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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022131966
(43)【公開日】2022-09-07
(54)【発明の名称】堆積物の清掃装置及び清掃方法
(51)【国際特許分類】
   E01H 1/00 20060101AFI20220831BHJP
   C10B 45/00 20060101ALI20220831BHJP
   B65F 3/00 20060101ALI20220831BHJP
【FI】
E01H1/00 Z
C10B45/00 A
B65F3/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021031244
(22)【出願日】2021-02-26
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083253
【弁理士】
【氏名又は名称】苫米地 正敏
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 勇輝
(72)【発明者】
【氏名】小林 正樹
(72)【発明者】
【氏名】石田 匡平
【テーマコード(参考)】
2D026
3E024
4H012
【Fターム(参考)】
2D026AA01
3E024AA01
3E024BA10
4H012GA02
(57)【要約】
【課題】路面上の堆積物を確実かつ効率的にかき集めることができる清掃装置を提供する。
【解決手段】路面上を走行可能な装置本体1と、下端部が路面に接地した状態で装置本体1が走行することにより路面上の堆積物をかき集める部材であって、装置本体1に上下動自在に支持される清掃部材2と、この清掃部材2を装置本体1に対して上下動させるための駆動機構3を備え、この駆動機構3の駆動力により清掃部材2の下端部が路面に押し付けられるようにした。清掃部材2の下端部が路面に密着するため、堆積物の取りこぼしが防止され、路面上の堆積物を確実かつ効率的にかき集めることができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
路面上を走行可能な装置本体(1)と、
下端部が路面に接地した状態で装置本体(1)が走行することにより路面上の堆積物をかき集める部材であって、装置本体(1)に上下動自在に支持される清掃部材(2)と、
該清掃部材(2)を装置本体(1)に対して上下動させるための駆動機構(3)を備え、
該駆動機構(3)の駆動力により清掃部材(2)の下端部が路面に押し付けられるようにしたことを特徴とする堆積物の清掃装置。
【請求項2】
路面上を走行可能な装置本体(1)と、
下端部が路面に接地した状態で装置本体(1)が走行することにより路面上の堆積物をかき集める部材であって、装置本体(1)に上下動自在に支持される清掃部材(2)を備え、
該清掃部材(2)は、少なくとも下部構成部分の一部又は全部に、当該清掃部材(2)でかき集められた堆積物が乗り上げる傾斜面(20)が設けられていることを特徴とする堆積物の清掃装置。
【請求項3】
さらに、清掃部材(2)を装置本体(1)に対して上下動させるための駆動機構(3)を備え、
該駆動機構(3)の駆動力により清掃部材(2)の下端部が路面に押し付けられるようにしたことを特徴とする請求項2に記載の堆積物の清掃装置。
【請求項4】
水平面に対する傾斜面(20)の傾斜角度αが30~60°であることを特徴とする請求項2又は3に記載の堆積物の清掃装置。
【請求項5】
清掃部材(2)は、装置本体(1)の幅方向に沿った板状本体部(2a)の幅方向両端に側板部(2b)を有することを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の堆積物の清掃装置。
【請求項6】
清掃部材(2)の下端部の少なくとも一部がゴム製のスクレーパ(6)で構成されることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の堆積物の清掃装置。
【請求項7】
