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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022132024
(43)【公開日】2022-09-07
(54)【発明の名称】水まわり部材
(51)【国際特許分類】
   A47K 4/00 20060101AFI20220831BHJP
   A47K 1/00 20060101ALI20220831BHJP
   A47B 67/02 20060101ALI20220831BHJP
   A47B 96/18 20060101ALI20220831BHJP
   E03D 11/00 20060101ALI20220831BHJP
   A47B 77/06 20060101ALI20220831BHJP
   C08J 7/056 20200101ALI20220831BHJP
【FI】
A47K4/00
A47K1/00 M
A47B67/02 502M
A47B96/18 F
E03D11/00 Z
A47B77/06
A47B96/18 E
C08J7/056 CEY
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021122453
(22)【出願日】2021-07-27
(31)【優先権主張番号】P 2021029859
(32)【優先日】2021-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094640
【弁理士】
【氏名又は名称】紺野 昭男
(74)【代理人】
【識別番号】100103447
【弁理士】
【氏名又は名称】井波 実
(74)【代理人】
【識別番号】100111730
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 武泰
(74)【代理人】
【識別番号】100180873
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 慶政
(72)【発明者】
【氏名】森井 勇次
(72)【発明者】
【氏名】畑中 啓司
(72)【発明者】
【氏名】岡安 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】瓜生 勝嗣
(72)【発明者】
【氏名】進藤 佑輔
【テーマコード(参考)】
2D039
2D132
3B260
4F006
【Fターム(参考)】
2D039CC06
2D132GA04
3B260FA06
4F006AA22
4F006AB43
4F006BA10
4F006CA00
4F006DA04
4F006EA03
(57)【要約】
【課題】表面に水がかかり、残水しても、表面から排水されることが可能であり、かつ高い防汚持続性を発揮することが可能な水まわり部材の提供。
【解決手段】本発明は、表面が露出して固定され、さらに、前記表面に水がかかる環境下で用いられる水まわり部材であって、前記水まわり部材は、水受け面と、前記水受け面から下方に向かって設けられる端部と、を含み、前記水受け面と水平面との間の角度は0°以上5°以下であり、前記端部は、少なくとも一つの曲率半径が0.5mm以上の断面円弧状の曲面部を含み、前記水受け面から前記端部を通り下方に排水可能なように、少なくとも前記水受け面および前記端部の頂部まで連続した親水性領域を有する、水まわり部材。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面が露出して固定され、さらに、前記表面に水がかかる環境下で用いられる水まわり部材であって、
前記水まわり部材は、
水受け面と、
前記水受け面から下方に向かって設けられる端部と、を含み、
前記水受け面と水平面との間の角度は0°以上5°以下であり、
前記端部は、少なくとも一つの曲率半径が0.5mm以上の断面円弧状の曲面部を含み、
前記水受け面から前記端部を通り下方に排水可能なように、少なくとも前記水受け面および前記端部の頂部まで連続した親水性領域を有する、水まわり部材。
【請求項2】
前記水受け面上に3.2mL/分で10秒間散水し、散水を止めてから5秒後の、水受け面上の残水量をL1(g/cm)とし、散水後、水受け面を大気中常温下で90分間静置した後の、水受け面上の残水量をL2(g/cm)としたときの、下記式(1)で示される残水割合(%)が7%未満である、請求項1に記載の水まわり部材。
残水割合(%)=L2/L1×100 式(1)
【請求項3】
前記端部の下方に立面をさらに含み、
前記水受け面および前記立面は、前記端部により接続されてなり、
前記立面の下側の端と水平面との間の角度は120°以下である、請求項1または2に記載の水まわり部材。
【請求項4】
前記水受け面と水平面との間の角度が0°より大きく、
前記立面の上方の端から下方に向かって少なくとも50%以上の領域に親水性領域がさらに連続して形成されている、請求項3に記載の水まわり部材。
【請求項5】
前記立面の下方の端と水平面との間の角度が30°以上であり、
前記立面の上方の端から下方に向かって少なくとも50%以上の領域に親水性領域がさらに連続して形成されている、請求項3に記載の水まわり部材。
【請求項6】
前記水まわり部材は、
樹脂を主成分とする基材と、
当該基材上に形成された親水性の表面層と、を含み、
当該親水性の表面層により、請求項1~5のいずれか1項に定義される水受け面および端部の頂部まで、さらに場合により立面の上方の端から下方に向かって少なくとも50%以上の領域まで、連続した親水性領域が形成されている、請求項1~5のいずれか1項に記載の水まわり部材。
