(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022132139
(43)【公開日】2022-09-07
(54)【発明の名称】包装材
(51)【国際特許分類】
B65D 65/42 20060101AFI20220831BHJP
B32B 27/18 20060101ALI20220831BHJP
【FI】
B65D65/42 A
B32B27/18 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022021189
(22)【出願日】2022-02-15
(31)【優先権主張番号】P 2021030055
(32)【優先日】2021-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000001421
【氏名又は名称】キユーピー株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】596165590
【氏名又は名称】ニットーパック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【弁理士】
【氏名又は名称】布施 行夫
(74)【代理人】
【識別番号】100213388
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 康司
(72)【発明者】
【氏名】高山 崇
(72)【発明者】
【氏名】大西 雅晴
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
【Fターム(参考)】
3E086AB01
3E086BA04
3E086BA15
3E086BA24
3E086BB51
3E086BB90
3E086CA01
3E086CA28
3E086DA06
4F100AH08B
4F100AK01A
4F100AK03C
4F100AK07A
4F100AK46B
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA07
4F100CA12B
4F100EH46B
4F100EJ38A
4F100GB15
4F100JB16A
4F100JL00
(57)【要約】
【課題】本発明は、客の手が触れる表面に抗菌・抗ウイルス性能を備える包装材を提供する。
【解決手段】本発明に係る包装材1の一態様は、熱可塑性樹脂製の基材10と、基材10の少なくとも一方の面12に下記化学式(1)で表される第4級アンモニウム塩を含有する被覆層20と、を有する。
【化1】
(前記化学式(1)中、Rは、置換もしくは非置換の炭素数が5~40の炭化水素基であり、エーテル結合、カルボニル基、エステル結合、若しくはアミド結合、又は芳香環が含まれていてもよい。X
-は、アニオンである。)
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂製の基材と、前記基材の少なくとも一方の面に下記化学式(1)で表される第4級アンモニウム塩を含有する被覆層と、を有する、包装材。
【化1】
(前記化学式(1)中、Rは、置換もしくは非置換の炭素数が5~40の炭化水素基であり、エーテル結合、カルボニル基、エステル結合、若しくはアミド結合、又は芳香環が含まれていてもよい。X-は、アニオンである。)
【請求項2】
請求項1において、
前記第4級アンモニウム塩は、塩化ベンザルコニウムまたは塩化ベンゼトニウムである、包装材。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
前記被覆層は、前記第4級アンモニウム塩と合成樹脂と希釈溶媒とを含む被覆用組成物を前記基材に塗布後、乾燥して形成され、
前記希釈溶媒は、C1~C4アルコールを含む、包装材。
【請求項4】
請求項3のいずれか一項において、
前記被覆用組成物は、前記第4級アンモニウム塩として塩化ベンザルコニウムまたは塩化ベンゼトニウムを2.5質量%以上含み、
前記被覆用組成物におけるC1~C4アルコールの含有量は、下記式(1)及び下記式(2)を満たす、包装材。
2.0質量%≦C1×2.5+C2×1.7+(C3+C4) (1)
C1+C2+C3+C4≦35質量% (2)
ここで、
C1が被覆用組成物におけるC1アルコールの含有量(質量%)、
C2が被覆用組成物におけるC2アルコールの含有量(質量%)、
C3が被覆用組成物におけるC3アルコールの含有量(質量%)、
C4が被覆用組成物におけるC4アルコールの含有量(質量%)である。
【請求項5】
請求項1~請求項4のいずれか一項において、
前記被覆層は、膜厚が0.2μm~3.0μmである、包装材。
【請求項6】
請求項1~請求項5のいずれか一項において、
前記基材の他方の面は、オレフィン系樹脂で構成され、
前記被覆層は、ポリアミド系樹脂を含む、包装材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、新型インフルエンザや新型コロナウイルスなどの世界的な流行をうけて、日常生活の中でも細菌やウイルス感染症に対する対応が全ての人にとって必須となっている。
【0003】
