(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022131916
(43)【公開日】2022-09-07
(54)【発明の名称】抗原の測定方法及び固相化抗体の製造方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/543 20060101AFI20220831BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20220831BHJP
【FI】
G01N33/543 511A
G01N33/53 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021031167
(22)【出願日】2021-02-26
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年度、国立研究開発法人日本医療研究開発機構、産学連携医療イノベーション創出プログラム 基本スキーム(ACT-M)「希少がん標的型のポドプラニン抗体薬実用化」に係る委託開発、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】591045471
【氏名又は名称】アピ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】特許業務法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柿野 衛
(57)【要約】 (修正有)
【課題】抗原抗体反応を利用して被検試料中の抗原を測定方法において抗原の検出感度を向上する抗原の測定方法及び固相化抗体の製造方法を提供する。
【解決手段】被検試料中の抗原を測定する方法において、検試料中の抗原と免疫学的に結合する第一の抗体を第一の担体に固相化する工程、被検試料中の抗原と第一の抗体とを、抗原中の第一のエピトープを介して結合させる工程及び第一のエピトープを介して第一の抗体と結合した抗原を検出する工程を含む。検試料中の抗原と免疫学的に結合する第一の抗体を第一の担体に固相化する工程は、第一の抗体と、抗原及び第一の抗体以外のタンパク質とを含む溶液中で行われる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)被検試料中の抗原と免疫学的に結合する第一の抗体を第一の担体に固相化する工程、
(b)前記被検試料中の抗原と前記第一の抗体とを、前記抗原中の第一のエピトープを介して結合させる工程、及び、
(c)前記第一のエピトープを介して前記第一の抗体と結合した抗原を検出する工程を含み、
前記工程(a)が、前記第一の抗体と、前記抗原及び前記第一の抗体以外のタンパク質とを含む溶液中で行われる、
被検試料中の抗原を測定する方法。
【請求項2】
前記溶液における、前記第一の抗体の濃度が100 ng/mL以上1000 ng/mL以下であり、重
量比(前記第一の抗体:前記抗原及び前記第一の抗体以外の前記タンパク質)が1:1以上1:19以下である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記抗原及び前記第一の抗体以外のタンパク質が、ウシ血清アルブミン、カゼイン、ゼラチン、ヘモグロビン、及びオブアルブミンからなる群から選択される一又は複数である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記第一の抗体が抗ポドプラニン抗体であり、前記抗原がポドプラニンである、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記工程(c)が、前記被検試料中の抗原と、前記第一のエピトープとは異なる、前記抗原中の第二のエピトープを認識する、標識された第二の抗体とを、前記第二のエピトープを介して結合させ、前記標識を用いて、前記第一のエピトープを介して前記第一の抗体と結合した抗原を検出する工程であり、
前記工程(a)が、前記第一の抗体と、前記抗原及び前記第一、第二の抗体以外のタンパク質とを含む溶液中で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
被検試料中の抗原と免疫学的に結合する抗体を担体に固相化する工程を含み、
前記固相化する工程が、前記抗体と、前記抗原及び前記抗体以外のタンパク質とを含む溶液中で行われる、
被検試料中の抗原と免疫学的に結合する固相化抗体の製造方法。
【請求項7】
前記溶液における、前記抗体の濃度が100 ng/mL以上1000 ng/mL以下であり、重量比(
前記抗体:前記抗原及び前記抗体以外の前記タンパク質)が1:1以上1:19以下である、請
求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
前記抗原及び前記抗体以外のタンパク質が、ウシ血清アルブミン、カゼイン、ゼラチン、ヘモグロビン、及びオブアルブミンからなる群から選択される一又は複数である、請求項6又は7に記載の製造方法。
【請求項9】
前記抗体が抗ポドプラニン抗体であり、前記抗原がポドプラニンである、請求項6~8のいずれか一項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗原の測定方法及び固相化抗体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
抗原抗体反応を利用した、被検試料中の抗原を測定する方法が汎用されている。当該方法では、通常、不溶性の担体に固相化された抗体を使用して抗原を検出することが多い。当該方法により被検試料中の抗原を測定する場合、被検試料中の抗原以外の物質が担体に非特異的に吸着し、抗原を測定する際のバックグラウンドが上昇することで、抗原の検出限界濃度が上がってしまう(換言すれば、検出感度が下がってしまう。)。その結果、被検試料中の抗原が微量である場合には検出や測定をすることができなくなってしまうこと。そのため、一般的には、抗体を担体に固相化した後に、ウシ血清アルブミン等のタンパク質で担体をブロッキングする。
【0003】
しかし、このようなブロッキングを行っても前記非特異吸着を完全に抑制することはできない。そのため、非特異吸着をより有効に抑制するために、例えば、タンパク質ではなく、アラニンやバリン等の非極性アミノ酸で担体をブロッキングする技術が報告されている(特許文献1)。また、抗体を担体に固相化する際に、アジ化物イオンを共存させることや、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンと非極性アミノ酸とを共存させることで、抗原を感度良くかつ正確に測定する技術が開発されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5-288750号公報
【特許文献2】特開2007-178142号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、抗原抗体反応を利用して被検試料中の抗原を測定方法において、抗原の検出感度を向上する技術の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは鋭意検討した結果、抗体を担体に固相化する際に所定のタンパク質を共存させることで前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
本発明は以下に示すとおりである。
【0007】
本発明は、
(a)被検試料中の抗原と免疫学的に結合する第一の抗体を第一の担体に固相化する工程、
(b)前記被検試料中の抗原と前記第一の抗体とを、前記抗原中の第一のエピトープを介して結合させる工程、及び、
(c)前記第一のエピトープを介して前記第一の抗体と結合した抗原を検出する工程を含み、
前記工程(a)が、前記第一の抗体と、前記抗原及び前記第一の抗体以外のタンパク質とを含む溶液中で行われる、
被検試料中の抗原を測定する方法
を提供する。
【0008】
前記方法は、前記溶液における、前記第一の抗体の濃度が100 ng/mL以上1000 ng/mL以
下であり、重量比(前記第一の抗体:前記抗原及び前記第一の抗体以外の前記タンパク質)が1:1以上1:19以下である、ことを好ましい態様としている。
前記方法はまた、前記抗原及び前記第一の抗体以外のタンパク質が、ウシ血清アルブミン、カゼイン、ゼラチン、ヘモグロビン、及びオブアルブミンからなる群から選択される一又は複数である、ことを好ましい態様としている。
前記方法はまた、前記第一の抗体が抗ポドプラニン抗体であり、前記抗原がポドプラニンである、ことを好ましい態様としている。
【0009】
前記方法はまた、
前記工程(c)が、前記被検試料中の抗原と、前記第一のエピトープとは異なる、前記抗原中の第二のエピトープを認識する、標識された第二の抗体とを、前記第二のエピトープを介して結合させ、前記標識を用いて、前記第一のエピトープを介して前記第一の抗体と結合した抗原を検出する工程であり、
前記工程(a)が、前記第一の抗体と、前記抗原及び前記第一、第二の抗体以外のタンパク質とを含む溶液中で行われる、ことを好ましい態様としている。
【0010】
本発明はまた、
被検試料中の抗原と免疫学的に結合する抗体を担体に固相化する工程を含み、
前記固相化する工程が、前記抗体と、前記抗原及び前記抗体以外のタンパク質とを含む溶液中で行われる、
被検試料中の抗原と免疫学的に結合する固相化抗体の製造方法
を提供することができる。
【0011】
前記製造方法は、前記溶液における、前記抗体の濃度が100 ng/mL以上1000 ng/mL以下
であり、重量比(前記抗体:前記抗原及び前記抗体以外の前記タンパク質)が1:1以上1:19以下である、ことを好ましい態様としている。
前記製造方法はまた、前記抗原及び前記抗体以外のタンパク質が、ウシ血清アルブミン、カゼイン、ゼラチン、ヘモグロビン、及びオブアルブミンからなる群から選択される一又は複数である、ことを好ましい態様としている。
前記製造方法はまた、前記抗体が抗ポドプラニン抗体であり、前記抗原がポドプラニンである、ことを好ましい態様としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、抗原抗体反応を利用した、被検試料中の抗原を測定する方法において、抗原の検出感度を向上する技術を提供することができる。本技術により、被検試料中の抗原を測定する際の抗原の検出限界濃度を下げ、すなわち検出感度を上げることによって、被検試料中の抗原が微量である場合でも検出や測定ができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一態様に係る実施例1及び比較例1の結果を示すグラフ。
【
図2】本発明の一態様に係る実施例1及び比較例1の結果を示すグラフ。
【
図3】本発明の一態様に係る実施例1及び比較例1の結果を示すグラフ。
【
図4】本発明の一態様に係る実施例1及び比較例1の結果を示すグラフ。
【
図5】本発明の一態様に係る実施例1及び比較例1の結果を示すグラフ。
【
図6】本発明の一態様に係る実施例1及び比較例1の結果を示すグラフ。
【
図7】本発明の一態様に係る実施例1及び比較例1の結果を示すグラフ。
【
図8】本発明の一態様に係る実施例2の結果を示すグラフ。
【
図9】本発明の一態様に係る比較例3の結果を示すグラフ。
【
図10】本発明の一態様に係る実施例3の結果を示すグラフ。
【
図11】本発明の一態様に係る比較例4の結果を示すグラフ。
