(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022132090
(43)【公開日】2022-09-07
(54)【発明の名称】置換ポリ(ジフェニルアセチレン)類の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08F 4/22 20060101AFI20220831BHJP
C08F 38/00 20060101ALI20220831BHJP
【FI】
C08F4/22
C08F38/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022002506
(22)【出願日】2022-01-11
(31)【優先権主張番号】P 2021029630
(32)【優先日】2021-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】504160781
【氏名又は名称】国立大学法人金沢大学
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【弁理士】
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【弁理士】
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100151301
【弁理士】
【氏名又は名称】戸崎 富哉
(72)【発明者】
【氏名】前田 勝浩
(72)【発明者】
【氏名】谷口 剛史
(72)【発明者】
【氏名】西村 達也
(72)【発明者】
【氏名】宮入 真美
【テーマコード(参考)】
4J015
4J100
【Fターム(参考)】
4J015DA02
4J015DA04
4J015DA05
4J015DA10
4J015DA22
4J015EA02
4J100AT05P
4J100BA05P
4J100BA15P
4J100BA72P
4J100BB03P
4J100BB07P
4J100BB18P
4J100BC43P
4J100CA01
4J100DA01
4J100DA04
4J100EA05
4J100FA08
4J100FA19
4J100GC16
4J100GC25
4J100JA32
4J100JA39
4J100JA46
(57)【要約】 (修正有)
【課題】低分子量から高分子量まで幅広い範囲で分子量を制御することが可能な、置換ポリ(ジフェニルアセチレン)の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明は、4価のハロゲン化タングステン、還元能を有する助触媒、及び置換されていてもよいトリアリールホスフィンの存在下に、式(I):
で表される化合物を重合させる工程を含む、式(II):
で表される繰り返し単位を有する、環状の置換ポリ(ジフェニルアセチレン)の製造方法に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
4価のハロゲン化タングステン、還元能を有する助触媒、及び置換されていてもよいトリアリールホスフィンの存在下に、式(I):
【化1】
[式中、
n個のR
1は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、シアノ基、ニトロ基、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルコキシ基、置換されていてもよいアルキルスルファニル基、置換されていてもよいアシル基、置換されていてもよいアシルオキシ基、置換されていてもよいアルキルスルホニルオキシ基、置換されていてもよいアリールスルホニルオキシ基、置換されていてもよいアルコキシ-カルボニル基、置換されていてもよいアリールオキシ-カルボニル基、置換されていてもよいカルバモイル基又は置換アミノ基を示し、
m個のR
2は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、シアノ基、ニトロ基、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルコキシ基、置換されていてもよいアルキルスルファニル基、置換されていてもよいアシル基、置換されていてもよいアシルオキシ基、置換されていてもよいアルキルスルホニルオキシ基、置換されていてもよいアリールスルホニルオキシ基、置換されていてもよいアルコキシ-カルボニル基、置換されていてもよいアリールオキシ-カルボニル基、置換されていてもよいカルバモイル基又は置換アミノ基を示し、
nは、0~3の整数を示し、及び
mは、0~3の整数を示す。]
で表される化合物を重合させる工程を含む、式(II):
【化2】
[式中の各記号は、前記と同義を示す。]
で表される繰り返し単位を有する置換ポリ(ジフェニルアセチレン)の製造方法。
【請求項2】
前記式(I)における、
n個のR1が、それぞれ独立して、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、シアノ基、ニトロ基、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルコキシ基、置換されていてもよいアルキルスルファニル基、置換されていてもよいアシル基、置換されていてもよいアシルオキシ基、置換されていてもよいアルキルスルホニルオキシ基、置換されていてもよいアリールスルホニルオキシ基、置換されていてもよいアルコキシ-カルボニル基、置換されていてもよいカルバモイル基又は置換アミノ基であり、
m個のR2が、それぞれ独立して、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、シアノ基、ニトロ基、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルコキシ基、置換されていてもよいアルキルスルファニル基、置換されていてもよいアシル基、置換されていてもよいアシルオキシ基、置換されていてもよいアルキルスルホニルオキシ基、置換されていてもよいアリールスルホニルオキシ基、置換されていてもよいアルコキシ-カルボニル基、置換されていてもよいカルバモイル基又は置換アミノ基であり、
nが、0~3の整数であり、且つ
mが、0~3の整数である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
還元能を有する助触媒が、テトラフェニルスズ、テトラn-ブチルスズ、ビス(トリメチルシリル)シクロヘキサ-1,4-ジエン、ビス(トリメチルシリル)2-メチルシクロヘキサ-1,4-ジエン、アルミニウムヒドリド試薬、ホウ素ヒドリド試薬、シラン試薬、有機マグネシウム試薬及び有機リチウム試薬からなる群より選択される、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
置換されていてもよいトリアリールホスフィンが、トリフェニルホスフィン、トリス(4-フルオロフェニル)ホスフィン又はトリス(4-クロロフェニル)ホスフィンである、請求項1~3のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項5】
4価のハロゲン化タングステンが、四塩化タングステンである、請求項1~4のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項6】
4価のハロゲン化タングステンが、四塩化タングステンであり、
還元能を有する助触媒が、テトラフェニルスズ、テトラn-ブチルスズ及びビス(トリメチルシリル)シクロヘキサ-1,4-ジエンからなる群より選択され、且つ
置換されていてもよいトリアリールホスフィンが、トリフェニルホスフィンである、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項7】
式(II’):
【化3】
[式中、
R
1’及びR
2’は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、シアノ基、ニトロ基、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルコキシ基、置換されていてもよいアルキルスルファニル基、置換されていてもよいアシル基、置換されていてもよいアシルオキシ基、置換されていてもよいアルキルスルホニルオキシ基、置換されていてもよいアリールスルホニルオキシ基、置換されていてもよいアルコキシ-カルボニル基、置換されていてもよいアリールオキシ-カルボニル基、置換されていてもよいカルバモイル基又は置換アミノ基を示す。]
で表される繰り返し単位を有する置換ポリ(ジフェニルアセチレン)又はその塩。
【請求項8】
R1’及びR2’が、それぞれ独立して、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、シアノ基、ニトロ基、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルコキシ基、置換されていてもよいアルキルスルファニル基、置換されていてもよいアシル基、置換されていてもよいアシルオキシ基、置換されていてもよいアルキルスルホニルオキシ基、置換されていてもよいアリールスルホニルオキシ基、置換されていてもよいアルコキシ-カルボニル基、置換されていてもよいカルバモイル基又は置換アミノ基である、請求項7に記載の置換ポリ(ジフェニルアセチレン)又はその塩。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、幅広い分子量範囲において分子量を制御することが可能であり、且つ収率も良い、様々な官能基を有する置換ポリ(ジフェニルアセチレン)類の新規製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
置換ポリアセチレン誘導体は、代表的な共役高分子の一つであり、剛直な主鎖に種々の側鎖を導入した構造を有することから、他の高分子材料には見られない特異的な性質を示し、実際に、気体分離膜や有機EL、液晶、有機ダイオード等の材料の開発に向けた研究が盛んに行われている。中でも、置換ポリ(ジフェニルアセチレン)類は、他の置換ポリアセチレン誘導体と比べて非常に高い熱安定性を持つだけでなく、強い発光特性を示すことから実用的な応用が期待されている高分子化合物である。
【0003】
置換ポリ(ジフェニルアセチレン)類は、対応するジフェニルアセチレン類を、遷移金属触媒を用いて連鎖重合することにより合成できるが、ジフェニルアセチレンに存在する二つのベンゼン環の立体障害に起因して、置換アセチレン類の一般的な重合法に比べてしばしば困難を伴う。これまで、ジフェニルアセチレン類の重合法として、五塩化タンタル(TaCl5)と有機スズ試薬を組み合わせた触媒系を用いる方法、又は六塩化タングステン(WCl6)と有機スズ試薬を組み合わせた触媒系を用いる方法が報告されているが、これらの重合法は、適用できるモノマー、すなわち、ジフェニルアセチレン類、の範囲が限られており、また、望みの分子量や官能基を持つポリ(ジフェニルアセチレン)類を収率良く得ることが困難であった(特許文献1~2、非特許文献1~3)。
【0004】
最近、本発明者らは、WCl6の代わりに、オキシ四塩化タングステン(WOCl4)を触媒として用いることにより、アルコキシ-カルボニル基、ハロゲン原子、アルコキシ基等の種々の官能基を有するポリ(ジフェニルアセチレン)類が高収率で得られることを報告した(非特許文献4)。しかし、この方法を用いても得られるポリ(ジフェニルアセチレン)類の分子量は、約20000程度が上限であり、それよりも大きな分子量を有する官能基化されたポリ(ジフェニルアセチレン)類を得ることは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5-271338号公報
【特許文献2】特開平6-107737号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Handbook of Metathesis, Grubbs, R. H., Ed. Wiley-VCH: Weinheim, 2003; Vol. 3, pp 375-406
【非特許文献2】J. Polym. Sci., Part A: Polym. Chem. 2007, 45, 165-180
【非特許文献3】Polymer Reviews 2017, 57, 175-199
【非特許文献4】Angew. Chem. Int. Ed. 2020, 59, 14772-14780
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような背景のもと、所望の官能基を有する広範なモノマーに適用でき、且つ幅広い分子量範囲において分子量を制御することが可能である、置換ポリ(ジフェニルアセチレン)類の効果的な製造方法の開発が切望されている。
【0008】
本発明の課題は、各種官能基を有し、且つ数千から20万程度までの広範な分子量範囲において、従来法と比較して、分子量を制御することが可能な、置換ポリ(ジフェニルアセチレン)類の収率の良い製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、かかる状況下、鋭意検討を重ねた結果、4価のハロゲン化タングステン、還元能を有する助触媒、及び置換されていてもよいトリアリールホスフィンの存在下に、式(I):
【0010】
【0011】
[式中、
n個のR1は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、シアノ基、ニトロ基、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルコキシ基、置換されていてもよいアルキルスルファニル基、置換されていてもよいアシル基、置換されていてもよいアシルオキシ基、置換されていてもよいアルキルスルホニルオキシ基、置換されていてもよいアリールスルホニルオキシ基、置換されていてもよいアルコキシ-カルボニル基、置換されていてもよいアリールオキシ-カルボニル基、置換されていてもよいカルバモイル基又は置換アミノ基を示し、
m個のR2は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、シアノ基、ニトロ基、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルコキシ基、置換されていてもよいアルキルスルファニル基、置換されていてもよいアシル基、置換されていてもよいアシルオキシ基、置換されていてもよいアルキルスルホニルオキシ基、置換されていてもよいアリールスルホニルオキシ基、置換されていてもよいアルコキシ-カルボニル基、置換されていてもよいアリールオキシ-カルボニル基、置換されていてもよいカルバモイル基又は置換アミノ基を示し、
