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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022131989
(43)【公開日】2022-09-07
(54)【発明の名称】有効突判定装置
(51)【国際特許分類】
   A63B 71/06 20060101AFI20220831BHJP
   A63B 69/02 20060101ALI20220831BHJP
【FI】
A63B71/06 M
A63B69/02 G
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2021068679
(22)【出願日】2021-02-26
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-12-15
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Linux
(71)【出願人】
【識別番号】521159263
【氏名又は名称】粟國 晴楽
(71)【出願人】
【識別番号】521159274
【氏名又は名称】村松 波
(72)【発明者】
【氏名】粟國 晴楽
(72)【発明者】
【氏名】村松 波
(57)【要約】
【課題】 フェンシング、特にエペ種目の練習時に、有効な突きを視覚的に判断できる可視化の方法を提供し、同時突きの判定を電気審判機なしで可能にした上で、突きの情報を伝える無線信号の計測時間にばらつきがある場合でも、同時突きの規則である0.04秒以内の条件を満たすようにする仕組みを持ち、また、突きの情報を伝える無線信号に雑音が発生した場合に、雑音による誤検出を防ぐための仕組みを持つ有効突判定装置を提供する。
【解決手段】 有効突判定装置において、剣のブレード上に長さ方向に沿って設置された発光部と、剣先端の電気接点の開閉を検出して剣による突きを検知する突き検知部とからなり、突き検知部からの信号に従い、発光部が発光する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
剣のブレード上に長さ方向に沿って設置された発光部と、
該剣先端の電気接点の開閉を検出して該剣による突きを検知する突き検知部とからなり、
該突き検知部からの信号に従い、該発光部が発光することを特徴とする有効突判定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の有効突判定装置において、
鍔の内側に可聴音発音部を有し、
該可聴音発音部は該突き検知部からの信号に従い可聴音を発音することを特徴とする有効突判定装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の有効突判定装置において、
該突き検知部からの信号に従い無線信号を発信する無線信号発信部と、
無線信号受信部と、
該無線信号受信部で受信した信号が、対戦相手の該無線信号発信部からの信号であることを判定する無線信号判定部と、
該無線信号判定部からの信号に従って時間測定が開始されるタイマーと、
設定時間後の該タイマーからの信号に従って、該発光部の発光を制御する発光制御部とから構成されることを特徴とする有効突判定装置。
【請求項4】
請求項3に記載の有効突判定装置において、
該無線信号として、音波信号を用いたことを特徴とする有効突判定装置。
【請求項5】
請求項3に記載の有効突判定装置において、
該無線信号として、電磁波信号を用いたことを特徴とする有効突判定装置。
【請求項6】
請求項3、請求項4または請求項5のいずれか1項に記載の有効突判定装置において、
該無線信号受信部と該無線信号判定部の実行に要する合計の時間を測定し、該時間をもとに、該タイマーの該設定時間を設定することを特徴とする有効突判定装置。
【請求項7】
請求項4または請求項6に記載の有効突判定装置において、
該無線信号受信部が、受信した音波信号に対してサンプリングを行うサンプリング部と、
該サンプリング部でサンプリングされた一定数の音声信号を格納するバッファーからなり、
該無線信号判定部が、該バッファーから受け取った該音声信号に基づいてフーリエ変換を行い、フーリエ波形を生成するフーリエ変換部と、
該フーリエ波形の最大ピークを検出し、該最大ピークの周波数が所定範囲内にあるフーリエ波形を検出するピーク周波数検出部からなり、
該無線信号判定部が、該ピーク周波数検出部からの該フーリエ波形の情報を出力することを特徴とする有効突判定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有効突判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
フェンシングの試合は、動きが高速かつ複雑なため、「突き」の様子が良く見えない場合が多く、それは観戦者、審判、選手の3者にとって問題であり、フェンシングの普及を妨げる大きな要素となっている。フェンシングの中でもエペは全身が的であり、マスクや腕、足など、他の種目に比べて的が小さくかつ平坦でない部分があるため、突く位置や角度が少しでもずれれば、エペ競技での得点に必要となる剣先への750gの圧力が不十分となり、「突き」自体が成立しない場合が生じやすいと考えられる。電気審判機を設置すれば、剣先の圧力が有効にかかっているかを電気審判機で確認しながら競技を行うことができるが、電気審判機の設置には手間がかかるので、通常の練習時には電気審判機を用いないことも多い。そのため、「750gの圧力で剣先を押す」ということを確認できずに、練習を行っている場合が多いと考えられる。
【0003】
「突き」の有効性を高めるためには、「突き」の有効性を剣の近傍で可視化できることが有効であると考えられる。剣の可視化や「突き」の可視化については、これまでいくつか試みがある。剣の可視化については、特表2019-522551号公報(特許文献1)において、剣のブレードに沿って光らせる試みがあるが、突いた時点で光るようにはなっていない。実用新案登録第3151105号公報(特許文献2)においては、発光機能を有する剣が開示されており、触針を先端より突出させ剣先が接触することによる触針の角度変化によって発光させているが、これは通常のエペ競技の剣とは剣先の仕組みが異なり、エペ競技の練習に使用できるものではない。また、映像技術を駆使して剣の軌跡や剣が当たった瞬間を可視化する試み(非特許文献1)もあるが、大掛かりな準備が必要であり、通常の練習に使えるものではない。
