(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022132257
(43)【公開日】2022-09-08
(54)【発明の名称】エアチャック
(51)【国際特許分類】
B60C 29/00 20060101AFI20220901BHJP
【FI】
B60C29/00
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021031285
(22)【出願日】2021-02-27
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-12-17
(71)【出願人】
【識別番号】311004865
【氏名又は名称】旭産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129539
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 康志
(72)【発明者】
【氏名】新保 和章
(57)【要約】 (修正有)
【課題】安定的にバルブとの接続を保持できる強度をもち且つその外径の小径化を実現することのできるエアチャックを提供する。
【解決手段】エアチャックは、係合ピン103と、バルブを両側面から挟むように溝と係合する係合位置と、係合状態を解除する解除位置との間をスライド移動可能にするとともに、該一対の係合ピンの両端部を略円筒形状の外周面よりも外側に突出させるガイド孔が形成されたガイド筒102と、一対の係合ピンの両端を支持する座金105と、座金を一対の係合ピンに対して弾性的に付勢する圧縮バネ104と、その内周面上の係合ピンに対して中心軸方向において圧縮バネと反対側に位置する係合部を有し、係合ピンを解除位置まで移動させるスライド外筒106とを備え、係合ピンは、ガイド孔内における解除位置に位置する状態においてスライド外筒の内周面に当接しない。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤのバルブに対して着脱可能なエアチャックであって、
前記バルブへの装着時に該バルブの外周に形成された溝と係合可能な一対の長手形状の部材であって、その長手方向における少なくとも中央部の前記長手方向と直交する平面での断面が矩形状である一対の係合ピンと、
前記バルブへの前記エアチャック装着時に該バルブの先端部を挿入するバルブ受入空間を形成する略円筒形状の部材であって、前記略円筒形状の中心軸を挟んで略平行に配置される前記一対の係合ピンの内一方の中央部が前記略円筒形状の第1の方向から前記バルブ受入空間内に突き出すとともに、前記一対の係合ピンの内他方の中央部が前記略円筒形状の前記第1の方向とは反対の第2の方向から前記バルブ受入空間内に突き出し、前記バルブ受入空間に前記バルブの先端部を挿入した状態において該バルブを両側面から挟むように前記溝と係合する係合位置と、前記一対の係合ピンそれぞれが前記係合位置よりも前記中心軸から離れる方向に位置し前記バルブの先端部の前記溝と前記一対の係合ピンとの係合状態を解除する解除位置との間をスライド移動可能に前記係合ピンの前記中央部をガイドするとともに、前記係合位置と前記解除位置との間を前記一対の係合ピンがスライド移動する際に常に該一対の係合ピンの両端部を前記略円筒形状の外周面よりも外側に突出させるガイド孔が形成されたガイド筒と、
前記ガイド筒が挿通され、前記解除位置から前記係合位置へ向かうスライド方向における上流側から前記一対の係合ピンの両端を支持する座金と、
前記座金を前記一対の係合ピンに対して弾性的に付勢することで、前記一対の係合ピンを前記係合位置へ向けて押圧する圧縮バネと、
前記ガイド筒、前記座金および前記圧縮バネを外周側から包囲し、前記ガイド筒に対して前記中心軸方向にスライド移動可能な略円筒形状の部材であって、その内周面上の前記係合ピンに対して前記中心軸方向において前記圧縮バネと反対側に位置する係合部を有し、前記圧縮バネにより前記座金を付勢する方向とは反対側にユーザ操作によってスライド移動された際に前記係合部によって前記係合ピンを前記圧縮バネによる弾性力に抗して前記圧縮バネ側にスライド移動させることで前記係合ピンを前記解除位置まで移動させるスライド外筒とを備え、
前記係合ピンは、前記ガイド孔内における前記解除位置に位置する状態において前記スライド外筒の内周面に当接しないことを特徴とするエアチャック。
【請求項2】
前記ガイド孔による前記一対の係合ピンのスライド移動方向を含む平面上における前記ガイド孔における前記一対の係合ピンのスライド範囲に対応する箇所の最大幅Wfは、前記一対の係合ピンにおける前記ガイド孔によりガイドされる互いに平行な2つの面の最短距離をWとするとき、Wf=1.03W~1.10Wの関係にあることを特徴とする請求項1に記載のエアチャック。
【請求項3】
前記係合ピンは、前記ガイド孔内における前記解除位置に位置する状態において前記中心軸方向から見たとき、前記座金の外周よりも外側にはみ出ないことを特徴とする請求項1に記載のエアチャック。
【請求項4】
前記係合ピンは、前記ガイド孔内において前記解除位置に位置している状態において前記中心軸方向に見たときに前記ガイド筒の外周面から周方向外側へ向けて突き出していることを特徴とする請求項1に記載のエアチャック。
【請求項5】
前記係合ピンは、前記ガイド孔内において前記解除位置に位置している状態において、前記中心軸方向に見たときに前記係合ピンの長手方向と直交する方向に1/3Wよりも小さい距離だけ前記ガイド筒の外周面から周方向外側へ向けて突き出していることを特徴とする請求項1に記載のエアチャック。
【請求項6】
前記係合ピンは、その長手方向における両端に、前記中央部よりも外径が小さい両端部を有し、前記受け部の直径Teと前記一対の係合ピンにおける前記ガイド孔によりガイドされる互いに平行な2つの面の最短距離Wは、Te=(0.7~0.95)Wの関係にあることを特徴とする請求項1に記載のエアチャック。
【請求項7】
前記係合ピンは、その長手方向における両端に、前記中央部よりも外径が小さい両端部を有し、前記長手方向において、前記受け部の長さLeと前記係合ピンの全長Lは、Le/L=0.1~0.3を満たす関係にあることを特徴とする請求項1に記載のエアチャック。
【請求項8】
