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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022013240
(43)【公開日】2022-01-18
(54)【発明の名称】イオン分離装置及び復水脱塩システム
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/469 20060101AFI20220111BHJP
   B01D 61/48 20060101ALI20220111BHJP
【FI】
C02F1/469
B01D61/48
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020115658
(22)【出願日】2020-07-03
(71)【出願人】
【識別番号】000004400
【氏名又は名称】オルガノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】建持 千佳
(72)【発明者】
【氏名】合庭 健太
【テーマコード(参考)】
4D006
4D061
【Fターム(参考)】
4D006GA17
4D006KA26
4D006KB01
4D006KB11
4D006MA13
4D006MA14
4D006MA40
4D006PA01
4D006PC31
4D006PC32
4D061DA05
4D061DB13
4D061EA02
4D061EA09
4D061EB13
4D061EB16
4D061FA11
4D061GC02
(57)【要約】
【課題】イオン分離装置を小型化する。
【解決手段】イオン分離装置1は、陽極と、陰極と、陽極と陰極との間に位置する第1の部屋H1と、第1の部屋H1と陰極との間に位置し、第1の部屋H1と隣接し且つ非連通の第2の部屋H2と、第1の部屋H1の陽極側を仕切る第1のカチオン交換膜K1と、第2の部屋H2の陰極側を仕切る第1のアニオン交換膜A1と、第1の部屋H1と第2の部屋H2とを仕切る中間イオン交換膜Mと、を有している。中間イオン交換膜Mはカチオン交換膜またはアニオン交換膜であり、第1の部屋H1と第2の部屋H2のうち、同種のイオン交換膜で仕切られる部屋は主室2を構成し、異種のイオン交換膜で仕切られる部屋は副室3を構成する。主室2は正負のイオン成分を含む液体の供給口4を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽極と、陰極と、前記陽極と前記陰極との間に位置する第1の部屋と、前記第1の部屋と前記陰極との間に位置し、前記第1の部屋と隣接し且つ非連通の第2の部屋と、前記第1の部屋の前記陽極側を仕切る第1のカチオン交換膜と、前記第2の部屋の前記陰極側を仕切る第1のアニオン交換膜と、前記第1の部屋と前記第2の部屋とを仕切る中間イオン交換膜と、を有し、
前記中間イオン交換膜はカチオン交換膜またはアニオン交換膜であり、前記第1の部屋と前記第2の部屋のうち、同種のイオン交換膜で仕切られる部屋は主室を構成し、異種のイオン交換膜で仕切られる部屋は副室を構成し、前記主室は正負のイオン成分を含む液体の供給口を有する、イオン分離装置。
【請求項2】
前記中間イオン交換膜が第2のアニオン交換膜である場合、前記主室は前記第2の部屋であり、前記中間イオン交換膜が第2のカチオン交換膜である場合、前記主室は前記第1の部屋である、請求項1に記載のイオン分離装置。
【請求項3】
前記中間イオン交換膜が前記第2のアニオン交換膜である場合、前記主室と前記副室にアニオン交換体が充填され、前記中間イオン交換膜が前記第2のカチオン交換膜である場合、前記主室と前記副室にカチオン交換体が充填されている、請求項2に記載のイオン分離装置。
【請求項4】
前記副室は水の供給口を有する、請求項1から3のいずれか1項に記載のイオン分離装置。
【請求項5】
前記副室に供給される水の流量は前記主室に供給される液体の流量より少ない、請求項4に記載のイオン分離装置。
【請求項6】
各々が前記第1及び第2の部屋と、前記第1のカチオン交換膜と、前記第1のアニオン交換膜と、前記中間イオン交換膜と、を有する複数のユニットを有し、
前記複数のユニットは、一方のユニットと、前記一方のユニットの前記陰極側で前記一方のユニットと隣接する他方のユニットと、を含み、前記一方のユニットと前記他方のユニットは、前記他方のユニットの主室が上流側、前記一方のユニットの主室が下流側となるように接続されており、
前記一方のユニットの前記第1のアニオン交換膜と、前記他方のユニットの前記第1のカチオン交換膜とが隣接している、請求項1から5のいずれか1項に記載のイオン分離装置。
【請求項7】
前記一方のユニットの前記第1のアニオン交換膜と前記他方のユニットの前記第1のカチオン交換膜はバイポーラ膜を形成する、請求項6に記載のイオン分離装置。
