(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022013207
(43)【公開日】2022-01-18
(54)【発明の名称】離型フィルム用コーティング組成物、離型フィルム用コーティング、離型フィルムおよび離型フィルム付き物品
(51)【国際特許分類】
C09D 133/16 20060101AFI20220111BHJP
C09D 133/06 20060101ALI20220111BHJP
C09D 133/02 20060101ALI20220111BHJP
C08F 220/28 20060101ALI20220111BHJP
【FI】
C09D133/16
C09D133/06
C09D133/02
C08F220/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020115617
(22)【出願日】2020-07-03
(71)【出願人】
【識別番号】000135265
【氏名又は名称】株式会社ネオス
(74)【代理人】
【識別番号】110000165
【氏名又は名称】グローバル・アイピー東京特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】竹本 裕徳
(72)【発明者】
【氏名】平松 信志
【テーマコード(参考)】
4J038
4J100
【Fターム(参考)】
4J038CG031
4J038CG041
4J038CH041
4J038CH251
4J038GA03
4J038GA12
4J038JB36
4J038KA03
4J038MA08
4J038MA10
4J038NA10
4J038PA18
4J038PC08
4J100AL05P
4J100AL08S
4J100AL09R
4J100AL74Q
4J100BA02Q
4J100BA08S
4J100BA15Q
4J100BB07Q
4J100BB18Q
4J100BC43Q
4J100CA06
4J100JA01
(57)【要約】
【課題】有機溶剤系ではなく、水溶液系または水分散液系の離型フィルム用コーティング組成物と、離型性ならびに加熱後の離型性に優れた離型フィルム用コーティング、および作業性の向上した離型フィルムを提供すること。さらに、離型フィルムを貼付した離型フィルム付き物品を提供すること。
【解決手段】含フッ素(メタ)アクリレートモノマーに由来する基 1重量部に対し、
長鎖アルキル(メタ)アクリレートモノマーに由来する基 2~50重量部、および
水酸基またはカルボキシ基を有する親水性(メタ)アクリレートモノマーに由来する基 0.1~10重量部を少なくとも構成要素として含むポリマーが、水溶性または水分散性の架橋剤を含む水系液体に分散した、離型フィルム用コーティング組成物、離型フィルム用コーティング組成物を用いて形成した離型フィルム用コーティング、離型フィルムならびに離型フィルム付き物品。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
含フッ素(メタ)アクリレートモノマーに由来する基 1重量部に対し、
長鎖アルキル(メタ)アクリレートモノマーに由来する基 2~50重量部、および
水酸基またはカルボキシ基を有する親水性(メタ)アクリレートモノマーに由来する基 0.1~10重量部を少なくとも構成要素として含むポリマーが、水溶性または水分散性の架橋剤を含む水系液体に分散した、離型フィルム用コーティング組成物。
【請求項2】
該含フッ素(メタ)アクリレートモノマーに由来する基が、以下の式1:
【化1】
(式中、R
1は、水素またはメチル基であり;
R
x11は、炭素数1~20の二価の基であって、各々酸素原子、窒素原子または硫黄原子を含んでいてもよい芳香族基、脂環族炭化水素基または脂肪族炭化水素基、またはこれらの置換基の組み合わせであり;
R
x12は、炭素数1~20の二価の基であって、各々酸素原子、窒素原子または硫黄原子を含んでいてもよい芳香族基、脂環族炭化水素基または脂肪族炭化水素基、またはこれらの置換基の組み合わせであり;
R
fは、フッ素原子を含む一価の基であって、以下の式1-1または1-2:
【化2】
【化3】
で表される基である。)で表される基であり;
該長鎖アルキル(メタ)アクリレートモノマーに由来する基が、以下の式2:
【化4】
(式中、R
2は、水素またはメチル基であり;
R
x2は、炭素数10~30の一価の基であって、直鎖または分岐鎖の脂肪族炭化水素基である。)で表される基であり;
該水酸基またはカルボキシ基を有する親水性(メタ)アクリレートモノマーに由来する基が、以下の式3:
【化5】
(式中、R
3は、水素またはメチル基であり;
R
x3は、炭素数1~25の二価の基であって、直鎖または分岐鎖の脂肪族炭化水素基であり、該R
x3の中にエーテル結合を含んでいてよく;
Yは、水酸基またはカルボキシ基である。)で表される基であり;
該水溶性または水分散性の架橋剤が、メラミン樹脂誘導体、ベンゾグアナミン樹脂誘導体および尿素樹脂誘導体からなる群より選択される、請求項1に記載の離型フィルム用コーティング組成物。
【請求項3】
含フッ素(メタ)アクリレートモノマーに由来する基 1重量部に対し、
長鎖アルキル(メタ)アクリレートモノマーに由来する基 2~50重量部、および
水酸基またはカルボキシ基を有する親水性(メタ)アクリレートモノマーに由来する基 0.1~10重量部を少なくとも構成要素として含むポリマーが、架橋剤で架橋されてなる、離型フィルム用コーティング。
【請求項4】
該含フッ素(メタ)アクリレートモノマーに由来する基が、以下の式1:
【化6】
(式中、R
1は、水素またはメチル基であり;
R
x11は、炭素数1~20の二価の基であって、各々酸素原子、窒素原子または硫黄原子を含んでいてもよい芳香族基、脂環族炭化水素基または脂肪族炭化水素基、またはこれらの置換基の組み合わせであり;
R
x12は、炭素数1~20の二価の基であって、各々酸素原子、窒素原子または硫黄原子を含んでいてもよい芳香族基、脂環族炭化水素基または脂肪族炭化水素基、またはこれらの置換基の組み合わせであり;
R
fは、フッ素原子を含む一価の基であって、以下の式1-1または1-2:
【化7】
【化8】
で表される基である。)で表される基であり;
該長鎖アルキル(メタ)アクリレートモノマーに由来する基が、以下の式2:
【化9】
(式中、R
2は、水素またはメチル基であり;
R
x2は、炭素数10~30の一価の基であって、直鎖または分岐鎖の脂肪族炭化水素基である。)で表される基であり;
該水酸基またはカルボキシ基を有する親水性(メタ)アクリレートモノマーに由来する基が、以下の式3:
【化10】
(式中、R
3は、水素またはメチル基であり;
R
x3は、炭素数1~25の二価の基であって、直鎖または分岐鎖の脂肪族炭化水素基であり、該R
x3の中にエーテル結合を含んでいてよく;
Yは、水酸基またはカルボキシ基である。)で表される基であり;
