(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022132135
(43)【公開日】2022-09-07
(54)【発明の名称】低電力MEMS熱制御のための熱メタマテリアル
(51)【国際特許分類】
B81B 3/00 20060101AFI20220831BHJP
B81C 1/00 20060101ALI20220831BHJP
【FI】
B81B3/00
B81C1/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022018116
(22)【出願日】2022-02-08
(31)【優先権主張番号】17/187,296
(32)【優先日】2021-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】500575824
【氏名又は名称】ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】Honeywell International Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100147991
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥居 健一
(72)【発明者】
【氏名】コンプトン・ロバート
(72)【発明者】
【氏名】ファーティグ・チャド
(72)【発明者】
【氏名】クリス・ジェフリー ジェームズ
【テーマコード(参考)】
3C081
【Fターム(参考)】
3C081AA05
3C081BA43
3C081BA48
3C081BA53
3C081BA72
3C081CA02
3C081CA14
3C081CA15
3C081CA28
3C081CA29
3C081DA03
3C081DA06
3C081DA10
3C081DA27
3C081DA30
3C081EA00
(57)【要約】 (修正有)
【課題】構成要素の効率的な受動的冷却を可能にする。
【解決手段】熱メタマテリアルデバイス100は、第1の熱伝導性を有する第1の材料を含む基板層112と、基板層112の第1の部分上に熱バス114と、を備える、少なくとも1つのMEMS熱スイッチ110を備える。熱バス114は、第1の熱伝導性よりも高い第2の熱伝導性を有する第2の材料を含む。絶縁体層は、基板層の第2の部分上にあり、かつ第1及び第2の材料とは異なる第3の材料を含む。熱パッド120は、絶縁体層の第1の部分によって支持され、熱パッド120は、第2の材料を含み、かつ熱バス114の一部分上に位置付けられた張出部分122を有する。電圧が熱パッド120に印加されるとき、静電相互作用が発生して、張出部分122の熱バス114に向かう偏向を引き起こし、それにより、熱パッド120と熱バス114との間に熱伝導性を提供する。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
デバイスであって、
少なくとも1つの微小電気機械システム(MEMS)熱スイッチであって、
第1の熱伝導性を有する第1の材料を含む基板層と、
前記基板層の第1の部分上の熱バスであって、前記熱バスが、前記第1の熱伝導性よりも高い第2の熱伝導性を有する第2の材料を含む、熱バスと、
前記基板層の第2の部分上の絶縁体層であって、前記絶縁体層が、前記第1及び第2の材料とは異なる第3の材料を含み、前記絶縁体層が、第1の高さを有する第1の部分、及び前記第1の高さ未満の第2の高さを有する第2の部分を含む、絶縁体層と、
前記絶縁体層の前記第1の部分によって支持された熱パッドであって、前記熱パッドが、前記第2の材料を含み、かつ張出部分を有し、前記張出部分が、前記熱バスの一部分上に位置付けられている、熱パッドと、を備える、少なくとも1つの微小電気機械システム(MEMS)熱スイッチを備え、
電圧が前記熱パッドに印加されるとき、前記熱パッドと前記熱バスとの間で静電相互作用が発生して、前記熱パッドの前記張出部分の前記熱バスに向かう偏向を引き起こし、それにより、前記熱パッドと前記熱バスとの間に熱伝導性を提供する、デバイス。
【請求項2】
微小電気機械システム(MEMS)デバイスであって、
熱隔離足場と、