【請求項8】
前記一方のユニットと前記他方のユニットとが隣接する統合ユニットが複数設けられ、各統合ユニットの前記上流側の前記主室は並列接続され、各統合ユニットの前記下流側の前記主室は並列接続されている、請求項7に記載のイオン分離装置。
【請求項9】
少なくともカチオン樹脂が充填され、アンモニアを含有する復水を処理する復水脱塩装置と、
前記カチオン樹脂を再生するカチオン樹脂再生装置と、
前記カチオン樹脂再生装置から排出されるカチオン樹脂再生廃液を処理してアンモニアを回収する、請求項1から8のいずれか1項に記載のイオン分離装置と、
を有する復水脱塩システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はイオン分離装置と復水脱塩システムに関する。
【背景技術】
【0002】
陽イオンと陰イオンとを含む液体から陽イオンと陰イオンを分離する方法として、例えば電気透析を用いる方法が知られている。特許文献1には、NaClの水溶液を供給する電離室と、電離室の陽極側にアニオン交換膜を介して隣接する酸室と、電離室の陰極側にカチオン交換膜を介して隣接するアルカリ室と、を有する電気透析装置が開示されている。Naイオンはカチオン交換膜を通ってアルカリ室に移動し、Clイオンはアニオン交換膜を通って酸室に移動し、これによって、陽イオンと陰イオンとが分離される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4065386号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された装置では、陽イオンと陰イオンの分離のために3つの部屋が必要となり、装置の小型化が困難である。
【0005】
本発明は、小型化が容易なイオン分離装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のイオン分離装置は、陽極と、陰極と、陽極と陰極との間に位置する第1の部屋と、第1の部屋と陰極との間に位置し、第1の部屋と隣接し且つ非連通の第2の部屋と、第1の部屋の陽極側を仕切る第1のカチオン交換膜と、第2の部屋の陰極側を仕切る第1のアニオン交換膜と、第1の部屋と第2の部屋とを仕切る中間イオン交換膜と、を有している。中間イオン交換膜はカチオン交換膜またはアニオン交換膜であり、第1の部屋と第2の部屋のうち、同種のイオン交換膜で仕切られる部屋は主室を構成し、異種のイオン交換膜で仕切られる部屋は副室を構成する。主室は正負のイオン成分を含む液体の供給口を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、正負のイオン成分の一方は副室に移動するが、他方は主室に留まる。よって、正負のイオン成分を2つの部屋で分離することが可能であり、イオン分離装置の小型化が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1及び第2の実施形態を示す概略図である。
図2】比較例を示す概略図である。
図3】第3の実施形態を示す概略図である。
図4】第4の実施形態を示す概略図である。
図5】第5の実施形態を示す概略図である。
図6】第6の実施形態を示す概略図である。
図7】第7の実施形態を示す概略図である。
図8】第8の実施形態を示す概略図である。
図9】復水脱塩システムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明のいくつかの実施形態について説明する。図1は、本発明の原理を説明する模式図であり、第1及び第2の実施形態を簡略化して示している。図2は、比較例1~5を簡略化して示す図1と同様の図である。図1,2において陽極は+を丸で囲んだ図形で示し、陰極は-を丸で囲んだ図形で示している。また、正のイオン成分(カチオン成分)は+を四角で囲んだ図形で示し、負のイオン成分(アニオン成分)は-を四角で囲んだ図形で示している。
【0010】
図1(a)は第1の実施形態のイオン分離装置1の主室2と副室3を示している。イオン分離装置1は、陽極と陰極との間に位置する第1及び第2の部屋H1,H2を有している。第2の部屋H2は第1の部屋H1と陰極との間に位置している。第1の部屋H1は陽極側に位置し、第2の部屋H2は陰極側に位置している。すなわち、第1の部屋H1の陽極側は第1のカチオン交換膜K1で仕切られ、第2の部屋H2の陰極側は第1のアニオン交換膜A1で仕切られている。第1の部屋H1と第2の部屋H2は中間イオン交換膜Mで仕切られ、且つ中間イオン交換膜Mを介して隣接している。本実施形態では、中間イオン交換膜Mは第2のアニオン交換膜A2である。従って、第1の部屋H1は陽極室側を第1のカチオン交換膜K1で仕切られ、陰極側を第2のアニオン交換膜A2で仕切られる。第2の部屋H2は陽極側を第2のアニオン交換膜A2で仕切られ、陰極側を第1のアニオン交換膜A1で仕切られる。2つのアニオン交換膜で仕切られた部屋を主室2、両側をカチオン交換膜とアニオン交換膜とで仕切られた部屋を副室3という。本実施形態では、第2の部屋H2が主室2であり、第1の部屋H1が副室3である。
