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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022132348
(43)【公開日】2022-09-08
(54)【発明の名称】活性炭及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 32/30 20170101AFI20220901BHJP
   C01B 32/348 20170101ALI20220901BHJP
   C01B 32/336 20170101ALI20220901BHJP
   B01J 20/22 20060101ALI20220901BHJP
   B01J 20/28 20060101ALI20220901BHJP
   B01J 20/30 20060101ALI20220901BHJP
   C02F 1/28 20060101ALI20220901BHJP
【FI】
C01B32/30
C01B32/348
C01B32/336
B01J20/22 C
B01J20/28 Z
B01J20/30
C02F1/28 D
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022109604
(22)【出願日】2022-07-07
(62)【分割の表示】P 2018054727の分割
【原出願日】2018-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】391034167
【氏名又は名称】株式会社アドール
(71)【出願人】
【識別番号】000004503
【氏名又は名称】ユニチカ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】591147694
【氏名又は名称】大阪ガスケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【弁理士】
【氏名又は名称】水谷 馨也
(72)【発明者】
【氏名】中野 智康
(72)【発明者】
【氏名】清水 弘和
(57)【要約】
【課題】大きな空塔速度(SV)での通水処理においても、高い総トリハロメタンろ過能力を有する活性炭を提供する。
【解決手段】QSDFT法によって算出される全細孔容積Tが0.3~1.5(cc/g)であって、
前記QSDFT法によって算出される全細孔容積T(cc/g)に対する、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち0.8nm以下の範囲の細孔径の細孔容積A(cc/g)の割合(A/T)が0.5~0.7であり、
前記QSDFT法によって算出される全細孔容積T(cc/g)に対する、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち2.5~3.0nmの範囲の細孔径の細孔容積B(cc/g)の割合(B/T)が0.02~0.06である、活性炭。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
QSDFT法によって算出される全細孔容積Tが0.3~1.5(cc/g)であって、
前記QSDFT法によって算出される全細孔容積T(cc/g)に対する、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち0.8nm以下の範囲の細孔径の細孔容積A(cc/g)の割合(A/T)が0.5~0.7であり、
前記QSDFT法によって算出される全細孔容積T(cc/g)に対する、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち2.5~3.0nmの範囲の細孔径の細孔容積B(cc/g)の割合(B/T)が0.02~0.06である、活性炭。
【請求項2】
QSDFT法によって算出される細孔容積のうち3.0nm以上の細孔径の細孔容積が0.02(cc/g)以下である、請求項1に記載の活性炭。
【請求項3】
比表面積が700m2/g以上2500m2/g以下である、請求項1又は2に記載の活性炭。
【請求項4】
前記活性炭の内部に、モリブデン単体及び/又はモリブデン化合物を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の活性炭。
【請求項5】
総トリハロメタンろ過能力が50L/g以上である、請求項1~4のいずれか1項に記載の活性炭。
【請求項6】
モリブデンを0.1~1.0質量%含む活性炭前駆体を、CO2濃度が50容積%以上のガス雰囲気下、雰囲気温度900~1000℃で賦活する工程を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の活性炭の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性炭及びその製造方法に関し、特に、大きな空塔速度下におけるトリハロメタンのろ過能力に優れた、活性炭及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、飲料用に供される水道水などには、殺菌を目的として塩素が添加されている。しかしながら、水道水中に含まれる塩素は、水道水中に含まれる有機物と反応して、有機ハロゲン系化合物を生成する。例えば、天然有機物であるフミン質が水道水中において塩素と反応すると、発がん性物質であるトリハロメタンを生成することが知られている。そして、水道水中に含まれるこれらの有機ハロゲン系化合物のろ過能力に優れた活性炭が提案されている。
【0003】
