(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022013236
(43)【公開日】2022-01-18
(54)【発明の名称】盛り付け装置、盛り付けプログラム、及び盛り付け方法
(51)【国際特許分類】
B25J 13/00 20060101AFI20220111BHJP
【FI】
B25J13/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020115654
(22)【出願日】2020-07-03
(71)【出願人】
【識別番号】501428545
【氏名又は名称】株式会社デンソーウェーブ
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】特許業務法人 サトー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】案西 秀一
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707BS10
3C707DS01
3C707ES17
3C707KS01
3C707KT01
3C707KT11
3C707LS15
3C707LV05
3C707NS26
(57)【要約】
【課題】見栄えの良い盛り付けを行う。
【解決手段】盛り付け装置は、ロボットアームと、ロボットアームの先端に取り付けられワークを保持可能な保持部と、ロボットアームを動作させて素材容器内に充填されているワークを保持部ですくい取り保持部内に保持するすくい取り処理を実行可能なすくい取り処理部と、ロボットアームを動作させて保持部ですくい取ったワークを保持部内に保持したまま保持部を所定位置まで移動させる移動処理を実行可能な移動処理部と、ロボットアームを動作させて予め設定された回転軸を中心に保持部を回転させて保持部内に保持されたワークを保持部から落として盛り付ける盛り付け処理を実行可能な盛り付け処理部と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットアームと、
前記ロボットアームの先端に取り付けられワークを保持可能な保持部と、
前記ロボットアームを動作させて素材容器内に充填されているワークを前記保持部ですくい取り前記保持部内に保持するすくい取り処理を実行可能なすくい取り処理部と、
前記ロボットアームを動作させて、前記保持部ですくい取った前記ワークを前記保持部内に保持したまま前記保持部を所定位置まで移動させる移動処理を実行可能な移動処理部と、
前記ロボットアームを動作させて予め設定された回転軸を中心に前記保持部を回転させて前記保持部内に保持された前記ワークを前記保持部から落として盛り付ける盛り付け処理を実行可能な盛り付け処理部と、を備える、
盛り付け装置。
【請求項2】
前記回転軸は、前記保持部を切断した断面の範囲内を通る位置に設定されている、
請求項1に記載の盛り付け装置。
【請求項3】
前記ワークが液体である場合において、
前記すくい取り処理は、前記素材容器の上方で前記保持部を所定角度傾けた状態にする処理を更に含む、
請求項1又は2に記載の盛り付け装置。
【請求項4】
前記すくい取り処理は、前記保持部の底部側から前記ワーク内に前記保持部を挿入する処理を更に含む、
請求項1又は2に記載の盛り付け装置。
【請求項5】
前記すくい取り処理は、前記保持部の開口部の周囲を形成する縁部から前記保持部の少なくとも一部を前記ワーク内に挿入し、その後、前記開口部が上方へ向く方向へ前記保持部を傾ける処理を更に含む、
請求項1又は2に記載の盛り付け装置。
【請求項6】
前記すくい取り処理は、前記保持部の少なくとも一部を前記ワーク内に挿入した状態で前記保持部を水平方向へ移動させる処理を更に含む、
請求項5に記載の盛り付け装置。
【請求項7】
前記盛り付け処理は、前記回転軸を前記保持部の縁部に設定し、前記回転軸の水平方向の位置を固定した状態で前記回転軸を中心に前記保持部を傾ける処理を更に含む、
請求項1から6のいずれか一項に記載の盛り付け装置。
【請求項8】
前記盛り付け処理は、前記保持部を90度以上傾ける処理を更に含む、
請求項7に記載の盛り付け装置。
【請求項9】
前記盛り付け処理は、前記保持部を前記回転軸に対して直角方向でかつ水平方向に移動させながら傾ける処理を含む、
請求項1から6のいずれか一項に記載の盛り付け装置。
【請求項10】
前記盛り付け処理は、前記保持部の内面に対して物理的な力を作用させて前記保持部が保持している前記ワークを前記保持部の内側面から剥す剥し処理を含む、
請求項1から9のいずれか一項に記載の盛り付け装置。
【請求項11】
前記剥し処理は、前記保持部の内面を加熱する、又は前記保持部の内面に気体を吐出する、若しくは前記保持部を振動させることで、前記保持部内に保持されたワークを前記保持部の内側面から剥す処理を含む、
請求項10に記載の盛り付け装置。
【請求項12】
ロボットアームと、
前記ロボットアームの先端に取り付けられワークを保持可能な保持部と、
前記ロボットアームの動作を制御可能なロボットコントローラと、
を用いて食材を盛り付けるロボットにおいて実行されるプログラムであって、
前記ロボットコントローラが有するCPUに、
前記ロボットアームを動作させて、素材容器内に充填されている食材を前記保持部ですくい取り前記保持部内に保持するすくい取り処理と、
前記ロボットアームを動作させて、前記保持部ですくい取った前記ワークを前記保持部内に保持したまま前記保持部を所定位置まで移動させる移動処理と、
前記ロボットアームを動作させて、前記保持部の開口部の面方向に対して直角方向の面で前記保持部を切断した断面の範囲内を通る位置に設定された回転軸を中心に前記保持部を傾けて前記保持部内に保持された前記ワークを前記保持部から落として所定位置に盛り付ける盛り付け処理と、を実行させることができる、
盛り付けプログラム。
【請求項13】
ロボットアームと、
前記ロボットアームの先端に取り付けられワークを保持可能な保持部と、
を備えるロボットを用いてワークを盛り付ける方法であって、
前記ロボットアームを動作させて素材容器内に充填されているワークを前記保持部ですくい取り前記保持部内に保持するすくい取り処理と、
前記ロボットアームを動作させて前記保持部ですくい取った前記ワークを前記保持部内に保持したまま前記保持部を所定位置まで移動させる移動処理と、
