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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022132445
(43)【公開日】2022-09-08
(54)【発明の名称】筆記具
(51)【国際特許分類】
   B43K 8/02 20060101AFI20220901BHJP
【FI】
B43K8/02 100
B43K8/02 110
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022113087
(22)【出願日】2022-07-14
(62)【分割の表示】P 2017158578の分割
【原出願日】2017-08-21
(31)【優先権主張番号】P 2016163910
(32)【優先日】2016-08-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000005957
【氏名又は名称】三菱鉛筆株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112335
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 英介
(74)【代理人】
【識別番号】100101144
【弁理士】
【氏名又は名称】神田 正義
(74)【代理人】
【識別番号】100101694
【弁理士】
【氏名又は名称】宮尾 明茂
(74)【代理人】
【識別番号】100124774
【弁理士】
【氏名又は名称】馬場 信幸
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 等
(72)【発明者】
【氏名】平野 功一
(72)【発明者】
【氏名】澤 幸儀
(72)【発明者】
【氏名】神谷 俊史
(57)【要約】
【課題】 強い筆記荷重で筆記しても筆記性能を損なうことなく、筆記芯の耐久性を更に向上させることができる筆記具を提供する。
【解決手段】 少なくとも、多孔体からなる筆記芯30と硬質材料からなる保持体40とから筆記部が構成される筆記具Aであって、保持体40からの筆記芯30の先端側の突出量が0.65mm以上、1.05mm以下及び/又は筆記芯30の厚さの40%以上、65%以下であることを特徴とする筆記具。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、多孔体からなる筆記芯と、筆記芯を保持する保持体とから筆記部が構成される筆記具であって、保持体からの筆記芯の先端側の突出量が0.65mm以上、1.05mm以下であることを特徴とする筆記具。
【請求項2】
少なくとも、多孔体からなる筆記芯と、筆記芯を保持する保持体とから筆記部が構成される筆記具であって、保持体からの筆記芯の先端側の突出量が筆記芯厚さの40%以上、65%以下であることを特徴とする筆記具。
【請求項3】
少なくとも、多孔体からなる筆記芯と、筆記芯を保持する保持体とから筆記部が構成される筆記具であって、保持体からの筆記芯の先端側の突出量が0.65mm以上、1.05mm以下及び筆記芯厚さの40%以上、65%以下であることを特徴とする筆記具。
【請求項4】
保持体からの筆記芯の突出量が左右の保持体端面から異なることを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載の筆記具。
【請求項5】
保持体は、筆記方向に対して反対側の保持体端面が筆記方向側の保持体端面より突出していることを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載の筆記具。
【請求項6】
筆記芯は粒子径分布の異なる材料を組み合わせて構成されていることを特徴とする請求項1~5の何れか1項に記載の筆記具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筆記具軸体から供給されるインクを誘導し、かつ保溜できる筆記芯を有する筆記具に関し、更に詳しくは、一般に、ペイントマーカー、油性マーカー、水性マーカー、アンダーラインマーカーと呼ばれるタイプの筆記具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ペイントマーカー、アンダーラインマーカー等と称される筆記具は、幅広の筆記芯を備えることにより幅広の線引きを可能にしたものであって、マーキングの視認性や作業性に優れているため幅広く使用されている。
ラインマーカー等の筆記具における筆記芯は、一般に合成樹脂繊維等を棒状等に集束したものや、高分子の焼結体などの多孔質部材に毛細管作用を付与し、これにより筆記具本体となる軸体から供給されるインクをペン先に導出することにより筆記可能としたものである。
【0003】
また、蛍光インクを筆記具本体となる軸体内に収容した筆記具の普及にともない、幅広の線引きを可能とした多くの構造、形状のペン先を有する筆記具が市販されたことにより、使用者の用途に応じた筆記具の広い選択が可能となり、その作業性も快適なものとなっている。
【0004】
本出願人は、筆記具本体となる軸体から供給されるインクを誘導し、かつ保留できる筆記芯を有する筆記具において、ペン先に、筆記方向を視認できる可視部(窓)を備えた筆記具を開示している(例えば、特許文献1参照)。
このタイプの筆記具は、ペン先の可視部(窓)から筆記した文字が見えるから、チェックしたいところだけ、ピタッとはみ出さずにラインが引けるものである。具体的には、図19(a)に示すように、筆記具本体となる軸体1内のインク吸蔵体1aにインクを吸蔵させ、一端に細字タイプの筆記芯からなるペン体2と他端に太字タイプの筆記芯からなるペン体3を有し、インク吸蔵体1aのインクをそれぞれペン体2及びペン体3に供給する構成となっている。図示符号1b,1cはペン体2及びペン体3を保護するキャップである。また、後軸4に図19(b)にて示す太字タイプの筆記芯からなるペン体3が取り付けられている。このペン体3は、図19(b)に示すように、透明な支持部材となる保持体3aの外周に、略U字状の多孔質部材からなるインク誘導部3b,3bと筆記部3cとを有する筆記芯が取り付けられている。
【0005】
また、本出願人による特許文献2にも、図20(a)及び(b)示すように、筆記具本体5内に収容されたインクを筆記具本体5に固着された先軸6、この先軸6に取り付けられた保持体7を介して筆記芯8で筆記する筆記具を開示している。
【0006】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2に開示された筆記具においては、強い筆記圧で筆記し続けると筆記芯に過度の荷重が持続することとなり、筆記芯の耐久性や筆記性能を損なうという課題があり、筆記性能を損なうことなく、更なる筆記芯の耐久性の向上、改善が切望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000-52682号公報(特許請求の範囲、段落0014,図7図24図25
【特許文献2】特開2014-50967号公報(図1等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記従来の課題等に鑑み、これを解消しようとするものであり、強い筆記荷重で筆記しても、筆記性能を損なうことなく、筆記芯の耐久性を更に向上させることができる筆記具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記従来の課題等を解決するために鋭意検討した結果、少なくとも多孔体からなる筆記芯と硬質材料からなる保持体とから筆記部が構成される筆記具において、保持体からの筆記芯の先端側の突出量を特定の範囲などとする構成により、上記目的の筆記具が得られることを見出し、本発明を完成するに至ったのである。
【0010】
すなわち、本発明の筆記具は、少なくとも、多孔体からなる筆記芯と、筆記芯を保持する保持体とから筆記部が構成される筆記具であって、保持体からの筆記芯の先端側の突出量が0.65mm以上、1.05mm以下であることを特徴とする。
また、本発明の筆記具は、少なくとも、多孔体からなる筆記芯と、筆記芯を保持する保持体とから筆記部が構成される筆記具であって、保持体からの筆記芯の先端側の突出量が筆記芯厚さ
の40~65%であることを特徴とする。
更に、本発明の筆記具は、少なくとも、多孔体からなる筆記芯と、筆記芯を保持する保持体とから筆記部が構成される筆記具であって、保持体からの筆記芯の先端側の突出量が0.65mm以上、1.05mm以下及び筆記芯厚さの40~65%であることを特徴とする。
前記保持体からの筆記芯の突出量が左右の保持体端面から異なることが好ましい。
また、保持体は、筆記方向に対して反対側の保持体端面が筆記方向側の保持体端面より突出していることが好ましい。
更に、前記筆記芯は粒子径分布の異なる材料を組み合わせて構成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、強い筆記荷重で筆記しても筆記性能を損なうことなく、保持体内面で筆記芯を押さえる構成となるため、筆記芯の破損を防ぐことができる耐久性に優れた筆記具が提供される。