前記熱隔離足場上のMEMS熱スイッチのアレイを備えるメタマテリアルであって、前記MEMS熱スイッチの各々が、
第1の熱伝導性を有する第1の材料を含む基板層と、
前記基板層の第1の部分上の熱バスであって、前記熱バスが、前記第1の熱伝導性よりも高い第2の熱伝導性を有する第2の材料を含む、熱バスと、
前記基板層の第2の部分上の絶縁体層であって、前記絶縁体層が、前記第1及び第2の材料とは異なる第3の材料を含み、前記絶縁体層が、第1の高さを有する第1の部分、及び前記第1の高さ未満の第2の高さを有する第2の部分を含む、絶縁体層と、
前記絶縁体層の前記第1の部分によって支持された熱パッドであって、前記熱パッドが、前記第2の材料を含み、かつ張出部分を有し、前記張出部分が、前記熱バスの一部分上に位置付けられている、熱パッドと、を備える、メタマテリアルと、
前記MEMS熱スイッチの各々の各熱パッドに電気的に結合された電圧源と、を備え、
電圧が、前記電圧源から印加されるとき、静電相互作用が、前記MEMS熱スイッチ内で、各熱パッドと各熱バスとの間で発生して、前記熱パッドの前記張出部分の前記熱バスに向かう偏向を引き起こし、それにより、前記熱パッドと前記熱バスとの間に熱伝導性を提供する、微小電気機械システム(MEMS)デバイス。
【請求項3】
熱メタマテリアルを含む微小電気機械システム(MEMS)デバイスを製造する方法であって、
基板層を提供することと、
前記基板層上に第1のポリマー層を形成することと、
前記基板層をエッチング処理して、前記第1のポリマー層によって架橋される1つ以上の基板島部分を形成することと、
前記第1のポリマー層上に第1の金属層を堆積させることと、
前記第1の金属層をパターン化して、前記第1のポリマー層から突出する熱バスを生成することと、
前記熱バス及び前記第1のポリマー層の露出部分上に絶縁体層を堆積させることと、
前記絶縁体層上に第2の金属層を堆積させることと、
前記第2の金属層をパターン化して、前記絶縁体層から突出する一組の電極パッドを生成することと、
前記絶縁体層を部分的にエッチング処理して、前記第1のポリマー層の上面の部分を露出させながら、前記電極パッドの周りに前記絶縁体層の残りの部分を残すことと、
前記電極パッド、前記絶縁体層の前記残りの部分、及び前記第1のポリマー層の上に、第2のポリマー層を形成することと、
前記電極パッド上で前記第2のポリマー層をエッチングすることと、
第3の金属層を前記第2のポリマー層及び前記電極パッド上に堆積させて、一組の上部接点を形成することと、
前記第2のポリマー層の部分に沿って前記第3の金属層をエッチング処理して、上部金属グリッドパターンを形成することと、
前記絶縁体層の前記残りの部分を部分的にエッチング処理して、前記電極パッドの下を削り落とし、かつそこから前記熱バスから分離された一組の熱パッドを生成することと、を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
多くのタイプの微小電気機械システム(micro-electro-mechanical systems、MEMS)センサ及び原子センサは、温度に依存する誤差を有する。例えば、-40℃~85℃の典型的な軍事温度範囲にわたる動作のために、センサを加熱又は冷却することによってなど、センサの温度を制御することにより、誤差は、最小限に抑えることができる。
【0002】
加熱は、電子抵抗率によって容易に達成され、これは、適切な抵抗回路のリソグラフィパターン化によってMEMSセンサ又は原子センサに組み込むことができる。熱電冷却デバイスなどの従来のデバイスは、非常に非効率的であり、かつ環境に対して強い熱伝導性結合を導入し、これはまた抵抗加熱要素の効率も低下させるため、冷却は、達成するのがより困難である。
【発明の概要】
【0003】
熱メタマテリアルデバイスは、少なくとも1つの微小電気機械システム(MEMS)熱スイッチを備える。MEMS熱スイッチは、第1の熱伝導性を有する第1の材料を含む基板層と、基板層の第1の部分上の熱バスと、を備え、熱バスは、第1の熱伝導性よりも高い第2の熱伝導性を有する第2の材料を含む。絶縁体層は、基板層の第2の部分上にあり、絶縁体層は、第1及び第2の材料とは異なる第3の材料を含む。絶縁体層は、第1の高さを有する第1の部分と、第1の高さ未満の第2の高さを有する第2の部分と、を含む。熱パッドは、絶縁体層の第1の部分によって支持され、熱パッドは、第2の材料を含み、かつ熱バスの一部分上に位置付けられた張出部分を有する。電圧が熱パッドに印加されるとき、熱パッドと熱バスとの間で静電相互作用が発生して、熱パッドの張出部分が熱バスに向かう偏向を引き起こし、それにより、熱パッドと熱バスとの間に熱伝導性を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0004】
