(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022013213
(43)【公開日】2022-01-18
(54)【発明の名称】濾過装置、濾過システム、並びにスポンジフィルタの洗浄方法
(51)【国際特許分類】
B01D 29/62 20060101AFI20220111BHJP
B01D 29/11 20060101ALI20220111BHJP
B01D 24/48 20060101ALI20220111BHJP
【FI】
B01D29/38 580H
B01D29/10 530A
B01D29/36 C
B01D29/10 510C
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020115626
(22)【出願日】2020-07-03
(71)【出願人】
【識別番号】516104537
【氏名又は名称】ワイズグローバルビジョン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108604
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 義人
(72)【発明者】
【氏名】大嶺 光雄
(72)【発明者】
【氏名】松田 朝春
【テーマコード(参考)】
4D116
【Fターム(参考)】
4D116BB01
4D116BC25
4D116BC27
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4D116UU12
4D116VV15
(57)【要約】
【課題】濾過装置に含まれるスポンジフィルタに付着した汚れをよく落とす技術を提供する。
【解決手段】濾過装置10は容器11を備え、その内部に濾材としてのスポンジフィルタ12を備える。容器11には流入管たる接続管91と、流出管たる接続管92が接続され、接続管91には弁91Xが、接続管92には弁92Xが設けられる。スポンジフィルタ12を洗浄する場合、接続管92の弁92Xを閉じる。他方、接続管91の弁91Xを、接続管91から容器11に水が流れ込む状態と、容器11から水が排水管91Yから流れ出す状態とが複数回交互するように操作する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器と、前記容器に不純物を含む汚水を流入させるための前記容器に接続された管である流入管と、前記容器から浄水を流出させるための前記容器に接続された管である流出管と、前記容器の中で前記流入管から前記流出管へ向かう汚水が必ずそれを通過するような態様で前記容器の中に配された、柔軟性を持つスポンジによって構成されたフィルタであるスポンジフィルタと、を有する濾過装置であり、
前記流入管に、切換え弁である第1弁を介して管である排水管が接続され、且つ前記第1弁は、前記流入管を流れてきた前記汚水を前記容器に流す1A状態と、前記容器内の前記汚水及び前記浄水を前記排水管に流す1B状態とを採れるようになっているとともに、
前記流出管に、切換弁である第2弁が設けられ、且つ前記第2弁は、前記容器からの前記浄水の流出を許容する2A状態と、前記容器からの前記浄水の流出を禁じる2B状態とを採れるようになっている、
ものにおける前記スポンジフィルタに付着した汚れを除去するスポンジフィルタの洗浄方法であって、
前記スポンジフィルタを洗浄する際に、
前記第2弁を前記2B状態とした状態で、前記第1弁を、前記1A状態と、前記1B状態との間で複数回ずつ切換える、
スポンジフィルタの洗浄方法。
【請求項2】
前記第2弁を前記2B状態とした状態で、前記第1弁を、前記1A状態と、前記1B状態との間で少なくとも10回ずつ切換える、
請求項1記載のスポンジフィルタの洗浄方法。
【請求項3】
前記容器の一部に管である洗浄用管であり、前記容器からの前記汚水及び前記浄水の流出を許容する3A状態と、前記容器からの前記汚水及び前記浄水の流出を禁じる3B状態とを採れるようになっている弁である第3弁を備えたものが接続されており、
前記第2弁を前記2B状態とした状態で、前記第1弁を、前記1A状態と、前記1B状態との間で複数回ずつ切換える際に、前記第3弁を3A状態とする、
請求項1又は2記載のスポンジフィルタの洗浄方法。
【請求項4】
前記汚水は泥水である、
請求項1又は2記載のスポンジフィルタの洗浄方法。
【請求項5】
容器と、前記容器に不純物を含む汚水を流入させるための前記容器に接続された管である流入管と、前記容器から浄水を流出させるための前記容器に接続された管である流出管と、前記容器の中で前記流入管から前記流出管へ向かう汚水が必ずそれを通過するような態様で前記容器の中に配された、柔軟性を持つスポンジによって構成されたフィルタであるスポンジフィルタと、を有する濾過装置であり、
前記流入管に、切換え弁である第1弁を介して管である排水管が接続され、且つ前記第1弁は、前記流入管を流れてきた前記汚水を前記容器に流す1A状態と、前記容器内の前記汚水及び前記浄水を前記排水管に流す1B状態との2つの状態を採れるようになっているとともに、
前記流出管に、切換弁である第2弁が設けられ、且つ前記第2弁は、前記容器からの前記浄水の流出を許容する2A状態と、前記容器からの前記浄水の流出を禁じる2B状態の2つの状態を採れるようになっている、
ものであって、
前記スポンジフィルタを洗浄する際に、
前記第2弁を前記2B状態とした状態で、前記第1弁を、前記1A状態と、前記1B状態との間で複数回ずつ切換えることができるようになっている、
濾過装置。
【請求項6】
前記容器の一部に管である洗浄用管であり、前記容器からの前記汚水及び前記浄水の流出を許容する3A状態と、前記容器からの前記汚水及び前記浄水の流出を禁じる3B状態とを採れるようになっている弁である第3弁を備えたものが接続されており、
前記第2弁を前記2B状態とした状態で、前記第1弁を、前記1A状態と、前記1B状態との間で複数回ずつ切換える際に、前記第3弁を3A状態とすることができるようになっている、
請求項5記載の濾過装置。
【請求項7】
前記容器は、縦長であり、
前記流入管は前記容器の下部に、前記洗浄用管は前記容器の前記流入管よりも上部にそれぞれ接続されている、
請求項5記載の濾過装置。
【請求項8】
前記洗浄用管は、前記容器の上面に接続されている、
請求項5又は7記載の濾過装置。
【請求項9】
前記容器は、縦長の円筒形又は円錐台形であり、
前記スポンジフィルタは、平面視環状の縦長の円筒形乃至円錐台形であり、
前記流入管は、前記スポンジフィルタの外側に前記汚水を供給するようになっているとともに、
前記流出管は、前記スポンジフィルタの内側の空間から前記浄水の供給を受けるようになっている、
請求項5~8のいずれかに記載の濾過装置。
【請求項10】
前記第1弁に前記1A状態と前記1B状態との間での切換えを自動的に行わせるための第1弁制御装置を更に備えている、
請求項5~9のいずれかに記載の濾過装置。
【請求項11】
多段に接続された複数の濾過装置を含んでおり、複数の濾過装置のうちの少なくとも一つが、請求項5~9のいずれかに記載された濾過装置である、
濾過システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体の濾過を行う濾過装置において生じる濾過装置に含まれるフィルタの汚れを除去するためのフィルタの洗浄技術に主に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、泥水や工業排水といった汚水を浄水にしたり、海水を淡水化したりする際に濾過装置、或いは濾過システムが用いられる。濾過システムは、濾過装置を多段に接続することによって構成される。
濾過装置は、濾過すべき不純物を含む汚水を流入させるための管である流入管と、浄水を流出させるための流出管とそれぞれ接続された容器と、容器の中で流入管から流出管へ向かう汚水が必ずそれを通過するような態様で容器の中に配された(例えば、容器の中を流入管と接続された空間と、流出管と接続された空間とに区切るように配された)フィルタとを備える。
常識であるが、流入管から容器に流れ込んだ汚水は、フィルタを通過する際にフィルタによって不純物を濾過されることで浄水となり、流出管から流れ出す。なお、濾過装置が多段に接続される場合には、下流側の濾過装置の容器に流入管から流れ込む汚水は、一つ上流の濾過装置の容器に接続された流出管から流れ出した浄水であるが、本願では、各濾過装置において、容器に流れ込む液体を汚水と、容器から流れ出す液体を浄水と称することとする。
【0003】
ところで、濾過装置を使用していると、濾過された固形物が付着することによりフィルタが汚れる。フィルタが汚れると、フィルタを汚水が通過できなくなり、濾過装置が正常に機能しなくなるおそれがある。この問題は、汚水の濁度が高い場合により顕著に現れる。
