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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022131921
(43)【公開日】2022-09-07
(54)【発明の名称】引戸
(51)【国際特許分類】
   E05C 1/06 20060101AFI20220831BHJP
   E05D 13/00 20060101ALI20220831BHJP
   E05F 5/00 20170101ALI20220831BHJP
【FI】
E05C1/06 A
E05D13/00 Z
E05F5/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021031173
(22)【出願日】2021-02-26
(71)【出願人】
【識別番号】390021153
【氏名又は名称】株式会社SKB
(74)【代理人】
【識別番号】100148138
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡
(72)【発明者】
【氏名】山下 貴宏
(57)【要約】      (修正有)
【課題】引戸錠を備えた引戸において、戸パネルをランナーで支持したままで、引戸錠を構成するロック片の交換や補修などを簡便に行うことができるようにする。
【解決手段】引戸錠21は、戸パネル1の一側端の内部に配置されるロッド本体27と、ロッド本体27の上部に連結されるロック片28と、ガイドレール3の一側端に配置固定されるロッド受と、ロッド本体27を上下操作してロック片28をロッド受に係脱させるロッド操作具とを備える。引戸錠21が設けられる側の戸パネル1の上隅には、上面および側面が開口して、ロック片28と連結構造とを組み付けるための装着凹部Dを形成する。ロック片28とロッド本体27との間に、連結構造を設けて、この連結構造を着脱操作するための操作要素30を、装着凹部Dの側面開口に臨ませて、当該側面開口の側からロッド本体27に対するロック片28の着脱操作を行うことができるように構成する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口枠(2)の上縁部に固定されるガイドレール(3)と、ガイドレール(3)に沿って左右方向に開閉自在に案内支持される戸パネル(1)とを備え、戸パネル(1)の左右方向の一側端寄りに、戸パネル(1)を閉じ位置または開放位置でロック保持する引戸錠(21)が設けられている引戸であって、
引戸錠(21)は、戸パネル(1)の一側端の内部に配置されるロッド(23)と、ロッド(23)の上部に連結されるロック片(28)と、ガイドレール(3)の一側端に配置固定されるロッド受(24)と、ロッド(23)を上下操作してロック片(28)をロッド受(24)に係脱させるロッド操作具(25)とを備え、
ロック片(28)とロッド(23)との間に、ロッド(23)に対してロック片(28)を着脱可能に連結するための連結構造が設けられており、
引戸錠(21)が設けられる側の戸パネル(1)の上隅には、上面および側面が開口して、ロック片(28)と連結構造とを組み付けるための装着凹部(D)が形成されており、
連結構造を着脱操作するための操作要素(30)が、装着凹部(D)の側面開口に臨んでおり、当該側面開口の側から操作要素(30)を操作することで、ロッド(23)に対するロック片(28)の着脱操作を行うことができるように構成されていることを特徴とする引戸。
【請求項2】
戸パネル(1)が、ガイドレール(3)に沿って左右方向に走行案内されるランナー(4)で支持されており、
ランナー(4)は、ガイドレール(3)で移行案内されるランナー本体(7)と、戸パネル(1)に固定されるランナー台(9)と、ランナー本体(7)とランナー台(9)とを連結するランナー軸(10)とを備え、
装着凹部(D)の内部に、上面および側面が開口する組付ケース(13)が固定されており、
組付ケース(13)の内部には、ランナー台(9)を着脱するためのホルダー(8)が締結固定されており、
ホルダー(8)と組付ケース(13)の側面開口との間に配置したロック片(28)がロッド(23)に対して操作要素(30)であるねじ体(34)により締結固定されており、
ロッド(23)に対するロック片(28)の着脱操作と、ホルダー(8)に対するランナー台(9)の着脱操作とを、それぞれ装着凹部(D)の側面開口の側から行うことができるように構成されている請求項1に記載の引戸。
【請求項3】
戸パネル(1)の前後面に、ロッド操作具(25)を外部操作するための装着開口(40)が開設されており、
ロッド操作具(25)が、装着開口(40)の前後に装着固定されるノブケース(41・42)と、少なくとも片方のノブケース(41)の内面に沿って上下スライドするスライドノブ(43)と、ノブケース(41)に圧嵌装着されてスライドノブ(43)を抜外れ不能に押え保持するノブ内枠(44)を備えており、
ロッド(23)が、スライドノブ(43)に係合連結される昇降ブロック(26)と、昇降ブロック(26)とロック片(28)とを連結するロッド本体(27)とを備えている請求項1または2に記載の引戸。
【請求項4】
昇降ブロック(26)が、一対のノブケース(41・42)の対向面と、対向面に形成した左右一対のガイドリブ(49)とでスライド案内されており、
昇降ブロック(26)とガイドリブ(49)の間に、スライドノブ(43)を上側のロック位置と下側のロック解除位置で位置保持する節度構造が設けられている請求項3に記載の引戸。
【請求項5】
組付ケース(13)の側面開口が、組付ケース(13)に装着した遮蔽体(60)で覆われており、
遮蔽体(60)は、組付ケース(13)の側面開口を覆う遮蔽ケース(61)と、遮蔽ケース(61)で上下スライド自在に案内されるロックピース(62)とを備えており、
組付ケース(13)とロックピース(62)の間に、遮蔽体(60)を取外し不能にロック保持するロック構造が設けられている請求項2から4のいずれかひとつに記載の引戸。
