(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022013212
(43)【公開日】2022-01-18
(54)【発明の名称】筆記具
(51)【国際特許分類】
B43K 3/00 20060101AFI20220111BHJP
B43K 7/12 20060101ALI20220111BHJP
B43K 24/18 20060101ALI20220111BHJP
B43K 29/02 20060101ALI20220111BHJP
【FI】
B43K3/00 Z
B43K7/12
B43K24/18 110
B43K29/02 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020115625
(22)【出願日】2020-07-03
(71)【出願人】
【識別番号】000005957
【氏名又は名称】三菱鉛筆株式会社
(72)【発明者】
【氏名】福田 昂正
【テーマコード(参考)】
2C350
2C353
【Fターム(参考)】
2C350GA03
2C350KC05
2C350NA23
2C353FA04
2C353HA06
2C353HA09
(57)【要約】 (修正有)
【課題】強い抗菌性、防藻性および抗黴性のいずれの特性も備え、耐久性の点でも優れた筆記具を提供する。
【解決手段】Pを1~10質量%含むNi-P系合金皮膜が合成樹脂等で形成された素地表面に被覆されたものであり、前記Ni-P系合金皮膜中に水素、硫黄、塩素等を適切な範囲で含有させて、筆記具の軸筒1等の外面に塗布する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Pを1~10質量%を含むNi-P系合金皮膜が素地表面に被覆されたものであり、前記Ni-P系合金皮膜中の水素含有量が0.00001~0.005%である表面処理材料が外面に塗布された筆記具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗菌性を有する筆記具に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、社会問題とされている病院内感染防止対策、衛生管理などの見地から各種製品の衛生上の安全性が重要であり、筆記具としての使い易さだけでなく、衛生面の安全性の配慮が必要である。そのため、病院内感染対策など衛生上の安全性を考慮した抗菌性、抗カビ性、防ダニ性を付与した筆記具が開示されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載された筆記具は、樹脂に抗菌性付与効果を含有したもの考慮したものであるので、メッキ等の皮膜被覆の場合を想定しておらず、皮膜が摩耗することによって抗菌性付与効果が早期に消滅してしまうという可能性が生じる。また抗菌性、防藻性および抗黴性に関しても性能的に不十分なものであり、しかもその効果を発揮するまでに長時間若しくは多くの日数を必要とするものも少なくない。
【0005】
そこで、本件発明はこうした状況の下でなされたものであって、強い抗菌性、防藻性および抗黴性のいずれの特性を備え有し、しかも耐久性の点でも優れた筆記具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、鋭意開発の末、以下の発明を実現するに至った。
【0007】
Pを1~10質量%を含むNi-P系合金皮膜が素地表面に被覆されたものであり、前記Ni-P系合金皮膜中の水素含有量が0.00001~0.005%である表面処理材料が外面に塗布された筆記具である。
【0008】
表面処理材料においては、下記(a)~(g)の少なくともいずれかの要件を満足するものであることが好ましい。また本発明の表面処理材料で用いる素地としては、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼、チタンまたはチタン合金であることが好ましい。
(a)Ni-P系合金皮膜中のPの含有量が2~5%である。
(b)Ni-P系合金皮膜中の硫黄含有量が0.0025~0.1%(より好ましくは0.01~0.05%)である。
(c)Ni-P系合金皮膜中の塩素含有量が0.001~0.01%(より好ましくは0.005~0.01%)である。