本開示の特徴は、図面を参照する以下の説明から当業者には明らかとなるであろう。図面は典型的な実施形態のみを示し、したがって範囲を限定するものと見なされるべきではないことを理解した上で、本実施形態を図面を使用して更なる具体性及び詳細と共に説明する。
【0005】
【
図1A】一実施形態による、微小電気機械システム(MEMS)熱スイッチを含む、熱メタマテリアルの区分の概略上面図である。
【0006】
【
図1B】MEMS熱スイッチを含む、
図1Aの熱メタマテリアルの区分の概略側面図である。
【
図1C】MEMS熱スイッチを含む、
図1Aの熱メタマテリアルの区分の概略側面図である。
【0007】
【
図2】Aは、一実施形態による、MEMS熱スイッチのアレイを有する熱メタマテリアルの概略上面図である。Bは、
図2Aの熱メタマテリアルの概略底面図である。Cは、
図2Aの熱メタマテリアルの区分の拡大上面図である。
【0008】
【
図3A】例示的なアプローチによる、熱メタマテリアルを含む、MEMSデバイスを製造するための方法の概略側面図である。
【
図3B】例示的なアプローチによる、熱メタマテリアルを含む、MEMSデバイスを製造するための方法の概略側面図である。
【
図3C】例示的なアプローチによる、熱メタマテリアルを含む、MEMSデバイスを製造するための方法の概略側面図である。
【
図3D】例示的なアプローチによる、熱メタマテリアルを含む、MEMSデバイスを製造するための方法の概略側面図である。
【
図3E】例示的なアプローチによる、熱メタマテリアルを含む、MEMSデバイスを製造するための方法の概略側面図である。
【
図3F】例示的なアプローチによる、熱メタマテリアルを含む、MEMSデバイスを製造するための方法の概略側面図である。
【
図3G】例示的なアプローチによる、熱メタマテリアルを含む、MEMSデバイスを製造するための方法の概略側面図である。
【
図3H】例示的なアプローチによる、熱メタマテリアルを含む、MEMSデバイスを製造するための方法の概略側面図である。
【
図3I】例示的なアプローチによる、熱メタマテリアルを含む、MEMSデバイスを製造するための方法の概略側面図である。
【
図3J】例示的なアプローチによる、熱メタマテリアルを含む、MEMSデバイスを製造するための方法の概略側面図である。
【
図3K】例示的なアプローチによる、熱メタマテリアルを含む、MEMSデバイスを製造するための方法の概略側面図である。
【0009】
【
図4】例示的な実施形態による、熱メタマテリアルで実装することができる、熱隔離足場を例解する。
【0010】
【
図5】例示的な実施形態による、熱メタマテリアルに対する可変熱伝導性を提供する、可変温度制御システムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下の詳細な説明では、様々な例示的な実施形態を例解として示す添付の図面を参照する。他の実施形態が利用され得ることを理解されたい。したがって、以下の詳細な説明は、限定的な意味で解釈されるべきではない。
【0012】
低電力微小電気機械システム(MEMS)熱制御のための熱メタマテリアルが、本明細書に記載される。熱メタマテリアルは、様々な実施形態では、可変熱伝導性を有するように実装され得る。
【0013】
本アプローチは、MEMSセンサ又は原子センサがそれを通してヒートシンクされる材料の有効熱伝導性を低下させるために、様々な可能な機構(例えば、静電、圧電、熱二金属、及び同様のもの)によって作動され得る、多数の熱スイッチを組み込む。これは、周囲温度が低いときに効率的な加熱能力を犠牲にすることなく、周囲温度が高いときに効率的な冷却を提供する。チップスケール原子時計における使用などのいくつかの場合では、本アプローチは、わずかな追加の変化のみで、既存の製造プロセスフローに組み込むことができ、その結果、最小限の追加コストで利益を取得することができる。
【0014】
