(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022131976
(43)【公開日】2022-09-07
(54)【発明の名称】マスク用インナーフレーム
(51)【国際特許分類】
A41D 13/11 20060101AFI20220831BHJP
A62B 18/08 20060101ALI20220831BHJP
【FI】
A41D13/11 Z
A62B18/08 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021031268
(22)【出願日】2021-02-26
(71)【出願人】
【識別番号】513046618
【氏名又は名称】ヴェロパワーズ合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125265
【弁理士】
【氏名又は名称】貝塚 亮平
(72)【発明者】
【氏名】末次 正憲
【テーマコード(参考)】
2E185
【Fターム(参考)】
2E185AA07
(57)【要約】
【課題】マスクの内側に装着することで、マスクと装着者の口元との間に適度な空間を形成できるだけでなく、マスク内の空気の流れを適切に制御してマスクの空気漏れを防ぐことができ、かつマスクのみ装着時と比較してより高いフィルター性能を得ることができるマスク用インナーフレームを提供する。
【解決手段】装着者の鼻及び口周りを覆う本体部(10)と、本体部(10)の上部に設けられて装着者の鼻の前方に被さる上壁部(20)と、本体部(10)の下部に設けられて装着者の口の前方に配置される開口部(30)とを備えるマスク用インナーフレーム(1)であって、開口部(30)の周囲に設けた装着具取付部(35)に装着具(40)を取り付ける際に、フィルターシート(50)の周縁部(12)をそれらの間に挟み込んで取り付けることで、フィルターシート(50)で開口部(30)を覆うように構成した。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マスクの内側に装着して使用するマスク用インナーフレームであって、
装着者の鼻及び口周りを含む顔の一部を覆うドーム型の本体部と、
前記本体部の上部に設けられて装着者の鼻の前方に被さる上壁部と、
前記本体部の下部に設けられて装着者の口の前方に配置される開口部と、
前記本体部の内面側又は外面側における前記開口部の周囲に形成された装着具取付部と、
前記装着具取付部に装着される装着具と、を備え、
前記装着具取付部に前記装着具を取り付ける際に、フィルターシートの周縁部をそれらの間に挟み込んで取り付けることで、前記フィルターシートで前記開口部を覆うように構成した
ことを特徴とするマスク用インナーフレーム。
【請求項2】
前記装着具取付部は、前記本体部の内面側における前記開口部の周囲に形成された突出部と、前記突出部の外径側に形成された溝部とを備え、
前記装着具は、前記突出部及び前記溝部に係合することで前記装着具取付部に取り付けられる環状の部材である
ことを特徴とする請求項1に記載のマスク用インナーフレーム。
【請求項3】
前記本体部の外縁には、装着者の顔面に密着する帯状の周縁部が形成されている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のマスク用インナーフレーム。
【請求項4】
前記開口部の下端部と前記本体部の下端部との間には、前記本体部の一部を切り欠いてなるスリット部が形成されている
ことを特徴とする請求項3に記載のマスク用インナーフレーム。
【請求項5】
前記上壁部の幅方向の中央には、両側から中央に向かって徐々に前側への突出高さが高くなる尾根部が形成されており、
前記尾根部は、前記上壁部の縦方向に沿って前記開口部の上端近傍まで延びている
ことを特徴とする請求項4に記載のマスク用インナーフレーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスクの内側に装着して使用するマスク用インナーフレームに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に示すように、マスクの内側(内面側、すなわちマスクとマスク装着者の顔との間)に装着して使用するマスク用インナーフレームがある。この特許文献1に記載のマスク用インナーフレームは、マスクと顔面との間に挟み込んで使用される略椀状の格子型フレームを備えるものである。
【0003】
このようなマスク用インナーフレームによれば、マスクの内面に口周りの顔面が接触せず、マスクと顔面との間に適度な空間が形成される。これにより、マスク装着時の息苦しさや発話のしづらさを軽減することができる。
【0004】
