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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022132186
(43)【公開日】2022-09-07
(54)【発明の名称】医薬組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/137 20060101AFI20220831BHJP
   A61K 31/192 20060101ALI20220831BHJP
   A61K 31/51 20060101ALI20220831BHJP
   A61P 31/16 20060101ALI20220831BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20220831BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20220831BHJP
   A61K 9/24 20060101ALI20220831BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220831BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20220831BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20220831BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20220831BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20220831BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20220831BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20220831BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20220831BHJP
【FI】
A61K31/137
A61K31/192
A61K31/51
A61P31/16
A61P31/12
A61P31/14
A61K9/24
A61P43/00 121
A61K47/26
A61K47/38
A61K47/36
A61K47/02
A61K47/12
A61K47/10
A61K47/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022028172
(22)【出願日】2022-02-25
(31)【優先権主張番号】P 2021029440
(32)【優先日】2021-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】517129485
【氏名又は名称】アリナミン製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 康
(74)【代理人】
【識別番号】100221534
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 志穂
(72)【発明者】
【氏名】糸川 昌太
(72)【発明者】
【氏名】八戸 嵩仁
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA37
4C076AA40
4C076BB01
4C076CC35
4C076DD27
4C076DD28
4C076DD29
4C076DD38
4C076DD41
4C076DD67
4C076EE06
4C076EE23
4C076EE30
4C076EE31
4C076EE32
4C076EE38
4C076FF65
4C076FF68
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC83
4C086MA03
4C086MA04
4C086MA09
4C086MA10
4C086MA34
4C086MA35
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4C086NA03
4C086NA05
4C086NA10
4C086ZB33