有機ハロゲン系化合物のろ過能力に優れた活性炭として、例えば、細孔径が100Å(10nm)以下の細孔容積に対する、細孔径20Å~100Å(2nm~10nm)の細孔容積比率が5~50%であり、細孔径10Å(1nm)以下の細孔容積比率が45%以上である多孔質炭素を含有する吸着剤が知られている(例えば、特許文献1参照。)。該吸着剤において、細孔径が100Å以下の細孔容積に対して、細孔径20Å~100Åの細孔容積比率を5~50%とするのは、比較的大きな細孔の割合を高めて、動的吸着力を高めるためである。一方、該吸着剤においては、静的吸着力である平衡吸着量を高める必要もあることから、静的平衡吸着量に有効な細孔径10Å以下の細孔容積比率を45%以上とすることが開示されている。そして、該吸着剤は、このような構成とすることによって、静的吸着力と動的吸着力とを両立することができるとされている。
【0004】
また、77.4Kにおける窒素吸着等温線よりBJH法で求めた細孔径分布において細孔直径30Å以上50Å未満の範囲のメソ細孔容積が0.02~0.40cc/gであり、かつ、全細孔容積に対する上記範囲のメソ細孔容積の割合が5~45%である活性炭が知られている(例えば、特許文献2参照)。該活性炭によれば、かかる範囲内に上記メソ細孔(直径2~50nmの細孔)容積及び上記割合を制御することによって、各種の被吸着物質(特にトリハロメタン類)の吸着に適した材料とすることができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006-247527号公報
【特許文献2】特開2004-182511号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、このような活性炭を含む浄水フィルターには、高い総トリハロメタンろ過能力が求められている。例えば、浄水フィルターには、JIS S3201の「揮発性有機化合物のろ過能力試験」における総トリハロメタンの総ろ過水量(総トリハロメタンの除去率が80%に低下するまでの水量)が多いことが要求されてきている。該総ろ過水量が多いほど、浄水フィルターの使用可能期間(取替え期間)が長くなる。
【0007】
加えて、浄水フィルターが水栓一体型浄水器用である場合などには、浄水フィルターは小型化する必要がある。浄水フィルターが小型になると、空塔速度(SV)が大きくなり、高い総トリハロメタンろ過能力を維持することが難しくなる。
【0008】
本発明者等が検討した結果、特許文献1及び2に開示された活性炭は、SVが1000h-1の条件で評価されているところ、大きな空塔速度(例えばSVが3000h-1程度)の条件下では、総トリハロメタンのろ過能力が十分発揮できないという問題があることが判明した。
【0009】
本発明は、上記問題を解決し、大きな空塔速度(SV)での通水処理においても、高い総トリハロメタンろ過能力を有する活性炭及びその製造方法を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
当初、本発明者等の検討によれば、トリハロメタン分子は1.5nm以下の細孔に吸着しやすいと考えられた。しかしながら、本発明者等は、大きなSV下において総トリハロメタン分子のろ過を検討する場合には、トリハロメタン分子が細孔内に拡散する速度も重要な要素であると考えた。そこで、本発明者らはこれらの観点から検討を重ね、活性炭の細孔径及びその細孔容積を制御し、全細孔容積に対する0.8nm以下の細孔容積の割合を特定のものとし、且つ全細孔容積に対する2.5nm以上3.0nm以下の細孔径の細孔容積の割合を特定範囲のものとすることで、大きなSV下においても高い総トリハロメタンろ過能力を有することを見出した。
【0011】
例えば、特許文献1に開示された発明は、メソ孔のうちでも広範な細孔径範囲である2~10nmの細孔容積を制御することにより動的吸着力を高めることを図っている。しかし、該発明では、例えば3000h-1のような高いSV下でのろ過能力を向上すること、及び、全細孔容積に対する2.5nm以上3.0nm以下の細孔径の細孔容積の割合を制御することは検討されていない。実際、同文献に実施例として具体的に開示された活性炭は、全細孔容積に対する2.5nm以上3.0nm以下の細孔径の細孔容積の割合が小さく、大きな空塔速度の条件下での総トリハロメタンのろ過能力が十分発揮できない。
【0012】
また、例えば、特許文献2に開示された発明は、比較的大きい細孔径3~5nmの範囲の細孔容積を制御することが開示されている。また、制御する方法として、Mg、Mn、Fe、Y、Pt及びGdの少なくとも1種の金属成分を0.01~5重量%含有するピッチを活性炭前駆体として用い、当該前駆体を不融化処理又は炭素化処理し、賦活処理する方法において、上記金属成分の種類を変えることによって、得られる活性炭のメソ細孔モード直径を制御すること、トリハロメタン類の吸着用活性炭を製造する場合には、Fe添加活性炭が水中の有機化合物除去の吸着材として最も優れた効果を発揮することが開示されている。さらに、具体的に実施可能な態様としては、活性炭前駆体にFeを含有させ、水蒸気賦活をおこなう方法が開示されている。しかし、該発明においても、例えば3000h-1のような高いSV下でのろ過能力を向上すること、及び、全細孔容積に対する2.5nm以上3.0nm以下の細孔径の細孔容積の割合を制御することは検討されていない。そして、本発明者等の検討によれば、特許文献2に実施例として具体的に開示された、活性炭前駆体にFeを含有させ水蒸気賦活をおこなう方法では、比較的大きい細孔径3~5nmの範囲の細孔容積は大きくすることができるものの、細孔径0.8nm以下の範囲の細孔容積及び2.5nm以上3.0nm以下の範囲の細孔径の細孔容積を十分に大きいものとすることができず、大きな空塔速度の条件下での総トリハロメタンのろ過能力が十分発揮できないことが判明した。