例えば、土木工事によって生じる泥水を濾過装置、或いは濾過システムによって濾過しようとした場合、15分程度の短い時間で濾過装置が正常に機能しなくなる場合さえある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
濾過装置におけるフィルタの汚れに対する対応策の一つとしてフィルタの汚れを除去するというアプローチがある。
よく知られたフィルタの汚れの除去の方法として例えば、逆洗がある。
逆洗は、通常であれば浄水が流れ出る流出管から容器の中に浄水(多くの場合は真水)を流し込んでフィルタを通過させ、フィルタを通過する際にフィルタから分離したフィルタに付着していた汚れを含むことになった浄水を、通常であれば汚水を容器に流し込む流入管から容器の外に流出させるという処理である。容器に対して通常とは逆向きで浄水を流し込むこの逆洗により、フィルタに付着した汚れがある程度は除去できる。
しかしながら、逆洗のみではフィルタに付着した汚れが十分に除去されない場合も存在する。
【0005】
本願発明は、ある種のフィルタを備えた濾過装置におけるフィルタに付着した汚れを、逆洗よりも良く除去することのできる技術を提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる課題を解決するため、本願発明者は研究を重ねた。
濾過装置の基本的な構成は既に述べた通りであるが、濾過装置で使用されるフィルタには様々な種類がある。フィルタの種類によって、フィルタに付着した汚れをより良く除去するための技術は異なることは自明であるから、本願出願人の研究は多岐に及んだ。
様々な試行錯誤の中で、濾過装置に使用されたフィルタが柔軟性を有するスポンジである場合(そのようなフィルタを、本願では「スポンジフィルタ」と称することにする。)においては、スポンジフィルタに付着した汚れを除去する際に、スポンジフィルタが持つ柔軟性を利用することで、逆洗を行うよりも良く汚れを除去できることを本願発明者は見出した。
以下に説明する発明は、そのような知見に基づく。
【0007】
本願発明は、以下のようなものである。
本願発明は、容器と、前記容器に不純物を含む汚水を流入させるための前記容器に接続された管である流入管と、前記容器から浄水を流出させるための前記容器に接続された管である流出管と、前記容器の中で前記流入管から前記流出管へ向かう汚水が必ずそれを通過するような態様で前記容器の中に配された、柔軟性を持つスポンジによって構成されたフィルタであるスポンジフィルタと、を有する濾過装置であり、前記流入管に、切換え弁である第1弁を介して管である排水管が接続され、且つ前記第1弁は、前記流入管を流れてきた前記汚水を前記容器に流す1A状態と、前記容器内の前記汚水及び前記浄水を前記排水管に流す1B状態とを採れるようになっているとともに、前記流出管に、切換弁である第2弁が設けられ、且つ前記第2弁は、前記容器からの前記浄水の流出を許容する2A状態と、前記容器からの前記浄水の流出を禁じる2B状態とを採れるようになっている、ものにおける前記スポンジフィルタに付着した汚れを除去するスポンジフィルタの洗浄方法(単に、「洗浄方法」という場合がある。)である。
そして、この洗浄方法では、前記スポンジフィルタを洗浄する際に、前記第2弁を前記2B状態とした状態で、前記第1弁を、前記1A状態と、前記1B状態との間で複数回ずつ切換える。
本願発明の洗浄方法が実行される濾過装置は、通常時、つまり、汚水の濾過が行われるときには、流入管に設けられた第1弁が1A状態とされ、且つ流出管に設けられた第2弁が2A状態とされる。これにより、容器には流入管から汚水が流れ込み、また容器からは、容器内で汚水が濾過されることによって生じた浄水が流出管から流れ出すことになる。容器は、少なくとも容器の本体部分の構成は、従来通りのもので良い。容器は、一般的には、水密且つ気密な耐圧性の容器である。
このような一般的な濾過を行うことができる濾過装置でスポンジフィルタを洗浄する場合には、前記第2弁を前記2B状態とした状態、つまり、容器からの前記浄水の流出が禁じられた状態で、流入管に設けられた第1弁を、1A状態、つまり、流入管を流れてきた汚水を容器に流す状態と、1B状態、つまり、容器内の汚水及び浄水(容器内の汚水及び浄水のすべてでなくても当然良い)を排水管に流す状態とを、交互に繰り返す。なお、1A状態と1B状態のいずれが先でも構わない。
そうすると、第1弁が1A状態のときには容器内に汚水が供給されるため容器内の水圧があがり、第1弁が1B状態のときには容器内の汚水及び浄水が排出されるから容器内の水圧が下がるから、容器内の水圧が交互に上下することになる。このとき、容器内に存在するフィルタが、本願発明における濾過装置が備えるもののように、柔軟性を持つスポンジ(多孔質構造体)によって構成されたフィルタであるスポンジフィルタであると非常に興味深い現象が生じる。水圧の上下にしたがい、スポンジフィルタは、縮まり、膨張するのである。このようなスポンジフィルタの動的な運動によって、スポンジフィルタに付着していた汚れは、従来通りの逆洗を行った場合よりもより良く、スポンジフィルタから分離され、排水管から外部へ除去されることになる。
【0008】
本願発明の洗浄方法を実行する場合における第2弁の2B状態への切換えは、手動で行っても、機械的に自動的に行っても良い。また、本願発明の洗浄方法を実行する場合における第1弁の1A状態と1B状態との交互の切換えも同様である。
1A状態と1B状態は、例えば、2秒から3秒程度ずつ、実施されても良い。
本願の洗浄方法が実行されるときにおける第1弁の1A状態と1B状態の切換えは、例えば、10回ずつ行えば一般的にはスポンジフィルタの洗浄の効果が上がる。つまり、前記第2弁を前記2B状態とした状態で、前記第1弁を、前記1A状態と、前記1B状態との間で少なくとも10回ずつ切換えてもよく、それによりスポンジフィルタの洗浄の効果が上がる。もちろんそれ以上の回数ずつ1A状態と1B状態を実行してもよい。
【0009】
本願の洗浄方法が実行される濾過装置は、前記容器の一部に管である洗浄用管であり、前記容器からの前記汚水及び前記浄水の流出を許容する3A状態と、前記容器からの前記汚水及び前記浄水の流出を禁じる3B状態とを採れるようになっている弁である第3弁を備えたものが接続されていてもよい。
このような濾過装置で本願の洗浄方法を実行する場合、前記第2弁を前記2B状態とした状態で、前記第1弁を、前記1A状態と、前記1B状態との間で複数回ずつ切換える際に、前記第3弁を3A状態とするようにしてもよい。
こうすると、第1弁が1A状態となり容器に汚水が流れ込むときと、第1弁が1B状態となり容器から汚水及び浄水が流れ出すときとの双方で、容器に設けられた洗浄用管が開放された状態となり、洗浄用管から汚水及び浄水が容器外へ流れ出るようになる。そのとき、容器内に汚水及び浄水と空気が混在するため、また、容器内の汚水及び浄水に、流入管と洗浄用管との異なる方向に向かう力がはたらくため、第1弁が1A状態のときも1B状態のときも、洗浄用管からの突発的な汚水及び浄水の飛び出しが生じる。それにより、スポンジフィルタの動的な運動がより大きくなるので、スポンジフィルタに付着していた汚れがスポンジフィルタからより分離されやすくなる。
【0010】
本願の濾過装置に供給される汚水は、従来の濾過装置で濾過されるべき汚水の中から適当に選択することができる。
例えば、前記汚水は泥水である。その場合、スポンジフィルタに付着する汚れの原因となる物質は、泥或いは砂礫となるが、汚れの原因となる物質がそのようなものである場合に本願発明の洗浄方法が従来の逆洗よりも良く洗浄の効果を発揮することを、既に本願発明者は確認済みである。
【0011】
本願発明者は、また、本願発明による洗浄方法を実行するのに向く濾過装置をも、本願発明の一態様として提案する。その効果は、本願の洗浄方法の効果に基本的に等しく、また、本願発明による洗浄方法を実行するのに向くというのも、当該濾過装置の効果となる。
一例となる濾過装置は、容器と、前記容器に不純物を含む汚水を流入させるための前記容器に接続された管である流入管と、前記容器から浄水を流出させるための前記容器に接続された管である流出管と、前記容器の中で前記流入管から前記流出管へ向かう汚水が必ずそれを通過するような態様で前記容器の中に配された、柔軟性を持つスポンジによって構成されたフィルタであるスポンジフィルタと、を有する濾過装置である。
この濾過装置では、前記流入管に、切換え弁である第1弁を介して管である排水管が接続され、且つ前記第1弁は、前記流入管を流れてきた前記汚水を前記容器に流す1A状態と、前記容器内の前記汚水及び前記浄水を前記排水管に流す1B状態との2つの状態を採れるようになっているとともに、前記流出管に、切換弁である第2弁が設けられ、且つ前記第2弁は、前記容器からの前記浄水の流出を許容する2A状態と、前記容器からの前記浄水の流出を禁じる2B状態の2つの状態を採れるようになっている。
