(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022132068
(43)【公開日】2022-09-07
(54)【発明の名称】座席占有状況検知装置及び不正着座検出システム
(51)【国際特許分類】
A47C 7/62 20060101AFI20220831BHJP
B61D 33/00 20060101ALI20220831BHJP
【FI】
A47C7/62 Z
B61D33/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021189426
(22)【出願日】2021-11-22
(31)【優先権主張番号】P 2021030039
(32)【優先日】2021-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】390010054
【氏名又は名称】コイト電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】中山 務
(72)【発明者】
【氏名】名和 博志
(72)【発明者】
【氏名】長尾 裕
(72)【発明者】
【氏名】木村 晃治
【テーマコード(参考)】
3B084
【Fターム(参考)】
3B084JA02
3B084JA08
3B084JC01
(57)【要約】
【課題】向きを180度変えられる座席にも適用可能な座席占有状況検知装置を提供する。
【解決手段】座席占有状況検知装置5は、座席1の肘掛け4aに配置され、座部2上に物体があることを検知する測距センサ6と、背凭れ3に配置され、当該背凭れ3が押圧されていることを検知するマイクロスイッチ7と、測距センサ6の検知結果とマイクロスイッチ7の検知結果とに基いて、座席1が空席か、人が着座しているか、又は荷物が置かれているかを判定する判定部8と、を備えている。判定部8は、直前状態が空席である場合に、座部2上に物体があり背凭れ3が押圧されている場合は座席1に人が着座していると判定し、座部2上に物体があり背凭れ3が押圧されていない場合は座席1に荷物が置かれていると判定し、座部2上に物体がない場合は座席1が空席であると判定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
座席の占有状況を検知する座席占有状況検知装置であって、
前記座席の肘掛けに配置され、前記座席の座部上に物体があることを検知する物体検知手段と、
前記座席の背凭れに配置され、当該背凭れが押圧されていることを検知する押圧検知手段と、
前記物体検知手段の検知結果と前記押圧検知手段の検知結果とに基いて、前記座席が空席か、人が着座しているか、又は荷物が置かれているかを判定する判定部と、を備え、
前記判定部は、直前状態が空席である場合に、前記座部上に物体があり前記背凭れが押圧されている場合は前記座席に人が着座していると判定し、前記座部上に物体があり前記背凭れが押圧されていない場合は前記座席に荷物が置かれていると判定し、前記座部上に物体がない場合は前記座席が空席であると判定する
ことを特徴とする座席占有状況検知装置。
【請求項2】
座席の占有状況を検知する座席占有状況検知装置であって、
前記座席の肘掛けに配置され、前記座席の座部上に物体があることを検知する物体検知手段と、
前記座席の背凭れに配置され、当該背凭れが押圧されていることを検知する押圧検知手段と、
前記物体検知手段の検知結果と前記押圧検知手段の検知結果とに基いて、前記座席が空席か、人が着座しているか、又は荷物が置かれているかを判定する判定部と、を備え、
前記判定部は、直前状態が空席である場合に、前記座部上に物体があり前記背凭れが第1の所定時間よりも長く押圧された場合は前記座席に人が着座していると判定し、前記座部上に物体があり前記背凭れが前記第1の所定時間よりも長く押圧されていない場合又は前記座部上に物体があり前記背凭れが押圧されていない場合は前記座席に荷物が置かれていると判定し、前記座部上に物体がない場合は前記座席が空席であると判定する
ことを特徴とする座席占有状況検知装置。
【請求項3】
前記判定部は、前記座席に人が着座していると判定した後、前記座部上に物体がある状態で前記背凭れが非押圧状態となっても人の着座状態が継続していると判定する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の座席占有状況検知装置。
【請求項4】
前記判定部は、前記座席に人が着座していると判定した後、前記座部上に物体がない状態が第2の所定時間以内あった後、再度、前記座部上に物体がある状態となった場合は人の着座状態が継続していると判定し、前記座部上に物体がない状態が前記第2の所定時間よりも長く続いた場合は前記座席が空席になったと判定する
ことを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載の座席占有状況検知装置。
【請求項5】
