(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022013194
(43)【公開日】2022-01-18
(54)【発明の名称】車両用装飾部品
(51)【国際特許分類】
B60R 13/00 20060101AFI20220111BHJP
G01S 7/03 20060101ALI20220111BHJP
【FI】
B60R13/00
G01S7/03 246
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020115595
(22)【出願日】2020-07-03
(71)【出願人】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】道家 真一
【テーマコード(参考)】
3D024
5J070
【Fターム(参考)】
3D024BA07
5J070AB24
5J070AC02
5J070AC06
5J070AE01
5J070AE09
5J070AF03
5J070AK39
(57)【要約】
【課題】樹脂基材と透明樹脂層との密着力が、溶剤の浸入により低下するのを抑制する。
【解決手段】車両用装飾部品としてのエンブレム15は、樹脂基材21と、樹脂基材21の表側に形成され、かつ自身の裏面の側部において、樹脂基材21の表面の側部に密着する透明樹脂層33と、少なくとも透明樹脂層33の表面36に積層された透明な樹脂フィルム45とを備える。樹脂フィルム45の側部49は、透明樹脂層33の側面38と、樹脂基材21における枠部31の側面32との境界部分Bを覆うとともに、同側面32と基材本体部22の側面27との境界部分Cを覆っている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂基材と、
前記樹脂基材の表側に形成され、かつ自身の裏面の側部において、前記樹脂基材の表面の側部に密着する透明樹脂層と、
少なくとも前記透明樹脂層の表面に積層された透明な樹脂フィルムと
を備える車両用装飾部品であって、
前記樹脂フィルムの側部は、前記透明樹脂層の側面と前記樹脂基材の側面との境界部分を覆っている車両用装飾部品。
【請求項2】
前記樹脂フィルムには、透明なハードコート層が形成されている請求項1に記載の車両用装飾部品。
【請求項3】
前記樹脂基材は、基材本体部と、前記基材本体部の表側の側部に形成された環状の枠部とを備え、
前記樹脂基材は、前記枠部の表面において前記透明樹脂層の裏面の側部に密着しており、
前記基材本体部の表面の側部は、前記枠部の裏面に密着しており、
前記樹脂フィルムの前記側部は、前記透明樹脂層の前記側面と前記枠部の側面との境界部分を覆うとともに、前記枠部の前記側面と前記基材本体部の側面との境界部分を覆っている請求項1又は2に記載の車両用装飾部品。
【請求項4】
前記樹脂フィルムの前記側部は、前記枠部の前記側面と前記基材本体部の前記側面との前記境界部分よりも裏側で、前記基材本体部の前記側面に溶着されている請求項3に記載の車両用装飾部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両を装飾する車両用装飾部品に関する。
【背景技術】
【0002】
ミリ波レーダ装置が組込まれた車両では、同装置からミリ波が車外へ向けて送信される。先行車両、歩行者等を含む車外の物体に当たって反射されたミリ波は、上記ミリ波レーダ装置によって受信される。そして、ミリ波レーダ装置では、送信及び受信されたミリ波により、上記物体の認識、車両と物体との距離や相対速度の検出が行なわれる。
【0003】
上記車両では、ミリ波の送信方向におけるミリ波レーダ装置の前方に、特許文献1に記載されているように、フロントグリル、エンブレム等の車両用装飾部品が配置される。車両用装飾部品は、樹脂基材と、樹脂基材の表側に形成された透明樹脂層とを備えており、ミリ波の透過性を有している。さらに、車両用装飾部品に傷が付くのを抑制するために、ハードコート剤が塗布されることにより、樹脂基材及び透明樹脂層にハードコート層が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記車両用装飾部品における樹脂基材及び透明樹脂層は、それぞれ樹脂成形によって、互いに密着した状態で形成される。
ところが、樹脂基材及び透明樹脂層は、樹脂成形により、完全に密着するわけではない。そのため、樹脂基材及び透明樹脂層に塗布されたハードコート剤中の溶剤が、車両用装飾部品の側面から、樹脂基材及び透明樹脂層の界面に浸入し、その界面及び周辺部分を侵食する。その結果、樹脂基材と透明樹脂層との密着力が低下する懸念がある。こうした問題は、ハードコート剤に限らず、他の種類の溶剤が樹脂基材及び透明樹脂層の界面に浸入した場合にも、上記と同様にして起り得る。
【0006】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、樹脂基材と透明樹脂層との密着力が、溶剤の浸入により低下するのを抑制できる車両用装飾部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する車両用装飾部品は、樹脂基材と、前記樹脂基材の表側に形成され、かつ自身の裏面の側部において、前記樹脂基材の表面の側部に密着する透明樹脂層と、少なくとも前記透明樹脂層の表面に積層された透明な樹脂フィルムとを備える車両用装飾部品であって、前記樹脂フィルムの側部は、前記透明樹脂層の側面と前記樹脂基材の側面との境界部分を覆っている。