【
図12】本発明の一態様に係る実施例3及び比較例4の結果を示すグラフ。
【
図13】本発明の一態様に係る比較例5及び比較例6の結果を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明において「抗体」とは、「抗原結合領域を含む抗体断片」であってもよく、すなわち、抗体の一部分を含むタンパク質であり、抗原に結合できるものであってもよい。抗体断片の例としては、F(ab')2 、Fab'、Fab 、Fv (variable fragment of antibody)、ジスルフィド結合Fv、一本鎖抗体(scFv)、およびこれらの重合体等が挙げられる。
【0015】
<被検試料中の抗原を測定する方法>
本発明の一態様は、
(a)被検試料中の抗原と免疫学的に結合する第一の抗体を第一の担体に固相化する工程、
(b)前記被検試料中の抗原と前記第一の抗体とを、前記抗原中の第一のエピトープを介して結合させる工程、及び、
(c)前記第一のエピトープを介して前記第一の抗体と結合した抗原を検出する工程を含み、
前記(a)工程が、前記第一の抗体と、前記抗原及び前記第一の抗体以外のタンパク質とを含む溶液中で行われる、
被検試料中の抗原を測定する方法である。
【0016】
本態様に係る方法が含む、工程(a)被検試料中の抗原と免疫学的に結合する第一の抗体を第一の担体に固相化する工程は、被検試料中の抗原と免疫学的に結合する第一の抗体を第一の担体に固相化するための当該技術分野で通常行われる工程において、前記抗原及び前記第一の抗体以外のタンパク質が共存する工程である。すなわち、前記工程(a)は、前記第一の抗体と、前記抗原及び前記第一の抗体以外のタンパク質とを含む溶液中で前記第一の抗体を前記第一の担体に固相化する工程を含む。
【0017】
本態様で用いられる被検試料の由来は、当該技術分野で通常使用される、抗原抗体反応を用いて測定される抗原を含む哺乳動物であれば特に限定されないが、例えば、ヒト、ウシ、ヤギ、ヒツジ、ブタ、サル、イヌ、ネコ、ラット、マウス、ハムスター、モルモット等が挙げられる。好ましくはヒトである。
【0018】
また、本態様で用いられる被検試料の由来がヒトである場合には、疾患に罹患しているヒトでもよいし、疾患に罹患していないヒトでもよいし、疾患に罹患している疑いがあるヒトであってもよい。
前記疾患としては、本態様に係る方法で前記疾患のマーカーとなる抗原を測定できる疾患であれば特に限定されない。
【0019】
前記疾患のマーカーとなる抗原は、好ましくは、ポドプラニン、SCC、CYFRA、PSA、CA125、CEA、STN、NSE、N-アセチル-β-D-グルコサミニダーゼ、β2ミクログロブリン、α1
ミクログロブリン、KL-6、肺サーファクタント蛋白-A、肺サーファクタント蛋白-D、CK/CK-MB、トロポニンT、心臓型脂肪酸結合蛋白、心筋ミオシン軽鎖I等である。より好まし
くは、ポドプラニンである。
【0020】
本態様で用いられる被検試料中の抗原がマーカーとなる前記疾患は、例えば、がん、腎炎(例えば、遺伝性腎炎(アルポート症候群)、後天性腎炎、糸球体腎炎、腎盂腎炎、腎膿瘍、腎周囲炎、腎結核、腎不全、萎縮腎等)、肺炎(例えば、大葉性肺炎、気管支肺炎、間質性肺炎等)、心筋症(例えば、肥大型心筋症、拡張型心筋症、拘束型心筋症等)、
白板症(例えば、白色角板症、老人性角化腫、ボーエン病類似白板症等)等が挙げられる。
【0021】
前記がんとしては、中皮腫、脳腫瘍、精巣腫瘍、前立腺がん、カポジ肉腫、リンパ管腫、海綿状血管腫、血管肉腫、肺扁平上皮がん、卵巣がん未分化胚細胞腫、子宮がん、子宮頸がん、神経腫瘍(神経膠腫等)、胚細胞腫瘍、頭頸部がん、肺がん、膀胱がん、骨軟部腫瘍(原発性骨腫瘍(骨肉腫、軟骨肉腫)、軟部肉腫))、食道がん、口腔がん、舌がん、咽頭がん、声帯がん、乳がん、膵がん、胃がん等が挙げられる。
【0022】
本態様で用いられる被検試料中の抗原がポドプラニンである場合には、前記疾患はがんであって、好ましくは、中皮腫、脳腫瘍、精巣腫瘍、前立腺がん、カポジ肉腫、リンパ管腫、海綿状血管腫、血管肉腫、肺扁平上皮がん、卵巣がん未分化胚細胞腫、神経膠腫、胚細胞腫瘍、頭頸部がん、肺がん、膀胱がん、骨軟部腫瘍(原発性骨腫瘍(骨肉腫、軟骨肉腫)、軟部肉腫))、食道がんである。より好ましくは、肺扁平上皮がんである。
【0023】
本態様で用いられる被検試料中の抗原がSCCである場合には、前記疾患はがんであって
、好ましくは、食道がん、肺がん等である。
本態様で用いられる被検試料中の抗原がCYFRAである場合には、前記疾患はがんであっ
て、好ましくは、肺扁平上皮がん等である。
本態様で用いられる被検試料中の抗原がPSAである場合には、前記疾患はがんであって
、好ましくは、前立腺がん等である。
本態様で用いられる被検試料中の抗原がCA125、CEAである場合には、前記疾患はがんであって、好ましくは、乳がん、膵がん等である。
本態様で用いられる被検試料中の抗原がSTNである場合には、前記疾患はがんであって
、好ましくは、胃がん等である。
本態様で用いられる被検試料中の抗原がNSEである場合には、前記疾患はがんであって
、神経腫瘍等である。
【0024】
本態様で用いられる被検試料中の抗原がN-アセチル-β-D-グルコサミニダーゼ、β2ミ
クログロブリン、α1ミクログロブリンである場合には、前記疾患は腎炎である。
【0025】
本態様で用いられる被検試料中の抗原がKL-6、肺サーファクタント蛋白-A、肺サーファクタント蛋白-Dである場合には、前記疾患は肺炎である。
【0026】
本態様で用いられる被検試料中の抗原がCK/CK-MB、トロポニンT、心臓型脂肪酸結合蛋
白、心筋ミオシン軽鎖Iである場合には、前記疾患は心筋症である。
【0027】
本態様で用いられる被検試料としては、本態様に係る方法で測定できる抗原を含むものであれば特に制限されないが、例えば、体液等が挙げられる。前記体液としては、例えば、血液(例えば、全血、血清、血漿等)、漿液、腹水、胸水、リンパ液、尿、脳脊髄液、胸膜液、腹膜液、囲心腔液、粘膜分泌物が挙げられる。
【0028】
また、本態様で用いられる被検試料は、当該技術分野で通常使用される緩衝液等で希釈されてもよい。このような緩衝液としては、例えば、トリス塩酸緩衝液、炭酸重炭酸緩衝液、リン酸緩衝液(例えば、PBS、D-PBS)、HEPES緩衝液などの、抗原抗体反応を阻害し
ない生理緩衝液に、例えば、SDS、尿素、グニジン塩酸塩などの変性剤;オクチルフェノ
ールエトキシレート、Tween 20、Tween 80、CHAPSなどの界面活性剤;アジ化ナトリウム
などのペルオキシダーゼ阻害剤;オスモライト、糖類などのタンパク質安定化剤;BSAな
どのブロッキング剤等を目的に応じて添加したものが挙げられる。具体的には0.098 %(w/v) BSA、0.0147 mol/Lアルギニン、0.00431% アジ化ナトリウム、0.049% SDS、0.049% Tw
een 80、及び0.56% リピジュアBL802(日油株式会社)を含む混合液等が挙げられる。
【0029】
本態様で用いられる被検試料中の抗原は、前記第一の抗体と前記抗原中の第一のエピトープを介して結合するものであって、当該技術分野で通常使用される抗原抗体反応を用いて測定される物質であれば特に限定されない。例えば、タンパク質(ペプチドを含む。)、糖類、脂質等が挙げられる。好ましくはタンパク質であり、より好ましくは前記疾患のマーカーとなる抗原である。前記疾患ががんである場合には腫瘍マーカーであってよい。例えば、ポドプラニン(別名として、Aggrus、M2A、GP36、GP40、GP38、OTS8、T1A2、TI1A、T1A-2、HT1A-1、PA2.26等がある。)、SCC、CYFRA、PSA、CA125、CEA、STN、NSE等
が挙げられる。
また、前記被検試料中の抗原は免疫グロブリンであってもよい。前記免疫グロブリンとしては、本態様に係る方法で測定できるものであれば特に制限されず、いずれの免疫グロブリンでもよい。例えば、ヒトの免疫グロブリンであれば、IgG、IgA、IgM、IgD、IgEの
クラスがあり、IgG、IgAにはサブクラスが存在する。例えば、IgGのサブクラスであれば
、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4が存在する。IgAのサブクラスであれば、IgA1、IgA2が存在す
る。
【0030】
本態様で用いられる第一の抗体は、前記被検試料中の抗原中の前記第一のエピトープを介して前記抗原と結合するものであれば特に制限されない。また、本態様で用いられる第一の抗体は、モノクローナル抗体であってもよいし、ポリクローナル抗体であってもよく、態様によって適宜選択することができる。前記第一の抗体としては、一種又は複数種を用いてよい。
【0031】
前記第一の抗体としては、例えば、前記被検試料中の抗原がポドプラニンであって、前記第一の抗体がモノクローナル抗体(すなわち、抗ポドプラニンのモノクローナル抗体)であれば、例えば、NZ-1.2(株式会社医学生物学研究所、D320-3)、日本特許第6737482
号明細書に記載のAP201が挙げられる。また、EPR22182(Abcam社、ab236529)、PMab-1(Abcam社、ab256559)、EPR7072(Abcam社、ab128994)、18H5(Abcam社、ab10288 )、EPR7073(Abcam社、ab131216)、LpMab-7(Abcam社、ab256566)、RTD4E10(Abcam社、ab11936)、LF3/B7/D5B27(Novus Biologicals, LLC (R&D Systems Company)社、NB110-96423)、RTD4E10(Abcam社、ab11936)、8.1.1(Abcam社、ab92319)、E-1(SANTA CRUZ BIOTECHNOLOGY、sc-376695)、F-3(SANTA CRUZ BIOTECHNOLOGY、sc-376962)、B-11(SANTA CRUZ BIOTECHNOLOGY、sc-166906)等が挙げられる。
【0032】
また、前記第一の抗体としては、例えば、前記被検試料中の抗原がポドプラニンであって、前記第一の抗体がポリクローナル抗体(すなわち、抗ポドプラニンのポリクローナル抗体)であれば、例えば、Anti-Podoplanin Antibody, Rabbit Polyclonal(Sino Biological Inc.、11065-T52)、Anti-Podoplanin antibody(Novopro社、106225)等が挙げら
れる。
【0033】
また、前記第一の抗体は、例えば、前記被検試料中の抗原が免疫グロブリンであって、前記第一の抗体がモノクローナル抗体であれば、抗免疫グロブリンのモノクローナル抗体である。
具体的には、例えば、前記免疫グロブリンがヒトIgG、IgA、IgM、IgD、又はIgEであれ
ば、前記第一の抗体は、それぞれ、抗ヒトIgGのモノクローナル抗体、抗ヒトIgAのモノクローナル抗体、抗ヒトIgMのモノクローナル抗体、抗ヒトIgDのモノクローナル抗体、抗ヒトIgEのモノクローナル抗体である。
また、前記免疫グロブリンがヒトIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、又はIgA2であれば、前記第一の抗体は、それぞれ、抗ヒトIgG1のモノクローナル抗体、抗ヒトIgG2のモノクローナル抗体、抗ヒトIgG3のモノクローナル抗体、抗ヒトIgG4のモノクローナル抗体、抗ヒ
トIgA1のモノクローナル抗体、抗ヒトIgA2のモノクローナル抗体である。
