(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022132427
(43)【公開日】2022-09-08
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 11/13 20060101AFI20220901BHJP
B60C 11/03 20060101ALI20220901BHJP
【FI】
B60C11/13 B
B60C11/03 100B
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022112677
(22)【出願日】2022-07-13
(62)【分割の表示】P 2017251294の分割
【原出願日】2017-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(74)【代理人】
【識別番号】100206586
【弁理士】
【氏名又は名称】市田 哲
(72)【発明者】
【氏名】井藤 佳恵
(57)【要約】
【課題】ショルダー陸部の引き裂き損傷を抑制し得るタイヤを提供する。
【解決手段】トレッド部2にタイヤ周方向に連続して延びる複数の主溝3が配されたタイヤである。主溝3は、最もトレッド端Te側に配されたショルダー主溝4を含む。ショルダー主溝4は、深さが最も大きい溝底面9から隆起した隆起部10をタイヤ周方向に複数有する。隆起部10は、タイヤ周方向の長さがタイヤ半径方向内側に向かって大きくなっている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド部にタイヤ周方向に連続して延びる複数の主溝が配されたタイヤであって、
前記主溝は、最もトレッド端側に配されたショルダー主溝と、前記ショルダー主溝よりもタイヤ赤道側に配されたクラウン主溝とを含み、
前記ショルダー主溝は、深さが最も大きい溝底面から隆起した隆起部をタイヤ周方向に複数有し、
前記クラウン主溝は、前記クラウン主溝の溝底面から隆起したクラウン隆起部をタイヤ周方向に複数有し、
前記隆起部は、タイヤ周方向の長さがタイヤ半径方向内側に向かって大きくなっており、
前記隆起部は、タイヤ周方向の両側でタイヤ半径方向に延びる2つの側面と、前記2つの側面に連なりタイヤ周方向に沿って延びる外面とを含み、
前記クラウン隆起部は、タイヤ周方向の両側でタイヤ半径方向に延びる2つの側面と、前記2つの側面に連なりタイヤ周方向に沿って延びる外面とを含み、
前記クラウン隆起部の前記外面のタイヤ周方向の長さは、前記隆起部の前記外面のタイヤ周方向の長さよりも小さく、
前記クラウン隆起部の前記外面のタイヤ軸方向の幅は、前記隆起部の前記外面のタイヤ軸方向の幅よりも小さい、
タイヤ。
【請求項2】
前記クラウン隆起部の前記外面のタイヤ周方向の長さは、前記隆起部の前記外面のタイヤ周方向の長さの0.30~0.45倍である、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
1つの前記クラウン隆起部の前記外面のタイヤ周方向の長さと、隣り合う2つの前記クラウン隆起部についての前記外面における間隙のタイヤ周方向の長さとの合計に相当する、前記クラウン隆起部の1ピッチ長さは、隣り合う2つの前記隆起部についての前記外面における間隙のタイヤ周方向の長さよりも小さい、請求項1又は2に記載のタイヤ。
【請求項4】
1つの前記クラウン隆起部の前記外面のタイヤ周方向の長さと、隣り合う2つの前記クラウン隆起部についての前記外面における間隙のタイヤ周方向の長さとの合計に相当する、前記クラウン隆起部の1ピッチ長さは、1つの前記隆起部の前記外面のタイヤ周方向の長さと、隣り合う2つの前記隆起部についての前記外面における間隙のタイヤ周方向の長さとの合計に相当する、前記隆起部の1ピッチ長さの0.45~0.55倍である、請求項1ないし3のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項5】
前記クラウン隆起部の高さは、前記隆起部の高さの0.25~0.40倍である、請求項1ないし4のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項6】
