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特開2022-132010電子線硬化型組成物、および、電子線硬化型オーバーコートニス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022132010
(43)【公開日】2022-09-07
(54)【発明の名称】電子線硬化型組成物、および、電子線硬化型オーバーコートニス
(51)【国際特許分類】
   C08F 2/44 20060101AFI20220831BHJP
   C09D 4/02 20060101ALI20220831BHJP
   C09D 191/06 20060101ALI20220831BHJP
   C09D 7/47 20180101ALI20220831BHJP
   C08F 255/02 20060101ALI20220831BHJP
   C08L 51/00 20060101ALN20220831BHJP
【FI】
C08F2/44 C
C09D4/02
C09D191/06
C09D7/47
C08F255/02
C08L51/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021090813
(22)【出願日】2021-05-31
(62)【分割の表示】P 2021029359の分割
【原出願日】2021-02-26
(71)【出願人】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】武田 政史
【テーマコード(参考)】
4J002
4J011
4J026
4J038
【Fターム(参考)】
4J002BG072
4J002BN031
4J002FD171
4J002GH01
4J011AC04
4J011BA04
4J011PA64
4J011PB33
4J011PC02
4J011PC08
4J011PC13
4J011QA22
4J011RA10
4J011UA03
4J026AA12
4J026BA28
4J026DB06
4J026DB36
4J026FA05
4J026FA09
4J026GA06
4J038BA212
4J038DL032
4J038FA121
4J038FA262
4J038FA272
4J038KA08
4J038KA09
4J038MA14
4J038NA01
4J038PA15
4J038PA17
4J038PC08
(57)【要約】
【課題】光重合開始剤のマイグレーションを完全に排除し、アクリレートモノマーのマイグレーションを低減し、ピンホールの発生が少なく、光沢が良好で、基材への密着性が良好で、耐摩擦性および耐溶剤性等の塗膜強度が良好な印刷物を作成することのできる電子線硬化型組成物の提供。
【解決手段】(メタ)アクリレート化合物(A)、および、固体ワックス(B)を含み、(メタ)アクリレート化合物(A)が(1)~(3)を満たす電子線硬化型組成物。
(1)トリメチロールプロパンアルキレンオキサイド変性トリアクリレート化合物を組成物全量中に50質量%以上含有する
(2)重量平均分子量が500未満の成分を、組成物全量中に25質量%未満含有する
(3)重量平均分子量が1000以上のトリメチロールプロパンアルキレンオキサイド変性トリアクリレート化合物を、組成物全量中に35質量%未満含有する
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリレート化合物(A)(シリコーン変性である場合を除く)、および、固体ワックス(B)を含む電子線硬化型組成物であって、
(メタ)アクリレート化合物(A)が、以下の(1)~(3)を満たす電子線硬化型組成物。
(1)トリメチロールプロパンアルキレンオキサイド変性トリアクリレート化合物を組成物全量中に50質量%以上含有する
(2)重量平均分子量が500未満の成分を、組成物全量中に25質量%未満含有する
(3)重量平均分子量が1000以上のトリメチロールプロパンアルキレンオキサイド変性トリアクリレート化合物を、組成物全量中に35質量%未満含有する
【請求項2】
(メタ)アクリレート化合物(A)が、さらにポリエステルアクリレートを含む請求項1記載の電子線硬化型組成物。
【請求項3】
固体ワックス(B)の平均粒子径が、2~8μmである、請求項1または2記載の電子線硬化型組成物。
【請求項4】
固体ワックス(B)の含有量が、組成物全量中0.3~2.0質量%である、請求項1~3いずれか記載の電子線硬化型組成物。
【請求項5】
さらに、レベリング剤(C)として非反応性シリコーン系化合物を、組成物全量中0.1~2.0質量%含む、請求項1~4いずれか記載の電子線硬化型組成物。
【請求項6】
さらに、(メタ)アクリル変性シリコーン系化合物を含む、請求項1~5いずれか記載の電子線硬化型組成物。
【請求項7】
光重合開始剤を実質的に含有しない、請求項1~6いずれか記載の電子線硬化型組成物。
【請求項8】
請求項1~7いずれか記載の電子線硬化型組成物を含む、電子線硬化型オーバーコートニス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子線硬化型組成物、および、電子線硬化型オーバーコートニスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、瞬間乾燥による工程時間の短縮や揮発性成分を含有しない(Non-VOC)ことによる環境負荷低減、架橋反応による強固な塗膜物性という観点から、活性エネルギー線硬化技術の印刷産業における利用が拡大している。印刷産業における活性エネルギー線硬化の利用としては、紫外線(UV)硬化と電子線(EB)硬化を利用したインキおよびニスが実用化されているが、設備投資やランニングコストの観点から紫外線(UV)硬化型が主流となっている。しかしながら、UV硬化反応に必要となる光重合開始剤は比較的低分子量であるものが多く、硬化後の塗膜中に残存する有害な光重合開始剤が内包食品へ移行すること(マイグレーション)が問題視されている。一方、EB硬化の反応形態はUV硬化と同様にラジカル反応が主体であるが、高エネルギーの電子線を利用するため、光重合開始剤を必要としない。この点においてEB硬化は食品包装等の用途向けの印刷インキやニスに対して好ましく使用できる。
【0003】
光重合開始剤や増感剤の有無以外は、UV硬化とEB硬化の必要原料構成はほぼ同一である。EB硬化においては光重合開始剤のマイグレーションリスクが完全に排除されるものの、主成分であるアクリレートモノマーやアクリレートオリゴマー、イナート樹脂、添加剤などの成分もマイグレーション評価の対象物質となる。しかし、量平均分子量1000を超えるアクリレートオリゴマーおよびイナート樹脂などは、マイグレーション自体のリスクが低いとともに、体内に吸収されるリスクも低いと考えられている。また、添加剤についてはその量が極微量であればマイグレーションのリスクは低い。すなわち、UV硬化およびEB硬化を含む活性エネルギー線硬化型の食品包装向け組成物においてはアクリレートモノマーがマイグレーション評価の重要な対象となる。
【0004】
食品包装においてインキやニスを印刷した印刷面は直接食品に接触することのない構成となっている(食品非接触)場合が多く、その際の主要なマイグレーション機構は、塗膜中の成分が基材を透過するペネトレーションと、塗膜が基材の非印刷面(裏面)に接触することによるセットオフであり、両要因の影響を総合的に評価しなければならない。EB硬化方式では表面硬化が良好であるため、前者のペネトレーションが主たる要因となる。ペネトレーションの抑制には基材そのものの膜厚増加やバリア性の高い基材の適用、アルミ箔やシリカ、アルミナ蒸着などの完全バリア層の導入などが効果的であるが、近年の環境対策としてのプラスチック使用量削減やリサイクル性という観点から実用的ではない。一方、リサイクル性の高いポリオレフィンフィルム(ポリエチレンやポリプロピレンなど)は比較的ガラス転移温度が低いため、バリア性が低く、マイグレーション抑制効果も低い。そのため、インキやニスを印刷した印刷面からのマイグレーションを抑制する技術が必要とされている。