また、保持体からの突出量を左右で異ならしめることでユーザーに合わせた筆記具を提供することができる。
更に、保持体は、筆記方向に対して反対側の保持体端面が筆記方向側の保持体端面より突出せしめることにより、右手で左から右側に筆記する方向に特に効果を有する筆記具が提供される。
更にまた、筆記芯を粒子径分布の異なる材料を組み合わせて構成することにより、芯折れなどをより防ぐことができ耐久性を更に向上させることができるものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の筆記具の実施形態の一例を示すものであり、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は(b)の中央縦断面図である。
図2図1の筆記具からキャップを取り外した状態を示すものであり、(a)は背面図、(b)は平面図、(c)は正面図、(d)は(c)の中央縦断面図、(e)は左側面図である。
図3】(a)及び(b)は、図2の筆記具の筆記部側を背面側及び正面側から見た部分拡大斜視図である。
図4】(a)~(j)は、図1の筆記具における筆記部(保持体に筆記芯を取り付けた状態)を示す各図面であり、(a)は背面側の前方から見た斜視図、(b)は(a)の右側面図、(c)は正面側の前方から見た斜視図、(d)は背面図、(e)は平面図、(f)は正面図、(g)は(f)の中央縦断面図、(h)は背面側の後方から見た斜視図、(i)は(h)の左側面図、(j)正面側の後方から見た斜視図である。
図5】(a)~(j)は、図1の筆記具における筆記部を構成する保持体を示す各図面であり、(a)は背面側の前方から見た斜視図、(b)は(a)の右側面図、(c)は正面側の前方から見た斜視図、(d)は背面図、(e)は平面図、(f)は正面図、(g)は(f)の中央縦断面図、(h)は背面側の後方から見た斜視図、(i)は(h)の左側面図、(j)正面側の後方から見た斜視図である。
図6】本発明の筆記具の実施形態の他例を示すものであり、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は縦断面図である。
図7図6の筆記具からキャップを取り外した状態を示すものであり、(a)は背面図、(b)は平面図、(c)は正面図、(d)は(c)の中央縦断面図、(e)は左側面図である。
図8】(a)及び(b)は、図6の筆記具の筆記部側を背面側及び正面側から見た部分拡大斜視図である。
図9】(a)~(j)は、図6の筆記具における筆記部(保持体に筆記芯を取り付けた状態)を示す各図面であり、(a)は背面側の前方から見た斜視図、(b)は(a)の右側面図、(c)は正面側の前方から見た斜視図、(d)は背面図、(e)は平面図、(f)は正面図、(g)は(f)の中央縦断面図、(h)は背面側の後方から見た斜視図、(i)は(h)の左側面図、(j)正面側の後方から見た斜視図である。
図10】(a)~(j)は、図6の筆記具における筆記部を構成する保持体を示す各図面であり、(a)は背面側の前方から見た斜視図、(b)は(a)の右側面図、(c)は正面側の前方から見た斜視図、(d)は背面図、(e)は平面図、(f)は正面図、(g)は(f)の中央縦断面図、(h)は背面側の後方から見た斜視図、(i)は(h)の左側面図、(j)正面側の後方から見た斜視図である。
図11図1の筆記具における筆記部(保持体に筆記芯を取り付けた状態)の他例を示す各図面であり、(a)は背面図、(b)は平面図、(c)は(b)の中央縦断面図である。
図12図1の筆記具における筆記部(保持体に筆記芯を取り付けた状態)の他例を示す各図面であり、(a)は背面図、(b)は平面図、(c)は(b)の中央縦断面図である。
図13】本発明の筆記具の実施形態の他例を示すものであり、(a)及び(b)は、キャップを取り外した状態であり、(a)は前方側から見た斜視図、(b)は(a)を180°展開した斜視図である。
図14】(a)は、図13の筆記具の平面視中央縦断面図、(b)は(a)の正面視中央縦断面図である。
図15】(a)~(d)は、図13の筆記具における筆記部(保持体に筆記芯を取り付けた状態)の各図面であり、(a)は右側から見た斜視図、(b)は左側からみた斜視図、(c)は後方側から見た斜視図、(d)は、底面側から見た斜視図である。
図16】(a)~(e)は、図13の筆記具における筆記部(保持体に筆記芯を取り付けた状態)の各図面であり、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は底面図、(d)左側面図、(e)は右側面図である。
図17】(a)~(h)は、図13の筆記具における筆記芯を取り付ける前の保持体の各図面であり、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)中央縦断面図、(d)は底面図、(e)は前方側から見た斜視図、(f)は前方側から見た斜視図、(g)左側面図、(h)は右側面図である。
図18】(a)~(g)は、図13の筆記具の各図面であり、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は背面図、(d)は底面図、(e)は左側面図、(f)は前方側から見た斜視図、(g)は中央部側から見た斜視図である。
図19】従来の筆記具の一例を示すものであり、(a)は縦断面図、(b)は筆記芯を保持体に取り付けた状態を示す部分正面図である。
図20】従来の筆記具の他例を示すものであり、(a)は前方側から見た斜視図、(b)は後方側から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳しく説明する。
図1図5は、本発明の筆記具の実施形態の一例を示すものであり、図1(a)~(c)は筆記具の平面図、正面図、縦断面図であり、図2(a)~(e)は、図1の筆記具からキャップを取り外した状態を示す各図面、図3(a)及び(b)は、図2の筆記具の筆記部側を背面側及び正面側から見た部分拡大斜視図である。
本実施形態の筆記具Aは、図1図3に示すように、筆記具本体となる軸体(軸筒)10、インク吸蔵体20、筆記芯30、保持体40、キャップ50を備えている。
【0014】
軸体10は、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等で形成されるものであり、図1(c)に示すように、筆記具用インクを含浸したインク吸蔵体20を収容する有底筒状の後軸11と、ペン先となる筆記芯30を取り付けた保持体40を固着する先軸15とを有している。
後軸11は、例えば、PP等からなる樹脂を使用して有底筒状に成形され、筆記具の本体(軸体)として機能する。この後軸11は、図1(c)に示すように、後端側内部にインク吸蔵体20の後端部を保持する保持片12、12…からなる保持部材13が設けられており、後軸全体及び後述する先軸は不透明又は透明(及び半透明)に成形されるが、外観上や実用上の観点からいずれを採用しても良い。また、後軸11の前方側に先軸15が嵌合等により固着される構造となっている。
先軸15は、後述する筆記芯30を固定する保持体40の本体部41を固着する凸状の嵌合部16が設けられている。この構造の先軸15は、例えば、PP等からなる樹脂などで成形されるものである。
【0015】
インク吸蔵体20は、水性インク、油性インクなどの筆記具用インクを含浸したものであり、例えば、天然繊維、獣毛繊維、ポリアセタール系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリフェニレン系樹脂などの1種又は2種以上の組み合わせからなる繊維束、フェルト等の繊維束を加工したもの、また、スポンジ、樹脂粒子、焼結体等の多孔体を含むものである。このインク吸蔵体20は、軸体10の本体部となる後軸11内に収容保持されている。
用いる筆記具用インクの組成は、特に限定されず、筆記具の用途等に応じて、好適な配合処方とすることができる。好ましくは、後述する筆記具用インク組成物を用いることが望ましい。
【0016】
図4(a)~(j)は、図1の筆記具における筆記部(保持体に筆記芯を取り付けた状態)を示す各図面、図5(a)~(j)は、図1の筆記具における筆記部を構成する保持体を示す各図面である。
筆記芯30は、図3(a)及び(b)、図4(a)~(j)に示すように、断面が円形形状で、全体が略コ字型形状となるものであり、インク誘導部31、31と、該インク誘導部31、31からのインクを導出する筆記部32とを備えたものであり、インク誘導部31、31と筆記部32との角部は切り落とされたカット面部33、33とを有している。また、インク誘導部31、31の表面部には平滑面となるカット平滑面部31aが形成されている。