(d)30℃の静止水中へ浸漬したときのNi-P系合金皮膜からのNi溶出量が1~50μg/cm2/週である。
(e)Ni-P系合金皮膜の表面粗度が中心線平均粗さRaで0.25μm以上である。
(f)Ni-P系合金皮膜の表面硬度がHv500以上(より好ましくはHv600以上)である。
(g)Ni-P系合金皮膜におけるビッカース圧子押し込み時の皮膜割れ発生最小荷重が10000N/mm2以上である。
【発明の効果】
【0009】
本発明は以上の様に構成されており、が強い抗菌性、防藻性および抗黴性のいずれの特性を備え有し、しかも耐久性の点でも優れた表面処理を有する外面を備えた筆記具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る筆記具を示す側面図である。
【
図2】前記実施形態に係る筆記具を示す縦断面図である。
【
図3】本発明の第2の実施形態に係る筆記具を示す縦断面図である。
【
図4】本発明の第3の実施形態に係る筆記具の(A)正面図及び(B)部分断面図である。
【
図5】前記実施形態に係る摩擦部材の(A)正面図及び(B)底面図である。
【
図7】前記実施形態に係る摩擦部材を取り外す際の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明を実施するための形態について、図面に基づいて説明する。
図1~
図2は、第1の実施形態の筆記具を示すものである。
図1は、本実施形態に係る筆記具を示す側面図、
図2は、本実施形態に係る筆記具を示す断面図である。本実施形態に係る筆記具は、
図1及び
図2に示すように、軸筒1に内蔵された筆記体2が軸方向に移動可能に保持され、その後端部分に設けられた押しボタン3を押圧すると、内蔵された筆記体2のボールペン先2Aが内部から繰り出されるノック式のボールペンである。
【0012】
すなわち、筆記具には、筆記体2及び押しボタン3に加えて、筆記体2を内部に収納する筒状に形成された軸筒1と、軸筒1の一端側である先端部分に螺合している略円錐状の口先部材4と、軸筒1の先端部分における使用者の把持しやすい部分に配置された筒状のグリップ部材5とが設けられている。軸筒1は、使用者の衣服に設けられたポケットに差し込まれた際に、ポケットの布地を挟持するためのクリップ6が、その後端部分に一体化されたものとなっている。このような軸筒1の後端部分の内部には、
図2に示すように、筆記体2のボールペン先2Aを突没させる出没機構7が収納されている。出没機構7は、押しボタン3の押圧操作により、筆記体2のボールペン先2Aが繰り出されると、再度、押しボタン3の押圧操作が行われるまで、この繰り出し状態を維持するものである。また、出没機構7は、繰り出し状態において押しボタン3が押圧されると、筆記体2のボールペン先2Aを後退させて、軸筒1の内部に引き込ませるものでもある。
【0013】
なお、このような出没機構7は、筆記体2を後端側へ付勢するコイルスプリング7A、このコイルスプリング7Aによって後端側へ付勢される回転カム(図示せず)、後軸の内壁に形成したカム溝(図示せず)等を有するものとなっている。軸筒1は、
図2に示すように、後端側の部位である軸後部1Aよりも外径が小さく縮径された縮径部1Bが先端部分に形成されたものである。そして、この縮径部1Bに、熱可塑性エラストマー等の内室部材からなるとともに、後端側の端面が傾斜した筒状のグリップ部材5が、軸筒1の先端側から嵌め込まれるようになっている。ここで、縮径部1Bは、二段階に縮径されたものであり、後端側の第1縮径部1Baよりも先端側の第2縮径部1Bbのほうが細く形成されている。
【0014】
このうち、第2縮径部1Bbの先端近傍の部分は、外周面にネジ溝が形成された雄ネジとしての軸筒側ネジ部となっている。一方、口先部材4は、底面が開口され、その内周面にネジ溝が形成されたものとなっている。これにより、口先部材4には、第2縮径部1Bb側の軸筒側ネジ部と螺合する雌ネジとしての口先側ネジ部が形成されている。そして、口先部材4は、第2縮径部1Bb側の軸筒側ネジ部に、口先側ネジ部を螺合させることにより、軸筒1に取り付けられている。このように二段階に縮径された縮径部1Bにより、軸筒1には、軸後部1A及び第1縮径部1Baの境界部分、並びに、第1縮径部1Ba及び第2縮径部1Bbの境界部分のそれぞれにおいて段差を形成する段差面が形成されている。