【請求項6】
引戸錠(21)が配置される側のランナー(4)は、ランナー軸(10)の軸中心が戸パネル(1)の側端から距離(L1)だけ離れたオフセット位置に配置されており、ガイドレール(3)の側端と開口枠(2)の側枠(2b)との間にメンテナンス空隙(E)が形成されており、
ロッド受(24)はメンテナンス空隙(E)に配置されて、開口枠(2)に着脱可能に締結固定されており、
ロック片(28)をロッド(23)から取外し、かつ、ロッド受(24)を開口枠(2)から分離した状態で、ランナー本体(7)をガイドレール(3)に対してメンテナンス空隙(E)を介して着脱することができるように構成されている請求項2から5のいずれかひとつに記載の引戸。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、引戸に関して、特に、戸パネルを閉じ位置や開放位置で開閉移動不能にロック保持するための引戸錠の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願人は、この種の戸パネルがランナーで支持されている引戸におけるロック装置(引戸錠)を先に提案している(特許文献1)。特許文献1の引戸では、ガイドレールが走行レール部とスペーサ部とで構成されており、戸パネルを支持するランナーが走行レール部で開閉移動可能に案内支持されている。スペーサ部と戸パネルの間には、閉じ端において戸パネルが開放移動するのを防ぐロック装置が設けられている。ロック装置は、スペーサ部に配置され、自重で上下に揺動できるレール側のストッパー本体と、戸パネルに設けたロック体と、ロック体を先のストッパー本体と接当係合するストップ位置と、ストッパーとの接当係合を解除する解除位置に切換える切換構造とを備えている。切換構造は、戸パネルの把手に設けた操作ノブを上下操作することでロック体の姿勢を切換えることができる。具体的には操作ノブを押上げ操作すると、ロック体がストッパー本体の側へ突出するストップ位置に変位し、操作ノブを押下げ操作すると、ロック体がストッパー本体から離れる解除位置に変位する。なお、切換構造と操作ノブは切換ロッドで連結されており、切換ロッド、切換構造は戸パネルの内部に配置されており、操作ノブは戸パネルの前後厚み内に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-249615号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の引戸のロック装置によれば、互いに交差するロック体とストッパー本体とを接当係合させて、閉じ端において戸パネルが開放移動するのを防ぐことができるので、ロック体が操作ノブで解除位置へ切換操作されない限りは、戸パネルを閉じ位置に停止保持することができる。しかし、特許文献1の引戸では、走行レール部の隣のスペーサ部にストッパー本体を設けるので、スペーサ部を備えている構造のガイドレールでないとロック装置を設けることができず、レール構造が特殊化する分だけコストが高くつく。また、操作ノブの上下操作を切換構造で前後動作に変換してストッパー本体を出退させるので、切換構造の構造が複雑になりやすく、その分だけロック装置の全体コストが高くつく。さらに、ロック体が組まれたガイドケースが、戸パネルの上面から陥没形成した収容凹部内に埋設されるとともに、ガイドケースが戸パネルの上面にねじ込んだ2個のビスで固定されているため、ロック体が破損したような場合には、戸パネルをランナーから分離したうえで、戸パネルの上面に位置するビスを緩めてガイドケースを取り外す必要があり、ロック体の交換や補修に多くの手間が掛かる。
【0005】
本発明の目的は、引戸錠を備えた引戸において、その全体コストを削減しながら、戸パネルをランナーで支持した状態のままでロッド上部のロック片を容易に取り外すことができ、したがってロック片の交換や補修などを、より少ない手間で簡便に行うことができるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、開口枠2の上縁部に固定されるガイドレール3と、ガイドレール3に沿って左右方向に走行案内される戸パネル1とを備え、戸パネル1の左右方向の一側端寄りに、戸パネル1を閉じ位置または開放位置でロック保持する引戸錠21が設けられている引戸を対象とする。引戸錠21は、戸パネル1の一側端の内部に配置されるロッド23と、ロッド23の上部に連結されるロック片28と、ガイドレール3の一側端に配置固定されるロッド受24と、ロッド23を上下操作してロック片28をロッド受24に係脱させるロッド操作具25とを備える。ロック片28とロッド23との間に、ロッド23に対してロック片28を着脱可能に連結するための連結構造が設けられている。引戸錠21が設けられる側の戸パネル1の上隅には、上面および側面が開口して、ロック片28と連結構造とを組み付けるための装着凹部Dが形成されている。そして、連結構造を着脱操作するための操作要素30が、装着凹部Dの側面開口に臨んでおり、当該側面開口の側から操作要素30を操作することで、ロッド23に対するロック片28の着脱操作を行うことができるように構成されていることを特徴とする。
【0007】
戸パネル1は、ガイドレール3に沿って左右方向に走行案内されるランナー4で支持されている。ランナー4は、ガイドレール3で移行案内されるランナー本体7と、戸パネル1に固定されるランナー台9と、ランナー本体7とランナー台9とを連結するランナー軸10とを備える。装着凹部Dの内部に、上面および側面が開口する組付ケース13が固定されており、組付ケース13の内部には、ランナー台9を着脱するためのホルダー8が締結固定されている。ホルダー8と組付ケース13の側面開口との間に配置したロック片28がロッド23に対して操作要素30であるねじ体34により締結固定されている。ロッド23に対するロック片28の着脱操作と、ホルダー8に対するランナー台9の着脱操作とを、それぞれ装着凹部Dの側面開口の側から行うことができるように構成されている。
