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特開2022-132177灌注チャネルを通して挿入されるガイドワイヤを組み込んだフォーカルアブレーションカテーテル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022132177
(43)【公開日】2022-09-07
(54)【発明の名称】灌注チャネルを通して挿入されるガイドワイヤを組み込んだフォーカルアブレーションカテーテル
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/12 20060101AFI20220831BHJP
   A61M 25/00 20060101ALI20220831BHJP
【FI】
A61B18/12
A61M25/00 534
A61M25/00 530
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022027666
(22)【出願日】2022-02-25
(31)【優先権主張番号】17/187,546
(32)【優先日】2021-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】アサフ・ゴバリ
【テーマコード(参考)】
4C160
4C267
【Fターム(参考)】
4C160KK03
4C160KK13
4C160KK38
4C267AA02
4C267AA28
4C267AA80
4C267BB02
4C267BB39
4C267BB40
4C267BB42
4C267CC19
4C267HH08
(57)【要約】      (修正有)
【課題】小さくて到達困難なアブレーション部位でRFアブレーションを実施するための改善されたカテーテルを提供する。
【解決手段】カテーテル22が、アブレーション電極及び灌注チャネルを含む。アブレーション電極は、患者器官の組織をアブレーションするように構成され、患者器官への挿入のための挿入チューブ上に取り付けられている。灌注チャネルは、(i)挿入チューブの軸に沿って形成され、アブレーション電極に灌注流体を流すように構成された管腔と、(ii)アブレーション電極に形成され、灌注流体を器官に適用するように構成された1つ以上の灌注孔と、を含む。灌注チャネルは、(i)カテーテルを案内するためのガイドワイヤを受容すると同時に、(ii)灌注流体を流すように構成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カテーテルであって、
患者器官の組織をアブレーションするように構成され、前記患者器官への挿入のための挿入チューブに取り付けられた、アブレーション電極と、
灌注チャネルであって、(i)前記挿入チューブの軸に沿って形成され、前記アブレーション電極に灌注流体を流すように構成された管腔と、(ii)前記アブレーション電極に形成され、前記灌注流体を前記器官に適用するように構成された1つ以上の灌注孔と、を含み、前記灌注チャネルは、(i)前記カテーテルを案内するためのガイドワイヤを受容すると同時に、(ii)前記灌注流体を流すように構成されている、灌注チャネルと、
を備える、カテーテル。
【請求項2】
前記アブレーション電極は、前記アブレーション電極を貫通して前記ガイドワイヤを通過させるための開口部を有する、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項3】
前記開口部及び前記ガイドワイヤは、前記開口部からの前記灌注流体の漏出を防止するために直径が互いに一致している、請求項2に記載のカテーテル。
【請求項4】
前記挿入チューブ上に配置され、前記器官の組織と接触して配置されると前記組織からの電気信号を検知するように構成された1つ以上の検知電極を更に備える、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項5】
組織をアブレーションするためのカテーテルの製造方法であって、
患者器官への挿入のための挿入チューブ上に、前記組織をアブレーションするためのアブレーション電極を取り付けることと、
(i)前記アブレーション電極の軸に沿って、前記アブレーション電極に灌注流体を流すため、及び内部を通してガイドワイヤを挿入するための管腔を形成することと、(ii)前記アブレーション電極に、前記灌注流体を前記器官に適用するための1つ以上の灌注孔を形成することと、によって前記アブレーション電極内に灌注チャネルを形成することと、
を含む、方法。
【請求項6】