前記ロボットアームを動作させて前記保持部の開口部の面方向に対して直角方向の面で前記保持部を切断した断面の範囲内を通る位置に設定された回転軸を中心に前記保持部を傾けて前記保持部内に保持された前記ワークを前記保持部から落として所定位置に盛り付ける盛り付け処理と、を順に実行する、
盛り付け方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、盛り付け装置、盛り付けプログラム、及び盛り付け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ロボットを用いて食材等のワークの盛り付けを行う技術が開発されている。このような技術は、例えば人手不足の解消や生産性の向上、又は客への催し物を目的として用いられることがある。このような技術は、多種類のワークに対応するための汎用性や人との協働性を考慮すると、例えば人が使用する器具と同様の器具を用いて盛り付けを行うことが好ましい。しかしながら、例えば食材等は液体や粉体、ジェル状若しくはゲル状等のようにその形態が不安定なものが多い。そのため、このような不安定なワークを、人が使用する器具と同様の器具を用いてロボットが盛り付けようとすると、例えばワークに過剰な力がかかってワークが飛び散ったりし、盛り付けの見栄えが良くない等の課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上述した事情を鑑みてなされてものであり、その目的は、人が使用する器具と同様の器具を用いてロボットが食材等のワークを盛り付ける際に、ワークの飛び散り等を低減して見栄え良く盛り付けることができる盛り付け装置、盛り付けプログラム、及び盛り付け方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の盛り付け装置は、ロボットアームと、前記ロボットアームの先端に取り付けられワークを保持可能な保持部と、前記ロボットアームを動作させて素材容器内に充填されているワークを前記保持部ですくい取り前記保持部内に保持するすくい取り処理を実行可能なすくい取り処理部と、前記ロボットアームを動作させて、前記保持部ですくい取った前記ワークを前記保持部内に保持したまま前記保持部を所定位置まで移動させる移動処理を実行可能な移動処理部と、前記ロボットアームを動作させて予め設定された回転軸を中心に前記保持部を回転させて前記保持部内に保持された前記ワークを前記保持部から落として盛り付ける盛り付け処理を実行可能な盛り付け処理部と、を備える。
【0006】
これによれば、盛り付け処理は、保持部41を回転させて保持部41内に保持されたワークFを保持部41から適切に落として盛り付けることができるため、人が使用する器具と同様の器具を用いてロボットが食材等のワークを盛り付ける際に、ワークの飛び散りを低減して見栄え良く盛り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1実施形態による盛り付け装置を生産ラインに適用した例を示す図
【
図2】第1実施形態による盛り付け装置の概略構成の一例を示す図
【
図3】第1実施形態による盛り付け装置で使用される器具の一例を示す側断面図
【
図4】第1実施形態による盛り付け装置で使用される器具の一例を示す平面図
【
図5】第1実施形態による盛り付け装置で使用される器具の一例を示すもので、
図3のX5-X5線に沿って示す断面図
【
図6】第1実施形態による盛り付け装置のロボットコントローラで実行される制御の一例を示すフローチャート
【
図7】第1実施形態による盛り付け装置において、すくい取り処理を実行した際の動作の一例を示す図(その1)
【
図8】第1実施形態による盛り付け装置において、すくい取り処理を実行した際の動作の一例を示す図(その2)
【
図9】第1実施形態による盛り付け装置において、すくい取り処理を実行した際の動作の一例を示す図(その3)
【
図10】第1実施形態による盛り付け装置において、すくい取り処理を実行した際の動作の一例を示す図(その4)
【
図11】第1実施形態による盛り付け装置において、盛り付け処理を実行した際の動作の一例を示す図(その1)
【
図12】第1実施形態による盛り付け装置において、盛り付け処理を実行した際の動作の一例を示す図(その2)
【
図13】第1実施形態による盛り付け装置において、盛り付け処理を実行した際の動作の一例を示す図(その3)
【
図14】第1実施形態による盛り付け装置において、盛り付け処理を実行した際の動作の一例を示す図(その4)
【
図15】第2実施形態による盛り付け装置において、盛り付け処理を実行した際の動作の一例を示す図(その1)
【
図16】第2実施形態による盛り付け装置において、盛り付け処理を実行した際の動作の一例を示す図(その2)
【
図17】第2実施形態による盛り付け装置において、盛り付け処理を実行した際の動作の一例を示す図(その3)
【
図18】第2実施形態による盛り付け装置において、盛り付け処理を実行した際の動作の一例を示す図(その4)
【
図19】第2実施形態による盛り付け装置において、盛り付け処理を実行した際における器具の位置と角度との関係を示すグラフ
【
図20】第3実施形態による盛り付け装置において、すくい取り処理を実行した際の動作の一例を示す図(その1)
【
図21】第3実施形態による盛り付け装置において、すくい取り処理を実行した際の動作の一例を示す図(その2)
【
図22】第3実施形態による盛り付け装置において、すくい取り処理を実行した際の動作の一例を示す図(その3)
【
図23】第3実施形態による盛り付け装置において、すくい取り処理を実行した際の動作の一例を示す図(その4)
【
図24】第3実施形態による盛り付け装置において、すくい取り処理を実行した際の動作の一例を示す図(その5)
【
図25】第3実施形態による盛り付け装置において、すくい取り処理を実行した際の動作の一例を示す図(その6)
【
図26】第3実施形態による盛り付け装置において、盛り付け処理を実行した際の動作の一例を示す図(その1)
【
図27】第3実施形態による盛り付け装置において、盛り付け処理を実行した際の動作の一例を示す図(その2)
【
図28】第4実施形態による盛り付け装置において、すくい取り処理を実行した際の動作の一例を示す図(その1)
【
図29】第4実施形態による盛り付け装置において、すくい取り処理を実行した際の動作の一例を示す図(その2)
【
図30】第4実施形態による盛り付け装置において、すくい取り処理を実行した際の動作の一例を示す図(その3)