4C086ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206DA24
4C206FA31
4C206KA01
4C206MA03
4C206MA04
4C206MA54
4C206MA55
4C206MA72
4C206NA03
4C206NA05
4C206NA10
4C206ZB33
4C206ZC75
(57)【要約】
【課題】アンブロキソール又はその塩、ビタミンB1類及びイブプロフェンを含む固形製剤を提供する。
【解決手段】
(a)アンブロキソール又はその塩、(b)ビタミンB1類及び(c)イブプロフェンを含有する固形製剤において、(a)成分及び(b)成分を含み、かつ、(c)成分を含まない、層Aと、(c)成分を含み、かつ、(a)成分及び(b)成分を含まない、層Bと、を含むことを特徴とする、固形製剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)アンブロキソール又はその塩、(b)ビタミンB1類及び
(c)イブプロフェンを含有する固形製剤において、
(a)成分及び(b)成分を含み、かつ、(c)イブプロフェンを含まない、層Aと、
(c)成分を含み、かつ、(a)成分及び(b)成分を含まない、層Bと、
を含むことを特徴とする、固形製剤。
【請求項2】
(a)アンブロキソール又はその塩、(b)ビタミンB1類及び
(c)イブプロフェンを含有する固形製剤において、
(a)成分及び(b)成分と、(c)成分とが、製剤中で実質的に層の境界面のみで接触することを特徴とする、固形製剤。
【請求項3】
圧縮成形された、請求項1又は2に記載の固形製剤。
【請求項4】
二層錠である、請求項1~3いずれか記載の固形製剤。
【請求項5】
(a)アンブロキソールの塩がアンブロキソール塩酸塩である、請求項1~4いずれか記載の固形製剤。
【請求項6】
(b)ビタミンB1類が、チアミン硝化物、チアミン塩化物塩酸塩、フルスルチアミン又はフルスルチアミン塩酸塩である、請求項1~5いずれか記載の固形製剤。
【請求項7】
感冒用である、請求項1~6いずれか記載の固形製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンブロキソール又はその塩、ビタミンB1類及びイブプロフェンを含有する固形製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
総合感冒薬においては、複数の薬効成分を配合した医薬製剤が広く利用されている。総合感冒薬には、例えば、解熱鎮痛薬、抗ヒスタミン薬、鎮咳薬、気管支拡張薬、消炎薬、カフェイン類、ビタミン類など多くの成分が配合されている。しかしながら、医薬製剤の薬効成分の中には、特定の薬効成分と組み合わせると安定性が低下し、保存中において含量が低下するものがある。医薬製剤において、所望の効果を発揮し、予期しない副作用などを防ぐという安全性の観点から、薬効成分の含量低下は防止する必要がある。
【0003】
アンブロキソールは、気道粘膜潤滑作用及び粘液溶解作用を有し、優れた去痰作用を有する化合物として広く知られている薬物である。また、ビタミンB1類は、疲労回復など生体に対する様々な作用を有することが知られている。イブプロフェンは、プロピオン酸系に分類される非ステロイド系消炎鎮痛剤(NSAID)の1種であり、シクロオキシゲナーゼ(COX)を阻害することにより、プロスタグランジンの生成を抑制し、解熱鎮痛作用を示す。これらのアンブロキソール、ビタミンB1類及びイブプロフェンはいずれも、上記作用によりに感冒薬として常用されている成分である。
【0004】
特許文献1には、イブプロフェンとアンブロキソール塩酸塩を共に含有する固形製剤において、イブプロフェンを含有する核粒子を、タルクを含有するコーティング液を用いてフィルムコーティングしてイブプロフェン含有製剤を得た後に、イブプロフェン含有製剤とアンブロキソール塩酸塩含有製剤とを混合することにより、アンブロキソール塩酸塩の経時的分解が十分に抑制されて安定な固形製剤が得られることが開示されている。また、実施例には、イブプロフェン、アンブロキソール塩酸塩及びチアミン硝酸塩を、それぞれ別群で造粒した造粒物として含有する顆粒剤が記載されている。
【0005】
特許文献2は、イブプロフェンとアンブロキソールを含有する医薬組成物において、さらにトラネキサム酸を含有させた医薬組成物を、ビン包装やPTP包装などの気密包装体に収容することによって配合変化を抑制できることを開示している。また、製造例には、イブプロフェン、アンブロキソール塩酸塩及びチアミン硝酸塩を含む固形製剤が記載されている。