【請求項7】
前記親水性の表面層は、スルホン酸基を含む、請求項6に記載の水まわり部材。
【請求項8】
前記親水性の表面層は、主成分がアクリル樹脂である、請求項6または7に記載の水まわり部材。
【請求項9】
前記親水性領域は、水接触角が45°以下である、請求項1~8のいずれか1項に記載の水まわり部材。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の水まわり部材により構成される、カウンター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水まわり部材に関する。
【背景技術】
【0002】
水を使用する環境である水まわりで用いられる部材として、水まわり部材が知られている。水まわりにおいて水まわり部材を固定して用いる際、例えば、カウンターなどの水まわり部材は、その表面が露出して設置される。そのため、水まわり部材の表面に水がかかり、その水が水まわり部材の表面に残ることがある。水まわり部材の表面に水が残ると、部材表面の外観が良くないだけでなく、部材表面において水垢の形成や、菌の繁殖のおそれがある。
【0003】
カウンターの上面に水滴が残ることを抑制できる技術として、例えば、特許文献1には、浴室カウンターの上面に水滴が残ることを抑制できる浴室カウンターを提供することを目的とし、浴室カウンターの本体と本体の上に設けられる天板の下端との間に、天板の上面の端部に付着した水滴を捕集するための捕集部を設けることが記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、水まわりで用いられる樹脂の成形体の親水性や防汚性を高める技術として、樹脂の成形体をフッ素および酸素よりなるガス中に放置することにより成形体の表面を親水化処理し、得られた親水性により成形体の表面への汚れの付着をしにくくすることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-213666号公報
【特許文献2】特開2000-169606号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のような技術があるものの、水まわりで用いられる水まわり部材において、使用者から視認できる表面に水が残ることを抑制する技術、さらには、残った水が表面から排水される技術が依然として求められている。特に、排水方向への傾斜が小さい水まわり部材は、傾斜が小さいことから表面に残水しやすい。つまり、水まわり部材の表面で導水が途切れてしまい、排水されにくい。このような水まわり部材に対し、表面の水を速くまたは完全に排水することが可能な技術が求められている。
【0007】
本発明者らは、排水方向への傾斜が小さい、つまり、傾斜が緩やかな水まわり部材の表面に水が残ることを抑制する技術として、従来知られているように、水まわり部材の水受け面(天面)を親水性とすることにより、解決できないかと考えた。親水性の表面は、一般的に、水の濡れ広がりが大きくなるため、水の比表面積が増大し、乾燥性が高まることが知られている。しかし、水まわり部材において、水受け面(天面)のみを親水性とした場合、散水中は、導水により水受け面(天面)から排水されるが、散水が止まった後は、水受け面(天面)から排水されず、水受け面(天面)上に残水することが実験により確認された。つまり、導水が止まってしまい、水受け面(天面)上から排水されないことが確認された。また、その後、時間が経過しても、水受け面(天面)上の水は多少乾燥するものの、排水されず、残水したままであることが確認された。さらには、汚れを含んだ水が水受け面(天面)上に残り、乾燥を繰り返すことで、表面の汚れの堆積が進むことが確認された。
【0008】
本発明は、このような課題を解決することを目的としたものであり、水まわり部材において、特に排水方向への傾斜が小さい水まわり部材において、表面に水がかかり、残水しても、表面から排水されることが可能であり、かつ高い防汚持続性を発揮することが可能な水まわり部材を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そして、本発明による水まわり部材は、
表面が露出して固定され、さらに、前記表面に水がかかる環境下で用いられる水まわり部材であって、
前記水まわり部材は、
水受け面と、
前記水受け面から下方に向かって設けられる端部と、を含み、
前記水受け面と水平面との間の角度は0°以上5°以下であり、
前記端部は、少なくとも一つの曲率半径が0.5mm以上の断面円弧状の曲面部を含み、
前記水受け面から前記端部を通り下方に排水可能なように、少なくとも前記水受け面および前記端部の頂部まで連続した親水性領域を有することを特徴とするものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の水まわり部材を利用可能な浴室の一例を示す斜視図である。
図2】本発明の水まわり部材の一態様を示す断面図である。
図3】本発明の水まわり部材の一態様を示す断面図である。
図4】本発明の水まわり部材の一態様を示す断面図である。
図5】本発明の水まわり部材の一態様を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
水まわり部材
