(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022132147
(43)【公開日】2022-09-07
(54)【発明の名称】移動装置及び計測システム
(51)【国際特許分類】
G01B 21/00 20060101AFI20220831BHJP
G01B 11/24 20060101ALI20220831BHJP
【FI】
G01B21/00 L
G01B11/24 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022023643
(22)【出願日】2022-02-18
(31)【優先権主張番号】P 2021030708
(32)【優先日】2021-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000174943
【氏名又は名称】三井住友建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】高岡 怜
(72)【発明者】
【氏名】内堀 裕之
(72)【発明者】
【氏名】藤岡 泰輔
【テーマコード(参考)】
2F065
2F069
【Fターム(参考)】
2F065AA04
2F065AA21
2F065AA53
2F065BB05
2F065DD06
2F065FF09
2F065FF41
2F065GG04
2F065MM06
2F065PP04
2F069AA04
2F069AA31
2F069AA66
2F069AA83
2F069DD25
2F069EE03
2F069GG04
2F069GG07
2F069GG41
2F069GG62
2F069HH09
2F069HH30
2F069JJ08
2F069MM04
2F069MM13
2F069MM37
(57)【要約】
【課題】、計測機器を用いた自動計測に好適な、移動装置及び該移動装置を含む計測システムを提供する。
【解決手段】移動装置は、基端部が固定され、先端部が第1の方向に移動する、前記第1の方向に伸縮可能なポストと、ポストの先端部に基端部が回動可能に固定され、第1の方向と交差する第2の方向に伸縮可能であると共に、第1の方向と平行な軸を回転軸とする円筒面内を旋回可能なブームと、ポストを伸縮させ、ブームを伸縮及び旋回させる駆動ユニットとを有し、ポストとブームが連動して作動することで、予め設定された位置にブームの先端部を移動させる。計測システムは、移動装置と、ブームの先端部に搭載される計測機器と、計測機器及び移動装置の動作をそれぞれ制御する制御装置とを有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基端部が固定され、先端部が第1の方向に移動する、前記第1の方向に伸縮可能なポストと、
前記ポストの先端部に基端部が回動可能に固定され、前記第1の方向と交差する第2の方向に伸縮可能であると共に、前記第1の方向と平行な軸を回転軸とする円筒面内を旋回可能なブームと、
前記ポストを伸縮させ、前記ブームを伸縮及び旋回させる駆動ユニットと、
を有し、
前記ポストと前記ブームが連動して作動することで、予め設定された位置に前記ブームの先端部を移動させる、移動装置。
【請求項2】
前記ポスト及びブームが、それぞれ多段式伸縮アームで構成された、請求項1記載の移動装置。
【請求項3】
前記第1の方向が鉛直方向であり、前記ポストの先端部の移動方向が鉛直下方である、請求項1または2記載の移動装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の移動装置と、
前記ブームの先端部に搭載される計測機器と、
前記計測機器及び前記移動装置の動作をそれぞれ制御する制御装置と、
を有し、
前記移動装置が、
前記ポストの長さを検出するための第1の測長器と、
前記ブームの長さを検出するための第2の測長器と、
前記ブームの旋回角度を検出するための角度検出器と、
をさらに有し、
前記制御装置は、前記第1の測長器、前記第2の測長器及び前記角度検出器の検出結果に基づいて、前記移動装置を用いて前記計測機器を予め設定された計測ポイントに移動させ、前記計測ポイントで計測された前記計測機器の計測データを受信し、受信した前記計測データを、該計測データに対して所定の処理を実行する処理装置へ送信する、計測システム。