前記アブレーション電極に、開口部を形成することを更に含み、前記開口部が、前記管腔及び前記開口部を貫通して前記ガイドワイヤを通過させるためのものである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記開口部を形成することは、前記開口部からの前記灌注流体の漏出を防止するために前記ガイドワイヤによって密閉されるサイズ及び形状の前記開口部を形成することを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記アブレーション電極上に、前記組織からの電気信号を検知するための1つ以上の検知電極を配置することを更に含む、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
カテーテルであって、
患者器官への挿入のための挿入チューブと、
灌注チャネルであって、(i)前記挿入チューブの軸に沿って形成され、前記挿入チューブの遠位端に灌注流体を流すように構成された管腔と、(ii)前記挿入チューブの前記遠位端に形成され、前記灌注流体を前記器官に適用するように構成された1つ以上の灌注孔と、を含み、前記灌注チャネルは、(i)前記カテーテルを案内するためのガイドワイヤを受容すると同時に、(ii)前記灌注流体を流すように構成されている、灌注チャネルと、
を備える、カテーテル。
【請求項10】
前記挿入チューブは、前記挿入チューブを貫通して前記ガイドワイヤを通過させるための開口部を有する、請求項9に記載のカテーテル。
【請求項11】
前記開口部及び前記ガイドワイヤは、前記開口部からの前記灌注流体の漏出を防止するために直径が互いに一致している、請求項10に記載のカテーテル。
【請求項12】
前記挿入チューブ上に配置され、前記器官の組織と接触して配置されると、(i)前記組織に1つ以上のアブレーションパルスを印加すること、及び(ii)前記組織からの1つ以上の電気信号を検知すること、のうち少なくとも一方を行うように構成された、1つ以上の(i)アブレーション電極又は(ii)検知電極を更に備える、請求項1に記載のカテーテル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概略的には医療用カテーテルに関し、具体的にはガイドワイヤを使用してフォーカルアブレーションカテーテルを操作するための方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
フォーカルカテーテルは、心臓病など様々な医療用途に用いることができる。ガイドワイヤを使用してフォーカルカテーテルを操作するためのいくつかの技術が公開されている。
【0003】
例えば、米国特許出願公開第2013/0267901号は、近位端及び遠位端を有する本体を含み、自身を通して延在する第1及び第2のルーメンを画定するカテーテルと、スタイレットとを含むカテーテル法システムを記載している。スタイレットは、各々近位端領域及び遠位端領域を有する第1及び第2のスタイレット部分を含み、第1及び第2のスタイレット部分の遠位端領域は、先細りの貫通部分をともに画定する。第1及び第2のスタイレット部分は、各々カテーテルの第1及び第2のルーメン内に摺動可能に設置されるように構成及び寸法設定される。第1のスタイレット部分と第2のスタイレット部分とは、カテーテルの近位端からカテーテルの遠位端を越えて延在し、第1のスタイレット部分及び/又は第2のスタイレット部分のカテーテルからの選択的除去を容易化するように互いに対して独立して移動可能である。
【0004】
米国特許出願公開第2008/0108946号は、閉塞しているか又は部分的に閉塞している物質を吸引するための管腔内装置を記載している。装置は、吸引される流体のキャビテーションを最小限に抑え、かつ蛇行した管腔又は脈管系のより良好な誘導を可能にする新規なカテーテル延長部を備える。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書で説明する本発明の一実施形態は、アブレーション電極と灌注チャネルとを含むカテーテルを提供する。アブレーション電極は、患者器官の組織をアブレーションするように構成され、患者器官への挿入のための挿入チューブ上に取り付けられている。灌注チャネルは、(i)挿入チューブの軸に沿って形成され、アブレーション電極に灌注流体を流すように構成された管腔と、(ii)アブレーション電極に形成され、灌注流体を器官に適用するように構成された1つ以上の灌注孔と、を含み、灌注チャネルは、(i)カテーテルを案内するためのガイドワイヤを受容すると同時に、(ii)灌注流体を流すように構成されている。
【0006】