【0011】
主室2は正負のイオン成分を含む液体(以下、被処理液という)の供給口4と処理された液体の排出口5と、を有する。被処理液は供給口4を通って主室2に供給される。正のイオン成分は陰極側に電気的引力を受けるが、第1のアニオン交換膜A1を通過できないため、主室2に留まる。負のイオン成分(アニオン成分)は陽極側に電気的引力を受け、第2のアニオン交換膜A2を通って副室3に移動する。しかし、負のイオン成分は第1のカチオン交換膜K1を通過できないため、副室3に移動後は副室3に留まる。このようにして、本実施形態では、正負のイオン成分をそれぞれ主室2と副室3に分離することができる。
【0012】
図1(b)は第2の実施形態のイオン分離装置1の主室2と副室3を示している。本実施形態では、中間イオン交換膜Mは第2のカチオン交換膜K2である。第1の部屋H1は陽極室側を第1のカチオン交換膜K1で仕切られ、陰極側を第2のカチオン交換膜K2で仕切られている。第2の部屋H2は陽極側を第2のカチオン交換膜K2で仕切られ、陰極側を第1のアニオン交換膜A1で仕切られている。本実施形態では、第1の部屋H1が主室2であり、第2の部屋H2が副室3である。正のイオン成分は陰極側に電気的引力を受け、第2のカチオン交換膜K2を通って副室3に移動する。しかし、正のイオン成分は第1のアニオン交換膜A1を通過できないため、副室3に移動後は副室3に留まる。負のイオン成分は陽極側に電気的引力を受けるが、第1のカチオン交換膜K1を通過できないため、主室2に留まる。このようにして、本実施形態では、正負のイオン成分をそれぞれ副室3と主室2とに分離することができる。
【0013】
図2(a)は比較例1のイオン分離装置101の主室2と副室3を示している。本比較例は、膜構成は第1の実施形態と同じであるが、被処理液は副室3に供給される。正のイオン成分は陰極側に電気的引力を受けるが、第2のアニオン交換膜A2を通過できないため、副室3に留まる。同様に、負のイオン成分は陽極側に電気的引力を受けるが、第1のカチオン交換膜K1を通過できないため、副室3に留まる。従って、比較例1では正負のイオン成分を分離することができない。図2(b)は比較例2のイオン分離装置101の主室2と副室3を示している。本比較例は、膜構成は第2の実施形態と同じであるが、被処理液は副室3に供給される。正のイオン成分は陰極側に電気的引力を受けるが、第1のアニオン交換膜A1を通過できないため、副室3に留まる。同様に、負のイオン成分は陽極側に電気的引力を受けるが、第2のカチオン交換膜K2を通過できないため、副室3に留まる。従って、比較例2では正負のイオン成分を分離することができない。このように、被処理液を副室3に供給する場合、正負のイオン成分を分離することができない。
【0014】
図2(c)は比較例3のイオン分離装置101の主室102を示している。本比較例は、主室102のみが設けられ、副室が設けられていない。正のイオン成分は陰極側に電気的引力を受け、第1のカチオン交換膜K1を通って陰極側に移動する。負のイオン成分は陽極側に電気的引力を受け、第1のアニオン交換膜A1を通って陽極側に移動する。この構成は、主室102から正負のイオン成分がともに除去されるため、例えば純水を製造する場合に用いられる。しかし、主室102の両側に正のイオン成分と負のイオン成分を受け入れる部屋が必要であり、正負のイオン成分を分離するために少なくとも3つの部屋を必要とする。図2(d)は比較例4のイオン分離装置101の主室202と副室203を示している。本比較例では、比較例3の主室102が第2のアニオン交換膜A2で、主室202と副室203とに分割されている。被処理水は主室202に供給され、主室202で処理された被処理水はさらに副室203に供給される。負のイオン成分は陽極側に電気的引力を受け、第1のアニオン交換膜A1を通って陽極側に移動する。正のイオン成分は陰極側に電気的引力を受けるが、第2のアニオン交換膜A2を通過できないため、主室202に留まり、その後副室203に移動する。副室203に移動した正のイオン成分は、陰極側に電気的引力を受け、第1のカチオン交換膜K1を通って陽極側に移動する。この構成も、主室202と副室203から正負のイオン成分がともに除去されるため、例えば純水を製造する場合に用いられる。しかし、主室202及び副室203の両側に正のイオン成分と負のイオン成分を受け入れる部屋が必要であり、正負のイオン成分を分離するために少なくとも4つの部屋を必要とする。第2のアニオン交換膜A2の代わりにカチオン交換膜を設けても同じである。
【0015】