装置本体(1)は、周囲の構造物の形状を測定可能な測域センサー(7)と、該測域センサー(7)で測定された周囲の構造物の形状に基づいて自己位置を推定し、清掃装置の走行を自律制御する制御装置(8)を備えることを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の堆積物の清掃装置。
【請求項8】
請求項1~7のいずれかに記載の清掃装置を用いて路面上の堆積物をかき集め、堆積物を清掃除去することを特徴とする堆積物の清掃方法。
【請求項9】
路面がコークス炉の炉頂部であり、かき集められる堆積物が石炭粉であることを特徴とする請求項8に記載の堆積物の清掃方法。
【請求項10】
コークス炉の炉頂部において装置本体(1)を走行させて、清掃部材(2)により所定領域の堆積物をかき集めた状態で、装置本体(1)をそのまま石炭装入孔の近傍まで移動させ、その場所に堆積物を集積させることを特徴とする請求項9に記載の堆積物の清掃方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、路面上の堆積物(堆積粉)を清掃除去するための清掃装置及び清掃方法に関するもので、特にコークス炉の炉頂部に堆積した石炭粉を清掃除去するのに好適な清掃装置及び清掃方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コークス工場では、炉内に石炭を装入する装炭車からの石炭粉の漏れや、石炭貯蔵庫からの石炭粉の漏れなどにより、コークス炉の炉頂部に石炭粉(落粉)が堆積する。この堆積した石炭粉を放置すると、石炭粉中の硫黄成分などが上昇管などの金属構造物の腐食を促進させ、また、周囲に飛散して環境に悪影響を与えることから、炉体保護や粉塵飛散防止を目的として、炉頂部に堆積した石炭粉の清掃除去が行われる。しかし、炉頂部に堆積した石炭粉の清掃除去作業は、高温・粉塵環境下で行われる重筋作業であり、熱中症や粉塵吸引の恐れがある危険な作業でもある。
石炭粉のような堆積物の清掃作業を行う清掃装置として、例えば、特許文献1には、清掃対象物(堆積物)をドーザー部(清掃部材)で押してかき集める自走式の清掃装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-17952号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の清掃装置は、図12に示すように、路面Aに対して垂直に取り付けられたドーザー部9(ブラシやゴムモップなどの清掃部材)により石炭粉などの堆積物dを押してかき集めるものであるが、路面Aと接触しているドーザー部9の先端部分90が路面Aとの摩擦により進行方向と逆方向に変形し、ドーザー部9が堆積物dに乗り上げる形となって堆積物dの取りこぼしが発生するなどの問題がある。
【0005】
したがって本発明の目的は、以上のような従来技術の課題を解決し、路面上の堆積物を確実かつ効率的にかき集めることができる清掃装置を提供することにある。また、本発明の他の目的は、そのような清掃装置を用いてコークス炉の炉頂部などの堆積物を清掃除去する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するための本発明の要旨は以下のとおりである。
[1]路面上を走行可能な装置本体(1)と、
下端部が路面に接地した状態で装置本体(1)が走行することにより路面上の堆積物をかき集める部材であって、装置本体(1)に上下動自在に支持される清掃部材(2)と、
該清掃部材(2)を装置本体(1)に対して上下動させるための駆動機構(3)を備え、
該駆動機構(3)の駆動力により清掃部材(2)の下端部が路面に押し付けられるようにしたことを特徴とする堆積物の清掃装置。
【0007】
[2]路面上を走行可能な装置本体(1)と、
下端部が路面に接地した状態で装置本体(1)が走行することにより路面上の堆積物をかき集める部材であって、装置本体(1)に上下動自在に支持される清掃部材(2)を備え、
該清掃部材(2)は、少なくとも下部構成部分の一部又は全部に、当該清掃部材(2)でかき集められた堆積物が乗り上げる傾斜面(20)が設けられていることを特徴とする堆積物の清掃装置。