【0008】
上記の構成によれば、透明樹脂層の側面と樹脂基材の側面との境界部分を覆っている樹脂フィルムの側部は、溶剤が上記境界部分に到達するのを規制し、同境界部分から透明樹脂層と樹脂基材との界面に浸入するのを規制する。溶剤は、上記境界部分が樹脂フィルムの側部によって覆われていない場合に比べ、上記界面に浸入しにくくなる。そのため、透明樹脂層と樹脂基材との界面、及び同界面の周辺部分が溶剤によって侵食される現象が起こりにくい。これに伴い、透明樹脂層と樹脂基材との間で密着力低下が起こりにくい。
【0009】
上記車両用装飾部品において、前記樹脂フィルムには、透明なハードコート層が形成されていることが好ましい。
上記の構成によれば、ハードコート層の形成のために、ハードコート剤が塗布された場合、そのハードコート剤中の溶剤は、樹脂フィルムにより、同樹脂フィルムと樹脂基材との間を流れることを妨げられる。溶剤は、上記境界部分に到達しにくくなり、透明樹脂層と樹脂基材との界面に浸入しにくい。
【0010】
また、車両用装飾部品に対し、表側や側方から力が加わった場合、その力はハードコート層によって受け止められる。上記力によって、ハードコート層よりも裏側の部材に対し傷が付くことがハードコート層によって抑制される。
【0011】
上記車両用装飾部品において、前記樹脂基材は、基材本体部と、前記基材本体部の表側の側部に形成された環状の枠部とを備え、前記樹脂基材は、前記枠部の表面において前記透明樹脂層の裏面の側部に密着しており、前記基材本体部の表面の側部は、前記枠部の裏面に密着しており、前記樹脂フィルムの前記側部は、前記透明樹脂層の前記側面と前記枠部の側面との境界部分を覆うとともに、前記枠部の前記側面と前記基材本体部の側面との境界部分を覆っていることが好ましい。
【0012】
上記の構成によれば、透明樹脂層の側面と枠部の側面との境界部分を覆っている樹脂フィルムの側部は、溶剤が上記境界部分に到達するのを規制し、同境界部分から透明樹脂層と枠部との界面に浸入するのを規制する。溶剤は、上記境界部分が樹脂フィルムによって覆われていない場合に比べ、上記界面に浸入しにくくなる。そのため、透明樹脂層及び枠部の界面、及びその周辺部分が溶剤によって侵食される現象が起こりにくい。これに伴い、透明樹脂層と枠部との間で密着力低下が起こりにくい。
【0013】
また、枠部の側面と基材本体部の側面との境界部分を覆っている樹脂フィルムの側部は、溶剤が上記境界部分に到達するのを規制し、同境界部分から枠部と基材本体部との界面に浸入するのを規制する。溶剤は、上記境界部分が樹脂フィルムによって覆われていない場合に比べ、上記界面に浸入しにくくなる。そのため、枠部と基材本体部との界面、及びその界面の周辺部分が溶剤によって侵食される現象が起こりにくい。これに伴い、枠部と基材本体部との間で密着力低下が起こりにくい。
【0014】
上記車両用装飾部品において、前記樹脂フィルムの前記側部は、前記枠部の前記側面と前記基材本体部の前記側面との前記境界部分よりも裏側で、前記基材本体部の前記側面に溶着されていることが好ましい。
【0015】
上記の構成によれば、樹脂フィルムの側部が基材本体部の側面に溶着された箇所は、基材本体部の側面と枠部の側面との境界部分よりも裏側である。上記箇所は、樹脂フィルムの側部と基材本体部の側面との間に隙間がない状態、又は溶着されない場合よりも隙間が少ない状態となる。そのため、樹脂フィルムの側部と基材本体部の側面との間に、溶剤が浸入しにくくなる。
【0016】
従って、溶剤は、枠部の側面と基材本体部の側面との上記境界部分に一層到達しにくくなり、枠部と基材本体部との界面に一層浸入しにくくなる。また、溶剤は、透明樹脂層の側面と枠部の側面との境界部分に対しても一層到達しにくくなり、透明樹脂層と枠部との界面に一層浸入しにくくなる。
【発明の効果】
【0017】
上記車両用装飾部品によれば、樹脂基材と透明樹脂層との密着力が、溶剤の浸入により低下するのを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】車両用装飾部品を車両用エンブレムに具体化した一実施形態を示す図であり、同エンブレムを、窓部を有するフロントグリルの一部とともに示す正面図。
【
図3】(a)~(c)は、
図2におけるエンブレムが製造される途中の形態である中間成形体をそれぞれ示す部分断面図。
【
図4】(a),(b)は、同じくエンブレムの他の形態の中間成形体をそれぞれ示す部分断面図。
【
図5】一実施形態において、フィルム材を賦形する際に用いられる装置の概略断面図。
【
図6】一実施形態において、フィルム材を予備賦形する際に用いられる装置の概略部分断面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、車両用装飾部品を車両用エンブレムに具体化した一実施形態について、
図1~
