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特開2022-132202ベーマイト検出及び警告システム、並びにLiBセパレータシート製造用の濃度インジケータ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022132202
(43)【公開日】2022-09-07
(54)【発明の名称】ベーマイト検出及び警告システム、並びにLiBセパレータシート製造用の濃度インジケータ
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/083 20180101AFI20220831BHJP
   G01B 15/02 20060101ALI20220831BHJP
   G01N 21/3563 20140101ALI20220831BHJP
【FI】
G01N23/083
G01B15/02 A
G01N21/3563
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022028757
(22)【出願日】2022-02-28
(31)【優先権主張番号】63/154,249
(32)【優先日】2021-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/651,501
(32)【優先日】2022-02-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】508322831
【氏名又は名称】ハネウェル・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100147991
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥居 健一
(72)【発明者】
【氏名】トビアス・ネベル
(72)【発明者】
【氏名】ヒョンサン・イ
(72)【発明者】
【氏名】セバスティン・ティクシエ
【テーマコード(参考)】
2F067
2G001
2G059
【Fターム(参考)】
2F067AA27
2F067AA57
2F067BB16
2F067HH04
2G001AA01
2G001AA07
2G001BA11
2G001CA01
2G001CA07
2G001KA01
2G001KA11
2G001LA20
2G001MA05
2G001NA19
2G001NA20
2G059AA01
2G059AA03
2G059BB10
2G059CC12
2G059CC20
2G059DD12
2G059EE01
2G059EE12
2G059FF01
2G059HH01
2G059KK01
2G059MM01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】バッテリのコーティングされたセパレータシートのコーティングパラメータの測定方法を提供する。
【解決手段】装置100は、X線センサ110と赤外線(IR)センサ120とコンピューティングデバイス150を備える。IRセンサは、コーティングされたセパレータ膜180からのIR信号を取得する。IR信号は、セパレータ膜からの第1のピークを含むスペクトル成分を含む。コンピューティングデバイスは、X線信号及びIR信号を受信するように結合され、プロセッサ151及びメモリ152を含む。プロセッサが、第2のピークが存在するかどうかを判定することと、少なくとも1つの汚染物質/添加物がセパレータ膜のコーティング180b内に存在するかどうかを判定することと、を含み、また、少なくとも1つの汚染物質/添加物の濃度/面積重量及びコーティングの重量、密度、又は厚さを計算することを含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
方法であって、
コーティングされたセパレータ膜(180)を介してX線送信機(110a、120a)から送信されたX線信号を受信することと、
前記コーティングされたセパレータ膜(180)から赤外線(IR)信号を取得することであって、前記IR信号が、前記セパレータ膜(180)からの第1のピークを含むピークを含む2つ以上のスペクトル成分を含む、取得することと、
プロセッサ(151)によって、前記IRピーク中に第2のピークが存在するかどうかを判定することと、前記プロセッサ(151)によって、少なくとも1つの汚染物質又は添加物が、前記コーティングされたセパレータ膜(180)中に存在する前記コーティング(180b)中に存在するかどうかを判定することと、