該架橋剤が、メラミン樹脂誘導体、ベンゾグアナミン樹脂誘導体および尿素樹脂誘導体からなる群より選択される、請求項3に記載の離型フィルム用コーティング。
【請求項5】
含フッ素(メタ)アクリレートモノマーに由来する基 1重量部に対し、
長鎖アルキル(メタ)アクリレートモノマーに由来する基 2~50重量部、および
水酸基またはカルボキシ基を有する親水性(メタ)アクリレートモノマーに由来する基 0.1~10重量部を少なくとも構成要素として含むポリマーが、水溶性または水分散性の架橋剤を含む水系液体に分散した、離型フィルム用コーティング組成物を、基材に塗布し、加熱乾燥してなる、離型フィルム。
【請求項6】
該含フッ素(メタ)アクリレートモノマーに由来する基が、以下の式1:
【化11】
(式中、R
1は、水素またはメチル基であり;
R
x11は、炭素数1~20の二価の基であって、各々酸素原子、窒素原子または硫黄原子を含んでいてもよい芳香族基、脂環族炭化水素基または脂肪族炭化水素基、またはこれらの置換基の組み合わせであり;
R
x12は、炭素数1~20の二価の基であって、各々酸素原子、窒素原子または硫黄原子を含んでいてもよい芳香族基、脂環族炭化水素基または脂肪族炭化水素基、またはこれらの置換基の組み合わせであり;
R
fは、フッ素原子を含む一価の基であって、以下の式1-1または1-2:
【化12】
【化13】
で表される基である。)で表される基であり;
該長鎖アルキル(メタ)アクリレートモノマーに由来する基が、以下の式2:
【化14】
(式中、R
2は、水素またはメチル基であり;
R
x2は、炭素数10~30の一価の基であって、直鎖または分岐鎖の脂肪族炭化水素基である。)で表される基であり;
該水酸基またはカルボキシ基を有する親水性(メタ)アクリレートモノマーに由来する基が、以下の式3:
【化15】
(式中、R
3は、水素またはメチル基であり;
R
x3は、炭素数1~25の二価の基であって、直鎖または分岐鎖の脂肪族炭化水素基であり、該R
x3の中にエーテル結合を含んでいてよく;
Yは、水酸基またはカルボキシ基である。)で表される基であり;
該水溶性または水分散性の架橋剤が、メラミン樹脂誘導体、ベンゾグアナミン樹脂誘導体および尿素樹脂誘導体からなる群より選択される、請求項5に記載の離型フィルム。
【請求項7】
請求項5または6に記載された離型フィルムを成形物品の表面に貼付した、離型フィルム付き物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、離型フィルム用コーティング組成物、離型フィルム用コーティング、離型フィルムならびに離型フィルム付き物品に関するものである。具体的には、非シリコーン系の離型フィルム用コーティング組成物を用い、離型性、加熱後の離型性、貯蔵安定性に優れた離型コーティング組成物を利用した離型フィルムならびに離型フィルムを貼付した物品に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂フィルムの少なくとも片面に離型層を設けた積層フィルムは、工業分野において、あるいは医療分野において、広く使用されている。たとえば、粘着剤などの塗工面を保護するセパレーター、パネル部材製造工程用フィルム、セラミック電子部品製造工程用フィルムのような光学・電子部品製造工程用フィルム、樹脂成形品の製造工程用フィルム、加飾用の転写フィルム等の工業用途に用いられている。一方、医療分野においては、医療用テープやハップ剤の保護フィルムとして用いられている。離型層を有する積層フィルムは、ポリエステルフィルム等のフィルム基材の少なくとも片面に、離型コーティング剤を塗工して離型層を形成したものである。離型コーティング剤としては、従来からシリコーン系の成分を含む離型コーティング剤がよく用いられていた。
【0003】
しかしながら、シリコーン系の離型剤を用いた場合には、被着体へのシリコーンの移行すなわち転着により、電子機器の誤作動が惹起される等の、シリコーンによる汚染の問題が認識されるようになり、非シリコーン系の離型剤を用いた離型コーティング剤や離型フィルムの開発が求められている。
【0004】
特許文献1には、熱硬化性樹脂、架橋剤、離型剤を含有する熱硬化性離型コーティング剤が開示されている。特許文献1には、熱硬化性樹脂としてアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン樹脂等を使用し、架橋剤としてメラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、尿素樹脂等を使用し、離型剤としてアクリル共重合体を使用することが開示されている。特許文献1に開示されたこれらの成分は、所望により、炭化水素系やエステル系等の有機溶剤で希釈して用いられる。特許文献1の離型コーティング剤により形成した離型コーティングは、離型性ならびに加熱後の離型性に優れており、離型コーティング剤の貯蔵安定性も向上している。
【0005】
しかしながら、近年、作業員の安全や、職場環境の維持等の問題に鑑み、有機溶剤系ではない新しい離型コーティング組成物、すなわち、水を溶媒とする水溶液系または水分散液系の離型コーティング組成物の開発が望まれるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、有機溶剤系ではなく、水溶液系または水分散液系の離型フィルム用コーティング組成物と、離型性ならびに加熱後の離型性に優れた離型フィルム用コーティング、および作業性の向上した離型フィルムを提供する。さらに、本発明の離型フィルムを貼付した離型フィルム付き物品を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第一の実施形態は、含フッ素(メタ)アクリレートモノマーに由来する基1重量部に対し、長鎖アルキル(メタ)アクリレートモノマーに由来する基を2~50重量部;および水酸基またはカルボキシ基を有する親水性(メタ)アクリレートモノマーに由来する基を0.1~10重量部;を少なくとも構成要素として含むポリマーが、水溶性または水分散性の架橋剤を含む水系液体に分散した、離型フィルム用コーティング組成物である。
本発明の第二の実施形態は、含フッ素(メタ)アクリレートモノマーに由来する基1重量部に対し、長鎖アルキル(メタ)アクリレートモノマーに由来する基を2~50重量部;および水酸基またはカルボキシ基を有する親水性(メタ)アクリレートモノマーに由来する基を0.1~10重量部;を少なくとも構成要素として含むポリマーが、架橋剤で架橋されてなる、離型フィルム用コーティングである。
本発明の第三の実施形態は、含フッ素(メタ)アクリレートモノマーに由来する基1重量部に対し、長鎖アルキル(メタ)アクリレートモノマーに由来する基を2~50重量部;および水酸基またはカルボキシ基を有する親水性(メタ)アクリレートモノマーに由来する基を0.1~10重量部;を少なくとも構成要素として含むポリマーが、水溶性または水分散性の架橋剤を含む水系液体に分散した、離型フィルム用コーティング組成物を、基材に塗布し、加熱乾燥してなる、離型フィルムである。
