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特開2022-132247発光素子搭載用基板、及び、それを用いた発光モジュール
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022132247
(43)【公開日】2022-09-07
(54)【発明の名称】発光素子搭載用基板、及び、それを用いた発光モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/60 20100101AFI20220831BHJP
【FI】
H01L33/60
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【公開請求】
(21)【出願番号】P 2022086372
(22)【出願日】2022-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】000131430
【氏名又は名称】シチズン電子株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100180806
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100160716
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 力
(72)【発明者】
【氏名】関口 金孝
(72)【発明者】
【氏名】今井 貞人
(57)【要約】
【課題】長期間使用した場合であっても反射率の低下を抑制する、反射層にAgを利用した発光素子搭載用基板を提供すること、及び、そのような基板を利用した発光モジュールを提供する。
【解決手段】金属基材(11)と、金属基材上に形成され且つAgを含んで構成される反射層(14)と、反射層上に形成された第1低屈折率層(16)と、第1低屈折率層上に形成され且つ第1低屈折率層より屈折率の高い第1高屈折率層(17)と、第1高屈折率層上に形成され且つ第1高屈折率層より屈折率の小さい第2低屈折率層(18)と、第2低屈折率層上に形成され且つ第2低屈折率層より屈折率の高い第2高屈折率層(19)と、を有する発光素子搭載用基板(10)、及び、発光モジュール(1)。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属基材と、
前記金属基材上に形成され、且つ、Agを含んで構成される反射層と、
前記反射層上に形成された第1低屈折率層と、
前記第1低屈折率層上に形成され、且つ、前記第1低屈折率層より屈折率の高い第1高屈折率層と、
前記第1高屈折率層上に形成され、且つ、前記第1高屈折率層より屈折率の小さい第2低屈折率層と、
前記第2低屈折率層上に形成され、且つ、前記第2低屈折率層より屈折率の高い第2高屈折率層と、
を有することを特徴とする発光素子搭載用基板。
【請求項2】
前記第1高屈折率層のバンドギャップは、前記第2高屈折率層のバンドギャップより大きい、請求項1に記載の発光素子搭載用基板。
【請求項3】
前記第1高屈折率層の膜厚は、前記第2高屈折率層の膜厚より薄い、請求項1又は2に記載の発光素子搭載用基板。
【請求項4】
前記第1高屈折率層は酸化ハフニウムを含んで構成され、前記第2高屈折率層は酸化チタンを含んで構成される、請求項1~3の何れか一項に記載の発光素子搭載用基板。
【請求項5】
前記第1低屈折率層の膜厚は、前記第2低屈折率層の膜厚より厚い、請求項1~4の何れか一項に記載の発光素子搭載用基板。
【請求項6】
前記第1低屈折率層は、SiOx、Al23、MgF2、AlF3、CeF3、YF3、BaF2、LaF3、SiAlOx、TiAlOx、及び、ホウケイ酸ガラスの内の1つを含んで構成される、請求項1~5の何れか一項に記載の発光素子搭載用基板。
【請求項7】
請求項1~6の何れか一項に記載の発光素子搭載用基板と、
前記発光素子搭載用基板上に直接実装された発光素子と、
前記発光素子の周囲に配置された保持材料と、
前記発光素子を覆い、且つ、前記保持材料の内側に保持されている封止材と、
を有することを特徴とする発光モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子搭載用基板、及び、それを用いた発光モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