前記一対の係合ピンの前記中央部をガイドする前記ガイド孔の一対のガイド面は、前記中心軸に平行に前記バルブに対して接続される方向における上流側から下流側へ向けてその間隔が狭まるように傾斜しており、それぞれのガイド面の前記中心軸に対する傾斜角は30度であることを特徴とする請求項1に記載のエアチャック。
【請求項9】
前記スライド外筒の内径をDとし、前記係合ピンの全長をLとするとき、
0.6D≦L≦0.75D
を満たす関係にあることを特徴とする請求項1に記載のエアチャック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤバルブに対して着脱可能に接続されるとともに、タイヤバルブとの接続時に該タイヤバルブを開放するエアチャックに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、タイヤに空気の充排気を行う際もしくはタイヤ内の空気圧測定の際、タイヤバルブと弾性チューブや通気管とを着脱可能に接続し、タイヤバルブに接続された状態において該タイヤバルブを開放することで、当該弾性チューブや通気管内の通気路を介した充排気を可能とするエアチャックが知られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記タイヤバルブは、JIS規格「JIS D 4207 自動車用タイヤバルブ」によりその先端部は略円筒形状に規定されており、上記エアチャックはタイヤバルブの略円筒形状に形成された部位の外周部に形成された雄ネジの溝に噛合することで当該タイヤバルブに対して接続される。具体的には、上記規格において型番が「TV8(あるいは8V1)」であるタイヤバルブの雄ネジ外径はΦ7.9mmに設定されており、型番が「TV12(あるいは12V1)」であるタイヤバルブの雄ネジ外径はΦ12.4mmに設定されている。エアチャックのサイズは、充排気の対象となるタイヤのホイールとの干渉を避ける観点や操作性の観点等からできる限り小型であることが望ましいが、特にそのタイヤバルブへの装着方向と直交する方向におけるエアチャック外径は、構成上タイヤバルブの外径以下にすることはできない。また、高圧になるタイヤのバルブと空気流通路とを接続して連通させる性質上、エアチャックには安定的にバルブとの接続状態を保持できるよう、機械的な強度が求められる。上記背景から、エアチャックの外径の小径化とその強度の維持とはトレードオフの関係にあり、安定的にバルブとの接続を保持できる機械的強度を持ち、且つその外径の大幅な小径化を実現しているエアチャックは本願の出願時点において未だ知られていない。
【0005】
本発明は上述した問題点を解決するためになされたものであり、安定的にバルブとの接続を保持できる強度をもち且つその外径の大幅な小径化を実現することのできるエアチャックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の一態様は、タイヤのバルブに対して着脱可能なエアチャックであって、前記バルブへの装着時に該バルブの外周に形成された溝と係合可能な一対の長手形状の部材であって、その長手方向における少なくとも中央部の前記長手方向と直交する平面での断面が矩形状である一対の係合ピンと、前記バルブへの前記エアチャック装着時に該バルブの先端部を挿入するバルブ受入空間を形成する略円筒形状の部材であって、前記略円筒形状の中心軸を挟んで略平行に配置される前記一対の係合ピンの内一方の中央部が前記略円筒形状の第1の方向から前記バルブ受入空間内に突き出すとともに、前記一対の係合ピンの内他方の中央部が前記略円筒形状の前記第1の方向とは反対の第2の方向から前記バルブ受入空間内に突き出し、前記バルブ受入空間に前記バルブの先端部を挿入した状態において該バルブを両側面から挟むように前記溝と係合する係合位置と、前記一対の係合ピンそれぞれが前記係合位置よりも前記中心軸から離れる方向に位置し前記バルブの先端部の前記溝と前記一対の係合ピンとの係合状態を解除する解除位置との間をスライド移動可能に前記係合ピンの前記中央部をガイドするとともに、前記係合位置と前記解除位置との間を前記一対の係合ピンがスライド移動する際に常に該一対の係合ピンの両端部を前記略円筒形状の外周面よりも外側に突出させるガイド孔が形成されたガイド筒と、前記ガイド筒が挿通され、前記解除位置から前記係合位置へ向かうスライド方向における上流側から前記一対の係合ピンの両端を支持する座金と、前記座金を前記一対の係合ピンに対して弾性的に付勢することで、前記一対の係合ピンを前記係合位置へ向けて押圧する圧縮バネと、前記ガイド筒、前記座金および前記圧縮バネを外周側から包囲し、前記ガイド筒に対して前記中心軸方向にスライド移動可能な略円筒形状の部材であって、その内周面上の前記係合ピンに対して前記中心軸方向において前記圧縮バネと反対側に位置する係合部を有し、前記圧縮バネにより前記座金を付勢する方向とは反対側にユーザ操作によってスライド移動された際に前記係合部によって前記係合ピンを前記圧縮バネによる弾性力に抗して前記圧縮バネ側にスライド移動させることで前記係合ピンを前記解除位置まで移動させるスライド外筒とを備え、前記係合ピンは、前記ガイド孔内における前記解除位置に位置する状態において前記スライド外筒の内周面に当接しないことを特徴とするエアチャックに関する。
【発明の効果】
【0007】
以上に詳述したように、本発明によれば、安定的にバルブとの接続を保持できる強度をもち且つその外径の小径化を実現することのできるエアチャックを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施の形態に係るエアチャックの外観斜視図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係るエアチャックを構成する各部品を示す分解斜視図である。
【
図3】本発明の実施の形態に係るエアチャックをバルブへの接続方向と直交する方向から見た外観図である。
【
図4】本発明の実施の形態に係るエアチャックがバルブに接続されておらず且つユーザにより操作されていない状態(通常時)における断面図である。
【
図5】本発明の実施の形態に係るエアチャックを構成するガイド筒の構成を示す外観斜視図である。
【
図6】本発明の実施の形態に係るエアチャックを構成するガイド筒の構成を示す平面図である。
【
図7】本発明の実施の形態に係るエアチャックを構成するガイド筒の構成を示す断面図である。
【
図8】本発明の実施の形態に係るエアチャックを構成する係合ピンの構成を示す外観斜視図である。
【
図9】本発明の実施の形態に係るエアチャックを構成する係合ピンをその長手方向と直交する方向から見た外観図である。