前記ショルダー主溝の外側に、タイヤ周方向に連続して延びるリブからなるショルダー陸部が形成されている、請求項1ないし5のいずれかに記載のタイヤ。
【請求項7】
前記クラウン隆起部の前記外面のタイヤ周方向の長さは、タイヤ周方向で隣り合う2つの前記隆起部についての前記外面における間隙のタイヤ周方向の長さよりも小さい、請求項1ないし6のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項8】
1つの前記クラウン隆起部の前記外面のタイヤ周方向の長さと、隣り合う2つの前記クラウン隆起部についての前記外面における間隙のタイヤ周方向の長さとの合計に相当する、前記クラウン隆起部の1ピッチ長さは、前記隆起部の前記外面のタイヤ周方向の長さよりも小さい、請求項1ないし7のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項9】
前記クラウン隆起部の前記外面のタイヤ軸方向の幅は、前記隆起部の前記外面のタイヤ軸方向の幅の0.70~0.80倍である、請求項1ないし8のいずれか1項に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ショルダー主溝を有するタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1は、トレッド部の最もトレッド端側にショルダー主溝が配されたタイヤが提案されている。一般に、ショルダー主溝は、十分な排水性を得るために、大きな幅で形成されるが、そうなると、走行中に路面の小石等の異物が入り込む石噛みが生じやすくなる。石噛み状態のままタイヤが走行を続けると、石噛み箇所での溝底面に損傷が生じるおそれがある。
【0003】
また、ショルダー主溝を有するタイヤは、例えば、ショルダー主溝のタイヤ軸方向外側にショルダー陸部が形成されている。このショルダー陸部が、縁石等の路面上の段差に乗り上げた場合、ショルダー主溝の溝底面には大きな歪が作用する。とりわけ、大きな荷重を支える重荷重用タイヤでは、前記歪によってショルダー主溝の溝底面にクラック等の損傷が発生する傾向があった。
【0004】
そして、上記溝底面での損傷は、走行距離の増大とともに徐々に成長し、ショルダー陸部の部分的な引き裂き損傷(ティア)を招く傾向があった。特に、ショルダー陸部がタイヤ周方向に連続するリブで形成されている場合に、上記傾向が顕著であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、ショルダー陸部の引き裂き損傷を抑制し得るタイヤを提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、トレッド部にタイヤ周方向に連続して延びる複数の主溝が配されたタイヤであって、前記主溝は、最もトレッド端側に配されたショルダー主溝を含み、前記ショルダー主溝は、深さが最も大きい溝底面から隆起した隆起部をタイヤ周方向に複数有し、前記隆起部は、タイヤ周方向の長さがタイヤ半径方向内側に向かって大きくなっている。
【0008】
本発明のタイヤにおいて、前記隆起部は、タイヤ周方向に沿った断面において、前記溝底面からタイヤ半径方向に対して傾斜して延びる少なくとも1つの側面と、前記側面に連なりタイヤ周方向に沿って延びる外面とを有するのが望ましい。
【0009】
本発明のタイヤにおいて、前記隆起部は、タイヤ周方向に沿った断面において台形状部分を含むのが望ましい。
【0010】
本発明のタイヤにおいて、前記隆起部の前記溝底面でのタイヤ周方向の長さは、前記外面のタイヤ周方向の長さの1.40~2.00倍であるのが望ましい。
【0011】
本発明のタイヤにおいて、前記外面のタイヤ周方向の長さは、前記複数の隆起部のタイヤ周方向の1ピッチ長さの0.30~0.80倍であるのが望ましい。
【0012】
本発明のタイヤにおいて、前記隆起部のタイヤ半径方向の高さは、前記ショルダー主溝の溝縁から前記溝底面までの深さの0.40~0.80倍であるのが望ましい。
【0013】