【0005】
一般的には、残留アクリレートモノマーのペネトレーションを抑制するためには、反応性の高い多官能アクリレートモノマーや、透過しにくい高分子量のアクリレートモノマーの利用が考えられる。しかし、多官能アクリレートモノマーは反応性が高く、塗膜強度が良好であるものの、硬化収縮性が高いことによる基材のシュリンクや塗膜硬度が高いことによる割れが発生する。一方、アクリレートモノマーは高分子量化するほど、アクリル当量 (アクリロイル基1個あたりの分子量)の低下に伴い、架橋密度も低下するため、十分な塗膜強度が得られない。さらに、多官能モノマーや高分子量モノマーは粘度が高いものが多く、インキやニスの粘度も増加するため、印刷適性やレベリング性を劣化させる可能性がある。そのため、ペネトレーションによるマイグレーション抑制と塗膜物性、印刷適性を両立する活性エネルギー線硬化型の印刷インキやニスの開発が必要とされている。
【0006】
プラスチック使用量削減の方策として、先述のポリオレフィンフィルムの利用拡大によるリサイクル性の向上に加え、食品包材の主流となっている裏刷り印刷のラミネーション構成から表刷り構成への代替が検討されている。裏刷り印刷のラミネーション包材は複数のフィルムを接着剤で張り合わせることによって、内容物が必要とする保護機能を発現させており、印刷面がフィルム層に挟まれているため、インキ塗膜の強度は必要とならない。一方、表刷り印刷ではインキ塗膜が包材の最表面となるため、内容物の充填や搬送工程、使用環境に耐えうる塗膜強度が必要となる。一般的に、表刷り印刷においてはインキ塗膜の保護を目的として、オーバーコートニスが塗布されるが、食品包材用途として主流となっている溶剤や水性タイプの熱乾燥型オーバーコートニスでは十分な塗膜強度が得られない。そのため、強固な塗膜物性を有し、様々な印刷システムにインラインおよびオフラインで適応可能なオーバーコートニスが求められている。
【0007】
スイス連邦の条例(Swiss Ordinance RS817.023.21 Annex10)では食品非接触の印刷インキおよびニスを含む包装材料のポジティブリスト(使用可能な原材料)と、各原材料の許容されるマイグレーション量(SML)に関して、安全性を基準に規定しており、食品包材の世界基準として重要な指標となっている。
しかしながら、マイグレーションの度合は、基材の材質や厚さ、硬化や乾燥レベル、インキやニスの塗膜厚さなどによって異なるため、一元的に評価するのが困難である。このため、欧州印刷用インク協会(EuPIA)はガイドラインの中で、印刷方式や内容物ごとにマイグレーションの試験方法を示しており、統一的な評価方法の指標作りを進めている。
【0008】
活性エネルギー線硬化型のインキやニスのマイグレーションの課題を解決するために、特許文献1、2、3をはじめ種々の観点から研究が行われている。すなわち特許文献1では光重合開始剤または増感剤とポリエステル樹脂とを化学結合させることにより、光重合開始剤または増感剤の使用量を減量し、硬化反応後の光重合開始剤または増感剤のマイグレーションや揮発を低減させている。また特許文献2については活性エネルギー線硬化型インキ中の光重合開始剤の選定により臭気、マイグレーションの低減を狙っている。さらに特許文献3については、増感剤として用いられるチオキサントン骨格をベースとした新規な光重合開始剤を用いることで硬化性の向上と低マイグレーションの両方を達成している。また、特許文献1、2、3はいずれもUV硬化組成物として評価しており、マイグレーションの評価対象が主に光重合開始剤または増感剤に関するものであり、主成分であるアクリレートモノマーについての評価が十分なされていない。
【0009】
特許文献4では、アルコキシル化度の高いアクリレートモノマーを添加することで、その他の低分子量アクリレートモノマーのマイグレーションを抑制する技術が示されている。しかしながら、該発明では光重合開始剤およびアルコキシル化度の高いアクリレートモノマー自体のマイグレーションに関して評価されていない。また、実用性の判断をする上で重要なインキやニスの硬化塗膜物性の評価について記述されていない。
【0010】
特許文献5では、ポリオールを添加することで、EB硬化を促進し、低分子量アクリレートモノマーのマイグレーションを抑制する技術が示されている。しかしながら、該発明ではポリオールおよび全アクリレートモノマーのマイグレーションに関して評価されていない。また、実用性の判断をする上で重要なインキやニスの硬化塗膜物性の評価について記述されていない。
【0011】
特許文献6では、アクリレートモノマーを、アクリロイル基を有さないアルコキシル化化合物に置換することで、低分子量アクリレートモノマーのマイグレーションを抑制する技術が示されている。しかしながら、該発明ではアルコキシル化化合物および全アクリレートモノマーのマイグレーションに関して評価されていない。また、実用性の判断をする上で重要なインキやニスの硬化塗膜物性の評価について記述されていない。
【0012】
特許文献7では、EB硬化型オーバーコートニスにジメチルポリシロキサンを添加することで、硬化性、密着性、耐スクラッチ性等の塗膜特性が向上する技術が示されている。しかしながら、該発明ではアクリレートモノマーのマイグレーションに関して評価されていない。
【0013】
特許文献8では、EB照射することで成分の一部が架橋され、耐熱性が向上する技術が示されている。しかしながら、該発明では高線量のEB照射が必要であり、実用上、現実的ではない。また、実用性の判断をする上で重要なインキやニスの硬化塗膜物性の評価について、耐熱性以外の記述がされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2005-154748号公報
【特許文献2】特開2007-204543号公報
【特許文献3】特開2009-221441号公報
【特許文献4】国際公開第2015/148094号
【特許文献5】国際公開第2020/012157号
【特許文献6】国際公開第2020/012160号
【特許文献7】特開2020-147730号公報
【特許文献8】特表2019-509196号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は、光重合開始剤のマイグレーションを完全に排除し、アクリレートモノマーのマイグレーションを低減し、ピンホールの発生が少なく、光沢が良好で、基材への密着性が良好で、耐摩擦性および耐溶剤性等の塗膜強度が良好な印刷物を作成することのできる電子線硬化型組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、以下に記載の電子線硬化型組成物を使用することにより上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0017】
すなわち本発明は、(メタ)アクリレート化合物(A)(シリコーン変性である場合を除く)、および、固体ワックス(B)を含む電子線硬化型組成物であって、
(メタ)アクリレート化合物(A)が、以下の(1)~(3)を満たす電子線硬化型組成物に関する。
(1)トリメチロールプロパンアルキレンオキサイド変性トリアクリレート化合物を組成物全量中に50質量%以上含有する
(2)重量平均分子量が500未満の成分を、組成物全量中に25質量%未満含有する
(3)重量平均分子量が1000以上のトリメチロールプロパンアルキレンオキサイド変性トリアクリレート化合物を、組成物全量中に35質量%未満含有する
【0018】