発光素子であるLED素子は、長寿命で優れた駆動特性を有し、さらに小型で発光効率が良く鮮やかな発光色を有することから、近年、照明などに広く利用されている。また、LED素子は、基板上に複数個が直接実装された発光モジュールとして利用される場合がある。さらに、発光モジュールでは、LED素子から出射された光を効率良く利用するために、反射特性の優れた金属基板を利用するのが一般的である。
【0003】
アルミニウム基板の上面に、Agから構成される反射層を設け、反射層の上面に接着層を設け、接着層の上にAg原子の外部への拡散を防止するための拡散防止層を設け、拡散防止層の上面に、低屈折層、酸化チタンから構成される高屈折層、及び、保護層をこの順番で設けた発光素子を搭載するための基板が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2017-533842号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
発光モジュールが所定期間利用されると、反射層のAg原子が発光素子からの熱と光により、高屈折層にまで拡散し、高屈折層の透過率が低下することで、金属基板の反射率が下がってしまうという現象が生じる場合があった。
【0006】
本発明は、長期間使用した場合であっても反射率の低下を抑制する、反射層にAgを利用した発光素子搭載用基板を提供すること、及び、そのような基板を利用した発光モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発光素子搭載用基板は、金属基材と、金属基材上に形成され且つAgを含んで構成される反射層と、反射層上に形成された第1低屈折率層と、第1低屈折率層上に形成され且つ第1低屈折率層より屈折率の高い第1高屈折率層と、第1高屈折率層上に形成され且つ第1高屈折率層より屈折率の小さい第2低屈折率層と、第2低屈折率層上に形成され且つ第2低屈折率層より屈折率の高い第2高屈折率層とを有する。
【0008】
発光素子搭載用基板では、第1高屈折率層のバンドギャップは、第2高屈折率層のバンドギャップより大きいことが好ましい。
【0009】
発光素子搭載用基板では、第1高屈折率層の膜厚は、第2高屈折率層の膜厚より薄いことが好ましい。
【0010】
発光素子搭載用基板では、第1高屈折率層は酸化ハフニウムを含んで構成され、第2高屈折率層は酸化チタンを含んで構成されることが好ましい。
【0011】
発光素子搭載用基板では、第1低屈折率層の膜厚は、第2低屈折率層の膜厚より厚いことが好ましい。
【0012】
発光素子搭載用基板では、第1低屈折率層は、SiOx、Al23、MgF2、AlF3、CeF3、YF3、BaF2、LaF3、SiAlOx、TiAlOx、及び、ホウケイ酸ガラスの内の1つを含んで構成されることが好ましい。
【0013】
発光モジュールは、上記の発光素子搭載用基板と、発光素子搭載用基板上に直接実装された発光素子と、発光素子の周囲に配置された保持材料と、発光素子を覆い且つ保持材料の内側に保持されている封止材と、を有する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、長期間使用した場合であっても反射率の低下を抑制する、反射層にAgを利用した発光素子搭載用基板を提供すること、及び、そのような基板を利用した発光モジュールを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】発光モジュール1の平面図および断面図である。
図2】発光モジュール1の平面図である。
図3】発光モジュール1の発光スペクトルの一例を示す図である。
図4】実装基板10の層構成を示した図である。
図5】実装基板10において酸化ハフニウムから構成される第1高屈折率層17の厚さを変化させたときの反射率の変化を示すシミュレーション結果を示す図である。
図6】長期耐久試験を実施した後の実施例と比較例による反射率の測定結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しつつ、発光素子搭載用基板、及び、それを用いた発光モジュールについて説明する。ただし、本発明は図面または以下に記載される実施形態には限定されないことを理解されたい。