【請求項5】
前記移動装置が、加速度センサをさらに有し、
前記制御装置は、前記加速度センサで予め設定された閾値以上の振動が検出されると、前記移動装置の動作を停止する、請求項4記載の計測システム。
【請求項6】
前記制御装置は、前記ポストの伸縮動作、前記ブームの伸縮動作及び前記ブームの旋回動作を非同時で実行する、請求項4または5記載の計測システム。
【請求項7】
前記制御装置は、予め指定された時刻になると、前記移動装置を用いて前記計測機器の移動を開始し、前記計測ポイントにて前記計測機器に計測させる、請求項4から6のいずれか1項記載の計測システム。
【請求項8】
前記制御装置は、
前記ポスト及び前記ブームの伸縮中は、第1の速度でそれぞれ伸縮させ、前記ポスト及び前記ブームの伸縮開始時及び伸縮終了時は、前記第1の伸縮速度よりも遅い第2の速度でそれぞれ伸縮させ、
前記ブームの旋回中は、第3の速度で旋回させ、前記ブームの旋回開始時及び旋回終了時は、前記第3の速度よりも遅い第4の速度で旋回させる、請求項4から7のいずれか1項記載の計測システム。
【請求項9】
前記計測機器が3次元スキャナである、請求項4から8のいずれか1項記載の計測システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は移動装置及び該移動装置を含む計測システムに関する。
【背景技術】
【0002】
構造物の空間位置情報を取得する方法として、3次元スキャナを用いた計測方法が従来から知られている。例えば、特許文献1には、張出架設工法によって施工された橋梁上部工の小口断面を3次元スキャナで走査し、該3次元スキャナによって取得した表面形状を表す点群データから該小口断面の出来形寸法を計測する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、建設現場で働く技能労働者人口が減少しており、他の産業と比較しても高齢化が進行している。また、若年労働者の入職も減少していることから、多大な労働力を必要とする建設現場では将来の担い手不足が懸念されている。そのため、上記特許文献1では、生産性の向上を目的として、人の手で行ってきた出来形検測を自動化するための手法を提案している。
【0005】
特許文献1では、複雑な表面形状である橋梁上部工の小口断面の寸法を精度よく計測するために、3次元スキャナを用いて取得した点群データに基づいて該小口断面の表面形状や寸法を導出するためのデータ処理方法を主として提案している。
【0006】
しかしながら、このような計測対象である構造物等の表面形状や寸法の計測を完全に自動化するためには、3次元スキャナ等の計測機器を所定の計測ポイントまで移動させる移動装置と、計測機器及び移動装置の動作をそれぞれ制御し、計測機器の計測データを、点群データを処理するコンピュータシステムに転送する制御装置とを含む、計測システムを実現することが望ましい。
【0007】
なお、特許文献1では、3次元スキャナを移動させるための移動装置の一例として、施工中のブロックに鉄筋、型枠、コンクリート等を供給するための移動作業車にレールを敷設し、該レール上で3次元スキャナ(計測機器)を走行させる構成を記載している。しかしながら、予め敷設されたレール上を走行させる構成は、計測機器の移動範囲が該レールの敷設範囲に制限されるため、計測機器をより自由に移動させることができる移動装置を備えることが望まれる。
【0008】
本発明は上述したような背景技術が有する課題を解決するためになされたものであり、計測機器を用いた自動計測に好適な、移動装置及び該移動装置を含む計測システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため本発明の移動装置は、基端部が固定され、先端部が第1の方向に移動する、前記第1の方向に伸縮可能なポストと、
前記ポストの先端部に基端部が回動可能に固定され、前記第1の方向と交差する第2の方向に伸縮可能であると共に、前記第1の方向と平行な軸を回転軸とする円筒面内を旋回可能なブームと、
前記ポストを伸縮させ、前記ブームを伸縮及び旋回させる駆動ユニットと、
を有し、
前記ポストと前記ブームが連動して作動することで、予め設定された位置に前記ブームの先端部を移動させる構成である。
【0010】