図2(e)は比較例5のイオン分離装置101の主室2と副室3を示している。本比較例は、膜構成は第1の実施形態と同じであるが、主室2と副室3が接続管6によって直列で接続されている。正のイオン成分は陰極側に電気的引力を受けるが、第1のアニオン交換膜A1を通過できないため、主室2に留まる。負のイオン成分(アニオン成分)は第1の実施形態と同様、第2のアニオン交換膜A2を通って副室3に移動し、副室3に留まる。しかし、主室2に留まった正のイオン成分は接続管6を通って副室3に移動する。従って、主室2と副室3が接続されている場合、正負のイオン成分を分離することができない。
【0016】
本実施形態では、中間イオン交換膜Mはカチオン交換膜またはアニオン交換膜である。第1の部屋H1と第2の部屋H2のうち、同種のイオン交換膜(ともにアニオン交換膜、またはともにカチオン交換膜)で仕切られる部屋は主室2を構成し、異種のイオン交換膜(一方がアニオン交換膜、他方がカチオン交換膜)で仕切られる部屋は副室3を構成する。そして、正負のイオン成分を含む被処理液は主室2に供給される。また、主室2と副室3は非連通である。非連通とは、中間イオン交換膜Mをイオンが通過することは許容するが、主室2と副室3との間を液体が流通することは許容しないことを意味する。換言すれば、主室2と副室3は接続管6によって接続されていない。このような構成によれば、2つの部屋で正負のイオンを分離することができる。
【0017】
主室2が第2の部屋H2である場合(第1の実施形態)、主室2と副室3にアニオン交換樹脂などのアニオン交換体Aが充填されていることが好ましい。アニオン交換体Aは負のイオン成分(アニオン成分)の副室3への移動を効率化する。主室2が第1の部屋H1である場合(第2の実施形態)、主室2と副室3にカチオン交換樹脂などのカチオン交換体Kが充填されていることが好ましい。カチオン交換体Kは正のイオン成分(カチオン成分)の副室3への移動を効率化する。
【0018】
以下、本発明を他の実施形態によってさらに詳細に説明する。第1及び第2の実施形態と共通する説明は省略する。図3は本発明の第3の実施形態を示す模式図であり、膜構成は第1の実施形態に対応している。第1の部屋H1(副室3)の陽極側には陽極E1を備えた陽極室11が配置されている。第2の部屋H2(主室2)の陰極側には陰極E2を備えた陰極室12が配置されている。陽極室11と陰極室12には電極水が供給される。電極水は水であり、好ましくは純水である。陽極室11と陰極室12は並列接続されてもよいし、直列接続されてもよい。第2の部屋H2にはカチオン樹脂再生廃液が供給される。カチオン樹脂再生廃液は、アンモニアを含有する復水を処理する復水脱塩装置のカチオン樹脂再生装置から排出される廃液である。
【0019】
この点に関し、図9を参照して以下詳細に説明する。火力発電所や加圧水型原子力発電所では、ボイラで生成された高温高圧の水蒸気が蒸気タービンに供給され、蒸気タービンから排出された排蒸気が復水器で凝縮されて復水となり、復水がボイラに給水として供給されるという水循環が行われている。復水中には腐食生成物などの不純物が蓄積するため、火力発電所や加圧水型原子力発電所には定常運転時に復水からこれらの不純物を除去する復水脱塩装置51が設置されている。復水器が海水冷却方式である場合、復水脱塩装置51は復水に混入する可能性のある、海水に含まれる塩化ナトリウム等を一定時間にわたり捕捉して、復水系を保護する機能も有している。復水脱塩装置51にはアニオン樹脂とカチオン樹脂が充填されており、アニオン樹脂はアニオン樹脂再生装置52で、カチオン樹脂はカチオン樹脂再生装置53で再生され、復水脱塩装置51で再利用される。
【0020】
一方、火力発電所や加圧水型原子力発電所においては復水系の配管等の腐食を抑制するため、復水にアンモニア等のpH調整剤を添加し、復水をアルカリ性にする運用が行われている。このため、海水の混入がない場合、復水脱塩装置51のイオン負荷はほとんどがアンモニアである。しかし、海水の混入に備えるため、カチオン交換樹脂がイオン交換容量の50~70%程度のアンモニアを捕捉すると、カチオン樹脂再生装置53において、塩酸、硫酸など(以下の説明は塩酸(HCl aq)で代表する)でアンモニウムイオン(NH4 +)を除去し、交換基をH形にする薬品再生を行う。再生廃液は主として、再生剤である塩酸と、イオン交換したアンモニウムイオン(NH4 +)とを含む。再生廃液は、復水系統に存在する不純物(Na, Fe, Cu等)、樹脂移送や空気混合の際に混入する炭酸イオンなどを含むことがあるが、いずれもごく微量である。従って、カチオン樹脂再生装置53から排出されるカチオン交換樹脂の再生廃液は実質的にNH4Cl+HClである。
【0021】