【0004】
また、エペには、一定の時間内(40ミリ秒)に両者の「突き」が有効であった場合、「同時突き」が認められるという独特のルールがあり、「同時突き」は通常のエペの試合において頻繁に用いられ、重要な戦術の一つとなっている。通常は、電気審判機を使って「同時突き」の判定を行っているが、日常的なエペの練習のためには、電気審判機を使わないで「同時突き」の判定もできることが望ましい。電気審判機を使わないで「同時突き」の判定を行う方法として、特開平7-51424号公報(特許文献3)に剣の間で超音波を用いて信号のやりとりを行う方法が開示されている。この方法では、もう一方の剣の有効な突きの際に発信された超音波を受信して周波数弁別した後、タイマーで0.04秒経った時点で自身の剣の突きを無効にしている。同時突きの条件を満たすためには、超音波のやり取りに要する時間を含めて0.04秒以内に収める必要があるが、超音波の検出と周波数弁別に要する時間は考慮されていないので、超音波の受信から剣の突きを無効にするまでの時間が0.04秒をオーバーする可能性がある。また、超音波の雑音が発生した場合に誤検出の可能性があるが、誤検出を防ぐ方法に関しては考慮されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2019-522551号公報
【特許文献2】実用新案登録第3151105号公報
【特許文献3】特開平7-51424号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】「フェンシングの動きをAIで可視化、VRや4Kを駆使したハイテク観戦」| 日経 xTECH(クロステック)(https://tech.nikkeibp.co.jp/atcl/nxt/column/18/00129/021600013/)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このように、従来の方法には、突いたときに剣先が光ることで、有効な突きを視覚的に判断できる練習用のフェンシングエペの剣は報告されておらず、また同時突きの判定を電気審判機なしで可能にする方法は報告されているが、同時突きの規則である0.04秒以内の条件を満たさない可能性がある。また雑音による誤検出を防ぐ仕組みが考慮されていない。
【0008】
本発明の目的は、フェンシング、特にエペ種目の練習時に、有効な突きを視覚的に判断できる可視化の方法を提供し、同時突きの判定を電気審判機なしで可能にした上で、突きの情報を伝える無線信号の計測時間にばらつきがある場合でも、同時突きの規則である0.04秒以内の条件を満たすようにする仕組みを持ち、また、突きの情報を伝える無線信号に雑音が発生した場合に、雑音による誤検出を防ぐための仕組みを持つ有効突判定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1にかかる有効突判定装置の発明は、剣のブレード上に長さ方向に沿って設置された発光部と、剣先端の電気接点の開閉を検出して剣による突きを検知する突き検知部とからなり、該突き検知部からの信号に従い、該発光部が発光することを特徴とするものである。
【0010】
請求項2にかかる有効突判定装置の発明は、請求項1に係る発明においてさらに、鍔の内側に可聴音発音部を有し、該可聴音発音部は該突き検知部からの信号に従い可聴音を発音することを特徴とするものである。
【0011】
請求項3にかかる有効突判定装置の発明は、請求項1または請求項2に係る発明においてさらに、該突き検知部からの信号に従い無線信号を発信する無線信号発信部と、無線信号受信部と、該無線信号受信部で受信した信号が、対戦相手の該無線信号発信部からの信号であることを判定する無線信号判定部と、該無線信号判定部からの信号に従って時間測定が開始されるタイマーと、設定時間後の該タイマーからの信号に従って、該発光部の発光を制御する発光制御部とから構成されることを特徴とするものである。
【0012】
請求項4にかかる有効突判定装置の発明は、請求項3に係る発明においてさらに、該無線信号として、音波信号を用いたことを特徴とするものである。
【0013】
請求項5にかかる有効突判定装置の発明は、請求項3に係る発明においてさらに、該無線信号として、電磁波信号を用いたことを特徴とするものである。
【0014】
請求項6にかかる有効突判定装置の発明は、請求項3、請求項4または請求項5のいずれか1項に係る発明においてさらに、該無線信号受信部と該無線信号判定部の実行に要する合計の時間を測定し、該時間をもとに、該タイマーの該設定時間を設定することを特徴とするものである。
【0015】
請求項7にかかる有効突判定装置の発明は、請求項4または請求項6に係る発明において、該無線信号受信部が、受信した音波信号に対してサンプリングを行うサンプリング部と、該サンプリング部でサンプリングされた一定数の音声信号を格納するバッファーからなり、該無線信号判定部が、該バッファーから受け取った該音声信号に基づいてフーリエ変換を行い、フーリエ波形を生成するフーリエ変換部と、該フーリエ波形の最大ピークを検出し、該最大ピークの周波数が所定範囲内にあるフーリエ波形を検出するピーク周波数検出部からなり、該無線信号判定部が、該ピーク周波数検出部からの該フーリエ波形の情報を出力することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0016】
(請求項1)
(a)剣による突きを検知してブレード上に設置された発光部が発光することで、選手や観客、審判が審判機を見ることなく、有効な突きかどうかを突きの瞬間に明確に判断できる有効突判定装置を提供することができる。
【0017】
(請求項2)
(b)剣による突きを検知した突き検知部からの信号に従い、鍔の内側に設置された可聴音発音部が可聴音を発音することで、ブレード上に設置された発光部が突きの瞬間に死角の位置にある場合でも、有効な突きかどうかを突きの瞬間に明確に判断できる有効突判定装置を提供することができる。
【0018】
(請求項3)
(c)対戦相手の剣の突き検知部からの信号に従い無線信号発信部から発信された無線信号を、自身の剣の無線信号受信部が受信し、受信した無線信号が対戦相手の無線信号発信部からの信号であることを、無線信号判定部が判定し、無線信号判定部からの信号に従って、タイマーによる時間測定が開始され、設定時間後のタイマーからの信号に従って、発光制御部が発光部の発光を制御することで、より正確な判定時間の同時突き判定が可能な有効突判定装置を提供することができる。
【0019】