nは、0~3の整数を示し、及び
mは、0~3の整数を示す。]
で表される化合物(以下、「化合物(I)」と称することもある。)を重合させる工程を含む、式(II):
【0012】
【0013】
[式中の各記号は、前記と同義を示す。]
で表される繰り返し単位を有する置換ポリ(ジフェニルアセチレン)(以下、「化合物(II)」と称することもある。)の製造方法(以下、「本発明の製造方法」と称することもある。)により、置換ジフェニルアセチレンの重合反応において、低分子量から高分子量まで幅広い範囲で分子量をある程度制御することができること、および当該製造方法により得られる置換ポリ(ジフェニルアセチレン)が環状構造を有することを初めて見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち、本発明は以下の通りである。
[1]4価のハロゲン化タングステン、還元能を有する助触媒、及び置換されていてもよいトリアリールホスフィンの存在下に、式(I):
【0015】
【0016】
[式中、
n個のR1は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、シアノ基、ニトロ基、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルコキシ基、置換されていてもよいアルキルスルファニル基、置換されていてもよいアシル基、置換されていてもよいアシルオキシ基、置換されていてもよいアルキルスルホニルオキシ基、置換されていてもよいアリールスルホニルオキシ基、置換されていてもよいアルコキシ-カルボニル基、置換されていてもよいアリールオキシ-カルボニル基、置換されていてもよいカルバモイル基又は置換アミノ基を示し、
m個のR2は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、シアノ基、ニトロ基、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルコキシ基、置換されていてもよいアルキルスルファニル基、置換されていてもよいアシル基、置換されていてもよいアシルオキシ基、置換されていてもよいアルキルスルホニルオキシ基、置換されていてもよいアリールスルホニルオキシ基、置換されていてもよいアルコキシ-カルボニル基、置換されていてもよいアリールオキシ-カルボニル基、置換されていてもよいカルバモイル基又は置換アミノ基を示し、
nは、0~3の整数を示し、及び
mは、0~3の整数を示す。]
で表される化合物を重合させる工程を含む、式(II):
【0017】
【0018】
[式中の各記号は、前記と同義を示す。]
で表される繰り返し単位を有する置換ポリ(ジフェニルアセチレン)の製造方法。
[2]4価のハロゲン化タングステン、還元能を有する助触媒、及び置換されていてもよいトリアリールホスフィンの存在下に、式(I):
【0019】
【0020】
[式中、
n個のR1は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、シアノ基、ニトロ基、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルコキシ基、置換されていてもよいアルキルスルファニル基、置換されていてもよいアシル基、置換されていてもよいアシルオキシ基、置換されていてもよいアルキルスルホニルオキシ基、置換されていてもよいアリールスルホニルオキシ基、置換されていてもよいアルコキシ-カルボニル基、置換されていてもよいカルバモイル基又は置換アミノ基を示し、
m個のR2は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、シアノ基、ニトロ基、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルコキシ基、置換されていてもよいアルキルスルファニル基、置換されていてもよいアシル基、置換されていてもよいアシルオキシ基、置換されていてもよいアルキルスルホニルオキシ基、置換されていてもよいアリールスルホニルオキシ基、置換されていてもよいアルコキシ-カルボニル基、置換されていてもよいカルバモイル基又は置換アミノ基を示し、
nは、0~3の整数を示し、及び
mは、0~3の整数を示す。]
で表される化合物を重合させる工程を含む、式(II):
【0021】
【0022】
[式中の各記号は、前記と同義を示す。]
で表される繰り返し単位を有する置換ポリ(ジフェニルアセチレン)の製造方法。
[3]還元能を有する助触媒が、テトラフェニルスズ、テトラn-ブチルスズ、ビス(トリメチルシリル)シクロヘキサ-1,4-ジエン、ビス(トリメチルシリル)2-メチルシクロヘキサ-1,4-ジエン、アルミニウムヒドリド試薬、ホウ素ヒドリド試薬、シラン試薬、有機マグネシウム試薬及び有機リチウム試薬からなる群より選択される、前記[1]又は[2]に記載の製造方法。
[4]置換されていてもよいトリアリールホスフィンが、トリフェニルホスフィン、トリス(4-フルオロフェニル)ホスフィン又はトリス(4-クロロフェニル)ホスフィンである、前記[1]~[3]のいずれかに記載の製造方法。
[5]4価のハロゲン化タングステンが、四塩化タングステンである、前記[1]~[4]のいずれかに記載の製造方法。
[6]4価のハロゲン化タングステンが、四塩化タングステンであり、
還元能を有する助触媒が、テトラフェニルスズ、テトラn-ブチルスズ及びビス(トリメチルシリル)シクロヘキサ-1,4-ジエンからなる群より選択され、且つ
置換されていてもよいトリアリールホスフィンが、トリフェニルホスフィンである、前記[1]又は[2]に記載の製造方法。
[7]式(I)中のn個のR1及びm個のR2が、それぞれ独立して、存在しないか、或いはフェニルエチニル基に対してメタ位及び/又はパラ位に存在し、且つ
n及びmが、それぞれ独立して、0~2の整数である、前記[1]~[6]のいずれかに記載の製造方法。
[8]式(II’):
【0023】
【0024】
[式中、
R1’及びR2’は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、シアノ基、ニトロ基、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルコキシ基、置換されていてもよいアルキルスルファニル基、置換されていてもよいアシル基、置換されていてもよいアシルオキシ基、置換されていてもよいアルキルスルホニルオキシ基、置換されていてもよいアリールスルホニルオキシ基、置換されていてもよいアルコキシ-カルボニル基、置換されていてもよいアリールオキシ-カルボニル基、置換されていてもよいカルバモイル基又は置換アミノ基を示す。]
で表される繰り返し単位を有する置換ポリ(ジフェニルアセチレン)(以下、「化合物(II’)」と称することもある。)又はその塩。
[9]式(II’):
【0025】
【0026】
[式中、
R1’及びR2’は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、シアノ基、ニトロ基、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルコキシ基、置換されていてもよいアルキルスルファニル基、置換されていてもよいアシル基、置換されていてもよいアシルオキシ基、置換されていてもよいアルキルスルホニルオキシ基、置換されていてもよいアリールスルホニルオキシ基、置換されていてもよいアルコキシ-カルボニル基、置換されていてもよいカルバモイル基又は置換アミノ基を示す。]
で表される繰り返し単位を有する置換ポリ(ジフェニルアセチレン)又はその塩。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、簡便な操作により、数千から数十万程度までの広範な分子量範囲において分子量を制御しつつ、収率良く種々の官能基を有する、環状の置換ポリ(ジフェニルアセチレン)類を製造することができる。また、本発明によれば、これまで有効な合成法が無かった、ある程度制御された分子量と所望の官能基を有し、且つ熱安定性にも優れる置換ポリ(ジフェニルアセチレン)類を得ることができることから、各種機能性高分子材料の原料合成法としても極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】
図1のA~Dは、高配向性熱分解グラファイト基板上に塗布した化合物(II-1)を、アサイラム・リサーチ社製の原子間力顕微鏡(AFM)(Cypher(登録商標))を用いて測定した画像及び部分拡大画像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本明細書中に用いられる用語及び各記号の定義について、以下に説明する。
【0030】
本明細書中、「ハロゲン原子」とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を意味する。
【0031】
本明細書中、「アルキル(基)」とは、直鎖状又は分岐鎖状の炭素原子数1以上のアルキル基を意味し、特に炭素数範囲の限定がない場合には、好ましくは、C1-20アルキル基であり、中でも、C1-6アルキル基がより好ましい。
【0032】
本明細書中、「C1-20アルキル(基)」とは、直鎖又は分岐鎖の炭素原子数1~20のアルキル基を意味し、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、1-エチルプロピル、ヘキシル、イソヘキシル、1,1-ジメチルブチル、2,2-ジメチルブチル、3,3-ジメチルブチル、2-エチルブチル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、エイコシル等が挙げられる。
【0033】
本明細書中、「C1-6アルキル(基)」とは、直鎖又は分岐鎖の炭素原子数1~6のアルキル基を意味し、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、1-エチルプロピル、ヘキシル、イソヘキシル、1,1-ジメチルブチル、2,2-ジメチルブチル、3,3-ジメチルブチル、2-エチルブチル等が挙げられる。
【0034】
本明細書中、「シクロアルキル(基)」とは、環状アルキル基を意味し、特に炭素数範囲の限定がない場合には、好ましくは、C3-8シクロアルキル基である。
【0035】
本明細書中、「C3-8シクロアルキル(基)」とは、炭素原子数3~8の環状アルキル基を意味し、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル等が挙げられる。中でも、C3-6シクロアルキル基が好ましい。
【0036】
本明細書中、「アルコキシ(基)」とは、直鎖又は分岐鎖のアルキル基が酸素原子と結合した基を意味し、特に炭素数範囲は限定されないが、好ましくは、C1-20アルコキシ基であり、より好ましくは、C1-8アルコキシ基であり、さらに好ましくは、C1-6アルコキシ基である。
【0037】
本明細書中、「C1-20アルコキシ(基)」とは、直鎖又は分岐鎖の炭素原子数1~20のアルコキシ基を意味し、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、sec-ブトキシ、tert-ブトキシ、ペンチルオキシ、イソペンチルオキシ、ネオペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、イソヘキシルオキシ、1,1-ジメチルブトキシ、2,2-ジメチルブトキシ、3,3-ジメチルブトキシ、2-エチルブトキシ、ヘプチルオキシ、オクチルオキシ、ノニルオキシ、デシルオキシ、ウンデシルオキシ、ドデシルオキシ、トリデシルオキシ、エイコシルオキシ等が挙げられる。
【0038】
本明細書中、「C1-6アルコキシ(基)」とは、直鎖又は分岐鎖の炭素原子数1~6のアルコキシ基を意味し、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、sec-ブトキシ、tert-ブトキシ、ペンチルオキシ、イソペンチルオキシ、ネオペンチルオキシ、ヘキシルオキシ等が挙げられる。
【0039】
本明細書中、「アルキルスルファニル(基)」とは、直鎖又は分岐鎖のアルキル基が硫黄原子と結合した基を意味し、特に炭素数範囲は限定されないが、好ましくは、C1-6アルキルスルファニル基であり、より好ましくは、C1-4アルキルスルファニル基である。
【0040】
本明細書中、「C1-6アルキルスルファニル(基)」とは、硫黄原子に前記「C1-6アルキル」基が結合した基、すなわち、炭素数が1-6の直鎖又は分岐鎖アルキルスルファニル基を意味する。該「C1-6アルキルスルファニル(基)」としては、例えば、メチルスルファニル、エチルスルファニル、プロピルスルファニル、イソプロピルスルファニル、ブチルスルファニル、イソブチルスルファニル、sec-ブチルスルファニル、tert-ブチルスルファニル、ペンチルスルファニル、イソペンチルスルファニル、ネオペンチルスルファニル、1-エチルプロピルスルファニル、へキシルスルファニル等が挙げられる。
【0041】
本明細書中、「C1-6アルキルスルホニル(基)」とは、スルホニル基に前記「C1-6アルキル」基が結合した基、すなわち、炭素数が1~6の直鎖又は分岐鎖アルキルスルホニル基を意味する。該「C1-6アルキルスルホニル(基)」としては、例えば、メチルスルホニル、エチルスルホニル、プロピルスルホニル、イソプロピルスルホニル、ブチルスルホニル、イソブチルスルホニル、sec-ブチルスルホニル、tert-ブチルスルホニル、ペンチルスルホニル、イソペンチルスルホニル、ネオペンチルスルホニル、1-エチルプロピルスルホニル、へキシルスルホニル等が挙げられる。
【0042】
本明細書中、「アルコキシ-カルボニル(基)」とは、前記アルコキシ基がカルボニル基に結合した基を意味し、特に炭素数範囲は限定されないが、好ましくは、C1-20アルコキシ-カルボニル基であり、より好ましくは、C1-8アルコキシ-カルボニル基である。
【0043】
本明細書中、「アシル(基)」とは、アルカノイル又はアロイルを意味し、特に炭素数範囲は限定されないが、好ましくは、C1-7アルカノイル基又はC7-11アロイルである。
【0044】