本発明のタイヤにおいて、前記隆起部のタイヤ軸方向の幅は、前記ショルダー主溝の溝幅の0.30~0.60倍であるのが望ましい。
【0014】
本発明のタイヤにおいて、前記トレッド部は、前記ショルダー主溝の内側に隣接するミドル陸部を有し、前記ミドル陸部には、前記ショルダー主溝と連なる複数のミドルサイプが設けられ、前記複数のミドルサイプのそれぞれは、前記ショルダー主溝側の端をタイヤ軸方向に延長した領域がタイヤ周方向で隣り合う前記隆起部の間隙を通るのが望ましい。
【0015】
本発明のタイヤにおいて、前記ミドルサイプの深さは、前記ショルダー主溝の溝縁から前記溝底面までの深さの0.30~0.80倍であるのが望ましい。
【0016】
本発明のタイヤにおいて、前記ショルダー主溝の外側に、タイヤ周方向に連続して延びるリブからなるショルダー陸部が形成されているのが望ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明では、ショルダー主溝に、深さが最も大きい溝底面から隆起した隆起部がタイヤ周方向に複数設けられている。前記隆起部は、石噛みを抑制することができる。また、前記隆起部は、溝底面におけるゴムボリュームを局部的に大きくし、ひいてはショルダー主溝の溝底面の剛性ないし耐久性を向上させる。
【0018】
前記隆起部は、タイヤ周方向の長さがタイヤ半径方向内側に向かって大きくなっているので、その根元部分において高い剛性を有する。したがって、例えば、ショルダー主溝のタイヤ軸方向外側のショルダー陸部が路面上の段差に乗り上げて大きく変形した場合でも、隆起部は、ショルダー主溝の溝底面での歪を低減することができる。また、上述のような状況において、前記隆起部それ自体が段差と接触することで、ショルダー陸部に作用する過重負担を軽減し、ショルダー陸部のティアを効果的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態のタイヤのトレッド部の展開図である。
【
図2】
図1のショルダー主溝及びクラウン主溝並びにミドル陸部の拡大図である
【
図3】ショルダー主溝の隆起部を示す拡大斜視図である。
【
図4】(a)は、
図2のA-A線断面図であり、(b)は、
図2のB-B線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1には、本実施形態のタイヤ1のトレッド部2の展開図が示されている。本実施形態のタイヤ1は、例えば、重荷重用の空気入りタイヤとして好適に使用される。但し、本発明のタイヤは、このような態様に限定されるものではない。
【0021】
図1に示されるように、タイヤ1のトレッド部2には、タイヤ周方向に連続して延びる複数の主溝3が配されている。主溝3は、最もトレッド端Te側に配されたショルダー主溝4と、ショルダー主溝4よりもタイヤ赤道C側に配されたクラウン主溝5とを含む。
【0022】
「トレッド端Te」は、正規リム(図示せず)にリム組みされかつ正規内圧が充填され、しかも無負荷である正規状態のタイヤ1に、正規荷重を負荷してキャンバー角0°で平面に接地させたときの最もタイヤ軸方向外側の接地位置である。
【0023】
「正規リム」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めているリムであり、例えばJATMAであれば "標準リム" 、TRAであれば "Design Rim" 、ETRTOであれば "Measuring Rim" である。
【0024】
「正規内圧」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば "最高空気圧" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" である。
【0025】
「正規荷重」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば "最大負荷能力" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "LOAD CAPACITY" である。
【0026】