(請求項4)
(d)無線信号として音波信号を用いることで、有効な突きかどうかを判断すると同時に同時突きの判定を行うことが可能な有効突判定装置を提供することができる。
【0020】
(請求項5)
(e)無線信号として電磁波信号を用いることで、騒音があり音波信号の判定が困難な場合であっても、信号のより正確な判定が可能な有効突判定装置を提供することができる。
【0021】
(請求項6)
(f)無線信号受信部と無線信号判定部の実行に要する合計の時間を測定し、測定した時間をもとに、タイマーの設定時間を設定することで、同時突きの判定がより正確に可能な有効突判定装置を提供することができる。
【0022】
(請求項7)
(g)無線信号受信部が、音波信号を受信しサンプリングを行うサンプリング部と、サンプリング部でサンプリングされた一定数の音声信号を格納するバッファーからなり、無線信号判定部が、バッファーから受け取った音声信号に基づいてフーリエ変換を行い、フーリエ波形を生成するフーリエ変換部と、フーリエ波形の最大ピークを検出し、最大ピークの周波数が所定範囲内にあるフーリエ波形を検出するピーク周波数検出部からなり、無線信号判定部が、ピーク周波数検出部からのフーリエ波形の情報を出力することで、雑音による誤検出を抑え、より正確に対戦相手の無線信号発信部からの信号を検出可能な有効突判定装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】第1の実施形態に係る、有効突判定装置の全体構成を示すブロック図である。
図2】第1の実施形態に係る、有効突判定装置の、フェンシングエペ種目の対戦時の動作を示す概要図である。
図3】第1の実施形態に係る、有効突判定装置の、発光・発音部の内部構成を表す構成図である。
図4】第1の実施形態に係る、有効突判定装置の制御部の内部構成を表す構成図である。
図5】第1の実施形態に係る、有効突判定装置の制御部の処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図6】第1の実施形態に係る、有効突判定装置の可聴音発音部に用いた電子ブザーのフーリエスペクトルである。
図7】第1の実施形態に係る、音波情報取得時間のヒストグラムのバッファーサイズ依存性を示す図である。
図8】第1の実施形態に係る、音波情報取得時間の累積比率ヒストグラムのバッファーサイズ依存性を示す図である。
図9】第1の実施形態に係る、音波情報取得時間の累積比率毎の測定時間のバッファーサイズ依存性を示す図である。
図10】第1の実施形態に係る、可聴音発音部に用いた電子ブザーのフーリエスペクトルのバッファーサイズ依存性を示す図である。
図11】第1の実施形態に係る、有効突判定装置の鍔の内側への収納の様子を示す図である。
図12】第2の実施形態に係る、有効突判定装置の、発光・発音部の内部構成を表す構成図である。
図13】第2の実施形態に係る、有効突判定装置の制御部の内部構成を表す構成図である。
図14】第2の実施形態に係る、有効突判定装置の制御部の処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(第1の実施形態)
(有効突判定装置1の構成)
以下、図面を参照して有効突判定装置1の構成を説明する。
【0025】
図1は、有効突判定装置1の構成を示すブロック図である。
【0026】
図1(A)に示すように、有効突判定装置1は、フェンサーF1が持つ剣S1に装着された装置1A、フェンサーF2が持つ剣S2に装着された装置1Bを有する。
【0027】
図1(B)に示すように、装置1Aは、発光・発音部7、制御部8、及び記憶部9を有し、装置1Bは、発光・発音部10、制御部11、及び記憶部12を有する。発光・発音部7は、突き検知部13、発光部14、可聴音発音部15を有し、発光・発音部10は、突き検知部16、発光部17、可聴音発音部18を有する。制御部8と制御部11は、各種処理を実行するCPUを有し、それぞれ装置1A、装置1B内の各種動作を制御する。制御部8と制御部11の機能は、CPUがそれぞれ記憶部9と記憶部12に記憶された各種プログラムを読み込み、実行することによって実現される。記憶部9と記憶部12は、RAM、ROM、HDD、及びSSD等の記憶素子を有する。記憶部9と記憶部12には、それぞれ装置1A、装置1Bを制御する各種プログラムが記憶される。
【0028】
有効突判定装置1(装置1A、装置1Bを含む)の動作の概要を示す。
【0029】
装置1Aにおいて、制御部8には、発光・発音部7内の発光部14、可聴音発音部15に対して給電を行う給電回路が組み込まれており、突き検知部13がこの給電回路のスイッチとなっている。すなわち、フェンサーF1が持つ剣S1による突きが発生すると、突き検知部13がこの突きを検知し、上記給電回路がONとなることにより、突きが成り立っている間給電を行い、発光部14が発光し、可聴音発音部15が発音する。装置1Bにおける動作も、装置1Aの動作と同様である。
【0030】
可聴音発音部15からの可聴音は、装置1Bの制御部11内で受信される。受信から40ミリ秒以上経過すると、制御部11は、発光・発音部10への給電を遮断する。これにより、フェンサーF2が持つ剣S2による突きを突き検知部16が検知しても、発光部17の発光や可聴音発音部18の発音は起こらなくなる。一方、受信から40ミリ秒未満であれば、フェンサーF2が持つ剣S2による突きを突き検知部16が検知すると、突きが成り立っている間給電が行われ、発光部17が発光し、可聴音発音部18が発音する。可聴音発音部18からの可聴音は、装置1Aの制御部8内で受信され、以後は上記と同様な動作が行われる。
【0031】
以上の動作を、図2を用いて説明する。図2(A)では、フェンサーF1が剣S1でフェンサーF2の肩口に突きを決めて、剣S1上の発光部25が発光し、可聴音発音部27が発音しており、一方で同時に、フェンサーF2が剣S2でフェンサーF1の足先に突きを決めて、剣S2上の発光部26が発光し、可聴音発音部28が発音しており、同時突きが成立している。これは両者の突きの間隔が40ミリ秒未満の場合である。図2(B)では、フェンサーF1が突いた後、フェンサーF2による突きまでの時間が40ミリ秒以上の場合であり、この場合は、発光部25だけが発光し、発光部26は発光していない。また、可聴音発音部27だけが発音し、可聴音発音部28は発音していない。フェンサーF2が先に突いた場合も同様な動作が行われる。このようにして、「同時突き」の発光と発音による判定が、電気審判機無しでかつ剣の近傍で可能になる。
【0032】