前記哺乳動物がヒト以外である場合も同様である。例えば、前記被検試料中の抗原がマウスIgG1であれば、前記第一の抗体は、抗マウスIgG1のモノクローナル抗体である。
【0034】
また、前記第一の抗体は、例えば、前記被検試料中の抗原が免疫グロブリンであって、前記第一の抗体がポリクローナル抗体であれば、抗免疫グロブリンのポリクローナル抗体である。
具体的には、例えば、前記免疫グロブリンがヒトIgG、IgA、IgM、IgD、又はIgEであれ
ば、前記第一の抗体は、それぞれ、抗ヒトIgGのポリクローナル抗体、抗ヒトIgAのポリクローナル抗体、抗ヒトIgMのポリクローナル抗体、抗ヒトIgDのポリクローナル抗体、抗ヒトIgEのポリクローナル抗体である。
また、前記免疫グロブリンがヒトIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、又はIgA2であれば、前記第一の抗体は、それぞれ、抗ヒトIgG1のポリクローナル抗体、抗ヒトIgG2のポリクローナル抗体、抗ヒトIgG3のポリクローナル抗体、抗ヒトIgG4のポリクローナル抗体、抗ヒトIgA1のポリクローナル抗体、抗ヒトIgA2のポリクローナル抗体である。
前記哺乳動物がヒト以外である場合も同様である。例えば、前記被検試料中の抗原がマウスIgG1であれば、前記第一の抗体は、抗マウスIgG1のポリクローナル抗体である。
【0035】
本工程(a)で用いられる第一の担体としては、抗原の測定方法で用いられる通常の第一の担体が挙げられる。
本工程(a)で用いられる第一の担体の形状は、当該技術分野で通常使用される担体の形状であれば特に限定されない。例えば、粒子(ビーズ)、プレート、チューブ、ゲル、膜(繊維、フィルターを含む。)等が挙げられる。
本工程(a)で用いられる第一の担体の材料は、当該技術分野で通常使用される担体の材料であって、抗原抗体反応で通常使用される溶液において不溶であれば特に限定されない。例えば、合成樹脂材料(例えば、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、アクリル樹脂(ポリアクリルアミド等)、ポリウレタン、ポリカーボネート、ABS樹脂、ポリフッ化ビニリデン等)、無機材料(例えば
、シリコン、シリカ、ガラス、チタン、酸化チタン、鉄、酸化鉄、アルミニウム、酸化アルミニウム、亜鉛、酸化亜鉛、ジルコニウム、ジルコニア、酸化インジウムスズ、金、銀、白金等)、多糖類(例えば、アガロース、セルロース、セファロース、ニトロセルロース及びキチン等)、タンパク質(例えば、ゼラチン、コラーゲン等)、合成ゴム(例えば、スチレン-ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム及びクロロプレンゴム等)が挙げられる。また、前記第一の担体の形状が粒子(ビーズ)であれば、磁気ビーズであってよい。
【0036】
前記被検試料中の抗原と免疫学的に結合する第一の抗体を第一の担体に固相化するための当該技術分野で通常行われる工程としては、例えば、前記第一の抗体を含む緩衝液と第一の担体とを、所定の温度(例えば、4℃等)、所定の時間(一昼夜等)接触させることが挙げられる。前記緩衝液としては、例えば、リン酸緩衝液(PBS、Dulbecco's Phosphate-Buffered Saline (D-PBS)等)、炭酸緩衝液等が挙げられる。
【0037】
前記第一の抗体と、前記抗原及び前記第一の抗体以外のタンパク質とを含む溶液(本明細書では、「固相化溶液」と称することがある。)における、前記第一の抗体の濃度は、前記第一の抗体が前記第一の担体に固相化される限り特に制限されないが、例えば、100 ng/mL、200 ng/mL、500 ng/mL、及び1000 ng/mLのいずれかを採用し、上限又は下限とす
る濃度であってよい。
【0038】
前記固相化溶液における、前記抗原及び前記第一の抗体以外のタンパク質の濃度は、前
記第一の抗体を前記第一の担体に固相化した後、これに前記被検試料を適用した際に、前記被検試料中の抗原以外の物質が前記第一の担体に非特異的に吸着することを抑制し、抗原を測定する際にバックグラウンドが上昇することを抑制して、抗原の検出限界濃度を下げる(換言すれば、検出感度を向上する)ことができれば特に制限されない。
前記固相化溶液における前記濃度としては、前記固相化溶液中の前記第一の抗体の濃度、及び前記被検試料中の抗原の濃度にも依るが、 総量で、例えば、0.00001 %(w/v)、0.00002 %(w/v)、0.00004 %(w/v)、0.00005 %(w/v)、0.00008 %(w/v)、0.00009 %(w/v)、0.0001 %(w/v)、0.00018 %(w/v)、0.00019 %(w/v) 0.0002 %(w/v)、0.00038 %(w/v)、0.0004
%(w/v)、0.00045 %(w/v)、0.0009 %(w/v)、0.00095 %(w/v)、及び0.0019 %(w/v)のいず
れかを採用し、上限又は下限とする濃度であってよい。
【0039】
また、前記固相化溶液における、前記第一の抗体と、前記抗原及び前記第一の抗体以外のタンパク質との重量比(すなわち、重量比(前記第一の抗体:前記抗原及び前記第一の抗体以外のタンパク質))も上記と同様に、抗原の検出限界濃度を下げる(換言すれば、検出感度を向上する)ことができれば特に制限されない。
前記固相化溶液における前記重量比としては、前記固相化溶液中の前記第一の抗体の濃度、及び前記被検試料中の抗原の濃度にも依るが、総量で、例えば、1:1、1:4、1:9、1:19、及び1:49のいずれかを採用し、上限又は下限とする重量比であってよい。
【0040】
前記抗原及び前記第一の抗体以外のタンパク質としては、前記第一の抗体を前記第一の担体に固相化した後、これに前記被検試料を適用した際に、前記被検試料中の抗原以外の物質が前記第一の担体に非特異的に吸着することを抑制し、抗原を測定する際にバックグラウンドが上昇することを抑制して、抗原の検出限界濃度を下げる(換言すれば、検出感度を向上する)ことができれば特に限定されない。例えば、当該技術分野で通常使用される公知のブロッキング剤が挙げられる。具体的には、ウシ血清アルブミン、カゼイン、ゼラチン、ヘモグロビン、オブアルブミン等が挙げられる。前記抗原及び前記第一の抗体以外のタンパク質としては、一種又は複数種を用いてよく、これ又はこれらを含む組成物であってもよい。カゼインとしては、例えば、ブロックエース(DSファーマバイオメディカル株式会社)が挙げられる。
【0041】
尚、本工程(a)は、前記固相化の後に、前記固相化した前記第一の担体に従来法に従ったブロッキング処理を施す工程を含んでもよい。従来法に従ったブロッキング処理としては、例えば、1 %(w/v) BSA及び0.05% Tween 20を含むブロッキング溶液を用いて、室温で2時間の振盪処理等が挙げられる。
【0042】
本態様に係る方法が含む、工程(b)前記被検試料中の抗原と前記第一の抗体とを、前記抗原中の第一のエピトープを介して結合させる工程は、被検試料中の抗原と第一の抗体とを、前記抗原中の第一のエピトープを介して結合させるするための当該技術分野で通常行われる工程であってよい。例えば、前記工程(a)で準備した、前記第一の抗体が固相化された前記第一の担体と、前記被検試料中の抗原とを、所定の温度、所定の時間(例えば、4℃等で一昼夜等、室温で1時間等)接触させる工程等が挙げられる。
【0043】
前記被検試料中の抗原の濃度は、本態様に係る方法で前記被検試料中の抗原を測定できる限り特に限定されない。例えば、0.002 ng/mL、0.004 ng/mL、0.008 ng/mL、0.016 ng/mL、0.032 ng/mL、0.064 ng/mL、0.128 ng/mL、0.256 ng/mL、4 ng/mL、8 ng/mL、16 ng/mL、32 ng/mL、64 ng/mL、128 ng/mL、256 ng/mL、及び512 ng/mLのいずれかを採用し、
上限又は下限とする濃度であってよい。尚、上限は特に制限されないが、例えば、がんの腫瘍マーカーを検出するような臨床現場においては、疾患に罹患している者と健常者との判別ができれば十分であることから、極端に大きな濃度である必要はなく、例えば、1000
ng/mL以下であってよい。
【0044】
本態様に係る方法を用いた場合に達成されるS/N比(シグナルとノイズの比率)は、バ
ックグラウンドのシグナルを1.00とした場合の数値を示し、例えば、後述する実施例であれば、後掲する表1-1等に記載された結果である。前記S/N比は、好ましくは1.2以上、より好ましくは1.4以上、さらに好ましくは1.5以上である。一方で、上限は特に制限されないが、例えば、がんの腫瘍マーカーを検出するような臨床現場においては、疾患に罹患している者と健常者との判別ができれば十分であることから、極端に大きなS/N比である
必要はなく、例えば、1000以下、100以下、54.63以下である。
【0045】
前記被検試料中の抗原の濃度、前記第一の抗体の濃度、及び前記重量比(前記第一の抗体:前記抗原及び前記第一の抗体以外のタンパク質)からなる群から選択される二又は三の組み合わせは、従来法よりもS/N値がより大きくなるように適宜組み合わせることがで
きる。
その観点から、前記第一の抗体の濃度と前記重量比(前記第一の抗体:前記抗原及び前記第一の抗体以外のタンパク質)との組み合わせとしては下記が挙げられる。
例えば、前記第一の抗体の濃度が100 ng/mL以上1000 ng/mL以下、かつ、前記重量比が1:1以上1:19以下であることが挙げられ、
また、前記第一の抗体の濃度が100 ng/mL以上1000 ng/mL以下、かつ、前記重量比が1:9以上1:19以下であることが挙げられ、
また、前記第一の抗体の濃度が200 ng/mL以上1000 ng/mL以下、かつ、前記重量比が1:1以上1:19以下であることが挙げられ、
また、前記第一の抗体の濃度が500 ng/mL以上1000 ng/mL以下、かつ、前記重量比が1:1以上1:19以下であること等が挙げられる。
【0046】
前記抗原の濃度、前記第一の抗体の濃度、及び前記重量比(前記第一の抗体:前記抗原及び前記第一の抗体以外のタンパク質)の組み合わせとしては下記が挙げられる。
例えば、前記抗原の濃度が0.004 ng/mL以上である場合においては、例えば、前記第一
の抗体の濃度が100 ng/mL以上1000 ng/mL以下、かつ、前記重量比が1:1以上1:19以下であることが挙げられる。
また、例えば、前記抗原の濃度が0.128 ng/mL以上である場合においては、
例えば、前記第一の抗体の濃度が100 ng/mL以上1000 ng/mL以下、かつ、前記重量比が1:9以上1:19以下であることが挙げられる。
また、例えば、前記抗原の濃度が0.032 ng/mL以上である場合においては、
例えば、前記第一の抗体の濃度が200 ng/mL以上1000 ng/mL以下、かつ、前記重量比が1:9以上1:19以下であることが挙げられる。
また、前記抗原の濃度が0.016 ng/mL以上である場合においては、
例えば、前記第一の抗体の濃度が200 ng/mL以上1000 ng/mL以下、かつ、前記重量比が1:9以上1:19以下であることが挙げられ、
また、前記第一の抗体の濃度が500 ng/mL以上1000 ng/mL以下、かつ、前記重量比が1:4以上1:9以下であることが挙げられる。
尚、上記のいずれの場合であっても、前記抗原の濃度の上限は特に制限されず、既出の数値を採用できる。
【0047】
