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特開2022-131906調速装置、送り装置、薬液ポンプ及び薬液投与装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022131906
(43)【公開日】2022-09-07
(54)【発明の名称】調速装置、送り装置、薬液ポンプ及び薬液投与装置
(51)【国際特許分類】
   F04B 9/02 20060101AFI20220831BHJP
   A61M 5/145 20060101ALI20220831BHJP
   F04B 13/00 20060101ALI20220831BHJP
   F04B 9/00 20060101ALI20220831BHJP
【FI】
F04B9/02 A
A61M5/145 500
F04B13/00 A
F04B9/00 C
F04B9/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021031144
(22)【出願日】2021-02-26
(71)【出願人】
【識別番号】000005038
【氏名又は名称】セイコーホールディングス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】永田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 明彦
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 勝平
(72)【発明者】
【氏名】浅井 伸一
【テーマコード(参考)】
3H075
4C066
【Fターム(参考)】
3H075AA09
3H075BB03
3H075CC11
3H075CC36
3H075DB01
3H075DB12
3H075DB32
3H075DB33
3H075EE04
3H075EE08
3H075EE14
4C066AA09
4C066BB01
4C066CC01
4C066DD12
4C066EE14
4C066FF04
4C066HH02
4C066QQ25
(57)【要約】
【課題】伝達される動力の強さ等に影響されることなく、回転軸部の回転速度を適宜変化させて、任意の回転速度に調整すること。
【解決手段】外部から伝達された動力に基づいて回転軸線C2回りに回転すると共に、動力に対応した回転速度で回転する回転軸部61と、回転軸部と共に回転軸線回りを回転する羽根車62と、羽根車に対して接近離間するように配置された制動部材200とを備え、羽根車は、回転速度に応じた回転抵抗を発生させると共に回転速度の増加に伴って制動部材側(BK側)に変位し、制動部材は、羽根車が変位したときに羽根車が摺接する制動プレート260を備えている調速装置63を提供する。
【選択図】図14
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部から伝達された動力に基づいて回転軸線回りに回転すると共に、前記動力に対応した回転速度で回転する回転軸部と、
前記回転軸部に設けられると共に、前記回転軸部と共に前記回転軸線回りを回転する羽根車と、
前記羽根車に対して接近離間するように配置された制動部材と、を備え、
前記羽根車は、回転速度に応じた回転抵抗を発生させると共に、回転速度の増加に伴って前記制動部材側に変位し、
前記制動部材は、前記羽根車が変位したときに、前記羽根車が摺接する制動プレートを備えていることを特徴とする調速装置。
【請求項2】
請求項1に記載の調速装置において、
前記羽根車は、
前記回転抵抗を発生させると共に、回転に伴う遠心力によって前記制動部材側に向けて変位する複数の羽根部と、
複数の前記羽根部を弾性変位可能にそれぞれ支持する弾性支持部と、を備えている、調速装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の調速装置において、
前記制動プレートは、前記回転軸線と同軸上に配置されている、調速装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の調速装置において、
前記制動部材は、前記制動プレートを移動可能に支持する案内軸部を備え、
前記案内軸部と前記制動プレートとの間には、前記制動プレートに対する前記羽根車の摺接時に、前記案内軸部に対して前記制動プレートが相対移動することを抑制する抵抗力を発生させる抵抗部が設けられている、調速装置。
【請求項5】
請求項4に記載の調速装置において、
前記案内軸部は、前記回転軸線と同軸に配置され、
前記案内軸部のうち前記回転軸部側を向いた端面には、前記回転軸部の先端部が接触すると共に、前記回転軸部を前記回転軸線回りに回転支持する軸受部が形成されている、調速装置。
【請求項6】
請求項5に記載の調速装置において、
前記制動プレートは、前記案内軸部に螺着され、前記回転軸線回りの回転によって前記回転軸線の軸線方向に移動可能とされている、調速装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の調速装置において、
前記羽根車の回転と停止とを切り換える回転制御部材を備え、
前記回転制御部材は、
ストッパ部材と、
前記羽根車に対して前記ストッパ部材を接触させて前記羽根車の回転を停止させる回転停止位置と、前記羽根車から前記ストッパ部材を離間させて前記羽根車の回転を許容する回転許容位置との間で、前記ストッパ部材を移動させる操作部材と、を備え、
前記操作部材は、前記ストッパ部材が前記回転停止位置に位置しているときに、前記羽根車に対する前記ストッパ部材の接触を一時的に解除して、所定の回転角度分、前記羽根車を回転させる間欠回転操作が許容されるように構成されていることを特徴とする調速装置。
【請求項8】
請求項7に記載の調速装置において、
前記ストッパ部材は、前記回転停止位置に位置したときに、前記羽根車の回転軌跡の内側において前記羽根車に対して対向するように配置され、前記羽根車の回転を停止させるストッパ片を備え、
前記操作部材は、前記回転停止位置において、前記ストッパ片を前記羽根車に対して対向配置させる対向位置と、前記対向位置から前記ストッパ片を前記回転軌跡の外側に一時的に退避させる退避位置との間で、前記ストッパ片の位置を切換え可能とされている、調速装置。
【請求項9】
請求項8に記載の調速装置において、
前記操作部材は、
前記回転軸線に対して平行な操作軸線に沿って移動可能に配置されると共に、前記ストッパ部材が設けられた操作軸部と、
前記操作軸線に沿った前記操作軸部のスライド操作、及び前記操作軸線回りの前記操作軸部の回転操作を行う操作部と、を備え、
前記操作部による前記操作軸部のスライド操作によって、前記ストッパ部材を前記回転停止位置と前記回転許容位置との間で移動可能とされ、
前記操作部による前記操作軸部の回転操作によって、前記ストッパ片を前記対向位置と前記退避位置とに切換え可能とされている、調速装置。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載の調速装置と、
前記回転軸部に伝達する動力を発生させる第1駆動源と、
送り軸線回りに回転可能に配置された送り軸部と、
前記第1駆動源で発生した前記動力を前記回転軸部に伝達すると共に、前記回転軸部の回転に連動させて前記送り軸部を回転させる輪列機構と、
前記送り軸部の回転に伴って、前記送り軸線に沿って送り移動される可動体と、
前記可動体に対して前記送り軸線に沿った駆動力を付与する第2駆動源と、を備えていることを特徴とする送り装置。
【請求項11】
請求項10に記載の送り装置において、
前記第2駆動源は、弾性復元力を利用して前記駆動力を発生させるばね部材を備えている、送り装置。
【請求項12】
請求項10又は11に記載の送り装置において、
前記第1駆動源は、巻き解けによって前記動力を発生させるぜんまいを備えている、送り装置。
【請求項13】
請求項10から12のいずれか1項に記載の送り装置と、
薬液が充填され、プランジャの押込み操作によって薬液が吐出されるシリンジを保持する保持具と、を備え、
前記可動体は、前記送り軸部の回転に伴って前記プランジャを前記シリンジ内に押し込むように、前記プランジャに連結されていることを特徴とする薬液ポンプ。
【請求項14】
請求項13に記載の薬液ポンプと、
前記薬液ポンプを内部に収容すると共に、使用者に装着可能とされた本体ケースと、
使用者に穿刺された状態で、使用者の体表面に留置可能とされると共に、前記シリンジから吐出された薬液が導入される留置針と、を備えていることを特徴とする薬液投与装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調速装置、送り装置、薬液ポンプ及び薬液投与装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、各種の技術分野において、回転体の回転速度を調整(調速)する調速機が用いられている。例えばオルゴールにおいては、一般的に羽根車の空気抵抗を利用して回転速度を調整している。
【0003】
例えば下記特許文献1には、オルゴールにおけるガバナーの減速機構が開示されている。減速機構は、伝達された動力(ぜんまいの巻き解けに伴う動力)によって回転するウォーム軸と、ウォーム軸に固定された風切部材と、風切部材を介してウォーム軸に一体に固定された複数の摺接部を有するゴム製の摺動部材とを具備している。
複数の摺接部は、ウォーム軸の回転に伴って径方向外側に拡がるように変位することで、ガバナー用フレームに固定されている環状部材の内周壁に摺接する。
【0004】
下記特許文献2には、エアガバナーを具備するオルゴールが開示されている。エアガバナーは、伝達された動力によって回転するウォーム軸、及びウォーム軸に固定された風切り回転体と、風切り回転体の上方に配置され、風切り回転体に対して対向配置された遮蔽部材と、を備えている。
遮蔽部材は、風切り回転体を覆う被覆面積を変化させることで、風切り回転体に作用する空気量(空気抵抗力)を変化させることが可能とされている。
【0005】
下記特許文献3には、オルゴールの調速機構が開示されている。調速機構は、伝達された動力によって回転するウォーム軸と、ウォーム軸に固定された回転体と、回転体の上部を覆うように配置された地板部材の下面に形成された制動部とを備えている。
回転体は、ウォーム軸の回転速度に応じて軸方向に変位して制動部に摺接する複数のウエイト部を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開昭59-53398号公報
【特許文献2】実公昭58-6004号公報
【特許文献3】実公昭63-36391号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
オルゴール等で用いられる調速機構(ガバナー)では、一般的に外部から伝達された動力(例えばぜんまいの巻き解けに伴う動力)によって回転する羽根車の空気抵抗を利用することで、ウォーム軸等の回転軸部の速度を一定に維持している。これにより、例えばぜんまいの巻き上げ量に影響されることなく出力軸を定速回転させることができ、一定速度で音を奏でることが可能とされている。
【0008】
しかしながら、この種の調速機構では羽根車の回転速度が、伝達される動力の強さ(例えばぜんまいのトルクの強さ)及び羽根車の空気抵抗に大きく依存されてしまう。そのため、羽根車の回転速度を変化させて、任意の速度に調整するといったことが困難であり、改善の余地があった。
【0009】
例えば特許文献1に記載の減速機構では、ウォーム軸の回転に伴って摺接部が径方向外側に拡がり、環状部材の内周壁に摺接することで摩擦抵抗が生じる。これにより、ウォーム軸の回転速度の上昇を抑制することができ、結果的に一定の回転速度に維持することが可能である。しかしながら、回転速度を変化させて、任意の回転速度に調整するといったことまでは難しい。
【0010】
特許文献2に記載のエアガバナーでは、遮蔽部材を利用して風切り回転体に作用する空気量(空気抵抗力)を変化させることで回転速度を変化させる構造とされている。そのため、風切り回転体に吸込まれる空気、或いは風切り回転体から押し出される空気の状態や、風切り回転体の姿勢等に大きく影響を受け易い。従って、任意の回転速度に安定且つ容易に変化させることが難しい。
【0011】
特許文献3に記載の調速機構では、ウォーム軸の回転に伴ってウエイト部が軸方向に変位して制動部に摺接することで摩擦抵抗が生じる。これにより、ウォーム軸の回転速度の上昇を抑制することができ、結果的に一定の回転速度に維持することが可能である。しかしながら、特許文献1に記載の減速機構と同様に、回転速度を変化させて、任意の回転速度に調整するといったことまでは難しい。
【0012】