請求項1~4の何れか1項に記載の座席占有状況検知装置を用いた不正着座検出システムであって、
座席の発券情報と、前記座席占有状況検知装置による座席占有状況と、を照会することによって不正着座を検出する
ことを特徴とする不正着座検出システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両等の座席の占有状況を検知する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、新幹線や特急列車の指定席車両においては、車掌が定期的に巡回して発券情報に対する車内の座席占有状況を確認し、不正着座等を確認する必要があった。このような検札業務は車掌にとって大きな負荷となっており、その軽減が求められていた。
【0003】
なお、特許文献1には、貸切りバスの乗客の着座状態を確認する乗客人員検出装置が開示されている。この乗客人員検出装置は、座席の座部に設けられた着座センサと、前席の背凭れの背面又はバスの天井に設けられた赤外線センサとの両方からの検出信号に基いて、座席に乗客が着座したことを検知している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の乗客人員検出装置は、上述したように、赤外線センサが検知対象の座席の前席の背凭れの背面又はバスの天井に設けられていた。このため、特許文献1の技術を座席の向きを180度変えられる鉄道車両等の座席にそのまま適用することはできなかった。
【0006】
そこで、本発明は、向きを180度変えられる座席にも適用可能な座席占有状況検知装置、及び該座席占有状況検知装置を用いた不正着座検出システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の座席占有状況検知装置は、座席の占有状況を検知するものであって、前記座席の肘掛けに配置され、前記座席の座部上に物体があることを検知する物体検知手段と、前記座席の背凭れに配置され、当該背凭れが押圧されていることを検知する押圧検知手段と、前記物体検知手段の検知結果と前記押圧検知手段の検知結果とに基いて、前記座席が空席か、人が着座しているか、又は荷物が置かれているかを判定する判定部と、を備え、前記判定部は、直前状態が空席である場合に、前記座部上に物体があり前記背凭れが押圧されている場合は前記座席に人が着座していると判定し、前記座部上に物体があり前記背凭れが押圧されていない場合は前記座席に荷物が置かれていると判定し、前記座部上に物体がない場合は前記座席が空席であると判定することを特徴とする。
【0008】
本発明の座席占有状況検知装置は、座席の占有状況を検知するものであって、前記座席の肘掛けに配置され、前記座席の座部上に物体があることを検知する物体検知手段と、前記座席の背凭れに配置され、当該背凭れが押圧されていることを検知する押圧検知手段と、前記物体検知手段の検知結果と前記押圧検知手段の検知結果とに基いて、前記座席が空席か、人が着座しているか、又は荷物が置かれているかを判定する判定部と、を備え、前記判定部は、直前状態が空席である場合に、前記座部上に物体があり前記背凭れが第1の所定時間よりも長く押圧された場合は前記座席に人が着座していると判定し、前記座部上に物体があり前記背凭れが前記第1の所定時間よりも長く押圧されていない場合又は前記座部上に物体があり前記背凭れが押圧されていない場合は前記座席に荷物が置かれていると判定し、前記座部上に物体がない場合は前記座席が空席であると判定することを特徴とする。
【0009】
また、本発明の不正着座検出システムは、前記座席占有状況検知装置を用いたものであって、座席の発券情報と、前記座席占有状況検知装置による座席占有状況と、を照会することによって不正着座を検出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、人(乗務員等)が巡回することなく座席の占有状況を確認できる。また、本発明は、向きを180度変えられる座席にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態にかかる座席占有状況検知装置の構成図である。
【
図3】
図1の押圧検知手段の検知原理を説明するための図である。
【
図4】
図1の物体検知手段の検知原理を説明するための図である。
【
図5】
図1の判定部の判定アルゴリズムを示す図である。
【
図6】
図1の判定部が行う判定処理の一例を示すフローチャートである。
【
図7】
図1の判定部が行う判定処理の一例を示すフローチャートである。
【
図8】本発明の一実施形態にかかる不正着座検出システムのブロック図である。
【
図9】
図8の車上サーバが行う判定処理の一例を示すフローチャートである。
【0012】
本発明の一実施形態にかかる「座席占有状況検知装置」を
図1~7を参照して説明する。
【0013】
図1,2に示す座席1は、鉄道車両の客室内に設置されるものである。座席1は、座部2と、背凭れ3と、一対の肘掛け4a、4bと、を備えている。この座席1を支持した脚台には不図示のペダルが取り付けられており、このペダルを踏むことで座席1の向きを180度変えることができる。