【
図31】第4実施形態による盛り付け装置において、すくい取り処理を実行した際の動作の一例を示す図(その4)
【
図32】第4実施形態による盛り付け装置において、すくい取り処理を実行した際の動作の一例を示す図(その5)
【
図33】第4実施形態による盛り付け装置において、すくい取り処理を実行した際の動作の一例を示す図(その6)
【
図34】第4実施形態による盛り付け装置において、盛り付け処理を実行した際の動作の一例を示す図(その1)
【
図35】第4実施形態による盛り付け装置において、盛り付け処理を実行した際の動作の一例を示す図(その2)
【
図36】第5実施形態による盛り付け装置において、剥し処理を含む盛り付け処理を実行した際の動作の一例を示す図
【
図37】第6実施形態による盛り付け装置において、盛り付け処理を実行した際の動作の一例を示す図(その1)
【
図38】第6実施形態による盛り付け装置において、盛り付け処理を実行した際の動作の一例を示す図(その2)
【
図39】第6実施形態による盛り付け装置において、盛り付け処理を実行した際の動作の一例を示す図(その3)
【
図40】第6実施形態による盛り付け装置において、剥し処理を含む盛り付け処理を実行した際の動作の一例を示す図
【
図41】第7実施形態による盛り付け装置において、盛り付け処理を実行した際の動作の一例を示す図(その1)
【
図42】第7実施形態による盛り付け装置において、盛り付け処理を実行した際の動作の一例を示す図(その2)
【
図43】第7実施形態による盛り付け装置において、盛り付け処理を実行した際の動作の一例を示す図(その3)
【
図44】第7実施形態による盛り付け装置において、盛り付け処理を実行した際の動作の一例を示す図(その4)
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、複数の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、各実施形態において、同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
【0009】
(第1実施形態)
以下では、第1実施形態について
図1から
図14を参照して説明する。本実施形態の盛り付け装置10の盛り付け対象となるワークは、多量にまとまった状態の中から一部を取り分けることができるものであり、例えば液体、粉体、ゲル状若しくはジェル状の物体、又は小さな個体の集合体、若しくはこれらを組み合わせた集合体等で構成することができる。盛り付け装置10の盛り付け対象となるワークは、食材や食材に類似した食材サンプル等を想定するこができるが、食材や食品サンプルに限られない。盛り付け装置10は、
図1に示すように、例えば加工食品の生産ライン1に適用することができる。盛り付け装置10は、生産ライン1に限らず、例えば飲食店の厨房等での作業に適用することもできる。
【0010】
[全体構成]
盛り付け装置10は、
図2にも示すように、カメラ11、ロボットアーム20、及びロボットコントローラ30を有している。カメラ11は、例えばロボットアーム20による作業領域を撮影可能なカメラである。ロボットアーム20は、例えば複数のアームを有する垂直多関節のロボットアームであり、ロボットコントローラ30によって制御される。本実施形態のロボットアーム20は、例えば人との協働を前提としており、その動作環境に安全柵が不要となるように、動作速度や重量等が設計されている。
【0011】
なお、ロボットアーム20は、例えば水平多関節型のロボットやパラレルリンク側のロボットアーム、直交型のロボットアーム等であっても良い。また、ロボットアーム20は、安全柵の設置を前提とするものでも良い。ロボットアーム20とロボットコントローラ30とは、有線または無線により相互通信可能に構成される。また、ロボットコントローラ30は、パソコンや、スマートフォンなどの携帯端末など、その他の外部の装置に有線または無線により相互通信可能に接続されていても良い。
【0012】
本実施形態の生産ライン1は、例えば素材容器2及び搬送装置3等を備えている。この場合、カメラ11は、素材容器2及び搬送装置3の上方に設けられており、少なくとも素材容器2の表面を撮影することができる。なお、カメラ11は、素材容器2の表面に加えて、搬送装置3上においてロボットアーム20の可動領域内に存在する完成品容器Wの表面を撮影できるように構成しても良い。
【0013】
素材容器2は、ロボットアーム20の可動範囲内すなわち作業領域内に設定されており、ロボットアーム20により盛り付けを行う対象となるワークFが貯留されている。本実施形態の場合、ワークFは、例えば1食分ずつ個別に作るよりも複数食分でまとめて作る方が製造効率の良い食材であって、かつ、一般的にスプーン等ですくって取り分けることができるものである。
【0014】
ワークFは、例えばスープ等のように液体を主体としたものでも良いし、カレールーやシチュー又はソース等のように比較的粘性の高い流動体を主体にしたものでも良い。この場合、流動体を主体にワークFには、例えばジャガイモやニンジン、肉等の固形の具材が含まれていても良い。また、ワークFは、ライス、炒飯、ポテトサラダ、野菜炒め等のように、小さな固形の具材を集めて調理したものでも良い。更に、ワークFは、例えばアイスクリームやシャーベット等のようなものでも良い。
【0015】
搬送装置3は、例えばベルトコンベアで構成されており、加工対象となるワークFこの場合、完成品容器Wを搬送する。完成品容器Wは、完成品となる食品を収容するための容器である。完成品容器Wは、搬送装置3によりほぼ一定の速度でかつほぼ一定の間隔で連続して搬送される。また、盛り付け装置10は、器具40を有している。本実施形態において、器具40は、例えば人が食材等の盛り付けに使用する器具と同様の形状の器具とすることができ、例えばスプーン、おたま、ヘラ、フライ返し等と同様の形状に形成されている。本実施形態において、器具40は、匙形状又は椀形状に形成された保持部41を有しており、ロボットアーム20の先端に直接又は間接的に取り付けられる。そして、ロボットアーム20は、素材容器2内に貯留されているワークFを器具40ですくい取り、すくい取ったワークFを保持した状態で移動し、搬送装置3によって流れてくる完成品容器W内に盛り付ける機能を有する。
【0016】
ロボットアーム20は、例えば6軸を有する垂直多関節ロボットで構成されている。ロボットアーム20は、