一方、本発明の計測システムは、上記移動装置と、
前記ブームの先端部に搭載される計測機器と、
前記計測機器及び前記移動装置の動作をそれぞれ制御する制御装置と、
を有し、
前記移動装置が、
前記ポストの長さを検出するための第1の測長器と、
前記ブームの長さを検出するための第2の測長器と、
前記ブームの旋回角度を検出するための角度検出器と、
をさらに有し、
前記制御装置は、前記第1の測長器、前記第2の測長器及び前記角度検出器の検出結果に基づいて、前記移動装置を用いて前記計測機器を予め設定された計測ポイントに移動させ、前記計測ポイントで計測された前記計測機器の計測データを受信し、受信した前記計測データを、該計測データに対して所定の処理を実行する処理装置へ送信する構成である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、計測機器を用いた自動計測に好適な、移動装置及び計測システムが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の移動装置の一構成例を示す模式図である。
【
図2】
図1に示したポストの一構成例を示す平面図である。
【
図3】
図1に示したブームの一構成例を示す側面図である。
【
図4】本発明の計測システムの一構成例を示すブロック図である。
【
図5】
図4に示した計測システムが備える制御装置の処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に本発明について図面を用いて説明する。
【0014】
図1は、本発明の移動装置の一構成例を示す模式図である。
図2は
図1に示したポストの一構成例を示す平面図であり、
図3は
図1に示したブームの一構成例を示す側面図である。
図4は、本発明の計測システムの一構成例を示すブロック図である。
【0015】
図1で示すように、本発明の移動装置1は、基端部21が固定され、先端部22が第1の方向に移動する、該第1の方向に伸縮可能なポスト2と、ポスト2の先端部22に基端部31が回動可能に固定され、第1の方向と交差する第2の方向に伸縮可能であると共に、第1の方向と平行な軸25を回転軸とする円筒面26内を旋回可能なブーム3と、ポスト2を伸縮させ、ブーム3を伸縮及び旋回させる駆動ユニット4とを有し、ポスト2とブーム3とが連動して作動することで、予め設定された位置にブーム3の先端部32を移動させる構成である。
【0016】
図1で示すZ軸は鉛直方向であり、X軸及びY軸はそれぞれZ軸と直交する方向である。また、X軸とY軸とは互いに直交する方向である。
図1において、Y軸は測定対象となる構造物5の面と平行な方向であり、X軸は該面と垂直な方向(奥行き方向)である。上記第1の方向の一例は、鉛直方向(
図1のZ軸方向)である。第2の方向の一例は、
図1のXY平面と平行な方向、またはZ軸と交差する方向である。
【0017】
本発明の移動装置1による計測対象の構造物5は、例えば、
図1で模式的に示す張出架設工法で施工された橋梁上部工の小口断面である。計測対象の構造物5は、橋梁上部工に限定されるものではなく、建設現場で建造される様々な土木構造物や建築物、あるいは工場で製造されるプレキャスト部材等であってもよい。また、計測対象面の形状は、
図1で示すような箱型形状に限定されるものではなく、その他の形状(例えば、T字状、I字状、四角や三角等の多角形状、あるいは曲線を含む形状など)であってもよい。さらに、計測対象の構造物5の材料は、コンクリート、金属や木材等、どのような材料であってもよい。
【0018】
ポスト2は、例えば計測対象である構造物5の鉛直上方に位置する、上述した移動作業車あるいは構造物5と対向して配置された足場等が備える空中梁6に基端部21が固定され、先端部22が鉛直下方に移動する。
図1では、ポスト2及びブーム3がそれぞれ伸縮することを示すため、図の上方にてポスト2及びブーム3がそれぞれ収縮した状態を示し、図の下方にてポスト2及びブーム3が伸長した状態を示している。実際には、1台のポスト2の先端部22に、1台のブーム3のみが搭載される構成である。
【0019】
ブーム3は、第1の方向と、該第1の方向と直交する方向との間で、先端部32が所定の角度の範囲で移動可能である。これにより、ブーム3は、第1の方向と平行な軸25を回転軸とする円筒面26内を旋回できる。