【0015】
筆記体2内部には熱変色性インクが収容されている。熱変色性インクとは、常温(例えば25℃)で所定の色彩(第1色)を維持し、所定温度(例えば60℃)まで昇温させると別の色彩(第2色)へと変化し、その後、所定温度(例えば-5℃)まで冷却させると、再び元の色彩(第1色)へと復帰する性質を有するインクを言う。熱変色性インクを用いた筆記具では上記第2色を無色とし、第1色(例えば赤)で筆記した描線を昇温させて無色とすることを、ここでは「消去する」ということとする。したがって、描線が筆記された筆記面等に対して消去部としての摩擦部材によって擦過して摩擦熱を生じさせ、それによって描線を無色に変化、すなわち消去させる。なお、当然のことながら上記第2色は、無色以外の有色でもよい。さらに具体的な詳細を説明するとインクに含まれる色材は、(A)電子供与性呈色性有機化合物、(B)電子受容性化合物、及び(C)両者の呈色反応の生起温度を決める反応媒体、の必須三成分を少なくとも含む可逆熱変色性組成物をマイクロカプセル中に内包させた可逆熱変色性マイクロカプセル顔料が好適に用いられる。可逆熱変色性マイクロカプセル顔料は、粒子径の平均値が0.1~5.0μm、好ましくは0.5~2μmの範囲にあることが好ましい。可逆熱変色性マイクロカプセル顔料は、インク組成物全量に対し、好ましくは4~30重量%配合することが好ましい。なお、平均粒子径の測定は、粒度分布測定装置〔粒子径測定器N4Plus(COULTER社製)〕を用いる。また、筆記部は、ボールペン先2Aのみならず、他にもシャープペン、万年筆、マーカー、サインペン、鉛筆、毛筆、筆ペンなどを用いることができる。
【0016】
筆記具の外面の部材である押しボタン3、口先部材4、グリップ部材5、クリップ6、軸筒1には、合成樹脂等で形成された材料の素地表面に表面処理が施されている。
【0017】
表面処理は、各部材の素地表面にNi-P系合金皮膜を被覆したものであるが、Ni-P系合金皮膜のP含有量が1%未満では、抗菌性、防藻性および抗黴性のいずれの性能も劣るものとなり、P含有量が10%よりも多くなると、防藻性および抗黴性に優れるが抗菌性に劣る。好ましく、抗菌性に関してはP含有量が1~5%の範囲とし、防藻性および抗黴性に関しては、P含有量が2%以上の範囲で優れた性能を発揮する。従って、Ni-P系合金皮膜のP含有量が2~5%の範囲内の場合で、優れた抗菌性、防藻性および抗黴性をともに付与することができる。
【0018】
またNi-P系合金皮膜のP含有量の好ましい範囲は、各特性によって異なり、例えば抗菌性に関してはP含有量が1~5%の範囲にするのが好ましく、防藻性および抗黴性に関しては、P含有量が2%以上の範囲で優れた性能を発揮する。従って、Ni-P系合金皮膜のP含有量が2~5%の範囲内の場合には、優れた抗菌性、防藻性および抗黴性をともに付与することができる。
【0019】
本発明に適用できるNi-P系合金皮膜は特に制限されず、例えばNi-P,Ni-P-B,Ni-P-C,Ni-Co-P,Zn-Ni-P等の各種合金皮膜が挙げられ、また必要によってこれらの皮膜中に硬質粒子、自己潤滑粒子、光触媒機能粒子等を分散させた各種複合皮膜を適用できる。また本発明に適用できるNi-P系合金皮膜の作製方法としては、例えば電気めっき、無電解めっき、気相めっきなどの様々な表面処理が挙げられ、特に制限されるものではないが、本発明を簡便に実行できる方法としては電気めっきが推奨される。
【0020】
本発明の表面処理材料においては、Ni-P系合金皮膜中の水素含有量を0.00001~0.005%の範囲に制御することが好ましい。この水素量は、皮膜を基材から機械的に剥がし、皮膜自身について室温から350℃までの昇温分析を行い、検出される水素量である。より具体的には、昇温速度12℃/minで350℃まで連続加熱し、発生水素量を大気圧イオン化質量分析計(API-MS)により測定した値である。この水素含有量が0.00001%未満では、P含有量に依らず防藻性および抗黴性が十分に発揮されにくくなり、0.00001%以上、より好ましくは0.00015%以上とすることによってPの添加効果を増大させ、本発明の効果を有効に発揮させることができる。
【0021】