本発明の第四の実施形態は、離型フィルムを成形物品の表面に貼付した、離型フィルム付き物品である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の離型フィルム用コーティング組成物には、シリコーン系化合物を含まないため、シリコーン汚染の問題を生じない。また本発明の離型フィルム用コーティング組成物は水系液体がベースであり、労働環境や作業員の安全を確保することができるほか、室温で安定で、貯蔵安定性にも優れている。本発明の離型フィルム用コーティングおよび離型フィルムは、離型性ならびに加熱後の離型性に優れている。本発明の離型フィルムは、物品が使用されるまでの間、物品の表面の保護膜として、離型フィルム用コーティングの面を物品側に貼付して用いることができる。そこで本発明の離型フィルム付き物品は、離型フィルムによる表面保護により傷がつきにくい。また、物品の使用に際して離型フィルムを剥離した場合は、剥離力が小さく、コーティング成分の転着も少なくきれいに剥がれるので、離型フィルムによる物品の外観や性能の低下が殆どない。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<離型フィルム用コーティング組成物>
第一の実施形態にかかる離型フィルム用コーティング組成物は、含フッ素(メタ)アクリレートモノマーに由来する基:1重量部に対し、長鎖アルキル(メタ)アクリレートモノマーに由来する基:2~50重量部、および水酸基またはカルボキシ基を有する親水性(メタ)アクリレートモノマーに由来する基:0.1~10重量部を少なくとも構成要素として含むポリマーが、水溶性または水分散性の架橋剤を含む水系液体に分散したものである。実施形態において、離型フィルムとは、樹脂製のフィルム基材の少なくとも片面に離型層を設けた積層フィルムのことである。離型フィルム用コーティング組成物とは、離型フィルムの少なくとも片面に設けられた離型層を形成するための被覆剤のことであり、通常は複数の成分が含まれた組成物である。離型フィルム用コーティング組成物は、樹脂製のフィルムなどに代表される基材の表面上に塗布ならびに硬化されて、離型層を形成することができる。実施形態の離型フィルム用コーティング組成物は、ポリマー成分と、水溶性または水分散性の架橋剤とを水系液体に含む。離型フィルム用コーティング組成物の主成分であるポリマーは、数平均分子量が10,000~100,000程度の重合体であり、特に数平均分子量が30,000~60,000程度のポリマーが好適に用いられる。ポリマーは、構成成分として、含フッ素(メタ)アクリレートモノマーに由来する基と、長鎖アルキル(メタ)アクリレートモノマーに由来する基と、水酸基またはカルボキシ基を有する親水性(メタ)アクリレートモノマーに由来する基とを含む。すなわち、実施形態で使用するポリマーは、含フッ素(メタ)アクリレートモノマーと、長鎖アルキル(メタ)アクリレートモノマーと、水酸基またはカルボキシ基を有する親水性(メタ)アクリレートモノマーとの共重合体である。なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」の記載は、アクリレートまたはメタクリレート、という意味である。たとえば、「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸またはメタクリル酸のことであり、「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイルまたはメタクリロイルのことであり、「(メタ)アクリルアミド」は、アクリルアミドまたはメタクリルアミドのことである。
【0011】
<含フッ素(メタ)アクリレートモノマーに由来する基>
実施形態のポリマーの構成成分の一つは、含フッ素(メタ)アクリレートモノマーに由来する基である。本明細書にて、含フッ素(メタ)アクリレートモノマーとは、フッ素原子を1つ以上末端に含有するアルコール化合物と、アクリル酸またはメタクリル酸とがエステル反応して結合した構造を有するモノマーのことを云う。含フッ素(メタ)アクリレートモノマーに由来する基とは、含フッ素アクリレートモノマーの重合性置換基であるアクリル基または含フッ素メタクリレートモノマーの重合性置換基であるメタクリル基が付加重合により重合し、含フッ素アクリレートモノマーあるいは含フッ素メタクリレートモノマーがポリマーの一部に取り込まれた状態を表す語である。含フッ素(メタ)アクリレートモノマーに由来する基は、具体的には以下の式1:
【化1】
(式中、R
1は、水素またはメチル基であり;
R
x11は、炭素数1~20の二価の基であって、各々酸素原子、窒素原子または硫黄原子を含んでいてもよい芳香族基、脂環族炭化水素基または脂肪族炭化水素基、またはこれらの置換基の組み合わせであり;
R
x12は、炭素数1~20の二価の基であって、各々酸素原子、窒素原子または硫黄原子を含んでいてもよい芳香族基、脂環族炭化水素基または脂肪族炭化水素基、またはこれらの置換基の組み合わせであり;
R
fは、フッ素原子を含む一価の基であって、以下の式1-1または1-2:
【化2】
【化3】
で表される基である。)で表される基である。
式1において、R
x11およびR
x12は、各々独立に、以下の各式:
【化4】
(式中、n1は、1~20の数である。);
【化5】
(式中、Aは、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、ハロゲン原子からなる群より選択される置換基を1~3つ有していてもよいフェニレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基、シクロヘキセニレン基またはシクロペンタジエニレン基である。);
【化6】
(式中、Aは、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、ハロゲン原子からなる群より選択される置換基を1~3つ有していてもよいフェニレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基、シクロヘキセニレン基またはシクロペンタジエニレン基であり、Bは、-O-CO-、-CO-O-、-CO-NH-、および-NH-CO-からなる群より選択される基であり、n2は、1~13の数である。);
【化7】
(式中、Aは、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、ハロゲン原子からなる群より選択される置換基を1~3つ有していてもよいフェニレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基、シクロヘキセニレン基またはシクロペンタジエニレン基であり、n3は、1~14の数である。);
【化8】
(式中、n4は1~9の数である。);および
【化9】