しかしながら、この特許文献1に記載のマスク用インナーフレームは、人の呼吸によるマスク内での空気の流れを適切に制御するための機能は備えていない。そのため、マスクと顔の隙間から空気の漏れが生じる可能性があり、マスクのフィルター機能による飛沫飛散防止性能や、ウイルス侵入防止性能、防塵性能などを十分に確保できないおそれがある。
【0005】
また、近年問題となっているコロナウィルス感染症への対策として、マスクの着用による飛沫飛散防止やウィルスの身体内への侵入防止を図ることが必須となっているが、通常の布マスクなどではフィルター機能があまり高くないことで、これらの飛沫飛散防止性能やウィルス侵入防止性能を十分に確保できない場合がある。その場合、マスクによるこれらの性能を補助するために、マスク用インナーフレームにもフィルター機能を持たせることで、飛沫飛散防止性能やウィルス侵入防止性能をより効果的に確保できるようにすることが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上述の点に鑑みてなされたものであり、その目的は、マスクの内側に装着することで、マスクと装着者の口元との間に適度な空間を形成できるだけでなく、マスク内の空気の流れを適切に制御してマスクの空気漏れを防ぐことができ、かつマスクのみの装着時と比較してより高いフィルター性能を得ることができるマスク用インナーフレームを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明にかかるマスク用インナーフレームは、マスクの内側に装着して使用するマスク用インナーフレーム(1)であって、装着者の鼻及び口周りを含む顔の一部を覆うドーム型の本体部(10)と、本体部(10)の上部に設けられて装着者の鼻の前方に被さる上壁部(20)と、本体部(10)の下部に設けられて装着者の口の前方に配置される開口部(30)と、本体部(10)の内面(10B)側又は外面(10A)側における開口部(30)の周囲に形成された装着具取付部(35)と、装着具取付部(35)に装着される装着具(40)と、を備え、装着具取付部(35)に装着具(40)を取り付ける際に、フィルターシート(50)の周縁部(12)をそれらの間に挟み込んで取り付けることで、フィルターシート(50)で開口部(30)を覆うように構成したことを特徴とする。
【0009】
本発明にかかるマスク用インナーフレームによれば、装着者の鼻及び口周りを含む顔の一部を覆うドーム型の本体部を備えることで、マスクと装着者の鼻及び口元との間に適度な空間を形成でき、かつマスク内の空気の流れを適切に制御してマスクの空気漏れを防ぐことができる。そのうえで、装着者の口の前方に配置される開口部を本体部に設け、当該開口部に取り付けたフィルターシートで開口部を覆うように構成したことで、このフィルターシートによって、マスクのみの装着時と比較してより高いフィルター性能を得ることができる。すなわち、マスク自体のフィルター機能に加えて、このマスク用インナーフレームの開口部に取り付けたフィルターによるフィルター機能が加わることで、二重のフィルター機能を得ることができるので、飛沫飛散防止性能やウィルス侵入防止性能をより効果的に確保することができる。
【0010】
また、高いウィルス侵入防止効果や防塵効果を有する高性能なフィルターシートは、面積あたりの値段が高いため、そのような高性能なフィルターシートをマスク自体の素材として使用すると、マスクの価格が高価になってしまう。それに対して、本発明のマスク用インナーフレームでは、フィルターシートは、開口部を覆うことができる比較的小さな面積分の専用サイズのものを使用すれば足りるため、フィルターシートの使用量(使用面積)を少なく抑えることができる。したがって、本発明のマスク用インナーフレームと専用サイズの高性能フィルターシートを使うことで、ウィルス侵入防止性能の効果を維持しながら、使用するフィルターシートの面積を劇的に減らし、日々継続使用時のコストを減らすことができる。
【0011】
また、本発明のマスク用インナーフレームでは、装着具取付部(35)は、本体部(10)の内面(10B)側における開口部(30)の周囲に形成された突出部(32)と、突出部(32)の外径側に形成された溝部(33)とを備え、装着具(40)は、突出部(32)及び溝部(33)に係合することで装着具取付部(35)に取り付けられる環状の部材であってよい。
【0012】
フィルターシートは衛生上の理由から、マスク用インナーフレームの使用の都度交換する必要があるため、毎回の使用の度に取り付け及び取り外しが必要なところ、本発明の上記構成によれば、非常に簡単な構成で、開口部に対するフィルターシートの取り付け及び取り外しを容易に行うことができる構造を実現できる。したがって、マスク用インナーフレームの使用の利便性が向上する。
【0013】
また、本発明のマスク用インナーフレームでは、本体部(10)の外縁には、装着者の顔面に密着する帯状の周縁部(12)が形成されていてもよい。
【0014】