【0006】
特許文献3は、イブプロフェンとアンブロキソールを含有する医薬組成物において、さらに酸化マグネシウムを含有させることにより、配合変化を抑制し、溶出性を向上させることができることを開示している。また、当該医薬組成物がビタミンをさらに含み得ることが記載されている。
【0007】
上記特許文献1~3には、イブプロフェン、アンブロキソール、及びチアミン硝酸塩又はビタミンを含む、安定性が向上した又は配合変化が抑制された医薬組成物が開示されている。しかしながら、当該特許文献のいずれにも、イブプロフェンと、チアミン硝酸塩又はアンブロキソール塩酸塩が、別の層に配合された固形製剤は開示されていない。
【0008】
特許文献4は、チアミン類にトレハロースを組み合わせることによるチアミン類の安定化方法を提供するものであり、チアミン類、イブプロフェン及びトレハロースを含有する製剤において、チアミン類及びトレハロースを含有する造粒物と、イブプロフェンを含有する造粒物を含む製剤を開示している。当該チアミン類含有製剤にアンブロキソールなどの去痰薬を配合し得ることが記載されているが、イブプロフェン、チアミン類及びアンブロキソール塩酸塩の具体的な組合せは開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007-55924
【特許文献2】特開2019-38801
【特許文献3】特開2017-43546
【特許文献4】特開2007-23001
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明者らは、アンブロキソール又はその塩、ビタミンB1類及びイブプロフェンを固形製剤に同時配合すると、アンブロキソール又はその塩及びビタミンB1類の含量が低下する問題を生じることを見出した。したがって、本発明は、アンブロキソール又はその塩、ビタミンB1類及びイブプロフェンを含む固形製剤において、製剤中のアンブロキソール又はその塩及びビタミンB1類の含量低下を抑制した、安定な固形製剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、(a)アンブロキソール又はその塩(以下、「(a)成分」ともいう)、(b)ビタミンB1類(以下、「(b)成分」ともいう)及び(c)イブプロフェン(以下、「(c)成分」ともいう)を含有する固形製剤において、(a)成分及び(b)成分を含みかつ(c)成分を含まない層Aと、(c)成分を含みかつ(a)成分及び(b)成分を含まない層Bを有する固形製剤にすることにより、(a)成分及び(b)成分の含量低下を抑制することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下の態様を含む。
[1]
(a)アンブロキソール又はその塩、(b)ビタミンB1類及び
(c)イブプロフェンを含有する固形製剤において、
(a)成分及び(b)成分を含み、かつ、(c)イブプロフェンを含まない、層Aと、
(c)成分を含み、かつ、(a)成分及び(b)成分を含まない、層Bと、
を含むことを特徴とする、固形製剤。
[2]
(a)アンブロキソール又はその塩、(b)ビタミンB1類及び
(c)イブプロフェンを含有する固形製剤において、
(a)成分及び(b)成分と、(c)成分とが、製剤中で実質的に層の境界面のみで接触することを特徴とする、固形製剤。
[3]
圧縮成形された、[1]又は[2]に記載の固形製剤。
[4]
二層錠である、[1]~[3]いずれか記載の固形製剤。
[5]
(a)アンブロキソールの塩がアンブロキソール塩酸塩である、[1]~[4]いずれか記載の固形製剤。
[6]
(b)ビタミンB1類が、チアミン硝化物、チアミン塩化物塩酸塩、フルスルチアミン又はフルスルチアミン塩酸塩である、[1]~[5]いずれか記載の固形製剤。
[7]
感冒用である、[1]~[6]いずれか記載の固形製剤。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、(a)アンブロキソール又はその塩、(b)ビタミンB1類及び(c)イブプロフェンを含む固形製剤であって、(a)アンブロキソール又はその塩及び(b)ビタミンB1類の含量低下を抑制した固形製剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明における「アンブロキソール又はその塩」は、アンブロキソール及びその薬学的に許容される塩、並びにアンブロキソール及びその薬学的に許容される塩と水やアルコール等との溶媒和物を含む。アンブロキソール又はその塩としては、例えば、アンブロキソール、アンブロキソール塩酸塩などが挙げられ、好ましくはアンブロキソール塩酸塩である。これらは、公知の方法により製造できるほか、市販のものを用いることができる。例えば、日本薬局方外医薬品成分規格に準拠したアンブロキソール又はその塩を用いることができる。