この筆記芯30は、多孔体から構成されるものであり、例えば、気孔を有する多孔質で形成されたものが挙げられ、具体的には、スポンジ体、焼結体、繊維束体、発泡体、海綿体、フェルト体、ポーラス体などを挙げることができる。多孔体を形成する材料としては、例えば、天然繊維、獣毛繊維、ポリアセタール系樹脂、ポリエチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリフェニレン系樹脂などを用いることができる。本実施形態では、各種のプラスチック粉末などを焼結した焼結体から構成されている。
【0017】
筆記芯30の幅方向の長さtは、十分な筆記流量の確保を確保する点から、tは、好ましくは、0.50mm以上、特に、1.00~3.00mmであることが望ましい。
筆記部32は、筆記しやすい傾きとなるように、傾斜状(ナイフカット状)となっており、この傾き等は、筆記等の使い勝手に合わせて適宜設定される。また、この筆記部32は、描線幅Wが太いものであり、好ましくは、描線幅Wは1mm以上、更に好ましくは、描線幅Wは2mm以上の描線幅となる筆記部が望ましい。
【0018】
保持体40は、図4(a)~(j)及び図5(a)~(j)に示すように、上記筆記芯30を固定して、軸体10の先軸15先端開口部に固着されるものであり、膨出状の本体部41と、該本体部41の前方側に、フランジ部42と、筆記方向を視認することができる可視部43とを有すると共に、可視部43の先端側に筆記芯30の先端側(端面)を保持する前方保持部44a,44bとを有するものである。本実施形態では、前方保持部44a,44bの長手方向長さを異ならしめているもの、すなわち、筆記芯30の先端側(端面)を保持する長さが長い前方保持部44aと短い前方保持部44bとし、前方保持部44aの先端側の端部は筆記芯30の先端側の端部と同じ位置(端部)にあり、前方保持部44bは後述するように突出量(突出長さ分)だけ短い寸法となっている。
また、上記本体部41の後方側に、上記本体部41に連設される保持片45を有する後方保持部46とを備えたものである。これらの部材から構成される保持体40の長手方向外周面全体には、上記コ字型状の筆記芯30を嵌入保持する保持溝46が形成されている。更に、本体部41の幅方向外周面には、凹状の嵌合部41aが形成され、長手方向外周面となる両面空気流通溝には、それぞれ直線状の空気流通溝41bと屈曲状の空気流通溝41cが形成されている。
【0019】
このように構成される保持体40全体は、硬質材料で構成されており、例えば、視認性を有する硬質材料、例えば、金属、ガラス、ゴム弾性を有しない樹脂などから構成されるものである。視認可能となるゴム弾性を有しない樹脂としては、例えば、PP、PE、PET、PEN、ナイロン(6ナイロン、12ナイロン等の一般的なナイロン以外に非晶質ナイロン等を含む)、アクリル、ポリメチルペンテン、ポリスチレン、ABS等の可視光線透過率が50%以上の材料から成形により構成することにより、可視部43で筆記方向に書いてある文字を有効に視認できることとなる。なお、可視部43だけを視認性を有する材料で構成してもよい。なお、可視光線透過率は多光源分光測色計〔スガ試験機社製、(MSC-5N)〕にて反射率を測定することで求めることができる。
また、保持体40は、上記各材料の一種類、または、耐久性、視認性の更なる向上の点などから、2種類以上の材料を用いて構成してもよく、射出成形、ブロー成形などの各種成形法により成形することができる。
【0020】
この筆記具Aにおいて、上記筆記芯30の保持体への固着(装着)は、保持溝47に上記筆記芯30を嵌入し、前方保持部44a,44bと保持片45を有する後方保持部46との保持により固着されることとなる。更に、筆記芯30の固着(抜け止め)を確実にするために、接着剤による接着、溶着などを更に用いても良いものである。また、筆記芯30の筆記部32と接触する保持体40の保持溝46の接触面部に楔形状の非平滑面部を形成して更に上記筆記芯30の保持体40への固着を確実にしてもよいものである。本実施形態では、図4(g)に示すように、上記楔形状の非平滑面部48を形成している。
【0021】
本実施形態では、図4(e)及び(g)に示すように、保持体40からの筆記芯30の先端側の突出量Yが0.65mm以上、1.05mm以下となっており、これにより強い筆記荷重で筆記しても筆記芯30の先端側の突出量Yを極力保持体内面で筆記芯を押さえる構造となるため、筆記性能を損なうことなく、筆記芯の破損を防ぎ耐久性に優れるものとしている。突出量Yが、0.65mmよりも短いと、ペン体を寝かせて筆記する際に、保持体が接触し、筆記できなくおそれがあり、一方、突出量Yが、1.05mmよりも長いと、強い筆記荷重により、筆記性能を損なう可能性がある。なお、図4(g)に示すXは筆記芯幅であり、上記突出量Yは、上記0.65mm以上、1.05mm以下であると共に、筆記芯幅Xの50%未満であることが好ましい。
【0022】
また、本発明では、上記実施形態の他、保持体からの筆記芯の先端側の突出量Yを筆記芯の厚さtの40~65%とすることによっても、本発明の効果を発揮できることとなる。筆記芯の先端側の突出量Yを筆記芯の厚さtの40~65%(Y/tが40~65%)とすることにより、強い筆記荷重で筆記しても筆記芯30の先端側の突出量Yが筆記芯の厚さとの関係から、筆記芯の強度を更に保持できると共に、突出量Yを極力保持体内面で筆記芯を押さえる構造となるため、更に筆記性能を損なうことなく、筆記芯の破損を防ぎ耐久性に優れるものとしている。より好ましくは、筆記芯30の先端側の突出量Yは筆記芯厚さtの48~58%とすることが望ましい。この突出量Yが筆記芯の厚さtの40%未満であると、強い筆記荷重により、筆記性能を損なう可能性があり、一方、65%超過であると、保持体が厚くなり、筆記の際に紙面が見にくくなる。なお、図8(g)に示すXは筆記芯幅Xであり、上記突出量Yは、上記筆記芯の厚さtの40~65%と共に、筆記芯幅Xの50%未満(Y/Xが50%未満)であることが好ましい。
【0023】
特に好ましい形態としては、保持体からの筆記芯の先端側の突出量Yを0.65mm以上、1.05mm以下及び筆記芯厚さtの40~65%とすることにより、更に本発明の効果を相乗的に発揮できるものとなる。
【0024】
上記構成の筆記芯30を固着した保持体40(図4)を、先軸15内に挿入すると、先軸15の凸状の嵌合部16に保持体40の凹状の嵌合部41aが嵌合することにより、筆記芯30は保持体40を介して筆記具軸体10に装着(固着)されると共に、筆記芯30のインク誘導部31、31の後方側端部31a、31aはインク吸蔵体20の先端側内部に入り込む構成となっている。なお、インク吸蔵体20の先端側内部にインク誘導部31、31の後方側端部31a、31aを挿入する凹部を形成してもよい。また、軸体10内の圧力等が増大にした際に、インク垂れ等がペン先から生じることがあるが、本実施形態の筆記具Aでは、図3に示すように、空気流通溝41b,41cを介して軸体10内と外気とを調整している。
キャップ50は、先軸15の先端側外周面に嵌合等により着脱自在に取り付けられるものである。
【0025】
本発明となる筆記具Aでは、筆記具の軸体10を構成する後軸11内に筆記具用インクを吸蔵したインク吸蔵体20を挿入して保持せしめ、先軸15、筆記芯30を嵌入保持等により固定した保持体40を順次嵌合等により固着せしめることにより、簡単に筆記具Aを作製することができ、インク吸蔵体20に吸蔵されたインクは毛管力により筆記芯30の筆記部32に効率的に供給され、筆記に供されるものとなる。
【0026】
このように構成される筆記具Aでは、保持体40からの筆記芯30の先端側の突出量Yは、保持部が長い方で0.65mm以上、保持部が短い方で1.05mm以下となっており、筆記芯30の先端側を保持する前方保持部44a,44bの長さを異ならしめること、具体的には、筆記芯30の先端側(端面)を保持する長さが長い前方保持部44aと短い前方保持部44bとなっているので、特に、右利きで左から右方向に筆記する際に、突出部(突出量)で描線を引くことなどができ、しかも、保持する長さが長い左側の前方保持部44aで筆記芯の突出部を確実に保持(保護)して強度を高めるので、この筆記芯30の先端側(端面)を保持する長さが長い前方保持部44aと短い前方保持部44bとの筆記部32の保持構造、及び上記突出量Yの限定とにより、強い筆記荷重で筆記しても筆記芯30の先端側の筆記性能を損なうことなく、極力保持体40(44a)内面で筆記芯を押さえる構造となるため、筆記芯30の破損を防ぎ耐久性に優れる筆記具が提供されるものとなる。更に、本実施形態における保持体40は、筆記方向に対して反対側の保持体40端面が筆記方向側の保持体端面より突出せしめることにより、右手で左から右側に筆記する方向に特に効果を有する筆記具が提供される。なお、保持体40の端面が前記と反対側に突出して形成された際は、左手で右から左側に筆記する方向又は右手で上から下側に筆記する方向に特に効果を有する筆記具が提供される。
【0027】
また、上記筆記具Aにおいて、保持体40からの筆記芯30の先端側の突出量Yを0.65mm以上、1.05mm以下とすることなく、筆記芯の厚さtの40~65%とすることによっても、本発明の効果を発揮できることとなる。すなわち、この実施形態でも、筆記芯の先端側の突出量Yを筆記芯の厚さtの40~65%とすることにより、強い筆記荷重で筆記しても筆記芯30の先端側の突出量Yが筆記芯の厚さとの関係から、筆記芯の強度を更に保持できると共に、突出量Yを極力保持体内面で筆記芯を押さえる構造となるため、更に筆記性能を損なうことなく、筆記芯の破損を防ぎ耐久性に優れる筆記具が提供されるものとなる。