【0013】
本発明は、これらの知見に基づいて、さらに検討を重ねることにより完成された発明である。
【0014】
すなわち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. QSDFT法によって算出される全細孔容積Tが0.3~1.5(cc/g)であって、
前記QSDFT法によって算出される全細孔容積T(cc/g)に対する、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち0.8nm以下の範囲の細孔径の細孔容積A(cc/g)の割合(A/T)が0.5~0.7であり、
前記QSDFT法によって算出される全細孔容積T(cc/g)に対する、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち2.5~3.0nmの範囲の細孔径の細孔容積B(cc/g)の割合(B/T)が0.02~0.06である、活性炭。
項2. QSDFT法によって算出される細孔容積のうち3.0nm以上の細孔径の細孔容積が0.02(cc/g)以下である、項1に記載の活性炭。
項3. 比表面積が700m2/g以上2500m2/g以下である、請求項1又は2に記載の活性炭。
項4. 前記活性炭の内部に、モリブデン単体及び/又はモリブデン化合物を含む、項1~3のいずれか1項に記載の活性炭。
項5. 総トリハロメタンろ過能力が50L/g以上である、項1~4のいずれか1項に記載の活性炭。
項6. モリブデンを0.1~1.0質量%含む活性炭前駆体を、CO2濃度が50容積
%以上のガス雰囲気下、雰囲気温度900~1000℃で賦活する工程を含む、項1~5のいずれか1項に記載の活性炭の製造方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明の活性炭は、QSDFT法によって算出される全細孔容積Tが0.3~1.5(cc/g)であって、前記QSDFT法によって算出される全細孔容積T(cc/g)に対する、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち0.8nm以下の範囲の細孔径の細孔容積A(cc/g)の割合(A/T)が0.5~0.7であり、前記QSDFT法によって算出される全細孔容積T(cc/g)に対する、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち2.5~3.0nmの範囲の細孔径の細孔容積B(cc/g)の割合(B/T)が0.02~0.06であることを特徴としている。本発明の活性炭は、このような構成を備えていることから、大きな空塔速度(SV)での通水処理においても、高い総トリハロメタンろ過能力を有する活性炭を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施例1の活性炭のQSDFT法によって算出される細孔径分布を示すグラフである。
図2】実施例2の活性炭のQSDFT法によって算出される細孔径分布を示すグラフである。
図3】比較例1の活性炭のQSDFT法によって算出される細孔径分布を示すグラフである。
図4】比較例2の活性炭のQSDFT法によって算出される細孔径分布を示すグラフである。
図5】比較例3の活性炭のQSDFT法によって算出される細孔径分布を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の活性炭について詳細に説明する。
【0018】
本発明の活性炭は、QSDFT法によって算出される全細孔容積Tが0.3~1.5(cc/g)であって、前記QSDFT法によって算出される全細孔容積T(cc/g)に対する、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち0.8nm以下の範囲の細孔径の細孔容積A(cc/g)の割合(A/T)が0.5~0.7であり、前記QSDFT法によって算出される全細孔容積T(cc/g)に対する、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち2.5~3.0nmの範囲の細孔径の細孔容積B(cc/g)の割合(B/T)が0.02~0.06である。
【0019】
大きなSV下でも高い総トリハロメタンろ過能力を有するものとするには、全細孔容積Tに対する0.8nm以下の細孔容積Aの割合(A/T)を特定範囲とし、且つ全細孔容積Tに対する2.5nm以上3.0nm以下の細孔径の細孔容積Bの割合(B/T)を特定範囲とすることが重要である。本発明者等が検討したところ、0.8nm以下の細孔はトリハロメタン分子を吸着しやすく、2.5nm以上3.0nm以下の細孔はトリハロメタン分子の吸着の他にもトリハロメタン分子の細孔内への拡散にも寄与すると考えられる。そして、本発明者等が検討を重ねたところ、0.8nm以下の細孔容積A及び2.5nm以上3.0nm以下の細孔容積Bは、単に大きくすれば良いというのではなく、全細孔容積Tに対し特定範囲の割合とすることも重要であることが明らかとなった。従って、本発明の活性炭によれば、全細孔容積Tに対する0.8nm以下の細孔容積Aの割合(A/T)及び全細孔容積Tに対する2.5nm以上3.0nm以下の細孔径の細孔容積Bの割合(B/T)を特定の範囲に調整することにより、大きなSV下においても高い総トリハロメタンろ過能力を発揮できるのである。
【0020】