図2に示すように、ベース21と、複数この場合6つのアーム221~226と、を有している。ロボットアーム20が一定の場所に設置して使用するものであれば、ベース21は、設置面に固定されている。また、ロボットアーム20が人によって持ち運び可能な程度に小型のものである場合、ベース21は、設置面に固定されていなくても良い。各アーム221~226は、ベース21上に順に設けられている。本実施形態の場合、ベース21側から順に、第1アーム221、第2アーム222、第3アーム223、第4アーム224、第5アーム225、及び第6アーム226と称する。
【0017】
各アーム221~226は、それぞれ複数の軸J1~J6を介して回転可能に連結されている。この場合、ベース21側から順に、第1軸J1、第2軸J2、第3軸J3、第4軸J4、第5軸J5、及び第6軸J6と称する。なお、各軸J1~J6を特定しない場合は、各軸J1~J6を総称して単に軸Jと称する。第1軸J1は、垂直方向に延びる回転軸であり、ベース21に対して第1アーム221を水平方向に回転可能に連結する。第2軸J2は、水平方向に延びる回転軸であり、第1アーム221に対して第2アーム222を鉛直方向に回転可能に連結する。
【0018】
第3軸J3は、水平方向に延びる回転軸であり、第2アーム222に対して第3アーム223を鉛直方向に回転可能に連結する。第4軸J4は、第3アーム223の長手方向に延びる回転軸であり、第3アーム223に対して第4アーム224と回転可能に連結する。第5軸J5は、水平方向に延びる回転軸であり、第4アーム224に対して第5アーム225を鉛直方向に回転可能に連結する。そして、第6軸J6は、第5アーム225の長手方向に延びた回転軸であり、第5アーム225に対して第6アーム226を回転可能に連結する。
【0019】
本実施形態の場合、第6アーム226はロボットアーム20の手先部分であり、例えばフランジ形状に構成されている。第6アーム226の先端部分にはツール部23が着脱可能に装着される。ツール部23は、例えばチャックやグリッパと称されるものである。本実施形態の場合、ツール部23は、ワークFの盛り付けに用いる器具40を把持することができる。また、ロボットアーム20は、詳細は図示しないが、各軸J1~J6を駆動するためのモータ、各軸J1~J6の回転数及び位置を検出するためのエンコーダ、及び各軸J1~J6の動作を停止させるためのブレーキ等を有している。
【0020】
盛り付けに用いる器具40の形状やサイズは、ワークFの種類や盛り付ける量等に応じて適宜選択することができる。例えばワークFがスープやカレールー又はシチュー等のように主として液体でかつ盛り付ける量が比較的多いものである場合、器具40は、深く大きいおたま形状のものとすることができる。また、例えばワークFがソース等のように主として液体でかつ盛り付ける量が比較的少ないものである場合、器具40は、浅く小さいおたま形状のものとすることができる。更に、例えばワークFがポテトサラダ等のように主として固形物で構成されているものの場合、器具40は、例えば浅く大きいおたま形状又はヘラ形状のものとすることができる。
【0021】
ロボットアーム20は、
図2に示すロボットコントローラ30によって制御される。ロボットコントローラ30は、制御部31を有している。制御部31は、例えばCPU311や、ROM、RAM、及び書き換え可能なフラッシュメモリなどの記憶領域312を有するマイクロコンピュータを主体に構成されており、ロボットアーム20全体の動作を制御する。
【0022】
ロボットコントローラ30は、詳細は図示しないがインバータ回路などから構成された駆動部を備えており、ロボットアーム20の各軸J1~J6を駆動するモータに対応して設けられているエンコーダで検知したモータの回転位置に基づいて例えばフィードバック制御によりそれぞれのモータを駆動する。ロボットコントローラ30は、予め設定された動作プログラムを実行することにより、ロボットアーム20の各軸J1~J6が予め定められた所定の動作を自動的に実行するようにロボットアーム20を制御する。
【0023】
この場合、記憶領域312は、例えばワークFを完成品容器Wに盛り付けるための盛り付けプログラムを記憶している。そして、ロボットコントローラ30は、CPU311において盛り付けプログラムを実行することにより、画像認識処理部32、すくい取り処理部33、移動処理部34、及び盛り付け処理部35等をソフトウェアによって仮想的に実現する。
【0024】
すなわち、ロボットコントローラ30が有する各処理部32~35は、CPU311が上述した記憶領域312等の非遷移的実体的記憶媒体に格納されているコンピュータプログラムを実行してコンピュータプログラムに対応する処理を実行することにより実現されている、つまりソフトウェアにより実現されている。なお、各処理部32~35のうち少なくとも一部をハードウェアにより実現する構成としてもよい。例えば画像認識処理部32、すくい取り処理部33、移動処理部34、及び盛り付け処理部35等は、例えば制御部31と一体の集積回路としてハードウェア的に実現してもよい。
【0025】
画像認識処理部32は、画像認識処理を実行可能である。画像認識処理は、カメラ11で撮影した画像を処理し、素材容器2の表面状態すなわち素材容器2内に貯留されているワークFの残量等や、搬送装置3上を流れる完成品容器Wの有無及び完成品容器W内の食品の状態等を認識することができる。
【0026】
すくい取り処理部33は、すくい取り処理を実行可能である。すくい取り処理は、ロボットアーム20を動作させて、すくい取り処理の実行位置まで移動させた後、素材容器2内に充填されているワークFを保持部41ですくい取り、保持部41内に保持する処理を含む。この場合、すくい取り処理の実行位置は、例えば
図1及び
図2の二点鎖線Aで示す領域内に設定されている。
【0027】
移動処理部34は、移動処理を実行可能である。移動処理は、ロボットアーム20を動作させて、保持部41ですくい取ったワークFを保持部41内に保持したまま保持部41を所定位置まで移動させる処理を含む。この場合、所定位置は、盛り付け処理を開始する位置であり、例えば
図1及び
図2の二点鎖線Bで示す範囲内に設定されている。また、所定位置は、ロボットアーム20に取り付けられた保持部41と搬送装置3上を流れる完成品容器Wとの相対的な位置関係とすることができる。すなわち、この場合、所定位置は、搬送装置3に対する完成品容器Wの配置等に応じて変動する。
【0028】