(式中、Aは、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、ハロゲン原子からなる群より選択される置換基を1~3つ有していてもよいフェニレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基、シクロヘキセニレン基またはシクロペンタジエニレン基であり、n5は、1~6の数である。)で表される基からなる群より選択されることが好ましい。
【0012】
式1において、R
x11およびR
x12は、各々独立に、以下の各式:
【化10】
(式中、n6は1~10の数である。);
【化11】
【化12】
(式中、n7は1~10の数である。);
【化13】
(式中、n8は1~10の数である。);
【化14】
(式中、n9は1~9の数である。);および
【化15】
(式中、n10は1~6の数である。)で表される基からなる群より選択される基であることが非常に好ましい。
【0013】
<長鎖アルキル(メタ)アクリレートモノマーに由来する基>
実施形態のポリマーの構成成分の一つは、長鎖アルキル(メタ)アクリレートモノマーに由来する基である。本明細書にて、長鎖アルキル(メタ)アクリレートモノマーとは、長鎖アルキルアルコール化合物と、アクリル酸またはメタクリル酸とがエステル反応して結合した構造を有するモノマーのことを云う。長鎖アルキル(メタ)アクリレートモノマーに由来する基とは、長鎖アルキルアクリレートモノマーの重合性置換基であるアクリル基または長鎖アルキルメタクリレートモノマーの重合性置換基であるメタクリル基が付加重合により重合し、長鎖アルキルアクリレートモノマーあるいは長鎖アルキルメタクリレートモノマーが、ポリマーの一部に取り込まれた状態を表す語である。長鎖アルキル(メタ)アクリレートモノマーに由来する基は、具体的には以下の式2:
【化16】
(式中、R
2は、水素またはメチル基であり;
R
x2は、炭素数10~30の一価の基であって、直鎖または分岐鎖の脂肪族炭化水素基である。)で表される基である。
【0014】
<水酸基またはカルボキシ基を有する親水性(メタ)アクリレートモノマーに由来する基>
実施形態のポリマーの構成成分の一つは、水酸基またはカルボキシ基を有する親水性(メタ)アクリレートモノマーに由来する基である。本明細書にて、水酸基またはカルボキシ基を有する親水性(メタ)アクリレートモノマーとは、水酸基またはカルボキシ基をそれぞれ1つ以上末端に含有するアルコール化合物と、アクリル酸またはメタクリル酸とがエステル反応して結合した構造を有するモノマーのことを云う。また本明細書にて、親水性とは、水溶性であるか、少なくとも水に親和性を有する置換基を有する化合物であることを意味する。水酸基またはカルボキシ基を有する親水性(メタ)アクリレートモノマーに由来する基とは、水酸基またはカルボキシ基を有する親水性アクリレートモノマーの重合性置換基であるアクリル基または水酸基またはカルボキシ基を有する親水性メタクリレートモノマーの重合性置換基であるメタクリル基が付加重合により重合し、水酸基またはカルボキシ基を有する親水性アクリレートモノマーあるいは水酸基またはカルボキシ基を有する親水性メタクリレートモノマーが、ポリマーの一部に取り込まれた状態を表す語である。水酸基またはカルボキシ基を有する親水性(メタ)アクリレートモノマーに由来する基は、具体的には以下の式3:
【化17】
(式中、R
3は、水素またはメチル基であり;
R
x3は、炭素数1~25の二価の基であって、直鎖または分岐鎖の脂肪族炭化水素基であり、該R
x3の中にエーテル結合を含んでいてよく;
Yは、水酸基またはカルボキシ基である。)で表される基である。
【0015】
ポリマー中、含フッ素(メタ)アクリレートモノマーに由来する基と、長鎖アルキル(メタ)アクリレートモノマーに由来する基と、水酸基またはカルボキシ基を有する親水性(メタ)アクリレートモノマーに由来する基は、含フッ素(メタ)アクリレートモノマーに由来する基1重量部に対して、長鎖アルキル(メタ)アクリレートモノマーに由来する基2~50重量部、水酸基またはカルボキシ基を有する親水性(メタ)アクリレートモノマーに由来する基0.1~10重量部の割合で含まれていることが好ましい。また、含フッ素(メタ)アクリレートモノマーと、長鎖アルキル(メタ)アクリレートモノマーと、水酸基またはカルボキシ基を有する親水性(メタ)アクリレートモノマーは、任意の順序で重合されており、したがって、ポリマーにおいて、含フッ素(メタ)アクリレートモノマーに由来する基と、長鎖アルキル(メタ)アクリレートモノマーに由来する基と、水酸基またはカルボキシ基を有する親水性(メタ)アクリレートモノマーに由来する基は、任意の順で結合されている。
【0016】
本実施形態で用いるポリマーは、合成することができる。たとえば、含フッ素(メタ)アクリレートモノマーは、水酸基を末端に有するメタクリレート化合物(ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等)と、含フッ素酸クロライド化合物とをエステル化することにより得ることができる。また、長鎖アルキル(メタ)アクリレートモノマーとして、ステアリル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート(別名、ラウリル(メタ)アクリレート)、デシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、イコシル(メタ)アクリレート、ドコシル(メタ)アクリレート(別名、ベヘニル(メタ)アクリレート)、オクタコシル(メタ)アクリレートの化合物を用いることができる。一方、水酸基またはカルボキシ基を有する親水性(メタ)アクリレートモノマーとして、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、モノ(2-アクリロイルオキシエチル)スクシネート、(メタ)アクリル酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチルフタル酸等の化合物を用いることができる。含フッ素(メタ)アクリレートモノマーと、長鎖アルキル(メタ)アクリレートモノマーと、水酸基またはカルボキシ基を有する親水性(メタ)アクリレートモノマーとを、それぞれ1種以上水中に分散させ、必要に応じて重合開始剤や重合(分子量)調整剤を用いて乳化重合させることにより、上記のポリマーを得ることができる。
【0017】
<架橋剤>
実施形態の離型フィルム用コーティング組成物は、水溶性または水分散性の架橋剤を含む。実施形態で使用する架橋剤としては、水溶性または少なくとも水分散性のものであれば、特に制限なく使用することができる。架橋剤は、上記のポリマー鎖中に存在する水酸基またはカルボキシ基同士を架橋して、三次元構造を形成することができる化合物であることが好ましい。特に好ましい架橋剤としては、メラミン樹脂誘導体、ベンゾグアナミン樹脂誘導体、尿素樹脂誘導体等のアミノ樹脂誘導体を挙げることができる。
【0018】