本発明は、このような事情に考慮してなされたもので、その目的は、伝達される動力の強さ等に影響されることなく、回転軸部の回転速度を適宜変化させて、任意の回転速度に調整することができる調速装置、送り装置、薬液ポンプ及び薬液投与装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(1)本発明に係る調速装置は、外部から伝達された動力に基づいて回転軸線回りに回転すると共に、前記動力に対応した回転速度で回転する回転軸部と、前記回転軸部に設けられると共に、前記回転軸部と共に前記回転軸線回りを回転する羽根車と、前記羽根車に対して接近離間するように配置された制動部材と、を備え、前記羽根車は、回転速度に応じた回転抵抗を発生させると共に、回転速度の増加に伴って前記制動部材側に変位し、前記制動部材は、前記羽根車が変位したときに、前記羽根車が摺接する制動プレートを備えていることを特徴とする。
【0014】
本発明に係る調速装置によれば、駆動源等の外部から回転軸部に動力が伝達されると、回転軸部が動力に対応した回転速度で回転する。これにより、回転軸部と共に羽根車を回転軸線回りに回転させることができ、羽根車を利用して回転速度に応じた回転抵抗(例えば空気抵抗等)を発生させることができる。そのため、羽根車によって発生した回転抵抗を利用して、回転軸部を所定の回転速度で回転させることができる。
ところで、回転軸部は伝達される動力の強さに応じた回転速度で回転するので、例えば回転軸部に対して強い動力が伝達された場合には、回転軸部及び羽根車の回転速度も高くなってしまう。羽根車は、回転速度の増加に伴って制動部材側に変位するので、回転速度が高いほど制動部材側への変位量も大きくなる。これにより、羽根車を制動プレートに対して強く摺接させることができ、羽根車のそれ以上の変位を抑制して、回転速度の増加を抑制することができる。従って、回転軸部に伝達される動力が大きい場合であっても、回転軸部を所定の回転速度で回転させることができる。
【0015】
特に、羽根車に対して制動プレートを接近離間させることができるので、制動プレートと羽根車との間の間隔を任意に変化させることができる。従って、制動プレートに対する羽根車の摺接タイミングを任意に調整することができ、羽根車の回転速度の上限値を調整することができる。その結果、回転軸部に伝達される動力の強さ、及び羽根車による回転抵抗に依存されることなく、制動プレートを利用して回転軸部の回転速度を適宜変化させることができ、任意の回転速度に調整することができる。
【0016】
(2)前記羽根車は、前記回転抵抗を発生させると共に、回転に伴う遠心力によって前記制動部材側に向けて変位する複数の羽根部と、複数の前記羽根部を弾性変位可能にそれぞれ支持する弾性支持部と、を備えても良い。
【0017】
この場合には、回転に伴う遠心力によって弾性支持部によって支持されている複数の羽根部を制動部材側に向けて変位させることができる。特に、遠心力を利用するので、回転軸部の回転速度に対応して複数の羽根部を制動部材側に適切に変位させることができる。これにより、回転軸部の回転速度に対応して、羽根車を制動プレートに対して確実に摺接させることができ、回転軸部の回転速度の調整をより確実に行うことができる。
【0018】
(3)前記制動プレートは、前記回転軸線と同軸上に配置されても良い。
【0019】
この場合には、制動プレートを回転軸部と同軸に配置することができるので、省スペースで配置し易く、装置全体の小型化等に貢献することができる。
【0020】
(4)前記制動部材は、前記制動プレートを移動可能に支持する案内軸部を備え、前記案内軸部と前記制動プレートとの間には、前記制動プレートに対する前記羽根車の摺接時に、前記案内軸部に対して前記制動プレートが相対移動することを抑制する抵抗力を発生させる抵抗部が設けられても良い。
【0021】
この場合には、羽根車に対して制動プレートを接近離間させる際に、案内軸部で案内しながら制動プレートを移動させることができる。そのため、制動プレートの姿勢を安定に維持することができ、制動プレートに対して羽根車を安定して摺接させ易い。
さらに、抵抗部を利用して、案内軸部と制動プレートとの間に抵抗力を発生させることができるので、制動プレートに対して羽根車が摺接する際に、該摺接によって制動プレートが案内軸部に対して相対移動してしまうことを抑制することができる。これにより、羽根車の摺接時、制動プレートと羽根車との間隔を適切に維持したまま、制動プレートに羽根車を摺接させることができる。これにより、回転軸部の回転速度の調整をより確実に行うことができる。
【0022】
(5)前記案内軸部は、前記回転軸線と同軸に配置され、前記案内軸部のうち前記回転軸部側を向いた端面には、前記回転軸部の先端部が接触すると共に、前記回転軸部を前記回転軸線回りに回転支持する軸受部が形成されても良い。
【0023】
この場合には、案内軸部と回転軸部とを同軸上に配置することができるので、案内軸部に沿って制動プレートを移動させることで、制動プレートと羽根車との間の間隔を容易且つ精度良く変化させ易い。従って、回転軸部の回転速度の調整を行い易い。
さらに、案内軸部の端面に設けられた軸受部を利用して、回転軸部の先端部を回転支持できるので、軸ぶれ等を生じさせることなく、回転軸部を安定して回転させることができる。
【0024】
(6)前記制動プレートは、前記案内軸部に螺着され、前記回転軸線回りの回転によって前記回転軸線の軸線方向に移動可能とされても良い。
【0025】
この場合には、制動プレートを回転操作することで案内軸部に沿って移動させることができるので、制動プレートを微小移動させ易く、回転軸部の回転速度の調整をより精度良く、微小に行うことができる。
【0026】
(7)前記羽根車の回転と停止とを切り換える回転制御部材を備え、前記回転制御部材は、ストッパ部材と、前記羽根車に対して前記ストッパ部材を接触させて前記羽根車の回転を停止させる回転停止位置と、前記羽根車から前記ストッパ部材を離間させて前記羽根車の回転を許容する回転許容位置との間で、前記ストッパ部材を移動させる操作部材と、を備え、前記操作部材は、前記ストッパ部材が前記回転停止位置に位置しているときに、前記羽根車に対する前記ストッパ部材の接触を一時的に解除して、所定の回転角度分、前記羽根車を回転させる間欠回転操作が許容されるように構成されても良い。
【0027】
この場合には、回転制御部材を備えているので、操作部材を利用して羽根車の回転と停止の切換えを例えばワンタッチで行うことができる。具体的には操作部材を利用してストッパ部材を回転停止位置に位置させることで、羽根車に対してストッパ部材を接触させて回転を停止させることができる。その一方、操作部材を利用してストッパ部材を回転許容位置に位置させることで、羽根車からストッパ部材を離間させることができ、羽根車の回転を許容することができる。このように、操作部材を利用して、ストッパ部材を回転停止位置と回転許容位置との間を移動させるだけの簡便な操作で、羽根車の回転と停止との切換えを容易に行うことができる。
【0028】
特に、ストッパ部材が回転停止位置に位置している場合であっても、操作部材を利用して、羽根車に対するストッパ部材の接触を一時的に解除することができ、所定の回転角度分だけ羽根車を回転させる間欠回転操作を行うことができる。これにより、例えば羽根車を1/4回転、半回転、1回転、2回転等のように、必要に応じて任意に間欠的に回転させることができ、多様な使い方を行える。
【0029】
(8)前記ストッパ部材は、前記回転停止位置に位置したときに、前記羽根車の回転軌跡の内側において前記羽根車に対して対向するように配置され、前記羽根車の回転を停止させるストッパ片を備え、前記操作部材は、前記回転停止位置において、前記ストッパ片を前記羽根車に対して対向配置させる対向位置と、前記対向位置から前記ストッパ片を前記回転軌跡の外側に一時的に退避させる退避位置との間で、前記ストッパ片の位置を切換え可能とされても良い。
【0030】
この場合には、ストッパ部材が回転停止位置に位置しているときに、操作部材を利用して、ストッパ片の位置を対向位置と退避位置との間で例えばワンタッチで切り換えることができる。ストッパ片を対向位置に位置させることで、羽根車の回転軌跡の内側でストッパ片を羽根車に対向配置させることができ、羽根車とストッパ片とを確実に接触させることができる。これにより、羽根車の回転を停止させることができる。
また、ストッパ片を対向位置から退避位置に移行させることで、ストッパ片を回転軌跡の外側に一時的に退避させることができ、羽根車の停止を解除して回転を許容させることができる。そのため、ストッパ片を退避位置から対向位置に再び移行させることで、羽根車の回転を停止させることができる。これにより、羽根車を所定の回転角度分だけ回転させることができる。
このように、ストッパ部材が回転停止位置に位置している場合であっても、操作部材を利用してストッパ片を対向位置と退避位置との間で切り換えることで、羽根車を所定の回転角度分だけ回転させて、半回転等、任意に間欠的に回転させることができる。
【0031】
(9)前記操作部材は、前記回転軸線に対して平行な操作軸線に沿って移動可能に配置されると共に、前記ストッパ部材が設けられた操作軸部と、前記操作軸線に沿った前記操作軸部のスライド操作、及び前記操作軸線回りの前記操作軸部の回転操作を行う操作部と、を備え、前記操作部による前記操作軸部のスライド操作によって、前記ストッパ部材を前記回転停止位置と前記回転許容位置との間で移動可能とされ、前記操作部による前記操作軸部の回転操作によって、前記ストッパ片を前記対向位置と前記退避位置とに切換え可能とされても良い。
【0032】
この場合には、操作軸部及び操作部を利用して、回転停止位置と回転許容位置との間のストッパ部材の切換え操作、及び対向位置と退避位置との間のストッパ片の切換え操作の2つの切換え操作を行うことができるので、使い易く操作性を向上することができる。
特に、2つの切換え操作を行う際に、共通の操作軸部及び操作部を利用するものの、ストッパ部材の切換え操作を行うときは操作軸部をスライド操作し、且つストッパ片の切換え操作を行うときは操作軸部を回転操作する必要がある。従って、大きく異なる操作によって、2つの切換え操作を明確に使い分けることができ、誤操作を防止し易く、操作性を向上することができる。
【0033】
(10)本発明に係る送り装置は、前記調速装置と、前記回転軸部に伝達する動力を発生させる第1駆動源と、送り軸線回りに回転可能に配置された送り軸部と、前記第1駆動源で発生した前記動力を前記回転軸部に伝達すると共に、前記回転軸部の回転に連動させて前記送り軸部を回転させる輪列機構と、前記送り軸部の回転に伴って、前記送り軸線に沿って送り移動される可動体と、前記可動体に対して前記送り軸線に沿った駆動力を付与する第2駆動源と、を備えていることを特徴とする。
【0034】
本発明に係る送り装置によれば、第1駆動源で発生した動力を、輪列機構を介して回転軸部に伝達することができるので、回転軸部を回転させることができる。さらに輪列機構によって、回転軸部の回転に連動させて送り軸部を回転させることができる。従って、回転軸部の回転速度に対応させて送り軸部を回転させることができる。そして、送り軸部の回転に伴って、第2駆動源からの駆動力を利用して、可動体を送り軸線に沿って送り移動させることができる。
特に、先に述べた調速装置を具備しているので、回転軸部の回転に連動して回転する送り軸部の回転速度を調整することができ、可動体の送り速度を調整することができる。従って、送り装置を各種の用途に幅広く適用することができ、利便性を向上することができる。さらに、羽根車を利用して回転軸部の回転速度を調整し、輪列機構を介して回転軸部と送り軸部とを連動させるので、例えば機械式時計におけるてんぷ等を利用する場合とは異なり、音を発生させ難く、静音性を維持された送り装置とすることができる。
【0035】
(11)前記第2駆動源は、弾性復元力を利用して前記駆動力を発生させるばね部材を備えても良い。
【0036】
この場合には、例えば渦巻きばね、板ばね、コイルばね、トーションばね、皿ばね、タケノコばね等の各種のばね部材を利用するだけの簡便な構成で第2駆動源を構成することができるので、低コスト化及び構成の簡略化を図り易い。さらに電池等の電力が不要であるので、この点においても低コスト化を図り易いうえ、安全性が向上することができる。
【0037】
(12)前記第1駆動源は、巻き解けによって前記動力を発生させるぜんまいを備えても良い。
【0038】
この場合には、機械式時計等と同様にぜんまいの巻き解けを利用して動力を発生させるので、回転軸部を回転させるにあたって、電池等の電力が不要である。そのため、低コスト化を図り易いうえ、安全性を向上することができる。
【0039】
(13)本発明に係る薬液ポンプは、前記送り装置と、薬液が充填され、プランジャの押込み操作によって薬液が吐出されるシリンジを保持する保持具と、を備え、前記可動体は、前記送り軸部の回転に伴って前記プランジャを前記シリンジ内に押し込むように、前記プランジャに連結されていることを特徴とする。
【0040】
本発明に係る薬液ポンプによれば、送り軸部の回転に伴って可動体を送り移動させることで、シリンジ内にプランジャを押し込むことができ、保持具によって保持されているシリンジ内から薬液を吐出することができる。
特に、上述した送り装置を具備しているので、送り軸部の回転速度を調整することができ、可動体の送り速度を調整することができる。そのため、シリンジ内から吐出する薬液の吐出速度を変更することが可能となる。これにより、所望する吐出速度(吐出量)で薬液を精度良く吐出することができ、使い易く、利便性に優れた薬液ポンプとすることができる。
【0041】