【0008】
[3]上記[2]の清掃装置において、さらに、清掃部材(2)を装置本体(1)に対して上下動させるための駆動機構(3)を備え、
該駆動機構(3)の駆動力により清掃部材(2)の下端部が路面に押し付けられるようにしたことを特徴とする堆積物の清掃装置。
[4]上記[2]又は[3]の清掃装置において、水平面に対する傾斜面(20)の傾斜角度αが30~60°であることを特徴とする堆積物の清掃装置。
[5]上記[1]~[4]のいずれかの清掃装置において、清掃部材(2)は、装置本体(1)の幅方向に沿った板状本体部(2a)の幅方向両端に側板部(2b)を有することを特徴とする堆積物の清掃装置。
【0009】
[6]上記[1]~[5]のいずれかの清掃装置において、清掃部材(2)の下端部の少なくとも一部がゴム製のスクレーパ(6)で構成されることを特徴とする堆積物の清掃装置。
[7]上記[1]~[6]のいずれかの清掃装置において、装置本体(1)は、周囲の構造物の形状を測定可能な測域センサー(7)と、該測域センサー(7)で測定された周囲の構造物の形状に基づいて自己位置を推定し、清掃装置の走行を自律制御する制御装置(8)を備えることを特徴とする堆積物の清掃装置。
【0010】
[8]上記[1]~[7]のいずれかの清掃装置を用いて路面上の堆積物をかき集め、堆積物を清掃除去することを特徴とする堆積物の清掃方法。
[9]上記[8]の清掃方法において、路面がコークス炉の炉頂部であり、かき集められる堆積物が石炭粉であることを特徴とする堆積物の清掃方法。
[10]上記[9]の清掃方法において、コークス炉の炉頂部において装置本体(1)を走行させて、清掃部材(2)により所定領域の堆積物をかき集めた状態で、装置本体(1)をそのまま石炭装入孔の近傍まで移動させ、その場所に堆積物を集積させることを特徴とする堆積物の清掃方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の清掃装置は、駆動機構の駆動力又は/及び清掃部材がかき集めた堆積物の荷重によって清掃部材の下端部が路面に押し付けられ、清掃部材の下端部と路面との高い密着性が得られるので、路面上の堆積物を確実かつ効率的にかき集めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第一の形態の清掃装置の一構成例を示す概念図であって、清掃部材を縦断面した状態で示す側面図
図2図1の清掃装置の平面図
図3】本発明の第一の形態の清掃装置の他の構成例を示す概念図であって、清掃部材を縦断面した状態で示す側面図
図4】本発明の第二の形態の清掃装置の一構成例を示す概念図であって、清掃部材を縦断面した状態で示す側面図
図5図4の清掃装置の平面図
図6】本発明の第二の形態の清掃装置の他の構成例を示す概念図であって、清掃部材を縦断面した状態で示す側面図
図7図6の清掃装置の平面図
図8】本発明の第二の形態の清掃装置の他の構成例を示す概念図であって、清掃部材を縦断面した状態で示す側面図
図9】本発明の第一の形態の清掃装置の他の構成例を示す概念図であって、清掃部材を縦断面した状態で示す側面図
図10】実施例1におけるコークス炉の炉頂部での清掃条件を示す説明図
図11】実施例2におけるコークス炉の炉頂部での清掃条件を示す説明図
図12】従来の清掃装置による清掃状況を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の第一の形態の清掃装置は、路面上を走行可能な装置本体1と、この装置本体1に上下動自在に支持される清掃部材2と、この清掃部材2を装置本体1に対して上下動させるための駆動機構3を備え、この駆動機構3の駆動力により清掃部材2の下端部が路面に押し付けられるようにしたものである。ここで、装置本体1に上下動自在に支持される清掃部材2は、装置本体1に対して上下スライド自在に支持されてもよいし、上下回動可能に支持されてもよい。
【0014】
図1及び図2は、本発明の第一の形態の清掃装置の一構成例(実施形態)を示す概念図であり、図1は清掃部材を縦断面した状態で示す側面図、図2は平面図である。
装置本体1は自走式の台車であり、車体10、走行用の車輪11a,11b及び駆動・操舵機構(図示せず)などを備えている。