本発明において、特定の細孔径範囲の細孔容積は、QSDFT法によって算出されるものである。QSDFT法(急冷固体密度汎関数法)とは、幾何学的・化学的に不規則なミクロポーラス・メソポーラスな炭素の細孔径解析を対象とした、約0.5nm~約40nmまでの細孔径分布の計算ができる解析手法である。QSDFT法では、細孔表面の粗さと不均一性による影響が明瞭に考慮されているため、細孔径分布解析の正確さが大幅に向上した手法である。本発明においては、Quantachrome社製「AUTOSORB-1-MP」を用いて窒素吸着等温線の測定、及びQSDFT法による細孔径分布解析をおこなう。77Kの温度において測定した窒素の脱着等温線に対し、Calculation modelとしてN2 at 77K on carbon[slit pore,QSDFT equilibrium model]を適用して細孔径分布を計算することで、特定の細孔径範囲の細孔容積を算出されることができる。
【0021】
本発明の活性炭は、QSDFT法によって算出される全細孔容積T(cc/g)に対する、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち0.8nm以下の範囲の細孔径の細孔容積A(cc/g)の割合(A/T)が0.5~0.7であり、大きな空塔速度(SV)での通水処理においても、より高い総トリハロメタンろ過能力を有しやすくする観点から、当該割合は0.52~0.65が好ましく、0.54~0.58が特に好ましい。
【0022】
本発明の活性炭は、QSDFT法によって算出される全細孔容積T(cc/g)に対する、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち2.5~3.0nmの範囲の細孔径の細孔容積B(cc/g)の割合(B/T)が0.02~0.06であり、大きな空塔速度(SV)での通水処理においても、より高い総トリハロメタンろ過能力を有しやすくする観点から、当該割合は0.03~0.05が好ましい。
【0023】
大きな空塔速度(SV)での通水処理においても、より高い総トリハロメタンろ過能力を有しやすくする観点から、本発明の活性炭は、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち0.8nm以下の範囲の細孔径の細孔容積A(cc/g)が0.15~1.05cc/gであることが好ましく、0.15~0.40cc/gであることがより好ましく、0.20~0.35cc/gであることが特に好ましい。
【0024】
大きな空塔速度(SV)での通水処理においても、より高い総トリハロメタンろ過能力を有しやすくする観点から、本発明の活性炭は、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち2.5~3.0nmの範囲の細孔径の細孔容積B(cc/g)が0.009~0.09cc/gであることが好ましく、0.009~0.04cc/gであることがより好ましく、0.01~0.03cc/gであることが特に好ましい。
【0025】
大きな空塔速度(SV)での通水処理においても、より高い総トリハロメタンろ過能力を有しやすくする観点から、本発明の活性炭は、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち2.0nm以下の範囲の細孔径の細孔容積C(cc/g)が0.3~0.6cc/gであることが好ましく、0.35~0.50cc/gであることがより好ましく、0.46~0.50cc/gであることが特に好ましい。
【0026】
大きな空塔速度(SV)での通水処理においても、より高い総トリハロメタンろ過能力を有しやすくする観点から、本発明の活性炭は、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち2.0nm以上の細孔径の細孔容積D(cc/g)が0.01~0.05cc/gであることが好ましく、0.01~0.03であることがより好ましい。
【0027】
大きな空塔速度(SV)での通水処理においても、より高い総トリハロメタンろ過能力を有しやすくする観点から、本発明の活性炭は、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち3.0nm以上の細孔径の細孔容積E(cc/g)が0.02cc/g以下であることが好ましく、0.01cc/g以下であることがより好ましく、0.001cc以下であることが特に好ましい。
【0028】
大きな空塔速度(SV)での通水処理においても、より高い総トリハロメタンろ過能力を有しやすくする観点から、本発明の活性炭は、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち2.0~2.5nmの範囲の細孔径の細孔容積F(cc/g)が0.01cc/g以下であることが好ましく、0.005cc/g以下であることがより好ましく、0.001cc/g以下であることが特に好ましい。
【0029】
大きな空塔速度(SV)での通水処理においても、より高い総トリハロメタンろ過能力を有しやすくする観点から、本発明の活性炭は、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち2.0nm以下の範囲の細孔径の細孔容積C(cc/g)に対する、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち0.8nm以下の範囲の細孔径の細孔容積A(cc/g)の割合(A/C)が0.5~0.7であることが好ましく、0.54~0.60であることがより好ましい。
【0030】
本発明の活性炭は、QSDFT法によって算出される全細孔容積Tが0.3~1.5(cc/g)であり、大きな空塔速度(SV)での通水処理においても、より高い総トリハロメタンろ過能力を有しやすくする観点から、上記全細孔容積Tが0.3~0.8cc/gであることが好ましく、0.35~0.60cc/gであることがより好ましく、0.40~0.55cc/gであることが特に好ましく、0.48~0.53cc/gであることが一層好ましい。