また、本態様に係る方法を用いた場合に達成される「従来法と比較した感度の向上の倍率」は、次第に好ましくなる順に、2倍以上、4倍以上、8倍以上、16倍以上であり、一方
で、上限は特に制限されないが、例えば、1000倍以下、100倍以下、26.49倍以下である。
尚、上記の「従来法と比較した感度の向上の倍率」とは、前記第一の抗体の濃度が所定の濃度であり、前記抗原及び前記第一の抗体以外のタンパク質の濃度が0であり、前記抗原の濃度が所定の濃度である場合のS/N比を1としたときの倍率である。
例えば、後掲する表1-1を用いて説明すれば、例えば、比較例1における、NZ-1.2の
濃度が100 ng/mLであり、BSAの濃度が0であり、Recombinant Human Podoplanin Fcの濃
度が0.128 ng/mLである場合の結果である「0.98」を1とした場合、実施例1における、NZ-1.2の濃度が100 ng/mLであり、BSAの濃度が1900 ng/mLであり、Recombinant Human Podoplanin Fcの濃度が0.128 ng/mLである場合の結果である「2.38」は「2.43」に換算され
、このとき、「従来法と比較した感度の向上の倍率」は「2.43」である。
これと同様に、例えば、比較例1における、NZ-1.2の濃度が100 ng/mLであり、BSAの濃度が0であり、Recombinant Human Podoplanin Fcの濃度が0.064 ng/mLである場合の結果である「0.81」を1とした場合、実施例1における、NZ-1.2の濃度が100 ng/mLであり、BSAの濃度が1900 ng/mLであり、Recombinant Human Podoplanin Fcの濃度が0.064 ng/mLである場合の結果である「1.40」は「1.73」に換算され、このとき、「従来法と比較した感度の向上の倍率」は「1.73」である。
【0048】
また、前記第一の抗体の濃度と前記重量比(前記第一の抗体:前記抗原及び前記第一の抗体以外のタンパク質)との組み合わせとしては下記が挙げられる。
例えば、従来法と比較した感度の向上の倍率が2倍以上であり、かつ、前記第一の抗体
の濃度が100 ng/mL以上1000 ng/mL以下、かつ、前記重量比が1:9以上1:19以下であることが挙げられる。
また、例えば、従来法と比較した感度の向上の倍率が4倍以上であり、かつ、前記第一
の抗体の濃度が200 ng/mL以上500 ng/mL以下、かつ、前記重量比が1:4以上1:19以下であ
ることが挙げられ、
また、従来法と比較した感度の向上の倍率が4倍以上であり、かつ、前記第一の抗体の
濃度が500 ng/mL以上1000 ng/mL以下、かつ、前記重量比が1:1以上1:19以下であることが挙げられる。
また、例えば、従来法と比較した感度の向上の倍率が8倍以上であり、かつ、前記第一
の抗体の濃度が200 ng/mL以上500 ng/mL以下、かつ、前記重量比が1:9以上1:19以下であ
ることが挙げられ、
また、従来法と比較した感度の向上の倍率が8倍以上であり、かつ、前記第一の抗体の
濃度が500 ng/mL以上1000 ng/mL以下、かつ、前記重量比が1:4以上1:19以下であることが挙げられる。
また、例えば、従来法と比較した感度の向上の倍率が16倍以上であり、かつ、前記第一の抗体の濃度が500 ng/mL以上1000 ng/mL以下、かつ、前記重量比が1:4以上1:9以下であ
ることが挙げられる。
尚、上記のいずれの場合であっても、前記感度の向上の倍率の上限は特に制限されず、既出の数値を採用できる。
【0049】
本態様に係る方法が含む、工程(c)前記第一のエピトープを介して前記第一の抗体と結合した抗原を検出する工程は、前記工程(b)において前記第一のエピトープを介して前記第一の抗体と結合した抗原を検出することができる、当該技術分野で通常使用される方法における検出工程であってよい。
【0050】
例えば、前記被検試料中の抗原を予め標識しておき、該標識を用いて、前記第一のエピトープを介して前記第一の抗体と結合した抗原を検出する工程などが挙げられる。
前記標識としては、当該技術分野で通常使用される標識であってよく、例えば、酵素を用いた標識、放射性同位体を用いた標識等が挙げられる。
【0051】
酵素を用いた標識としては、例えば、酵素であるアルカリホスファターゼ(AP)を用いた標識、酵素である西洋わさびペルオキシダーゼ(HRP)を用いた標識等が挙げられる。
また、前記酵素を標識したビオチン結合性タンパク質(該ビオチン結合性タンパク質としては、例えば、アビジンやストレプトアビジン等)を、ビオチンを予め標識した抗原に該ビオチンを介して結合させる標識等が挙げられる。このような標識を用いた場合の、前記
第一のエピトープを介して前記第一の抗体と結合した抗原は、用いた標識の種類や性質に基づいて、当該技術分野で通常使用される方法で検出することができる。
【0052】
放射性同位体を用いた標識としては、例えば、放射性同位体であるI125を用いた標識等が挙げられる。このような標識を用いた場合の、前記第一のエピトープを介して前記第一の抗体と結合した抗原は、用いた標識の種類や性質に基づいて、当該技術分野で通常使用される方法で検出することができる。
【0053】
これらの他にも、前記当該技術分野で通常使用される方法における検出工程としては、例えば、表面プラズモン共鳴分析法における抗原を検出する工程、1種類のポリクローナル抗体を用いたラテックス凝集法における抗原を検出する工程、サンドイッチELISA法に
おける抗原を検出する工程等が挙げられる。尚、前記第一の担体は、当該各工程で使用される、当該技術分野で通常使用される処理が施されていてよい。
【0054】
表面プラズモン共鳴分析法は、具体的には次のような方法である。例えば、Biacore(
登録商標)を用いた方法が挙げられる。すなわち、センサーチップ(表面に金薄膜処理が施されている)上に前記第一の抗体を固相化し、センサーチップの裏側から金薄膜とガラスの境界面で全反射するように光を当て、一方で、前記抗原を含む前記被検試料をセンサーチップの表面に適用すると、前記抗原中の前記第一のエピトープを介して前記第一の抗体と前記抗原とが結合した場合に、センサーチップ表面の溶媒の屈折率が変化するため、これを測定することで、前記第一のエピトープを介して前記第一の抗体と結合した抗原を検出することができる方法である。このとき、前記第一の抗体は、前記工程(a)の工程によって、センサーチップ上に固定することができる。
【0055】
すなわち、当該方法は、
(a)前記被検試料中の前記抗原と免疫学的に結合する前記第一の抗体をセンサーチップに固相化する工程、
(b)前記被検試料中の前記抗原と前記第一の抗体とを、前記抗原中の前記第一のエピトープを介して結合させる工程、及び、
(c)センサーチップ表面の溶媒の屈折率を測定することで、前記第一のエピトープを介して前記第一の抗体と結合した抗原を検出する工程を含み、
前記(a)工程が、前記第一の抗体と、前記抗原及び前記第一の抗体以外のタンパク質とを含む溶液中で行われる、
被検試料中の抗原を測定する方法である。
【0056】
1種類のポリクローナル抗体を用いたラテックス凝集法は、具体的には次のような方法である。例えば、前記被検試料中の前記抗原と、前記抗原中のエピトープ(前記第一のエピトープが含まれる。)を介して免疫学的に結合する前記第一のポリクローナル抗体を前記第一の粒子に固相化し、前記第一の粒子と前記抗原を含む前記被検試料とを接触させ、前記被検試料中の前記抗原と前記第一の粒子とを前記エピトープを介して結合させ、ラテックス凝集法で通常使用される方法(例えば、濁度を測定する方法等)で、前記被検試料中の抗原を検出することができる方法である。
尚、前記第一のポリクローナル抗体は前記エピトープを介して前記抗原と結合するわけが、通常は第一の粒子は複数個であるため、ある第一の粒子上の前記第一のポリクローナル抗体は、前記エピトープのうち第一のエピトープを介して前記抗原と結合する一方、また別の第一の粒子上の前記第一のポリクローナル抗体は、前記エピトープのうち第二のエピトープを介して前記抗原と結合する。このことは、当業者であれば容易に理解することができる。
【0057】
すなわち、当該方法は、
(a)前記被検試料中の前記抗原と免疫学的に結合する前記第一のポリクローナル抗体を前記第一の粒子に固相化する工程、
(b)前記被検試料中の前記抗原と前記第一のポリクローナル抗体とを、前記抗原中のエピトープを介して懸濁液中で結合させる工程、及び、
(c)前記懸濁液の濁度を測定することで、前記エピトープを介して前記第一のポリクローナル抗体と結合した抗原を検出する工程を含み、
前記(a)工程が、前記第一のポリクローナル抗体と、前記抗原及び前記第一のポリクローナル抗体以外のタンパク質とを含む溶液中で行われる、
被検試料中の抗原を測定する方法である。
【0058】
サンドイッチELISA法は、具体的には次のような方法である。例えば、前記被検試料中
の前記抗原と免疫学的に結合する前記第一の抗体を前記第一の担体に固相化し、前記被検試料中の前記抗原と前記第一の抗体とを、前記抗原中の前記第一のエピトープを介して結合させ、前記被検試料中の前記抗原と、前記第一のエピトープとは異なる、前記抗原中の第二のエピトープを認識する、標識された第二の抗体とを、前記第二のエピトープを介して結合させ、前記標識を用いて、サンドイッチELISA法で通常使用される方法(例えば、
蛍光輝度を測定する方法等)で、前記被検試料中の抗原を検出することができる方法である。
【0059】
すなわち、当該方法は、
(a)前記被検試料中の前記抗原と免疫学的に結合する前記第一の抗体を前記第一の担体に固相化する工程、
(b)前記被検試料中の前記抗原と前記第一の抗体とを、前記抗原中の前記第一のエピトープを介して結合させる工程、及び
(c)前記被検試料中の前記抗原と、前記第一のエピトープとは異なる、前記抗原中の第二のエピトープを認識する、標識された第二の抗体とを、前記第二のエピトープを介して結合させ、前記標識を用いて、前記第一のエピトープを介して前記第一の抗体と結合した抗原を検出する工程を含み、
前記工程(a)が、前記第一の抗体と、前記抗原及び前記第一、第二の抗体以外のタンパク質とを含む溶液中で行われる、
被検試料中の抗原を測定する方法である。
【0060】
当該方法についてさらに詳述すると、前記第二の抗体は、前記被検試料中の抗原中の、前記第一のエピトープとは異なる第二のエピトープを介して前記抗原と免疫学的に結合し、かつ、標識がされたものであれば、特に制限されない。前記第二の抗体は、モノクローナル抗体であってもよいし、ポリクローナル抗体であってもよく、態様によって適宜選択することができる。前記第二の抗体としては、一種又は複数種を用いてよい。
尚、前記第一の抗体がモノクローナル抗体である場合、前記第二の抗体は、前記第二のエピトープ(すなわち、前記第一の抗体が認識する第一のエピトープとは異なるエピトープ)を認識する標識されたモノクローナル抗体を用いてもよい。また、前記第二のエピトープを認識できれば、前記第一のエピトープまでをも認識することができる標識されたポリクローナル抗体であってもよい。というのは、後者の場合、前記第一の抗体が結合する前記第一のエピトープと、前記第二の抗体が結合する前記第二のエピトープは、本方法で前記第二の抗体が検出される場合には実際には異なるものであり、前記第一のエピトープと前記第二のエピトープは区別されるものだからである。