【0008】
戸パネル1の前後面に、ロッド操作具25を外部操作するための装着開口40が開設されている。ロッド操作具25が、装着開口40の前後に装着固定されるノブケース41・42と、少なくとも片方のノブケース41の内面に沿って上下スライドするスライドノブ43と、ノブケース41に圧嵌装着されてスライドノブ43を抜外れ不能に押え保持するノブ内枠44とを備えている。ロッド23は、スライドノブ43に係合連結される昇降ブロック26と、昇降ブロック26とロック片28とを連結するロッド本体27とを備えている。
【0009】
昇降ブロック26が、一対のノブケース41・42の対向面と、対向面に形成した左右一対のガイドリブ49とでスライド案内されている。昇降ブロック26とガイドリブ49との間に、スライドノブ43を上側のロック位置と下側のロック解除位置で位置保持する節度構造が設けられている。
【0010】
組付ケース13の側面開口が、組付ケース13に装着した遮蔽体60で覆われている。遮蔽体60は、組付ケース13の側面開口を覆う遮蔽ケース61と、遮蔽ケース61で上下スライド自在に案内されるロックピース62とを備えている。組付ケース13とロックピース62との間に、遮蔽体60を取外し不能にロック保持するロック構造が設けられている。
【0011】
引戸錠21が配置される側のランナー4は、ランナー軸10の軸中心が戸パネル1の側端から距離L1だけ離れたオフセット位置に配置されており、ガイドレール3の側端と開口枠2の側枠2bとの間にメンテナンス空隙Eが形成されている。ロッド受24はメンテナンス空隙Eに配置されて、開口枠2に着脱可能に締結固定されている。ロック片28をロッド23から取外し、かつ、ロッド受24を開口枠2から分離した状態で、ランナー本体7をガイドレール3に対してメンテナンス空隙Eを介して着脱することができるように構成されている。
【発明の効果】
【0012】
本発明のように、引戸錠21が、戸パネル1の一側端の内部に配置されるロッド23と、ロッド23の上部に連結されるロック片28と、ガイドレール3の一側端に配置固定されるロッド受24と、ロッド23を上下操作してロック片28をロッド受24に係脱させるロッド操作具25とを備えるものとなっていると、ロッド操作具25を操作して、ロッド23を上下操作するだけで、ロッド受24にロック片28を係脱させて、引戸錠21を施錠状態或いは解錠状態とすることができる。これによれば、従来の特許文献1のように、操作ノブの上下操作を切換構造で前後動作に変換してストッパー本体を出退させる構成のように、切換構造の構造が複雑になることはなく、引戸錠21の構造の簡素化を図って、引戸の全体コストを削減することができる。また、本発明によれば、引戸錠21を構成するロッド受24をガイドレール3の一側端に配置固定するので、特許文献1のようなスペーサ部を備えている特殊な構造のガイドレールを使用する必要がなく、これによっても引戸の全体コストを削減することができる。
【0013】
また、本発明のように、ロック片28とロッド23との間に、ロッド23に対してロック片28を着脱可能に連結するための連結構造を設けて、この連結構造を着脱操作するための操作要素30を、装着凹部Dの側面開口に臨ませて、当該側面開口の側から操作要素30を操作することで、ロッド23に対するロック片28の着脱操作を行うことができるように構成されていると、戸パネル1をガイドレール3で案内支持した状態のままであっても、ロッド23に対するロック片28の着脱を、装着凹部Dの側面開口の側から行うことができるので、ロック片28の交換や補修などをより少ない手間で簡便に行うことができる。
【0014】
戸パネル1が、ランナー本体7、ランナー台9、およびこれら両者7・9を連結するランナー軸10を備えるランナー4で支持されている引戸においては、装着凹部Dの内部に、上面および側面が開口する組付ケース13を固定し、その内部にランナー台9用のホルダー8を締結固定し、ホルダー8と組付ケース13の側面開口との間に配置したロック片28をロッド23に対して操作要素30であるねじ体34で締結固定するようにして、ロッド23に対するロック片28の着脱操作と、ホルダー8に対するランナー台9の着脱操作とを、それぞれ装着凹部Dの側面開口の側から行うことができるような構成を採ることができる。このように、ロッド23に対するロック片28の着脱操作と、ホルダー8に対するランナー台9の着脱操作とを、それぞれ装着凹部Dの側面開口の側から行うことができるように構成されていると、ロック片28やランナー4の点検・調整・交換などのメンテナンス作業を迅速に、しかも簡便に行うことができる。また、ホルダー8およびロッド23が組付ケース13により的確に位置決め保持されるので、戸パネル1および引戸錠とランナー4の位置関係を常に適正化することができる。さらに、ロック片28をロッド受24のロック凹部35に対して常に適確に係脱させることができる。
【0015】
ロッド23を上下操作するロッド操作具25が、戸パネル1の装着開口40に装着固定されるノブケース41・42と、片方のノブケース41の内面に沿って上下スライドするスライドノブ43と、ノブケース41に装着されてスライドノブ43を抜外れ不能に押え保持するノブ内枠44を備えるものとすることができる。また、ロッド23は、スライドノブ43に連結される昇降ブロック26と、昇降ブロック26とロック片28を連結するロッド本体27を備えるものとすることができる。これによれば、ノブケース41内のスライドノブ43を上下スライドすることで、ロッド23およびロック片28を上下操作することができるので、スライドノブ43が戸パネル1の表面に突出するのを避けて、戸パネル1の外観の印象をすっきりさせることができる。また、ノブケース41に圧嵌装着したノブ内枠44を利用して、スライドノブ43を抜外れ不能に押え保持することができるので、スライドノブ43を押え保持する部材を別途設ける必要がなく、その分だけロッド操作具25の構造を簡素化して、引戸の全体コストを削減できる。
【0016】