本実施形態のトレッド部2には、トレッド端Te側に配された2本のショルダー主溝4と、タイヤ赤道Cの両側に配された2本のクラウン主溝5とが配されている。これにより、トレッド部2は、クラウン陸部6と、2本のミドル陸部7と、2本のショルダー陸部8とに区分されている。クラウン陸部6は、2本のクラウン主溝5の間に区分されている。ミドル陸部7は、クラウン主溝5とショルダー主溝4との間に区分されている。ショルダー陸部8は、ショルダー主溝4のタイヤ軸方向外側に区分されている。
【0027】
ショルダー主溝4は、例えば、タイヤ赤道Cから溝中心線までの距離L1がトレッド幅TWの0.20~0.35倍であるのが望ましい。クラウン主溝5は、例えば、タイヤ赤道Cから溝中心線までの距離L2がトレッド幅TWの0.05~0.10倍であるのが望ましい。トレッド幅TWは、前記正規状態のタイヤ1のトレッド端Te、Te間のタイヤ軸方向の距離である。
【0028】
本実施形態のショルダー主溝4は、例えば、直線状に延びている。但し、このような態様に限定されるものではなく、ショルダー主溝4は、例えば、波状に延びるものでも良い。
【0029】
重荷重用の空気入りタイヤの場合、ショルダー主溝4は、十分な排水性を確保するために、例えば、トレッド幅TWの3.0~7.0%の溝幅W1を有することが望ましい。同様の観点から、ショルダー主溝4の溝深さは、例えば、10~25mmが望ましい。
【0030】
図2には、
図1のショルダー主溝4及びクラウン主溝5並びにミドル陸部7の拡大図が示されている。
図3には、ショルダー主溝4の溝底面を示す斜視図が示されている。
図2及び
図3に示されるように、ショルダー主溝4は、深さが最も大きい溝底面9から隆起した隆起部10をタイヤ周方向に複数有する。隆起部10は、石噛みを抑制することができる。また、隆起部10は、溝底面9におけるゴムボリュームを局部的に大きくし、ひいてはショルダー主溝4の溝底面9の剛性ないし耐久性を向上させる。
【0031】
図3に示されるように、本発明の隆起部10は、タイヤ周方向の長さがタイヤ半径方向内側に向かって大きくなっている。このため、隆起部10は、その根元部分において高い剛性を有する。したがって、例えば、ショルダー主溝4のタイヤ軸方向外側のショルダー陸部8が路面上の段差に乗り上げて大きく変形した場合でも、隆起部10は、ショルダー主溝4の溝底面9での歪を低減することができる。また、上述のような状況において、隆起部10それ自体が段差と接触することで、ショルダー陸部8に作用する過重負担を軽減し、ショルダー陸部8のティアを効果的に抑制することができる。
【0032】
図4(a)には、隆起部10のタイヤ周方向に沿った断面図が示されている。
図4(a)は、
図2のA-A線断面図に相当する。
図4(a)に示されるように、本実施形態の隆起部10は、タイヤ周方向に沿った断面において、タイヤ周方向の両側の側面14と、これらの間の外面15とを有している。
【0033】
側面14は、少なくとも1つが溝底面9からタイヤ半径方向に対して傾斜して延びている。本実施形態では、隆起部10のタイヤ周方向の両側の側面のそれぞれが、タイヤ半径方向に対して傾斜して延びている。但し、このような態様に限定されるものではなく、本発明の隆起部10は、例えば、一方の側面がタイヤ半径方向に対して傾斜し、他方の側面がタイヤ半径方向に沿って延びるものでも良い。
【0034】
本実施形態の側面14は、例えば、平面状に構成されている。側面14のタイヤ半径方向に対する角度θ1は、例えば、15~30°であるのが望ましい。このような側面14は、ウェット性能と耐ティア性能とをバランス良く高めることができる。
【0035】
外面15は、例えば、タイヤ周方向の両側の側面14に連なり、タイヤ周方向に沿って延びている。本実施形態の外面15は、例えば、平面状に構成されている。これにより、隆起部10は、タイヤ周方向に沿った断面において台形状部分を含む。具体的には、隆起部10の一対の側面14及び外面15並びに溝底面9を延長した仮想線9aに囲まれた領域が台形状である。
【0036】
外面15のタイヤ周方向の長さL3は、複数の隆起部10のタイヤ周方向の1ピッチ長さP1(