図5を参照して説明する。
なお、以下の記載に関し、車両の前進方向を前方とし、後進方向を後方として説明する。また、上下方向は車両の上下方向を意味し、左右方向は車幅方向であって車両の前進時の左右方向と一致するものとする。また、各図では、エンブレムにおける各部を認識可能な大きさとするために、各部の縮尺を適宜変更して図示している。
【0020】
図1及び
図2に示すように、車両10の前部の車幅方向における中央部分であって、フロントグリル11の後方には、前方監視用のミリ波レーダ装置13が配置されている。ミリ波レーダ装置13は、電磁波におけるミリ波を車外のうち、前方へ向けて送信し、かつ、車外の物体に当たって反射されたミリ波を受信する機能を有する。ミリ波とは、波長が1mm~10mmであり、周波数が30GHz~300GHzである電波をいう。
【0021】
上記フロントグリル11の厚みは、一般的なフロントグリルと同様、一定ではない。また、フロントグリル11では、樹脂製基材の表面に金属めっき層が形成されることがある。従って、フロントグリル11は、送信又は反射されたミリ波と干渉する。このため、フロントグリル11において、ミリ波の送信方向におけるミリ波レーダ装置13の前方には、窓部12が開口されている。
【0022】
上記窓部12には、本実施形態のエンブレム15が配置されている。ここで、エンブレム15を説明するにあたり、意匠面側(
図2では上側)を表側といい、意匠面とは反対側(
図2では下側)を裏側というものとする。
【0023】
エンブレム15は、その表面(意匠面52)が車両10の前方を向き、かつ同エンブレム15の裏面が車両10の後方を向くように、起立した状態で配置される。この配置状態では、エンブレム15の表側が車両10の前側に対応し、エンブレム15の裏側が車両10の後側に対応する。
【0024】
そのため、単体のエンブレム15の説明に際し、車両前後方向に対応する方向を特定する場合には、「表」及び「裏」の語を用いるものとする。車両10に取付けられた状態のエンブレム15を説明する場合についても同様である。
【0025】
エンブレム15は、樹脂基材21、透明樹脂層33、加飾層41、樹脂フィルム45及びハードコート層51を備えている。次に、エンブレム15を構成する各部について説明する。
【0026】
<樹脂基材21>
樹脂基材21は、エンブレム15の裏側部分を構成する部材である。樹脂基材21は、その骨格部分を構成する基材本体部22と、基材本体部22の表側に隣接する箇所であって、同基材本体部22の側部に形成された環状の枠部31とを備えている。
【0027】
基材本体部22は、AES(アクリロニトリル-エチレン-スチレン共重合)樹脂によって形成されており、着色されている。基材本体部22の表側の部分には、表裏方向に対し略直交する一般部24と、その一般部24よりも表側へ突出する突部25とが形成されている。一般部24は、
図1におけるエンブレム15の背景領域16に対応し、突部25は同エンブレム15の模様領域17に対応している。ここでは、模様領域17は、「A」という文字部分18とその周りの環状部分19とにより構成されている。
【0028】
図2に示すように、基材本体部22の側部には、表側の面において開放されて裏側へ凹む環状凹部26が形成されている。環状凹部26は、基材本体部22の全周にわたって形成されていて、略楕円の環状をなしている。基材本体部22の側面27は、表裏方向に対し直交する方向の寸法が、表側ほど大きくなるように、同表裏方向に対し緩やかに傾斜している。樹脂基材21(基材本体部22)の裏面は、表側へ凹むように緩やかに湾曲している(
図5参照)。
【0029】
なお、基材本体部22は、上記AES樹脂に代えて、ASA(アクリロニトリル-スチレン-アクリレート共重合)樹脂、PC(ポリカーボネート)樹脂、PC樹脂及びABS(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合)樹脂のポリマーアロイ等によって形成されてもよい。
【0030】
枠部31は、基材本体部22の全周にわたって形成されることで略楕円の環状をなしている(
図1参照)。枠部31の裏側の部分は、上記環状凹部26内に充填された状態で形成(埋設)されている。枠部31は、例えば、PC樹脂とカーボンブラックとの混合材料によって形成されていて、黒色を有している。枠部31の側面32は、表裏方向に対し直交する方向の寸法が、表側ほど大きくなるように、同表裏方向に対し緩やかに傾斜している。側面32は、表裏方向に対し、上記側面27と同一又は近い角度で傾斜している。枠部31の裏面は、基材本体部22の表面に対し密着している。
【0031】
基材本体部22の裏面の側部における複数箇所には、エンブレム15をフロントグリル11又は車体に組付けるための取付部(図示略)が設けられている。取付部は、クリップ、ビス、係合爪等によって構成されている。
【0032】
<透明樹脂層33>