食品や医薬品等の商品にあっては、例えばプラスチック容器に充填した状態で内容物の加熱殺菌が行われることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、スーパーの商品棚に置かれた商品は消費者が手に取った後に商品棚に戻すことがあり、菌やウイルスが商品の包装に付着した状態で他の消費者の手に触れる可能性がある。
【0006】
そこで、本発明は、消費者の手が触れる表面に抗菌・抗ウイルス性能を備える包装材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様または適用例として実現することができる。
【0008】
[1]本発明に係る包装材の一態様は、
熱可塑性樹脂製の基材と、前記基材の少なくとも一方の面に下記化学式(1)で表される第4級アンモニウム塩を含有する被覆層と、を有する。
【0009】
【化1】
(前記化学式(1)中、Rは、置換もしくは非置換の炭素数が5~40の炭化水素基であり、エーテル結合、カルボニル基、エステル結合、若しくはアミド結合、又は芳香環が含まれていてもよい。X
-は、アニオンである。)。
【0010】
[2]前記包装材の一態様において、
前記第4級アンモニウム塩は、塩化ベンザルコニウムまたは塩化ベンゼトニウムであることができる。
【0011】
[3]前記包装材の一態様において、
前記被覆層は、前記第4級アンモニウム塩と合成樹脂と希釈溶媒とを含む被覆用組成物を前記基材に塗布後、乾燥して形成され、
前記希釈溶媒は、C1~C4アルコールを含むことができる。
【0012】
[4]前記包装材の一態様において、
前記被覆用組成物は、前記第4級アンモニウム塩として塩化ベンザルコニウムまたは塩化ベンゼトニウムを2.5質量%以上含み、
前記被覆用組成物におけるC1~C4アルコールの含有量は、下記式(1)及び下記式(2)を満たすことができる。
【0013】
2.0質量%≦C1×2.5+C2×1.7+(C3+C4) (1)
C1+C2+C3+C4≦35質量% (2)
ここで、
C1が被覆用組成物におけるC1アルコールの含有量(質量%)、
C2が被覆用組成物におけるC2アルコールの含有量(質量%)、
C3が被覆用組成物におけるC3アルコールの含有量(質量%)、
C4が被覆用組成物におけるC4アルコールの含有量(質量%)である。
【0014】
[5]前記包装材の一態様において、
前記被覆層は、膜厚が0.2μm~3.0μmであることができる。
【0015】
[6]前記包装材の一態様において、
前記基材の他方の面は、オレフィン系樹脂で構成され、
前記被覆層は、ポリアミド系樹脂を含むことができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る包装材によれば、消費者の手が触れる包装材の表面に抗菌・抗ウイルス性能を備えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施形態に係る包装材の断面構造を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また、以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0019】
図1を用いて本発明の一実施形態に係る包装材1について以下詳細に説明する。
図1は、実施形態に係る包装材1の断面構造を説明する断面図である。
【0020】
図1に示すように、包装材1は、熱可塑性樹脂製の基材10と、基材10の少なくとも一方の面12に下記化学式(1)で表される第4級アンモニウム塩を含有する被覆層20と、を有する。
【0021】
【化1】
前記化学式(1)中、Rは、置換もしくは非置換の炭素数が5~40の炭化水素基であり、エーテル結合、カルボニル基、エステル結合、若しくはアミド結合、又は芳香環が含まれていてもよい。X
-は、アニオンである。X
-としては、例えば、ハロゲンイオン(フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン)、酢酸イオン、硝酸イオン、硫酸イオン等が挙げられる。
【0022】
包装材1は、スーパーやコンビニエンスストア等の商店で商品棚に陳列される商品の包装に用いられる。例えば、食品の包装材1であれば、基材10の他方の面14に内容物である食品が接触してもよいし、包装材1の内側に包装容器等に充填された食品が包装されてもよい。包装材1は、内容物を包装する袋状の形態(包装袋)であることができる。包装袋の形状は、例えば、三方袋、ガセット袋、スタンド袋等の公知の形状であってよい。
【0023】
包装材1によれば、被覆層20に上記化学式(1)で表される第4級アンモニウム塩を含むことにより、消費者の手が触れる包装材1の表面22に抗菌・抗ウイルス性能を備えることができる。
【0024】
基材10は、単層構造であってもよいし、多層構造であってもよい。単層構造の基材10の材質としては、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル-スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリブテン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミドミ系樹脂、ポリアリールフタレイト系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリフェニレンスルフイド系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、セルロース系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、アセタール系樹脂、フッ素系樹脂、その他等の各種の樹脂を用いることができる。