【
図10】ガイド筒102、係合ピン103、圧縮バネ104および座金105の位置関係を示す斜視図である。
【
図11】
図11は、ガイド筒102、係合ピン103、座金105、スライド外筒106および舌金109の形状および位置の関係を示す図である。
【
図12】本発明の実施の形態に係るエアチャックがバルブに係合して接続された状態における断面図である。
【
図13】本発明の実施の形態に係るエアチャックのバルブとの接続を解除するユーザ操作を受けている状態の断面図である。
【
図14】本発明の他の実施の形態に係るエアチャックがバルブに接続されておらず且つユーザにより操作されていない状態(通常時)における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
【0010】
<全体構成>
図1は、本発明の実施の形態に係るエアチャックの外観斜視図である。
図2は、本発明の実施の形態に係るエアチャックを構成する各部品を示す分解斜視図である。
図3は、本発明の実施の形態に係るエアチャックをバルブへの接続方向と直交する方向から見た外観図である。
【0011】
本発明の実施の形態に係るエアチャックAは、タイヤに空気の充排気を行う際もしくはタイヤ内の空気圧測定の際、エアチャックAの接続口(例えば、
図1および
図3を参照)に対してタイヤバルブを挿入することでエアチャックAをタイヤバルブに対して着脱可能に接続する。エアチャックAは、タイヤバルブに接続された状態において該タイヤバルブを開放する。エアチャックAはその中心軸(例えば、
図1を参照)に沿ってスライド可能なスライド外筒106と該スライド外筒106と一体的にスライド可能な操作ツマミ112を備え、ユーザ操作によって当該操作ツマミ112をバルブから遠ざかる方向にスライドさせることによって後述する機構によってバルブとの接続を解除する。
【0012】
図4は、本発明の実施の形態に係るエアチャックAがバルブに接続されておらず且つユーザにより操作されていない状態(通常時)における断面図である。
【0013】
図1~
図4に示すように、本発明の実施の形態に係るエアチャックAは、本体部101と、ガイド筒102と、係合ピン103、圧縮バネ104、座金105、スライド外筒106、通気管107、連結部108、舌金109、ゴムリング110、ゴムリング111および操作ツマミ112とを備えている。
【0014】
<各部品の構成>
以下、本実施の形態に係るエアチャックAを構成する各部品について説明する。
【0015】
本体部101は、例えば真鍮材や鉄等の材料から形成され、
図2および
図4に示すように略筒状に形成されている。本体部101の中心を通る孔はエアチャックAにおける通気路の一部を構成する。また、本体部101は、バルブへの接続方向(例えば
図2を参照)における下流側と上流側とで溝を介して区分された外周部にそれぞれ外径の異なる雄ネジが形成されている。具体的に、本実施の形態では、接続方向における下流側部分の外周部の雄ネジの外径の方が、上流側部分の外周部の雄ネジの外径よりも小さくなるように形成されている(例えば
図2を参照)。
【0016】
図5は、ガイド筒102の外観を示す外観斜視図である。
図6は、ガイド筒102を接続方向と直交する方向に見た側面図である。
図7は、ガイド筒102を
図6と同じ方向に見た、中心軸を含む平面による断面を示す図である。
【0017】
ガイド筒102は、例えば真鍮材、鉄、ステンレス材等の材料から形成され、上述の本体部101の下流側部分の外周部に形成された雄ネジと螺合する雌ネジ部102sがその内周面に形成されている筒状部材である。ガイド筒102は、タイヤバルブへのエアチャック装着時に該タイヤバルブの先端部を挿入するバルブ受入空間を形成する。
図4に示すように、ガイド筒102は、接続方向上流側に形成された雌ネジ部102sが本体部101の下流側部分の外周部に形成された雄ネジと螺合した状態において、本体部101と一致する中心軸をもつ。なお、ガイド筒102と本体部101の接続は、必ずしもガイド筒102側に雌ネジと本体部101の雄ネジの関係とする必要はなく、例えばガイド筒102側に形成する雄ネジと本体部101に形成する雌ネジとを螺合させる構成としてもよい。また、ガイド筒102と本体部101との接続部分は、その気密性を保つため、ネジによって接続される部分の面積はできるだけ大きく設けることが望ましい。なお、本実施の形態におけるガイド筒102は、その中心軸方向において、ガイド孔102gが形成されている範囲よりも接続方向上流側の部分の範囲が、ガイド孔102gが形成されている範囲の3倍以上となるように設定されている。このようにすることで、バルブに対する接続口を操作ツマミ112の位置からより遠ざけた構成とすることができ、タイヤのバルブへの接続時における操作性の向上に大きく寄与することができる。
【0018】
また、ガイド筒102の外周面の外径は、接続方向上流側に形成された雌ネジ部102sが本体部101の下流側部分の外周部に形成された雄ネジと螺合した状態において、本体部101における上流側部分の外径よりも小さくなるように設定されている(
図4)。ゴムリング111は、本体部101の上流側部分と下流側部分との間に形成された上記溝(
図2を参照)に嵌め込まれており、ガイド筒102の雌ネジ部102sと本体部101の下流側部分の外周部に形成された雄ネジとの間でのシール性を担保するためのシール部材としての役割を有している。なお、ガイド筒102の雌ネジ部102sと本体部101の下流側部分の外周部に形成された雄ネジとの間でのシール性が十分に担保されている場合には、ゴムリング111は設けない構成としてもよい。
【0019】
また、
図5~
図7に示すように、ガイド筒102には、接続方向における下流側にガイド孔102gが形成されている。係合ピン103は、当該ガイド孔102gによりガイドされ、本実施の形態によるエアチャックAがタイヤバルブに装着されている時に該バルブの先端部分の外周に形成された雄ネジのネジ溝と係合可能な一対の長手形状の部材である。
【0020】
ガイド筒102に形成されているガイド孔102gは、係合ピン103を「係合位置」と「解除位置」との間でスライド移動可能なように係合ピン103の中央部103cをガイドする(
図7を参照)。
【0021】