従来、再生廃液に含まれるアンモニア成分は回収していない。再生廃液はアニオン交換樹脂の再生に用いられる苛性ソーダの再生廃液と混合し、中和した後に廃棄されている。しかし、復水のpHを一定に維持するため、復水系統には復水脱塩装置51で除去された分を補充する量のアンモニアが添加されている。このため、アンモニアを再生利用することが望まれるが、そのためには再生廃液に含まれるCl-イオンをアンモニアから分離する必要がある。従って、カチオン樹脂再生装置53から排出されたカチオン樹脂再生廃液が、カチオン樹脂再生装置53に接続されたイオン分離装置1で処理される。復水脱塩装置51と、アニオン樹脂再生装置52と、カチオン樹脂再生装置53と、イオン分離装置1は復水脱塩システム50を構成する。
【0022】
本実施形態では、第2の部屋H2(主室2)はNH4Cl+HClの供給口4を備え、第1の部屋H1(副室3)は水の供給口7を備えている。第2の部屋H2(主室2)にはNH4Cl+HClが供給され、第1の部屋H1(副室3)には水が供給される。主室2のCl-イオンは第2のアニオン交換膜A2を通って副室3に移動する。陰極室12では水の電気分解により2H2O+2e-→H2+2OH-の化学反応が生じ、水酸化物イオン(OH-)が連続的に生成されている。水酸化物イオンは第1のアニオン交換膜A1を通って主室2に移動し、その一部は塩酸中の解離したプロトン(H)と結合して水となる。アンモニウムイオン(NH4 +)は水酸化物イオンの一部と結合してアンモニアとなり、水に溶解する。この結果、主室2にアンモニア水溶液(NH3 aq)が生成される。陽極室11では、水の電気分解により2H2O→O2+4H++4e-の化学反応が生じ、プロトンが連続的に生成されている。プロトンは第1のカチオン交換膜K1を通って副室3に移動する。副室3に移動したCl-イオンは、同じく副室3に移動したプロトンと結合してHClとなり、副室3に供給される水に溶解する。この結果、副室3に塩酸(HCl aq)が生成される。プロトンの移動効率を高めるため、陽極室11にはカチオン交換樹脂を充填することが好ましく、水酸化物イオン及びCl-イオンの移動効率を高めるため、主室2、副室3及び陰極室12にはアニオン交換樹脂を充填することが好ましい。
【0023】
Clの量は、主室2に供給される被処理液である再生廃液の量で決まるため、副室3に供給される水の流量を調整することで、塩酸のCl濃度を制御することができる。再生廃液のCl濃度は3.5%程度であるが、塩酸のCl濃度は例えば、3.5~35%の範囲で調整することができる。副室3に供給される水の流量を主室2に供給される再生廃液の流量より少なくすることで、再生廃液よりCl濃度の高い塩酸を生成することができる。副室3に供給される水の流量は主室2に供給される再生廃液の流量とは無関係に設定できるため、塩酸のCl濃度は自由に調整することができる。耐薬品性や発煙性の観点からは、塩酸のCl濃度は25%以下にすることが好ましい。
【0024】
海水漏洩がない限り、アニオン交換樹脂のイオン負荷は、復水中に残留するカチオン樹脂の再生剤(Cl-, SO4 2-)、炭酸イオンなどであるが、いずれも微量である。このため、アニオン交換樹脂の薬品再生の頻度は少なくてよい。しかし、カチオン樹脂の再生廃液の中和剤(NaOH)が必要なことから、アニオン交換樹脂についても毎回薬品再生を実施している。本実施形態では、カチオン樹脂の再生廃液が回収できるため、中和剤が不要である。このため、アニオン交換樹脂の再生頻度を低減させることが可能である。
【0025】
図4は本発明の第4の実施形態を示す模式図であり、膜構成は第1の実施形態に対応している。本実施形態のイオン分離装置1は、互いに隣接する複数のユニットを有している。本実施形態では、2つのユニット(以下、第1のユニットU1、第2のユニットU2という)が設けられている。各ユニットは、第1及び第2の部屋H1,H2と、第1のカチオン交換膜K1と、第1のアニオン交換膜A1と、中間イオン交換膜Mと、を有している。陽極E1側に位置する一方のユニット(第2のユニットU2)の第1のアニオン交換膜A1と、陰極E2側に位置する他方のユニット(第1のユニットU1)の第1のカチオン交換膜K1とが隣接している。このため、第1のユニットU1は、第2の部屋H2(主室2)の陰極E2側で陰極E2を備えた陰極室12と隣接しているが、陽極室11とは隣接していない。また、第2のユニットU2は、第1の部屋H1(副室3)の陽極E1側で陽極E1を備えた陽極室11と隣接しているが、陰極室12とは隣接していない。第1のユニットU1の中間イオン交換膜Mと第2のユニットU2の中間イオン交換膜Mは同種のイオン交換膜であり、本実施形態では第2のアニオン交換膜A2である。第1のユニットU1の主室2と第2のユニットU2の主室2は並列接続されている。すなわち、図示は省略するが、第1及び第2のユニットU1,U2の主室2には共通の配管からNH4Cl+HClを主成分とするカチオン樹脂再生廃液が供給され、第1及び第2のユニットU1,U2の副室3には共通の配管から水が供給される。陽極室11と陰極室12には水(電極水)が供給される。陽極室11と陰極室12は並列接続されてもよいし、直列接続されてもよい。