本明細書中、「C1-7アルカノイル(基)」とは、炭素原子数1~7の直鎖又は分枝鎖状のホルミル又はアルキルカルボニル(すなわち、C1-6アルキル-カルボニル)であり、例えば、ホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、ペンタノイル、ヘキサノイル、ヘプタノイル等が挙げられる。
【0045】
本明細書中、「C7-11アロイル(基)」とは、炭素原子数7~11のアリールカルボニル(すなわち、C6-10アリール-カルボニル)であり、ベンゾイル等が挙げられる。
【0046】
本明細書中、「アシルオキシ(基)」とは、前記アルカノイル基又はアロイル基が酸素原子と結合した基を意味し、特に炭素数範囲は限定されないが、好ましくは、C1-7アルカノイルオキシ基又はC7-11アロイルオキシ基である。
【0047】
本明細書中、「C1-7アルカノイルオキシ(基)」としては、例えば、ホルミルオキシ、アセトキシ、エチルカルボニルオキシ、プロピルカルボニルオキシ、イソプロピルカルボニルオキシ、ブチルカルボニルオキシ、イソブチルカルボニルオキシ、sec-ブチルカルボニルオキシ、tert-ブチルカルボニルオキシ(ピバロイルオキシ)、ペンチルカルボニルオキシ、イソペンチルカルボニルオキシ、ネオペンチルカルボニルオキシ、ヘキシルカルボニルオキシ等が挙げられ、好ましくは、アセトキシ又はピバロイルオキシである。
【0048】
本明細書中、「C7-11アロイルオキシ(基)」としては、例えば、ベンゾイルオキシ、1-ナフトイルオキシ、2-ナフトイルオキシ等が挙げられる。
【0049】
本明細書中、「アリール(基)」とは、芳香族性を示す単環式或いは多環式(縮合)の炭化水素基を意味し、具体的には、例えば、フェニル、1-ナフチル、2-ナフチル、ビフェニリル、2-アンスリル、フルオレニル等のC6-14アリール基が挙げられ、中でもC6-10アリール基が好ましい。
【0050】
本明細書中、「C6-10アリール(基)」とは、例えば、フェニル、1-ナフチル、2-ナフチルが挙げられ、フェニル又は1-ナフチルが特に好ましい。
【0051】
本明細書中、「アリールオキシ(基)」とは、前記アリール基が酸素原子と結合した基を意味し、好ましくは、C6-14アリールオキシ基であり、より好ましくは、C6-10アリールオキシ基である。
【0052】
本明細書中、「アリールオキシ-カルボニル(基)」とは、前記アリールオキシ基がカルボニル基に結合した基を意味し、特に炭素数範囲は限定されないが、好ましくは、C6-14アリールオキシ-カルボニル基であり、より好ましくは、C6-10アリールオキシ-カルボニル基であり、特に好ましくは、フェノキシ-カルボニル基である。
【0053】
本明細書中、「アラルキル(基)」とは、アルキル基にアリール基が置換した基を意味し、特に炭素数範囲は限定されないが、好ましくは、C7-14アラルキルである。
【0054】
本明細書中、「C7-22アラルキル(基)」とは、「C1-4アルキル基」に「C6-18アリール基」が置換した基を意味し、例えば、ベンジル、1-フェニルエチル、2-フェニルエチル、(ナフチル-1-イル)メチル、(ナフチル-2-イル)メチル、1-(ナフチル-1-イル)エチル、1-(ナフチル-2-イル)エチル、2-(ナフチル-1-イル)エチル、2-(ナフチル-2-イル)エチル、ジフェニルメチル、フルオレニルメチル、トリチル等が挙げられる。
【0055】
本明細書中、「アリールスルホニル(基)」とは、アリール基がスルホニル基に結合した基を意味し、特に炭素数範囲は限定されないが、好ましくは、C6-10アリールスルホニル基である。
【0056】
本明細書中、「C6-10アリールスルホニル(基)」とは、「C6-10アリール基」がスルホニル基に結合した基を意味し、例えば、フェニルスルホニル、1-ナフチルスルホニル、2-ナフチルスルホニル等が挙げられる。
【0057】
本明細書中、「アルキルスルホニルオキシ(基)」とは、アルキルスルホニル基が酸素原子に結合した基を意味し、特に炭素数範囲は限定されないが、好ましくは、C1-6アルキルスルホニルオキシ基である。
【0058】
本明細書中、「C1-6アルキルスルホニルオキシ(基)」とは、C1-6アルキルスルホニル基が酸素原子に結合した基を意味し、例えば、メチルスルホニルオキシ、エチルスルホニルオキシ、プロピルスルホニルオキシ、イソプロピルスルホニルオキシ、ブチルスルホニルオキシ等が挙げられる。
【0059】
本明細書中、「アリールスルホニルオキシ(基)」とは、アリールスルホニル基が酸素原子に結合した基を意味し、特に炭素数範囲は限定されないが、好ましくは、C6-10アリールスルホニルオキシ基である。
【0060】
本明細書中、「C6-10アリールスルホニルオキシ(基)」とは、C6-10アリールスルホニル基が酸素原子に結合した基を意味し、例えば、フェニルスルホニルオキシ、1-ナフチルスルホニルオキシ、2-ナフチルスルホニルオキシ等が挙げられる。
【0061】
本明細書中、「置換アミノ基」とは、アミノ基の2個の水素原子のうちの少なくとも1個が水素原子以外の基で置換された基を意味し、2個の水素原子の両方が置換基により置換されている場合には、該置換基は、同一又は異なっていてもよい。
【0062】
本明細書中、「トリ置換シリル(基)」とは、同一又は異なる3個の置換基(例、C1-6アルキル基、C6-10アリール基等)により置換されたシリル基を意味し、当該基としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基等のトリアルキルシリル基(好ましくは、トリC1-6アルキルシリル基、より好ましくは、トリC1-4アルキルシリル基)、tert-ブチルジフェニルシリル基、トリフェニルシリル基等が好ましい。
【0063】
本明細書中、「トリ置換シリルオキシ(基)」とは、トリ置換シリル基が酸素原子に結合した基を意味し、当該基としては、トリメチルシリルオキシ基、トリエチルシリルオキシ基、トリイソプロピルシリルオキシ基、tert-ブチルジメチルシリルオキシ基等のトリアルキルシリルオキシ基(好ましくは、トリC1-6アルキルシリルオキシ基、より好ましくは、トリC1-4アルキルシリルオキシ基)、tert-ブチルジフェニルシリルオキシ基、トリフェニルシリルオキシ基等が好ましい。
【0064】
本明細書中、「置換アミノ基」を構成する置換基としては、例えば、Protective Groups in Organic Synthesis, John Wiley and Sons(第3版、1999年)に記載のアミノ基の保護基等を使用し得、例えば、C1-6アルキル基、C1-6アルキルスルホニル、C7-22アラルキル基、C6-10アリール基、C1-7アルカノイル基、C7-11アロイル基、C7-14アラルキル-カルボニル基、C1-6アルコキシ-カルボニル基、C7-14アラルキルオキシ-カルボニル基、C6-10アリールスルホニル、トリC1-6アルキルシリル基(例、トリ-C1-6アルキルシリル基(例、トリメチルシリル、tert-ブチル(ジメチル)シリル))等の保護基が挙げられる。上記の保護基は、ハロゲン原子、C1-6アルキル基、C1-6アルコキシ基又はニトロ基により更に置換されていてもよい。当該アミノ基の保護基の具体例としては、メチル(モノメチル又はジメチル)、ベンジル、トリチル、アセチル、トリフルオロアセチル、ピバロイル、tert-ブトキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニル、トリフルオロメタンスルホニル、p-トルエンスルホニル等が挙げられる。
【0065】
「置換されていてもよい」とは、無置換、又は置換可能な位置に1個~5個(好ましくは、1個~3個)の置換基を有することを意味し、各置換基は同一であっても異なっていてもよい。
【0066】
「置換されていてもよい」の置換基としては、例えば、(1)ハロゲン原子、(2)ヒドロキシ基、(3)シアノ基、(4)ニトロ基、(5)アジド基、(6)置換アミノ基、(7)C1-6アルキル基、(8)C1-6アルコキシ基、(9)C3-8シクロアルキル基、(10)C6-10アリール基、(11)C7-22アラルキル基、(12)C1-7アルカノイル基、(13)C7-11アロイル基、(14)C1-7アルカノイルオキシ基、(15)C7-11アロイルオキシ基、(16)C1-6アルコキシ-カルボニル基、(17)C1-6アルキル基でモノ又はジ-置換されていてもよいカルバモイル基、(18)C1-6アルキルスルホニルオキシ基、(19)C6-10アリールスルホニルオキシ基、(20)C1-6アルキルスルファニル、(21)トリ置換シリル基、(22)トリ置換シリルオキシ基、(23)C6-10アリールオキシ-カルボニル基等が挙げられる。中でも、ハロゲン原子、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ、アセチル、ホルミル、カルバモイル、アジド、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリイソプロピルシリル、tert-ブチルジメチルシリル、tert-ブチルジメチルシリルオキシ、フェニル、シクロヘキシル、ジメチルアミノ、アセチルアミノ、tert-ブトキシカルボニルアミノ、ベンジルオキシカルボニルアミノ、メトキシカルボニル、メチルスルファニル等が好ましい。
「置換されていてもよいアルキル」又は「置換されていてもよいアルコキシ」の置換基としては、上記置換基リストから「(7)C1-6アルキル基」及び「(11)C7-22アラルキル基」を除いた置換基が挙げられる。
【0067】
上記置換基は、また、さらに、それぞれ1個以上の、ヒドロキシ基、C1-6アルキル基、C1-6アルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、フェニル基等で置換されていてもよい。
【0068】
本明細書中、「トリアリールホスフィン」とは、同一又は異なる3個のアリール基がリン原子に結合した化合物を意味する。「置換されていてもよいトリアリールホスフィン」としては、特に限定されないが、例えば、トリフェニルホスフィン、トリス(メチルフェニル)ホスフィン、トリス(フルオロフェニル)ホスフィン、トリス(クロロフェニル)ホスフィン等が挙げられる。中でも、トリフェニルホスフィン、トリス(4-フルオロフェニル)ホスフィン又はトリス(4-クロロフェニル)ホスフィンが好ましく、トリフェニルホスフィンがより好ましい。
【0069】
本明細書中、「繰り返し単位」とは、ポリマー化合物を構成する部分単位構造を意味する。該繰り返し単位は、本発明の製造方法により得られる置換ポリ(ジフェニルアセチレン)中に複数個連続して存在する。本発明のポリアセチレン中に複数種の繰り返し単位が存在する場合には、それら複数種の繰り返し単位が、置換ポリ(ジフェニルアセチレン)中にそれぞれ複数個のブロックを形成して存在する。
【0070】
本明細書中、「環状の置換ポリ(ジフェニルアセチレン)」とは、分子末端をもたない置換ポリ(ジフェニルアセチレン)を意味する。本発明の環状の置換ポリ(ジフェニルアセチレン)は、後述する実施例によれば、環拡大重合反応により形成されると推認される。
【0071】
本明細書中、「分子量分布」とは、重量平均分子量(Mw)を、数平均分子量(Mn)で除した値(Mw/Mn)を意味し、この値が1に近いほど、ポリマー化合物(すなわち、置換ポリ(ジフェニルアセチレン))の分子量が揃っていることを意味する。後述する実施例に記載の分子量分布は、紫外可視検出器を備えたゲル浸透クロマトグラフィーにより概算され、ポリスチレン標準により校正されたものである。
【0072】
本明細書中、「還元能を有する助触媒」とは、触媒である4価のハロゲン化タングステンを還元する能力を有する助触媒を意味する。「助触媒」とは、それ自体は触媒として機能しないが、触媒と共に使用した場合に、その触媒が加速させている反応を補助する効果を奏する物質を意味する。
【0073】
本明細書中、「4価のハロゲン化タングステン」とは、4個のハロゲン原子が結合した4価のタングステンを意味し、具体的には、例えば、四フッ化タングステン、四塩化タングステン、四臭化タングステン及び四ヨウ化タングステンが挙げられ、中でも、四塩化タングステン(以下、「WCl4」と称することもある。)が好ましい。
【0074】
本明細書中、「ある程度制御された分子量」とは、使用する触媒とモノマーのモル比と生成するポリマーの分子量(Mn)との間に相当な相関関係があることを意味する。本発明の製造方法においては、使用するモノマーや助触媒の種類にも依るが、得られる置換ポリ(ジフェニルアセチレン)の分子量(Mn)は、数千から20万程度までの広範な分子量範囲で触媒とモノマーのモル比を変化させることによって作り分けることができる。このように、本明細書においては、比較的高い精度で得られる任意の分子量(Mn)を「ある程度制御された分子量」という。
【0075】
(本発明の製造方法)
本発明の製造方法は、
4価のハロゲン化タングステン、
還元能を有する助触媒、及び
置換されていてもよいトリアリールホスフィンの存在下に、
式(I):
【0076】
【0077】
[式中、
n個のR1は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、シアノ基、ニトロ基、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルコキシ基、置換されていてもよいアルキルスルファニル基、置換されていてもよいアシル基、置換されていてもよいアシルオキシ基、置換されていてもよいアルキルスルホニルオキシ基、置換されていてもよいアリールスルホニルオキシ基、置換されていてもよいアルコキシ-カルボニル基、置換されていてもよいアリールオキシ-カルボニル基、置換されていてもよいカルバモイル基又は置換アミノ基を示し、
m個のR2は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、シアノ基、ニトロ基、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルコキシ基、置換されていてもよいアルキルスルファニル基、置換されていてもよいアシル基、置換されていてもよいアシルオキシ基、置換されていてもよいアルキルスルホニルオキシ基、置換されていてもよいアリールスルホニルオキシ基、置換されていてもよいアルコキシ-カルボニル基、置換されていてもよいアリールオキシ-カルボニル基、置換されていてもよいカルバモイル基又は置換アミノ基を示し、
nは、0~3の整数を示し、及び
mは、0~3の整数を示す。]
で表される化合物(化合物(I))を重合させる工程を含むことを特徴とする。
【0078】