本発明の水まわり部材は、表面が露出して固定され、さらに、表面に水がかかる環境下で用いられるものである。なお、ここで「表面が露出して固定される」とは、水まわり部材の表面が使用者から視認できる状態で、かつ動かないように設置されることを意味する。水まわり部材が使用者に用いられる際に固定されていればよく、例えば、取り外し可能なように構成されていても良い。また、「表面に水がかかる環境下で用いられる」とは、例えば、水まわり部材の周りに水栓などの水を吐出する機器が設置されることで水がかかる場所で用いられることを意味する。
【0012】
本発明の水まわり部材は、水まわりで用いられる部材である。水まわり部材としては、トイレ、洗面所、浴室、キッチンから選択される少なくとも1種で用いられる部材であることが好ましい。
【0013】
本発明において、水まわりで用いられる具体的な水まわり部材として、水受け面の傾斜が小さく、つまり、排水方向への傾斜が小さく(緩やかな)かつ水受け面上に残水しやすい構造(水受け面が大きい構造)を有する部材であることが好ましい。具体的には、比較的大きな水受け面を有するカウンターや洗面ボウル、シンク、浴槽の本体やリム、浴室床の排水口まわりなどが挙げられる。カウンターとしては、浴室に設けられる水栓カウンターや洗面器等を載置する洗面カウンター、洗面所で用いられるカウンターが挙げられる。洗面ボウルとしては、排水口まわりのボウル面(水受け面)の排水方向への傾斜が小さいものが挙げられる。
【0014】
浴室のカウンターや浴槽のリムについて、具体的な浴室の図面を用いて説明する。図1は、浴室の一例を模式的に表す斜視図である。なお、本明細書では、水まわり部材と向き合う使用者からみて手前側を「前方」とし、奥側を「後方」とし、上側を「上方」とし、下側を「下方」とし、右側を「右側方」とし、左側を「左側方」とする。
【0015】
図1において、浴室100は、第1~第3の壁面110~130を含む複数の壁面(側壁)と、床面と、天井面と、を有する。各壁面と床面と天井面とは、浴室空間BSを形成する。浴室空間BSは、各壁面と床面と天井面とで囲まれた空間である。浴槽90は、浴室空間BS内に設けられる。
【0016】
浴槽90は、リム(縁)を有しており、利用者はリムを握ることにより浴槽に出入りすることが可能である。図1から分かるように、リムはシャワーなどの水がかかりやすく、かつ大きな天面を有しているため、残水しやすい。
【0017】
また、浴室100には、カウンター10として、水栓カウンター11と洗面カウンター12が設けられている。水栓カウンター11は、水を吐出する。洗面カウンター12は、比較的大きな板状の部材であり、上にシャンプーボトルや洗面器などの物品を置くことが可能である。また、水栓カウンター11も同様に、比較的大きな板状の部材であり、上にシャンプーボトルなどの物品を置くことが可能である。カウンター10は、物品を置くことができるような構成、すなわち水受け面が大きく、排水方向への傾斜が小さい構成となっているため、残水しやすい。特に、洗面カウンター12は、上に水栓カウンター11が設けられているため、たくさんの水がかかるため、残水しやすい。
【0018】
本発明の水まわり部材は、上述のような浴室のカウンター10や浴槽90のリムとして利用可能である。
【0019】
本発明の水まわり部材は、カウンターとして用いられることが好ましい。カウンターは、周りに水栓が存在し、かつ比較的大きな板状の部材であり水受け面(天面)が大きいため、水がかかりやすく、残水しやすい。また、カウンター(水受け面)上に物を載置するため、水受け面の下方(排水方向)への傾斜を小さくすることが求められる。本発明の水まわり部材をカウンターとして用いることにより、排水性を高め、かつ防汚持続性を得ることができる。
【0020】
排水性
本発明者らは、上述の通り、排水方向への傾斜が小さい水まわり部材の排水性の検討において、水受け面(天面)のみを親水性とした場合であっても、水は表面で広がるものの、水受け面(天面)から排水されず、残水することを見出した。さらに時間が経過しても残水したままであり、この水は乾燥し、これが水垢や汚れの堆積につながることを見出した。この理由として、水まわり部材の水受け面(天面)で水が留まってしまう、つまり導水が止まってしまうことが考えられた。さらに、排水方向に水が落下せず、つまり、排水されず、水受け面(天面)上で、特に水受け面(天面)に接続する端部で水が止まってしまっているためと考えた。さらに、水受け面(天面)の端部が尖っている場合、この尖った部分で水が止まり、下方に排水されないことを見出した。これは、尖った部分で表面張力により水が止まってしまうためであると考えられた。これらの課題を、本発明者らは、水まわり部材表面の導水を、部材の形状と性状とを工夫し、下記の構成とすることで解決した。
【0021】
つまり、本発明の水まわり部材は、表面が露出して固定され、さらに、前記表面に水がかかる環境下で用いられ、
水受け面と、前記水受け面から下方に向かって設けられる端部と、を含み、
前記水受け面と水平面との間の角度は0°以上5°以下であり、
前記端部は、少なくとも一つの曲率半径が0.5mm以上の断面円弧状の曲面部を含み、
前記水受け面から前記端部を通り下方に排水可能なように、少なくとも前記水受け面および前記端部の頂部まで連続した親水性領域を有するものである。
【0022】
本発明によれば、散水により表面に水がかかり、かつ散水が止まった後、つまり、水の流れが止まった後、水受け面上に水が残っても、水受け面の表面が親水性領域を有することにより、水受け面上の水は広がり、端部まで導かれる。さらに、端部まで導かれた水は、止まることなく端部の頂部まで導かれる。つまり、水受け面上から端部の頂部まで導水が途切れることがない。その後、端部の頂部まで導かれた水は、水の自重により下方に落下、つまり排水することが可能となる。これにより、本発明の水まわり部材は、水受け面表面に水がかかり、残水しても、すぐに(速く)表面から水が排水されることが可能となる。したがって、水受け面表面の残水を抑えることができる。また、水受け面表面から排水されるため、汚れの堆積を抑制でき、高い防汚持続性を発揮できる。