【0020】
図1では、ポスト2が鉛直上方で固定され、鉛直下方に伸縮する構成例を示しているが、ポスト2は、鉛直下方で固定され、鉛直上方に伸縮する構成でもよい。また、ポスト2は、鉛直方向と直交する方向または鉛直方向と交差する方向へ伸縮するように、固定されていてもよい。
【0021】
また、
図1では、ポスト2の基端部21が固定される例を示しているが、ポスト2の基端部21は、伸縮方向(第1の方向)と直交する方向に移動させてもよい。例えば、ポスト2の基端部21は、空中梁6に敷設されたレール上を走行する構成としてもよい。そのような構成では、ブーム3の先端部32の移動範囲をより広げることができる。
【0022】
なお、
図1に示す構成例では、ブーム3が、ポスト2の伸縮方向と交差する方向へ伸縮するように、ポスト2の先端部22に搭載されるため、ブーム3の旋回範囲は、ポスト2と物理的に干渉しない範囲に限定される。
【0023】
駆動ユニット4は、例えば、ポスト2及びブーム3を伸縮させるための油圧シリンダと、ブーム3を旋回させるための油圧モータと、油圧シリンダ及び油圧モータを動作させるための油圧発生装置及び各種制御弁とを有する。油圧シリンダ、油圧モータ及び制御弁等は、ポスト2及びブーム3に組み込まれているため、
図1では、駆動ユニット4として油圧発生装置のみを示している。
図1では、駆動ユニット(油圧発生装置)4が平置きされた様子を示しているが、駆動ユニット(油圧発生装置)4は、上述した移動作業車、あるいは構造物5と対向して配置された足場、もしくは構造物5の上などに設置すればよい。
【0024】
ポスト2及びブーム3の伸縮、並びにブーム3の旋回は、周知の電気モータを用いて動作させる構成でもよい。その場合、駆動ユニット4には、電気モータの回転運動を直進運動または旋回運動に変換するための機構、並びに電気モータを駆動するための周知の電力制御回路等を備えていればよい。
【0025】
図2で示すように、ポスト2は、例えば箱型構造から成る複数(
図2で示す例では5つ)のアーム23を備え、基端部21側の第1段のアーム23内に次段以降の各アーム23がスライド自在に順次挿入された多段式伸縮アームで構成される。
図2で示すポスト2は、例えば油圧シリンダを用いて、第1段のアーム23内から次段以降の各アーム23を送り出す、または次段以降の各アーム23を第1段のアーム23内に収容することで伸縮させることができる。
図2の(a)はポスト2が収縮した状態を示し、
図2の(b)はポスト2が最大に伸長した状態を示している。ポスト2の先端部22には、ブーム3が回動可能に搭載される、旋回台24が取り付けられている。
【0026】
図3で示すように、ブーム3は、ポスト2と同様に、例えば箱型構造から成る複数のアームを備え、基端部31側の第1段のアーム内に次段以降の各アームがスライド自在に順次挿入された多段式伸縮アームで構成される。
図3は、ブーム3が収縮した状態のみを示している。ブーム3は、例えば油圧シリンダを用いて第1段のアーム内から次段以降の各アームを送り出す、または次段以降の各アームを第1段のアーム内に収容することで伸縮させることができる。ブーム3は、ポスト2の先端部22に固定された旋回台24に基端部31が搭載され、該基端部31を支点として予め指定された任意の角度の範囲で旋回可能な構成である。ブーム3の旋回動作は、例えば油圧モータ及び旋回機構を備えることで実現できる。
【0027】
ブーム3は、基端部31に対して先端部32側を起伏させるための起伏機構33を備えていてもよい。そのような起伏機構33を備えることで、第1の方向と該第1の方向と直交する方向との間で、先端部32を所定の角度の範囲で移動させることができる。起伏機構33は、例えば油圧シリンダ等を用いて、第1段のアームの先端部22側を起伏させることで実現すればよい。
【0028】
なお、
図3では、鉛直上方を向いた旋回台24にブーム3の基端部31が搭載される構成例を示しているが、ブーム3の基端部31は、ポスト2の先端部22に対して鉛直下方を向いて固定された旋回台24に取り付けられていてもよい。
【0029】
図4で示すように、本発明の計測システム10は、上述した移動装置1と、計測機器7と、計測機器7、並びに移動装置1が備えるポスト2、ブーム3及び駆動ユニット4の動作をそれぞれ制御する制御装置8とを有する。