【0031】
本発明の活性炭において、活性炭の比表面積(窒素を被吸着物質として用いたBET法(1点法)により測定される値)としては、好ましくは700~2500m2/g程度、より好ましくは1000~2000m2/g程度、特に好ましくは1000~1400m2/g程度が挙げられる。
【0032】
後述の通り、本発明の製造方法において、活性炭前駆体の主原料(すなわち、本発明の活性炭の由来となる原料)としては、特に制限されず、例えば、不融化或いは炭素化した有機質材料、フェノール樹脂等の不融性樹脂等が挙げられ、該有機質材料としては、例えば、ポリアクリロニトリル、ピッチ、ポリビニルアルコール、セルロース等が挙げられる。これらの中でも、本発明の活性炭は、ピッチに由来することが好ましく、石炭ピッチに由来することがより好ましい。
【0033】
本発明の活性炭は、上記特定の細孔径分布とするために、活性炭前駆体としてモリブデン化合物を含むものを用いる。そして、本発明の活性炭は、活性炭前駆体に含まれるモリブデン化合物に由来するモリブデン単体及び/又はモリブデン化合物を含むものであってもよい。本発明の活性炭の総質量における、該活性炭に含有されるモリブデン単体及びモリブデン化合物の質量の割合(合計)としては、例えば、0.2~1.0質量%が挙げられ、0.3~0.8質量%が好ましく挙げられる。上記割合は、ICP発光分光分析装置(Varian社製型式715-ES)により測定されるモリブデン元素換算の割合(すなわち、モリブデンの含有量)である。
【0034】
本発明の活性炭の形態は特に限定されないが、フィルター加工して用いる場合の加工性や浄水器で使用する場合の吸着速度の観点から繊維状活性炭とすることが好ましい。繊維状活性炭の平均繊維径としては、好ましくは30μm以下、より好ましくは5~20μm程度が挙げられる。なお、本発明の繊維状活性炭の平均繊維径は、画像処理繊維径測定装置(JIS K 1477に準拠)により測定した値である。
【0035】
本発明の活性炭は、QSDFT法によって算出される全細孔容積Tが0.3~1.5(cc/g)であって、前記QSDFT法によって算出される全細孔容積T(cc/g)に対する、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち0.8nm以下の範囲の細孔径の細孔容積A(cc/g)の割合(A/T)が0.5~0.7であり、前記QSDFT法によって算出される全細孔容積T(cc/g)に対する、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち2.5~3.0nmの範囲の細孔径の細孔容積B(cc/g)の割合(B/T)が0.02~0.06であることから、大きな空塔速度(SV)での通水処理においても、高い総トリハロメタンろ過能力を有する活性炭を得ることができる。本発明の活性炭が備える、大きな空塔速度(SV)での通水処理における総トリハロメタンろ過能力としては、例えば、SV3000h-1の場合50~90L/gが挙げられ、50~70L/gが好ましく挙げられる。
【0036】
上記総トリハロメタンろ過能力(L/g)の測定は、以下の方法によりおこなう。すなわち、活性炭を105℃の乾燥機で2時間以上乾燥後、3.0gを採取し、ミキサーで叩解した後にガラスカラムに充填する。ガラスカラムは直径25mmのものを用い、高さ41mmになるように充填する。JIS-S-3201「家庭用浄水器試験方法」に基づいて総トリハロメタン(CHCl3:CHCl2Br:CHClBr2:CHBr3=45:30:20:5)濃度が100±20ppbの試料水を調製し、水温20℃±1℃に管理し、空塔速度3000h-1で活性炭カラムに通水する。試料水及び濾過水の濃度は、非放射線源式電子捕獲型検出器(GC7000EN、株式会社ジェイ・サイエンス・ラボ製)を使用しヘッドスペース法で測定する。濾過水の総トリハロメタン除去率が80%を下回るまで連続して試料水を通水し、除去率80%の通水量(L/g)を活性炭の総トリハロメタン吸着能力とする。
【0037】
次に、本発明の活性炭の製造方法について詳細に説明する。
【0038】
本発明の活性炭の製造方法は、モリブデンを0.1~1.0質量%含む活性炭前駆体を、CO2濃度が50容積%以上のガス雰囲気下、雰囲気温度900~1000℃で賦活する工程を含むことが好ましい。
【0039】
従来、浄水用途、特にトリハロメタン等の低分子の有機ハロゲン系化合物を除去する活性炭においては、活性炭前駆体を、水蒸気を多く含む雰囲気下で賦活する方法が多くおこなわれている。例えば、特許文献1には、実施可能な方法として、フラーレンを活性炭前駆体とし、水蒸気/窒素=50/50(体積比)の雰囲気下で賦活をおこなうことが開示されている。しかし、前述のように、特許文献1で開示された活性炭は2.5nm以上3.0nm以下の範囲の細孔径の細孔容積の割合が小さい。そして、仮に、上記方法において、賦活時間をより長くする等によって、2.5nm以上3.0nm以下の範囲の細孔径の容積の割合を増加することを図ったとしても、0.8nm以下の範囲の細孔径の細孔容積の割合が減少してしまう。
【0040】
また、特許文献2には、細孔直径30Å以上50Å未満の細孔の容積を特定範囲とするため、Mg、Mn、Fe、Y、Pt及びGdの少なくとも1種の金属成分を含有する活性炭前駆体を、窒素及び飽和水蒸気が存在する雰囲気下、賦活をおこなう方法が開示されている。しかし、該方法では、本発明者等の検討によれば、細孔径0.8nm以下の範囲の細孔容積及び2.5nm以上3.0nm以下の範囲の細孔径の細孔容積を十分に大きいものとすることができない。そして、仮に、上記方法において、賦活時間をより長くする等によって賦活をより進めたとしても、細孔直径30Å以上50Å未満よりも大きい範囲の細孔が発達するのみで2.5nm以上3.0nm以下の範囲の細孔径の細孔容積を大きくすることができない。