本デバイスは、様々な電子構成部品の温度を安定化させることによって、従来のアプローチに対して、桁違いに大きく改善された熱伝導性係数を提供する。それらの内部の熱負荷のために、これらの電子構成部品は、高い周囲温度で動作するために能動的又は受動的に冷却される必要がある。本アプローチは、そのような構成要素の効率的な受動的冷却を可能にする。
【0015】
一実施形態では、熱メタマテリアルは、いくつかの可能な機構のうちの1つによって作動され得る金属カンチレバーに基づく。一実装形態では、熱メタマテリアルは、チップスケール原子時計などのMEMSデバイスのための既存の支持構造にリソグラフィパターン化することができ、小型構成部品は、小型の熱隔離されたプラットフォーム(すなわち、足場)上で支持される。例えば、これらの部品は、ウェハ当たり数百の足場が熱メタマテリアルデバイスを組み込む状態で、ウェハ(例えば、シリコンウェハ)からのバッチプロセスにおいて製造することができる。
【0016】
以下、図面を参照して、様々な実施形態の更なる詳細を説明する。
【0017】
図1A~
図1Cは、一実施形態による、少なくとも1つのMEMS熱スイッチ110を含む、熱メタマテリアル100の区分の異なる図を例解する。MEMS熱スイッチ110は、以下で更に記載されるように、熱メタマテリアル100内の熱スイッチのアレイとして実装することができる。熱メタマテリアル100は、以下で更に記載されるように、周囲環境から熱隔離された足場などの熱隔離されたプラットフォーム上に形成することができる。
【0018】
MEMS熱スイッチ110は、第1の熱伝導性を有する第1の材料を含む基板層112を含む。例えば、第1の材料は、ポリイミド、多孔質シリコン、ガラス、これらの組み合わせ、又は同様のものなどのより低い熱伝導性材料であり得る。
【0019】
熱バス114は、基板層112の第1の部分の上に形成され、かつグランドに接続され得る。熱バス114は、第1の熱伝導性よりも高い第2の熱伝導性を有する第2の材料を含む。例えば、第2の材料は、銅、金、アルミニウム、これらの組み合わせ、又は同様のものなどの金属であり得る。
【0020】
絶縁体層116(
図1B及び
図1C)は、基板層112の第2の部分上に形成される。絶縁体層116は、第1の高さ(例えば、メサ部分)を有する第1の部分117と、第1の高さ未満の第2の高さを有する第2の部分118と、を含む。絶縁体層116は、第1及び第2の材料とは異なる第3の材料を含む。例えば、第3の材料は、二酸化ケイ素、窒化ケイ素、これらの組み合わせ、若しくは同様のものなどの酸化物又は窒化物材料であり得る。
【0021】
熱パッド120は、絶縁体層116の第1の部分117によって支持される。熱パッド120は、より高い熱伝導性を有する第2の材料を含み、かつ張出部分122を有する。張出部分122は、熱バス114の一部分の上に位置付けられる。
【0022】
電圧源124(
図1B及び
図1C)は、1つ以上の金属接点126を通じてなど、熱パッド120に電気的に結合される。一対の支持区分128は、支持区分128が、より低い熱伝導性を有する第1の材料を含む状態で、熱パッド120上に結合される。金属接点126は、支持区分128に結合される。
【0023】
図1Bに示されるように、電圧がゼロであるとき、熱パッド120の張出部分122は、熱バス114に向かって偏向されないままである。このことは、熱パッド120と熱バス114との間に低い熱伝導性を提供する。
図1Cに示されるように、熱パッド114に印加される電圧がゼロより大きいとき、熱パッド120と熱バス114との間に生じる静電相互作用のために、張出部分122は、熱バス114に向かって偏向する。このことは、熱パッド120と熱バス114との間に高い熱伝導性を提供する。
【0024】
一実施形態では、電圧源124の電圧制御は、単極性(+V~グランド)であり得る。別の実施形態では、電圧制御は、双極性(+V~-V)であり得る。以下に更に記載される、代替的な実施形態では、可変温度制御は、パルス幅変調(pulse width modulation、PWM)を使用することによって提供され得る。PWMを使用すると、断続的な接続が可能になり、熱メタマテリアルの熱伝導性の連続的な調整を提供する。
【0025】
図2A及び