本発明の固形製剤中に含まれる「アンブロキソール又はその塩」の含量は、特に限定されないが、例えば、固形製剤全体の0.1~20質量%、好ましくは0.3~10質量%、より好ましくは0.7~4質量%である。
【0014】
本発明における「ビタミンB1類」は、ビタミンB及びその誘導体、それらの薬学的に許容される塩、並びにビタミンB及びその誘導体及びそれらの薬学的に許容される塩と水やアルコール等との溶媒和物を含む。
ビタミンB1類としては、例えば、チアミン硝化物、チアミン塩化物塩酸塩、フルスルチアミン、フルスルチアミン塩酸塩、ジセチアミン塩酸塩水和物、オクトチアミン、シコチアミン、ビスイブチアミン、ビスベンチアミン、ベンフォチアミンなどが挙げられ、好ましくは、チアミン硝化物、チアミン塩化物塩酸塩、フルスルチアミン又はフルスルチアミン塩酸塩であり、より好ましくは、チアミン硝化物である。ビタミンB1類は、公知の方法により製造できるほか、市販のものを用いることができる。例えば、日本薬局方に準拠しチアミン硝化物、チアミン塩化物塩酸塩、フルスルチアミン又はフルスルチアミン塩酸塩を用いることができる。
本発明の固形製剤中に含まれる「ビタミンB1類」の含量は、特に限定されないが、例えば、固形製剤全体の0.05~15質量%、好ましくは0.1~10質量%、より好ましくは0.2~5質量%である。
【0015】
本発明における「イブプロフェン」は、日本薬局方に準拠したイブプロフェンであり、公知の方法により製造できるほか、市販のものを用いることができる。
本発明の固形製剤中に含まれる「イブプロフェン」の含量は、特に限定されないが、例えば、固形製剤全体の1~60質量%、好ましくは5~50質量%、より好ましくは10~40質量%である。
【0016】
本発明の医薬組成物に含まれる(a)アンブロキソール又はその塩と、(b)ビタミンB1類の質量比は、特に限定されないが、例えば、アンブロキソール又はその塩の1質量部に対して、ビタミンB1類が、例えば、その下限として0.05質量部以上、好ましくは0.1質量部以上であり、その上限として20質量部以下、好ましくは5質量部以下である。
【0017】
本発明の医薬組成物に含まれる(a)アンブロキソール又はその塩と、(c)イブプロフェンの質量比は、特に限定されないが、例えば、アンブロキソール又はその塩の1質量部に対して、イブプロフェンが、例えば、その下限として0.1質量部以上、好ましくは1質量部以上であり、その上限として100質量部以下、好ましくは20質量部以下である。
【0018】
本発明の医薬組成物に含まれる(b)ビタミンB1類と(c)イブプロフェンの質量比は、特に限定されないが、例えば、ビタミンB1類の1質量部に対して、イブプロフェンが、例えば、その下限として1質量部以上、好ましくは3質量部以上であり、その上限として200質量部以下、好ましくは50質量部以下である。
【0019】
本発明の医薬組成物に含まれる(a)アンブロキソール又はその塩及び(b)ビタミンB1類と、(c)イブプロフェンの質量比は、特に限定されないが、例えば、上記組合せ1質量部に対して、イブプロフェンが、例えば、その下限として0.1質量部以上、好ましくは0.5質量部以上であり、その上限として100質量部以下、好ましくは20質量部以下である。
【0020】
本発明における固形製剤には、本発明の効果を阻害しない限り、アンブロキソール又はその塩、ビタミンB1類及びイブプロフェン以外の有効成分、例えば、イブプロフェン以外の解熱鎮痛剤、鼻炎用薬、抗ヒスタミン剤、鎮咳剤、アンブロキソール及びその塩以外の去痰剤、気管支拡張剤、胃粘膜保護剤、カフェイン類、ビタミンB1類以外のビタミン類、催眠鎮静剤、喀痰溶解剤、抗炎症剤、抗コリン剤、生薬類、漢方処方などを配合してもよい。
【0021】
イブプロフェン以外の解熱鎮痛剤としては、例えば、アスピリン(アセチルサリチル酸)、アスピリンアルミニウム、アセトアミノフェン、サリチルアミド、サリチル酸ナトリウム、エテンザミド、サザピリン、ラクチルフェネチジン、ケトプロフェン、イソプロピルアンチピリン、ロキソプロフェンナトリウムなどが例示できる。