ここで、「係合位置」とは、ガイド筒102の中心軸を挟んで略平行に配置される一対の係合ピン103の内一方の中央部103cが略円筒形状の「第1の方向」からバルブ受入空間内に突き出すとともに、一対の係合ピン103の内他方の中央部103cが略円筒形状の第1の方向とは反対の「第2の方向」からバルブ受入空間内に突き出し、バルブ受入空間にタイヤバルブの先端部を挿入した状態において該タイヤバルブ先端の雄ネジ部分を両側面から挟むように該雄ネジ部分のネジ溝と係合する状態にある係合ピン103の位置である(後述の
図10)。
【0022】
次に、「解除位置」とは、一対の係合ピン103それぞれが「係合位置」よりもガイド筒102の中心軸から離れる側に位置しタイヤバルブ先端の雄ネジ部分のネジ溝と一対の係合ピン103との係合状態を解除した状態になる係合ピン103の位置である。
【0023】
また、一対の係合ピン103は、ガイド孔102g内において「係合位置」と「解除位置」との間をスライド移動する際には、該一対の係合ピン103の両端部103eは、略円筒形状のガイド筒102の外周面よりも常に外側に突き出しており、且つガイド筒102の中心軸方向に見たとき、該一対の係合ピン103の両端部103eの少なくとも一部は常に座金105と重なる位置にある(後述の
図10)。
【0024】
このようにして一対の係合ピン103の中央部103cをガイドするガイド孔102gの一対のガイド面は、中心軸に平行にバルブに対して接続される方向における上流側から下流側へ向けてその間隔が狭まるように傾斜しており、それぞれのガイド面の中心軸に対する傾斜角は例えば20度~40度の範囲とすることができ、より好ましくは25度~35度の範囲とすることができ、さらに好ましくは30度とすることができる。なお、上記角度が20度~40度の範囲外になると、係合ピン103の中央部103cの角部とタイヤバルブ先端部の雄ネジのネジ溝の傾斜面との適切な位置関係および接触面積を確保できず、タイヤバルブを安定的に保持できない。
【0025】
また、ガイド孔102gによる一対の係合ピン103のスライド移動方向を含む平面上におけるガイド孔102gにおける一対の係合ピン103のスライド範囲に対応する箇所の最大幅Wf(
図6および
図7を参照)は、一対の係合ピン103におけるガイド孔102gによりガイドされる互いに平行な2つの面の最短距離をWとするとき(後述の
図9を参照)、Wf=1.03W~1.10Wの関係にある。
【0026】
エアチャックAの外径を小型化するために係合ピン103をより細いサイズにしようとする場合、係合ピン103自体の弾性変形等の影響もあり、ガイド孔102gに対して回転しやすくなり、結果として係合ピン103のガイド孔に沿ったスライド移動時に回転した係合ピン103がガイド孔102gに対して噛み込んでしまう現象が確認された。本発明の実施の形態では、係合ピン103の幅Wを、ガイド孔102gの幅Wfに対して適度な遊びを確保できる幅とすることにより、係合ピン103のガイド部のガイド面に沿ったスムーズな移動を可能とするとともに、係合ピン103がガイド部内で回転して噛み込んでしまうことを防ぐことができる。これにより、係合ピン103のスリム化を実現することができ、結果としてエアチャックAにおける接続位置の小径化(すなわち、スライド外筒106の外径の小径化)に寄与することができる。
【0027】
具体的に、本願発明者は、ガイド孔102gの幅Wfが1.03Wよりも小さくなると、ガイド孔102g内での係合ピン103のスライド移動時における摩擦抵抗やガイド孔102gとの干渉が大きくなり、係合ピン103がガイド孔102g内でスムーズにスライドし辛くなることを見出した。
【0028】
さらに、本願発明者は、ガイド孔102gの幅Wfが1.10Wよりも大きくなると、ガイド孔102gのガイド面102gfと係合ピン103の被ガイド面との間の隙間が大きくなり(つまり、遊びが大きくなり)、係合ピン103自体の弾性変形も相まって、係合ピン103のガイド孔に沿ったスライド移動時に回転した係合ピン103がガイド孔102gに対して噛み込みやすくなってしまうことを見出した。また、本願発明者は、ガイド孔102gの幅Wfが1.10Wよりも大きくなると、ガイド孔102gのガイド面102gfと係合ピン103の被ガイド面との間の隙間が大きくなり(つまり、遊びが大きくなり)、係合ピン103がその長手方向軸を中心として回転すると、タイヤバルブに係合する際の係合ピン103の中央部103cの角部とバルブのネジ溝との位置関係および接触面積を適切な状態に維持できず、結果としてバルブを安定的に保持できなくなる場合があることを見出した。
【0029】
圧縮バネ104は、本体部101の下流側部分に固定された状態のガイド筒102がその内側に挿通され、ガイド筒102の外周面に沿うように位置している(例えば、
図4を参照)。
【0030】
圧縮バネ104の、接続方向下流側には環状の座金105が配置されている。座金105は例えば真鍮材、鉄、ステンレス材等の材料から形成されており、同じく座金105の内周側の空間にガイド筒102が挿通された状態となっている。これにより、座金105は、圧縮バネ104によって接続方向下流側へ向けて付勢される状態となる。本実施の形態における座金105は、一例として円環形状のものを示しているが、これに限られるものではなく、一部に切り欠きがあるC字形状や、一対の係合ピン103それぞれを個別に支えるように座金が分割配置されるような構成とすることもできる。また、座金105と圧縮バネ104は必ずしも別体である必要はなく、一体的に構成されていてもよい。例えば、圧縮バネ104の中心軸方向における端部の環状部分に座金105としての機能を持たせる構成とすることもできる。
【0031】
スライド外筒106は、上述した本体部101、ゴムリング111、ガイド筒102、係合ピン103、圧縮バネ104および座金105を、これらの径方向外側から包囲するように配置される筒状部材である。スライド外筒106の内周面の内径D(
図4を参照)は、本体部101の上流側部分の外周部の外径よりも大きくなるように設定されており、これによりスライド外筒106は接続方向において本体部101に対してスライド移動可能となっている。
【0032】
また、スライド外筒106は、その接続方向下流側端部の内周面上に内径が狭まっているフランジ状の係合部を有する(
図4)。当該係合部の内径はガイド筒102の外周面の外径よりも大きく、環状の座金105の内径と同等程度となるように(つまり、ガイド筒102の中心軸方向に見たときに、当該係合部と係合ピン103の端部103eとが重なるように)設定されている。これにより、スライド外筒106が接続方向上流側に向けてスライドする時には、係合部が係合ピン103の端部103eの接続方向下流側の面に当接し、係合ピン103および座金105を圧縮バネ104による弾性力に抗して押圧移動させる。