更に、これらの筆記具Aは、上述の如く、筆記芯30を固着した保持体40が、視認性を有する材料で構成されているので、当該保持体40の可視部43が、筆記方向を視認できる視認部となるものであり、筆記方向に書いてある文字を確実に読むことができる十分な視認性が付与することができると共に、終筆まで使用可能な筆記具が提供されるものとなる。
【0028】
図6図10は、本発明の筆記具の実施形態の他例を示すものであり、図6図10の図面は図1図5と同様の各図面である。図1図5の上記実施形態の筆記具において同様の構成は、図6図10の筆記具の図面において上記実施形態の図示符号と同一符号を用いてその説明を省略する。
本実施形態の筆記具Bは、筆記芯30において、カット平滑面部31aを有しない点、
また、保持体40からの筆記芯30の突出量Yが左右の保持体40端面から異なる点(突出量Yが長いものをY、短いものをY´としている点)、すなわち、筆記芯30の先端側(端面)を保持する前方保持部44a,44bの長さが逆となる点、具体的には、前方保持部44aを短くし、前方保持部44bを長くし、しかも、前方保持部44a、44bの先端側の端部は筆記芯30の先端側の端部と同じ位置(端部)に合わせていない点、筆記芯30のインク誘導部31、31の後方側端部31a、31aの長さが同じでなく、長いものと短いものとに形成している点で、図1図5の実施形態の筆記具と異なるものである。
本実施形態では、図7(e)及び(g)に示すように、保持体40からの筆記芯30の先端側の突出量Yは左右(図面上では上下)で異なるが、本発明では大きい方の突出量をYとするものであり、上記実施形態と同様に突出量Yが0.65mm以上、1.05mm以下及び/又は筆記芯厚さtの40~65%とする構成となっている。
【0029】
図6図10の本実施形態では、右利きで左から右方向(横方向)に筆記する際、更に、筆記せしめる紙面の方向等を変えることなく、そのまま縦方向に筆記する際にも、突出部(突出量Y)で描線を引くことなどができ、しかも、長さが異なる前方保持部44a、44bとで構成しているので、確実に筆記芯の先端側を保持(保護)できるので、強い筆記荷重で筆記しても筆記芯30の先端側で、極力保持体内面で筆記芯を押さえる構造となるため、筆記性能を損なうことなく、上記図1図5の実施形態の筆記具と同様に、筆記芯の破損を防ぎ耐久性に優れる筆記具が提供されるものとなる。
【0030】
〔筆記用インク組成物の説明〕
次に、上記図1図5の実施形態、図6図10の他の実施形態、更に後述する図11図12の各筆記具、並びに、図13図18の筆記具に使用する筆記用インク組成物を説明する。
用いることができるインク吸蔵体20に吸蔵する筆記具用インク組成物としては、特に限定されるものでないが、インク供給を良好とする点、筆記部(ペン先)の乾燥を抑えながらも、描線の乾燥性、インクの低温安定性に優れ、描線に滲みや裏抜けのない機能を発現することなどの点から、好ましくは、着色剤と、トリメチルグリシンと、ペンタエリスリトールと、10質量%以下の水溶性有機溶剤と、水とを少なくとも含有する筆記具用インク組成物の使用が望ましい。
【0031】
用いることができる着色剤としては、水に溶解もしくは分散する染料、酸化チタン等の従来公知の無機系および有機顔料系、顔料を含有した樹脂粒子顔料、樹脂エマルションを染料で着色した疑似顔料、蛍光顔料、白色系プラスチック顔料、シリカや雲母を基材とし表層に酸化鉄や酸化チタンなどを多層コーティングした顔料等を本発明の効果を損なわない範囲で使用することができる。
染料としては、例えば、エオシン、フオキシン、ウォーターイエロー#6-C、アシッドレッド、ウォーターブルー#105、ブリリアントブルーFCF、ニグロシンNB等の酸性染料;ダイレクトブラック154、ダイレクトスカイブルー5B、バイオレットB00B等の直接染料;ローダミン、メチルバイオレット等の塩基性染料、蛍光染料などが挙げられる。
【0032】
無機系顔料としては、例えば、アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、キレートアゾ顔料、フタロシアニン顔料、ペリレンおよびペリノン顔料、ニトロソ顔料などが挙げられる。より具体的には、カーボンブラック、チタンブラック、亜鉛華、べんがら、アルミニウム、酸化クロム、鉄黒、コバルトブルー、酸化鉄黄、ビリジアン、硫化亜鉛、リトポン、カドミウムエロー、朱、カドミウムレッド、黄鉛、モリブデードオレンジ、ジンククロメート、ストロンチウムクロメート、ホワイトカーボン、クレー、タルク、群青、沈降性硫酸バリウム、バライト粉、炭酸カルシウム、鉛白、紺白、紺青、マンガンバイオレット、アルミニウム粉、真鍮粉等の無機顔料、C.I.ピグメントブルー17、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー17、C.I.ピグメントブルー27、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド22、C.I.ピグメントレッド38、C.I.ピグメントレッド48、C.I.ピグメントレッド49、C.I.ピグメントレッド53、C.I.ピグメントレッド57、C.I.ピグメントレッド81、C.I.ピグメントレッド104、C.I.ピグメントレッド146、C.I.ピグメントレッド245、C.I.ピグメントイエロー1、C.I.ピグメントイエロー3、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー34、C.I.ピグメントイエロー55、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー95、C.I.ピグメントイエロー166、C.I.ピグメントイエロー167、C.I.ピグメントオレンジ5、C.I.ピグメントオレンジ13、C.I.ピグメントオレンジ16、C.I.ピグメントバイオレット1、C.I.ピグメントバイオレット3、C.I.ピグメントバイオレット19、C.I.ピグメントバイオレット23、C.I.ピグメントバイオレット50、C.I.ピグメントグリーン7等が挙げられる。
蛍光顔料としては、従来公知のものが適宜使用でき、例えば、硫化亜鉛、ケイ酸亜鉛、硫化カドミウム、硫化ストロンチウム、タングステン酸カルシウム等の無機蛍光顔料や高分子化合物を染色した有機蛍光顔料が挙げられる。
有機蛍光顔料としては、具体的には、NKWシリーズ(日本蛍光化学社製)、シンロイヒカラーベースSWシリーズ、SFシリーズ(シンロイヒ社製)、ビクトリアイエローG-20などのビクトリアシリーズ(御国色素社製)等が挙げられる。
【0033】
これらの着色剤は、一種もしくは二種以上を混合して使用することができる。
これらの着色剤の含有量は、インク組成物全量に対して、0.1~60質量%(以下、「質量%」を単に「%」という)で適宜調整することが可能である。
【0034】
用いるトリメチルグリシン〔別名:グリシンベタイン、(CH(CH)CHCOO〕は、保湿剤等として作用せしめるために用いるものであり、筆記
具用水性インク組成中に配合してもインキ性能の低下等を招くことがなく、ペン先の耐乾
燥性、描線の乾燥性、インクの低温安定性を発揮せしめるものである。
【0035】
このトリメチルグリシンの含有量は、インク組成物全量に対して、0.5~50%、好ましくは、1~15%、より好ましくは、2~10%とすることが望ましい。
この含有量が0.5%未満であると、ペン先の乾燥抑制効果が充分でなく、一方、50%超過であると、効果はそれほど変わらず、むしろ粘度増加による筆記性能、保存安定性の低下をもたらすこととなる。
【0036】
用いるペンタエリスリトール〔C(CHOH)〕は、保湿剤等として作用せしめるために用いるものであり、上記トリメチルグリシンとの併用により、各単独使用よりも、相乗的に作用して、ペン先の乾燥を抑えながらも、従来にない描線の乾燥性、インクの低温安定性に優れ、描線に滲みや裏抜けのない優れた性能を発揮せしめるものとなる。
【0037】
このペンタエリスリトールの含有量は、インク組成物全量に対して、0.5~8%、好ましくは、2~5%とすることが望ましい。
この含有量が0.5%未満であると、ペン先の乾燥抑制効果が充分でなく、また、トリメチルグリシンとの相乗作用を発揮することができず、一方、8%超過であると、トリメチルグリシンとの相乗作用の効果はそれほど変わらず、低温下における析出や、保存安定性の低下をもたらすこととなる。
【0038】