【0023】
本発明の水まわり部材は、散水が止まった後、水受け面上に水が残っていても、時間の経過とともに水受け面表面から排水されることが可能である。つまり、本発明の水まわり部材は排水性が高い。したがって、本発明の水まわり部材は、散水が止まった後、水受け面に水が残っていたとしても、時間の経過とともに、水受け面上の水量(残水量)が小さくなることが可能である。具体的には、下記測定条件において下記式(1)で示される残水割合が7%未満であることが好ましく、5%以下であることがさらに好ましく、2%以下であることがさらにより好ましい。これにより、水受け面表面に水がかかり、残水しても、時間の経過とともに排水され、最終的には水受け面表面の残水量が小さくなることができ、0に近づくことができる。
<測定条件>
水受け面上に3.2mL/分で10秒間散水し、散水を止めてから5秒後に、水受け面上の残水量を測定し、これをL1(g/cm)とする。また散水後、水受け面を大気中常温下、例えば25℃60RH%の環境下で90分間静置し、水受け面上の残水量を測定し、これをL2(g/cm)とする。下記式(1)にL1とL2を代入することにより、残水割合(%)を算出する。
残水割合(%)=L2/L1×100 式(1)
式1中、
L1:初期の天面上の残水量(g/cm
L2:90分後の天面上の残水量(g/cm
を示す。
【0024】
図面を用いて本発明の水まわり部材をさらに説明する。図2は、本発明の水まわり部材200の一態様を示す斜視図である。図3および図4は、本発明の水まわり部材200を上下方向に切断した際の断面図である。図2において、部材200は、水受け面(天面)201と、立面202と、水受け面(天面)201と立面202とを接続する端部203とを有する。なお、ここで、水受け面(天面)201は、左右方向に形成された面であり、立面202は、上下方向に形成された面である。本発明の水まわり部材は、水受け面(天面)201と、立面202と、端部203とを有しており、その他、部材の形状が保たれるために必要な面を有するものである。立面202や端部203は、排水方向に向かって設けられている。立面202や端部203の(排水方向の)端は、例えば、排水口(図示せず)などに接続されていても良い。
【0025】
本発明の水まわり部材について、図3および図4を用いてさらに説明する。図3は、水まわり部材200における天面201と端部203の拡大断面図である。図4は、天面201と端部203に加え、さらに立面202が設けられた態様の拡大断面図である。
【0026】
図3において、水受け面(天面)201は、水平面に対しθ天面傾斜している。つまり、水受け面(天面)201と水平面との間の角度はθ天面である。また、端部204の下側の端と水平面との間の角度はθ端部最大である。また、水受け面(天面)201の表面および端部203のうち水受け面(天面)201の側の一端から頂部204まで連続した親水性領域205を有する。なお、頂部204の詳細については後述する。
【0027】
図4は、前述の通り、図3に対し、さらに端部203の下方に立面202を設けた態様の拡大断面図である。
【0028】
親水性領域
本発明の水まわり部材は、天面201から端部を通り下方に排水可能なように、水受け面(天面)201および端部203の頂部204まで連続した親水性領域205を有する。つまり、水受け面(天面)201の表面および端部203における水受け面(天面)側の一端から頂部までの表面に、連続した親水性領域を有する。これにより、水受け面(天面)201上に残水しても、水受け面(天面)上で水が広がり、かつ導水が途切れることなく水受け面(天面)201から端部203まで続くため、端部203から排水されることができる。よって、水受け面(天面)上の水を排水できる。
【0029】
本発明の水まわり部材は、水受け面(天面)201および端部203の表面全てが親水性領域を有していることが好ましい。つまり、水受け面(天面)201の表面および端部203における水受け面(天面)側の一端から下側(立面側)の他端までの表面に、連続した親水性領域を有していることが好ましい。これにより、水受け面(天面)201上に残水しても、導水が止まることなく、水は水受け面(天面)201から端部203に流れ、水受け面(天面)201から排水されることが可能となる。
【0030】
本発明の水まわり部材は、水受け面(天面)201の全て、端部203の全ておよび立面202の上側の端(端部203側の端)から下方に向かって少なくとも50%以上の領域に親水性領域を有していることが好ましく、水受け面(天面)201、端部203および立面202の全てに親水性領域を有していることがさらに好ましい。これにより、水受け面(天面)201に残水しても、導水が止まることなく、水受け面(天面)201から端部203に流れ、立面202からの排水を促すことができる。
【0031】
本発明において、親水性領域とは、親水性を示す領域である。親水性を表す指標としては水接触角を用いることができ、本発明においては親水性領域の水接触角が45°以下であることが好ましく、20°以下であることがさらに好ましい。これにより、本発明の水まわり部材の表面において、水が広がりやすくなり、排水しやすくすることが可能となる。
【0032】
本発明において、水接触角は、下記の方法で測定することができる。例えば、水接触角測定装置(例えば、協和界面科学社製DM―701型)を用いて、水滴サイズを1μLとして、5箇所測定し、θ/2法より解析し、得られた値の5点の平均値を本発明の水接触角として用いることができる。