【0033】
通気管107は、筒状の部材であり、その接続方向下流側端部の外周部には雄ネジが形成されている。当該雄ネジは、例えば本体部101の中空部分の接続方向上流側端部の内周面に形成される雌ねじと螺合することによって、通気管107を本体部101に対対して接続固定する。もちろん、通気管107の本体部101への接続は必ずしもネジ構造を用いる必要はなく、例えば接着剤や嵌め合い等によって接続してもよい。通気管107と本体部101は、連結された状態において、同一の中心軸を持ち、両者の中空部分がエアチャックAの通気路の一部を形成する。
【0034】
連結部108は、通気管107における、エアチャックA接続方向上流側端部にネジ、嵌め合い、接着等によって固定される。連結部108は、エアチャックAを介してタイヤから取り出す空気もしくはタイヤに対して充填する空気を導くためのホースや金属管と着脱可能に接続可能となっている。なお、通気管107と連結部108は必ずしも別体とする必要はなく、結果として連結部108の連結構造を実現することができれば、一体的に成形してもよい。
【0035】
舌金109は、エアチャックAの接続方向下流側の幅が狭く、接続方向上流側の幅が広い略板状の形状に形成されている金属製部材である。舌金109は、本体部101の下流側部分に接続された状態のガイド筒102の内側において、本体部101内の通気路の下流側端部付近に位置する。具体的に、舌金109は、タイヤバルブがエアチャックAに接続された状態において、当該バルブのバルブコアを押し込むための、接続方向に延びる突起部109vと、当該突起部109vを挟んで中心軸に線対称に設けられる一対のスペーサ109tとを備えている。これら突起部109vおよび一対のスペーサ109tは、共通の本体部分から接続方向下流側へ向けて延出している(
図2および
図4を参照)。なお、ここでは一対のスペーサ109tが舌金106の本体部分の、前記中心軸と直交する方向における両端に設けられている構成を示しているが、これに限られるものではなく、結果としてゴムリング110と本体部分との間にスペースを確保することができる構成となっていればよく、例えば舌金106の本体部分の、中心軸と直交する方向における両端よりも中心軸寄りの位置から立設される構造(つまり、中心軸方向において、本体部分の方がスペーサ109tよりも外側まで張り出している構造)としてもよい。
【0036】
ガイド筒102は、その内周面の接続方向上流側の内径の方が接続方向下流側の内径よりも大きくなるように形成されており(
図7を参照)、ゴムリング110は、ガイド筒102の接続方向上流側端部付近の内径と略同じ外径を有しており、ガイド筒102の接続方向上流側の開口から挿入されてガイド筒102内に設置される。ゴムリング110は、ガイド筒102内に設置される際、その内周面の上流側部分と下流側部分との内径の違いにより形成される段差部に突き当てられている。上述の舌金109は、ガイド筒102内に設置されているとき、その突起部109vはゴムリング110の中央の孔を通ってゴムリング110よりも接続方向下流側まで突き出した状態となる(
図4を参照)。これにより、ゴムリング110に対してタイヤバルブが押し当てられると、舌金109は当該タイヤバルブのバルブコアを押圧し、当該タイヤバルブを開放することができる。また、
図4に示すように、舌金109は、その突起部109vがゴムリング110に挿通された状態において、一対のスペーサ109tの接続方向下流側端部がゴムリング110の接続方向上流側端面に当接した状態となる(
図4)。このように舌金109がガイド筒102内に設置され、通気路上に配置された状態において、スペーサ109tによって舌金109の本体部分とゴムリング110の接続方向上流側端面との間に空隙を形成することができ、これによってエアチャックAの通気路を通過する空気に加わる流路抵抗を低減させることができる。すなわち、スリム化によってガイド筒102を細くすることでエアチャックAの接続口付近の流路の抵抗が上昇しやすい状況においても、本実施の形態による舌金109を採用することによって、流路抵抗の上昇を抑えつつエアチャック全体としてのスリム化を実現することができる。
【0037】
操作ツマミ112は、その中心に通気管107を挿通させる孔を有する略管状部材である。操作ツマミ112の接続方向下流側端部の内周部と、スライド外筒106の接続方向上流側端部の外周部とは、互いにネジによって連結可能な構成となっている。もちろん、操作ツマミ112の接続方向下流側端部の内周部と、スライド外筒106の接続方向上流側端部の外周部とは、接着、嵌め合いなど種々の接続方法によって接続可能である。このようにして、操作ツマミ112とスライド外筒106とを連結することにより、スライド外筒106と操作ツマミ112は、中心軸と平行な方向に一体的にスライド移動可能となる。
【0038】
続いて、係合ピン103の構成の詳細について説明する。
図8は、本発明の実施の形態に係るエアチャックを構成する係合ピンの構成を示す外観斜視図である。
図9は、本発明の実施の形態に係るエアチャックを構成する係合ピンをその長手方向と直交する方向から見た外観図である。
図10は、ガイド筒102、係合ピン103、圧縮バネ104および座金105の位置関係を示す斜視図である。
【0039】
図8および
図9に示すように、係合ピン103は、その長手方向における中央付近に長手方向と直交する平面での断面が矩形の中央部103cを有し、中央部103cの両端に当該中央部103cよりも外径が細く長手方向と直交する平面での断面が円形の両端部103eを有している。すなわち、中央部103cは略角柱形状を有しており、両端部103eは略円柱形状を有している。係合ピン103の長手方向において、両端部103eの長さLeと係合ピン103の全長Lは、Le/L=0.1~0.3を満たす関係にある。中央部Lcの長手方向における長さは、係合ピン103がガイド孔102g内において「係合位置」までスライドした状態(すなわち、ガイド筒102のガイド孔102gと係合ピン103との接点(支持位置)間の距離が最も離れる状態)においても、中央部Lcの外周面がガイド孔102gにガイドされた状態となるような長さに設定されている。
【0040】