前記プロセッサ(151)によって、前記少なくとも1つの汚染物質又は添加物の濃度又は面積重量と、前記コーティング(180b)の重量、密度、又は厚さと、を計算することと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つの汚染物質又は添加物が、ベーマイトである、請求項に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも1つの汚染物質又は添加物が、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)及びベーマイトなどの結合剤材料である、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2021年2月26日に出願された米国仮出願第63/154,249号、表題「BOEHMITE DETECTION FOR COATED SEPARATOR SHEET MANUFACTURING FOR BATTERIES」に対する利益及び優先権を主張し、同出願は全体を参照により本明細書に組み込む。
【0002】
(発明の分野)
開示される態様は、バッテリのコーティングされたセパレータシートのコーティングパラメータの測定に関する。
【背景技術】
【0003】
セラミックコーティングのポリエチレン(PE)又はポリプロピレン(PP)セパレータ膜は、リチウムイオン電池(LiB)の性能に関する重要な構成要素である。セパレータ膜は、カソードとアノードとの間にイオン透過性バリアを提供する。これらの膜は多孔質であり、コーティングされていない場合、概ね120℃の温度で分解し始め、LiBを短絡させ、したがって破損する。セパレータ膜に塗布されたセラミックコーティングは、高温下でセパレータ膜の収縮を防止又は抑制する。セラミックコーティングの一例は、アルミナ(Al)である。場合によっては、いくつかのセパレータサンプル上に見られるアルミナは、純粋ではないが、ベーマイトなどの汚染物質/添加物又はポリフッ化ビニリデン(PVDF)などの他の結合剤材料を含有する。セパレータ膜の表面(複数可)上に適用されたアルミニウムを含むセラミックコーティングは、最高約200℃まで分離器の温度及び化学的安定性を改善するのに役立つことが知られている。高温では、プラスチック膜が破壊されて、カソードとアノードとの間に導電性経路を破壊する。短絡、熱暴走、次いで爆発へとつながる。
【発明の概要】
【0004】
本概要は、提示される図面を含む以下の「発明を実施するための形態」で更に詳述される、簡潔に選定された開示の概念を単純な形態で紹介するために提供される。本概要は、特許請求される主題の範囲を限定することを意図するものではない。
【0005】
開示される態様は、セパレータ膜上のアルミナコーティングが、ベーマイトの混合物を含み得ることを認識している。アルミナコーティング中のベーマイト又はベーマイトコーティング中のアルミナの存在は、一般的に、セパレータ膜の物理的特性に影響を及ぼす。例えば、ベーマイトは、アルミナと比較して、30%低い密度を有し、その硬度も著しく低い。アルミナコーティングの場合、低品質のアルミナ、ナトリウムイオン及びベーマイトは、浸出して電池の電解質を汚染することが知られている。
【0006】
バッテリ製造業者の観点から、純アルミナ、純ベーマイト、又はこれらの2つの材料の混合物であるかどうかにかかわらず、コーティングの組成物を正確に知ることが重要である。測定品質管理の観点から、セパレータ膜などの基材上のコーティングの組成と密度とを知ることにより、コーティング厚さのより正確な判定が可能になる。これは、一部にはX線、ベータ粒子、又は赤外線(IR)ベースのいずれであろうと、吸収測定技術が本質的に、厚さ測定技術ではなく重量測定技術であるためである。したがって、本明細書では、セパレータ膜上などの基材上のアルミナコーティング中のベーマイト又はベーマイトコーティング中アルミナの存在及び量を検出することができることが有用であると認識されている。
【0007】
1つの開示された態様は、少なくとも1つの表面上にアルミナ及びベーマイトのうちの少なくとも1つを含むアルミニウム化合物コーティングを有する別個の膜を含むコーティングされたセパレータ膜を測定するための測定装置を含む。測定装置は、高電圧電源が結合されたX線を放出するためのX線源、及びコーティングされたセパレータ膜を介して送信された後に受信されるX線に応答するX線信号を提供するためのX線検出器を有するX線センサと、IRセンサと、を含む。IRセンサは、少なくとも2つのスペクトル成分、セパレータ膜についての第1のピーク、及びベーマイトについての少なくとも第2のピークを含む、コーティングされたセパレータ膜からのIR信号を提供する。別のIRスペクトル成分が、基準チャネルの役割を果たすことができる(が、必ずしもその必要はない)。