(14)本発明に係る薬液投与装置は、前記薬液ポンプと、前記薬液ポンプを内部に収容すると共に、使用者に装着可能とされた本体ケースと、使用者に穿刺された状態で、使用者の体表面に留置可能とされると共に、前記シリンジから吐出された薬液が導入される留置針と、を備えていることを特徴とする。
【0042】
本発明に係る薬液投与装置によれば、薬液ポンプによってシリンジから吐出された薬液を、留置針を通じて使用者に投与することができる。特に、上述薬液ポンプを具備しているので、所望する吐出速度(吐出量)で薬液を精度良くシリンジから吐出することができるので、例えば決まった量の薬液を精度良く定期的に投与することができる。従って、例えばインスリンを体内に投与するインスリン投与装置等として好適に利用することが可能となる。特に、状況に応じて(例えば食べた量、薬液の粘度や効果速度に応じて)最適な投与速度に調整することが可能となるので、薬液投与の効果をより一層発揮させることができると共に例えば痛みの少ない薬液投与を行える。
【発明の効果】
【0043】
本発明によれば、伝達される動力の強さ等に影響されることなく、回転軸部の回転速度を適宜変化させることができ、任意の回転速度に調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1】本発明に係る実施形態を示す図であって、薬液投与装置の外観斜視図である。
図2図1に示す本体ケースの上部ケースを透視した状態の薬液投与装置の外観斜視図である。
図3図1に示すインナーケース内に保持されているシリンジ周辺の斜視図である。
図4図2に示す薬液投与装置の上面図である。
図5図2に示す薬液投与装置の斜視図である。
図6図5に示す状態から下部ケースを取り外した状態の薬液投与装置の斜視図である。
図7図2に示す状態から下部ケースを取り外した状態の薬液投与装置の斜視図である。
図8図7に示すインナーケース周辺の拡大斜視図であって、中継プラグを取り外した状態を示す図である。
図9図7に示すインナーケース周辺の拡大斜視図であって、インナーケース及びシリンジを取り外した状態を示す図である。
図10図9に示すプランジャ及び連結部材を取り外した状態の斜視図である。
図11図10に示す渦巻きばねを取り外した状態の斜視図である。
図12図6に示す羽根車及び回転制御部材の周辺を拡大した斜視図である。
図13図12に示す状態から保護ケース等を取り外した状態の斜視図である。
図14図12に示す状態から回転制御部材を取り外した状態の斜視図である。
図15図14に示す状態から保護ケース等を取り外した状態の斜視図である。
図16図15に示す羽根車の周辺を拡大した斜視図である。
図17図15に示す羽根車の周辺を拡大した斜視図である。
図18図12に示す状態において、羽根車と回転制御部材との関係を示す斜視図である。
図19図12に示す状態において、羽根車と回転制御部材との関係を示す斜視図であって、ストッパ部材が回転許容位置に位置している状態の斜視図である。
図20図19に示す状態から、ストッパ部材が回転停止位置に位置している状態の斜視図である。
図21】ストッパ部材が回転許容位置に位置している状態において、羽根車とストッパ部材とストッパホルダとの関係を示す斜視図である。
図22】ストッパ部材が回転停止位置に位置している状態において、羽根車とストッパ部材とストッパホルダとの関係を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、本発明に係る調速装置、送り装置、薬液ポンプ及び薬液投与装置の実施形態について図面を参照して説明する。
【0046】
(薬液投与装置)
図1及び図2に示すように、本実施形態の薬液投与装置1は、薬液Wが充填されたシリンジ2(図3参照)を備える薬液ポンプ3と、薬液ポンプ3を内部に収容すると共に使用者の体表面Sに装着可能とされた本体ケース4と、使用者に穿刺された状態で使用者の体表面Sに留置可能とされ、シリンジ2から吐出された薬液Wが導入される留置針5を備える注入セット6と、を備えている。
なお、薬液Wとしては特に限定されるものではないが、例えばインスリンが挙げられる。この場合、薬液投与装置1はインスリン投与装置として機能すると共に、薬液ポンプ3はインスリンポンプとして機能する。
【0047】
本体ケース4は、例えば下部ケース10及び上部ケース11が組み合わされた構成とされ、使用者の予め決められた装着箇所(例えば腹部周辺)に装着することが可能とされている。
なお、本体ケース4を使用者の体表面Sに装着する装着方法については、特に限定されるものではなく、公知の方法を採用して構わない。例えば、粘着テープ等を利用して本体ケース4を体表面Sに貼着しても構わないし、クリップや装着ベルト等の図示しない装着部材を本体ケース4に組み合わせ、装着部材を介して本体ケース4を体表面Sに装着しても構わない。
【0048】
本体ケース4は、下部ケース10及び上部ケース11が上下方向L1に重なるように組み合わされることで構成されている。下部ケース10と上部ケース11とが組み合わされることで画成された内部空間に、薬液投与装置1を構成する各構成部品が内蔵されている。
なお、本実施形態では、本体ケース4の厚さ方向を上下方向L1といい、体表面Sから離間する方向を上方、その反対方向を下方という。さらに上下方向L1に直交する一方向を前後方向L2といい、上下方向L1及び前後方向L2に直交する方向を左右方向L3という。
【0049】
本体ケース4は、直方体状の第1ケース部15と、第1ケース部15に一体に連設された第2ケース部16とを備えている。なお、第1ケース部15及び第2ケース部16は、それぞれ下部ケース10及び上部ケース11が組み合わされることで形成されている。従って、下部ケース10は、第1ケース部15及び第2ケース部16のそれぞれの一部を構成する。同様に、上部ケース11は、第1ケース部15及び第2ケース部16のそれぞれの一部を構成する。
【0050】
第2ケース部16は、第1ケース部15よりも上下方向L1に厚みを有し、且つ第1ケース部15よりも左右方向L3に幅広とされた直方体状に形成されている。第1ケース部15及び第2ケース部16は、前後方向L2に沿って並ぶように連設されている。なお、前後方向L2のうち第2ケース部16から第1ケース部15に向かう方向を前方FWといい、その反対方向を後方BKという。
【0051】
第1ケース部15は、左右方向L3に沿った横幅よりも前後方向L2に長い直方体状に形成されている。なお、第1ケース部15の上下方向L1に沿った厚みは、左右方向L3に沿った横幅よりも小さくなるように形成されている。
第2ケース部16は、左右方向L3に沿った横幅よりも前後方向L2に短い直方体状に形成されている。なお、第2ケース部16の上下方向L1に沿った厚みは、前後方向L2に沿った長さと同等となるように形成されている。
さらに、第2ケース部16は、前後方向L2に沿った長さが第1ケース部15よりも短く形成されると共に、左右方向L3に沿った幅が第1ケース部15よりも幅広に形成され、且つ上下方向L1に沿った厚みが第1ケース部15よりも厚みを有するように形成されている。
【0052】
ただし、第1ケース部15及び第2ケース部16の形状、サイズ等は、上述した場合に限定されるものではなく、適宜変更して構わない。さらに、本体ケース4は、第1ケース部15及び第2ケース部16で構成されている必要もなく、適宜変更して構わない。
【0053】
注入セット6は、図1に示すように、使用者の体表面Sに例えば貼着等によって取り付け可能とされた注入パッチ20と、後述する中継コネクタ45と注入パッチ20との間に接続されたチューブ21と、を備えている。
【0054】
注入パッチ20は、図示しない内針と共に体内に穿刺可能とされ、内針の引き抜きによって体表面Sに留置されるプラスチック製のカニューレ型の留置針5を備えている。
チューブ21は、可撓性を有する長尺なチューブであり、中継コネクタ45における図示しないニードルと留置針5とを連通している。これにより、シリンジ2内から吐出された薬液Wを、チューブ21及び留置針5を通じて使用者の体内に投与することが可能とされている。
なお、留置針5は、本体ケース4を体表面Sに装着している間、使用者に穿刺された状態で体表面Sに留置可能とされている。
【0055】
(シリンジ)
薬液ポンプ3にセットされるシリンジ2について簡単に説明する。
図3に示すように、シリンジ2は、例えばリザーババレル等と称される薬液容器であって、内部に摺動可能に配置されたプランジャ30を備えている。シリンジ2は、シリンジ軸線Rが前後方向L2に対して平行となるように、後述するインナーケース41内に収容されることで保持されている。
【0056】
シリンジ2は、前後方向L2に沿って延びると共に、シリンジ軸線Rを中心とした円筒状に形成され、内部に薬液Wを充填することが可能とされている。具体的には、予め薬液Wが充填された図示しないバイアル(またはアンプルともいう)から薬液Wを移し替えて或いは吸い上げることで、シリンジ2内に充填することが可能とされている。
【0057】
シリンジ2の前端部側には、薬液Wを吐出する口部が形成されている。口部の内側には、該口部を閉塞する例えばゴム栓等の封止栓31が嵌め込まれている。
シリンジ2の後端部側には、開口部が形成されている。プランジャ30は、シリンジ2の開口部を通じて後方BKからシリンジ2内に挿入されている。プランジャ30は、前後方向L2に沿って延びるプランジャ軸32と、プランジャ軸32の前端部に一体に形成された円柱状のガスケット部33と、を備えている。
ガスケット部33は、シリンジ軸線Rに沿ってシリンジ2内を前後摺動可能とされている。なお、ガスケット部33の外周面には、Oリング等のシール部材34が固定されている。これにより、ガスケット部33とシリンジ2との間は、密(液密、気密)にシールされている。
【0058】
(薬液ポンプ)
図2図4図7に示すように薬液ポンプ3は、上述のように構成されたシリンジ2を保持する保持部材40と、シリンジ2におけるプランジャ30に連結されたスライダ50を具備する送り装置60と、を主に備えている。
薬液ポンプ3は、下部ケース10に実装された状態で、本体ケース4内(下部ケース10と上部ケース11との間に画成された内部空間内)に収容される。
【0059】
保持部材40は、本体ケース4を構成する第1ケース部15内に配置され、第1ケースの前壁15a付近に配置されている。保持部材40は、上述したシリンジ2を内部に収容するインナーケース41と、インナーケース41を下部ケース10に対して固定するフランジ片42と、を備えている。
【0060】
インナーケース41は、シリンジ2の外径よりも内径が大きく形成された円筒状に形成されていると共に、前後方向L2に沿って延びるように形成されている。インナーケース41は、シリンジ軸線Rと同軸上に配置され、下部ケース10の底面の上方に間隔をあけた状態で配置されている。なお、インナーケース41の前後方向L2に沿った長さ(全長)は、シリンジ2の全長よりも長く形成されている。
【0061】
インナーケース41は、前後方向L2の両側に開口している。図8に示すように、インナーケース41の前端部側の開口部は、シリンジ2を出し入れするセット口43とされている。このセット口43の内側には、中継コネクタ45を装着する連結ねじ部44が形成されている。
図2に示すように、セット口43には、連結ねじ部44を利用して中継コネクタ45が例えばワンタッチで取り外し可能に装着(螺着)されている。
なお、中継コネクタ45の内側には、セット口43への装着時に、シリンジ2の封止栓31を穿刺してシリンジ2内に連通する図示しないニードルが設けられている。さらに中継コネクタ45には、上記ニードルに連通するチューブ取付部46が形成されている。このチューブ取付部46に注入セット6のチューブ21を取り付けることで、シリンジ2内の薬液Wを留置針5に吐出することができる。
【0062】
図2図4及び図5に示すように、一対のフランジ片42は、インナーケース41の外周面に一体に形成され、インナーケース41を挟んで左右方向L3に並ぶように一対設けられている。一対のフランジ片42は、前後方向L2に延びるプレート状に形成され、下部ケース10の底面から上方に向けて立設されたボス部47に載置された状態で、締結ねじ等を利用して固定されている。
これにより、保持部材40の全体は、下部ケース10の底面の上方に間隔をあけた状態(浮いた状態)で固定される。この際、保持部材40は、インナーケース41のセット口43が、第1ケース部15の前壁15aよりも前方FWに突出するように固定される。
なお、上部ケース11のうち第1ケース部15を構成する部分における頂面には、図1に示すように、インナーケース41の形状に対応して上方に向けて円弧状に膨らんだ膨出部48が前後方向L2に沿って延びるように形成されている。
【0063】
(送り装置)
図2図4図7に示すように、送り装置60は、ウォーム軸61及び羽根車62を備える調速装置63と、ウォーム軸61に伝達する動力(回転トルク)を発生させる第1駆動源64(図13参照)と、送り軸線M回りに回転可能に配置された送りねじ(本発明に係る送り軸部)65と、第1駆動源64で発生した動力をウォーム軸61に伝達すると共に、ウォーム軸61の回転に連動させて送りねじ65を回転させる輪列機構66と、送りねじ65の回転に伴って、送り軸線Mに沿って移動するスライダ(本発明に係る可動体)50と、スライダ50に対して送り軸線Mに沿った駆動力を付与する第2駆動源67と、を備えている。