また、係合ピン103がガイド孔102g内において「係合位置」までスライドした状態(すなわち、ガイド筒102のガイド孔102gと係合ピン103との接点(支持位置)間の距離が最も離れる状態)において、一対の係合ピン103の内のいずれかの長手方向における位置がずれた場合でも、ガイド孔102gによりガイドされている状態から脱落しないように、両端部103eは常に座金105により支持された状態にある。
【0041】
図11は、ガイド筒102、係合ピン103、座金105、スライド外筒106および舌金109の形状および位置の関係を示す
図4におけるV-V’断面矢視図である。
図11では、係合ピン103が最も中心軸に近づく「係合位置」に位置している状態を示している。同図に示すように、「係合位置」にある係合ピン103の中央部103cは、ガイド孔102gを介してガイド筒102の内側にあるバルブ受入空間に向けて突き出ている状態となっている。これにより、「係合位置」にある係合ピン103は、当該バルブ受入空間に挿し込まれるタイヤバルブの先端部の雄ネジのネジ溝を両側から挟み込んで係合し、タイヤバルブに装着される。
【0042】
また、係合ピン103は、ガイド孔102g内における「解除位置」に位置する状態においてスライド外筒106の内周面に当接しない。
図11において、「解除位置」に位置する係合ピン103を破線の枠で示す。同図に示すように、係合ピン103が中心軸から最も離れた「解除位置」までスライドしたときでも、係合ピン103の両端部103eがスライド外筒106の内周面と接触しない構成とすることにより、スライド外筒106をスライドさせて係合ピン103を解除位置まで移動させる際にスライド外筒106の内周面に係合ピン103の両端部103eが接触してガイド孔102g内で傾斜してしまう(連れ回り)ことを回避することができ、スリムなスライド外筒106の実現に寄与することができる。
【0043】
なお本実施の形態では、スライド外筒106の内径をDとし(
図4参照)、係合ピン103の全長をLとするとき、
0.6D≦L≦0.75D
の関係を満たすように設計されている。ここで、係合ピン103の全長Lが0.75Dを超えて且つスライド外筒106をスリム化しようとすると、容易にスライド外筒106の内周面が係合ピン103の両端部103eと接触してしまう。一方、係合ピン103の全長Lが0.6Dを下回ると、係合ピン103の両端部103eが座金105の内縁部から脱落しやすくなる。
【0044】
また、係合ピン103は、ガイド孔102g内における「解除位置」に位置する状態において中心軸方向から見たとき、座金の外周よりも外側にはみ出ない。これにより、係合ピン103が中心軸から最も離れた「解除位置」までスライドしたときでも、座金105の外周縁部よりも周方向外側にはみ出ない構成とすることにより、スライド外筒106を小径化した場合でも当該スライド外筒106の内周面と係合ピン103とが干渉することがなく、スリムなスライド外筒106を採用することができる。
【0045】
さらに係合ピン103は、ガイド孔102g内において「解除位置」に位置している状態において中心軸方向に見たときにガイド筒102の外周面から周方向外側へ向けて突き出している。このような構成とすることにより、ガイド筒102のガイド孔102gから係合ピン103が脱落することが無い。
【0046】
係合ピン103は、ガイド孔102g内において「解除位置」に位置している状態において、ガイド筒102の中心軸方向に見たときに係合ピン103の長手方向と直交する方向に1/3Wよりも小さい距離であればガイド筒102の外周面から周方向外側へ向けて突き出していてもよい。一方、ガイド筒102の中心軸方向に見たときに係合ピン103の長手方向と直交する方向に1/3W以上の距離だけガイド筒102の外周面から周方向外側へ向けて突き出てしまうと、係合ピン103がガイド孔102gから脱落するリスクが生じる。
【0047】
さらに、係合ピン103は、その長手方向における両端に、中央部よりも外径が小さい両端部103eを有し、両端部103eの直径Teと一対の係合ピンにおけるガイド孔によりガイドされる互いに平行な2つの面の最短距離Wは、Te=(0.7~0.95)Wの関係にある。このような構成とすることにより、係合ピン103の両端部103eの直径Teを細すぎない適切な太さとすることにより、座金105の内縁部に対する引っかかりを確実にすることができる。
【0048】
また、座金105の内側縁部に、係合ピン103の中央部103cと両端部103eとの段差が引っかかることで、係合ピン103の中央部103cが座金105に対して乗り上げてしまい、係合ピン103の長手方向におけるガイド筒102に対する位置関係がズレることを防ぐことができる。一方、上記段差が大き過ぎると、係合ピン103の中央部103cの座金105に対する乗り上げは抑制できるものの、係合ピン103の中央部103cの太さが大きくなり過ぎたりその両端部103eの太さTeが細くなり過ぎたりして強度が低下する等の問題が生ずる。
【0049】
<装置の動作>
続いて、本発明の実施の形態に係るエアチャックAの動作について説明する。
図12は、本発明の実施の形態に係るエアチャックAがタイヤバルブに係合して接続された状態における中心軸を含む平面による断面を示す図である。
【0050】
同図に示すように、ユーザによる操作を受けていないとき、座金105は圧縮バネ104による弾性力により接続方向下流側へ向けて付勢されている。このようにして圧縮バネ104により付勢される座金105は一対の係合ピン103の両端部103eを接続方向上流側から接続下流側へ向けて押圧する。圧縮バネ104により付勢される座金105によって押圧される係合ピン103はガイド孔102g内を接続方向下流側へ向けてスライドし、係合ピン103の両端部103eがガイド孔102gの終端に突き当たった状態、すなわち「係合位置」となるように押し付けられている(
図10に示す状態)。なお、本願明細書において、「押圧」および「付勢」とは、直接的に押す場合だけでなく、中間に他の部材等を介在して結果的に対象物を押す状態も含まれる。
【0051】
上述のようにして、座金105は、ガイド筒102が挿通された状態で、「解除位置」から「係合位置」へ向かうスライド方向における上流側から一対の係合ピン103の両端部103eを支持する。
【0052】
このように、一対の係合ピン103がガイド孔102g内において「係合位置」に付勢された状態で、ガイド筒102内のバルブ受入空間にタイヤバルブを挿し込むことで、係合ピン103はタイヤバルブ先端の外周の雄ネジの段差にあわせてカチカチと進退しつつタイヤバルブを受け入れ、当該雄ネジのネジ溝と係合する。