用いる水溶性有機溶剤としては、例えば、エタノール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコールなどのアルコール類、ホルムアミドおよびその誘導体などのアミド類、ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類など、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールブチルエーテル、ジプロピレングリコールn-ブチルエーテル、トリプロピレングリコールn-ブチルエーテル、プロピレングリコールフェニルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノ-2-エチルブチルエーテル、プロピレングリコールエチルエーテル、プロピレングリコールターシャリーブチルエーテルなどのエーテル類が挙げられ、これらは一種もしくは二種以上を混合して使用することができる。
これらの水溶性有機溶剤の含有量は、インク組成物全量に対して、10%以下、好ましくは、7%以下、より好ましくは5%以下とすることが望ましい。
これらの水溶性有機溶剤の含有量を10%以下とすることにより、描線乾燥性に優れた機能を発揮せしめるものとなる。
【0039】
本発明の筆記具に用いる筆記具用インク組成物は、上記各成分の他、残部(溶媒)として水(精製水、蒸留水、イオン交換水、純水など)で調製され、上記各成分以外にも、例えば、界面活性剤、防腐剤や防菌剤、pH調整剤、水溶性樹脂、樹脂エマルションなどの任意成分を本発明の効果を損なわない範囲で適宜含有せしめることができる。
【0040】
用いることができる界面活性剤としては、例えば、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、デカグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオ キシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレンラノリン・ラノリン・アルコール・ミツロウ誘導体、ポリオキシエチレンアルキルアミン・脂肪酸アミドなどの非イオン性界面活性剤;、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、N‐アシルアミノ酸塩、N‐アシルメチルタウリン塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、α‐オレフィンスルホン酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩などの陰イオン性界面活性剤;、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、パーフルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、フッ素化アルキルエステル、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキル基親水性基含有オリゴマー、パーフルオロアルキル基親水性基含有ウレタン、パーフルオロアルキルリン酸エステル、パーフルオロアルキルベタイン、パーフルオロアルキルアミンオキサイド、パーフルオロアルキルアンモニウム 塩、パーフルオロアルキルアルコキシレート、パーフルオロアルキルポリオキシエチレンエタノールなどのフッ素系界面活性剤を挙げることができる。これらの界面活性剤は、一種もしくは二種以上を混合して使用することができる。
また、防腐剤もしくは防菌剤としては、フェノール、ナトリウムオマジン、安息香酸ナトリウム、ベンズイミダゾール系化合物などが挙げられる。
pH調整剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属の水酸化物、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、モルホリン、トリエチルアミン等のアミン化合物、アンモニア等が挙げられる。
水溶性樹脂としては、例えば、ポリアクリル酸、水溶性スチレン -アクリル樹脂、水溶性スチレン・マレイン酸樹脂、水溶性マレイン酸樹脂、水溶性スチレン樹脂、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコ-ル、水溶性エステル-アクリル樹脂、エチレン-マレイン酸共重合体、ポリエチレンオキサイド、水溶性ウレタン樹脂等などが挙げられる。
樹脂エマルションとしては、例えば、アクリル系エマルション、酢酸ビニル系エマルション、ウレタン系エマルション、スチ レン-ブタジエンエマルション、スチレンアクリロニトリルエマルションなどが挙げられる。
これらの水溶性樹脂および樹脂エマルションは、一種もしくは二種以上を混合して使用することができる。
【0041】
この筆記具用インク組成物を製造するには、従来から知られている方法が採用可能であり、例えば、着色剤と、トリメチルグリシンと、ペンタエリスリトールと、10質量%以下の水溶性有機溶剤と、水とを少なくとも含み、水性における各成分などを所定量配合し、ホモミキサー、もしくはディスパー等の攪拌機により攪拌混合することによって得られる。更に必要に応じて、ろ過や遠心分離によってインク組成物中の粗大粒子を除去してもよく、また、脱泡、加熱、冷却しながら作製してもよいものである。
【0042】
このように構成される本発明の筆記具に用いる筆記具用インク組成物が、何故、ペン先の乾燥を抑えながらも、描線の乾燥性、インクの低温安定性に優れ、描線に滲みや裏抜けのない機能を発現するのかは下記のように推測することができる。
すなわち、本発明の筆記具に用いる筆記具用インク組成物では、着色剤と、トリメチルグリシンと、ペンタエリスリトールと、10質量%以下の水溶性有機溶剤と、水とを少なくとも含有することにより、共に、トリメチルグリシンと、ペンタエリスリトールとがペン先の耐乾燥性を抑える成分となるものであり、これらの各単独使用よりも、筆記具用水性インク組成中で併用することにより、相乗的に作用していることは明らかである。その理由は必ずしも明らかではないが、相乗効果によりペン先の乾燥を抑えながらも、描線の乾燥性、インクの低温安定性に優れ、描線に滲みや裏抜けのない優れた性能を発揮せしめるものと推測される。
本発明に用いる筆記具用インク組成物は、上記効果を発揮せしめる持続効果が極めて優れており、しかも、その効果の発現期間・持続時間も長く、更にトリメチルグリシンとペンタエリスリトールは水溶性であるために経時的な安定性にも優れたものとなる。
従って、本発明の筆記具に上記組成の筆記用インク組成物を用いることにより、強い筆記荷重で筆記しても筆記芯30の先端側の筆記性能を損なうことなく、極力保持体内面で筆記芯を押さえる構造となるため、筆記芯の破損を防ぎ耐久性に優れると共に、筆記具が保持体の視認性から当該筆記具を持って筆記する際に、筆記対象部位を見ながら筆記部分をより鮮明にすることができ、しかも、筆記部(ペン先)の乾燥を抑えながらも、描線の乾燥性、インクの低温安定性に優れ、描線に滲みや裏抜けのない機能を発現することができる筆記具が得られることになる。
【0043】
図11図12は、それぞれ本発明の筆記具の実施形態の他例を示すものであり、図1図5の筆記具の図面において相違する部分のみを部品図面として示したものである。
図1図5の上記実施形態の筆記具において同様の構成は、同一符号を用いてその説明を省略する。
図11の筆記具は、筆記芯30において、筆記芯30の先端側(端面)を保持する前方保持部44a,44bの長さが同じとなる点でのみ、図1図5の実施形態の筆記具と異なるものである。
本実施形態においても、上記実施形態と同様に突出量Yが保持体からの筆記芯の先端側の突出量が0.65mm以上、1.05mm以下及び/又は筆記芯厚さの40~65%となっており、上記図1図5の筆記具と同様に、強い筆記荷重で筆記しても筆記芯30の先端側を極力保持体内面で筆記芯を押さえる構造などとなるため、筆記性能を損なうことなく、筆記性能を損なうことなく、筆記芯の破損を防ぎ耐久性に優れる筆記具が提供されるものとなる。
【0044】
図12の筆記具は、筆記芯30において、筆記芯30の先端側(端面)を保持する前方保持部44a,44bの長さが同じとなる点(図11と同様)、並びに、筆記芯30の粒子径分布の異なる材料を組み合わせて構成されている点で異なるものである。
筆記芯30を粒子径分布の異なる材料を組み合わせて構成する形態としては、例えば、筆記芯30が焼結芯の場合に、例えば、粒子径が異なるプラスチック粒子(共にPE粒子)を用いることにより、具体的には、粒子径が小さいものを筆記部32に使用し、粒子径が大きいものをインク誘導部31、31に用いて筆記芯(焼結芯)30とすれば、筆記部32の強度をより向上させることができる。
なお、上記筆記芯30を上記態様(粒子径分布の異なる材料を組み合わせて構成)に変更しても、インク吸蔵体12からの筆記部32へのインク供給機構を損なうことなく、インク切れを起こすことなく、好適な量となるインク供給がなされるように設定されるものである。
【0045】