【0025】
多層構造の基材10の材質としては、上記単層構造に用いられる樹脂の他に、模造紙、クレイコート紙、クラフト紙、板紙、合成紙等の各種の紙基材を用いることができる。
【0026】
包装材1がヒートシールで封止される場合には、単層構造の基材10であればヒートシール性を有する樹脂で構成することができ、多層構造の基材10であれば少なくとも他の面14を構成する樹脂層がヒートシール性を有することができる。ヒートシール性を有する樹脂層は隣接する樹脂層との間に接着層を有してもよい。ヒートシール性を有する樹脂としては、熱によって溶融し相互に融着し得るものであればよく、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン-アクリル酸エチル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体、エチレン-プロピレン共重合体、メチルペンテンポリマー、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂をアクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、フマール酸、その他等の不飽和カルボン酸で変性した酸変性ポリオレフィン系樹脂の1種ないし2種以上からなる樹脂を用いることができる。基材10の少なくとも他方の面14は
、ヒートシール性に優れるオレフィン系樹脂で構成されることができる。
【0027】
基材10は、フィルムまたはシートであることができ、厚さは、例えば、10μm~3000μmであることができ、好ましくは30μm~2000μmである。基材10は、例えば、30μm~200μmのフィルムまたは200μm~2000μmのシートを採用できる。
【0028】
被覆層20における基材1とは反対側の面が包装材1の表面22を形成する。表面22は、包装材1が商品の包装に用いられた際に消費者が触れることのできる外側の面となる。被覆層20は、上記化学式(1)で表される第4級アンモニウム塩と合成樹脂と希釈溶媒とを含む被覆用組成物を基材10に塗布後、乾燥して形成され、希釈溶媒は、C1~C4アルコールを含むことができる。
【0029】
被覆層20は、基材10の少なくとも一方の面12に設けられた、例えば文字、図形、絵柄、記号等を含む印刷層であることができる。印刷層は、被覆用組成物を基材10に塗布後、乾燥して形成され、例えば、グラビア印刷、オフセット印刷、凸版印刷、スクリーン印刷、転写印刷、フレキソ印刷、その他等の印刷方式を使用して、基材10の一方の面12上に印刷して形成することができ、他方の面14にも同様に印刷して被覆層を形成できる。被覆用組成物としては、例えば、通常のインキビヒクルの1種ない
し2種以上を主成分とし、これに、第4級アンモニウム塩と、必要ならば、可塑剤、安定剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、硬化剤、架橋剤、滑剤、帯電防止剤、充填剤、その他等の添加剤の1種ないし2種以上とを任意に添加し、更に、染料・顔料等の着色剤を添加し、希釈溶媒で充分に混練して被覆用組成物を調整することができる。
【0030】
被覆用組成物に用いるインキビヒクルとしては、公知の油脂、樹脂及び溶剤を用いることができ、樹脂としては天然樹脂、天然物誘導体及び合成樹脂のいずれか1種以上を用いることができ、合成樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリアミド系樹脂、塩素化ポリオレフィン系樹脂、光硬化性樹脂等の1種または2種以上を用いることができる。被覆層20は、被覆用組成物として用いられた合成樹脂としてポリアミド系樹脂を含むことができる。インキビヒクルに含まれる溶剤としては、インキ用として公知の溶剤を用いることができ、例えば、炭化水素類、エステル類、アルコール類及びケトン類からなる群から選ばれる一種または二種以上の溶剤を含むことができる。炭化水素類としては、例えば、トルエン、ヘキサン、メチルシクロヘキサン等であり、エステル類としては、例えば、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等であり、アルコール類としては、例えば、下記希釈溶媒としてのC1~C4アルコール等であり、ケトン類としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等である。
【0031】