この構成によれば、本体部の外縁に装着者の顔面に密着する帯状の周縁部を設けたことで、この周縁部によってマスク用インナーフレームの外縁と顔面との隙間を効果的に塞ぐことが可能となる。したがって、マスク用インナーフレーム内の空間と外部との間の空気の流通が主に開口部のフィルターを通してのみ行われるようにできるので、マスク用インナーフレームによる飛沫飛散防止性能やウィルス侵入防止性能を更に高めることが可能となる。また、マスクと顔の隙間からの空気の漏れも効果的に防止することができる。
【0015】
また、本発明のマスク用インナーフレームでは、開口部(30)の下端部と本体部(10)の下端部との間には、本体部(10)の一部を切り欠いてなるスリット部(11)が形成されていてもよい。
【0016】
この構成によれば、スリット部を備えることで、外力の作用によりマスク用インナーフレームの周縁部の形状や寸法に多少の変化が可能となる。したがって、装着者それぞれの顔(頬や口周り)に合わせて、その外形や寸法に沿って柔軟に周縁部の面の形状が変化するようになるので、マスク用インナーフレームの周縁部が顔の表面により適切に密着するようなる。
【0017】
また、本発明のマスク用インナーフレームでは、上壁部(20)の幅方向の中央には、両側から中央に向かって徐々に前側への突出高さが高くなる尾根部(21)が形成されており、尾根部(21)は、上壁部(20)の縦方向に沿って開口部(30)の上端近傍まで延びていてもよい。
【0018】
上壁部をこのような尾根部を備える形状としたことで、マスクの内側にマスク用インナーフレームを装着した状態で、鼻筋のラインが縦にはっきりと出るようになる。そのため、マスクを装着している装着者の見た目(マスク越しの顔の見た目)をより美しくすることができる。また、鼻から出た呼気が上壁部の内面側で尾根部の縦のラインに沿って下方向に導かれるようになることで、当該呼気が開口部に向かって流れやすくなる。
なお、上記の括弧内の符号は、後述する実施形態の対応する構成要素の符号を本発明の一例として示したものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明にかかるマスク用インナーフレームによれば、マスクの内側に装着することで、マスクと装着者の口元との間に適度な空間を形成できるだけでなく、マスク内の空気の流れを適切に制御してマスクの空気漏れを防ぐことができ、かつマスクのみの装着時と比較してより高いフィルター性能を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の第一実施形態にかかるマスク用インナーフレームの正面図である。
【
図6】マスク用インナーフレームの側面図(一部断面図)である。
【
図7】装着具を示す図で、(a)は正面図、(b)は、背面図、(c)は、(b)のX-X断面図である。
【
図9】装着具及びフィルターシートを装着具取付部に取り付ける手順を説明するための図である。
【
図10】マスクの内側にマスク用インナーフレームを装着した状態を示す図である。
【
図11】マスク用インナーフレーム内の空気(呼気)の流れを説明するための図である。
【
図12】本発明の第二実施形態にかかるマスク用インナーフレームを示す側面図(一部断面図)である。
【
図14】装着具及びフィルターシートを装着具取付部に取り付ける手順を説明するための図である。
【
図15】本発明の第三実施形態にかかるマスク用インナーフレームにおいて、装着具及びフィルターシートを装着具取付部に取り付ける手順を説明するための図である。
【
図16】本発明の第四実施形態にかかるマスク用インナーフレームにおいて、装着具及びフィルターシートを装着具取付部に取り付ける手順を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
〔第一実施形態〕
図1乃至
図6は、本発明の第一実施形態にかかるマスク用インナーフレームを示す図で、
図1は正面図、
図2は平面図、
図3は側面図、
図4は底面図、
図5は背面図、
図6は一部を断面図として示した側面図である。これらの図に示すように、本実施形態のマスク用インナーフレーム1は、装着者の顔面の一部である鼻及び口周りを覆うドーム型(椀状)に形成された本体部10を備えて構成されている。
【0022】
なお、以下の説明では、
図2に示すように、マスク用インナーフレーム1の本体部10を上側から見た状態での両側方向を幅方向といい、当該幅方向の左、右をそれぞれ左、右という。また、
図3に示すように、本体部を側方から見た状態での前、後及び上、下をそれぞれ前、後及び上、下という。
【0023】
マスク用インナーフレーム1の本体部10は、可撓性を有する合成樹脂材からなる一体成型品で、該本体部10の略上半分は、装着者の鼻の前方を覆う上壁部20であり、略下半分の中央(幅方向の中央)には、装着者の口の前方に配置される略円形の開口部30が設けられている。開口部30の下端部の中央には、本体部10の一部が切り欠かれたスリット部(割れ目)11が設けられている。スリット部11は開口部30の下端部の中央から本体部10の下端部の中央まで縦方向に延びている。