そして、この濾過装置は、前記スポンジフィルタを洗浄する際に、前記第2弁を前記2B状態とした状態で、前記第1弁を、前記1A状態と、前記1B状態との間で複数回ずつ切換えることができるようになっている。
上述したように、本願発明の洗浄方法を実行する場合における第2弁の2B状態への切換えは、手動で行っても、機械的に自動的に行っても良い。また、本願発明の洗浄方法を実行する場合における第1弁の1A状態と1B状態との交互の切換えも同様である。本願発明の濾過装置は、前記第1弁に前記1A状態と前記1B状態との間での切換えを自動的に行わせるための第1弁制御装置を更に備えていてもよい。これにより、第1弁において繰り返される1A状態と1B状態の切換えを、自動的に行えるようになり便利である。他方、本願発明の洗浄方法が実行される場合における第2弁の切換えまでも、制御装置によって自動的に実行するようにしても良い。そうすることにより、本願発明の洗浄方法を、自動的に実行できるようになる。
【0012】
本願発明による濾過装置では、前記容器の一部に管である洗浄用管であり、前記容器からの前記汚水及び前記浄水の流出を許容する3A状態と、前記容器からの前記汚水及び前記浄水の流出を禁じる3B状態とを採れるようになっている弁である第3弁を備えたものが接続されていてもよい。この場合、スポンジフィルタの洗浄方法を実行するために、前記第2弁を前記2B状態とした状態で、前記第1弁を、前記1A状態と、前記1B状態との間で複数回ずつ切換える際に、前記第3弁を3A状態とすることができるようになっていてもよい。
この効果は、洗浄用管及び第3弁を備える濾過装置で実行される洗浄方法についての既に説明した効果に等しい。
【0013】
洗浄方法についての説明で既に述べたように、本願発明の濾過装置における容器は、少なくともその基本的な構成においては従来の濾過装置における容器のそれを踏襲することができる。例えば、その形状や、容器のどこに流入管、流出管、また存在するのであれば洗浄用管が接続されるのかは適宜設計することができる。
例えば、前記容器は、縦長であり、前記流入管は前記容器の下部に、前記洗浄用管は前記容器の前記流入管よりも上部にそれぞれ接続されていても構わない。こうすることにより、洗浄用管から良く汚水及び浄水が抜け易くなり、スポンジフィルタの動的な運動を促進することが可能となる。
洗浄用管が流入管よりも上に位置するようにして容器に接続される場合、前記洗浄用管は、前記容器の上面に接続されていても構わない。この場合、容器は上面を有する形状となり、その上面に洗浄用管が接続されることになる。このときの容器の形状は例えば、円筒形或いは円錐台形である。
本願発明における濾過装置における前記容器は、縦長の円筒形又は円錐台形であってもよい。その場合、前記スポンジフィルタは、平面視環状の縦長の円筒形乃至円錐台形であり、前記流入管は、前記スポンジフィルタの外側に前記汚水を供給するようになっているとともに、前記流出管は、前記スポンジフィルタの内側の空間から前記浄水の供給を受けるようになっていてもよい。この場合、スポンジフィルタの外面は、容器の内面に当接していても良いし、していなくても良い。
【0014】
本願発明者はまた、本願発明による濾過装置を含む濾過システムをも本願発明の一態様として提案する。
本願発明の濾過システムは、多段に接続された複数の濾過装置を含んでおり、複数の濾過装置のうちの少なくとも一つが、本願発明によるこれまでに説明した濾過装置のいずれかである濾過システムである。
この濾過システムの効果は、複数の濾過装置のうち少なくとも本願発明の濾過装置に該当するもののスポンジフィルタを、従来よりも洗浄しやすいということである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】一実施形態による濾過システムの全体構成を概略的に示す図。
【
図2】
図1に示した濾過システムに含まれる最上流の濾過装置の構成を概念的に示す側断面図。
【
図3】
図1に示した濾過システムに含まれる上流側から2番目と3番目の濾過装置の構成を概念的に示す側断面図。
【
図4】ストレーナフィルタの洗浄処理時にストレーナに供給されストレーナから放出される空気の流れを概念的に示した図。
【
図5】スポンジフィルタの洗浄の処理を観念的に説明するための
図2に示した濾過装置の側断面図。
【
図6】メッシュフィルタの洗浄を「逆洗1」により行う場合における濾過装置内での汚水及び浄水の流れを観念的に説明するための
図3に示した濾過装置の側断面図。
【
図7】メッシュフィルタの洗浄を「逆洗2」により行う場合における濾過装置内での汚水及び浄水の流れを観念的に説明するための
図3に示した濾過装置の側断面図。
【
図8】メッシュフィルタの洗浄を「泡洗浄」により行う場合における濾過装置内での汚水及び浄水の流れを観念的に説明するための
図3に示した濾過装置の側断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好ましい一実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
この実施形態で説明するのは、濾過システムである。濾過システムの概略的構成を示す全体構成図を
図1に示す。なお、
図1では、後述する第3弁の図示が省略されている。
【0017】
この実施形態で説明する濾過システムは汚水を濾過し、一般環境中に排出しても良い浄水に変えるためのものである。汚水は従来から濾過装置、或いは濾過システムで濾過を行う対象となっていた液体であれば特に制限はないが、この実施形態における濾過システムでは、泥水を濾過の対象としている。
【0018】
この実施形態における濾過システムは、複数の、これには限られないが、この実施形態では、上流側から7つの濾過装置10、20、30、40、50、60、及び70を多段に接続したものとなっている。濾過装置10~濾過装置70は一般に、下流側のものほど、汚水中の細かい固形物を濾過することを目的としたものとなっている。なお、以下の説明では、汚水、浄水、又は汚水及び浄水の流れる向きについて、上流から下流に向かう方向を「順方向」、下流から上流に向かう方向を「逆方向」と称することにする。
【0019】
濾過システムは、濾過装置10~濾過装置70の更に上流側に、言葉を変えれば最上流に、ストレーナ110を有している。
ストレーナ110は、汚水を取水するための取水口となるものであり、その使用時において、泥水である汚水が溜まった汚水溜まり(図示せず)の中に沈められ、或いは浸される。ストレーナ110は、汚水を取水するための取水口となる機能とともに、汚水の中の固形物を幾らか除去する機能を有している。ストレーナ110は、公知或いは周知のもので良く、市販のもので良い。
ストレーナ110は、中空のケース112とケース112に適宜設けられた図示せぬ開口を覆うストレーナフィルタ111とを備えている。ストレーナフィルタ111は、汚水中の固形物を幾らか除去するフィルタであり、例えば、ステンレスメッシュでできた膜状乃至板状のフィルタである。つまり、固形物を幾らか除去する機能を有するので、ストレーナ110も広い意味では濾過装置であると言える。
これには限られないが、この実施形態におけるストレーナフィルタ111は、ステンレスメッシュでできており、その目の大きさは、例えば、150μmである。
ストレーナ110は、管、一般的には柔軟な管であるホース121と接続されている。ホース121は公知、或いは周知のものでよく、市販のものでもよい。ホース121はポンプ130と接続されている。ポンプ130は、ホース121を介してストレーナ110の内部に負圧を与えることにより、ストレーナ110に汚水を吸引させ、ストレーナ110に吸引させた汚水を引く機能を有していることが最低限求められる。それが可能な限り、ポンプ130は公知或いは周知のものでよく、また市販のもので良い。この実施形態におけるポンプ130は、また、ストレーナ110に対して空気を送ることができるようになっている。ストレーナ110に対して空気を送るのは、後述するようにストレーナ110のストレーナフィルタ111の洗浄(ストレーナフィルタ111の目に詰まった固形物の除去)を行うためである。なお、ストレーナ110を介して汚水を引く機能と、ストレーナ110に対して空気を送る機能とは、必ずしも1つのポンプ130によって達成される必要はなく、上記2つの機能のそれぞれを別のポンプに割り振ることも可能である。
ポンプ130は、その下流側において、管、一般的には柔軟な管であるホース122と接続されている。長さは異なっても良いが、ホース122はホース121と同じもので良い。ホース122は、ポンプ130と、最も上流に位置する濾過装置である濾過装置10に接続された後述する接続管91に接続するためのものであり、ポンプ130によって汚水溜まりから引いた汚水を、接続管91に流す機能を有している。
【0020】