Ni-P系合金皮膜が抗菌性、防藻性および抗黴性に有効に機能するのは、Ni-P系合金皮膜中の水素量が寄与しており、Ni-P系合金皮膜中の水素量を増加させる方法としては、皮膜形成後に、高温水素ガス雰囲気中に曝す方法、電気化学的には水素チャージする方法などがあり、いずれの方法も採用できる。尚電気めっきによってNi-P系合金皮膜を形成する場合には、カソード反応の一つとして水素反応があるので、電流効率をあえて低下させたりすることにより水素含有量を増加させることができるので、水素含有量の増加を同時に達成できる皮膜形成方法として望ましい。しかし、Ni-P系合金皮膜中の水素含有量が0.005%を超えると皮膜の靭性が著しく低下し、皮膜に割れが発生することがあるので、水素含有量は0.005%以下にすることが好ましく、より好ましくは0.002%以下にするのが良い。
【0022】
本発明の表面処理材料においては、Ni-P系合金皮膜中の硫黄含有量を0.0025~0.1%の範囲に、塩素含有量を0.001~0.01%の範囲に制御することが好ましい。Ni-P系合金皮膜中の硫黄含有量が0.0025%未満、または塩素含有量が0.001%未満となると、抗菌性、防藻性および抗黴性の付与効果が小さいくなる。この様に硫黄含有量や塩素含有量を適切の規定することが抗菌性、防藻性および抗黴性に効果を発揮するのは、硫黄は皮膜表面において酸化を防ぎ活性化することと、水素吸蔵を助長する(水素過電圧を下げる)硫黄化合物を形成することにより、また塩素は皮膜表面において自然皮膜を破壊することにより、前述した吸着水中へのNiの溶出量を増大させるためと推定できる。
【0023】
Ni-P系合金皮膜中の硫黄や塩素の含有量を増加させる方法については特に限定するものではないが、湿式めっきの浴成分を制御したり、電気めっきの電流効率をあえて低下させることで前記水素含有量を増加すれば、硫黄や塩素の含有量を同時に増加させることができる。但し、Ni-P系合金皮膜中の硫黄が0.1%を超えると、或は塩素が0.01%を超えると、皮膜の靭性および強度が著しく低下するので、硫黄や塩素の含有量は上記範囲内に制御する必要がある。尚上記硫黄含有量のより好ましい上限は0.05%であり、より好ましい下限は0.01%である。また上記塩素含有量のより好ましい上限は0.01%であり、より好ましい下限は0.005%である。
【0024】
本発明の表面処理材料においては、30℃の静止水中へ浸漬したときのNi-P系合金皮膜からのNi溶出量が1~50μg/cm2 /週以上であることが好ましく、より好ましく10~50μg/cm2 /週以上であるのが良い。ここでNi溶出量測定方法としては、例えば500mlビーカー中に試料の面積25cm2 相当部分をイオン交換水50mlに浸したときにイオン交換水中に溶け出したNiの量である。このNi溶出量が1μg/cm2 /週未満では、抗菌性、防藻性および抗黴性のいずれの性能も劣るものとなる。Ni溶出量が増加するほど抗菌性、防藻性および抗黴性のいずれの特性も向上し、10μg/cm2 /週以上でいずれの特性も最大となる。Ni-P系合金皮膜からのNi溶出量を増加させる方法としては、前述した皮膜中のH,S,Cl元素を制御する方法が推奨されるが、その他単位面積当たりの表面積を増大させることや、Niよりも電位的に貴な物質を皮膜中に混合させる等して皮膜の電位をコントロールする、等の方法が採用できる。しかしながら、Ni溶出量が50μg/cm2/週を超えると、耐食性や変色等が問題となることがあり、また装飾品等に用いるときには金属アレルギーが問題となるので、Ni溶出量は50μg/cm2/週以下とするのが好ましい。このNi溶出量のより好ましい上限は、25μg/cm2/週程度である。
【0025】
本発明の表面処理材料においては、Ni-P系合金皮膜の表面粗度を中心線平均粗さRaで0.25μm以上とすることにより、Ni、Pの溶出量が増加し、抗菌性、防藻性および抗黴性を更に高めることができる。また本発明の表面処理は、素地材料の表面をNi-P系合金めっき皮膜で被覆したものであり、このめっき皮膜によって耐久性も基本的に優れたものであるが、この特性をより発揮させるためには、前記めっき皮膜の硬度はHv500以上であることが好ましく、より好ましくはHv600以上とするのが良い。また同様の観点から、ビッカース圧子押し込み時の皮膜剥離発生最小荷重を10kgf/cm2以上とするのが好ましく、より好ましくは20kgf/cm2 以上とするのが良い。この様にNi-P系合金めっき皮膜の硬度をHv500以上とすることにより、摩擦による皮膜消失を防止することができ、またビッカース圧子押し込み時の皮膜剥離発生最小荷重を10kgf/cm2以上とすることにより、チッピングによる皮膜消失を防止することができるため、長期間に亘って本発明の効果を維持することができ、耐久性に優れたものとなる。