【0017】
図1(a)は発光モジュール1の上方視した平面図、図1(b)は図1(a)においてAA´で示した位置における断面図である。
【0018】
発光モジュール1は、主要な構成要素として、実装基板10、回路基板20、複数のLED素子30、ダム材40および封止材50を有する。発光モジュール1は、例えば、投光器、高天井照明、スタジアムの照明・イルミネーションなどの光源装置のLED光源として使用され、白色光を出射する。ただし、発光モジュール1の発光色は、白色以外であっても良い。
【0019】
なお、図1の断面図では、断面部分における要素のみを示し、断面部分よりも奥にある要素は、図示を分かり易くするために表示を省略している。また、発光モジュール1の最上層には蛍光体粒子を含有する不透明な封止材50が存在するが、便宜上下層の部分は観察可能であるものとして、図1の平面図では下層の部分を実線で示している。また、ダム材40も不透明であるが、図1では透明であるものとして図示している。なお、図2は、不透明なダム材40及び封止材50をそのまま表示するようにした、発光モジュール1の平面図である。
【0020】
図1に示す様に、実装基板10は、その上面に複数のLED素子30が実装される平坦なアルミニウム製の基板であり、一例として正方形の形状を有する。実装基板10の詳細については後述する。
【0021】
実装基板10の上面には、円形の開口部28を有する回路基板20が接着剤により付着している。回路基板20は、ガラスエポキシ素材で形成された絶縁性の基板である。回路基板20の上面には、配線パターンが形成されている。配線パターンは、円弧形状の第1電極21、第1電極21と電気的に接続されている第1端子電極22、円弧形状の第2電極23、及び、第2電極23と電気的に接続されている第2端子電極24を含んでいる。配線パターンは、例えば、金メッキ層である。
【0022】
第1端子電極22及び第2端子電極24は、実装基板10の対角線上で向かい合う2つの頂点付近に形成されている。第1端子電極22はアノード(正)電極であり、第2端子電極24はカソード(負)電極であり、これらに外部電源から電圧が印加されることによって、LED素子30に通電されて、発光モジュール1は発光する。なお、第1端子電極22及び第2端子電極24付近の参照符号25及び26は、第1端子電極22及び第2端子電極24の極性を示すパターンであり、配線パターンではないが、配線パターンと同じ金メッキ層で形成されている。
【0023】
回路基板20の上面は、第1端子電極22、第2端子電極24、及び、極性パターン25、26の表面以外は、第1端子電極22及び第2端子電極24間の短絡防止等の為に、不図示のソルダーマスクによって被膜されている。なお、第1端子電極22及び第2端子電極24が設けられている対角線上の2つの頂点とは異なる対角線上の2つの角部付近に、発光モジュール1を固定するための貫通穴を設けても良い。
【0024】
実装基板10上に実装された複数のLED素子30は金線のボンディングワイヤ(以下、単にワイヤという)32で相互に接続され、更にワイヤで第1電極21及び第2電極23とも接続されている。図1の例では、LED素子30は、5個ずつ5列並列に、第1電極21及び第2電極23間に接続されているが、LED素子の直列の個数、並列の列数は任意であって、他の数であっても良い。
【0025】
LED素子30は、発光素子の一例であり、例えば発光波長帯域が450~460nm程度の青色光を発光する青色LEDである。前述した様に、発光モジュール1では、複数(5×5=25個)のLED素子30が実装基板10上に実装されており、これらは同じ波長の青色光を発光する。ただし、LED素子30は、青色LEDに限らず、例えば紫色LEDまたは近紫外LEDであっても良く、その発光波長帯域は、紫外域を含む200~460nm程度の範囲内であっても良い。
【0026】
LED素子30は上面に一対の素子電極を有する。図1に示すように、隣接するLED素子30の素子電極は、ワイヤ32により直列に接続され、さらに、両端のLED素子30の素子電極は、第1電極21又は第2電極23にワイヤ32により接続されている。LED素子30の下面は、例えば透明な絶縁性の接着剤(ダイボンド)などにより、回路基板20の開口部28の内側で、実装基板10の上面に直接固定され実装される。LED素子30は、後述するように、高機能な実装基板10上に直接実装されているため、発光モジュールは、高出力の発光を行うことが可能である。