また、本発明は、(メタ)アクリレート化合物(A)が、さらにポリエステルアクリレートオリゴマーを含む上記電子線硬化型組成物に関する。
【0019】
また、本発明は、固体ワックス(B)の平均粒子径が、2~8μmである、上記電子線硬化型組成物に関する。
【0020】
また、本発明は、固体ワックス(B)の含有量が、組成物全量中0.3~2.0質量%である、上記電子線硬化型組成物に関する。
【0021】
また、本発明は、さらに、レベリング剤(C)として非反応性シリコーン系化合物を、組成物全量中0.1~2.0質量%含む、上記電子線硬化型組成物に関する。
【0022】
さらに、(メタ)アクリル変性シリコーン系化合物を含む、上記電子線硬化型組成物に関する。
【0023】
また、本発明は、光重合開始剤を実質的に含有しない、上記電子線硬化型組成物に関する。
【0024】
また、本発明は、上記電子線硬化型組成物を含む、電子線硬化型オーバーコートニスに関する。
【発明の効果】
【0025】
本発明により、光重合開始剤のマイグレーションを完全に排除し、アクリレートモノマーのマイグレーションを低減し、ピンホールの発生が少なく、光沢が良好で、基材への密着性が良好で、耐摩擦性および耐溶剤性等の塗膜強度が良好な印刷物を作成することのできる電子線硬化型組成物を提供することができた。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に本発明の実施形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件および条件等は本発明における実施形態の一例である。なお本発明は以下の説明でその趣旨を超えず、また発明の効果が得られる限りこれらの内容に限定されない。また、特にことわりのない限り、「部」とは「質量部」、「%」とは「質量%」を表す。
【0027】
本発明における一実施態様は、(メタ)アクリレート化合物(A)(シリコーン変性である場合を除く)、および、固体ワックス(B)を含む電子線硬化型組成物であって、(メタ)アクリレート化合物(A)が、以下の(1)~(3)を満たす電子線硬化型組成物に関する。
(1)トリメチロールプロパンアルキレンオキサイド変性トリアクリレート化合物を組成物全量中に50%以上含有する。
(2)重量平均分子量が500未満の成分を、組成物全量中に25質量%未満含有する。
(3)重量平均分子量が1000以上のトリメチロールプロパンアルキレンオキサイド変性トリアクリレート化合物を、組成物全量中に35質量%未満含有する
【0028】
本明細書において「(メタ)アクリル」は「アクリル」と「メタクリル」の併記を表し、「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート」と「メタクリレート」の併記を表す。また、「PO」は「プロピレンオキサイド」を、「EO」は「エチレンオキサイド」を表す。
【0029】
本発明の電子線硬化型組成物は(メタ)アクリレート化合物(シリコーン変性である場合を除く)を含有する。本明細書において(メタ)アクリレート化合物(シリコーン変性である場合を除く)とは、重合性基である(メタ)アクリロイル基(官能基という場合がある)を1分子中に1つ以上有し、かつシリコーン変性骨格を構造中に有さない化合物であり、(メタ)アクリレートモノマー、(メタ)アクリレートオリゴマー、(メタ)アクリレートポリマーのいずれの形態も包含する。
本発明において、(メタ)アクリレート化合物(シリコーン変性である場合を除く)は、1種単独でもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。
【0030】
((メタ)アクリレートモノマー)
本発明は、(メタ)アクリレート化合物(A)として、(メタ)アクリレートモノマーを含むことが好ましい。本発明において、「モノマー」とは、オリゴマーやポリマーを構成するための最小構成単位の化合物を意味する。
(メタ)アクリレートモノマーとして、具体的には、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、β-カルボキシルエチル(メタ)アクリレート、4-tert-ブチルシクロヘキノール(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、アルコキシ化テトラヒドロフルフリルアクリレート、カプロラクトン(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、3,3,5-トリメチルシクロヘキサノール(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(オキシエチル)(メタ)アクリレート、1,4-シクロヘキサンジメタノール(メタ)アクリレート、環状トリメチロールプロパンフォルマル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、EO変性ノニルフェノールアクリレート、2-メチル-2-エチル-1、3-ジオキソラン-4-イル)メチルアクリレート、アクリロイルモルフォリンなどの分子内に(メタ)アクリロイル基を1つ有する単官能(メタ)アクリレートモノマー、
1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、3-メチル-1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,2-ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、EO変性1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、PO変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、(ネオペンチルグリコール変性)トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、PO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ジメチロール-トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレートなどの分子内に(メタ)アクリロイル基を2つ有する2官能(メタ)アクリレートモノマー、
トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン変性トリス-(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートなどの分子内に(メタ)アクリロイル基を3つ有する3官能(メタ)アクリレートモノマー、
ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、EO変性ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、PO変性ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、EO変性ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、PO変性ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレートなどの分子内にアクリロイル基を4つ有する4官能(メタ)アクリレートモノマー、
ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、EO変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、PO変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートなどの分子内に(メタ)アクリロイル基を5つ有する5官能(メタ)アクリレートモノマー、
ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、EO変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、PO変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどの分子内に(メタ)アクリロイル基を6つ有する6官能(メタ)アクリレートモノマー、などが挙げられる。
【0031】
((メタ)アクリレートオリゴマー)
本発明は、(メタ)アクリレート化合物(A)として、(メタ)アクリレートオリゴマーを含むことが好ましい。本発明において、「オリゴマー」とは、比較的重合度の低い、2個~100個のモノマーに基づく構成単位を有する重合体である。(メタ)アクリレートオリゴマーは(メタ)アクリレートモノマーに較べ、重量平均分子量が高く、マイグレーションのリスクを大きく低減することができる。(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、例えば、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレートなどが挙げられる。オリゴマーは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。
中でも、強固な硬化皮膜が得られ、(メタ)アクリレートモノマーとの相溶性が良好で、低粘度なためインキおよびニスの粘度増加を抑制できるという観点から、(メタ)アクリレートオリゴマーとして、ポリエステルアクリレートが好ましく用いられる。
本発明の電子線硬化型組成物におけるポリエステルアクリレートの含有量は、組成物全質量中5~45質量%であることが好ましく、10~40質量%であることがより好ましい。
【0032】
(エポキシアクリレート)
エポキシアクリレートは、例えばエポキシ樹脂の含有するグリシジル基とカルボキシル基を有する(メタ)アクリル酸などとの反応物であるエポキシアクリレート、カルボキシル基など酸性基を有する樹脂とグリシジル基を有する(メタ)アクリレート化合物の反応物であるエポキシアクリレートなどが挙げられ、いずれも不飽和二重結合基を有する。例えば前者の場合ビスフェノールA型エポキシ樹脂へ(メタ)アクリル酸を付加したエポキシアクリレート、ノボラック型エポキシ樹脂へ(メタ)アクリル酸を付加したエポキシアクリレート等が挙げられる。
【0033】
(ウレタンアクリレート)
ウレタンアクリレートは、例えば、ポリイソシアネートと水酸基含有(メタ)アクリレートとを反応させて得られるウレタンアクリレート、ポリオールとポリイソシアネートとをイソシアネート基過剰の条件下に反応させてなるイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーを、水酸基含有(メタ)アクリレートと反応させて得られるウレタンアクリレート、あるいは、ポリオールとポリイソシアネートとを水酸基過剰の条件下に反応させてなる水酸基含有ウレタンプレポリマーを、イソシアネート基を有する(メタ)アクリレート類と反応させて得られるウレタンアクリレートなどが挙げられる。
【0034】
上記ポリイソシアネートとしては公知のものを使用でき、芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、および脂環族ジイソシアネート等が挙げられる。
例えば、芳香族ジイソシアネートとしては、1,5-ナフチレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、4,4’-ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、4,4’-ジベンジルイソシアネート、ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、m-テトラメチルキシリレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、およびトリレンジイソシアネート等が挙げられる。
脂肪族ジイソシアネートとしては、ブタン-1,4-ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソプロピレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、およびリジンジイソシアネート等が挙げられる。
脂環族ジイソシアネートとしては、シクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、およびダイマー酸のカルボキシル基をイソシアネート基に変性したダイマージイソシアネート等が挙げられる。
中でも芳香族ジイソシアネートおよび/または脂環族ジイソシアネートが好ましい。上記例示化合物の中で好ましくは、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、およびヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体等である。
【0035】
(ポリエステルアクリレート)
本発明において、ポリエステルアクリレートは、多塩基酸及び多価アルコールを公知の方法で重縮合したものが挙げられ、カルボキシル基量と水酸基量の配合比により分子量や水酸基またはカルボキシル基などの末端基の量が調整される。
例えば多塩基酸に含まれるカルボキシル基量が多価アルコールに含まれる水酸基量よりも多い場合、末端官能基はカルボキシル基となり、ここへ水酸基含有(メタ)アクリレートの水酸基を縮合反応させることで目的とするポリエステルアクリレートを得ることができる。
【0036】
上記、多塩基酸としては、脂肪族系、脂環族系、及び芳香族系が挙げられ、それぞれ特に制限が無く使用できる。例えば脂肪族系多塩基酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、スベリン酸、マレイン酸、クロロマレイン酸、フマル酸、ドデカン二酸、ピメリン酸、シトラコン酸、グルタル酸、イタコン酸、無水コハク酸、無水マレイン酸、脂肪酸、脂肪酸由来のダイマー酸等が挙げられ、これらの脂肪族ジカルボン酸及びその無水物が利用できる。中でもアジピン酸、コハク酸、アゼライン酸、セバシン酸、脂肪酸、変性脂肪酸および脂肪酸由来のダイマー酸から選ばれる少なくとも一種の多塩基酸に由来する構造単位を有するポリエステルアクリレートが好ましい。
【0037】
また、上記多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ブチレングリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、3,3'-ジメチロールヘプタン、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、ポリオキシエチレングリコール(付加モル数10以下)、ポリオキシプロピレングリコール(付加モル数10以下)、プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,9-ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、オクタンジオール、ブチルエチルペンタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール,トリシクロデカンジメタノール、シクロペンタジエンジメタノール、ダイマージオール等の2官能の脂肪族又は脂環式アルコール類や、グリセリン、トリメチロールプロパン、1,2,4-ブタントリオールおよびそれらのエチレンオキシド付加物(付加モル数10以下)またはプロピレンオキシド付加物(付加モル数10以下)などの3官能の脂肪族又は脂環式アルコール類などが好ましく挙げられる。中でもエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパンからなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物に由来する構造単位を有することが好ましい。
【0038】
また、上記水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、1-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、1-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、10-ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート等の水酸基含有モノ(メタ)アクリレート、
グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタンジ(メタ)アクリレート2-ヒドロキシ-3-アクリロイロキシプロピル(メタ)アクリレートなどの水酸基含有ジ(メタ)アクリレート、
ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等の水酸基含有トリ(メタ)アクリレート、
ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートなどの水酸基含有ペンタ(メタ)アクリレート、
あるいは上記水酸基含有(メタ)アクリレートと、ε-カプロラクトンの開環付加により末端に水酸基を有する(メタ)アクリレートや、上記水酸基含有(メタ)アクリレートに対してエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなどのアルキレンオキサイドを繰り返し付加したアルキレンオキサイド付加(メタ)アクリレート等の水酸基含有の(メタ)アクリレート類等が挙げられる。
中でも(メタ)アクリレート基を分子中に1~3個有する水酸基含有(メタ)アクリレートであることが好ましい。
【0039】
(固体ワックス(B))
本発明の電子線硬化型組成物は固体ワックス(B)を含有する。固体ワックス(B)を含有することにより、耐摩擦性やスリップ性などの塗膜物性を大きく向上させることが可能となる。
本発明における固体ワックス(B)は25℃において固体の状態であるワックスのことをいう。また、その効果を発現させるためには、固体ワックスの平均粒子径がインキおよびニスの塗膜厚以上となることが好ましい。
前記固体ワックス(B)は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。
【0040】
前記固体ワックスは、特に制限はなく、公知のものを用いることができる。具体的には、天然ワックスとして、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、モンタンワックス、カルナバワックス、キャンデリラワックス、ライスワックス、木蝋などが挙げられる。また、合成ワックスとして、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、フッシャー・トロプッシュワックス、ポリテトラフルオロエチレンワックス、アマイドワックスなどが挙げられる。中でも、ポリエチレンワックスおよびポリテトラフルオロエチレンワックスが好ましい。
【0041】
前記固体ワックス(B)は、耐摩擦性と光沢の観点から、平均粒子径が2~8μmであることが好ましく、3~5μmがより好ましい。また、固体のワックスの平均粒子径がインキおよびニスの塗膜厚より小さい場合、その効果が不十分となりやすく、一方、固体のワックスの平均粒子径がインキおよびニスの塗膜厚より過剰に大きい場合、光沢が大きく低下する傾向にある。
【0042】
平均粒子径の測定方法は、以下の通りである。島津製作所(株)製のレーザー回折粒度分布測定装置SALD-2200を用いて、粒度分布曲線において積算値が50%にあたる粒径(体積基準)を測定した。
【0043】
前記固体ワックス(B)の含有量は、耐摩擦性、光沢の観点から、全質量に対して、0.3~2.0質量%であることが好ましく、0.4~1.9質量%であることがより好ましい。
【0044】
(トリメチロールプロパンアルキレンオキサイド変性トリアクリレート化合物)
本発明においては、(メタ)アクリレート化合物(A)がトリメチロールプロパンアルキレンオキサイド変性トリアクリレート化合物を組成物全量中に50%以上含有する。
本発明のトリメチロールプロパンアルキレンオキサイド変性トリアクリレート化合物は、下記一般式(I)で表される構造を有するものとする。なお、一般式(I)中、Rは、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、ペンチレンオキサイド、ヘキシレンオキサイド等、アルキレンオキサイド単位の中から選択された1種又は2種以上を示し、l+m+nは付加しているアルキレンオキサイドの平均付加数を示す。また、アルキレンオキサイドの平均付加数は、1分子あたり2~20モルであることが好ましい。
トリメチロールプロパンアルキレンオキサイド変性トリアクリレート化合物はアルキレンオキサイドの種類や付加数により塗工被膜の諸物性コントロールが可能である。
また、付加数を上げることによりペネトレーションによるマイグレーションを抑制が可能であり、さらに反応性のアクリロイル基を1分子中に3つ有していることから、同程度の重量平均分子量を有するアクリレートモノマーと比較して、硬化性が良好である。また、同程度の重量平均分子量を有するアクリレートモノマーと比較して、粘度が低く、インキおよびニスの粘度増加を抑制できる。また、トリメチロールプロパンアルキレンオキサイド変性トリアクリレート化合物が当該含有量であれば硬化塗膜の強度とマイグレーション抑制のバランスが良好となる。中でも、トリメチロールプロパンアルキレンオキサイド変性トリアクリレート化合物として、トリメチロールプロパンエチレンオキサイド変性トリアクリレートおよびトリメチロールプロパンプロピレンオキサイド変性トリアクリレートが好ましい。
【0045】
一般式(I) トリメチロールプロパンアルキレンオキサイド変性トリアクリレート化合物
【化1】

【0046】
一般的に入手可能なトリメチロールプロパンアルキレンオキサイド変性トリアクリレート化合物としては、EO(3モル)変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO(6モル)変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO(9モル)変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO(15モル)変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO(20モル)変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO(3モル)変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO(6モル)変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、などが挙げられる。
なお、各メーカーとも製品名としてアルキレンオキサイド付加数を明示しているが、付加数には分布があるため、あくまで主要な付加数を明示しているに過ぎない。正味の付加数を把握するためには、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)などによる分子量分布の測定が必要である。