【0053】
図13は、本発明の実施の形態に係るエアチャックのバルブとの接続を解除するユーザ操作を受けている状態の断面図である。
図12で示したようにタイヤバルブに装着された状態において、ユーザが操作ツマミ112を、本体部101および通気管107等に対して接続方向上流側にスライドさせると、スライド移動する操作ツマミ112とともにスライド外筒106も一体的に移動する。
【0054】
スライド外筒106の接続方向下流側端部付近の内周部にはフランジ状に形成された係合部が設けられており、操作ツマミ112の動作に伴ってスライド外筒106も接続方向上流側に移動すると、当該係合部によって係合ピン103の端部103eが接続方向下流側から上流側へ向けて押圧される。このようにして係合ピン103の端部103eが接続方向上流側へ向けて押圧されることにより、係合ピン103の端部103eおよび座金105は圧縮バネ104による弾性力に抗して接続方向上流側へ向けて移動する。これにより、係合ピン103はタイヤバルブ先端の外周の雄ネジから離間する解除位置となり、タイヤバルブとエアチャックAとの接続状態は解除される。
【0055】
図14は、本発明の他の実施の形態に係るエアチャックがバルブに接続されておらず且つユーザにより操作されていない状態(通常時)における断面図である。上述の実施の形態では、ガイド筒102の外周を圧縮バネ104が包囲している構成を例示したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、圧縮バネ104よりも線径の太い圧縮バネ104’をガイド筒102よりも接続方向上流側に配置し、当該圧縮バネ104’によってガイド孔102g付近に位置する座金105を長手の部材を介して弾性的に押圧する構成としてもよい。このような構成とすれば、装置全体として比較的強度や配置スペースの観点でゆとりのあるガイド筒102よりも接続方向上流側の位置に線径の太い強力なバネを配置しつつ、そのバネによって、細い長手部材である押当部材Kを弾性的に押圧することにより、上述の実施の形態のように圧縮バネ104を設ける構成よりもガイド筒102付近の装置全体としての太さをより細い設計とすることができる。また、座金105と押当部材Kは必ずしも別体である必要はなく、一体的に構成されていてもよい。例えば、押当部材Kの中心軸方向における接続方向下流側端部に座金105としての機能を持たせる構成とすることもできる。
【0056】
上述のように、本発明の実施の形態によれば、以下のようなエアチャックを提供することができる。
(1)タイヤのバルブに対して着脱可能なエアチャックであって、
前記バルブへの装着時に該バルブの外周に形成された溝と係合可能な一対の長手形状の部材であって、その長手方向における少なくとも中央部の前記長手方向と直交する平面での断面が矩形状である一対の係合ピンと、
前記バルブへの前記エアチャック装着時に該バルブの先端部を挿入するバルブ受入空間を形成する略円筒形状の部材であって、前記略円筒形状の中心軸を挟んで略平行に配置される前記一対の係合ピンの内一方の中央部が前記略円筒形状の第1の方向から前記バルブ受入空間内に突き出すとともに、前記一対の係合ピンの内他方の中央部が前記略円筒形状の前記第1の方向とは反対の第2の方向から前記バルブ受入空間内に突き出し、前記バルブ受入空間に前記バルブの先端部を挿入した状態において該バルブを両側面から挟むように前記溝と係合する係合位置と、前記一対の係合ピンそれぞれが前記係合位置よりも前記中心軸から離れる方向に位置し前記バルブの先端部の前記溝と前記一対の係合ピンとの係合状態を解除する解除位置との間をスライド移動可能に前記係合ピンの前記中央部をガイドするとともに、前記係合位置と前記解除位置との間を前記一対の係合ピンがスライド移動する際に常に該一対の係合ピンの両端部を前記略円筒形状の外周面よりも外側に突出させるガイド孔が形成されたガイド筒と、
前記ガイド筒が挿通され、前記解除位置から前記係合位置へ向かうスライド方向における上流側から前記一対の係合ピンの両端を支持する座金と、
前記座金を前記一対の係合ピンに対して弾性的に付勢することで、前記一対の係合ピンを前記係合位置へ向けて押圧する圧縮バネと、
前記ガイド筒、前記座金および前記圧縮バネを外周側から包囲し、前記ガイド筒に対して前記中心軸方向にスライド移動可能な略円筒形状の部材であって、その内周面上の前記係合ピンに対して前記圧縮バネと反対側に位置する係合部を有し、前記圧縮バネにより前記座金を付勢する方向とは反対側にユーザ操作によってスライド移動された際に前記係合部によって前記係合ピンを前記圧縮バネによる弾性力に抗して前記圧縮バネ側にスライド移動させることで前記係合ピンを前記解除位置まで移動させるスライド外筒とを備え、
前記係合ピンは、前記ガイド孔内における前記解除位置に位置する状態において前記スライド外筒の内周面に当接しないことを特徴とするエアチャック。
(2)前記ガイド孔による前記一対の係合ピンのスライド移動方向を含む平面上における前記ガイド孔における前記一対の係合ピンのスライド範囲に対応する箇所の最大幅Wfは、前記一対の係合ピンにおける前記ガイド孔によりガイドされる互いに平行な2つの面の最短距離をWとするとき、Wf=1.03W~1.10Wの関係にあることを特徴とする(1)に記載のエアチャック。
(3)前記係合ピンは、前記ガイド孔内における前記解除位置に位置する状態において前記中心軸方向から見たとき、前記座金の外周よりも外側にはみ出ないことを特徴とする(1)に記載のエアチャック。
(4)前記係合ピンは、前記ガイド孔内において前記解除位置に位置している状態において前記中心軸方向に見たときに前記ガイド筒の外周面から周方向外側へ向けて突き出していることを特徴とする(1)に記載のエアチャック。
(5)前記係合ピンは、前記ガイド孔内において前記解除位置に位置している状態において、前記中心軸方向に見たときに前記係合ピンの長手方向と直交する方向に1/3Wよりも小さい距離だけ前記ガイド筒の外周面から周方向外側へ向けて突き出していることを特徴とする(1)に記載のエアチャック。
(6)前記係合ピンは、その長手方向における両端に、前記中央部よりも外径が小さい両端部を有し、前記受け部の直径Teと前記一対の係合ピンにおける前記ガイド孔によりガイドされる互いに平行な2つの面の最短距離Wは、Te=(0.7~0.95)Wの関係にあることを特徴とする(1)に記載のエアチャック。