鼻炎用薬として、プソイドエフェドリン塩酸塩、dl-マレイン酸クロルフェニラミン、d-クロルフェニラミンマレイン酸塩、ベラドンナ総アルカロイド、ヨウ化イソプロパミド、グリチルリチン酸ジカリウムなどが例示できる。
抗ヒスタミン剤としては、例えば、ジフェンヒドラミン塩酸塩、ジフェンヒドラミンサリチル酸塩、タンニン酸ジフェンヒドラミン、酒石酸アリメマジン、塩酸イソチペンジル、プロメタジンメチレン二サリチル酸塩、ジフェニルピラリン塩酸塩、ジフェニルピラリンテオクル酸塩、塩酸ジフェテロール、リン酸ジフェテロール、トリプロリジン塩酸塩水和物、塩酸トリペレナミン、塩酸トンジルアミン、塩酸フェネタジン、塩酸メトジラジン、ジフェニルジスルホン酸カルビノキサミン、ナパジシル酸メブヒドロリン、マレイン酸カルビノキサミン、塩酸イプロヘプチン、塩酸プロメタジン、酒石酸アリメマジン、タンニン酸フェネタジン、クレマスチンフマル酸塩、メキタジンなどが例示できる。
麻薬性鎮咳剤としては、例えば、コデインリン酸塩水和物、ジヒドロコデインリン酸塩などが例示できる。
非麻薬性鎮咳剤としては、例えば、アロクラミド、イソアミニル、エプラジノン、オキセラジン、クロフェダノール、クロブチノール、クロペラスチン、ジブナート、ジメモルファン、チペピジン、デキストロメトルファン、ノスカピン、ヒドロコタルニン、ペントキシベリン、ベンプロペリン及びホミノベン、並びにそれらの塩及び水和物が挙げられ、それらの塩及び水和物としては、例えば、塩酸アロクラミド、クロペラスチン塩酸塩、クロペラスチンフェンジゾ酸塩、ジブナートナトリウム、ジメモルファンリン酸塩、チペピジンヒベンズ酸塩、チペピジンクエン酸塩、デキストロメトルファン臭化水素酸塩、デキストロメトルファンフェノールフタリン塩、ペントキシベリンクエン酸塩及びそれらの水和物が例示できる。
アンブロキソール及びその塩以外の去痰剤としては、例えば、グアヤコールスルホン酸カリウム、ブロムヘキシン塩酸塩、グアイフェネシン、クエン酸チペピジン、L-カルボシステイン、塩化アンモニウム、l-メントール、アンモニア・ウイキョウ精、クレゾールスルホン酸カリウムなどが例示できる。
気管支拡張剤としては、例えば、dl-メチルエフェドリン塩酸塩、dl-メチルエフェドリンサッカリン塩、塩酸トリメトキノール、塩酸フェニルプロパノールアミン、塩酸メトキシフェナミン、l-塩酸メチルエフェドリン、プソイドエフェドリン塩酸塩、アミノフィリン、ジプロフィリン、テオフィリン、プロキシフィリンなどが例示できる。
胃粘膜保護剤としては、例えば、グリシン、アミノ酢酸、ケイ酸マグネシウム、合成ケイ酸アルミニウム、合成ヒドロタルサイト、酸化マグネシウム、ジヒドロキシアルミニウム・アミノ酢酸塩、水酸化アルミニウムゲル、乾燥水酸化アルミニウムゲル、水酸化アルミニウム・炭酸マグネシウム混合乾燥ゲル、水酸化アルミニウム・炭酸水素ナトリウムの共沈生成物、水酸化アルミニウム・炭酸カルシウム・炭酸マグネシウムの共沈生成物、水酸化マグネシウム・硫酸アルミニウムカリウムの共沈生成物、炭酸マグネシウムなどが例示できる。
カフェイン類としては、例えば、安息香酸ナトリウムカフェイン、カフェイン水和物、無水カフェインなどが例示できる。
ビタミンB1類以外のビタミン類としては、例えば、ビタミンB類又はその誘導体若しくはそれらの塩、例えばリボフラビン、ビタミンC類又はその誘導体若しくはそれらの塩、例えばアスコルビン酸、ビタミンP(ヘスペリジン)又はその誘導体若しくはそれらの塩などが例示できる。
催眠鎮静剤として、例えば、アリルイソプロピルアセチル尿素、ブロムワレリル尿素などが例示できる。
喀痰溶解剤としては、例えば、塩化リゾチーム、L-エチルシステイン塩酸塩、塩酸メチルシステインなどが例示できる。
抗炎症剤としては、例えば、塩化リゾチーム、セラプターゼ、グリチルリチン酸及びその塩、トラネキサム酸及びその塩などが例示できる。
抗コリン剤としては、例えば、ベラドンナ総アルカロイド、ヨウ化イソプロパミドなどが例示できる。
生薬類としては、例えば、マオウ、ナンテンジツ、オウヒ、オンジ、カンゾウ、キキョウ、シャゼンシ、シャゼンソウ、セキサン、セネガ、バイモ、ウイキョウ、オウバク、オウレン、ガジュツ、カミツレ、ケイヒ、ゲンチアナ、ゴオウ、獣胆(ユウタン含む)、シャジン、ショウキョウ、ソウジュツ、チョウジ、チンピ、ビャクジュツ、ジリュウ、チクセツニンジン、ニンジンなどが例示できる。
漢方処方としては、例えば、葛根湯、葛根湯加桔梗、桂皮湯、香蘇散、柴胡桂皮湯、小柴胡湯、小青竜湯、麦門冬湯、半夏厚朴湯、麻黄湯などが例示できる。