【0041】
一方、本発明の製造方法では、モリブデンを0.1~1.0質量%含む活性炭前駆体を、水蒸気よりもゆるやかに反応するCO2を50容量%以上含む賦活ガスを用いて賦活させることにより、細孔径0.8nm以下の範囲の細孔容積の割合を維持しつつ、2.5nm以上3.0nm以下の範囲の細孔径の細孔容積の割合を制御し特定範囲のものとすることが可能となる。
【0042】
本発明の製造方法において、活性炭前駆体の主原料としては、特に制限されない。例えば、不融化或いは炭素化した有機質材料、フェノール樹脂等の不融性樹脂等が挙げられ、該有機質材料としては、例えば、ポリアクリロニトリル、ピッチ、ポリビニルアルコール、セルロース等が挙げられる。炭素化時の理論炭素化収率の点で、ピッチが好ましく、ピッチの中でも特に石炭ピッチが好ましい。
【0043】
本発明の製造方法において、活性炭前駆体の前記モリブデンの含有量としては、0.1~1.5質量%が好ましく、0.4~1.2質量%がより好ましい。モリブデンは、モリブデン単体或いはモリブデン化合物を原料と混合することにより含有させることができる。モリブデン化合物としては、モリブデンを構成金属元素とする、金属酸化物、金属水酸化物、金属ハロゲン化物、金属硫酸塩等の無機金属化合物、酢酸等の有機酸と金属との塩、有機金属化合物などが挙げられる。有機金属化合物としては、金属アセチルアセトナート、芳香族金属化合物等が挙げられる。
【0044】
本発明の製造方法において、賦活のガス雰囲気は、CO2濃度が50容積%以上であり、好ましくは95容積%以上、より好ましくは99容積%以上である。前述のようにCO2を賦活ガスとするとゆるやかに反応が進むことから、CO2濃度が高くなるほど細孔径分布を調整しやすくなり、本発明の活性炭が得られやすくなる。
【0045】
賦活のガス雰囲気において、CO2以外の他の成分としては、N2、O2、H2、H2O、COが挙げられる。
【0046】
本発明の製造方法において、賦活の雰囲気温度は通常800~1000℃程度であり、好ましくは900~980℃程度である。また、賦活時間としては、活性炭前駆体の主原料、モリブデンの含有量、賦活ガス中のCO2濃度等に応じ、所定の細孔径分布となるよう調整すればよい。例えば、活性炭前駆体の主原料として軟化点が275℃~288℃のピッチを用い、活性炭前駆体の前記モリブデン化合物の含有量として0.1~5.0質量部含有するものとして、CO2濃度を100容量%とした場合は、賦活の雰囲気温度は900~1000℃、賦活時間は10~50分、より好ましくは20~50分として賦活をすることが挙げられる。
【実施例0047】
以下に、実施例及び比較例を示して本発明を詳細に説明する。ただし、本発明は、実施例に限定されない。
【0048】
各実施例及び比較例につき、以下の方法により評価した。
(1)活性炭前駆体(不融化したピッチ繊維)のモリブデン含有量(質量%)
ピッチ繊維を灰化処理し、灰分を酸に溶解しICP発光分光分析装置(Varian社製型式715-ES)により測定されるモリブデン元素換算の割合をモリブデン含有量とした。
【0049】
(2)活性炭の金属含有量(質量%)
繊維状活性炭を酸に溶解しICP発光分光分析装置(Varian社製型式715-ES)により測定されるモリブデン元素換算の割合をモリブデン含有量とした。
【0050】
(3)細孔容積(cc/g)、比表面積(m2/g)、繊維状活性炭の繊維径(μm)
細孔物性値は、Quantachrome社製「AUTOSORB-1-MP」を用いて77Kにおける窒素吸着等温線より測定した。比表面積はBET法によって相対圧0.1の測定点から計算した。全細孔容積T及び表1に記載した各細孔径範囲における細孔容積は、測定した窒素脱着等温線に対し、Calculation modelとしてN2 at 77K on carbon[slit pore,QSDFT equilibrium model]を適用して細孔径分布を計算することで、解析した。結果を図1~5のグラフに示す。表1に記載した各細孔径範囲における細孔容積は、図1~5に示した細孔径分布を示すグラフの読み取り値又は該読み取り値から計算される値である。より具体的に、細孔径0.8nm以下の細孔容積Aは、細孔径分布図の横軸Pore Widthが0.8nmにおけるCumulative Pore Volume(cc/g)の読み取り値である。同様にして、細孔径1.0nm以下の細孔容積、細孔径2.0nm以下の細孔容積C、細孔径2.5nm以下の細孔容積、細孔径3.0nm以下の細孔容積を得た。細孔径2.5~3.0nmの範囲の細孔容積Bは、上記細孔径3.0nm以下の細孔容積から上記細孔径2.5nm以下の細孔容積を減ずることで計算した。細孔径2.0nm以上の細孔容積Dは、上記全細孔容積Tから上記細孔径2.0nm以下の細孔容積Cを減ずることで計算した。細孔径3.0nm以上の細孔容積Eは、上記全細孔容積から上記細孔径3.0nm以下の細孔容積を減ずることで計算した。細孔径2.0~2.5nmの範囲の細孔容積Fは、上記細孔径2.5nm以下の細孔容積から上記2.0nm以下の細孔容積を減ずることで計算した。
【0051】
(4)繊維状活性炭の繊維径(μm)
画像処理繊維径測定装置(JIS K 1477に準拠)により測定した。
【0052】
(5)総トリハロメタンろ過能力(L/g)