メラミン樹脂誘導体としては、メチロール化メラミンのメチロール基の一部又は全部を炭素数1~8の1価アルコール、例として、メチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、i-プロピルアルコール、n-ブチルアルコール、i-ブチルアルコール、2-エチルブタノール、2-エチルヘキサノール等でエーテル化した部分エーテル化又はフルエーテル化メラミン樹脂が挙げられる。
【0019】
好適なメラミン樹脂誘導体は、以下の式4:
【化18】
(式中、R
41、R
42、R
43、R
44、R
45、R
46は、それぞれ独立して、-H、-CH
2OR[ここでRは、水素または炭素数1~4のアルキル基である。]で表され、但しR
41、R
42、R
43、R
44、R
45およびR
46のすべてが-Hである場合はない。)で表されるメラミン誘導体;または、以下の式5:
【化19】
(式中、R
51、R
52、R
54、R
55は、それぞれ独立して、-H、-CH
2OR[ここでRは、水素または炭素数1~4のアルキル基であり、R
53、R
56は、-CH
2-であり、n11は2~10の数である。]で表され、但しR5
1、R
52、R
54およびR
55のすべてが-Hである場合はない。)で表されるメラミン誘導体のオリゴマーである。なお、本明細書において、メラミン樹脂誘導体とは、メラミン誘導体ならびにメラミン誘導体が複数個結合したメラミン樹脂誘導体の両方の意味を包含するものとする。
【0020】
メラミン樹脂誘導体は、ニカラックMW-12LF、ニカラックMW-390、ニカラックMW-100LM、ニカラックMX-750LM(三和ケミカル株式会社)、サイメル202、サイメル232、サイメル235、サイメル238、サイメル254、サイメル266、サイメル267、サイメル272、サイメル285、サイメル301、サイメル303、サイメル303LF、サイメル325、サイメル327、サイメル350、サイメル370、サイメル701、サイメル703、サイメル1141、マイコート506(オルネクスジャパン株式会社)、ユーバン20SE60(三井化学株式会社)等の市販品を適宜用いることができる。
【0021】
ベンゾグアナミン樹脂誘導体は、ベンゾグアナミンとアルデヒドとの反応によって得られるメチロール化ベンゾグアナミン樹脂が挙げられる。アルデヒドとしては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド等が挙げられる。また、このメチロール化ベンゾグアナミン樹脂を1種又は2種以上のアルコールによってエーテル化したものも上記ベンゾグアナミン樹脂に包含される。エーテル化に用いられるアルコールとしては、メチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、2-エチルブタノール、2-エチルヘキサノール等の1価アルコールが挙げられる。これらのうち、なかでもメチロール化ベンゾグアナミン樹脂のメチロール基の少なくとも一部を炭素数1~4の1価アルコールでエーテル化してなるベンゾグアナミン樹脂が好適である。
【0022】
上記ベンゾグアナミン樹脂誘導体の具体例としては、マイコート102、マイコート105、マイコート106(オルネクスジャパン株式会社)、ニカラックSB-201、ニカラックSB-203、ニカラックSB-301、ニカラックSB-303、ニカラックSB-401(三和ケミカル株式会社)などのメチルエーテル化ベンゾグアナミン樹脂;サイメル1123(オルネクスジャパン株式会社)などのメチルエーテルとエチルエーテルとの混合エーテル化ベンゾグアナミン樹脂;マイコート136(オルネクスジャパン株式会社)、ニカラックSB-255、ニカラックSB-355、ニカラックBX-37、ニカラックBX-4000(三和ケミカル株式会社)などのメチルエーテルとブチルエーテルとの混合エーテル化ベンゾグアナミン樹脂;マイコート1128(オルネクスジャパン株式会社)などのブチルエーテル化ベンゾグアナミン樹脂などの市販品を適宜用いることができる。
【0023】
尿素樹脂誘導体は、尿素とホルムアルデヒドとの縮合反応で得られ、溶剤または水に溶解または分散できるものである。
【0024】
実施形態の離型フィルム用コーティング組成物は、水溶性または水分散性の架橋剤を水に溶解または分散させた水系液体に、上記のようなポリマーが分散した、水系の液体である。実施形態の離型フィルム用コーティング組成物は、まず水に架橋剤を溶解または分散させ、次いでポリマーを分散させることにより得ることができる。あるいは、実施形態の離型フィルム用コーティング組成物は、水中に上記の各モノマーを分散させ、モノマー同士を重合し、ポリマー分散型の水性液体を作製し、次いで架橋剤を溶解あるいは分散させることにより得ることもできる。ポリマーに対する架橋剤の配合割合は、固形分重量比でポリマー:架橋剤が1:0.1~1:10、好ましくは1:0.5~1:10、さらに好ましくは1:1~1:5とすることができる。また、実施形態の離型フィルム用コーティング組成物は、必要に応じて、添加剤を含んでいてもよい。添加剤として、防腐剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、レオロジーコントロール剤、表面調整剤、界面活性剤、樹脂粒子、体質顔料(タルク、マイカ、硫酸バリウム、カオリン、炭酸カルシウム、クレー、シリカ、石英、ガラス等)、易滑剤、脱泡剤、帯電防止剤、防曇剤、着色剤、骨材等を挙げることができる。このような添加剤を含有する場合の添加量としては、離型フィルム用コーティング組成物の全配合成分の合計重量に対して10重量%以下が好ましく、通常0.1~10重量%、好ましくは0.5~5重量%の範囲内である。さらに実施形態の離型フィルム用コーティング組成物には、ポリマーと架橋剤による三次元構造の形成を促進させるため、触媒として、酸を添加することができる。使用できる酸性成分として有機酸や無機酸を使用することができるが、好ましくは有機酸であり、p-トルエンスルホン酸を使用することが最も好ましい。さらに実施形態の離型フィルム用コーティング組成物は、界面活性剤(カチオン性、アニオン性、両性、中性)、ポリマーの分子量を調整するための反応(分子量)調整剤、モノマーの重合反応を開始するための反応開始剤、有機溶媒(イソプロパノール、トルエン、ヘキサン等)を、それぞれ少量含んでいてもよい。第一の実施形態にかかる離型フィルム用コーティング組成物は、基材に塗布し、加熱乾燥して水を蒸発させ、かつポリマーを架橋することにより、基材の上に離型フィルム用コーティングを形成することができる。
【0025】
<離型フィルム用コーティング>