本発明の清掃装置は、装置本体1が路面Aを走行し、それに伴って清掃部材2が路面A上の堆積物d(堆積粉)をかき集めることにより路面Aを清掃するものであり、したがって、装置本体1は堆積物の吸引機構や吸引した堆積物の貯留機構などは備えていない。
【0015】
清掃部材2は、下端部が路面Aに接地した状態で装置本体1が走行することにより路面上の堆積物d(堆積粉)をかき集める部材であり、本実施形態では、装置本体1の前部側(清掃時走行方向の前部側)にその幅方向に沿って配置される板状(壁状)のドーザー部材で構成され、装置本体1に支持部材4を介して上下スライド自在に支持されている。清掃部材2が上下スライド自在(フリーに上下動可能)に支持される機構には、通常、スライド式のガイド機構(所謂スライドガイドなど)が用いられる。このガイド機構としては、例えば、装置本体1に上下方向に沿って設けられるガイド部と、支持部材4に設けられ、前記ガイド部にスライド移動可能に係合するスライド部材で構成される。
【0016】
清掃部材2は、装置本体1の幅方向に沿った板状本体部2a(ドーザー本体部)と、かき集めた堆積物を囲い込んで(せき止めて)装置本体幅方向の外側に逃さないようにするために、この板状本体部2aの両端に連成された側板部2b(サイドドーザー部)からなっている。すなわち、清掃部材2は、板状本体部2aとその両端に連成された側板部2bによって平面コ字状に構成されている。
清掃部材2(板状本体部2a)の幅w(車幅方向での幅)は特に制限はないが、あまり大きくなるとかき集める堆積物による負荷が大きくなり過ぎるため、装置本体1の車体幅と同等~車体幅の2倍程度とすることが好ましい。また、側板部2bの幅w(車長方向での幅)も特に制限はないが、清掃部材2(板状本体部20a)の幅(車幅方向での幅)の10~50%程度が適当である。
【0017】
清掃部材2の本体部は、通常、金属製の板状部材などで構成されるが、下端部の少なくとも一部(例えば板状本体部2aの下端部)は、路面上の堆積物をかき集めやすくするため、ゴム製のスクレーパや樹脂製又は金属製のブラシなどで構成することが好ましい。特に、石炭粉のように粒径及びかさ密度の小さい堆積物(通常、石炭粉は粒径1mm以下、嵩密度1.0g/cm以下)をかき集める場合には、ゴム製のスクレーパで構成することが好ましく、本実施形態の清掃部材2も下端部がゴム製のスクレーパ6で構成されている。
【0018】
駆動機構3は、清掃部材2を装置本体1に対して上下動させるものであり、例えば油圧シリンダやボールねじなどで構成される。本実施形態の駆動機構3は、清掃部材の支持部材4を装置本体1に対して上下スライド(駆動)させるように、装置本体1に設けられている。
この清掃装置では、駆動機構3の駆動力により清掃部材2の下端部が路面Aに押し付けられる(押し付け力fが得られる)ようになっている。これにより清掃部材2の下端部が路面Aに密着するため、堆積物dの取りこぼしが防止され、路面A上の堆積物dを確実かつ効率的にかき集めることができる。
なお、清掃部材2の不使用時に清掃装置を移動(走行)させる場合には、駆動機構3で清掃部材2を路面Aから持ち上げれば、清掃部材2が移動の邪魔になることはない。
【0019】
図3は、本発明の第一の形態の清掃装置の他の構成例(実施形態)を示す概念図であって、清掃部材を縦断面した状態で示す側面図である。
この清掃装置は、清掃部材2が装置本体1に支持部材4を介して上下回動自在に支持されたものであり、この実施形態では、清掃部材2に固定された支持部材4の基端部が装置本体1に回動可能に軸支5されている。そして、清掃部材2を装置本体1に対して上下回動(駆動)させるための駆動機構3が設けられている。
この駆動機構3は、例えば、軸支部5に設けられるロータリーアクチュエーターや、装置本体1と支持部材4間に連結される油圧シリンダなどで構成され、清掃部材2の支持部材4を装置本体1に対して上下回動(駆動)させるように設けられている。
この清掃装置では、駆動機構3の駆動力Fにより清掃部材2の下端部が路面Aに押し付けられる(押し付け力fが得られる)ようになっている。これにより清掃部材2の下端部が路面Aに密着するため、堆積物dの取りこぼしが防止され、路面A上の堆積物dを確実かつ効率的にかき集めることができる。