【0026】
第2のユニットU2の第1のアニオン交換膜A1と第1のユニットU1の第1のカチオン交換膜K1はバイポーラ膜BPを形成する。バイポーラ膜BPはアニオン交換膜とカチオン交換膜を貼り合わせたイオン交換膜である。膜の内部に浸透した水がアニオン交換膜とカチオン交換膜の界面で解離することで、プロトンと水酸化物イオンが発生する。バイポーラ膜BPは、イオン成分の透過を阻止するが、生成するプロトンと水酸化物イオンによって電流を流すことができる。本実施形態では、バイポーラ膜BPのこのような性質を生かし、バイポーラ膜BPをプロトンと水酸化物イオンの供給手段、すなわち陽極E1及び陰極E2の代替手段として用いている。従って、第1のユニットU1は、陽極室11がバイポーラ膜BPに置き換えられた点を除き、第3の実施形態のイオン分離装置1と同じ構成を有し、第3の実施形態のイオン分離装置1と同じ原理で作動する。同様に、第2のユニットU2は、陰極室12がバイポーラ膜BPに置き換えられた点を除き、第3の実施形態のイオン分離装置1と同じ構成を有し、第3の実施形態のイオン分離装置1と同じ原理で作動する。
【0027】
本実施形態は複数のユニットU1,U2を並列接続するため、被処理液の流量(処理量)を容易に増加することができる。ユニットの数は限定されない。図示は省略するが、3つ以上のユニットを並列接続する場合、両端を除くユニットはバイポーラ膜BPによって、隣接する両側のユニットと仕切られる。
【0028】
図5は本発明の第5の実施形態を示す模式図である。本実施形態では、一方のユニット(第1のユニットU1)の主室2を上流側として、他方のユニット(第2のユニットU2)の主室2を下流側として、これらの主室2が接続管6によって直列接続されている。第1のユニットU1は陰極E2側に、第2のユニットU2は陽極E1側に設けられている。第1のユニットU1の膜構成は第1の実施形態に対応し、第2のユニットU2の膜構成は第2の実施形態に対応している。すなわち、第1のユニットU1の中間イオン交換膜Mと第2のユニットU2の中間イオン交換膜Mは異種のイオン交換膜である。第1のユニットU1の主室2と副室3と陰極室12にはアニオン交換樹脂が充填されていることが好ましく、第2のユニットU2の主室2と副室3と陽極室11にはカチオン交換樹脂が充填されていることが好ましい。
【0029】
NH4Cl+HClを主成分とするカチオン樹脂再生廃液は第1のユニットU1の主室2に供給される。第1及び第3の実施形態と同様の原理で、第1のユニットU1の主室2からはアンモニア水溶液(NH3 aq)が排出される。また、第1のユニットU1の副室3には水が供給され、塩酸(HCl aq)が排出される。第1のユニットU1の主室2から排出されたアンモニア水溶液は第2のユニットU2の主室2に供給され、第2のユニットU2の副室3には水が供給される。アンモニア水溶液から解離したアンモニウムイオン(NH4 +)は第2のカチオン交換膜K2を通って第2のユニットU2の副室3に移動し、バイポーラ膜BPから供給された水酸化物イオンと結合してアンモニア(NH・OH)となる。この結果、第2のユニットU2の副室3ではアンモニア水溶液が生成される。第2のユニットU2の主室2のアンモニア水溶液から解離した水酸化物イオンは、陽極E1から供給されたプロトンと結合して水となる。この結果、第2のユニットU2の主室2では水(H2O)が生成される。
【0030】
本実施形態では、第3、第4の実施形態と同様、第1のユニットU1の副室3に供給される水の流量を調整することで、塩酸濃度を自由に調整することができる。さらに、第2のユニットU2の副室3に供給される水の流量を調整することで、アンモニア水溶液のアンモニウムイオンの濃度を自由に調整することができる。これは、アンモニウムイオンの量が、第2のユニットU2の主室2に供給されるカチオン樹脂再生廃液に含まれるアンモニウムイオンの量、すなわち被処理液の量に依存するのに対し、水の量は第2のユニットU1の副室3に供給される水の流量に依存するためである。
【0031】
さらに、本実施形態では、供給した水よりも多い水を回収することができる。第2のユニットU2の主室2から排出される水の流量は、第1のユニットU1の主室2から排出されるアンモニア水溶液の流量に依存し、アンモニア水溶液の流量は、第1のユニットU1の主室2に供給されるカチオン樹脂再生廃液の流量R1に依存する。これに対し、第1のユニットU1の副室3に供給する水の流量R2と第2のユニットU2の副室3に供給する水の流量R3は自由に調整できる。さらに、陽極室11に供給する電極水の流量R4と、陰極室12に供給する電極水の流量R5も自由に調整できるので、R1>R2+R3+R4+R5となるように流量を調整すれば、水回収が可能となる。電極水を陽極室11と陰極室12に直列で通水する場合、陽極室11に供給する電極水の流量R4(または陰極室12に供給する電極水の流量R5)が自由に調整できるので、R1>R2+R3+R4(R5)となるように流量を調整すれば、水回収が可能となる。