【0030】
計測機器7は、例えばレーザースキャナ等から成る3次元スキャナである。計測機器7は、移動装置1を用いて予め設定された計測ポイントに移動させることができるように、ブーム3の先端部31に固定された架台等に取り付けられる。
【0031】
制御装置8は、例えば、作業員等が操作するための操作盤81と、周知のPLC(Programmable Logic Controller)82とを備え、PLC82が、予め作成されたプログラムにしたがって、計測機器7、ポスト2、ブーム3及び駆動ユニット4の動作をそれぞれ制御する。操作盤81は、計測システム10全体の電源をON/OFFするためのメインスイッチ、非常時に電源をOFFするための非常用スイッチ、計測動作を開始または停止させるための動作スイッチ等を含む各種スイッチを備えると共に、作業員等による操作結果や計測機器7、ポスト2、ブーム3及び駆動ユニット4の動作状態等を示すための表示装置等を備える。PLC82は、操作盤81内に設置されていてもよい。制御装置8は、予め作成されたプログラムにしたがって、計測機器7、ポスト2、ブーム3及び駆動ユニット4の動作をそれぞれ制御することができる構成であればよく、PLC82に代えて周知のコンピュータシステムを備えていてもよい。あるいは、PLC82に加えて周知のコンピュータシステムを備え、PLC82と該コンピュータシステムとで処理を分担して実行してもよい。制御装置8にコンピュータシステムを備える場合、後述する処理装置9の機能は、制御装置8が備える該コンピュータシステムで実現してもよい。
【0032】
制御装置8は、移動装置1に取り付けられた各種センサからの信号を受信すると共に、不図示の制御弁及びスイッチ等の動作を制御することで、計測機器7及び駆動ユニット4に対する電力供給のON/OFFを含む、計測機器7及び移動装置1の各種動作の制御が可能である。制御装置8は、駆動ユニット(油圧発生装置)4と共に、上述した移動作業車、あるいは構造物5と対向して配置された足場、もしくは構造物5の上などに設置すればよい。
【0033】
制御装置8と計測機器7とは、周知の有線通信手段または無線通信手段を介してデータの送受信が可能に接続される。また、制御装置8には、計測機器7で取得した計測データに対して所定の処理を実行する処理装置(コンピュータシステム)9が、周知の有線通信手段または無線通信手段を介してデータの送受信が可能に接続される。
【0034】
処理装置9は、例えば複数の計測ポイントで得られた計測データを合成し、計測対象の3次元形状や寸法を計算し、その結果をディスプレイ等の表示装置で表示し、予め指定された書式で出力することが可能な構成である。処理装置9における計測データの処理方法の一例は、例えば上記特許文献1に記載されている。
【0035】
ポスト2には、該ポスト2の伸縮方向の長さを検出する測長器(第1の測長器)が取り付けられて伸縮に伴う全体長が制御装置8によって検出可能である。同様に、ブーム3には、該ブーム3の伸縮方向の長さを検出する測長器(第2の測長器)が取り付けられて伸縮に伴う全体長が制御装置8によって検出可能である。第1及び第2の測長器は、ポスト2及びブーム3の長さを検出できればどのようなものでもよく、例えば周知のワイヤー式変位計を用いればよい。より高いで精度でポスト2及びブーム3の長さを検出したい場合、測長器には、例えば周知のレーザ変位計等を用いればよい。
【0036】
また、ブーム3の基端部31には、例えばエンコーダ等の角度検出器が取り付けられて旋回角度が制御装置8によって検出可能である。さらに、ブーム3に上述した起伏機構33を備えている場合、ブーム3の基端部31には、起伏角度を検出するための、例えばエンコーダ等の角度検出器を備えていてもよい。旋回角度及び起伏角度を検出するための角度検出器は、エンコーダに限定されるものではなく、周知のポテンショメータ等を用いてもよい。
【0037】
なお、ポスト2及びブーム3には、加速度を検出する加速度センサを備えていてもよい。加速度センサは、例えばポスト2やブーム3の先端部22,32に取り付ければよい。その場合、制御装置8は、例えば加速度センサによって予め設定された閾値以上の振動を検出したとき、すなわち、ポスト2やブーム3の異常な動作を検出したとき、移動装置1の動作を停止すればよい。このように、移送装置1に加速度センサを備え、ポスト2やブーム3で閾値以上の振動を検出したときに移動装置1の動作を停止すれば、計測システム10を安全に運用できる。