本実施形態においても、上記実施形態と同様に突出量Yが0.65mm以上、1.05mm以下及び/又は筆記芯厚さtの40~65%となっており、しかも、筆記芯30を粒子径分布の異なる材料を組み合わせによる構成、好ましくは、筆記部32の強度をインク誘導部31、31の強度よりも大きくする構成とすれば、上記図11の筆記具よりも、強い筆記荷重で筆記しても筆記芯30の先端側の筆記性能を損なうことなく、極力保持体内面で筆記芯を押さえる構造となるため、筆記芯の破損を防ぎ耐久性に優れる筆記具が提供されるものとなる。
更に、上記図11の実施形態において、インク誘導部31、31と筆記部32との境界部(強度の境界部Z1)を更に確実に保護するために、図12(c)に示すように、強度を増加した強度幅Z(最大Z=X)を突出量Yよりも大きくし(Z>Y)、境界部Z1が前方保持部44a,44bの内部で保持(保護)して、筆記部32を含む筆記芯30の耐久性を更に向上させてもよいものである。好ましくは、強度幅Z(=X)は(1.0×最小Y)≦Z≦(3.0×最大Y)、より好ましくは(1.0×最大Y)≦Z≦(2.0×最大Y)とすることが望ましい。なお、Z≦Yであると、上記インク誘導部31、31と筆記部32との境界部(強度の境界部Z1)を前方保持部44a,44bの内部で保護されず、筆記芯30の設計強度等に依存することとなる。
【0046】
図13図18は、本発明の筆記具の実施形態の他例を示す各図面である。
本実施形態の筆記具Cは、筆記具本体(軸部)となる軸筒が有底楕円筒形(楕円軸)である点、筆記芯となる多孔体とインク誘導芯が一体となった点等で上記実施形態の筆記具A,Bなどと相違するものである。
本実施形態の筆記具Cは、マーキングペンタイプの筆記具であり、図13図14に示すように、筆記具本体(軸部)となる軸筒50、インク吸蔵体60、インク誘導芯70、ペン先80を備えている。
軸筒50は、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、ガラス等で形成されるものであり、筆記具用インクを含浸したインク吸蔵体60を収容する有底筒状の後軸51と、ペン先80を固着する先軸55とを有している。
【0047】
後軸51は、例えば、ポリプロピレン等からなる合成樹脂を使用して長い有底楕円筒形(楕円軸)に成形され、筆記具本体として機能する。この後軸51は、後端側内部にインク吸蔵体60の後端部を保持する保持片からなる保持部材52が設けられており、後軸全体及び後述する先軸は不透明又は透明(及び半透明)に成形されるが、外観上や実用上の観点からいずれを採用しても良い。また、後軸51の開口部53に先軸55が嵌合等により固着される構造となっている。
【0048】
先軸55は、後方側に後軸51の開口部53に嵌合する環状の嵌合部56と、前方側に肩部57、ペン先80の本体部82を固着する筒状の嵌入部58とを有すると共に、上記嵌合部56内にはインク吸蔵体60の前端部を保持する保持片からなる保持部材59が設けられている。上記嵌入部58の内周面上の後端側に嵌合部58aが設けられている。この構造の先軸55は、例えば、ポリプロピレン等からなる合成樹脂などで成形されるものである。
【0049】
インク吸蔵体60は、水性インク、油性インク、熱変色性インクなどの筆記具用インクを含浸したものであり、その材質などは上述したインク吸蔵体20と同様であるのでその説明を省略する。このインク吸蔵体60は、軸筒50の後軸51内に収容されている。
また、インク吸蔵体60に含浸されるインク組成は、特に限定されず、例えば、水性インクでは、ペン先の乾燥を抑えながらも、描線の乾燥性、インクの低温安定性に優れ、描線に滲みや裏抜けのない筆記具用水性インク組成物として、上述した、少なくとも、着色剤と、トリメチルグリシン0.5~50質量%と、ペンタエリスリトール0.5~8質量%と、10質量%%以下の水溶性有機溶剤と、水とを含有するインク組成などが挙げられる。
更に、消し具等を用いて摩擦熱等により筆記描線を消色できる熱変色性のインク組成物では、擦る回数を減らし、かつ手に過度の負担をかけること無く確実に消色できるものとして、ロイコ色素、顕色剤及び変色温度調整剤を少なくとも含む熱変色性マイクロカプセル顔料と、平均粒子径が50~1000nmの範囲の二酸化チタン、シリカ粒子、シリコーン樹脂粒子から選ばれる少なくとも1種の粒子とを含有し、上記熱変色性マイクロカプセル顔料がインク組成物全量に対して5~30質量%であると共に、上記粒子の含有量が熱変色性マイクロカプセル顔料1に対して、質量比で0.1~2であり、かつ、上記熱変色性マイクロカプセル顔料と上記粒子の合計含有量がインク組成物全量に対して60質量%以下であるインク組成などが挙げられる。なお、平均粒子径は、粒度分析計〔マイクロトラックHRA9320-X100(日機装社製)〕にて求めることができる。また、消し具は、JIS K 6253に規定されるデュロメータAタイプによる測定で90以下の材料を軸筒の後端又はキャップの頂部に設けることが好ましい。
【0050】
インク誘導芯70は、先端に筆記部となる多孔体71を一体に有するものであり、該筆記部となる多孔体71はペン先80の保持体95に固着されてインク吸蔵体60からのインクを直接筆記部となる多孔体71に供給される構成となるものであり、インク誘導芯70部分はインク吸蔵体60の前方側の挿入部61に嵌入する構造となる。本実施形態では、インク誘導芯70と筆記部となる多孔体71とが別部材とならず一体構成となるものである。
このインク誘導芯70と筆記部となる多孔体71の一体構成は、インク吸蔵体60と同様に繊維束、フェルト等の繊維束を加工した繊維束芯、または、硬質スポンジ、樹脂粒子焼結体等からなる樹脂粒子多孔体、スライバー芯等の連続気孔を有するものである。このインク誘導芯70等の形状、構造等は特に限定されるものでなく、例えば、インク誘導芯70の断面形状としては、例えば、円形、楕円形、正方形、長方形、台形、平行四辺形、ひし形、これ以外の方形形状、カマボコ形、半月形の形状などが挙げられ、好ましくは、インク誘導芯70の形状を筆記方向が視認できる視認部側を側面と同じ若しくは小さくすることが好ましく、更に好ましくは、直方形状又は楕円形状とし、溝部のある側を短軸側とすることでインク誘導部90の視認性を妨げることなく、インク流量を確保することができる。
【0051】
ペン先80は、図13図16に示すように、インク誘導芯70と一体となる筆記部(ペン芯)となる多孔体71を備えると共に、該多孔体71を保持し、筆記部にインクを供給するための上記インク誘導芯70を配設した筒状のインク誘導部90を有する保持体95とを備え、該保持体95には後方側にインク誘導芯70が挿入される筒状部81を有する本体部82が連設されている。この本体部82の外周面には、フランジ部83が設けられている。このフランジ部83の底面側には切欠段部84が設けられている。
また、ペン先80の本体部82の外周面上には、先軸55の嵌入部58に設けた嵌合部58aに嵌合するための嵌合突部82aが設けられている。
【0052】
筆記部となる多孔体71は、保持体95の先端部に固着されるものであり、インク誘導芯70と一体となるものであり、これらは、例えば、天然繊維、獣毛繊維、ポリアセタール系樹脂、ポリエチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリフェニレン系樹脂などの1種又は2種以上の組み合わせからなる並行繊維束、フェルト等の繊維束を加工又はこれらの繊維束を樹脂加工した繊維芯、または、各種のプラスチック粉末などを焼結したポーラス体(焼結芯)などから構成される。
【0053】
この筆記部となる多孔体71部分の形状としては、例えば、外観形状がチゼル形状、砲弾形状、円柱、楕円柱、立方体、直方体などの形状が挙げられ、また、その断面形状が台形、平行四辺形、ひし形、カマボコ形、半月形等となる形状が挙げられ、本実施形態では、チゼル形状となっている。チゼル形状とは、先端がペン軸の中心線に対して傾斜面を形成しており、傾斜面が平坦である形状である。
また、筆記部となる多孔体71は、筆記しやすい傾きとなるように、好ましくは、本体軸の長軸方向に対して、40~90°の角度で傾いていることが望ましく、本実施形態では、75°の傾きとなっている。
これらの筆記部となる多孔体71の形状、傾き等は、筆記等の使い勝手に合わせて適宜設定される。また、筆記部となる多孔体71は、描線幅が太いものであり、好ましくは、描線幅W2mm以上、更に好ましくは、描線幅3mm以上の描線幅となる筆記部である。
【0054】
上記保持体95内部には、筆記部にインクを供給するためのインク誘導部90を少なくとも1つ有するものであり、本実施形態では、視認部の面積比率を最大限に発揮せしめる点、筆記部となる多孔体71に効率的にインクを供給する点から、長手方向の略中央部にインク誘導部90が貫通する形で1本配置されている。
このインク誘導部90の形状、大きさ、本数等は、筆記具本体に含まれるインク吸蔵体60に含浸されたインクが上記筒状部81及びインク誘導部90内に配設したインク誘導芯70、インク誘導芯70の先端に一体に設けた筆記部となる多孔体71へ毛管作用により効率よくインク供給できる構造等となるものであれば、その形状、構造、大きさ、本数などは適宜選択することができる。
【0055】