【0032】
図6は本発明の第6の実施形態を示す模式図である。本実施形態は第4の実施形態と同様の方法で、第5の実施形態のイオン分離装置1を並列接続したものである。イオン分離装置1は複数の統合ユニットT1,T2を有し、各々の統合ユニットは第5の実施形態における一方のユニット(第2のユニットU1)と他方のユニット(第1のユニットU2)とを有している。第1のユニットU1と第2のユニットU2は直列接続されている。そして、一方の統合ユニット(第1の統合ユニットT1)の上流側の主室2(21)と他方の統合ユニット(第2の統合ユニットT2)の上流側の主室2(22)が並列接続されている。第1の統合ユニットT1の下流側の主室2(23)と第2の統合ユニットT2の下流側の主室2(24)は並列接続されている。各ユニットの副室3へは共通の配管から水が供給される。各統合ユニットT1,T2は第5の実施形態と同様に作動する。本実施形態では、第4の実施形態と同様、被処理液の流量を容易に増加することができる。統合ユニットの数は限定されない。図示は省略するが、3つ以上の統合ユニットを並列接続する場合、両端を除く統合ユニットはバイポーラ膜BPによって、隣接する両側の統合ユニットと仕切られる。
【0033】
図7は本発明の第7の実施形態を示す模式図であり、膜構成は第2の実施形態に対応している。第1の部屋H1(主室2)の陽極E1側には陽極E1を備えた陽極室11が配置されている。第2の部屋H2(副室3)の陰極E2側には陰極E2を備えた陰極室12が配置されている。第1の部屋H1にはアンモニア水溶液(NH3 aq)が供給され、第2の部屋H2(副室3)に水が供給される。アンモニア水溶液は特に限定されないが、第3~第6の実施形態のイオン分離装置1から排出されたものであってもよい。第2の部屋H2には水が供給される。
【0034】
アンモニア水溶液から解離したアンモニウムイオン(NH4 +)は第2のカチオン交換膜K2を通って副室3に移動する。陰極室12では水の電気分解により2H2O+2e-→H2+2OH-の化学反応が生じ、水酸化物イオン(OH-)が連続的に生成されている。水酸化物イオンは第1のアニオン交換膜A1を通って副室3に移動する。アンモニウムイオン(NH4 +)は水酸化物イオンと結合してアンモニアとなり、水に溶解する。この結果、副室3にアンモニア水溶液(NH3 aq)が生成される。陽極室11では、水の電気分解により2H2O→O2+4H++4e-の化学反応が生じ、プロトン(H+)が連続的に生成されている。アンモニア水溶液(NH3 aq)から解離した水酸化物イオンは陽極E1から供給されたプロトンと結合して水となる。この水は主室2に供給される水として再利用することができる。プロトン及びアンモニウムイオンの移動効率を高めるため、陽極室11、主室2及び副室3にはカチオン交換樹脂を充填することが好ましく、水酸化物イオンの移動効率を高めるため、陰極室12にはアニオン交換樹脂を充填することが好ましい。
【0035】
本実施形態では、アンモニア水溶液のアンモニウムイオンの濃度を調整することができる。副室3のアンモニウムイオンの量は主室2に供給されるアンモニア水溶液の流量に依存する。これに対し、副室3に供給する水の流量は自由に調整できる。従って、主室2に供給されるアンモニア水溶液の流量より副室3に供給する水の流量を少なくすることで、アンモニウムイオンの濃度を増加することができる。すなわち、アンモニア水溶液の濃縮が可能となる。また、副室3に供給する水より主室2から回収する水の方が多いため、水回収も可能である。
【0036】
アンモニアは、例えば火力発電所の排煙脱硝装置に使用することができる。排煙脱硝装置は排ガスに含まれる窒素酸化物(NOx)を除去するもので、特にアンモニア接触還元法が広く用いられている。具体的には、排ガスにアンモニアを注入し、高温で触媒を通過させることで、窒素酸化物が窒素と水蒸気に分解される。アンモニアは燃料として使用することもできる。アンモニアを単独でまたはLNGと混燃する技術はすでに実用化されている。アンモニアは多くの水素を含んでいるため、水素キャリアとして使用することもできる。アンモニアの分解(脱水素)反応によって水素を取り出し、水素を燃料電池として用いることができる。これらの用途では、輸送効率や貯蔵性の観点から、アンモニア水溶液の濃縮度を高めることが有効である。
【0037】
アンモニアはウエハの洗浄に用いられることがある。ウエハが帯電してパーティクルが吸着するのを防ぐため、アンモニアを一定濃度(0.6~23mg/L程度)添加した水を洗浄液として用いることがある。洗浄水に含まれるアンモニア以外のイオンは微量であり、陰イオンはほとんど含まれない。水質監視のため、洗浄水の一部が電気伝導率測定セルに取り出され、電気伝導率が測定される。電気伝導率測定セルに導入された洗浄水は測定後廃棄されている。洗浄水を本実施形態のイオン分離装置1で処理することによって、アンモニア濃度の高いアンモニア水溶液を生成し、再利用することができる。水も洗浄水として再利用できる。