濾過装置10は、接続管91によってホース122と接続されている。後述する接続管92~97もそうであるが、接続管91は管であり、これには限られないが、この実施形態では金属製の管である。接続管91は、濾過装置10にとって、後述する濾過装置10の容器へ汚水を供給するための流入管に当たる。接続管91はその途中で分岐している。接続管91から分岐している管は、排水管91Yである。後述する排水管92Y~97Yもそうであるが、排水管91Yは管であり、これには限られないが、この実施形態では金属製の管である。後述する排水管92Y~97Yもそうであるが、排水管91Yの先端は、後述するようにして濾過装置10~濾過装置70から生じる残渣を溜めるための残渣溜めに連なっている。もっとも、排水管91Y~97Yの先端がそれぞれ連なる残渣溜めは、同じものであってもそうでなくても良い。
接続管91の排水管91Yとの接続部分には、弁91Xが設けられている。弁91Xの機能については後述する。
【0021】
濾過装置10と、濾過装置20とは、接続管92によって互いに接続されている。接続管92は、濾過装置10の後述する容器から浄水を流出させるものであり、濾過装置10にとっての流出管に相当するが、濾過装置20の後述する容器に浄水を供給するものであるから、濾過装置20にとっての流入管に相当する。
濾過装置20と、濾過装置30とは、接続管93によって互いに接続されている。接続管93は、濾過装置20の後述する容器から浄水を流出させるものであり、濾過装置20にとっての流出管に相当するが、濾過装置30の後述する容器に浄水を供給するものであるから、濾過装置30にとっての流入管に相当する。
濾過装置30と、濾過装置40とは、接続管94によって互いに接続されている。接続管94は、濾過装置30の後述する容器から浄水を流出させるものであり、濾過装置30にとっての流出管に相当するが、濾過装置40の後述する容器に浄水を供給するものであるから、濾過装置40にとっての流入管に相当する。
濾過装置40と、濾過装置50とは、接続管95によって互いに接続されている。接続管95は、濾過装置40の後述する容器から浄水を流出させるものであり、濾過装置40にとっての流出管に相当するが、濾過装置50の後述する容器に浄水を供給するものであるから、濾過装置50にとっての流入管に相当する。
濾過装置50と、濾過装置60とは、接続管96によって互いに接続されている。接続管96は、濾過装置50の後述する容器から浄水を流出させるものであり、濾過装置50にとっての流出管に相当するが、濾過装置60の後述する容器に浄水を供給するものであるから、濾過装置60にとっての流入管に相当する。
濾過装置60と、濾過装置70とは、接続管97によって互いに接続されている。接続管97は、濾過装置60の後述する容器から浄水を流出させるものであり、濾過装置60にとっての流出管に相当するが、濾過装置70の後述する容器に浄水を供給するものであるから、濾過装置70にとっての流入管に相当する。
濾過装置70からは流出管98が伸びている。流出管98は、濾過装置70の後述する容器から浄水を流出させるものであり、濾過装置70にとっての流出管に相当する。流出管70から流出する浄水は、環境中に放出しても良いレベルに清浄である。
【0022】
接続管92は、途中で排水管92Yと分岐しており、接続管92と排水管92Yとの接続部分には、弁92Xが設けられている。
接続管93は、途中で排水管93Yと分岐しており、接続管93と排水管93Yとの接続部分には、弁93Xが設けられている。
接続管94は、途中で排水管94Yと分岐しており、接続管94と排水管94Yとの接続部分には、弁94Xが設けられている。
接続管95は、途中で排水管95Yと分岐しており、接続管95と排水管95Yとの接続部分には、弁95Xが設けられている。
接続管96は、途中で排水管96Yと分岐しており、接続管96と排水管96Yとの接続部分には、弁96Xが設けられている。
接続管97は、途中で排水管97Yと分岐しており、接続管97と排水管97Yとの接続部分には、弁97Xが設けられている。
流出管98には、弁98Yが設けられている。
【0023】
弁91X~弁97Xの機能について説明する。
弁91X~弁97Xはすべて、同様の2つの状態を採ることができるようになっている。
まず、弁91Xについて説明する。
弁91Xは、上流側のホース122から下流側の濾過装置10へと、接続管91を介して順方向に汚水を流す状態と、弁91Xの下流側の接続管91と排水管91Yとを接続して、濾過装置10の後述する容器内に溜まった汚水及び浄水を排水管91Yに流し込む状態との2通りの状態を採ることができるようになっている。
弁92Xは、上流側の濾過装置10から下流側の濾過装置20へと、接続管92を介して順方向に下流側の濾過装置20にとっての汚水(これは、上流側の濾過装置10にとっての浄水である。以下も同様である。)を流す状態と、弁92Xの下流側の接続管92と排水管92Yとを接続して、濾過装置20内に溜まった汚水及び浄水を排水管92Yに流し込む状態との2通りの状態を採ることができるようになっている。
弁91X、弁92Xと同様に、弁93X~弁97Xはそれぞれ、上流側の濾過装置20、30、40、50、60から下流側の濾過装置30、40、50、60、70へと、接続管93~97を介して順方向に下流側の濾過装置30、40、50、60、70にとっての汚水を流す状態(要するに、弁93X~弁97Xの上流側と下流側の排水管93~排水管97を互いに接続した状態)と、弁93X~弁97Xそれぞれの下流側の接続管93~97と排水管93Y~97Yとを接続して、濾過装置30~70内にそれぞれ溜まった汚水及び浄水を排水管93Y~97Yにそれぞれ流し込む状態との2通りの状態を採ることができるようになっている。
弁91X~97Xがそれぞれ採りうる上述した2つの状態のうち、先に説明した状態をA状態、後に説明した状態をB状態とそれぞれ称することとする。
また、弁91X~97Xは、接続管91~97を完全に封鎖して、接続管91~97の順方向、逆方向の汚水等の流れを遮断するとともに、弁91X~97Xの上流側にある濾過装置10~濾過装置60から排水管91Y~97Yへの汚水及び浄水の流れをも遮断する状態(要するに、弁91X~97に連なるすべての管の間での汚水又は浄水の流れをすべて禁じる状態)を採れるようになっていてもよい。必ずしもこの限りではないが、弁91X~97Yは、そうなっている。弁91X~97Xが採りうるこの状態を、C状態と称することとする。
このように、この実施形態では、弁91X~97Xは、A状態、B状態、C状態の3つの状態をいずれも採れるようになっている。しかしながら、後述するように、弁91X~97Xのうち上記各状態のうちの少なくとも1つを必要としない場合がある。当該弁91X~97Xについては、必要としない状態を採れなくなっていても差し支えない。
他方、弁98Xは、2つの状態を採ることができるようになっている。弁98Xは、濾過装置70と接続された接続管98内を濾過装置70から流出する浄水が順方向に流れるのを許容する状態と、浄水が順方向に流れるのを禁じる状態との2つの状態を採ることができるようになっている。
【0024】
次に、濾過装置10~濾過装置70について説明する。
濾過装置10~濾過装置70のうち、この実施形態では、最上流に位置する濾過装置10のみが、スポンジフィルタを備えた濾過装置である。もっともスポンジフィルタを備えた濾過装置が多段に接続された濾過装置10~濾過装置70の最上流に位置する必要はない。また、スポンジフィルタを備えた濾過装置は、多段に接続された濾過装置10~濾過装置70の中に複数存在していても構わない。
【0025】
濾過装置10の構成について
図2を用いて説明する。
濾過装置10は、濾材としてスポンジフィルタを備えたものであれば、その他の構成は、後述する洗浄用管が接続されていることを除けば、従来の濾過装置と同様のものとすることができる。
濾過装置10は容器11を備えている。容器11は、従来の濾過装置が備えていたものと同様で良い。容器11は、水密であり、且つ気密である、ある程度の内圧に耐えることのできる耐圧性のケースである。容器11は、その全体を金属製とすることができる。或いは、容器11は、その少なくとも一部が、その内部のスポンジフィルタの状態を目視で観察できるように透明な材料(例えば、ガラスや樹脂)でできていても構わない。
容器11は、これには限られないがこの実施形態では縦長である。容器11の形状は例えば、軸が鉛直方向の円筒形、或いは円錐台形とすることができる。これには限られないが、この実施形態における容器11の形状は、上に向かって僅かに窄まる円錐台形とされている。
【0026】