【0024】
本体部10を構成する合成樹脂材としては、PP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)、PP及びシリコン樹脂を含むもの、などが望ましい。また、それら以外にも、TPU(熱可塑性ポリウレタンエラストマー)、ナイロン、PVC(ポリ塩化ビニル)、アクリル樹脂、PET(ポリエチレンテレフタレート)等を用いることも可能である。
【0025】
上壁部20は、一例として、縦30?60mm、横40?50mm程度の寸法であって、空気が貫通しない壁で覆われてドーム状に形成された部分である。上壁部20は、マスク用インナーフレーム1内での装着者の呼吸による空気(呼気)の流れをコントロールする部分であり、鼻から出た呼気がこの上壁部20の内面に当たることで、マスク用インナーフレーム1内での当該呼気の流れを分散させることができ、より多くの呼気をその下側に設けた開口部30へと導くことができる。これにより、顔とマスクの隙間からの予期しない空気漏れを防ぐことができる。なお、上壁部20の具体的なサイズは、マスク用インナーフレーム1の装着者の顔にフィットするように、男性用、女性用、子供用などによって異なるサイズであってよい。
【0026】
また、上壁部20の幅方向の中央部は、その両側から中央に向かって徐々に高さ(前側への突出高さ)が高くなっている尾根部21となっている。尾根部21は、上壁部20の幅方向の中央において縦方向に沿って開口部30の上端近傍まで延びている。上壁部20をこのような尾根部21を備える形状としたことで、マスクの内側にマスク用インナーフレーム1を装着した状態で、鼻筋のラインが縦にはっきりと出るようになる。そのため、マスクを装着している装着者の見た目(マスク越しの顔の見た目)をより美しくすることができる、という効果がある。また、鼻から出た呼気が上壁部20の内面側の尾根部21の縦のラインに沿って下方向に導かれるようになることで、当該呼気が開口部30に向かって流れやすくなる、という効果も有している。
【0027】
また、開口部30内には、縦横に延びる複数本の細棒を備えて格子型に形成された枠部31が形成されている。枠部31は、本体部10と一体に形成された部材であり、図示するものでは、開口部30内の幅方向の中央に配置されて縦に延びる一本の縦棒31aと、開口部30内で横方向に延びて縦棒と交差する3本の横棒31bとを備えている。
図3に示すように、枠部31は、幅方向の中央部(縦棒31a)が前側に突出していることで、全体が開口部30内で前側に突出するドーム型に形成されている。
【0028】
上記構成の枠部31を備えることで、マスクの内側にマスク用インナーフレーム1を装着した状態で、特に装着者が息を吸った際などに、マスクの面が後側に向かって窪んで開口部30内に入り込むことを防止でき、口周りのマスク表面の形状を枠部31の外面に沿ったドーム状の形状に整えることができる。これにより、マスク越しに開口部30の略円形のシルエットが露出せずに済む。したがって、この枠部31によっても、マスクを装着している装着者の見た目を整えて美しくすることができる、という効果を奏することができる。なお、枠部31の具体的な形状は図示するものには限定されず、他の形状を採用することも可能である。
【0029】
また、枠部31には、マイクや芳香剤などの機能性を有する部品を取り付けることも可能である。具体的には、詳細な図示は省略するが、例えば、ワイヤレスタイプのマイクにフック状の引っ掛け部を設けておき、このフック状の引っ掛け部を枠部31の横棒31bに引っ掛けることでマイクを開口部30内に吊り下げて設置することができる。このようなマイクを設置すれば、携帯電話やオンライン通信での会話の際に、装着者がマスク内で小声で発声するだけで会話が可能となる。したがって、公共の場や静寂な場所でも小声で会話をすることができるようになるので、装着者の利便性が向上する。また、他の例として、芳香剤を収容した小型の容器に同様のフック状の引っ掛け部を形成しておき、このフック状の引っ掛け部を枠部31の横棒31bに引っ掛けることで芳香剤の容器を開口部30内に吊り下げて設置することができる。このような芳香剤の容器を設置すれば、マスク装着時に装着者が芳香剤の香りを楽しむことができるようになる。
【0030】
また、
図5及び