【0047】
本発明は、上記記載の(メタ)アクリレート化合物(A)において、重量平均分子量が500未満の成分を、組成物全量中に25質量%未満含有する(0でも良い)。
重量平均分子量が500未満の(メタ)アクリレート化合物は、硬化性が良好なため、強固な塗膜を形成できるが、分子量が低いため、未反応成分のペネトレーションによるマイグレーションが発生しやすく、可能な限り低減させる必要がある。また、当該含有量であれば、マイグレーションを許容範囲内に抑制することができる。
(メタ)アクリレート化合物(A)における、重量平均分子量が500未満の成分は、組成物全量中に21質量%未満含有する(0でも良い)ことが好ましく、16質量%未満含有する(0でも良い)ことがより好ましい。
【0048】
本発明は、上記記載の(メタ)アクリレート化合物(A)において、重量平均分子量が1000以上のトリメチロールプロパンアルキレンオキサイド変性トリアクリレート化合物を、組成物全量中に35質量%未満含有する(0でも良い)。重量平均分子量が1000以上のトリメチロールプロパンアルキレンオキサイド変性トリアクリレート化合物は未反応成分のペネトレーションによるマイグレーションを抑制する効果が高いものの、アクリル当量 (アクリロイル基1個あたりの分子量)が低いため、塗膜強度が低下する。
また、重量平均分子量が1000以上のトリメチロールプロパンアルキレンオキサイド変性トリアクリレート化合物が当該含有量であれば、硬化塗膜の強度低下とマイグレーション耐性のバランスを良好に制御することが可能となる。
(メタ)アクリレート化合物(A)における、重量平均分子量が1000以上のトリメチロールプロパンアルキレンオキサイド変性トリアクリレート化合物は、組成物全量中に30質量%未満含有すること(0でも良い)が好ましく、25質量%未満含有すること(0でも良い)がより好ましく、20質量%未満含有すること(0でも良い)が特に好ましい。
【0049】
(レベリング剤(C))
本発明の電子線硬化型組成物では、ピンホール性を良化させるため、レベリング剤(C)として非反応性シリコーン系化合物を組成物全質量中に0.1~2.0質量%含有することが好ましく、0.2~1.9質量%含有することがより好ましい。
なお、非反応性シリコーン系化合物における非反応性とは、その構造中に(メタ)アクリロイル基、アリル基、ビニル基、ビニルエーテル基などの反応性基を含有しないことをいう。
非反応性シリコーン系化合物はポリオルガノシロキサン骨格を有するものが好ましく、ポリジメチルシロキサン構造(II)を有するものがより好ましい。
【0050】
一般式(II) ポリジメチルシロキサン
【化2】

【0051】
また、上記ポリジメチルシロキサンとしては、アミノ変性ポリジメチルシロキサン樹脂、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン樹脂、アルキル変性ポリジメチルシロキサン樹脂、アラルキル変性ポリジメチルシロキサン樹脂、エポキシ変性ポリジメチルシロキサン樹脂、カルボキシル変性ポリジメチルシロキサン樹脂、カルビノール変性ポリジメチルシロキサン樹脂、メルカプト変性ポリジメチルシロキサン樹脂、フェノール変性ポリジメチルシロキサン樹脂、異種官能基変性ポリジメチルシロキサン樹脂、メチルスチリル変性ポリジメチルシロキサン樹脂、高級脂肪酸エステル変性ポリジメチルシロキサン樹脂、高級アルコキシ変性ポリジメチルシロキサン樹脂、高級脂肪酸含有変性ポリジメチルシロキサン樹脂、フッ素変性ポリジメチルシロキサン樹脂、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン等が好適に挙げられる。
上記、非反応性シリコーン系化合物は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。中でも、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン樹脂は、ポリエーテル鎖のアルキレンオキサイド種や付加数により、(メタ)アクリレート化合物(A)との相溶性をコントロールできるという観点から好適である。アルキレンオキサイド種としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール共重合体が好ましい。
【0052】
((メタ)アクリル変性シリコーン系化合物)
本発明の電子線硬化型組成物では、表面の滑り性を良化させるため、添加剤として(メタ)アクリル変性シリコーン系化合物を含むことが好ましい。(メタ)アクリル変性シリコーン系化合物とはポリオルガノシロキサン骨格を有し、その構造中に(メタ)アクリロイル基を含有する化合物のことである。ポリオルガノシロキサン骨格としては、前記ポリジメチルシロキサン構造(II)を有するものが好ましい。(メタ)アクリル変性シリコーン系化合物は構造中に(メタ)アクリロイル基を含有するため、EB照射により、組成物中の(メタ)アクリレート化合物と反応させることができる。相溶性の観点から、(メタ)アクリル変性シリコーン系化合物の重量平均分子量は500~2500が好ましい。また、反応性の観点から、1分子中の(メタ)アクリロイル基の数は1~10が好ましい。
【0053】
(重合禁止剤)
本発明の電子線硬化型組成物は、保存安定性の向上のため、更に重合禁止剤を添加してもよい。重合禁止剤を具体的に例示すると、(アルキル)フェノール、ハイドロキノン、カテコール、レゾルシン、p-メトキシフェノール、t-ブチルカテコール、t-ブチルハイドロキノン、ピロガロール、1,1-ピクリルヒドラジル、フェノチアジン、p-ベンゾキノン、ニトロソベンゼン、2,5-ジ-tert-ブチル-p-ベンゾキノン、ジチオベンゾイルジスルフィド、ピクリン酸、クペロン、アルミニウムN-ニトロソフェニルヒドロキシルアミン、トリ-p-ニトロフェニルメチル、N-(3-オキシアニリノ-1,3-ジメチルブチリデン)アニリンオキシド、ジブチルクレゾール、シクロヘキサノンオキシムクレゾール、グアヤコール、o-イソプロピルフェノール、ブチラルドキシム、メチルエチルケトキシム、シクロヘキサノンオキシム等が挙げられる。重合禁止剤を使用する場合、組成物全質量の0.01~1質量%の範囲で使用できる。
【0054】
(不活性樹脂)
本発明の電子線硬化型組成物は、不活性樹脂を含んでもよい。不活性樹脂を含むことで、硬化時に生じる塗膜の硬化収縮を緩和し、基材のカールを抑制し、さらに、基材への密着性が向上する。本発明において、「不活性」とは、反応性基を有しないことを意味し、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0055】
前記不活性樹脂として、具体的に、ポリ塩化ビニル、(メタ)アクリル樹脂、スチレン(メタ)アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、セルロース誘導体(例えば、エチルセルロース、酢酸セルロース、ニトロセルロース)、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリアミド樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ジアリルフタレート樹脂、アルキッド樹脂、ロジン変性アルキッド樹脂、石油樹脂、尿素樹脂、ブタジエン-アクリルニトリル共重合体のような合成ゴムなどが挙げられる。
【0056】
(その他成分)
本発明の電子線硬化型組成物において、添加剤は公知のものを適宜含むことができ、例えば、硬化剤、可塑剤、湿潤剤、接着補助剤、消泡剤、帯電防止剤、トラッピング剤、ブロッキング防止剤、シリカ粒子、防腐剤などを使用することができる。また更に、油、難燃剤、充填剤、安定剤、補強剤、艶消し剤、研削剤、有機微粒子、無機微粒子などを使用しても良い。