容器11には接続管91の下流側と、接続管92の上流側とがそれぞれ接続されている。既に述べたように、接続管91は、濾過装置10にとっての流入管であり、接続管92は、濾過装置10にとっての流出管である。接続管91の下流側は、これには限られないが、容器11の下方、この実施形態では容器11の下端に接続されている。接続管91は、容器11の下面(底)に接続されていても構わない。接続管92の上流側も同様に、これには限られないが、容器11の下方、この実施形態では容器11の下端に接続されている。接続管92の上流側は、容器10の内部にまで及ぶ取水管13と接続されている。取水管13は、容器11の内部で上方に向かって折れ曲がり、容器11と同軸に上方に伸びている。取水管13の上方のある範囲には孔である取水孔13Xが多数穿たれている。取水孔13Xは、濾過装置10が汚水の濾過を行うときに、汚水がスポンジフィルタを通過することによって生じた浄水を取水管13内に取り込むための孔である。
取水管13は、この実施形態では容器11の上部、より詳細にはこれには限られないが、容器11の上面にまで及んでおり、容器11の上面で、容器11の上面から外部に延びる洗浄用管14と接続されている。洗浄用管14は、残渣溜めに向けて伸びている。ここでいう残渣溜めは、これまでに説明した残渣溜めと同じでも良いし、そうでなくても良い。洗浄用管14には、弁である補助弁14Xが取付けられている。補助弁14Xは、洗浄用管14を汚水及び浄水が通過できる状態と通過できない状態の2つの状態を選択できるようになっている。なお、接続管92と、取水管13と、洗浄用管14とは一連の管であっても良い。他方、取水管13と洗浄用管14とは、必ずしも接続されている必要はなく、その場合には取水管13の上端は、容器11の最上部にまで伸びている必要はない。取水管13と洗浄用管14とが接続されていない場合であっても、洗浄用管14と容器11との接続位置は、容器11と接続管91の下流側との接続位置よりも高い位置に位置すべきである。例えば、洗浄用管14の容器に対する接続位置は、容器11の上端、或いは、上面とすることができる。
【0027】
容器11内には、スポンジフィルタ12が配置されている。スポンジフィルタ12は、流入管たる接続管91から流入した汚水を濾過して、流出管たる接続管92から流出させる浄水とするものである。スポンジフィルタ12は、濾過装置10が汚水の濾過を行うとき、接続管91から流入した汚水が接続管92から浄水となって流出する全経路をカバーするように、言い換えれば、接続管92から出る浄水が必ずスポンジフィルタ12を通過するような形状とされていることが必要であり、その条件が満たすのであれば十分である。これには限られないが、この実施形態におけるスポンジフィルタ12は、平面視した場合に環状である。これには限られないが、環状のスポンジフィルタ12は、容器11の内部の空間のうち、取水管13の取水孔13Xが存在する範囲よりも下の所定の高さからそれよりも上の全空間(ただし、取水管13が占める空間を除く)を占めるような形状となっている。スポンジフィルタ12の占める範囲がこのようなものであるため、接続管91から流入した汚水は、スポンジフィルタ12を通過しない限り、取水管13の取水孔13Xに辿り着くことはない。したがって、取水孔13Xから取水管13に取り込まれるのは、汚水がスポンジフィルタ12を通過することによって生じた浄水のみとなる。もっとも、スポンジフィルタ12の形状はこれに限られない。例えば、環状のスポンジフィルタ12の内周面の全面が取水管13の外周面に当接しているのであれば、スポンジフィルタ12の外側面と、容器11の内側面との間には、隙間が空いていても構わない。
スポンジフィルタ12は、柔軟性を持つスポンジ(多孔質構造体)によって構成されたフィルタである。スポンジフィルタ12に必要とされる柔軟性は、後述するように濾過装置10のスポンジフィルタ12を洗浄するときに容器11内に生じる水圧の変化によって縮小したり膨張したりする程度の柔らかさである。
【0028】
次に、濾過装置20~濾過装置60の構成について説明する。
濾過装置20~濾過装置60は、濾材がスポンジフィルタでないことを除けば濾過装置10と同一の構成を採用している。とはいえ、濾過装置20~60は、濾材以外の部分においても濾過装置10と異なるものとなっていても構わない。例えば、濾過装置20~60と濾過装置10で、容器の形状や大きさが異なっていても構わないし、濾材の形状が異なっていても構わない。
【0029】
まず、濾過装置20、30について説明する。これには、限られないが、濾過装置20、30の構成は、濾材を除いてすべて濾過装置10と同じであってもよく、これには限られないが、この実施形態では、
図3に示したように、そうされている。なお、
図3における波線状のハッチングは、汚水又は浄水が存在する部分を示している。
濾過装置20、30は、濾過装置10が備えていた、容器11、取水孔13Xを備える取水管13、補助弁14Xを備えた洗浄用管14と同じ構成、機能を持つ構成要素を備えている。濾過装置20、30を示す
図3において、濾過装置10が備える構成要素と同じ10番台の符号が付された各構成要素については、濾過装置20については20番台の符号を付して、濾過装置30については30番台の符号を付して示した。
なお、濾過装置20において、容器21に接続されるのは接続管92の下流側であり、取水管23の下端と接続されるのは接続管93の上流側である。
濾過装置30において、容器31に接続されるのは接続管93の下流側であり、取水管33の下端と接続されるのは接続管94の上流側である。
濾過装置20、30における濾材は、基本的にどんなものでも良い。これには限らないが、この実施形態における濾過装置20、30における濾材は、ステンレスメッシュによる膜状乃至板状のフィルタであるメッシュフィルタ22、32である。もっともメッシュフィルタ22、32はステンレス製である必要は必ずしもない。
メッシュフィルタ22、32は、
図3に示したように、容器21、31の内部において、これには限られないが水平に配されており、取水管23、33が存在する部分を除く、容器21、31の水平断面の全範囲を覆っている。メッシュフィルタ22、32が存在する高さ位置は、接続管92、93の下流側よりも上で、取水管23、33の取水孔23X、33Xが存在する範囲よりも下の所定範囲のどこかである。メッシュフィルタ22、32がこのような位置に存在し、その存在範囲が上述のようなものなので、接続管92、93から容器21、31に入った汚水は、メッシュフィルタ22、32を通過しない限り、取水管23、33の内部に到達することができない。メッシュフィルタ22、32は、複数枚、例えば3枚程度重ね合わせられていても良い。
メッシュフィルタ22の目の大きさと、メッシュフィルタ32の目の大きさは一般に前者の方が大きい。例えば、メッシュフィルタ22の目の大きさは100μmであり、例えば、メッシュフィルタ23の目の大きさは50μmである。
なお、メッシュフィルタ22、32は水平に配置されている必要はない。1枚の或いは複数枚のメッシュフィルタ22、32が、円錐台形又は円筒形である容器11の中に、平面視した場合に、例えば、容器11の中心軸にその中心軸が合致する取水管23、33の鉛直な部分を中心として円形に(メッシュフィルタ22、32が複数枚の場合には、取水管23、33を中心として同心円状に)囲むように配されていても構わない。つまり、メッシュフィルタ22、32は、矩形のメッシュフィルタ22、32を筒状に丸めた状態で、容器の中に配される。この場合、メッシュフィルタ22、32が、それらを貫通する取水管13の水平な部分の断面に相当する範囲を除いて、平面視した場合のメッシュフィルタ22、23の全長にわたって、容器11の高さ方向の全長に存在するのであれば、接続管92、93から容器21、31に入った汚水は、メッシュフィルタ22、32を通過しない限り、取水管23、33の内部に到達することができない。
これには限られないがこの実施形態の濾過装置20、30には、他の濾過装置10、40~70には無い構成がある。それは空気供給管25、35である。空気供給管25、35の先端は、容器21、31にその下流側が接続される接続管92、93における弁92X、93Xよりも下流側に接続されている。空気供給管25、35の基端は、図示を省略の空気供給装置(例えば、公知、或いは周知のエアポンプ)と接続されている。空気供給管25、35は、容器21、31の内部に、好ましくは容器21、31の底付近に空気供給装置から供給された空気を送るためのものである。空気供給管25、35は容器21、31内に空気を送れれば良いので容器21、31に直接接続されていてもよい。空気を容器21、31の底付近に供給するのであれば、空気供給管25、35の先端が接続されるべきは、容器21、31の底付近か底面である。
【0030】
濾過装置40~60の構成は、図示を省略するが、濾過装置10~30の構成に倣っている。
この実施形態では、濾過装置40~60と、濾過装置10との違いは、これも濾材の違いのみである。濾過装置40~60はそれぞれ、補助弁44X、54X、64Xを備えた洗浄用管44、54、64と接続されているが、これらはいずれも無くても構わない。