【0014】
座席占有状況検知装置5は、複数の座席1それぞれの占有状況を検知するものである。座席占有状況検知装置5は、検知対象の座席1の肘掛け4aに配置され、座部2上に物体があることを検知する物体検知手段6と、検知対象の座席1の背凭れ3内部に配置され、当該背凭れ3が押圧されていることを検知する押圧検知手段7と、物体検知手段6の検知結果と押圧検知手段7の検知結果とに基いて、座席1が空席か、人が着座しているか、又は荷物が置かれているかを判定する判定部8と、を備えている。
【0015】
物体検知手段6と押圧検知手段7は各座席1毎に設けられている。即ち、本発明の座席占有状況検知装置5は、検知対象の座席1自身に物体検知手段6と押圧検知手段7が設けられている。よって、座席1の向きに関わらず当該座席1の占有状況を検知することができる。また、判定部8は複数の座席1に対して共通で設けられている。
【0016】
本例の物体検知手段6は、投光素子から投光された光の反射光を受光素子で検出する光センサで構成されている。また、本例においては、光センサの中でも安価な測距センサを採用している。
図3中の符号61は、測距センサ6の透光窓であり、符号62は投光素子であり、符号63は受光素子である。透光窓61は肘掛け4aの内側面に設けられている。投光素子62からの光は、透光窓61を透過して肘掛け4b側に投光される。座部2上に物体がある場合、投光素子62からの光が物体に反射して透光窓61を透過して受光素子63に受光される。これにより、座部2上に物体があることが検知される。
【0017】
さらに、本例においては、コストを抑えつつ検知範囲をできるだけ広くするために、
図4に示すように、物体検知手段としての測距センサ6を一つのみ用い、投光素子62から斜め後ろ方向に光Lが投光されるように測距センサ6を設置している。詳細には、単一の測距センサ6を片側の肘掛け4aの前端下部に配置し、投光素子62からの光Lが座部2の左前の角近傍から右後ろの角近傍に向かって対角上に投光されるようにしている。なお、前述した前後左右方向は、座席1の着座者からみた方向である。
【0018】
上記構成の測距センサ6は、人が着座している場合は確実に検知することができ、
図4中に一点鎖線で示す鞄11や二点鎖線で示す鞄12が置かれている場合もほぼ検知することができる。なお、
図4に示した例では投光素子62から斜め後ろ方向に光Lが投光されるように測距センサ6を設置しているが、投光素子62から斜め前方向に光Lが投光されるように測距センサ6を設置してもよい。
【0019】
本例の押圧検知手段7は、
図1~3に示すように、測距センサ(即ち物体検知手段)6よりも高い位置に配置されている。このように配置することで、背凭れ3が人間の背中で押圧されている際に押圧状態を検知し、背凭れ3の低い位置に荷物が当たっている際には押圧検知手段7が反応しないようにすることができる。
【0020】
また、本例においては、コストを抑えるために、押圧検知手段7としてマイクロスイッチを採用している。このマイクロスイッチ7は、
図3に示すように、ケース71と、ケース71内に設けられた接点部72と、ケース71から突出し、背凭れ3への押圧力を接点部72に伝達するレバー73(アクチュエータ部)と、を備えている。
【0021】
背凭れ3は、背枠31と、背枠31を覆ったクッション材32と、で構成されている。上記マイクロスイッチ7は、背枠31に固定されており、背凭れ3が人間の背中等で押圧されることでレバー73が変位して接点部72を開閉する。これにより、背凭れ3が押圧されていることを検知する。
【0022】
さらに、本例においては、マイクロスイッチ7の反応をよくするために、レバー73とクッション材32との間に板9を設けており、この板9でレバー73を押圧するようにしている。板9は、マイクロスイッチ7よりも大きいサイズとされている。このように板9を介することで、乗客の背中がマイクロスイッチ7近傍のクッション材32を押圧しなくてもマイクロスイッチ7が反応する。よって、乗客が身長の低い子供であってもマイクロスイッチ7が反応する。
【0023】
図5の表は、判定部8の基本的な判定アルゴリズムを示している。判定部8は、座部2上に物体があり(測距センサ○)、背凭れ3が押圧されている(マイクロスイッチ○)場合は座席1に人が着座していると判定する。また、座部2上に物体があり(測距センサ○)、背凭れ3が押圧されていない(マイクロスイッチ×)場合は座席1に荷物が置かれていると判定する。この判定の根拠は、通常、人は座席1に着座した直後に背凭れ3に凭れかかるが、荷物を座席1に置いた場合、重力で荷重は下向きにかかり、背凭れ3を後ろに押圧する力はかからないからである。また、座部2上に物体がなく(測距センサ×)、背凭れ3が押圧されていない(マイクロスイッチ×)場合は座席1が空席であると判定する。なお、座部2上に物体がない(測距センサ×)場合に背凭れ3が押圧されている(マイクロスイッチ○)ことは通常あり得ないので、実際には、座部2上に物体がなければ座席1が空席であると判定する。