特に、インク誘導芯70に十分な筆記流量とインク誘導部90を介しての視認性を確保する点から、インク誘導部90の軸線方向の長さが3mm以上とすることが望ましい。また、保持体95内部にインク誘導部90の断面積の合計が3mm以上であることが望ましい。
このインク誘導部90の形状は、長軸方向である筆記部85側に向かって直線が望ましいが、テーパーが形成されていてもよく、また、本体軸の長軸方向に対して0~30°の向きで、2本以上の複数本でもよいが、1本のみ設けられていることが望ましい。
【0056】
本実施形態では、インク誘導芯70とインク誘導部90間には、隙間91があり隙間91を形成した状態で筆記部となる多孔体71に接続した形態となるものである。これにより、隙間91からインクで満たされている構成とし、インク誘導芯70によるインク供給と、隙間91の毛管作用(直液作用)によるインクによるインク供給とを組み合わせることで、インク残量の視認ができ、また、インク切れを起こしても暫くは筆記を継続することができるので、外観をきれいに見せることができ、品質の安定化を確保でき、しかも、空気の逃げ道の確保ができる構成となっている。
なお、上記インク誘導芯70とインク誘導部90間に隙間を形成することなく、インク誘導部90内にインク誘導芯70が密着状態(密封)であってもよく、この場合でも、外観をきれいに見せることができ、インク吸蔵体60のインクをペン先80の保持体95に固着されるインク誘導芯70と一体で構成される筆記部となる多孔体71に効率よく、好適なインク量を効率よく供給できるものである。
【0057】
上記保持体95のインク誘導芯70が配設されたインク誘導部90以外の全体が視認部を形成する構造となるものであり、その外形面は筆記方向を有効に視認するために、4面(正面、背面、各側面)は略平行面となっている。
また、上記保持体95の上部側の両側面に、筆記部となる多孔体85を保持する長さが相違するリブ体98a、98bが設けられると共に、該リブ体間には多孔体85の底面と当接する底面部99が設けられている。この底面部の中央部にはインク誘導部90の出口が形成されている。更に、上記リブ体の一方の端面に多孔体85の前端面が当接する当接部99aが設けられている。
【0058】
この本体部82を含む保持体95は、視認性を有する材料、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、PET、PEN、ナイロン(6ナイロン、12ナイロン等の一般的なナイロン以外に非晶質ナイロン等を含む)、アクリル、ポリメチルペンテン、ポリスチレン、ABS等の材料から構成されるものであり、可視光線透過率が50%以上となる材料から構成されることが好ましい。
この可視光線透過率が50%未満の材料を使用した場合は、筆記方向に書いてある文字を有効に視認できないことがあり、好ましくない。更なる良好な視認機能を発揮できるようにするために、50%以上透過する材料が好ましく、この可視光線透過率が80%以上であれば、更に良好に視認できるものとなる。なお、可視光線透過率は、多光源測色計を用いて反射率を測定することで求めることができる。
【0059】
この保持体95は、上記各材料の一種類、または、耐久性、視認性の更なる向上の点などから、2種類以上の材料を用いて構成することができ、2種類以上の材料で構成する場合は、少なくとも一つが可視光線透過率50%以上となる材料から構成されているものが好ましく、射出成形、ブロー成形などの各種成形法により成形することができる。
【0060】
本実施形態では、上述の筆記具A、Bと同様に、図16(a)に示すように、保持体95からの筆記芯となる多孔体71の先端側の突出量Yが0.65mm以上、1.05mm以下となっており、これにより強い筆記荷重で筆記しても筆記芯となる多孔体71の先端側の突出量Yを極力保持体内面で筆記芯を押さえる構造となるため、筆記性能を損なうことなく、筆記芯の破損を防ぎ耐久性に優れるものとしている。突出量Yが、0.65mmよりも短いと、ペン体を寝かせて筆記する際に、保持体が接触し、筆記できなくおそれがあり、一方、突出量Yが、1.05mmよりも長いと、強い筆記荷重により、筆記性能を損なう可能性がある。なお、図16(d)に示すWは筆記芯幅であり、上記突出量Yは、上記0.65mm以上、1.05mm以下であると共に、筆記芯幅Wの50%未満であることが好ましい。
【0061】
本実施形態では、上述した図7(e)及び(g)と同様に、保持体80からの筆記芯となる多孔体71の先端側の突出量Yは左右(図面上では上下)で異なるが、本発明では大きい方の突出量をYとするものであり、上記実施形態と同様に突出量Yが0.65mm以上、1.05mm以下及び/又は筆記芯厚さtの40~65%とする構成となっている。
本実施形態では、右利きで左から右方向(横方向)に筆記する際、更に、筆記せしめる紙面の方向等を変えることなく、そのまま縦方向に筆記する際にも、突出部(突出量Y)で描線を引くことなどができ、しかも、長さが異なるリブ体98a、98bとで確実に筆記芯の先端側を保持(保護)できるので、強い筆記荷重で筆記しても筆記芯となる多孔体71の先端側で、極力保持体内面で筆記芯を押さえる構造となるため、筆記性能を損なうことなく、上記図1図5等の実施形態などの筆記具と同様に、筆記芯の破損を防ぎ耐久性に優れる筆記具が提供されるものとなる。
【0062】
また、本発明では、上記実施形態の他、保持体からの筆記芯の先端側の突出量Yを筆記芯の厚さtの40~65%とすることによっても、上述の筆記具A、Bと同様に、本発明の効果を発揮できることとなる。筆記芯の先端側の突出量Yを筆記芯の厚さtの40~65%(Y/tが40~65%)とすることにより、強い筆記荷重で筆記しても筆記芯となる多孔体71の先端側の突出量Yが筆記芯の厚さとの関係から、筆記芯の強度を更に保持できると共に、突出量Yを極力保持体内面で筆記芯を押さえる構造となるため、更に筆記性能を損なうことなく、筆記芯の破損を防ぎ耐久性に優れるものとしている。より好ましくは、筆記芯となる多孔体71の先端側の突出量Yは筆記芯厚さtの48~58%とすることが望ましい。この突出量Yが筆記芯の厚さtの40%未満であると、強い筆記荷重により、筆記性能を損なう可能性があり、一方、65%超過であると、保持体が厚くなり、筆記の際に紙面が見にくくなる。なお、図16(d)に示すWは筆記芯幅であり、上記突出量Yは、上記筆記芯の厚さtの40~65%と共に、筆記芯幅Wの50%未満(Y/Wが50%未満)であることが好ましい。
【0063】
特に好ましい形態としては、保持体からの筆記芯の先端側の突出量Yを0.65mm以上、1.05mm以下及び筆記芯厚さtの40~65%とすることにより、上述の筆記具A、Bと同様に、更に本発明の効果を相乗的に発揮できるものとなる。
また、上記筆記具Aにおいて、保持体80からの筆記芯となる多孔体71の先端側の突出量Yを0.65mm以上、1.05mm以下とすることなく、筆記芯の厚さtの40~65%とすることによっても、本発明の効果を発揮できることとなる。すなわち、この実施形態でも、筆記芯の先端側の突出量Yを筆記芯の厚さtの40~65%とすることにより、強い筆記荷重で筆記しても筆記芯30の先端側の突出量Yが筆記芯の厚さとの関係から、筆記芯の強度を更に保持できると共に、突出量Yを極力保持体内面で筆記芯を押さえる構造となるため、更に筆記性能を損なうことなく、筆記芯の破損を防ぎ耐久性に優れる筆記具が提供されるものとなる。
【0064】
更に、これらの筆記具Cは、上述の如く、筆記芯となる多孔体71を固着した保持体80が、視認性を有する材料で構成されているので、当該保持体80は、筆記方向を視認できる視認部となるものであり、筆記方向に書いてある文字を確実に読むことができる十分な視認性が付与することができると共に、終筆まで使用可能な筆記具が提供されるものとなる。
【0065】
図18は、本実施形態の筆記具の全体を示す(キャップを取り外した)状態の一例を示す各図面である。
この形態の筆記具Cでは、筆記具の軸筒50を構成する後軸51内にインクを吸蔵したインク吸蔵体60、インク誘導芯70と筆記部となる多孔体71を取り付けたペン先80、先軸55を順次嵌合等により取り付けることにより、簡単に筆記具Cを作製することができるものである。
【0066】
このように構成される本実施形態の筆記具Cでは、インク誘導部90は保持体95の略中央部に配置すると共に、インク誘導部90内にインクを含浸させたインク誘導芯70を配設したので、インク吸蔵体20に含浸されたインクが上記インク誘導芯70のセイン単に一体構成となる筆記部となる多孔体71へ毛管作用により効率よくインク供給できるものとなり、また、インク誘導部90にインク誘導芯70を配設することで、組立性が容易となり、また、筆記具の落下衝撃等による特に強い衝撃があっても、インク誘導芯70のズレ、脱落等を防止でき、インクカスレを防ぐことができるものとなる。
【0067】
特に、インク誘導部90を保持体95内の長手方向略中央部に形成することにより、筆記部となる多孔体71に、かたよりなく効率的にインクを供給できるので、更に、終筆まで使用可能な筆記具が提供されるものとなる。また、インク誘導部90を保持体95の長手方向略中央部に形成することにより、筆記方向を定め易く、非常に筆記しやすい形状となるものである。更に、保持体55の上部にリブ体98a、98bを設けることにより、定規で筆記した際に、定規を汚さずに真直ぐな線などを引くこともできる。