盛り付け処理部35は、盛り付け処理を実行可能である。盛り付け処理は、ロボットアーム20を動作させて、回転軸を中心に保持部41を傾けて保持部41内に保持されたワークFを保持部41から落として完成品容器W内に盛り付ける処理を含む。
【0029】
例えば
図3から
図5に示す器具40は、ワークFがスープ等の液状である場合に適したものである。器具40は、保持部41、柄部42、及び把持部43を有している。保持部41は、開口部411を有して窪んだ匙状又は椀形状、若しくはいわゆるおたまの形状、具体的には半球状に形成されており、半球状の内側にワークFを保持可能に構成されている。保持部41の内部と外部とを連通する開口部411は、
図4に示すように平面視で円形に形成されている。なお、保持部41の平面形状は、円形に限られず、楕円形、矩形、多角形等であっても良い。更に、保持部41は、例えばヘラやフライ返しのように平板状に構成されても良く、ワークFの性質に合わせて種々の形状を採用することができる。
【0030】
柄部42は、保持部41の縁部から開口部411に対して直角方向へ延びた板状又は棒状に形成されている。柄部42は、把持部43と保持部41とを接続している。把持部43は、柄部42における保持部41側とは反対の端部に設けられている。把持部43は、平面視において保持部41とは反対側へ延びている。把持部43は、ツール部23によって把持される部分である。
【0031】
そしてこの場合、回転軸Zは、
図5に示すように、保持部41の開口部411の面方向に対して直角方向の面で保持部41を切断した断面の範囲内を通る位置に設定されている。なお、この場合、保持部41の開口部411の面方向に対して直角方向の面で保持部41を切断した断面の範囲内とは、
図5において保持部41の断面の外形線及びその外形線の内側の領域を意味する。本実施形態の場合、回転軸Zは、
図5に示すように、第6軸J6方向に平行でかつ開口部411の面と同一面つまり保持部41の外縁部分に設定されている。なお、器具40は、ロボットアーム20での使用のために専用に作られたものだけでなく、例えば市販の調理器具を用いることもできる。
【0032】
盛り付けにおいて、制御部31は、
図6に示す制御フローに沿った制御を実行する。なお、以下の説明において、画像認識処理部32、すくい取り処理部33、移動処理部34、及び盛り付け処理部35で実行される各処理は、いずれも制御部31が主体として実行するものとして説明する。
【0033】
制御部31は、盛り付けプログラムを実行すると(スタート)、ステップS11におけるすくい取り処理、ステップS12における移動処理、ステップS13における盛り付け処理、を順に実行する。そして、制御部31は、盛り付けを行う完成品容器Wがまだ残っている場合は(ステップS14でNO)、ステップS11へ処理を戻してステップS11以降を繰り返す。また、制御部31は、盛り付けを行う完成品容器Wが無くなった場合は(ステップS14でYES)、一連の処理を終了する(エンド)。なお、画像認識処理は、上述のフローの間随時実行される。そして、制御部31は、画像認識処理の結果に基づいて、すくい取り処理、移動処理、及び盛り付け処理におけるロボットアーム20の移動位置等を補正する。
【0034】
ワークFがスープ等の液状のものである場合、すくい取り処理は、
図9に示すように、素材容器2の上方で保持部41を所定角度傾けた状態にする処理を含むことができる。この場合、制御部31は、すくい取り処理において、次のようにロボットアーム20を制御する。すなわち、制御部31は、例えば
図7及び
図8に示すように、保持部41の開口部411を水平面に対して所定角度傾けた姿勢で、素材容器2に貯留されているワークF内へ、保持部41の底部側から保持部41を挿入する。その後、制御部31は、所定角度傾けた姿勢を維持したまま、
図9に示すように保持部41をワークF内から引き上げる。そして、制御部31は、
図10に示すように、開口部411が水平となるように保持部41の傾きを戻す。これより、保持部41内のワークFは、満杯状態よりも少ない量となる。そのため、移動処理の実行時に、保持部41が揺れるなどして保持部41からワークFが溢れ出てしまうことを抑制できる。
【0035】
また、この場合、制御部31は、開口部411の水平を保ったまま保持部41をワークF内に挿入及び引き上げ、その後、満杯となった保持部41を所定角度傾けて保持部41内のワークFを排出する構成でも良い。なお、所定角度は、保持部41自体の容量や保持部41内に残すワークFの量にもよるが、例えば数度から10度程度に設定することができる。
【0036】
また、本実施形態において、すくい取り処理により保持部41が素材容器2内のワークFに挿入されているつまり沈み込んでいる間は、制御部31は、保持部41を傾ける等の上下方向以外の方向への動作を行わない。これにより、保持部41の動作により液体で構成されたワークFに波が立ってワークFが素材容器2から溢れ出てしまうことを抑制できる。
【0037】
また、本実施形態の場合、盛り付け処理は、回転軸Zを保持部41の縁部に設定する処理を更に含む。ここで、保持部41の縁部と回転軸Zとの交点を流出点Pとする。流出点Pは、回転軸Zを支点に保持部41を傾けた際に、保持部41内の食材が流出する箇所である。この場合、制御部31は、盛り付け処理を実行すると、
図11及び
図12に示すように、完成品容器Wの上方に流出点Pが位置するようにロボットアーム20を制御する。完成品容器Wに対する流出点Pの位置は、ワークFや盛り付ける範囲によって異なる。ワークFがスープ等の液体である場合、流出点Pの位置は、完成品容器Wの中心付近の上方であることが好ましい。
【0038】
そして、盛り付け処理は、
図13に示すように、回転軸Zの水平方向の位置つまり流出点Pの水平方向の位置を固定した状態で回転軸Zを中心に保持部41を傾ける処理を更に含む。この場合、回転軸Zの上下方向の位置つまり流出点Pの上下方向の位置も固定されている。これにより、保持部41内のワークFがスープ等の液体である場合、その液体であるワークFは、流出点Pから完成品容器W内に流し落とされ、これによりワークFの盛り付けが行われる。
【0039】
また、この場合、盛り付け処理は、
図14に示すように、保持部41を90度以上傾ける処理を更に含む。これにより、保持部41内のワークFを確実に完成品容器W内に落とすことができる。
【0040】