【0027】
参照符号31で示す部品は、第1電極21と第2電極23の間に過電圧が印加されたときにLED素子30を保護するツェナーダイオード素子である。
【0028】
ダム材40は、実装基板10上に充填された封止材50の流出を防ぐ円環状の枠体であり、回路基板20上の第1電極21、第2電極23、及び、ツェナーダイオード素子31と重なる位置に、それらを覆い複数のLED素子30を取り囲むように形成されている。ダム材40は、シリコーン樹脂に酸化チタン(又はシリカ)を混合した反射性の白色樹脂で構成されており、複数のLED素子30から側方に出射された光を、発光モジュール1の上方(複数のLED素子30から見て実装基板10とは反対側)に反射させる。発光モジュール1では、複数のLED素子30からの出射光が実装基板10およびダム材40によって上方に反射するので、出射効率が高くなる。なお、ダム材40は、図1に示す様に、平面視で、円形に配置されているが、楕円形に配置されていても良い。また、ダム材40の内側を、発光モジュール1の発光エリアと称し、回路基板20の開口部28の内側をLED素子の実装エリアと称する場合がある。
【0029】
封止材50は、回路基板20上に配置されたダム材40で囲まれる部分に注入(充填)されて略円板状に硬化され、複数のLED素子30を一体に被覆し保護(封止)する。封止材50としてシリコーン樹脂が用いられるが、無色かつ透明で、250℃程度の耐熱性がある他の樹脂を利用することができる。
【0030】
封止材50には、各LED素子30からの出射光の波長を変換する蛍光体が混入されている。封止材50は、こうした蛍光体として、YAG(yttrium aluminum garnet)などの黄色蛍光体を含有する。発光モジュール1は、青色LEDであるLED素子30からの青色光と、それによって黄色蛍光体を励起させて得られる黄色光とを混合させることで得られる白色光を出射する。
【0031】
前述した黄色蛍光体は一例であって、封止材50は、他の蛍光体を含有することもできる。例えば、封止材50は、緑色蛍光体と赤色蛍光体の2種類を含有してもよい。この場合、発光モジュール1は、青色LEDであるLED素子30からの青色光と、それによって緑色蛍光体および赤色蛍光体を励起させて得られる緑色光および赤色光とを混合させることで得られる白色光を出射する。緑色蛍光体としては、LED素子30が出射した青色光を吸収して緑色光に波長変換する、(BaSr)2SiO4:Eu2+などの粒子状の蛍光体材料を用いることができる。赤色蛍光体としては、LED素子30が出射した青色光を吸収して赤色光に波長変換する、CaAlSiN3:Eu2+などの粒子状の蛍光体材料を用いることができる。
【0032】
前述した緑色蛍光体及び赤色蛍光体は一例であって、封止材50は、前述した黄色蛍光体に少量の緑色蛍光体や少量の赤色蛍光体を添加しても良い。この場合、発光モジュール1は、青色LEDであるLED素子30からの青色光と、それによって黄色蛍光体を励起させて得られる黄色光とを混合させることで得られる白色光を基本とし、同じく励起された緑色光や赤色光も混合されることで、前述の組み合わせほどではないが、演色性を高めた白色光を出射することができる。
【0033】
図3は、発光モジュール1の発光スペクトルの一例を示す図である。
【0034】
図3の縦軸は相対放射強度を示し、横軸は波長を示している。図3は、発光モジュール1が、青色LEDであるLED素子30とYAG系の黄色蛍光体とにより白色光を出力する場合の発光スペクトルの一例を示している。なお、発光スペクトルは、青色LEDによる450nmの放射強度が1.0となる様に調整されている。図中で、約580nmの部分のピークは、YAG系の黄色蛍光体による光出射である。
【0035】
図4は、実装基板10の層構成を示す図である。
【0036】