透明樹脂層33は、エンブレム15の表側の多くの部分を構成する透明な部材であり、PC樹脂によって、基材本体部22及び枠部31よりも表側に形成されている。ここでの透明には、無色透明のほか、着色透明(有色透明)も含まれる。この点は、後述する樹脂フィルム45についても同様である。透明樹脂層33の裏側部分(但し、側部を除く)は、上記基材本体部22の表側部分の形状に対応した形状に形成されている。すなわち、透明樹脂層33の裏側部分であって、基材本体部22の一般部24の表側となる箇所には、表裏方向に対し略直交する一般部34が形成されている。透明樹脂層33の裏側部分であって、基材本体部22の突部25の表側となる箇所には、一般部34よりも表側へ凹む凹部35が形成されている。
【0033】
透明樹脂層33の表面36は、上記樹脂基材21(基材本体部22)の裏面に対応して、表側へ膨らむように緩やかに湾曲している(
図5参照)。透明樹脂層33の側部は、枠部31よりも外側方(
図2では左方)へ飛び出している。透明樹脂層33の側部は、表側の側面37と、裏側の側面38とを有している。表側の側面37は、透明樹脂層33の側面全体のうちの大部分を構成している。上記側面37は、表裏方向に対し直交する方向の寸法が、表側ほど小さくなるように、同表裏方向に対し傾斜している。裏側の側面38は、上記表側の側面37と上記枠部31の側面32との間に位置する。上記側面38は、表裏方向に対し直交する方向の寸法が、表側ほど大きくなるように、同表裏方向に対し傾斜している。側面38は、表裏方向に対し、上記側面27,32よりも大きな角度、本実施形態では90度に近い角度で傾斜している。上記側面38の存在により、上記側面37,32の間に段差部Aが設けられている。
【0034】
上記段差部Aは、次のような設計思想のもと、形成されている。それは、本実施形態では、透明樹脂層33及び枠部31が、この順で射出成形法等の樹脂成形法によって成形される。一方で、透明樹脂層33は、一般的な樹脂成形法が行なわれた場合と同様、樹脂成形後に少なからず収縮する。枠部31の樹脂成形に際し、透明樹脂層33が樹脂成形金型にインサート部材として配置された場合、樹脂成形金型と透明樹脂層33の側面37との間に隙間が生ずる。
【0035】
仮に、段差部Aが設けられていないとすると、枠部31の樹脂成形に際し、同枠部31の材料である溶融状態の樹脂が上記の隙間に流れ込んで、透明樹脂層33の表側に出てしまう。そこで、上記のように、段差部Aを設けることで、枠部成形用の溶融状態の樹脂が上記隙間を通って透明樹脂層33の表側へ流れ出るのを抑制している。
【0036】
透明樹脂層33は、自身の裏面の側部において、樹脂基材21の表面の側部、本実施形態では、枠部31の表面に対し密着している。すなわち、枠部31は、先に成形された透明樹脂層33に対し溶着しながら成形される。そのため、枠部31は透明樹脂層33に密着した状態で形成される。
【0037】
なお、透明樹脂層33は、上記PC樹脂に代えてPMMA(ポリメタクリル酸メチル)樹脂等の透明な樹脂によって形成されてもよい。
<加飾層41>
加飾層41は、樹脂基材21と透明樹脂層33との間であって、枠部31によって囲まれた領域に形成されており、ミリ波透過性を有している。本実施形態では、加飾層41は、有色加飾層42と光輝加飾層43との組合わせによって構成されている。有色加飾層42は、例えば、黒色、青色等の濃色を有しており、一般部34の裏面に形成されている。
【0038】
光輝加飾層43は、インジウム(In)等の金属材料からなり、透明樹脂層33の凹部35の壁面、枠部31の一部及び有色加飾層42の裏面全体に対し、島構造をなすように形成されている。島構造は、金属皮膜が一面に連続しておらず、多数の微細な金属皮膜が島状に互いに僅かに離間し又は一部接触した状態で敷き詰められてなる構造である。この構造が採用されることにより、光輝加飾層43は不連続構造となり、高い電気抵抗を有し、ミリ波透過性を有する。
【0039】
樹脂基材21及び透明樹脂層33において、ミリ波が透過される領域は、厚みが一定となるように形成されている。
<樹脂フィルム45>
樹脂フィルム45は、フィルム基材46と、フィルム基材46の裏面に形成された結合層47とを備えている。結合層47のフィルム基材46との相性によっては、それらの間に、接着層又は粘着層が追加される場合もある。フィルム基材46は、PC樹脂等の透明な樹脂材料によって形成されている。結合層47としては、例えば、OCA(OPTICAL CLEAR ADHESIVE)と呼ばれるフィルム状の透明な光学粘着シートや、インサート成形時に透明樹脂層33に接着させるために、同透明樹脂層33との結合が可能な材質、例えば、PMMA樹脂、ABS樹脂等からなるものが用いられている。
【0040】
樹脂フィルム45の主部48は、透明樹脂層33の表面36に対し、結合層47において貼付けられている。樹脂フィルム45のうち上記主部48の周りの部分(以下、側部49という)は、透明樹脂層33の側面37,38を経由して、樹脂基材21の側面まで回り込んでいる。ここでの樹脂基材21の側面とは、枠部31の側面32、及び基材本体部22の側面27である。
【0041】
樹脂フィルム45の側部49は、透明樹脂層33の側面37,38と、樹脂基材21の上記側面とに対し、結合層47において貼付けられている。このように貼付けられた側部49により、透明樹脂層33の側面38と枠部31の側面32との境界部分Bが覆われるとともに、上記側面32と基材本体部22の側面27との境界部分Cが覆われている。