図3は、発光・発音部31(発光・発音部7、10を含む)の内部の構成図である。
【0033】
図3に示すように、発光・発音部31の構成要素である突き検知部32と発光部33は、それぞれブレード34の先、及びブレード34に沿って設置され、可聴音発音部35は、制御部36、記憶部37と同じく鍔38の内側に設置される。制御部36内部の電源から、突き検知部32を介して発光部33と可聴音発音部35に並列に電圧を印加する回路が構成される。突き検知部32は、ここではエペ競技用の剣先を想定しており、剣先が750gの圧力で押されたときに導通状態になるようなボタンが設置されている。発光部33には、剣先に数十cmの長さの可視光を発するテープ状のLEDを設置することができる。可聴音発音部35には、発音周波数が数kHz程度の電子ブザーを用いることができる。突き検知部32が突きを検知すると、発光部33と可聴音発音部35に並列に電圧がかかり、発光部33が発光し、可聴音発音部35が発音する。ここで用いる電圧は、5Vや12Vな
を用いることができる。図1(B)の装置1A、1Bでは、同時突き判定のための可聴音を識別するために、二つの装置間で、可聴音発音部35の発音周波数が、互いに数十kHz以上異なった値であることが望ましい。
【0034】
図4は、制御部36の内部の構成図である。
【0035】
図4に示すように、制御部36は、音波信号受信部44、音波信号判定部45、タイマー46、発光制御部47、電源48を有する。音波信号受信部44は、サンプリング部441とバッファー442を有する。音波信号判定部45は、フーリエ変換部451とピーク周波数検出部452を有する。
【0036】
もう一方の装置が突きによって可聴音を発音すると、制御部36内の音波信号受信部44で可聴音が受信され、サンプリング部441で音波信号がサンプリングされた後、バッファー442で一定の数の音波信号がバッファリングされる。
【0037】
バッファリングされた音波信号に対して、音波信号判定部45中のフーリエ変換部451で高速フーリエ変換が行われる。ピーク周波数検出部452では、フーリエ変換の結果より最大振幅を与える周波数が取得され、これが所定範囲内であるかどうかが判定される。所定範囲は、例えば、もう一方の装置の可聴音発音部35の発音周波数と略同じ又は近似した範囲である。所定範囲内であると判定されたら、タイマー46の時間測定が開始され、一定時間が経ったら電源48に対して情報を送り、発光・発音部31への電圧の供給回路が遮断される。これによって、もう一方の剣は、突きが入っても発光と発音が生じなくなる。タイマー時間の設定は、音波信号のサンプリング開始からの時間が40ミリ秒になるように調整される。その詳細は、次節で詳しく述べる。
【0038】
以上のように、一方の剣の「突き」から40ミリ秒未満の間は、もう一方の剣の「突き」でも発光と発音が生じるが、40ミリ秒以上が経過するともう一方の剣を突いても発光と発音が生じなくなる。このようにして、剣どうしで音の情報を伝達することで、「同時突き」の判定が、電気審判機無しでかつ剣先を見ながら可能になる。
【0039】
図5は、発光・発音部31の処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0040】
図4図5を用いてフローチャートを説明する。
【0041】
音波信号受信部44において音波信号受信51のステップが実行された後、その時の時刻t1が取得され(52)、記憶部37に記憶される。その後、音波信号受信部44内のサンプリング部441において、サンプリングステップ53が実行された後、バッファリングステップ54が実行されて、バッファー442にデータが格納される。バッファー442のデータは、音波信号判定部45内のフーリエ変換部451において、フーリエ変換ステップ55が実行され、高速フーリエ変換によって、フーリエ変換の振幅と周波数の配列が得られる。
【0042】
フーリエ変換の振幅と周波数の配列は、ピーク周波数検出部452内のピーク周波数検出ステップ56に入力され、まず、ステップ561でフーリエスペクトルの最大値Pmと、Pmを与える周波数Fmが取得される。図6に、可聴音発音部として電子ブザーを用いて取得したフーリエスペクトルを示す。このブザーでは、約3445Hzに単独のシャープなピークが現れることが分かる。このブザーを用いた場合は、周波数Fmが約3445Hzであることがわかれば、このブザーの音を検出したと判断できる。
【0043】
次に、ステップ562で、(Fm>F1)and(Fm<F2)and(Pm≧Pt)の条件判断を行う。F1、F2、Ptは予め設定された定数であり、ピークが3445Hzの電子ブザーの場合は、例えばF1=3440Hz、F2=3450Hzと設定する。Ptは、あらかじめ電子ブザーを1m程度離した場合の振幅の数値を計測しておき、それをもとに設定する。
ステップ562の条件が満たされない場合は、時刻t1の取得(52)にもどる。満たした場合は、時刻t2の取得563に進み、計測時間tm=t2-t1を計算する。
【0044】
次に、タイマー46、発光制御部47において、同時突き判定のための処理を行う。
【0045】
まず、待ち時間tw=ts-tmの取得を行う。ここで、tsは、同時判定時間(=40ミリ秒)である。得られたtwが正の数であれば、tw秒間の待ち処理を行う。twが負の数になると同時判定時間の40ミリ秒を超えてしまうことになるので、待ち処理は行わない。この後、発光・発音部への給電停止573を実施する。
【0046】
tmの値が実際どの程度であるのかによって、ここの処理に大きく影響すると考えられるので、以下では、CPUとしてラズベリーパイゼロを用いた実装を行い、tmに関するバッファーサイズの最適化の検討を行った。OSはLINUXのRasverianでプログラミング言語Python3.7を用い、音情報の処理にはPyaudioライブラリーを用いた。
【0047】
音波信号の計測時間tmは、バッファーの読み取り時間tcとフーリエ変換の時間tfの和で与えられると考えられる。サンプリングレートをRATE、バッファーサイズをCHUNKとすれば、tc=CHUMK/RATEとなり、通常用いられるRATE(=44100)、CHUNK(=1024)を用いると、tc=23ミリ秒となる。tcはバッファーサイズCHUNKに比例しているので、バッファーサイズを小さくすれば、読み取り時間を短くすることが可能である。
【0048】
しかし、バッファーサイズを小さくすると、高速フーリエ変換に用いるデータの数が少なくなるので、得られたスペクトルの周波数分解能とS/N比が小さくなり、ブザー音の判定精度が悪化するものと考えられる。そこで、測定時間とスペクトル測定の2つの観点から、バッファーサイズの最適化を行った。