その他の構成は、図1及び図2に示す清掃装置と同様であるので、同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0020】
本発明の第二の形態の清掃装置は、路面上を走行可能な装置本体1と、この装置本体1に上下動自在に支持される清掃部材2を備え、この清掃部材2は、少なくとも下部構成部分の一部又は全部に、当該清掃部材2でかき集められた堆積物が乗り上げる傾斜面20が設けられるものである。ここで、装置本体1に上下動自在に支持される清掃部材2は、装置本体1に対して上下スライド自在に支持されてもよいし、上下回動可能に支持されてもよい。
【0021】
図4及び図5は、本発明の第二の形態の清掃装置の一構成例(実施形態)を示す概念図であり、図4は清掃部材を縦断面した状態で示す側面図、図5は平面図である。
この清掃装置が備える清掃部材2は、図1及び図2に示す清掃装置と同様、下端部が路面Aに接地した状態で装置本体1が走行することにより路面上の堆積物d(堆積粉)をかき集める部材であり、本実施形態でも、装置本体1の前部側(清掃時走行方向の前部側)にその幅方向に沿って配置される板状(壁状)のドーザー部材で構成されているが、下部構成部分の一部又は全部が、清掃部材2でかき集められた堆積物dが乗り上げる傾斜面20を有する傾斜板部21で構成されている。すなわち、この傾斜面20は、清掃部材2の下部構成部分が、清掃時の装置走行方向に傾斜状に突き出るようにして形成されている。
本実施形態では、清掃部材2が板状本体部2aとその両側の側板部2bからなり、かつ板状本体部2aの下部構成部分に傾斜面20が設けられていることにより、清掃部材2の全体がちり取りのような形状となっている。
【0022】
この清掃装置は、清掃部材2でかき集められた堆積物dが傾斜面20に乗り上げることにより、堆積物dの荷重で清掃部材2の下端部が路面Aに押し付けられるようにしたものであるので、傾斜面20の傾斜角度αはそのような作用が得られる大きさにする必要がある。すなわち、傾斜面20の水平面に対する傾斜角度αが大きすぎると堆積物が傾斜面20に乗り上げにくくなり、一方、傾斜角度αが小さすぎると、板状本体部2aと路面Aとの距離が小さくなり、路面Aに段差がある場合に板状本体部2aが段差と干渉して清掃装置の走行が妨げられるおそれがある。このため、傾斜面20の水平面に対する傾斜角度αは30~60°程度が好ましく、45~60°程度がより好ましい。
なお、本実施形態では、清掃部材2(板状本体部2a)の下部構成部分が傾斜面20となっているが、例えば、清掃部材2(板状本体部2a)の全体または主要部分を傾斜面20としてもよい。
【0023】
清掃部材2は、装置本体1に支持部材4を介して上下回動自在に支持されており、この実施形態では、清掃部材2に固定された支持部材4の基端部が装置本体1に回動可能に軸支5されている。
その他の構成は、図1図3に示す清掃装置と同様であるので、同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
本実施形態の清掃装置の清掃部材2は、装置本体1に上下回動自在に支持されることにより、その自重により下端部が路面Aに接地した状態で、装置本体1が走行することで路面A上の堆積物dをかき集めるが、その際にかき集められた堆積物dが傾斜面20に乗り上げることにより、堆積物dの荷重で清掃部材2にモーメントMが発生し、清掃部材2の下端部が路面Aに押し付けられる(押し付け力fが得られる)ようになっている。これにより清掃部材2の下端部が路面Aに密着するため、堆積物dの取りこぼしが防止され、路面A上の堆積物dを確実かつ効率的にかき集めることができる。
【0024】
なお、この実施形態では、清掃部材2の下端部がより強く路面Aに押し付けられるようにするために、清掃部材2を装置本体1に対して上下動(上下回動)させるための駆動機構3を設け、傾斜面20に乗り上げる堆積物dの荷重に加えて、駆動機構3の駆動力が付加されるようにしてもよい。