図6に示すように、本体部10の内面(内面)10Bにおける開口部30の周囲には、後側に向かって突出する略円形環状の突出部(凸部)32が形成されており、突出部32に隣接する外側(外周側)には、前側に向かって窪んだ略円形環状の溝部(凹部)33が形成されている。これら突出部32と溝部33とで、後述する装着具40を取り付ける装着具取付部35が構成されている。そして、この装着具取付部35に装着具40を取り付ける際に、装着具取付部35(突出部32及び溝部33)と装着具40との間にフィルターシート50の端辺を挟み込んで取り付けることで、フィルターシート50を開口部30に被せて取り付けることができる。なお、突出部32の後側への突出高さは、約2?10mm程度とすることが望ましい。
【0031】
図7は、装着具を示す図で、(a)は正面図、(b)は、背面図、(c)は、(b)のX-X断面図である。また、
図8は、フィルターシートを示す図である。装着具40は、可撓性(柔軟性)を有する合成樹脂材又はゴム(合成ゴム又は天然ゴム)などからなる円形環状の部材で、中央に円形の開口40aを有し、その断面は、縦辺41と横辺42を備える略L字型になっている。縦辺41の内径寸法が突出部32の外径寸法と同じかそれよりも僅かに大きな寸法となっている。また、縦辺41の厚み寸法は、溝部33の幅寸法よりも僅かに小さな寸法に形成されている。なお、装着具40を構成する合成樹脂材としては、比較的柔らかめのシリコン樹脂(ゴムのような弾性を有するもの)などを用いることが可能である。また、フィルターシート50は、開口部30を塞ぐことが可能な円形の外形を有するシート状フィルターで、不織布や布材などで構成することができる。フィルターシート50の径は、突出部32の外径よりも僅かに大きな径となっている。
【0032】
また、装着具40の縦辺41と横辺42はそれぞれ、幅が2?10mm程度と比較的に太い幅に形成されている。このように、装着具40の縦辺41と横辺42の幅を太く形成したことで、装着具40の下側(突出部32側)にフィルターシート50の端辺が隠れて外に露出しないようにできる。これにより、間に挟むフィルターシート50の端辺が装着具40の縁からはみ出さずに済み、フィルターシート50の装着状態での見た目を美しくすることができる。
【0033】
一方、装着具40及びフィルターシート50を装着する本体部10の突出部32は、その後側への突出高さを低く抑えて、装着具40の縦辺41が収容される溝部33の一部を前側に掘り込まれた形状としている。これにより、開口部30に取り付けたフィルターシート50の面が後側(顔側)に出っ張る寸法を最小限に抑えている。したがって、マスク用インナーフレーム1の装着時にフィルターシート50が口に当たることを防止できる。
【0034】
なお、フィルターシート50を装着するためのマスク用インナーフレーム1の突出部32は、上側から下端部に向かって次第にその突出寸法が小さくなるように形成されており、下端部ではその突出寸法が約2mm程度となっている。これにより、口から出た呼気がスリット部(割れ目)11を通る量を最小限に抑えるようにして、スリット部11を介して呼気がマスク用インナーフレーム1の外側に漏れることを効果的に抑制できるようにしている。
【0035】
また、
図1、
図3、
図5などに示すように、マスク用インナーフレーム1の上端部10aを除く外縁には、顔(頬及び口周り)の面に密着する周縁部12が形成されている。周縁部12は、その幅寸法が約10mm程度に形成された帯状の部分で、本体部10の上端部10a以外の外縁の略全体に渡って設けられている。周縁部12は、本体部10の内面(裏面)10B側の面形状が装着者の顔(頬及び口周り)の外形に沿った形状となるようにデザインされており、マスク用インナーフレーム1の装着時に周縁部12が顔の面に密着するように構成している。これにより、マスク用インナーフレーム1の周縁部12からの空気の漏れを極力少なく抑えるようにしている。
【0036】
また、本体部10の下端部10b(開口部30の下端部)に形成されたスリット部(割れ目)11を備えることで、マスク用インナーフレーム1の本体部10及び周縁部12の適度な可撓性(柔軟性)を確保している。したがって、マスク用インナーフレーム1の周縁部12の形状や寸法に多少の変化が可能となるので、周縁部12が装着者の顔(頬や口周り)に当たることで、その外形や寸法に沿って柔軟にその面の形状が変化する。これにより、マスク用インナーフレーム1の周縁部12が顔の表面により適切に密着するようにようになっている。
【0037】
また、本体部10における周縁部12の左右上部にはそれぞれ、マスク用インナーフレーム1をマスクに取り付けるためのクリップ部(取付部)15が設けられている。クリップ部15は、本体部10(周縁部12)に形成した貫通孔15aと、該貫通孔15aの前側において、貫通孔15aの上端から本体部10の前側に向かって若干突出してその先が下方に延びて貫通孔15aの前に覆い被さっているクリップ本体15bとを備えている。このクリップ部15は、
図3などに示すように、貫通孔15aの周囲の周縁部12(本体部10)とクリップ本体15bとの間にマスクの上端辺を差し込むことで、クリップ本体15bをマスクの上端辺に引っ掛けて装着する。これにより、クリップ部15及びその近傍の周縁部12をマスクの上端辺に係止するように構成されている。
【0038】
クリップ本体15bの長さは、12mm以上であることが望ましい。このように、クリップ本体15bの長さを比較的に長い寸法に設定することで、クリップ部15をマスクの上端辺から外れ難くすることが可能となる。
【0039】
また、
図3などに示すように、クリップ本体15bと周縁部12(又は貫通孔15a)との間の高さ寸法(隙間寸法)は、下端部(入り口部分)の高さは低くしてクリップ部15の装着力を高めるようにしている。その一方で、クリップ本体15bの下端部よりも上側(奥側)の隙間の高さ寸法は、2mm以上と下端部よりも高くしていることで、使用するマスクの様々な厚み寸法に対応できるようにしている。これにより、不織布製のマスクだけでなく、布製のマスクやガーゼ製のマスクなど、厚みを有するマスクにもマスク用インナーフレーム1の取り付けが可能となり、かつ、取り付けた状態で容易に外れないようにすることができる。
【0040】
また、このマスク用インナーフレーム1では、本体部10の左右の周縁部12に貫通孔からなる小孔16が形成されている。小孔16は左右それぞれに複数個(図示の例では3個)ずつが設けられており、それぞれの小孔16の径寸法は、約1~3mm程度である。この左右の小孔16と左右のクリップ部15の貫通孔15aとに耳掛け用の紐を通すことで、マスク用インナーフレーム1のみをマスクとしても使用することができる。
【0041】
次に、上記構成のマスク用インナーフレーム1を使用する際の準備の手順を説明する。
図9は、装着具及びフィルターシートを装着具取付部に取り付ける手順を説明するための図である。また、
図10は、マスクの内側にマスク用インナーフレームを装着した状態を示す図である。
図9に示すように、マスク用インナーフレーム1は、本体部10の内面10B側に設けた装着具取付部35に装着具40を取り付けることで、この装着具40と装着具取付部35との間にフィルターシート50の端辺を挟み込んで取り付けることができる。これにより、フィルターシート50が開口部30を覆った状態で取り付けられる。なお、フィルターシート50は、通常の不織布などであっても良いが、マスク用インナーフレーム1(フィルターシート50)による高いウイルス侵入防止効果や防塵効果を得るためには、通常の不織布よりも更に網目が細かい高性能のフィルターシートを用いることが望ましい。その一方で、緊急時などにおいて最適なフィルターシートが入手できない状況では、ティッシュペーパーなどをフィルターシート50の代わりに用いることでも、防塵や飛沫飛散防止などに一定の効果を奏することが可能である。
【0042】
上記手順でマスク用インナーフレーム1の開口部30にフィルターシート50を装着し、その後、マスク用インナーフレーム1のクリップ部15をマスク100(
図10参照)の上端辺100aに引っ掛けることで、マスク用インナーフレーム1をマスク100に取り付ける。その状態で、マスク用インナーフレーム1の内面10B(周縁部12)を口周りにあてがい、マスク100の紐101を耳に掛けることでマスク100を装着する。こうして、
図10に示すように、マスク100の内側(内面側)にマスク用インナーフレーム1を装着した状態で使用することができる。
【0043】
図11は、マスク用インナーフレーム内の空気(呼気)の流れを説明するための図である。なお、同図では、マスク100の図示は省略してマスク用インナーフレーム1のみを示している。先の
図10に示すように、マスク100の内側にマスク用インナーフレーム1を装着した状態では、マスク用インナーフレーム1の上壁部20で鼻及びその周囲が覆われており、かつ開口部30及びフィルターシート50が口の前に配置された状態となっている。これにより、
図11に示すように、鼻から出た呼気は、上壁部20の内面側で尾根部21の縦のラインに沿って下方向に導かれることで、当該呼気が開口部30に向かって流れる。また、口から出た呼気も当然に開口部30に向かって流れる。したがって、装着者の呼気が開口部30のフィルターシート50を通ってマスク用インナーフレーム1の外部に流出する。
【0044】
同様に、装着者が鼻又は口から呼気を吸い込んだ場合には、マスク用インナーフレーム1の外部からの空気は開口部30のフィルターシート50を通ってマスク用インナーフレーム1の内部に流入する。これらにより、マスク用インナーフレーム1の装着者は常に開口部30のフィルターシート50を通過した空気のみを吸い込むようになる。
【0045】