【0026】
なお、皮膜の膜厚は、15μm以上とするのが好ましく、より好ましくは30μm以上とするのが良い。
【0027】
皮膜の抗菌の基準として、抗菌製品協議会が定めるガイドラインを満たす、JIS Z2801に基づく抗菌加工製品-抗菌性試験を行い、抗菌活性値2.0以上であることが好ましい。
【0028】
また、熱変色性インクにも抗菌剤を含有させることで、筆跡にも抗菌効果を付与させることができるので好ましい。抗菌剤としては、例えば2-(4-チアゾリル)ベンツイミダゾール、2-ベンツイミダゾール酸カルバミンメチル、1-(ブチルカルバモイル)2-ベンツイミダゾールカルバミン酸メチル、2-(メトキシカルボニルアミノ)ベンツイミダゾール、2-(ベンツイミダゾール)カルバミン酸メチルなどのイミダゾール系、1,2-ベンツイソチアゾリン-3-オン、2-n-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン、2-(4-チオシアノメチルチオ)ベンツチアゾール、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オンなどのチアゾール系、3-ヨード-2-プロパギルブチルカルバミン酸、4-クロロフェニル-3-ヨードプロパギルホルマール、ジヨードメチル-p-トリルスルホン、3-エトキシカルボニルオキシ-1-ブロム-1,2-ジヨード-1-プロペンなどのヨード系、2,3,5,6-テトラクロロイソフタロニトリル、5-クロロ-2,4,6-トリフルオロイソフタロニトリルなどのニトリル系、p-クロロ-m-クレゾール、2,4,4′-トリクロロ-2′-ヒドロキシジフェニルエーテルなどのフェノール系、N-(フルオロジクロロメチルチオ)フタルイミド、N,N-ジメチル-N′-(ジクロロフルオロメチルチオ)-N′-フェニルスルファミド、N,N-ジメチル-N′-(ジクロロフルオロメチルチオ)-N′-トリルスルファミド、N-(トリクロルメチルチオ)フタルイミド、テトラクロルエチルチオテトラヒドロフタルイミド、N-トリクロルメチルチオ-4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボキシイミドなどのハロアルキルチオ系、2-ピリジンチオール-1-オキシドナトリウム、2-ピリジンチオール-1-オキシド亜鉛、2,3,5,6-テトラクロロ-4-(メチルスルホニル)ピリジンなどのピリジン系、ヘキサヒドロ-1,3,5-トリス(2-ヒドロキシエチル)S-トリアジン、ヘキサヒドロ-1,3,5-トリエチル-S-トリアジンなどのトリアジン系、2-プロモ-2-ニトロ-1,3-プロパンジオール、1,2-ジブロモ-2,4-ジシアノブタンなどのブロム系、銀-ゼオライト、亜鉛ゼオライト、銀-アパタイト、リン酸ジルコニウムー銀、チタニアー銀、水溶性ガラスー銀、リン酸カルシウムー銀、ゼオライト-銅、ゼオライト-亜鉛、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、アモルファス銅、過炭酸ナトリウム、次亜塩素酸ナトリウム、メタホウ酸バリウムなどの無機系、トリクロルカルバンなどのハロジアリル尿素系、グルコン酸クロロヘキサジン、グルコン酸クロロヘキサジン-シクロピロクスオラミン、ポリヘキサメチレンピグアニジン塩酸塩などのグアニジン系、プロピルグリコールモノ脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステルなどの脂肪酸エステル系、セルロース銅、銅架橋アクリロニトリル・アクリル酸コポリマー、金属酸化物配位アミノケイ素系ポリマー、亜鉛配位アクリル酸ポリマーなどのポリマー配位金属系、10,10'-オキシビスフェノキシアルシン、8-オキシキノリン銅、メチレンヒスチオシアネート、ビス(ジメチルジチオカルバモイル)ジスルフィド、1-(3-クロルアリル)-3,5,7-トリアザ-1-アゾニアアダマンタンクロリド、3,5-ジメチルテトラヒドロ-1,3,5-チアジアジン-2-チオン、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、4,4’-(2-エチルー2-ニトロトリメチレン)ジモルホリン、レバン分解酵素剤、N-(2-ヒドロキシプロピル)アミノメタノール、2-(メトキシカルボニルアミノ)ベンツイミダゾール+8-オキシキノリン銅、5-(クロル-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン+1,2-ベンツイソチアゾリン-3-オンなどをあげることができる。また、市販品としては、ポリアルファーBN,ZAG,AG,DN〔濤和化学(株)製〕、アムテクリーンZ MK-10,MK-11,MK-20,MK-30〔松下アムテック(株)製〕などがあげられる。また、ダイキラー〔大日精化工業(株)製〕のPEM701,PEM702,PEM703,ABM501,PSM401などから選択される。
【0029】
また、摩擦部材が交換可能であることが好適である。特にゴム、エラストマー材料などの合成ゴムからなるゴム弾性材料で形成される部材、特にグリップ部材や摩擦部材はウイルス等の汚れが付着しやすいため、筆記具から取り外して交換可能とすることが好ましい。
【0030】
なお、押しボタン3を熱変色性インクの変色が容易な摩擦部材としても機能させてもよい。
【0031】
図3は、本発明における第2の実施形態の筆記具の縦断面図である。
図3(A)は、熱変色性インクを収容した筆記体2のボールペン先2Aを突出させ、摩擦部材8を軸筒1から外した状態、
図3(B)は、熱変色芯を繰り出すシャープペンシル筆記部2Bを突出させた状態を示す。本実施形態は、軸筒1の後方端には摩擦部材8を備えた複式の回転繰り出し式の熱変色筆記具である。熱変色性インクの変色可能な摩擦部材8は、硬度の異なる二種類の摩擦部8a、8bからなり二色成形、接着等により一体に構成され、摩擦部材ホルダ47に対して着脱可能となっている。着脱可能とすることで筆記具に装着されたままの使用や、取り外しての使用と使用環境に応じて使い分けることが可能である。なお、摩擦部材ホルダ47において、摩擦部8bと嵌合する内面には、軸方向に複数のリブが形成(図示せず)されており、筆記具の後端側を鉛直下方に向けても摩擦部材8が脱落しないようになっている。本実施形態は摩擦部材8を筆記具に備えることによって、手軽に筆跡を変色、消色させることができる。
【0032】
筆記体の選択動作として、軸筒1に対してクリップ6を回転すると円筒カム42の回転に伴うカム駒44が摺動し、何れかの筆記体2を選択してその筆記体2の先端部を口先部材4の先端口から突出させることが可能となる。また、選択された筆記体がシャープペンシル筆記部2Bの場合には、口先部材4の先端口から突出させて後に摩擦部材8の後端をノックして芯を繰り出す。
【0033】
第2の実施形態では、筆記具の外面の部材である軸筒1、口先部材4、グリップ部材5、軸筒1、口先部材4、グリップ部材5、クリップ6、摩擦部材ホルダ47、摩擦部材8に抗菌剤が含まれている。
【0034】
図4~7は本発明における第3の実施形態であり、
図4(A)はリフィル収納品の正面図、
図4(B)はリフィル収納品の部分断面図、
図5(A)は摩擦部材の正面図、
図5(B)は摩擦部材の底面図、
図6は
図4のA部の拡大図、
図7は摩擦部材を取り外した状態を示す図である。第3の実施形態は、第1の実施形態及び第2の実施形態の筆記体2を収容するリフィル収納品となっている。
【0035】
図4(A)、
図4(B)を参照すると、リフィル収納品は筒状に形成されたリフィル収納容器9と、リフィル収納容器9内に収納された1本の筆記体2とから構成される。なお、リフィル収納容器9内に複数本の筆記体2を収納するようにしてもよい。
【0036】
リフィル収納容器9は樹脂から形成されるが、水蒸気バリア性を有する材料、例えばポリプロピレンが好ましい。リフィル収納容器9の頂部側の開口部9Aを開閉する摩擦部材8が装着されている。なお、リフィル収納容器9の底部側の開口部9B内には尾栓10が封密に嵌合されている。
【0037】