【0049】
まず、tcの分布を測定した。図7は、1000回の音の測定を繰り返した際のtcのヒストグラムを、バッファーサイズを1024、512、256、128、64と変えて示した図である。図7より、tcの平均値でみると数ミリ秒~20ミリ秒ぐらいであり、理論的な値とオーダー的に等しいが、系統的なばらつきがあり、ばらつきの大きさも相当大きいことがわかる。
【0050】
そこで、音測定時間のばらつきを統計的に扱うために、図8のように、tcを累積したヒストグラムを比率で表した累積比率ヒストグラムを求め、そのバッファーサイズ依存性を調べた。図8のグラフで、縦軸の累積比率がRn(%)のときの横軸の音取得時間がtnとすると、これは、音取得時間がtn以内の測定の数が全体の測定数に占める割合がRnであることを意味する。これらのグラフの持つ情報を1枚のグラフでわかりやすく表現するために、各バッファーサイズで、Rnを80%、85%、90%、95%、100%と変えて、tnを図8より読み取った。読み取った情報を、横軸をバッファーサイズ、縦軸をtnとして、Rn毎に折線グラフを描いたものを図9に示す。各Rnのグラフは、あるバッファーサイズでの音取得時間がグラフの縦軸の値以内である測定の数が、全測定数に対してRn%であることを意味する。
【0051】
図9から、バッファーサイズが64の場合がどの比率でも測定時間が最小になる。従ってもしスペクトルの波形上問題がなければ、バッファーサイズ64が最適である。バッファーサイズ64がもし波形上問題があれば、バッファーサイズ128、256、512で考えるが、比率80%で見ると、バッファーサイズ128だけが15ミリ秒となり、他のサイズよりも有意に小さくなっている。以上のことから、バッファーサイズ128、256、512の中では、バッファーサイズ128が最適であると考えられる。バッファーサイズを、飛び飛びの整数ではなく連続した整数の値で考えると、図9より、R0が100%の場合に、測定時間が40ミリ秒であるバッファーサイズの値は約400である。従って、同時突きの判定時間を40ミリ秒に設定できるためのバッファーサイズの条件は約400以下ということができる。
【0052】
図10に、電子ブザー音のフーリエスペクトルを、バッファーサイズ毎に示した。フーリエスペクトルの形状は、バッファーサイズが大きいほどシャープであり、バッファーサイズが小さくなると次第にピーク幅が広くなっていくことがわかる。ピーク最大値の検出には、ピークがシャープであり、ノイズが小さいことが必要であるが、バッファーサイズ1024から128までは、ピークは十分シャープであり、誤検出なく再現よくピーク検出が可能であった。一方、バッファーサイズ64では、ピーク幅の拡大が大きくS/Nも小さくなっており、時折誤検出も見られたことから、バッファーサイズは128以上にすることが望ましいと判断した。このことと、前述の結論「バッファーサイズ128、256、512の中では、バッファーサイズ128が最適」から、トータルでの最適なバッファーサイズは128であると結論づけられた。前述した同時突きの判定時間を40ミリ秒に設定できるためのバッファーサイズに対する条件としては、電子ブザー音のフーリエスペクトルのS/Nも加味すると、バッファーサイズ100程度まではピークの形状がシャープであるとして、バッファーサイズ=約100~約400であるということができる。また、図9に示されるように、バッファーサイズ128においては、100%の測定で計測時間が33ミリ秒以内である。従って、バッファーサイズを128に設定することによって、twが負の数になることはほとんどなく、ほぼすべての計測で同時突きの判定時間を40ミリ秒に正確に設定できるものと考えられる。
【0053】
図11に、試作システムの構成要素(制御部36と記憶部37を構成するラズベリーパイゼロ63、音波信号受信部43を構成するUSBマイク65、可聴音発音部35を構成する電子ブザー64)を鍔38の内側に収納した様子を示す。充電池66は、鍔38の外側に設けられ、コードを介してラズベリーパイゼロ63に電源を供給する。ラズベリーパイゼロ63のサイズと重量は、79mm×38mm×12mm,25gである。このように、充電池66を除いて鍔38の内側に無理なく収納が可能である。試作装置を手に持った場合、人差し指を最も深い位置におくことができ、グリップ62を握った指が鍔38内の設置物に接触することなく、通常通りの剣さばきが可能である。重量も充電池66を除いて30g程度であり、エペ用の剣の重量(最大770g)に対して十分軽い。充電池66は、コードを袖に通して腰のあたりに装着してもよいし、十分軽いものであれば鍔38の中に装着してもよい。
【0054】
(第2の実施形態)
(有効突判定装置2の構成)
以下、図面を参照して有効突判定装置2の構成を説明する。
【0055】
有効突判定装置2の基本的な構成は、図1に示すものと同一であり、有効突判定装置1との違いは、主に装置どうしの無線通信の方法である。本実施形態の説明において、有効突判定装置1と同一の構成については、説明を省略する。
【0056】
図12は、有効突判定装置2の、発光・発音部71の内部構成を表す構成図である。
【0057】
有効突判定装置2の基本的な構成は、有効突判定装置1の発光・発音部の内部構成と同様である。図12に示すように、発光・発音部71の構成要素である突き検知部72と発光部73は、それぞれブレード74の先、及びブレード74に沿って設置され、可聴音発音部75は、制御部76、記憶部77と同じく鍔38の内側に設置される。
【0058】
有効突判定装置1と異なり、制御部76内部の電源から、検知部72を介さずに、発光部73と可聴音発音部75に並列に電圧を印加する回路が構成される。突き検知部72は、制御部76と接続される。突き検知部72が突きを検知すると、その情報は制御部76へと伝わり、制御部76から発光部73と可聴音発音部75に電圧が印加され、発光部73が発光し、可聴音発音部75が発音する。
【0059】
図13は、有効突判定装置2の、制御部76の内部の構成図である。有効突判定装置1との違いは、装置どうしの無線通信を、電磁波を用いて行うところにある。
【0060】
図13に示すように、制御部76は、突き情報受信部82、電磁波信号発信部83、発光制御部(1)84、電源85、電磁波信号受信部86、電磁波信号判定部87、タイマー88、発光制御部(2)89を有する。
【0061】