濾過装置40~濾過装置60における濾材は、例えば交換を前提としたフィルタ、例えば、樹脂(例えば、アクリロニトリル樹脂、或いはポリプロピレン樹脂)製の樹脂フィルタである。樹脂フィルタは、濾過装置10におけるスポンジフィルタ12のように平面視環状(円筒形状)であっても構わないし、濾過装置20、30におけるメッシュフィルタ22、32の形状の一例として既に説明したように、膜状乃至板状であり、且つ例えば水平に、或いは丸めて筒状にした状態で平面視円形に配されていても良い。いずれにせよ、濾過装置40~60に流入した汚水は、必ず樹脂フィルタを通過して浄水になるようになっており、そうなっていれば樹脂フィルタは充分である。
濾過装置40~60における樹脂フィルタは、概ね、下流のものほど小さな固形物を濾過できるようなものとなっている。濾過装置40~60で用いられる樹脂フィルタが濾し取れる固形物の大きさは、例えば、濾過装置40では5μm、濾過装置50、60では、0.5μmである。
【0031】
濾過装置70は、これには限られないがいわゆる精密濾過を行うための濾過装置である。例えば、濾過装置70は、中空糸膜を濾材とする公知或いは周知の濾過装置でよく、この実施形態ではそうされている。
濾過装置70で濾過できる固形物の大きさは、例えば、0.01μmである。
【0032】
以上で説明した濾過システムの使用方法、及び動作について説明する。
濾過システムにて、汚水溜まりから取水した汚水(泥水)の濾過を行い、濾過装置70から流出管98を介して浄水を流出させる場合(通常時)の処理と、ストレーナ110のストレーナフィルタ111の洗浄をする場合と、濾過装置10のスポンジフィルタ12を洗浄する場合と、濾過装置20、30のメッシュフィルタ22、32を洗浄する場合の4通りについて主に説明する。
【0033】
<通常時>
通常時では、汚水溜まりから取水した泥水を濾過して、濾過装置70から浄水を流出させる。
まず、ポンプ130を駆動させ、ストレーナ110の内部にホース121を介して負圧を与える。そうすると、ストレーナ110のケース112の中に、ストレーナフィルタ111を通過して汚水が取り込まれる。ストレーナフィルタ111により、汚水の中の固形物が幾らか除去される。ストレーナフィルタ111はそれにより汚れていき、やがては目詰まりが生じる。
汚水は、ストレーナ110からホース121を介してポンプ130に至り、ポンプ130からホース122を介して接続管91の上流側に至る。
【0034】
このとき、弁91Xから97XはすべてA状態となっており、また、弁98Xは、接続管98内を濾過装置70から流出する浄水が順方向に流れるのを許容する状態となっている。つまり、最上流から最下流までの接続管91~98のすべてで、順方向での浄水又は汚水の流れが許容されている。
また、このとき、補助弁14X、24X、34X、44X、55X、66Xはすべて、洗浄用管14、24、34、44、54、64を汚水及び浄水が通過できない状態となっている。したがって、濾過装置10~60にそれぞれ接続されている、洗浄用管14、24、34、44、54、64から、汚水及び浄水が流出することはない。
【0035】
接続管91から濾過装置10の容器11に入った汚水は、スポンジフィルタ12を通過して、浄水となる。このとき、汚水中の固形物はスポンジフィルタ12によって濾し取られる。スポンジフィルタ12はそれにより汚れていき、やがては目詰まりを生じる。浄水は、スポンジフィルタ12の軸に沿って存在する取水管13の取水孔13Xから取水管13の中に入り、取水管13の下流側の端部で接続された接続管92に流れ込む。以上の濾過装置10内での汚水及び浄水の流れる方向(水圧のかかる方向)を、
図2中の矢印で大まかに示している。
そして、その浄水は、接続管92を順方向に通過して濾過装置20に流入する。
【0036】
濾過装置20でも濾過装置10で行われたことと事実上同じことが繰り返される。
接続管92から濾過装置20の容器21に入った汚水は、メッシュフィルタ22を通過して、浄水となる。このとき、汚水中の固形物はメッシュフィルタ22によって濾し取られる。メッシュフィルタ22はそれにより汚れていき、やがては目詰まりを生じる。浄水は、取水管23の取水孔23Xから取水管23の中に入り、取水管23の下流側の端部で接続された接続管93に流れ込む。以上の濾過装置20内での汚水及び浄水の流れる方向(水圧のかかる方向)を、
図3中の矢印で大まかに示している。ちなみに、この矢印は、濾過装置30で汚水の濾過が行われる場合にも妥当する。
そして、その浄水は、接続管93を順方向に通過して濾過装置30に流入する。
同様に、接続管93から濾過装置30に入った汚水は、そこで濾過され浄水となって接続管94に流れ込み、接続管94から濾過装置40に入った汚水は、そこで濾過され浄水となって接続管95に流れ込み、接続管95から濾過装置50に入った汚水は、そこで濾過され浄水となって接続管96に流れ込み、接続管96から濾過装置60に入った汚水は、そこで濾過され浄水となって接続管97に流れ込み、そして、接続管97から濾過装置70に入った汚水はそこで濾過され浄水となって流出管98に流れ込む。
結果的に、流出管98の下流側の端部から、浄水が流出する。浄水は、環境中、例えば河川に放出される。放出される浄水は、環境中に放出しても良いレベルに清浄である。
通常時では通常、ポンプ130は連続して駆動させられる。それにより、ストレーナ110から流出管98までの間に存在する汚水及び浄水には、順方向の一連の水圧がかかる。もっとも、ポンプ130は、バッチ的に駆動させてもよい。
【0037】
<ストレーナ110のストレーナフィルタ111の洗浄>
上述したように、通常時の処理をある程度継続して行うと、ストレーナ110のストレーナフィルタ111に汚れがたまり、やがては目詰まりを生じる。そこでストレーナフィルタ111の洗浄が必要となる。
この実施形態ではストレーナフィルタ111の洗浄を以下のようにして行う。
ストレーナ110には上述したように、ホース121を介してポンプ130が接続されている。通常ホース121は、ストレーナ110からポンプ130に汚水を運ぶように機能する。
ストレーナ110を洗浄する場合には、ポンプ130からストレーナ110に対して空気を送る。空気が送られるとき、ストレーナ110は汚水溜まりの中に沈められ、或いは浸された状態のままである。
その状態でストレーナ110に対して空気を送ると、ストレーナ110の中から外に、ストレーナフィルタ111を介して空気が流出する。そのときの空気の流れる方向を
図4に示した。流出する空気には、ストレーナフィルタ111についた汚れが吹き飛ばされる程度の勢いを与える。つまり、ストレーナ110のケース112内の空気圧は、ある程度高くする必要がある。そうすることで、ストレーナフィルタ111から汚水中に空気が流出する場合において、空気は間欠的に、勢いを増して、いわば小さな爆発を繰り返すように流出することになる。それにより、ストレーナフィルタ111の汚れが効率的に除去される。
ストレーナフィルタ111からの小さな爆発のような状態での突発的な空気の流出は、ストレーナフィルタ111の目がある程度細かい方が良く生じる。そのような爆発のような空気の流出は、ストレーナフィルタ111の目が500μm以下であれば概ね生じ、200μm以下であると殆ど確実に生じる。この実施形態のストレーナフィルタ111の目はそのような範囲から選択されており、これには限られないが、150μmである。
また、ストレーナ110のケース112内への空気の送りは、ケース112内の空気圧がある程度高い状態をしばらく、例えば2、3分程度保つようなある程度連続的なものとするのが良い。それによって、ストレーナ110からの空気の流出による上述した如き小さな爆発を促進させることができる。
ストレーナ110の洗浄が終わったら、ポンプ130からストレーナ110に空気を送るのを停止する。ただし、このままポンプ130でホース121内に負圧を与えても、ストレーナ110のケース112内に高圧の空気が溜まっているため、汚水をうまく引くことができない。そのような不具合を防ぐにはストレーナ110のケース112及びホース121内の空気圧を下げてやると良い。例えば、1秒程度で構わないから、ホース121とポンプ130の接続を解いてやれば、ストレーナ110のケース112及びホース121内の空気圧は上述の不具合を生じない程度に下がる。
もちろんストレーナ110のケース112及びホース121内の空気圧を下げるための処理は、ホース121とポンプ130の接続の解除に限らない。例えば、ホース121に枝管を接続しておいて、枝管の先端の開放によって、ホース121とストレーナ110のケース112内の空気圧を下げてもよい。
ホース121とストレーナ110のケース112内の空気圧を下げたら、例えば通常時の処理に戻る。
【0038】
<濾過装置10のスポンジフィルタ12を洗浄する場合>
通常時の処理をある程度継続すると、濾過装置10のスポンジフィルタ12に汚れがたまり、やがては目詰まりを生じる。そこでスポンジフィルタ12の洗浄が必要となる。
この実施形態ではスポンジフィルタ12の洗浄を以下のようにして行う。