いくつかの実施形態では、アブレーション電極は、アブレーション電極を貫通してガイドワイヤを通過させるための開口部を有する。他の実施形態では、開口部及びガイドワイヤは、開口部からの灌注流体の漏出を防止するために、直径が互いに一致している。更に他の実施形態では、カテーテルは、挿入チューブ上に配置され、器官の組織と接触して配置されると組織からの電気信号を検知するように構成された1つ以上の検知電極を更に備える。
【0007】
本発明の一実施形態によれば、ガイドワイヤを患者器官に挿入し、ガイドワイヤの遠位先端をアブレーション部位に位置決めすることを含む方法が更に提供される。ガイドワイヤの近位先端がカテーテルの灌注チャネルに挿入され、灌注チャネルは、(i)カテーテルの挿入チューブに取り付けられたアブレーション電極に灌注流体を流すため、及びアブレーション電極を貫通してガイドワイヤを通過させるために、挿入チューブの軸に沿って形成された管腔と、(ii)灌注流体を器官に適用するためにアブレーション電極に形成された1つ以上の灌注孔と、を含む。カテーテルは、ガイドワイヤに沿って摺動され、アブレーション部位に位置決めされる。ガイドワイヤが灌注チャネル内に存在する間に、灌注流体が1つ以上の灌注孔を通して器官に適用される。
【0008】
本発明の一実施形態によれば、組織をアブレーションするためのカテーテルを製造するための方法が更に提供され、この方法は、患者器官への挿入のための挿入チューブ上に、組織をアブレーションするためのアブレーション電極を取り付けることを含む。(i)アブレーション電極の軸に沿って、アブレーション電極に灌注流体を流すため、及び内部を通してガイドワイヤを挿入するための管腔を形成することと、(ii)アブレーション電極に、灌注流体を器官に適用するための1つ以上の灌注孔を形成することと、によって、アブレーション電極内に灌注チャネルが形成される。
【0009】
更に、本発明の一実施形態によれば、患者器官への挿入のための挿入チューブと灌注チャネルとを含むカテーテルが提供される。灌注チャネルは、(i)挿入チューブの軸に沿って形成され、挿入チューブの遠位端に灌注流体を流すように構成された管腔と、(ii挿入チューブの遠位端に形成され、灌注流体を器官に適用するように構成された1つ以上の灌注孔と、を含む。灌注チャネルは、(i)カテーテルを案内するためのガイドワイヤを受容すると同時に、(ii)灌注流体を流すように構成されている。
【0010】
いくつかの実施形態では、カテーテルは、挿入チューブ上に配置され、器官の組織と接触して配置されると、(i)組織に1つ以上のアブレーションパルスを印加すること、及び(ii)組織からの1つ以上の電気信号を検知すること、のうち少なくとも一方を行うように構成された、1つ以上の(i)アブレーション電極又は(ii)検知電極を更に含む。
【0011】
本発明は、以下の「発明を実施するための形態」を図面と併せて考慮することで、より完全に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態による、カテーテルベースの位置追跡システム及びアブレーションシステムの概略描写図である。
図2】本発明の一実施形態による、フォーカル形アブレーションカテーテルの遠位端アセンブリの概略断面図である。
図3】本発明の一実施形態による、フォーカル形アブレーションカテーテルの遠位端アセンブリの概略描写図である。
図4】本発明の一実施形態による、ガイドワイヤを使用してフォーカルカテーテルを操作することによってマイクロアブレーションを実施するための方法を概略的に示すフロー図である。
図5】本発明の一実施形態による、組織をアブレーションするためのカテーテルの製造方法を概略的に示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
概論
高周波(RF)アブレーションなどのアブレーション手技では、医師は、典型的には、患者の心臓などの患者器官の不整脈を治療するためにアブレーション部位で組織をアブレーションするように構成されたアブレーション電極を有するカテーテルを使用する。場合によっては、アブレーションは、カテーテルで到達することが困難なアブレーション部位で行わなければならず、また、アブレーション対象の領域が小さい場合もあり、このために組織のカテーテルの操作及びアブレーションプロセスが更に複雑となる。
【0014】
以下に記載の本発明の実施形態は、小さくて到達困難なアブレーション部位でRFアブレーションを実施するための改善された技術を提供する。そのような部位は、本明細書ではマイクロアブレーション部位とも呼ばれ、そのような手技は、本明細書ではマイクロアブレーション手技とも呼ばれる。
【0015】