【0064】
送りねじ65は、前後方向L2に沿って延びる螺軸(リードスクリュー)であって、シリンジ軸線Rと同軸となるように、主に第1ケース部15内に位置するように配置されている。送りねじ65の後端部は、第2ケース部16内に配置されたベース板70によって送り軸線M回りに回転可能に支持されている。
ベース板70は、調速装置63や輪列機構66等の主要構成品を支持するメインの支持基板であり、下部ケース10のうち第2ケース部16を構成する部分の底面に固定されている。ベース板70は、例えば上下方向L1及び左右方向L3に沿った長さが同等とされたプレート状に形成され、上下方向L1に平行になるように固定されている。
【0065】
送りねじ65は、ベース板70の前壁に回転可能に支持されている。この際、送りねじ65は、下部ケース10のうち第1ケース部15を構成する部分の底面から上方に間隔をあけて配置されている。送りねじ65の後端部には、第1送り車71が送りねじ65と一体に固定されている。従って、送りねじ65は、第1送り車71の回転に伴って送り軸線M回りを回転する。なお、第1送り車71は、ベース板70の前壁よりも前方FWに配置されている。
【0066】
スライダ50は、先に述べたプランジャ30と、送りねじ65の前端部との間に位置するように、第1ケース部15内に配置されている。具体的には、スライダ50は、下部ケース10のうち第1ケース部15を構成する部分の底面に固定されたガイド部材80上に配置され、ガイド部材80によって前後方向L2に移動可能にガイドされている。
【0067】
ガイド部材80について先に説明する。
図2図9図11に示すように、ガイド部材80は、左右方向L3に沿った幅よりも前後方向L2に沿った長さの方が長い平面視長方形状に形成され、下部ケース10の底面における左右方向L3の中央部分に固定されている。
ガイド部材80は、底壁部81と、底壁部81の左右両側に配置され、左右方向L3に向かい合う一対のガイド壁部82と、を備えている。一対のガイド壁部82の内壁には、左右方向L3の外側に向けて凹むと共に、前後方向L2に沿って延びるガイド溝83が形成されている。
【0068】
上述のように構成されたガイド部材80は、前端部がシリンジ2を保持する保持部材40の下方に位置し、且つ後端部が送りねじ65の前端部付近の下方に位置するように、下部ケース10の底面に固定されている。
なお、ガイド部材80の前端部には、後述する渦巻きばね110の外端部111を固定するための固定プラグ85が組み合わされている。固定プラグ85は、一対のガイド壁部82の内側に入り込むように、ガイド部材80に対して前方FW側から組み合わされている。固定プラグ85は、底壁部81を上方から覆う頂壁部を有している。頂壁部には、下方に向けて突出する固定ピン86(図10参照)が形成されている。
【0069】
下部ケース10のうち第1ケース部15を構成する部分の底面には、上述したガイド部材80だけでなくベースユニット100が固定されている。
図7図9図11に示すように、ベースユニット100は、ガイド部材80の後方BKに位置し、且つベース板70の前壁よりも前方FWに位置するように配置されている。ベースユニット100は、ガイド部材80の底壁部81に対して略面一に形成された底壁部101と、底壁部101の左右両側に配置され、左右方向L3に向かい合う一対の側壁部102と、底壁部101の後端部側に配置され、一対の側壁部102を左右方向L3に繋ぐ後壁部103と、を備えている。
【0070】
一対の側壁部102には、左右方向L3の外側に向かって突出し、且つ前後方向L2に沿って延びるプレートのフランジ片104がそれぞれ形成されている。一対のフランジ片104は、図2に示すように、下部ケース10の底面から上方に向けて立設されたボス部105に載置された状態で、締結ねじ等を利用して固定されている。
これにより、ベースユニット100の全体は、下部ケース10の底面に固定されている。なお、一対のフランジ片104は、保持部材40における一対のフランジ片42に対して前後方向L2に並ぶように配置されている。さらに、ベースユニット100の一対のフランジ片104は、ガイド部材80側に突出するように前方FWに向けて突出しており、ガイド部材80における一対のガイド壁部82の上端縁に対して上方から接触している。これにより、ベースユニット100は、ガイド部材80を上方から押え込む役割も果たしている。
なお、ベースユニット100は、底壁部101及び一対の側壁部102がガイド部材80に対して後方BKから接触するように固定されている。
【0071】
図10及び図11に示すように、上述のように構成されたベースユニット100には、底壁部101、一対の側壁部102及び後壁部103によって囲まれる部分に、上方に開口した収容空間が形成されている。後壁部103には、該後壁部103を前後方向L2に貫通すると共に、送りねじ65を挿通させる挿通孔106が形成されている。
【0072】
図9図11に示すように、スライダ50は、ガイド部材80の底壁部81上に配置されたスライダ本体51と、ベースユニット100の上記収容空間内に収容された連結部材55と、を備えている。
スライダ本体51は、ガイド部材80の底壁部81上に配置されたスライダ底壁52と、スライダ底壁52の前端部から上方に向かって延びたスライダ前壁53と、左右方向L3に向かい合うように配置された一対のスライダ側壁54と、を備えている。
一対のスライダ側壁54は、ガイド壁部82の内側に配置され、前後方向L2に移動可能に接している。スライダ底壁52は、ガイド部材80に形成されたガイド溝83内に入り込んだ状態で底壁部81上に配置されている。これにより、スライダ本体51の全体は、ガイド溝83によって上方への抜け止めがされた状態で、ガイド部材80によって前後方向L2にがたつき少なくスムーズに移動可能に案内される。
【0073】
スライダ前壁53には、前方FWに向けて突出する複数の連結突起53aが形成されている。さらにスライダ前壁53の下端部側には、該スライダ前壁53を前後方向L2に貫通するスリット状の挿通孔53b(図11参照)が形成されている。挿通孔53bは、左右方向L3に沿って長いスリット状に形成されている。
【0074】
上述のように構成されたスライダ本体51は、スライダ前壁53に対してプランジャ軸32の後端部が連結突起53aを利用して一体に連結されている。従って、スライダ本体51を前方FWに向けて移動させることで、シリンジ2内にプランジャ30を押し込むことが可能とされている。
【0075】
図9に示すように、連結部材55は、ベースユニット100の収容空間に配置された本体部56と、本体部56から前方FWに向けて延びると共に、左右方向L3に向かい合うように配意された一対のアーム部57と、一対のアーム部57の先端部同士を左右方向L3に連結する連結アーム部58と、を備えている。
一対のアーム部57は、フランジ片104よりも上方に配置され、且つスライダ本体51の左右方向L3の外側を回り込みながらスライダ前壁53付近に達するように、本体部56から前方FWに向かうように延びている。連結アーム部58は、スライダ前壁53に対して連結突起53aを利用して一体に連結されている。
【0076】
これにより、連結部材55は、連結アーム部58を介してスライダ本体51に対して一体に組み合わされている。さらに連結部材55の本体部56には、該本体部56を前後方向L2に貫通するように形成され、送りねじ65が螺合する図示しないねじ孔が形成されている。
これにより、送りねじ65が回転することで、スライダ本体51及び連結部材55からなるスライダ50全体が送り軸線M回りに共回りしようとする。しかしながら、スライダ本体51は、ガイド部材80によって前後方向L2に移動可能にガイドされているうえ、連結部材55は収容空間内に配置されている。従って、スライダ50全体は、送り軸線M回りの回転が規制された状態となっている。
【0077】
従って、送りねじ65を回転することで、送りねじ65の回転運動をスライダ50の直線運動に変換することができ、スライダ50全体を前後方向L2に移動させることが可能とされている。これにより、スライダ50を前方FWに移動させて、シリンジ2内にプランジャ30を押し込むことが可能とされている。
【0078】
第2駆動源67は、上述のように構成されたスライダ50に対して送り軸線Mに沿った駆動力を付与する渦巻きばね(本発明に係るばね部材)110を備えている。
図10に示すように渦巻きばね110は、厚みが薄く、且つ所定の幅を有する長尺な帯状の素材(例えば金属製)を渦巻き状に巻回することで構成されている。渦巻きばね110は、中心線が左右方向L3に平行となる姿勢でスライダ本体51のスライダ底壁52上に配置されている。この際、渦巻きばね110の外端部111は、スライダ前壁53に形成された挿通孔53bを通じて前方FWに向けて引き出されると共に、ガイド部材80の前端部側まで達している。そして、渦巻きばね110の外端部111は、外端部111側に形成された固定孔111aに、固定プラグ85の固定ピン86が嵌合されることで、固定されている。
【0079】
従って、渦巻きばね110には、外端部111側を巻き取って、元の状態に復元するような弾性復元力が作用している。そのため、この弾性復元力を利用して、渦巻きばね110のうちスライダ底壁52上に配置されている巻回部分112側を前方FW側に移動させることが可能とされている。これにより、第2駆動源67は、渦巻きばね110の弾性復元力を利用して、スライダ50の全体に対して前方FWに向けて移動させるような駆動力を付与することが可能とされている。
【0080】
なお、渦巻きばね110は、例えばコイルばね等に比べて、伸びた状態から巻回によって元の状態に復元する間の弾性復元力がほぼ一定となる特性を有しており、いわゆる定荷重ばねとして好適に利用することが可能とされている。従って、本実施形態では、予め決められた一定の駆動力でスライダ50を押圧可能とされている。
【0081】
図2図4図6に示すように、ベース板70の後壁には、各種構成品を取り付けるための固定ベース180が複数の締結ねじ等によって固定されている。固定ベース180は、例えば射出成形等によって成形された合成樹脂製、或いは削り出し加工等によって形成された金属製等とされ、所定の凹凸等を有するプレート状に形成されている。
図12に示すように、固定ベース180の一部には、第1駆動源64を保護する保護ケース181が複数の締結ねじ等によって組み合わされている。保護ケース181は、固定ベース180と同様に合成樹脂製或いは金属製とされ、後方BK側を向いた平坦なフラット面181aを有する有頂筒状に形成されている。
【0082】
保護ケース181の内側には、図13に示すように、有頂筒状に形成された収容ケース182と、収容ケース182と固定ベース180との間に配置された第1ベベルギア183と、収容ケース182内に収容されたぜんまい184とが少なくとも配置されている。
【0083】
収容ケース182は、駆動軸線C1を中心とした有頂筒状に形成され、頂壁182aが後方BKを向くように配置されている。収容ケース182内には、駆動軸線C1と同軸に配置された駆動軸部185が配置されている。駆動軸部185は、前後方向L2に延びるように形成され、送りねじ65と同じ高さで、且つ左右方向L3に間隔をあけて配置されるように配置されている。駆動軸部185は、ベース板70及び収容ケース182の頂壁182a及び保護ケース181のフラット面181aをそれぞれ前後方向L2に貫通するように、前後方向L2に長く形成されている。
従って、駆動軸部185は、図7及び図12に示すように、前端部がベース板70よりも前方FW側に突出し、且つ後端部が保護ケース181よりも後方BK側に突出している。
【0084】
図13に示すように、ぜんまい184は、機械式時計において利用されるものと同等とされ、渦巻き状に形成されていると共に、巻き解けによって動力を発生させる。
ぜんまい184は、外端部が収容ケース182の内側に取り付けられ、内端部が駆動軸部185に係止されている。これにより、駆動軸部185を駆動軸線C1回りに回転させることで、ぜんまい184を縮径させるように巻き上げることが可能とされている。
さらに、駆動軸部185にぜんまい184の内端部が係止されているので、ぜんまい184が拡径するように巻き解けることで、駆動軸部185を駆動軸線C1回りに回転させる。
【0085】
第1ベベルギア183は、駆動軸部185の回転に伴って駆動軸線C1回りを回転可能とされている。この際、駆動軸部185と第1ベベルギア183との間には、ぜんまい184を巻き上げる方向に駆動軸部185を回転させたときに、第1ベベルギア183に対して駆動軸部185を空回りさせ、且つぜんまい184の巻き解けに伴って駆動軸部185が回転したときに、第1ベベルギア183と駆動軸部185とを共回りさせるワンウェイクラッチ等の図示しないクラッチ機構が設けられている。これにより、第1ベベルギア183は、ぜんまい184が巻き解ける場合にのみ回転するように構成されている。
【0086】
上述のように構成されたぜんまい184及び収容ケース182は、ウォーム軸61に伝達する動力(回転トルク)を発生させる第1駆動源64として機能する。