【0038】
また、ブーム3の先端部32、例えば計測機器7が搭載される架台には、物体との接触を検出する触覚スイッチ、あるいは光や磁気等によって物体との接近を非接触で検出する近接センサ等が設置されていてもよい。その場合、制御装置8は、触覚スイッチまたは近接センサ等によって物体との接触または接近を検出したとき、移動装置1の動作を停止すればよい。このように、移動装置1に触覚スイッチまたは近接センサ等を備え、物体との接触または接近を検出したときに移動装置1の動作を停止させれば、計測機器7等が何らかの物体に衝突して破損するのを防止できる。
【0039】
図5は、
図4に示した計測システムが備える制御装置の処理の一例を示すフローチャートである。
【0040】
図5で示すように、制御装置8は、計測システム10の動作を開始すると、ポスト2及びブーム3を伸縮させ、ブーム3を旋回させることで、所定の初期位置から予め設定された計測ポイントまで計測機器7を移動させる(ステップS1)。初期位置は、第1及び第2の測長器、並びに角度検出器の基準位置(零位置)等に設定すればよい。初期位置は、例えば、作業員等による移動装置1及び計測機器7のメンテナンスがし易い位置等に設定してもよい。計測機器7が計測ポイントに到達すると、制御装置8は、該計測ポイントにおいて、計測機器7に指示信号を送出して計測を実行させる(ステップS2)。
【0041】
例えば、計測機器7が3次元スキャナであり、計測対象が構造物5である場合、制御装置8は、所定の計測ポイントにおいて、3次元スキャナからレーザ光を鉛直方向及び水平方向に所定の角度の範囲で構造物5に照射させ、該構造物5の表面を走査させる。3次元スキャナは、レーザ光の受光部(不図示)を備え、照射角、照射してから反射光を受光するまでの時間等に基づいて、各照射角に対応する、構造物5の表面までの距離をそれぞれ測定する。
【0042】
計測ポイントは、3次元スキャナ等の計測機器7によって計測対象全体あるいはその一部を走査できる位置に設定すればよい。計測ポイントは、1か所または複数か所に設定すればよい。計測ポイントが複数である場合、制御装置8は、移動装置1を用いて、予め指定された順序で各計測ポイントに計測機器7を順次移動させ、それぞれの計測ポイントにて計測機器7に計測を実行させればよい。
【0043】
制御装置8は、計測機器7を用いた計測を開始すると、現在の計測ポイントにおける計測機器7の計測が終了したか否かを判定する(ステップS3)。計測が終了していない場合、制御装置8は、計測の終了を待ち受ける。計測が終了したか否かは、例えば計測機器7から送信される計測終了を示す信号に基づいて判定すればよい。異常の発生等によって移動装置1または計測機器7の動作が停止することで計測機器7の計測が終了しない場合、制御装置8は操作盤81または処理装置9が備える表示装置を用いて作業員等に異常を通知してもよい。計測機器7の計測が終了すると、制御装置8は、予め指定された全ての計測ポイントにおける計測が終了したか否かを判定する(ステップS4)。全ての計測ポイントにおける計測が終了していない場合、制御装置8は、ステップS1の処理に戻って、移動装置1を用いて次に指定された計測ポイントまで計測機器7を移動させ、ステップS2からステップS4までの処理を繰り返す。異常の発生等によって移動装置1または計測機器7の動作が停止し、全ての計測ポイントにおける計測が終了しない場合、制御装置8は操作盤81または処理装置9が備える表示装置を用いて作業員等に異常を通知してもよい。全ての計測ポイントにおける計測が終了している場合、制御装置8は、移動装置1を用いて計測機器7を上記初期位置まで移動させる。また、制御装置8は、計測機器7に指示信号を送出して計測ポイント毎の計測データを送信させる(ステップS5)。最後に、制御装置8は、計測機器7から受信した計測ポイント毎の全ての計測データを上述した処理装置9に送信して(ステップS6)処理を終了する。制御装置8は、各計測データに対して、対応する計測ポイントの位置を示す位置情報をそれぞれ付与して処理装置9に送信してもよい。
【0044】
なお、制御装置8は、計測ポイント毎の計測データを、各計測ポイントにおける計測機器7による計測が終了する毎に受信して、処理装置9へ送信してもよい。