昇降ブロック26が、一対のノブケース41・42の対向面と、対向面に形成した左右一対のガイドリブ49でスライド案内するように構成されていると、ロッド23をスライドノブ43で昇降操作するとき、昇降ブロック26が前後あるいは左右に傾動しようとするのを、ノブケース41・42の対向面と左右一対のガイドリブ49とで規制できる。したがって、ロッド23を常に円滑に上下動させて、ロック片28をロッド受24に対してさらに適確に係脱することができる。また、昇降ブロック26とガイドリブ49の間に、スライドノブ43をロック位置とロック解除位置で位置保持する節度構造が設けられていると、スライドノブ43をロック位置とロック解除位置の間において、それぞれ確実に位置保持することができる。したがって、例えばロック位置に切り換わったロッド23やロッド操作具25が、自重や外力を受けてロック解除位置に切り換わるのを確実に防止して、戸パネル1が不意に開閉移動するのを防止することができる。
【0017】
組付ケース13の側面開口が、組付ケース13に装着した遮蔽体60で覆われていると、組付ケース13の内部に配置したロッド本体27やロック片28が組付ケース13の側面開口から視認されるのを防止できるので、戸パネル1の外観上の体裁を向上できる。遮蔽体60が、組付ケース13の側面開口を覆う遮蔽ケース61と、遮蔽ケース61で上下スライド自在に案内されるロックピース62とを備えるものとし、組付ケース13とロックピース62の間に、遮蔽体60用のロック構造が設けられていると、遮蔽ケース61を組付ケース13に装着することで、遮蔽ケース61をロック構造でロック保持することができ、さらにロック構造をロック解除操作することで、遮蔽ケース61を組付ケース13から分離することができるので、組付ケース13に組込んだランナー台9やロック片28などのメンテナンスを簡便に行うことができる。
【0018】
引戸錠が配置される側のランナー4を、ランナー軸10の軸中心が戸パネル1の側端から距離L1だけ離れたオフセット位置に配置して、ガイドレール3の側端と開口枠2の側枠2bとの間に、メンテナンス空隙Eを形成し、このメンテナンス空隙Eに引戸錠のロッド受24を配置固定していると、ロッド受24を開口枠2から取外し、ロック片28をロッド23から分離し、さらにランナー台9をホルダー8から分離した状態において、ランナー本体7をガイドレール3に対してメンテナンス空隙Eを介して着脱することが可能となる。したがって、ガイドレール3を開口枠2に固定した状態のままで、ガイドレール3の内部に設けたランナー4やアシスト装置71を簡便に着脱することができる。また、ガイドレール3の側端のメンテナンス空隙Eにロッド受24を配置したので、ロッド受24がガイドレール3の下面などに突出するのを解消して、常態における引戸の外観の印象をすっきりさせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施例1に係る引戸において、ランナーの周辺構造を分解して示す縦断正面図である。
図2】引戸の正面図である。
図3】ランナーと戸先錠の縦断正面図である。
図4】ランナーと戸先錠の縦断側面図である。
図5】戸先錠の分解斜視図である。
図6】ロッド操作具の分解斜視図である。
図7】ロッド操作具の節度構造を示す縦断正面図である。
図8図7におけるA-A線断面図である。
図9】ロック片および遮蔽体の縦断正面図である。
図10】ロッドの組付手順を示す一部破断正面図である。
図11】ホルダー、組付ケース、および装着凹部の分解断面図である。
図12】ランナーの取外手順を示す一部破断正面図である。
図13】本発明の実施例2に係る引戸のランナーの周辺構造を示す縦断正面図と縦断側面図である。
図14】本発明の実施例3に係る戸先錠の縦断正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(実施例1) 図1ないし図12に本発明に係る引戸の実施例1を示す。この実施例における前後、左右、上下とは、図2および図4に示す交差矢印と、矢印の近傍の前後、左右、上下の表記に従う。図2に示す引戸は、ウォークインクロゼットの出入口を1枚の戸パネル1で開閉するものであり、戸パネル1は、開口枠2に固定したアウトセット型のガイドレール3の内部に設けたランナー4で支持され、床面に設けた振止めローラー5で振止めされている。ガイドレール3は断面C字状に形成されており、開口枠2の上枠2aに固定されている。図1に示すようにランナー4は、ガイドレール3で移行案内される4個のローラー6を備えたランナー本体7と、戸パネル1の上隅に固定したホルダー8に着脱されるランナー台9と、ランナー本体7とランナー台9を相対回転可能に連結するランナー軸10とを備えている。戸パネル1の閉じ端(一側端、図2の左側)寄りには、戸パネル1を閉じ位置でロック保持する戸先錠(引戸錠)21が設けられている。図1図3において符号11は、ランナー台9に設けたロック解除レバーを示す。
【0021】
開放端側(図2の右側)のランナー4のホルダー8は、戸パネル1の右上隅に形成した装着凹部に装着固定するが、閉じ端側(図2の左側)のランナー4のホルダー8は、図3に示すように戸パネル1の左上隅の装着凹部Dに固定した組付ケース13に装着されて、2個のビス14で締結固定されている。組付ケース13は、上面および左側面が開口するダイキャスト成形品からなり、前後壁13aと内奥壁13bと湾曲する底壁13cを一体に備えており、内奥壁13bと底壁13cがビス15で戸パネル1に固定されている。組付ケース13の内奥壁13bの中途部には、ホルダー8のビス座8aに係合する締結穴16と、ホルダー8の底壁8bを支持する横壁17とが設けられており、組付ケース13の底壁13cには、後述するロッド23を組むための溝18が形成されている。また、組付ケース13の前後壁13aの側端の上下には、後述するロック構造のロックピン63と係合するロック溝19と、ロック溝19に向かって上り傾斜するガイド部20とが形成されている(図1参照)。
【0022】