図2Bは、それぞれ、例示的な実施形態による、MEMS熱スイッチ210のアレイを有する熱メタマテリアル200の上面図及び底面図を例解する。熱メタマテリアル200は、足場などの熱隔離されたプラットフォーム202上で形成され得、その結果、熱メタマテリアル200は、周囲環境から熱隔離される。
【0026】
図2Cは、MEMS熱スイッチ210のうちの1つを例解する、熱メタマテリアル200の区分の拡大上面図である。MEMS熱スイッチ210の各々は、上述のMEMS熱スイッチ110と同様の構造を有する。そのため、各MEMS熱スイッチ210は、ポリイミドなどのより低い熱伝導性を有する第1の材料を含む、基板層212を含む。
【0027】
熱バス214は、基板層212の第1の部分の上に形成され、かつグランドに接続され得る。熱バス214は、銅などのより高い熱伝導性を有する第2の材料を含む。
【0028】
絶縁層は、第1の高さを有する第1の部分117と、第1の高さ未満の第2の高さを有する第2の部分118と、を含む、絶縁体層116(
図1B及び
図1C)などの基板層212の第2の部分の上に形成される。絶縁体層は、第1及び第2の材料とは異なる第3の材料を含む。例えば、第3の材料は、二酸化ケイ素であり得る。
【0029】
熱パッド220は、絶縁体層の第1の部分によって支持される。熱パッド220は、より高い熱伝導性(例えば、銅)を有する第2の材料を含み、かつ張出部分222を有する。張出部分222は、熱バス214の一部分の上に位置付けられる。
【0030】
電圧源は、銅接点などの、1つ以上の金属接点226を通じてなど、熱パッド220に電気的に結合される。一対の支持区分228は、支持区分228が、より低い熱伝導性(例えば、ポリイミド)を有する第1の材料を含む状態で、熱パッド220上に結合される。金属接点226は、支持区分228と結合される。
【0031】
MEMS熱スイッチ210は、MEMS熱スイッチ110について上記で説明されたものと同様の様式で動作する。したがって、電圧がゼロであるとき、熱パッド220の張出部分222は、熱バス214に向かって偏向されないままである。このことは、熱パッド220と熱バス214との間に低い熱伝導性を提供する。熱パッド214に印加される電圧がゼロより大きいとき、張出部分222は、熱バス214に向かって偏向し、熱パッド220と熱バス214との間に高い熱伝導性を提供する。
【0032】
以下で更に記載されるように、可変温度制御は、PWMプロセスを使用することによって提供することができ、これにより、断続的な接続が、熱メタマテリアル200の熱伝導性の連続調整を提供することを可能にする。
【0033】
図3A~
図3Kは、例示的なアプローチによる、上記のような熱メタマテリアルを含む、MEMSデバイスを製造するための方法の概略側面図を例解する。最初に、
図3Aに示されるように、シリコンなどのより高い熱伝導性材料からなる、ウェハなどの基板層302が、提供される。第1のポリマー層304は、基板層302上に形成される。第1のポリマー層304は、ポリイミドなどのより低い熱伝導性材料からなる。
図3Bに図示されるように、基板層302は、第1のポリマー層304によって架橋される島部分306を生成するようにエッチング処理される。一実施形態では、基板層302、島部分306、及び第1のポリマー層304は、熱隔離足場の一部として形成することができる。
【0034】
図3Cに示されるように、第1の金属層308は、電子ビーム(eビーム)又はスパッタリングプロセスによってなど、第1のポリマー層304上に堆積される。第1の金属層308は、例えば、銅、金、又はアルミニウムからなり得る。次に、第1の金属層308は、
図3Dに示されるように、第1のポリマー層304から突出する熱バス部分310を生成するために、湿式エッチング又はイオン粉砕プロセスによってなどパターン化される。
【0035】
その後、
図3Eに例解されるように、絶縁体層312は、化学蒸着(chemical vapor deposition、CVD)又はスパッタリングプロセスによってなど、熱バス部分310及び第1のポリマー層304の露出部分の上に形成される。絶縁体層312は、例えば、二酸化ケイ素又は窒化ケイ素からなることができる。その後、第2の金属層314(例えば、銅又は金)は、eビーム又はスパッタリングプロセスによってなど絶縁体層312上に堆積される。次いで、第2の金属層314は、