【0024】
また、本例においては、座席占有状況の検知精度を向上させるために、判定部8が以下に説明する判定処理を行っている。以下、
図6,7のフローチャートを参照して判定処理の流れを説明する。
【0025】
図6のフローチャートは、直前状態が空席である場合の判定処理である。判定部8は、ステップS1において、測距センサ6の検知結果に基づいて、座部2上に物体があるか否かを判定する。座部2上に物体がないと判定した場合は、ステップS1の判定を繰り返す。座部2上に物体があると判定した場合は、ステップS2に進む。
【0026】
ステップS2においては、マイクロスイッチ7の検知結果に基づいて、背凭れ3が押圧状態か否かを判定する。背凭れ3が押圧状態ではないと判定した場合は、ステップS3に進み、座席1に荷物が置かれていると判定する。なお、座席1に荷物が置かれていると判定した後は、座部2上に物体があるか否かの判定を繰り返し、座部2上に物体がない状態となった場合は、座席1が空席になった(荷物による座席1の占有状態が解除された)と判定する。
【0027】
ステップS2において、背凭れ3が押圧状態であると判定した場合は、ステップS4に進み、タイマーをセットして背凭れ押圧状態の継続時間をカウント開始する。続いて、ステップS5に進み、再度、背凭れ3が押圧状態か否かを判定する。背凭れ3が押圧状態ではないと判定した場合は、ステップS3に進み、座席1に荷物が置かれていると判定する。
【0028】
ステップS5において、背凭れ3が押圧状態であると判定した場合は、ステップS6に進み、押圧状態の継続時間が2秒(第1の所定時間)よりも長いか否かを判定する。なお、本例では「2秒」よりも長いか否かを判定しているが、これは一例であり、任意の時間を設定することができる。
【0029】
ステップS6において、押圧状態の継続時間が2秒以下であると判定した場合は、ステップS5に戻る。押圧状態の継続時間が2秒よりも長いと判定した場合は、ステップS7に進み、座席1に人が着座していると判定する。また、判定部8は、ステップS3,S7での判定結果を、例えば車掌が所持する携帯端末に送信する。
【0030】
このように、判定部8は、直前状態が空席である場合に、座部2上に物体があり背凭れ3が所定時間(「第1の所定時間」であり、例えば2秒)よりも長く押圧された場合は座席1に人が着座していると判定し、座部2上に物体があり背凭れ3が所定時間よりも長く押圧されていない場合は座席1に荷物が置かれていると判定する。このように判定することで、座席1に荷物を置いた際の瞬間的に背凭れ3に衝撃が加わった動作を、人の着座判定から除外することができ、検知精度を高められる。
【0031】
図7のフローチャートは、座席1に人が着座していると判定した後の判定処理である。判定部8は、ステップS7の判定後、ステップS8に進み、座部2上に物体があるか否かを判定する。座部2上に物体があると判定した場合は、ステップS7に戻り、座席1に人が着座していると判定する。即ち、着座状態が継続していると判定する。
【0032】
なお、乗客は、座席1に着座している状態で背凭れ3から背中を離すこともある。よって、判定部8は、座席1に人が着座していると判定した後は、座部2上に物体がある限り、背凭れ3が非押圧状態となっても人の着座状態が継続していると判定する。
【0033】
ステップS8において、座部2上に物体がないと判定した場合は、ステップS9に進み、タイマーをセットして座部2上に物体がない状態の継続時間をカウント開始する。続いて、ステップS10に進み、再度、座部2上に物体があるか否かを判定する。座部2上に物体があると判定した場合は、ステップS7に戻り、座席1に人が着座していると判定する。即ち、着座状態が継続していると判定する。
【0034】
ステップS10において、座部2上に物体がないと判定した場合は、ステップS11に進み、座部2上に物体がない状態の継続時間が2秒(第2の所定時間)よりも長いか否かを判定する。なお、本例では「2秒」よりも長いか否かを判定しているが、これは一例であり、任意の時間を設定することができる。
【0035】
ステップS11において、座部2上に物体がない状態の継続時間が2秒以下であると判定した場合は、ステップS10に戻る。座部2上に物体がない状態の継続時間が2秒よりも長いと判定した場合は、ステップS12に進み、座席1が空席になったと判定する。また、判定部8は、ステップS12での判定結果を、例えば車掌が所持する携帯端末に送信する。
【0036】
このように、判定部8は、座席1に人が着座していると判定した後、座部2上に物体がない状態が所定時間(「第2の所定時間」であり、例えば2秒)以内あった後、再度、座部2上に物体がある状態となった場合は人の着座状態が継続していると判定し、座部2上に物体がない状態が所定時間よりも長く続いた場合は座席1が空席になったと判定する。このように判定することで、座席1に着座している人が座り直した動作を、空席判定から除外することができ、検知精度を高められる。