一方、筆記体2はインクタンク2Cと、インクタンク2Cの先端に取り付けられたボールペン先2Aとを具備する。本発明による実施形態では、ボールペン先2Aが上向きに又は摩擦部材8に向けて位置するように筆記体2がリフィル収納容器9内に収納されている。
【0038】
このリフィル収納品では、開口部9Aが摩擦部材8によって封密に閉鎖されている。その結果、リフィル収納容器9が密閉されるので、筆記体2がリフィル収納容器9内に保存されている間に筆記体2の熱変色性インクが劣化するのを確実に抑制することができ、筆記体2の品質低下を確実に抑制することができる。また、リフィル収納容器9を透過性の無い材料や外装とすることで、劣化をより確実に抑制することができる。
【0039】
また、
図4(B)からわかるように、リフィル収納容器9の内径は筆記体2の外径よりもわずかばかり大きく設定されている。このようにすると、リフィル収納容器9内に残存する空気量を低減することができ、したがって熱変色性インクの劣化を確実に抑制することができる。
【0040】
次に、
図5(A),(B)を参照しながら摩擦部材8を説明する。
【0041】
キャップである摩擦部材8は互いに同心状に配置された内筒11及び外筒12と、これら内筒11及び外筒12を互いに連結するリブ13とを具備し、内筒11と外筒12との間には通気孔14が形成されている。通気孔14は径方向に複数設けることによって、誤飲時の通気量の確保と、筆跡を摩擦する際の径方向の応力によって撓むことを防ぐことができる。
【0042】
図5(A)に示されるように、内筒11の底端側部分は外筒12から突出しており、この底端側部分はリフィル収納容器9の開口部9A内に嵌合される嵌合部15を構成する。
【0043】
この嵌合部15の外周面には例えば2つの環状シール突起16が形成されている。
【0044】
また、嵌合部15には下方に向けて開口する受容孔17が形成されており、この受容孔17はリフィル収納容器9内に収納されている筆記体2を保持するための保持部を構成する。そのために、受容孔17の内径は筆記体2のボールペン先2Aの外径よりもわずかばかり小さく設定されている。
【0045】
更に、受容孔17の内周面には切欠きから形成される逃がし通路18が形成されている。
【0046】
更に、外筒12又はリブ13の平坦な底端面は規制面19を構成している。すなわち、嵌合部15が開口部9A内に嵌合されたときにこの規制面19が開口部9Aの頂端面20に当接すると嵌合部15の開口部9A内への進入が規制される。
【0047】
なお、
図6において、シール被覆2Aaを示している。このシール被覆2Aaは筆記体2のボールペン先2Aの先端を保護すると共に、ボールペン先2Aを介し筆記体2内に空気等が流入し又は熱変色性インク内の水分等が揮発するのを抑制するためのものである。
【0048】
【0049】
図6に示される閉鎖状態では、摩擦部材8の嵌合部15がリフィル収納容器9の開口部9A内に嵌合されており、それによりリフィル収納容器9の開口部9Aが閉鎖される。この場合、嵌合部15の外周面に環状シール突起16が形成されているので、嵌合部15と開口部9Aとの間に環状シール21が形成され、したがって嵌合部15が開口部9A内に封密に嵌合されることになる。なお、環状シール突起16をリフィル収納容器9の内周面に形成してもよい。
【0050】
また、筆記体2のボールペン先2Aの先端が受容孔17内に嵌合されており、したがって筆記体2が摩擦部材8によって保持されている。その結果、筆記体2がリフィル収納容器9内で移動するのが抑制され、例えば振動により筆記体2の破損や筆記具に装着時の筆記時のカスレの発生が抑制される。また、本発明による実施形態では、
図1に示されるように、筆記体2がリフィル収納容器9内に収納されているときに筆記体2の底端が尾栓10の頂端面に当接している。したがって、筆記体2の移動が更に制限される。
【0051】
筆記体2をリフィル収納容器9から取り出すべきときには、ユーザは摩擦部材8の外筒12を摘んで摩擦部材8をリフィル収納容器9から取り外す。このとき筆記体2は摩擦部材8によって保持されたままであるので、
図7に示されるように摩擦部材8と共に移動してリフィル収納容器9外に取り出される。その結果、筆記体2を簡単に取り出すことができる。
【0052】