図2に示す)の好ましくは0.30倍以上、より好ましくは0.50倍以上である、好ましくは0.80倍以下、より好ましくは0.70倍以下である。このような隆起部10は、ショルダー主溝4の排水性の低下を抑制しつつ、ショルダー陸部8のティアを効果的に抑制することができる。なお、隆起部10の1ピッチ長さP1は、例えば、外面15のタイヤ周方向の長さL3と、隣り合う隆起部10の間隙16のタイヤ周方向の長さL4との合計に相当する。
【0037】
図2に示されるように、隆起部10の1ピッチ長さP1は、例えば、ミドル陸部7に配された複数の溝又はサイプの1ピッチ長さと実質的に同一であるのが望ましい。なお、1ピッチ長さが実質的に同一とは、1ピッチ長さに差異があったとしても、隆起部10のタイヤ1周当たりの個数が、ミドル陸部7に配されたタイヤ1周当たりの溝又はサイプの個数と等しくなる程度の差異に収まる態様を含むものとする。
【0038】
隆起部10の1ピッチ長さP1は、例えば、ミドル陸部7のタイヤ軸方向の幅W2よりも大きいのが望ましい。本実施形態では、上記1ピッチ長さP1は、ミドル陸部7の幅W2の1.15~1.30倍であるのが望ましい。
【0039】
図4(a)に示されるように、隆起部10の溝底面9でのタイヤ周方向の長さL5は、外面15のタイヤ周方向の長さL3の好ましくは1.40倍以上、より好ましくは1.50倍以上であり、好ましくは2.00倍以下、より好ましくは1.90倍以下である。このような隆起部10は、その根本部分で優れた耐久性を発揮する。
【0040】
隆起部10の外面15から溝底面9までの高さh1は、ショルダー主溝4の溝縁から溝底面9までの深さd1の好ましくは0.40倍以上、より好ましくは0.50倍以上であり、好ましくは0.80倍以下、より好ましくは0.70倍以下である。このような隆起部10は、例えば、ショルダー陸部8が段差に乗り上げたとき、段差と接触してショルダー主溝4の溝底面9の歪を低減できる。
【0041】
図4(b)には、隆起部10のタイヤ軸方向に沿った断面図が示されている。
図4(b)は、
図2のB-B線断面図に相当する。
図4(b)に示されるように、隆起部10は、例えば、溝底面9からタイヤ半径方向外側に延びる軸方向側面17を有しているのが望ましい。本実施形態の軸方向側面17は、例えば、平面状に構成されている。軸方向側面17は、例えば、溝底面9からタイヤ半径方向外側に向かって、隆起部10のタイヤ軸方向の幅を小さくする向きに僅かに傾斜している。軸方向側面17のタイヤ半径方向に対する角度は、例えば、5°未満であるのが望ましい。軸方向側面17は、例えば、タイヤ半径方向に対して平行に延びるものでも良い。
【0042】
ウェット性能と耐ティア性能とをバランス良く高めるために、隆起部10のタイヤ軸方向の幅W3は、ショルダー主溝4の溝幅W1の好ましくは0.30~0.60倍であるのが望ましい。なお、上記幅W3は、例えば、隆起部10の外面15で測定される。
【0043】
図2に示されるように、クラウン主溝5は、例えば、直線状に延びている。クラウン主溝5は、例えば、トレッド幅TWの3.0~7.0%の溝幅W4を有することが望ましい。クラウン主溝5の溝深さは、例えば、10~25mmが望ましい。
【0044】
クラウン主溝5は、ショルダー主溝4よりもタイヤ赤道C側に配されているため、段差に乗り上げたときの溝底面の歪が相対的に小さい。一方、本実施形態では、ショルダー主溝4に比較的大きな隆起部10が設けられているため、クラウン主溝5によって、排水性が補完されるのが望ましい。このような観点から、本実施形態のクラウン主溝5は、例えば、比較的ゴムボリュームが小さい複数のクラウン隆起部20を有するのが望ましい。
【0045】
クラウン隆起部20は、クラウン主溝5の溝底面から隆起しており、例えば、溝底面から外面までタイヤ周方向の長さが一定である。クラウン隆起部20は、例えば、ショルダー主溝4に配された隆起部10よりも小さいタイヤ周方向の長さを有している。さらに望ましい態様では、クラウン隆起部20は、ショルダー主溝4に配された隆起部10の間隙16よりも小さいタイヤ周方向の長さを有している。クラウン隆起部20は、クラウン主溝5の石噛みを抑制する一方、クラウン主溝5の排水性をショルダー主溝4よりも大きく維持することができ、ひいてはウェット性能が維持される。