なお、本実施形態のマスク用インナーフレーム1は、開口部30にフィルターシート50を取り付けるように構成されているが、このマスク用インナーフレーム1は、開口部30にフィルターシート50を取り付けずにマスクの内側に装着して使用することも可能である。フィルターシート50を取り付けずにマスク用インナーフレーム1を使用する場合においても、本体部10の上壁部20や周縁部12の機能によって、鼻及び口からの呼気がマスク100の上方へ漏れることを効果的に防止できるので、マスク100を使用する際のメガネの曇りなどを抑えることができ、マスク100使用時の快適性を向上させることが可能となる。また、マスク用インナーフレーム1の装着によって、マスク100と装着者の鼻及び口元との間に適度な空間を形成できるという効果も享受することができる。
【0046】
以上説明したように、本実施形態のマスク用インナーフレーム1によれば、装着者の鼻及び口周りを含む顔の一部を覆うドーム型の本体部10を備えることで、マスク100と装着者の鼻及び口元との間に適度な空間を形成でき、かつマスク100内の空気の流れを適切に制御してマスク100の空気漏れを防ぐことができる。そのうえで、装着者の口の前方に配置される開口部30を本体部10に設け、当該開口部30に取り付けたフィルターシート50で開口部30を覆うように構成したことで、このフィルターシート50によって、マスク100のみの装着時と比較してより高いフィルター性能を得ることができる。すなわち、マスク100自体のフィルター機能に加えて、マスク用インナーフレーム1の開口部30に取り付けたフィルターシート50によるフィルター機能が加わることで、二重のフィルター機能を得ることができるので、飛沫飛散防止性能やウィルス侵入防止性能をより効果的に確保することができる。
【0047】
また、高いウィルス侵入防止効果や防塵効果を有する高性能なフィルターシートは、面積あたりの値段が高いため、そのような高性能なフィルターシートをマスク自体の素材として使用すると、マスクの価格が高価になってしまう。それに対して、本実施形態のマスク用インナーフレーム1では、フィルターシート50は、開口部30を覆うことができる比較的小さな面積分の専用サイズのものを使用すれば足りるため、フィルターシート50の使用量(使用面積)を少なく抑えることができる。したがって、本発明のマスク用インナーフレーム1と専用サイズの高性能フィルターシートを使うことで、ウィルス侵入防止性能の効果を維持しながら、使用するフィルターシートの面積を劇的に減らし、日々継続使用時のコストを減らすことができる。
【0048】
また、本実施形態のマスク用インナーフレーム1では、装着具取付部35は、本体部10の内面10B側における開口部30の周囲に形成された突出部32及び溝部33からなり、装着具40は、これら突出部32及び溝部33に係合する環状の部材である。
【0049】
衛生上の理由から、フィルターシート50はマスク用インナーフレーム1の使用の都度交換する必要があるため、毎回の使用毎に取り付け及び取り外しが必要なところ、本実施形態のマスク用インナーフレーム1では、上記のような非常に簡単な構成で、開口部30に対するフィルターシート50の取り付け及び取り外しを容易に行うことができる。したがって、マスク用インナーフレーム1の使用の利便性が向上する。
【0050】
また、本実施形態のマスク用インナーフレーム1では、本体部10の外縁に装着者の顔面に密着する帯状の周縁部12を設けたことで、この周縁部12によってマスク用インナーフレーム1の外縁と顔面との隙間を効果的に塞ぐことが可能となる。したがって、マスク用インナーフレーム1内の空間と外部との間の空気の流通が主に開口部30のフィルターシート50を通してのみ行われるようにできるので、マスク用インナーフレーム1による飛沫飛散防止性能やウィルス侵入防止性能を更に高めることが可能となる。また、周縁部12を設けたことで、マスク100と顔の隙間から空気の漏れも効果的に防止することができる。
【0051】
また、本実施形態のマスク用インナーフレーム1では、スリット部11を備えることで、外力の作用によりマスク用インナーフレーム1の周縁部12の形状や寸法に多少の変化が可能となる。したがって、装着者それぞれの顔(頬や口周り)に合わせて、その外形や寸法に沿って柔軟に周縁部12の面の形状が変化するようになるので、マスク用インナーフレーム1の周縁部12が顔の表面により適切に密着するようなる。
【0052】
また、本実施形態のマスク用インナーフレーム1では、上壁部20に尾根部21を備える形状としたことで、マスク100の内側にマスク用インナーフレーム1を装着した状態で、鼻筋のラインが縦にはっきりと出るようになる。そのため、マスク100を装着している装着者の見た目(マスク越しの顔の見た目)をより美しくすることができる。また、鼻から出た呼気が上壁部20の内面側で尾根部21の縦のラインに沿って下方向に導かれるようになることで、当該呼気が開口部30に向かって流れやすくなる。
〔第二実施形態〕
【0053】
次に、本発明の第二実施形態について説明する。なお、第二実施形態の説明及び対応する図面においては、第一実施形態と同一又は相当する構成部分には同一の符号を付し、以下ではその部分の詳細な説明は省略する。また、以下で説明する事項以外の事項、及び図示する以外の事項については、第一実施形態と同じである。この点は、第三実施形態以降についても同様である。