一般的な戸パネルにおいては、閉じ端側のランナー4も開放端側のランナー4と同様に戸パネル1の上隅に設けるが、そうするとランナー4の閉じ端側の移行軌跡が開口枠2の側枠2bの近傍にまで近づくため、戸先錠21を配置するのに支障をきたす。こうした不具合を避けるために、本実施例においては、ランナー軸10の軸中心が戸パネル1の側端から距離L1(図3参照)だけ離れたオフセット位置にランナー4を配置している。図2に示すように戸先錠21は、戸パネル1の閉じ端側の内部に配置されるロッド23と、ガイドレール3の閉じ端側の端部と開口枠2の側枠2bの間の上枠2aに固定されるロッド受24と、ロッド23を上下操作してロッド受24に係脱させるロッド操作具25とを備える。
【0023】
図2および図6に示すようにロッド23は、ロッド操作具25で上下操作される昇降ブロック26と、昇降ブロック26の上部に連結される帯板状のロッド本体27と、ロッド本体27の上部に固定されるロック片28とを備えている。図7に示すように昇降ブロック26は、上下に長いスライド軸部31と、スライド軸部31の上部の連結枠部32とを一体に備えたプラスチック成型品からなり、金属製の四角軸状のロッド本体27の下端を連結枠部32に差込み連結して、2個のビス33で固定することにより、ロッド本体27と一体化されている。その詳しい組付け手順は後述する。ロック片28とロッド23のロッド本体27との間には、ロッド本体27に対してロック片28を着脱可能に連結するための連結構造が設けられている。本実施例における連結構造、および当該連結構造を着脱操作するための操作要素30は、ロック片28の下部に挿通されて、ロッド本体27にねじ込まれるビス(ねじ体)34であり、当該ビス34によりロック片28とロッド本体27とは一体化されている。戸パネル1が開閉される状態におけるロック片28は、組付ケース13の内部に収容されているが、ロッド操作具25がロック位置まで押上げ操作された状態では、組付ケース13の上方へ突出してロッド受24と係合する。ロック片28の上部には、側枠2bに向かって下り傾斜する傾斜面28aが形成されている。
【0024】
先に説明したように、ランナー4をオフセット位置に配置することにより、ガイドレール3の閉じ端と開口枠2の側枠2bとの間に隙間が形成されるが、この隙間を利用してロッド受24を配置することにより、施工時あるいは施工後におけるランナー4のガイドレール3に対する着脱を簡便に行えるようにしている。以下、この隙間をメンテナンス空隙Eという。図3に示すように、ランナー本体7の閉じ端(側端)と、閉じ端から遠い側のローラー6の中心までの、ランナー本体7の着脱に必要な最小必要距離Bを想定するとき、メンテナンス空隙Eの左右長さは、最小必要距離Bより大きく設定されている。その意味は後述する。
【0025】
図3においてロッド受24には、ロック片28を係脱するためのロック凹部35が下向きに開口する状態で形成されており、ロック凹部35の左右にねじボス36と、ガイドレール3の上壁に接合するねじ座37が形成されている。ロッド受24をメンテナンス空隙Eに配置して、その上面を上枠2aにあてがい、ねじボス36とねじ座37に挿通したビス38を上枠2aにねじ込むことにより、ロッド受24は開口枠2に固定される。この状態のロッド受24の側面はガイドレール3の閉じ端を塞いでいるので、ロッド受24はランナー4が閉じ位置を越えて移動するのを防止するストッパーとしても機能する。ねじボス36は省略でき、その場合にはロック凹部35の上壁をビス38で締結するとよい。
【0026】
図6に示すようにロッド操作具25は、戸パネル1の前後面で開口する装着開口40に装着固定される前後一対のノブケース41・42と、前側のノブケース41の内面に沿って上下スライドするスライドノブ43と、前側のノブケース41に圧嵌装着されてスライドノブ43を抜外れ不能に押え保持するノブ内枠44とを備えている。ノブケース41・42は、それぞれ引手凹部45を備えた縦長容器状の四角形のケースからなり、前側のノブケース41の凹部壁に限ってスライドノブ43の上下スライドを許すガイド溝46が形成されている。ノブケース41・42の凹部開口の周囲には、装着開口40の周縁壁で受け止められる鍔部が周回状に張出されている。
【0027】
前後のノブケース41・42を装着開口40に嵌込んだのち、6個のビス47を前側のノブケース41の側から後側のノブケース41のねじ下穴にねじ込むことにより、前後のノブケース41・42を一体化して装着開口40に固定することができる。スライドノブ43は、操作摘み43aと、断面が四角形状のノブ軸43bを一体に備えており、操作摘み43aの左右両側にノブ内枠44で押え保持される側壁43cが張出し形成されている。ノブ軸43bをガイド溝46に差込んで、昇降ブロック26のスライド軸部31に形成した連結穴48に係合することにより、スライドノブ43と昇降ブロック26を同行移動可能に係合連結できるので、スライドノブ43でロッド23の全体を下側のロック解除位置から上側のロック位置へとスライド操作できる。
【0028】
昇降ブロック26は、一対のノブケース41・42の対向面の間に配置されて、両ケース41・42でスライド案内されており、さらに後側のノブケース42に設けた左右一対のガイドリブ49でスライド案内されている。昇降ブロック26とガイドリブ49の間には、スライドノブ43をロック解除位置とロック位置で位置保持する節度構造が設けられている。図7に示すように節度構造は、ガイドリブ49の対向面の上下に設けた一対のボール凹部51と、昇降ブロック26で突没可能に支持される金属製の一対のボール52と、ボール52をボール凹部51に向かって係合付勢するばね53とからなる。
【0029】
ノブ内枠44は縦長四角形状の枠体からなり、ノブケース41の内周面とスライドノブ43の周面との間に圧嵌装着されて、スライドノブ43の側壁43cを押え保持する。ノブ内枠44をノブケース41に装着した状態では、図6に示すノブ内枠44の左右両側の係合爪54がノブケース41の係合穴55に圧嵌係合して、ノブ内枠44の装着状態を保持している。この状態では、ノブ内枠44の内底がビス47の操作頭部を覆い隠すので、ロッド操作具25の外観の印象をすっきりさせることができる。ノブ内枠44の下面をドライバーなどでこじると、ノブ内枠44をノブケース41から取外すことができる。そのためのこじ開け凹部56がノブケース41の下周面に形成してある。