【0033】
本発明の水まわり部材において、水受け面(天面)201は、左右方向に形成された面を有する。水受け面(天面)201の表面は、使用者から視認できるように配置され、かつ、水がかかるため、残水しやすい。そのため、高い排水性や防汚性が求められる。
【0034】
本発明の水まわり部材において、水受け面(天面)201の傾斜は小さい(緩やかである)。つまり、排水方向に対して、水受け面(天面)201の傾斜は小さい。具体的には、水受け面(天面)201と水平面との間の角度が0°以上5°以下であり、好ましくは、0°より大きく5°以下であり、さらに好ましくは、0°より大きく3°以下である。つまり、天面201は、水平面に対して、0°以上5°以下傾斜しており、好ましくは、0°より大きく5°以下傾斜しており、さらに好ましくは0°より大きく3°以下傾斜している。水受け面(天面)201は、右側方側や左側方側から見た場合、排水方向に(下方に)傾斜している。これにより、散水が止まった後、天面201上に残水しても、端部203へと水を移動させることができ、かつ端部203から立面202方向(下方)に排水させやすくすることができる。したがって、天面201上の水を速く排水することが可能となる。また、時間の経過とともに、最終的に、天面201上に残水が無い状態、つまり、残水量0にすることができる。
【0035】
本発明の水まわり部材において、水受け面(天面)201は、上述の通り、排水方向に対して水受け面(天面)201の傾斜が小さい部分を有していればよい。具体的には、排水される位置付近(周り)において、傾斜が小さい部分を有していればよい。したがって、排水位置から離れた場所において、立ち上がり部等を有していても良い。例えば、洗面ボウルや浴槽などのように、排水口周りにおいて、水受け面201の傾斜が小さい部分を有し、排水口から離れた位置において、立ち上がり部を有していても良い。
【0036】
本発明の水まわり部材において、端部203は、天面201から下方に向かって設けられ、少なくとも一つの曲率半径が0.5mm以上の断面円弧状の曲面部を含む。断面円弧状とは、断面が円弧状であること、つまり、端部の外縁は丸みがあり、尖っていないことを意味する。端部203は、断面円弧状の曲面部を一つ含んでいても良い。つまり、端部203が断面円弧状の曲面部と同一であっても良い。また、端部203は、断面円弧状の曲面部を複数含んでいても良い。その場合、各断面円弧状の曲面部の曲率半径は異なっていても良い。ただし、複数含む場合、各断面円弧状の曲面部の曲率半径は0.5mm以上である。
【0037】
本発明において、端部203は、少なくとも一つの曲率半径が0.5mm以上の断面円弧状の曲面部を含む。端部203は、少なくとも一つの曲率半径が3mm以上の断面円弧状の曲面部を含むことが好ましく、少なくとも一つの曲率半径が5mm以上の断面円弧状の曲面部を含むことがさらに好ましい。これにより、水受け面(天面)201から端部203に流れてきた水が端部203で留まるのを抑制でき、下方に排水されやすくすることができる。本発明において、端部203は、水受け面(天面)201上から移動してきた水が通る面であり、この水は端部203を通ったあと、下方に移動し、水まわり部材から排水される。
【0038】
本発明の水まわり部材において、端部203の頂部204とは、端部203における断面円弧状の曲面部の上に存在する特定の部位を指し、具体的には、水受け面(天面)201と水平面との間の角度と、端部203または立面202の下側の端と水平面との間の角度を形成する端部203の部位のうち、これら2つの角度の中間値を形成する部位を指す。つまり、下記式で表される角度を成す部位を指す。
端部の頂部と水平面との間の角度:(θ天面+θ端部最大)/2
θ天面は、天面と水平面との間の角度を指す。
θ端部最大は、端部または立面の下側の端と水平面との間の角度を指す。
【0039】
本発明の水まわり部材において、端部203は一つであってもよく、複数であっても良い。水受け面(天面)201上から移動する水が排水される方向に端部203が形成されていることが好ましい。例えば、図1に示すように、浴室のカウンターにおいて、水受け面(天面)の上にある水が排水される方向が左右と前方の3方向である場合、これら3方向すべてに端部203を備え、かつ水受け面(天面)および少なくとも各端部203の頂部まで連続した親水性領域が形成されていることが好ましい。
【0040】
本発明の水まわり部材は、立面202を含むことが好ましい。立面202は上下方向に形成された面であり、端部203の下方に設けられる。つまり、水受け面(天面)201と立面202との間に端部203が設けられる。言い換えれば、端部203は水受け面(天面)201と立面202とを接続するものである。本発明において、立面202と水平面との間の角度は120°以下であることが好ましく、さらに好ましくは90°以下である。また、立面202と水平面との間の角度は15°以上であることが好ましく、30°以上であることがさらに好ましく、45°以上であることがさらにより好ましい。散水が止まった後、水受け面(天面)201上に残水しても、導水が止まることなく、水が端部203と立面202の表面上を通ることにより速く排水されることが可能となる。また、時間の経過とともに、水受け面(天面)上の水をすべて排水することができる。
【0041】
本発明の水まわり部材において、表面形状は特に限定されない。例えば、表面加工によりシボを有していても良い。また、本発明の水まわり部材において、水受け面(天面)は、排水性を高めるための溝や、排水のための貫通孔を有していても良い、この場合は、孔への排水を高めるために、孔の排水方向に端部を設け、端部表面に親水性領域を設けることが好ましい。