発光・発音部71による突きが決まると、突き検知部72からの情報が、突き情報受信部82で受信され、その情報が電磁波信号発信部83に送られ、電磁波信号がもう一方の剣に向けて発信される。それと同時に、突き情報受信部82からの情報は、発光制御部(1)84に伝えられ、発光・発音部71内の発光部73と可聴音発音部75への電圧が、電源85を通して供給され、発光・発音部71内の発光部73が発光し、可聴音発音部75が発音する。
【0062】
もう一方の装置による突きが発生し発信された電磁波信号は、電磁波信号受信部86で受信され、電磁波信号判定部87へ渡される。電磁波信号判定部87では、もう一方の装置による電磁波信号であることが、電磁波の周波数によって判定されると、タイマー88の時間測定が開始され、一定時間が経ったら発光制御部(2)89が電源85に対して情報を送り、発光・発音部71への電圧の供給が停止される。これによって、本装置の剣は、突きが入っても発光と発音が生じなくなる。タイマー時間の設定は、電磁波信号の受信からの時間が40ミリ秒になるように調整される。
【0063】
図14は、発光・発音部71の処理の流れの一例を示すフローチャートである。図14(A)は、音波信号受信からの処理の流れを示すフローチャートであり、図14(B)は、突き情報受信からの処理の流れを示すフローチャートである。
【0064】
まず、図14(A)を用いて、フローチャートを説明する。
電磁波信号受信91ステップで、もう一方の装置の突きに伴う電磁波信号を受信したら、その時の時刻t1が取得され(92)、記憶部77に記憶される。その後、電磁波信号判定ステップで、受信した電磁波がもう一方の装置の突きに伴う電磁波信号であることを判定する。
【0065】
まず、ステップ931で、電磁波信号の周波数Fmを取得し、ステップ932で、(Fm>F1)and(Fm<F2)の条件判断を行う。F1、F2は定数であり、もう一方のピークが装置の発する電磁波信号の周波数をF0とすれば、例えば、F1=F0-dF、F2=F0+dF(dFは定数)と設定する。ステップ932の条件が満たされない場合は、時刻t1の取得(92)にもどる。満たした場合は、時刻t2の取得(933)に進み、計測時間tm=t2-t1を計算する(934)。
【0066】
以降の処理は、有効突判定装置1の場合と同様である。同時突き判定のための処理を行う。まず、待ち時間tw=ts-tmの取得(941)を行う。ここで、tsは、同時判定時間(=40ミリ秒)である。得られたtwが正の数であれば、tw秒間の待ち処理(942)を行う。twが負の数になると同時判定時間の40ミリ秒を超えてしまうことになるので、待ち処理は行わない。この後、発光・発音部への給電停止943を実施する。
【0067】
次に、図14(B)を用いて、フローチャートを説明する。
【0068】
発光・発音部71の突き検知部72からの情報を、突き情報受信部82の突き情報受信ステップ95で受信したら、2つの処理が同時に行われる。発光制御部(1)84で、発光制御1ステップ97が実行され、発光・発音部71への給電が開始される。また、電磁波信号発信部83で、電磁波信号発信ステップ96が実行され、もう一方の装置に向けて電磁波信号が発信される。
【0069】
以上のように、有効突判定装置2は、フェンシングエペの剣において、無線信号として電磁波信号を用いることで、騒音があり音波信号の判定が困難な場合であっても、信号のより正確な判定が可能である。
【0070】
すなわち、実施形態の有効突判定装置1、2は、剣S1、S2のブレード34、74上に長さ方向に沿って設置された発光部33、73と、該剣S1、S2先端の電気接点の開閉を検出して該剣S1、S2による突きを検知する突き検知部32、72とからなり、該突き検知部32、72からの信号に従い、該発光部33、73が発光する。
【0071】
また、実施形態の有効突判定装置1、2は、鍔38の内側に可聴音発音部35、75を有し、該可聴音発音部は該突き検知部32、72からの信号に従い可聴音を発音する。
【0072】
また、実施形態の有効突判定装置1、2は、該突き検知部32、72からの信号に従い無線信号を発信する無線信号発信部35、83と、無線信号受信部44、86と、該無線信号受信部44、86で受信した信号が、対戦相手の該無線信号発信部からの信号であることを判定する無線信号判定部45、87と、該無線信号判定部からの信号に従って時間測定が開始されるタイマー46、88と、設定時間後の該タイマー46、88からの信号に従って、該発光部33、73の発光を制御する発光制御部47、89とから構成される。
【0073】
また、実施形態の有効突判定装置1は、該無線信号として、音波信号を用いる。
【0074】
また、実施形態の有効突判定装置2は、該無線信号として、電磁波信号を用いる。
【0075】
また、実施形態の有効突判定装置1、2は、該無線信号受信部44、86と該無線信号判定部45、87の実行に要する合計の時間を測定し、該時間をもとに、該タイマー46、88の該設定時間を設定する。
【0076】
また、実施形態の有効突判定装置1は、無線信号受信部44が、受信した音波信号に対してサンプリングを行うサンプリング部441と、該サンプリング部でサンプリングされた一定数の音声信号を格納するバッファー442からなり、該無線信号判定部45が、該バッファーから受け取った該音声信号に基づいてフーリエ変換を行い、フーリエ波形を生成するフーリエ変換部451と、該フーリエ波形の最大ピークを検出し、該最大ピークの周波数が所定範囲内にあるフーリエ波形を検出するピーク周波数検出部452からなり、該無線信号判定部45が、該ピーク周波数検出部452からの該フーリエ波形の情報を出力する。
【0077】
実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
【0078】
(a)剣S1、S2による突きを検知してブレード34、74上に設置された発光部33、73が発光することで、選手や観客、審判が審判機を見ることなく、有効な突きかどうかを突きの瞬間に明確に判断できる有効突判定装置1、2を提供することができる。
【0079】
(b)剣S1、S2による突きを検知した突き検知部32、72からの信号に従い、鍔38の内側に設置された可聴音発音部35、75が可聴音を発音することで、ブレード34、74上に設置された発光部33、73が突きの瞬間に死角の位置にある場合でも、有効な突きかどうかを突きの瞬間に明確に判断できる有効突判定装置1、2を提供することができる。
【0080】