【0042】
さらに、樹脂フィルム45は、上記境界部分Cよりも裏側で、基材本体部22の側面27に対し溶着されている。
<ハードコート層51>
ハードコート層51は、エンブレム15に傷が付くのを抑制するためのものであり、透明であり、ミリ波透過性を有している。ハードコート層51は、樹脂フィルム45に対し、公知のハードコート剤を塗布することにより形成されている。ハードコート剤としては、例えば、アクリレート系、オキセタン系、シリコーン系等の有機系ハードコート剤、無機系ハードコート剤、有機無機ハイブリッド系ハードコート剤等が挙げられる。
【0043】
ハードコート層51は、エンブレム15において最も表側に位置している。ハードコート層51の表面は、エンブレム15の意匠面52を構成している。
ハードコート層51は、上述したように、樹脂フィルム45を覆って保護することで、エンブレム15に傷が付くのを抑制する。そのほかにも、ハードコート層51は、太陽光、風雨、温度変化等が原因で、エンブレム15が変質したり劣化したりするのを抑制する機能も有している。
【0044】
そして、上記エンブレム15は、起立させられた状態で窓部12に配置され、取付部においてフロントグリル11又は車体に組付けられている。
次に、上記のように構成された本実施形態の作用について、エンブレム15の製造方法とともに説明する。
【0045】
エンブレム15の製造に際しては、最初に、樹脂成形金型が用いられてインサート成形が行なわれることにより、
図3(a)に示す中間成形体55が成形される。このインサート成形に際しては、フィルム材56が準備される。フィルム材56は、樹脂フィルム45の成形に用いられる素材であり、同樹脂フィルム45と同様、フィルム基材46及び結合層47を備える多層構造を採る。
【0046】
上記フィルム材56がインサート部材として、樹脂成形金型に配置される。次に、樹脂成形金型内のキャビティに溶融状態の樹脂材料(PC樹脂)が射出されて、充填される。溶融樹脂が硬化されることにより、一般部34及び凹部35を有する透明樹脂層33が形成される。また、フィルム材56が透明樹脂層33に貼付けられた状態で所定の形状に形成される。
【0047】
得られた中間成形体55におけるフィルム材56は、
図3(a)に示すように、大別すると次の3つの部分からなる。
・表裏方向に対し略直交し、透明樹脂層33の表面36に積層された第1の部分57。
【0048】
・第1の部分57の周りに位置していて環状をなし、同第1の部分57の周縁部に対し屈曲して裏側へ延びる第2の部分58。
・第2の部分58の周りに位置していて環状をなし、同第2の部分58の周縁部に対し屈曲して、外側方へ延びる第3の部分59(
図5参照)。
【0049】
上記中間成形体55では、フィルム材56における第1の部分57が、透明樹脂層33の表面36に貼付けられている。また、フィルム材56における第2の部分58の一部は、透明樹脂層33の側面37に貼付けられている。
【0050】
続いて、上記とは異なる樹脂成形金型が用いられてインサート成形が行なわれることにより、
図3(b)に示す中間成形体61が成形される。すなわち、上記
図3(a)の中間成形体55がインサート部材として、樹脂成形金型に配置される。次に、樹脂成形金型内のキャビティに溶融状態の樹脂材料(PC樹脂とカーボンブラックとの混合材料)が射出されて、充填される。溶融樹脂が硬化されることにより、透明樹脂層33の裏面の側部に密着した状態の枠部31が成形される。このようにして、フィルム材56、透明樹脂層33及び枠部31からなる、
図3(b)に示す中間成形体61が得られる。
【0051】
次に、上記中間成形体61が上記樹脂成形金型から取り出される。
図3(c)に示すように、透明樹脂層33の一般部34に対し、スクリーン印刷等の印刷、ホットスタンプ等が行なわれることにより、有色加飾層42が形成される。続いて、透明樹脂層33の凹部35の壁面、枠部31の一部、及び有色加飾層42の裏面全体に、インジウム等の金属材料がスパッタリング又は蒸着されることにより、光輝加飾層43が形成される。このようにして、透明樹脂層33の裏面、及び枠部31の一部に、有色加飾層42及び光輝加飾層43からなる加飾層41が形成されて、
図3(c)に示す中間成形体62が得られる。
【0052】
次に、上記とは異なる樹脂成形金型が用いられてインサート成形が行なわれることにより、
図4(a)に示す中間成形体63が成形される。すなわち、上記
図3(c)の中間成形体62がインサート部材として、樹脂成形金型に配置される。次に、樹脂成形金型内のキャビティに溶融状態の樹脂材料(AES樹脂)が射出されて、充填される。溶融樹脂が硬化されることにより、
図4(a)に示すように、枠部31の裏面及び加飾層41(光輝加飾層43)に密着した状態の基材本体部22が成形されて、中間成形体63が得られる。
【0053】
続いて、フィルム材56における第2の部分58の一部と第3の部分59とが、透明樹脂層33の側面38、枠部31の側面32、及び基材本体部22の側面27に沿った形状に賦形され、結合層47において上記側面38,32,27に貼付けられる。
【0054】
上記賦形及び貼付けに際しては、
図5に示す装置70が用いられる。なお、