また、前記第一の抗体がポリクローナル抗体である場合、前記第二の抗体は、前記第二のエピトープを認識できれば、前記第一の抗体が認識することができるエピトープを認識する標識されたモノクローナル抗体であってもよい。また、前記第二のエピトープを認識できれば、前記第一の抗体が認識することができるエピトープまでをも認識することができる標識されたポリクローナル抗体であってもよい。というのは、前者の場合、前記第一
の抗体が結合する前記第一のエピトープと、前記第二の抗体が結合する前記第二のエピトープは、本方法で前記第二の抗体が検出される場合には実際には異なるものであり、前記第一のエピトープと前記第二のエピトープは区別されるものだからである。後者の場合も同様である。
【0061】
前記第二の抗体としては、例えば、前記被検試料中の抗原がポドプラニンであって、前記第二の抗体がモノクローナル抗体(すなわち、抗ポドプラニンのモノクローナル抗体)であれば、例えば、NZ-1.2(株式会社医学生物学研究所、D320-3)、日本特許第6737482
号明細書に記載のAP201が挙げられる。また、EPR22182(Abcam社、ab236529)、PMab-1(Abcam社、ab256559)、EPR7072(Abcam社、ab128994)、18H5(Abcam社、ab10288 )、EPR7073(Abcam社、ab131216)、LpMab-7(Abcam社、ab256566)、RTD4E10(Abcam社、ab11936)、LF3/B7/D5B27(Novus Biologicals, LLC (R&D Systems Company)社、NB110-96423)、RTD4E10(Abcam社、ab11936)、8.1.1(Abcam社、ab92319)、E-1(SANTA CRUZ BIOTECHNOLOGY、sc-376695)、F-3(SANTA CRUZ BIOTECHNOLOGY、sc-376962)、B-11(SANTA CRUZ BIOTECHNOLOGY、sc-166906)等が挙げられる。
また、前記第二の抗体としては、例えば、前記被検試料中の抗原がポドプラニンであって、前記第二の抗体がポリクローナル抗体(すなわち、抗ポドプラニンのポリクローナル抗体)であれば、例えば、Anti-Podoplanin Antibody, Rabbit Polyclonal(Sino Biological Inc.、11065-T52)、Anti-Podoplanin antibody(Novopro社、106225)等が挙げら
れる。
【0062】
上記のことは、前記第二の抗体が、例えば、前記被検試料中の抗原が免疫グロブリン(その具体的態様も含む。)であって、前記第二の抗体がモノクローナル抗体(すなわち、抗免疫グロブリンのモノクローナル抗体)であるときも同様であり、既出の第一の抗体に関する説明を参照して第二の抗体を選択することができる。
また、前記第二の抗体が、例えば、前記被検試料中の抗原が免疫グロブリン(その具体的態様も含む。)であって、前記第二の抗体がポリクローナル抗体(すなわち、抗免疫グロブリンのポリクローナル抗体)であるときも同様であり、既出の第一の抗体に関する説明を参照して第二の抗体を選択することができる。
【0063】
前記標識は、サンドイッチELISA法で通常使用される標識であってよく、例えば、蛍光
色素を用いた標識、酵素を用いた標識等が挙げられる。
例えば、酵素を用いた標識であれば、例えば、酵素であるアルカリホスファターゼ(AP)や酵素である西洋わさびペルオキシダーゼ(HRP)を標識したビオチン結合性タンパク
質(該ビオチン結合性タンパク質としては、例えば、アビジンやストレプトアビジン等)を、ビオチンを標識した第二の抗体に該ビオチンを介して結合させる標識等が挙げられる。このとき、前記第一のエピトープを介して前記第一の抗体と結合した抗原は、前記第二の抗体に結合した酵素と基質との酵素反応により生じた発光輝度を通じて、当該技術分野で通常使用される方法で検出することができる。
【0064】
前記工程(c)中の、前記標識を用いて、前記第一のエピトープを介して前記第一の抗体と結合した抗原を検出する工程としては、前記標識の種類や性質に基づいて、サンドイッチELISA法で通常使用される検出工程であってよい。
【0065】
前記「前記抗原及び前記第一、第二の抗体以外のタンパク質」の具体的態様については、既出の「前記抗原及び前記第一の抗体以外のタンパク質」の説明において、さらに第二の抗体も含まないタンパク質として援用する。
【0066】
また、本態様に係る方法は、前記工程(a)~(c)の前後や途中に他の工程を含む方法であってもよい。そのような方法としては、例えば、イムノクロマト法が挙げられる。
【0067】
イムノクロマト法は、具体的には次のような方法である。例えば、膜(例えば、セルロース膜等)上に、前記被検試料中の前記抗原中の前記第一のエピトープを介して前記抗原と免疫学的に結合する前記第一の抗体(キャプチャ抗体として)を検出ラインに固相化し、一方で、前記抗原を含む前記被検試料の適用部に、前記第一のエピトープとは異なる、前記抗原中の第二のエピトープを介して前記抗原と免疫学的に結合し、かつ、標識がされた第二の抗体を準備する。そして、前記被検試料の適用部に前記抗原を含む前記被検試料を適用し、前記第二のエピトープを介して前記抗原と前記第二の抗体とを結合させて結合体とし、毛細管現象によって、当該結合体を前記検出ラインまで移動させ、前記第一のエピトープを介して前記結合体と前記第一の抗体とを結合させる。その後、前記標識を用いて、イムノクロマト法で通常使用される方法(例えば、金コロイドの発色を測定する方法等)で、前記被検試料中の抗原を検出することができる方法である。尚、前記膜上のコントロールライン上に、前記第二の抗体と免疫学的に結合する第三の抗体を固相化してもよい。このとき、前記第一の抗体及び前記第三の抗体は、前記工程(a)によって、前記膜上に固定することができる。
【0068】
すなわち、当該方法は、
(a)前記被検試料中の前記抗原と免疫学的に結合する前記第一の抗体を膜上の検出ライン上に固相化する工程、
(d)前記抗原と、前記第一のエピトープとは異なる、前記抗原中の第二のエピトープを介して免疫学的に結合するものであって、かつ、標識がされた第二の抗体を、前記膜上における、前記抗原を含む前記被検試料の適用部に準備する工程、
(e)前記適用部に前記抗原を含む前記被検試料を適用し、前記第二のエピトープを介して前記抗原と前記第二の抗体とを結合させて結合体とし、当該結合体を前記検出ラインまで移動させる工程、
(b)前記被検試料中の前記抗原と前記第一の抗体とを、前記第一のエピトープを介して結合させる工程、及び、
(c)前記標識を用いて、前記第一のエピトープを介して前記第一の抗体と結合した抗原を検出する工程を含み、
前記(a)工程が、前記第一の抗体と、前記抗原及び前記第一、第二の抗体以外のタンパク質とを含む溶液を用いて行われる、
被検試料中の抗原を測定する方法である。
【0069】
このとき、当該方法は、前記工程(d)の前に、工程(f)前記膜上のコントロールライン上に、前記第二の抗体と免疫学的に結合する第三の抗体を、前記工程(a)と同様の工程で固相化する工程を含んでもよい。このとき、前記(a)工程における「前記第一の抗体と、前記抗原及び前記第一、第二の抗体以外のタンパク質」は、「前記抗原及び前記第一、第二、第三の抗体以外のタンパク質」とする。当該工程(f)は前記工程(a)の前に行われてもよいし、前記工程(d)の前であれば、前記工程(a)の後に行われてもよい。また、前記工程(a)と同時に行われてもよい。
また、当該方法が前記工程(f)を含む場合、前記工程(b)の後であって、前記工程(c)の前若しくは後、又は前記工程(c)と同時に、工程(g)前記標識を用いて、前記第三の抗体と免疫学的に結合した前記第二の抗体を検出する工程を含んでもよい。
【0070】
当該方法についてさらに詳述すると、前記第二の抗体は、前記被検試料中の抗原中の、前記第一のエピトープとは異なる、第二のエピトープを介して前記抗原と結合するものであって、かつ、標識がされたものであれば、特に制限されない。前記第二の抗体は、モノクローナル抗体であってもよいし、ポリクローナル抗体であってもよく、態様によって適宜選択することができる。前記第二の抗体としては、一種又は複数種を用いてよい。
尚、前記第一の抗体がモノクローナル抗体である場合、前記第二の抗体は、前記第二の
エピトープ(すなわち、前記第一の抗体が認識する第一のエピトープとは異なるエピトープ)を認識する標識されたモノクローナル抗体を用いてもよい。また、前記第二のエピトープを認識できれば、前記第一のエピトープまでをも認識することができる標識されたポリクローナル抗体であってもよい。というのは、後者の場合、前記第一の抗体が結合する前記第一のエピトープと、前記第二の抗体が結合する前記第二のエピトープは、本方法で前記第二の抗体が検出される場合には実際には異なるものであり、前記第一のエピトープと前記第二のエピトープは区別されるものだからである。
また、前記第一の抗体がポリクローナル抗体である場合、前記第二の抗体は、前記第二のエピトープを認識できれば、前記第一の抗体が認識することができるエピトープを認識する標識されたモノクローナル抗体であってもよい。また、前記第二のエピトープを認識できれば、前記第一の抗体が認識することができるエピトープまでをも認識することができる標識されたポリクローナル抗体であってもよい。というのは、前者の場合、前記第一の抗体が結合する前記第一のエピトープと、前記第二の抗体が結合する前記第二のエピトープは、本方法で前記第二の抗体が検出される場合には実際には異なるものであり、前記第一のエピトープと前記第二のエピトープは区別されるものだからである。後者の場合も同様である。
【0071】
前記第二の抗体の具体的態様は、前記サンドイッチELISA法における前記第二の抗体の
説明を援用する。
【0072】
前記標識は、イムノクロマト法で通常使用される標識であってよく、例えば、金コロイド等が挙げられる。
【0073】
前記工程(c)前記標識を用いて、前記第一のエピトープを介して前記第一の抗体と結合した抗原を検出する工程としては、前記標識の種類や性質に基づいて、イムノクロマト法で通常使用される検出工程であってよい。
【0074】
前記「前記抗原及び前記第一、第二の抗体以外のタンパク質」の具体的態様については、既出の「前記抗原及び前記第一の抗体以外のタンパク質」の説明を、さらに第二の抗体も含まないタンパク質として援用する。
【0075】
前記第三の抗体は、前記標識を用いて、前記第三の抗体と免疫学的に結合した前記第二の抗体を検出することができる限り、特に制限されない。前記第三の抗体は、モノクローナル抗体であってもよいし、ポリクローナル抗体であってもよく、態様によって適宜選択することができる。前記第三の抗体としては、一種又は複数種を用いてよい。
前記第三の抗体としては、例えば、前記被検試料中の抗原がポドプラニンであって、前記第二の抗体が抗ポドプラニン抗体であれば、抗ポドプラニン抗体に対する抗体である。また、前記被検試料中の抗原が免疫グロブリンであって、前記第二の抗体が抗免疫グロブリン抗体であれば、抗免疫グロブリン抗体に対する抗体である。
【0076】
前記工程(g)前記標識を用いて、前記第三の抗体と免疫学的に結合した前記第二の抗体を検出する工程としては、前記標識の種類や性質に基づいて、イムノクロマト法で通常使用される検出工程であってよい。
【0077】
また、本態様に係る方法は、複数種の担体及び複数種の抗体を用いた方法とすることもできる。例えば、ラテックス凝集法において複数種の担体及び複数種のモノクローナル抗体を用いる方法や、ラテックス凝集法において複数種の担体及び複数種のポリクローナル抗体を用いる方法、ラテックス凝集法において、2種類の担体、1種類のモノクローナル抗体、及び1種類のポリクローナル抗体を用いる方法等が挙げられる。