【0038】
図8は本発明の第8の実施形態を示す模式図であり、膜構成は第2の実施形態に対応している。本実施形態のイオン分離装置1は、第4の実施形態同様、互いに隣接する複数のユニットを有している。本実施形態では、2つのユニット(以下、第1のユニットU1、第2のユニットU2という)が設けられている。各ユニットは、第1及び第2の部屋H1,H2と、第1のカチオン交換膜K1と、第1のアニオン交換膜A1と、第2のカチオン交換膜K2(中間イオン交換膜M)と、を有している。一方のユニット(第2のユニットU2)の第1のアニオン交換膜A1と他方のユニット(第1のユニットU1)の第1のカチオン交換膜K1とが隣接している。このため、第1のユニットU1は、第2の部屋H2(副室3)の陰極E2側で陰極E2を備えた陰極室12と隣接しているが、陽極室11とは隣接していない。第2のユニットU2は、第1の部屋H1(主室2)の陽極E1側で陽極E1を備えた陽極室11と隣接しているが、陰極室12とは隣接していない。第1及び第2のユニットU1,U2の主室2には共通の配管からアンモニア水溶液が供給され、第1及び第2のユニットU1,U2の副室3には共通の配管から水が供給される。陽極室11と陰極室12にも共通の配管から電極水が供給される。
【0039】
本実施形態は複数のユニットU1,U2を並列接続するため、電流効率が向上し、被処理液の流量(処理量)を容易に増加することができる。ユニットの数は限定されない。図示は省略するが、3つ以上のユニットを並列接続する場合、両端を除くユニットはバイポーラ膜BPによって、隣接する両側のユニットと仕切られる。
【0040】
(実施例1)
第3の実施形態のイオン分離装置1に3Aの電流を通電しながら、主室2にアンモニア濃度1%、Cl濃度3.5%のNH4ClとHClの混合液を、流量0.1L/hで供給した。陽極E1及び陰極E2として5cm×4cmの電極を用いた。副室3に純水を流量0.02L/hで供給し、陽極室11と陰極室12には純水を0.01L/hで通水した。主室2、副室3、陰極室12にアニオン交換樹脂を充填し、陽極室11にカチオン交換樹脂を充填した。主室2からはCl-イオンをほとんど含まない(<1mgCl/L)、アンモニア濃度1%のアンモニア溶液が得られ、副室3からはCl濃度17.5%の塩酸が得られた。
【0041】
(実施例2)
第5の実施形態のイオン分離装置1に3Aの電流を通電しながら、第1のユニットU1の主室2にアンモニア濃度1%、Cl濃度3.5%のNH4ClとHClの混合液を、流量0.1L/hで供給した。第1のユニットU1の主室2からはCl-イオンをほとんど含まない(<1mgCl/L)アンモニア濃度1%のアンモニア溶液が得られた。このアンモニア溶液を第2のユニットU2の主室2に供給した。第2のユニットU2の主室2からはアンモニアを含まない純水が得られた。この純水の一部を第1のユニットU1の副室3に流量0.02L/hで供給し、第2のユニットU2の副室3に流量0.02L/hで供給し、陽極室11と陰極室12には純水を0.01L/hで通水した。陽極E1及び陰極E2として5cm×4cmの電極を用いた。第1のユニットU1の主室2、副室3、陰極室12にアニオン交換樹脂を充填し、第2のユニットU2の主室2、副室3、陽極室11にカチオン交換樹脂を充填した。第1のユニットU1の副室3からはCl濃度17.5%の塩酸が得られ、第2のユニットU2の副室3からはアンモニア濃度5%のアンモニア溶液が得られた。また、0.05L/hの純水が得られた。
【0042】
(実施例3)
第7の実施形態のイオン分離装置1に3Aの電流を通電しながら、主室2にアンモニア濃度1%のアンモニア溶液を、流量0.1L/hで供給した。副室3に純水を流量0.02L/hで供給した。主室2、副室3、陽極室11にカチオン交換樹脂を充填し、陰極室12にアニオン交換樹脂を充填した。主室2からはアンモニアを含まない純水が得られた。この純水の一部を流量0.01L/hで陽極室11と陰極室12に直列で通水した。副室3からはアンモニア濃度5%のアンモニア溶液と、0.07L/hの純水が得られた。
【符号の説明】
【0043】
1 イオン分離装置
2 主室
3 副室
50 復水脱塩システム
51 復水脱塩装置
52 アニオン樹脂再生装置
53 カチオン樹脂再生装置
E1 陽極
E2 陰極
A1 第1のアニオン交換膜
A2 第2のアニオン交換膜
BP バイポーラ膜
H1 第1の部屋
H2 第2の部屋
K1 第1のカチオン交換膜
K2 第2のカチオン交換膜
M 中間イオン交換膜
U1,U2 ユニット
T1,T2 統合ユニット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9