【0030】
先に説明したように、戸パネル1が開閉される状態におけるロック片28は、ランナー台9およびホルダー8と共に組付ケース13の内部に収容されているが、組付ケース13の側面開口から視認可能となるため、戸パネル1の外観上の体裁が損なわれてしまう。こうした状況を防ぐために、組付ケース13に遮蔽体60を装着して側面開口を遮蔽体60で塞いで、ロック片28の外側面を覆っている(図3図5参照)。遮蔽体60は、ロック片28の外側面に接する状態で組付ケース13の側面開口を覆う遮蔽ケース61と、遮蔽ケース61で上下スライド自在に案内されるロックピース62とを備えている。組付ケース13とロックピース62の間には、遮蔽体60を組付ケース13から取外し不能にロック保持するロック構造が設けられている。
【0031】
ロック構造は、組付ケース13の前後壁に形成した上下一対のロック溝19と、ロックピース62に固定される一対のロックピン63と、ロックピン63がロック溝19と係合する向きにロックピース62を押下げ付勢するロックばね64とを備えている(図9参照)。遮蔽ケース61がロック片28と接する側には、ロックピース62をスライド可能に案内するガイド凹部65が形成されている。このガイド凹部65と交差する内横壁66とロックピース62の間に、先のロックばね64が配置されている。ロックピース62の左側面には、ロックばね64に抗してロックピース62を押上げ操作する指掛け片67が形成されており、ロックピース62の右側面にはストッパー片68が突設されている。ロック片28のロックピース62と接する側には、ロック解除位置においてストッパー片68で受止められるスライド凹部69が凹み形成されているので、先の節度構造による位置保持力が低下した場合でも、ロック片28がロック解除位置を越えて下降移動するのを確実に防止できる。
【0032】
以上のように構成した戸先錠は、以下の要領で戸パネル1の内部に組むことができる。まず、戸パネル1を作業台に横臥姿勢で載置し、図10(a)に示すように、ロッド本体27を装着開口40から戸パネル1の内部に差込み、さらに昇降ブロック26を装着開口40の内部に保持した状態で、ロッド本体27の下部を連結枠部32に連結し、その状態で図10(b)に示すようにビス33を連結枠部32にねじ込んでロッド本体27を連結枠部32に固定する。ビス33のねじ込み操作は装着開口40の内部で行う。次に、昇降ブロック26およびロッド本体27を90度回転させて、ビス33の操作頭部が戸パネル1の開放端側を向くようにして、ロッド本体27の幅広面を戸パネル1の閉じ端と平行に保持する。この状態で、昇降ブロック26およびロッド本体27を、戸パネル1の上隅の装着凹部Dに向かって移動させて、図7に示すようにロッド本体27の上端を装着凹部Dの内部に突出させる。
【0033】
上記のように、昇降ブロック26およびロッド本体27を戸パネル1に仮組みした状態で、昇降ブロック26に節度構造を組み、後側のノブケース42を装着開口40に装着して、昇降ブロック26をガイドリブ49の間に保持する。さらに前側のノブケース41を装着開口40に装着して、前後のノブケース41・42をビス47で締結し、スライドノブ43を昇降ブロック26の連結穴48に連結した状態で、ノブ内枠44をノブケース41に圧嵌装着して、ロッド操作具25の組立を完了する。次に、図11に示すように組付ケース13を装着凹部Dに嵌込んで、2個のビス15で固定する。この時、ロッド本体27の上部を溝18から組付ケース13の内部に突出させておく。さらに、ランナー4のホルダー8を組付ケース13に組付けて2個のビス14で固定する。開放端側のランナー4のホルダー8も同様にして固定しておく。なお、組付ケース13の装着凹部Dに対する組付けは、ロッド本体27の組込みに先行して行うこともできる。
【0034】
左右一対のランナー本体7をガイドレール3の内部に収容し、この状態で戸パネル1を起立させて、左右のランナー台9をホルダー8に順次嵌込むことにより、戸パネル1をランナー4で支持することができる。この状態で、ロック片28をビス34でロッド本体27に固定し、さらに組付ケース13の側面開口に遮蔽体60を装着する。最後に、ロッド受24をメンテナンス空隙Eに配置して、2個のビス38で上枠2aに締結することにより、戸先錠の組付を終了する。
【0035】
戸先錠21は、戸パネル1を任意の開放位置から閉じ操作した状態で、スライドノブ43をノブケース41に沿ってロック解除位置からロック位置へ押上げ操作することにより、図3に示すように、ロック片28がロック凹部35内に進出して、戸パネル1が開放移動するのを阻止する。一方、戸パネル1が開放位置にあるとき、スライドノブ43が誤ってロック位置へ切換えられ、その状態のままで戸パネル1が閉じ操作されると、ロック片28がロッド受24の側面に衝突するおそれがある。しかし、ロック片28の上部には傾斜面28aが形成されており、ロック片28がロッド受24に衝突した場合には、ロック片28に下向きの分力が作用するので、ロッド23は節度構造の保持力に抗して強制的に押下げ操作されてロック解除姿勢に切換る。従って、ロック片28がロッド受24に衝突することで、ロック片28やロッド受24が破損するのを防止できる。
【0036】