いくつかの実施形態では、マイクロアブレーション手技を実施するためのカテーテルは、患者器官、本実施例では患者の心臓への挿入のための挿入チューブを含む。カテーテルは、挿入チューブ上に配置されたアブレーション電極を備え、アブレーション電極は、アブレーション対象の組織(本明細書では標的組織とも呼ばれる)と接触して配置されると、アブレーション部位で組織をアブレーションするように構成されている。
【0016】
組織のアブレーションの間、アブレーション対象の組織の温度プロファイル及びアブレーション電極の温度を制御することが重要である。いくつかの実施形態では、カテーテルは、アブレーション対象の組織に灌注流体を適用するように構成され、かつ上記の温度を維持するようにプロセッサによって制御される灌注チャネルを更に備える。
【0017】
いくつかの実施形態では、灌注チャネルは、挿入チューブの長手方向軸に沿って形成され、灌注流体を挿入チューブの遠位端に流すように構成された管腔を含む。灌注チャネルは、挿入チューブの遠位端に形成され、灌注流体を組織に適用するように構成された複数の灌注孔を有するマニホールドを更に含む。
【0018】
いくつかの実施形態では、挿入チューブは開口部を有し、開口部は、開口部からの灌注流体の漏出を防止するために、灌注チャネルを貫通して通過するガイドワイヤによって密閉されるようなサイズ及び形状となっている。例えば、ガイドワイヤ及び開口部は、典型的には、漏出を防止するために、互いに一致する直径を有する。
【0019】
そのような実施形態では、灌注チャネルは、(i)カテーテルを案内するためのガイドワイヤを受容すると同時に、(ii)アブレーションされている組織に灌注流体を流して適用するように構成されている。
【0020】
いくつかの実施形態では、アブレーション手技中に、医師は、ガイドワイヤの遠位先端をアブレーション部位に挿入し、操作する。ガイドワイヤを灌注チャネルに挿入した後、医師は、カテーテルの遠位端をガイドワイヤに沿って摺動させて、カテーテルの遠位端をアブレーション部位に位置決めし、アブレーション電極のうちの1つ以上をアブレーション対象の組織と接触させて配置する。
【0021】
本開示の技術は、カテーテル遠位端のサイズを大きくすることなく、アブレーションカテーテルの操作性を改善する。したがって、そのようなカテーテルを使用して、小さくて到達困難なアブレーション部位でRFアブレーション手技を実施することができる。更に、本開示の技術は、時間のかかるガイドワイヤ後退プロセスを必要とすることなく、アブレーション電極が標的組織と接触して配置されるとすぐに、医師がアブレーションパルス及び灌注流体を標的組織に適用できるようにすることによって、そのようなアブレーション手技の作業時間を短縮する。
【0022】
システムの説明
図1は、本発明の実施形態による、カテーテルベースの位置追跡及びアブレーションシステム20の概略描写図である。いくつかの実施形態では、システム20は、本例ではフォーカル形状を有する心臓カテーテルであるカテーテル22と、制御コンソール24と、を備える。本明細書に記載の実施形態では、カテーテル22は、心臓26内の組織のアブレーションなど任意の好適な治療及び/又は診断目的に、並びに心臓内電気信号の検知による不整脈のマッピングに使用されてよい。
【0023】
いくつかの実施形態では、コンソール24は、フロントエンド回路及びインターフェース回路を有する、典型的には汎用コンピュータであるプロセッサ42を備え、そのフロントエンド回路及びインターフェース回路は、カテーテル22との信号の交換(例えば、心臓内電気信号の受信及び心臓26の組織へのアブレーションパルスの印加)、及び本明細書に記載のシステム20の他の構成要素の制御に好適なものである。プロセッサ42は、システムによって使用される機能を実行するようにソフトウェアでプログラムされてもよく、かつ、プロセッサ42は、ソフトウェア用のデータをメモリ50内に格納するように構成されている。このソフトウェアは、例えば、ネットワークを介して電子的形態でコンソール24にダウンロードされてもよく、又は光学的記憶媒体、磁気的記憶媒体、若しくは電子的記憶媒体などの、非一時的な有形媒体で提供されてもよい。代替的に、プロセッサ42の機能の一部又は全部は、特定用途向け集積回路(application-specific integrated circuit、ASIC)又は任意の好適なタイプのプログラム可能なデジタルハードウェア構成要素を使用して実行されてもよい。
【0024】