【0008】
コンピューティングデバイスは、X線信号及びIR信号を受信するように結合され、プロセッサ及びメモリを含む。プロセッサは、アルミニウム化合物コーティング中にベーマイトが存在するかどうかを示すために第2のピークが存在するかどうかを判定するためのものである。プロセッサはまた、IR信号及びX線信号に適用される多変量回帰アルゴリズムなどのアルゴリズムを使用して、ベーマイトの濃度、及びアルミナの濃度を計算するためのものである。任意選択的に、アルミニウム化合物コーティングの重量、アルミニウム化合物コーティングの密度、及びアルミニウム化合物コーティングの厚さのうちの少なくとも1つも計算され得る。
【0009】
一実施形態では、方法は、コーティングされたセパレータ膜を介してX線送信機から送信されるX線信号を受信することを含む。本方法はまた、コーティングされたセパレータ膜から赤外線(IR)信号を取得することを含む。IR信号は、セパレータ膜からの第1のピークを含むピークを含む2つ以上のスペクトル成分を含む。本方法はまた、プロセッサによって、IRピーク中に第2のピークが存在するかどうかを判定することを含む。プロセッサは、少なくとも1つの汚染物質又は添加物が、コーティングされたセパレータ膜内に存在するコーティング中に存在するかどうかを判定する。本方法はまた、プロセッサによって、少なくとも1つの汚染物質又は添加物の濃度又は面積重量、及びコーティングの重量、密度、又は厚さを計算することを含む。
【0010】
一実施形態では、方法は、セラミックコーティングを含むコーティングされたセパレータ膜を介して送信される1つ以上のX線信号を受信することを含む。本方法はまた、プロセッサによって、コーティングされたセパレータ膜についての第1のピークと、汚染物質又は添加物についての第2のピークと、を有する赤外線(IR)信号を、コーティングされたセパレータ膜から取得することを含む。この方法はまた、プロセッサによって、第2のピークが存在するかどうかをIR信号から判定することを含む。プロセッサは、コーティングされたセパレータ膜中のセラミックコーティング中に存在する汚染物質又は添加物のタイプを判定する。この方法はまた、プロセッサによって、第2のピークから汚染物質又は添加物の濃度、及び1つ以上のX線信号からセラミックコーティングの濃度を計算することを含む。
【0011】
一実施形態では、システムは、コーティングされたセパレータ膜を介して送信されるX線信号を受信するX線センサを含む。システムはまた、コーティングされたセパレータ膜から赤外線(IR)信号を取得する上部スキャナヘッドと下部スキャナヘッドを含む。IR信号は、セパレータ膜のピークを含むピークを含む2つ以上のスペクトル成分を含む。システムはまた、ピーク中に第2のピークが存在するかどうかを判定し、コーティングされたセパレータ膜内に存在するコーティング中の汚染物質又は添加物の存在を判定するプロセッサを含む。システムはまた、汚染物質又は添加物の計算された濃度又は面積重量、並びにコーティングの重量、密度、又は厚さを記憶するメモリを含む。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】例示的な態様による、少なくとも1つの表面上にアルミニウム化合物コーティングを有するセパレータ膜を含むコーティングされたセパレータ膜に関して、ベーマイト濃度、及びアルミナ濃度、及び任意選択的に、アルミニウム化合物コーティングの重量及び密度、並びにアルミニウム化合物コーティングの厚さを計算するように構成されたX線センサ及びIRセンサを含む例示的な測定装置の図である。
【0013】
図2】純アルミナコーティングされたポリマーセパレータ膜と、アルミナコーティングがいくらかのベーマイト汚染物質を含むアルミナコーティングされたポリマーセパレータ膜との例示的なIRスペクトルを示す。ベーマイトの固有のIRシグネチャは、本図では、3.05マイクロメートル及び3.25マイクロメートルでの吸収ピークであること分かる。
【0014】
図3】例示的な態様による、少なくとも1つの表面上にアルミニウム化合物コーティングを有するセパレータ膜を含むコーティングされたセパレータ膜に関して、ベーマイト濃度、及びアルミナ濃度、及び任意選択的に、アルミニウム化合物コーティングの重量及び密度、並びにアルミニウム化合物コーティングの厚さを判定する方法の工程を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