ランナー本体7をガイドレール3から取外す場合には、まず遮蔽体60を組付ケース13から取り外し、さらにビス34を緩めてロック片28をロッド本体27から分離し、ランナー台9の側方空間を開放する。この状態で、ロック解除レバー11を操作して、ランナー台9をホルダー8から取外して戸パネル1をランナー台9から分離する。次に、図12(a)に示すように、ロッド受24を取外してメンテナンス空隙Eを開放し、この状態でランナー本体7をガイドレール3の閉じ端側へ移行させ、図12(b)に示すようにランナー本体7をメンテナンス空隙Eに露出させて取出す。このとき、メンテナンス空隙Eの左右長さを、ランナー本体7の着脱に必要な最小必要距離Bより大きく設定したので、ランナー台9が開口枠2の側枠2bで受止められて引っかかることもなく、ランナー本体7をガイドレール3に沿って横移動させるだけで、メンテナンス空隙Eから簡便に取出すことができる。また、ランナー本体7がガイドレール3の閉じ端まで移動した状態で、ランナー台9を想像線で示す状態から、ランナー軸10の回りに回動させて実線で示すように反転させると、ランナー本体7をメンテナンス空隙Eの左右長さと最小必要距離Bの差分だけ横移動させることができるので、ランナー本体7をガイドレール3からさらに余裕のある状態で取出すことができる。
【0037】
以上のように本実施例の引戸においては、戸先錠21を、戸パネル1の一側端の内部に配置されるロッド23と、ロッド23の上部に連結されるロック片28と、ガイドレール3の一側端に配置固定されるロッド受24と、ロッド23を上下操作してロック片28をロッド受24に係脱させるロッド操作具25とを備えるものとしたので、ロッド操作具25を操作して、ロッド23を上下操作するだけで、ロッド受24にロック片28を係脱させて、戸先錠21を施錠状態或いは解錠状態とすることができる。したがって、従来の特許文献1のように、操作ノブの上下操作を切換構造で前後動作に変換してストッパー本体を出退させる構成のように、切換構造の構造が複雑になることはなく、戸先錠21の構造の簡素化を図って、引戸の全体コストを削減することができる。また、戸先錠21を構成するロッド受24をガイドレール3の一側端に配置固定したので、特許文献1のようなスペーサ部を備えている特殊な構造のガイドレールを使用する必要がなく、これによっても引戸の全体コストを削減することができる。
【0038】
加えて、ロック片28とロッド23との間に、ロッド23に対してロック片28を着脱可能に連結するための連結構造を設けて、この連結構造を着脱操作するための操作要素30(ねじ体34)を装着凹部Dの側面開口に臨ませて、当該側面開口の側から操作要素30(ねじ体34)を操作することで、ロッド23に対するロック片28の着脱操作を行うことができるように構成したので、戸パネル1をガイドレール3で案内支持した状態のままであっても、ロッド23に対するロック片28の着脱を、装着凹部Dの側面開口の側から行うことが可能となる。したがって、本実施例の引戸によれば、ロック片28の交換や補修などをより少ない手間で簡便に行うことができる。
【0039】
装着凹部Dの内部に、上面および側面が開口する組付ケース13を固定し、その内部にランナー台9用のホルダー8を締結固定し、ホルダー8と組付ケース13の側面開口との間に配置したロック片28をロッド23に対して操作要素30であるビス34で締結固定するようにして、ロッド23に対するロック片28の着脱操作と、ホルダー8に対するランナー台9の着脱操作とを、それぞれ装着凹部Dの側面開口の側から行うことができるように構成したので、ロック片28やランナー4の点検・調整・交換などのメンテナンス作業を迅速に、しかも簡便に行うことができる。また、ホルダー8およびロッド23が組付ケース13により的確に位置決め保持されるので、戸パネル1および戸先錠21とランナー4の位置関係を常に適正化することができる。さらに、ロック片28をロッド受24のロック凹部35に対して常に適確に係脱させることができる。
【0040】
戸パネル1が、ランナー本体7、ランナー台9、およびこれら両者7・9を連結するランナー軸10を備えるランナー4で支持してある引戸においては、ロッド23を上下操作するロッド操作具25が、戸パネル1の装着開口40に装着固定されるノブケース41・42と、片方のノブケース41の内面に沿って上下スライドするスライドノブ43と、ノブケース41に装着されてスライドノブ43を抜外れ不能に押え保持するノブ内枠44を備えるものとした。また、ロッド23は、スライドノブ43に連結される昇降ブロック26と、昇降ブロック26とロック片28を連結するロッド本体27を備えるようにした。これによれば、ノブケース41内のスライドノブ43を上下スライドすることで、ロッド23およびロック片28を上下操作することができるので、スライドノブ43が戸パネル1の表面に突出するのを避けて、戸パネル1の外観の印象をすっきりさせることができる。また、ノブケース41に圧嵌装着したノブ内枠44を利用して、スライドノブ43を抜外れ不能に押え保持することができるので、スライドノブ43を押え保持する部材を別途設ける必要がなく、その分だけロッド操作具25の構造を簡素化して、引戸の全体コストを削減できる。
【0041】
昇降ブロック26を、一対のノブケース41・42の対向面と、対向面に形成した左右一対のガイドリブ49でスライド案内するようにしたので、ロッド23をスライドノブ43で昇降操作するとき、昇降ブロック26が前後あるいは左右に傾動しようとするのを、ノブケース41・42の対向面と左右一対のガイドリブ49とで規制することができる。したがって、ロッド23を常に円滑に上下動させて、ロック片28をロッド受24に対してさらに適確に係脱することができる。また、前後のノブケース41・42を締結するビス47の操作頭部をノブ内枠44で覆い隠すので、ロッド操作具25の外観を、簡素ですっきりとした印象にまとめることができる。また、昇降ブロック26とガイドリブ49の間に、スライドノブ43をロック位置とロック解除位置で位置保持する節度構造を設けるので、スライドノブ43をロック位置とロック解除位置の間において、それぞれ確実に位置保持することができる。したがって、例えばロック位置に切り換わったロッド23やロッド操作具25が、自重や外力を受けてロック解除位置に切り換わるのを確実に防止して、戸パネル1が不意に開閉移動するのを防止することができる。
【0042】