ここで、挿入図25を参照する。いくつかの実施形態では、カテーテル22は、フォーカル形状を有する遠位端アセンブリ40(以下の図2及び図3に詳細に示す)と、心臓26内の組織のアブレーションを行うために遠位端アセンブリ40を標的位置に挿入するためのシャフト23と、を備える。アブレーション手技中、医師30は、テーブル29に横たわる患者28の脈管系を通して、カテーテル22を挿入する。医師30は、プロセッサ42のインターフェース回路に接続されたカテーテル22の近位端付近のマニピュレータ32を使用して、遠位端アセンブリ40を心臓26内の標的位置に移動させる。
【0025】
いくつかの実施形態では、カテーテル22は、例えば、遠位端アセンブリ40にごく近接してカテーテル22の遠位端に連結される、位置追跡システムの位置センサ39を備える。本例では、位置センサ39は磁気位置センサを含むが、他の実施形態では、任意の他の好適なタイプの位置センサ(例えば、磁気ベース以外のもの)が使用されてもよい。
【0026】
再度図1の概略図を参照する。いくつかの実施形態では、心臓26内での遠位端アセンブリ40の誘導中、プロセッサ42は、例えば、心臓26内での遠位端アセンブリ40の位置を測定するために、外部磁場発生器36からの磁場に応答して、磁気位置センサ39から信号を受信する。いくつかの実施形態では、コンソール24が、磁場発生器36を駆動するように構成された駆動回路34を備える。磁場発生器36は、例えば、テーブル29の下など、患者28の外部の既知の位置に配置される。
【0027】
いくつかの実施形態では、プロセッサ42は、例えば、コンソール24のディスプレイ46上に、心臓26の画像44上に重ねられた遠位端アセンブリ40の追跡された位置を表示するように構成されている。
【0028】
外部磁場を使用するこの位置検知方法は、様々な医療用途において、例えば、Biosense Webster Inc.(Irvine,Calif.)により製造されているCARTO(商標)システムに実装されており、米国特許第5,391,199号、同第6,690,963号、同第6,484,118号、同第6,239,724号、同第6,618,612号及び同第6,332,089号、国際公開第96/05768号、並びに米国特許出願公開第2002/0065455(A1)号、同第2003/0120150(A1)号及び同第2004/0068178(A1)号に詳細に説明されており、これらの開示は全て参照により本明細書に援用される。
【0029】
カテーテル灌注チャネルを通して挿入されたガイドワイヤを介したカテーテル挿入
図2は、本発明の一実施形態による、遠位端アセンブリ40の概略断面図である。
【0030】
いくつかの実施形態では、遠位端アセンブリ40は、患者の心臓26の組織をアブレーションするように構成され、カテーテル22を心臓26に挿入して前述の心臓アブレーション手技を実施するための挿入チューブの遠位端(以下の図3に示す)上に取り付けられたアブレーション電極52を含む。遠位端アセンブリ40は、管腔56と1つ以上の灌注孔60を有する灌注チャネル54とを更に含む。
【0031】
いくつかの実施形態では、管腔56は、挿入チューブ(図示せず)及びアブレーション電極52の軸62に沿って形成され、灌注流体66をアブレーション電極52に流すように構成されている。
【0032】
いくつかの実施形態では、灌注孔60は、アブレーション電極52に形成され、典型的には、しかし必須ではないが、組織のアブレーション中に、心臓26の組織に灌注流体66を適用するように構成されている。
【0033】
アブレーション手技によっては、アブレーションパルスを印加するために遠位端アセンブリ40をアブレーション部位へと操作することが、心臓26の解剖学的構造のために困難である場合がある。いくつかの実施形態では、医師30は、心臓26における遠位端アセンブリ40の操作性を改善するためにガイドワイヤ55を使用することができる。ガイドワイヤ55は、可撓性であるが十分に剛性であり、例えば約0.89mm又は任意の他の好適な直径などの小さな直径を有し、カテーテル22及び遠位端アセンブリ40よりも優れた操作性を有するように構成されている。
【0034】
いくつかの実施形態では、ガイドワイヤ55は、Boston Scientific社(Middlesex County,Marlborough,Massachusetts)製のAmplatzガイドワイヤなどの任意の好適なタイプのガイドワイヤを含み得る。
【0035】
本開示の文脈において及び特許請求の範囲において、任意の数値や数値の範囲について用いられる「約」又は「およそ」という用語は、構成要素の部分又は構成要素の集合が、本明細書で述べるその意図された目的に沿って機能することを可能とする、適当な寸法の許容誤差を示すものである。
【0036】