【0037】
以上説明したように、本例の座席占有状況検知装置5によれば、安価な部品を用いた簡素な構成ながらも、上述した様々な工夫により、高い検知精度で座席1の占有状況を検知することができる。この座席占有状況検知装置5を用いることにより、車掌が車内巡回することなく各座席1の占有状況を確認できるので、車掌の検札業務を軽減することができる。
【0038】
上述した実施形態では、一人掛けの座席を例に説明したが、本発明の座席占有状況検知装置は、複数の座席が横並び配置されて一の台枠に支持されたタイプの各座席にも適用することができる。二人掛け、三人掛けの座席に適用する際は、物体検知手段と押圧検知手段を各座席毎に設ける。その際、物体検知手段として光センサを用いる場合は、各光センサは、検知対象の座席の座部上のみを検出範囲とし、隣の座席を検出範囲に含まないように設定される。また、判定部は、一の台枠に支持された複数の座席(二人掛け座席の場合は二つの座席)に対して共通で設けられることが好ましい。さらに、物体検知手段及び押圧検知手段と判定部との通信が送受信部を介して行われている場合は、この送受信部も一の台枠に支持された複数の座席に対して共通で設けられることが好ましい。
【0039】
上述した実施形態では、押圧検知手段としてマイクロスイッチを採用していたが、マイクロスイッチ以外に押圧によってON-OFFの切り替えが出来る押しボタンスイッチであってもよい。また、マイクロスイッチ以外に、例えば、背凭れに加えられた荷重を感知するセンサ等(感圧素子等)を用いることができる。
【0040】
上述した座席占有状況検知装置5は、
図8に示す不正着座検出システム100を構成する。
図8に示すように、不正着座検出システム100は、鉄道車両に搭載された受信部101と、座席占有状況検知装置5と、鉄道車両に搭載された車上サーバ102と、表示部103と、を備えている。受信部101は、駅舎等から送信された各座席1の発券情報(指定券等の切符が購入されていることを意味する情報である)を受信する。表示部103は、例えば車掌が所持する携帯端末や車掌室に設置された端末である。車上サーバ102は、受信部101、座席占有状況検知装置5、及び表示部103と接続されており、受信部101から取り込んだ各座席1の発券情報と、座席占有状況検知装置5から取り込んだ各座席1の座席占有状況と、を照会することによって各座席1における不正着座を検出し、表示部103に出力する。以下、
図9のフローチャートを参照して不正着座の判定処理の流れを説明する。
【0041】
車上サーバ102は、
図9のフローチャートのステップS101において、各座席1毎に発券情報があるか否かを判定する。発券情報があると判定した場合は、ステップS102に進む。発券情報がないと判定した場合は、ステップS103に進む。
【0042】
ステップS102においては、各座席1毎に人の着座が検知されたか否かを判定する。着座が検知されたと判定した場合は、ステップS104に進み、判定対象の座席1に人が着座している旨を表示部103に出力する。着座が検知されなかったと判定した場合は、ステップS105に進み、判定対象の座席1が空席である旨を表示部103に出力する。
【0043】
ステップS103においては、各座席1毎に人の着座が検知されたか否かを判定する。着座が検知されたと判定した場合は、ステップS106に進み、判定対象の座席1に人が不正着座している旨を表示部103に出力する。着座が検知されなかったと判定した場合は、ステップS107に進み、判定対象の座席1が空席である旨を表示部103に出力する。
【0044】
以上説明したように、本例の不正着座検出システム100によれば、車掌が車内巡回することなく、表示部103を見ることによって各座席1の不正着座を確認できるので、車掌の検札業務を軽減することができる。なお、車掌は、当該不正着座検出システム100によって不正着座と判定された座席1に向かい、着座者に声をかけることで、キセル行為を調べるだけでなく、座席の座り間違いを発見したり、乗客の乗り過ごしを発見したりすることができ、サービス向上に役立てることができる。
【0045】
上述した実施形態では、各座席毎の発券情報の有無を判定した後に各座席毎の着座検知の有無を判定していたが、本発明の不正着座検出システムは、各座席毎の着座検知の有無を判定した後に各座席毎の発券情報の有無を判定してもよい。
【0046】
なお、前述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。すなわち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0047】
1 座席
2 座部
3 背凭れ
4a,4b 肘掛け
5 座席占有状況検知装置
6 測距センサ(物体検知手段)
7 マイクロスイッチ(押圧検知手段)
8 判定部
100 不正着座検出システム