図3Fに示されるように、湿式エッチング又はイオン粉砕プロセスによってなどパターン化されて、絶縁体層312から突出する一組の電極パッド316を生成する。
【0036】
図3Gに図示されるように、絶縁体層312は、上部電気接点の形成の準備のために、部分的にエッチング処理され、第1のポリマー層304の上面の部分を露出させる。
図3Hに示されるように、第2のポリマー層318(例えば、ポリイミド)は、紡糸プロセスによってなど、電極パッド316、絶縁体層312、及び第1のポリマー層304を含む、露出表面部分上に形成される。
【0037】
次に、
図3Iに示されるように、電極パッド316上の第2のポリマー層318は、エッチング処理され、第3の金属層320(例えば、銅又は金)が、第2のポリマー層318上に堆積されて、一組の上部接点322を形成する。
図3Jに示されるように、第3の金属層320は、第2のポリマー層318の部分と共にエッチング処理されて、上部金属グリッドパターン324を形成する。その後、
図3Kに例解されるように、絶縁体層312は、電極パッド316の下を削り落とすために、湿式エッチングによってなど、部分的にエッチング処理されて、絶縁体層312の隆起部分によって支持された一組の熱パッド326を生成する。
【0038】
その後、ポリイミド層などの上部ポリマー層は、紡糸プロセスによってなど、熱メタマテリアルの製造構造上に任意選択的に形成することができる。前述の方法は、熱メタマテリアルを生成するためにバッチ製造プロセスにおいて用いられ得る。
【0039】
前述のように、熱メタマテリアルは、チップスケール原子時計などの小型デバイスのための支持構造上に形成することができ、小型構成部品は、小型の熱隔離された足場上で支持される。これらの構造は、ウェハあたり数百の足場が熱メタマテリアルを組み込む状態で、ウェハからのバッチプロセスにおいて製造することができる。
【0040】
図4は、一実施形態による、熱メタマテリアルで実装することができる、このような熱隔離足場400を例解する。熱隔離足場400は、シリコン基板などの基板402と、基板402から熱隔離され、かつ基板402によって囲まれる、シリコン島などの島部分404と、を含む。一体型ヒータコイル406は、島部分404上に位置付けられる。低い熱伝導性を有するポリイミドテザーなどの一組のテザー410は、基板402を島部分404と接続させる。テザー410は、島部分404を基板402から熱隔離する。
図4に示されるように、熱メタマテリアル414が、テザー410のうちの少なくとも1つの上に形成される。
【0041】
島部分404はまた、ヒータコイル406のフィードバック制御のための温度センサを収容し得る。代替的に、温度は、他の構成要素(例えば、小型レーザ、又は原子ガスセル)の温度応答によってなど、他の機構によって制御され得る。
【0042】
上述のように、熱メタマテリアルは、様々な実施形態では、可変熱伝導性を有するように実装され得る。
図5は、熱隔離足場510に動作可能に結合される、可変温度制御システム500を例解する。熱隔離足場510は、シリコン基板、熱メタマテリアル514などの熱リザーバ512、及び一体型ヒータコイルを含むシリコン島などの熱制御領域516を含む。可変温度制御システム500は、熱メタマテリアル514の熱伝導性調整を提供するように構成されている。
【0043】
可変温度制御システム500は、PWM信号などのフィードバック信号を出力する、比例積分微分(proportional-integral-derivative、PID)コントローラなどのプロセッサユニット502を含む。熱センサ504は、熱制御領域516の実際の温度を測定するように構成されている。温度設定点ユニット506は、熱メタマテリアル514に関する所望の温度設定点を提供するように構成されている。プロセッサユニット502に結合された、減算回路508は、熱センサ504及び設定点ユニット506から温度値を受信するように構成されている。
【0044】
動作中、減算回路508は、設定点ユニット506からの温度値を、熱センサ504からの実際の温度値と比較する。減算回路508は、示差温度値をプロセッサユニット502に出力し、これが、示差温度値に基づいて、フィードバック信号(PWM信号)を出力する。フィードバック信号は、熱メタマテリアル514に、又はメタマテリアル514及び一体型ヒータコイルの両方に送信される。フィードバック信号は、断続的な接続を可能にして、熱メタマテリアル514の熱伝導性の連続的な調整を提供する。