繊維状活性炭を105℃の乾燥機で2時間以上乾燥後、3.0gを採取し、ミキサーで叩解した後にガラスカラムに充填した。ガラスカラムは直径25mmのものを用い、高さ41mmになるように充填した。JIS-S-3201「家庭用浄水器試験方法」に基づいて総トリハロメタン(CHCl3:CHCl2Br:CHClBr2:CHBr3=45:30:20:5)濃度が100±20ppbの試料水を調製し、水温20℃±1℃に管理し、空塔速度3000h-1で活性炭カラムに通水した。試料水及び濾過水の濃度は、非放射線源式電子捕獲型検出器(GC7000EN、株式会社ジェイ・サイエンス・ラボ製)を使用しヘッドスペース法で測定した。濾過水の総トリハロメタン除去率が80%を下回るまで連続して試料水を通水し、除去率80%の通水量(L/g)を活性炭の総トリハロメタン吸着能力とした。
【0053】
(実施例1)
有機質材料として、軟化点が280℃の粒状石炭ピッチ100質量部に対してビス(2,4-ペンタンジオナト)モリブデン(IV)ジオキシド(金属種Mo)0.8質量部を混合したものを、溶融押出機に供給し、溶融温度320℃で溶融混合し、吐出量16g/minで紡糸することによりピッチ繊維を得た。得られたピッチ繊維を空気中常温から354℃まで1~30℃/分の割合で54分間昇温することにより不融化処理をおこない、不融化されたピッチ繊維である活性炭前駆体を得た。該活性炭前駆体において、モリブデン(Mo)の含有量は0.23質量%であった。
【0054】
得られた活性炭前駆体を、CO2濃度が100容量%のガスを賦活炉内に連続的に導入し、雰囲気温度950℃で34分間熱処理することにより賦活をおこない、実施例1の活性炭を得た。得られた活性炭は、QSDFT法によって算出される全細孔容積Tが0.43cc/g、0.8nm以下の範囲の細孔径の細孔容積Aが0.26cc/g、2.5~3.0nmの範囲の細孔径の細孔容積Bが0.01cc/g、全細孔容積T(cc/g)に対するQSDFT法によって算出される細孔容積のうち0.8nm以下の範囲の細孔径の細孔容積A(cc/g)の割合(A/T)が0.60、全細孔容積T(cc/g)に対するQSDFT法によって算出される細孔容積のうち2.5~3.0nmの範囲の細孔径の細孔容積B(cc/g)の割合(B/T)が0.02、モリブデンの含有量は0.41質量%、平均繊維径は13.6μmであった。
【0055】
(実施例2)
有機質材料として、軟化点が280℃の粒状石炭ピッチ100質量部に対してビス(2,4-ペンタンジオナト)モリブデン(IV)ジオキシド(金属種Mo)0.8質量部を混合したものを、溶融押出機に供給し、溶融温度320℃で溶融混合し、吐出量16g/minで紡糸することによりピッチ繊維を得た。得られたピッチ繊維を空気中常温から354℃まで1~30℃/分の割合で54分間昇温することにより不融化処理をおこない、不融化されたピッチ繊維である活性炭前駆体を得た。該活性炭前駆体において、モリブデン(Mo)の含有量は0.23質量%であった。
【0056】
得られた活性炭前駆体を、CO2濃度が100容量%のガスを賦活炉内に連続的に導入し、雰囲気温度950℃で42分間熱処理することにより賦活をおこない、実施例2の活性炭を得た。得られた活性炭は、QSDFT法によって算出される全細孔容積Tが0.50cc/g、0.8nm以下の範囲の細孔径の細孔容積Aが0.28cc/g、2.5~3.0nmの範囲の細孔径の細孔容積Bが0.02cc/g、全細孔容積T(cc/g)に対するQSDFT法によって算出される細孔容積のうち0.8nm以下の範囲の細孔径の細孔容積A(cc/g)の割合(A/T)が0.56、全細孔容積T(cc/g)に対するQSDFT法によって算出される細孔容積のうち2.5~3.0nmの範囲の細孔径の細孔容積B(cc/g)の割合(B/T)が0.04、モリブデンの含有量は0.47質量%、平均繊維径は13.1μmであった。
【0057】
(比較例1)
特許文献2の実施例5を模擬した試験をおこなった。具体的に、有機質材料として、軟化点が280℃の粒状石炭ピッチ100質量部に対してトリスアセチルアセトナトイットリウム1.3質量部を混合したものを、溶融押出機に供給し、溶融温度320℃で溶融混合し、吐出量20g/minで紡糸することによりピッチ繊維を得た。得られたピッチ繊維を空気中常温から354℃まで1~30℃/分の割合で54分間昇温することにより不融化処理をおこない、不融化されたピッチ繊維である活性炭前駆体を得た。該活性炭前駆体において、イットリウムの含有量は0.25質量%であった。
【0058】
得られた活性炭前駆体を、H2O濃度が100容量%のガスを賦活炉内に連続的に導入し、雰囲気温度900℃で20分間熱処理することにより賦活をおこない、比較例1の活性炭を得た。得られた活性炭は、QSDFT法によって算出される全細孔容積Tが0.57cc/g、0.8nm以下の範囲の細孔径の細孔容積Aが0.15cc/g、2.5~3.0nmの範囲の細孔径の細孔容積Bが0.05cc/g、全細孔容積T(cc/g)に対するQSDFT法によって算出される細孔容積のうち0.8nm以下の範囲の細孔径の細孔容積A(cc/g)の割合(A/T)が0.26、全細孔容積T(cc/g)に対するQSDFT法によって算出される細孔容積のうち2.5~3.0nmの範囲の細孔径の細孔容積B(cc/g)の割合(B/T)が0.09、イットリウムの含有量は0.66質量%、平均繊維径は16.5μmであった。
【0059】
(比較例2)
有機質材料として、軟化点が280℃の粒状石炭ピッチを、溶融押出機に供給し、溶融温度320℃で溶融混合し、吐出量20g/minで紡糸することによりピッチ繊維を得た。得られたピッチ繊維を空気中常温から354℃まで1~30℃/分の割合で54分間昇温することにより不融化処理をおこない、不融化されたピッチ繊維である活性炭前駆体を得た。該活性炭前駆体において、イットリウムの含有量は0質量%であった。
【0060】