いくつかの実施形態では、アブレーション電極52は、開口部70を有し、開口部70は、開口部70からの灌注流体66の漏出を防止するために、ガイドワイヤ55が灌注チャネル54を通して挿入された時に密閉されるようなサイズ及び形状となっている。例えば、開口部70及びガイドワイヤ55は、開口部70からの灌注流体の漏出を防止するために、例えば0.89mmなどの互いに一致する直径を有し得る。
【0037】
追加的又は代替的に、少なくとも封止リング(図示せず)を開口部70内に取り付けてもよい。封止リングは、(i)遠位端アセンブリ40がガイドワイヤ55上を摺動する時にガイドワイヤ55上にぴったりと嵌合し、(ii)灌注チャネル54を通した灌注流体66の適用時に、開口部70からの灌注流体66の漏出を防止するように構成されている。
【0038】
これらのような実施形態では、遠位端アセンブリ40は、(i)カテーテル22を心臓26内に案内するためのガイドワイヤ55を受容すると同時に、(ii)開口部70から灌注流体66を漏出させることなく、管腔56及び灌注孔60を通して灌注流体66を流すように構成されていることに留意されたい。
【0039】
図3は、本発明の一実施形態による、遠位端アセンブリ40の概略描写図である。
【0040】
いくつかの実施形態では、遠位端アセンブリ40は、挿入チューブ51に結合され、アブレーション電極52の適切な位置に形成された開口部に挿入される1つ以上の検知電極64を備える。検知電極64は、上述のように、心臓26の組織からの電気信号を検知するように構成されている。
【0041】
他の実施形態では、アブレーション電極52の代わりに遠位端アセンブリ40が前述の挿入チューブ又は任意の他の適切な構成要素を含んでもよく、その結果、複数の電極64のうちの少なくとも1つがアブレーション電極又は検知電極を含んでもよい。
【0042】
更に他の実施形態では、遠位端アセンブリ40は、複数の検知電極64のうちの少なくとも1つの代わりに、上述のように心臓26の組織にアブレーションパルスを印加するように構成された1つ以上のアブレーション電極を含んでもよい。
【0043】
この例では、遠位端アセンブリ40は、軸62の周りに配置され、アブレーション電極52から電気的に絶縁された3つの検知電極64を含む。各検知電極64は、アブレーション電極52の温度、検知電極64の温度、及びアブレーション対象の組織内の温度プロファイルを制御するための灌注孔60で囲まれている。
【0044】
上述の技術の一態様では、カテーテル22は、Biosense Webster Inc.(Irvine,Calif.)によって製造されたQDot Micro高周波(RF)アブレーションカテーテルを含み、各検知電極64は、約0.167mm2の表面積を有し、隣接する検知電極64間の距離は、約1.349mmである。
【0045】
いくつかの実施形態では、ガイドワイヤ55の遠位先端58が、軸62に沿って管腔56及び開口部70を通して挿入され、医師30又はシステム20の任意の他の適切なユーザによって、患者28の脈管系を通ってアブレーション部位まで操作される。その後、医師30は、遠位端アセンブリ40をガイドワイヤ55に沿って心臓26へと摺動させる。代替的な一実施形態では、医師30は、(i)ガイドワイヤ55の遠位先端58を患者28に挿入し、患者28の脈管系を通して遠位先端58を心臓26のアブレーション部位まで操作し、(ii)ガイドワイヤ55の近位先端59を遠位端アセンブリ40の管腔56に挿入し、遠位端アセンブリ40をガイドワイヤ55に沿って心臓26内のアブレーション部位へと摺動させる。いずれの実施形態においても、心臓26の組織に灌注流体66を適用する際に、ガイドワイヤ55は、典型的には、上記の図2に示し説明したように、遠位端アセンブリ40の灌注チャネル54を通して挿入されたままであることに留意されたい。
【0046】
本開示の技術は、カテーテル22又は遠位端アセンブリ40のサイズを大きくすることなくカテーテル22の操作性を改善し、その結果、医師30は、本明細書ではマイクロアブレーションとも呼ばれる、小さくて到達困難なアブレーション部位でのRFアブレーションを実施できることに留意されたい。
【0047】
ガイドワイヤを介してカテーテルを操作することによってマイクロアブレーションを実施する
図4は、本発明の一実施形態による、ガイドワイヤ55を介してカテーテル22を操作することによってマイクロアブレーションを実施するための方法を概略的に示すフロー図である。
【0048】
この方法の最初のガイドワイヤ挿入ステップ100では、ガイドワイヤ55が(例えば医師30によって)心臓26に挿入され、ガイドワイヤ55の遠位先端58が心臓26内のアブレーション部位に位置決めされる。第2のガイドワイヤ挿入ステップ102で、ガイドワイヤ55の近位先端59が(i)灌注チャネル54の管腔56、及び(ii)カテーテル22の開口部70を通して挿入される。