【0045】
また、制御装置8は、予め作業員等によって設定されたスケジュールにしたがって、予約された時刻から計測動作を開始してもよい。そのような動作は、PLC82が備えるスケジュール機能を用いることで実現できる。このように予約された時刻から計測動作を開始すれば、計測システム10を用いてどのような時間帯(例えば、作業員等の休憩時、夜間等)でも計測が可能になる。
【0046】
制御装置8は、移動装置1が備えるポスト2の伸縮動作、ブーム3の伸縮動作及びブーム3の旋回動作を同時に実行させない(非同時で動作する)ように制御することが好ましい。そのような動作は、PLCが備える移動装置1の動作を制御するためのプログラムによって実現できる。例えば、最初にポスト2を用いてブーム3を第1の方向(例えば、鉛直方向)に移動させ、続いて収縮した状態でブーム3を旋回させ、最後にブーム3を伸長させれば、ブーム3の先端部32を比較的狭い範囲で移動させることができる。そのため、狭い場所でもブーム3の先端部32に搭載された計測機器7を所望の計測ポイントまで移動させることができる。
【0047】
さらに、制御装置8は、ポスト2及びブーム3の伸縮時及びブーム3の旋回時に、ポスト2の伸縮速度、ブーム3の伸縮速度及びブーム3の旋回速度を変化させてもよい。例えば、ポスト2及びブーム3の伸縮中は、比較的速い速度(第1の速度)でそれぞれ伸縮させ、ポスト2及びブーム3の伸縮開始時及び伸縮終了時は、第1の速度よりも遅い速度(第2の速度)でそれぞれ伸縮させてもよい。また、ブーム3の旋回中は、比較的速い速度(第3の速度)で旋回させ、ブーム3の旋回開始時及び旋回終了時は、第3の速度よりも遅い速度(第4の速度)で旋回させてもよい。伸縮速度や旋回速度は、2段階で変化させる必要はなく、より多くの段階で変化させてもよい。
【0048】
油圧シリンダを用いてポスト2及びブーム3を伸縮させる場合、油圧ポンプから油圧シリンダ内に供給する油の圧力を変えることで伸縮速度を変化させることができる。また、油圧モータを用いてブーム3を旋回させる場合、油圧ポンプから油圧モータ内に供給する油の圧力を変えてトルクを変化させれば旋回速度を変化させることができる。電気モータを用いてポスト2及びブーム3を動作させる場合、例えばインバータを用いて電気モータに供給する電力の周波数を変化させれば、該電気モータの回転速度が変わるため、伸縮速度や旋回速度を変化させることができる。
【0049】
このようにポスト2の伸縮速度、ブーム3の伸縮速度及びブーム3の旋回速度を変化させれば、伸縮時及び旋回時におけるポスト2、ブーム3及び計測機器7に加わる力(加速度)を抑制しつつ、計測ポイントに対するブーム3の先端部(計測機器7)の移動時間を短縮できる。そのため、計測システム10における計測時間の短縮が期待できる。また、伸縮終了時の速度及び旋回終了時の速度を遅くすることで、移動時におけるポスト2及びブーム3の捻じれの発生が抑制されるため、ブーム3の先端部(計測機器7)の停止位置の精度の向上も期待できる。
【0050】
本発明の移動装置1によれば、第1の方向に伸縮可能なポスト2と、第1の方向と交差する第2の方向に伸縮可能であると共に、第1の方向と平行な軸25を回転軸とする円筒面26内を旋回可能なブーム3とを備えることで、ポスト2及びブーム3の伸縮範囲及びブーム3の旋回範囲においてブーム3の先端部32を3次元で移動させることができる。
【0051】
また、本発明の計測システム10によれば、ブーム3の先端部32に計測機器7を搭載することで、制御装置8は、移動装置1を用いて計測機器7を所定の計測ポイントに移動させて計測させ、該計測ポイントにて得られた計測データを、該計測データに対して所定の処理を実行する処理装置9へ送信できる。そのため、計測対象である構造物5等の計測を自動で行うことができる。
【0052】
したがって、計測機器7を用いた自動計測に好適な、移動装置1及び計測システム10を得ることができる。
【符号の説明】
【0053】
1 移動装置
2 ポスト
3 ブーム
4 駆動ユニット
5 構造物
6 空中梁
7 計測機器
8 制御装置
9 処理装置
10 計測システム
21、31 基端部
22、32 先端部
23 アーム
24 旋回台
25 軸
26 円筒面
33 起伏機構
81 操作盤
82 PLC