図5では、中間成形体63が簡略化されて図示されている。この装置70は、基部71、成形体受け治具72及びフィルム材受け治具75を備えている。
【0055】
成形体受け治具72は基部71上に配置されている。成形体受け治具72の上部には、上記中間成形体63の裏面に対応した形状を有する突部72aが形成されている。
フィルム材受け治具75は、環状をなしていて、成形体受け治具72を取り囲んだ状態で基部71上に配置されている。フィルム材受け治具75は、自身の上面を、フィルム材56の第3の部分59が載置される載置面76として有している。フィルム材受け治具75と基部71との間には、高さ調整用のスペーサ77が適宜介在される。
【0056】
フィルム材56における第2の部分58及び第3の部分59の賦形に際しては、上記中間成形体63が樹脂基材21(基材本体部22)において、成形体受け治具72の突部72a上に載置される。中間成形体63は、成形体受け治具72によって裏側から支えられた状態となる。フィルム材56における上記第3の部分59がフィルム材受け治具75の載置面76上に載置される。
【0057】
図示しない真空吸引機構が作動させられることにより、成形体受け治具72を通じて、フィルム材56における第2の部分58の一部と第3の部分59とが吸引される。この吸引により、
図5において二点鎖線で示すように、第2の部分58の一部と、第3の部分59とが、中間成形体63における透明樹脂層33の側面38、枠部31の側面32、及び基材本体部22の側面27に密着するように巻き込まれることで、同側面38,32,27に沿った形状に賦形される。フィルム材56のうち賦形された部分は、結合層47において上記側面38,32,27に貼付けられる(
図4(b)参照)。なお、圧縮空気によって加圧される(圧空成形)ことで賦形が行なわれてもよい。
【0058】
また、上記装置70において、スペーサ77の数を増減したり、同スペーサ77を厚みの異なる別のスペーサに変更したりすることで、載置面76の上下位置(高さ)を調整し、フィルム材56の巻き込み長さを調整することが可能である。
【0059】
次に、フィルム材56の第3の部分59のうち上記側面38,32,27に対する貼付けに関与しない余剰部分が、超音波、熱刃、レーザ等によってカット(トリミング)される。余剰部分が除去されることで残ったフィルム材56により、樹脂フィルム45が構成される。
【0060】
さらに、樹脂フィルム45が、基材本体部22の側面27と枠部31の側面32との境界部分Cよりも裏側で、上記側面27に対し、超音波溶着法により、溶着される。境界部分Cは、透明樹脂層33の側面38と上記側面32との境界部分Bよりも裏側に位置する。この場合、樹脂フィルム45における側部49のうち、上記の条件を満たす箇所が、超音波ホーンによって基材本体部22側へ加圧される。この状態で、超音波ホーンが20kHz以上の周波数で振動(超音波振動)される。この振動が、上記側部49を介して基材本体部22に伝達されて、両者の間に摩擦熱が発生する。この摩擦熱により、
図4(b)に示すように、側部49及び基材本体部22が溶融する。側部49が基材本体部22に溶着されてなる中間成形体64が得られる。
【0061】
なお、フィルム材56の上記余剰部分のトリミングは、上記溶着と同時に行なわれてもよい。
次に、同
図4(b)において二点鎖線で示すように、中間成形体64における樹脂フィルム45にハードコート剤が塗布される。
【0062】
ここで、中間成形体64の側部には、透明樹脂層33の側面38と枠部31の側面32との境界部分Bが位置するとともに、同側面32と基材本体部22の側面27との境界部分Cが位置する。
【0063】
仮に、ハードコート剤が上記側面38,32,27に対し直接塗布されると、そのハードコート剤における溶剤が上記境界部分B,Cに直接付着する。付着した溶剤が上記境界部分Bから、透明樹脂層33と枠部31との界面に浸入して、界面の周辺部分を浸食したり、境界部分Cから枠部31と基材本体部22との界面に浸入して、界面の周辺部分を侵食したりするおそれがある。
【0064】
この点、本実施形態では、樹脂フィルム45に対しハードコート剤が塗布される。塗布されたハードコート剤が硬化することで、樹脂フィルム45の表面及び側面にハードコート層51が形成される。
【0065】
ハードコート層51の形成時には、樹脂フィルム45の側部49が上記境界部分B,Cを覆っている。この側部49は、溶剤が、上記境界部分B,Cに直接付着するのを規制する。
【0066】
溶剤の各境界部分B,Cに対する直接の付着が上記のように規制されることから、溶剤が境界部分Bから、透明樹脂層33と枠部31との界面に浸入することが規制される。また、溶剤が境界部分Cから、枠部31と基材本体部22との界面に浸入することも規制される。
【0067】
これらの浸入規制により、透明樹脂層33と枠部31との界面等の溶剤による浸食が抑制される。また、枠部31と基材本体部22との界面等の溶剤による浸食が抑制される。上記界面等とは、界面及びその周辺部分を意味する。その結果、透明樹脂層33の裏面と枠部31の表面との密着力が低下するのを抑制できる。また、枠部31の裏面と基材本体部22の表面との密着力が低下するのを抑制できる。