【0049】
カテーテル位置決めステップ104において、カテーテル22の遠位端アセンブリ40は、上記の図2及び図3で詳細に説明したように、ガイドワイヤ55に沿って遠位先端58に向かって摺動することによって移動され、アブレーション部位に位置決めされる。
【0050】
この方法の最後のアブレーションステップ106では、医師30は、カテーテル22を(例えば、プロセッサ42を介して)制御し、心臓26のアブレーション部位に、(i)アブレーション電極64を使用してアブレーションパルスを印加し、(ii)灌注チャネル54を介して灌注流体66を適用する。灌注流体66の適用時に、ガイドワイヤ55は、開口部70を密閉するために灌注チャネル54内に存在することによって、開口部70からの灌注流体66の漏出を防止することに留意されたい。
【0051】
マイクロアブレーションを実施するためのカテーテルの遠位端アセンブリの形成
図5は、本発明の一実施形態による、カテーテル22の遠位端アセンブリ40の形成方法を概略的に示すフロー図である。
【0052】
この方法の最初のアブレーション電極取り付けステップ200では、患者の心臓26への挿入のための挿入チューブ51の遠位端上に、組織をアブレーションするためのアブレーション電極52が取り付けられる。灌注チャネル形成ステップ202では、灌注チャネル54が、(i)アブレーション電極52に灌注流体66を流すため、及び内部を通してガイドワイヤ55を挿入するための管腔56をアブレーション電極52の軸62に沿って形成することと、(ii)アブレーション手技中にアブレーション電極52を通して灌注流体66を心臓26に適用するための灌注孔60を形成することと、によってアブレーション電極52内に形成される。
【0053】
開口部形成ステップ204では、開口部70が、管腔56及び開口部70を貫通してガイドワイヤ55を通過させるために、アブレーション電極52内に形成される。いくつかの実施形態では、開口部70は、上記の図2及び図3で詳細に説明したように、心臓26の組織を灌注する際に開口部70からの灌注流体66の漏出を防止するように、ガイドワイヤ55によって密閉されるようなサイズ及び形状である。例えば、開口部70及びガイドワイヤ55は、開口部70からの灌注流体66の漏出を防止するように、(例えば、それぞれ約0.89mmなどの)互いに一致する直径を有してもよい。追加的又は代替的に、遠位端アセンブリ40は、開口部70からの灌注流体66の漏出を防止するために、開口部70内に取り付けられた封止リングを備えてもよい。
【0054】
この方法の最後の検知電極配置ステップ206では、心臓26の組織からの電気信号を検知するための1つ以上の検知電極64が挿入チューブ51に結合されるか又は挿入チューブ51上に配置され、アブレーション電極52の開口部を通して挿入される。
【0055】
本明細書に記載の実施形態は、主に、小さくて到達困難なアブレーション部位で行われるRFアブレーション手技に対処するが、本明細書に記載の方法及びシステムは、RFベース以外のアブレーション技術、エレクトロポレーション及び電気外科手技、並びに薬物の正確な送達などの患者体内の小さい、及び/又は到達困難な部位への任意の種類の流体送達などの他の用途にも使用することができる。
【0056】
したがって、上述の実施形態は、例として引用したものであり、本発明は、上記に具体的に示し、かつ説明したものに限定されないことが理解されよう。むしろ、本発明の範囲は、上記の明細書に記載される様々な特徴の組み合わせ及び部分的組み合わせの両方、並びに前述の説明を読むことで当業者に想到されるであろう、先行技術において開示されていないそれらの変形例及び修正例を含むものである。参照により本特許出願に組み込まれる文献は、これらの組み込まれた文献において、いずれかの用語が本明細書において明示的又は暗示的になされた定義と矛盾する様式で定義される程度まで、本明細書における定義のみを考慮するものとする点を除き、本出願の不可欠な部分と見なすものとする。
【0057】
〔実施の態様〕
(1) カテーテルであって、
患者器官の組織をアブレーションするように構成され、前記患者器官への挿入のための挿入チューブに取り付けられた、アブレーション電極と、
灌注チャネルであって、(i)前記挿入チューブの軸に沿って形成され、前記アブレーション電極に灌注流体を流すように構成された管腔と、(ii)前記アブレーション電極に形成され、前記灌注流体を前記器官に適用するように構成された1つ以上の灌注孔と、を含み、前記灌注チャネルは、(i)前記カテーテルを案内するためのガイドワイヤを受容すると同時に、(ii)前記灌注流体を流すように構成されている、灌注チャネルと、