金属基材11は、コア11a、コア11aの表面及び裏面上に設けられたロールクラッド11b、およびロールクラッド11b上に設けられた陽極酸化層11cを有している。コア11aは、アルミニウム、アルミニウム合金等から構成される。ロールクラッド11bは、高純度アルミニウム(例えば、純度99.5%以上)から構成されているが、必ずしも設けなくとも良い。陽極酸化層11cはアルミニウム表面の陽極酸化によって製造された層であって、Al23から構成されている。金属基材11は、0.3~2.0mmの層厚を有することが好ましいが、製品に応じて様々な厚さとすることが可能である。
【0037】
金属基材11において、LED素子30が実装される側の表面には、接着・拡散バリア層12が設けられている。接着・拡散バリア層12は、金属基材11に対する接着性を改善し、拡散バリアとして機能する層であって、チタン、ジルコニウム、モリブデン、プラチナ、クロム、及び、それらの酸化物の内の1つを含んで構成されるが、TiOxが好ましく、更に2~50nmの層厚を有することが好ましい。
【0038】
接着・拡散バリア層12上には拡散バリア層13が設けられている。拡散バリア層13は、後述する反射層に含まれる金属原子の拡散を防止し、反射層の接着性を高めるための層である。拡散バリア層13としては、NiV、Cu、ステンレス鋼の内の1つを含んで構成されるが、NiVであることが好ましく、更に5~50nmの層厚を有することが好ましい。
【0039】
拡散バリア層13上には、高純度(99.9%以上)の銀から構成される反射層14が設けられている。反射層14は、50nm~300nmの層厚を有することが好ましい。
【0040】
反射層14上には、接着・拡散バリア層15が設けられている。接着・拡散バリア層15は、反射層14に対する接着性を改善し、拡散バリアとして機能する層であって、チタン、ジルコニウム、モリブデン、プラチナ、クロム、及び、それらの酸化物の内の1つを含んで構成されるが、CrOxであることが好ましく、更に2~20nmの層厚を有することが好ましい。
【0041】
接着・拡散バリア層15上には、後述する第1高屈折率層17に対して低い屈折率を有する第1低屈折率層16が設けられている。第1低屈折率層16は、SiOx、Al23、MgF2、AlF3、CeF3、YF3、BaF2、LaF3、SiAlOx、TiAlOx、及び、ホウケイ酸ガラスの内の1つを含んで構成されるが、SiO2であることが好ましく、更に10~200nmの層厚を有することが好ましい。
【0042】
第1低屈折率層16上には、第1低屈折率層16に対して高い屈折率を有する第1高屈折率層17が設けられている。第1高屈折率層17は、屈折率が1.90であり且つバンドギャップが5~6eVであるHfOxから構成され、10~200nmの層厚を有することが好ましい。
【0043】
第1高屈折率層17上には、後述する第2高屈折率層19に対して低い屈折率を有する第2低屈折率層18が設けられている。第2低屈折率層18は、SiOx、Al23、MgF2、AlF3、CeF3、YF3、BaF2、LaF3、SiAlOx、TiAlOx、及び、ホウケイ酸ガラスの内の1つを含んで構成されるが、SiO2であることが好ましく、更に10~200nmの層厚を有することが好ましい。
【0044】
第2低屈折率層18上には、第2低屈折率層18に対して高い屈折率を有する第2高屈折率層19が設けられている。第2高屈折率層19は、屈折率が2.72であり且つバンドギャップが3.0eV又は3.2eVであるTiOxから構成され、10~200nmの層厚を有することが好ましい。
【0045】
第2高屈折率層19上には、図4には示していないが、所定の保護層を設けても良い。
【0046】
実装基板10では、第2高屈折層19を構成するTiO2よりもバンドギャップが大きいHfOxから構成される第1高屈折率層17が銀から構成される反射層14と第2高屈折層19との間に配置される。第1高屈折率層17を構成するHfOxは、バンドギャップが大きいため、HfOxに拡散した銀イオンが光触媒効果により銀の粒子として析出する量を抑制することができる。実装基板10では、第1高屈折率層17を構成するHfOxが析出する銀の量を抑制することで、反射層14の反射率の低下を抑制することができる。
【0047】
実装基板10において第1高屈折率層17を構成するHfOxは、第2高屈折率層19を構成するTiOxよりもバンドギャップが大きいが、第2高屈折率層19を構成するTiOxよりも屈折率が低い。実装基板10では、屈折率が高い第2高屈折率層19の膜厚を屈折率が低い第1高屈折率層17の膜厚よりも厚くすることで、透過率の低下による実装基板10の反射率の低下を抑制することができる。