なお、駆動軸部185は、先に述べたように前端部がベース板70よりも前方FWに突出している。図7に示すように、駆動軸部185の前端部には、第1送り車71に噛み合う第2送り車186が固定されている。
なお、駆動軸部185と第2送り車186との間にも、上述したクラッチ機構が設けられている。これにより、第2送り車186は、ぜんまい184が巻き解ける場合にのみ回転するように構成されている。
【0087】
このように構成されているため、第1ベベルギア183及び駆動軸部185の回転に伴って、第2送り車186を回転させることができ、それによって第1送り車71を回転させることができる。
【0088】
図13に示すように、収容ケース182の頂壁182aには、後方BKに向けて複数の連結ピン187が延びるように形成されている。収容ケース182は、これら連結ピン187によって位置決めされた状態で保護ケース181の内側に収容されている。これにより、収容ケース182は、保護ケース181を介して固定ベース180に固定されている。
【0089】
図12に示すように、駆動軸部185の後端部には、ナット状の巻上カラー188が駆動軸部185に対して移動不能に固定されている。図1に示すように、巻上カラー188は、本体ケース4を構成する第2ケース部16の後壁16aに形成された巻上口189を通じて前方FWに露出している。これにより、巻上口189を通じて、巻上カラー188を巻上操作することができ、駆動軸部185を介してぜんまい184を巻き上げることができる。
【0090】
(調速装置)
図12に示すように、調速装置63は、ぜんまい184によって発生した動力(回転トルク)に基づいて、回転軸線C2回りに回転すると共に、動力に対応した回転速度で回転するウォーム軸(本発明に係る回転軸部)61と、ウォーム軸61に設けられると共にウォーム軸61と共に回転軸線C2回りを回転可能とされ、且つ回転速度に応じた回転抵抗を発生させる羽根車62と、羽根車62に対して接近離間するように配置された制動部材200と、羽根車62の回転と停止とを切り換える回転制御部材210と、を備えている。
【0091】
図14図17に示すように、ウォーム軸61は、前後方向L2に延びるように形成され、ベース板70よりも後方BKに向けて突出するように固定ベース180に軸支されている。従って、回転軸線C2は、前後方向L2に延びる軸線とされている。本実施形態では、ウォーム軸61は、駆動軸部185と同等の高さに位置し、収容ケース182に対して左右方向L3に離間した位置に配置されている。なお、ウォーム軸61の外周面には、螺旋状のウォーム溝が形成されている。
【0092】
このように構成されたウォーム軸61は、第1中間車220、第2中間車230及び第3中間車240を介して、ぜんまい184によって発生した動力が伝達されることで回転する。
【0093】
図13図15に示すように、第1中間車220は、収容ケース182の上方に配置され、上下方向L1に延びる第1軸線O1回りを回転可能とされている。第1中間車220は、ベース板70の後壁に固定された支持フレーム72によって回転可能に支持されている。第1中間車220は、第1ベベルギア183に噛み合う第2ベベルギア221と、第1中間歯車222とを備えている。
これにより、第1中間車220は、駆動軸部185の回転に伴って回転する第1ベベルギア183の回転を受けて、第1ベベルギア183の回転方向とは異なる第1軸線O1回りに回転する。
【0094】
第2中間車230は、上下方向L1に延びる第2軸線O2回りを回転可能とされている。第2中間車230は、固定ベース180によって回転可能に支持されている。第2中間車230は、第1中間歯車222に噛み合う第2中間かな231と、第2中間歯車232とを備えている。これにより、第2中間車230は、第1中間車220の回転に伴って第2軸線O2回りを回転する。
【0095】
図14図16に示すように、第3中間車240は、上下方向L1に延びる第3軸線O3回りを回転可能とされている。第3中間車240は、固定ベース180によって回転可能に支持されている。第3中間車240は、第2中間歯車232に噛み合う第3中間かな241と、ウォーム軸61におけるウォーム溝に噛み合う第3中間歯車242とを備えている。これにより、第3中間車240は、第2中間車230の回転に伴って第3軸線O3回りを回転すると共に、ウォーム軸61を回転軸線C2回りに回転させることが可能とされている。
【0096】
従って、ぜんまい184の巻き解けによって発生した動力(回転トルク)を、駆動軸部185、第1ベベルギア183、第1中間車220、第2中間車230及び第3中間車240を介してウォーム軸61に伝達することでき、ウォーム軸61を動力に対応した回転速度で回転させることが可能とされている。
さらに、駆動軸部185が回転することで、第1送り車71及び第2送り車186を介して送りねじ65を回転させることができるので、ウォーム軸61の回転に連動させて送りねじ65を回転させることが可能とされている(図7参照)。
【0097】
従って、第1ベベルギア183、第1中間車220、第2中間車230、第3中間車240、第1送り車71及び第2送り車186は、ぜんまい184で発生した動力をウォーム軸61に伝達すると共に、ウォーム軸61の回転に連動させて送りねじ65を回転させる輪列機構66として機能する。
【0098】
(調速装置)
以下、調速装置63について詳細に説明する。
(羽根車)
図14図17に示すように、羽根車62は、ウォーム軸61の後端部側に一体に組み合わされ、ウォーム軸61と共に回転する。なお、回転軸線C2方向から見て、回転軸線C2に対して交差する方向を径方向といい、回転軸線C2回りを周回する方向を周方向という。本実施形態の羽根車62は、回転速度の増加に伴って後方BK側に位置する制動部材200に向けて変位するように構成されている。
【0099】
羽根車62は、ウォーム軸61に固定された円柱状の軸体250と、回転速度に応じた回転抵抗(空気抵抗)を発生させると共に、回転に伴う遠心力によって後方BK側に向けて変位する複数の羽根部251と、複数の羽根部251と軸体250との間にそれぞれ配置され、複数の羽根部251を弾性変位可能に支持する弾性支持部252と、を備えている。
羽根車62の材質は、特に限定されるものではないが、例えば合成ゴム製とされている。ただし、羽根車62の全体が合成ゴムで形成されている必要はなく、少なくとも弾性支持部252が合成ゴムで形成されることで弾性変位可能とされていれば構わない。
【0100】
本実施形態では、羽根車62は、周方向に等間隔に配置された2つの羽根部251を具備している。ただし、羽根部251の数は、この場合に限定されるものではなく、例えば1つでも構わないし、3つ以上の複数であっても構わない。2つの羽根部251は、ウォーム軸61の回転に伴って空気抵抗を受けながら回転する。これにより、羽根車62は、ウォーム軸61の回転速度に応じた回転抵抗を付与することが可能とされている。
さらに2つの羽根部251は、回転に伴う遠心力によって径方向の外側に引っ張られながら、後方BKに向けて浮き上がるような応力を受けるように設計されている。これにより、2つの羽根部251は、弾性支持部252を弾性変位(弾性変形)させながら、後方BKに向けて変位可能とされている。
【0101】
なお、羽根部251の後端面には、後方BKに向けて突出するように膨らんだ膨出部253が形成されている。膨出部253の表面は、例えば表面加工、表面処理等によって、接触抵抗(摩擦抵抗)を低減させる処理が施されている。
ウォーム軸61には、羽根車62よりも後方BKに向けて突出すると共に小径に形成された先端軸61aが形成されている。先端軸61aの最先端部は、球状に形成されている。
【0102】
(制動部材)
図14図15及び図17に示すように、制動部材200は、羽根部251が後方BKに向けて変位したときに、羽根部251が摺接する速度調整ノブ(本発明に係る制動プレート)260と、速度調整ノブ260を前後方向L2に移動可能に支持する案内ねじ(本発明に係る案内軸部)270と、を備えている。
【0103】
速度調整ノブ260及び案内ねじ270は、回転軸線C2と同軸上に配置され、ウォーム軸61よりも後方BK側に配置されている。案内ねじ270は、前後方向L2に延びるように形成され、外周面に雄ねじ部が形成された止めねじ、いわゆるイモねじとされている。本実施形態では、案内ねじ270の後端部及び先端部は、いずれも平坦に形成されている。
【0104】
図12及び図14に示すように、案内ねじ270は、保護ケース181に一体的に連結された連結プレート271に一体に組み合わされている。
連結プレート271は、保護ケース181におけるフラット面181aに重なるように配置され、左右方向L3に延びるように形成されている。連結プレート271には、該連結プレート271を前後方向L2に貫通するように形成され、駆動軸部185を挿通させる挿通孔が形成されていると共に、収容ケース182から後方BKに向けて突出した固定ピン86を利用して保護ケース181に一体的に組み合わされている。
なお、駆動軸部185に固定された巻上カラー188は、連結プレート271よりも後方BKに配置されている。
【0105】
図17に示すように、案内ねじ270の前端面には、ウォーム軸61における先端軸61aの最先端部が接触すると共に、ウォーム軸61を回転軸線C2回りに回転支持する軸受部270aが形成されている。軸受部270aは、前方FWに開口した収容凹部とされ、例えばウォーム軸61における先端軸61aの最先端部を球面保持することが可能とされている。
これにより、ウォーム軸61は、前後方向L2の両端部が軸支され、回転軸線C2回りを安定して回転する。
【0106】
図12及び図14に示すように、連結プレート271には、連結プレート271を前後方向L2に貫通すると共に、案内ねじ270の雄ねじが螺合する図示しないねじ孔が形成されている。そして、案内ねじ270は、ねじ孔に螺合することで、連結プレート271に一体に組み合わされている。さらに、案内ねじ270の後端部には、ナット部材272が螺着されており、連結プレート271に対する案内ねじ270の回転を規制している。これにより、案内ねじ270は、回転軸線C2回りの回転が規制された状態で連結プレート271に組み合わされている。
【0107】
速度調整ノブ260は、連結プレート271とウォーム軸61との間に配置され、案内ねじ270の雄ねじ部に螺着され、回転軸線C2回りの回転によって回転軸線C2の軸線方向に移動可能とされている。つまり、速度調整ノブ260を回転操作することで、羽根車62に対して接近離間するように前後方向L2に移動させることが可能とされている。
【0108】
図17に示すように、速度調整ノブ260は、平面視円形状に形成されたノブ本体261と、ノブ本体261の外周縁部から前方FWに向かって突出した周壁部262と、を備えている。ノブ本体261の中央部分には、該ノブ本体261を前後方向L2に貫通すると共に、案内ねじ270の雄ねじ部に螺合するねじ孔263が形成されている。
周壁部262の外周面には、例えばローレット加工等が施されており、指先を滑らすことなく速度調整ノブ260を回転操作することが可能とされている。
【0109】
速度調整ノブ260は、羽根部251に形成された膨出部253に対して、周壁部262の前端縁が前後方向L2に対向するサイズに形成されている。これにより、羽根部251が遠心力によって後方BKに変位したときに、速度調整ノブ260の周壁部262に対して膨出部253を前方FWから摺接させることが可能とされている。
【0110】
上述のように構成された案内ねじ270の雄ねじ部と、速度調整ノブ260の雌ねじ部との間には、速度調整ノブ260に対する羽根車62の摺接時に、案内ねじ270に対して速度調整ノブ260が相対移動(相対回転)することを抑制する抵抗力を発生させる抵抗部275が設けられている。
具体的には、図17に示すように、例えば案内ねじ270の雌ねじ部の全体に、所定の粘度を有する粘着剤が抵抗部275として塗布されている。これにより、速度調整ノブ260に羽根車62が摺接したときに、案内ねじ270に対して速度調整ノブ260が連れ回りすることを抑制することができる。
【0111】
(回転制御部材)
図12に示すように、回転制御部材210は、ストッパ部材300と、ストッパ部材300を前後方向L2に移動させる操作部材310と、を主に備え、羽根車62の回転と停止とを切り換えるユニットとされている。
回転制御部材210は、ストッパホルダ320を介してベース板70及び固定ベース180に組み合わされ、主にベース板70よりも後方BKに位置し、且つ羽根車62を挟んで保護ケース181とは左右方向L3の反対側に位置するように配置されている。
【0112】
ストッパホルダ320は、例えば射出成形等によって成形された合成樹脂製、或いは削り出し加工等によって形成された金属製等とされ、概略L字状に形成されている。
具体的には、図12及び図18に示すように、ストッパホルダ320は、ベース板70よりも左右方向L3の外側に配置され、ウォーム軸61及び羽根車62を挟んで保護ケース181とは左右方向L3の反対側に配置されたホルダ側壁321と、ホルダ側壁321の下端部から保護ケース181側に向かって延びると共に、ウォーム軸61及び羽根車62よりも下方に配置されたホルダ底壁322と、を備えている。
【0113】