を備える、カテーテル。
(2) 前記アブレーション電極は、前記アブレーション電極を貫通して前記ガイドワイヤを通過させるための開口部を有する、実施態様1に記載のカテーテル。
(3) 前記開口部及び前記ガイドワイヤは、前記開口部からの前記灌注流体の漏出を防止するために直径が互いに一致している、実施態様2に記載のカテーテル。
(4) 前記挿入チューブ上に配置され、前記器官の組織と接触して配置されると前記組織からの電気信号を検知するように構成された1つ以上の検知電極を更に備える、実施態様1に記載のカテーテル。
(5) 方法であって、
ガイドワイヤを患者器官に挿入し、前記ガイドワイヤの遠位先端をアブレーション部位に位置決めすることと、
前記ガイドワイヤの近位先端を、カテーテルの灌注チャネルを通して挿入することであって、前記灌注チャネルは、(i)前記カテーテルの挿入チューブに取り付けられたアブレーション電極に灌注流体を流すため、及び前記アブレーション電極を貫通して前記ガイドワイヤを通過させるために、前記挿入チューブの軸に沿って形成された管腔と、(ii)前記灌注流体を前記器官に適用するために前記アブレーション電極に形成された1つ以上の灌注孔と、を含む、ことと、
前記カテーテルを前記ガイドワイヤに沿って摺動させ、前記カテーテルを前記アブレーション部位に位置決めすることと、
前記ガイドワイヤが前記灌注チャネル内に存在する間に、前記1つ以上の灌注孔を通して、前記器官に前記灌注流体を適用することと、
を含む、方法。
【0058】
(6) 前記近位先端を挿入することは、前記ガイドワイヤを(i)前記管腔と、(ii)前記アブレーション電極の開口部と、を貫通して通過させることを含む、実施態様5に記載の方法。
(7) 前記開口部及び前記ガイドワイヤは、前記開口部からの前記灌注流体の漏出を防止するために直径が互いに一致している、実施態様6に記載の方法。
(8) 前記器官の組織から1つ以上の電気信号を検知することを更に含む、実施態様5に記載の方法。
(9) 組織をアブレーションするためのカテーテルの製造方法であって、
患者器官への挿入のための挿入チューブ上に、前記組織をアブレーションするためのアブレーション電極を取り付けることと、
(i)前記アブレーション電極の軸に沿って、前記アブレーション電極に灌注流体を流すため、及び内部を通してガイドワイヤを挿入するための管腔を形成することと、(ii)前記アブレーション電極に、前記灌注流体を前記器官に適用するための1つ以上の灌注孔を形成することと、によって前記アブレーション電極内に灌注チャネルを形成することと、
を含む、方法。
(10) 前記アブレーション電極に、開口部を形成することを更に含み、前記開口部が、前記管腔及び前記開口部を貫通して前記ガイドワイヤを通過させるためのものである、実施態様9に記載の方法。
【0059】
(11) 前記開口部を形成することは、前記開口部からの前記灌注流体の漏出を防止するために前記ガイドワイヤによって密閉されるサイズ及び形状の前記開口部を形成することを含む、実施態様10に記載の方法。
(12) 前記アブレーション電極上に、前記組織からの電気信号を検知するための1つ以上の検知電極を配置することを更に含む、実施態様9に記載の方法。
(13) カテーテルであって、
患者器官への挿入のための挿入チューブと、
灌注チャネルであって、(i)前記挿入チューブの軸に沿って形成され、前記挿入チューブの遠位端に灌注流体を流すように構成された管腔と、(ii)前記挿入チューブの前記遠位端に形成され、前記灌注流体を前記器官に適用するように構成された1つ以上の灌注孔と、を含み、前記灌注チャネルは、(i)前記カテーテルを案内するためのガイドワイヤを受容すると同時に、(ii)前記灌注流体を流すように構成されている、灌注チャネルと、
を備える、カテーテル。
(14) 前記挿入チューブは、前記挿入チューブを貫通して前記ガイドワイヤを通過させるための開口部を有する、実施態様13に記載のカテーテル。
(15) 前記開口部及び前記ガイドワイヤは、前記開口部からの前記灌注流体の漏出を防止するために直径が互いに一致している、実施態様14に記載のカテーテル。
【0060】
(16) 前記挿入チューブ上に配置され、前記器官の組織と接触して配置されると、(i)前記組織に1つ以上のアブレーションパルスを印加すること、及び(ii)前記組織からの1つ以上の電気信号を検知すること、のうち少なくとも一方を行うように構成された、1つ以上の(i)アブレーション電極又は(ii)検知電極を更に備える、実施態様1に記載のカテーテル。
図1
図2
図3
図4
図5
【外国語明細書】