添付の図面を参照して、開示される態様を説明するが、類似又は同等の要素を示すために、図面全体にわたって同じ参照番号を使用する。図面は、縮尺どおりに描かれておらず、それらは、特定の開示される態様を単に例証するために提供される。いくつかの開示される態様は、例証のための例示的な用途に言及しながら以下に記載される。開示される態様の完全な理解を提供するために、多数の具体的な詳細、関係、及び方法が記載されることを理解するべきである。
【0016】
バッテリのカスタマは主に、セパレータ膜上のコーティングの厚さを正確に知ることに関心がある。開示された態様を使用すると、コーティング組成物がコーティング密度を判定するために、コーティング組成物を正確に知らない限り、コーティング厚さの測定/計算は十分に正確ではないことが認識されているので、一般的には、まずコーティング密度を判定した後で、コーティング厚さを計算することができ、LiBの場合、コーティング組成物は純アルミナから純ベーマイトまでに及ぶ可能性がある。上記のように、ベーマイトは、セパレータ膜に対して頻繁に使用されるコーティング材料であるアルミナの生成における前駆体材料として使用される。カスタマデータは、全てのバッチではないが、一部のアルミナコーティングバッチがベーマイトで汚染されていることを証明している。本発明者らは、図2において吸収ピーク202a及び202bとして示されるような第1の及び少なくとも第2のピーク/トラフを含むベーマイト固有のスペクトル成分(IR-スペクトル)を特定した。なお、IRフィルタは通常、トラフではなくピークを中心とするが、これは多くの他の要因に依存し得るため、絶対的な規則はないことに留意されたい。
【0017】
コーティングされたセパレータ膜は、反射モード又は透過モードのいずれかで検査することができる。しかしながら、透過モードでは、セパレータ膜の厚さ(例えば、PPを含む)も測定するため、透過モードは反射モードよりも有利であり得る。ラマンスペクトルは、IRスペクトルの代替を表し、ラマン分光法は一般に使用され得るが、典型的には高速生産コーティング機でのリアルタイム測定には適していない。ベーマイトピークは、ベーマイトがアルミナコーティング中に存在するかどうかだけでなく、ベーマイトピークの振幅に基づく濃度も示す。
【0018】
図1は、少なくとも1つの表面上にアルミニウム化合物コーティングを有するセパレータ膜を含むコーティングされたセパレータ膜のコーティングパラメータ、例えば、ベーマイト、PVDF、又はベーマイトとPVDFの組み合わせなどの添加物又は汚染物質の濃度、アルミナの濃度、及び任意選択的に、セラミックコーティングの重量及び密度、並びにセラミックコーティングの厚さを計算するように構成された例示的な開示された測定装置100の図である。セラミックコーティングの厚さは、装置100のカスタマであり得るLiB製造業者にとって最も重要なパラメータであり得る。
【0019】
図1を参照すると、コーティングされたセパレータ膜180は、一般に、ポリマー材料シートの形態のセパレータ膜/シート材料180aの少なくとも1つの表面上にアルミナ、又は他の汚染物質、又は添加物、又はこれらの材料の混合物を含むコーティング材料180bを含むように示されている。汚染物質又は添加物は、ベーマイト、PVDF、又は結合剤、又はベーマイト、PVDF、及び結合剤の組み合わせを含むことができる。シート材料180aは、ポリマー又はポリマー層(例えば、ポリエチレン(PE)又はPP)を含むことができる。コーティング材料180bは、一般に、アルミナ又は他の汚染物質/添加物のみで構成された層ではなく、上記のように一般に結合剤材料も含むことができる。
【0020】
図1では、スキャナヘッド160は、上部スキャナヘッド160a及び下部スキャナヘッド160bを備え、集合的にX線センサ110とIRセンサ120の2つのセンサを内部に有する。図示されるように、Tx110a及びTx120aとして示されるトランスミッタは、上部スキャナヘッド160a内にあり、Rx110b及びRx120bとして示される受信機は、下部スキャナヘッド160b内にある。スキャンヘッド160a、160bの内部では、X線センサ及びIRセンサ110、120は、機械方向(MD)に平行に又は横断方向(CD)に配向され得る線に沿って取り付けられる。MD配向は、X線センサ110とIRセンサ120の両方が、コーティングされたセパレータ膜180の同じセクション(領域)を測定するよう確保するのに役立つ。
【0021】