【0048】
なお、実装基板10では、第1高屈折率層17はHfOxから構成されるが、実施形態に係る実装基板では、第1高屈折率層は、第2高屈折率層19を構成するTiOxよりもバンドギャップが大きければよい。例えば、第1高屈折率層は、バンドギャップが3.4eVである酸化ニオブから構成されてもよく、バンドギャップが5eVである酸化ジルコニアから構成されてもよく、バンドギャップが3.8~5.3eVである五酸化タンタルから構成されてもよい。
【0049】
図5は、図4に示した層構成の実装基板10において酸化ハフニウムから構成される第1高屈折率層17の厚さを変化させたときの反射率の変化を示すシミュレーション結果を示す図である。図5において横軸は実装基板10に入射する光の波長(nm)を示し、縦軸は反射率(%)を示す。図5において、曲線51は第1高屈折率層17の厚さが10nmであるときの反射率を示し、曲線52は第1高屈折率層17の厚さが20nmであるときの反射率を示し、曲線53は第1高屈折率層17の厚さが30nmであるときの反射率を示す。
【0050】
青色の光に対応する波長である460nmでは、第1高屈折率層17の厚さが10nm20nm及び30nmであるときの反射率はそれぞれ96.3%、96.0%及び95.3%である。青色の光に対応する波長領域では、第1高屈折率層17の厚さが厚くなるに従って反射率は低下する。
【0051】
緑色の光に対応する波長である520nmでは、第1高屈折率層17の厚さが10nm20nm及び30nmであるときの反射率は何れも97.3である。緑色の光に対応する波長領域では、第1高屈折率層17の厚さが変化しても反射率はほぼ変化しない。
【0052】
赤色の光に対応する波長である650nmでは、第1高屈折率層17の厚さが10nm20nm及び30nmであるときの反射率はそれぞれ96.9%、97.6%及び97.8%である。赤色の光に対応する波長領域では、第1高屈折率層17の厚さが厚くなるに従って反射率は上昇する。
【0053】
(実施例)
実施例1として、以下に示すような、図4に示した層構成の実装基板10を製造した。
金属基材11:アルミニウムコア
反射層14:Ag、層厚100nm
接着・拡散バリア層15:CrOx、層厚5nm
第1低屈折率層16:SiO2、層厚50nm
第1高屈折率層17:HfOx、層厚25nm
第2低屈折率層18:SiO2、層厚20nm
第2高屈折率層19:TiO2、層厚40nm
【0054】
実施例1として製造した実装基板を用い、長期耐久試験を行った後に、反射率を測定した測定結果を図6の60として示す。
【0055】
(比較例)
比較例1として、以下に示すような、図4に示した層構成の実装基板10を製造した。なお、比較例では、第2低屈折率層及び第2高屈折率層は設けていない。
金属基材11:アルミニウムコア
反射層14:Ag、層厚100nm
接着・拡散バリア層15:CrOx、層厚5nm
第1低屈折率層16:SiO2、層厚50nm
第1高屈折率層17:TiO2、層厚20nm
【0056】
比較例1として製造した実装基板を用い、長期耐久試験を行った後に、反射率を測定した測定結果を図6の61として示す。また、長期耐久試験を行う前に、実施例1及び比較例に係る実装基板の反射率の測定結果を図5の62として示す。
【0057】
図6は、実施例と比較例による反射率の測定結果を示す図である。
【0058】
図6では、縦軸に反射率(%)を横軸に波長を示している。実装基板10の性能を判断する場合、図3に示す様に、発光モジュール1の発光スペクトルは、ほぼ400nm~800nmの範囲に入るので、この間の反射率を考慮すればよい。
【0059】
図6に示す様に、第1低屈折率層16及び第1高屈折率層17と、第2低屈折率層18及び第2高屈折率層19とを有する実施例1に係る実装基板の方が、第2低屈折率層18及び第2屈折率層19を有しない比較例1に係る実装基板よりも、400nm~800nmのほぼ全ての波長において反射率が高いことが判明した。
【符号の説明】
【0060】
1 発光モジュール
10 実装基板
20 回路基板
21 第1電極
22 第1端子電極
23 第2電極
24 第2端子電極
30 LED素子
32 ボンディングワイヤ
40 ダム材
50 封止材
図1
図2
図3
図4
図5
図6