【0042】
本発明において、水まわり部材は、基材を含んでなる。すなわち、部材は基材からなるものであってもよく、基材と他の要素とを備えてなるものであってもよい。例えば、基材の表面に、後述する親水性の表面層を含んでいても良い。
【0043】
基材
本発明において、基材は特に制限されないが、樹脂成形体であることが好ましい。樹脂成形体は、樹脂が主成分である成形体である。主成分とは、樹脂成形体において樹脂を50質量%以上含むことが好ましく、さらに好ましくは60質量%以上である。これにより、良好な成形性と外観を得ることが可能となる。
【0044】
本発明において、樹脂として、熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂のいずれかを用いることが可能である。樹脂成形体が大きく、高い強度や耐熱性が求められる場合は、熱硬化性樹脂を用いることが好ましい。一方、樹脂成形体が小さく複雑形状の場合は、熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。
【0045】
本発明において、熱硬化性樹脂として、ユリア樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ケイ素樹脂から選ばれる一種以上を用いることが可能である。
【0046】
本発明において、熱可塑性樹脂として、ポリプロピレン樹脂(PP)、ポリエチレン樹脂(PE)、ポリアセタール樹脂(POM)、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)、ポリ塩化ビニル樹脂(PVC)、ポリスチレン樹脂(PS)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合樹脂(ABS)、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)、ポリアミド樹脂(PA)、ポリエーテルエーテルケトン樹脂(PEEK)、ポリトリメチレンテレフタレート樹脂(PTT)、ポリカーボネート樹脂(PC)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)(4フッ化エチレン樹脂)から選ばれる一種以上を用いることが可能である。
【0047】
本発明において、樹脂として、熱可塑性樹脂を用いるのが好ましい。さらに好ましくは、樹脂として、PP、PE、POM、PBT、PVC、ABS、PPS、PET、PMMA、PA、PCから選ばれる一種以上を用いることがより好ましい。これらのうち更により好ましいのは、PP、POM、PBT、ABS、PMMAから選ばれる一種以上である。
【0048】
本発明において、水まわり部材の表面に親水性を付与する方法は、特に限定されない。用いることができる方法として、部材(基材)として親水性の官能基を有する樹脂(アクリル樹脂、ウレタン樹脂、酢酸ビニル等)によって作られたものを利用する方法、部材(基材)表面に凹凸を付与し、構造的に親水性を付与する方法、部材(基材)表面をコロナ処理やプラズマ処理などの表面処理をすることにより親水性を付与する方法、基材の表面に親水性の表面層を形成する方法、基材に親水性材料を添加する方法などが挙げられる。
【0049】
本発明において、水まわり部材は、樹脂を主成分とする基材300(以下、単に「樹脂基材」ともいう)を含み、この樹脂基材300は親水性材料を含むことが好ましい。これにより、水まわり部材の表面を親水性とすることができる。親水性材料としては、親水フィラーを用いることができる。親水フィラーとしては、シリカ、アルミナ、ガラス、酸化チタン等を用いることができる。
【0050】
本発明において、水まわり部材200の表面に親水性領域を付与する方法として、樹脂基材300の表面に親水性の表面層を形成する方法を用いることが好ましい。これにより、水まわり部材200の表面の所望の位置に親水性を付与することが可能となる。
【0051】
親水性の表面層
本発明の水まわり部材は、樹脂基材300と、樹脂基材300の表面に形成された親水性の表面層301とを含んでいることが好ましい。親水性の表面層301を有することにより、水まわり部材200の表面に親水性領域を付与することができる。つまり、本発明の水まわり部材は、親水性の表面層301を有することにより、親水性領域を有することができる。図5は、本発明の水まわり部材200として、基材300と親水性の表面層301とを含む態様の一例を示す断面図である。この態様では、基材300の表面を親水性の表面層301が覆っている。つまり、水受け面(天面)201、端部203、立面202のすべての表面に親水性領域を備える態様である。
【0052】
本発明において、親水性の表面層301は、親水性の官能基を含む層である。本発明において、親水性の官能基としてアニオン性の官能基を含むことが好ましい。アニオン性の官能基としては、スルホン酸基、カルボキシル基およびリン酸基から選択される1種以上を用いることができる。本発明において、親水性の表面層301はスルホン酸基を含むことがさらに好ましい。これにより、表面層301の親水性をより高めることが可能となる。
【0053】
本発明において、親水性の表面層301は、基材300側よりも表面側にスルホン酸基を多く含むことが好ましい。また、親水性の表面層301は、表面側にスルホン酸基が偏析していることがさらに好ましい。これにより、親水性の表面層301が高い親水性を発揮することが可能となり、かつ親水性を長期間維持することが可能となる。