この場合、図3の実施形態と同様、駆動機構3は、例えば、軸支部5に設けられるロータリーアクチュエーターや、装置本体1と支持部材4間に連結される油圧シリンダなどで構成され、清掃部材2の支持部材4を装置本体1に対して上下回動(駆動)させるように設けられる。
【0025】
また、この本発明の第二の形態の清掃装置では、清掃部材2は装置本体1に対して上下スライド自在に支持されてもよい。図1及び図2の実施形態と同様、清掃部材2が上下スライド自在(フリーに上下動可能)に支持される機構には、通常、スライド式のガイド機構(所謂スライドガイドなど)が用いられる。このガイド機構としては、例えば、装置本体1に上下方向に沿って設けられるガイド部と、支持部材4に設けられ、前記ガイド部にスライド移動可能に係合するスライド部材で構成される。
【0026】
図6及び図7は、本発明の第二の形態の清掃装置の他の構成例(実施形態)を示す概念図であり、図1は清掃部材を縦断面した状態で示す側面図、図2は平面図である。
この清掃装置では、装置本体1の後部側(清掃時走行方向の後部側)に清掃部材2を配置し、装置本体1に支持させたものであり、清掃部材2が装置本体1に引かれるようにして堆積物dをかき集めるようにしたものである。
清掃部材2は、図4及び図5に示す清掃装置と同様、装置本体1の幅方向に沿って配置される板状(壁状)のドーザー部材で構成されるとともに、下部構成部分の一部又は全部が、清掃部材2でかき集められた堆積物dが乗り上げる傾斜面20を有する傾斜板部21で構成されている。すなわち、この傾斜面20は、清掃部材2の下部構成部分が、清掃時の装置走行方向に傾斜状に突き出るようにして形成されている。
【0027】
本実施形態でも、清掃部材2が板状本体部2aとその両側の側板部2bからなり、かつ板状本体部2aの下部構成部分に傾斜面20が設けられていることにより、清掃部材2の全体がちり取りのような形状となっている。
本実施形態でも、清掃部材2(板状本体部2a)の下部構成部分が傾斜面20となっているが、例えば、清掃部材2(板状本体部2a)の全体または主要部分を傾斜面20としてもよい。
【0028】
清掃部材2は、装置本体1に支持部材4を介して上下回動自在に支持されており、支持部材4の基端部が装置本体1に回動可能に軸支5されている。
その他の構成(傾斜面20の傾斜角度αなどを含む。)は、図1図5に示す清掃装置と同様であるので、同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
図4及び図5に示す清掃装置と同様、本実施形態の清掃装置の清掃部材2も、装置本体1に上下回動自在に支持されることにより、その自重により下端部が路面Aに接地した状態で、装置本体1が走行することで路面A上の堆積物dをかき集めるが、その際にかき集められた堆積物dが傾斜面20に乗り上げることにより、堆積物dの荷重で清掃部材2にモーメントMが発生し、清掃部材2の下端部が路面Aに押し付けられる(押し付け力fが得られる)ようになっている。これにより清掃部材2の下端部が路面Aに密着するため、堆積物dの取りこぼしが防止され、路面A上の堆積物dを確実かつ効率的にかき集めることができる。
【0029】
なお、この実施形態でも、清掃部材2を装置本体1に対して上下動(上下回動)させるための駆動機構3を設け、傾斜面20に乗り上げる堆積物dの荷重に加えて、駆動機構3の駆動力を付加することで清掃部材2の下端部が路面Aにより強く押し付けられるようにしてもよい。また、清掃部材2は、装置本体1に対して上下スライド自在に支持されてもよい。
【0030】
図8は、本発明の第二の形態の清掃装置の他の構成例(実施形態)を示す概念図であって、清掃部材を縦断面した状態で示す側面図である。
この清掃装置は、清掃時に装置本体1が正逆方向のいずれにも走行でき、このため清掃部材2の下部構成部分に2つの傾斜面20x,20yが設けられている。すなわち、清掃部材2の下部構成部分が傾斜面20x,20yをそれぞれ有する二股状の傾斜板部21で構成されている。清掃時に装置本体1が図8中の右方向に走行する際には傾斜面20xにより、装置本体1が図8中の左方向に走行する際には傾斜面20yにより、それぞれ堆積物dのかき集めが行われ、かき集められた堆積物dがそれぞれの傾斜面20x,20yに乗り上げることにより、堆積物dの荷重で清掃部材2にモーメントMが発生し、清掃部材2の下端部が路面Aに押し付けられる(押し付け力fが得られる)ようになっている。これにより清掃部材2の下端部が路面Aに密着するため、堆積物dの取りこぼしが防止され、路面A上の堆積物dを確実かつ効率的にかき集めることができる。