【0057】
また、本発明の電子線硬化型組成物で使用する各種原材料として、カーボンニュートラルの観点などからは、植物などの再生可能な資源を利用したバイオマス由来の原材料を好ましく用いることができる。
【0058】
本発明の電子線硬化型組成物は光重合開始剤を実質的に含有しない。ここで、実質的に含有しないとは、意図的に添加することなく、かつ、非意図的添加による含有量が1%未満であることを意味する。非意図的添加には、各原料に微量に含まれている場合や、組成物の製造工程、印刷物作製工程におけるコンタミネーションなどが該当する。
【0059】
(電子線硬化型組成物の製造方法)
本発明の電子線硬化型組成物の製造方法としては、(メタ)アクリレート化合物(A)、固体ワックス(B)、レベリング剤(C)、(メタ)アクリル変性シリコーン系化合物とをディスパーやミキサーなどで30分~3時間程度混合攪拌することにより製造することができる。なお、あらかじめ(メタ)アクリレート化合物(A)を混合攪拌しておき、その後更に固体ワックス(B)、レベリング剤(C)、(メタ)アクリル変性シリコーン系化合物などを添加して製造してもよい。
【0060】
なお本発明の電子線硬化型組成物の粘度としては、1000mPa・s未満であることが好ましく、500mPa・s未満であることがより好ましく、300mPa・s未満であることが更に好ましい。かかる粘度はJISZ8803:2011による測定値をいい、25℃におけるE型粘度計による測定値である。
【0061】
(印刷方法)
本発明において、電子線硬化型組成物を印刷する方法は、特に制限がなく、公知の方法を用いることができる。具体的には、ロールコーター、ロッドコーター、ブレード、ワイヤーバー、ドクターナイフ、スピンコーター、スクリーンコーター、グラビアコーター、オフセットグラビアコーター、フレキソコーターなどが挙げられる。また、インライン印刷およびオフライン印刷において、UV硬化型、熱乾燥型、蒸発乾燥型、酸価重合型、液体トナー型、粉体トナー型インキなどと組み合わせて使用することもできる。なお、電子線硬化後の組成物の塗工被膜は、2~10μmが好ましく、3~5μmがより好ましい。上記印刷方式にて印刷層が形成された後、直ちに電子線照射機を通って電子線硬化印刷層が形成される。なお電子線の照射線量としては、加速電圧110kVにおいて10~60kGy、好ましくは110kVの加速電圧において20~45kGyで照射すればよい。電子線照射後は、必要に応じて加熱を行って硬化の促進を図ることもできる。
【0062】
(電子線硬化型オーバーコートニス)
また、本発明における電子線硬化型オーバーコートニスとは、基材上の印刷面および非印刷面に塗布し、電子線を照射することで硬化塗膜を形成し、基材上の印刷面および非印刷面に必要な表面物性を付与することを目的とした電子線硬化型組成物であり、顔料、染料、その他着色成分を含有しない場合が多い。必要な表面物性としては、その印刷物の最終用途によって異なるが、表面保護と光沢性付与目的のグロスコートニスを基本とし、マット性、スリップ性、ノンスリップ性、ソフトフィール性、耐熱性、耐溶剤性、疑似密着性、印字適性、突き刺し性、はじき性、剥離性、バリア性、などが要求される。
電子線硬化型オーバーコートニスの塗工方式としては、印刷面が乾燥しないうちにすぐに続けてオーバーコートニスを塗工するウェット方式と、印刷面が乾燥してからオーバーコートニスを塗工するドライ方式に分かれる。
【0063】
(基材)
本発明に使用できる基材はフィルム状の基材が好ましく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン基材、ポリエチレンテレフタレート、ポリ乳酸などのポリエステル基材、ポリカーボネート基材、ポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂などのポリスチレン系基材、ナイロン基材、ポリアミド基材、ポリ塩化ビニル基材、ポリ塩化ビニリデン基材、セロハン基材、紙基材、アルミニウム基材など、もしくはこれらの複合材料からなるフィルム状の基材が挙げられる。また、シリカ、アルミナ、アルミニウムなどの無機化合物をポリエチレンテレフタレート基材、ナイロン基材に蒸着した蒸着基材も用いることができ、更に蒸着処理面がポリビニルアルコールなどによるコート処理を施されていても良い。基材1は、印刷される面(印刷層と接する面)が易接着処理されていることが好ましく、易接着処理とは、例えば、コロナ放電処理、紫外線/オゾン処理、プラズマ処理、酸素プラズマ処理、プライマー処理等が挙げられる。また、ポリエチレンテレフタレート基材において、十分な密着性が得られない場合は、アクリルコート処理、ポリエステル処理、ポリ塩化ビニリデン処理などを施されていてもよい。
【0064】
また、基材は紙基材を用いても良い。該紙基材としては通常の紙や段ボールなどであり、膜厚としては特に指定は無いが、例えば、0.2mm~1.0mm、20~150g/m2のものが使用でき、印刷表面が易接着処理されていても良い。また紙基材は意匠性を付与させる目的で表面がアルミなどの金属で蒸着処理されていても良く、また、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂やその他の樹脂などで表面コート処理を施されていても良く、さらにコロナ処理などの表面処理が施されていても良い。例えばコート紙やアート紙などが挙げられる。
【0065】
上述した基材は、印刷する面と反対側の面に、さらに第二の基材が積層されたものを用いることもできる。この場合、積層される基材としては、上述したフィルム状基材と同様のものが挙げられ、同一でも異なっていても良い。中でも未延伸ポリエチレン、未延伸ポリプロピレン、ナイロン基材、アルミニウム箔基材、アルミニウム蒸着基材などが好ましい。
また、この場合、第二の基材は、接着剤層により基材と貼り合わされたものであることが好ましい。
【0066】
接着剤層は、アンカーコート剤、ウレタン系ラミネート接着剤、溶融樹脂等からなる層が挙げられる。アンカーコート剤(AC剤)としてはイミン系AC剤、イソシアネート系AC剤、ポリブタジエン系AC剤、チタン系AC剤が挙げられ、ウレタン系ラミネート接着剤としてはポリエーテルウレタン系ラミネート接着剤、ポリエステル系ラミネート接着剤などが挙げられ、有機溶剤を含むものと、無溶剤のものとがある。また、溶融樹脂としては、溶融ポリエチレン等が挙げられる。
【0067】
(バリア性)
また、上記第二の基材にはガス(酸素、水蒸気、窒素、炭酸ガス等)に対するバリア性を付与することもできる。バリア性を付与する方法としては、積層体としてバリア性基材を導入する方法とコーティングによりバリア層形成する方法がある。導入できるバリア性材料としては、シリカ、アルミナ、アルミ、塩化ビニリデン-メチルアクリレート共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール-酢酸ビニル共重合体、メタキシリレンアジパミド、MXD6ナイロンなどが挙げられる。また、前記バリア性材料と基材を組み合わせた共押し出しフィルムも使用できる。一方、このような技法とは異なり、容器の内部に侵入してくる酸素を積極的に取り除くタイプの技法であるアクティブ・パッケージングも適用できる。アクティブ・パッケージングに適用されるアクティブバリヤー材としては、還元鉄/塩化ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、アスコルビン酸などの酸素と反応する物質を樹脂にブレンドしたものや、MXD6ナイロン/コバルト塩、二重結合系ポリマー/コバルト塩、シクロヘキセン側鎖含有ポリマー/コバルト塩などのコバルト塩を酸化触媒として樹脂にブレンドし、樹脂を酸化させて酸素を吸収するものなどが挙げられる。
【実施例0068】