【0068】
本発明の筆記具は、上記実施形態などに限定されることなく、本発明の技術思想を変更しない範囲内で種々変更することができる。
例えば、上記図5~10、並びに、図11の筆記具において、上記図12の形態の筆記芯30と保持体40の形態、すなわち、筆記芯30を粒子径分布の異なる材料を組み合わせで構成した場合に、インク誘導部31、31と筆記部32との境界部(強度の境界部Z1)を更に確実に保護するために、上述の如く、境界部Z1を前方保持部44a,44bの内部で保持(保護)する構成とすることにより、上記図5~10、並びに、図11の筆記具においても、筆記部32を含む筆記芯30の耐久性を更に向上させてもよいものである。
【0069】
また、上記実施形態において、筆記芯30を焼結芯タイプの筆記芯について詳述したが、筆記芯30は焼結体以外に、上述の如く、繊維束体、発泡体、海綿体、フェルト体などであってもよく、筆記芯30が繊維束や発泡体などからなる筆記芯の場合に、例えば、気孔率、発泡率が低いもの(密度が高いもの)を筆記部32に用い、気孔率、発泡率が高いもの(密度が低いもの)をインク誘導部31、31に用いて筆記芯(繊維束芯)30として構成してもよく、上記粒子径分布の異なる材料を組み合わせてなる筆記芯と同様に、筆記芯30の筆記部32の強度を向上させることができる。なお、上記筆記芯30を上記各態様(繊維束体、発泡体、海綿体、フェルト体などの強度、気孔率、発泡率等)に変更しても、インク吸蔵体12からの筆記部32へのインク供給機構を損なうことなく、インク切れを起こすことなく、好適な量となるインク供給がなされることとなる。
更に、上記各実施形態では、インク吸蔵体20に吸蔵されたインクを毛管力により筆記芯30の筆記部32に効率的に供給せしめる方式(中綿式)の筆記具を示したが、弁機構を備えた筆記具、例えば、筆記具本体となる軸体内に直接インクが収容されたインク室を設けて、インク室と筆記芯との間に弁機構を設け、ペン先方向の押圧移動で弁機構のスプリングの附勢力に抗して弁棒を後退させて弁部を解放してインクの導出を行い、筆記芯にインクを供給する構成の筆記具であってもよいものである。
【0070】
さらにまた、上記実施形態では、ペン先となる筆記芯30等が一つのシングルタイプの筆記具を挙げたが、ツインタイプの筆記具、後軸先端に細字タイプの筆記芯からなるペン体を設けて、インク吸蔵体20のインクを上記ペン体に供給する構成としてもよいものである。
上記実施形態の筆記具Cでは、筆記具本体の軸筒などの断面を楕円軸に形成したが、三角形状、四角形以上の方形状などの異形形状、正円形状にしてもよいものである。
また、上記実施形態の筆記具Cではインク誘導芯70により、インク吸蔵体20から筆記部となる多孔体71まで一部品でインクを供給するものとしたが、二部品、例えば、インク吸蔵体70から筒状部81までを中継多孔体とし、インク誘導部90内を前記インク誘導芯と同様のインク供給芯との二部品で、インク吸蔵体20から筆記部となる多孔体へインクを供給してもよいものである。
更に、上記各実施形態では、筆記具用のインク(水性インク、油性インク、熱変色性インク)で説明したが、液状化粧料、液状薬剤、塗布液、修正液などの液状体とし、ペン先を該液状体に併せて、例えば、多孔体を好適な塗布部材用の多孔体を用いてもよいものである。
【実施例0071】
次に、実施例により、本発明を更に詳述するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0072】
〔実施例1〕
下記構成及び図6図10に準拠する筆記具、インクを使用した。筆記芯、保持体等の寸法等は下記に示す大きさのものを使用した。
【0073】
(筆記芯30の構成)
PE製焼結芯、気孔率60%、筆記部32:W=4mm、ナイフカット状、インク誘導部:φ(t)1.6mm、突出量Y=0.85mm(tの53%)、突出量Yの反対側の突出量Y´=0.65mm(tの40%)、筆記芯幅X=1.75mm
(保持体40の構成)
アクリル樹脂製、可視光線透過率85%〔スガ試験機社製、多光源分光測色計(MSC-5N)にて反射率を測定し、可視光線透過率とした。〕
筆記芯取り付け後の可視部43(四角形)の大きさ:5mm×6mm×3mm×4mm
【0074】
(筆記芯30、保持体40以外の筆記具部材の構成)
インク吸蔵体:PET繊維束、気孔率85%、φ6×77mm
筆記具本体、キャップ:ポリプロピレン(PP)製
【0075】
(インク組成)
インクとして、下記組成のインク(合計100質量%)を使用した。
保湿剤:トリメチルグリシン(グリシンベタイン) 7.5質量%
ペンタエリスリトール 4.5質量%
着色剤:NKW-4805黄(日本蛍光社製) 40.0質量%
防腐剤:バイオエース(ケイアイ化成社製) 0.3質量%
pH調整剤:トリエタノールアミン 1.0質量%
フッ素系界面活性剤:サーフロン8111N(AGCセイミケミカル社製) 0.2質量%
水溶性有機溶剤:エチレングリコール 3.0質量%
水(溶媒):イオン交換水 43.5質量%
【0076】
この実施例1の筆記具では、保持体40からの筆記芯30の先端側の突出量Y=0.85mm(tの53%)となっており、従来の図13に準拠する筆記芯と保持体の構造の筆記具(三菱鉛筆社製、プロパス・ウインドウ「PUS-102T」)、突出量Yが1.15mm超過(tの72%超過)に較べ、特に、右利きで左から右方向に筆記する際に、突出部(突出量)で描線を引くことができ、しかも、過度の荷重をかけても筆記性能を損なうことなく、筆記芯の破損もなく耐久性に優れる筆記具が得られることが確認された。
また、得られた筆記具を用いて、文字の上に筆記したところ、筆記時に可視部を介して向こう側の見え方を目視にて確認したところ、視認性が十分であり、見やすく、筆記方向に書いてある文字を読みながら筆記することができた。
更に、自動筆記装置にこの筆記具をセットして、JIS S6037に準拠した試験方法に従い、上質紙面上で筆記角度65°、筆記荷重1N、速度7cm/s、距離100mで直線筆記後、筆記した描線状態を目視にて確認したところ、上記好ましいインク組成のものを使用しているため、インク流量も良好で、ペン先の乾燥を抑えながらも、描線の乾燥性、インクの低温安定性に優れ、描線に滲みや裏抜けのない機能を発現することがわかった。
【0077】
〔実施例2〕
下記構成及び図12(及び図1図5)に準拠する筆記具、インクを使用した。筆記芯、保持体等の寸法等は下記に示す大きさのものを使用した。
【0078】
(筆記芯30の構成)
PE製焼結芯、筆記部32(Z部分):気孔率70%(粒子径が小さいPE粒子)、W=4mm、ナイフカット状、インク誘導部等:気孔率50%(粒子径が大きいPE粒子)、φ:t=1.65mm、突出量Y=1.05mm、筆記芯幅X=2.50mm、Z=2.0mm(保持体40の構成、筆記芯30、保持体40以外の筆記具部材の構成、インク組成)
上記実施例1と同じ構造、組成のものを用いた。
【0079】
この実施例2の筆記具では、保持体40からの筆記芯30の先端側の突出量Y=1.05mm(tの64%、筆記芯幅Xの42%)、Z=2.0mm(Z>Y)となっており、実施例1の筆記具よりも、過度の荷重をかけても筆記性能を損なうことなく、境界部Z1は前方保持部44a,44bの内部で確実に保持(保護)されるので、筆記芯の破損もなく耐久性に優れる筆記具が得られることが確認された。また、得られた筆記具を用いて、文字の上に筆記したところ、筆記時に可視部を介して向こう側の見え方を目視にて確認したところ、視認性が十分であり、見やすく、筆記方向に書いてある文字を読みながら筆記することができた。
更に、自動筆記装置にこの筆記具をセットして、JIS S6037に準拠した試験方法に従い、上質紙面上で筆記角度65°、筆記荷重1N、速度7cm/s、距離100mで直線筆記後、筆記した描線状態を目視にて確認したところ、上記好ましいインク組成のものを使用しているため、実施例1と同様に、インク流量も良好で、ペン先の乾燥を抑えながらも、描線の乾燥性、インクの低温安定性に優れ、描線に滲みや裏抜けのない機能を発現することがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明の筆記具では、アンダーラインペン、ペイントマーカー、油性マーカー、水性マーカーと呼ばれるタイプの筆記具に好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0081】
A 筆記具
10 軸体
11 後軸
15 先軸
20 インク吸蔵体
30 筆記芯
40 保持体
50 キャップ
X 筆記芯幅
Y 突出量
t 筆記芯厚さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
【手続補正書】
【提出日】2022-08-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願明細書に記載の発明。