以上説明した実施形態によれば、盛り付け装置10は、ロボットアーム20と、保持部41とすくい取り処理部33と、移動処理部34と、盛り付け処理部35と、を備える。保持部41は、ロボットアーム20の先端に取り付けられてワークFを保持可能に構成されている。すくい取り処理部33は、ロボットアーム20を動作させて素材容器2内に充填されているワークFを保持部41ですくい取り保持部41内に保持するすくい取り処理を実行可能である。移動処理部34は、ロボットアーム20を動作させて、保持部41ですくい取ったワークFを保持部41内に保持したまま保持部41を所定位置まで移動させる移動処理を実行可能である。そして、盛り付け処理部35は、盛り付け処理を実行可能である。盛り付け処理は、ロボットアーム20を動作させて、保持部41を回転させて保持部41内に保持されたワークFを保持部41から落として盛り付ける処理を含む。
【0041】
これによれば、盛り付け処理は、保持部41を回転させて保持部41内に保持されたワークFを保持部41から落として盛り付けることができるため、人が使用する器具と同様の器具40を用いてロボット10が食材等のワークFを盛り付ける際に、ワークFの飛び散りを低減して見栄え良く盛り付けることができる。
【0042】
ここで、本願発明者は、ワークFを盛り付ける際にワークFが飛び散る要因として、保持部41内のワークFを落下させる際にワークFに働く過剰な遠心力があることを見出した。すなわち、保持部41で保持しているワークFを盛り付けるためには、保持部41を一定角度以上回転すなわち傾ける必要がある。このとき、回転中心が保持部41から離れた位置にあると、保持部41の移動速度が速くなり易く、これにより、保持部41内のワークFに過剰な遠心力が作用して開口部411から飛び出し易くなる。その結果、ワークFが飛び散り易くなる。
【0043】
これに対し、回転軸Zは、保持部41を切断した断面の範囲内を通る位置に設定されている。すなわち、本実施形態の盛り付け処理は、保持部41に対して直角方向の面で保持部41を切断した断面の範囲内を通る位置に設定された回転軸Zを中心に保持部41を回転させて保持部41内に保持されたワークFを保持部41から落として盛り付ける処理を含む。これによれば、回転軸Zを保持部41の極力近い位置に設定することができるため、保持部41内のワークFに過剰な遠心力、すなわち開口部411から外側へ向かう方向へ作用する遠心力を抑えることができる。これにより、保持部41からワークFを落とす際にワークFが飛び散ることを抑制でき、その結果、見栄えの良い盛り付けを行うことができる。
【0044】
また、本実施形態のすくい取り処理は、素材容器2の上方で保持部41を所定角度傾けた状態にする処理を更に含む。これによれば、例えばワークFがスープ等の液体である場合に、保持部41内のワークFを、保持部41の満杯状態よりも少ない量となる。これにより、移動処理の実行時に保持部41が揺れるなどして保持部41からワークFが溢れ出てしまい、周囲が汚れてしまうことを抑制できる。
【0045】
また、ワークFがスープ等の液体である場合において、すくい取り処理は、保持部41の底部側からワークF内に保持部41を挿入する、すなわち保持部41を底部側からワークFに沈める処理を更に含む。これによれば、保持部41を液体で構成されたワークFに沈ませる際にワークFに波が立ち難い。その結果、ワークFが波立ってワークFが素材容器2から溢れ出てしまい、ひいては素材容器2の周囲を汚してしまうことを抑制できる。
【0046】
また、盛り付け処理は、回転軸Zを保持部41の縁部に設定し、回転軸Zの水平方向の位置を固定した状態で回転軸Zを中心に保持部41を傾ける処理を更に含む。すなわち、盛り付け処理は、保持部41内に保持されたワークFが保持部41から流出する流出点Pについて水平方向の位置を固定し、その流出点Pを支点に保持部41を傾ける処理を含む。これによれば、流出点Pの水平方向の位置が固定されているため、例えばワークFが液体である場合には、完成品容器Wの一定位置に液体であるワークFが注ぎ込まれる。そのため、完成品容器Wに注ぎ込まれたワークFに波が立ち難くすることができ、その結果、ワークFが波立ってワークFが完成品容器Wから溢れ出てしまい、ひいては完成品容器Wの周囲を汚してしまうことを抑制できる。
【0047】
また、この場合、盛り付け処理は、
図14に示すように、保持部41を90度以上傾ける処理を更に含む。これにより、保持部41内のワークFを確実に完成品容器W内に落とすことができる。
【0048】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について
図15から
図19を参照して説明する。
本実施形態は、例えばソールやカレールー等のように、ある程度の粘性を有し、かつ一定範囲に広げて盛り付けるような食材に適している。本実施形態は、盛り付け処理の具体的内容が上記第1実施形態と異なる。本実施形態において、盛り付け処理は、保持部41を回転軸Zに対して直角方向でかつ水平方向に移動させながら傾ける処理を含む。
【0049】
ここで、保持部41内のワークFが流出を開始させる位置を開始位置Sとし、保持部41からのワークFの流出を終了させる位置を終了位置Eとする。この場合、制御部31は、開始位置Sから終了位置Eまで、回転軸Zつまり流出点Pの上下方向の位置を一定に維持し、回転軸Zを支点に保持部41を連続して回転させて傾けながら水平方向へ移動させる。この場合、制御部31は、開始位置Sから終了位置Eまでの水平方向の移動において、その移動速度を一定に維持する。一方、制御部31は、終了位置Eが近づくにつれて、
図19に示すように、保持部41を傾ける速度を早くする。そして、制御部31は、
図18に示すように、最終的に、終了位置Eにおいて保持部41を95度から100度程度傾ける。
【0050】
これによっても、上記第1実施形態と同様の作用効果が得られる。
また、これによれば、ワークFが例えばソールやカレールー等のようにある程度の粘性を有しかつ一定範囲に広げて盛り付ける必要がある場合に、見た目良く盛り付けることができる。
【0051】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について、
図22から
図27を参照して説明する。
本実施形態は、例えばアイスクリームやポテトサラダ等のように固形の食材に適している。本実施形態において、盛り付け装置10は、上記各実施形態で用いた器具40に替えて、