【0068】
さらに、本実施形態では、樹脂フィルム45の側部49が、上記境界部分B,Cよりも裏側で、基材本体部22の側面27に対し溶着されている。上記側部49が側面27に対し溶着された箇所は、同側部49と側面27との間に隙間がない状態、又は溶着されない場合よりも隙間が少ない状態となる。そのため、上記側部49と側面27との間に、溶剤が入り込むことが、同側部49によって妨げられる。
【0069】
従って、溶剤は、上記境界部分Cに対しても境界部分Bに対しても一層到達しにくくなり、透明樹脂層33と枠部31との界面にも、枠部31と基材本体部22との界面にも、一層浸入しにくくなる。
【0070】
枠部31と基材本体部22との界面でも、透明樹脂層33と枠部31との界面でも、溶剤による浸食が一層抑制される。その結果、枠部31の裏面と基材本体部22の表面との間でも、透明樹脂層33の裏面と枠部31の表面との間でも、密着力低下を一層抑制することができる。
【0071】
このようにして、
図1及び
図2に示す、目的とするエンブレム15が得られる。
ところで、上記エンブレム15が組付けられた車両10の洗車時に、エンブレム15に洗剤が塗られることがある。そのほかにも、エンブレム15の側面に各種溶剤が付着することがある。これらの場合にも、上述したハードコート層51の形成時と同様の効果が得られる。
【0072】
すなわち、境界部分B,Cを覆う樹脂フィルム45の側部49により、溶剤が、境界部分Cに到達することも、境界部分Bに到達することも規制される。これに伴い、溶剤が境界部分Cから、枠部31と基材本体部22との界面に浸入することも、境界部分Bから透明樹脂層33と枠部31との界面に浸入することも規制し、界面等での溶剤による浸食を抑制することができる。枠部31の裏面と基材本体部22の表面との間での密着力低下や、透明樹脂層33の裏面と枠部31の表面との間での密着力低下を抑制することができる。
【0073】
また、エンブレム15に対し、表側や側方から力が加わった場合、その力はハードコート層51によって受け止められる。上記力によって、ハードコート層51よりも裏側の部材に対し傷が付くことがハードコート層51によって抑制される。
【0074】
ところで、
図2に示すミリ波レーダ装置13からミリ波が送信されると、そのミリ波は、エンブレム15の各部を透過する。透過したミリ波は、先行車両、歩行者等を含む車両前方の物体に当たって反射された後、再びエンブレム15を透過し、ミリ波レーダ装置13によって受信される。ミリ波レーダ装置13では、送信及び受信された上記ミリ波に基づき、物体の認識や、車両10と同物体との距離、相対速度等の検出が行われる。
【0075】
また、エンブレム15に対し車両10の前側から可視光が照射されると、その可視光は、ハードコート層51、樹脂フィルム45及び透明樹脂層33を透過する。上記可視光は、加飾層41及び枠部31で反射又は吸収される。車両10の前方からエンブレム15を見ると、ハードコート層51、樹脂フィルム45及び透明樹脂層33を通して、それらの裏側(奥側)に加飾層41及び枠部31が位置するように見える。加飾層41のうち有色加飾層42については、その有色加飾層42の有する色(黒色、青色等)が見える。また、加飾層41のうち光輝加飾層43については、金属のように光り輝いて見える。すなわち、黒色、青色等の濃色を背景に、文字部分18と環状部分19とが金属のように見える。また、環状部分19の径方向における外側には、枠部31による黒色が見える。このように、加飾層41及び枠部31によってエンブレム15が装飾され、同エンブレム15及びその周辺部分の外観が向上する。
【0076】
なお、加飾層41及び枠部31は、ミリ波レーダ装置13よりも前側に位置しており、そのミリ波レーダ装置13を覆い隠す機能を発揮する。そのため、エンブレム15の前側からは、ミリ波レーダ装置13が見えにくい。従って、ミリ波レーダ装置13がエンブレム15を介して透けて見える場合に比べて外観が向上する。
【0077】
本実施形態によると、上記以外にも、次の効果が得られる。
・樹脂フィルム45の側部49が、基材本体部22の側面27に対し溶着されていて、両者の間が封止されているため、雨、氷雪が溶けてできた水、洗車時に使用される水等が、基材本体部22の側面27と樹脂フィルム45の側部49との隙間に入り込むのを抑制し、防水性を高めることができる。
【0078】
なお、上記実施形態は、これを以下のように変更した変形例として実施することもできる。上記実施形態及び以下の変形例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組合わせて実施することができる。
【0079】
・上記実施形態では、フィルム材56がインサート部材として用いられ、同フィルム材56が透明樹脂層33の表面36及び側面37に貼付けられた中間成形体55がインサート成形される。この成形に伴い、フィルム材56が、上記第1の部分57、第2の部分58及び第3の部分59を有する形状に形成される。枠部31、加飾層41及び基材本体部22の形成後に、フィルム材56が透明樹脂層33の側面38、枠部31の側面32、及び基材本体部22の側面27に沿った形状に賦形される。