【0054】
本発明において、親水性の表面層301がスルホン酸基を含むことは、X線光電子分光法(XPS)による表面分析により判断できる。XPSにより、親水性の表面層301の表面に存在するスルホン酸基の量を検出することができる。具体的には、XPSにより検出される硫黄(S)元素の2p軌道ピークのケミカルシフトからスルホン酸基であることを同定できる。さらに、その濃度から親水性の表面層301の表面に存在するスルホン酸基の量を定量することが可能である。
【0055】
本発明の水まわり部材において、親水性の表面層301は、その表面にスルホン酸基に由来する硫黄元素が0.5at.%以上存在していることが好ましく、1.0at.%以上存在していることがさらに好ましい。
【0056】
本発明の水まわり部材において、親水性の表面層301の主成分はアクリル樹脂であることが好ましい。これにより、耐久性が高い膜とすることができるため、研磨剤入りの洗剤等を使った掃除等により負荷がかかったとしても、摩耗等を抑制でき、部材表面への水アカの固着をしにくくできる。ここで、主成分とは、層の含まれる成分量のうち、アクリル樹脂が半分以上の割合を占めることを指す。親水性の表面層301の主成分がアクリル樹脂であることは、赤外分光分析(FT―IR)によるATR法を用いて確認することができる。
【0057】
本発明において、親水性の表面層301は、塗料を硬化させて得られる塗膜であることが好ましい。塗料としては、親水性の化合物を含む塗料が好ましい。親水性の化合物としては、スルホン酸基、カルボキシル基およびリン酸基から選択される1種以上を用いることができる。親水性の化合物としては、スルホン酸基を有する化合物を用いることがさらに好ましい。具体的には、メタクリロイルオキシ基を有する直鎖アルキルスルホン酸及びその塩である2-(メタクリロイルオキシ)エタンスルホン酸、3-(メタクリロイルオキシ)プロパン-1-スルホン酸、2-(メタクリロイルオキシ)エタンスルホン酸ナトリウム塩、メタクリル酸3-スルホプロピルカリウムから選択される1種以上を用いることがさらにより好ましい。
【0058】
本発明において、親水性の表面層301を形成するための塗料として、公知の親水性塗料を用いることができる。例えば、特開2015-212324、特開2014-218612、特開2014-198754、特開2014-111745などに記載されているものを利用可能である。
【0059】
本発明において、親水性の表面層301は、厚みが0.1μm以上100μm以下であることが好ましく、厚みはさらに好ましくは、1μm以上50μm以下、さらにより好ましくは5μm以上25μm以下である。これにより、親水性を良好に発揮し、かつ基材300と親水性の表面層301との密着性を高めることができる。厚みは、表面層301の断面の顕微鏡による観察や、表面層301の膜厚を計測することにより求めることができる。
【0060】
上述した塗料を基材300に塗布する際、塗料を塗布したくない部分には、マスキングテープなどを貼り塗料が塗布されないようにすることができる。塗装方法としては、ハケ塗り、スプレーコート、ディップコート、スピンコート、カーテンコート、ロールコートなど公知の方法を用いることができる。
【実施例0061】
本発明を以下の実施例によってさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0062】
親水性塗料組成物1
以下の方法により親水性塗料組成物1を作製した。
メタクリル酸3-スルホプロピルカリウム(SPMA-K)(東京化成工業社製)0.08g(0.32mmol)を0.5gの水に溶解させた後、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(新中村化学社製 NKエステル A-DPH)7g(12mmol)と、ヒドロキシメチルメタアクリレート(富士フィルム和光純薬社製)0.4g(3.1mmol)と、光重合開始剤としてイルガキュアー500(BASF社製)0.14gと、溶媒としてメトキシエタノール15gとを加えた溶液をスターラーで60分攪拌することによって親水性塗料組成物1を作製した。
【0063】
親水性塗料組成物2
以下の方法により親水性塗料組成物2を作製した。
メタクリル酸3-スルホプロピルカリウム(SPMA-K)0.5重量部と、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート27.9重量部と、下記に示すアクリル酸エステル共重合体5.5重量部と、光重合開始剤としてOmnirad5000.55重量部と、溶媒としてメトキシエタノール50.9重量部とを加えた溶液をスターラーで60分攪拌した後、アクリル粒子(平均粒子径6μm)を、上記ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートおよびアクリル酸エステル共重合体(造膜成分)の合計重量部に対して5wt%(1.67重量部)加え、5分間撹拌することによって親水性塗料組成物2を作製した。
【化1】
【0064】
基材
以下の方法により、基材を準備した。
【0065】
基材A
大きさがA4のアクリル板の一端をアクリル板折り曲げ機(太洋電機産業社製 HA-400)を用いて加工し、天面の大きさが210×260mm、立面の大きさが210×30mm、端部の大きさが260×10mm、端部の曲率半径φが4mm、立面の下方の端と水平面との間の角度が90°である基材Aを作製した。
【0066】
基材B~F
基材Aに対し、立面の下方の端と水平面との間の角度を表1に示す角度とした以外は同様に作製した。
【0067】