【0022】
本発明における固形製剤は、上記有効成分の他、本発明の効果を阻害しない限り、製剤技術分野において慣用の薬学的に許容される担体又は添加剤をさらに含有していてもよい。
担体又は添加剤としては、例えば賦形剤、崩壊剤、結合剤、流動化剤、滑沢剤、着色剤、pH調整剤、界面活性剤、安定化剤、矯味剤、香料などが挙げられる。これら担体又は添加剤は、製剤技術分野において慣用の量が用いられる。
【0023】
賦形剤としては、例えば、トウモロコシデンプン、馬鈴薯デンプン、コムギコデンプン、コメデンプン、部分アルファー化デンプン、アルファー化デンプン、有孔デンプンなどのデンプン類;乳糖水和物、精製白糖、果糖、ブドウ糖、マンニトール、ソルビトール、エリスリトール、キシリトール、トレハロース、マルチトール、粉末還元麦芽糖水アメ、ラクチトールなどの糖又は糖アルコール類;無水リン酸水素カルシウム、結晶セルロース、粉末セルロース、沈降炭酸カルシウム、炭酸カルシウムなどが挙げられる。
崩壊剤としては、例えば、カルメロース、カルメロースカルシウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L-HPC)、ヒドロキシプロピルスターチなどが用いられ、好ましくは、クロスカルメロースナトリウム、L-HPCである。
結合剤としては、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(ヒプロメロース)、ポリビニルピロリドン、コポリビドン、アラビアゴム末、メチルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルメロースナトリウム、デキストリン、部分アルファー化デンプン、プルラン、アラビアゴム、カンテン、ゼラチン、トラガント、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルアルコール部分けん化物などが用いられ、好ましくは、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースである。
流動化剤としては、例えば、軽質無水ケイ酸、含水二酸化ケイ素、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、タルクなどが用いられ、好ましくは、軽質無水ケイ酸、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムである。
滑沢剤としては、例えば、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、フマル酸ステアリルナトリウム、タルク、ショ糖脂肪酸エステルなどが挙げられる。
着色剤としては、例えば、黄色三二酸化鉄、三二酸化鉄、食用青色1号、食用青色2号、食用黄色4号、食用黄色5号、食用緑色3号、食用赤色2号、食用赤色3号、食用赤色102号、食用赤色104号、食用赤色105号、食用赤色106号、食用レーキ色素、リボフラビン、リボフラビンリン酸エステルナトリウム、酸化チタンなどが挙げられる。
pH調整剤としては、例えば、クエン酸、リン酸、炭酸、酒石酸、フマル酸、酢酸、アミノ酸及びそれらの塩などが挙げられる。
界面活性剤としては、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリソルベート80、ポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコールなどが挙げられる。
安定化剤としては、例えば、トコフェロール、エデト酸四ナトリウム、ニコチン酸アミド、シクロデキストリン類などが挙げられる。
矯味剤としては、例えば、アスコルビン酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、スクラロース、ステビアエキスなどが挙げられる。
香料としては、例えば、L-メントール、ハッカ油、レモン油、バニリンなどが挙げられる。
【0024】
本発明の一態様における固形製剤は、(a)アンブロキソール又はその塩及び(b)ビタミンB1類を含みかつ(c)イブプロフェンを含まない層と、(c)イブプロフェンを含みかつ(a)アンブロキソール又はその塩及び(b)ビタミンB1類を含まない層とを含む。当該2つの層に加えて、本発明における固形製剤は、必要に応じてアンブロキソール又はその塩、ビタミンB1類及びイブプロフェン以外の有効成分を含む層を有してもよく、有効成分を含まない層を有してもよい。