スポンジフィルタ12の洗浄を行う場合には、濾過装置10の下流側に位置する接続管92の弁92XをB状態又はC状態とする。弁92XをB状態とすると、濾過装置10の下流側に接続管92を介して接続さている濾過装置20内に溜まった汚水及び浄水(先に汚水が出てくるであろうし、汚水しか出てこない場合もあり得る。本願において同様の場合はすべて同じ。)が、排水管92Bに流れ込む状態である。このとき、接続管92の弁92Xよりも濾過装置10側の部分は、接続管92の弁92Xよりも濾過装置20側の部分とも、排水管92Yとも接続されていない状態にあるので、濾過装置10から見れば、接続管92は閉じられた状態となる。また、弁92XがC状態になると、接続管92は弁92Xの部分で完全に遮断された状態となるから、濾過装置10から見れば、接続管92は閉じられた状態となる。
つまり、弁92XをB状態又はC状態とすることにより、濾過装置10にとって流出管である接続管92を、濾過装置10から見て閉じた状態とする。
他方、この状態で、濾過装置10の上流側にある、つまり濾過装置10にとって流入管となる接続管91に設けられた弁91Xを、交互にA状態とB状態とする処理を複数回繰り返す。弁91XがA状態であるとき、上流側のホース122から下流側の濾過装置10へと、接続管91を介して順方向に汚水が流れる状態となる。弁91XがB状態であるとき、弁91Xの下流側の接続管91と排水管91Yとが接続され、濾過装置10の容器11内に溜まった汚水及び浄水が排水管91Yに導かれる状態となる。
A状態とB状態を複数回繰り返す間、ポンプ130を駆動させ続ける等して、接続管91内の汚水には順方向の圧力がはたらき続けるようにする。少なくとも、弁91XがA状態のときには、接続管91内の汚水には順方向の圧力がはたらいていることが必要である。
弁91Xにおいて繰り返されるA状態とB状態は、それらのどちらから開始されても構わないが、通常時の処理の後に濾過装置10のスポンジフィルタ12の洗浄が行われるのであればA状態から始まるのが通常であろう。
弁91Xにおいて、A状態とB状態は、例えば、2秒から3秒程度ずつ、交互に実施されても良い。後述するようにして、排水管91Yから外部の例えば残渣溜めへと送られる汚水及び浄水を目視して、ある程度それがきれいになるまでA状態とB状態を繰り返しても良い。
弁91XのA状態とB状態の切換えは、例えば、10回ずつ、或いはそれ以上ずつ繰り返して行うと良い。そうすれば、スポンジフィルタ12の洗浄の効果が向上する。
なお、弁91XのA状態とB状態の交互の切換えは、弁91Xを手動で操作することによって行っても構わない。他方、弁91Xの上述した交互の切換えは、弁91XにA状態とB状態との切換えを自動的に行わせるための図示を省略の制御装置によって実現しても良い。これによれば、弁91XのA状態とB状態との間での切換えを作業者が手作業で繰り返し行わなければならないことによる手間を省略することができる。上述の制御装置は、A状態にある弁91XをB状態にすることと、B状態にある弁91XをA状態にすることの双方が可能な駆動装置(駆動装置は1つでも良いが、上記2つの動作のそれぞれが割振られた2つでも良い。)と、駆動装置が弁91Xに上記2つの動作を繰り返し実行させるためのデータ或いは信号を駆動装置に出力するための例えばコンピュータ装置とを組み合わせれば、当業者であれば容易に作成することができるであろう。
制御装置は、スポンジフィルタ12の洗浄を行う場合における弁91Xの制御のみならず、弁92XをB状態又はC状態にする、という制御まで自動的に実行するものであっても良い。また、制御装置は、スポンジフィルタ12の洗浄を行う場合において行っても良い、補助弁14Xを、容器11からの汚水及び浄水が洗浄用管14内を通過できる状態とするように動作させることまでも、自動的に実行するものであっても良い。
【0039】
弁91XがA状態のときにおいて濾過装置10内での汚水及び浄水の流れる方向(水圧のかかる方向)を、
図5(A)中の矢印で大まかに示した。また、弁91XがB状態のときにおいて濾過装置10内での汚水及び浄水の流れる方向(水圧のかかる方向)を、
図5(B)中の矢印で大まかに示した。なお、
図5(A)、(B)ともに、補助弁14Xが、後述するように、洗浄用管14を汚水及び浄水が通過できる状態となっている場合についての図である。
図5(A)に示したように、弁91XがA状態のとき、濾過装置10に対する流入管たる接続管91内の汚水には、例えばポンプ130から順方向の水圧がはたらいている。この水圧は、接続管91から、濾過装置10の容器11の内部に及ぶ。結果として、弁91XがA状態のとき、容器11内の汚水及び浄水にかかる水圧は上昇していく。これにより、スポンジフィルタ12はその体積を縮める。
他方、
図5(B)に示したように、弁91XがB状態のとき、濾過装置10の容器11内の汚水及び浄水は、濾過装置10の容器11内に溜まった汚水及び浄水が、弁91Xの下流側の接続管91から弁91Xを介して、排水管91Yに導かれる。つまり、容器11内の汚水及び浄水は減っていくので、容器11内の水圧が下がる。これにより、スポンジフィルタ12はその体積を膨張させる。
このように、水圧の上下にしたがって、スポンジフィルタ12は、縮まり、膨張する。このようなスポンジフィルタ12の動的な運動によって、スポンジフィルタ12に付着していた固形物である汚れ(残渣)は、従来通りの逆洗を行った場合よりもより良く、スポンジフィルタ12から分離され、汚水及び浄水とともに、排水管91Yから外部の例えば残渣溜めへと送られることになる。
【0040】
ところで、この実施形態では、必ずしも必要ではないが、弁91XにA状態とB状態とを繰り返させる際に、濾過装置10の容器11に接続された洗浄用管14に設けられた補助弁14Xを開放し、洗浄用管14を介して、容器11内に溜まっていた汚水及び浄水が容器11外へ流れ出ることが許容される状態を保つようにしている。
こうすることにより、弁91XがA状態となり容器10に接続管91から汚水が流れ込むときと、弁91XがB状態となり容器11から排水管91Yに汚水及び浄水が流れ出すときとの双方で、洗浄用管14から汚水及び浄水が流れ出ることになる。そのとき、容器11内に汚水及び浄水と空気が混在する状態が生じるため、また、容器11内の汚水及び浄水に、洗浄用管14と接続管91という異なる方向への力がはたらくため、弁91XがA状態のときにもB状態のときにも、洗浄用管14からの突発的な汚水及び浄水の飛び出しが生じ易くなる。それにより、スポンジフィルタ12における上述した動的な運動がより大きくなるので、スポンジフィルタ12に付着していた汚れがスポンジフィルタ12からより分離されやすくなる。
【0041】
スポンジフィルタ12の洗浄が終了したら、例えば、弁91Xと弁92XをともにA状態に戻す。そうすることにより、濾過システムに通常時の処理を実行させることが可能となるか、少なくともその準備が進むことになる。
なお、スポンジフィルタ12の洗浄として、後述する逆洗(逆洗1、2の処理)を行うことも可能である。逆洗の処理と、ここまでに説明したスポンジフィルタ12の洗浄の処理とは、当然に同時には行わない。
【0042】
<濾過装置20、30のメッシュフィルタ22、32を洗浄する場合>
通常時の処理をある程度継続すると、濾過装置20、30のメッシュフィルタ22、32に汚れがたまり、やがては目詰まりを生じる。そこでメッシュフィルタ22、23の洗浄が必要となる。濾過装置20におけるメッシュフィルタ22の洗浄と、濾過装置30におけるメッシュフィルタ32の洗浄とは事実上同じ処理であるから、濾過装置20におけるメッシュフィルタ22の洗浄の処理について説明する。
この実施形態ではメッシュフィルタ22の洗浄の処理は3種類存在する。逆洗の処理が2つ(以下では、「逆洗1の処理」と、「逆洗2の処理」とそれぞれ称する。)と、空気を用いた処理(以下では、「泡洗浄の処理」と称する。)である。これら3つの処理について順に説明する。
【0043】
(逆洗1の処理)
逆洗1の処理は、従来技術とそれ程変わらない。
逆洗1の処理を実行する場合、濾過装置20の下流側に連なる接続管93に設けられた弁93XをA状態とする。また、濾過装置20の上流側に連なる接続管92に設けられた弁92XをB状態とする。
容器21の上面に接続された洗浄用管24の補助弁24Xは、開放された状態、つまり、洗浄用管24を介して、容器21内に溜まっていた汚水及び浄水が容器21外へ流れ出ることが許容される状態とされても、閉じられた状態、つまり、洗浄用管24を介して、容器21内に溜まっていた汚水及び浄水が容器21外へ流れ出ることが許容されない状態とされても良い。
【0044】
この状態では、濾過装置20に対して本来であれば上流側に位置する弁92XがB状態、つまり、弁92Xの下流側の接続管92と排水管92Yとを接続して、濾過装置20内に溜まった汚水及び浄水を排水管92Yに流し込む状態となっているので、容器21内に溜まった汚水及び浄水は、排水管92Yから流出して残渣溜めに向かうことになる。