第二の実施形態にかかる離型フィルム用コーティングは、含フッ素(メタ)アクリレートモノマーに由来する基:1重量部に対し、長鎖アルキル(メタ)アクリレートモノマーに由来する基:2~50重量部、および水酸基またはカルボキシ基を有する親水性(メタ)アクリレートモノマーに由来する基:0.1~10重量部を少なくとも構成要素として含むポリマーが、架橋剤で架橋されてなる。第二の実施形態において、含フッ素(メタ)アクリレートモノマーに由来する基と、長鎖アルキル(メタ)アクリレートモノマーに由来する基と、水酸基またはカルボキシ基を有する親水性(メタ)アクリレートモノマーに由来する基とを少なくとも構成要素として含むポリマーには、水酸基またはカルボキシ基を有する親水性(メタ)アクリレートモノマーに由来する基に含まれている水酸基またはカルボキシ基が存在する。この水酸基またはカルボキシ基を、架橋剤で架橋し、ポリマーが三次元構造を形成したものが第二の実施形態の離型フィルム用コーティングである。実施形態の離型フィルム用コーティングの厚みとしては、離型性発現の観点や、加熱後の離型性の観点から、0.1μm~10μm、好ましくは0.2μm~5μm、さらに好ましくは0.4~3μmの範囲内であることが好ましい。
【0026】
第二の実施形態において、含フッ素(メタ)アクリレートモノマーに由来する基は、具体的には以下の式1:
【化20】
(式中、R
1は、水素またはメチル基であり;
R
x11は、炭素数1~20の二価の基であって、各々酸素原子、窒素原子または硫黄原子を含んでいてもよい芳香族基、脂環族炭化水素基または脂肪族炭化水素基、またはこれらの置換基の組み合わせであり;
R
x12は、炭素数1~20の二価の基であって、各々酸素原子、窒素原子または硫黄原子を含んでいてもよい芳香族基、脂環族炭化水素基または脂肪族炭化水素基、またはこれらの置換基の組み合わせであり;
R
fは、フッ素原子を含む一価の基であって、以下の式1-1または1-2:
【化21】
【化22】
で表される基である。)で表される基である。
式1において、R
x11およびR
x12は、各々独立に、以下の各式:
【化23】
(式中、n1は、1~20の数である。);
【化24】
(式中、Aは、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、ハロゲン原子からなる群より選択される置換基を1~3つ有していてもよいフェニレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基、シクロヘキセニレン基またはシクロペンタジエニレン基である。);
【化25】
(式中、Aは、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、ハロゲン原子からなる群より選択される置換基を1~3つ有していてもよいフェニレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基、シクロヘキセニレン基またはシクロペンタジエニレン基であり、Bは、-O-CO-、-CO-O-、-CO-NH-、および-NH-CO-からなる群より選択される基であり、n2は、1~13の数である。);
【化26】
(式中、Aは、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、ハロゲン原子からなる群より選択される置換基を1~3つ有していてもよいフェニレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基、シクロヘキセニレン基またはシクロペンタジエニレン基であり、n3は、1~14の数である。);
【化27】
(式中、n4は1~9の数である。);および
【化28】
(式中、Aは、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、ハロゲン原子からなる群より選択される置換基を1~3つ有していてもよいフェニレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基、シクロヘキセニレン基またはシクロペンタジエニレン基であり、n5は、1~6の数である。)で表される基からなる群より選択されることが好ましい。
【0027】
式1において、R
x11およびR
x12は、各々独立に、以下の各式:
【化29】
(式中、n6は1~10の数である。);
【化30】
【化31】
(式中、n7は1~10の数である。);
【化32】
(式中、n8は1~10の数である。);
【化33】
(式中、n9は1~9の数である。);および
【化34】
(式中、n10は1~6の数である。)で表される基からなる群より選択される基であることが非常に好ましい。
【0028】
また、第二の実施形態において、長鎖アルキル(メタ)アクリレートモノマーに由来する基は、具体的には以下の式2:
【化35】
(式中、R
2は、水素またはメチル基であり;
R
x2は、炭素数10~30の一価の基であって、直鎖または分岐鎖の脂肪族炭化水素基である。)で表される基である。
【0029】
さらに、第二の実施形態において、水酸基またはカルボキシ基を有する親水性(メタ)アクリレートモノマーに由来する基は、具体的には以下の式3:
【化36】
(式中、R
3は、水素またはメチル基であり;
R
x3は、炭素数1~25の二価の基であって、直鎖または分岐鎖の脂肪族炭化水素基であり、該R
x3の中にエーテル結合を含んでいてよく;
Yは、水酸基またはカルボキシ基である。)で表される基である。
【0030】
第二の実施形態において、ポリマーを架橋するために用いられる架橋剤は、メラミン樹脂誘導体、ベンゾグアナミン樹脂誘導体、尿素樹脂誘導体等のアミノ樹脂誘導体を挙げることができる。
【0031】
メラミン樹脂誘導体としては、メチロール化メラミンのメチロール基の一部又は全部を炭素数1~8の1価アルコール、例として、メチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、i-プロピルアルコール、n-ブチルアルコール、i-ブチルアルコール、2-エチルブタノール、2-エチルヘキサノール等で、エーテル化した部分エーテル化又はフルエーテル化メラミン樹脂が挙げられる。
【0032】
好適なメラミン樹脂誘導体は、以下の式4:
【化37】
(式中、R
41、R
42、R
43、R
44、R
45、R
46は、それぞれ独立して、-H、-CH
2OR[ここでRは、水素または炭素数1~4のアルキル基である。]で表され、但しR
41、R
42、R
43、R
44、R
45、R
46がすべて-Hである場合はない。)で表されるメラミン誘導体;または、以下の式5:
【化38】
(式中、R
51、R
52、R
54、R
55は、それぞれ独立して、-H、-CH
2OR[ここでRは、水素または炭素数1~4のアルキル基であり、R
53、R
56は、-CH
2-であり、n11は2~10の数である。]で表され、但しR5
1、R
52、R
54、R
55がすべて-Hである場合はない。)で表されるメラミン誘導体のオリゴマーである。なお、本明細書において、メラミン樹脂誘導体とは、メラミン誘導体ならびにメラミン誘導体が複数個結合したメラミン樹脂誘導体の両方の意味を包含するものとする。
【0033】