【0025】
本発明における(a)アンブロキソール又はその塩及び(b)ビタミンB1類を含む層は、(c)イブプロフェンを含まなければ、(a)成分及び(b)成分以外に必要に応じて他の有効成分及び添加剤を含んでもよい。(a)成分及び(b)成分を含む層において、(a)成分及び(b)成分は、粉末又は造粒物もしくは成形された形態で存在し得る。したがって、本発明における(a)成分及び(b)成分を含む層は、(a)成分及び(b)成分の粉末、必要に応じて他の有効成分及び/又は添加剤を含む(a)成分及び(b)成分との混合物、必要に応じて他の有効成分及び/又は添加剤を含む(a)成分及び(b)成分の造粒物、又は必要に応じて他の有効成分及び/又は添加剤をさらに含む前記造粒物との混合物を含み得る。
【0026】
本発明における(c)イブプロフェンを含む層は、(a)アンブロキソール又はその塩及び(b)ビタミンB1類を含まなければ、(c)成分以外に必要に応じて他の有効成分及び添加剤を含んでもよい。(c)成分を含む層において、(c)成分は、粉末又は造粒物もしくは成形された形態で存在し得る。したがって、本発明における(c)成分を含む層は、(c)成分の粉末、必要に応じて他の有効成分及び/又は添加剤を含む(c)成分との混合物、必要に応じて他の有効成分及び/又は添加剤を含む(c)成分の造粒物、又は必要に応じて他の有効成分及び/又は添加剤をさらに含む前記造粒物との混合物を含み得る。
【0027】
本発明の固形製剤の別の態様として、
(a)アンブロキソール又はその塩、
(b)ビタミンB1類及び
(c)イブプロフェンを含有する固形製剤において、
(a)成分及び(b)成分と、(c)成分とが、製剤中で実質的に層の境界面のみで接触することを特徴とする、固形製剤が含まれる。
【0028】
本発明において、(a)アンブロキソール又はその塩及び(b)ビタミンB1類と、(c)イブプロフェンとが「製剤中で実質的に層の境界面のみで接触する」とは、(a)成分及び(b)成分と、(c)成分とが、境界面を除いて接触して相互作用を実質的にすることがなく、同一の固形製剤中に存在する状態をいう。
上記「層の境界面」は、異なる組成を有する層同士の境界面を指し、例えば、固形製剤が多層錠や有核錠やコーティング錠、又は多層状造粒物である場合、(a)成分及び(b)成分を含みかつ(c)成分を含まない層と、(c)成分を含みかつ(a)成分及び(b)成分を含まない層との境界面が挙げられる。
【0029】
このような固形製剤としては、例えば、(a)成分及び(b)成分を含みかつ(c)成分を含まない層と、(c)成分を含みかつ(a)成分及び(b)成分を含まない層を含み、これらの層が直接接触している多層錠や有核錠やコーティング錠、又は多層状造粒物などが挙げられる。
【0030】
本発明における固形製剤は、例えば圧縮成形された固形製剤である。圧縮成形とは、材料や粉体を圧縮して、錠剤、ペレット、造粒物などを得ることを指し、錠剤の形状に圧縮成形する打錠、ペレットの形状に圧縮成形するペレット化などが含まれる。本発明における固形製剤としては、例えば、錠剤(素錠、コーティング錠、フィルムコーティング錠、糖衣錠、薄層糖衣錠、口腔内崩壊錠、チュアブル錠などを含む)、カプセル剤、顆粒剤、散剤、丸剤が挙げられ、好ましくは錠剤である。例えば、本発明における固形製剤が錠剤の場合、固形製剤は、好ましくは多層錠、有核錠もしくはコーティング錠であり、より好ましくは多層錠であり、さらにより好ましくは二層錠である。
【0031】
本発明において、多層錠は、異なる組成を有する2層又は3層以上から形成される錠剤であり、二層錠は、異なる組成を有する2層から形成される錠剤であり、有核錠又はコーティング錠はいずれかの層を核とし、もう一方の層で少なくとも核の一部を包含して形成される錠剤である。
【0032】
本発明の固形製剤は、常法、例えば、造粒ハンドブック(日本粉体工業技術協会編、オーム社)、経口投与製剤の処方設計(京都大学大学院薬学研究科教授橋田充編、薬業時報社)、粉体の圧縮成形技術(粉体工学・製剤と粒子設計部会編、日刊工業新聞社)、製剤機械技術ハンドブック(第2版、製剤機械技術研究会設立20周年記念出版編集委員会編、製剤機械技術研究会)のような刊行物に記載されている方法を用いて製造することができる。
【0033】