ホルダ側壁321には、該ホルダ側壁321を左右方向L3に貫通する収容開口部323が形成されている。これにより、ホルダ側壁321のうち収容開口部323よりも前方FW側に位置する部分は、前方フレーム部321aとして機能し、ホルダ側壁321のうち収容開口部323よりも後方BK側に位置する部分は、後方フレーム部321bとして機能する。
なお、収容開口部323は、ホルダ側壁321を左右方向L3から見たときに、収容開口部323の内側に羽根車62が覗き見えるように形成されている。
【0114】
後方フレーム部321bには、前方フレーム部321aに向けて突出する第1規制片325が形成されている。前方フレーム部321aには、後方フレーム部321bに向けて突出すると共に、第1規制片325に対して前後方向L2に向かい合うよう配置された第2規制片326が形成されている。
なお、収容開口部323のうち、第1規制片325及び第2規制片326よりも上方に位置する部分を上方収容部323aといい、第1規制片325及び第2規制片326よりも下方に位置する部分を下方収容部323bという。
【0115】
ホルダ底壁322のうち保護ケース181側に位置する部分には、上方に向けて突出すると共に、前後方向L2に間隔をあけて配置された一対の支持ブロック330が形成されている。一方の支持ブロック330には、上方に向けて開口すると共に他方の支持ブロック330に向けて開口する支持孔331が形成されている。同様に、他方の支持ブロック330には、上方に向けて開口すると共に一方の支持ブロック330に向けて開口する支持孔331が形成されている。
さらにホルダ底壁322には、該ホルダ底壁322を上下方向L1に貫通するばね孔332が形成されている。
【0116】
上述のように構成されたストッパホルダ320は、ベース板70及び固定ベース180に組み合わされた状態で、第2ケース部16内に収容されている。ホルダ底壁322は、下部ケース10のうち第2ケース部16を構成する部分の底面上に、複数の脚部335を介して載置されている。
【0117】
図12図19及び図20に示すように、ストッパ部材300は、収容開口部323のうち上方収容部323a内に配置されている。
操作部材310は、羽根車62に対してストッパ部材300を接触させて羽根車62の回転を停止させる回転停止位置P1(図20参照)と、羽根車62からストッパ部材300を離間させて羽根車62の回転を許容する回転許容位置P2(図19参照)との間で、ストッパ部材300を前後方向L2に移動させる役割を果たしている。
さらに操作部材310は、ストッパ部材300が回転停止位置P1に位置しているときに、羽根車62に対するストッパ部材300の接触を一時的に解除して、所定の回転角度分、羽根車62を回転させる間欠回転操作が許容されるように構成されている。
【0118】
以下に、ストッパ部材300及び操作部材310について、詳細に説明する。
操作部材310は、ウォーム軸61の回転軸線C2に対して平行な操作軸線C3に沿って移動可能に配置され、ストッパ部材300が固定された操作ロッド(本発明に係る操作軸部)340と、操作軸線C3に沿った操作ロッド340のスライド操作及び操作軸線C3回りの操作ロッド340の回転操作を行う切換操作ノブ(本発明に係る操作部)350と、を備えている。
なお、操作軸線C3方向から見て、操作軸線C3に対して交差する方向を径方向といい、操作軸線C3回りを周回する方向を周方向という。
【0119】
操作ロッド340は、前後方向L2に延びるように形成され、後方フレーム部321b及び前方フレーム部321aをそれぞれ前後方向L2に貫通するようにストッパホルダ320に組み合わされている。この際、操作ロッド340は、収容開口部323のうち上方収容部323aを前後方向L2に貫くように配置されている。さらに操作ロッド340は、後方フレーム部321b及び前方フレーム部321aによって、前後方向L2へのスライド移動及び操作軸線C3回りの回転が許容された状態で支持されている。
【0120】
操作ロッド340は、後方フレーム部321bよりも後方BKに突出し、且つ前方フレーム部321aよりも前方FWに突出する長さで形成されている。
操作ロッド340の後端部には、切換操作ノブ350が固定されている。切換操作ノブ350は、例えば速度調整ノブ260と同等のサイズに形成された円板状に形成されている。切換操作ノブ350の外周面には、例えばローレット加工等が施されており、指先を滑らすことなく切換操作ノブ350を回転操作することが可能とされている。
【0121】
なお、操作ロッド340の後端部側は、図1に示すように、本体ケース4を構成する第2ケース部16の後壁16aよりも後方BKに突出している。従って、切換操作ノブ350は、後壁16aよりも後方BKに配置されており、使用者が切換操作ノブ350を介して操作部材310を操作することが可能とされている。
図19及び図20に示すように、操作ロッド340の前端部側には、操作ロッド340における他の部分よりも縮径した第1縮径部341及び第2縮径部342が前後方向L2に間隔をあけて形成されている。
【0122】
ストッパ部材300は、上述のように構成された操作ロッド340に固定され、収容開口部323のうち上方収容部323a内に配置されている。従って、ストッパ部材300は、操作部材310の操作によって、上方収容部323a内において、前後方向L2へのスライド移動及び操作軸線C3回りの回転が可能とされる。
ストッパ部材300は、径方向に延びると共に、周方向に等間隔をあけて配置された複数のストッパ片301を備えている。本実施形態では、ストッパ部材300は操作軸線C3を中心として90度の間隔をあけて配置された4つのストッパ片301を備えている。ただし、ストッパ片301の数は、4つに限定されるものではなく、例えば1つでも構わないし、4つ以外の複数であっても構わない。
【0123】
図19及び図21に示すように、回転許容位置P2とは、ストッパ部材300が羽根車62よりも前方FWに配置され、羽根部251に対してストッパ片301が前方FWに離間している位置とされている。これに対して、回転停止位置P1とは、図20及び図22に示すように、羽根部251に対してストッパ片301が周方向に対向配置されることで互いに接触し、羽根車62の回転を停止する位置とされている。
図19図21に示すように、ストッパ部材300は、切換操作ノブ350によって操作ロッド340を前後方向L2にスライド操作することによって、回転停止位置P1と回転許容位置P2との間を移動する。本実施形態では、切換操作ノブ350を前方FW、すなわち本体ケース4側に向けて押込み操作することで、ストッパ部材300を回転許容位置P2に切り換えることができ、切換操作ノブ350を後方BK、すなわち本体ケース4から離間するように引張操作することで、ストッパ部材300を回転停止位置P1に切り換えることができる。
【0124】
図19及び図20に示すように、後方フレーム部321bには、ストッパ部材300を回転停止位置P1及び回転許容位置P2にそれぞれ位置決めさせるボールプランジャ(本発明に係る位置決め部材)360が設けられている。
ボールプランジャ360は、後方フレーム部321bに形成された縦孔内に配置されている。ボールプランジャ360は、操作ロッド340の外周面に対して上方から接触するボール361と、ボール361の上方に配置され、操作ロッド340の外周面に対してボール361を押し付けるコイルばね362と、を備えている。
【0125】
図19に示すように、操作ロッド340の第1縮径部341は、ストッパ部材300が回転許容位置P2に位置したときに、ボール361の下方に位置するように形成されている。図20に示すように、操作ロッド340の第2縮径部342は、ストッパ部材300が回転停止位置P1に位置したときに、ボール361の下方に位置するように形成されている。
これにより、ストッパ部材300が回転許容位置P2に位置したときに、第1縮径部341に対してボール361を押し付けることができ、回転許容位置P2に位置決めすることが可能とされている。同様に、ストッパ部材300が回転停止位置P1に位置したときに、第2縮径部342に対してボール361を押し付けることができ、回転停止位置P1に位置決めすることが可能とされている。
【0126】
図21に示すように、ストッパ部材300における各ストッパ片301には、ストッパ部材300が回転許容位置P2に位置している状態において、後方BKに向かって(羽根車62に向かって)突出する突起ピン302が形成されている。突起ピン302は、ストッパ片301の外端縁から後方BKに向かって突出するように形成されている。この際、突起ピン302は、先端に向かうにしたがって細径化するように形成されている。図示の例では、突起ピン302は、先端に向かうにしたがって漸次縮径する円錐台状に形成されている。
ただし、突起ピン302の形状は、円錐台状に限定されるものではなく、先端に向かうにしたがって細径化するように形成されていれば、形状を適宜変更して構わない。
【0127】
一方、羽根車62における各羽根部251の外表面には、突起ピン302に対して前後方向L2に向かい合う部分に、突起ピン302の先端部を滑らす滑面251aが形成されている。これにより、ストッパ部材300を回転許容位置P2から回転停止位置P1に切り換える際に、滑面251aを利用して突起ピン302を滑らすことができ、羽根車62とストッパ部材300とが咬みあうような不具合を生じ難くさせることができる。
【0128】
ストッパ部材300は、先に述べたように、図20及び図22に示すように、回転停止位置P1に位置したときに羽根部251に対してストッパ片301が周方向に対向配置されることで羽根車62の回転を停止する。
具体的には、ストッパ片301は、ストッパ部材300が回転許容位置P2から回転停止位置P1に移行する過程において、前方FWから後方BKに向けて移動する。これにより、ストッパ片301を羽根車62の回転軌跡N(図22参照)内に進入させることができ、回転軌跡Nの内側において羽根部251に対して周方向に対向配置させることができる。これにより、羽根部251とストッパ片301とを互いに接触させることができ、羽根車62の回転を停止させることが可能とされている。
【0129】
ところで、切換操作ノブ350を操作軸線C3回りに回転させることで、操作ロッド340と共にストッパ部材300を回転操作することができる。これにより、回転停止位置P1に位置している状態において、ストッパ片301を羽根部251に対して周方向に対向配置させる対向位置と、対向位置からストッパ片301を羽根車62の回転軌跡Nの外側に一時的に退避させる退避位置との間で、ストッパ片301の位置を切換え可能とされている。
【0130】
本実施形態では、切換操作ノブ350を回転操作する際、後述する保持プレート370によって、操作軸線C3を中心として一方向への回転が許容され、且つその反対方向への回転が規制されるように構成されている。従って、切換操作ノブ350を一方向に回転操作したときだけ、操作ロッド340を回転させることができ、それによってストッパ片301を対向位置と退避位置とに切り換えることが可能とされている。
具体的には、切換操作ノブ350を後方BKから見た時に、切換操作ノブ350を反時計方向に回転したときだけ回転が許容され、それによってストッパ片301を対向位置と退避位置とに切り換えることが可能とされている。
【0131】
なお、本実施形態では、ストッパ部材300が周方向に等間隔に配置された4つのストッパ片301を具備しているため、いずれか1つのストッパ片301が対向位置に位置したときに、残りの3つのストッパ片301は退避位置に位置している。
4つのストッパ片301のうち、図22に示す状態において対向位置に位置しているストッパ片301を第1ストッパ片301aといい、第1ストッパ片301aから反時計方向に向かう順に、第2ストッパ片301b、第3ストッパ片301c、第4ストッパ片301dという。
【0132】
図18図22に示すように、ストッパホルダ320におけるホルダ底壁322には、ストッパ片301の1つ(第1ストッパ片301a)が対向位置に位置している状態のストッパ部材300を保持する保持プレート(本発明に係る保持具)370が配置されている。
保持プレート370は、前後方向L2に沿った長さよりも左右方向L3に沿った長さの方が長い平面視長方形状に形成されている。保持プレート370のうち左右方向L3の一端部には、前後方向L2に延びる回動ピン371が一体に形成されている。回動ピン371は、一対の支持ブロック330に形成された支持孔331内に回転可能に支持されている。
【0133】
これにより、保持プレート370は、回動ピン371を中心として上下方向L1に回動可能とされている。さらに、ホルダ底壁322に形成されたばね孔332には、コイルばね380が圧縮状態で配置されている。コイルばね380は、下端部が下部ケース10の底面に接触し、上端部が保持プレート370の下面に接触している。これにより、保持プレート370は、コイルばね380による弾性復元力によって、常に上方に押上げられるように付勢されている。
【0134】
保持プレート370のうち回動ピン371とは左右方向L3の反対に位置する他端部は、ホルダ側壁321に形成された下方収容部323b内に入り込んでいる。さらに保持プレート370の他端部には、後方BK及び前方FWに向けて突出すると共に、第1規制片325及び第2規制片326に対して下方から接触する規制突起372が形成されている。
