用することができる。特にホースの内管に本発明のゴム組成物を使用することが好ましい態様の1つとして挙げられる。
【0040】
[ホース]
本発明のホースは、本発明のホース用ゴム組成物を用いて形成されたホースである。
本発明のホースに使用されるホース用ゴム組成物は、本発明のホース用ゴム組成物であれば特に制限されない。
【0041】
本発明のホースは、上記ホース用ゴム組成物を用いて形成された内管を有することが好ましい態様の1つとして挙げられる。
また、本発明のホースは、上記内管を有し、上記内管の上に補強層を有し、さらに上記補強層の上に外管を有することが好ましい態様の1つとして挙げられる。
【0042】
以下、本発明のホースを添付の図面に基づいて説明するが、本発明のホースはこれに限定されない。
図1は、本発明のホースの一実施形態例であるホースの各層(各管)を切り欠いて示す斜視図である。
図1において、ホース1は、内管2を有し、その上層に補強層3、さらにその上層に外管4を備える。内管2が本発明のゴム組成物で形成されることが好ましい。
【0043】
内管2は、ホースの最内層をなすことが好ましい。内管2の厚さは、必要に応じて任意に設計すればよいが、例えば、0.5~5.0mm程度がよく、0.8~3.0mmが好ましい。
【0044】
また、本発明のホースは補強層3を任意で有することができる。本発明のホースが補強層を有する場合、ホースの引張り破断強度、使用可能圧力範囲および金具装着性が向上するので好ましい。補強層としては、例えば、ブレード状、スパイラル状、ネット状、フィルム状の構造が例示される。補強層の材料としては、例えば、アラミド繊維、ナイロン、レーヨン、ビニロン、ポリエステル等の有機物の糸(補強糸);ブラスメッキ又は亜鉛メッキされた鋼線のような金属線が挙げられる。
【0045】
外管4はホースの最外層となるものである。外管4を形成し得る材料としては、例えば、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、エチレンプロピレンゴム、臭素化イソブチレン-p-メチルスチレン共重合ゴム(BIMS)、エチレン-アクリル酸エステル共重合ゴム(AEM)等を含むゴム組成物が挙げられる。外管の厚さとしては、例えば、0.5~3mmの厚さが好ましく、0.8~2mmの厚さがより好ましい。
【0046】
本発明のホースの製造方法としては、例えば、マンドレル等の外周に未加硫状態の本発明のゴム組成物を円筒状に配置し、その外周に補強層を配置し、さらにその外周に外管用のゴム組成物を円筒状に配置し、続いて、ホース全体を加熱する方法が挙げられる。加熱温度は、好ましくは120℃以上、より好ましくは140~170℃である。十分冷却した後は、マンドレルから抜き取ることにより、本発明のホースを得ることができる。
【0047】
本発明のホースは、例えば、自動車用ホースとして使用することが好ましい態様として挙げられる。
【0048】
上記自動車用ホースとしては、例えば、自動車のパワーステアリングシステム配管が挙げられる。
【0049】
本発明のホースの内部を通過させる流体は特に制限されない。流体としては、例えば、アニリン点が90℃以上のオイルを含むものが挙げられ、アニリン点が105℃以上のオイルを含むものが好ましい態様として挙げられる。
【実施例0050】
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明する。ただし本発明はこれらに限定されない。
【0051】
<ゴム組成物の製造>
下記第1表の各成分を同表に示す組成(質量部)で用いて、これらを撹拌機で混合し、各ゴム組成物を製造した。
なお、第1表の架橋剤欄において、上段の数字は架橋剤として使用した商品(PO 14-40)の量であり、下段の数字は上記のように使用された商品中の正味の過酸化物の量である。
【0052】
<評価>
上記のとおり製造された各ゴム組成物を用いて以下の評価を行った。結果を第1表に示す。
<低温性>
・サンプルの作製