(c)対戦相手の剣S1、S2の突き検知部32、72からの信号に従い無線信号発信部35、83から発信された無線信号を、自身の剣S1、S2の無線信号受信部44、86が受信し、受信した無線信号が対戦相手の無線信号発信部からの信号であることを、無線信号判定部45、87が判定し、無線信号判定部45、87からの信号に従って、タイマー46、88による時間測定が開始され、設定時間後のタイマーからの信号に従って、発光制御部47、89が発光部の発光を制御することで、より正確な判定時間の同時突き判定が可能な有効突判定装置1、2を提供することができる。
【0081】
(d)無線信号として音波信号を用いることで、有効な突きかどうかを判断すると同時に同時突きの判定を行うことが可能な有効突判定装置1を提供することができる。
【0082】
(e)無線信号として電磁波信号を用いることで、騒音があり音波信号の判定が困難な場合であっても、信号のより正確な判定が可能な有効突判定装置2を提供することができる。
【0083】
(f)無線信号受信部44、86と無線信号判定部45、87の実行に要する合計の時間を測定し、測定した時間をもとに、タイマー46、88の設定時間を設定することで、同時突きの判定がより正確に可能な有効突判定装置1、2を提供することができる。
【0084】
(g)無線信号受信部44が、音波信号を受信しサンプリングを行うサンプリング部441と、サンプリング部でサンプリングされた一定数の音声信号を格納するバッファー442からなり、無線信号判定部45が、バッファー442から受け取った音声信号に基づいてフーリエ変換を行い、フーリエ波形を生成するフーリエ変換部451と、フーリエ波形の最大ピークを検出し、最大ピークの周波数が所定範囲内にあるフーリエ波形を検出するピーク周波数検出部452からなり、無線信号判定部45が、ピーク周波数検出部452からのフーリエ波形の情報を出力することで、雑音による誤検出を抑え、より正確に対戦相手の無線信号発信部からの信号を検出可能な有効突判定装置1を提供することができる。
【0085】
実施形態における各手順の各ステップは、その性質に反しない限り、実行順序を変更し、複数同時に実行し、あるいは実行毎に異なった順序で実行してもよい。さらに、本実施形態における各手順の各ステップの全てあるいは一部をハードウェアにより実現してもよい。
【0086】
実施形態は、上述した実施形態に限定されるものではなく、要旨を変えない範囲において、種々の変更、改変等が可能である。
【0087】
実施形態における可聴音と電磁波は無線信号である。無線信号は超音波を含んでもよい。
実施形態の説明では、有効突判定装置1、2がフェンシングのエペ競技に適用される例を説明したが、これに限定されず、例えばフェンシングのフルーレ競技に適用されてもよいし、それ以外の競技等における突きに適用されてもよい。
【符号の説明】
【0088】
1 有効突判定装置
1A 装置
1B 装置
2 有効突判定装置
7 発光・発音部
8 制御部
9 記憶部
10 発光・発音部
11 制御部
12 記憶部
13 突き検知部
14 発光部
15 可聴音発音部
16 突き検知部
17 発光部
18 可聴音発音部
25 発光部
26 発光部
27 可聴音発音部
28 可聴音発音部
31 発光・発音部
32 突き検知部
33 発光部
34 ブレード
35 可聴音発音部
36 制御部
37 記憶部
38 鍔
44 音波信号受信部
441 サンプリング部
442 バッファー
45 音波信号判定部
451 フーリエ変換部
452 ピーク周波数検出部
46 タイマー
47 発光制御部
48 電源
62 グリップ
63 ラズベリーパイゼロ
64 電子ブザー
65 USBマイク
66 充電池
71 発光・発音部
72 突き検知部
73 発光部
74 ブレード
75 可聴音発音部
76 制御部
77 記憶部
82 突き情報受信部
83 電磁波信号発信部
84 発光制御部(1)
85 電源
86 電磁波信号受信部
87 電磁波信号判定部
88 タイマー
89 発光制御部(2)
F1 フェンサー
F2 フェンサー
S1 剣
S2 剣
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
【手続補正書】
【提出日】2021-08-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
剣先端の電気接点の開閉を検出して該剣による突きを検知する突き検知部と、
該剣のブレード上の長さ方向に沿って設置され、該突き検知部からの信号に従い発光する発光部と、
鍔の内側に設置され、該突き検知部からの信号に従い可聴音を発音する可聴音発音部と、
該突き検知部からの信号に従い無線信号を発信する無線信号発信部と、
無線信号受信部と、
該無線信号受信部で受信した信号のフーリエ変換後のフーリエ波形のピーク波長が所定範囲内にあるときに、時間測定の開始を指示する無線信号判定部と、
該無線信号判定部からの指示に従って該時間測定が開始されるタイマーと、
該無線信号受信部と該無線信号判定部の実行に要する合計の時間を減算して設定された設定時間後の該タイマーからの信号に従って、該発光部への給電停止を実施する発光制御部と、
から構成されることを特徴とする有効突判定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の有効突判定装置において、
該無線信号として、音波信号を用いたことを特徴とする有効突判定装置。
【請求項3】
請求項1に記載の有効突判定装置において、
該無線信号として、電磁波信号を用いたことを特徴とする有効突判定装置。
【請求項4】
請求項2に記載の有効突判定装置において、
該無線信号受信部が、受信した該音波信号に対してサンプリングを行うサンプリング部と、
該サンプリング部でサンプリングされた一定数の音声信号を格納するバッファーからなり、
該無線信号判定部が、該バッファーから受け取った該音声信号に基づいて該フーリエ変換を行い、該フーリエ波形を生成するフーリエ変換部と、
該フーリエ波形の最大ピークを検出し、該最大ピークの周波数が該所定範囲内にある該フーリエ波形の該ピーク波長を検出するピーク周波数検出部と、
を有することを特徴とする有効突判定装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