4価のハロゲン化タングステンの好ましい態様について、以下に説明する。
4価のハロゲン化タングステンとしては、四フッ化タングステン、四塩化タングステン、四臭化タングステン又は四ヨウ化タングステンが挙げられ、好ましくは、四塩化タングステンである。4価のハロゲン化タングステンは、市販品をそのまま使用してもよいし、自体公知の方法により調製したものを使用することができる。
【0079】
還元能を有する助触媒の好ましい態様について、以下に説明する。
還元能を有する助触媒としては、4価のハロゲン化タングステンを還元する能力を有する化合物であれば、特に限定されないが、好ましくは、テトラフェニルスズ;テトラn-ブチルスズ;ビス(トリメチルシリル)シクロヘキサ-1,4-ジエン;ビス(トリメチルシリル)2-メチルシクロヘキサ-1,4-ジエン;水素化ビス(2-メトキシエトキシ)アルミニウムナトリウム等のアルミニウムヒドリド試薬;9-ボラビシクロ[3.3.1]ノナン等のホウ素ヒドリド試薬;トリエチルシラン等のシラン試薬;メチルマグネシウムブロミド等の有機マグネシウム試薬;及びブチルリチウム等の有機リチウム試薬からなる群より選択される助触媒であり、より好ましくは、テトラフェニルスズ、テトラn-ブチルスズ及びビス(トリメチルシリル)シクロヘキサ-1,4-ジエンからなる群より選択される助触媒である。
【0080】
置換されていてもよいトリアリールホスフィンの好ましい態様について、以下に説明する。
置換されていてもよいトリアリールホスフィンとしては、トリフェニルホスフィン、トリス(メチルフェニル)ホスフィン、トリス(フルオロフェニル)ホスフィン、トリス(クロロフェニル)ホスフィン等が挙げられ、好ましくは、トリフェニルホスフィン、トリス(4-フルオロフェニル)ホスフィン又はトリス(4-クロロフェニル)ホスフィンであり、より好ましくは、トリフェニルホスフィンである。置換されていてもよいトリアリールホスフィンは、市販品をそのまま使用することができる。
【0081】
本発明の製造方法における、4価のハロゲン化タングステン;還元能を有する助触媒;及び置換されていてもよいトリアリールホスフィンからなる反応剤(触媒系)の組み合わせとしては、
好ましくは、四塩化タングステン;テトラフェニルスズ、テトラn-ブチルスズ、ビス(トリメチルシリル)シクロヘキサ-1,4-ジエン、ビス(トリメチルシリル)2-メチルシクロヘキサ-1,4-ジエン、水素化ビス(2-メトキシエトキシ)アルミニウムナトリウム等のアルミニウムヒドリド試薬、9-ボラビシクロ[3.3.1]ノナン等のホウ素ヒドリド試薬、トリエチルシラン等のシラン試薬、メチルマグネシウムブロミド等の有機マグネシウム試薬、及びブチルリチウム等の有機リチウム試薬からなる群より選択される助触媒;並びにトリフェニルホスフィン、トリス(4-フルオロフェニル)ホスフィン又はトリス(4-クロロフェニル)ホスフィンからなる組み合わせであり、
より好ましくは、四塩化タングステン;テトラフェニルスズ、テトラn-ブチルスズ及びビス(トリメチルシリル)シクロヘキサ-1,4-ジエンからなる群より選択される助触媒;及びトリフェニルホスフィンからなる組み合わせである。
【0082】
(化合物(I))
原料モノマー、すなわち、化合物(I)の好ましい態様について、以下に説明する。
化合物(I)としては、前記式(I)中の
n個のR1が、好ましくは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、シアノ基又はハロゲン原子により置換されていてもよいC1-6アルキル基(例、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、トリフルオロメチル)、ハロゲン原子により置換されていてもよいC1-8アルコキシ基(例、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、ヘプチルオキシ、オクチルオキシ、トリフルオロメトキシ、トリフルオロエトキシ)、ハロゲン原子により置換されていてもよいC1-7アルカノイル基(例、アセチル、トリフルオロアセチル)、ハロゲン原子により置換されていてもよいC1-7アルカノイルオキシ基(例、アセトキシ、トリフルオロアセトキシ)、ハロゲン原子により置換されていてもよいC1-6アルキルスルホニルオキシ基(例、メタンスルホニルオキシ、トリフルオロメタンスルホニルオキシ)、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基及びC1-6アルキル基からなる群より選択される基により置換されていてもよいアリールスルホニルオキシ基(例、ベンゼンスルホニルオキシ、4-フルオロベンゼンスルホニルオキシ、2-ニトロベンゼンスルホニルオキシ、p-トルエンスルホニルオキシ)、C1-8アルコキシ-カルボニル基(例、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、ヘプチルオキシカルボニル)、トリC1-6アルキルシリル基(例、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリイソプロピルシリル)、或いは、C1-6アルキルスルホニル基、C1-7アルカノイル基、C7-11アロイル基、C7-14アラルキル-カルボニル基、C1-6アルコキシ-カルボニル基、C7-14アラルキルオキシ-カルボニル基及びC6-10アリールスルホニル基からなる群より選択される基により置換されたアミノ基であり、
より好ましくは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、ハロゲン原子により置換されていてもよいC1-6アルキル基(例、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、ペンチル、トリフルオロメチル)、C1-6アルコキシ基(例、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ)、C1-8アルコキシ-カルボニル基(例、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、ヘプチルオキシカルボニル)又はトリC1-4アルキルシリル基(例、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリイソプロピルシリル)であり;
m個のR2が、好ましくは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、シアノ基又はハロゲン原子により置換されていてもよいC1-6アルキル基(例、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、トリフルオロメチル)、ハロゲン原子により置換されていてもよいC1-8アルコキシ基(例、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、ヘプチルオキシ、オクチルオキシ、トリフルオロメトキシ、トリフルオロエトキシ)、ハロゲン原子により置換されていてもよいC1-7アルカノイル基(例、アセチル、トリフルオロアセチル)、ハロゲン原子により置換されていてもよいC1-7アルカノイルオキシ基(例、アセトキシ、トリフルオロアセトキシ)、ハロゲン原子により置換されていてもよいC1-6アルキルスルホニルオキシ基(例、メタンスルホニルオキシ、トリフルオロメタンスルホニルオキシ)、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基及びC1-6アルキル基からなる群より選択される基により置換されていてもよいアリールスルホニルオキシ基(例、ベンゼンスルホニルオキシ、4-フルオロベンゼンスルホニルオキシ、2-ニトロベンゼンスルホニルオキシ、p-トルエンスルホニルオキシ)、C1-8アルコキシ-カルボニル基(例、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、ヘプチルオキシカルボニル)、トリC1-6アルキルシリル基(例、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリイソプロピルシリル)、或いは、C1-6アルキルスルホニル基、C1-7アルカノイル基、C7-11アロイル基、C7-14アラルキル-カルボニル基、C1-6アルコキシ-カルボニル基、C7-14アラルキルオキシ-カルボニル基及びC6-10アリールスルホニル基からなる群より選択される基により置換されたアミノ基であり、
より好ましくは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、ハロゲン原子により置換されていてもよいC1-6アルキル基(例、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、ペンチル、トリフルオロメチル)、C1-6アルコキシ基(例、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ)、C1-8アルコキシ-カルボニル基(例、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、ヘプチルオキシカルボニル)又はトリC1-4アルキルシリル基(例、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリイソプロピルシリル)であり;
nが、好ましくは、0~2の整数であり、より好ましくは、0又は1であり;及び
mが、好ましくは、0~2の整数であり、より好ましくは、0又は1である。
また、n個のR1及びm個のR2が、それぞれ独立して、存在しないか、或いはフェニルエチニル基に対してメタ位及び/又はパラ位に存在することが好ましく、存在しないか、或いはフェニルエチニル基に対してメタ位又はパラ位に存在することがより好ましい。
【0083】
化合物(I)の別の態様としては、前記式(I)中の
n個のR1が、好ましくは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、シアノ基又はハロゲン原子により置換されていてもよいC1-6アルキル基(例、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、トリフルオロメチル)、ハロゲン原子により置換されていてもよいC1-8アルコキシ基(例、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、ヘプチルオキシ、オクチルオキシ、トリフルオロメトキシ、トリフルオロエトキシ)、ハロゲン原子により置換されていてもよいC1-7アルカノイル基(例、アセチル、トリフルオロアセチル)、ハロゲン原子により置換されていてもよいC1-7アルカノイルオキシ基(例、アセトキシ、トリフルオロアセトキシ)、ハロゲン原子により置換されていてもよいC1-6アルキルスルホニルオキシ基(例、メタンスルホニルオキシ、トリフルオロメタンスルホニルオキシ)、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基及びC1-6アルキル基からなる群より選択される基により置換されていてもよいアリールスルホニルオキシ基(例、ベンゼンスルホニルオキシ、4-フルオロベンゼンスルホニルオキシ、2-ニトロベンゼンスルホニルオキシ、p-トルエンスルホニルオキシ)、C1-8アルコキシ-カルボニル基(例、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、ヘプチルオキシカルボニル)、ハロゲン原子により置換されていてもよいC6-10アリールオキシ-カルボニル基(例、ペンタフルオロフェノキシ-カルボニル)、トリC1-6アルキルシリル基(例、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリイソプロピルシリル)、或いは、C1-6アルキルスルホニル基、C1-7アルカノイル基、C7-11アロイル基、C7-14アラルキル-カルボニル基、C1-6アルコキシ-カルボニル基、C7-14アラルキルオキシ-カルボニル基及びC6-10アリールスルホニル基からなる群より選択される基により置換されたアミノ基であり、
より好ましくは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、ハロゲン原子により置換されていてもよいC1-6アルキル基(例、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、ペンチル、トリフルオロメチル)、C1-6アルコキシ基(例、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ)、C1-8アルコキシ-カルボニル基(例、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、ヘプチルオキシカルボニル)、ハロゲン原子により置換されていてもよいC6-10アリールオキシ-カルボニル基(例、ペンタフルオロフェノキシ-カルボニル)又はトリC1-4アルキルシリル基(例、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリイソプロピルシリル)であり;
m個のR2が、好ましくは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、シアノ基又はハロゲン原子により置換されていてもよいC1-6アルキル基(例、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、トリフルオロメチル)、ハロゲン原子により置換されていてもよいC1-8アルコキシ基(例、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、ヘプチルオキシ、オクチルオキシ、トリフルオロメトキシ、トリフルオロエトキシ)、ハロゲン原子により置換されていてもよいC1-7アルカノイル基(例、アセチル、トリフルオロアセチル)、ハロゲン原子により置換されていてもよいC1-7アルカノイルオキシ基(例、アセトキシ、トリフルオロアセトキシ)、ハロゲン原子により置換されていてもよいC1-6アルキルスルホニルオキシ基(例、メタンスルホニルオキシ、トリフルオロメタンスルホニルオキシ)、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基及びC1-6アルキル基からなる群より選択される基により置換されていてもよいアリールスルホニルオキシ基(例、ベンゼンスルホニルオキシ、4-フルオロベンゼンスルホニルオキシ、2-ニトロベンゼンスルホニルオキシ、p-トルエンスルホニルオキシ)、C1-8アルコキシ-カルボニル基(例、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、ヘプチルオキシカルボニル)、ハロゲン原子により置換されていてもよいC6-10アリールオキシ-カルボニル基(例、ペンタフルオロフェノキシ-カルボニル)、トリC1-6アルキルシリル基(例、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリイソプロピルシリル)、或いは、C1-6アルキルスルホニル基、C1-7アルカノイル基、C7-11アロイル基、C7-14アラルキル-カルボニル基、C1-6アルコキシ-カルボニル基、C7-14アラルキルオキシ-カルボニル基及びC6-10アリールスルホニル基からなる群より選択される基により置換されたアミノ基であり、