【0054】
図12は、本発明の第二実施形態にかかるマスク用インナーフレームを示す側面図(一部断面図)、
図13は、
図12のY部分の拡大図である。また、
図14は、装着具及びフィルターシートを装着具取付部に取り付ける手順を説明するための図である。本実施形態のマスク用インナーフレーム1-2は、第一実施形態のマスク用インナーフレーム1に対して、装着具取付部35の突出部32の形状が異なっている。また、それに伴い装着具取付部35に取り付ける装着具40-2も第1実施形態とは異なる形状となっている。以下、これらを説明する。
【0055】
図12及び
図13に示すように、マスク用インナーフレーム1-2が備える装着具取付部35の突出部32は、先端部の外周面に外径側に向かって突出する環状の突起からなるストッパー部32aが形成されている。また、装着具40-2は、弾性(伸縮性)を有するゴムなどの材料からなる環状の紐材である。装着具40-2は、手などである程度引っ張って伸ばした状態で、突出部32の外周に掛けることで装着する。このとき、装着具40-2がストッパー部32aの奥側(前側)に装着されることで、ストッパー部32aによって突出部32から外れないようになる。
【0056】
本実施形態においても、
図14に示すように、装着具取付部35に装着具40―2を取り付けることで、装着具40-2と装着具取付部35との間にフィルターシート50の端辺を挟み込んで取り付けることができる。これにより、フィルターシート50が開口部30を覆った状態で取り付けられる。
【0057】
なお、本実施形態の装着具40-2は、ゴムのみの材質で構成する以外にも、ゴムにコットン(100%コットン)の繊維を織り込んだもの(ヘアバンドのようなもの)とすることも可能である。また、本実施形態のマスク用インナーフレーム1-2では、装着具40-2に代えて通常の輪ゴムなどを流用することも可能である。そのため、装着具40-2を紛失してしまった場合や、代替品が手に入らない緊急時などには輪ゴムを装着具40-2の代わりに使用して開口部30にフィルターシート50を装着することが可能である。
〔第三実施形態〕
【0058】
次に、本発明の第三実施形態について説明する。
図15は、本発明の第三実施形態にかかるマスク用インナーフレームにおいて、装着具及びフィルターシートを装着具取付部に取り付ける手順を説明するための図である。
【0059】
本実施形態のマスク用インナーフレーム1-3では、装着具取付部35の突出部32及び溝部33が開口部30の外面(表面)10A側に設けられている。したがって、
図15に示すように、装着具40―3及びフィルターシート50は、開口部30の外面10A側に取り付けられる。なお、本実施形態のマスク用インナーフレーム1-3では、突出部32の先端部の外周側が枠部31の形状に沿って若干丸みを帯びた形状となっているため、それに合わせて装着具40-3の内面側の形状も湾曲した形状に形成されている。
〔第四実施形態〕
【0060】
次に、本発明の第四実施形態について説明する。
図16は、本発明の第四実施形態にかかるマスク用インナーフレームにおいて、装着具及びフィルターシートを装着具取付部に取り付ける手順を説明するための図である。
【0061】
本実施形態のマスク用インナーフレーム1-4でも、装着具取付部35の突出部32及び溝部33が開口部30の外面10A側に設けられている。したがって、
図16に示すように、装着具40-4及びフィルターシート50は、開口部30の外面10A側に取り付けられる。
【0062】
そして、本実施形態のマスク用インナーフレーム1-4が備える装着具取付部35の突出部32は、先端部の外周面に外径側に向かって突出する環状の突起からなるストッパー部32aが形成されている。また、装着具40-4は、弾性(伸縮性)を有するゴムなどの材料からなる環状の紐材である。ストッパー部32a及び装着具40-4の構成、材質、及びそれらの取り付け方は、第二実施形態の場合と同様である。
【0063】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0064】
1,1-2,1-3,1-4 マスク用インナーフレーム
10 本体部
10A 外面(表面)
10B 内面(裏面)
10a 上端部
10b 下端部
11 スリット部
12 周縁部
15 クリップ部
15a 貫通孔
15b クリップ本体
16 小孔
20 上壁部
21 尾根部
30 開口部
31 枠部
31a 縦棒
31b 横棒
32 突出部
32a ストッパー部
33 溝部
35 装着具取付部
40,40-2,40-3,40-4 装着具
41 縦辺
42 横辺
50 フィルターシート
100 マスク
100a 上端辺
101 紐