【0031】
その他の構成(傾斜面20x,20yの傾斜角度αなどを含む。)は、図1図7に示す清掃装置と同様であるので、同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
なお、この実施形態でも、清掃部材2を装置本体1に対して上下動(上下回動)させるための駆動機構3を設け、傾斜面20x,20yに乗り上げる堆積物dの荷重に加えて、駆動機構3の駆動力を付加することで清掃部材2の下端部が路面Aにより強く押し付けられるようにしてもよい。また、清掃部材2は、装置本体1に対して上下スライド自在に支持されてもよい。
また、本発明の第二の形態の清掃装置では、1つの装置本体1に対して、図4及び図5に示される清掃部材2、図6及び図7に示される清掃部材2、図8に示される清掃部材2のうちの2つ以上を適宜交換できるようにしてもよい。
【0032】
本発明の清掃装置は、無人で走行することにより路面A上の堆積物dの清掃を行うが、その清掃時には、例えば、遠隔操作により若しくは予め決められたプログラムに従い走行し、或いは測域センサーで測定された周囲環境の情報に基づいて自律走行する。
上記測域センサーを利用する自律走行では、例えば、装置本体1に搭載された測域センサーで周囲環境(周囲の構造物の形状)を測定し、この測定された周囲環境情報と既知の周囲環境情報(すなわち、事前に測定され、取得されている周囲環境情報)とを照らし合わせ、清掃装置の自己位置を推定し、これに基づき走行が自律制御される。
【0033】
図9は、そのような自律走行が可能な清掃装置の一構成例を示す概念図であって、清掃部材を縦断面した状態で示す側面図である。
この清掃装置では、装置本体1に周囲環境(周囲の構造物の形状)が測定可能な測域センサー7(例えば、レーザー式のレーザーレンジファインダ)と、この測域センサー7で取得された周囲環境情報を処理し、上記のような自己位置の推定とこれに基づく自律走行制御を行う制御装置8が搭載されている。
その他の構成は、図1及び図2に示す清掃装置と同様であるので、同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0034】
本発明の清掃装置は、堆積物が存在する様々な場所の清掃に用いることができ、また、様々な堆積物を清掃対象とすることができるが、凹凸がある路面を無人で自動清掃できることから、特にコークス炉の炉頂部に堆積した石炭粉を清掃除去するのに適している。すなわち、本発明の清掃装置によれば、路面に10~20mm程度の凹凸があるコークス炉の炉頂部において、路面A(炉頂部)を自由に移動して堆積した石炭粉を確実かつ効率的にかき集め、コークス炉の炉頂部全面を清掃することができる。
【0035】
本発明の清掃装置によりコークス炉の炉頂部を清掃する場合、コークス炉の炉頂部において装置本体1を走行させて、清掃部材2により所定領域の堆積粉(石炭粉)をかき集めた状態で、装置本体1をそのまま石炭装入孔の近傍まで移動させ、その場所にかき集めた堆積粉を集積させる。このように石炭装入孔の近傍に集められた堆積粉は、適時作業者により石炭装入孔に投入される。
【実施例0036】
本発明の清掃装置の清掃能力を評価するため、10~20mmの段差があるコークス炉の炉頂部において、本発明の清掃装置による以下のような清掃試験を実施し、その結果、本発明の清掃装置によりコークス炉の炉頂面に堆積した石炭粉を高効率で集塵できることが判った。
【0037】
[実施例1]
発明例1~3では、図4及び図5に示すような清掃装置であって、下端部がゴム製のスクレーパで構成された幅0.4mの清掃部材2(ドーザー部材)を有する清掃装置を用いた。清掃部材2(ドーザー部材)は、板状本体部2aの下部構成部分(100mm)を、傾斜面20を有する傾斜板部21で構成した。この傾斜板部21の傾斜面20の傾斜角度αを30°、45°、60°の3水準とし、各傾斜角の清掃装置で試験を行った。なお、この発明例1~3の清掃装置は、清掃部材2を装置本体1に対して上下動(上下回動)させるための駆動機構3を有しており、清掃部材2の下端部がより強く路面Aに押し付けられるようにするために、傾斜面20に乗り上げる堆積物dの荷重に加えて、駆動機構3の駆動力が付加されるようにした。