被覆用組成物の希釈溶媒として用いられるC1~C4アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、第二ブタノール、第三ブタノール等を用いることができる。上記化学式(1)で表される第4級アンモニウム塩は、C1~C4アルコールに溶解しやすいため、被覆用組成物の希釈溶媒として好ましい。希釈溶媒としてメタノール及び/またはエタノールを用いる場合には、第4級アンモニウム塩の溶解性を考慮すると、インキビヒクルの溶剤として、トルエン、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンを組み合わせることができる。希釈溶媒としてイソプロパノールを用いる場合には、第4級アンモニウム塩の溶解性を考慮すると、インキビヒクルの溶剤として、トルエン、酢酸プロピル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンを組み合わせることができる。希釈溶媒としてブタノールを用いる場合には、第4級アンモニウム塩の溶解性を考慮すると、インキビヒクルの溶剤として、トルエン、ヘ
キサン、メチルシクロヘキサン、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンを組み合わせることができる。
【0032】
被覆用組成物における上記化学式(1)で表される第4級アンモニウム塩は、2質量%以上15質量%以下であることができ、好ましくは2.5質量%以上10質量%以下であることができる。上記化学式(1)で表される第4級アンモニウム塩としては、公知の抗菌・抗ウイルス性を有する化合物を用いることができ、例えば、塩化ベンザルコニウム又は塩化ベンゼトニウムが挙げられる。また、被覆用組成物は、上記化学式(1)で表される第4級アンモニウム塩以外の第4級アンモニウム塩を更に含んでいてもよく、例えば、塩化メチルベンゼトニウム、塩化セチルピリジニウム、セトリモニウム、塩化ドファニウム、臭化テトラエチルアンモニウム、塩化ジデシルジメチルアンモニウム、臭化ドミフェン等の1種または2種以上を用いることができる。
【0033】
希釈溶媒の種類によって第4級アンモニウム塩を溶解しやすさが異なるため、抗菌・抗ウイルス性能が得られる第4級アンモニウム塩の濃度となるようにC1~C4アルコールの被覆用組成物における含有量を設定することが好ましい。例えば第4級アンモニウム塩が塩化ベンゼトニウムまたは塩化ベンザルコニウムである場合、被覆用組成物におけるC1~C4アルコールの含有量は、下記式(1)を満たし、かつ、下記式(2)を満たすことが好ましい。この理由について以下具体的に説明する。まず、後述する「希釈溶媒に対する溶解性」の実験結果によれば、塩化ベンゼトニウムまたは塩化ベンザルコニウムの飽和濃度は、C1アルコールであれば72質量%または74質量%であり、C2アルコールであれば62質量%または65質量%であり、C3アルコールであれば50質量%または54質量%であり、C4アルコールであれば50質量%または56質量%である。被覆用組成物にC1アルコールが0.8質量%以上入っていれば塩化ベンゼトニウムまたは塩化ベンザルコニウムを2.0質量%以上溶解することができる。同様に、C2アルコールであれば約1.3質量%以上、C3アルコールまたはC4アルコールであれば2.0質量%以上で塩化ベンゼトニウムまたは塩化ベンザルコニウムを2.0質量%以上溶解することができる。一方で、被覆用組成物中のC1~C4アルコール濃度が35質量%を超えると乾燥しにくくなる傾向が強く、市販のインクも35質量%以下である。また、C1~C4アルコールを組み合わせて含むこともできる。よって、被覆用組成物におけるC1~C4アルコールの含有量は、下記式(1)及び下記式(2)を満たすことにより、塩化ベンゼトニウムまたは塩化ベンザルコニウムを2.0質量%以上溶解することができ、かつ、生産性への影響が少ないため好ましいのである。
【0034】
2.0質量%≦C1×2.5+C2×1.7+(C3+C4) (1)
C1+C2+C3+C4≦35質量% (2)
ここで、
C1が被覆用組成物におけるC1アルコールの含有量(質量%)、
C2が被覆用組成物におけるC2アルコールの含有量(質量%)、
C3が被覆用組成物におけるC3アルコールの含有量(質量%)、
C4が被覆用組成物におけるC4アルコールの含有量(質量%)である。
【0035】
被覆層20に用いられる第4級アンモニウム塩は、包装材1を用いて袋等の包装体を成形する際に基材10のブロッキングを抑制するため、好ましくは塩化ベンザルコニウムまたは塩化ベンゼトニウムであることができる。ブロッキングとは、フィルム状またはシート状の包装材1をロール形態にしたときに隣接する包装材1同士が密着して互いに剥がれにくくなる現象である。
【0036】
被覆層は、膜厚が0.2μm~3.0μmであることができ、好ましくは0.5μm~3.0μmであることができる。
【実施例0037】
以下、本発明の実施例について述べるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0038】
(A)包装材の作製
[被覆用組成物の調製]
以下に示す第4級アンモニウム塩の含有量が0質量%、2.5質量%、3.5質量%、5.0質量%及び7.0質量%となるように希釈溶媒の量を調整し、その第4級アンモニウム塩を溶かした希釈溶媒とポリアミド系樹脂を含むインク製剤とを等量混合したものを被覆用組成物とした。各成分は以下の通りであった。また、被覆用組成物の調整に際し、塩化ベンザルコニウム及び塩化ベンゼトニウムが稀釈溶媒中に完全に溶解することを確認した。