例えば、アンブロキソール又はその塩及びビタミンB1類を含む層と、イブプロフェンを含む層とを、層状に積み重ねて直接打錠して錠剤を製造する。あるいは、必要により医薬製剤に通常使用される添加剤及び他の有効成分とともに、アンブロキソール又はその塩及びビタミンB1類と、イブプロフェンとを、それぞれ別個に造粒して造粒物を製造し、当該造粒物に必要によりさらに添加剤を添加して混合した各造粒物を含む層を、層状に積み重ねて打錠して多層錠を製造する。造粒物の造粒方法は特に限定されず、公知の方法(押し出し造粒、転動造粒、撹拌造粒、流動層造粒、噴霧乾燥造粒、破砕造粒、溶融造粒等)を用いればよい。打錠の方法も特に限定されず、結果として層状とみなせる錠剤が製造されればよい。
【0034】
本発明における固形製剤は、通常配合されるコーティング基剤を用いて常法によりコーティングされてもよい。例えば、錠剤を、コーティング基剤を用いてコーティングし、フィルムコーティング錠としてもよい。
コーティング基剤としては、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(ヒプロメロース)、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ポビドン、コポリビドン、ポリビニルアルコール部分けん化物、ポリビニルアルコール共重合体、マクロゴールなどの水溶性基剤、エチルセルロースなどの水不溶性基剤、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、カルボキシメチルエチルセルロース、酢酸フタル酸セルロース、メタクリル酸コポリマー、アクリル酸コポリマー、カルボキシビニルポリマーなどの腸溶性基剤、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、アミノアルキルメタアクリレートコポリマー、ポリビニルアセタートジエチルアミノアセテートなどの胃溶性基剤、アラビアゴム、プルラン、カルナウバロウ、セラック、マクロゴール類、グリセリン脂肪酸エステル、ステアリン酸マグネシウムなどが挙げられる。
また、本発明において、コーティング基剤は、1種であっても2種以上であってもよい。
さらに、コーティングにコーティング添加剤を用いてもよい。コーティング添加剤としては、例えば、遮光剤、流動化剤、着色剤、可塑剤などが挙げられる。
可塑剤としては、例えば、コポリビドン、ポリエチレングリコール、クエン酸トリエチル、ヒマシ油、ポリソルベートなどが挙げられる。
【実施例0035】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0036】
(実施例及び比較例)
下記表1に示す処方及び配合比に従い、区分Aと区分Bについてそれぞれ各成分を一般的な手法で造粒混合し、区分Aから成る層と区分Bから成る層に層分けして打錠することで多層錠の素錠を得た(実施例1~3)。
また、区分Aと区分Bの各成分を一般的な手法で造粒混合し、さらに混合して打錠することで単層錠の素錠を得た(比較例1~3)。
得られた素錠を区分Cに示した処方に従ってコーティングすることで固形製剤(多層錠及び単層錠)を得た(実施例1~3及び比較例1~3)。
【表1】
【0037】
(試験例)
上記で得られた固形製剤をガラス瓶に入れ密栓し、50℃条件下で8週間保存した。保存後、ビタミンB1類(チアミン硝化物、チアミン塩化物塩酸塩、フルスルチアミン塩酸塩)及びアンブロキソール塩酸塩について定量評価を行い、保存品における含量をイニシャルからの残存率として算出した。結果を表2に示す。
【表2-1】

【表2-2】
【0038】
表2に示すとおり、多層錠(実施例1~3)では、50℃にて8週間保存後も安定な状態が保たれた。一方、単層錠(比較例1~3)では、顕著な含量低下が認められ、安定な状態の保持が困難であった。
【0039】
(製造例)
下記表3の処方及び配合比に従い、区分Aと区分Bについてそれぞれ各成分を混合し、区分Aから成る層と区分Bから成る層に層分けして打錠することで多層錠の素錠を得た。得られた素錠を区分Cに示した処方に従ってコーティングすることで多層錠の固形製剤を得た。
【表3-1】

【表3-2】
【産業上の利用可能性】
【0040】
(a)アンブロキソール又はその塩、(b)ビタミンB1類及び(c)イブプロフェンを含む固形製剤において、(a)成分及び(b)成分を含みかつ(c)成分を含まない層Aと、(c)成分を含みかつ(a)成分及び(b)成分を含まない層Bを有する固形製剤にすることにより、(a)アンブロキソール又はその塩及び(b)ビタミンB1類の含量低下を抑制することができ、良好な安定性を有する固形製剤を提供することができる。