【0038】
発明例4では、図3に示すような清掃装置であって、下端部がゴム製のスクレーパで構成された幅0.4mの清掃部材2(ドーザー部材)を有する清掃装置を用いた。この清掃装置は、清掃部材2の全体が路面Aに対して垂直であり、発明例1~3の清掃装置のような傾斜面20を有していない。この発明例4の清掃装置は、清掃部材2を装置本体1に対して上下動(上下回動)させるための駆動機構3を有しており、駆動機構3の駆動力により清掃部材2の下端部が路面Aに押し付けられるようにした。
また、比較例(従来例)として、ドーザー部材全体が路面に対して垂直な清掃装置を用いて試験を行った。この比較例の清掃装置は、ドーザー部材を上下動させるための駆動機構は有していない。
【0039】
図10に示すようなコークス炉の炉頂部の幅1m×長さ4mの領域に石炭粉10kgをほぼ均一な厚さとなるように散布し、その領域の石炭粉を清掃装置でかき集めて清掃を行った。図中sで示される領域部分の両側において、矢印に示す方向に清掃装置を複数回(4回)走行させて、各回ごとに0.2~0.3m幅で石炭粉をかき集め、領域sに集積させた。
領域sで回収された石炭粉量(回収量)とその他の領域に残留した石炭粉量(残留量)を測定し、下記により石炭粉の回収率を求めた。
回収率={回収量/(回収量+残留量)}×100
試験結果を表1に示す。これによれば、比較例(従来例)では石炭粉の回収率が16%と低位であったのに対し、本発明例では石炭粉の回収率が54~90%に向上し、特に発明例1~3では回収率が76~90%となっている。また、そのなかでも、傾斜面20の傾斜角度αが45~60°の場合は回収率が88~90%であり、この条件が石炭粉の清掃には特に好適であることが判る。
【0040】
【表1】
【0041】
[実施例2]
図6及び図7に示すような清掃装置であって、下端部がゴム製のスクレーパで構成された幅0.4mの清掃部材2(ドーザー部材)を有する清掃装置を用いた。清掃部材2(ドーザー部材)は、板状本体部2aの下部構成部分(100mm)を、傾斜面20を有する傾斜板部21で構成し、この傾斜板部21の傾斜面20の傾斜角度αを45°とした。この発明例の清掃装置も、清掃部材2を装置本体1に対して上下動(上下回動)させるための駆動機構3を有しており、清掃部材2の下端部がより強く路面Aに押し付けられるようにするために、傾斜面20に乗り上げる堆積物dの荷重に加えて、駆動機構3の駆動力が付加されるようにした。
また、比較例(従来例)として、ドーザー部材全体が路面に対して垂直な清掃装置を用いて試験を行った。この比較例の清掃装置は、ドーザー部材を上下動させるための駆動機構は有していない。
【0042】
図11に示すようなコークス炉の炉頂部の幅1m×長さ4mの領域に石炭粉10kgをほぼ均一な厚さとなるように散布し、その領域の石炭粉を清掃装置でかき集めて清掃を行った。図中sで示される領域部分の両側において、矢印に示す方向に清掃装置を複数回(4回)走行させて、各回ごとに0.2~0.3m幅で石炭粉をかき集め、領域sに集積させた。
領域sで回収された石炭粉量(回収量)とその他の領域に残留した石炭粉量(残留量)を測定し、実施例1と同様に石炭粉の回収率を求めた。
試験結果を表2に示す。これによれば、比較例(従来例)では石炭粉の回収率が22%と低位であったのに対し、本発明例では石炭粉の回収率が89%に向上した。
【0043】
【表2】
【符号の説明】
【0044】
1 装置本体
2 清掃部材
2a 板状本体部
2b 側板部
3 駆動機構
4 支持部材
5 軸支部
6 スクレーパ
7 測域センサー
8 制御装置
10 車体
11a,11b 車輪
20,20x,20y 傾斜面
21 傾斜板部
A 路面
d 堆積物
s 領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12