【0046】
クラウン隆起部20のタイヤ周方向の長さL6は、例えば、隆起部10の外面15のタイヤ周方向の長さL3の0.30~0.45倍であるのが望ましい。このようなクラウン隆起部20が配されたクラウン主溝5は、優れた耐石噛み性を発揮しつつ、ショルダー主溝4の排水性を補うことができる。
【0047】
同様の観点から、クラウン隆起部20の1ピッチ長さP2は、例えば、隆起部10の外面15のタイヤ周方向の長さL3よりも小さいのが望ましい。また、本実施形態のクラウン隆起部20の1ピッチ長さP2は、隆起部10の間隙16のタイヤ周方向の長さL4よりも小さいのが望ましい。具体的には、クラウン隆起部20の1ピッチ長さP2は、隆起部10の1ピッチ長さP1の0.45~0.55倍である。
【0048】
クラウン隆起部20のタイヤ軸方向の幅W5は、例えば、隆起部10のW3よりも小さいのが望ましい。具体的には、クラウン隆起部20の幅W5は、隆起部10の幅W3の0.70~0.80倍であるのが望ましい。
【0049】
図5には、
図2のクラウン隆起部20のC-C線断面図が示されている。
図5に示されるように、クラウン隆起部20は、例えば、隆起部10の高さh1(
図4(a)に示す)よりも小さい高さを有しているのが望ましい。クラウン隆起部20の高さh2は、例えば、隆起部10の高さh1の0.25~0.40倍であるのが望ましい。このようなクラウン隆起部20は、ウェット性能と耐石噛み性とをバランス良く高めることができる。
【0050】
図2に示されるように、ミドル陸部7は、タイヤ軸方向の側壁面に複数のミドル凹部21を有している。ミドル凹部21は、ミドル陸部7のタイヤ軸方向の中心側に凹んでいる。
【0051】
トレッド平面視において、ショルダー主溝4側のミドル凹部21のそれぞれは、例えば、タイヤ軸方向に延長した領域がタイヤ周方向で隣り合う隆起部10の間隙16を通るのが望ましい。このようなミドル凹部21の配置は、ウェット性能を高めるのに役立つ。
【0052】
ミドル陸部7には、例えば、複数のミドル浅溝22及び複数のミドルサイプ23が設けられている。なお、本明細書において、「サイプ」とは、幅が1.5mm未満の切れ込みである。
【0053】
ミドル浅溝22は、例えば、ショルダー主溝4と連なっている。本実施形態のミドル浅溝22は、ショルダー主溝4からクラウン主溝5まで延び、ミドル陸部7を完全に横切っている。また、ミドル浅溝22は、例えば、中間部分22a及びその両側の端部分22bを有している。中間部分22aは、タイヤ軸方向に対して傾斜している。端部分22bは、中間部分22aの両側に連なり、タイヤ軸方向に対して中間部分22aよりも小さい角度で傾斜し、ショルダー主溝4又はクラウン主溝5に連通している。
【0054】
ミドル浅溝22は、例えば、ミドル凹部21以外の位置でショルダー主溝4に連なっている。本実施形態では、ミドル陸部7が接地したとき、ミドル浅溝22が開き、ミドル浅溝22の端部付近で石噛みが発生する傾向がある。このため、トレッド平面視において、ミドル浅溝22の端をタイヤ軸方向外側に延長した領域が、隆起部10に交わるのが望ましい。これにより、上記石噛みが効果的に抑制される。
【0055】
ミドル浅溝22は、例えば、ミドルサイプ23よりも大きい溝幅を有している。ミドル浅溝22の溝幅W6は、例えば、3.0mm未満であるのが望ましい。
【0056】
ミドル浅溝22の底は、隆起部10の外面15よりもタイヤ半径方向外側に位置しているのが望ましい。具体的には、ミドル浅溝22の深さは、例えば、ショルダー主溝4の深さの0.10~0.30倍であるのが望ましい。このようなミドル浅溝22は、ミドル陸部7の剛性を高く維持することができ、操縦安定性を高めるのに役立つ。
【0057】
ミドルサイプ23は、例えば、ショルダー主溝4と連なっている。本実施形態のミドルサイプ23は、ショルダー主溝4からクラウン主溝5まで延び、ミドル陸部7を完全に横切っている。また、ミドルサイプ23は、例えば、中間サイプ部23aと端サイプ部23bとを含んでいる。中間サイプ部23aは、例えば、タイヤ軸方向に対してミドル浅溝22の中間部分22aとは逆向きに傾斜し、中間部分22aと交差している。端サイプ部23bは、例えば、タイヤ軸方向に対して中間サイプ部23aとは逆向きに傾斜し、中間サイプ部23aの両側に連なっている。端サイプ部23bは、例えば、ミドル凹部21と接続しているのが望ましい。