上記のとおり得られた各ゴム組成物を148℃のプレス成型機を用い、面圧3.0MPaの圧力下で60分間加硫して、2mm厚の加硫シートを作製し、上記シートからI型のサンプルを切り出した。
【0053】
・低温弾性回復試験
上記のとおり作製した各サンプルを用いて、ASTM D1329に準じて、低温弾性回復試験を行って、各サンプルの伸張が10%回復する温度(TR-10)を測定した。
【0054】
・評価基準
低温弾性回復試験の結果が-25℃以下であった場合、低温性が優れると評価した。
上記の場合、低温弾性回復試験の結果が低いほど、低温性がより優れる。
一方、低温弾性回復試験の結果が-25℃を超えた場合、低温性が悪いと評価した。
【0055】
<耐油性>
・試験片の作製
上記のとおり得られた各ゴム組成物を148℃のプレス成型機を用い、面圧3.0MPaの圧力下で60分間加硫して、2mm厚の加硫シートを作製した。JIS K6258:2016に準じて、上記加硫シートから、試験片を作製した。
【0056】
・浸漬試験
上記各試験片を各アニリン点を有する試験油1~3に135℃の条件下で168時間浸漬させる浸漬試験を行った。
各試験油への浸漬前後における試験片の体積を測定し、上記測定値から体積膨潤率を以下の式で算出した。
体積膨潤率(%)=[(浸漬後の体積-浸漬前の体積)/(浸漬前の体積)]×100
【0057】
・評価基準
試験油1での体積膨潤率が13%以下であり、試験油2での体積膨潤率が10%以下であり、かつ、試験油3での体積膨潤率が3%以下であった場合、耐油性が優れると評価した。
上記の場合、試験油1での体積膨潤率、試験油2での体積膨潤率、試験油3での体積膨潤率のうちのいずれかが小さいほど、耐油性がより優れる。
一方、試験油1での体積膨潤率が13%を超えた場合、試験油2での体積膨潤率が10%を超えた場合、又は、試験油3での体積膨潤率が3%を超えた場合、耐油性が悪いと評価した。
【0058】
【0059】
第1表に示した各成分の詳細は以下のとおりである。
(HNBR)
・HNBR1:水素化アクリロニトリルブタジエンゴム。商品名THERBANLT2007、ARLANXEO社製。AN量21質量%、水素化率99%
・HNBR2:水素化アクリロニトリルブタジエンゴム。商品名THERBAN LT2057、ARLANXEO社製。AN量21質量%、水素化率95%
【0060】
・比較HNBR:水素化アクリロニトリルブタジエンゴム。商品名ZETPOL2000L、日本ゼオン社製。AN量36質量%、水素化率99%
【0061】
(カーボンブラック)
・カーボンブラック1(FEF):FEFカーボンブラック(日鉄カーボン社製)、窒素吸着比表面積41m2/g、ジブチルフタレート吸油量121ml/100g
・カーボンブラック2(SRF):SRFカーボンブラック(商品名ニテロン#S、新日化カーボン社製)、窒素吸着比表面積25m2/g、ジブチルフタレート吸油量72ml/100g
【0062】
・シリカ
・接着付与剤:MgO(酸化マグネシウム)
・老化防止剤:MBZ(2-メルカプトベンツイミダゾール)大内新興化学社製、ノクラックMBZ
・架橋助剤:ZnO(酸化亜鉛)正同化学工業社製、亜鉛華3号
・加工助剤:ステアリン酸。花王社製、ルナックYA
【0063】
・共架橋剤1:TAIC(純品)。トリアリルイソシアヌレート。日本化成社製、商品名タイク
・共架橋剤2:DAP(ジアリルフタレート)、ダイソー社製
【0064】
(過酸化物)
・架橋剤:PO 14-40、化薬アクゾ社製。ジ-t-ブチルペルオキシジイソプロピルベンゼンと炭酸カルシウムの混合物であり、商品中のジ-t-ブチルペルオキシジイソプロピルベンゼンの含有量は40質量%である。
【0065】
第1表に示す結果から、所定のHNBRを含まず、代わりにAN量が24質量%を超えるHNBRを含む比較例1は、低温性が悪かった。
過酸化物の含有量が所定よりも少ない比較例2、3は、耐油性が悪かった。
トリアリルイソシアヌレートの含有量が所定よりも少ない比較例4は、耐油性が悪かった。
【0066】
これに対して、本発明のゴム組成物は、低温性及び耐油性が優れた。