以下、実施例として本発明を具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例により限定されるものではない。本発明において、特に断らない限り、「部」は「質量部」、「%」は、「質量%」をそれぞれ表す。
【0069】
(重量平均分子量)
本発明において、(メタ)アクリレート化合物(A)の重量平均分子量は、東ソー(株)製ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(HLC-8320)で測定した。検量線は標準ポリスチレンサンプルにより作成した。溶離液はテトラヒドロフランを、カラムにはTSKgel SuperHM-M(東ソー(株)製)3本を用いた。測定は流速0.6ml/分、注入量10μl、カラム温度40℃で行った。
【0070】
(使用原料)
表1、2に以下の実施例および比較例で使用した(メタ)アクリレート化合物(A)の重量平均分子量、重量平均分子量が500未満の割合(%)、重量平均分子量が1000未満の割合(%)、固体ワックス(B)の平均粒子径を示す。
【0071】
(電子線硬化型組成物の作製方法)
(実施例1)
MIWON社製Miramer M3160(エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリアクリレート、カタログ上のエチレンオキサイド付加数6)を43.0部、MIWON社製Miramer M3190(エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリアクリレート、カタログ上のエチレンオキサイド付加数9)を54.6部、平均粒子径5μmのポリエチレンワックスを1.0部、(メタ)アクリル変性シリコーン系化合物を0.2部、非反応性シリコーン系化合物を1.0部、重合禁止剤を0.2部混合し、バタフライミキサーを用いて攪拌して、実施例1を作製した。
【0072】
(実施例2~27)
表1に記載した材料および比率で使用した以外は実施例1と同様の方法によって実施例2~27の電子線硬化型組成物を作製した。
【0073】
(比較例1~14)
表2に記載した材料および比率で使用した以外は実施例1と同様の方法によって比較例1~14の電子線硬化型組成物を作製した。
【0074】
【表1】
【0075】
【表1】
【0076】
【表2】
【0077】
(電子線硬化型オーバーコートニスの評価)
実施例1~27、比較例1~14の電子線硬化型組成物を用いて、電子線硬化型オーバーコートニスとしての評価を行った。
【0078】
(実施例1の印刷物の作製方法)
実施例1で得られた電子線硬化型組成物を用いて、フレキソ印刷方式にて印刷を行った。なお、印刷機は、RK社製 フレキシプルーフ100を使用し、印刷条件は印刷スピード70m/min、アニロックスロール線数100~500Line/inch、アニロックスロールのセル容量8~20cm3/m2、アニロックスロールの彫刻パターンはヘキサゴナル、版材はKodak社製 Flexcel NXH デジタルフレキソプレート、基材は白色ポリエチレンフィルム(厚さ50μm)を用い、硬化後の塗膜が4~5μmとなるように印刷した。印刷後の塗膜は直ちに、岩崎電気社製電子線照射機EC250/15/180Lを使用し、加速電圧110kV、電子線量30kGyにて硬化させた。
【0079】
(実施例2~27の印刷物の作製方法)
実施例1の印刷物と同様の方法で、それぞれ実施例2~27の印刷物を得た。
【0080】
(比較例1~14の印刷物の作製方法)
実施例1の印刷物と同様の方法で、それぞれ比較例1~14の印刷物を得た。
【0081】
上記にて得られた印刷物を用いて以下の評価を行った。評価結果は、表1、2に記載した。
【0082】
(マイグレーション耐性評価)
電子線硬化型組成物の実施例1~27、比較例1~14で得られた印刷物を用いてマイグレーションの評価を実施した。印刷物を10cm×10cmに切り出したものを3枚作製し、3枚を印刷面と非印刷面が接触するように重ね合わせ、2.0kg/cm2の荷重付加にて25℃、50%環境条件下にて10日間保持した。その後、3枚の内の中央の印刷物を取り出し、その非印刷面の面積0.5dm2に対して、50mlの95%エタノールが接触するように、マイグレーションセルにセットした。その後、攪拌を加えながら、60℃にて10日間かけて残留モノマーの抽出をした。マイグレーションセルは器具により完全に密閉されており、上記工程において内容物の損失や、内容物へのその他成分の混入は完全に抑制できる。上記抽出物をWaters製LC-MS(高速液体クロマトグラフ質量分析計)にて分析を行なった。エタノール中に存在する(メタ)アクリレート化合物(A)のマイグレーション耐性評価を以下の検出濃度を基準に実施した。
5:10ppb未満
4:10ppb以上25ppb未満
3:25ppb以上50ppb未満
2:50ppb以上100ppb未満
1:100ppb以上
なお評価3~5が産業上実用可能な範囲である。
【0083】
(ピンホール性評価)
電子線硬化型組成物の実施例1~27、比較例1~14で得られた印刷物を用いてピンホール性の評価を実施した。評価は面積1cm2の中に存在するピンホール(インキ被膜にあるクレーター状の小さな穴)の個数で評価を実施した。
5:ピンホールの数が平均4個以下である
4:ピンホールの数が平均5個以上9個以下
3:ピンホールの数が平均10個以上14個以下
2:ピンホールの数が平均15個以上19個以下
1:ピンホールの数が平均20個以上
なお評価3~5が産業上実用可能な範囲である。
【0084】
(光沢評価)
電子線硬化型組成物の実施例1~27、比較例1~14で得られた印刷物を用いて、村上色彩研究所製の光沢計GM-26Dにて、印刷物に対して60°の反射角で光沢値(JIS Z 8741に準拠)を測定した。
5:光沢値が90以上である
4:光沢値が85以上90未満である
3:光沢値が80以上85未満である
2:光沢値が75以上80未満である
1:光沢値が75未満である
なお評価3~5が産業上実用可能な範囲である。
【0085】
(密着性評価)
電子線硬化型組成物の実施例1~27、比較例1~14で得られた印刷物を用いて密着性の評価を実施した。測定は粘着テープ(ニチバン社製セロハンテープ(幅12mm))を用いて、印刷面にテープを貼り、180度の角度で素早く引き剥がした際に、印刷物側に残存した塗膜の面積%で評価を行った。
5:90%以上
4:70%以上90%未満
3:50%以上70%未満
2:25%以上50%未満
1:25%未満
なお評価3~5が産業上実用可能な範囲である。
【0086】
(耐摩擦性)
電子線硬化型組成物の実施例1~27、比較例1~14で得られた印刷物を用いて、テスター産業(株)製の学振型摩擦堅牢度試験機(荷重500g200回、対紙:上質紙)にて耐摩擦性試験を行い、硬化塗膜面に生じた傷について評価した。
5:全く傷付きがない
4:傷の面積が10%未満である
3:傷の面積が10%以上30%未満である
2:傷の面積が30%以上50%未満である
1:傷の面積が50%以上である
なお評価3~5が産業上実用可能な範囲である。
【0087】
(耐溶剤性)
電子線硬化型組成物の実施例1~27、比較例1~14で得られた印刷物表面を、99.5%エタノール溶液に浸漬した綿棒で1秒あたり1往復で擦り、硬化塗膜表面が削れるまでの往復回数で評価した。
5:200回以上
4:150回以上200回未満
3:100回以上150回未満
2:50回以上100回未満
1:50回未満
なお評価3~5が産業上実用可能な範囲である。
【0088】
以上のように、実施例1~27はマイグレーション耐性、ピンホール性、光沢、密着性、耐摩擦性、耐溶剤性において良好な結果を示した。本願発明の電子線硬化型組成物を用いることによって、硬化塗膜中に残存する未反応成分の外部移行を抑制し、かつ、塗膜物性に優れた印刷物を提供することができた。