【0058】
一般に、サイプは、陸部に接地圧が作用してサイプ壁同士が接触しても、サイプ内に僅かに空間が残るため、吸水性を発揮することができ、ウェット性能の向上に寄与する。しかしながら、ミドルサイプ23が隆起部10と隣り合っている場合、ウェット走行時、ミドルサイプ23に吸われた水がショルダー主溝4側に移動し難くなり、ひいてはミドルサイプ23の吸水性が阻害されるおそれがある。このため、本実施形態において、複数のミドルサイプ23のそれぞれは、ショルダー主溝4側の端をタイヤ軸方向に沿って延長した領域がタイヤ周方向で隣り合う隆起部10の間隙16を通るのが望ましい。これにより、ミドルサイプ23の吸水性が維持され、優れたウェット性能が得られる。
【0059】
ミドルサイプの深さは、ショルダー主溝4の溝縁から溝底面9までの深さd1(
図4(a)に示す)の好ましくは0.30倍以上、より好ましくは0.40倍以上であり、好ましくは0.80倍以下、より好ましくは0.70倍以下である。さらに好ましい態様では、ミドルサイプ23の底は、ショルダー主溝4に設けられた隆起部10の外面15よりもタイヤ半径方向内側であるのが望ましい。このようなミドルサイプ23は、高い吸水性を有し、ひいてはウェット性能を向上させることができる。
【0060】
図1に示されるように、ショルダー主溝4の外側に形成されたショルダー陸部8は、例えば、タイヤ周方向に連続して延びるリブとして構成されているのが望ましい。本実施形態のショルダー陸部8は、溝及びサイプが配されていない。このようなショルダー陸部8は、高い剛性を有する一方、段差に乗り上げたとき、ショルダー主溝4の溝底面9に大きな歪を生じさせる傾向がある。本実施形態では、上述の隆起部10によって、このような傾向を効果的に緩和することができる。
【0061】
以上、本発明の一実施形態のタイヤが詳細に説明されたが、本発明は、上記の具体的な実施形態に限定されることなく、種々の態様に変更して実施され得る。
【実施例0062】
図1の基本トレッドパターンを有するサイズ11R22.5の重荷重用の空気入りタイヤが、表1の仕様に基づき試作された。比較例1として、ショルダー主溝に隆起部が配されていないタイヤが試作された。比較例2として、隆起部のタイヤ周方向の長さが、溝底面から外面まで同一であるタイヤが試作された。各テストタイヤは、隆起部の仕様を除いて、実質的に同一のトレッドパターンで構成されている。各テストタイヤの耐ティア性能及びウェット性能がテストされた。各テストタイヤの共通仕様やテスト方法等は、以下の通りである。
装着リム:22.5×8.25
タイヤ内圧:720kPa
テスト車両:10tトラック、荷台中央に標準積載量の50%の荷物を積載
テストタイヤ装着位置:全輪
【0063】
<耐ティア性能>
ティアを容易に発生させるために、タイヤ温度を80℃で5日間保持された後のテストタイヤが用いられた。このテストタイヤを装着した上記テスト車両で定常円旋回してタイヤ温度を60℃にした後、高さ10cmの縁石に、その長さ方向に対して10°の角度で進入して乗り上げるのを複数回実施し、ショルダー陸部にティアが発生するまでの縁石乗り上げ回数が測定された。結果は、比較例のタイヤを100とする指数であり、数値が大きい程、耐ティア性能が優れていることを示す。
【0064】
<ウェット性能>
下記の条件で、テスト車両が全長10mのテストコースを通過したときの通過タイムが測定された。結果は、比較例の通過タイムを100とする指数で表示されている。数値が小さい程、ウェット性能が優れていることを示す。
路面:厚さ5mmの水膜を有するアスファルト
発進方法:2速‐1500rpm固定でクラッチを繋いで発進する
テスト結果が表1に示される。
【0065】
【0066】
テストの結果、実施例のタイヤは、優れた耐ティア性能を発揮していることが確認できた。また、実施形態のタイヤは、ウェット性能の低下が抑制されていることが確認できた。