例示的な実施形態
【0045】
実施例1は、少なくとも1つの微小電気機械システム(MEMS)熱スイッチを備えるデバイスを含み、第1の熱伝導性を有する第1の材料を含む基板層と、基板層の第1の部分上の熱バスであって、熱バスが、第1の熱伝導性よりも高い第2の熱伝導性を有する第2の材料を含む、熱バスと、基板層の第2の部分の上の絶縁体層であって、絶縁体層が、第1及び第2の材料とは異なる第3の材料を含み、絶縁体層が、第1の高さを有する第1の部分、及び第1の高さ未満の第2の高さを有する第2の部分を含む、絶縁体層と、絶縁体層の第1の部分によって支持された熱パッドであって、熱パッドが、第2の材料を含み、かつ張出部分を有し、張出部分が、熱バスの一部分上に位置付けられている、熱パッドと、を備え、電圧が熱パッドに印加されるとき、熱パッドと熱バスとの間で静電相互作用が発生して、熱パッドの張出部分の熱バスに向かう偏向を引き起こし、それにより、熱パッドと熱バスとの間に熱伝導性を提供する。
【0046】
実施例2は、実施例1のデバイスを含み、第1の材料は、ポリイミド、多孔質シリコン、ガラス、又はこれらの組み合わせを含む。
【0047】
実施例3は、実施例1~2のいずれかのデバイスを含み、第2の材料は、銅、金、アルミニウム、又はこれらの組み合わせを含む金属である。
【0048】
実施例4は、実施例1~3のいずれかのデバイスを含み、第3の材料は、二酸化ケイ素、窒化ケイ素、又はこれらの組み合わせを含む。
【0049】
実施例5は、実施例1~4のいずれかのデバイスを含み、1つ以上の金属接点を通して熱パッドに電気的に結合された電圧源を更に備える。
【0050】
実施例6は、実施例5のデバイスを含み、熱パッド上に結合された一対の支持区分を更に備え、支持区分は、第1の材料を含み、金属接点は、支持区分に結合される。
【0051】
実施例7は、実施例1~6のいずれかのデバイスを含み、少なくとも1つのMEMS熱スイッチを支持する足場を更に備え、足場は、周囲環境から熱隔離される。
【0052】
実施例8は、実施例7のデバイスを含み、足場は、基板と、基板から熱隔離され、かつ基板によって囲まれた島部分と、島部分上に位置付けられた一体型ヒータコイルと、基板を島部分と接続する一組のテザーと、を備え、テザーは、島部分を基板から熱隔離するように構成されている。
【0053】
実施例9は、実施例8のデバイスを含み、少なくとも1つのMEMS熱スイッチは、テザーのうちの少なくとも1つの上に位置付けられる。
【0054】
実施例10は、実施例8~9のいずれかのデバイスを含み、基板及び島部分は、シリコンからなり、テザーは、ポリイミドからなる。
【0055】
実施例11は、微小電気機械システム(MEMS)デバイスを含み、熱隔離足場と、熱隔離足場上のMEMS熱スイッチのアレイを備えるメタマテリアルであって、MEMS熱スイッチの各々が、第1の熱伝導性を有する第1の材料を含む基板層と、基板層の第1の部分上の熱バスであって、熱バスが、第1の熱伝導性よりも高い第2の熱伝導性を有する第2の材料を含む、熱バスと、基板層の第2の部分上の絶縁体層であって、絶縁体層が、第1及び第2の材料とは異なる第3の材料を含み、絶縁体層が、第1の高さを有する第1の部分、及び第1の高さ未満の第2の高さを有する第2の部分を含む、絶縁体層と、絶縁体層の第1の部分によって支持された熱パッドであって、熱パッドが、第2の材料を含み、かつ張出部分を有し、張出部分が、熱バスの一部分上に位置付けられている、熱パッドと、を備える、メタマテリアルと、MEMS熱スイッチの各々の各熱パッドに電気的に結合された電圧源と、を備え、電圧が、電圧源から印加されるとき、静電相互作用がMEMS熱スイッチ内で、各熱パッドと各熱バスとの間で発生して、熱パッドの張出部分の熱バスに向かう偏向を引き起こし、それにより、熱パッドと熱バスとの間に熱伝導性を提供する。
【0056】
実施例12は、実施例11のMEMSデバイスを含み、熱隔離足場は、基板と、基板から熱隔離され、かつ基板によって囲まれた島部分と、島部分上に位置付けられた一体型ヒータコイルと、基板を島部分と接続する一組のテザーと、を備え、テザーは、島部分を基板から熱隔離するように構成されている。
【0057】