ベンゾグアナミン樹脂誘導体は、ベンゾグアナミンとアルデヒドとの反応によって得られるメチロール化ベンゾグアナミン樹脂が挙げられる。アルデヒドとしては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド等が挙げられる。また、このメチロール化ベンゾグアナミン樹脂を1種又は2種以上のアルコールによってエーテル化したものも上記ベンゾグアナミン樹脂に包含される。エーテル化に用いられるアルコールとしては、メチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、2-エチルブタノール、2-エチルヘキサノール等の1価アルコールが挙げられる。これらのうち、なかでもメチロール化ベンゾグアナミン樹脂のメチロール基の少なくとも一部を炭素数1~4の1価アルコールでエーテル化してなるベンゾグアナミン樹脂が好適である。
【0034】
尿素樹脂誘導体は、尿素とホルムアルデヒドとの縮合反応で得られ、溶剤または水に溶解または分散できるものである。
【0035】
<離型フィルム>
第三の実施形態にかかる離型フィルムは、含フッ素(メタ)アクリレートモノマーに由来する基:1重量部に対し;長鎖アルキル(メタ)アクリレートモノマーに由来する基:2~50重量部、および水酸基またはカルボキシ基を有する親水性(メタ)アクリレートモノマーに由来する基:0.1~10重量部を少なくとも構成要素として含むポリマーが、水溶性または水分散性の架橋剤を含む水系液体に分散した、離型フィルム用コーティング組成物を、基材に塗布し、加熱乾燥してなるものである。第三の実施形態にかかる離型フィルムは、上記の第一の実施形態の離型フィルム用コーティング組成物を基材に塗布し、加熱乾燥してなるものであってよい。ここで用いられる基材は、概ね平面状の、比較的薄い形状の板、フィルム、シート等であることが好ましい。基材は、ガラス、金属、セラミックスのほか、プラスチック、樹脂等であることが好ましく、特に、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリクロロビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、エチレン・ビニルアルコ-ル共重合体等のポリオレフィン類、ポリエチレンテレフタレート;ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂;ナイロン等のポリアミド樹脂;ポリメチルメタクリレート、ポリヒドロキシエチルメタクリレート等のアクリル樹脂;フェノール樹脂、ポリカーボネート、ポリアセタール、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂等の熱硬化性樹脂を基材として用いることができる。これらの中でも加工性、コスト及び耐熱性の観点から、ポリエチレンテレフタレートを基材として用いることが特に好ましい。基材は、必要に応じて紫外線吸収剤、充填剤、熱安定剤、着色剤等を含むものであってもよい。基材の表面には、たとえば、コロナ処理等の表面処理を施すこともできる。基材の厚みは、用途に応じて、約1~350μmの範囲内で適宜選択することができる。
【0036】
離型フィルム用コーティング組成物は、上記の基材の少なくとも一面に塗布することができ、必要に応じて、基材の両面、基材の一部または全面に塗布することもできる。基材の表面への離型フィルム用コーティング組成物の塗布は、ドクターブレード法、バーコート法、ディッピング法、エアスプレー法、ローラーブラシ法、ローラーコーター法、リバースロールコーター法、ナイフコーター法等の従来のコーティング方法により適宜行うことができる。また離型フィルム用コーティング組成物を基材の表面に塗布した後の加熱は、バーナーやオーブン等の加熱装置による加熱のほか、ドライヤー等の温風による加熱方法により行うことができる。加熱の操作により、離型フィルム用コーティング組成物の水が蒸発し、また同時に、ポリマー成分が架橋剤により架橋されて、離型フィルム用コーティングが形成する。乾燥ならびに架橋の条件に特段の制限はないが、通常、100~160℃において5~150秒加熱することにより、水を蒸発させ、同時に上記のポリマーを架橋させることができる。こうして、基材の表面上に離型フィルム用コーティングが施された、第三の実施形態にかかる離型フィルムを得ることができる。第三の実施形態の離型フィルムの、離型フィルム用コーティングの面を物品側に向けて貼付し、物品の表面の保護膜として使用することができる。実施形態の離型フィルムは剥離力が小さく、コーティング成分の転着も少なくきれいに剥がれるため、物品の性能を低下させることが殆どない。
【0037】
<離型フィルム付き物品>
実施形態の離型フィルムを種々の成形物品に貼付して、離型フィルム付き物品を得ることができる。離型フィルムを貼付する物品として、電子部品等を挙げることができる。これらの物品に保護膜として離型フィルムを貼付して、物品の使用に際しては、必要に応じて離型フィルムを剥がすことができる。このように本発明の離型フィルム付き物品は、離型フィルムによる表面の保護により傷がつきにくく、その使用に先立って離型フィルムを剥離した場合には、剥離力が小さく、コーティング成分の転着も少なくきれいに剥がれるので、物品本来の外観を維持することができ、かつ物品の性能が劣化することも殆どない。
【実施例0038】
以下、製造例、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。ただし、本発明はこれらにより限定されるものではない。各例において、「部」及び「%」は、特に記載しない限り「重量部」および「重量%」を示す。
【0039】
(1)ポリマー分散液の製造
(1-1)含フッ素メタクリレートモノマーの製造
撹拌機および滴下ロートを備えた三つ口フラスコ(3L)内に、2-ヒドロキシエチルメタクリレート130.1g(1.0mol)、トリエチルアミン111.1g(1.1mol)、酢酸エチル600gを入れた。滴下ロートに以下の式:
【化39】
(式中、R
fは、以下の式1-1または1-2:
【化40】
【化41】
で表される基である。)で表される含フッ素酸クロライド586.5g(1.0mol)および酢酸エチル100gを入れ、三ツ口フラスコ内で撹拌した溶液中に約60分間かけて徐々に滴下した。滴下の終了後に、室温で、さらに攪拌を3時間続行した。
次いで反応混合物に1N塩酸1050gを加えて反応を停止させた。該反応混合物を3Lのビーカー内へ移した後、水1Lを用いる洗浄処理を3回行った。水洗処理後の溶液を減圧下脱水することにより、以下の式:
【化42】
(式中、R
fは、以下の式1-1または1-2:
【化43】
【化44】
で表される基である。)で表される含フッ素メタクリレートモノマー(以下、「NN-5」と称する。)を634.8g得た(収率93%)。得られた含フッ素メタクリレートモノマー(NN-5)の
1H-NMRのスペクトル(内部標準:テトラメチルシラン):δ値1.96(s,3H)、4.51(m,4H)、5.60(s,1H)、6.97(d,2H)、8.09(d,2H)であり、NN-5が合成されたことを確認した。
【0040】
(1-2)ポリマー分散液A-1の製造