より好ましくは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、ハロゲン原子により置換されていてもよいC1-6アルキル基(例、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、ペンチル、トリフルオロメチル)、C1-6アルコキシ基(例、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ)、C1-8アルコキシ-カルボニル基(例、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、ヘプチルオキシカルボニル)、ハロゲン原子により置換されていてもよいC6-10アリールオキシ-カルボニル基(例、ペンタフルオロフェノキシ-カルボニル)、又はトリC1-4アルキルシリル基(例、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリイソプロピルシリル)であり;
nが、好ましくは、0~2の整数であり、より好ましくは、0又は1であり;及び
mが、好ましくは、0~2の整数であり、より好ましくは、0又は1である。
また、n個のR1及びm個のR2が、それぞれ独立して、存在しないか、或いはフェニルエチニル基に対してメタ位及び/又はパラ位に存在することが好ましく、存在しないか、或いはフェニルエチニル基に対してメタ位又はパラ位に存在することがより好ましい。
【0084】
好適な化合物(I)としては、以下の化合物が挙げられる。
[化合物I-A]
前記式(I)中の
n個のR1が、それぞれ独立して、ハロゲン原子、シアノ基又はハロゲン原子により置換されていてもよいC1-6アルキル基(例、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、トリフルオロメチル)、ハロゲン原子により置換されていてもよいC1-8アルコキシ基(例、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、ヘプチルオキシ、オクチルオキシ、トリフルオロメトキシ、トリフルオロエトキシ)、ハロゲン原子により置換されていてもよいC1-7アルカノイル基(例、アセチル、トリフルオロアセチル)、ハロゲン原子により置換されていてもよいC1-7アルカノイルオキシ基(例、アセトキシ、トリフルオロアセトキシ)、ハロゲン原子により置換されていてもよいC1-6アルキルスルホニルオキシ基(例、メタンスルホニルオキシ、トリフルオロメタンスルホニルオキシ)、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基及びC1-6アルキル基からなる群より選択される基により置換されていてもよいアリールスルホニルオキシ基(例、ベンゼンスルホニルオキシ、4-フルオロベンゼンスルホニルオキシ、2-ニトロベンゼンスルホニルオキシ、p-トルエンスルホニルオキシ)、C1-8アルコキシ-カルボニル基(例、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、ヘプチルオキシカルボニル)、トリC1-6アルキルシリル基(例、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリイソプロピルシリル)、或いは、C1-6アルキルスルホニル基、C1-7アルカノイル基、C7-11アロイル基、C7-14アラルキル-カルボニル基、C1-6アルコキシ-カルボニル基、C7-14アラルキルオキシ-カルボニル基及びC6-10アリールスルホニル基からなる群より選択される基により置換されたアミノ基であり;
m個のR2が、それぞれ独立して、ハロゲン原子、シアノ基又はハロゲン原子により置換されていてもよいC1-6アルキル基(例、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、トリフルオロメチル)、ハロゲン原子により置換されていてもよいC1-8アルコキシ基(例、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、ヘプチルオキシ、オクチルオキシ、トリフルオロメトキシ、トリフルオロエトキシ)、ハロゲン原子により置換されていてもよいC1-7アルカノイル基(例、アセチル、トリフルオロアセチル)、ハロゲン原子により置換されていてもよいC1-7アルカノイルオキシ基(例、アセトキシ、トリフルオロアセトキシ)、ハロゲン原子により置換されていてもよいC1-6アルキルスルホニルオキシ基(例、メタンスルホニルオキシ、トリフルオロメタンスルホニルオキシ)、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基及びC1-6アルキル基からなる群より選択される基により置換されていてもよいアリールスルホニルオキシ基(例、ベンゼンスルホニルオキシ、4-フルオロベンゼンスルホニルオキシ、2-ニトロベンゼンスルホニルオキシ、p-トルエンスルホニルオキシ)、C1-8アルコキシ-カルボニル基(例、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、ヘプチルオキシカルボニル)、トリC1-6アルキルシリル基(例、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリイソプロピルシリル)、或いは、C1-6アルキルスルホニル基、C1-7アルカノイル基、C7-11アロイル基、C7-14アラルキル-カルボニル基、C1-6アルコキシ-カルボニル基、C7-14アラルキルオキシ-カルボニル基及びC6-10アリールスルホニル基からなる群より選択される基により置換されたアミノ基であり;
nが、0~2の整数であり;
mが、0~2の整数であり;並びに
n個のR1及びm個のR2が、それぞれ独立して、存在しないか、或いはフェニルエチニル基に対してメタ位及び/又はパラ位に存在する、
化合物(I)。
【0085】
[化合物I-B]
前記式(I)中の
n個のR1が、それぞれ独立して、ハロゲン原子、ハロゲン原子により置換されていてもよいC1-6アルキル基(例、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、ペンチル、トリフルオロメチル)、C1-6アルコキシ基(例、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ)、C1-8アルコキシ-カルボニル基(例、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、ヘプチルオキシカルボニル)又はトリC1-4アルキルシリル基(例、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリイソプロピルシリル)であり;
m個のR2が、それぞれ独立して、ハロゲン原子、ハロゲン原子により置換されていてもよいC1-6アルキル基(例、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、ペンチル、トリフルオロメチル)、C1-6アルコキシ基(例、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ)、C1-8アルコキシ-カルボニル基(例、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、ヘプチルオキシカルボニル)又はトリC1-4アルキルシリル基(例、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリイソプロピルシリル)であり;
nが、0又は1であり;
mが、0又は1であり;並びに
n個のR1及びm個のR2が、それぞれ独立して、存在しないか、或いはフェニルエチニル基に対してメタ位又はパラ位に存在する、
化合物(I)。
【0086】
[化合物I-A’]
前記式(I)中の
n個のR1が、それぞれ独立して、ハロゲン原子、シアノ基又はハロゲン原子により置換されていてもよいC1-6アルキル基(例、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、トリフルオロメチル)、ハロゲン原子により置換されていてもよいC1-8アルコキシ基(例、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、ヘプチルオキシ、オクチルオキシ、トリフルオロメトキシ、トリフルオロエトキシ)、ハロゲン原子により置換されていてもよいC1-7アルカノイル基(例、アセチル、トリフルオロアセチル)、ハロゲン原子により置換されていてもよいC1-7アルカノイルオキシ基(例、アセトキシ、トリフルオロアセトキシ)、ハロゲン原子により置換されていてもよいC1-6アルキルスルホニルオキシ基(例、メタンスルホニルオキシ、トリフルオロメタンスルホニルオキシ)、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基及びC1-6アルキル基からなる群より選択される基により置換されていてもよいアリールスルホニルオキシ基(例、ベンゼンスルホニルオキシ、4-フルオロベンゼンスルホニルオキシ、2-ニトロベンゼンスルホニルオキシ、p-トルエンスルホニルオキシ)、C1-8アルコキシ-カルボニル基(例、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、ヘプチルオキシカルボニル)、ハロゲン原子により置換されていてもよいC6-10アリールオキシ-カルボニル基(例、ペンタフルオロフェノキシ-カルボニル)、トリC1-6アルキルシリル基(例、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリイソプロピルシリル)、或いは、C1-6アルキルスルホニル基、C1-7アルカノイル基、C7-11アロイル基、C7-14アラルキル-カルボニル基、C1-6アルコキシ-カルボニル基、C7-14アラルキルオキシ-カルボニル基及びC6-10アリールスルホニル基からなる群より選択される基により置換されたアミノ基であり;
m個のR2が、それぞれ独立して、ハロゲン原子、シアノ基又はハロゲン原子により置換されていてもよいC1-6アルキル基(例、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、トリフルオロメチル)、ハロゲン原子により置換されていてもよいC1-8アルコキシ基(例、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、ヘプチルオキシ、オクチルオキシ、トリフルオロメトキシ、トリフルオロエトキシ)、ハロゲン原子により置換されていてもよいC1-7アルカノイル基(例、アセチル、トリフルオロアセチル)、ハロゲン原子により置換されていてもよいC1-7アルカノイルオキシ基(例、アセトキシ、トリフルオロアセトキシ)、ハロゲン原子により置換されていてもよいC1-6アルキルスルホニルオキシ基(例、メタンスルホニルオキシ、トリフルオロメタンスルホニルオキシ)、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基及びC1-6アルキル基からなる群より選択される基により置換されていてもよいアリールスルホニルオキシ基(例、ベンゼンスルホニルオキシ、4-フルオロベンゼンスルホニルオキシ、2-ニトロベンゼンスルホニルオキシ、p-トルエンスルホニルオキシ)、C1-8アルコキシ-カルボニル基(例、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、ヘプチルオキシカルボニル)、ハロゲン原子により置換されていてもよいC6-10アリールオキシ-カルボニル基(例、ペンタフルオロフェノキシ-カルボニル)、トリC1-6アルキルシリル基(例、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリイソプロピルシリル)、或いは、C1-6アルキルスルホニル基、C1-7アルカノイル基、C7-11アロイル基、C7-14アラルキル-カルボニル基、C1-6アルコキシ-カルボニル基、C7-14アラルキルオキシ-カルボニル基及びC6-10アリールスルホニル基からなる群より選択される基により置換されたアミノ基であり;
nが、0~2の整数であり;
mが、0~2の整数であり;並びに
n個のR1及びm個のR2が、それぞれ独立して、存在しないか、或いはフェニルエチニル基に対してメタ位及び/又はパラ位に存在する、
化合物(I)。
【0087】
[化合物I-B’]
前記式(I)中の
n個のR1が、それぞれ独立して、ハロゲン原子、ハロゲン原子により置換されていてもよいC1-6アルキル基(例、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、ペンチル、トリフルオロメチル)、C1-6アルコキシ基(例、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ)、C1-8アルコキシ-カルボニル基(例、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、ヘプチルオキシカルボニル)、ハロゲン原子により置換されていてもよいC6-10アリールオキシ-カルボニル基(例、ペンタフルオロフェノキシ-カルボニル)、又はトリC1-4アルキルシリル基(例、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリイソプロピルシリル)であり;