請求項1にかかる有効突判定装置の発明は、剣先端の電気接点の開閉を検出して該剣による突きを検知する突き検知部と、該剣のブレード上の長さ方向に沿って設置され、該突き検知部からの信号に従い発光する発光部と、鍔の内側に設置され、該突き検知部からの信号に従い可聴音を発音する可聴音発音部と、該突き検知部からの信号に従い無線信号を発信する無線信号発信部と、無線信号受信部と、該無線信号受信部で受信した信号のフーリエ変換後のフーリエ波形のピーク波長が所定範囲内にあるときに、時間測定の開始を指示する無線信号判定部と、該無線信号判定部からの指示に従って該時間測定が開始されるタイマーと、該無線信号受信部と該無線信号判定部の実行に要した合計の時間を減算して設定された設定時間後の該タイマーからの信号に従って、該発光部への給電停止を実施する発光制御部と、から構成されることを特徴とするものである。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0012】
請求項にかかる有効突判定装置の発明は、請求項に係る発明においてさらに、該無線信号として、音波信号を用いたことを特徴とするものである。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0013
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0013】
請求項にかかる有効突判定装置の発明は、請求項に係る発明においてさらに、該無線信号として、電磁波信号を用いたことを特徴とするものである。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0014
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0015
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0015】
請求項にかかる有効突判定装置の発明は、請求項2に係る発明においてさらに、該無線信号受信部が、受信した該音波信号に対してサンプリングを行うサンプリング部と、該サンプリング部でサンプリングされた一定数の音声信号を格納するバッファーからなり、該無線信号判定部が、該バッファーから受け取った該音声信号に基づいて該フーリエ変換を行い、該フーリエ波形を生成するフーリエ変換部と、該フーリエ波形の最大ピークを検出し、該最大ピークの周波数が該所定範囲内にある該フーリエ波形の該ピーク波長を検出するピーク周波数検出部と、を有することを特徴とするものである。
【手続補正9】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0016
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0016】
(a)剣による突きを検知してブレード上に設置された発光部が発光することで、選手や観客、審判が審判機を見ることなく、有効な突きかどうかを突きの瞬間に明確に判断できる有効突判定装置を提供することができる。
【手続補正10】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0017
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0017】
(b)剣による突きを検知した突き検知部からの信号に従い、鍔の内側に設置された可聴音発音部が可聴音を発音することで、ブレード上に設置された発光部が突きの瞬間に死角の位置にある場合でも、有効な突きかどうかを突きの瞬間に明確に判断できる有効突判定装置を提供することができる。
【手続補正11】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0018
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0018】
(c)対戦相手の剣の突き検知部からの信号に従い無線信号発信部から発信された無線信号を、自身の剣の無線信号受信部が受信し、受信した無線信号が対戦相手の無線信号発信部からの信号であることを、無線信号判定部が判定し、無線信号判定部からの信号に従って、タイマーによる時間測定が開始され、設定時間後のタイマーからの信号に従って、発光制御部が発光部の発光を制御することで、より正確な判定時間の同時突き判定が可能な有効突判定装置を提供することができる。
【手続補正12】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0019
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0019】
(d)無線信号として音波信号を用いることで、有効な突きかどうかを判断すると同時に同時突きの判定を行うことが可能な有効突判定装置を提供することができる。
【手続補正13】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0020
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0020】
(e)無線信号として電磁波信号を用いることで、騒音があり音波信号の判定が困難な場合であっても、信号のより正確な判定が可能な有効突判定装置を提供することができる。
【手続補正14】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0021
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0021】
(f)無線信号受信部と無線信号判定部の実行に要する合計の時間を測定し、測定した時間をもとに、タイマーの設定時間を設定することで、同時突きの判定がより正確に可能な有効突判定装置を提供することができる。
【手続補正15】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0022
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0022】
(g)無線信号受信部が、音波信号を受信しサンプリングを行うサンプリング部と、サンプリング部でサンプリングされた一定数の音声信号を格納するバッファーからなり、無線信号判定部が、バッファーから受け取った音声信号に基づいてフーリエ変換を行い、フーリエ波形を生成するフーリエ変換部と、フーリエ波形の最大ピークを検出し、最大ピークの周波数が所定範囲内にあるフーリエ波形を検出するピーク周波数検出部からなり、無線信号判定部が、ピーク周波数検出部からのフーリエ波形の情報を出力することで、雑音による誤検出を抑え、より正確に対戦相手の無線信号発信部からの信号を検出可能な有効突判定装置を提供することができる。