【0039】
塩化ベンザルコニウム:富士フィルム和光純薬社製の製品コード592-29571、
塩化ベンゼトニウム:東京化成工業社製の製品コードB0044(純度97%以上)、
塩化ジデシル(C10)ジメチルアンモニウム:ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製のリポカード210-MSPG(純度79.4%)、
塩化ジアルキル(C8-18)ジメチルアンモニウム:ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製のリポカード2C-75(純度74.5%)、
塩化ジアルキル(C16-18)ジメチルアンモニウム:ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製のリポカード2HPフレーク(純度95.6%)、
インク製剤:サカタインクス株式会社製のNT-2000メジューム RE-600(ポリアミド系樹脂を含む)、
希釈溶媒:サカタインクス株式会社製のNT-2000溶剤2A(メタノール、エタノール及びプロパノールを含む)であった。
【0040】
[印刷]
次に、基材(フタムラ化学株式会社製の単層ポリプロピレン製二軸延伸フィルム20μm)の一方の面に上記被覆用組成物をグラビア版、へリオK50(線数60L、角度3、スタイラス130°)版を用いて1.75ml/m2塗布し、その後、10分以上室温で乾燥して包装材のサンプルを得た。被覆層の厚さは0.5μm~1.0μmであった。包装材のサンプルを用いて被覆層の外観を評価した。外観に問題がない印刷を○、白化した場合を×とした。外観の評価結果を表1に示す。
【0041】
(B)ブロッキング性試験
上記(A)で得られた包装材のサンプルを用いてブロッキング性試験を行った。ブロッキング性試験は、印刷したサンプルの被覆層(印刷面)と13μmのOPP(延伸ポリプロピレン)フィルムとを重ね合わせた状態で、ボールペンの頭でOPPフィルムを数回こすりつけ、被覆層とOPPフィルムの付着状態を観察した。
【0042】
評価基準は、
〇:第4級アンモニウム塩の含有量が0質量%のサンプルと比較して、同程度の付着性の範囲、
△:第4級アンモニウム塩の含有量が0質量%のサンプルと比較して、若干の付着性が認められるものの、製造には影響を与えない範囲
×:スリッターでの加工適正がない程度に付着性が顕著である
とした。
【0043】
付着状態の評価結果を表1に示す。
【0044】
(C)溶出性試験
実施例1,2のフィルムサンプルを4cm×4cm角に切り取り、0.4mlの水に室温で1日接触させ、被覆層からアンモニウム塩を溶出させた。溶出したアンモニウム塩の濃度は、紫外吸光度計を用いて定量した。なお、実施例1は260nm、実施例2は270nmの吸光度をもって定量した。実施例1の2.5質量%のサンプルはフィルム中のアンモニウム塩の24質量%が溶出し、3.5質量%のサンプルはフィルム中のアンモニウム塩の97質量%が溶出した。また、実施例2の2.5質量%のサンプルはフィルム中のアンモニウム塩の33質量%が溶出した。溶出性試験において、フィルム中のアンモニウム塩の20質量%以上が水中に放出されれば抗菌性能として十分であることから、実施例1及び実施例2のサンプルの被覆層が十分な抗菌性能を有していることが確認できた。なお、比較例1,2のサンプルは半定量イオン試験紙(第4級アンモニウム塩)を用いて定量したところ、水中に放出されたアンモニウム塩は10質量%以下であったため、抗菌性が低いと考えられる。溶出試験の結果から抗菌性能を評価し、抗菌性能を満たす溶出量であれば○、抗菌性能が不十分な溶出量であれば×とした。抗菌性能の評価結果を表1に示す。
【0045】
外観及び溶出量が共に○でありかつ付着状態が○または△であれば総合評価を○とし、外観及び溶出量が共に○でありかつ付着状態が×であれば総合評価を△とし、外観または抗菌性能に×があれば総合評価を×とした。総合評価を表1に示す。
【0046】
【0047】
(D)希釈溶媒に対する溶解性
希釈溶媒50gに塩化ベンゼトニウム及び塩化ベンザルコニウムを徐々に投入し、溶媒に溶けなくなった濃度(飽和濃度)で溶解性を確認した。希釈溶媒として、メタノール(C1アルコール)、エタノール(C2アルコール)、イソプロパノール(C3アルコール)、ブタノール(C4アルコール)を用いた。各希釈溶媒の飽和濃度を表2に示す。
【0048】
【0049】
また、上記各飽和溶液に、他の溶媒をさらに加えて塩化ベンゼトニウム及び塩化ベンザルコニウムの沈殿の有無を確認した。メタノールまたはエタノールの飽和溶液は、トルエン、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンを加えても溶媒の沈殿は確認されなかった。イソプロパノールの飽和溶液は、トルエン、酢酸プロピル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンを加えても溶媒の沈殿は確認されなかった。ブタノールの飽和溶液は、トルエン、ヘキサン、メチルシクロヘキサン、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンを加えても溶媒の沈殿は確認されなかった。