他方、濾過装置20に対して本来であれば下流側に位置する弁93XがA状態、つまり、上流側の濾過装置20から下流側の濾過装置30へと、接続管93を介して順方向に下流側の濾過装置30にとっての汚水が流れることが許容される状態となると、接続管93内の水の流れは逆方向を向く。なぜなら、弁93XがA状態となるというのは詰まるところ、弁93Xの部分の両側で接続管93が接続された状態に過ぎないところ、濾過装置20内の汚水及び浄水は上述したように、上流側の排水管92Yから徐々に排出されていき、接続管93内で濾過装置20から濾過装置30へと順方向に向かう水圧がはたらかなくなるからである。その一方で、濾過装置20の下流側にある濾過装置30の容器31には多くの汚水及び浄水が溜まっているため、容器31内の水位が濾過装置20の容器21の水位を上回った場合には、濾過装置30の容器31内に溜まった汚水及び浄水が濾過装置20に向けて流れ込もうとするため、接続管93内では逆方向の水圧がはたらくことになる。この現象は、例えば、濾過装置30の更に下流側にある弁94XをB状態、又はC状態にしたときに更に顕著となる。
そうすると、濾過装置20内における汚水及び浄水の流れ或いは水圧の向きは、
図6に示したように、通常時におけるそれら(
図3参照)と逆向きになる。
【0045】
要するに、逆洗1の処理において、洗浄用管24の補助弁24Xを閉じられた状態としたときにおいては、濾過装置20内での汚水及び浄水の流れ或いは水圧の向きは、通常時におけるそれらの向きと完全に反対になる。メッシュフィルタ22には、通常時とは逆向きの浄水から汚水に向けた水圧がはたらくことになる。これは、いわゆる一般的な逆洗を行っているのと同等の状態である。
一般的な逆洗を行っているのと同等の状態が生じると、濾過装置20には濾過装置30からの汚水及び浄水が逆流してくることもあり、濾過装置20の容器21内の汚水及び浄水は更に、排水管92Yから残渣溜めに排出されることになる。メッシュフィルタ22を、逆方向で浄水が通過することにより、メッシュフィルタ22に付着していた汚れが除去される。
【0046】
他方、洗浄用管24の補助弁24Xを開いた状態としたときにおいては、濾過装置20の容器21内に溜まった汚水及び浄水は、洗浄用管24を介して外部の残渣溜めに流出することを禁じられない。したがって、濾過装置20の容器21内に溜まった汚水及び浄水の一部は、洗浄用管24を介して外部の残渣溜めに流出する。
【0047】
(逆洗2の処理)
逆洗2の処理は、逆洗1の処理と似ているが、濾過装置20の上流側に連なる接続管92に設けられた弁92XをC状態とする点で、弁92XをB状態とする逆洗1の処理と異なる。弁92XがC状態となると、弁92Xの部分で、弁92Xの上流側の接続管92と、弁92Xの下流側の接続管92と、排水管92Yとは互いに遮断された状態となる。
他方、容器21の上面に接続された洗浄用管24の補助弁24Xは、開放された状態とされる。
【0048】
この状態でも、逆洗1の場合と同様に、接続管93の内部において、濾過装置30から濾過装置20に対して向かう、逆方向の汚水及び浄水の流れが生じる。
ただし、弁92XがC状態にあるため、濾過装置20の容器21に溜まった汚水及び浄水は、濾過装置20の上流側にある接続管92或いは排水管92Yを通って容器21から流出することはない。
したがって、濾過装置20の容器21に溜まった汚水及び浄水は、補助弁24Xが開放されていることもあり、洗浄用管24を通って残渣溜めに向かう。このときの容器21で生じる汚水及び浄水の流れあるいは、汚水及び浄水にはたらく水圧の向きを
図7に矢印で示した。
このとき、濾過装置20の容器21の内部では、メッシュフィルタ22に付着していた汚れはメッシュフィルタ22から良く分離される。
メッシュフィルタ22から分離された固形物である残渣は、汚水及び浄水に含まれた状態で、洗浄用管24を通って残渣溜めに向かう。
【0049】
(泡洗浄の処理)
泡洗浄の処理を実行する場合、濾過装置20の下流側に連なる接続管93に設けられた弁93XをC状態とする。また、濾過装置20の上流側に連なる接続管92に設けられた弁92XをB状態又はC状態とする。
この状態では、濾過装置20の容器21内に溜まった汚水又は浄水は、接続管92と接続管93のいずれからも流出できず、また、容器21には、接続管92と接続管93のいずれからも、汚水も浄水も流入しない状態となる。
つまり、泡が供給されるときには、濾過装置20内の汚水及び浄水には流れは生じず、特定の方向の圧力もはたらかない。これにより、濾過装置20内の汚水及び浄水にかかる水圧が大きくなることに起因して空気の泡が小さくなるという現象を避けることが可能となる。空気の泡が小さくなると泡によるメッシュフィルタ22の洗浄の効果が小さくなるため、泡が小さくなるという現象を避けられることの利益は大きい。濾過装置20内の汚水及び浄水にはたらく圧力を下げるための方策としては、汚水又は浄水の水面よりも高い位置にある容器が備える開口を開けることも考えられる。この実施形態でいえば、補助弁24Xを開放して、洗浄用管24を連通状態とすればその目的を達することができる。洗浄用管24が連通状態となれば、容器21上部の空気の空気圧は常圧まで落ちるから、当然に、容器21内の汚水及び浄水の水圧も小さくなる。これにより、泡が小さくなり、それにより泡洗浄の効果が下がるという事態を避けられる。
この状態で、空気供給管25から容器21内に空気を供給する。空気供給管25から容器21内への空気の供給は、容器21内に溜まった汚水及び浄水の中に多数の空気の泡を生じるようなものとする。泡はなるべく容器21の下の方から、例えば、メッシュフィルタが水平なのであれば、少なくともメッシュフィルタ22よりも下から発生させると良い。そうすることで、泡に曝されるメッシュフィルタ22の面積が大きくなる。
また、メッシュフィルタ22が、平面視した場合に取水管23の鉛直な部分を中心として円形、或いは同心円状とされている場合であっても、泡はなるべく容器21の下の方から発生させるべきである。この場合には、上述したようにメッシュフィルタ22は容器21の高さ方向の全域にわたることになるが、泡は汚水又は浄水の中を下から上に昇っていくのが当然であるから、泡の発生箇所が容器21の下側であるほど、泡に曝されるメッシュフィルタ22の面積が大きくなったり、単位面積あたりのメッシュフィルタ22に接触する泡の量が多くなったりするからである。容器21の中において空気の泡が供給されるべき範囲(泡が容器21の中で移動を始める場所)は、容器21の深さの下1/5の範囲であるのが好ましい。この実施形態では、空気供給管25から接続管92の内部に空気の泡が供給され、接続管92から容器21の内部に空気の泡が供給される。容器21内部に至ったときの泡は、容器21の深さの下1/5、これには限られないがこの実施形態では、概ね下1/10に含まれる範囲に位置することになる。
いずれにせよ、メッシュフィルタ22が泡に曝されると、泡がメッシュフィルタ22に付着し、或いはメッシュフィルタ22を通過する。それにより、例えば、泡による摩擦により、メッシュフィルタ22に付着していた汚れがメッシュフィルタ22から分離される。かかる効果は、フィルタが、樹脂フィルタ、繊維フィルタ、スポンジフィルタの場合に秘して、メッシュ状のメッシュフィルタ22である場合に顕著に現れる。これは、泡はフィルタの、例えばスポンジフィルタの内部にまで入り込みにくい特性を持つものの、汚れの最も付着するのがその表面であることが多いメッシュフィルタ22であれば、泡でメッシュフィルタ22の表面に刺激を与えるだけで、汚れを除去する効果が良く発揮されるからであると考えられる。
泡により汚れが除去される効果は、メッシュフィルタ22が金属、例えばステンレス製の場合に特に顕著に現れる。これは、メッシュフィルタ22が金属製の場合には汚れが付着するのは殆どメッシュフィルタ22の表面のみとなるからだと思われる。
メッシュフィルタ22から分離された固形物である汚れは、例えば、弁92XをB状態とすることにより、排水管92Yから、汚水及び浄水ごと残渣溜めに流出させることができる。
空気供給管25による空気の供給は、2~3分程度のある程度の時間を連続して行う方がメッシュフィルタ22の洗浄の効果が高く出易い。
【0050】
<その他>
この実施形態では、濾過装置40~70に含まれるフィルタの洗浄は行わない。もっともこれはこの限りではない。例えば、従来通りの逆洗をこれら濾過装置40~70で行っても構わない。
【符号の説明】
【0051】
10、20、30、40、50、60、70 濾過装置
11、21、31 容器
12 スポンジフィルタ
13、23、33 取水管
14、24、34 洗浄用管
14X、24X、34X 補助弁
22、32 メッシュフィルタ
25、35 空気供給管
91~97 接続管
98 流出管
91X~98X 弁
91Y~97Y 排水管
98Y 流出管
110 ストレーナ
111 ストレーナフィルタ
121、122 ホース
130 ポンプ