【0080】
これに代えて、エンブレム15のうち、樹脂フィルム45を除く部分(以下「中間成形体78」という)が形成され、その形成とは別に、フィルム材56が、上記第1の部分57、第2の部分58及び第3の部分59を有する形状に形成(以下「予備賦形」という)されてもよい。
【0081】
図6は、上記予備賦形に用いられる装置80を図示している。この装置80における成形体受け治具72は、上記中間成形体78が載置される凹部72bを上部に有している。また、成形体受け治具72の側面72cは、透明樹脂層33における側面37と側面38との境界部分の下方に位置している。装置80の上記以外の構成は、上記装置70の構成と同様である。そのため、装置80において、装置70と同様の部材については同一の符号を付し、詳しい説明を省略する。
【0082】
フィルム材56の予備成形に際しては、上記中間成形体78が、成形体受け治具72の凹部72bに装着される。フィルム材56が透明樹脂層33の表面36上及びフィルム材受け治具75の載置面76上に載置される。
【0083】
図示しない真空吸引機構を用いて吸引が行なわれる。フィルム材56のうち、上記表面36上に載置された部分は、同表面36に沿った形状に賦形されて、第1の部分57が形成される。フィルム材56のうち、上記第1の部分57の周囲の部分が、透明樹脂層33の側面37と、成形体受け治具72の側面72cとに沿った形状に賦形されて、第2の部分58が形成される。フィルム材56のうち、上記第2の部分58の周囲の部分が載置面76の形状に沿って賦形されて、第3の部分59が形成される。
【0084】
なお、上記
図6の装置80に代えて、
図7に示す装置90が用いられて、フィルム材56が上記中間成形体78とは別に予備賦形されてもよい。
装置90では、上述した成形体受け治具72に代えて、フィルム材56を裏側から直接支えるフィルム材受け治具91が用いられる。フィルム材受け治具91は、
図6の凹部72bに中間成形体78が装着された場合の、成形体受け治具72及び中間成形体78の全体の外形形状と同様の外形形状を有している。
【0085】
フィルム材56の予備成形に際しては、フィルム材56がフィルム材受け治具91上及びフィルム材受け治具75の載置面76上に載置される。
図示しない真空吸引機構を用いて吸引が行なわれる。フィルム材56のうち、上記フィルム材受け治具91上に載置された部分は、同フィルム材受け治具91の表面91aに沿った形状に賦形されて、第1の部分57が形成される。フィルム材56のうち、上記第1の部分57の周囲の部分が、フィルム材受け治具91の側面91cに沿った形状に賦形されて、第2の部分58が形成される。フィルム材56のうち、上記第2の部分58の周囲の部分が載置面76の形状に沿って賦形されて、第3の部分59が形成される。
【0086】
なお、上記装置80又は装置90を用いて予備成形されて、第1の部分57、第2の部分58及び第3の部分59が形成されたフィルム材56は、上記実施形態と同様に、
図5の装置70に装着されて、賦形が行なわれる。
【0087】
・樹脂フィルム45における結合層47として、有色透明をなすものが用いられてもよい。この場合、車両10の前方からは、結合層47を通じて加飾層41が見えるため、結合層47の色が加わった状態で加飾層41が見えることになる。結合層47の色を変えることで、結合層47を通じて見える加飾層41の色を変更することが可能となり、加飾のバリエーションを増やすことができる。
【0088】
・樹脂フィルム45における側部49の基材本体部22に対する溶着が、超音波溶着法に代えて、振動溶着法、高周波溶着法等の他の溶着法によって行なわれてもよい。
・枠部31が省略され、樹脂基材21が基材本体部22のみによって構成されてもよい。ただし、この場合には、樹脂フィルム45の側部49は、透明樹脂層33の側面37,38を経由して、基材本体部22の側面27まで回り込み、透明樹脂層33の側面38と基材本体部22の側面27との境界部分を覆う。
【0089】
・上記車両用装飾部品は、車外の物体を検出するための電磁波を送信及び受信する装置が搭載された車両に組込まれる車両用装飾部品であれば適用可能である。この場合、装置が送信及び受信する電磁波には、ミリ波のほかにも、赤外線等の電磁波が含まれる。
【0090】
・車外の物体を検出するための電磁波を送信及び受信する装置としては、前方監視用以外にも、後方監視用、前側方監視用、又は後側方監視用の装置であってもよい。この場合、車両用装飾部品は、電磁波の送信方向における上記装置の前方に配置される。
【0091】
・上記車両用装飾部品は、車外の物体を検出するための電磁波を送信及び受信する装置が搭載されない車両に組込まれる車両用装飾部品であってもよい。
・上記車両用装飾部品は、オーナメント、マーク等、エンブレム以外の車両用外装品にも適用可能であり、さらには、車両用内装品にも適用可能である。
【符号の説明】
【0092】
10…車両
11…フロントグリル(車両用装飾部品)
21…樹脂基材
22…基材本体部
27,32,37,38…側面
31…枠部
33…透明樹脂層
36…表面
45…樹脂フィルム
49…側部
51…ハードコート層
B,C…境界部分