m個のR2が、それぞれ独立して、ハロゲン原子、ハロゲン原子により置換されていてもよいC1-6アルキル基(例、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、ペンチル、トリフルオロメチル)、C1-6アルコキシ基(例、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ)、C1-8アルコキシ-カルボニル基(例、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、ヘプチルオキシカルボニル)、ハロゲン原子により置換されていてもよいC6-10アリールオキシ-カルボニル基(例、ペンタフルオロフェノキシ-カルボニル)、又はトリC1-4アルキルシリル基(例、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリイソプロピルシリル)であり;
nが、0又は1であり;
mが、0又は1であり;並びに
n個のR1及びm個のR2が、それぞれ独立して、存在しないか、或いはフェニルエチニル基に対してメタ位又はパラ位に存在する、
化合物(I)。
【0088】
化合物(I)の好ましい具体例としては、例えば、下記式:
【0089】
【0090】
で表される化合物等が挙げられる。
【0091】
化合物(I)は、市販品を容易に入手して、そのまま使用することができるか、又は自体公知の方法(例えば、Molecules 2016, 21, 1487;Chem. Lett. 2016, 45, 1063-1065; Angew. Chem. Int. Ed. 2020, 59, 14772-14780等参照)、若しくはそれに準ずる方法に従って製造することが可能である。
【0092】
(化合物(II))
本発明の製造方法により得られる化合物は、下記式(II):
【0093】
【0094】
[式中の各記号は、前記と同義を示す。]
で表される繰り返し単位を有する、環状の置換ポリ(ジフェニルアセチレン)(化合物(II))である。
【0095】
化合物(II)の好ましい態様について、以下に説明する。
化合物(II)としては、前記式(II)中の
n個のR1が、好ましくは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、シアノ基又はハロゲン原子により置換されていてもよいC1-6アルキル基(例、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、トリフルオロメチル)、ハロゲン原子により置換されていてもよいC1-8アルコキシ基(例、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、ヘプチルオキシ、オクチルオキシ、トリフルオロメトキシ、トリフルオロエトキシ)、ハロゲン原子により置換されていてもよいC1-7アルカノイル基(例、アセチル、トリフルオロアセチル)、ハロゲン原子により置換されていてもよいC1-7アルカノイルオキシ基(例、アセトキシ、トリフルオロアセトキシ)、ハロゲン原子により置換されていてもよいC1-6アルキルスルホニルオキシ基(例、メタンスルホニルオキシ、トリフルオロメタンスルホニルオキシ)、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基及びC1-6アルキル基からなる群より選択される基により置換されていてもよいアリールスルホニルオキシ基(例、ベンゼンスルホニルオキシ、4-フルオロベンゼンスルホニルオキシ、2-ニトロベンゼンスルホニルオキシ、p-トルエンスルホニルオキシ)、C1-8アルコキシ-カルボニル基(例、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、ヘプチルオキシカルボニル)、トリC1-6アルキルシリル基(例、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリイソプロピルシリル)、或いは、C1-6アルキルスルホニル基、C1-7アルカノイル基、C7-11アロイル基、C7-14アラルキル-カルボニル基、C1-6アルコキシ-カルボニル基、C7-14アラルキルオキシ-カルボニル基及びC6-10アリールスルホニル基からなる群より選択される基により置換されたアミノ基であり、
より好ましくは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、ハロゲン原子により置換されていてもよいC1-6アルキル基(例、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、ペンチル、トリフルオロメチル)、C1-6アルコキシ基(例、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ)、C1-8アルコキシ-カルボニル基(例、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、ヘプチルオキシカルボニル)又はトリC1-4アルキルシリル基(例、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリイソプロピルシリル)であり;
m個のR2が、好ましくは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、シアノ基又はハロゲン原子により置換されていてもよいC1-6アルキル基(例、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、トリフルオロメチル)、ハロゲン原子により置換されていてもよいC1-8アルコキシ基(例、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、ヘプチルオキシ、オクチルオキシ、トリフルオロメトキシ、トリフルオロエトキシ)、ハロゲン原子により置換されていてもよいC1-7アルカノイル基(例、アセチル、トリフルオロアセチル)、ハロゲン原子により置換されていてもよいC1-7アルカノイルオキシ基(例、アセトキシ、トリフルオロアセトキシ)、ハロゲン原子により置換されていてもよいC1-6アルキルスルホニルオキシ基(例、メタンスルホニルオキシ、トリフルオロメタンスルホニルオキシ)、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基及びC1-6アルキル基からなる群より選択される基により置換されていてもよいアリールスルホニルオキシ基(例、ベンゼンスルホニルオキシ、4-フルオロベンゼンスルホニルオキシ、2-ニトロベンゼンスルホニルオキシ、p-トルエンスルホニルオキシ)、C1-8アルコキシ-カルボニル基(例、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、ヘプチルオキシカルボニル)、トリC1-6アルキルシリル基(例、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリイソプロピルシリル)、或いは、C1-6アルキルスルホニル基、C1-7アルカノイル基、C7-11アロイル基、C7-14アラルキル-カルボニル基、C1-6アルコキシ-カルボニル基、C7-14アラルキルオキシ-カルボニル基及びC6-10アリールスルホニル基からなる群より選択される基により置換されたアミノ基であり、
より好ましくは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、ハロゲン原子により置換されていてもよいC1-6アルキル基(例、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、ペンチル、トリフルオロメチル)、C1-6アルコキシ基(例、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ)、C1-8アルコキシ-カルボニル基(例、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、ヘプチルオキシカルボニル)又はトリC1-4アルキルシリル基(例、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリイソプロピルシリル)であり;
nが、好ましくは、0~2の整数であり、より好ましくは、0又は1であり;及び
mが、好ましくは、0~2の整数であり、より好ましくは、0又は1である。
また、n個のR1及びm個のR2が、それぞれ独立して、存在しないか、或いは置換スチリル基に対してメタ位及び/又はパラ位に存在することが好ましく、存在しないか、或いは置換スチリル基に対してメタ位又はパラ位に存在することがより好ましい。
【0096】
化合物(II)の別の好ましい態様としては、前記式(II)中の
n個のR1が、好ましくは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、シアノ基又はハロゲン原子により置換されていてもよいC1-6アルキル基(例、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、トリフルオロメチル)、ハロゲン原子により置換されていてもよいC1-8アルコキシ基(例、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、ヘプチルオキシ、オクチルオキシ、トリフルオロメトキシ、トリフルオロエトキシ)、ハロゲン原子により置換されていてもよいC1-7アルカノイル基(例、アセチル、トリフルオロアセチル)、ハロゲン原子により置換されていてもよいC1-7アルカノイルオキシ基(例、アセトキシ、トリフルオロアセトキシ)、ハロゲン原子により置換されていてもよいC1-6アルキルスルホニルオキシ基(例、メタンスルホニルオキシ、トリフルオロメタンスルホニルオキシ)、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基及びC1-6アルキル基からなる群より選択される基により置換されていてもよいアリールスルホニルオキシ基(例、ベンゼンスルホニルオキシ、4-フルオロベンゼンスルホニルオキシ、2-ニトロベンゼンスルホニルオキシ、p-トルエンスルホニルオキシ)、C1-8アルコキシ-カルボニル基(例、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、ヘプチルオキシカルボニル)、ハロゲン原子により置換されていてもよいC6-10アリールオキシ-カルボニル基(例、ペンタフルオロフェノキシ-カルボニル)、トリC1-6アルキルシリル基(例、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリイソプロピルシリル)、或いは、C1-6アルキルスルホニル基、C1-7アルカノイル基、C7-11アロイル基、C7-14アラルキル-カルボニル基、C1-6アルコキシ-カルボニル基、C7-14アラルキルオキシ-カルボニル基及びC6-10アリールスルホニル基からなる群より選択される基により置換されたアミノ基であり、
より好ましくは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、ハロゲン原子により置換されていてもよいC1-6アルキル基(例、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、ペンチル、トリフルオロメチル)、C1-6アルコキシ基(例、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ)、C1-8アルコキシ-カルボニル基(例、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、ヘプチルオキシカルボニル)、ハロゲン原子により置換されていてもよいC6-10アリールオキシ-カルボニル基(例、ペンタフルオロフェノキシ-カルボニル)、又はトリC1-4アルキルシリル基(例、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリイソプロピルシリル)であり;
m個のR2が、好ましくは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、シアノ基又はハロゲン原子により置換されていてもよいC1-6アルキル基(例、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、トリフルオロメチル)、ハロゲン原子により置換されていてもよいC1-8アルコキシ基(例、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、ヘプチルオキシ、オクチルオキシ、トリフルオロメトキシ、トリフルオロエトキシ)、ハロゲン原子により置換されていてもよいC1-7アルカノイル基(例、アセチル、トリフルオロアセチル)、ハロゲン原子により置換されていてもよいC1-7アルカノイルオキシ基(例、アセトキシ、トリフルオロアセトキシ)、ハロゲン原子により置換されていてもよいC1-6アルキルスルホニルオキシ基(例、メタンスルホニルオキシ、トリフルオロメタンスルホニルオキシ)、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基及びC1-6アルキル基からなる群より選択される基により置換されていてもよいアリールスルホニルオキシ基(例、ベンゼンスルホニルオキシ、4-フルオロベンゼンスルホニルオキシ、2-ニトロベンゼンスルホニルオキシ、p-トルエンスルホニルオキシ)、C1-8アルコキシ-カルボニル基(例、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、ヘプチルオキシカルボニル)、ハロゲン原子により置換されていてもよいC6-10アリールオキシ-カルボニル基(例、ペンタフルオロフェノキシ-カルボニル)、トリC1-6アルキルシリル基(例、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリイソプロピルシリル)、或いは、C1-6アルキルスルホニル基、C1-7アルカノイル基、C7-11アロイル基、C7-14アラルキル-カルボニル基、C1-6アルコキシ-カルボニル基、C7-14アラルキルオキシ-カルボニル基及びC6-10アリールスルホニル基からなる群より選択される基により置換されたアミノ基であり、