保持プレート370は、第1規制片325及び第2規制片326に対して規制突起372が下方から接触することで、それ以上の上方への押上げが規制されている。
【0135】
さらに保持プレート370の上面には、上方に向けて突出する第1案内突起375及び第2案内突起376が左右方向L3に間隔をあけて形成されている。第1案内突起375及び第2案内突起376は、前後方向L2に沿って延びるように形成されている。
第1案内突起375は、操作軸線C3よりも回動ピン371側に配置され、第2案内突起376側に向いた垂直面375aを有している。第2案内突起376は、操作軸線C3よりも規制突起372側に配置され、第1案内突起375側に向いた傾斜面376aを有している。
【0136】
垂直面375aの下端部と傾斜面376aの下端部とは、前後方向L2に亘って互いに連設されている。なお、連設部分377は、下方に向けて断面視円弧状に窪むように形成されている。傾斜面376aは、上記連設部分377から規制突起372側に向かうにしたがって上方に向けて延びるように傾斜している。なお、傾斜面376aは一定の傾斜角度で傾斜するように形成されている。
【0137】
上述のように構成された保持プレート370は、図21及び図22に示すように、コイルばね380によって上方に押上げられることで、第2ストッパ片301bを連設部分377に入り込ませ、これによってストッパ部材300を保持している。これにより、第1ストッパ片301aを対向位置に位置させた状態で、ストッパ部材300を保持することができる。
特に、第1案内突起375の垂直面375aが第2ストッパ片301bの時計方向側に配置されているので、操作軸線C3を中心としてストッパ部材300が時計方向側に回転することを規制することができる。これに対して、第2案内突起376の傾斜面376aが第2ストッパ片301bの反時計方向側に配置されているので、操作軸線C3を中心としてストッパ部材300が反時計方向側に回転することを許容することができる。この場合には、第2ストッパ片301bがコイルばね380の付勢に抗して保持プレート370を下方に押下げながら、傾斜面376a上を滑るように移動しながら回転する。
【0138】
図22に示すように、上述した保持プレート370を利用することで、切換操作ノブ350を反時計方向に回転したときだけ回転を許容することができ、それによってストッパ部材300の保持を解除することが可能とされている。これにより、第1ストッパ片301aを対向位置から回転軌跡Nの外側に退避させることができ、第1案内突起375の垂直面375aと第2案内突起376の傾斜面376aとの連設部分377に移動させることができる。つまり、第1ストッパ片301aを退避位置に位置させることができる。
【0139】
なお、第1ストッパ片301aが対向位置に位置している際、第4ストッパ片301dが回転軌跡N付近に待機している。そのため、切換操作ノブ350の回転によって、対向位置に位置している第1ストッパ片301aを回転軌跡Nの外側に退避させて連設部分377に移動させたときに、第4ストッパ片301dを回転軌跡N内に進入させて対向位置に速やかに移動させることが可能とされている。
【0140】
なお、図21に示すように、保持プレート370に形成された第1案内突起375及び第2案内突起376は、前後方向L2に沿って形成されているので、第1案内突起375の垂直面375aと第2案内突起376の傾斜面376aとの連設部分377についても、前後方向L2に長く形成されている。これにより、ストッパ部材300が回転許容位置P2及び回転停止位置P1のいずれに位置している場合であっても、例えば第1ストッパ片301aを連設部分377に入り込ませた状態を維持することができる。
【0141】
なお、第2案内突起376の傾斜面376aには、図21に示すように、ストッパ部材300が回転許容位置P2に位置しているときに、ストッパ片301の反時計方向への移動を規制する規制ブロック378が形成されている。これにより、ストッパ部材300が回転許容位置P2に位置している場合には、時計方向及び反時計方向のいずれの方向についても、切換操作ノブ350の回転操作が規制されている。
【0142】
(薬液投与装置の作用)
次に、上述のように構成された薬液投与装置1を使用して、使用者の体内に薬液Wを投与する場合について説明する。
【0143】
なお、この場合の初期状態として、図1に示すように薬液投与装置1が使用者の体表面Sに装着され、留置針5が体内に穿刺された状態で体表面Sに留置されているものとする。さらに、薬液Wが充填されたシリンジ2が薬液ポンプ3にセットされているものとする。さらに、プランジャ30が押し込み開始位置にセットされていると共に、ぜんまい184が適切に巻き上げられて動力を蓄えているものとする。
【0144】
さらに、切換操作ノブ350が後方BKに引き出され、ストッパ部材300が回転停止位置P1に位置しているものとする(図1では、切換操作ノブ350が押し込まれている状態を図示している)。これにより、羽根車62の回転が停止されているので、ウォーム軸61及び輪列機構66が停止され、ぜんまい184の巻き解けが規制される。これにより、送りねじ65が回転することがないので、シリンジ2内にプランジャ30が押し込まれることがない。従って、シリンジ2内からの薬液Wの吐出が停止された状態となっている。
【0145】
上述の初期状態のもと、使用者が薬液Wの投与を行う場合には、切換操作ノブ350を前方FW側に向けて押し込み操作する。これにより、図12及び図19に示すように、操作ロッド340を介してストッパ部材300を回転許容位置P2に移動させることができ、羽根部251からストッパ片301を前方FWに離間させることができる。そのため、羽根車62の回転を許容することができる。
なお、操作ロッド340は、ボールプランジャ360によって第1縮径部341が上方から押圧されることで、前後方向L2への移動が抑制される。これにより、回転許容位置P2にストッパ部材300を位置決めすることができる。
【0146】
ストッパ部材300が回転許容位置P2に位置すると、ぜんまい184の巻き解けによって発生する動力(回転トルク)を、図13及び図15に示すように、第1ベベルギア183、第1中間車220、第2中間車230及び第3中間車240を介してウォーム軸61に伝達することができる。これにより、ウォーム軸61及び羽根車62を動力に対応した回転速度で回転させることができ、羽根車62を利用して、回転速度に応じた空気抵抗等の回転抵抗を発生させることができる。従って、羽根車62によって発生した回転抵抗を利用して、ウォーム軸61を所定の回転速度(例えば2000~3000rpm等)で回転させることができる。
【0147】
また、ぜんまい184の巻き解けによって発生する動力(回転トルク)は、図2に示すように、駆動軸部185、第1送り車71、第2送り車186を介して送りねじ65にも伝達されるので、送りねじ65を回転させることができる。つまり、輪列機構66を利用して、ウォーム軸61の回転に連動させて送りねじ65を回転させることができる。この際、輪列機構66によって例えば2000~3000倍の減速比で送りねじ65を回転させることができるので、送りねじ65を例えば1rpm程度のゆっくりとした回転速度で回転させることが可能となる。
【0148】
送りねじ65の回転運動は、スライダ50によって該スライダ50の直線運動に変換される。従って、送りねじ65の回転に伴って、渦巻きばね110の弾性復元力による駆動力を利用して、スライダ50を前方FWに向けて一定の送り速度で移動させることができる。そのため、一定の送り速度でシリンジ2内にプランジャ30を押し込むことができ、シリンジ2内から薬液Wを吐出することができる。これにより、シリンジ2内から吐出された薬液Wを、留置針5を通じて使用者に投与することができる。
【0149】
特に、本実施形態の薬液投与装置1によれば、調速装置63が制動部材200を有しているので、送りねじ65の回転速度を適宜変化させることができ、任意の回転速度に調整することができる。この点について詳細に説明する。
図14に示すように、ウォーム軸61は、伝達されるぜんまい184からの動力の強さに応じた回転速度で回転するので、例えばぜんまい184の巻上力が強い場合には、それに伴ってウォーム軸61及び羽根車62の回転速度も高くなってしまう。羽根車62は、回転速度の増加に伴って図17に示す矢印F1の如く速度調整ノブ260側に変位するので、回転速度が高いほど速度調整ノブ260側への変位量も大きくなる。
【0150】
具体的には、回転速度が高いほど羽根部251に作用する遠心力が大きくなるので、羽根部251が弾性支持部252を弾性変位(弾性変形)させながら、後方BKに向けて浮き上がるように変位する。これにより、ウォーム軸61の回転速度に対応して、羽根部251を変位させ、膨出部253を速度調整ノブ260に対して強く摺接させることができる。そのため、羽根車62のそれ以上の変位を抑制して、回転速度の増加を抑制することができる。従って、ウォーム軸61に伝達される動力が大きい場合であっても、ウォーム軸61を所定の回転速度で回転させることができる。
【0151】
さらに、案内ねじ270に対して速度調整ノブ260を回転操作することで、速度調整ノブ260を前後方向L2に移動させることができるので、羽根車62に対して速度調整ノブ260を接近離間させることができる。これにより、速度調整ノブ260と羽根車62との間の前後方向L2の間隔を任意に変化させることができる。従って、速度調整ノブ260に対する羽根車62の摺接タイミングを任意に調整することができ、羽根車62の回転速度の上限値を調整することができる。
【0152】
その結果、ウォーム軸61に伝達される動力の強さ、及び羽根車62による回転抵抗に依存されることなく、速度調整ノブ260を利用してウォーム軸61の回転速度を適宜変化させることができ、任意の回転速度に調整することができる。
【0153】
このように本実施形態の調速装置63によれば、伝達される動力の強さ等に影響されることなく、ウォーム軸61の回転速度を適宜変化させることができ、任意の回転速度に調整することができる。
【0154】
さらに、本実施形態の送り装置60は、上述の調速装置63を具備しているので、ウォーム軸61の回転に連動して回転する送りねじ65の回転速度を調整することができ、スライダ50及びプランジャ30の送り速度を調整することができる。
しかも、羽根車62を利用してウォーム軸61の回転速度を調整し、輪列機構66を介してウォーム軸61と送りねじ65とを連動させるので、例えば機械式時計におけるてんぷ等を利用する場合とは異なり、音を発生させ難く、静音性を維持された送り装置60とすることができる。
【0155】
さらに、上述の送り装置60を有する薬液ポンプ3によれば、シリンジ2内から吐出する薬液Wの吐出速度を変更することが可能となる。これにより、所望する吐出速度(吐出量)で薬液Wを精度良く吐出することができ、使い易く、利便性に優れた薬液ポンプ3とすることができる。
【0156】
さらに、上述の薬液ポンプ3を有する薬液投与装置1によれば、所望する吐出速度で薬液Wを精度良くシリンジ2から吐出することができるので、例えば決まった量の薬液Wを精度良く定期的に投与することができる。従って、例えばインスリンを体内に投与するインスリン投与装置等として好適に利用することが可能となる。
特に、状況に応じて(例えば食べた量、薬液Wの粘度や効果速度に応じて)最適な投与速度に調整することが可能となるので、薬液投与の効果をより一層発揮させることができると共に、例えば痛みの少ない薬液投与を行える。
【0157】
さらに、本実施形態では、速度調整ノブ260とウォーム軸61とを同軸上に配置しているので、両者を省スペースでコンパクトに配置することができ、薬液投与装置1全体の小型化等に貢献することができる。
【0158】
さらに、羽根車62に対して速度調整ノブ260を前後方向L2に接近離間させる際に、案内ねじ270で案内しながら速度調整ノブ260を移動させることができる。そのため、速度調整ノブ260の姿勢を安定に維持することができ、速度調整ノブ260に対して羽根車62を安定して摺接させ易い。
さらに、粘着剤等の抵抗部275を利用して、案内ねじ270の雄ねじ部と速度調整ノブ260におけるねじ孔の雌ねじ部との間に抵抗力を発生させることができるので、速度調整ノブ260に対して羽根車62が摺接する際に、該摺接によって速度調整ノブ260が案内ねじ270に対して相対回転してしまうことを抑制することができる。これにより、羽根車62の摺接時、速度調整ノブ260と羽根車62との間隔を適切に維持したまま、速度調整ノブ260に羽根車62を摺接させることができる。これにより、ウォーム軸61の回転速度の調整をより確実に行うことができる。
【0159】
さらに、案内ねじ270に対して速度調整ノブ260を回転操作することで案内ねじ270に沿って移動させることができるので、速度調整ノブ260を微小移動させることができ、ウォーム軸61の回転速度の調整をより精度良く、微小に行うことができる。