更に図1を参照すると、スキャナヘッド160a、160bは、スキャンヘッド160a、160b間を移動しているコーティングされたセパレータ膜180にわたって走査することができる。スキャナヘッド160は、コーティングされたセパレータ膜180の幅の一部又は全部を走査することができる。コーティング材料180bがセパレータ膜/シート材料180aに塗布された後、スキャナヘッド160を使用して、コーティングされたセパレータ膜180上でそれぞれのX線センサ110及びIRセンサ120を走査する。
【0022】
図1では、X線センサ110は、Tx110aとして示されるX線源を含み、Txは一般的に、複数のエネルギーでX線を含むX線スペクトルを放出するために、Txに連結されたHVPS112として示される、高電圧電源を有するX線管を含む。更に、コーティングされたセパレータ膜180を透過した後に受信されるX線に応答する測定X線信号値を提供するために、Rx110bとして示されるX線検出器も示されている。X線スペクトルは、一般的には、特定の高電圧条件で特定のX線管の物理モデルから計算される。
【0023】
図1では、高電圧(例えば、4kV~10kV)で構成されたX線センサ110は、セパレータ膜/シート材料180aが一般的にプラスチック膜を含むLiBの場合、高い原子番号に起因して、セパレータ膜/シート材料180aの重量よりもコーティング材料180bの重量に対して約5~10倍感度が高い測定X線信号値を提供する。IRセンサ120は、主にセパレータ膜/シート材料180a(例えば、PEを含む)の重量に対して感度が高く、よって概してコーティング材料180bの重量には反応しない重量測定を提供することができる。
【0024】
図1では、コンピューティングデバイス150は、X線センサ110から測定X線信号値とIRセンサ120からのセンサ信号とを受信するように結合される。コンピューティングデバイス150は、関連するメモリ152を有するプロセッサ151を含み、プロセッサ151は開示された計算を実行するように構成される。
【0025】
図1に関して、Rx110b、120bからの測定信号は、電子フィルタ、アナログデジタル変換器(ADC)、及び増幅器を含む電子機器(図示せず)によって処理される。ADCによる信号処理後、結果として生じるデジタル信号は、次いで、コンピューティングデバイス150に搬送される。
【0026】
更に図1を参照すると、上記のようにX線センサ110及びIRセンサ120を備える装置100では、セパレータ膜上のコーティングの厚さを測定することができる。更に、コーティングの成分の濃度も測定することができる。従来のX線のみのシステム(又は装置)は総コーティング重量を測定することができるが、任意の汚染物質/添加物が任意の有意な量でセラミックコーティング中に存在する場合にコーティングの密度が分からないために、不正確な測定結果として認識される。開示される態様は、セラミック化合物コーティング中の汚染物質/添加物の濃度又は面積重量及び/又はアルミナ(0%~100%)を含む追加情報を提供することができる。
【0027】
図1では、1つ以上のX線信号が、コーティングされたセパレータ膜180を介して送信機110a/120aから送信される。赤外線(IR)信号は、コーティングされたセパレータ膜180から取得される。更に、IR信号は、コーティングされたセパレータ膜180からの第1のピークを含む2つ以上のスペクトル成分を含む。プロセッサ151は、IRピークの中に第2のピークが存在するかどうかを判定する。プロセッサ151はまた、少なくとも1つの汚染物質又は添加物がコーティングされたセパレータ膜180内のコーティング180b中に存在するかどうかも判定する。プロセッサ151は、少なくとも1つの汚染物質又は添加物の濃度又は面積重量、並びにコーティング180bの重量、密度、又は厚さも計算する。汚染物質又は添加物は、ベーマイト、PVDF、又は結合剤、又はベーマイトとPVDF又は結合剤との組み合わせであり得る。
【0028】
図2は、ベーマイトピークが示されない、純アルミナコーティングされたポリマーセパレータ膜の場合の2μm~4μmの例示的なIRスペクトル201と、いくらかのベーマイト含有量を含むアルミナコーティングされたポリマーセパレータの場合のIRスペクトル202とを示す。図2のIRスペクトル201及び202は、実験用フーリエ変換赤外分光計(FTIR)装置から取得した。ベーマイトについての固有のIRシグネチャは、図2では、202aとして示される3.05μmでの吸収ピークと、202bとして示される3.25μmでの吸収ピークと、を有するIRスペクトル202であることが分かる。加えて、主にPE/PPセパレータ膜の重量によって影響される、PP又はPEに関して206aとして示される3.45μmでのセパレータピークと、206bとして示される3.52μmでのセパレータピークと、を有するIRスペクトル202についても示されている。なお、IRスペクトル201又は202全体とは対照的に、オンラインセンサを用いて、目的のスペクトル領域のみを測定することがより一般的である。