【0078】
ラテックス凝集法において、例えば、2種類の担体及び2種類のモノクローナル抗体を用いる方法としては、具体的には次のような方法である。例えば、前記被検試料中の前記抗原中の前記第一のエピトープを介して、前記抗原と免疫学的に結合する第一のモノクローナル抗体を第一の粒子に固相化し、別途、前記被検試料中の前記抗原中の、前記第一のエピトープとは異なる第二のエピトープを介して、前記抗原と免疫学的に結合する、前記第一のモノクローナル抗体とは異なる第二のモノクローナル抗体を第二の粒子に固相化する。そして、両者を含む懸濁液と、前記抗原を含む前記被検試料とを接触させ、前記被検試料中の前記抗原と前記第一の粒子とを前記第一のエピトープを介して結合させ、かつ、前記被検試料中の前記抗原と前記第二の粒子とを前記第二のエピトープを介して結合させ、ラテックス凝集法で通常使用される方法(例えば、濁度を測定する方法等)で、前記被検試料中の抗原を検出することができる方法である。
【0079】
すなわち、当該方法は、
(a)前記被検試料中の前記抗原と免疫学的に結合する第一のモノクローナル抗体を第一の粒子に固相化する工程、
(a’)前記被検試料中の前記抗原と免疫学的に結合する、前記第一のモノクローナル抗体が認識する第一のエピトープとは異なる第二のエピトープを認識する第二のモノクローナル抗体を第二の粒子に固相化する工程、
(b)懸濁液中で、前記被検試料中の前記抗原と前記第一のモノクローナル抗体とを、前記第一のエピトープを介して結合させる工程、
(b’)前記懸濁液中で、前記被検試料中の前記抗原と前記第二のモノクローナル抗体とを、前記第二のエピトープを介して結合させる工程、及び、
(c)前記懸濁液の濁度を測定することで、前記第一のエピトープを介して前記第一のモノクローナル抗体と結合し、かつ、前記第二のエピトープを介して前記第二のモノクローナル抗体と結合した抗原を検出する工程を含み、
前記(a)工程が、前記第一のモノクローナル抗体と、前記抗原及び前記第一、第二のモノクローナル抗体以外のタンパク質とを含む溶液中で行われ、及び
前記(a’)工程が、前記第二のモノクローナル抗体と、前記抗原及び前記第一、第二のモノクローナル抗体以外のタンパク質とを含む溶液中で行われ、
工程(a)と工程(a’)の順序は問わず、
工程(b)と工程(b’)の順序は問わない、又は、同時に行われる、
被検試料中の抗原を測定する方法である。
【0080】
当該方法についてさらに詳述すると、前記第二のモノクローナル抗体は、前記被検試料中の前記抗原中の、前記第一のエピトープとは異なる第二のエピトープを介して前記抗原と免疫学的に結合するものであれば、特に制限されない。前記第二の抗体としては、一種又は複数種を用いてよい。
【0081】
前記第二のモノクローナル抗体の具体的態様は、前記サンドイッチELISA法における前
記第二の抗体であって、モノクローナル抗体である場合の説明を援用する。
【0082】
前記第二の粒子の具体的態様については、既出の「第一の担体」が粒子である場合の説明を援用する。第一の粒子と第二の粒子は同一種でも異種でもよいが、同一種が好ましい。
【0083】
「前記抗原及び前記第一、第二のモノクローナル抗体以外のタンパク質」の具体的態様については、既出の「前記抗原及び前記第一の抗体以外のタンパク質」の説明を、「前記抗原及び前記第一のモノクローナル抗体以外のタンパク質」である場合であって、さらに第二のモノクローナル抗体も含まないタンパク質として援用する。
【0084】
ラテックス凝集法において、例えば、2種類の担体及び2種類のポリクローナル抗体を用いる方法としては、具体的には次のような方法である。例えば、前記被検試料中の前記抗原中の前記第一のエピトープを介して、前記抗原と免疫学的に結合する第一のポリクローナル抗体を第一の粒子に固相化し、別途、前記被検試料中の前記抗原中の、前記第一のエピトープとは異なる第二のエピトープを介して、前記抗原と免疫学的に結合する、前記第一のポリクローナル抗体とは異なる第二のポリクローナル抗体を第二の粒子に固相化する。そして、両者を含む懸濁液と、前記抗原を含む前記被検試料とを接触させ、前記被検試料中の前記抗原と前記第一の粒子とを前記第一のエピトープを介して結合させ、かつ、前記被検試料中の前記抗原と前記第二の粒子とを前記第二のエピトープを介して結合させ、ラテックス凝集法で通常使用される方法(例えば、濁度を測定する方法等)で、前記被検試料中の抗原を検出することができる方法である。
【0085】
すなわち、当該方法は、
(a)前記被検試料中の前記抗原と免疫学的に結合する第一のポリクローナル抗体を第一の粒子に固相化する工程、
(a’)前記被検試料中の前記抗原と免疫学的に結合する、前記第一のポリクローナル抗体が認識する第一のエピトープとは異なる第二のエピトープを認識する第二のポリクローナル抗体を第二の粒子に固相化する工程、
(b)懸濁液中で、前記被検試料中の前記抗原と前記第一のポリクローナル抗体とを、前記第一のエピトープを介して結合させる工程、
(b’)前記懸濁液中で、前記被検試料中の前記抗原と前記第二のポリクローナル抗体とを、前記第二のエピトープを介して結合させる工程、及び、
(c)前記懸濁液の濁度を測定することで、前記第一のエピトープを介して前記第一のポリクローナル抗体と結合し、かつ、前記第二のエピトープを介して前記第二のポリクローナル抗体と結合した抗原を検出する工程を含み、
前記(a)工程が、前記第一のポリクローナル抗体と、前記抗原及び前記第一、第二のポリクローナル抗体以外のタンパク質とを含む溶液中で行われ、及び、
前記(a’)工程が、前記第二のポリクローナル抗体と、前記抗原及び前記第一、第二のポリクローナル抗体以外のタンパク質とを含む溶液中で行われ、
工程(a)と工程(a’)の順序は問わず、
工程(b)と工程(b’)の順序は問わない、又は、同時に行われる、
被検試料中の抗原を測定する方法である。
【0086】
当該方法についてさらに詳述すると、前記第二のポリクローナル抗体は、前記被検試料中の前記抗原中の、前記第一のエピトープとは異なる第二のエピトープを介して前記抗原と免疫学的に結合するものであれば、特に制限されない。前記第二の抗体としては、一種又は複数種を用いてよい。
【0087】
前記第二のポリクローナル抗体の具体的態様は、前記サンドイッチELISA法における前
記第二の抗体がポリクローナル抗体である場合の説明を援用する。
【0088】
前記第二の粒子の具体的態様については、既出の「第一の担体」が粒子である場合の説明を援用する。第一の粒子と第二の粒子は同一種でも異種でもよいが、同一種が好ましい。
【0089】
「前記抗原及び前記第一、第二のポリクローナル抗体以外のタンパク質」の具体的態様については、既出の「前記抗原及び前記第一の抗体以外のタンパク質」の説明を、「前記抗原及び前記第一のポリクローナル抗体以外のタンパク質」である場合であって、さらに第二のポリクローナル抗体も含まないタンパク質として援用する。
【0090】
ラテックス凝集法において、例えば、2種類の担体、1種類のモノクローナル抗体、及び1種類のポリクローナル抗体を用いる方法としては、具体的には次のような方法である。例えば、前記被検試料中の前記抗原中の前記第一のエピトープを介して、前記抗原と免疫学的に結合するモノクローナル抗体を第一の粒子に固相化し、別途、前記被検試料中の前記抗原中の、前記第一のエピトープとは異なる第二のエピトープを介して、前記抗原と免疫学的に結合する、前記ポリクローナル抗体を第二の粒子に固相化する。そして、両者を含む懸濁液と、前記抗原を含む前記被検試料とを接触させ、前記被検試料中の前記抗原と前記第一の粒子とを前記第一のエピトープを介して結合させ、かつ、前記被検試料中の前記抗原と前記第二の粒子とを前記第二のエピトープを介して結合させ、ラテックス凝集法で通常使用される方法(例えば、濁度を測定する方法等)で、前記被検試料中の抗原を検出することができる方法である。
【0091】
すなわち、当該方法は、
(a)前記被検試料中の前記抗原と免疫学的に結合するモノクローナル抗体を第一の粒子に固相化する工程、
(a’)前記被検試料中の前記抗原と免疫学的に結合する、前記モノクローナル抗体が認識する第一のエピトープとは異なる第二のエピトープを認識するポリクローナル抗体を第二の粒子に固相化する工程、
(b)懸濁液中で、前記被検試料中の前記抗原と前記モノクローナル抗体とを、前記第一のエピトープを介して結合させる工程、
(b’)前記懸濁液中で、前記被検試料中の前記抗原と前記ポリクローナル抗体とを、前記第二のエピトープを介して結合させる工程、及び、
(c)前記懸濁液の濁度を測定することで、前記第一のエピトープを介して前記モノクローナル抗体と結合し、かつ、前記第二のエピトープを介して前記ポリクローナル抗体と結合した抗原を検出する工程を含み、
前記(a)工程が、前記モノクローナル抗体と、「前記抗原及び前記モノクローナル抗体、前記ポリクローナル抗体以外のタンパク質」とを含む溶液中で行われ、及び、
前記(a’)工程が、前記ポリクローナル抗体と、「前記抗原及び前記モノクローナル抗体、前記ポリクローナル抗体以外のタンパク質」とを含む溶液中で行われ、
工程(a)と工程(a’)の順序は問わず、
工程(b)と工程(b’)の順序は問わない、又は、同時に行われる、
被検試料中の抗原を測定する方法である。
【0092】
当該方法についてさらに詳述すると、前記ポリクローナル抗体は、前記被検試料中の前記抗原中の、前記第一のエピトープとは異なる第二のエピトープを介して前記抗原と免疫学的に結合するものであれば、特に制限されない。前記第二の抗体としては、一種又は複数種を用いてよい。
【0093】
尚、前記ポリクローナル抗体は、前記第二のエピトープを認識できれば、前記第一のエピトープまでをも認識することができるポリクローナル抗体であってもよい。というのは、前記モノクローナル抗体が結合する前記第一のエピトープと、前記ポリクローナル抗体が結合する前記第二のエピトープは、本方法で前記抗原が検出される場合には実際には異なるものであり、前記第一のエピトープと前記第二のエピトープは区別されるものだからである。
また、前記モノクローナル抗体は、前記第一のエピトープを認識できれば、前記ポリクローナル抗体が認識することができるエピトープを認識するモノクローナル抗体であってもよい。というのは、前記モノクローナル抗体が結合する前記第一のエピトープと、前記ポリクローナル抗体が結合する前記第二のエピトープは、本方法で前記抗原が検出される場合には実際には異なるものであり、前記第一のエピトープと前記第二のエピトープは区別されるものだからである。
【0094】
前記ポリクローナル抗体の具体的態様は、前記サンドイッチELISA法における前記第二
の抗体がポリクローナル抗体である場合の説明を援用する。
【0095】
前記第二の粒子の具体的態様については、既出の「第一の担体」が粒子である場合の説明を援用する。第一の粒子と第二の粒子は同一種でも異種でもよいが、同一種が好ましい。
【0096】
「前記抗原及び前記モノクローナル抗体、前記ポリクローナル抗体以外のタンパク質」の具体的態様については、既出の「前記抗原及び前記第一の抗体以外のタンパク質」の説明を、「前記抗原及び前記モノクローナル抗体以外のタンパク質」である場合であって、さらに前記ポリクローナル抗体も含まないタンパク質として援用する。
【0097】