組付ケース13の側面開口を、組付ケース13に装着した遮蔽体60で覆ったので、組付ケース13の内部に配置したロッド本体27やロック片28が組付ケース13の側面開口から視認されるのを防止でき、戸パネル1の外観上の体裁を向上できる。遮蔽体60を、組付ケース13の側面開口を覆う遮蔽ケース61と、遮蔽ケース61で上下スライド自在に案内されるロックピース62とを備えるものとし、組付ケース13とロックピース62の間に、遮蔽体60用のロック構造を設けたので、遮蔽ケース61を組付ケース13に装着することで、遮蔽ケース61をロック構造でロック保持することができ、さらにロック構造をロック解除操作することで、遮蔽ケース61を組付ケース13から分離することができる。したがって、組付ケース13に組込んだランナー台9やロック片28などのメンテナンスを簡便に行うことができる。
【0043】
戸先錠21が配置される側のランナー4を、ランナー軸10の軸中心が戸パネル1の側端から距離L1だけ離れたオフセット位置に配置して、ガイドレール3の側端と開口枠2の側枠2bとの間に、メンテナンス空隙Eを形成し、このメンテナンス空隙Eに引戸錠のロッド受24を配置固定したので、ロッド受24を開口枠2から取外し、ロック片28をロッド23から分離し、さらにランナー台9をホルダー8から分離した状態において、ランナー本体7をガイドレール3に対してメンテナンス空隙Eを介して着脱することが可能となる。したがって、ガイドレール3を開口枠2に固定した状態のままで、ガイドレール3の内部に設けたランナー4やアシスト装置71を簡便に着脱することができる。また、ガイドレール3の側端のメンテナンス空隙Eにロッド受24を配置したので、ロッド受24がガイドレール3の下面などに突出するのを解消して、常態における引戸の外観の印象をすっきりさせることができる。
【0044】
(実施例2) 図13に本発明に係る引戸の実施例2を示す。この引戸では、ガイドレール3の内部にランナー本体7に加えてアシスト装置71が収容されている点が先の実施例1と相違する。アシスト装置71は、ケース72の内部にばねを蓄力源とする閉止構造と、制動用のダンパーと、切換構造などを収容して構成されており、その一端が閉じ端側のランナー本体7にねじ73で連結され、他端はガイドレール3で案内されるローラー74に支持されている。ローラー74の直径は、ガイドレール3の下開口の前後幅より小さく設定されている。図示していないが、ガイドレール3の内部には、閉じ端寄りでアシスト装置71を作動姿勢に切換えるトリガーが固定されている。戸パネル1が閉じ端寄りまで閉じ操作されると閉止構造とダンパーが作動して、戸パネル1を自動的に閉じ位置までゆっくりと閉じ移動させる。他は実施例1と同じであるので、同じ部材に同じ符号を付して、その説明を省略する。実施例3においても同じとする。
【0045】
この実施例2の引戸では、実施例1の引戸と同様に、遮蔽体60を組付ケース13から取り外し、さらにロック片28をロッド本体27から分離した状態で、ランナー台9をホルダー8から取外して戸パネル1をランナー台9から分離し、図13(a)に示すように、ロッド受24を取外してメンテナンス空隙Eを開放する。さらに、ランナー本体7とアシスト装置71を分離して、ランナー本体7をガイドレール3の閉じ端側へ移行させ、図13(b)に示すようにランナー本体7をメンテナンス空隙Eから取出す。アシスト装置71は、ランナー本体7と同様にしてメンテナンス空隙Eから取出すことができる。しかし、ケース72の前後幅が、ローラー6を支持するレール壁の前後間隔より小さい場合には、図13(c)に示すようにケース72をガイドレール3の下開口から垂下させた状態で、図13(d)に示すようにケース72をガイドレール3の内部で90度回転操作することにより、ガイドレール3の下開口から直接取り出すことが可能となる。
【0046】
(実施例3) 図14に本発明に係る引戸の実施例3を示す。この引戸では戸パネル1をランナー4に換えて戸車で支持するようにし、戸パネル1の上部に固定した振止め体77をガイドレール3で開閉案内するようにした。また、ロッド受24をガイドレール3の閉じ端の内部に固定するようにした。さらに、ランナー4を省略できる分だけ組付ケース13の左右長さを小さくして、その内部にロック片28と遮蔽体60を収容するようにした。このように、引戸は吊車型の引戸と、戸車型の引戸のいずれであってもよい。
【0047】
上記以外に、ランナー4はランナー本体7の前後に2個のローラー6が設けてある構造であってもよく、ローラー6に換えてボールが転動するランナーであってもよい。ロッド受24は、開口枠2の側枠2bに締結固定してあってもよい。節度構造は、磁石を位置決め要素とする構造であってもよい。メンテナンス空隙Eは、ガイドレール3の下面の前後一対のレール壁を切除して形成することができ、その場合にはロッド受24をガイドレール3の内部に配置するとよい。ランナー4は、ランナー本体7と戸パネル1に直接固定される固定枠(ランナー台9に相当する)と、ランナー本体7と固定枠を相対回転自在に連結するランナー軸10で構成してあってもよく、その場合には、固定枠を戸パネル1に締結するビスを緩めてランナー本体7を戸パネル1から分離するとよい。ロック片28はビス34でロッド本体27に連結する必要はなく、ピンを使用してロッド本体27に連結してあってもよい。ロッド操作具25は、サムターン状やプッシュハンドル状に構成してあってもよい。
【符号の説明】
【0048】
1 戸パネル
2 開口枠
2b 側枠
3 ガイドレール
4 ランナー
7 ランナー本体
8 ホルダー
9 ランナー台
10 ランナー軸
13 組付ケース
21 引戸錠(戸先錠)
23 ロッド
24 ロッド受
25 ロッド操作具
26 昇降ブロック
27 ロッド本体
28 ロック片
30 操作要素
34 ねじ体
41 ノブケース
42 ノブケース
43 スライドノブ
44 ノブ内枠
49 ガイドリブ
60 遮蔽体
61 遮蔽ケース
62 ロックピース
D 装着凹部
E メンテナンス空隙
B ランナーの着脱に必要な最小必要距離
L1 ランナー軸の軸中心が戸パネルの側端から離れている距離
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14