得られた活性炭前駆体を、H2O濃度が100容量%のガスを賦活炉内に連続的に導入し、雰囲気温度875℃で40分間熱処理することにより賦活をおこない、比較例2の活性炭を得た。得られた活性炭は、QSDFT法によって算出される全細孔容積Tが0.48cc/g、0.8nm以下の範囲の細孔径の細孔容積Aが0.33cc/g、2.5~3.0nmの範囲の細孔径の細孔容積Bが0.00cc/g、全細孔容積T(cc/g)に対するQSDFT法によって算出される細孔容積のうち0.8nm以下の範囲の細孔径の細孔容積A(cc/g)の割合(A/T)が0.69、全細孔容積T(cc/g)に対するQSDFT法によって算出される細孔容積のうち2.5~3.0nmの範囲の細孔径の細孔容積B(cc/g)の割合(B/T)が0.00、イットリウムの含有量は0質量%、平均繊維径は16.7μmであった。
【0061】
(比較例3)
有機質材料として、軟化点が280℃の粒状石炭ピッチ100質量部に対してトリスアセチルアセトナトイットリウム1.0質量部を混合したものを、溶融押出機に供給し、溶融温度320℃で溶融混合し、吐出量16g/minで紡糸することによりピッチ繊維を得た。得られたピッチ繊維を空気中常温から354℃まで1~30℃/分の割合で54分間昇温することにより不融化処理をおこない、不融化されたピッチ繊維である活性炭前駆体を得た。該活性炭前駆体において、イットリウムの含有量は0.16質量%であった。
【0062】
得られた活性炭前駆体を、CO2濃度が100容量%のガスを賦活炉内に連続的に導入し、雰囲気温度950℃で40分間熱処理することにより賦活をおこない、実施例3の活性炭を得た。得られた活性炭は、QSDFT法によって算出される全細孔容積Tが0.38cc/g、0.8nm以下の範囲の細孔径の細孔容積Aが0.21cc/g、2.5~3.0nmの範囲の細孔径の細孔容積Bが0.00cc/g、全細孔容積T(cc/g)に対するQSDFT法によって算出される細孔容積のうち0.8nm以下の範囲の細孔径の細孔容積A(cc/g)の割合(A/T)が0.55、全細孔容積T(cc/g)に対するQSDFT法によって算出される細孔容積のうち2.5~3.0nmの範囲の細孔径の細孔容積B(cc/g)の割合(B/T)が0.00、イットリウムの含有量は0.30質量%、平均繊維径は14.2μmであった。
【0063】
得られた活性炭の物性を表1に示す。また、図1~5に、実施例1及び2、比較例1~3の活性炭のQSDFT法によって算出される細孔径分布図を示す。
【0064】
【表1】
【0065】
実施例1及び2の活性炭は、QSDFT法によって算出される全細孔容積Tが0.3~1.5(cc/g)であって、前記QSDFT法によって算出される全細孔容積T(cc/g)に対する、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち0.8nm以下の範囲の細孔径の細孔容積A(cc/g)の割合(A/T)が0.5~0.7であり、前記QSDFT法によって算出される全細孔容積T(cc/g)に対する、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち2.5~3.0nmの範囲の細孔径の細孔容積B(cc/g)の割合(B/T)が0.02~0.06であることから、大きな空塔速度(SV)での通水処理においても、高い総トリハロメタンろ過能力を有する活性炭を得ることができるものであった。
【0066】
特に、実施例2の活性炭は、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、QSDFT法によって算出される全細孔容積Tが0.48~0.53cc/gであって、前記QSDFT法によって算出される全細孔容積T(cc/g)に対する、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち0.8nm以下の範囲の細孔径の細孔容積A(cc/g)の割合(A/T)が0.54~0.58であり、前記QSDFT法によって算出される全細孔容積T(cc/g)に対する、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち2.5~3.0nmの範囲の細孔径の細孔容積B(cc/g)の割合(B/T)が0.03~0.05であることから、大きな空塔速度(SV)での通水処理においても、高い総トリハロメタンろ過能力を有する活性炭を得ることができるものであった。
【0067】
一方、比較例1の活性炭は、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、QSDFT法によって算出される全細孔容積T(cc/g)に対する、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち0.8nm以下の範囲の細孔径の細孔容積A(cc/g)の割合(A/T)が0.5未満であり、QSDFT法によって算出される全細孔容積T(cc/g)に対する、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち2.5~3.0nmの範囲の細孔径の細孔容積B(cc/g)の割合(B/T)が0.06を超えるものであることから、上記総トリハロメタンろ過能力が劣るものであった。
【0068】
比較例2及び3の活性炭は、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、QSDFT法によって算出される全細孔容積T(cc/g)に対する、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち2.5~3.0nmの範囲の細孔径の細孔容積B(cc/g)の割合(B/T)が0.02未満であったことから、上記総トリハロメタンろ過能力が劣るものであった。
図1
図2
図3
図4
図5