より好ましくは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、ハロゲン原子により置換されていてもよいC1-6アルキル基(例、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、ペンチル、トリフルオロメチル)、C1-6アルコキシ基(例、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ)、C1-8アルコキシ-カルボニル基(例、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、ヘプチルオキシカルボニル)、ハロゲン原子により置換されていてもよいC6-10アリールオキシ-カルボニル基(例、ペンタフルオロフェノキシ-カルボニル)、又はトリC1-4アルキルシリル基(例、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリイソプロピルシリル)であり;
nが、好ましくは、0~2の整数であり、より好ましくは、0又は1であり;及び
mが、好ましくは、0~2の整数であり、より好ましくは、0又は1である。
また、n個のR1及びm個のR2が、それぞれ独立して、存在しないか、或いは置換スチリル基に対してメタ位及び/又はパラ位に存在することが好ましく、存在しないか、或いは置換スチリル基に対してメタ位又はパラ位に存在することがより好ましい。
【0097】
好適な化合物(II)としては、以下の化合物が挙げられる。
[化合物II-A]
前記式(II)中の
n個のR1が、それぞれ独立して、ハロゲン原子、シアノ基又はハロゲン原子により置換されていてもよいC1-6アルキル基(例、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、トリフルオロメチル)、ハロゲン原子により置換されていてもよいC1-8アルコキシ基(例、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、ヘプチルオキシ、オクチルオキシ、トリフルオロメトキシ、トリフルオロエトキシ)、ハロゲン原子により置換されていてもよいC1-7アルカノイル基(例、アセチル、トリフルオロアセチル)、ハロゲン原子により置換されていてもよいC1-7アルカノイルオキシ基(例、アセトキシ、トリフルオロアセトキシ)、ハロゲン原子により置換されていてもよいC1-6アルキルスルホニルオキシ基(例、メタンスルホニルオキシ、トリフルオロメタンスルホニルオキシ)、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基及びC1-6アルキル基からなる群より選択される基により置換されていてもよいアリールスルホニルオキシ基(例、ベンゼンスルホニルオキシ、4-フルオロベンゼンスルホニルオキシ、2-ニトロベンゼンスルホニルオキシ、p-トルエンスルホニルオキシ)、C1-8アルコキシ-カルボニル基(例、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、ヘプチルオキシカルボニル)、トリC1-6アルキルシリル基(例、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリイソプロピルシリル)、或いは、C1-6アルキルスルホニル基、C1-7アルカノイル基、C7-11アロイル基、C7-14アラルキル-カルボニル基、C1-6アルコキシ-カルボニル基、C7-14アラルキルオキシ-カルボニル基及びC6-10アリールスルホニル基からなる群より選択される基により置換されたアミノ基であり;
m個のR2が、それぞれ独立して、ハロゲン原子、シアノ基又はハロゲン原子により置換されていてもよいC1-6アルキル基(例、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、トリフルオロメチル)、ハロゲン原子により置換されていてもよいC1-8アルコキシ基(例、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、ヘプチルオキシ、オクチルオキシ、トリフルオロメトキシ、トリフルオロエトキシ)、ハロゲン原子により置換されていてもよいC1-7アルカノイル基(例、アセチル、トリフルオロアセチル)、ハロゲン原子により置換されていてもよいC1-7アルカノイルオキシ基(例、アセトキシ、トリフルオロアセトキシ)、ハロゲン原子により置換されていてもよいC1-6アルキルスルホニルオキシ基(例、メタンスルホニルオキシ、トリフルオロメタンスルホニルオキシ)、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基及びC1-6アルキル基からなる群より選択される基により置換されていてもよいアリールスルホニルオキシ基(例、ベンゼンスルホニルオキシ、4-フルオロベンゼンスルホニルオキシ、2-ニトロベンゼンスルホニルオキシ、p-トルエンスルホニルオキシ)、C1-8アルコキシ-カルボニル基(例、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、ヘプチルオキシカルボニル)、トリC1-6アルキルシリル基(例、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリイソプロピルシリル)、或いは、C1-6アルキルスルホニル基、C1-7アルカノイル基、C7-11アロイル基、C7-14アラルキル-カルボニル基、C1-6アルコキシ-カルボニル基、C7-14アラルキルオキシ-カルボニル基及びC6-10アリールスルホニル基からなる群より選択される基により置換されたアミノ基であり;
nが、0~2の整数であり;
mが、0~2の整数であり;並びに
n個のR1及びm個のR2が、それぞれ独立して、存在しないか、或いは置換スチリル基に対してメタ位及び/又はパラ位に存在する、繰り返し単位を有する、
化合物(II)。
【0098】
[化合物II-B]
前記式(II)中の
n個のR1が、それぞれ独立して、ハロゲン原子、ハロゲン原子により置換されていてもよいC1-6アルキル基(例、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、ペンチル、トリフルオロメチル)、C1-6アルコキシ基(例、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ)、C1-8アルコキシ-カルボニル基(例、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、ヘプチルオキシカルボニル)又はトリC1-4アルキルシリル基(例、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリイソプロピルシリル)であり;
m個のR2が、それぞれ独立して、ハロゲン原子、ハロゲン原子により置換されていてもよいC1-6アルキル基(例、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、ペンチル、トリフルオロメチル)、C1-6アルコキシ基(例、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ)、C1-8アルコキシ-カルボニル基(例、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、ヘプチルオキシカルボニル)又はトリC1-4アルキルシリル基(例、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリイソプロピルシリル)であり;
nが、0又は1であり;
mが、0又は1であり;並びに
n個のR1及びm個のR2が、それぞれ独立して、存在しないか、或いは置換スチリル基に対してメタ位又はパラ位に存在する、繰り返し単位を有する、
化合物(II)。
【0099】
[化合物II-A’]
前記式(II)中の
n個のR1が、それぞれ独立して、ハロゲン原子、シアノ基又はハロゲン原子により置換されていてもよいC1-6アルキル基(例、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、トリフルオロメチル)、ハロゲン原子により置換されていてもよいC1-8アルコキシ基(例、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、ヘプチルオキシ、オクチルオキシ、トリフルオロメトキシ、トリフルオロエトキシ)、ハロゲン原子により置換されていてもよいC1-7アルカノイル基(例、アセチル、トリフルオロアセチル)、ハロゲン原子により置換されていてもよいC1-7アルカノイルオキシ基(例、アセトキシ、トリフルオロアセトキシ)、ハロゲン原子により置換されていてもよいC1-6アルキルスルホニルオキシ基(例、メタンスルホニルオキシ、トリフルオロメタンスルホニルオキシ)、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基及びC1-6アルキル基からなる群より選択される基により置換されていてもよいアリールスルホニルオキシ基(例、ベンゼンスルホニルオキシ、4-フルオロベンゼンスルホニルオキシ、2-ニトロベンゼンスルホニルオキシ、p-トルエンスルホニルオキシ)、C1-8アルコキシ-カルボニル基(例、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、ヘプチルオキシカルボニル)、ハロゲン原子により置換されていてもよいC6-10アリールオキシ-カルボニル基(例、ペンタフルオロフェノキシ-カルボニル)、トリC1-6アルキルシリル基(例、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリイソプロピルシリル)、或いは、C1-6アルキルスルホニル基、C1-7アルカノイル基、C7-11アロイル基、C7-14アラルキル-カルボニル基、C1-6アルコキシ-カルボニル基、C7-14アラルキルオキシ-カルボニル基及びC6-10アリールスルホニル基からなる群より選択される基により置換されたアミノ基であり;
m個のR2が、それぞれ独立して、ハロゲン原子、シアノ基又はハロゲン原子により置換されていてもよいC1-6アルキル基(例、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、トリフルオロメチル)、ハロゲン原子により置換されていてもよいC1-8アルコキシ基(例、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、ヘプチルオキシ、オクチルオキシ、トリフルオロメトキシ、トリフルオロエトキシ)、ハロゲン原子により置換されていてもよいC1-7アルカノイル基(例、アセチル、トリフルオロアセチル)、ハロゲン原子により置換されていてもよいC1-7アルカノイルオキシ基(例、アセトキシ、トリフルオロアセトキシ)、ハロゲン原子により置換されていてもよいC1-6アルキルスルホニルオキシ基(例、メタンスルホニルオキシ、トリフルオロメタンスルホニルオキシ)、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基及びC1-6アルキル基からなる群より選択される基により置換されていてもよいアリールスルホニルオキシ基(例、ベンゼンスルホニルオキシ、4-フルオロベンゼンスルホニルオキシ、2-ニトロベンゼンスルホニルオキシ、p-トルエンスルホニルオキシ)、C1-8アルコキシ-カルボニル基(例、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、ヘプチルオキシカルボニル)、ハロゲン原子により置換されていてもよいC6-10アリールオキシ-カルボニル基(例、ペンタフルオロフェノキシ-カルボニル)、トリC1-6アルキルシリル基(例、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリイソプロピルシリル)、或いは、C1-6アルキルスルホニル基、C1-7アルカノイル基、C7-11アロイル基、C7-14アラルキル-カルボニル基、C1-6アルコキシ-カルボニル基、C7-14アラルキルオキシ-カルボニル基及びC6-10アリールスルホニル基からなる群より選択される基により置換されたアミノ基であり;
nが、0~2の整数であり;
mが、0~2の整数であり;並びに
n個のR1及びm個のR2が、それぞれ独立して、存在しないか、或いは置換スチリル基に対してメタ位及び/又はパラ位に存在する、繰り返し単位を有する、
化合物(II)。
【0100】
[化合物II-B’]
前記式(II)中の
n個のR1が、それぞれ独立して、ハロゲン原子、ハロゲン原子により置換されていてもよいC1-6アルキル基(例、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、ペンチル、トリフルオロメチル)、C1-6アルコキシ基(例、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ)、C1-8アルコキシ-カルボニル基(例、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、ヘプチルオキシカルボニル)、ハロゲン原子により置換されていてもよいC6-10アリールオキシ-カルボニル基(例、ペンタフルオロフェノキシ-カルボニル)、又はトリC1-4アルキルシリル基(例、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリイソプロピルシリル)であり;
m個のR2が、それぞれ独立して、ハロゲン原子、ハロゲン原子により置換されていてもよいC1-6アルキル基(例、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、ペンチル、トリフルオロメチル)、C1-6アルコキシ基(例、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ)、C1-8アルコキシ-カルボニル基(例、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、ヘプチルオキシカルボニル)、ハロゲン原子により置換されていてもよいC6-10アリールオキシ-カルボニル基(例、ペンタフルオロフェノキシ-カルボニル)、又はトリC1-4アルキルシリル基(例、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリイソプロピルシリル)であり;
nが、0又は1であり;
mが、0又は1であり;並びに
n個のR1及びm個のR2が、それぞれ独立して、存在しないか、或いは置換スチリル基に対してメタ位又はパラ位に存在する、繰り返し単位を有する、