攪拌機および温度計を備えた200mLのガラス製反応器内に、上記1-1で製造したNN-5(含フッ素メタクリレートモノマー)を2部、ベヘニルメタクリレート(VMA-70、日油株式会社)(長鎖アルキルメタクリレート)を19.5部、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(2HEMA、三菱ガス化学株式会社)(水酸基を有する水溶性メタクリレートモノマー)を1部、ポリエチレングリコールモノメタクリレート(ブレンマーPE-200、日油株式会社)(水酸基を有する水溶性メタクリレートモノマー)を1部と、界面活性剤としてオレイルエーテルエチレンオキサイド付加物(エマルゲンE-408、花王株式会社)とスチリル化フェニルエチレンオキサイド付加物(ノイゲンEA-177、第一工業製薬株式会社)とを各々4部、分子量調整剤としてドデカンチオール(LM、富士フィルム和光純薬株式会社)0.1部、溶媒としてイソプロパノール(東京化成工業株式会社)を2部、イオン交換水を66.25部を入れた。高圧ホモジナイザを用いて乳化混合し、ガラス製反応器内を窒素で30分間置換した。ここに反応開始剤である2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド](VA-086、富士フィルム和光純薬株式会社)を0.15部投入し、ガラス容器内の温度が85℃になるまで徐々に昇温し、この温度で4時間保持した。反応終了後、放冷し、ポリマーの水分散液(A-1)を得た。
【0041】
(1-3)ポリマー分散液A-2の製造
ベヘニルメタクリレート19.5部の代わりにステアリルメタクリレート(三菱ガス化学株式会社)(長鎖アルキルメタクリレート)16.7部を使用し、イオン交換水の量を69.05部としたこと以外は、上記のポリマー分散液A-1の製造と同様に反応を行い、ポリマー分散液A-2を得た。
【0042】
(1-4)ポリマー分散液A-3の製造
NN-5を用いず、2種類の界面活性剤をそれぞれ2部使用し、イオン交換水の量を72.25部としたこと以外は、上記のポリマー分散液A-1の製造と同様の反応を行い、ポリマー分散液A-3を得た。
【0043】
(1-5)ポリマー分散液A-4の製造
NN-5を11部、ベヘニルメタクリレートを2部使用し、イオン交換水の量を78.75部としたこと以外は、上記のポリマー分散液A-1の製造と同様に反応を行い、ポリマー分散液A-4を得た。
【0044】
(2)離型フィルム用コーティング組成物の製造
上記(1)で製造したポリマー分散液A-1~A-4と、架橋剤(ニカラックMW-12LF、三和ケミカル株式会社)、および反応触媒であるパラトルエンスルホン酸(東京化成工業株式会社)を用いて、離型フィルム用コーティング組成物を製造した。実施例1~4、比較例1~3の各離型フィルム用コーティング組成物を製造した。なお、すべての離型フィルム用コーティング組成物において、固形分濃度(ポリマー、架橋剤、およびパラトルエンスルホン酸)が22.5%になるように適宜イオン交換水を加えて調整した。
【0045】
(3)離型フィルムの製造
上記(2)で製造した実施例1~4、比較例1~3の各離型フィルム用コーティング組成物を、厚み100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(コスモシャインA4100、東洋紡株式会社)に塗布した。これをオーブンに入れて、150℃で2分間乾燥させた。こうして、コーティング厚みが2μmの離型フィルム用コーティングが表面に形成された、離型フィルムを得た。
【0046】
各実施例ならびに比較例にかかる離型フィルム用コーティングの配合(固形分重量比)を表1に示す。
【表1】
【0047】
(4)離型フィルムの評価
(4-1)剥離力の評価
実施例および比較例にかかる離型フィルムのコーティングを形成した面に、アクリル系粘着テープ(31Bテープ、日東電工株式会社)を、2キログラムの荷重をかけたゴムローラで圧着させた。その後室温で30分間静置して、剥離力測定用積層フィルムを得た。 積層フィルムを幅25mm幅にカットし、室温で、引張試験機(恒温槽付きオートグラフAGS-100A、株式会社島津製作所)を用いて、剥離角度180°、引張速度300mm/分の条件で引張り、アクリル系粘着テープが剥離したときの力を測定した。剥離力の値が小さいことは、離型性が高い離型フィルム用コーティングが得られたことを示す。剥離力が1.0N/25mm未満であるものを「A」、1.0N/25mm以上2.5N/25mm未満であるものを「B」、2.5N/25mm以上であるものを「C」と評価した。
【0048】
(4-2)加熱後剥離力の評価
上記(4-1)で作製した剥離力測定用積層フィルムを、130℃の乾燥オーブン内に30分間入れた。積層フィルムをオーブンから出し、室温で少なくとも30分間放冷し、常温に戻った積層フィルムを用いて、上記(4-1)と同様に剥離力を測定した。加熱後剥離力の値が小さいことは、離型性が高く、かつ熱に強い離型フィルム用コーティングが得られたことを示す。加熱後の剥離力が4.0N/25mm未満であるものを「A」、4.0N/25mm以上5.0N/25mm未満であるものを「B」、5.0N/25mm以上であるものを「C」と評価した。
【0049】
(4-3)耐溶剤性の評価
実施例および比較例にかかる離型フィルムのコーティングを形成した面に、トルエンに浸漬した綿棒を5往復スワイプし、次いでメチルエチルケトンに浸漬した綿棒を5往復スワイプした後、コーティング面の外観を目視で評価した。外観の変化が認められないものを「A」、コーティング面が白化したものを「B」と評価した。
実施例および比較例にかかる離型フィルムの評価を表1に示す。
【0050】
本発明の実施例にかかる離型フィルム用コーティングは、剥離力が小さい。離型フィルムを加熱した後も、離型フィルム用コーティングが基材に強固に貼り付くことなく、比較的容易に粘着テープから剥がすことができた。実施例にかかる離型フィルム用コーティングは、有機溶剤に対する耐久性も高い。
【0051】
一方、含フッ素(メタ)アクリレートモノマーに由来する基を持たないポリマーの分散液であるA-3を用いて形成した離型フィルム用コーティング(比較例1)は、剥離力が小さく、加熱後の剥離力も小さいままであったが、耐溶剤性に劣ることがわかる。また、含フッ素(メタ)アクリレートモノマーに由来する基と長鎖アルキル(メタ)アクリレートモノマーに由来する基と水酸基またはカルボキシ基を有する親水性(メタ)アクリレートモノマーに由来する基とをすべて有するものの、ポリマー鎖中でのこれらの重量比が本発明の範囲を満たさないポリマーの分散液であるA-4を用いて形成した離型フィルム用コーティング(比較例2)は、剥離力が大きく、加熱後の剥離力もさらに大きくなった。比較例2の離型フィルム用コーティングは、耐溶剤性も劣る。比較例3は、含フッ素(メタ)アクリレートモノマーに由来する基を持たないポリマーの分散液であるA-3を用い、架橋剤の量を増加して形成したものである。比較例3の離型フィルム用コーティングは耐溶剤性には優れていたが、剥離力および加熱後の剥離力が大きかった。