実施例13は、実施例12のMEMSデバイスを含み、MEMS熱スイッチのアレイは、テザーのうちの少なくとも1つの上に位置付けられる。
【0058】
実施例14は、実施例12~13のいずれかのMEMSデバイスを含み、第1の材料は、ポリイミド、多孔質シリコン、ガラス、又はこれらの組み合わせを含み、第2の材料は、銅、金、アルミニウム、又はこれらの組み合わせを含み、第3の材料は、二酸化ケイ素、窒化ケイ素、又はこれらの組み合わせを含む。
【0059】
実施例15は、実施例12~14のいずれかのMEMSデバイスを含み、メタマテリアルに動作可能に結合された可変温度制御システムを更に備え、可変温度制御システムは、メタマテリアルの可変熱伝導性を提供するように構成されている。
【0060】
実施例16は、実施例15のMEMSデバイスを含み、可変温度制御システムは、メタマテリアルに動作可能に結合されたプロセッサユニットと、メタマテリアルに動作可能に結合された熱センサであって、メタマテリアルの実際の温度を測定するように構成された熱センサと、メタマテリアルに関する所望の温度設定点を提供するように構成された温度設定点ユニットと、プロセッサユニットに動作可能に結合された減算回路であって、減算回路が、熱センサ及び温度設定点ユニットからそれぞれの温度値を受信するように構成されている、減算回路と、を備え、減算回路は、熱センサ及び温度設定点ユニットからの温度値を比較し、かつ示差温度値をプロセッサユニットに出力するように動作可能であり、プロセッサユニットは、示差温度値に基づいて、メタマテリアル、又はメタマテリアル及び一体型ヒータコイルの両方にフィードバックを出力するように動作可能であり、フィードバック信号は、断続的な接続を可能にして、メタマテリアルの熱伝導性の連続的な調整を提供するように動作可能である。
【0061】
実施例17は、実施例16のMEMSデバイスを含み、プロセッサユニットは、フィードバック信号をパルス幅変調(PWM)信号として出力するように動作可能である、比例積分微分(PID)コントローラを備える。
【0062】
実施例18は、熱メタマテリアルを含む微小電気機械システム(MEMS)デバイスを製造する方法を含み、方法は、基板層を提供することと、基板層上に第1のポリマー層を形成することと、基板層をエッチング処理して、第1のポリマー層によって架橋される1つ以上の基板島部分を形成することと、第1のポリマー層上に第1の金属層を堆積させることと、第1の金属層をパターン化して、第1のポリマー層から突出する熱バスを生成することと、熱バス及び第1のポリマー層の露出部分上に絶縁体層を堆積させることと、絶縁体層上に第2の金属層を堆積させることと、第2の金属層をパターン化して、絶縁体層から突出する一組の電極パッドを生成することと、絶縁体層を部分的にエッチング処理して、第1のポリマー層の上面の部分を露出させながら、電極パッドの周りに絶縁体層の残りの部分を残すことと、電極パッド、絶縁体層の残りの部分、及び第1のポリマー層の上に、第2のポリマー層を形成することと、電極パッド上で第2のポリマー層をエッチング処理することと、第3の金属層を第2のポリマー層及び電極パッド上に堆積させて、一組の上部接点を形成することと、第2のポリマー層の部分に沿って第3の金属層をエッチング処理して、上部金属グリッドパターンを形成することと、絶縁体層の残りの部分を部分的にエッチング処理して、電極パッドの下を削り落とし、かつ熱バスから分離された一組の熱パッドをそこから生成することと、を含む。
【0063】
実施例19は、実施例18の方法を含み、基板層は、シリコンを含み、ポリマー層は、ポリイミドを含み、金属層は、銅、金、アルミニウム、又はこれらの組み合わせを含み、絶縁体層は、二酸化ケイ素、窒化ケイ素、又はこれらの組み合わせを含む。
【0064】
実施例20は、実施例18~19のいずれかの方法を含み、基板層、島部分、及び第1のポリマー層は、熱隔離足場の一部として形成される。
【0065】
以上から、例解目的のために具体的な実施形態が記載されてきたが、本開示の範囲から逸脱することなく、様々な変更を行うことができることが理解されるであろう。したがって、記載された実施形態は、全ての点において、例解的であるに過ぎず、限定的ではないと見なされるべきである。更に、特許請求の範囲の意味及び等価範囲内にある全ての変更は、それらの範囲内に包含されるものとする。