図20に示す器具50を用いる。器具50は、器具40と同様に、例えば人が食材等の盛り付けに使用する器具と同様の形状の器具とすることができる。器具50は、保持部51及び柄部52を有している。保持部51は、断面で見た場合に柄部52側の曲率よりも柄部52とは反対側つまり先端側の曲率が大きい円弧状に形成されている。柄部52は、保持部51に接続されている。この場合、柄部52は、把持部を兼用しており、ロボットアーム20のツール部23に把持される。また、器具50は、加熱部53を更に有している。加熱部53は、例えば電気式のヒータ等であって、制御部31からの制御により保持部51の内側面を例えば30℃~40℃程度に加熱することができる。
【0052】
本実施形態において、すくい取り処理は、
図21から
図23に示すように、保持部51の開口部511の周囲を形成する縁部から保持部51の少なくとも一部をワークF内に挿入し、その後、開口部511が上方へ向く方向へ保持部51を傾ける処理を更に含む。すなわち、この場合、制御部31は、まず
図21及び
図22に示すように、例えば60度の角度で保持部51の先端部の一部をワークFに挿入する。その後、制御部31は、
図23に示すように、保持部51の傾きを例えば45度に戻す。これによれば、ワークFを保持部51の先端部で掘り起こすことができるため、ワークFが比較的固いものであっても、ワークFをすくい取り易くすることができる。
【0053】
また、本実施形態において、すくい取り処理は、
図23から
図24に示すように、保持部51の少なくとも一部をワークF内に挿入した状態で保持部51を水平方向へ移動させる処理を更に含む。これによれば、保持部51を水平方向へ移動する際にワークFを保持部51に押し付けるため、ワークFの形が整い易くなる。その結果、盛り付けたワークFを整った形状にすることができるため、盛り付けの見栄えを更に向上させることができる。
【0054】
また、ワークFがアイスクリームのような冷凍食品である場合、盛り付け処理は、加熱部53を動作させて保持部51の内面を加熱する処理を含んでいても良い。これによれば、加熱部53の作用によりワークFの表面を溶かすことができるため、ワークFが固く凍っている場合であっても、保持部51でワークFをすくい取り易くすることができる。その後、制御部31は、
図25に示すように保持部51が水平となるように保持部51を移動させてワークFをすくい取った後、移動処理を実行する。
【0055】
そして、制御部31は、盛り付け処理において、
図26及び
図27に示すように、第6軸J6を中心に保持部51を180度反転させる。これにより、保持部51内のワークFが完成品容器W内に落下し、ワークFの盛り付けが行われる。
【0056】
また、盛り付け処理は、保持部51の内面に対して物理的な力を作用させて保持部51が保持しているワークFを保持部51の内側面から剥す剥し処理を含んでいても良い。剥し処理は、例えば保持部51の内面を加熱する、又は保持部51の内面に気体を吐出する、若しくは保持部51を振動させることで、保持部51内に保持されたワークFを保持部51の内側面から剥す処理を含む。
【0057】
ワークFがアイスクリーム等の冷凍食品である場合、盛り付け処理は、剥し処理として、加熱部53を動作させて保持部51の内面を加熱する処理を含んでいても良い。これによれば、例えばワークFが保持部51の内面に張り付いてワークFが保持部51の内面から剥がれ難くなっていたとしても、加熱部53により、ワークFのうち保持部51に接触している部分を溶かして剥がれ易くすることができる。これにより、ワークFを確実に完成品容器W内に盛り付けることができる。
【0058】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態について
図28から
図35を参照して説明する。
本実施形態において、盛り付け装置10は、器具60を用いる。器具60は、器具40、50と同様に、例えば人が食材等の盛り付けに使用する器具と同様の形状の器具とすることができる。器具60は、第1実施形態等の器具40に対して主に柄部42及び把持部43の長さ寸法が異なる。すなわち、本実施形態の器具60は、第1実施形態の器具40と同様に、保持部61、柄部62、及び把持部63を有する。本実施形態の保持部61は、第1実施形態の保持部41と同様の形状である。一方、本実施形態の柄部62は、第1実施形態の柄部42よりも短い。また、本実施形態の把持部63は、第1実施形態の把持部43よりも長い。
【0059】
制御部31は、すくい取り処理において、まず、
図29に示すように、開口部611がワークFの表面に対して直角となるようにロボットアーム20を制御する。次に、制御部31は、第6軸J6を45度回転させて、
図30に示すように、保持部61をワークF内に挿入する。そして、制御部31は、
図31に示すように、保持部61を引き上げてワークFをすくい取る。
【0060】
この場合、盛り付け装置10は、ヘラ部材4を有していても良い。ヘラ部材4は、保持部61ですくい取ったワークFのうち保持部61の開口部611から盛り上がった余分なワークFをそぎ落とすためのものである。制御部31は、
図31から
図33に示すように、ヘラ部材4の下端の下方に保持部61を通過させて、保持部61の開口部611から盛り上がった余分なワークFを素材容器2内にそぎ落とす。これにより、盛り付ける食材を一定量に維持することができる。
【0061】
そして、制御部31は、盛り付け処理において、完成品容器Wの上方で保持部61を180度反転させることで、保持部61内のワークFを完成品容器Wに落として盛り付けを行う。この場合、保持部61の回転軸Zは、第6軸J6の軸方向に平行であって開口部611に対する直角方向の面で保持部61を切断した場合における保持部61の断面の範囲内に設定されている。本実施形態の場合、保持部61の回転軸Zは、第6軸J6の軸方向に平行であって開口部611の面上に設定されている。すなわち、制御部31は、
図34及び
図35に示すように、保持部61の回転つまり第6軸J6の回転に伴いツール部23を下方に移動することで、保持部61の回転軸Zを一定の高さ位置に維持している。
【0062】
これによっても、上記各実施形態と同様の作用効果が得られる。すなわち、盛り付ける際にワークFに過剰な遠心力が作用することを抑制し、これにより食材の飛び散りを抑制して見栄えの良い盛り付けを行うことができる。
【0063】
(第5実施形態)
次に、第5実施形態について
図36を参照して説明する。