さらに、案内ねじ270とウォーム軸61とを同軸上に配置しているので、案内ねじ270に沿って速度調整ノブ260を移動させることで、速度調整ノブ260と羽根車62との間の間隔を容易且つ精度良く変化させ易い。従って、ウォーム軸61の回転速度の調整を行い易い。
さらに、案内ねじ270に設けられた軸受部270aを利用して、ウォーム軸61の先端部を回転支持できるので、軸ぶれ等を生じさせることなく、ウォーム軸61を安定して回転させることができる。
【0160】
ところで、本実施形態の薬液投与装置1によれば、図12に示すように、調速装置63が回転制御部材210を備えているので、操作部材310を利用して羽根車62の回転と停止の切換えを例えばワンタッチで行うことができる。
具体的には、先に述べた初期状態のように、図20に示すように、切換操作ノブ350を利用してストッパ部材300を回転停止位置P1に位置させることで、羽根車62に対してストッパ部材300を接触させて回転を停止させることができる。その一方、図21に示すように、切換操作ノブ350を利用してストッパ部材300を回転許容位置P2に位置させることで、羽根車62からストッパ部材300を離間させることができ、羽根車62の回転を許容することができる。
このように、切換操作ノブ350を利用して、ストッパ部材300を回転停止位置P1と回転許容位置P2との間を移動させるだけの簡便な操作で、羽根車62の回転と停止との切換えを容易に行うことができる。
【0161】
特に、ストッパ部材300が回転停止位置P1に位置している場合であっても、切換操作ノブ350を利用して、羽根車62に対するストッパ部材300の接触を一時的に解除することができ、所定の回転角度分だけ羽根車62を回転させる間欠回転操作を行うことができる。これにより、例えば羽根車62を半回転させることができ、必要に応じて任意に間欠的に回転させることができる。
【0162】
従って、この調速装置63を具備する送り装置60によれば、ウォーム軸61の回転停止と回転開始との切り換えだけでなく、間欠的な回転を行わせることができるので、スライダ50及びプランジャ30の送り移動を制御することができる。すなわち、スライダ50及びプランジャ30の送り移動の停止、開始の制御や、一定の送り速度での連続移動や、間欠的な送り移動等を行える。
【0163】
そのため、上述の送り装置60を具備する薬液ポンプ3によれば、スライダ50及びプランジャ30の送り移動を制御することができるので、例えば所望する吐出速度(吐出量)での薬液Wの連続投与や、間欠投与を行うことができると共に、薬液Wの投与タイミング等を制御することができる。従って、使い易く、利便性に優れた薬液ポンプ3とすることができる。
そして、薬液ポンプ3を具備する薬液投与装置1によれば、状況に応じた最適な投与を行うことができるので、薬液投与の効果をより一層発揮させることができると共に、痛みの少ない薬液投与を効果的に行うことができる。
【0164】
(羽根車の回転停止-薬液の投与の中止)
次いで、羽根車62の回転を停止させて、薬液投与を中止する場合について説明する。この場合には、使用者は、切換操作ノブ350を後方BK側に引張操作する。これにより、図20及び図22に示すように、操作ロッド340を介してストッパ部材300を回転許容位置P2から後方BK側に向けて移動させることができ、回転停止位置P1に位置させることができる。
【0165】
上述の過程において、ストッパ部材300は、図21に示すように、第1ストッパ片301aが保持プレート370における第1案内突起375と第2案内突起376との連設部分377で案内されながら回転許容位置P2から後方BKに向かって移動を開始する。ストッパ部材300が後方BKに向けて移動すると、突起ピン302が先行して羽根車62に接触しながら、ストッパ片301(第1ストッパ片301a)が羽根車62の回転軌跡N内に進入して、羽根部251に対して周方向に対向配置される。これにより、図20及び図22に示すように、第1ストッパ片301aを羽根部251に対して周方向に対向する対向位置に位置させることができ、羽根車62の回転を停止させることができる。つまり、ストッパ部材300を回転停止位置P1に位置させることができる。
【0166】
特に、突起ピン302が先端に向かうにしたがって細径化するように形成されていると共に、羽根車62の外表面には滑面251aが形成されているため、突起ピン302が羽根車62に先行して接触するときに、滑面251aを利用して突起ピン302を滑らすことができる。従って、例えば羽根車62とストッパ片301とが噛み合ってしまうような不具合を回避し易く、ストッパ片301をスムーズに対向位置に誘導することが可能となる。
【0167】
なお、ストッパ部材300を回転停止位置P1に位置させることで、図20に示すように、操作ロッド340の第2縮径部342がボールプランジャ360によって上方から押圧される。これにより、操作ロッド340の前後方向L2への移動を抑制することができ、回転停止位置P1にストッパ部材300を位置決めすることができる。
このように、ボールプランジャ360を利用してストッパ部材300を回転停止位置P1及び回転許容位置P2にそれぞれ位置決めすることができるので、意図しないタイミングで羽根車62の回転が開始或いは停止してしまうことを防止することができる。
【0168】
以上により、切換操作ノブ350を利用して、ストッパ部材300を回転停止位置P1に切り換えることができ、羽根車62の回転を停止させることができる。従って、薬液Wの投与を一旦中止することができる。
また、図20に示すように、保持プレート370を利用して第1ストッパ片301aが対向位置に位置するように、ストッパ部材300を保持できるので、羽根車62の回転停止が意図しないタイミングで解除されてしまうことを防止することができる。その一方、後述するように羽根車62の間欠的な回転操作を行う場合には、切換操作ノブ350を反時計方向に回転操作することで、保持プレート370によるストッパ部材300の保持を解除できるので、間欠的な回転操作を適切に行うことができる。
【0169】
(羽根車の間欠回転-薬液の間欠投与)
次いで、羽根車62を間欠的に回転させて、薬液Wを間欠投与する場合について説明する。
この場合には、使用者は、切換操作ノブ350を後方BK側から見て反時計方向に回転操作することで、ストッパ片301の位置を対向位置と退避位置との間で例えばワンタッチで切り換えることができる。
【0170】
具体的には、図19に示す矢印F2の如く、切換操作ノブ350を反時計方向に回転操作すると、操作ロッド340を介してストッパ部材300の全体が操作軸線C3回りに反時計方向に回転するので、図22に示すように、第2ストッパ片301bがコイルばね380の付勢に抗して保持プレート370を下方に押下げながら、傾斜面376a上を滑るように移動する。これにより、保持プレート370によるストッパ部材300の保持を解除することができ、ストッパ部材300を反時計方向に回転させることができる。
そのため、第1ストッパ片301aを対向位置から回転軌跡Nの外側に退避させることができ、第1案内突起375の垂直面375aと第2案内突起376の傾斜面376aとの連設部分377に移動させることができる。つまり、第1ストッパ片301aを退避位置に位置させることができる。また、これと同時に、回転軌跡N付近に待機している第4ストッパ片301dを回転軌跡N内に進入させて対向位置に速やかに移動させることができる。
【0171】
従って、切換操作ノブ350を反時計方向に回転操作することで、ストッパ部材300を90度の回転角度分だけ回転させることができる。これにより、1回の切換操作ノブ350の回転操作によって、羽根車62を半回転、間欠的に回転操作することができる。つまり、切換操作ノブ350を回転操作する度に、羽根車62を半回転ずつ回転させることができる。これにより、ストッパ部材300が回転停止位置P1に位置している場合であっても、送りねじ65を間欠的に送り移動させることができ、薬液Wの間欠投与を行うことができる。
なお、第1案内突起375によって、切換操作ノブ350を時計方向に回転操作されてしまうことを規制しているので、羽根車62及びウォーム軸61を逆回転させてしまうことを防止することができる。
【0172】
上述のように本実施形態によれば、操作ロッド340及び切換操作ノブ350を利用して、回転停止位置P1と回転許容位置P2との間のストッパ部材300の切換え操作、及び対向位置と退避位置との間のストッパ片301の切換え操作の2つの切換え操作を行うことができる。従って、使い易く操作性を向上することができる。
特に、2つの切換え操作を行う際に、共通の操作ロッド340及び切換操作ノブ350を利用するものの、ストッパ部材300の切換え操作を行うときは操作ロッド340を前後方向L2にスライド操作し、且つストッパ片301の切換え操作を行うときは操作ロッド340を操作軸線C3回りに回転操作する必要がある。従って、大きく異なる操作によって、2つの切換え操作を明確に使い分けることができるので、誤操作を防止し易く、操作性を向上することができる。
【0173】
以上、本発明の実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。実施形態は、その他様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。実施形態やその変形例には、例えば当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、均等の範囲のものなどが含まれる。
【0174】
例えば、上記実施形態では、調整装置を具備する送り装置60を、薬液ポンプ3及び薬液投与装置1に適用した場合を例に挙げて説明したが、これらのデバイスに限定されるものではなく、可動体を送り移動するような各種のデバイスに好適に採用することができる。
【0175】
さらに上記実施形態では、注入セット6を利用して薬液Wを使用者の体内に注入したが、この場合に限定されるものではない。例えば、本体ケース4自体を体表面Sに装着可能に構成すると共に、本体ケース4から留置針5が出没可能に構成された、いわゆるパッチタイプの薬液投与装置としても構わない。この場合には、シリンジ2から押し出した薬液Wを、チューブ21を通さずに留置針5に直接導いて体内に注入することが可能となる。
【0176】
さらに上記実施形態では、ぜんまい184の巻き解けで発生した動力(回転トルク)を利用して、ウォーム軸61及び羽根車62を回転させたが、ぜんまい184に限定されるものではない。ただし、ぜんまい184を利用することで、電池等の電力が不要になるので、低コスト化を図り易いうえ、安全性を向上することができる。
【0177】
さらに上記実施形態では、羽根車62の回転に伴って、弾性支持部252を弾性変形させながら羽根部251を後方BKに向けて浮き上がるように変位させたが、この場合に限定されるものではない。例えば、羽根車62の全体が、後方BKに向けてスライド移動することで、速度調整ノブ260に対して羽根部251を摺接させるように構成しても構わない。
さらには、速度調整ノブ260と羽根車62とを同軸に配置させる必要はなく、例えば羽根部251の径方向外側に速度調整ノブ260を配置し、羽根車62の回転に伴って羽根部251が径方向に変位することで、羽根部251と速度調整ノブ260とを摺接させても構わない。
【0178】
さらに上記実施形態では、渦巻きばね110の弾性復元力を駆動力として利用し、スライダ50及びプランジャ30を押圧したが、渦巻きばね110に限定されるものではない。例えば、板ばね、コイルばね、トーションばね、皿ばね、タケノコばね等、渦巻きばね110以外の各種のばね部材の弾性復元力を駆動力として利用しても構わない。
さらには、これらばね部材に限定されるものではなく、例えば圧縮ガスや圧縮液体等の圧縮流体を利用し駆動力を発生させても構わないし、形状記憶合金ワイヤの伸縮を利用して駆動力を発生させても構わないし、磁力による反発力を利用して駆動力を発生させても構わない。
【0179】
さらに上記実施形態では、第1ベベルギア183、第1中間車220、第2中間車230、第3中間車240、第1送り車71及び第2送り車186によって輪列機構66を構成したが、この場合に限定されるものではない。所定の減速比率を得ることができれば、各車を適宜組み合わせて輪列機構を構成して構わない。
【符号の説明】
【0180】
M…送り軸線
W…薬液
C2…回転軸線
C3…操作軸線
P1…回転停止位置
P2…回転許容位置
1…薬液投与装置
2…シリンジ
3…薬液ポンプ
4…本体ケース
5…留置針
50…スライダ(可動体)
60…送り装置
61…ウォーム軸(回転軸部)
62…羽根車
63…調速装置
64…第1駆動源
65…送りねじ(送り軸部)
66…輪列機構
67…第2駆動源
110…渦巻きばね(ばね部材)
184…ぜんまい
200…制動部材
210…回転制御部材
251…羽根部
251a…滑面
252…弾性支持部
260…速度調整ノブ
270…案内ねじ(案内軸部)
270a…軸受部
275…抵抗部
300…ストッパ部材
301…ストッパ片
302…突起ピン
310…操作部材
340…操作ロッド(操作軸部)
350…切換操作ノブ(操作部)
360…ボールプランジャ(位置決め部材)
370…保持プレート(保持具)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22