【0029】
図2に関しては、PE重量を測定するために、少なくとも1つの未影響領域の基準測定値を取得することで、相対測定のためにベースライン値を得ることができる。PE/PPの場合、206aは感知されない場所まで大量に吸収されるため、選択される吸収ピークはおそらく206bであろう。図2では、目的のスペクトル領域は、一般的に、1つ又は2つの基準領域であり、セパレータ膜吸収領域206a、206b、アルミナコーティングの場合はベーマイト吸収領域202a、202bである。アルミナは、図2に示すIRスペクトル領域内に吸収帯を有していない。X線センサは、主にアルミニウム原子を感知し、IRセンサは、ベーマイト、PVDF、又は結合剤、又はベーマイト、PVDF、及び結合剤の組み合わせを感知する。これは、コーティング厚さ及び任意の汚染/添加物含有物を得るのに十分な情報である。これらのIRスペクトル成分(複数可)は、図1の装置100の一部として示されているX線センサ110から取得されたX線情報と共に使用することができる。
【0030】
図2を参照すると、X線センサ110及びIRセンサ120の検出器110b、120bからのそれぞれの入力を測定することによって、判定され得る3つの出力は、シート材料180aの重量、密度、若しくは厚さ、及び/又はコーティング材料の重量、密度、若しくは厚さであり得、このコーティング材料は主にアルミナ、又はベーマイト、PVDF、結合剤、若しくはベーマイト、PVDF、及び結合剤の組み合わせなどの汚染物質若しくは添加物を一般的に含む。したがって、コーティングは、アルミナと、ベーマイト、PVDF、及び/又は他の結合剤を含む汚染物質/添加物と、を含むことができる。複合シート180aの総重量はまた、セパレータ重量と、任意の汚染物質/添加物を含むコーティング重量との合計として計算することができる。測定値は、既知のセパレータ材料重量、コーティング重量、及び組成物(濃度)パラメータを有する1セットの複合コーティングセパレータ上で、多予測子(X線及びIR信号)部分的最小二乗回帰アルゴリズム(又は主成分分析(PCA)又はニューラルネットワークなどの類似の統計方法)を実行することによって較正することができる。
【0031】
更に図2を参照すると、(図1に示される)プロセッサは、コーティングされたセパレータ膜の重量、コーティングの重量、及び汚染物質/添加物(ベーマイト、PVDF、結合剤、又は組み合わせ)の濃度に関して解明することができる。手順は、一般的に、上述の図1に示されるコンピューティングデバイス150などのコンピューティングデバイスによって実行されるアルゴリズムによって実行される。他の実施形態では、埋め込まれたプロセッサはまた、ベーマイト、PVDF、結合剤、又は3つの組み合わせを含む汚染物質又は添加物の濃度又は面積重量を判定することができる。
【0032】
図2に関して、図1に示される装置100などの開示されたシステムのX線センサ110及びIRセンサ120の組み合わせは、開示されたアルゴリズムと共に使用されて、正確なコーティング重量、並びにベーマイト、PVDF、結合剤、又は3つの組み合わせなどの少なくとも1つの汚染物質/添加物の濃度及び/又は面積重量を取得する。加えて、そのようなシステムはまた、アルミナの濃度、及びセラミックコーティングの重量、セラミックコーティングの密度、及び/又はセラミックコーティングの厚さのうちの少なくとも1つを判定するように構成される。上述したように、他の出力は、これらの出力から導き出すことができる。上述したように図2においてスペクトル202内で202a及び202bとして示される2つの識別波長(3.05μm及び3.25μm)でのIR信号は、ベーマイトの存在によってのみ、ある程度の影響を受ける。
【0033】
図2では、上述したように図2に示される3.45μm及び3.52μmでのIR信号206a及び206bは主に、PE/PPセパレータを含み得るセパレータ膜の重量によって影響を受ける。多重線形回帰アルゴリズム、主成分分析(PCA)、又はニューラルネットワークの使用などのマルチパラメータ較正を利用して、汚染物質/添加物の正確な濃度及び面積重量、セラミックコーティングの重量、又は任意選択的に、セラミックコーティングの密度若しくは厚さのうちの少なくとも一方を得ることができる。