第5実施形態では、盛り付け処理が含む剥し処理の具体的態様が異なる。この場合、盛り付け処理は、剥し処理として、保持部61の内面に気体を吐出することで、保持部61内に保持されたワークFを保持部61の内側面から剥す処理を含む。
【0064】
具体的には、本実施形態の器具60は、流路部64及び吐出口65を有している。流路部64の基端側は、詳細は図示しないが、例えば気体用の電磁弁を介して外部の気体供給源に接続されている。流路部64の先端側は、例えば保持部61の外面に沿って配置されて、吐出口65に接続されている。吐出口65は、保持部61の内側面に向かって開口している。外部の気体供給源から流路部64に供給された気体は、吐出口65から保持部61の内側に向かって吐出される。
【0065】
外部の気体供給源から供給される気体の種類は特に限定されないが、ワークFが食品である場合は、食品に対する影響を極力与え得ないように、例えば窒素や二酸化炭素、及び圧縮空気等が好ましい。また、ロボットコントローラ30は、図示しない電磁弁の開閉を制御して、流路部64に対する気体の供給、すなわち吐出口65からの気体の吐出を制御することができる。
【0066】
そして、ロボットコントローラ30は、盛り付け処理を実行する際に、剥し処理として、吐出口65から保持部61の内面に気体を吐出することで、保持部61内に保持されたワークFを保持部61の内側面から剥す。これによっても、第3実施形態と同様に、例えばワークFが保持部51の内面に張り付いてワークFが保持部51の内面から剥がれ難くなっていたとしても、吐出口65から気体を噴射してワークFに外力を与えることで、ワークFを強制的に剥がすことができ、その結果、ワークFを確実に完成品容器W内に盛り付けることができる。そして、この構成は、例えばワークFの粘性が高くワークFを落とそうとした場合にワークFと保持部61の内面との間が真空になってしまう場合により有効である。
【0067】
(第6実施形態)
次に、第6実施形態について
図37から
図40を参照して説明する。
本実施形態において、回転軸Zは、
図37に示すように、保持部61の開口部611の面方向に対して直角方向の面で保持部61を切断した断面の範囲外を通る位置に設定されている。この場合、回転軸Zは、第6軸J6に平行であって、開口部611の面を水平にした場合における保持部61の厚みの範囲内に設定されている。なお、回転軸Zは、回転軸Zは、第6軸J6に平行であって、開口部611の面を水平にした場合における保持部61の厚みの範囲外に設定することもできる。
【0068】
制御部31は、開口部611を下方に向けるように回転させた場合に開口部611の下方に完成品容器Wが位置するように回転軸Zを設定する。制御部31は、盛り付け処理の実行により、ロボットアーム20を動作させて、
図37から
図39に示すように、回転軸Zを中心に保持部61を180度回転すなわち上下反転させて、ワークFを完成品容器W内に落下させる。
【0069】
盛り付け処理は、保持部61の内面に対して物理的な力を作用させて保持部61が保持しているワークFを保持部61の内側面から剥す剥し処理を含んでいても良い。この場合、剥し処理は、例えばロボットアーム20を動作させて保持部61を振動させることで保持部61内に保持されたワークFに外力を与え、これにより保持部61内に保持されているワークFを保持部61の内側面から剥すようにしても良い。
これによっても、上述した各実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0070】
(第7実施形態)
次に、第7実施形態について
図41から
図44を参照して説明する。
本実施形態では、器具70の形状が上記各実施形態と異なる。この場合、器具70は、器具40、50、60と同様に、例えば人が食材等の盛り付けに使用する器具と同様の形状の器具とすることができる。器具70は、保持部71と柄部72とを有している。この場合、柄部72は、把持部を兼用しており、ロボットアーム20のツール部23に把持される。保持部71は、例えばヘラやフライ返し等のように平板状に構成されている。この器具70は、例えばお好み焼きやホットケーキ等のように全体として1つにまとまっており、かつある程度固いものに適している。本実施形態において、盛り付け処理は、第2実施形態と同様に、保持部71を回転軸Zに対して直角方向でかつ水平方向に移動させながら傾ける処理を含む。この場合、盛り付け処理は、上記第6実施形態における剥し処理、すなわち保持部71を振動させる剥し処理を実行しても良い。
【0071】
ここで、第2実施形態と同様に、保持部71内のワークFが流出を開始させる位置すなわち
図41に示す位置を開始位置Sとし、保持部71からのワークFの流出を終了させる位置すなわち
図44に示す位置を終了位置Eとする。この場合、制御部31は、開始位置Sから終了位置Eまで、回転軸Zつまり流出点Pの上下方向の位置を一定に維持し、回転軸Zを支点に保持部71を連続して回転させて傾けながら水平方向へ移動させる。この場合、制御部31は、開始位置Sから終了位置Eまでの水平方向の移動において、その移動速度を一定に維持する。一方、制御部31は、終了位置Eが近づくにつれて、
図43に示すように、保持部71を傾ける速度を早くする。そして、制御部31は、
図44に示すように、最終的に、終了位置Eにおいて保持部71を90度から100度程度傾ける。
【0072】
これによっても、上記各実施形態と同様の作用効果が得られる。
また、これによれば、ワークFが例えばお好み焼きやホットケーキ等のように全体として1つにまとまっており、かつある程度固いものである場合に、見た目良く盛り付けることができる。
【0073】
(その他の実施形態)
なお、本発明は上記し且つ図面に記載した各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で任意に変形、組み合わせ、あるいは拡張することができる。
上記各実施形態で示した数値などは例示であり、それに限定されるものではない。
また、上記各実施形態は、適宜組み合わせることができる。
【0074】
本開示は、実施例に準拠して記述されたが、本開示は当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【符号の説明】
【0075】
2…素材容器、10…盛り付け装置、20…ロボットアーム、30…ロボットコントローラ、311…CPU、33…すくい取り処理部、34…移動処理部、35…盛り付け処理部、41、51、61、71…保持部、411、511、611…開口部、Z…回転軸