化合物(II)。
【0101】
化合物(II)の好ましい具体例としては、例えば、下記式:
【0102】
【0103】
で表される繰り返し単位を有する、環状の置換ポリ(ジフェニルアセチレン)(化合物(II))である。
【0104】
化合物(II)の中でも、下記式(II’):
【0105】
【0106】
[式中、
R1’及びR2’は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、シアノ基、ニトロ基、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルコキシ基、置換されていてもよいアルキルスルファニル基、置換されていてもよいアシル基、置換されていてもよいアシルオキシ基、置換されていてもよいアルキルスルホニルオキシ基、置換されていてもよいアリールスルホニルオキシ基、置換されていてもよいアルコキシ-カルボニル基、置換されていてもよいC6-10アリールオキシ-カルボニル基(例、ペンタフルオロフェノキシ-カルボニル)、置換されていてもよいカルバモイル基又は置換アミノ基を示す。]
で表される繰り返し単位を有する、環状の置換ポリ(ジフェニルアセチレン)(化合物(II’))又はその塩は、新規化合物である。
【0107】
好適な化合物(II’)としては、以下の化合物が挙げられる。
[化合物II’-A]
前記式(II’)中の
R1’及びR2’が、それぞれ独立して、ハロゲン原子、ハロゲン原子により置換されていてもよいC1-6アルキル基(例、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、ペンチル、トリフルオロメチル)、C1-6アルコキシ基(例、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ)、C1-8アルコキシ-カルボニル基(例、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、ヘプチルオキシカルボニル)又はトリC1-4アルキルシリル基(例、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリイソプロピルシリル)である、繰り返し単位を有する、化合物(II’)。
【0108】
[化合物II’-B]
前記式(II’)中の
R1’及びR2’が、それぞれ独立して、ハロゲン原子、ハロゲン原子により置換されていてもよいC1-6アルキル基(例、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、ペンチル、トリフルオロメチル)、C1-6アルコキシ基(例、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ)、C1-8アルコキシ-カルボニル基(例、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、ヘプチルオキシカルボニル)、ハロゲン原子により置換されていてもよいC6-10アリールオキシ-カルボニル基(例、ペンタフルオロフェノキシ-カルボニル)、又はトリC1-4アルキルシリル基(例、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリイソプロピルシリル)である、繰り返し単位を有する、化合物(II’)。
【0109】
化合物(II’)の好ましい具体例としては、例えば、下記式:
【0110】
【0111】
で表される繰り返し単位を有する、環状の置換ポリ(ジフェニルアセチレン)(化合物(II’))である。
【0112】
本発明の製造方法における、4価のハロゲン化タングステン、還元能を有する助触媒、及び置換されていてもよいトリアリールホスフィンの配合割合(触媒系の配合割合)は、4価のハロゲン化タングステン1モルに対して、還元能を有する助触媒は、1.0~5.0モル(好ましくは、1.0~4.0モル、より好ましくは、1.0~3.0モル)であり、置換されていてもよいトリアリールホスフィンは、0.05~1.0モル(好ましくは、0.1~0.5モル、より好ましくは、0.1~0.2モル)である。
【0113】
本発明の製造方法における化合物(I)の添加量は、所望する化合物(II)(又は化合物(II’))(ポリマー)の分子量に応じて任意に設定することが可能であるが、通常、4価のハロゲン化タングステン1モルに対する化合物(I)(モノマー)のモル比([モノマー]/[ハロゲン化タングステン])で、10~2000、好ましくは50~1000である。
【0114】
本発明の製造方法に使用する溶媒としては、原料を溶解でき、反応に不活性な溶媒であれば、特に制限なく用いることができる。例えば、エチルtert-ブチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化水素類;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等のアミド類が挙げられ、これらは1種又は2種以上で用いることもできる。中でも、トルエンが好ましい。
【0115】
本発明の製造方法においては、使用する4価のハロゲン化タングステン、還元能を有する助触媒、置換されていてもよいトリアリールホスフィン及び使用する溶媒の種類により適宜好適な反応条件を選択し得るが、不活性ガス雰囲気下、封管(密閉した耐圧管)中で使用する溶媒の還流温度下で2~48時間(好ましくは、12~24時間)反応(重合反応)を行うのが好ましい。
【0116】
本重合反応の反応液中の化合物(I)(モノマー)の濃度は、化合物(I)の反応溶媒に対する溶解性により適宜最適化し得るものであり、特に制限されないが、通常、0.1M~2.0Mの濃度範囲内であり、好ましくは、0.1M~1.0Mである。
【0117】
前記重合反応終了後、反応液に過剰量の貧溶媒(例、メタノール)に注ぎ込むことにより沈殿化等を行うことにより、目的とする化合物(II)(又は化合物(II’))を得ることができる。
【0118】
本発明の製造方法で得られる化合物(II)(若しくは化合物(II’))またはその塩は、数平均分子量(Mn)が、1000~500000であり、好ましくは、10000~300000であり、ゲル浸透クロマトグラフィー測定による分子量分布(Mw/Mn)は、1.5~7程度(好ましくは、1.5~4)である。
【0119】
本発明の製造方法は、簡便な操作により、数千から数十万程度までの広範な分子量範囲において分子量を制御しつつ、収率良く種々の官能基を有する置換ポリ(ジフェニルアセチレン)類を製造することが可能である。また、本発明の製造方法により得られる置換ポリ(ジフェニルアセチレン)類は、熱安定性にも優れることから、各種機能性高分子材料の原料ポリマーとしても極めて有用である。
【実施例0120】
以下に、実施例及び試験例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明は、実施例及び試験例により限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱しない範囲で変化させてもよい。また、本発明において使用する試薬や原料化合物は特に言及されない限り、商業的に入手可能である。
【0121】
下記実施例で使用された試薬及び原料化合物である、四塩化タングステン(Sigma-Aldrich、東京化成工業株式会社(TCI)製)、テトラフェニルスズ(東京化成工業株式会社(TCI)製)、テトラブチルスズ(関東化学株式会社製)、トリフェニルホスフィン(ナカライテスク株式会社製)、化合物(I-5)(東京化成工業株式会社(TCI)製)、化合物(I-6)(東京化成工業株式会社(TCI)製)並びにトルエン(脱水)(関東化学株式会社製)は、それぞれ市販品をそのまま使用した。
【0122】
%は、収率についてはmol/mol%を示し、その他については特記しない限り、重量%を示す。また、室温とは、特記しない限り、15から30℃の温度を示す。
1H-及び13C-NMRスペクトルは、JEOL JNM-ECA 500を用い、重クロロホルムを溶媒として測定した。1H-NMRについてのデータは、化学シフト(δppm)、多重度(s=シングレット、d=ダブレット、t=トリプレット、q=カルテット、quint=クインテット、m=マルチプレット、dd=ダブルダブレット、dt=ダブルトリプレット、brs=ブロードシングレット)、カップリング定数(Hz)、積分及び割当てとして報告する。赤外分光スペクトルは、日本分光製フーリエ変換赤外分光光度計IR-4700を用いて測定した。平均分子量および分子量分布は、ゲル浸透クロマトグラフィー(日本分光株式会社製高速液体クロマトグラフィーポンプ PU-4180、日本分光製紫外可視検出器 MD-4010、日本分光株式会社製カラムオーブン CO-4060、Shodex製カラム KF-805L)によりポリスチレン換算で算出した。原子間力顕微鏡(AFM)は、アサイラム・リサーチ社製のCypher(登録商標)を用いて、高配向性熱分解グラファイト基板上に塗布した試料を測定した。
【0123】
[実施例1]
アルゴン雰囲気下、15mLの耐圧管に四塩化タングステン(WCl4)(32.7mg,0.1mmol)、テトラフェニルスズ(42.6mg,0.1mmol)、トリフェニルホスフィン(2.3mg,0.01mmol)及び式(I-1):
【0124】
【0125】
で表される化合物(化合物(I-1);モノマー)(925mg,2.0mmol)の混合物にトルエン(2mL)を加えた後、耐圧管を密閉し110℃で加熱しながら一日撹拌した。得られた反応混合物を過剰量のメタノールに注ぎ込み、生じた沈殿をテトラヒドロフラン(20ml)に溶解させた溶液を、過剰量のメタノール/テトラヒドロフラン混合溶液(3/1,v/v)に注ぎ込んで沈殿を得た。この沈殿をメタノール/テトラヒドロフラン混合溶液(4/1,v/v)で洗浄し、減圧下で乾燥することにより、式(II-1):
【0126】
【0127】
で表される繰り返し単位を有するポリマー(化合物(II-1))(801mg,モノマーの仕込み量に対するポリマーの収量から算出した収率:87%)を黄色固体として得た。得られた化合物(II-1)のゲル浸透クロマトグラフィーから見積もられた数平均分子量(Mn)及び分子量分布(Mw/Mn)は、それぞれ、Mnが124,000であり、Mw/Mnが1.92であった。
1H NMR (500 MHz, CDCl3, 20℃): δ 7.0-7.3 (br, 4H), 6.4-6.7 (br, 2H), 5.8-6.2 (br, 2H), 4.0-4.4 (br-d, 4H), 1.6-1.9 (br, 4H), 1.2-1.5 (br, 16H), 0.8-0.95 (br, 6H);
13C NMR (126 MHz, CDCl3, 20℃): δ 165.6, 146.5, 146.4, 130.6, 128.9, 128.4, 127.0, 65.4, 31.9, 29.2, 28.7, 26.0, 22.7, 14.2;
IR (KBr, cm-1): 2929, 1722, 1275, 1107.
【0128】
化合物(II-1)を、高配向性熱分解グラファイト基板上に塗布して、アサイラム・リサーチ社製の原子間力顕微鏡(AFM)(Cypher(登録商標))を用いて測定した画像及び部分拡大画像を
図1に示した。
図1によれば、化合物(II-1)は、環状構造を有することが確認された。
図1に示されるように、様々なサイズの環状の化合物(II-1)が観測されたことから、低原子価タングステン触媒を用いるジフェニルアセチレン類の重合反応においては、環拡大重合機構を経て重合反応が進行し、環状ポリマーが得られることが推認される。
【0129】
[実施例2~3]
助触媒として、テトラフェニルスズに代えて、テトラブチルスズ(nBu4Sn)およびビス(トリメチルシリル)シクロヘキサ-1,4-ジエン(BTCD;J. Am. Chem. Soc. 2009, 131, 5370-5371参照)を用いた以外は、実施例1と同様の反応条件下で、化合物(I-1)の重合反応を行った。下記表1に、実施例1~3により得られた化合物(II-1)の収率、数平均分子量(Mn)及び分子量分布(Mw/Mn)を示す。
【0130】
【0131】
[実施例4~5]
四塩化タングステン(WCl4)の使用量を、0.1mmol(モノマーに対して5mol%)から、0.2mmol(モノマーに対して10mol%)又は1.1mmol(モノマーに対して55mol%)に代えて、それに合わせてテトラフェニルスズとトリフェニルホスフィンの使用量を変更した以外は、実施例1と同様の反応条件下で、化合物(I-1)の重合反応を行った。下記表2に、実施例1及び実施例4~5により得られた化合物(II-1)の数平均分子量(Mn)及び分子量分布(Mw/Mn)を示す。
【0132】
【0133】
[実施例6~12]
モノマーとして、化合物(I-1)に代えて、下記式:
【0134】
【0135】
で表されるジフェニルアセチレン(化合物(I-2)(実施例6)、化合物(I-3)(実施例7)、化合物(I-4)(実施例8)、化合物(I-5)(実施例9)、化合物(I-6)(実施例10)、化合物(I-7)(実施例11)又は化合物(I-8)(実施例12)のいずれか)を用いた以外は、実施例1と同様の反応条件下でジフェニルアセチレンの重合反応を行った。表3に、得られた置換ポリ(ジフェニルアセチレン)の繰り返し単位の構造式、収率、数平均分子量(Mn)及び分子量分布(Mw/Mn)を示す。
【0136】
【0137】
[試験例]
モノマーとして化合物(I-1)を用いて、本発明の製造方法(実施例1)と従来法(特許文献1に記載の方法、特許文献2に記載の方法、及び非特許文献4に記載の方法)の重合反応条件(触媒系)の比較検討を行った結果を表4に示す。
【0138】
【0139】
表4の結果から、従来法では全く得られないか、または低分子量(2万程度までの分子量)且つ低収率でしか得られなかった置換ポリ(ジフェニルアセチレン)(すなわち、化合物(II-1))が、高分子量(2万以上、好ましくは10万以上の分子量)且つ高収率で得られることが確認された。
本発明によれば、簡便な操作により、数千から数十万程度までの広範な分子量範囲において分子量を制御しつつ、収率良く種々の官能基を有する置換ポリ(ジフェニルアセチレン)類を製造することができる。また、本発明によれば、これまで有効な合成法が無かった、ある程度制御された分子量と所望の官能基を有し、且つ熱安定性にも優れる、環状の置換ポリ(ジフェニルアセチレン)類を収率良く得ることができることから、各種機能性高分子材料の原料合成法としても極めて有用である。