【0034】
図2を参照すると、実施形態では、3つ又は4つのIR波長が使用される。特定のベーマイト及びセパレータ波長に加えて、基準波長/チャネルもまた、当該技術分野で知られるように用いられ得る。基準波長は、典型的には、目的の成分(すなわち、セパレータ膜及びベーマイト)による吸収が低いIRスペクトルの一部に位置決めされる。基準波長は、既知の比測定技術で使用され、測定波長でのIR信号と基準波長でのIR信号との振幅(又は強度)の比が、コンピューティングデバイス又はプロセッサへの主入力として使用される。一実施形態では、測定される波長は、PE又はPPセパレータ又はベーマイトの固有の吸収ピークでの波長であろう。これらの測定比において同じ又は異なる基準波長を使用することができる。一実施形態では、約2.8μm及び3.6μmなどの、基準測定値として使用することができる2つの波長を特定することができる。
【0035】
図2に関して開示された態様は、少なくとも1つのポリマーを一般的に含むコーティングされたセパレータ膜に一般的に適用することができる。他のセパレータタイプ、例えば反射セパレータ材料の場合、IR測定は、反射モードで実行することができる。開示された態様は、一般的に、セパレータ膜材料上のベーマイトを含む任意のコーティング材料のそれぞれの重量を一般に判定するために適用することができ、セパレータ膜180aは、異なるポリマーの複数層、例えば、PE/PP/PE、PP/PE/PP、PE/PP/PE/PP/PEを含むことができる。
【0036】
図3は、開示された方法300における工程を示すフローチャートである。更に、本方法又はプロセス300は、少なくとも1つの汚染物質/添加物が存在するかどうかをどのように判定することができるかを示す。上述したように、汚染物質/添加物は、ベーマイト、PVDF、結合剤、又はベーマイト、PVDF、若しくは結合剤の組み合わせであり得る。
【0037】
図3では、工程310では、X線信号は、コーティングされたセパレータ膜を透過したX線から受信される。図1に示される装置などのデバイスは、X線信号がコーティングされたセパレータ膜を介して送信されるX線送信機を含むことができる。
【0038】
図3を参照すると、工程320で、IR信号は、コーティングされたセパレータ膜から取得される。送信されたX線信号により、2つ以上のスペクトル成分を含むIR信号が取得される。更に、コーティングされたセパレータ膜からの第1のピークを含む複数のピークが含まれる。
【0039】
図3では、工程330で、図1に示される装置内に構成されるプロセッサが、IRピーク中に第2のピークが存在するかどうかを判定する。加えて、プロセッサは、少なくとも1つの汚染物質/添加物が、コーティングされたセパレータ膜内に存在するセラミックコーティング中に存在するかどうかを判定する。汚染物質/添加物は、ベーマイト、PVDF、又は結合剤を含むことができる。あるいは、汚染物質/添加物は、ベーマイト、PVDF、及び結合剤の組み合わせを含むことができる。
【0040】
図3に関して、工程340で、プロセッサは、ベーマイト、PVDF、又は結合剤、又はベーマイト、PVDF、及び結合剤の組み合わせを含む少なくとも1つの汚染物質又は添加物の濃度又は面積重量を計算する。加えて、プロセッサは、セラミックコーティングの重量、密度、又は厚さを計算する。
【0041】
全体として、得られたIR信号から2つ以上のピークを識別することができる。プロセッサは、少なくとも1つの汚染物質又は添加物が、コーティングされたセパレータ膜中のセラミックコーティング中に存在するかどうかを、IRピーク中の第2のピークから判定することができる。プロセッサは、汚染物質/添加物がベーマイト、PVDF、結合剤材料、又はベーマイト、PVDF、及び結合剤の組み合わせであるかどうかを判定することができる。それにより、プロセッサは、ベーマイト、PVDF、又は結合剤の濃度又は面積重量を計算することができる。更に、プロセッサは、セラミックコーティングの重量、密度、又は厚さを計算することができる。
【0042】
様々な開示される態様を上で説明してきたが、それらは、単なる一例として提示されており、限定するものではないことを理解するべきである。本開示に開示される主題に対する多くの変更は、本開示の趣旨又は範囲から逸脱せずに、本開示に従ってなされ得る。加えて、特定の特徴はいくつかの実施例のうちの1つのみに関して開示されている場合があるが、かかる特徴は、任意の所定の又は特定の用途にとって望ましく、有利であり得るため、他の実施例のうちの1つ以上の他の特徴と組み合わされてもよい。
図1
図2
図3
【外国語明細書】