また、筆記体2が摩擦部材8に保持されたままであるので、リフィル収納容器9から取り出した筆記体2を落下させることもない。すなわち、筆記体2の取り扱いが容易になる。その後、筆記体2を第1の実施形態や第2の実施形態の筆記具に収容して筆記することができる。
【0053】
リフィル収納品は例えば次のようにして製造される。すなわち、まずリフィル収納容器9のリフィル収納容器9内にインクタンク2C側から筆記体2が収納される。次いで、摩擦部材8の規制面19が開口部9Aの頂端面20に当接するまで摩擦部材8がリフィル収納容器9の開口部9Aに嵌合される。
【0054】
本発明による実施形態では、規制面19が開口部9Aの頂端面20に当接したときにボールペン先2Aが受容孔17内に嵌合されて保持されるように規制面19が位置決めされており、したがって摩擦部材8を開口部9Aに嵌合させるだけで、筆記体2を摩擦部材8に保持させることができる。
【0055】
また、第3の実施形態では、受容孔17に逃がし通路18が形成されているので、筆記体2内に空気が入り込むのを抑制することができる。すなわち、逃がし通路18が設けられていないと、ボールペン先2Aが受容孔17内に嵌合されたときに受容孔17内が密閉空間になってこの密閉空間内の圧力が高くなるので、空気がボールペン先2Aから筆記体2内に入り込むおそれがある。本発明による実施形態では、逃がし通路18が形成されているので、ボールペン先2Aが受容孔17内に嵌合されるときに受容孔17内の空気を受容孔17外に逃がすことができる。その結果、筆記体2の品質低下を抑制することができる。
【0056】
ところで、
図6に示されるように、ボールペン先2Aに当接して筆記体2を保持している受容孔17の領域を保持領域22と称すると、環状シール21の長手方向位置と保持領域22の長手方向位置とは互いに異なっている。このようにしているのは次の理由による。
【0057】
すなわち、ボールペン先2Aが受容孔17内に嵌合されると、保持領域22では嵌合部15が変形するおそれがある。特に、本発明による実施形態では、受容孔17に逃がし通路18が形成されているので、受容孔17内周面はボールペン先2Aに周方向に一様に当接しておらず、したがって嵌合部15の変形は周方向に一様になるとは限らない。このため、このような保持領域22の長手方向位置を環状シールの長手方向位置に一致させると、良好なシール作用を得ることができないおそれがある。そこで、本発明による実施形態では、環状シール21の長手方向位置と保持領域22の長手方向位置とは互いに異ならせ、それによって良好なシール作用が得られるようにしている。
【0058】
また、第3の実施形態では、リフィル収納容器9の外径と摩擦部材8の外径とがほぼ等しく設定されており、摩擦部材8がリフィル収納容器9に取り付けられたときにリフィル収納容器9の外周面と摩擦部材8の外周面とが面一になっている。その結果、リフィル収納容器9及び摩擦部材8周りにシールラベルを貼り付ける場合に、シールラベルを貼り付け易くなり、シールラベルによるシール作用を確保することができる。
【0059】
図7では、筆記体2の頂端すなわちボールペン先2Aが摩擦部材8に保持されるようにしている。しかしながら、筆記体2の底端すなわちインクタンク2Cが摩擦部材8に保持されるようにしてもよい。
【0060】
第3の実施形態では、リフィル収納容器9と摩擦部材8と尾栓10に抗菌剤が含まれている。なお、尾栓10をリフィル収納容器9と一体にして摩擦部材と同一の材料として形成してもよい。また、本実施形態の筆記体のペン先はボールペン先だけでなく、他にもシャープペン、万年筆、マーカー、サインペン、鉛筆、筆、筆ペン、などを用いることができる。
【符号の説明】
【0061】
1 軸筒
1A 軸後部
1B 縮径部
1Ba 第1縮径部
1Bb 第2縮径部
2 筆記体
2A ボールペン先
2Aa シール被覆
2B シャープペンシル筆記部
2C インクタンク
3 押しボタン
4 口先部材
5 グリップ部材
6 クリップ
7 出没機構
8 摩擦部材
9 リフィル収納容器
9A 頂端側の開口部(開口部)
9B 底部側の開口部
10 尾栓
11 内筒
12 外筒
13 リブ
14 通気孔
15 嵌合部
16 環状シール突起
17 受容孔
18 逃がし通路
19 規制面
20 開口部の頂端面(頂端面)
21 環状シール
22 保持領域
42 円筒カム
44 カム駒
47 摩擦部材ホルダ