(7)前記係合ピンは、その長手方向における両端に、前記中央部よりも外径が小さい両端部を有し、前記長手方向において、前記受け部の長さLeと前記係合ピンの全長Lは、Le/L=0.1~0.3を満たす関係にあることを特徴とする(1)に記載のエアチャック。
(8)前記一対の係合ピンの前記中央部をガイドする前記ガイド孔の一対のガイド面は、前記中心軸に平行に前記バルブに対して接続される方向における上流側から下流側へ向けてその間隔が狭まるように傾斜しており、それぞれのガイド面の前記中心軸に対する傾斜角は30度であることを特徴とする(1)に記載のエアチャック。
(9)前記ガイド筒内に設けられ接続対象であるバルブのバルブコアを押し込むための舌金をさらに備え、該舌金は、バルブが前記エアチャックに接続された状態において、当該バルブのバルブコアを押し込むための、接続方向に延びる突起部と、当該突起部を挟んで前記中心軸に線対称に設けられる一対のスペーサとを備えていることを特徴とする前記(1)に記載エアチャック。
(10)前記スライド外筒の内径をDとし、前記係合ピンの全長をLとするとき、
0.6D≦L≦0.75D
を満たす関係にあることを特徴とする(1)に記載のエアチャック。
【0057】
本発明は、その精神または主要な特徴から逸脱することなく、他の様々な形で実施することができる。そのため、前述の実施の形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する全ての変形、様々な改良、代替および改質は、すべて本発明の範囲内のものである。
【符号の説明】
【0058】
A エアチャック、101 本体部、102 ガイド筒、103 係合ピン、104 圧縮バネ、105 座金、106 スライド外筒、107 通気管、108 連結部、109 舌金、110 ゴムリング。
【手続補正書】
【提出日】2021-09-03
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤのバルブに対して着脱可能なエアチャックであって、
前記バルブへの装着時に該バルブの外周に形成された溝と係合可能な一対の長手形状の部材であって、その長手方向における少なくとも中央部の前記長手方向と直交する平面での断面が矩形状である一対の係合ピンと、
前記バルブへの前記エアチャック装着時に該バルブの先端部を挿入するバルブ受入空間を形成する略円筒形状の部材であって、前記略円筒形状の中心軸を挟んで略平行に配置される前記一対の係合ピンの内一方の中央部が前記略円筒形状の第1の方向から前記バルブ受入空間内に突き出すとともに、前記一対の係合ピンの内他方の中央部が前記略円筒形状の前記第1の方向とは反対の第2の方向から前記バルブ受入空間内に突き出し、前記バルブ受入空間に前記バルブの先端部を挿入した状態において該バルブを両側面から挟むように前記溝と係合する係合位置と、前記一対の係合ピンそれぞれが前記係合位置よりも前記中心軸から離れる方向に位置し前記バルブの先端部の前記溝と前記一対の係合ピンとの係合状態を解除する解除位置との間をスライド移動可能に前記係合ピンの前記中央部をガイドするとともに、前記係合位置と前記解除位置との間を前記一対の係合ピンがスライド移動する際に常に該一対の係合ピンの両端部を前記略円筒形状の外周面よりも外側に突出させるガイド孔が形成されたガイド筒と、
前記ガイド筒が挿通され、前記解除位置から前記係合位置へ向かうスライド方向における上流側から前記一対の係合ピンの両端を支持する座金と、
前記座金を前記一対の係合ピンに対して弾性的に付勢することで、前記一対の係合ピンを前記係合位置へ向けて押圧する圧縮バネと、
前記ガイド筒、前記座金および前記圧縮バネを外周側から包囲し、前記ガイド筒に対して前記中心軸方向にスライド移動可能な略円筒形状の部材であって、その内周面上の前記係合ピンに対して前記中心軸方向において前記圧縮バネと反対側に位置する係合部を有し、前記圧縮バネにより前記座金を付勢する方向とは反対側にユーザ操作によってスライド移動された際に前記係合部によって前記係合ピンを前記圧縮バネによる弾性力に抗して前記圧縮バネ側にスライド移動させることで前記係合ピンを前記解除位置まで移動させるスライド外筒と、
前記ガイド筒を前記バルブへの接続方向上流側で支持する本体部と、
前記本体部と同軸上に配置し、前記バルブを介して充排気する空気の通気管と、を備え、
前記係合ピンは、その長手方向における両端に、前記中央部よりも外径が小さい前記両端部を有し、前記両端部の直径Teと前記一対の係合ピンにおける前記ガイド孔によりガイドされる互いに平行な2つの面の最短距離Wは、Te=(0.7~0.95)Wの関係にあり、
前記係合ピンは、前記ガイド孔内における前記解除位置に位置する状態において前記スライド外筒の内周面に当接しないことを特徴とするエアチャック。
【請求項2】
前記係合ピンは、前記ガイド孔内における前記解除位置に位置する状態において前記中心軸方向から見たとき、前記座金の外周よりも外側にはみ出ないことを特徴とする請求項1に記載のエアチャック。
【請求項3】
前記係合ピンの中央部は、前記ガイド孔内において前記解除位置に位置している状態において前記中心軸方向に見たときに前記ガイド筒の外周面から周方向外側へ向けて突き出していることを特徴とする請求項1に記載のエアチャック。
【請求項4】
前記係合ピンの中央部は、前記ガイド孔内において前記解除位置に位置している状態において、前記中心軸方向に見たときに前記係合ピンの長手方向と直交する方向に1/3Wよりも小さい距離だけ前記ガイド筒の外周面から周方向外側へ向けて突き出していることを特徴とする請求項1に記載のエアチャック。
【請求項5】
前記係合ピンは、その長手方向における両端に、前記中央部よりも外径が小さい前記両端部を有し、前記長手方向において、前記両端部の長さLeと前記係合ピンの全長Lは、Le/L=0.1~0.3を満たす関係にあることを特徴とする請求項1に記載のエアチャック。
【請求項6】
前記一対の係合ピンの前記中央部をガイドする前記ガイド孔の一対のガイド面は、前記中心軸に平行に前記バルブに対して接続される方向における上流側から下流側へ向けてその間隔が狭まるように傾斜しており、それぞれのガイド面の前記中心軸に対する傾斜角は30度であることを特徴とする請求項1に記載のエアチャック。
【請求項7】
前記スライド外筒の内径をDとし、前記係合ピンの全長をLとするとき、
0.6D≦L≦0.75D
を満たす関係にあることを特徴とする請求項1に記載のエアチャック。