基材G
浴室用カウンター部材(ABS樹脂)を準備し、これを基材Gとした。このカウンター部材は、天面の大きさが720×250mm、立面の大きさが720×20mm、端部の大きさが720×10mm、端部の曲率半径φは5mmであった。
【0068】
基材H
基材Aに対し、切削することにより端部の大きさを260×1mm、端部の曲率半径を0.5mm未満とした以外は同様に作製した。
【0069】
サンプル作製
上述の各基材に対し、親水性塗料組成物1または2をスプレー塗装により塗布した。なお、基材に対し、親水性塗料組成物を塗布しない場所には、マスキングテープを張った後、親水性塗料組成物をスプレー塗装した。親水性塗料組成物を塗布した基材を速やかに熱風乾燥炉(YAMATO科学社製DKN402)により温度70℃、乾燥時間10分の条件で加熱し溶媒を揮発させた。その後、熱風乾燥炉から取り出し、積算光量1000mJ/cmの紫外線を照射(パナソニック電工製ANUP4154)した。以上より、基材表面に厚さが約10μmの親水性塗膜を形成させた。親水性塗膜は、主成分はアクリル樹脂であり、スルホン酸基を含むものであった。また、親水性塗膜の水接触角は20°であった。
【0070】
得られた各サンプルの各面(天面、端部、立面)に対し親水性領域が形成されている割合(各面の親水性領域の形成割合)を表1に示す。
【0071】
天面(水受け面)の親水性領域の形成割合
天面の親水性領域の形成割合は、天面の表面積のうち、親水性領域が形成されている表面積の割合を示す。「100%」とは、天面の表面全てに親水性領域が形成されていることを意味する。「0%」とは、天面の表面に親水性領域が形成されていないことを意味する。
【0072】
端部の親水性領域の形成割合
端部の親水性領域の形成割合は、下記式により求めた。
端部の親水性領域の形成割合(%)=(θ端部-θ天面)/(θ端部最大-θ天面)×100
ここで、各角度は下記を意味する。
θ端部;端部上の親水性領域の下方の端における水平面と接線面との間の角度
θ天面:天面と水平面との間の角度
θ端部最大:立面の下方の端と水平面との間の角度
また、θ天面<θ端部<θ端部最大を満たす。
なお、端部の親水性領域の形成割合=50%の位置が端部の頂部を意味する。端部の親水性領域の形成割合が50%より小さいものは、端部の頂部まで親水性領域が形成されておらず、端部の水平面側の一端から端部の頂部との間に親水性領域の端があることを意味する。端部の親水性領域の形成割合が50%より大きいものは、端部の頂部を超えて親水性領域が形成されており、端部の頂部から端部の立面側の他端との間に親水性領域の端があることを意味する。「100%」とは、端面の表面全てに親水性領域が形成されていることを意味する。「0%」とは、端面の表面に親水性領域が形成されていないことを意味する。
【0073】
立面の親水性領域の形成割合
立面の親水性領域の形成割合は、立面のうち端部側の一端から下方の他端までの表面積のうち、端部側の一端を基準(0)とし、下方の他端を100とした場合の、立面の表面積に対する親水性領域が形成されている表面積の割合を示す。「0%」とは、立面の表面に親水性領域が形成されていないことを意味する。「50%」とは、立面の表面のうち端部側の一端から下方の他端の50%の位置(半分の位置)まで親水性領域が形成されていることを意味する。「100%」とは、立面の表面全てに親水性領域が形成されていることを意味する。
【0074】
【表1】
【0075】
得られたサンプルを下記の方法により評価した。
【0076】
評価1:残水性試験
各サンプルを電子天秤(島津製作所社製BW4200H)上に設置した。その際、立面がある側を傾斜の下方とし、天面と水平面との間の角度が表1に示す角度となるように設置した。シャワーヘッド(TOTO製THYC10Rシャワーモード)を用い、3.2mL/分の流量で10秒間サンプル全体が濡れるように散水した。水を止めてから5秒後のサンプルの天面上の残水重量を計測した。これを5回繰り返し、計測された5つの残水重量の平均値を天面の面積で割り、天面の単位面積当たりの残水量を算出した。これを天面上の初期の残水量L1(g/cm)とした。また、散水後のサンプルを25℃60RH%の環境下で、5分間、30分間、60分間、90分間静置した後、サンプルの天面上の残水重量を計測した。これを天面の面積で割り、天面の単位面積当たりの残水量を算出した。これを天面上の90分後の残水量L2(g/cm)とした。L1とL2を下記の式(1)に代入し、残水割合(%)を求めた。
残水割合(%)=L2/L1×100 式(1)
結果を表1に示す。
【0077】
評価2:目視評価
残水性試験において、90分間静置した後のサンプルの天面表面を目視で下記の基準に基づき評価した。結果を表1に示す。
◎:残水がない。
〇:残水によるべちゃべちゃ感がほとんど無い。
×:残水によるべちゃべちゃ感を感じる
【0078】
評価3:防汚耐久性試験
残水性試験と同様の方法にて、各サンプルの天面上に散水を行った後、天面上の水が完全に乾燥するまで放置した。これを5回繰り返した後、天面表面の状態を目視で確認した。状態に基づき、下記のように評価した。結果を表1に示す。
×:水あかの形成あり及び/または汚れ蓄積あり
〇:水あかの形成無しおよび汚れ蓄積なし
◎:さらに5回試験を繰り返した場合も、水あかの形成無しおよび汚れ蓄積なし
【符号の説明】
【0079】
90:浴槽
100:浴室
110~130:第1~第3の壁面
BS:浴槽空間
200:水まわり部材
201:水受け面(天面)
202:立面
203:端部
204:頂部
205:親水性領域
300:基材
301:親水性の表面層
図1
図2
図3
図4
図5