また、マルチアッセイ法において、例えば、複数種の担体及び複数種の抗体を用いる方法がある。例えば、ルミネックス法において、例えば、2種類の担体及び2種類の抗体を用いる方法としては、具体的には次のような方法である。例えば、前記被検試料中の第一の抗原と免疫学的に結合する第一の抗体を第一の粒子に固相化する。別途、前記被検試料中の第二の抗原と免疫学的に結合する第二の抗体を第二の粒子に固相化する。前記被検試料中の前記第一の抗原と前記第一の抗体とを、前記第一の抗原中の第一のエピトープを介して結合させ、また、前記被検試料中の前記第二の抗原と前記第二の抗体とを、前記第二の抗原中の第一のエピトープを介して結合させる。次に、前記被検試料中の前記第一の抗原と、前記第一の抗原中の前記第一のエピトープとは異なる第二のエピトープを認識する、標識された第三の抗体とを、前記第一の抗原中の前記第二のエピトープを介して結合させる。また、前記被検試料中の前記第二の抗原と、前記第二の抗原中の前記第一のエピトープとは異なる第二のエピトープを認識する、標識された前記第四の抗体とを、前記第二の抗原中の前記第二のエピトープを介して結合させる。そして、前記標識を用いて、ルミネックス法で通常使用される方法(例えば、蛍光輝度を測定する方法等)で、前記被検試料中の抗原を検出することができる方法である。
尚、前記第一の粒子と前記第二の粒子は、同一波長の励起光で励起される蛍光色素を含み、かつ、該励起光で励起されたときに発する蛍光の輝度で識別できるように該蛍光色素を含むものである。後者としては、例えば、前記第一の粒子と前記第二の粒子とで、蛍光色素の含量が異なることなどが挙げられる。
また、前記被検試料中の第三の抗原を測定する場合には、上記の説明を参考にして、前記被検試料中の前記第三の抗原と第一のエピトープを介して免疫学的に結合する第三の抗体と、第三の粒子とを用い、前記第三の抗原中の前記第一のエピトープとは異なる第二のエピトープを認識する、標識された第五の抗体を用いて同様に行うことができる。このことは、前記被検試料中の第四の抗原、第五の抗原、及びそれ以降の抗原を測定する場合でも同様である。
【0098】
すなわち、当該方法は、例えば、前記被検試料中の第一、第二の抗原を測定する方法を挙げれば、
(a)前記被検試料中の第一の抗原と免疫学的に結合する第一の抗体を第一の粒子に固相化する工程、
(a’)前記被検試料中の第二の抗原と免疫学的に結合する第二の抗体を第二の粒子に固相化する工程、
(b)前記被検試料中の前記第一の抗原と前記第一の抗体とを、前記第一の抗原中の第一のエピトープを介して結合させる工程、
(b’)前記被検試料中の前記第二の抗原と前記第二の抗体とを、前記第二の抗原中の前記第一のエピトープを介して結合させる工程、及び、
(c)前記被検試料中の前記第一の抗原と、前記第一の抗原中の前記第一のエピトープ
とは異なる第二のエピトープを認識する、標識された第三の抗体とを、前記第一の抗原中の前記第二のエピトープを介して結合させ、かつ、
前記被検試料中の前記第二の抗原と、前記第二の抗原中の前記第一のエピトープとは異なる第二のエピトープを認識する、標識された前記第四の抗体とを、前記第二の抗原中の前記第二のエピトープを介して結合させ、
前記標識を用いて、前記第一の抗原中の前記第一のエピトープを介して前記第一の抗体と結合した前記第一の抗原、及び前記第二の抗原中の前記第一のエピトープを介して前記第三の抗体と結合した前記第二の抗原を検出する工程を含み、
前記(a)工程が、前記第一の抗体と、前記第一の抗原及び前記第一、第二、第三、第四の抗体以外のタンパク質とを含む溶液中で行われ、及び、
前記(a’)工程が、前記第三の抗体と、前記抗原及び前記第一、第二、第三、第四の抗体以外のタンパク質とを含む溶液中で行われ、
工程(a)と工程(a’)の順序は問わず、
工程(b)と工程(b’)の順序は問わない、又は、同時に行われ、
前記第一の粒子と前記第二の粒子は、同一波長の励起光で励起され、異なる量の蛍光色素を含む、
被検試料中の抗原を測定する方法である。
【0099】
当該方法についてさらに詳述すると、前記被検試料中の前記第一の抗原を検出するまでの一連の工程に着目すれば、既出のサンドイッチELISA法において、担体として前記第一
の粒子を用いた場合に相当する。これは、前記被検試料中の前記第二の抗原を検出するまでの一連の工程についても同様である。したがって、詳細については既出のサンドイッチELISA法の説明を援用する。
【0100】
前記第一の粒子、前記第二の粒子の具体的態様については、前記第一の粒子と前記第二の粒子は、同一波長の励起光で励起される蛍光色素を含み、かつ、該励起光で励起されたときに発する蛍光の輝度で識別できるように該蛍光色素を含むこと、を除いて、既出の「第一の担体」が粒子である場合の説明を援用する。例えば、前記第一の粒子と前記第二の粒子とは、同一波長の励起光で励起される蛍光色素を含み、かつ、蛍光色素の含量が異なること、を除いて同種であることが好ましい。
【0101】
「前記抗原及び前記第一、第二、第三、第四の抗体以外のタンパク質」の具体的態様については、既出の「前記抗原及び前記第一の抗体以外のタンパク質」の説明を、さらに第二、第三、第四の抗体も含まないタンパク質として援用する。
【0102】
<固相化抗体の製造方法>
本発明の他の態様は、
被検試料中の抗原と免疫学的に結合する抗体を担体に固相化する工程を含み、
前記固相化する工程が、前記抗体と、前記抗原及び前記抗体以外のタンパク質とを含む溶液中で行われる、
被検試料中の抗原と免疫学的に結合する固相化抗体の製造方法である。
【0103】
本態様が含む、「被検試料中の抗原と免疫学的に結合する抗体を担体に固相化する工程」については、前記態様に係る「被検試料中の抗原を測定する方法」における前記工程(a)の説明を援用する。このとき、本工程における「抗体」、「担体」は、それぞれ、前記工程(a)における「第一の抗体」、「第一の担体」に相当する。
【0104】
また、「前記固相化する工程が、前記抗体と、前記抗原及び前記抗体以外のタンパク質とを含む溶液中で行われる」ことについては、前記態様に係る「被検試料中の抗原を測定する方法」における「前記工程(a)が、前記第一の抗体と、前記抗原及び前記第一の抗
体以外のタンパク質とを含む溶液中で行われる」ことの説明を援用する。このとき、本工程における「抗体」は、前記態様に係る「被検試料中の抗原を測定する方法」における「第一の抗体」に相当する。
【実施例0105】
以下に実施例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0106】
[実施例1]サンドイッチELISA法
第一の抗体としての抗ポドプラニン抗体NZ-1.2(MBL社、N320-3)を終濃度100 ng/mL、200 ng/mL、500 ng/mL、又は1000 ng/mLとなるようD-PBS(富士フィルム和光純薬株式会
社)で希釈した。この際、NZ-1.2:BSAの重量比が1:1、1:4、1:9、又は1:19となるようにBSA Reagent grade(プロリエント社、PRL68700-1)を添加して、固相化溶液とした。該
固相化溶液を白色マイクロタイタープレート(Thermo Fisher Scientific社、436110)に100 μL/well添加して、4℃で一昼夜静置し、該プレートにNZ-1.2を固相化した。その後
、該プレートをPBS-Tで4回洗浄し、1 %(w/v) BSA及び0.05% Tween 20を含むブロッキング溶液を添加し、室温で2時間振盪し、ブロッキングした。その後、PBS-Tで4回洗浄し、NZ-1.2が固相化されたプレートを得た。
【0107】
Recombinant Human Podoplanin Fc(R&D Systems社、3670-PL-050)を市販の健常者血
清(コスモバイオ株式会社)に終濃度0.2 ng/mL、0.4 ng/mL、0.8 ng/mL、1.6 ng/mL、3.2 ng/mL、又は6.4 ng/mLとなるよう溶解した。これを、希釈用緩衝液(0.098 %(w/v) BSA、0.0147 mol/Lアルギニン、0.00431% アジ化ナトリウム、0.049% SDS、0.049% Tween 80、0.56% リピジュアBL802(日油株式会社))の混合液で50倍希釈して被検試料とした。
その後、上記で作製したプレートに、該被検試料を添加し、4℃で一昼夜静置した。その
後、PBS-Tで4回洗浄した。尚、Recombinant Human Podoplanin Fcは上記のように希釈さ
れたため、プレートへ添加する際の被検試料中のRecombinant Human Podoplanin Fcの終
濃度は、それぞれ、0.004 ng/mL、0.008 ng/mL、0.016 ng/mL、0.032 ng/mL、0.064 ng/mL、0.128 ng/mLであった。
これに、終濃度800 ng/mLとなるよう、0.5%リピジュアBL802/PBSで希釈した、第二の抗体としてのビオチン標識抗ポドプラニン抗体AP201-F(ab’)2を添加し、室温で1時間振盪
した。その後、PBS-Tで6回洗浄した。その後、HRP溶液(終濃度200 ng/mL Poly-HRP標識
ストレプトアビジン(Fitzgerald社、85R-202)、5 %(w/v) BSA、200 mMアルギニン、0.05% Tween 20)を添加し、室温で20分間振盪した。その後、PBS-Tで9回洗浄した。次に、
発光試薬として、Super Signal ELISA Pico(Thermo Fisher Scientific社、37069)を添加し、室温で10分間反応させ、マイクロプレートリーダー(モレキュラーデバイス社、Spectra MAX iD3)を用いて発光強度を測定した。
【0108】
[比較例1]
BSA Reagent gradeを添加せずに固相化溶液としたこと以外は、実施例1と同様にした
。
【0109】
[比較例2]
NZ-1.2及びBSA Reagent gradeを含まない固相化溶液としたこと以外は、実施例1と同
様にした。
【0110】
[結果]
結果を表1-1~表1-4に示す。尚、表中の結果は、各条件においてバックグラウンドを1.00として換算した場合の結果であり、前記S/N比を表すものである。
【0111】
【0112】
【0113】
【0114】
【0115】
また、実施例1において、NZ-1.2を終濃度500 ng/mLとなるようD-PBS(富士フィルム和光純薬株式会社)で希釈し、固相化溶液中のBSA濃度が、0.00005 %(w/v)、0.0002 %(w/v)、0.00045 %(w/v)、0.00095 %(w/v)(それぞれ、NZ-1.2:BSAの重量比が1:1、1:4、1:9、1:19である。)となるようにBSA Reagent gradeを添加し、Recombinant Human Podoplanin
Fcを市販の健常者血清に終濃度6.4 ng/mL(プレートへ添加する際の被検試料中のRecombinant Human Podoplanin Fcの終濃度は、0.128 ng/mL)となるよう溶解した場合の結果を、
図1、
図2に示す。尚、各図の各結果は、比較例1の結果を100%としたときの相対値で示したものである。また、
図1と
図2は、横軸の値を、「固相化溶液中のBSA濃度 %(w/v)」とするか「重量比(抗体NZ-1.2:BSA)」とするかの違いである。
また、実施例1において、NZ-1.2を終濃度100 ng/mLとなるようD-PBSで希釈し、固相化溶液中のBSA濃度が、0.00001 %(w/v)、0.00004 %(w/v)、0.00009 %(w/v)、0.00019 %(w/v)(それぞれ、NZ-1.2:BSAの重量比が1:1、1:4、1:9、1:19である。)となるようにBSA Reagent gradeを添加し、Recombinant Human Podoplanin Fcを市販の健常者血清に終濃度6.4 ng/mL(プレートへ添加する際の被検試料中のRecombinant Human Podoplanin Fcの終濃度は、0.128 ng/mL)となるよう溶解した場合の結果を、
図3、
図4に示す。尚、各図の
各結果は、比較例1を100%としたときの相対値で示したものである。また、
図3と
図4は、横軸の値を、「固相化溶液中のBSA濃度 %(w/v)」とするか「重量比(抗体NZ-1.2:BSA)」とするかの違いである。
【0116】
また、実施例1において、NZ-1.2を終濃度100 ng/mL、200 ng/mL、500 ng/mL、又は1000 ng/mLとなるようD-PBSで希釈し、NZ-1.2:BSAの重量比が1:9となるようにBSA Reagent gradeを添加し(それぞれ、固相化溶液中のBSA濃度が、0.00009 %(w/v)、0.00018 %(w/v)
、0.00045 %(w/v)、0.0009 %(w/v)である。)(
図5の黒色バー)、又は添加せず(
図5
の白色バー)、Recombinant Human Podoplanin Fcを市販の健常者血清に終濃度6.4 ng/mL(プレートへ添加する際の被検試料中のRecombinant Human Podoplanin Fcの終濃度は、0.128 ng/mL)となるよう溶解した場合の結果を、
図5に示す。
図5の通り、BSA Reagent gradeを添加しない場合に比べて、BSA Reagent gradeを添加した場合は約5分の1の抗体量で同等の検出感度であることが分かった。具体的には、終濃度1000 ng/mL(固相化溶液中のBSA濃度が0.0009 %(w/v)である。)の場合の白色バーと、終濃度200 ng/mL(固相化溶液中のBSA濃度が0.00018 %(w/v)である。)の場合の黒色バーとで、同等の効果が得られることが分かった。
【0117】
また、実施例1において、NZ-1.2を終濃度500 ng/mLとなるようD-PBSで希釈し、NZ-1.2:BSAの重量比が1:1、1:4、1:9、1:19(それぞれ、固相化溶液中のBSA濃度が、0.00005 %(w/v)、0.0002 %(w/v)、0.00045 %(w/v)、0.00095 %(w/v)である。)となるようにBSA Reagent gradeを添加し、Recombinant Human Podoplanin Fcを市販の健常者血清に終濃度6.4
ng/mL(プレートへ添加する際の被検試料中のRecombinant Human Podoplanin Fcの終濃
度は、0.128 ng/mL)となるよう溶解した場合のバックグラウンドの結果を、
図6、
図7
に示す。尚、
図6と
図7は、横軸の値を、「固相化溶液中のBSA濃度 %(w/v)」とするか「重量比(抗体NZ-1.2:BSA)」とするかの違いである。
図6、
図7の通り、固相化溶液中のBSA濃度が例えば0.0002 %(w/v)~0.00095 %(w/v)の場合(重量比(抗体NZ-1.2:BSA)が例えば1:4~1:19の場合)にバックグラウンドが大き
く低下することが分かった。
【0118】
[実施例2]
次のようにしたこと以外は、実施例1と同様にした。
第一の抗体としての抗ポドプラニン抗体NZ-1.2(株式会社医学生物学研究所、N320-3)を終濃度500 ng/mL、BSA Reagent grade(Proliant Biologicals社、PRL68700-1)を終濃度4500 ng/mL(固相化溶液中のBSA濃度が0.00045 %(w/v)である。)となるようD-PBS(富士フィルム和光純薬株式会社)で希釈し、固相化溶液とした。
Recombinant Human Podoplanin Fc(R&D社、3670-PL-050)を終濃度0.2 ng/mL、0.4 ng/mL、0.8 ng/mL、1.6 ng/mL、3.2 ng/mL、6.4 ng/mL、12.8 ng/mL、又は25.6 ng/mLとな
るよう市販の健常者血清(コスモバイオ株式会社)に溶解し、検量線用検体とした。試験では、検量線用検体を実施例1で用いた希釈用緩衝液で100倍希釈して用いた。すなわち
、検量線用検体はこのように希釈されているため、検量線用検体中のRecombinant Human Podoplanin Fcの終濃度は、それぞれ、0.002 ng/mL、0.004 ng/mL、0.008 ng/mL、0.016 ng/mL、0.032 ng/mL、0.064 ng/mL、0.128 ng/mL、0.256 ng/mLであった。
また、ステージI、IIIまたはIVの肺がん患者血漿(株式会社ケー・エー・シー)を実施例1で用いた希釈用緩衝液で100倍希釈して被検試料(肺がん患者被検試料)とし、ポド
プラニンの検出試験を行った。
【0119】
また、健常者血清または血漿(それぞれ、株式会社ケー・エー・シー、コスモバイオ株式会社)を実施例1で用いた希釈用緩衝液で100倍希釈して被検試料(健常者被検試料)
とし、ポドプラニンの検出試験を行った。
【0120】
[比較例3]
被検試料として、実施例2で準備した、肺がん患者被検試料と健常者被検試料を用いた。市販のポドプラニン定量ELISAキット(Ray Bio社のPodoplanin ELISA Kit )を使用し
、添付文書にしたがい、臨床検体の希釈倍率を15倍希釈(添付文書に基づく推奨条件)として、ポドプラニンの検出試験を行った。
【0121】
[結果]
実施例2の結果を
図8に、比較例3の結果を
図9に示す。比較例3では、偽陽性が検出され、かつ、血中のポドプラニン量を測定ことができないが、実施例2では、健常者検体から偽陽性が検出されず、かつ、肺がん患者の血漿から健常者よりも明らかに高い濃度のポドプラニン量を検出することができる。
【0122】
[実施例3]
第一の抗体としての抗Goat Anti-Mouse IgG Fc抗体(Abcam社、ab97261)を終濃度200 ng/mLとなるようD-PBS(富士フィルム和光純薬株式会社)で希釈した。この際、終濃度が1800 ng/mL(重量比(抗Goat Anti-Mouse IgG Fc抗体:カゼイン)が1:9であり、固相化
溶液中のカゼイン濃度が0.00018 %(x/v)である。)となるよう、カゼインとしてのブロックエース(DSファーマバイオメディカル株式会社)を添加して、固相化溶液とした。該固相化溶液を白色マイクロタイタープレート(Thermo Fisher Scientific社、436110)に100 μL/well添加して、4℃で一昼夜静置し、該プレートに抗Goat Anti-Mouse IgG Fc抗
体を固相化した。その後、該プレートをPBS-Tで4回洗浄し、1 %(w/v)ブロックエース及び0.05%からTween 20を含むブロッキング溶液を添加し、室温で2時間振盪し、ブロッキングした。その後、PBS-Tで4回洗浄し、抗Goat Anti-Mouse IgG Fc抗体が固相化されたプレートとした。
【0123】
マウスIgG1(mPG4D1)を、終濃度4 ng/mL、8 ng/mL、16 ng/mL、32 ng/mL、64 ng/mL、128 ng/mL、256 ng/mL、又は512 ng/mLとなるよう、0.05% Tween 20含有CD Forti CHO培
地(Thermo Fisher Scientific社)に希釈して被検試料とした。その後、上記で作製したプレートに、該被検試料を添加し、室温で1時間振盪した。その後、PBS-Tで4回洗浄した
。
これに、終濃度10 ng/mLとなるよう、0.5 %(w/v)ブロックエース及び0.05% Tween 20を含む溶液で希釈した、第二の抗体としてのHRP標識抗マウスIgG (Fab’)2 抗体(Abcam社
、ab98659)を添加し、室温で20分間振盪した。その後、PBS-Tで6回洗浄した。次に、発
光試薬として、Lumiflash Prime(Visual Protein社、LF01-500)を添加し、室温で3分間反応させ、マイクロプレートリーダー(モレキュラーデバイスジャパン株式会社、Spectr
a MAX iD3)を用いて発光強度を測定した。
【0124】
[比較例4]
ブロックエースを添加せずに固相化溶液としたこと以外は、実施例3と同様にした。
【0125】
[比較例5]
被検試料を用いなかった(すなわち、マウスIgG1(mPG4D1)の濃度がゼロ)こと以外は、実施例3と同様にした。
【0126】
[比較例6]
被検試料を用いなかった(すなわち、マウスIgG1(mPG4D1)の濃度がゼロ)こと以外は、比較例4と同様にした。
【0127】
[結果]
実施例3の結果を
図10に、比較例4の結果を
図11に示す。固相化溶液に、BSAではなく
カゼインを使用した場合にも、検出感度の向上が確認できた。
【0128】
また、実施例3においてマウスIgG1(mPG4D1)が512 ng/mLである場合と、比較例4に
おいてマウスIgG1(mPG4D1)が512 ng/mLである場合の結果を
図12に示す。
また、比較例5と比較例6の結果を
図13に示す。
図13の結果から、検出感度が向上し、バックグラウンドが低下することが確認された。
【0129】
[実施例4]
第一の抗体としてハイブリドーマ培養上清より調製した、マウスIgG1抗体(mPG4D1)を、終濃度50 ng/mL、100 ng/mL、200 ng/mL、500 ng/mL、又は1000 ng/mLとなるようD-PBS(富士フィルム和光純薬株式会社)で希釈した。この際、マウスIgG1抗体:BSAの重量比が1:1、1:4、1:9、1:19、又は1:49となるようにBSA Reagent grade(プロリエント社、PRL68700-1)を添加して、固相化溶液とした。該固相化溶液を黒色マイクロタイタープレート(Thermo Fisher Scientific社、437111)に、100 μL/well添加して、4℃で一昼夜静置
し、該プレートにマウスIgG1抗体を固相化した。その後、該プレートをPBS-Tで4回洗浄した。このようにして、マウスIgG1抗体が固相化されたプレートを得た。
【0130】
固相化されたマウスIgG1抗体を半定量する目的で、終濃度1 ng/mLとなるよう、1%(w/v)BSA、0.05% Tween 20で希釈したHRP標識抗マウスIgG (Fab’)2 抗体(Abcam社、ab98659
)を添加し、室温で1時間振盪した。その後、PBS-Tで6回洗浄した。その後、発光試薬と
して、Lumiflash Prime(Visual Protein社、LF01-500)を添加し、室温3分間反応させ、マイクロプレートリーダー(モレキュラーデバイス社、Spectra MAX iD3)を用いて発光
強度を測定した。
【0131】
[比較例7]
BSA Reagent gradeを添加せずに固相化溶液としたこと以外は、実施例4と同様にした
。
【0132】
[結果]
比較例7の発光強度を1.0としたときの結果を表2に示す。既出の実施例1では、サン
ドイッチELISA法としての最終的な結果が得られたものである。すなわち、第一の抗体(NZ-1.2)と、検出される抗原(Recombinant Human Podoplanin Fc)と、前記第一の抗体以外のタンパク質(BSA)の総合的な影響も含まれた、分析系としての性能評価の結果であ
る。一方で、実施例4では、検出される抗原を用いていないため、プレートへの第一の抗体の固相化量を評価したものである。
【0133】